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特許7461913磁気共鳴イメージング装置およびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
A61B5/055 370
A61B5/055 372
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021127670
(22)【出願日】2021-08-03
(65)【公開番号】P2023022669
(43)【公開日】2023-02-15
【審査請求日】2023-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄司 博樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 公輔
(72)【発明者】
【氏名】花田 光
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0110145(US,A1)
【文献】特開2009-279238(JP,A)
【文献】特開2020-130867(JP,A)
【文献】特開2021-029777(JP,A)
【文献】特開2020-039869(JP,A)
【文献】国際公開第2008/111416(WO,A1)
【文献】特表2017-505697(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043010(WO,A1)
【文献】特開2008-067931(JP,A)
【文献】特開2018-033691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の核磁気共鳴信号を計測する計測部と、前記計測部が計測した核磁気共鳴信号を用いて画像を生成する演算部と、前記計測部及び前記演算部の動作を制御する制御部と、前記被検体から物理的に離間して配置され、前記被検体の体動を検出するセンシング部からの体動検出結果を入力し、体動の空間的特性および時間的特性を解析する体動解析部とを備え、
前記制御部は、前記体動解析部が解析した体動情報を用いて、前記計測部及び前記演算部の処理の変更の要否を判断する処理判断部を備え、
前記処理判断部は、
前記体動情報を用いて、前記計測部が計測した核磁気共鳴信号からなるk空間データから除外すべき核磁気共鳴信号を特定し、
前記特定した除外すべき核磁気共鳴信号を除外した場合の間引き率と前記計測部に設定された間引き率との合計間引き率をもとに前記計測部による再計測の要否を判断し、
再計測不要の場合に、前記特定した除外すべき核磁気共鳴信号とそれを除いた後に残るk空間上の信号との関係を用いて、前記演算部による再構成手法を異ならせることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記体動解析部は、コンピュータビジョンの体動解析アルゴリズムを用いて、体動の空間的特性および時間的特性を体動情報として出力するものであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記処理判断部は、前記除外すべき核磁気共鳴信号の近傍に、除外されずに残った核磁気共鳴信号がない場合に、前記演算部の体動補正処理を画像空間の補正処理とし、ある場合に、計測空間の補正処理とすることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記処理判断部は、所定の体動があったときのデータを体動データとして特定し、当該体動データのk空間上の位置及び当該体動データを除外した場合の間引き率が前記演算部による画像再構成可能な値か否かを判定し、前記除外すべきデータを特定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記計測部は、所定の倍速率で核磁気共鳴信号の計測を行い、前記演算部は、アンダーサンプリングされた核磁気共鳴信号を用いて画像再構成するものであり、
前記処理判断部は、前記除外すべき核磁気共鳴信号を除外したときの間引き率と、前記所定の倍速率で決まる間引き率との合計間引き率が、前記演算部による画像再構成可能な値か否かを判定し、前記除外すべき核磁気共鳴信号を特定することを特徴する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記演算部は、前記除外すべき核磁気共鳴信号を除外した後の間引き率と、前記所定の倍速率で決まる間引き率との合計間引き率で、画像再構成を行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記演算部は、前記所定の倍速率で決まる間引き率を用いた画像再構成と、前記除外すべき核磁気共鳴信号を除外した後の間引き率を用いた画像再構成と、を独立して行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記処理判断部は、k空間の領域によって、核磁気共鳴信号を除外する規則を異ならせることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記処理判断部は、前記除外すべき核磁気共鳴信号が、k空間の低域データか高域データかを判別し、判別結果に基づき、再計測の要否を判定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記処理判断部は、前記計測部によるプリスキャンの際に、前記体動解析部からの体動情報を取得し、当該体動情報に基づき、前記プリスキャンに連続して実行される本スキャンの、計測方法を制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項10に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記処理判断部は、前記プリスキャンの際に取得した体動情報において、体動の頻度が高い場合、前記本スキャンの計測方法を非カルテジアン計測に変更することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
体動補正に関するユーザ指定を受け付けるUI部をさらに備え、
前記制御部は、前記UI部が受け付けたユーザ指定に基づき、前記処理判断部が判断した処理の要否及び処理の程度の少なくとも一つを調整することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御部は、前記演算部が生成した画像を表示装置に表示させる表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記処理判断部の判断によって変更される前の処理により前記演算部が生成した画像を前記表示装置に表示させることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
被検体の核磁気共鳴信号を計測する計測部及び核磁気共鳴信号を用いた演算を行う演算部を備えた磁気共鳴イメージング装置の制御方法であって、
前記磁気共鳴イメージング装置で撮像中の被検体から物理的に離間して配置され、前記被検体の体動を検出するセンシング部からの体動検出結果を入力し、体動の空間的特性および時間的特性を解析するステップと、
解析ステップで得られた体動情報を用いて、前記計測部及び前記演算部の少なくとも一方の処理の変更を判別する処理判断ステップと、を含み、
前記処理判断ステップは、
前記体動情報を用いて、前記計測部が計測した核磁気共鳴信号からなるk空間データから除外すべき核磁気共鳴信号を特定するステップ、
前記特定した除外すべき核磁気共鳴信号を除外した場合の間引き率と前記計測部に設定された間引き率との合計間引き率をもとに前記計測部による再計測の要否を判断するステップ、及び、
再計測不要の場合に、前記特定した除外すべき核磁気共鳴信号とそれを除いた後に残るk空間上の信号との関係を用いて、前記演算部による再構成手法を異ならせるステップを含み、
前記処理判断ステップの判断結果に応じて、前記計測部及び前記演算部の処理を制御することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴イメージング(MRI)装置を用いた撮像中に生じる被検体の体動に対処する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIの検査中に被検者が動くと、その影響がエコー信号に混入し、画質劣化を引き起こす。この問題を解決するため、MRIでは検査中の被検者の動きを検出し、検出結果を用いて画像を補正する方法が種々提案されている(特許文献1など)。その一つとして、特許文献1には、k空間データを低域から高域に向かって収集するセントリックオーダーとするとともに、息止め撮像により低域データを収集した後、高域データを収集すること、高域データ収集中に、センサで検出した体動が閾値を超える場合に、その期間に計測されたk空間データを再構成に用いるデータから除外すること、データを除外することによって不足した部分をパラレルイメージングの画像再構成手法であるGRAPPAや、圧縮センシング等の技術を用いて推定したり、除外したデータをゼロフィルしたりして、画像を再構成することなどが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願明細書2013/0251225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術は、検出する体動として呼吸動をターゲットとして、その大きさをもとに除外すべきデータを決定している。しかし、画質の画質劣化を引き起こす体動は呼吸以外にもあり、これら呼吸以外の体動を含む被検者の動きは、その種類、動いた時間、動きのベクトル(大きさ、方向)などが様々であり、呼吸動に基づく体動信号(体動の影響を受けた信号)を除外するだけでは、十分な補正を行うことができない。
【0005】
またMRIでは高速撮像を行うために、画像再構成に必要な計測マトリクスよりも少ないデータを収集する撮像方法(例えばパラレルイメージングや圧縮センシングなど)が多用されており、このような高速撮像ではその倍速率(間引き率)に応じて決まる非計測のデータと、体動により除外するデータとのk空間上の関係によっては体動補正をすることにより画質が劣化する可能性もありえる。
【0006】
本発明は、体動の種類や特性に応じて適切な対処を行うことが可能であり、それによって体動の影響を低減し、体動時のデータ除外による画質の劣化を抑制することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、検査中に被検者の体動を検出するセンサとして、呼吸動のみらず、体動全般を検出可能なセンサを用いるとともに、そのようなセンサが得た体動情報を解析し、体動の継続時間や頻度などの時間的特性及び空間的な特性、特にk空間における発生パターン、に応じて、その後のデータ収集や画像再構成についての処理を分岐させて実行することにより、上記課題を解決する。
【0008】
即ち本発明のMRI装置は、被検体の核磁気共鳴信号を計測する計測部と、前記計測部が計測した核磁気共鳴信号を用いて画像を生成する演算部と、前記計測部及び前記演算部の動作を制御する制御部と、被検体から物理的に離間して配置され、被検体の体動を検出するセンシング部からの体動検出結果を入力し、体動の空間的特性および時間的特性を解析する体動解析部とを備える。制御部は、体動解析部が解析した体動情報を用いて、計測部及び演算部の少なくとも一方の処理の変更を判別する処理判断部を有し、処理判断部の判断結果に応じて、計測部及び演算部の処理を制御する。
【発明の効果】
【0009】
体動データの時間パターン、かつ/もしくは、k空間上の配置パターンにより補正方法を選択するため、不十分な補正、もしくは補正により生じるアーチファクトの混入を防ぎ、体動の影響を抑制した画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態におけるMRI装置の概略構成を示すブロック図
図2】本発明が適用されるMRI装置の外観図で、(a)は垂直磁場方式のMRI装置、(b)は水平磁場方式のMRI装置、(c)は開放感を高めたMRI装置である。
図3】実施形態の計算機の機能ブロック図
図4】実施形態の計算機による処理の概要を示す図
図5】実施形態1の処理の流れを示す図
図6】実施形態1の処理の一例を示す図
図7】実施形態2の処理の流れを示す図
図8】実施形態3の処理の流れを示す図
図9】体動アーチファクト除去のユーザ設定のためのUIの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明が適用されるMRI装置の実施形態について説明する。
【0012】
[MRI装置の概要]
本実施形態のMRI装置10は、図1に示すように、大きく分けて、被検体101から発生する核磁気共鳴信号の計測を行う計測部100と、計測部100を制御するとともに計測部100が計測した核磁気共鳴信号を用いて画像再構成、補正その他の演算を行う計算機200とを備える。
【0013】
計測部100は、被検体101が置かれる空間に静磁場を生成する静磁場コイル102と、静磁場内に配置された被検体101に高周波磁場パルスを送信する送信部(105、107)と、被検体が発生する核磁気共鳴信号を受信する受信部(106、108)と、核磁気共鳴信号に位置情報を付与するために静磁場コイル102が発生する静磁場に磁場勾配を与える傾斜磁場コイル103とを備える。
【0014】
静磁場コイル102は、常電導式或いは超電導式の静磁場コイル、静磁場生成磁石などで構成され、発生する静磁場の方向によって、垂直磁場方式、水平磁場方式などがあり、方式によってコイルの形状及び装置全体の外観が異なる。図2(a)~(c)に、これら方式の異なるMRI装置の外観を示す。本実施形態は図示するMRI装置のいずれにも適用可能である。
【0015】
送信部は、被検体101の計測領域に対し高周波磁場を送信する送信用高周波コイル105(以下、単に送信コイルという)と、高周波発振器や増幅器などを備えた送信機107とを備える。受信部は、被検体101から生じる核磁気共鳴信号を受信する受信用高周波コイル106(以下、単に受信コイルという)と、直交検波回路やA/D変換器などを含む受信機108とを備える。受信コイルは、複数の小型受信コイルからなるマルチチャンネルコイルでもよく、その場合、それぞれに受信機108を構成する直交検波回路やA/D変換器が接続されている。受信機108が受信した核磁気共鳴信号は、複素ディジタル信号として計算機200に渡される。
【0016】
傾斜磁場コイル103は、x方向、y方向、z方向それぞれに傾斜磁場を印加する3組の傾斜磁場コイルを有し、それぞれ傾斜磁場用電源部112に接続されている。さらにMRI装置は、静磁場分布を調整するシムコイル104とそれを駆動するシム用電源部113を備えていてもよい。傾斜磁場の印加の仕方によって核磁気共鳴信号に位置情報を付与することができる。
【0017】
さらに計測部100は、計測部100の動作を制御するシーケンス制御装置114を備える。シーケンス制御装置114は、傾斜磁場用電源部112、送信機107及び受信機108の動作を制御し、傾斜磁場、高周波磁場の印加および核磁気共鳴信号の受信のタイミングを制御する。制御のタイムチャートはパルスシーケンスと呼ばれ、計測に応じて予め設定され、計算機200が備える記憶装置等に格納される。
【0018】
計算機200は、MRI装置10全体の動作を制御するとともに、受信した核磁気共鳴信号に対して様々な演算処理を行う。具体的には、図3に示すように、シーケンス制御装置114を介して計測部100を制御する計測制御部211、画像等のディスプレイへの表示を制御する表示制御部212などを含む制御部210と、画像再構成などの演算(画像再構成部221)を行う演算部220とを備える。
【0019】
さらに、本実施形態のMRI装置は、撮像中の被検体の動きに応じて、MRI装置内で行われる処理の手順や手法を変更したり選択したりする処理判断部230を備える。このため、計算機200は、後述の体動検出用センサ(センシング部300)からの体動信号を入力し体動を解析する体動解析部240、及び体動の解析結果に基づき体動の影響を低減した画像を生成する体動補正部250を備える。体動解析部240は、画像再構成用のk空間データから除外すべきデータ(体動データ)を決定する体動データ特定部241を備える。体動補正部250は、体動データを除外した後のk空間データを用いて体動補正された画像を生成する。体動補正部250は、k空間上で体動補正された画像を再構成するk空間補正部252と、画像空間上で体動補正された画像を再構成する画像空間補正部253とを含む。
【0020】
なお図3では計算機200内で実現される諸機能を、便宜的に制御部、演算部及び処理判断部に属する機能として示しているが、これらは互いに独立する機能であったり、重複する機能であったりするものであり、図3に限定されるものではない。また体動解析部240の機能の一部或いは全部は、MRI装置とは独立したセンシング部300が実現することも可能である。
【0021】
センシング部300は、非接触の光学センサ、赤外線センサ或いはステレオカメラ等の撮影手段と検出部301とを含み、図2に示したような、MRI装置のガントリやMRI装置が置かれる検査室の所定の位置に配置され、検査中の被検者を撮影する。センシング部300を配置する位置は、ガントリの入り口、出口、ガントリ内部などの1か所或いは複数個所とし、MRI装置による撮像部位(検査部位)に応じて適宜配置位置や個数を変更してもよい。
【0022】
またセンシング部300による撮影の開始と終了は、ユーザがMRI装置による計測の開始終了に合わせて適宜操作してもよいし、MRI装置の計測と連動するように制御部210が制御信号を送る構成としてもよい。
【0023】
体動解析部240は、センシング部300の撮影手段が撮像した被検者の映像をもとに、体動の種類、動いた時間、動きのベクトル(大きさ、方向)などを解析する。解析は、オプティカルフロー、RPPG(Remote Photoplethysmography)、Stereo Matching、Pose Estimation等のコンピュータビジョン分野で公知の解析アルゴリズムを用いて行うことができる。なお、センシング部300が体動解析部240を含む場合には、センシング部300は解析結果であるデータを、計算機200が備える記憶装置等に送り、処理判断部230等は記憶装置からデータを読み出し、処理を行う。
【0024】
体動データ特定部241は、体動解析部240の解析結果を用いて、計測したk空間データから除外すべきデータ(体動データ)を特定する。
【0025】
処理判断部230は、体動解析部240の解析結果及び体動データ特定部241が特定した除外データの結果をもとに、計測制御部211における計測制御の手順等を変更したり、演算部220における再構成方法(体動補正方法)を選択したりする指示を各部に送り、体動の影響を低減する処理が行われるような制御を行う。また体動抑制処理に関するユーザ指定がある場合には、それを加味した制御を行う。
【0026】
計算機200は、上述した機能を行うためCPU、メモリ、記憶装置などを備え、さらにディスプレイ201、外部記憶装置203、入力装置205などが接続される。
【0027】
ディスプレイ201及び入力装置205は、ユーザとのインターフェイス部(UI)部として機能するもので、ディスプレイ201は表示制御部212の制御のもと、演算処理で得られた結果等をユーザに表示する。入力装置205は、計測や演算処理に必要な条件、計測パラメータ等をユーザが入力するための装置である。外部記憶装置203は、計算機200内部の記憶装置とともに、計算機200が実行する各種の演算処理に用いられるデータ、演算処理により得られるデータ、入力された条件、パラメータ等を保持する。
【0028】
計算機200の各部の機能は、計算機200に組み込まれたソフトウェアとして実現可能であり、記憶装置が保持するプログラム(ソフトウェア)を、CPUがメモリにロードして実行することにより実現される。各機能の処理に用いる各種のデータ、処理中に生成される各種のデータは、記憶装置あるいは外部記憶装置203に格納される。また、計算機200が実現する各種の機能のうち、少なくとも一つの機能は、MRI装置10とは独立した、情報処理装置であって、MRI装置10とデータの送受信が可能な情報処理装置により実現されていてもよい。また、全部または一部の機能は、ソフトウェアとしてではなく、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field programmable gate array)などのハードウェアによって実現してもよい。
【0029】
次に本実施形態のMRI装置10の、主として計算機200の動作を説明する。図4に動作の流れを示す。
【0030】
まず、入力装置205を介してユーザによる撮像シーケンスや撮像条件の設定を受け付ける(S401)。撮像シーケンスは、特に限定されないが、撮像時間の短縮のために、空間的に重なり合った信号を計測する撮像手法、例えばパラレルイメージング撮像(PI)や複数スライス同時励起撮像(SMS:Simultaneous Multi-Slice)が選択され、設定されてもよい。撮像条件は、撮像シーケンスのパラメータ(繰り返し時間TR、エコー時間TE)を含み、k空間の間引き計測(PI)を行う場合には間引き率を含む。また複数スライス同時励起(SMS)の場合にはスライス数の設定を含む。なお検査プロトコルとしてこれら撮像条件等が設定されている場合には、検査プロトコルに設定された条件等を読み込む。
【0031】
さらにステップS401では、体動補正の要否や程度などのユーザ指定を受け付けてもよい。この場合、表示制御部212はユーザ指定を受け付けるGUIをディスプレイ201に表示する。ユーザは、撮像時間や演算時間の短縮と体動補正の精度向上のいずれを優先するか或いはどのような補正の程度か等に応じて、決定した条件を、GUIを介して、制御部210(計測制御部211)や処理判断部230に設定する。
【0032】
計測制御部211は、ユーザが入力したパラメータに基づいて設定されるパルスシーケンスに従って、シーケンス制御装置114を動作させ、予め定めた条件の核磁気共鳴信号(エコー信号)を計測する。シーケンス制御装置114は、計測制御部211からの指示に従って、MRI装置10の各部を制御して、パラメータに基づいた収集マトリクス分のk空間データを収集する(S402)。k空間データの収集順序(オーダリング)や間引き方は、シーケンス制御装置114が計算したパルスシーケンスによって決まる。
【0033】
MRI装置による計測の開始と同時に、センシング部300は検査中の被検者を撮影し、体動を検出する。体動解析部240はオプティカルフローなどの技術を用いて体動の種類、動いた時間、動きのベクトル(大きさ、方向)を解析する(S403)。体動の種類は、例えば、呼吸動や脈動のような周期的な動き、せきやくしゃみなどの突発的な動き、何らかの原因で向きが変わってしまうような不可逆的な位置変化、などであり、動いた時間(頻度、継続時間)や動きのベクトルから判定することができる。
【0034】
体動データ特定部241は、体動解析部240が解析した体動の時間や大きさをもとに、計測中のデータのうち、取得中に体動があり、そのまま用いた場合に重要な画質劣化の原因となるデータを除外すべき体動データとして特定する。
【0035】
処理判断部230は、収集したk空間データ(S402)と体動解析(S403)により得られた情報を元に再撮像を実施するか、体動補正を実施するかを判断する。体動補正を実施する場合、k空間で実施するか、画像空間で実施するかも併せて判断する(S404)。
【0036】
撮像がPIやSMSなど所定の間引き率で行われている場合には、PIやSMSによる間引きと体動データを除外したときの間引きとを合計した間引き率が、再構成処理で画像の復元を担保できる割合か否かを判断し、復元を担保できる割合となるように、体動データを調整し、最終的に除外する体動データを決定する(S406)。体動データの調整は、例えば、合計間引き率が、復元するには大きすぎる場合(即ち除外するデータが多すぎる場合)、体動データのうち比較的画質に与える影響が少ない体動データやk空間の高域データとなる体動データを除外しないものとすることにより行う。
【0037】
再構成可能か否かの判断は、例えば、復元可能な間引き率の上限を予め設定しておき、それをもとに行う。また後述するように、ディスプレイ201を介してユーザによる体動補正の優先度など指定を受け付ける構成をとる場合には、そのユーザ指定に基づき調整を行ってもよい。
【0038】
演算部220(体動補正部250)は、体動データを除外した後のデータを、処理判断部230の判断に応じて、k空間、あるいは画像空間で再構成し、体動補正後の再構成画像を生成する(S407、S408)。
【0039】
体動補正後の再構成画像は、必要に応じて、記憶装置203に格納され、或いは表示制御部212によりディスプレイ201に表示される(S409)。なお、体動データを除外する前のデータ(Rawデータ)についても、記憶装置203に格納しておく構成とすることができ、それにより必要に応じて、体動補正をしない場合の画像を再構成し、ユーザに提示することができる。
【0040】
また、これらの一連の処理分岐や体動解析結果は、最終的に得られる画像に付帯する情報として記録してもよい。特に、画質に影響を及ぼす重要な再構成処理方法は、当該処理分岐を示すシリーズ名に追記して、ユーザに提供されることが好ましい。このような情報は、画像とともにユーザに提示してもよいし、事後的に処理内容をユーザが確認できるようにしてもよい。
【0041】
本実施形態によれば、被検者の全体的な動きを監視し、その情報に基づいて除外すべき体動データを決定することにより、呼吸動のみならず種々の動きの特性に応じて適切な処理を選択し実行することができる。
【0042】
次に、上述したMRI装置の動作の概要をもとに、処理判断部230が行う処理判断(図4:S404)の具体的な実施形態を説明する。以下の実施形態において、必要に応じて図4に示すフローを参照する。
【0043】
<実施形態1>
本実施形態では、処理判断部230は、体動データ特定部241が特定した体動データの位置や数を考慮して、計測部100による再計測要否を判断するとともに、再計測しない場合の体動補正部250の処理を決定する。以下、図5のフローを参照して処理判断部230の処理(図4:S404)を説明する。
【0044】
前提として、k空間データと体動解析結果とを入力すると(S4041)、体動データ特定部241は、計測したk空間データの各取得時間と、体動情報(体動があった時間と大きさ)とを照らし合わせて、体動が所定の大きさを超えた時に取得したデータを体動データとして特定する(S4042)。
【0045】
処理判断部230は、まず、特定された体動データの数やk空間における位置や間隔に基づいて、再計測が必要か否かを判断する。例えば、画像再構成に用いるk空間データから体動データを除外した後に残るデータで、画像再構成部221による画像再構成(画像復元)が可能な否かを判断する。この際、k空間データが、所定の間引き率の撮像により収集されたものである場合には、当該間引き数と体動データ除外による間引き数とを合計した後の間引き率が画像再構成可能か否かを判断する(S4043、S4044)。画像再構成可能な間引き率は、演算部220に実装されている画像再構成アルゴリズム等に基づいて予め設定しておくことができる。
【0046】
また、画像再構成可能かを判断(S4044)する際に、許容できる間引き率(予め設定された間引き率)をもとに除外可能な体動データ数を決定し、S4042で特定された体動データの数が決定した数よりも若干多い程度である場合には、その体動データを取得したときの体動の大きさやその体動データのk空間における位置などをもとに、除外することなく画像再構成用のデータに用いるように調整を行ってもよい。つまり動きが比較的小さいものは、除外しない、或いはk空間の低域のデータは除外しない、などの調整を行った後、決定された数の体動データのみを除外する。
【0047】
この際、k空間の領域毎に除外可能なデータの制限を設定しておくことも可能である。例えば図6に示すように、k空間を低域、中域、及び高域などのように領域分けし、領域毎に除外するデータについて制限を設けておいてもよい。図6に示す例では、高域データについては、隣り合う2ラインまでは除外可能、中域データについては、隣り合う1ラインまでは除外可能、低域データについては除外不可などとする。
【0048】
S4044において、画像再構成不可と判断された場合には、体動データに相当するk空間データを再計測するように、計測制御部211に指令を送る(S405)。再計測は、全ての計測が終了してから行ってもよいし、逐次行うようにしてもよい。
【0049】
再計測を行った場合には、再計測後のデータを含むk空間データ全体について、同様の処理判断を行う。
【0050】
再計測を行うことなく体動補正を行う場合には、S4042で特定された或いは調整後に決定された体動データを除外した後(S406)、除外すべき体動データとそれ以外のデータとのk空間上配置もとに、k空間補正部252による処理か、画像空間補正部253による処理かを決定する(S4045)。例えば、k空間上で体動データを除外したとき、その近傍にデータ(エコー信号)がない場合は、画像空間補正部253による処理とし、圧縮センシングや繰り返し演算を含むSENSE法などのPI演算により画像を生成する(S408)。またk空間上で体動データを除外してもその近傍にデータがあるときは、k空間上で欠損したデータ(除外及び非計測としたデータ)を推定する技術(GRAPPAなど)を用いてk空間上の補正を行った上で、通常の画像再構成方法により画像再構成を行う(S407)。
【0051】
このように除外する体動データのk空間上の配置に基づいて画像再構成方法を異ならせることで、より画質の良い画像が得られる体動補正方法(再構成方法)を選択することができる。
【0052】
なお体動データ除外前のk空間データが所定の間引き率で計測されたデータである場合、上述した画像空間或いはk空間の処理は、一度の処理で体動補正を行ってもよいし、通常のPI演算等による画像再構成と、体動データ除外後の画像再構成とを段階的に行うことも可能である。例えば、k空間での処理の場合、体動データ除外前のk空間データに対し非計測データを推定してk空間データを得た後、体動データを除外し、除外後のk空間データについて、k空間上或いは画像空間で体動補正を伴う画像再構成を行う。この画像再構成における体動補正をk空間上で行うか画像空間で行うかは、上述と同様の基準で決定することができる。また、画像空間での処理の場合、体動データ除外前のk空間データ及び体動データ除外後のk空間データを用いて、それぞれ、独立にSENSE法などで画像再構成し、1対の画像を取得し、これらの画像間の演算(例えば画像の合成)により画像を求めてもよい。
【0053】
こうして得られた画像を、必要に応じて、その付帯情報である処理内容(画像再構成方法)などとともにディスプレイ201に表示し、ユーザに提示すること(S409)は、図4の処理と同様である。
【0054】
本実施形態によれば、k空間全体の間引き率を考慮して、画像再構成可能な否かを判断することで、画像の劣化を抑制した体動補正を行うことができる。また体動データ除外後のk空間データ配置に応じて体動補正を伴う画像再構成方法を選択することにより、画質の良い体動補正後画像を得ることができる。
【0055】
<実施形態2>
実施形態1では、処理判断部は、体動データを除外したときの間引き率と、撮像条件として設定された間引き率との合計を考慮して、再計測するか否かを判断したが、本実施形態は、除外すべき体動データがk空間の低域データか高域データかによって処理を異ならせる。
【0056】
以下、図7のフローを参照して、本実施形態の処理判断部230の処理を説明する。図7において、図5と同じ内容処理は同じ符号で示し重複する説明は省略する。
【0057】
本実施形態においても、k空間データ及び体動解析結果を入力した後(S4041)、k空間データと体動との関連付けを行って、動きがあったときに収集されたデータを、除外すべき体動データとして特定する(S4042)。
【0058】
次いで処理判断部230は、特定された体動データがk空間の低域データ(0エンコード近傍のデータ)か高域データかを判断し(S4046)、低域データである場合には、再計測するよう計測制御部211に指令を送る(S405)。即ち低域データが収集されるまでは、S4041、S4042、S4046が繰り返される。
【0059】
一方、特定された体動データが高域データの場合には、それが取得されたときの動きの大きさによって除外するか否かを決定する(S4047)。動きの大きさは、予め閾値を設定しておき、その閾値を超えた場合に、除外し、動きが閾値以下の場合には、その体動データは除外しない。この際、実施形態1と同様に、k空間の領域毎に除外可能なデータの規則を設定しておくことも可能である。すなわち図6に示したように、k空間の中域及び高域について、除外可能なラインの数を予め決めて置き、動きが大きい順に設定した数まで除外する。
【0060】
その後、決定した体動データを除外し(S406)、体動データ除外後のk空間データパターンに応じて、k空間或いは画像空間で体動補正した画像を再構成することは、実施形態1と同様である。
【0061】
また本実施形態においても、体動データ除外前のk空間データが所定の間引き率で計測されたデータ、例えばPI法やSMS法により計測されたデータである場合、上述した画像空間或いはk空間の処理は、一度の処理で体動補正を行ってもよいし、段階的に行ってもよい。例えば、段階的に行う場合、まず体動データ除外前のk空間データに対し、GRAPPA等のデータ推定演算を行い、k空間データの推定処理を行った後、当該k空間データから体動データを除外し、体動データ除外後のk空間データについて体動補正を行う。体動補正を画像空間とするかk空間の処理とするかは、S4045における判断と同様に行うことができる。
【0062】
また一度の処理で行う場合には、実施形態1と同様に、所定の間引き率で計測されたデータの間引き数と、除外する体動データの数(間引き数)との合計から決まる間引き率をもとに、それが画像再構成可能か否かを判断し、可能であれば、S407或いはS408に進み体動補正を行う。或いは、除外する体動データのうち高域のデータの間引き数を調整して、画像再構成可能な間引き率とした後、体動補正を行ってもよい。
【0063】
また変形例として、実施形態1と実施形態2とを組み合わせた処理判断を行うことも可能である。すなわち、最初の処理判断において、実施形態1のS4043、S4044で行った全体的な間引き率を基にする判断だけでなく、除外すべき体動データのk空間上の位置を加味して判断してもよい。
【0064】
例えば、k空間を低域と高域とに分けて、それぞれについて間引き率の下限閾値を設定し、低域データが間引き率の下限以下となる場合には、全体間引き率は画像再構成可能な間引き率と判断されても、再計測を行う、或いは、除外すべき体動データがほぼ高域データである場合、すなわち全体的な間引き率において高域の間引き率が支配的である場合には、全体間引き率が画像再構成不可の間引き率と判断されても、再計測を行わず、体動補正ステップに進む、などの処理とする。
【0065】
本実施形態及びその変形例によれば、除外すべき体動データの、k空間における位置をもとにその後の処理を判断することで、画像にコントラストに重要な情報を担保して、体動補正した画像を得ることができる。
【0066】
<実施形態3>
本実施形態においても、被検者の動きを非接触のセンシング部300でセンスし、得られた体動情報を体動解析部240で解析し、その結果に基づいて処理判断部230が計測部100や体動補正部250を制御することは他の実施形態と同じである。
【0067】
ただし、実施形態1、2は、本撮像中に生じた体動に対応する処理を対象とするものであるが、本実施形態は、プリスキャン時に得た体動情報をもとに、本撮像(本スキャン)における処理を判断する。
【0068】
以下、図8を参照して、本実施形態の処理を説明する。ここでは本スキャンは、k空間データを軸方向に平行に収集するカルテジアンスキャンが設定されているものとする。
【0069】
計測が開始され、計測部100によるk空間データ収集(図4:S402)及び体動解析部240による体動解析(図4:S403)が実行され、処理判断部230は、k空間データ及び体動情報を入力し(S4041)、その計測がプリスキャンである場合には(S4048)、体動情報をもとに体動が高い頻度で発生しているか否かを判定する(S4049)。体動の頻度の判定は、例えば所定の閾値以上の体動が、所定の時間間隔に発生する数をカウントすることで行う。体動の大きさの閾値及び所定時間に発生する体動の数の閾値は予め設定しておく。
【0070】
体動の頻度が低い場合には、実施形態1や実施形態2の手法により、比較的高い精度で体動補正できるので、プリスキャンに続く本撮像(本スキャン)は、最初に設定された撮像条件(S401)のまま実行され、図5図7に示したようなフローに従って判断処理を行う。
【0071】
一方、体動の頻度が高いと判定した場合には、本スキャンのスキャン方法をカルテジアンスキャンから、体動に強いとされているラジアルスキャン(非カルテジアンスキャン)に切り替える。ラジアルスキャンには、k空間の1本のデータラインの角度を異ならせて収集するスキャン方法や、位相エンコードを付与した複数のデータラインからなるブレードを回転させて収集するスキャン方法(PROPELLER法)などがあり、そのいずれを採用してもよい。
【0072】
ここでスキャン方法を切り替える場合、最初に設定された撮像条件で決まる分解能、SNR、コントラストが維持されるパラメータとする。具体的には、ブレード数、ブレードの幅、エコー時間(TE)などを調整することで、分解能やSNR、コントラストを調整することができる。
【0073】
スキャン方法を切り替えた本スキャンでは、体動データを除外した画像再構成を行うが、ラジアルスキャンではk空間データの低域は比較的高い密度でデータ収集できるので、実施形態1の手法により、体動データの除外後の間引き率を考慮した処理判断を行うことが好ましい。
【0074】
例えば、図5に示すように、k空間データについて体動解析結果をもとに除外すべき体動データを特定した後(S4042)、体動データ除外後のk空間データ(所定の間引き率でデータ収集した場合には間引き後のk空間データから体動データを除外した後のk空間データ)が再構成可能か否かを判定し(S4044)、再構成可能であれば体動データを除外して画像再構成する。
【0075】
画像再構成は、例えば、PROPELLER法の場合には、除外した体動データの近傍にエコー信号が存在するか否かをブレード毎に判断し(S4045)、その結果によって、画像空間の体動補正かk空間の体動補正かを決定し、画像再構成し、ブレード毎に折り返しが展開された画像を得る(S 407、S408)。画像空間の補正の場合には、折り返しが展開されたブレード毎の画像を逆フーリエ変換してk空間に再配列し、放射状に配列されたデータを直交座標上に再配置(グリッディング)し、再度フーリエ変換を行い、画像を再構成する。k空間の補正の場合には、ブレード毎のデータをk空間上でグリッディング処理した後、欠落しているデータの推定を行い、フーリエ変換して画像を再構成する。
【0076】
本実施形態によれば、プリスキャン時に取得した体動情報をもとに、体動データがk空間データに対しどのようなパターンで発生するかを予測し、それに応じて本スキャンのスキャン方法を決定するので、比較的高い頻度で体動が発生する場合にも、体動の影響を受けにくい本スキャンを実行することができる。
【0077】
<実施形態4>
本実施形態は、表示制御部212の機能に係る実施形態であり、体動補正について、ユーザ指定を受け付けること、ユーザ指定に応じて処理判断部230が行う処理が変更されることが特徴である。
【0078】
上述した実施形態1~3では、処理判断部230が体動情報の判定に使う体動の大きさ、頻度などの閾値は、予め所定の値に設定されているものとしたが、本実施形態では、ユーザが体動補正の要否や処理の程度を選択することで、閾値を変更するなど処理判断にユーザの好みを反映させる。
【0079】
ユーザ指定を受け付けるGUIの一例を図9に示す。図示する例では、ユーザによる体動除外のための処理の要否を受け付けるブロック910、体動補正を行う場合にその程度の指定を受け付けるブロック920、体動データを再計測するための再撮像の要否を受け付けるブロック930、及び補正前のデータで再構成された画像を出力させるためのブロック940が提供されている。
【0080】
ユーザによって或いは検査の目的や状況によっては、体動補正よりも、短時間の撮像が要求される場合がある。そのような場合には、そもそも体動補正自体を「しない」とする選択や、体動補正するとしても再撮像を「しない」という選択を可能にすることにより、ユーザは好みや状況に応じた撮像を行うことができる。
【0081】
体動補正を「する」と選択した場合、「弱」、「中」、「強」のいずれが選択されたかに応じて、例えば、体動データ特定部241が除外すべき体動データであると判断する際の閾値を変更し、「弱」であれば閾値を上げて、比較的大きな体動のみを除外すべきデータとする。また処理判断部230が除外すべき体動データを調整する際に、体動補正の程度に応じて除外する体動データの数を調整してもよい。例えば「弱」であれば除外する体動データ数は減らして、より多いk空間データで画像再構成する。
【0082】
さらに、除外する体動データの許容範囲を体動補正の程度に応じて決定しておいてもよい。例えば、体動補正「強」が選択されている場合には、k空間データのうち隣り合う2ラインまで除外可能とし、体動補正「弱」が選択されている場合には、隣り合う1ラインまで除外可能とする。また図6に示したように、領域毎に異なる設定としてもよく、この場合の領域分けをユーザ選択に応じて変更することも可能である。この際、図6のような画像をGUIとして表示し、ユーザがこのGUI上で領域を決めたり、領域毎に除外可能なライン間隔を設定できるようにしてもよい。
【0083】
GUIのブロック940「補正前画像出力」が選択された場合には、体動データを除外する前のk空間データ(Rawデータ)を用いて、画像を再構成し、それをディスプレイ201に表示させる。ユーザは、このような画像を確認することで、体動補正の効果や体動補正によって失われた可能性のある情報(例えば細部の情報)などを確認することができ、また確認した結果に応じて、Rawデータを用いて体動補正の程度を異ならせた結果、例えば「強」の体動補正から「弱」の体動補正に変更した結果、を事後的な処理として実行し、出力させることも可能である。
【0084】
なお図9には示していないが、体動補正の手法(実施形態1の手法、実施形態2の手法、或いはそれらのコンビネーション)などを選択するGUIを表示したり、さらに手法の内容についてもユーザ指示を受け付けるGUIを表示したりするなど、図9に限定されないGUIを提示することが可能である。
【0085】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、各実施形態で例示した撮像方法や処理方法に限定されることなく、技術的に矛盾しない限り、各実施形態の手法を組み合わせたり、本発明の構成に重要でない処理を省くなど、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
10:MRI装置、100:計測部、200:計算機、210:制御部、211:計測制御部、212:表示制御部、220:演算部、221:画像再構成部、230:処理判断部、240:体動解析部、241:体動データ特定部、250:体動補正部、252:k空間補正部、253:画像空間補正部、300:センシング部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9