(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】セルロース粒子及びセルロース粒子分散液
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20240328BHJP
C08B 16/00 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
C08J3/16 CEP
C08B16/00
(21)【出願番号】P 2021192971
(22)【出願日】2021-11-29
【審査請求日】2023-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512313920
【氏名又は名称】株式会社プリス
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寛人
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-169577(JP,A)
【文献】特開2021-169579(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141779(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/059859(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/201900(WO,A1)
【文献】特開2018-118917(JP,A)
【文献】特開2018-115416(JP,A)
【文献】特開2018-193430(JP,A)
【文献】特開2019-023360(JP,A)
【文献】特開2021-155491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08B 1/00-37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が1~1000nm、かつ平均繊維長が0.01~1000μmの微細繊維状セルロースが凝集されてなり、
前記微細繊維状セルロースが未変性微細繊維状セルロースであり、当該未変性微細繊維状セルロースの保水度が100~500%であり、
固め嵩密度が0.1~200mg/cm
3であり、多孔質である、ことを特徴とするセルロース粒子。
【請求項2】
粒子の平均粒子径が0.1~1000μmである、請求項1記載のセルロース粒子。
【請求項3】
水分率が1~50%である、請求項1記載のセルロース粒子。
【請求項4】
圧縮度が50%以下である、請求項1記載のセルロース粒子。
【請求項5】
さらに、可塑剤が含まれる、請求項1記載のセルロース粒子。
【請求項6】
請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載のセルロース粒子が油分に分散された、セルロース粒子分散液。
【請求項7】
さらに水、乳化剤を有する、請求項
6記載のセルロース粒子分散液。
【請求項8】
前記油分が、炭素数C15以上の炭化水素、炭素数C12以上の脂肪酸、炭素数C6以上のアルコール、及びジメチルシリコーンから選択される1種又は2種以上の組み合わせからなる液状油分である、請求項
6記載のセルロース粒子分散液。
【請求項9】
請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載のセルロース粒子が0.1~20質量%含有する、請求項
6記載のセルロース粒子分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース粒子及びセルロース粒子分散液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の基本骨格であるセルロース繊維を微細化して得られる微細繊維状セルロースは、脱プラスチック等の環境意識の高まりにより、近年様々な分野への用途研究が行われ、素材そのものの機能の活用の他、例えばプラスチック材料、化粧料、衣料、建築等の応用分野への活用が期待されている。
【0003】
微細繊維状セルロースについての分散性に着目する技術が、特許文献1に開示されている。特許文献1は、発明の解決課題を樹脂などのマトリックス成分中での分散性を高めることができる粉末状ナノファイバーを提供することとし、解決手段を分散剤を配合してなる粉末状ナノファイバーとし、ここで分散剤がP-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合したものとする、技術を開示している。
【0004】
また、関連する技術を開示する特許文献2は、発明の解決課題を小径化するとともに、柔軟性・感触を重視し、また、皮膚への刺激の低減を可能としたセルロース粒子を提供することとし、解決手段を平均粒径D50が1μm以上50μm以下、かさ密度が0.30g/mL以下、比容積が3.0mL/g以上、かつアマニ油吸油量が100mL/100g以上であることを特徴とするセルロース粒子とする、ものである。このセルロース粒子は、セルロースを主成分とした溶解天然パルプから補強繊維を加えたビスコースを原料とし、セルローススポンジを作製してこれを粉砕したものである。
【0005】
特許文献3は、化粧料に用いるため、真球度を高めつつ多孔質セルロース粒子が崩壊しにくいパウダーに関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-210596号公報
【文献】特開2019-206662号公報
【文献】特開2020-50840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に係る技術は、マトリックス成分が樹脂などの固形分であり、固形分中における粉末状ナノファイバーの分散性の良さの改善を図るものであり、マトリックス成分が液体である場合に、粉末状ナノファイバーが液体に分散良く混ざり合うかに関する知見を開示するものではない。
【0008】
特許文献2に係る技術は、セルロース粒子をメイクアップ製品の添加剤として使用することを想定してはいるが、マトリックス成分に何を用いるかに関しての記載はなく、したがって、液体中での分散性に係る知見を開示するものではない。また、メイクアップ製品の添加剤として用いる場合、嵩密度も分散性に影響すると考えられるが、それについてさらなる検討の余地がある。
【0009】
特許文献3は、特許文献2と同様にセルロース粒子を化粧料に混合した際の使用感、感触を良好にするための提案であるが、粒子を分散させた際の沈降性や分散性を改善しうる粉体ではない。
【0010】
また、従来の技術では微細繊維状セルロースを水に分散された状態で用いることが多く、そのため水媒体の用途に専ら限られてきた。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、油系媒体への分散性が良好で沈降し難いセルロース粒子及びセルロース粒子分散液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、次記に示す態様により解決される。
平均繊維径が1~1000nm、かつ平均繊維長が0.01~1000μmの微細繊維状セルロースが凝集されてなり、固め嵩密度が0.1~200mg/cm3である、ことを特徴とするセルロース粒子。また、当該セルロース粒子が油分に分散された、セルロース粒子分散液。
【0013】
前記態様のセルロース粒子は、上記範囲の平均繊維径かつ平均繊維長の微細繊維状セルロースが凝集されてなるので、アスペクト比の相対的に大きな微細繊維状セルロース各々が、相互に絡まり合い易くほどけにくいものとなっているものと推測される。そして固め嵩密度が上記範囲であれば、容積の割に軽量であるので、油系分散媒にセルロース粒子を分散させた状態で放置しても、自重で沈降し難く、分散安定性に優れるものとなっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、粒子相互の凝集が発生し難く、軽量であり、油系液体への分散性が良好なセルロース粒子及びセルロース粒子分散液となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態を次記に説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0017】
本形態に係るセルロース粒子は、平均繊維径が1~1000nm、かつ平均繊維長が0.01~1000μmの微細繊維状セルロースが凝集されてなり、固め嵩密度が0.1~200mg/cm3である、ことを特徴とする。セルロース粒子を説明する前にセルロース粒子の原料である微細繊維状セルロースについて説明する。
【0018】
(微細繊維状セルロース)
微細繊維状セルロースは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができ、化学処理、機械処理等公知の処理手法で製造することができる。
【0019】
微細繊維状セルロースの原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、茶古紙、封筒古紙、雑誌古紙、チラシ古紙、段ボール古紙、上白古紙、模造古紙、更上古紙、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物の状態等であってもよい。近年、環境負荷低減に配慮したオーガニック成分含有製品の需要が増加傾向にあるため、特に、古紙以外の植物由来の広葉樹や針葉樹を原料とする木材パルプが好適である。
【0020】
木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ等(DP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。特に、セルロース成分を高める木材パルプである、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプが好ましく、晒パルプ(BKP)が好適である。
【0021】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0022】
平均繊維径が相対的に小さい微細繊維状セルロースを製造する観点からは、解繊が容易であり、高い分散性を備えたクラフトパルプを使用するのが好ましい。特に、白色系統の製品(乳液、ジェル等)に応用する場合には、微細繊維状セルロース自体が白色であると都合がよく、白色性の高さを向上させる観点からLBKP及びNBKPを使用するのがより好ましい。
【0023】
微細繊維状セルロースは、解繊するに先立って、前処理を施してもよい。例えば、前処理として、原料パルプを機械的に予備叩解したり、原料パルプを化学的に変性処理したりしてもよい。予備叩解の手法は特に限定されず、公知の手法を用いることができる。
【0024】
化学的手法による原料パルプの前処理としては、例えば、酸(例えば、硫酸等)による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤(例えば、オゾン等)による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)、TEMPO触媒による酸化(酸化処理)、リン酸エステル化やカルバメート化等によるアニオン化(アニオン処理)、カチオン化(カチオン処理)等を例示することができる。
【0025】
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の有機アルカリ等を例示できる。製造コストの観点からは、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
【0026】
酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、微細繊維状セルロースの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、かつ均質性を高くすることができる。微細繊維状セルロースの保水度が低いと脱水し易くなり、乾燥させやすくなるので好ましい。
【0027】
原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、結果、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、成形体の均質性向上に資する。ただし、前処理は、微細繊維状セルロースのアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
【0028】
アニオン化により、アニオン性官能基が導入されて変性された微細繊維状セルロースとしては、リンオキソ酸によりエステル化された微細繊維状セルロースやカルバメート化された微細繊維状セルロース、ピラノース環の水酸基が直接カルボキシル基に酸化された微細繊維状セルロース等を例示できる。
【0029】
アニオン性官能基が導入されて変性された微細繊維状セルロースは、 相対的に高い分散性を有する。これは、アニオン性官能基により電荷の偏りが局所的に発生し、このアニオン性官能基が分散液中の水や有機溶剤と水素結合を容易に形成することによるものと推測される。
【0030】
アニオン化の一例である、リンオキソ酸によるエステル化をセルロース繊維に施すと、繊維原料を微細化でき、製造される微細繊維状セルロースは、アスペクト比が大きく強度に優れ、光透過度及び粘度が高いものとなる。リンオキソ酸によるエステル化は、特開2019-199671号公報に掲げる手法で行うことができる。例えば、セルロース繊維のヒドロキシ基を変性処理して亜リン酸エステル基が導入された変性微細繊維状セルロースを挙げることができる。
【0031】
セルロース繊維の解繊は、以下に示す解繊装置・方法により行うことができる。当該解繊は、例えば、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー等のリファイナー、各種バクテリア等の中から1種又は2種以上の手段を選択使用して行うことができる。ただし、セルロース繊維の解繊は、水流、特に高圧水流で微細化する装置・方法を使用して行うのが好ましい。この装置・方法によると、得られる微細繊維状セルロースの寸法均一性、分散均一性が非常に高いものとなる。これに対し、例えば、回転する砥石間で磨砕するグラインダーを使用すると、セルロース繊維を均一に微細化するのが難しく、場合によっては、一部に解れない繊維塊が残ってしまうおそれがある。
【0032】
セルロース繊維の解繊に使用するグラインダーとしては、例えば、増幸産業株式会社のマスコロイダー等が存在する。また、高圧水流で微細化する装置としては、例えば、株式会社スギノマシンのスターバースト(登録商標)や、吉田機械興業株式会社のナノヴェイタ\Nanovater(登録商標)等が存在する。また、セルロース繊維の解繊に使用する高速回転式ホモジナイザーとしては、エムテクニック社製のクレアミックス-11S等が存在する。
【0033】
本発明者等は、回転する砥石間で磨砕する方法と、高圧水流で微細化する方法とで、それぞれセルロース繊維を解繊し、得られた各繊維を顕微鏡観察した場合に、高圧水流で微細化する方法で得られた繊維の方が、繊維幅が均一であることを知見している。
【0034】
高圧水流による解繊は、セルロース繊維の分散液を増圧機で、例えば30MPa以上、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、特に好ましくは220MPa以上に加圧し(高圧条件)、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が、例えば30MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは90MPa以上となるように減圧する(減圧条件)方式で行うと好適である。この圧力差で生じるへき開現象によって、パルプ繊維が解繊される。高圧条件の圧力が低い場合や、高圧条件から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維幅とするために繰り返し解繊(ノズルから噴出)する必要が生じる。
【0035】
高圧水流によって解繊する装置としては、高圧ホモジナイザーを使用するのが好ましい。高圧ホモジナイザーとは、例えば10MPa以上、好ましくは100MPa以上の圧力でセルロース繊維のスラリーを噴出する能力を有するホモジナイザーをいう。セルロース繊維を高圧ホモジナイザーで処理すると、セルロース繊維同士の衝突、圧力差、マイクロキャビテーションなどが作用し、セルロース繊維の解繊が効果的に生じる。したがって、解繊の処理回数を減らすことができ、微細繊維状セルロースの製造効率を高めることができる。
【0036】
高圧ホモジナイザーとしては、セルロース繊維のスラリーを一直線上で対向衝突させるものを使用するのが好ましい。具体的には、例えば、対向衝突型高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー/MICROFLUIDIZER(登録商標)、湿式ジェットミル)である。この装置においては、加圧されたセルロース繊維のスラリーが合流部で対向衝突するように2本の上流側流路が形成されている。また、セルロース繊維のスラリーは合流部で衝突し、衝突したセルロース繊維のスラリーは下流側流路から流出する。上流側流路に対して下流側流路は垂直に設けられており、上流側流路と下流側流路とでT字型の流路が形成されている。このような対向衝突型の高圧ホモジナイザーを用いると高圧ホモジナイザーから与えられるエネルギーが衝突エネルギーに最大限に変換されるため、より効率的にセルロース繊維を解繊することができる。
【0037】
解繊して得られた微細繊維状セルロースは、無機微粒子と混合するのに先立って水系媒体中に分散して分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
【0038】
本明細書では、セルロース繊維のヒドロキシ基が置換(変性)されてリンオキソ酸エステル基が導入された微細繊維状セルロースを変性微細繊維状セルロース(以下、「変性CNF」ともいう。)といい、セルロース繊維のヒドロキシ基が置換されていない未変性微細繊維状セルロース(以下、「未変性CNF」ともいう。)と区別する場合がある。したがって、微細繊維状セルロースは、変性微細繊維状セルロースと未変性微細繊維状セルロースを含む概念である。
【0039】
本実施形態のセルロース粒子を形成する微細繊維状セルロースは、未変性微細繊維状セルロースのみからなるものであってもよいし、変性微細繊維状セルロースのみからなるものであってもよいし、未変性微細繊維状セルロースと未変性微細繊維状セルロースを含むものであってもよい。
【0040】
セルロース粒子が変性微細繊維状セルロースから形成されたものである場合は、当該セルロース粒子を分散媒に分散させた分散液が透明色を呈する。他方、セルロース粒子が未変性微細繊維状セルロースから形成されたものである場合は、当該セルロース粒子を分散媒に分散させた分散液が白色を呈する。セルロース粒子を形成する微細繊維状セルロースにおける変性微細繊維状セルロースと未変性微細繊維状セルロースの比を調製することで白色と透明色の間の中間色をした分散液を製造することができる。この分散液を製造するには、例えば分散液の分散質たるセルロース粒子を製造するにあたり、セルロース粒子の原料である微細繊維状セルロースとして、変性微細繊維状セルロースと未変性微細繊維状セルロースとが混ざり合ったものを用いるとよい。
【0041】
セルロース粒子は、原料が微細繊維状セルロースが変性されたものであっても未変性のものであっても白色のパウダー状となる。変性微細繊維状セルロースは、未変性微細繊維状セルロースよりも平均繊維径が小さいので、同じ質量のセルロース粒子で対比すると、変性微細繊維状セルロースで形成されたセルロース粒子の方が、未変性微細繊維状セルロースで形成されたセルロース粒子よりも比表面積が大きいものとなる傾向にある。
【0042】
原料パルプの解繊は、得られる微細繊維状セルロースの物性等が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
【0043】
<平均繊維径>
微細繊維状セルロースの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)の上限は1000nmであり、好ましくは500nm以下、より好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。微細繊維状セルロースの平均繊維径が1000nmを超えると、形成されたセルロース粒子が比表面積の相対的に小さいもの、すなわち多孔質形状に乏しいものとなる。微細繊維状セルロースの平均繊維径の下限は特に制限されない。
【0044】
微細繊維状セルロースの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0045】
微細繊維状セルロースの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%の微細繊維状セルロースの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
【0046】
<平均繊維長>
微細繊維状セルロースの平均繊維長(単繊維の長さの平均)は、例えば、好ましくは0.01~1000μm、より好ましくは0.03~500μmとするとよい。当該平均繊維長が1000μmを超えると、微細繊維状セルロースの乾燥時に繊維同士が絡み合い易く、油系分散媒に分散させたときにほどけにくくなる。また、微細繊維状セルロースに他の物質を担持させ易くなり、当該他の物質の機能性が備わったセルロース粒子となる。当該平均繊維長が0.01μm未満だと、絡み合いの乏しいセルロース粒子となる。
【0047】
平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
【0048】
微細繊維状セルロースの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
【0049】
<軸比>
微細繊維状セルロースの軸比(平均繊維長/平均繊維幅)は、好ましくは10~1,000,000、より好ましくは30~500,000、特に好ましくは50~100,000である。微細繊維状セルロースの軸比が10未満であるとセルロース分はほぼ粒子形状であるので、セルロース粒子を形成しがたくなる。他方、軸比が1,000,000を超えると繊維相互の絡まり度合いが大きく、セルロース粒子が所望の平均粒子径になりにくくなる。
【0050】
<結晶化度>
微細繊維状セルロースの結晶化度は、下限が50以上であるとよく、より好ましくは60以上、特に好ましくは70以上であり、上限が100以下であるとよく、より好ましくは95以下、特に好ましくは90以下である。同結晶化度が50未満であると、乾燥時の温度変化などの影響により、繊維の絡み合いが弱くなり、他の物質の保持力が弱くなり、所望の粒子径のセルロース粒子を形成し難い。
【0051】
結晶化度は、JIS-K0131(1996)の「X線回折分析通則」に準拠して、X線回折法により測定した値である。なお、微細繊維状セルロースは、非晶質部分と結晶質部分とを有しており、結晶化度は微細繊維状セルロース全体における結晶質部分の割合を意味する。
【0052】
<疑似粒度分布>
微細繊維状セルロースの擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、微細繊維状セルロースの繊維長及び繊維径の均一性が高く、セルロース粒子を製造する際に微細繊維状セルロース相互の絡み合いが容易に生じるので、製造されたセルロース粒子を再分散させてもほどけにくいものとなる。また、粒子径のばらつきが小さいセルロース粒子となる。無機微粒子が担持されたセルロース粒子の形態であれば、セルロース粒子を化粧料の一成分として配合したときに、セルロース粒子が化粧料中において十分に分散された状態になる。
【0053】
微細繊維状セルロースのピーク値はISO-13320(2009)に準拠して測定する。より詳細には、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用して微細繊維状セルロースの水分散液における体積基準粒度分布を調べる。そして、この分布から微細繊維状セルロースの最頻径を測定する。この最頻径をピーク値とする。微細繊維状セルロースは、水分散状態でレーザー回折法により測定される擬似粒度分布曲線において単一のピークを有することが好ましい。このように、一つのピークを有する微細繊維状セルロースは、十分な微細化が進行しており、微細繊維状セルロースとしての良好な物性を発揮することができ、好ましい。なお、上記単一のピークとなる微細繊維状セルロースの粒径の擬似粒度分布のピーク値は、例えば300μm以下であるのが好ましく、200μm以下であるのがより好ましく、100μm以下であるのが特に好ましい。ピーク値が300μmを超えると、相対的に大きな繊維が多く、セルロース粒子の粒子径のばらつきが大きく、セルロース粒子形状が不均一になりやすい
【0054】
微細繊維状セルロースの粒径におけるピーク値、及び擬似粒度分布の中位径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0055】
<保水度>
微細繊維状セルロースの保水度は、特に限定されないが例えば未変性の微細繊維状セルロースであれば、500%以下、より好ましくは100~500%である。同保水度が500%を上回ると、微細繊維状セルロース自体の保水力が高く脱水性に乏しいので、乾燥過程を経て製造したとしても、乾燥時間が長くなり生産性が悪くなる。微細繊維状セルロースの保水度の下限は特に限定されないが、100%以上だと、微細繊維状セルロース同士の結合力が働き、多孔質粒子の形状を保持しやすい。
【0056】
微細繊維状セルロースの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
【0057】
微細繊維状セルロースの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
【0058】
<パルプ粘度>
解繊した微細繊維状セルロースのパルプ粘度は、1~10cps、より好ましくは2~9cps、特に好ましくは3~8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示しており、繊維そのものの強さにも影響する。
【0059】
<添加剤>
乾燥過程を経て製造したセルロース粒子の溶媒への分散性の向上のため添加剤を加えることができる。添加剤は凍結する前の微細繊維状セルロースに加えることができ、均一になるように混ぜ合わせるとよい。添加剤として、多価アルコール、多糖類、水溶性高分子からなる群から1種又は2種以上選択したものを用いることができる。添加剤の配合比(=添加剤:微細繊維状セルロース)は、固形分基準で1:99~50:50、好ましくは50:50にするとよい。微細繊維状セルロースに対する添加剤の配合比が多いと、ベタツキのある乾燥物(セルロース粒子)となり、本発明のセルロース粒子の軽量感が失われ、ハンドリング性が悪化する。一方で同配合比が少なすぎると、対象の溶媒への分散効果が悪化する可能性もある。
【0060】
添加剤として、多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール等を用いることができるが、これらに限るものではない。特にグリセリンが増粘性、複合粒子の分散性の観点で好ましい。
【0061】
多糖類としては、クインスシード、ビーガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸塩等を用いることができるが、これらに限るものではない。特にヒアルロン酸塩等が増粘性、セルロース粒子の分散性の観点で好ましい。
【0062】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコールを例示できるが、これらに限るものではない。特にポリビニルピロリドンが増粘性、セルロース粒子の分散性の観点で好ましい。
【0063】
<無機微粒子>
セルロース粒子には無機微粒子が含有されていてもよい。無機微粒子はさまざまな機能をセルロース粒子に付与することができるが、例えば金属系の無機微粒子であれば入射光を乱反射する作用があるので、無機微粒子をセルロース粒子に含有させることで、セルロース粒子に光を乱反射する効果を付与することができる。例えば、無機微粒子を含むセルロース粒子を化粧料の一成分とすることで、太陽光の透過抑制効果を備えた化粧料とすることができる。太陽光の透過抑制効果を備えた化粧料を皮膚に塗布することで、日焼け止め効果が奏される。
【0064】
セルロース粒子に占める無機微粒子の含有率は、上限を50質量%とするとよく、好ましくは45質量%以下であり、下限を0質量%とするとよく、好ましくは5質量%以上である。同含率量が50質量%を超えると、微細繊維状セルロースに対する無機微粒子の割合が大きく、セルロース粒子の比重が大きく、分散媒への高い再分散性が損なわれるおそれがある。他方、同含有率が5質量%以上であれば、太陽光の透過抑制効果が十分に発揮される。
【0065】
無機微粒子の一次粒子径は、上限を10μmとするとよく、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下であればよい。無機微粒子の一次粒子径が10μmを上回ると、無機微粒子が微細繊維状セルロースによって担持されにくくなる。また、セルロース粒子としての表面積が十分に大きいものとならない。無機微粒子は、下限については特に限定されないが、1nmであるとよく、好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上であればよい。無機微粒子の一次粒子径が1nm以上だと、無機微粒子を微細繊維状セルロースのスラリーに混ぜたときに、無機微粒子が分散して微細繊維状セルロースに纏わりつき易い。
【0066】
無機微粒子の一次粒子径の測定方法は電子顕微鏡観察により行うことができ、得られた粒子径の平均値を測定値とする。
【0067】
無機微粒子は、そのままでももちろん用いることができるが、親水処理すると、微細繊維状セルロースの水分散液に馴致し易くなるので好ましい。親水処理に用いる表面処理剤は、無機微粒子の表面活性を抑制させ、無機微粒子の分散性を向上させ、また透明性やきしみを向上させる効果を有する。無機微粒子の表面処理剤としては、微細繊維状セルロースの水分散液に分散可能な処理剤であれば特に限定されないが、無水ケイ酸、含水ケイ酸を含むものが好ましい。
【0068】
無機微粒子は、特に限定されず公知の無機微粒子を用いることができるが、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニア、ジルコン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム等を挙げることができる。これらの粉末と微細繊維状セルロースを有するセルロース粒子は、液体への再分散性に優れたものとなり好ましい。太陽光の透過抑制の観点からは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。特に無機微粒子が酸化チタンである場合は、ルチル型だと化粧料組成物における太陽光の透過抑制が向上するので好ましい。
【0069】
セルロース粒子に含めることができる無機微粒子の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、棒状、針状、紡錘状、板状、多角形状等とすることができる。
【0070】
無機微粒子は、セルロース粒子における微細繊維状セルロースの表面に付着されていてもよいし、微細繊維状セルロースに内包されていてもよい。無機微粒子が微細繊維状セルロースに内包されていると、セルロース粒子が無機微粒子を表面だけでなく内部にも担持でき、多様な角度からの太陽光の照射に対して透過抑制に優れたものとなる。ここで、内包とは、無機微粒子の表面の一部が微細繊維状セルロースで覆われている状態や、外方からセルロース粒子を観察したときに、無機微粒子が微細繊維状セルロースによって覆われて観察できない状態、ということができる。
【0071】
無機微粒子は凍結する前の微細繊維状セルロースに加えることができ、均一になるように混ぜ合わせるとよい。
【0072】
(セルロース粒子)
本実施形態のセルロース粒子は、微細繊維状セルロースが乾燥して形成されたものであるが、微視的に見ると、微細繊維状セルロースが単体のまま乾燥して凝集(たとえて言うと、一本の糸が糸内で絡み合うこと)し形成されたものもあれば、微細繊維状セルロースが複数、乾燥時に凝集して凝集塊となったものもある。微細繊維状セルロースが構成単位であるセルロースにヒドロキシ基(OH基)及び水素基(H基)を有するので、微細繊維状セルロースを有するセルロース粒子もヒドロキシ基及び水素基を有する。ヒドロキシ基や水素基が他のヒドロキシ基や水素基と水素結合することで、微細繊維状セルロースが同セルロース内部で又は相互に水素結合して凝集して、セルロース粒子が形成される。セルロース粒子を水系媒体に混ぜると、加水分解等して水素結合がほどけ、セルロースの凝集が弱まってセルロース粒子やほどけた微細繊維状セルロースが水系媒体に分散することになる。他方、水系媒体ではなく油系媒体にセルロース粒子を混ぜた場合は次のようになると推測される。油系媒体は疎水性であるので、セルロース粒子の凝集がほどける方向への反応は起こりにくい。そのため、油系媒体内でセルロース粒子が分散され、その状態が維持されるには嵩密度が所定の範囲にあることが好ましい。セルロース粒子の嵩密度が所定範囲であれば、セルロース粒子が自重によって圧密を受けにくく、沈降がしづらいものとなる。
【0073】
本実施形態に係るセルロース粒子は、微細繊維状セルロースを好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上有するものであり、上限は100質量%有するものであってよい。セルロース粒子に占める微細繊維状セルロースの質量百分率が50質量%を下回ると、本発明のセルロース粒子の所望の嵩密度、比表面積が得られなくなるおそれがある。
【0074】
<平均粒子径>
また、本実施形態に係るセルロース粒子は、好ましくは平均粒子径が0.1~1000μmの範囲、より好ましくは平均粒子径が0.1~700μmの範囲、さらに好ましくは平均粒子径が0.1~500μmの範囲となるものである。当該平均粒子径が上記範囲未満でも本発明の効果を発揮するが、取り扱い易さの点では上記範囲の下限以上の平均粒子径であることが望ましい。他方、当該平均粒子径が上記範囲を超えると、セルロース粒子を充填させたり、分散媒に分散させたりしたときに、粒子間に形成される空隙が大きくなり、所望の濃度に調整しづらくなる。
【0075】
セルロース粒子の粒子径の標準偏差が好ましくは1~400μm、より好ましくは1~300μm、特に好ましくは2~200μmである。
【0076】
本実施形態のセルロース粒子は、大小様々な粒子径を有することが特徴的である。具体的には、セルロース粒子(又はセルロース粒子群)の粒子径の広がりが大きい、すなわち、粒子径の分散係数が大きいものとなっている。なお、当該セルロース粒子は、真球度に優れれものではなく、個々が凹凸を有し、多孔質形状であり、異なる形状をしている。そのため、例えば、ふるい等を用いて大きいものと小さいものとに意図的に分けることが困難な場合がある。
【0077】
セルロース粒子の平均粒子径、メディアン径、累計10%径、及び累計90%は、ISO-13320(2009)に準拠した測定装置、具体的にはレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(粒度分布)「LA-960V2」を用いて、セルロース粒子に付着した水分を飛ばさずに乾式方法にて測定をした数値である。
【0078】
<比表面積>
セルロース粒子の比表面積は好ましくは20m2/g以上、より好ましくは30m2/g以上、さらに好ましくは40m2/g以上であり、同比表面積の上限は特に制限されないが5000m2/gである。同比表面積が20m2/gを下回ると、無機微粒子をセルロース粒子に担持させようとしたときに、担持できる無機微粒子の量が少なく無機微粒子の性能が発揮されないおそれがある。他方同比表面積が5000m2/gを上回るものは、粒子の軽量化の点、また再分散性の上では好ましいがその製造が非常に困難である。
【0079】
比表面積は、BET法により測定した。具体的には、測定器にカンタクローム・インスツルメンツ社製NOVA4200eを用い、窒素ガスによる吸着法により測定した。準拠する試験方法は、JISZ8830:2013である。
【0080】
<水分率>
セルロース粒子の水分率は好ましくは50%以下、より好ましくは40%、さらに好ましくは30%以下である。同水分率が30%を超えるセルロース粒子は、多くの水分が含まれ、油系分散媒に混ぜて分散させても、分散状態が維持されない場合がある。
【0081】
<嵩密度>
本実施形態に係るセルロース粒子は、好ましくは固め嵩密度が0.1~200mg/cm3、より好ましくは固め嵩密度が0.1~150mg/cm3、さらに好ましくは固め嵩密度が0.1~100mg/cm3の範囲となるものである。当該固め嵩密度が200mg/cm3を超えるセルロース粒子は、繊維同士が強固に絡み合った凝集体となっており、分散性に乏しいものとなる。また、分散媒に分散させたとしても、自重により次第に沈降し始めることがあり分散性に優れるものとはいえない。当該固め嵩密度が0.1mg/cm3未満のセルロース粒子は、空気中で粉体が崩壊しやすくハンドリング性に乏しい。
【0082】
他方、本実施形態に係るセルロース粒子のゆるめ嵩密度と固め嵩密度、圧縮度の間には、次の関係式[数1]が成り立つ。
[数1]
(圧縮度(%))=((固め嵩密度)-(ゆるめ嵩密度))/(固め嵩密度)×100
【0083】
固め嵩密度及びゆるめ嵩密度はCarrの流動性指数の算出に用いられる項目の一つであり、ASTM D6393-99 圧縮度測定方法に準拠して測定した。測定は、「多機能型粉体物性測定器マルチテスターMT-02」(株式会社セイシン企業製)である。
【0084】
<圧縮度>
セルロース粒子の圧縮度については、圧縮度が好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%であるとよい。本実施形態のセルロース粒子は相対的に軽量であるため、ゆるめ嵩密度の測定後に固め嵩密度を測定するために行う圧縮操作を行う過程で空隙が解消される(すなわち、セルロース粒子間に形成される空隙の解消によって容器内でセルロース粒子が相互に密に充填される)のみであり、セルロース粒子自体の密度の変化が小さく、粒子形状の崩壊が起こりにくい。また、セルロース粒子が真球度に優れる球状ではなく、(表現をするのが難しいが)凹凸のある粒体、多孔質である粒体であるので、容器に充填すると大小様々な形状の空隙が多数生じる。当該圧縮度が50%を超えると粒子間の空隙を埋める他、セルロース粒子の崩壊が示唆されるため、粒子の軽量感が失われるおそれがある。なお、ホットドライによって製造されたセルロース粒子だと、繊維同士が強固に凝集して形成された中実な粒子となっているため、粒子間の空隙を埋めるのみであり、粒子の崩壊そのものが少ない。なお、セルロース粒子間に形成される空隙とは、概念的には、単位格子に充填された原子間に形成される空隙をイメージすればわかりよい。他方、セルロース粒子の圧縮度の下限は、特段制限されない(すなわち0%)が、上記の空隙が僅かに発生することを考慮すると例えば1%以上であってもよい。
【0085】
(製造)
セルロース粒子は、セルロースナノファイバー原料として凍結乾燥する手法や減圧乾燥する手法、加熱乾燥する手法、噴霧乾燥する手法、その他本実施形態のセルロース粒子の乾燥方法である噴霧式凍結・減圧乾燥による手法によって製造することができるが、特に噴霧式凍結・減圧乾燥による手法を用いると、多孔質のセルロース粒子を製造することができ好ましい。多孔質であれば、セルロース粒子に形成される多数の孔に別の物質を担持させる、又は大きな表面積を利用することができる。そうすることで、セルロースにはない性質をセルロース粒子に付与することができる。
【0086】
本発明に係るセルロース粒子は、凍結乾燥処理で製造することができるが、例えば
図1に示される噴霧式凍結造粒装置1であれば相対的に比重の小さい粒子を製造でき好ましい。噴霧式凍結造粒装置1は、凍結造粒槽8と、当該凍結造粒槽8の上部に原料Mを噴霧する噴霧機構部7と、当該凍結造粒槽8の下方に備わり凍結したセルロース粒子を乾燥する乾燥部6とを備える。凍結造粒槽8に噴霧された原料Mは、凍結造粒槽8で瞬時に凍結され、凍結体Pとなる。凍結体Pは、乾燥部6に自然落下し貯留される。乾燥部6は、凍結造粒槽8と分離可能に接続され、凍結体Pが貯留された段階で凍結造粒槽8から分離され、密閉され凍結体Pを乾燥してセルロース粒子を得ることができるものである。
【0087】
原料Mとしては、微細繊維状セルロースのスラリーや分散液を例示できる。原料Mに用いられる微細繊維状セルロースとしては、1つの群からなる微細繊維状セルロースであってもよいが、2つの群からなる微細繊維状セルロースを組み合わせたものとしてもよい。2つの群からなる微細繊維状セルロースを組み合わせたものとする場合は、平均粒子径Rが11~1000nmの微細繊維状セルロース群C1と、平均粒子径Rが1~10nmの微細繊維状セルロース群C2を1:99~99:1の混合比で混ぜ合わせたものとしてもよい。
【0088】
噴霧機構部7は、原料Mが供給される原料流路と、圧縮ガスAが供給される圧縮ガス流路と、供給された原料Mと圧縮ガスAが混ざり合った混合流体を凍結造粒槽8内に噴霧するノズル5(二流体ノズルともいう。)を有するものである。ノズル5の形態としては、三流体式、四流体式、加圧式、超音波式、遠心噴霧式を例示できる。
【0089】
原料流路は、基端が原料Mを貯留する原料タンクに接続され、原料流路に備わるポンプによって原料Mが原料タンクからノズル5に流れる機構となっている。圧縮ガス流路は、基端がコンプレッサー、ボンベ等の圧縮ガス供給装置に接続され、圧縮ガス供給装置を起動させることで、圧縮ガスがノズル5に流れ込む機構となっている。圧縮ガスとしては、空気、窒素、希ガスを例示できる。
【0090】
原料Mには、微細繊維状セルロースのほか、添加剤、無機微粒子が含まれていてもよく、このほか、可塑剤が含まれていてもよい。可塑剤としては、フタル酸エステル、クエン酸エステル等を挙げることができる。
【0091】
凍結造粒槽8は、3槽で構成され、具体的には上下方向を軸芯とし、軸芯を同じくして同心円状に配される、径の異なる3つの円筒を備えるものである。これら3つの円筒が内側から順に内槽壁2、中槽壁3、外槽壁4となり、内槽壁2で囲まれた内槽が原料Mを凍結する凍結槽12、内槽壁2と中槽壁3で囲まれた有底の中層が冷却媒体が充填された冷却媒体充填槽13、外槽壁4と中槽壁3で囲まれた有底の外槽が槽内の温度を一定に保持するための真空断熱槽14となっている。凍結槽12は、内槽壁2の下端が乾燥部6の上端に形成されるフランジ部4aと着脱可能に接続される形態とするとよい。
【0092】
凍結槽12は、天面近傍に設けられたノズル5から噴霧された原料Mを凍結して凍結体Pを形成するものである。凍結槽12は、冷却媒体充填槽13から供給される冷却媒体によって温度が-10℃~-200℃になっているとよい。
【0093】
冷却媒体充填槽13には、凍結槽12を冷却するための冷却媒体が充填される。冷却媒体としては、例えば、液体窒素、液体アルゴン、液体ヘリウム、ドライアイス等を用いることができる。
【0094】
真空断熱槽14は、中槽壁2と外槽壁4とで囲まれ、中槽壁2の上端と外槽壁4の上端が閉じられ、中槽壁2の下端と外槽壁4の下端が閉じられ、外部から真空断熱槽14内に流体が流入しない構造となっており、真空状態に維持され、冷却媒体充填槽13に充填された冷却媒体と外気との熱伝達が生じにくいものとなっている。
【0095】
冷却媒体充填槽13は、外部から冷却媒体充填槽内に延在する冷却媒体供給管15を有し、冷却媒体Nが冷却媒体充填槽13内に供給されるように構成され、及び冷却媒体充填槽13内の冷却媒体Nが気化した冷却媒体ガスを凍結槽12に導入する冷却媒体導入管16を有し、冷却媒体ガスが凍結槽12に導入されるように構成される。
【0096】
凍結造粒槽8内で形成された凍結体Pは、当該凍結造粒槽8に対して着脱自在に設けられた乾燥部6に貯留される。乾燥部6に所定量の凍結体Pが貯留され後、凍結造粒槽8から乾燥部6を分離し、密閉後、凍結乾燥を行うことでセルロース粒子を得ることができる。以下に、本実施形態に係る乾燥器100の構成について説明する。
【0097】
乾燥器100は乾燥部6と真空引き機構を有する。乾燥部6は、上下方向を軸心とする円筒形状の壁とその壁に連続する底を有する形態とすることができる。円筒形状の壁には開閉可能な排気部(図示しない)を設けることができ、当該排気部から乾燥部6内のガスを排気ガスDとして排気することができる構成となっている。円筒形状の壁の上端縁は、フランジ部4aとなっており、凍結造粒槽8の下端縁と着脱可能に接続されている。凍結造粒槽8で生成した凍結体Pが乾燥部6に落下した後に、乾燥部6を凍結造粒槽8から取り外し当該フランジ部4aに上蓋を被せ密閉して凍結体Pを凍結乾燥する。
【0098】
凍結体Pの乾燥処理は次の通りに行うことができる。乾燥部6には、真空引き用のガス配管21の基端を接続できるように構成され、ガス配管21に吸引されたガスは、ガス配管21の先端に接続される冷却トラップ22へ導かれて一部が濃縮され濃縮液体又は濃縮固体として分離され、残部ガスが、冷却トラップ22に接続されるガス配管23の他端に設けられた真空ポンプ24によって吸引される。乾燥部6を密閉した状態で真空ポンプ24が起動すると、乾燥部6内の気圧が低下するとともに、凍結体Pに含まれる昇華可能又は気化可能な物質(例えば、原料Mが水と微細繊維状セルロースからなる分散液である場合は、水)が昇華又は気化して真空ポンプ24に吸引され、残分がセルロース粒子となる。乾燥処理を行う過程では凍結体Pが相互に凝集しないように、及び個々の凍結体Pをムラなく乾燥させるために乾燥部6を揺動又は振動させるとよい。乾燥部6の振動や揺動は、手動で行ってもよいし、振動機構や揺動機構を設けてすることとしてもよい。振動させる場合は、例えば略円形状に形成されるフランジ部における直径の両端部分(
図1の符号4aと4aの部分)を把持して左右に振る手法とすることができ、揺動させる場合は、例えば当該直径を回転軸として右回りと左回りを交互に繰り返して回動する手法とすることができる。右回り又は左回りへの枢動角度は特に限定されないが30°~100°とすると、乾燥部6内の凍結体Pが揺さぶられるのでよい。乾燥処理では、揺動又は振動させることは必須ではなく、凍結体Pが静止された状態で真空乾燥してもよい。一概には言えないが、乾燥時に揺動又は振動した方が、生成されるセルロース粒子の嵩密度が相対的に高くなる場合がある。
【0099】
他の実施形態の乾燥器200を
図11,12を参照しつつ説明する。上記に説明した
図1の乾燥器100との違いは、乾燥部6を揺動させるための軸芯30を備えている点である。軸心30に揺動機構を備えることによって、乾燥部6を、軸心30を中心に例えば、
図12の紙面に向かって右回り又は左回りに100°回転させることができる。
【0100】
上記製造方法によって製造されたセルロース粒子11,12を
図2~
図5に示した。
図2及び
図3に示したセルロース粒子11は、未変性微細繊維状セルロース(エレックス(登録商標)-S)2質量%水分散液を原料として噴霧式凍結造粒装置1を用いて製造したものである。セルロース粒子11には多数の孔11aが確認され、セルロース粒子11が多孔質構造であることが分かる。
図4及び
図5に示したセルロース粒子11は、変性微細繊維状セルロース(ELLEX(登録商標)-スター)2質量%水分散液を原料として噴霧式凍結造粒装置1を用いて製造したものである。セルロース粒子12には多数の孔12aが確認された。乾燥処理は真空乾燥機(東京理化器械株式会社製「EYELA FDU-2110」)に入れて静置したまま真空乾燥する処理とした。なお、凍結造粒槽8としてはプリス社「凍結造粒チャンバーCS30」を例示でき、乾燥器200としてはプリス社製、プリス社バレル凍結乾燥ユニット「TFD-10」を例示できる。
【0101】
(セルロース粒子分散液)
セルロース粒子は、油系媒体に分散させてセルロース粒子分散液とすることができる。油系媒体としては、例えば0~40℃で流動性のある油分、すなわち液状油分(液体、ジェル、固溶体、泡、クリーム状態等)であれば特に限定されない。油分は例えば炭素数C15以上の炭化水素、炭素数C12以上の脂肪酸、炭素数C6以上のアルコール、及びジメチルシリコーンから選択される1種又は2種以上の組み合わせを使用することができる。例えば、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アボガド油、月見草油、ミンク油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、トーモロコシ油、カカオ油、ヤシ油、コメヌカ油、オリーブ油、アーモンド油、ごま油、サフラワー油、大豆油、椿油、パーシック油、ヒマシ油、ミンク油、綿実油、モクロウ、パーム油、パーム核油、卵黄油、ラノリン、スクワレン等の天然動植物油脂類;合成トリグリセライド、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン等の炭化水素類;カルナバウロウ、パラフィンワックス、鯨ロウ、ミツロウ、キヤンデリラワックス、ラノリン等のワックス類;セタノール、ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、オキシステアリン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸等の高級脂肪酸類;コレステリル-オクチルドデシル-ベヘニル等のコレステロール及びその誘導体;イソプロピルミリスチン酸、イソプロピルパルミチン酸、イソプロピルステアリン酸、2エチルヘキサン酸グリセロール、ブチルステアリン酸等のエステル類;ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンペンタエリトリトールエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、リノール酸エチル等の極性オイル;その他アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、片末端反応性シリコーン、異種官能基変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、親水性特殊変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、フッ素変性シリコーン等、より具体的にはシリコン樹脂、メチルフェニルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン) メチルポリシロキサン共重合体、メチルハイドロジェンポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、ステアロキシメチルポリシロキサン、セトキシメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサンエマルション、高重合メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、架橋型メチルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン等の各種誘導体を含むシリコーン類等の中から選択される1種又は2種以上の組み合わせを使用することができる。セルロース粒子分散液に含まれるセルロース粒子の濃度は、0.1~20質量%、好ましくは0.5~10質量%とすることができる。セルロース粒子の濃度が0.1質量%未満だと、セルロース粒子の量が少なく分散液全体にセルロース粒子が行き渡らないおそれがある。セルロース粒子の濃度が20質量%を超えると、分散液の粘度が高くなり過ぎて用途が極端に限定されてしまう。
【0102】
セルロース粒子分散液には、水、乳化剤を加えることができる。この場合、油分と水とに分離する。分離したまま用いることができるが、乳化させて乳化液として用いることもできる。乳化させる場合は、公知の分散機(ホモジナイザー等)で分散させて乳化することができる。乳化液は、乳化剤(界面活性剤)の性質に厳密に影響されるものではない。これは、本実施形態のセルロース粒子が含まれる乳化剤の特徴であり、乳化剤にかかわらず、セルロース粒子が含まれていれば、セルロース粒子分散液が容易に乳化したものになる。乳化は、油分、水、乳化剤でミセルが形成され、このミセルが乳化液中に分散されていることによって乳化液が油分と水に分離せずに乳化状態に維持されるものである。厳密なメカニズムは明らかではないが、セルロース粒子がミセルに入り込み、一体化することで、ミセルの形状が崩れるのを抑制する効果を奏すると推測される。換言すると、セルロース粒子がミセルの補強材のような役割を果たしているものと推測される。セルロース粒子分散液に占める乳化剤の割合は、0.1~10質量%、好ましくは0.2~8.0質量%とするとよい。
【0103】
セルロース粒子分散液を乳化させて乳化液とする場合は、油分と水の配合割合(油分:水)を例えば99:1~1:99、好ましくは95:5~5:95にすることができる。セルロース粒子が乳化液に含まれていれば、油中水型乳化液とすることも水中油型乳化液とすることもできる。油中水型乳化液であれば、油分と水の配合割合(油分:水)を例えば99:1~51:49、好ましくは95:5~51:49にすることができる。他方、水中油型乳化液であれば、油分と水の配合割合(油分:水)を例えば1:99~49:51、好ましくは5:95~49:51にすることができる。しかしながら、油中水型乳化液と水中油型乳化液に厳密に区分せずに、セルロース粒子が含まれる乳化液を、油中水型乳化液と水中油型乳化液の中間の乳化液とすることもできる。
【0104】
乳化剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、陰イオン(アニオン)性界面活性剤、陽イオン(カチオン)性界面活性剤、両性界面活性剤、リン脂質等を使用することができ、特に、非イオン性界面活性剤のエステル型又はエステル・エーテル型を使用するのが好ましく、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン、脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びソルビトールの脂肪酸エステル、並びにこれらのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等を挙げることができる。
【実施例】
【0105】
(試験例、比較例の調製)
<試験例1>
実施例を次に示す。試験例1は次の通りに製造した。変性処理していない微細繊維状セルロース(大王製紙株式会社製製品「ELLEX(登録商標)-S」)を水に濃度2質量%になるように分散させた分散液を原料として噴霧式凍結造粒装置に供給してセルロース粒子を得て、これを試験例1とした。当該微細繊維状セルロースの平均繊維径は50nmである。噴霧式凍結造粒装置に原料を噴霧して凍結処理をして中間体である凍結体を得て、この凍結体を真空乾燥させてセルロース粒子を得るに当たり、微細繊維状セルロースをプリス社「凍結造粒チャンバーCS30」を使用して凍結処理し、凍結体を得た後、凍結体が完全に乾燥しきるまでの間、プリス社製、プリス社バレル凍結乾燥ユニット「TFD-10」を使用し、凍結体を揺動しながら乾燥した。
【0106】
<試験例2>
試験例2は次の通りに製造した。試験例1に用いた分散液と同じ分散液を原料として微細繊維状セルロースをプリス社「凍結造粒チャンバーCS30」に供給して中間体である凍結体を得て、この凍結体を真空乾燥させてセルロース粒子を得て、これを試験例2とした。凍結体を静置したまま乾燥させるために、凍結体を真空乾燥機(東京理化器械株式会社製「EYELA FDU-2110」)に入れて静置したまま真空乾燥した。
【0107】
<試験例3>
試験例3は次の通りに製造した。試験例1に用いた微細繊維状セルロースと同様の変性処理していない微細繊維状セルロース(大王製紙株式会社製製品「ELLEX(登録商標)-S」)とクエン酸エステルを混合比75%:25%で混ぜ合わせて混合物を得て、この混合物を水に2質量%になるように分散させた分散液を原料としてプリス社「凍結造粒チャンバーCS30」を使用して凍結処理し、凍結体を得た後、凍結体が完全に乾燥しきるまでの間、プリス社製、プリス社バレル凍結乾燥ユニット「TFD-10」を使用し、凍結体を揺動しながら乾燥した。乾燥後得られたセルロース粒子を試験例3とした。
【0108】
<試験例4>
試験例4は次の通りに製造した。ヒドロキシ基が亜リン酸エステル基に変性処理された微細繊維状セルロース(大王製紙株式会社製製品「ELLEX(登録商標)-スター」)を水に濃度0.5質量%になるように分散させた分散液を原料としてプリス社「凍結造粒チャンバーCS30」を使用して凍結処理し、凍結体を得た後、凍結体が完全に乾燥しきるまでの間、プリス社製、プリス社バレル凍結乾燥ユニット「TFD-10」を使用し、凍結体を揺動しながら乾燥した。乾燥後得られたセルロース粒子を試験例4とした。当該微細繊維状セルロースの平均繊維径は4nmである。
【0109】
<試験例5>
試験例5は次の通りに製造した。試験例4に用いた分散液と同じ分散液を原料としてプリス社「凍結造粒チャンバーCS30」に供給して中間体である凍結体を得て、この凍結体を真空乾燥させてセルロース粒子を得て、これを試験例5とした。凍結体を静置したまま乾燥させるために、凍結体を真空乾燥機(東京理化器械株式会社製「EYELA FDU-2110」)に入れて静置したまま真空乾燥した。
【0110】
<比較例1>
比較例1は、変性処理していない微細繊維状セルロース(大王製紙株式会社製製品「ELLEX(登録商標)-S」)とグリセリン(富士フイルム和光純薬社 グリセリン)を混合比71%:29%で混ぜ合わせて混合物を得て、その後混合液をドラムドライヤーに供給し、熱乾燥にて乾燥物を得たあと粉砕し、平均粒子径53.1μmのセルロース粒子を得て、これを比較例1とした。比較例1の粒子のSEM画像を
図10に示す。比較例1の粒子は、本実施形態のセルロース粒子と対比して、粒子内部が中実となっていて比表面積が小さく、密度が大きいものとなった。
【0111】
<比較例2>
比較例2は、平均粒子径を238.8μmのセルロース粒子にした以外は比較例1と同様の製造方法で製造したセルロース粒子である。
【0112】
試験例及び比較例について物性を測定した。測定した物性は、圧縮度、ゆるめ嵩密度、固め嵩密度、比表面積、水分率、平均粒子径、メディアン径、累積10%径、累積90%径とした。
【0113】
圧縮度はCarrの流動性指数の算出に用いられる項目の一つであり、ASTM D6393-99 圧縮度測定方法に準拠して測定した。測定は、「多機能型粉体物性測定器マルチテスターMT-02」(株式会社セイシン企業製)である。
比表面積はBET多点法(N2ガス吸着法)に準拠して測定した。測定に用いた機器は、「3Flex」(マイクロメリティックス社製)、及び「Smart VacPrep(前処理装置)」(マイクロメリティックス社製)である。試験例及び比較例で調整したセルロース粒子を前処理装置で60℃、20時間、脱ガス処理(減圧乾燥)を行った後、N2ガス吸着法により比表面積を測定した。
平均粒子径、メディアン径、累計10%径、累計90%径の測定に用いた機器は「レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(粒度分布)LA-960V2(乾式測定)」(HORIBA製)である。
【0114】
試験例及び比較例についての原料の配合割合を表1に、物性を表2に記載した。
【0115】
【0116】
【0117】
(乳化試験)
製造したセルロース粒子について乳化の程度を測定した。試験例及び比較例は、表3に記載される配合割合で調製した。
【0118】
【0119】
<試験例12>
流動パラフィン80質量部に乳化剤(自然化粧品研究所製品「ポリソルベート80」)0.3質量部を加え、ホモジナイザー(分散機、IKA社製「T-25」、digital ULTRA-TURRAX(登録商標))で3000rpm、30秒間撹拌後、試験例2のセルロース粒子0.6質量部を加え、同ホモジナイザーで5000rpm、30秒間撹拌後、水19.4質量部を加え、同ホモジナイザーで5000rpm、30秒間撹拌して、試験例12を得た。
【0120】
<比較例12>
流動パラフィン80質量部に乳化剤0.3質量部を加え、ホモジナイザーで3000rpm、30秒間撹拌後、比較例2のセルロース粒子0.6質量部を加え、同ホモジナイザーで5000rpm、30秒間撹拌後、水19.4質量部を加え、同ホモジナイザーで5000rpm、30秒間撹拌して、比較例12を得た。
【0121】
<比較例13>
流動パラフィン80質量部に乳化剤0.3部を加え、ホモジナイザーで3000rpm、30秒間撹拌後、変性処理していない微細繊維状セルロース(大王製紙株式会社製製品「ELLEX(登録商標)-S」)の3%水分散液(固形分0.6質量部)20質量部を加え、同ホモジナイザーで5000rpm、30秒間撹拌して、比較例13を得た。
【0122】
<比較例14>
流動パラフィン80質量部に乳化剤0.3質量部を加え、ホモジナイザーで3000rpm、30秒間撹拌後、水20質量部を加え、同ホモジナイザーで5000rpm、30秒間撹拌して、比較例14を得た。
【0123】
得られた試験例及び比較例をそれぞれ有栓瓶に移し替えて攪拌した後、静置して30分経過後に分散液の様子を観察した。結果を
図7に示した。試験例12及び比較例13は乳液の状態が維持され界面が観測されなかった。比較例12及び比較例14は流動パラフィンと水に分離し、界面10が観測された。
【0124】
試験例12と比較例12はどちらもセルロース粒子であるが、嵩密度や比表面積に差異があり、これらの差異が乳化に影響を及ぼす一因と推測される。
【0125】
(分散性試験1)
分散性試験1では製造したセルロース粒子について分散性の程度を測定した。試験例及び比較例は、表4に記載される配合割合で調整した。得られた試験例及び比較例をホモジナイザー(IKA社製「T-25」)で1分間、8000rpmの条件で分散させて分散液とした。分散させた後、有栓瓶に移し替え20分間静置した時点で分散状態を撮影したのが
図8である。図中、符号20はセルロース粒子の界面を表す。
【0126】
【0127】
<試験例21>
ジメチルシリコーンオイル98質量部に試験例1のセルロース粒子2質量部を加えて、試験例21を得た。
【0128】
<試験例24>
ジメチルシリコーンオイル98質量部に試験例4のセルロース粒子2質量部を加えて、試験例24を得た。
【0129】
<比較例22>
ジメチルシリコーンオイル98質量部に比較例2のセルロース粒子2質量部を加えて、比較例22を得た。
【0130】
試験例21及び試験例24は、比較例22と比較して界面20が浅く、良好な分散性を示した。
【0131】
(分散性試験2)
分散性試験2では製造したセルロース粒子について分散性の程度を測定した。試験例及び比較例は、表5に記載される配合割合で調整した。得られた試験例及び比較例をホモジナイザー(IKA社製「T-25」)で1分間、8000rpmの条件で分散させて分散液とした。分散させた後、有栓瓶に移し替え20分間静置した時点で分散状態を撮影したのが
図9である。図中、符号20はセルロース粒子の界面を表す。
【0132】
【0133】
<試験例31>
流動パラフィン98質量部に試験例1のセルロース粒子2質量部を加えて、試験例31を得た。
【0134】
<試験例34>
流動パラフィン98質量部に試験例4のセルロース粒子2質量部を加えて、試験例34を得た。
【0135】
<比較例32>
流動パラフィン98質量部に比較例2のセルロース粒子2質量部を加えて、比較例32を得た。
【0136】
試験例31及び試験例34については界面20が確認されず、比較例32については界面20が確認され、試験例31及び試験例34の方が良好な分散性を示した。
【0137】
(その他)
上記明細書中に示すJISやTAPPIその他の試験、測定方法は特段断りがない場合は、室温、特に25℃、大気圧中、特に1atmで行っている。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明のセルロース粒子及びセルロース粒子分散液は、油系液体への分散性が改善されたものとして提供できる。
【符号の説明】
【0139】
11 セルロース粒子
11a セルロース粒子の孔
12 セルロース粒子
12a セルロース粒子の孔
10 界面
20 界面