(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/1273 20230101AFI20240328BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20240328BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H04W72/1273
H04W24/04
H04B1/04 E
(21)【出願番号】P 2021041675
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】肥留川 誠之
(72)【発明者】
【氏名】戸舘 高広
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144408(JP,A)
【文献】特開2019-062425(JP,A)
【文献】特開2019-125905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 ー 99/00
H04B 7/24 ー 7/26
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局装置と、前記複数の基地局装置の制御を行う回線制御装置とを有する無線通信システムであって、
前記回線制御装置は、前記複数の基地局装置に対して、下り送信を開始するタイミングを指示する下り送信開始指示において、前記下り送信開始指示の送信タイミングから、当該回線制御装置と前記複数の基地局装置との間の最大の伝送時間を置いたタイミングを前記下り送信を開始するタイミングとして指定するものであり、
前記基地局装置は、前記指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した場合
の動作として、下り送信の出力を停止する「停波」又は前記指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行う「設定なし」のいずれかが設定され、前記下り送信開始指示を受けて、前記指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定すると、前記「停波」が設定されている場合には、当該下り送信の出力を停止
し、前記「設定なし」が設定されている場合には、前記指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行い、
前記複数の基地局装置は、前記「停波」が設定されているものと、前記「設定なし」が設定されているものを含むことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局装置と、前記複数の基地局装置の制御を行う回線制御装置とを有する無線通信システムであって、
前記回線制御装置は、前記複数の基地局装置に対して、下り送信を開始するタイミングを指示する下り送信開始指示において、前記下り送信開始指示の送信タイミングから、当該回線制御装置と前記複数の基地局装置との間の最大の伝送時間を置いたタイミングを前記下り送信を開始するタイミングとして指定するものであり、
前記基地局装置は、前記指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した場合
の動作として、他の基地局装置との干渉が発生しない程度に当該下り送信の出力を低減する「出力低減」又は前記指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行う「設定なし」のいずれかが設定され、前記下り送信開始指示を受けて、前記指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定すると、前記「出力低減」が設定されている場合には、他の基地局装置との干渉が発生しない程度に当該下り送信の出力を低減
し、前記「設定なし」が設定されている場合には、前記指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行い、
前記複数の基地局装置は、前記「出力低減」が設定されているものと、前記「設定なし」が設定されているものを含むことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
前記基地局装置は、下り送信開始指示で指定された送信タイミングフレーム番号と、当該基地局装置内部でフレーム番号をカウントするスーパーフレームカウンタから通知されるフレーム番号とが一致した場合に下り送信を開始し、前記フレーム番号が前記送信タイミングフレーム番号を上回り、特定値以上となった場合に、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定することを特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記基地局装置は、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した場合には、障害情報として表示し、または、外部に障害情報の信号を出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記回線制御装置は、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した基地局装置からその旨報知されると、障害情報として表示し、または、外部に障害情報の信号を出力することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に係り、特に回線制御装置と基地局装置との間の伝送時間が、想定を超えて長くなった場合でも、基地局装置間の相互干渉を抑制して、不感地帯の発生を防ぐことができる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
業務用無線システム等に用いられる一般的な無線通信システムの中には、複数の基地局装置が基地局間同期機能を備え、同一の運用波を用いて通信を行うものもある。
このような場合、複数の基地局装置の送信タイミングがずれると、複数の基地局装置からの到来波が重なるオーバーリーチエリアでは、相互干渉が生じて不感地帯が発生することがある。
【0003】
そのため、基地局間同期機能を使用する無線通信システムでは、複数の基地局装置からの送信開始タイミングを一致させる必要がある。
例えば、回線制御装置が各基地局装置に対して下り送信開始指示を送信し、各基地局装置は当該下り送信開始指示に含まれる送信タイミングに合わせて送信を開始することで複数の基地局の送信タイミングを一致させている。
【0004】
送信開始タイミングとしては、例えば、送信開始指示の送信タイミングに、回線制御装置と各基地局装置との間の伝送時間の最大値分を加算したタイミングを指定する。
これにより、回線制御装置からの距離の違いにかかわらず、複数の基地局の送信タイミングが一致するものである。
【0005】
[関連技術]
尚、基地局間同期機能を使用した無線通信システムに関する従来技術としては、特開2015-144408号公報「無線通信システム」(特許文献1)がある。
特許文献1には、回線制御装置が、下り送信の開始タイミングフレーム番号として、下り送信の開始指示の送信タイミングに対して当該回線制御装置と複数の基地局との間の伝送時間の最大値分の間隔を置いたフレーム番号を設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の無線通信システムでは、下り送信開始タイミングとして、回線制御装置と基地局装置との間の伝送時間の最大値を反映させたタイミングを設定しても、回線制御装置と基地局装置との間の回線障害等の影響により、想定を超えて伝送時間が長くなって、設定された下り送信開始タイミングで送信できない場合があり、オーバーリーチエリアにおいて不感地帯が生じることがあるという問題点があった。
【0008】
尚、特許文献1には、基地局装置において、回線制御装置から指定された下り送信開始タイミングでの送信開始ができない場合に、当該下り送信を停止したり、出力を低減することは記載されていない。
【0009】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、回線制御装置と基地局装置との間の伝送時間が、想定を超えて長くなった場合でも、相互干渉を抑制して不感地帯の発生を低減することができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局装置と、複数の基地局装置の制御を行う回線制御装置とを有する無線通信システムであって、回線制御装置は、複数の基地局装置に対して、下り送信を開始するタイミングを指示する下り送信開始指示において、下り送信開始指示の送信タイミングから、当該回線制御装置と複数の基地局装置との間の最大の伝送時間を置いたタイミングを下り送信を開始するタイミングとして指定するものであり、基地局装置は、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した場合の動作として、下り送信の出力を停止する「停波」又は指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行う「設定なし」のいずれかが設定され、下り送信開始指示を受けて、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定すると、「停波」が設定されている場合には、当該下り送信の出力を停止し、「設定なし」が設定されている場合には、指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行い、複数の基地局装置は、「停波」が設定されているものと、「設定なし」が設定されているものを含むことを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局装置と、複数の基地局装置の制御を行う回線制御装置とを有する無線通信システムであって、回線制御装置は、複数の基地局装置に対して、下り送信を開始するタイミングを指示する下り送信開始指示において、下り送信開始指示の送信タイミングから、当該回線制御装置と複数の基地局装置との間の最大の伝送時間を置いたタイミングを下り送信を開始するタイミングとして指定するものであり、基地局装置は、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した場合の動作として、他の基地局装置との干渉が発生しない程度に当該下り送信の出力を低減する「出力低減」又は指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行う「設定なし」のいずれかが設定され、下り送信開始指示を受けて、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定すると、「出力低減」が設定されている場合には、他の基地局装置との干渉が発生しない程度に当該下り送信の出力を低減し、「設定なし」が設定されている場合には、指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行い、複数の基地局装置は、「出力低減」が設定されているものと、「設定なし」が設定されているものを含むことを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、基地局装置は、下り送信開始指示で指定された送信タイミングフレーム番号と、当該基地局装置内部でフレーム番号をカウントするスーパーフレームカウンタから通知されるフレーム番号とが一致した場合に下り送信を開始し、フレーム番号が送信タイミングフレーム番号を上回り、特定値以上となった場合に、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定することを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、基地局装置は、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した場合には、障害情報として表示し、または、外部に障害情報の信号を出力することを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、回線制御装置は、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した基地局装置からその旨報知されると、障害情報として表示し、または、外部に障害情報の信号を出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局装置と、複数の基地局装置の制御を行う回線制御装置とを有する無線通信システムであって、回線制御装置は、複数の基地局装置に対して、下り送信を開始するタイミングを指示する下り送信開始指示において、下り送信開始指示の送信タイミングから、当該回線制御装置と複数の基地局装置との間の最大の伝送時間を置いたタイミングを下り送信を開始するタイミングとして指定するものであり、基地局装置は、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した場合の動作として、下り送信の出力を停止する「停波」又は指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行う「設定なし」のいずれかが設定され、下り送信開始指示を受けて、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定すると、「停波」が設定されている場合には、当該下り送信の出力を停止し、「設定なし」が設定されている場合には、指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行い、複数の基地局装置は、「停波」が設定されているものと、「設定なし」が設定されているものを含む無線通信システムとしているので、回線制御装置と基地局装置との間の回線障害等により、伝送時間が想定を超えて長くなってしまった場合にも、基地局間の相互干渉を防ぎ、不感地帯の発生を防ぐことができる効果がある。
【0016】
また、本発明によれば、同一周波数を用いて下り送信を行う複数の基地局装置と、複数の基地局装置の制御を行う回線制御装置とを有する無線通信システムであって、回線制御装置は、複数の基地局装置に対して、下り送信を開始するタイミングを指示する下り送信開始指示において、下り送信開始指示の送信タイミングから、当該回線制御装置と複数の基地局装置との間の最大の伝送時間を置いたタイミングを下り送信を開始するタイミングとして指定するものであり、基地局装置は、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した場合の動作として、他の基地局装置との干渉が発生しない程度に当該下り送信の出力を低減する「出力低減」又は指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行う「設定なし」のいずれかが設定され、下り送信開始指示を受けて、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定すると、「出力低減」が設定されている場合には、他の基地局装置との干渉が発生しない程度に当該下り送信の出力を低減し、「設定なし」が設定されている場合には、指定されたタイミングで下り送信を開始できる際の出力で当該下り送信を行い、複数の基地局装置は、「出力低減」が設定されているものと、「設定なし」が設定されているものを含む無線通信システムとしているので、回線制御装置と基地局装置との間の回線障害等により、伝送時間が想定を超えて長くなってしまった場合にも、基地局間の相互干渉を抑制し、不感地帯の発生を防ぐことができる効果がある。
【0017】
また、本発明によれば、上記無線通信システムにおいて、基地局装置は、下り送信開始指示で指定された送信タイミングフレーム番号と、当該基地局装置内部でフレーム番号をカウントするスーパーフレームカウンタから通知されるフレーム番号とが一致した場合に下り送信を開始し、フレーム番号が送信タイミングフレーム番号を上回り、特定値以上となった場合に、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定する無線通信システムとしているので、簡易な処理で適正な下り送信開始ができないことを判定でき、不感地帯の発生を防ぐ効果がある。
【0018】
また、本発明によれば、基地局装置は、指定されたタイミングで下り送信を開始できないと判定した場合には、障害情報として表示し、または、外部に障害情報の信号を出力する上記無線通信システムとしているので、外部に当該基地局装置が障害状態にあることを迅速に報知して早期の対応を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本無線通信システムの構成例を示す説明図である。
【
図3】回線制御装置2のフレーム生成部21におけるフレーム生成を示す説明図である。
【
図4】本無線通信システムにおける下り送信開始タイミングの設定を示す説明図である。
【
図5】基地局装置5の構成を示す概略説明図である。
【
図6】基地局装置3の下り送信制御の処理を示すフローチャートである。
【
図7】オーバーリーチエリアの状態を示す説明図である。
【
図8】本無線通信システムの運用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、複数の基地局装置が同一周波数を用いて下り送信を行うものであり、回線制御装置が、複数の基地局装置に対して下り送信開始指示を送信する際に、当該下り送信開始指示の送信タイミングに当該回線制御装置と複数の基地局装置との間の最大の伝送時間分の間隔を置いたタイミングを、各基地局装置における下り送信の開始タイミングとして指定し、基地局装置が、回線制御装置から指定された下り送信の開始タイミングで下り送信を開始できない場合には、当該下り送信の出力を停止するようにしており、回線障害等により想定を超えて伝送時間が長くなっても、複数の基地局装置のエリアが重なる位置における相互干渉を抑制し、不感地帯の発生を防ぐことができるものである。
【0021】
また、本無線通信システムは、基地局装置が、回線制御装置から指定された下り送信の開始タイミングで下り送信を開始できない場合には、当該下り送信の出力を他の基地局装置との干渉が発生しない程度に低減するようにしており、想定を超えて伝送時間が長くなっても、複数の基地局装置のエリアが重なる位置における相互干渉を抑制し、不感地帯の発生を低減すると共に、当該基地局装置の通信エリア内での通信サービスを維持することができるものである。
【0022】
[本無線通信システムの構成:
図1]
本無線通信システムの構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本無線通信システムの構成例を示す説明図である。
図1に示すように、本無線通信システムは、例えば業務用無線システムとして用いられ、指令台1-1~1-n(個々の指令台を区別しない場合には、指令台1と言うこともある)と、回線制御装置2と、複数の基地局装置3-1~3-n(単に基地局装置3と言うこともある)とを備え、複数の移動局4-1~4-n(単に移動局4と言うこともある)が、基地局装置3の通信エリア内で指令台1や他の移動局4との通信を行う。
回線制御装置2と、各基地局装置3には、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星5からのGPS信号を受信するGPSアンテナが設けられており、回線制御装置2と各基地局3、及び基地局3同士は時刻同期している。
【0023】
本無線通信システムの各部について説明する。
指令台1は、回線制御装置2に接続されており、本無線システムを制御する装置である。指令台1は、複数のシステムを統合的に監視制御することもある。また、指令台1は、移動局4と通話を行って業務に関する指示や管理を行う。
【0024】
回線制御装置2は、指令台1及び複数の基地局装置3と有線回線で接続し、本無線通信システムにおける回線制御及び呼制御を行うものである。
また、GPS衛星5からのGPSデータを捕捉することで、本システムにおける無線送信のタイミング調整を行う。
【0025】
基地局装置3は、回線制御装置2と有線接続し、移動局装置4と無線接続している。また、上述したように、GPSデータを受信して、無線送信のタイミング調整を行う。
そして、本無線通信システムでは、基地局装置3における下り送信での動作が従来とは異なっており、回線制御装置2との間の伝送時間が想定以上にかかった場合でも、不感地帯の発生を抑えるよう動作する。基地局装置3の構成及び動作については後述する。
【0026】
移動局装置4は、車載型や携帯型の無線通信端末であり、移動可能な状態での運用や、固定的に設置した状態での運用が可能である。
そして、移動局装置4は、基地局装置3のサービスエリア(通信エリア、エリア)内において当該基地局装置と無線通信を行う。
【0027】
GPS衛星5は、複数の測位衛星から時刻情報付きの信号を送信し、地上での現在の位置等を計測する一般的なGNSS(Global Navigation Satellite System: 全球測位衛星システム)による衛星である。
【0028】
[回線制御装置2の構成:
図2]
次に、本無線通信システムの回線制御装置2の構成について
図2を用いて説明する。
図2は、回線制御装置2の構成を示す説明図である。
図2に示すように回線制御装置2は、フレーム生成部21と、制御部22と、基地局インタフェース部23と、GPSアンテナ24とを備えている。なお、回線制御装置2は、上位の指令台1に接続しているが、ここでは図示は省略する。
【0029】
フレーム生成部21は、GPSモジュール211と、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)部212と、スーパーフレームカウンタ213とを備え、無線フレームを生成する。
制御部22は、CPU221を備え、回線制御装置2全体の制御を行う。
特に本無線通信システムに関する動作としては、指令台1等から下り送信の電文が入力された際に、複数の基地局3に対して下り送信開始のタイミングを指示する下り送信開始指示を送信する。
下り送信開始指示については後述する。
【0030】
基地局インタフェース部23は、基地局装置3に接続するインタフェースである。
GPSアンテナ24は、複数のGPS衛星からの信号を受信して、GPS受信信号をGPSモジュール211に出力する。
【0031】
[回線制御装置2におけるフレーム生成:
図3]
次に、回線制御装置2のフレーム生成部21におけるフレーム生成について
図3を用いて説明する。
図3は、回線制御装置2のフレーム生成部21におけるフレーム生成を示す説明図である。
図3に示すように、フレーム生成部21のGPSモジュール211は、GPSアンテナ5で受信された信号に基づいて、10MHzクロック信号と1PPS(Pulse Per Second)信号を出力する。1PPS信号は、秒を刻むタイミングを示す1秒周期の矩形波信号である。
【0032】
PLL部212は、10MHzクロック信号に基づいて、40ms毎のフレームタイミングを示す40ms信号を出力する。
スーパーフレームカウンタ213は、PLL部212から出力される40ms信号とGPSモジュール211から出力される1PPS信号とに基づいて、フレームタイミング(40ms周期)毎に、フレーム長40msの無線フレームを識別するフレーム番号を採番して制御部CPU221へ通知する。
ここで、無線フレーム18個分(720ms)で1スーパーフレームとする。
【0033】
その際に、スーパーフレームカウンタ213は、各無線フレームに、スーパーフレーム内の位置(順序)を示す“1”~“18”のフレーム番号を付与していく。フレーム番号の付与は、40ms信号の周期でインクリメント(+1)されるフレームカウンタを用いて行われる。このフレームカウンタは、スーパーフレームの切り替わり毎に初期値(本例では“1”)にリセットされる。
スーパーフレームカウンタ213で生成されたフレーム番号は、40ms周期のフレームタイミング毎に、制御部22のCPU221へ通知される。
【0034】
[送信開始タイミングの設定:
図4]
次に、回線制御装置2の制御部22による、複数の基地局装置3に対する下り送信開始タイミング(送信タイミングとすることもある)の設定について
図4を用いて説明する。
図4は、本無線通信システムにおける下り送信開始タイミングの設定を示す説明図である。
尚、
図4では、GPS受信信号から生成されるタイミング信号とフレーム生成の関係も示している。
【0035】
図4(a)に示すように、回線制御装置2のGPSモジュール211では、GPS受信信号から1PPS信号を取得して出力する。
図4(b)は、1PPS信号の1周期分(1秒間)を拡大して示している。
図4(c)に示すように、1PPS信号の1周期分(1秒間)には、40msの無線フレーム25個が含まれる。ここでは、前のスーパーフレーム(フレーム番号1~18)に続き、次のスーパーフレームのフレーム番号1~7の無線フレームが含まれている。
【0036】
そして、回線制御装置2の制御部22は、指令台1から下り送信の指示を受けると、複数の基地局装置3に対して下り送信開始のタイミングを指定する下り送信開始指示(下り送信開始電文)を送信する。
その際、制御部22は、当該下り送信開始指示を送信するタイミングに対して、少なくとも回線制御装置2と基地局装置3との間の最大の伝送時間を加算したタイミングを指定する。ここで、下り送信開始指示を送信するフレーム番号を、送信タイミング規定フレーム番号と称する。
【0037】
具体的には、制御部22は、送信タイミング規定フレーム番号に、最大の伝送時間に相当するフレーム数分の間隔を置いたフレーム番号を、複数の基地局装置3が一斉に下り送信を開始する送信タイミングフレーム番号として、下り送信開始指示に設定して送信するものである。
【0038】
図4(d)(e)の例では、回線制御装置2と複数の基地局装置3との間の最大の伝送時間は最大でも1フレーム時間(40ms)としており、回線制御装置2の制御部22が、フレーム番号1で下り送信開始指示を送信する場合(送信タイミング規定フレーム番号が「1」の場合)、当該下り送信開始指示に設定する送信タイミングフレーム番号を「3」とする。
これにより、複数の基地局装置3は、当該下り送信開始指示を受信すると、フレーム番号「3」で一斉に下り送信を開始することになる。
【0039】
[基地局装置3の構成:
図5]
次に、基地局装置3の構成について
図5を用いて説明する。
図5は、基地局装置5の構成を示す説明図である。尚、
図5では、主として下り送信の制御に関する部分について示している。
図5に示すように、基地局装置3は、フレーム生成部31と、制御部32と、無線部33と、GPSアンテナ34と、空中線共用器35と、無線アンテナ36とを備えている。
フレーム生成部31は、
図2に示した回線制御装置2のフレーム生成部21と同様に、GPSモジュール311と、PLL部312と、スーパーフレームカウンタ313とを備え、回線制御装置2と同様に、GPS受信信号に基づく1PPS及び10MHzクロック信号を用いて40msのフレームタイミング信号を生成し、スーパーフレームカウンタ313が制御部32にスーパーフレーム内のフレーム番号を通知する。
【0040】
制御部32は、CPU321を備え、基地局装置3全体の制御を行い、本無線通信システムでは、下り送信の制御が特徴となっている。
回線制御装置2と基地局装置3との間の通信が正常な場合(通常時)には、従来と同様に、制御部32は、下り送信の送信開始電文(送信タイミングフレーム番号が付与された下り送信開始指示)を受信すると、当該送信開始電文で指定された送信タイミングフレーム番号と、スーパーフレームカウンタ313から通知されたフレーム番号とを比較し、これらが一致したタイミングで下り送信を開始する。
すなわち、制御部32は、スーパーフレームカウンタ313でカウントしているフレーム番号が、送信開始電文で指定された送信タイミングフレーム番号と一致したことを契機として、下り送信の信号を無線部33に出力する。
【0041】
無線部33は、制御部32から供給された下り送信の信号を、無線周波数にアップコンバートして空中線共用器35に出力し、無線アンテナ36から無線送信させる。
ここで、下り送信の対象となるデータは、回線制御装置2を介して、下り送信の開始指示と一緒に基地局装置3へ供給する形態であってもよいし、下り送信の開始指示に先立って基地局装置3へ供給しておく形態であってもよい。すなわち、基地局装置3が下り送信開始指示を受信した際に、指定された送信タイミングフレーム番号の無線フレームで速やかに下り送信を開始できればよい。
尚、回線制御装置2からは、指令台1等からの指示がなくても、基地局装置3が制御情報を定期的に送信するための下り送信開始指示が送信されている。
【0042】
また、基地局装置3からの下り送信としては、無線チャネルで定義されるSB0(Synchronous Burst 0:装置が同期をとるためのデータ)があり、基地局装置3では下り送信の開始指示を受信した際に、送信タイミングフレーム番号に応じて送信を開始する。送信データの内容については、基地局装置3の状態に応じてRICH(Radio Information Channel)の内容が異なることから、同期を取りうる全ての基地局装置3が必ずしも同一データを送信するとは限らない。なお、データの種別は音声でもデータを含む非音声でもよい。
【0043】
[基地局装置3における下り送信の制御]
しかし、基地局装置3において、下り送信開始電文を受信した場合に、当該下り送信開始電文で指定された送信タイミングフレーム番号での送信ができないことがある。
例えば、回線制御装置2と基地局装置3との間の通信回線に障害が発生した場合等、基地局装置3が下り送信開始電文を受信するまでに想定以上の時間がかかってしまった場合には、当該電文を受信した時点で、既に送信タイミングフレーム番号を過ぎてしまっていて、適正な送信ができない。
送信タイミングが他の基地局装置3とずれてしまうと、複数の基地局装置3の通信エリアが重なるオーバーリーチエリアにおいて干渉が起こり、不感地帯が生ずる恐れがある。
【0044】
そこで、本無線通信システムの基地局装置3では、指定された送信タイミングフレーム番号での送信ができない(指定タイミングでの送信不可)と判断した場合には、当該下り送信を停波(停止)して、送信を行わないようにする。具体的には、制御部32は、下り送信データの無線部33への出力を停止する。
【0045】
もしくは、基地局装置3は、指定された送信タイミングフレーム番号での送信ができないと判断した場合には、当該下り送信の送信出力を低減するようにしてもよい。出力低減の度合いは、オーバーリーチエリアを生じない程度、つまり、当該基地局装置3の通信エリアが、隣接する基地局装置の通信エリアと重ならない程度とし、予め計算又は実験的に求められて、設定されている。
【0046】
指定タイミングでの送信不可と判定した場合に、 停波とするか、出力低減とするかは、予め各基地局装置3に設定されており、制御部32は当該設定に従って動作を行う。これは、各基地局装置3が設置されている位置等に応じて、本無線通信システムの運営事業者が任意に設定可能となっている。
尚、後述するように、システムの運用状況に応じて、指令台1や外部の上位装置からリアルタイムで設定変更を行うことも可能である。
【0047】
[基地局装置3の制御部32における処理:
図6]
次に、基地局装置3の制御部32における下り送信開始の制御に伴う処理について
図6を用いて説明する。
図6は、基地局装置3の下り送信制御の処理を示すフローチャートである。
基地局装置3の制御部32は、回線制御装置2からの下り送信開始電文を受信したかどうかを判断し(S11)、受信していない場合(Noの場合)には処理S11に戻って下り送信開始電文を待ち受ける。
【0048】
処理S11で、下り送信開始電文を受信した場合(Yesの場合)には、制御部32は、受信した下り送信開始電文から送信タイミングフレーム番号(FN1)を取得する(S12)。
そして、制御部32は、スーパーフレームカウンタ313から入力されるフレーム番号(FN2)を取得し(S13)、FN1とFN2とが一致する(FN1=FN2)かどうかを判断する(S14)。
【0049】
処理S14において、FN1とFN2とが一致した場合(Yesの場合)には、制御部32は、送信データを無線部33に出力して、通常の出力で下り送信を開始し(S15)、処理を終わる。
【0050】
処理S14でFN1とFN2が一致しなかった場合(Noの場合)、制御部32は、内部のフレームカウンタをインクリメント(+1)する(S16)。フレームカウンタは、処理S14の比較を何フレーム分行ったかをカウントするカウンタである。
そして、制御部32は、フレームカウンタの値と、予め設定されているしきい値(X)とを比較し、フレームカウンタの値がXより小さいかどうかを判断する(S17)。
Xの値としては、ここでは1スーパーフレームに相当するようX=18としている。
【0051】
処理S17で、フレームカウンタの値がXより小さい場合(Yesの場合)には、まだ下り送信開始電文の送信と同じスーパーフレーム内で、フレーム番号が送信タイミングフレーム番号となるのを待ち受けている状態であり、制御部32は、処理S13に戻ってスーパーフレームカウンタ313からのフレーム番号を取得する。
【0052】
また、処理S17で、フレームカウンタの値がXと同じか上回った場合(Noの場合)には、下り送信開始電文が送信されたスーパーフレームの次のスーパーフレームに入っている状態であり、制御部32は、指定された送信タイミングフレーム番号で通常通り送信することはできない(指定タイミングでの送信不可)と判断して、設定されている動作が停波であるか出力低減であるかを判断する(S21)。
【0053】
設定が停波である場合には、制御部32は、無線部33に下り送信データを出力せず、無線部33からの無線信号の出力を停止して、送信を行わない(S22)。
つまり、停波の場合には、当該基地局装置3は運用停止状態となる。
【0054】
また、処理S21で、設定が出力低減であった場合には、制御部32は、無線部33に対して送信出力レベルを低減するよう制御して、送信を開始させる(S23)。
この場合には、基地局装置Bからの無線信号の到達範囲は狭くなり、通信エリアが縮小されるが、運用状態を維持することは可能である。
このようにして本無線通信システムの基地局3における下り送信開始の処理が行われる。
【0055】
尚、ここでは、処理S17におけるしきい値Xの値を18としたが、任意に設定可能であり、例えばX=25(1秒間)としてもよい。
しきい値Xは、下り送信開始電文で指定された適正なタイミングからのずれの許容範囲を示しており、本無線通信システムの運用状態に応じて適宜決定される。
【0056】
尚、上述した例では、基地局装置3が、指定タイミングでの送信不可と判断した場合には、停波又は出力低減のいずれかの動作を行うようにしているが、指定タイミングでの送信不可と判断しても、通常通りの出力で送信を行うように設定する(「設定なし」と称する)ことも可能である。
これは、運用上の利便性を考慮したものであり、具体的な例は後述する。
【0057】
[オーバーリーチエリアの状態:
図7]
次に、本無線通信システムを適用した場合のオーバーリーチエリアの状態について
図7を用いて説明する。
図7は、オーバーリーチエリアの状態を示す説明図であり、(a)は、本無線通信システムを適用していない状態、(b)は、本無線通信システムにおいて送信停止(停波)を適用した状態、(c)は、本無線通信システムにおいて出力低減を適用した状態を示している。
【0058】
図7(a)に示すように、基地局装置Aの通信エリア71と、基地局装置Bの通信エリア72とが重なった領域がオーバーリーチエリア73となる。
本無線通信システムを適用していない場合、オーバーリーチエリア73では、基地局Aからの到達信号と基地局Bからの到達信号のタイミングがずれると、干渉が発生して不感状態となってしまう。
【0059】
図7(b)に示すように、基地局装置Bが、下り送信開始電文を受信しても、
図6の処理によって指定タイミングでの送信不可と判断し、停波を実施した場合には、基地局装置Bからの無線信号は出力されず、通信エリア72は存在しなくなる。
これにより、オーバーリーチエリア73もなくなり、不感地帯は発生しない。
但し、基地局装置Bのエリア内にいる移動局装置4は通信を行うことができなくなる。
【0060】
また、
図7(c)に示すように、基地局装置Bが指定タイミングでの送信不可と判断し、出力を低減して下り送信を行った場合には、基地局装置Bの通信エリア72′は元々の通信エリア72に比べて狭くなり、基地局装置Aの通信エリア71と重複しないようにして、不感地帯の発生を抑えることができる。
更に、基地局装置Bは運用状態を継続しているので、基地局装置Bのエリア内では通信可能な状態を維持できるものである。
【0061】
[本無線通信システムの運用例:
図8]
次に、本無線通信システムの運用例について
図8を用いて説明する。
図8は、本無線通信システムの運用例を示す説明図である。
図8の運用例は、オーバーリーチエリアを発生させないための構成であり、例えば本無線通信システムの基地局装置3が道路に沿って直線状に配置されている場合を想定している。
【0062】
図8の例では、基地局装置A~Eが直線状に配置されており、各基地局装置A~Eは、それぞれ通信エリア81~85をカバーしている。
本無線通信システムを適用しないで、破線で示したように、基地局装置B、Dの送信出力を低減しない場合には、隣接する基地局装置3間でオーバーリーチエリアが発生して、下り送信のタイミングがずれると、不感地帯を生ずる恐れがある。
【0063】
そこで、
図8の例では、基地局装置B、及び基地局装置Dについて出力低減の設定をしておくことにより、基地局装置B及び基地局装置Dの通信エリアを縮小して、オーバーリーチエリアの発生を防ぐことができるものである。
【0064】
上述したように、指定タイミングでの送信不可となった時に、出力停止(停波)とするか、出力低減とするかは運用事業者が任意に決定して予め各基地局装置3に設定しておく。
その際、全ての基地局装置3について「停波」を設定してしまうと、指定タイミングでの送信不可となった場合に、全ての基地局装置3が送信停止することになり、通信サービスが停止してしまう。
そこで、予め基地局装置3の配置に合わせて、個々の基地局装置3毎に、「設定なし」と「出力低減」とを適宜(例えば交互に)設定しておく必要がある。
【0065】
図8の例では、基地局装置A、C、Eについては、下り送信開始電文による指定タイミングでの送信不可と判断しても、停波や出力低減を行わないよう「設定なし」とし、基地局装置B及び基地局装置Dについては、下り送信開始電文による指定タイミングでの送信不可を判断すると、出力低減を行うように設定している。
【0066】
更に、応用例として、実情に応じて、特定の基地局装置3(例えば、基地局装置B及び基地局装置D)について常時出力低減するように設定することも可能である。常時出力低減とすることで、オーバーリーチエリアの発生そのものを常時無くすことができるものである。
【0067】
また、下り送信開始電文をトリガとするのではなく、GPS信号が受信できなくなった等の理由により、同期がとれない状態となった場合にも、同様に停波又は出力低減とするよう構成することも可能である。
具体的には、基地局装置3の制御部32において、下り送信開始電文による指定タイミングでの送信不可と判断した場合に加えて、GPS信号を受信できなくなった場合に、停波又は出力低減を実施する処理とする。
【0068】
[上位装置からの制御]
更に、上述した例では、各基地局装置3の制御部32が、自律的に判断して停波や出力低減の制御を行うようにしたが、基地局装置3が回線制御装置2からの信号が受けられない場合や、GPS信号の受信ができないといった障害発生時に、指令台1や外部装置に当該障害発生を示す障害信号を出力して障害状態にあることを報知するように構成しておき、指令台1や外部装置からの指示で、基地局装置3毎に停波や出力低減を行うよう制御することも可能である。
【0069】
このように、上位装置からの制御により停波や出力低減を行う場合には、各基地局装置3の重要度等に応じた制御を行ってもよい。
例えば、
図8において、基地局装置Cがカバーする地域が重要エリアであって通信エリアを狭めずに運用を継続したい場合、基地局装置CでGPS信号の受信ができない状態になると、指令台1等の上位装置から、基地局装置Cに隣接する基地局装置B及び基地局装置Dに対して、出力を低減して下り送信を行うよう指示を出力する。
【0070】
これにより、基地局装置Cが他の基地局装置3との同期がとれていない状態であったとしても、重要エリアでの通信を継続しつつ、オーバーリーチエリアの発生を防ぎ、不感地域を生じさせないようにすることができるものである。
【0071】
[障害発生時の基地局装置の動作]
基地局装置3において、定期的に受信している回線制御装置2からの下り送信開始電文を受信しなかった場合には、障害と判断して、自装置の障害ランプを点灯させたり、表示装置で障害情報を表示する。
また、上述したように、基地局装置3は、障害発生を検出した際に上位装置や外部装置に障害信号を出力してもよい。
【0072】
同様に、基地局装置3は、回線制御装置2からの下り送信開始電文に含まれる指定タイミングでの送信不可となって、当該下り送信を出力停止(停波)としたり、出力低減とした場合に、自装置の特定のランプを点灯させたり、表示装置でその旨表示するようにしてもよい。更に、その旨回線制御装置2や上位装置、外部装置に障害信号で報知してもよい。
これにより、当該基地局装置3では適正なタイミングでの下り送信ができなくなっていることを外部に報知することができるものである。
【0073】
更に、基地局装置3は、回線制御装置2からの下り送信開始電文を受けられない場合には、回線制御装置2に対して、その旨報告し、回線制御装置2が、装置自体の障害ランプを点灯させたり、表示装置で障害情報として表示させたり、又は外部へ障害信号を出力するよう構成してもよい。
また、回線制御装置2は、基地局装置3から停波や出力低減の報告を受けた場合にも同様に表示や障害信号の出力を行ってもよい。
これにより、基地局装置3が障害状態となった場合に、迅速に周囲や上位装置に報知することができ、速やかに復帰させるよう対応することができるものである。
【0074】
[実施の形態の効果]
本無線通信システムによれば、複数の基地局装置3が同一周波数を用いて下り送信を行うものであり、回線制御装置2が、複数の基地局装置3に対して下り送信開始指示を送信する際に、当該下り送信開始指示の送信フレームに当該回線制御装置2と複数の基地局装置3との間の最大の伝送時間分のフレーム間隔を置いたフレームを、各基地局装置における下り送信を開始する送信タイミングフレームとして指定し、基地局装置3が、回線制御装置2から指定された送信タイミングフレームに一致するフレームで下り送信を開始できない場合には、当該下り送信の出力を停止するようにしており、回線障害等により想定を超えて伝送時間が長くなっても、複数の基地局装置3のエリアが重なる位置における相互干渉を抑制し、不感地帯の発生を防ぐことができる効果がある。
【0075】
また、本無線通信システムは、複数の基地局装置3が同一周波数を用いて下り送信を行うものであり、回線制御装置2が、複数の基地局装置3に対して下り送信開始指示を送信する際に、当該下り送信開始指示の送信フレームに当該回線制御装置2と複数の基地局装置3との間の最大の伝送時間分のフレーム間隔を置いたフレームを、各基地局装置における下り送信を開始する送信タイミングフレームとして指定し、基地局装置3が、回線制御装置2から指定された送信タイミングフレームに一致するフレームで下り送信を開始できない場合には、当該下り送信の出力を他の基地局装置との干渉が発生しない程度に低減するようにしており、想定を超えて伝送時間が長くなっても、複数の基地局装置のエリアが重なる位置における相互干渉を抑制し、不感地帯の発生を低減すると共に、当該基地局装置3の通信エリア内での通信サービスを維持することができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、回線制御装置と基地局装置との間の伝送時間が想定を超えて長くなった場合でも、相互干渉を抑制して不感地帯の発生を低減することができる無線通信システムに適している。
【符号の説明】
【0077】
1…指令台、 2…回線制御装置、 3…基地局装置、 4…移動局装置、 5…GPS衛星、 21,31…フレーム生成部、 22,32…制御部、 23…基地局インタフェース部、 24,34…GPSアンテナ、 33…無線部、 35…空中線共用器、 36…無線アンテナ、 71,81…基地局装置Aの通信エリア、 72、82…基地局装置Bの通信エリア、 73…オーバーリーチエリア、 83…基地局装置Cの通信エリア、 84…基地局装置Dの通信エリア、 85…基地局装置Eの通信エリア、 211,311…GPSモジュール、 212,312…PLL部、 213,313…スーパーフレームカウンタ、 221,321…CPU