IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許-管理機制御システム及び歩行型管理機 図1
  • 特許-管理機制御システム及び歩行型管理機 図2
  • 特許-管理機制御システム及び歩行型管理機 図3
  • 特許-管理機制御システム及び歩行型管理機 図4
  • 特許-管理機制御システム及び歩行型管理機 図5
  • 特許-管理機制御システム及び歩行型管理機 図6
  • 特許-管理機制御システム及び歩行型管理機 図7
  • 特許-管理機制御システム及び歩行型管理機 図8
  • 特許-管理機制御システム及び歩行型管理機 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】管理機制御システム及び歩行型管理機
(51)【国際特許分類】
   F02N 11/10 20060101AFI20240328BHJP
   A01B 33/00 20060101ALI20240328BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20240328BHJP
   F02N 15/10 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
F02N11/10 Z
A01B33/00 Z
F02N11/08 X
F02N15/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021107661
(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公開番号】P2023005625
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】瀬崎 恵一
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-226612(JP,A)
【文献】特開2019-037211(JP,A)
【文献】特開2007-249586(JP,A)
【文献】特開2019-033673(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043100(WO,A1)
【文献】特開2003-293917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 11/00~11/14
F02N 15/00~15/10
A01B 33/00
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行型管理機のエンジンを始動可能な始動待機状態へ変更するための変更情報が入力される入力部と、
前記入力部からの前記変更情報に基づいて前記始動待機状態へ変更する制御部と、
を具備し、
前記変更情報には、
移動尾輪又は抵抗棒の少なくともいずれか一方が接地しているか否かを示す情報を含む、前記歩行型管理機の機体の姿勢に関する情報が含まれ、
前記制御部は、
前記移動尾輪又は前記抵抗棒の少なくともいずれか一方が接地していない場合に、前記歩行型管理機の一部が持ち上げられた姿勢であると判定し、前記始動待機状態への変更を行う、
管理機制御システム。
【請求項2】
前記変更情報には、
撮像部で撮像した結果が含まれ、
前記制御部は、
前記撮像部の撮像結果に人の顔が映っている場合に前記始動待機状態への変更を行う、
請求項1に記載の管理機制御システム。
【請求項3】
前記変更情報には、
前記撮像部の向きに関する情報が含まれ、
前記制御部は、
予め設定された方向を向いた前記撮像部で撮像した結果に人の顔が映っている場合に、前記始動待機状態への変更を行う、
請求項2に記載の管理機制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記撮像結果に映った人を認証した場合に、前記始動待機状態への変更を行う、
請求項2又は請求項3に記載の管理機制御システム。
【請求項5】
前記変更情報には、
利用者による操作に応じて前記歩行型管理機を動作させる操作具の操作位置が含まれ、
前記制御部は、
前記操作位置が所定の位置である場合に、前記始動待機状態への変更を行う、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の管理機制御システム。
【請求項6】
前記変更情報には、
利用者を識別する情報又は利用者が有する機器を識別する情報の少なくともいずれかが含まれる、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の管理機制御システム。
【請求項7】
前記利用者を識別する情報には、
利用者の生体情報が含まれる、
請求項6に記載の管理機制御システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の管理機制御システムを具備する歩行型管理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型管理機を制御する管理機制御システム及び歩行型管理機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者により運転可能な歩行型管理機の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、エンジンスイッチを備えた歩行型管理機が開示されている。上記特許文献1のような歩行型管理機では、エンジンスイッチの操作により誰でもエンジンを始動させることができる。この場合、子供が誤ってエンジンを始動させたり、歩行型管理機を盗んだ者により歩行型管理機が不正に使用されるおそれがある。このため、意図しない者によるエンジンの始動(誤始動)を防止する技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-18243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、エンジンの誤始動を防止することが可能な管理機制御システム及び歩行型管理機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、歩行型管理機のエンジンを始動可能な始動待機状態へ変更するための変更情報が入力される入力部と、前記入力部からの前記変更情報に基づいて前記始動待機状態へ変更する制御部と、を具備し、前記変更情報には、移動尾輪又は抵抗棒の少なくともいずれか一方が接地しているか否かを示す情報を含む、前記歩行型管理機の機体の姿勢に関する情報が含まれ、前記制御部は、前記移動尾輪又は前記抵抗棒の少なくともいずれか一方が接地していない場合に、前記歩行型管理機の一部が持ち上げられた姿勢であると判定し、前記始動待機状態への変更を行うものである。
【0008】
請求項2においては、前記変更情報には、撮像部で撮像した結果が含まれ、前記制御部は、前記撮像部の撮像結果に人の顔が映っている場合に前記始動待機状態への変更を行うものである。
【0009】
請求項3においては、前記変更情報には、前記撮像部の向きに関する情報が含まれ、前記制御部は、予め設定された方向を向いた前記撮像部で撮像した結果に人の顔が映っている場合に、前記始動待機状態への変更を行うものである。
【0010】
請求項4においては、前記制御部は、前記撮像結果に映った人を認証した場合に、前記始動待機状態への変更を行うものである。
【0014】
請求項においては、前記変更情報には、利用者による操作に応じて前記歩行型管理機を動作させる操作具の操作位置が含まれ、前記制御部は、前記操作位置が所定の位置である場合に、前記始動待機状態への変更を行うものである。
【0015】
請求項においては、前記変更情報には、利用者を識別する情報又は利用者が有する機器を識別する情報の少なくともいずれかが含まれるものである。
【0016】
請求項においては、前記利用者を識別する情報には、利用者の生体情報が含まれるものである。
【0017】
請求項においては、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の管理機制御システムを具備するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、入力部からの変更情報により始動待機状態とならなければエンジンが始動することはないため、エンジンの誤始動を防止することができる。また、機体を所定の姿勢にしなければエンジンを始動できないようにして、エンジンの誤始動を効果的に防止することができる。また、機体の一部を持ち上げられる者でなければエンジンを始動できないようにして、エンジンの誤始動を効果的に防止することができる。また、移動尾輪や抵抗棒の状態により、機体の一部が持ち上げられているのかを容易に判定することができる。
【0020】
請求項2においては、撮像部に顔が映らない者によるエンジンの始動を禁止して、エンジンの誤始動を効果的に防止することができる。
【0021】
請求項3においては、所定の方向を向いた撮像部では顔が映らない者によるエンジンの始動を禁止して、エンジンの誤始動を効果的に防止することができる。
【0022】
請求項4においては、一部の者にのみエンジンの始動を許可することができ、エンジンの誤始動を効果的に防止することができる。
【0026】
請求項においては、操作具が適切な操作位置にならなければエンジンが始動することはないため、エンジンの誤始動を効果的に防止することができる。
【0027】
請求項においては、特定の者にのみエンジンの始動を許可することができる。
【0028】
請求項においては、特定の者にのみエンジンの始動を許可することができる。
【0029】
請求項においては、エンジンの誤始動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第一実施形態に係る歩行型管理機を示した側面図。
図2】同じく、拡大平面図。
図3】制御システムの構成を概念的に示したブロック図。
図4】切替処理を示したフローチャート。
図5】人の顔を撮像した結果を示す図。
図6】第二実施形態に係る切替処理を示したフローチャート。
図7】機体を持ち上げた様子を示した模式図。
図8】第三実施形態に係る切替処理を示したフローチャート。
図9】変速案内板を撮像した結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0032】
以下では、本発明の第一実施形態に係る歩行型管理機10について説明する。
【0033】
図1及び図2に示す歩行型管理機10は、機体フレーム11、車輪12、エンジン13、燃料タンク14、ボンネット15、カバー16、ミッションケース17、ロータリ18、抵抗棒19、作業板20、クラッチ機構21、ハンドルフレーム22、ハンドル連結部23、操縦ハンドル24、ハンドル操作部25及び制御システム30等を具備する。
【0034】
機体フレーム11は、板材を適宜折り曲げて形成される部材である。機体フレーム11は、左右一対の車輪12に支持される。エンジン13は、機体フレーム11に載置される。エンジン13としては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の燃料を用いて駆動する種々のエンジンを採用可能である。燃料タンク14は、エンジン13の後方に配置される。当該エンジン13及び燃料タンク14は、ボンネット15によって覆われる。エンジン13の左側方には、エンジン13の動力をミッションケース17に伝達するクラッチ機構21を覆うカバー16が設けられる。
【0035】
ミッションケース17は、エンジン13からの動力を、車輪12や回転軸17bに伝達する変速機構17aを収容するケースである。変速機構17aは、車輪12や回転軸17bの駆動速度の変速を行う操作が可能な変速レバー17cを備える。変速レバー17cの操作位置と駆動速度の変速(変速段数)との関係は、変速案内板17dで視認することができる(図9参照)。具体的には、変速案内板17dには、変速レバー17cを案内するガイド溝が形成される。変速レバー17cは、当該ガイド溝に沿って変速操作される。利用者は、変速案内板17dのガイド溝における変速レバー17cの操作位置を視認することで、当該操作位置における変速段数を視認(確認)することができる。
【0036】
ロータリ18は、回転軸17bに固定される耕耘爪18aと、耕耘爪18aを上方から覆う耕耘カバー18bと、を具備する。耕耘カバー18bには、抵抗棒19及び作業板20が取り付けられる。
【0037】
クラッチ機構21は、エンジン13から変速機構17a(車輪12や耕耘爪18a)への動力の伝達の可否を切り替えるためのものである。本実施形態のクラッチ機構21としては、プーリに巻回されたベルトに張力(テンション)を付与することで動力を伝達可能とする、いわゆるベルトテンションクラッチを想定している。
【0038】
耕耘カバー18bの上方には、ハンドルフレーム22が配置される。ハンドルフレーム22は、操縦ハンドル24を支持するためのフレームである。ハンドルフレーム22は、後上方へ延びるように形成される。ハンドルフレーム22の後上端部には、ハンドル連結部23を介して操縦ハンドル24が取り付けられる。
【0039】
操縦ハンドル24は、利用者が歩行型管理機10を操縦するためのものである。図2に示すように、操縦ハンドル24は、平面視で略三角形状の枠(フレーム)状に形成される。操縦ハンドル24は、ハンドル連結部23から後上方へ延びるように形成される。操縦ハンドル24は、断面視で略円形状の部材を適宜折り曲げて形成される。操縦ハンドル24は、側部24a、後部24b及び横架部24cを具備する。
【0040】
図2に示す側部24aは、操縦ハンドル24の左右両側部を構成する部分である。側部24aは、ハンドル連結部23から、互いに左右方向に離間するように後方(後上方)へ延びる。
【0041】
後部24bは、操縦ハンドル24の後部を構成する部分である。後部24bは、左右の側部24aの後端部同士を連結するように左右方向に延びる。後部24bは、利用者の手指により把持される。
【0042】
横架部24cは、左右の側部24aの前後方向途中部同士を連結する部分である。横架部24cは、操縦ハンドル24の前後方向中央部よりも後方に位置するように設けられる。横架部24cを設けたことで、操縦ハンドル24を補強することができる。
【0043】
ハンドル操作部25は、歩行型管理機10の運転に関する各種の操作を行う部分である。ハンドル操作部25は、操縦ハンドル24に設けられる。ハンドル操作部25は、クラッチレバー25a、エンジンスイッチ25b、始動スイッチ25c及びスロットルレバー25dを具備する。
【0044】
クラッチレバー25aは、クラッチ機構21の作動の操作が可能なレバーである。クラッチレバー25aは、ケーブル(不図示)を介してクラッチ機構21と接続される。クラッチレバー25aは、左右の側部24aの前後方向途中部(横架部24cの後方)の間に設けられる。利用者が、クラッチレバー25aを握るように操作すれば、図1に示すようにクラッチレバー25aは、左右の側部24aに対して左側面視時計回りに回動する。また、クラッチレバー25aは、利用者が手を離せば、自動的に操作前の位置に戻る。
【0045】
エンジンスイッチ25bは、後述する始動スイッチ25cの操作によりエンジン13を始動可能な状態と、エンジン13を停止する状態と、を切り替える操作が可能なスイッチである。エンジンスイッチ25bは、適宜の回転操作により、エンジン13を始動可能とする運転位置と、エンジン13を停止する停止位置とに切り替えられる。また、エンジンスイッチ25bは、上記回転操作に加えて、押圧操作が可能とされている。エンジンスイッチ25bは、押圧操作がされることで運転位置から停止位置に切り替え可能とされている。また、エンジンスイッチ25bとしては、例えば、特定のキー(鍵)をシリンダーに差し込んだ状態で当該キーを介した操作を行うものを採用可能である。
【0046】
始動スイッチ25cは、エンジン13を始動させるためのスイッチである。始動スイッチ25cとしては、押圧操作が可能なスイッチを採用可能である。
【0047】
スロットルレバー25dは、エンジン13の出力(回転数)制御の操作が可能なレバーである。スロットルレバー25dは、レバーの操作量を検知する適宜のセンサを有する。スロットルレバー25dとしては、適宜の回転操作が可能なレバーを採用可能である。
【0048】
利用者は、エンジン13を始動させる場合に、上述の如く構成されるハンドル操作部25を操作する。具体的には、エンジンスイッチ25bを運転位置に切り替えてから始動スイッチ25cを押下する。
【0049】
ここで、仮に上述したようなハンドル操作部25の操作だけでエンジン13を始動できる場合、子供が誤ってエンジン13を始動させたり、歩行型管理機10を盗んだ者により歩行型管理機10が不正に使用されるおそれがある。そこで本実施形態では制御システム30を設けることで、ハンドル操作部25の操作だけではエンジン13を始動できないようにして、意図しない者によるエンジン13の始動(誤始動)を防止している。以下、制御システム30について説明する。
【0050】
図2及び図3に示す制御システム30は、エンジン13の誤始動を防止するためのものである。制御システム30は、端末40、取付部50、エンジン制御部60及びエンジン通信部70を具備する。
【0051】
図1から図3までに示す端末40は、利用者が所有する機器である。端末40は、各種の情報を入出力可能に構成される。端末40は、携帯可能な小型のものを採用可能である。端末40としては、例えばスマートフォン(携帯電話)を採用可能である。また、端末40としては、スマートフォンに限られず、例えばタブレット端末等の種々の端末を採用可能である。端末40は、後述する取付部50を介して、操縦ハンドル24に設けられる。端末40は、図3に示すように、マイク41、スピーカ42、カメラ43、傾きセンサ44、タッチパネル45、制御手段46及び端末通信部47を具備する。
【0052】
マイク41は、利用者の音声等の所定の音を取得可能なものである。マイク41は、端末40の前面に設けられる(図5参照)。
【0053】
スピーカ42は、音声を出力するためのものである。
【0054】
カメラ43は、所定のレンズ部(不図示)を介して画像や映像を撮像可能なものである。カメラ43は、例えば、歩行型管理機10を運転する利用者を撮像可能である(図5に示す撮像結果R参照)。カメラ43は、前面カメラ43a及び後面カメラ43bを具備する。
【0055】
図2及び図5に示す前面カメラ43aは、端末40の前面(後述するタッチパネル45側の面)に設けられるものである。
【0056】
後面カメラ43bは、端末40の後面(タッチパネル45とは反対側の面)に設けられるものである。
【0057】
図3に示す傾きセンサ44は、傾きを検知可能なものである。傾きセンサ44としては、適宜のジャイロセンサ等を採用可能である。本実施形態では、傾きセンサ44により、所定の基準方向(例えば鉛直方向)に対する端末40(前面カメラ43a及び後面カメラ43b)の傾きを検知可能な構成としている。
【0058】
タッチパネル45は、情報の入出力を行うためのものである。タッチパネル45は、所定の情報を表示することができる。また、タッチパネル45には、利用者のタッチ操作により各種情報を入力することができる。
【0059】
制御手段46は、端末40を制御するものである。制御手段46は、主としてCPU等の演算処理装置や、ストレージ(記憶装置)等により構成される。制御手段46には、マイク41が取得した音声、カメラ43(前面カメラ43a及び後面カメラ43b)の撮像結果R、傾きセンサ44が検知した傾き、タッチパネル45での操作結果等が入力される。
【0060】
端末通信部47は、制御手段46に入力された情報を無線通信可能なものである。端末通信部47は、後述するエンジン通信部70へ、制御手段46に入力された情報に関する信号を送信することができる。端末通信部47による情報の通信には、例えば「ブルートゥース(Bluetooth)」(登録商標)等の無線通信技術を採用可能である。なお、端末通信部47が用いる無線通信技術としては、上述した例に限られず、例えば赤外線通信等の種々の無線通信技術を採用可能である。また端末通信部47は、エンジン通信部70と情報をやりとり可能となるように、有線でエンジン通信部70と接続されてもよい。
【0061】
図1及び図2に示す取付部50は、端末40を取り付け可能なものである。取付部50は、操縦ハンドル24に設けられる。本実施形態では、取付部50を、横架部24cの左右方向中央部に設けた例を示している。取付部50は、端末40を着脱可能に取り付けることができる。取付部50による端末40の取付態様としては、例えば、適宜のアームで端末40の側部を挟むようにして端末40を取り付ける態様を採用可能である。また、例えば、磁石を用いて端末40を取り付ける態様や、適宜のベルト(バンド)等で端末40を取り付ける態様も採用可能である。
【0062】
取付部50は、端末40の前面が後方(後上方)を向いた姿勢で、端末40を取り付けることができる。これにより、取付部50に取り付けられた端末40のタッチパネル45を、歩行型管理機10を運転する利用者の方へ向けることができる。この状態では、前面カメラ43aにより後上方の景色を撮像することができる。また、後面カメラ43bにより前下方の景色を撮像することができる。本実施形態では、後面カメラ43bにより変速案内板17dを撮像することができる(図9参照)。
【0063】
図3に示すエンジン制御部60は、所定の情報に基づいて、エンジン13の始動や停止、駆動速度の変更等の制御が可能なものである。エンジン制御部60としては、適宜のエンジンコントロールユニット(エンジンコントロールモジュール)を採用可能である。エンジン制御部60は、エンジンスイッチ25b、始動スイッチ25c及びスロットルレバー25dと電気的に接続されており、エンジンスイッチ25b、始動スイッチ25c及びスロットルレバー25dの操作に基づいて、エンジン13の動作の制御を行うことができる。
【0064】
上述の如く構成されるエンジン制御部60は、歩行型管理機10に設けられた適宜のバッテリーの電力を用いて動作可能である。また、エンジン制御部60は、エンジンスイッチ25bが運転位置へ切り替えられた場合に、前記バッテリーから電力供給を受けて動作する。
【0065】
エンジン通信部70は、種々の情報を無線通信可能なものである。エンジン通信部70は、エンジン13の外部に設けられた機器(例えば端末40)との間で情報を送受信することができる。エンジン通信部70による情報の通信には、端末40の端末通信部47と同様、種々の無線通信技術を採用可能である。エンジン通信部70は、エンジン制御部60と情報をやりとり可能なように(有線又は無線を問わず)電気的に接続される。
【0066】
エンジン制御部60及びエンジン通信部70は、エンジン13に一体的に設けられる。本実施形態に係るエンジン13によれば、エンジン13、エンジン制御部60及びエンジン通信部70を一体的に取り扱うことができ、エンジン13の組付けや交換の際の作業性を向上させることができる。
【0067】
またエンジン制御部60は、エンジン通信部70を介して端末40から入力される情報に基づいて、始動禁止状態から始動待機状態への切り替え(変更)を行うことができる。
【0068】
始動禁止状態は、ハンドル操作部25を操作してもエンジン13を始動不能な状態である。始動禁止状態では、エンジンスイッチ25bが運転位置に切り替えられた状態で始動スイッチ25cが操作(押下)されてもエンジン制御部60からセルモータ(不図示)や点火プラグ(不図示)へ信号が送信されない。したがって始動禁止状態では、ハンドル操作部25を操作してもエンジン13が始動することはない。
【0069】
始動待機状態は、ハンドル操作部25の操作によりエンジン13を始動可能な状態である。始動待機状態では、エンジンスイッチ25bが運転位置に切り替えられた状態で始動スイッチ25cが操作されると、エンジン制御部60からセルモータや点火プラグへ信号が送信されて当該セルモータ等が動作する。こうして始動待機状態では、ハンドル操作部25の操作によりエンジン13が始動する。
【0070】
本実施形態では、エンジン13が停止すると始動禁止状態に切り替えられる。したがって本実施形態では、ハンドル操作部25を操作する前に始動禁止状態から始動待機状態へ切り替えなければ、エンジン13を始動できないようになっている。本実施形態のエンジン制御部60は、始動待機状態へ切り替えるための切替処理を実行可能に構成される。以下では、図4及び図5を用いて、切替処理の内容について説明する。
【0071】
切替処理は、端末40で適宜の操作が行われたことを契機に実行される。例えば、利用者によるタッチパネル45の操作により、切替処理を実行するアプリが端末40で起動されたことを契機に実行される。切替処理が実行されると、エンジン制御部60はステップS10へ移行する。
【0072】
ステップS10においてエンジン制御部60は、利用者を認証する。より詳細にはエンジン制御部60は、エンジン13を始動しようとしている者が、当該エンジン13の始動を許可された者であるのかを判定する。エンジン制御部60には、利用者を認証可能な情報が予め記憶される。具体的には、利用者の声に関する情報(声の特徴)が記憶される。以下、ステップS10での認証について具体的に説明する。
【0073】
ステップS10においてエンジン制御部60は、端末40(制御手段46)に対して利用者の声を録音した音声データを要求する。端末40は、当該要求に基づいて利用者に声を発することを促すメッセージを報知する。例えば、所定のメッセージ(「始動と言って下さい」等)をタッチパネル45に表示させたり、当該メッセージをスピーカ42から音声により出力する。端末40は、当該報知を受けた利用者により(報知後に)マイク41で音声が録音されると、音声データをエンジン制御部60へ送信する。エンジン制御部60は、端末40からの音声データと予め記憶された情報(声の特徴)とを照合することで利用者を声紋認証する。エンジン制御部60は、利用者を認証した場合に(ステップS10:YES)、ステップS20へ移行する。一方エンジン制御部60は、利用者を認証できなかった場合に(ステップS10:NO)、切替処理を終了する。
【0074】
ステップS20においてエンジン制御部60は、端末40の前面カメラ43aで利用者の顔が撮像されたか否かを判定する。具体的には、エンジン制御部60は、端末40へ前面カメラ43aでの撮像結果Rを要求する。端末40は、当該要求に基づいて前面カメラ43aを起動させ、利用者に顔を撮像することを促すメッセージを報知する。端末40は、当該報知を受けた利用者により(報知後に)前面カメラ43aでの撮像が行われると、撮像結果Rをエンジン制御部60へ送信する。エンジン制御部60は、当該撮像結果Rを解析し、人の顔が映っていた場合に(図5参照、ステップS20:YES)、ステップS30へ移行する。一方エンジン制御部60は、人の顔が映っていなかった場合に(ステップS20:NO)、切替処理を終了する。
【0075】
ステップS30においてエンジン制御部60は、ステップS20における顔の撮像が、適切な方向を向いた前面カメラ43aで行われたものであるか否かを判定する。具体的には、エンジン制御部60は、撮像時に端末40が取付部50に取り付けられていたか否か(設置状態)を判定する。エンジン制御部60には、このような端末40の設置状態を判定するための情報が予め記憶される。具体的には、エンジン制御部60には、取付部50に正常に取り付けられた際の端末40の傾斜角度(傾き)が予め記憶される。エンジン制御部60は、この記憶された傾斜角度と実際の端末40の傾斜角度とを比較することで、端末40が正常に取り付けられていたか判定することができる。
【0076】
具体的には、ステップS30においてエンジン制御部60は、端末40へ傾きセンサ44の検出結果(ステップS20で顔を撮像した際の端末40の傾斜角度)を要求し、当該端末40から検出結果を取得する。エンジン制御部60は、当該検出結果と予め記憶された傾斜角度とを比較し、端末40が取付部50に取り付けられていたと判定した場合に(ステップS30:YES)、ステップS40へ移行する。一方エンジン制御部60は、端末40が取付部50に取り付けられてなかったと判定した場合に(ステップS30:NO)、切替処理を終了する。こうしてエンジン制御部60は、後上方を向いた前面カメラ43aで人の顔が撮像された場合に、ステップS40へ移行する。
【0077】
ステップS40においてエンジン制御部60は、始動待機状態へ切り替える。エンジン制御部60は、ステップS40の処理が終了すると、切替処理を終了する。
【0078】
本実施形態では、上記切替処理により始動待機状態へ変更するための変更情報(人の顔が映った撮像結果R等)が端末40からエンジン制御部60へ送信されなければ、始動待機状態へ切り替えられることはない(ステップS10~S40)。このような構成により、ハンドル操作部25の操作だけではエンジン13を始動できないようにして、意図しない者(例えば、子供等)によるエンジン13の誤始動を防止することができる。なお、本実施形態における変更情報には、ステップS10で利用者の声を録音した音声データ、ステップS20で人の顔を撮像した撮像結果R及びステップS30での傾きセンサ44の検出結果が含まれる。
【0079】
また、エンジン制御部60は、利用者を認証することで(ステップS10)、特定の者(エンジン13の始動を許可された者)でなければ始動待機状態へ切り替えられないようにすることができる。これにより、エンジン13の誤始動を効果的に防止することができる。また、万が一歩行型管理機10が盗難された場合に、当該歩行型管理機10の使用を禁止することができる。これにより、歩行型管理機10を盗む意欲をそいで盗難の発生を未然に防ぐことができる。
【0080】
また、エンジン制御部60は、後上方を向いた前面カメラ43aで人の顔が撮像された場合に(ステップS20:YES、ステップS30:YES)、始動待機状態へ切り替える(ステップS40)。このように、前面カメラ43aが後上方を向くと、端末40の後下方の景色が前面カメラ43aに映らなくなり、背の低い者、例えば子供による始動待機状態への切り替えを禁止することができる。これにより、エンジン13の誤始動を効果的に防止することができる。
【0081】
以上の如く、本実施形態に係る制御システム30(管理機制御システム)は、歩行型管理機10のエンジン13を始動可能な始動待機状態へ変更するための変更情報(本実施形態ではマイク41の取得結果、前面カメラ43aの撮像結果R及び傾きセンサ44の検出結果)が入力される制御手段46(入力部)と、前記制御手段46からの前記変更情報に基づいて前記始動待機状態へ変更するエンジン制御部60(制御部)と、を具備するものである。
【0082】
このように構成することにより、制御手段46からの変更情報により始動待機状態とならなければエンジン13が始動することはないため、エンジン13の誤始動を防止することができる。
【0083】
また、前記変更情報には、前面カメラ43a(撮像部)で撮像した結果が含まれ、前記エンジン制御部60は、前記前面カメラ43aの撮像結果Rに人の顔が映っている場合に(ステップS20:YES)前記始動待機状態への変更を行うものである(ステップS40)。
【0084】
このように、人の顔を映さなければエンジン13を始動できないようにすることで、エンジン13の誤始動を効果的に防止することができる。
【0085】
また、前記変更情報には、前記前面カメラ43aの向きに関する情報(傾きセンサ44の検出結果)が含まれ、前記エンジン制御部60は、予め設定された方向(後上方)を向いた前記前面カメラ43aで撮像した結果に人の顔が映っている場合に(ステップS20:YES、ステップS30:YES)、前記始動待機状態への変更を行うものである(ステップS40)。
【0086】
このように構成することにより、エンジン13の誤始動を効果的に防止することができる。
【0087】
また、前記変更情報には、利用者を識別する情報又は利用者が有する機器を識別する情報の少なくともいずれか(本実施形態では、ステップS10で利用者を識別するための声に関する情報)が含まれるものである。
【0088】
このように構成することにより、特定の者(例えば、歩行型管理機10の所有者)にのみエンジン13の始動を許可することができる。
【0089】
また、前記利用者を識別する情報には、利用者の生体情報(本実施形態では声に関する情報)が含まれるものである。
【0090】
このように構成することにより、特定の者にのみエンジン13の始動を許可することができる。
【0091】
また、以上の如く、本実施形態に係る歩行型管理機10は、前記制御システム30を具備するものである。
【0092】
このように構成することにより、エンジン13の誤始動を防止することができる。
【0093】
なお、本実施形態に係る制御システム30は、本発明に係る管理機制御システムの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御手段46は、本発明に係る入力部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るエンジン制御部60は、本発明に係る制御部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る前面カメラ43aは、本発明に係る撮像部の実施の一形態である。
【0094】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0095】
例えば、本実施形態では、声紋認証により利用者が認証されるものとしたが(ステップS10)、声紋認証以外の認証で利用者を認証してもよい。例えば指紋認証や静脈認証等で利用者を認証してもよい。こうした声以外の利用者の生体情報(指紋や静脈等の情報)で利用者を認証することでも、エンジン13の誤始動を効果的に防止することができる。
【0096】
また、利用者の認証には、必ずしも生体情報を用いる必要はない。例えば、歩行型管理機10の製造メーカから利用者へ特定の情報(例えば、パスワードやバーコード等)を送付し、当該情報を利用者が端末40へ入力することで、利用者を認証してもよい。さらに利用者による利用の開始後、利便性の向上のため、特定の情報を利用者により任意に設定された情報に変更可能としてもよい。端末40へ入力する方法としては、例えばタッチパネル45にキーボードを表示させてパスワードを入力する方法や、カメラ43を起動させてバーコードを撮像する方法等がある。
【0097】
また、ステップS10は、利用者の所有物が認証されることで、間接的に利用者の認証が行われるものでもよい。この場合の所有物としては、機器(端末40や端末40以外の機器)等がある。エンジン制御部60は、例えばMACアドレスや電話番号等により機器の認証を行うことができる。このように機器の認証を行う場合には、利用者による情報の入力を省略し、ステップS10における認証を速やかに行うことができる。
【0098】
また、切替処理では、上記利用者又は所有物のいずれか一方だけの認証が行われるのではなく、利用者及び所有物の認証がそれぞれ行われてもよい。
【0099】
また、ステップS30では、端末40の傾き(傾きセンサ44の検出結果)により端末40の設置状態が判定されるものとしたが、設置状態の判定に用いられる情報は端末40の傾きに限定されるものではなく、種々の手段を用いて設置状態を判定可能である。例えば、取付部50に端末40との接触を検出する接触センサを設け、当該検出結果を用いて端末40の設置状態を判定してもよい。また、例えばカメラ43の撮像結果Rに基づいて設置状態を判定してもよい。
【0100】
具体的には、取付部50に端末40が設置された状態でカメラ43の撮像を行うと、当該撮像結果Rに歩行型管理機10の特定の部材が映ることが想定される。例えば、前面カメラ43aで撮像すると、端末40の後上方に配置されるクラッチレバー25a(図1参照)等が映ることが想定される。そこでエンジン制御部60は、カメラ43の撮像結果Rを解析してクラッチレバー25aが映っているか否かを判定することで、端末40の設置状態を判定することができる。
【0101】
また、ステップS30では、人の顔が撮像された際の前面カメラ43aの向きが適切であるのかが判定されるものとしたが、当該判定における前面カメラ43aの向きは、本実施形態のような後上方に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0102】
また、切替処理は、カメラ43で撮像された人がさらに認証されるものであってもよい。例えば、エンジン制御部60は、撮像結果Rに人の顔が映っていた場合に(ステップS20:YES)、当該撮像結果Rに映った顔の特徴(目や口や鼻の位置等)を抽出し、予め記憶された利用者の顔の特徴と照合する。こうしてエンジン制御部60は、撮像結果Rに映った人を顔認証し、始動待機状態への切り替えを行ってもよい。
【0103】
このように、前記エンジン制御部60は、前記撮像結果Rに映った人を認証した場合に、前記始動待機状態への変更を行うものである。
【0104】
このように構成することにより、一部の者(例えば、歩行型管理機10の購入者)にのみエンジン13の始動を許可することができ、エンジン13の誤始動を効果的に防止することができる。
【0105】
次に、図6及び図7を用いて第二実施形態に係る歩行型管理機10について説明する。
【0106】
第二実施形態の歩行型管理機10は、切替処理の中で機体の姿勢を判定する点で、第一実施形態と相違する。以下、具体的に説明する。
【0107】
第二実施形態のエンジン制御部60は、機体の姿勢を検出することができる。具体的には、図7に示すように、機体の後部を上下に揺動させると、前後方向(水平なラインL)に対する機体の傾斜角度θが変化する。当該変化に応じて端末40の傾きセンサ44(図3参照)の検出結果も変化する。エンジン制御部60は、このような機体の傾斜角度θを、傾きセンサ44の検出結果から算出することで、機体の姿勢を検出することができる。
【0108】
以下では、第二実施形態の切替処理の内容について説明する。図6に示すように、エンジン制御部60は、切替処理の実行を開始するとステップS10へ移行し、利用者を認証する。
【0109】
ステップS120においてエンジン制御部60は、機体の後部が持ち上げられているか否か判定する。具体的には、エンジン制御部60は、端末40へ傾きセンサ44の検出結果を要求し、当該端末40から検出結果を取得する。エンジン制御部60は、当該検出結果から機体の傾斜角度θを算出し、当該算出結果と予め記憶された閾値とを比較する。なお、閾値には、歩行型管理機10の寸法や重量等を考慮して適宜の値が設定される。エンジン制御部60は、所定の微小時間(例えば0.1秒~1秒)ごとに、このような傾斜角度θ及び閾値の比較を行う。そしてエンジン制御部60は、予め設定された設定時間(前記微小時間よりも長い時間)内に傾斜角度θが閾値以上となった場合に機体が持ち上げられていると判定し(ステップS120:YES)、ステップS40へ移行する。一方エンジン制御部60は、前記設定時間内に傾斜角度θが閾値以上とならなかった場合に(ステップS120:NO)、切替処理を終了する。
【0110】
このように、第二実施形態では、機体が持ち上げられているかを判定することで(ステップS120)、歩行型管理機10の姿勢を変えられる程度に腕力がある者(例えば、大人)でなければエンジン13を始動できないようにすることができる。これにより、エンジン13の誤始動を効果的に防止することができる。
【0111】
なお、端末40は、ステップS120でエンジン制御部60からの要求があった場合に、機体を持ち上げることを指示するメッセージを報知してもよい。これにより、ステップS120における判定をスムーズに行うことができる。
【0112】
以上の如く、前記変更情報には、歩行型管理機10の機体の姿勢に関する情報(機体が所定の姿勢であるかを判定可能な情報、本実施形態では機体の傾斜角度θ)が含まれるものである。
【0113】
このように構成することにより、エンジン13の誤始動(例えば、子供等による誤始動)を効果的に防止することができる。
【0114】
また、前記制御部は、前記歩行型管理機10の一部が持ち上げられた姿勢である場合に(ステップS120:YES)、前記始動待機状態への変更を行うものである(ステップS40)。
【0115】
このように構成することにより、エンジン13の誤始動(例えば、子供等による誤始動)を効果的に防止することができる。
【0116】
以上、本発明の第二実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0117】
例えば、本実施形態では、機体の傾斜角度θにより機体の姿勢が判定されるものとしたが、機体の姿勢の判定に用いられる情報は、傾斜角度θに限定されるものではなく、種々の情報を用いて機体の姿勢を判定可能である。例えば、機体の後部に配置される部材の接地状態を判定するセンサの検出結果を用いて機体の姿勢を判定してもよい。例えば図7に示す抵抗棒19は、機体が持ち上げられていない場合に接地して、荷重(機体の自重)を受ける。そこで、当該抵抗棒19の荷重を検出可能なひずみゲージ(センサ)を設け、当該ひずみゲージの検出結果に基づいて抵抗棒19が接地していないと判定した場合に、機体が持ち上げられたと判定してもよい。また、歩行型管理機10の後部には、移動のための移動尾輪(不図示)が取り付けられる場合がある。そこで、当該移動尾輪が接地したことを検出可能なセンサを設け、当該センサの検出結果に基づいて抵抗棒19が接地していないと判定した場合に、機体が持ち上げられたと判定してもよい。また、抵抗棒19及び移動尾輪がそれぞれ取り付けられる場合には、抵抗棒19又は移動尾輪のいずれかが接地していないと判定した場合に、機体が持ち上げられたと判定してもよい。
【0118】
以上の如く、前記姿勢に関する情報には、移動尾輪又は抵抗棒19の少なくともいずれか一方が接地しているか否かを示す情報が含まれ、前記エンジン制御部60は、前記移動尾輪又は前記抵抗棒19の少なくともいずれか一方が接地していない場合に、前記歩行型管理機10の一部が持ち上げられた姿勢であると判定するものである。
【0119】
このように構成することにより、移動尾輪や抵抗棒19の状態(接地しているか否か)により、機体の一部が持ち上げられているのかを容易に判定することができる。
【0120】
また、本実施形態では、機体が接地された場合に始動待機状態への切り替えが禁止されると共に、機体が持ち上げられた場合に始動待機状態への切り替えが許容されるものとしたが(ステップS120・S40)、始動待機状態の切り替えと機体の姿勢との関係は、特に限定されるものではない。例えば、機体が持ち上げられた場合に始動待機状態への切り替えが禁止されると共に、機体が接地された場合に始動待機状態へ切り替えが許容されるものでもよい。このような構成とすることで、機体の姿勢を安定させた状態でエンジン13を始動させることができる。
【0121】
次に、図8及び図9を用いて第三実施形態に係る歩行型管理機10について説明する。
【0122】
第三実施形態の歩行型管理機10は、切替処理の中で変速レバー17cの操作位置を判定する点で、第一実施形態と相違する。以下、具体的に説明する。
【0123】
まず、変速レバー17cの操作位置について簡単に説明する。図9に示す変速レバー17cが「前進1」又は「前進2」の位置に操作された場合に、車輪12を正転させて歩行型管理機10を前進させることができる。また、変速レバー17cが「後進」の位置に操作された場合に、車輪12を逆回転させて歩行型管理機10を後進させることができる。また、変速レバー17cが「作業」の位置に操作された場合に、耕耘爪18a及び車輪12を回転させ、耕耘作業を行うことができる。また、変速レバー17cが「中立」の位置に操作された場合に、耕耘爪18a及び車輪12への動力伝達が遮断される。
【0124】
変速案内板17dは、上述のような変速レバー17cの変速段数を表示する。後面カメラ43bは、端末40が歩行型管理機10に設置された場合に当該変速案内板17dを撮像する。第三実施形態のエンジン制御部60は、当該変速案内板17dの撮像結果Rを解析することで、変速レバー17cの操作位置を検出することができる。具体的には、変速レバー17cが上記「前進1」や「中立」等のうち、どの位置に操作されているのかを検出することができる。
【0125】
次に、第三実施形態の切替処理の内容について説明する。図8に示すように、エンジン制御部60は、切替処理の実行を開始するとステップS10へ移行し、利用者を認証する。
【0126】
ステップS220においてエンジン制御部60は、図9に示す後面カメラ43bの撮像結果Rに基づいて、変速レバー17cの操作位置が「中立」の位置であるか否かを判定する。
【0127】
具体的には、ステップS220においてエンジン制御部60は、端末40へ後面カメラ43bでの撮像結果Rを要求し、当該端末40から撮像結果Rを取得する。エンジン制御部60は、当該撮像結果Rを解析して変速レバー17cの操作位置を検出し、変速レバー17cの操作位置が「中立」の位置である場合に(ステップS220:YES)、ステップS40へ移行する。一方エンジン制御部60は、変速レバー17cの操作位置が「中立」の位置でない場合に(ステップS220:NO)、切替処理を終了する。
【0128】
このように、第三実施形態では、変速レバー17cの操作位置を判定することで(ステップS220)、変速レバー17cを適切に操作できる者にエンジン13の始動を許可することができる。これにより、エンジン13の誤始動を効果的に防止できる。また、変速レバー17cが適切な位置(「中立」の位置)に操作された状態でエンジン13を始動させることができる。
【0129】
以上の如く、前記変更情報には、利用者による操作に応じて歩行型管理機10を動作させる変速レバー17c(操作具)の操作位置が含まれ、前記エンジン制御部60は、前記操作位置が所定の位置である場合に、前記始動待機状態への変更を行うものである。
【0130】
このように構成することにより、エンジン13の誤始動を防止することができる。
【0131】
なお、本実施形態に係る変速レバー17cは、本発明に係る操作具の実施の一形態である。
【0132】
以上、本発明の第三実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0133】
例えば、本実施形態では、変速レバー17cが「中立」の位置にある場合に始動待機状態へ切り替えられるものとしたが(ステップS220・S40)、変速レバー17cの操作位置は特に限定されるものではなく、任意に決定可能である。すなわち、「中立」以外の位置にある場合に始動待機状態へ切り替えられてもよい。
【0134】
また、本実施形態では、撮像結果Rにより変速レバー17cの操作位置が判定されるものとしたが、操作位置の判定に用いられる情報は、撮像結果Rに限定されるものではない。すなわち、種々の方法によって変速レバー17cの操作位置を判定することができる。例えば、接触センサや非接触センサ等、種々のセンサからの検出結果を用いて変速レバー17cの操作位置を判定することも可能である。
【0135】
また、本実施形態では、変速レバー17cの操作位置が判定されるものとしたが、操作位置を判定する操作具は、歩行型管理機10を動作させるものであれば、変速レバー17cに限定されるものではない。例えば、クラッチレバー25aや歩行型管理機10を停止させるための緊急停止スイッチ(不図示)や吸気中の燃料比率を調整するチョーク等の操作位置が判定されてもよい。また、操作位置が判定される操作具の個数は1つである必要はなく、複数であってもよい。
【0136】
また、上記各実施形態における歩行型管理機10の態様は限られない。例えば、歩行型の除雪機や芝刈り機や草刈り機等であってもよい。
【0137】
また、上記各実施形態では、取付部50を操縦ハンドル24に設けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば側部24a上に設けてもよいし、エンジン13、燃料タンク14、ボンネット15等に設けてもよい。
【0138】
また、上記各実施形態では、エンジン制御部60及びエンジン通信部70を、エンジン13に一体的に設けた例を示したが、このような態様に限られない。例えば、エンジン制御部60及びエンジン通信部70を、エンジン13と別体に設けるようにしてもよい。
【0139】
また、上記各実施形態では、エンジン13からの動力で歩行型管理機10が動作される例を示したが、このような態様に限られない。例えば、電気を用いて駆動するモータで歩行型管理機10が動作されるものでもよい。
【0140】
また、上記各実施形態では、始動待機状態へ切り替えるための情報(顔の撮像結果R等)が端末40を介してエンジン制御部60へ入力されるものとしたが、当該情報を入力する手段は、特に限定されるものではない。すなわち、種々の手段を用いてエンジン制御部60へ情報を入力することができる。例えば、エンジン制御部60と一体的に設けられた機器(タッチパネルやテンキー等)によりエンジン制御部60へ情報が入力されてもよい。また、利用者が携帯可能な端末40に限らず、携帯不能な各種機器(例えば、歩行型管理機10に備え付けられた機器や、デスクトップPC等)により、エンジン制御部60へ情報が入力されてもよい。
【0141】
また、上記各実施形態では、始動待機状態への切り替えがエンジン制御部60により行われるものとしたが、始動待機状態へ切り替える機器(本発明に係る制御部)は、エンジン制御部60に限定されるものではなく、他の機器であってもよい。例えば、端末40の制御手段46等であってもよい。また、始動待機状態への切り換えのための各種処理(ステップ)を、複数の機器(例えば端末40及びエンジン制御部60等)で分担して行うことも可能である。
【0142】
また、切替処理は、制御手段46からの情報に基づいて始動待機状態へ切り替えるものであればよく、上記各実施形態における切替処理(図4図6及び図8)の内容に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態で例示した各種処理(各ステップにおける処理等)を適宜組み合わせて、切替処理の内容を任意に変更することも可能である。また、切替処理では、複数の判定処理が行われるのではなく、いずれか1つの判定処理(例えば、利用者の認証(ステップS10))だけが行われてもよい。
【符号の説明】
【0143】
10 歩行型管理機
13 エンジン
30 制御システム(管理機制御システム)
46 制御手段(入力部)
60 エンジン制御部(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9