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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】管ユニット
(51)【国際特許分類】
   E21B 43/10 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
E21B43/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021033160
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134186
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高畑 陽
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-228322(JP,A)
【文献】特開2008-274688(JP,A)
【文献】米国特許第06298925(US,B1)
【文献】特開2007-098258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に挿入されながら設置される、管ユニットであって、
無孔管である鋼製の外管と、
前記外管の内側に配設されている、有孔管である樹脂製の内管と、
前記外管の先端が遊嵌され、前記内管の先端が間接的に螺合されている、先端部材と、を有し、
耐熱管の一端に対して前記内管の先端が螺合され、該耐熱管の他端が前記先端部材に螺合されていることを特徴とする、管ユニット。
【請求項2】
前記外管は、前記内管を前記地盤の帯水層に設置するための仮設部材であり、
前記外管が引き抜かれて、前記内管と前記先端部材が前記地盤に残置されるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の管ユニット。
【請求項3】
前記先端部材は、
地盤への挿入方向に縮径し、挿入反対方向の上端面が最大径となっている、先端コーンと、
前記上端面から立設して、該上端面よりも小径の円柱体とを有し、
前記円柱体の上端面には、第一ネジ部が設けられ、
前記内管の先端もしくは前記耐熱管の先端に第二ネジ部が設けられており、
前記円柱体に前記外管の先端が遊嵌され、
前記第一ネジ部に前記第二ネジ部が螺合されることにより、前記内管の先端が前記先端部材に直接的もしくは間接的に螺合されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の管ユニット。
【請求項4】
前記円柱体に前記外管の先端が遊嵌された際に、前記上端面の外郭は該外管よりも側方に張り出す張り出し部を有しており、該張り出し部がフリクションカットを形成していることを特徴とする、請求項に記載の管ユニット。
【請求項5】
前記円柱体の上端面において、前記第一ネジ部の内側に第三ネジ部が設けられており、
前記内管及び前記先端部材を地上へ引き抜く際に適用される引き抜き管の先端に設けられている、第四ネジ部が前記第三ネジ部に螺合されるようになっていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の管ユニット。
【請求項6】
前記円柱体に前記外管の先端が遊嵌されている状態において、該円柱体と該外管の先端の遊嵌箇所の隙間にグリースが介在していることを特徴とする、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の管ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
地下水の環境モニタリングを行うための井戸(観測井)は、大きく分けて、設置後に継続的に使用するための観測井と、恒久的に設置しない観測井(地下水を一度採取するための観測井)とに分類される。前者の観測井としては、長期的に何度も地下水を採取するために、地下水の水質に影響を与えたり、周辺の構造物に影響(例えば、迷走電流による電食)を与えたりしない材質で作られた観測井を適用する必要がある。そのため、観測井の素材には、塩化ビニルやポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)、ステンレス(SUS)等が用いられている。
上記する前者の観測井の設置方法としては、井戸管の外径より大きな削孔径でケーシング削孔(ケーシングを設置して地盤の崩壊を防止しながらケーシング内部の土壌を所定の深度まで掘削)した後、井戸管を建て込み、スクリーンの周辺部に砂利等の透水性材料を充填(グラベル・パッキング)し、スクリーン以外の部位には必要に応じてベントナイトペレット等のシール材を充填する設置方法が適用される。この設置方法は、孔径を選ばずに集水能力の高い観測井を設置できる利点がある一方で、作業工程が多くなるために観測井の設置に時間がかかること、十分な井戸洗浄を要すること等に起因して、施工コストが高くなり易いといった課題がある。
一方、上記する後者の観測井(恒久的に設置しない観測井)の設置及び地下水採取方法としては、鋼管等を打設して地下水を集水して採取する方法が適用され、この設置及び地下水採取方法では削孔が不要となり、地下水を採取したい深度まで打設後、先端部分の二重管を露出させて地下水を採取し、地下水の採取後は打設した鋼管を回収する。この観測井の設置方法及び地下水の採取方法では、鋼管等の設置期間は短いものの、鋼管等を含むサンプラーの構造が複雑であることから施工コストが一般に高価になり易く、また、前者の観測井の設置方法のように恒久的に利用可能な観測井の設置は困難である。
【0003】
ここで、特許文献1には、施工性に優れ、工費を低減できる管打込み方法と管材打込みユニットが提案されている。具体的には、管材が外装された芯材を打撃あるいは押圧することにより管材を地中に配置する配管工程と、芯材を管材から抜き出す芯材撤去工程とを備える管打込み方法である。この管打込み方法において、管材の先端には先端部材が設けられており、芯材の先端を先端部材に当接させた状態で配管工程を行う。また、管材打込みユニットは、芯材と、芯材に外装された有孔管である管材と、管材の先端に設けられている先端部材とを備える管材打込みユニットであり、先端部材には、芯材の先端を着脱するための芯材固定部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-155432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の管打込み方法と管材打込みユニットによれば、優れた施工性と工費の低減を図りながら、地盤への管の打ち込みを実現することができる。ところで、特許文献1に記載の管材打込みユニットでは、外側に配設される管材が有孔管であるために、地盤への設置の際の有孔管の孔(開口部、スクリーン)の目詰まりの恐れがある。ここでは、管を地盤に押し込みながら打設を行うとしているが、打設中に管材の孔に土壌(シルト、粘土分)が入ることにより、管材を使用する前に管材の内部に浸入した土壌を除去する井戸洗浄を行う必要があり、管材の設置直後に観測井として使用できない可能性が十分にある。
【0006】
本発明は、地盤への設置の際の有孔管の孔の目詰まりの恐れが無く、有孔管の設置直後から観測井として使用することのできる管ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
地盤に挿入されながら設置される、管ユニットであって、
無孔管である外管と、
前記外管の内側に配設されている、有孔管である内管と、
前記外管の先端が遊嵌され、前記内管の先端が直接的もしくは間接的に螺合されている、先端部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、無孔管である外管の内部に有孔管である内管が配設され、さらに内管の先端に先端部材が螺合(接続)されていることにより、有孔管である内管は、無孔管である外管が撤去されるまでの間は外管により防護されていることから、内管の孔の目詰まりは生じない。そのため、地盤内に設置された有孔管である内管を、設置直後から観測井として使用することが可能になる。
ここで、「外管の先端が遊嵌され」とは、外管の先端が先端部材の一部の周囲に対して遊びのある状態で配設されていることを意味しており、従って、地盤内へ外管を挿入する際は、外管を押し込むことで外管と先端部材の双方を挿入することができ、先端部材から外管を取り外す際は、外管を引き抜くことにより容易に取り外すことができる。
また、「内管の先端が直接的もしくは間接的に螺合されている」とは、先端部材に予め内管とは異なる別の管材(以下で説明する耐熱管)が螺合されている場合は、耐熱管に内管の先端が螺合されることから、内管の先端が先端部材に間接的に螺合されることになり、一方で、先端部材に予め短尺な内管が螺合されている場合や螺合されていない場合は、短尺の内管に対して長尺な内管が螺合されること、もしくは先端部材に長尺な内管が螺合されることから、内管の先端が先端部材に直接的に螺合されることを意味している。
本態様の管ユニットは、各構成部材が異なるタイミングで地盤内へ挿入された後、一時的に管ユニットの全ての構成部材が地盤内に存在してもよいし、全ての構成部材が同時に地盤内に挿入されてもよく、各構成部材の挿入方法(挿入のタイミング)により管ユニットの構成部材の組み合わせは変化する。
例えば、前者の方法では、先端部材と外管が先行して地盤内に挿入された後、内管が外管の内部に挿入されることにより、管ユニットが形成される。また、前者の方法の他の形態としては、先端部材と、先端部材に遊嵌されている所定深度までの長さを有する外管に加えて、例えば30cm程度の長さの短尺な内管が予め先端部材に螺合されていて、これらが地盤内に挿入された後、外管の内部において短尺な内管に対して別途の長尺な内管が継ぎ足されることにより、管ユニットが形成される方法もある。
一方、後者の方法では、先端部材に対して外管が遊嵌され、内管が螺合されて管ユニットが形成され、管ユニットとして全ての構成部材が同時に地盤内に挿入される。
【0009】
いずれの方法であっても、有孔管である内管は、無孔管である外管に防護され、地盤内に管ユニットを設置する際の内管の孔の目詰まりは抑止される。尚、所定深度までの長さを備える管ユニットの設置に際しては、少なくとも、所定長さの外管同士が継ぎ足されながら、先端部材が、地下水の環境モニタリングを行うための帯水層、もしくはこの帯水層よりも以深の所定深度まで挿入されるのがよい。ここで、管ユニット(先端部材と外管による形態、先端部材と外管と内管による形態)の地盤への挿入方法としては、静的圧入(フィード)や、振動貫入(バイブロ)などが挙げられる。
【0010】
また、本発明による管ユニットの他の態様において、
前記外管は、前記内管を前記地盤の帯水層に設置するための仮設部材であり、
前記外管が引き抜かれて、前記内管と前記先端部材が前記地盤に残置されるようになっていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、内管が地盤の帯水層に位置するようにして管ユニットが地盤内に設置された後、仮設部材である外管が引き抜かれて、内管と先端部材が地盤に残置されることにより、管ユニットの挿入時は無孔管である外管により有孔管である内管の孔の目詰まりが抑止されながら、外管が引き抜かれた後は、地盤内に設置された有孔管である内管を、設置直後から観測井として使用することが可能になる。
上記するように、管ユニットの地盤内への設置方法は、先端部材と外管が先行して地盤内に挿入され、内管が外管の内部に設置される方法であってもよいし、管ユニットを構成する全ての構成部材が同時に地盤内へ挿入される方法であってもよい。
ここで、仮設部材であって無孔管である外管としては、鋼管等が適用でき、帯水層の残置される有孔管である内管としては、地下水の水質に影響を与えず、周辺の構造物に影響を与えない樹脂製もしくはステンレス製の管が適用できる。
【0012】
また、本発明による管ユニットの他の態様において、
耐熱管の一端に対して前記内管の先端が螺合され、該耐熱管の他端が前記先端部材に螺合されていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、先端部材に対して耐熱管が螺合され、耐熱管に対して内管が螺合されていることにより、例えば、地盤内へ先端部材が挿入される際に、先端部材が地盤との間の摩擦により生じる摩擦熱を帯び、この摩擦熱により例えば樹脂製(もしくは合成樹脂製)の内管の先端やその周辺が溶解することを防止できる。
ここで、耐熱管は、有孔管であっても無孔管であってもよい。また、例えば30cm程度の耐熱管を先端部材に螺合しておき、この耐熱管の端部にあるネジ溝に対して内管の先端のネジ溝を螺合させる構成とすることにより、先端部材からある程度の高さ位置に内管と螺合されるネジ溝を位置させることができ、外管と先端部材との遊嵌箇所の隙間を介してこのネジ溝の表面に泥等が堆積し、内管のネジ溝との螺合が困難になるといった恐れが無くなる。
尚、対象地盤が緩く、先端部材を地盤内に挿入する際の先端部材と地盤との間の摩擦が殆ど生じない場合は、先端部材が摩擦熱を帯びない(もしくは僅かな摩擦熱しか帯びない)ことから、先端部材への耐熱管の設置は必ずしも必要ない。
【0014】
また、本発明による管ユニットの他の態様において、
前記先端部材は、
地盤への挿入方向に縮径し、挿入反対方向の上端面が最大径となっている、先端コーンと、
前記上端面から立設して、該上端面よりも小径の円柱体とを有し、
前記円柱体の上端面には、第一ネジ部が設けられ、
前記内管の先端もしくは前記耐熱管の先端に第二ネジ部が設けられており、
前記円柱体に前記外管の先端が遊嵌され、
前記第一ネジ部に前記第二ネジ部が螺合されることにより、前記内管の先端が前記先端部材に直接的もしくは間接的に螺合されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、先端部材が先端コーンと先端コーンの上端面よりも小径の円柱体とを備え、円柱体に外管の先端が遊嵌されることにより、地盤内への挿入の際は先端部材に対して仮設部材である外管を容易に配設することができ、先端部材から外管を取り外す際も容易に取り外しを行うことができる。さらに、先端部材を構成する円柱体の上端面に設けられている第一ネジ部に対して、内管の先端もしくは耐熱管の先端に設けられている第二ネジ部が螺合されることにより、地盤内に残置されて観測井を形成する先端部材と内管を、外管との干渉のない態様で強固に接続することができる。
ここで、「円柱体」とは、文字通りの円柱体の他、円筒体も含まれるものとする。また、円柱体の上端面に設けられている第一ネジ部が雄ネジの場合は、円柱体よりも小径の別途の円柱体が上方に突出し、この小径の円柱体の側面にネジ溝が設けられることにより第一ネジ部が形成される。そして、この雄ネジである第一ネジ部に対して、内管もしくは耐熱管の端部にある雌ネジである第二ネジ部が螺合される。一方、第一ネジ部が雌ネジの場合は、円柱体の上端面に雌ネジである第一ネジ部が開設され、この雌ネジに対して、内管もしくは耐熱管の端部から下方へ突出する雄ネジである第二ネジ部が螺合される。
【0016】
また、本発明による管ユニットの他の態様は、
前記円柱体に前記外管の先端が遊嵌された際に、前記上端面の外郭は該外管よりも側方に張り出す張り出し部を有しており、該張り出し部がフリクションカットを形成していることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、円柱体に外管の先端が遊嵌された際に上端面の外郭が外管よりも側方に張り出す張り出し部を有し、この張り出し部がフリクションカットを形成していることにより、地盤内への外管の挿入に際して外管の挿入性が良好になり、外管の挿入時において、外管と円柱体との遊嵌箇所の隙間を介して土砂や地下水が外管の内部に浸入することを抑制できる。
【0018】
また、本発明による管ユニットの他の態様は、
前記円柱体の上端面において、前記第一ネジ部の内側に第三ネジ部が設けられており、
前記内管及び前記先端部材を地上へ引き抜く際に適用される引き抜き管の先端に設けられている、第四ネジ部が前記第三ネジ部に螺合されるようになっていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、円柱体の上端面において、第一ネジ部の内側に第三ネジ部が設けられ、観測井である内管と先端部材を引き抜いて撤去する際に適用される引き抜き管の備える第四ネジ部が第三ネジ部に螺合されることにより、先端部材に螺合されている内管と干渉することなく、引き抜き管を先端部材に螺合することができる。
ここで、第三ネジ部も、第一ネジ部と同様に、雄ネジの形態と雌ネジの形態があり、第三ネジ部が雄ネジの場合は、雌ネジである第四ネジ部が螺合され、第三ネジ部が雌ネジの場合は、雄ネジである第四ネジ部が螺合される。
【0020】
また、本発明による管ユニットの他の態様は、
前記円柱体に前記外管の先端が遊嵌されている状態において、該円柱体と該外管の先端の遊嵌箇所の隙間にグリースが介在していることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、先端部材の円柱体と外管の遊嵌箇所の隙間にグリースが介在していることにより、例えば、帯水層が長く、土質が緩くてシルト分を多く含み、遊嵌箇所の隙間から多量のシルト分が浸入する可能性がある場合に、外管と円柱体との遊嵌箇所の隙間を介して土砂や地下水が外管の内部に浸入することを抑制できる。
【0022】
また、本発明による管ユニットの設置方法の一態様は、
無孔管である外管と、
前記外管の内側に配設されている、有孔管である内管と、
前記外管の先端が遊嵌され、前記内管の先端が直接的もしくは間接的に螺合されている、先端部材と、を有する管ユニットを、地下水の環境モニタリングを行うための帯水層に挿入して設置する、管ユニットの設置方法であって、
前記先端部材に前記外管の先端を遊嵌し、該外管を順次継ぎ足しながら、該先端部材を前記帯水層もしくは該帯水層よりも以深の所定深度まで挿入する、A工程と、
前記外管の内側に前記内管を挿入し、該内管の先端を前記先端部材に直接的もしくは間接的に螺合し、該内管を前記帯水層に位置決めする、B工程と、
前記外管を引き抜いて、前記内管を前記帯水層に露出させる、C工程と、を有することを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、A工程において、先端部材の一部に無孔管である外管を遊嵌し、所定長さの外管を順次継ぎ足しながら、地下水の環境モニタリングを行うための帯水層もしくは当該帯水層よりも以深の所定深度まで先端部材を挿入した後、B工程において、外管の内側に有孔管である内管を挿入してその先端を先端部材に直接的もしくは間接的に螺合し、C工程において、外管を引き抜いて内管を帯水層に露出させることにより、内管の孔を目詰まりさせることなく、地盤内の帯水層に対して内管をスムーズに設置することができ、地盤内に設置された有孔管である内管を、設置直後から観測井として使用することが可能になる。ここで、A工程において、帯水層全体に内管を設置する場合は、先端部材を帯水層よりも以深の所定深度まで挿入し、帯水層が非常に長く、帯水層の一部にのみ内管を設置する場合は、先端部材を帯水層(の途中位置)まで挿入する。
【0024】
また、本発明による管ユニットの設置方法の他の態様は、
前記A工程において、該先端部材が前記帯水層に進入した際に、前記外管の内部に注水することを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、A工程において、先端部材が帯水層に進入した際に外管の内部に注水することにより、先端部材の挿入時に生じ得る摩擦熱に起因する先端部材の温度上昇を抑制でき、さらには、外管と円柱体との遊嵌箇所の隙間を介して土砂や地下水が外管の内部に浸入することを抑制できる。
【0026】
また、本発明による管ユニットの設置方法の他の態様は、
前記A工程において、前記先端部材と前記外管の先端の遊嵌箇所の隙間にグリースを介在させることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、A工程において、先端部材(の円柱体)と外管との遊嵌箇所の隙間にグリースを介在させる(例えば充填もしくは塗布する)ことにより、遊嵌箇所の隙間を介して土砂や地下水が外管の内部に浸入することを抑制できる。すなわち、土砂や地下水の外管の内部への浸入抑制方法としては、上記するように外管の内部へ注水する方法と、先端部材と外管との遊嵌箇所の隙間にグリースを充填もしくは塗布しておく方法の、いずれか一方もしくは双方が適用される。
【0028】
また、本発明による管ユニットの設置方法の他の態様は、
前記C工程において、前記外管を引き抜いた際に生じる前記内管の周囲の隙間のうち、地上部の近傍の隙間を閉塞材にて閉塞することを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、外管を引き抜いた際に生じる内管の周囲の隙間のうち、地上部の近傍の隙間を閉塞材にて閉塞することにより、地上部での雨水が内管等の表面を伝って帯水層に流入し、モニター対象である地下水と異なる性状の水を内管が取水することを抑止することができる。
ここで、閉塞材には、モルタルや珪砂、膨潤性の止水材等の他、引き抜いた外管(例えば鋼管)の一部が適用でき、さらには、これらの複数を積層させて利用することもできる。また、帯水層の上に不飽和層がある場合は、帯水層に配置された内管の上に、不飽和層に配置された無孔管が設置され得るが、この無孔管の周囲の隙間(地上部の隙間)が閉塞材にて閉塞されることにより、帯水層にある内管の孔を閉塞材にて閉塞することなく、その上部の地上部の隙間を閉塞材にて閉塞し、内管の側方に地上部からの雨水が流入することを抑止できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の管ユニットによれば、地盤への設置の際の有孔管の孔の目詰まりの恐れが無く、有孔管の設置直後から観測井として使用することのできる、管ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態に係る管ユニットの一例の分解縦断面図である。
図2】実施形態に係る管ユニットの一例の縦断面図である。
図3】実施形態に係る管ユニットから外管が取り外されることにより形成される、観測井の一例の縦断面図である。
図4図3に示す観測井に対して、引き抜き管が螺合されている状態を示す縦断面図である。
図5】(a)から(c)の順に、実施形態に係る管ユニットの設置方法の一例の工程図である。
図6図5に続いて、(a)から(c)の順に、実施形態に係る管ユニットの設置方法の一例の工程図である。
図7図6に続いて、(a)から(c)の順に、実施形態に係る管ユニットの設置方法の一例の工程図である。
図8】外管引き抜き後に生じる隙間の処理方法の一例を説明する図である。
図9】外管引き抜き後に生じる隙間の処理方法の他の例を説明する図である。
図10】外管引き抜き後に生じる隙間の処理方法のさらに他の例を説明する図である。
図11】実証実験における実地盤の土質柱状図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施形態に係る管ユニットとその設置方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0033】
[実施形態に係る管ユニット]
はじめに、図1乃至図4を参照して、実施形態に係る管ユニットの一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る管ユニットの一例の分解縦断面図であり、図2は、実施形態に係る管ユニットの一例の縦断面図である。また、図3は、実施形態に係る管ユニットから外管が取り外されることにより形成される、観測井の一例の縦断面図であり、図4は、図3に示す観測井に対して、引き抜き管が螺合されている状態を示す縦断面図である。
【0034】
管ユニット50は、対象地盤に対して観測井を施工する過程で地盤内に形成される、複数種の形態を備えている。管ユニット50は、無孔管である外管40と、外管40の内側に配設されている、有孔管である内管30と、外管40の先端41が遊嵌され、かつ、内管30の先端31が直接的もしくは間接的に螺合される、先端部材10とを有する。
【0035】
図示例は、管ユニット50がさらに耐熱管20を有しており、先端部材10に耐熱管20が螺合され、耐熱管20に内管30の先端31が螺合されている形態を示しており、従って、内管30の先端31が先端部材10に対して耐熱管20を介して間接的に螺合されている。尚、管ユニットは、耐熱管20を具備せず、先端部材10に対して内管30が直接的に螺合されている形態であってもよい。また、施工過程において、先端部材10と外管40と耐熱管20のみの形態、先端部材10と外管40と短尺な内管30(30cm程度の内管のみ)の形態も、管ユニットの他の形態である。
【0036】
外管40は、例えば所定長さの鋼管により形成され、複数の鋼管が機械式継手やネジ継手等によって継ぎ足されることにより、所定深度までの長さを有する外管40が形成される。外管40は例えば鋼管により形成され、鋼管の一端に雄ネジ(図示せず)を備え、鋼管の他端に雌ネジ(図示せず)を備えており、一方の鋼管の雌ネジに対して他方の鋼管の雄ネジを螺合することにより、鋼管同士が接続される。尚、以下で説明するように、外管40は、観測井を形成する内管30を地盤の帯水層に設置するための仮設部材であり、内管30の周囲にある外管40が地上に引き抜かれて内管30が地盤に露出することにより、観測井が形成されることになる。
【0037】
内管30は、地盤内に設置される観測井を形成する管であり、地下水の水質に影響を与えず、周辺の構造物に影響を与えない材質である、塩化ビニルやポリ塩化ビニル(PVC)等により形成される。内管30も、所定長さの塩ビ管等がネジ継手によって継ぎ足されることにより、例えば帯水層の厚みに対応する長さを有する内管30が形成される。内管30は、一端に雌ネジ32を備え、他端に雄ネジ34を備えており、一方の塩ビ管の雌ネジ32に対して他方の塩ビ管の雄ネジ34を螺合することにより、塩ビ管同士が接続される。
【0038】
また、内管30は、側面にスクリーンとなる複数の孔36を備えており、複数の孔36は、地盤内において内管30が観測井を形成している際に、地下水を内管30の内部に採取する取水孔となる。尚、地盤内において内管30を設置する位置は、取水を行う帯水層の地上からの深さ等を考慮して決定される。
【0039】
先端部材10は、地盤への挿入方向であるX1方向に縮径して、挿入反対方向の上端面11aが最大径となっている、先端コーン11と、先端コーン11の上端面11aから立設して、上端面11aよりも小径の円柱体12と、円柱体12の上端面12aから立設する雄ネジである第一ネジ部13と、第一ネジ部13の上端面13aから立設する雄ネジである第三ネジ部14とを有する。図示例は、先端コーン11と円柱体12と第一ネジ部13と第三ネジ部14が一体で製作されている形態であるが、各部材が別体で製作され、ネジ式もしくは溶接等により組み付けられる形態であってもよい。また、第一ネジ部と第三ネジ部は雌ネジであってもよい。
【0040】
先端部材10は、内管30とともに地盤内に残置される部材であること、鋼管により形成される外管40の先端が遊嵌されて地盤内に貫入される部材であることから、剛性が高い鋼製の素材(S45C等)が好ましく、環境影響の少ない素材である、ステンレス(SUS)や硬質樹脂材等により形成されるのがより好ましい。
【0041】
円柱体12の外径は外管40の内径と略同一(外管40の内径よりも0.4mm乃至1mm程度小さくて僅かな隙間43(図2参照)を形成している)であり、円柱体12の外周面12bに外管40の先端41の内周面42がX2方向に遊嵌することにより、先端部材10の一部の周囲に外管40の先端が配設される。このように、円柱体12と外管40の間に僅かな隙間43があることにより、円柱体12から外管40を引き抜く際の引き抜き性が良好になる。
【0042】
ここで、先端部材10の先端コーン11の上端面11aに対して外管40の先端41の端部が当接され、外管40を地盤内へ挿入する際には、外管40の先端41を先端部材10の円柱体12に遊嵌し、外管40をバイブロドリル等の杭施工機にて地盤内へ押し込む。また、上記するように、仮設部材である外管40は内管30の設置後に引き抜かれることから、先端部材10から外管40を分離して引き抜く上でも、双方が遊嵌されている必要がある。
【0043】
図2に示すように、外管40の先端41が遊嵌される先端部材10の円柱体12の長さ(高さ)t2は、先端部材10と外管40の地盤内への挿入時に、先端部材10が外管40の先端41から外れないこと、双方の遊嵌箇所の隙間43から土砂や地下水が浸入し難いことといった観点から設定されるのがよく、一方で、先端部材10からの外管40の先端41の取り外し性も合わせ勘案すると、長さt2は可及的に短いことが好ましい。これらのことから、長さt2は、例えば60mm乃至100mm程度に設定できる。
【0044】
尚、図2では、円柱体12の外周面12bと外管40の先端41の内周面42の間の隙間43にグリース18が介在しており、このグリース18により、隙間43から土砂や地下水が外管40の内側に浸入することを抑制するようにしている。尚、土砂や地下水が外管40の内側に浸入する可能性が低い場合は、隙間43へのグリース18の充填は不要である。
【0045】
第一ネジ部13には、耐熱管20の一端にある雌ネジである第二ネジ部22が螺合される。耐熱管20は、一端に第二ネジ部22を備え、他端には内管30の先端31の雌ネジ32が螺合する雄ネジ24を備えている。耐熱管20は、例えば耐熱性のPVC管(VP25塩ビ管等)により形成される。
【0046】
先端部材10に対して内管30を直接的に螺合する代わりに、先端部材10に対して耐熱管20をX3方向に螺合し、耐熱管20に対して内管30をX4方向に螺合することにより、例えば、地盤内へ先端部材10が挿入される際に、先端部材10が地盤との間の摩擦により生じる摩擦熱を帯び、この摩擦熱により例えば合成樹脂製の内管30の先端31やその周辺が溶解することを防止できる。
【0047】
また、耐熱管20の長さ(高さ)t3を例えば30cm程度に設定しておき、この耐熱管20を先端部材10に螺合しておき、この耐熱管20の端部にある雄ネジ24に対して、内管30の先端31の雌ネジ32を螺合させる構成とすることにより、先端部材10からある程度の高さ位置に内管30と螺合される雄ネジ24を位置させることができる。このことにより、外管40と先端部材10との遊嵌箇所の隙間43を介してこの雄ネジ24の表面に泥等が堆積し、内管30の雌ネジ32との螺合が困難になるといった恐れが無くなる。
【0048】
外管40の先端41と円柱体12の遊嵌箇所の隙間43にグリース18が介在していることにより、この隙間43を介した土砂や地下水の外管40内への浸入は抑制されるが、グリース18が介在していない場合は、先端部材10の第一ネジ部13に耐熱管20を螺合しておくのがよく、外管40の内部に土砂等が仮に浸入した場合でも、耐熱管20と外管40の間に形成される泥溜め45に土砂等を溜め込むことができ、内管30と螺合される雄ネジ24の表面に泥等が堆積することを抑制できる。
【0049】
尚、図示を省略するが、外管40の先端41と円柱体12の遊嵌箇所の隙間43にグリース18が介在し、また、対象地盤が比較的緩くて、先端部材10を地盤内に挿入する際の先端部材10と地盤との間の摩擦が殆ど生じない場合は、先端部材10が摩擦熱を帯びない(もしくは僅かな摩擦熱しか帯びない)ことから、先端部材10への耐熱管20の設置は必ずしも必要なく、先端部材10の第一ネジ部13に対して内管30を直接螺合してもよい。
【0050】
さらに、第一ネジ部の上端面13aから立設する第三ネジ部14が耐熱管20に包囲されていることにより、外管40の内部に土砂等が仮に浸入した場合に、引き抜き管が螺合される第三ネジ部14の表面に泥等が堆積することを抑制できる。
【0051】
先端部材10に耐熱管20が螺合されている形態と、先端部材10に短尺な内管30が螺合されている形態(耐熱管20を具備しない形態)のいずれにおいても、先端部材10と外管40を地盤の所定深度まで挿入した後、外管40の内側に例えば帯水層の厚みに相当する内管30を挿入し、耐熱管20や短尺な内管30に対して内管30が螺合される。
【0052】
図2において、円柱体12に外管40の先端41が遊嵌された際に、先端コーン11の上端面11aの外郭は外管40よりも側方に幅t1だけ張り出す張り出し部11bを有しており、この張り出し部11bがフリクションカットを形成している。ここで、フリクションカットの幅t1は、3mm程度かそれ未満に設定できる。
【0053】
このように、先端コーン11の上端面11aの外郭がフリクションカット11bを形成していることにより、地盤内への外管40の挿入に際して外管40の挿入性が良好になり、外管40の挿入時において、外管40と円柱体12との遊嵌箇所の隙間43を介して土砂や地下水が外管40の内部に浸入することを抑制できる。
【0054】
地盤の所定深度まで先端部材10と外管40を挿入した後、外管40を地上に引き抜くことにより、図3に示す観測井60が形成され、地盤(の帯水層)に露出される。ここで、観測井60は、先端部材10と、耐熱管20と、内管30とにより構成される。
【0055】
また、観測井60による帯水層の観測が終了した際や、観測井のメンテナンスの際には、観測井60を地上に引き抜く施工が行われる。この引き抜き施工の際は、図4に示すように、観測井60である内管30の内部を介して、地上から引き抜き管70を挿入し、引き抜き管70の先端にある雌ネジである第四ネジ部72を、先端部材10の第三ネジ部14に螺合させる。そして、引き抜き管70を引き抜くことにより、観測井60を地上に引き抜くことができる。ここで、引き抜き管70としては、内管30の内径よりも小さな外径を有し、十分な引張強度を有する、φ19mm程度のサウンディングロッド等を適用できる。尚、観測井60の引き抜きの必要がない場合は、第四ネジ部72は不要である。
【0056】
図示例の管ユニット50によれば、無孔管である外管40の内部に有孔管である内管30が配設され、さらに内管30の先端に先端部材10が螺合されていることにより、有孔管である内管30は、無孔管である外管40が撤去されるまでは外管40に防護されていることから、内管30の孔36の目詰まりは生じない。そのため、地盤内に設置された有孔管である内管30は、洗浄を不要としながら、内管30の設置直後から観測井として使用することができる。
【0057】
[実施形態に係る管ユニットの設置方法]
次に、図5乃至図10を参照して、実施形態に係る管ユニットの設置方法の一例について説明する。ここで、図5(a)~(c)、図6(a)~(c)、及び図7(a)~(c)は順に、実施形態に係る管ユニットの設置方法の一例の工程図である。
【0058】
図示例の対象地盤は、表層から順に、不飽和層G1、帯水層G2、及び不透水層(シルト・粘土)G3を有し、帯水層G2が地下水採取対象層となる。
【0059】
管ユニットの設置方法では、まず、図5(a)に示すように、所定長さ(例えば1m)の鋼管により形成される外管40の先端に先端部材10を遊嵌し、先端部材10には例えば30cm程度の長さの耐熱管20を螺合し、複数の外管40を順次継ぎ足しながら先端部材10と外管40を地盤内にY2方向に挿入(貫入)していく(A工程)。
【0060】
ここで、図2を参照して説明したように、先端部材10の円柱体12と外管40の先端41の内周面42の遊嵌箇所の隙間43にグリース18を介在させておき、隙間43を介して、土砂や地下水が外管40の内部に浸入することを防止しておくのが好ましい。土砂や地下水が外管40の内側に浸入する可能性が低い場合は、隙間43へのグリース18の充填は不要である。
【0061】
先端部材10と外管40を地盤内へ挿入する図示例の杭施工機100は、フィード(圧入)とバイブロ(上下振動)により、鋼管により形成される外管40を地盤に打設できる、クローラータイプで小型重機のバイブロドリルである。
【0062】
バイブロドリル100は、リーダ102と、リーダ102に沿ってY1方向に昇降するバイブロ104と、バイブロ104の先端に設けられているスピンドル106を備えており、スピンドル106に取り付けられているチャック108を介して外管40の上端が固定される。
【0063】
先端部材10と外管40の打設において、比較的柔らかい地盤ではバイブロドリル100によるフィードにより、また、固い地盤ではバイブロドリル100によるバイブロにより、先端部材10と外管40を所定深度まで打設する。
【0064】
そして、図5(a)に示すように、先端部材10が帯水層G2に到達した段階で、外管40の継ぎ足し時に、外管40内に漏斗等(図示せず)を用いて水(水道水等)を流し込み、図5(b)に示すように、帯水層G2内において、例えば、外管40内に注水された水80の高さレベルが帯水層G2における地下水の高さレベルよりも高くなるように調整する。
【0065】
このように、先端部材10と外管40が帯水層G2に進入した際に外管40内に注水することにより、地盤との間の摩擦により先端部材10に生じる摩擦熱を冷却することができる。また、この注水により、先端部材10の円柱体12と外管40の先端41の内周面42の遊嵌箇所の隙間43を介して、土砂や地下水が外管40の内部へ浸入することを抑制できる。尤も、上記するように円柱体12と外管40の内周面42の遊嵌箇所の隙間43にグリース18が介在している場合は、この注水は必ずしも必要でない。
【0066】
図5(c)に示すように、先端部材10と外管40が、帯水層G2の下方にある不透水層G3に入り、内管30の下端が接続される耐熱管20の上端が帯水層G2の下端近傍に到達した段階で、先端部材10と外管40の地盤内への挿入が完了する。
【0067】
図5(c)に示すように、先端部材10と、外管40と、耐熱管20とを有し、内管30が未だ挿入されていない管ユニット50Aも、管ユニットの一形態である。
【0068】
次に、図6(a)に示すように、所定長さの内管30を継ぎ足しながら、帯水層G2の厚みに相当する長さの内管30を形成し、内管30の上端に不飽和層G1の厚み程度の長さを有する無孔管90を接続する。そして、内管30の端部の雌ネジ32を耐熱管20の上端の雄ネジ24に螺合することにより、耐熱管20を介して内管30を先端部材10に螺合し、内管30を帯水層G2に位置決めする。この作業は、例えば、複数人の作業員が手作業により、内管30と無孔管90を把持しながら行う(以上、B工程)。
【0069】
尚、先端部材10に対して、耐熱管20の代わりに30cm程度の長さの短尺な内管30が螺合されている場合も、短尺な内管30に対して帯水層G2の厚み程度の長さの内管30が同様に螺合されることになる。
【0070】
次に、図6(b)に示すように、スピンドル106に取り付けられているチャック108を介して外管40の上端を固定し、図6(c)に示すように、フィードにより、ゆっくりと外管40を10cm以上Y3方向へ引き上げる。この際、バイブロで引き抜くと、内管30が共上がりする可能性があるため、フィードで行うのが望ましい。
【0071】
スピンドル106と外管40を分離し、無孔管90の上端の設置深度が変わっていないことをコンベックス等で確認した後、図7(a)に示すように外管40を全て引き抜くことにより、不飽和層G1に配設されている無孔管90と、帯水層G2に露出されている有孔管である内管30と、耐熱管20及び先端部材10とを備えた観測井60が地盤内に形成される(以上、C工程)。
【0072】
観測井60を所定期間供用した後、観測井60を地上に引き上げて回収する際は、図7(b)に示すように、無孔管90と内管30の内部に引き抜き管70をY4方向に挿入し、引き抜き管70の先端の第四ネジ部72を先端部材10の第三ネジ部14に接続する。
【0073】
次いで、図7(c)に示すように、スピンドル106に取り付けられているチャック108を介して無孔管90の上端を固定し、上方へY5方向に引き抜くことにより、観測井60が撤去される。
【0074】
図示例の管ユニットの設置方法によれば、A工程において、先端部材10に無孔管である外管40を遊嵌し、所定長さの外管40を順次継ぎ足しながら先端部材10を帯水層G2よりも以深の所定深度まで挿入した後、B工程において、外管40の内側に有孔管である内管30を挿入してその先端を先端部材10に直接的もしくは間接的に螺合し、C工程において、外管40を引き抜いて内管30を帯水層に露出させることにより、内管30の備える複数の孔36を目詰まりさせることなく、地盤内の帯水層G2に対して内管30をスムーズに設置することができ、地盤内に設置された内管30を、設置直後から観測井として使用することができる。
【0075】
次に、図8乃至図10を参照して、外管引き抜き後に生じる隙間の処理方法の例について説明する。
【0076】
実施形態に係る管ユニットの設置方法では、外管40を引き抜いた際に、図8に示すように内管30と無孔管90の周囲に隙間92が生じ得る。そして、地下水の有無や土質性状によっては隙間92が長期的に残存し、例えば特定の帯水層G2の監視を行うために観測井60を用いる場合に、地上部での雨水が無孔管90の表面を伝わり、さらに内管30の表面を伝って帯水層G2に過度に流入し易くなる。このことにより、内管30の周囲にある水の性状が周囲の地下水とは異なる性状を示し、この水を内管30が採取する恐れがある。そこで、外管40を引き抜いた際に無孔管90と内管30の周囲に隙間92が生じる場合は、この隙間92を閉塞することが肝要である。
【0077】
図8乃至図10の例では、地上部側に存在する不飽和層G1の周囲にある隙間92を地上部の近傍の隙間とし、この地上部の近傍の隙間92に様々な閉塞材を埋めることにより、地上部の近傍の隙間92を閉塞することとする。
【0078】
図8に示す例は、観測井60の頭部に蓋91を設置し、地上部の近傍の隙間92のうち、下方に閉塞材93の一例である珪砂(2号珪砂等)を埋め、珪砂の上に閉塞材93の他の例であるモルタル94を埋めている。この際、流動性の高いモルタル94を使用すると、モルタル94が流下して内管30のスリット36を閉塞したり、帯水層G2にモルタル94が存在することにより地下水のpHが低下したりする恐れがあることから、モルタル94の充填位置は、無孔管90の側方で、かつ、地下水位より上の位置までに限定する必要がある。尚、その他、膨潤性の止水材を適用することもできる。
【0079】
一方、図9に示す例は、地上より観測井60の頭部を低くして観測井60の頭部に蓋91を設置し、地上部に保護ピット95を設置した上で、地上部の隙間92に閉塞材93,94を埋めている。保護ピット95は、円筒形の支持材95a(鋳物製・鉄製・樹脂製等)と、支持材95aの頭部を閉塞するピット蓋95bを備えている。無孔管90の下方の隙間92を珪砂93で埋め、保護ピット95を設置し、支持材95aと無孔管90の間の隙間92にモルタル94(止水効果がある材料)を隙間無く充填することにより、保護ピット95の内部から雨水等が鉛直下方に移動しないようにする。
【0080】
図9に示す方法では、ピット蓋95bから支持材95aの内部に雨水等が流入すると常に水が溜まる状態になることから、観測井60の蓋91を止水効果が期待できるパッキンを有するネジ口蓋にすることや、ピット蓋95bの隙間から支持材95aの内部に水が浸入しないシール構造とする必要がある。また、図示を省略するが、保護ピット95の支持材95aのうち、観測井60の蓋91よりも低い位置に開口部を設けておくことにより、支持材95aの内部に流入した雨水等を保護ピット95の側方へ排出させる方法もある。この場合、側方から排出した水が地盤に浸透する過程で内管30の周囲の隙間92に入り込まないように、支持材95aの径を大きくするなどの工夫が必要である。
【0081】
一方、図10に示す例は、引き抜いた外管40(鋼管)の一部を残置することにより、不飽和層G1において無孔管90の周囲に隙間を形成させないようにしている。この場合、内管30による採水に影響がないように、残置する鋼管40の下端が常に地下水位より上になるように鋼管40の長さを調節するのがよい。
【0082】
また、図示を省略するが、外管40の引き抜き後に生じる隙間92の存在により、残置する鋼管40が下部に沈降する恐れがある場合には、外管40の上端が地表面より上になるように一時的に引き上げ、外管40の落下防止管(ネジ装着が可能で、装着する鋼管と内径は同じであり、外径が装着する鋼管より大きくなっている、もしくは外周部の複数箇所に落下防止片が溶接等されている)を装着して、バイブロドリルにて所定の深度まで押し込んで固定するのがよい。この方法は、例えば、表層に汚染地下水である第一帯水層があり、その下に不透水層があり、その下に非汚染地下水である第二帯水層があり、第二帯水層の下に不透水層がある地盤(図示せず)において、この第二帯水層に外管40を残置する場合にも適用することができる。
【0083】
[実証実験]
次に、本発明者等により実施された実証実験について説明する。この実証実験は、実地盤において、実施形態に係る管ユニットの設置方法(実施例)と、特許文献1に示す設置方法(比較例)を実施し、設置に要する時間や井戸内の清掃の要否等を検証したものである。
【0084】
図11に、実験対象である実地盤の土質柱状図を、地下水位、地盤強度(N値)とともに示す。本サイトでは、埋土(地表から1mまで)に大きな礫等が存在していたため、ケーシング削孔を行って約10cmの縦穴を造成後、外管である鋼管を打設した。また、表面に舗装が施されている場合は、コアカッター等により舗装を除去することとした。実施例と比較例の実験結果を以下の表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1より、比較例に比べて、実施例では、打設可能なN値が高く、観測井内の清掃は不要であり、地盤内における観測井の設置時間は半分の時間に短縮できることが実証されている。
【0087】
さらに考察を進めると、実施例と比較して比較例において集水能力が相対的に低下する原因として、先端コーンにて地盤を押し込みながら有孔管を打ち込む比較例の設置方法では、有孔管の周囲の土圧が高くなり、有孔管の備えるスリットに土壌(シルトや粘土分)が詰まり易くなると考えられる。
【0088】
一方、実施例も先端コーンを用いて打設を行うことから、外管の打設時には周囲の土圧が同様に高まるものの、外管を回収することで有孔管である内管と地盤との間に一時的に隙間が形成されるため、土圧を開放することができるとともに、有孔管の備えるスリットの目詰まりは生じ難くなる。また、有孔管と土壌の間の隙間については、地盤条件にもよるが、時間の経過とともに自然に埋められていくものと考えられる。
【0089】
さらに、本実験では、打設後の有孔管を回収してその状態を観察した。観察の結果、比較例の有孔管は先端コーンの周辺で変形が生じており、これ以上の深度の打設を行う場合には有孔管が破断して施工不能になる可能性があった。それに対し、実施例の有孔管は、耐熱性の塩ビ管の適用により、変形等が生じていないことが確認されている。
【0090】
このように、実施例の管ユニットの設置方法によれば、以下の効果が奏される。
【0091】
まず、短時間で恒久的に地下水を採取する有孔管を設置できる。また、設置後に井戸洗浄が不要もしくは最小限の井戸洗浄で地下水を採取することが可能になり、汚染地下水を採取する場合は、汚染地下水の発生量が少なくなることから、汚染地下水の処理が最小限となる。また、管ユニットは規格品を使用でき、複雑な装置は不要であり、施工が容易になる。
【0092】
また、管ユニットを構成する先端コーンや鋼管は、繰り返し使用でき、有孔管に関しても引抜時に破損がなければ繰り返し使用が可能である。また、作業が容易で、熟練度を必要としない。また、作業に伴い、排水(汚染地下水)や掘削土(汚染土壌)はほとんど生じない。また、小型重機で施工でき、騒音や振動も比較的小さいため、都市部などの狭隘な場所でも施工できる。
【0093】
尚、実施例に係る管ユニットの設置方法は、地下水の採取を想定した場合の有孔管の設置方法の他にも、雨水浸透管の設置や、地盤改良(地下水の排出を促進させるドレーン管の設置)などの分野でも適用が可能である。
【0094】
[他の考察]
次に、被圧帯水層に対する実施形態の管ユニットの適用可能性について考察する。図示を省略するが、考察対象地盤は、表層に汚染地下水である第一帯水層があり、その下に不透水層があり、その下に非汚染地下水である第二帯水層があり、第二帯水層の下に不透水層がある地盤である。この地盤において、被圧帯水層である第二帯水層から地下水を採取できるか否かについて考察する。
【0095】
このような地盤において、被圧帯水層である第二帯水層から地下水を採取する場合においても、実施形態に係る管ユニットを適用することにより、地下水の採取は可能である。実施形態に係る管ユニットを用いて、被圧帯水層にのみ有孔管である内管を設置して採水を行う場合、外管である鋼管を引き抜くことにより、鋼管と有孔管である内管との間に生じた隙間から帯水層間で地下水の移動が生じる可能性がある。
【0096】
特に、第一帯水層(不圧帯水層)に地下水汚染があり、汚染が生じていない第二帯水層の地下水試料を採取する場合には、鋼管を全て引き抜くと、第一帯水層の汚染地下水が内管である有孔管の隙間から第二帯水層へ移行する危険がある。
【0097】
そこで、このような場合には、打設した外管である鋼管を、第一帯水層と第二帯水層の間に残置することにより、帯水層間の地下水の移動を制限して、被圧帯水層からも安全に地下水を採取することが可能になる。
【0098】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0099】
10:先端部材
11:先端コーン
11a:上端面
11b:張り出し部(フリクションカット)
12:円柱体
12a:上端面
12b:外周面
13:第一ネジ部(雄ネジ)
13a:上端面
14:第三ネジ部(雄ネジ)
18:グリース
20:耐熱管
22:第二ネジ部(雌ネジ)
24:雄ネジ
30:内管(有孔管)
31:先端
32:雌ネジ
34:雄ネジ
36:孔(スクリーン)
40:外管(無孔管)
41:先端
42:内周面
43:隙間
45:泥溜め
50,50A:管ユニット
60:観測井
70:引き抜き管
72:第四ネジ部
80:水
90:無孔管
91:蓋
92:隙間
93:閉塞材(珪砂)
94:閉塞材(モルタル)
95:保護ピット
95a:支持材
95b:ピット蓋
100:バイブロドリル(杭施工機)
102:リーダ
104:バイブロ
106:スピンドル
108:チャック
G1:不飽和層
G2:帯水層
G3:不透水層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11