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特許7461924距離補償要素、距離補償要素としての金属箔の使用、および距離補償要素を備えた配置物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】距離補償要素、距離補償要素としての金属箔の使用、および距離補償要素を備えた配置物
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/291 20210101AFI20240328BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240328BHJP
   H01M 50/267 20210101ALI20240328BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20240328BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240328BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240328BHJP
   H01M 50/50 20210101ALI20240328BHJP
   H01M 50/588 20210101ALN20240328BHJP
   H01M 50/591 20210101ALN20240328BHJP
   H01M 50/244 20210101ALN20240328BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/293
H01M50/267
H01M50/213
H01M50/204 401H
H01M50/249
H01M50/50 101
H01M50/588
H01M50/591 101
H01M50/244 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021500898
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019068498
(87)【国際公開番号】W WO2020011833
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】102018116683.4
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506004447
【氏名又は名称】ヴィッケダー ヴェストファーレンシュタール ゲー エム ベー ハー
【氏名又は名称原語表記】WICKEDER WESTFALENSTAHL GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】521009304
【氏名又は名称】ミクロメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Micrometal GmbH
【住所又は居所原語表記】Renkenrunsstrasse 24,79379 Muellheim,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ベルント レーマン
(72)【発明者】
【氏名】カリーナ フランケン
(72)【発明者】
【氏名】アンゲル ロペス
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-311714(JP,A)
【文献】特開2014-060012(JP,A)
【文献】特表2010-533954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20-50/298
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの構成要素の間に配置するための距離補償要素であって、
- 金属箔(4)を備え、
- 前記金属箔(4)と一体のばね要素(6)を備え、
- 前記ばね要素(6)は、前記金属箔(4)の平面(E)から突出し、
- 前記ばね要素(6)は、前記構成要素の少なくとも一つと接触するように設計され、
- 複数のスリット(10)を備えたスリット配置物(8)が前記金属箔(4)に導入され、
- 前記金属箔(4)は、延伸によって変形される、
距離補償要素であって、
- 前記金属箔(4)は、少なくとも二つの金属層からなること、
- 少なくとも一つの金属層は、第一金属からなること、
- 少なくとも一つの金属層は、第二金属からなること、
- 前記第一金属は、前記第二金属よりも大きい弾性係数を有すること、および
- 前記第二金属は、前記第一金属よりも高い熱伝導率を有すること
を特徴とする、距離補償要素。
【請求項2】
前記金属箔(4)は、一部のセクションにばね要素(6)が提供され、一部のセクションが平坦な金属箔(4)として形成されることを特徴とする、請求項1に記載の距離補償要素。
【請求項3】
前記第一金属はステンレス鋼で作られ、前記第二金属はアルミニウム合金で作られることを特徴とする、請求項1または2に記載の距離補償要素。
【請求項4】
前記金属箔は、三層からなり、二つの外側層は前記第一金属からなり、中間層は前記第二金属からなることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の距離補償要素。
【請求項5】
前記金属箔は、少なくとも一部のセクションで、少なくとも一つの層に強磁性金属を含むことを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の距離補償要素。
【請求項6】
前記金属箔(4)の少なくとも片側に電気絶縁層が配置されることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の距離補償要素。
【請求項7】
二つの構成要素の間に配置するための距離補償要素としての金属箔の使用であって、
前記金属箔(4)は、請求項1~6の何れか一項にしたがって形成される、
使用。
【請求項8】
第一構成要素(22)、距離補償要素(2)および第二構成要素(24)の配置物であって、
- 前記距離補償要素(2)は、請求項1~6の何れか一項にしたがって形成され、
- 前記距離補償要素(2)は、前記二つの構成要素(22、24)の間に配置され、
- 前記距離補償要素(2)の前記ばね要素(6)は、前記第一構成要素(22)の寸法の変動を補償し、
- 前記距離補償要素(2)は、前記第一構成要素(22)から前記第二構成要素(24)に熱エネルギーを伝達する、
配置物。
【請求項9】
前記ばね要素(6)が前記金属箔(4)の平面の片側だけに突出するときには、前記ばね要素(6)は、前記構成要素の一方と接触し、変形されていない部分のある前記金属箔(4)は、他方の構成要素と接触することを特徴とする、請求項8に記載の配置物。
【請求項10】
前記第一構成要素(22)と前記第二構成要素(24)との間に、請求項1~6の何れか一項に記載の少なくとも二つの距離補償要素(2)が配置されることを特徴とする、請求項8または9に記載の配置物。
【請求項11】
- 前記第一構成要素(22)は、電気構成要素であること、および
- 前記第二構成要素(24)は、機械的構成要素であること
を特徴とする、請求項8~10の何れか一項に記載の配置物。
【請求項12】
- 前記電気構成要素は、バッテリ、バッテリセル配置物またはディスプレイであること、および
- 前記機械的構成要素は、バッテリトレイ、ハウジング、車両もしくは航空機のダッシュボード、ディスプレイパネルまたは道路標識であること
を特徴とする、請求項11に記載の配置物。
【請求項13】
前記金属箔(4)は、バッテリの電気接点を接続し、電線に接続されることを特徴とする、請求項8~12の何れか一項に記載の配置物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離補償要素、距離補償要素としての金属箔の使用、および距離補償要素が間に配置された二つの構成要素の配置物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な寸法の個々の構成要素が設置される構成要素群には、しっかりとした配置のために、ギャップフィラーとしても知られる距離補償要素が必要である。距離補償要素は、構成要素群が組み立てられたときにハウジング内に配置され、生産または熱膨張に起因する様々な寸法の他の構成要素を弾性変形能によって保持するのに適する。構成要素群の使用中に構成要素が所定の位置にしっかりと堅固に保持されるように、距離補償要素の弾性により構成要素がハウジング内にしっかりとクランプされる。
【0003】
そのような構成要素群の例は、蓋で閉じられるバッテリトレイ内のバッテリ配置物である。円形セル、ポーチセルまたは固体セルなどの個々のバッテリユニットまたはバッテリセルの長さおよび/または幅は、生産に起因してミリメートル範囲で互いに異なる。それでもバッテリユニットは、寸法の差が補償され、バッテリトレイの密閉が確実に可能であるようにバッテリトレイ内に置かれなければならない。加えて、バッテリトレイが閉じられたときに、例えば車両内での使用中に振動が生じてもトレイ内のバッテリユニットの移動が確実に阻止されるかまたは少なくとも制限されなければならない。
【0004】
「バッテリ」という用語は、主に充電式バッテリ、すなわち蓄電池に使用されるが、非充電式バッテリにも使用される。
【0005】
この用途では、特許文献1のセラミックプレートまたはアクリルパッド(3M社製)の配置物が知られる。しかし、言及される材料は熱伝導率が低いため、熱伝導箔を配置するなどの追加の対策を講じなければならない。
【0006】
距離補償要素は、他の電気または電子構成要素群にも必要である。スマートデバイス(スマートフォン、タブレット、ノートブック)では、非常に小さなスペースのほか、特に車両の任意の形の一体型ディスプレイ、ディスプレイパネルまたは標識においても距離補償要素が必要である。ここでも、過熱から保護するために機械的距離補償および熱放散の両方が必要である。加えて、電気および/または磁気シールドも要求されうる。これらは、言及された既知の距離補償要素によっては不十分にしか満たされない。
特許文献2、特許文献3、および特許文献4は、熱伝達の改善のために個々のセルの間に要素が置かれるバッテリアレイを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許第10 2010 001 033(A1)号
【文献】米国特許出願公開第2001/007728(A1)号
【文献】米国特許出願公開第2016/260946(A1)号
【文献】米国特許出願公開第2016/164061(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって本発明は、スペーサ要素、および二つの構成要素とスペーサ要素との配置物を改良するという技術的目的に基づく。
【0009】
第一の教示によれば、前述の技術的問題は、金属箔を備え、金属箔と一体のばね要素を備えた、二つの構成要素の間に配置するための距離補償要素であって、ばね要素は金属箔の平面から突出し、ばね要素は構成要素の少なくとも一つと接触するように設計され、複数のスリットを備えたスリット配置物が金属箔に導入され、金属箔が延伸により変形される、距離補償要素によって解決される
【0010】
ばね要素は、金属箔の片側または両側に突出し、弾性的に変形可能である。突出するばね要素は、金属箔の平面に対して任意の斜角で、または直角にもはしる。ばね要素の突出により、それらは弾性高さプロファイルを形成する。ばね要素は、ハウジング内に設置されたときに構成要素の一方とまたは両方の構成要素と接触する。構成要素の長さまたは厚さに応じて、弾性ばね要素は寸法公差を補償すると同時に、ハウジング内の構成要素のしっかりとした堅固な配置を保証する。
【0011】
上述の金属箔は、金属特性によってこのように距離補償のための良好な弾性ならびに良好な熱伝導率を同時に有するため、記載された距離補償要素は良好な機械的安定性だけでなく良好な熱放散も同時に提供できる。
【0012】
金属箔のばね要素を形成するための様々な可能性があるが、それらを以下で説明する。
【0013】
距離補償要素の好ましい実施形態では、複数のスリットを備えたスリット配置物が金属箔に導入されて個々のセクションが形成され、突出するばね要素に選択的に形成されうる一方で、金属箔の他のエリアは基本的に金属箔の元の平面に残る。このようにして機能的形状が形成され、さらなる製造ステップで変形される。スリットは任意の形を有し、特に完全にまたは部分的に真直ぐであり、湾曲し、曲げられ、および/または丸型であり、あるいはらせん形でもありうる。
【0014】
一方では、スリット配置物は、打ち抜きによって安価に高いプロセス速度で生産されうる。この目的のために、切断、ナイフまたはパンチがエンドレス金属箔に使用される。機械的ツールの使用により最初の金属箔が迅速に加工されることが可能になるが、プロセス中に割れおよび鋭利なエッジが生じ得、特に小さな寸法でのさらなる使用に有害な影響を及ぼしうる。
【0015】
他方で、スリット配置物は、エッチングによってより高い精度で、しかしより大きな労力で生産されうる。エッチングでは、例えばUVリソグラフィを用いてエッチングが準備され、次に酸性エッチャントが施される。エッチングにより、スリットのエッジエリアの形状の非常に正確な調整(面取り、丸み付け)が可能になるため、金属箔のスリットによって作製されるセクションの変形がより正確に実行されうる。したがってこの生産は、距離補償要素の小さな寸法に特に適する。
【0016】
前述のスリット配置物は、スリットの規則的なパターンを有しうるため、変形後にばね要素の規則的な配置が生じる。同様に、スリット配置物が可変長さ値および/または間隔値のパターンを形成することが可能であるのが好ましい。したがって、金属箔上のばね要素の配置は、標的化された様式で配置、グループ化、または分離されうる。
【0017】
スリット配置物によって形成され、形成が意図されるセクションは、機械的に力を加えることによって形成されうる。この力は様々なやり方で加えられうる。
【0019】
本発明によれば、金属箔は延伸によって変形され、いわゆるエキスパンドメタルを形成する。金属箔が延伸されると、スリットで隔てられたセクションが引き離される。同時に、箔の材料は、スリット間の延伸方向に対して横方向に配置されたセクションがねじれ、平面外に変形されるように、力に降伏する。したがって、延伸中にセクションごとにばね要素が形成される。ばね要素の形は、スリット配置物の構造によって決定される。突出するセクションはある角度で突出し、構成要素との接触時に曲げられて、構成要素との平面接点を形成する。
【0023】
さらに、金属箔は、一部のセクションにばね要素が提供され、一部のセクションが平坦な金属箔として設計されることが可能である。これにより、一方ではばね要素の非対称配置が、他方ではばね要素のない平坦セクションが可能になり、熱伝達がより良好になる。したがって、ばね要素を備えた金属箔のセクションは、バッテリを置いて留めるために使用されうる一方で、金属箔の平坦なセクションは、ハウジングなどの別の構成要素に熱を放散しうる。
【0024】
上述の金属箔は通常、0.02~1.0mmの範囲内、特に最大2.0mmの厚さを有する。金属箔から突出するばね要素の高さは、0.05~5mmの範囲内、特に最大10mmであるのが好ましく、高さはそれぞれの用途に適合されうる。この場合ばね要素は、例えば最大3mm、特に最大5mmの公差を埋めうると同時に、衝撃または振動による機械的応力下でも構成要素の互いに対するしっかりとした配置を保証しうる。
【0025】
金属箔は単層構造を有し得、特に銅合金、特にいわゆるSolまたはK合金、銅ベリリウム合金、銅亜鉛合金、銅ジルコニウム合金、銅スズ合金の金属の一つからなる。
【0026】
好ましい実施形態では、金属箔は少なくとも二つの金属層からなり、少なくとも一つの金属層は第一金属を含み、少なくとも一つの金属層は第二金属を含み、第一金属は第二金属よりも大きい弾性係数を有し、第二金属は第一金属よりも高い熱伝導率を有する。
【0027】
金属箔は三つの層からなり、二つの外側層は第一金属からなり、中間層は第二金属からなるのが好ましい。このようにしてバイメタル効果が回避されるため、異なる動作温度でも金属箔の寸法安定性が保証される。同様に、構成要素の組み立て時に機械力を生成するためにバイメタル効果を特に得るために、二つの金属層のみからなる構造体が可能である。
【0028】
より高い弾性係数の第一金属は、フェライトおよびオーステナイト鋼またはステンレス鋼、低炭素形成鋼(DD11/1.0332)、ステンレス鋼(磁性)、特にX6Cr17/1.4016、ステンレス鋼(非磁性)、特にX5CrNi18-10/1.4301、鉄ニッケル合金、ニッケル、特にNi99.2/2.4066、ニッケル合金およびチタン、特にTi Grade1/3.7025の群より選択されるのが好ましい。
【0029】
好ましい様式では、より高い熱伝導率の第二金属は、銅、低合金銅合金、特にCu-ETP(E-Cu)/CW004A、アルミニウム、特にAl99.5/EN-AW-1050A、マグネシウム、亜鉛、銅、マンガン、鉛および/またはシリコン含有量をもつアルミニウム合金、青銅合金、特にCuSn4/CW450K、銀、金の群より選択される。
【0030】
前記第一金属は、特に90~210kN/mm程度の弾性係数を有し、前記第二金属は、70~140kN/mm未満程度の弾性係数を有する。
【0031】
前記第二金属は、100W/(mK)より大きく、最大400W/(mK)程度の熱伝導率を有し、前記第一金属は、10~100W/(mK)の間程度の熱伝導率を有する。
【0032】
したがって、第二金属の熱伝導率は、従来技術で一般的であるようにプラスチックを使用する場合よりも10~1000倍大きい。
【0033】
金属箔の特に好ましい実施形態では、第一金属はステンレス鋼を含み、第二金属はアルミニウム合金を含む。
【0034】
金属箔の金属層はメッキされ、強い結合を形成するのが好ましい。
【0035】
金属箔の金属層は異なる厚さを有し、より高い弾性係数の第一金属で作られた少なくとも一つの金属層は、より高い熱伝導率の第二金属で作られた少なくとも一つの層よりも薄いのが好ましい。これは、ばね要素の弾発特性を生み出すために必要な厚さは小さい一方で、第二金属の層の厚さは、良好な熱放散のためにできる限り大きくすべきためである。この場合、第一金属の層の厚さは、金属箔の総厚の5~20%であるのが好ましく、したがって二層構造体では、第二金属の層は、総厚の80~95%を占めるのが好ましい。三層構造体では、第二金属の中間層の厚さは、特に60~90%の相対的厚さを有する。
【0036】
距離補償要素の前述の実施形態では、金属はその熱伝導率および弾性係数の観点で説明されている。金属は導電性であり、電場に対するシールドを形成する。このように距離補償要素は電気シールドの追加の特性を有し、これは電子デバイスと共に使用される際に特に有利である。
【0037】
距離補償要素のさらなる実施形態では、金属箔は、少なくとも一部のセクションで、好ましくは表面全体にわたって、少なくとも一つの層に強磁性金属を有する。したがって、金属箔により電場に対するシールドが得られるだけでなく、金属箔により磁場に対する構成要素の追加の保護も生じ、したがって構成要素の電磁両立性(EMC)の向上が保証される。強磁性金属の例は、純鉄、炭素鋼、ブリキ、鉄ニッケル合金、コバルト鉄合金、ミューメタル、アモルファス材料、フェライト合金、ステンレス鋼、特にX6Cr17/1.4016以上の合金フェライト鋼1.4568である。
【0038】
距離補償要素は、電子または電気構成要素と共に使用されるのが好ましい。これらの構成要素は通常、それ自体が電気的に絶縁されるが、金属箔の少なくとも片側に電気絶縁層が配置されることが有利でありうる。この層は、箔として、特にカプトン箔として、または液体材料の施用によって形成されうる。絶縁層は、電気絶縁のために表面全体にわたってまたは部分的に施されうる。突出するばね要素に絶縁層を施すときには、絶縁層が施された後にばね要素の機能が制限されないかまたはわずかにしか制限されないことを考慮しなければならない。絶縁被覆は、距離補償要素の電流および漏れ電流を阻止する改善された電気絶縁ならびに改善された絶縁耐力を提供する。
【0039】
あるいは距離補償要素は、構成要素を、例えば同じ極性のバッテリを互いに電気接触させるためにも使用されうる。この目的のために、構成要素の接触点または接触表面が金属箔に、特に突出するばね要素に接するようにされる。既に説明した距離補償要素のさらなる特性により、構成要素の安全な接触が保証されうる。
【0040】
接触を改善し、それによって熱伝導中の高い境界抵抗を回避するために、距離補償要素の機械加工されたばね要素のエリアが、接着剤要素の施用によって、例えば熱伝導箔の両側に接着剤、ペーストなどが提供されることによって、特定の表面処理によって、例えば構造化もしくは打ち抜きによって、または被覆によって、改善されうる。列挙された追加の構成要素は、金属または非金属、有機または無機材料で作られうる。
【0041】
本発明によれば、上で概説した技術的問題は、金属箔を二つの構成要素の間に配置するための距離補償要素として使用することによっても解決され、この金属箔は、上で説明した例および変形例の一つにしたがって形成される。
【0042】
技術的問題は、第一構成要素、距離補償要素、および第二構成要素の配置物であって、金属箔は、前述の例および変形例の一つにしたがって形成され、距離補償要素は、二つの構成要素間に配置され、距離補償要素のばね要素は、第一構成要素の寸法の変動を補償し、距離補償要素は、第一構成要素から第二構成要素に熱エネルギーを伝達する、配置物によっても解決される。
【0043】
ばね要素が金属箔の平面の片側だけに突出する場合に、ばね要素は構成要素の一方と接触し、変形されていないセクションのある金属箔は他方の構成要素と接触するのが好ましい。ばね要素が金属箔の両側に突出する場合には、距離補償要素の両側でばね要素が構成要素と接触する。
【0044】
記載された配置物のさらに好ましい実施形態は、上述のタイプの少なくとも二つの距離補償要素が、第一構成要素と第二構成要素との間に配置されることである。したがって、少なくとも二つの距離補償要素の弾発特性および熱伝導特性が足し合わされる。
【0045】
一般的に説明された配置物は、様々な応用例で用いられうる。第一構成要素は、電気構成要素、特にバッテリ、バッテリセルアセンブリまたはディスプレイであり得、第二構成要素は、機械的構成要素、特にバッテリトレイ、ハウジング、車両もしくは航空機のダッシュボード、ディスプレイパネルまたは道路標識でありうる。
【0046】
距離補償要素の重要な応用例は、車両のバッテリ配置物における使用である。導入部で説明したように、充電式バッテリ、好ましくは丸型セルは、例えば最大3mmの範囲内の製造公差を有する。バッテリセルは、蓋で閉じられるバッテリトレイ内に隣り合って配置される。バッテリトレイには、距離補償要素が底部に配置され、距離補償要素の上にバッテリセルが個別にまたは群ごとに群で置かれる。蓋が閉じられると、バッテリまたはバッテリ群の上端が蓋の内側に接触し、距離補償要素に対して下方に押し付けられる。距離補償要素は弾性変形可能なばね要素を有するため、距離補償要素は負荷に応じて一部のセクションで降伏し、その結果、バッテリの様々な長さの補償が得られる。
【0047】
したがって距離補償要素はまず、バッテリまたはバッテリ群がバッテリトレイとカバーとからなるバッテリハウジング内に弾性的かつ弾発的に保持される、機械的留め機能を有する。このようにして、バッテリは、ショックまたは振動によって引き起こされるバッテリハウジング内での移動に対して留められる。
【0048】
距離補償要素は、バッテリとの堅固な接触により、バッテリから熱を吸収し、この熱をバッテリトレイとの接触を通して放散することもできる。機械的保護に加えて、距離補償要素は熱放散の機能も担う。
【0049】
上述のように、距離補償要素の金属箔は、設置時にバッテリまたはバッテリ群と接触する電気絶縁被覆を有しうる。これにより、距離補償要素を介して電気エネルギーが放散されるのが阻止される。
【0050】
あるいは、距離補償要素の金属箔は、金属箔がバッテリの電気接点を接続し、電線にも接続されて電気エネルギーを伝えるように、被覆されなくてもよい。
【0051】
説明される配置物の別の応用分野は、スマートフォン、タブレット、ノートブックまたは他のスマートデバイスなどの電子デバイスの機械的保護および熱除去である。寸法設定は、前述の車両バッテリの例と比較して大幅に小さいため、距離補償要素の金属箔のばね要素はかなり小さくなる。それでも、そのような電子デバイスにおいて上記と同じ機能性が満たされうる。
【0052】
上述のように、金属箔は、一部のセクションだけにばね要素が提供され、一部のセクションは平坦な金属箔として設計されることもできる。このようにして、一方ではバッテリのエリアでのばね要素の非対称配置と、ハウジング内に配置されたバッテリのエリア外の、より良好な熱伝達のためのばね要素のない平坦なセクションとが実現されうる。したがって、ばね要素のある金属箔のセクションは、バッテリを置いて留めるために使用されうる一方で、金属箔の平坦なセクションは、ハウジングに熱を放散しうる。
【0053】
配置物の別の応用例は、例えば車両または航空機において、スクリーンを取り付けて留めることである。使用されるスクリーンの面積は絶えず大きくなっているのに加えて、湾曲したスクリーンも使用されるため、記載された距離補償要素をスクリーンに使用することが有利である。これは、距離補償要素を既に中に配置したハウジングにそれぞれのスクリーンが挿入されるためである。ハウジングにスクリーンを押し付け、ラッチすることにより、スクリーンが距離補償要素によってしっかりと適所に保持され、製造公差または寸法の変化も金属箔のばね要素を通じた加熱によりここで補償される。この応用例では、熱の放散も有利である。
【0054】
金属箔が、少なくとも一部のセクションで強磁性金属からなることも好ましい。これにより、スクリーンのより良好な電磁両立性(EMC)を得ることが可能になる。車両の電子制御およびデジタル化の増加は、より多くの電気信号が車両内で輸送され、スクリーンの制御信号との干渉につながりうることを意味することから、大型スクリーンでこのEMCが特に有利である。したがって距離補償要素は、機械的保護の改善および熱補償の向上に加えて、スクリーンの電磁両立性も得ることができる。
【0055】
さらに、記載された距離補償要素は、ディスプレイパネルおよび標識においてスクリーンもしくは照明デバイスまたは少なくともバッテリによるその電源を留め、それらの熱管理を改善するためにも使用されうる。
【0056】
以下では、図面を参照しながら実施形態例によって本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明によらない距離補償要素の例を示す。
図2】スリット配置物が挿入された図1による距離補償要素を生産するための金属箔を示す。
図3図1に示される距離補償要素の上面図を示す。
図4図1に示される距離補償要素の側面図を示す。
図4a図1に示される距離補償要素の側面図を示す。
図5a】本発明による距離補償要素の例を示す。
図5b】本発明による距離補償要素の例を示す。
図6a】距離補償要素の生産のための様々なスリット配置物を備えた金属箔の例を示す。
図6b】距離補償要素の生産のための様々なスリット配置物を備えた金属箔の例を示す。
図6c】距離補償要素の生産のための様々なスリット配置物を備えた金属箔の例を示す。
図6d】距離補償要素の生産のための様々なスリット配置物を備えた金属箔の例を示す。
図6e】距離補償要素の生産のための様々なスリット配置物を備えた金属箔の例を示す。
図6f】距離補償要素の生産のための様々なスリット配置物を備えた金属箔の例を示す。
図7a】距離補償要素を生産するためのスリット配置物を備えた金属箔のセクションを示す。
図7b】距離補償要素を生産するためのスリット配置物を備えた金属箔のセクションを示す。
図8a】距離補償要素を生産するためのスリット配置物を備えた金属箔のセクションを示す。
図8b】距離補償要素を生産するためのスリット配置物を備えた金属箔のセクションを示す。
図9a図8による距離補償要素を備えた本発明による配置物を示す。
図9b図8による距離補償要素を備えた本発明による配置物を示す。
図10a】本発明によらない距離補償要素の例を示す。
図10b】本発明によらない距離補償要素の例を示す。
図11】本発明によらない距離補償要素の例を示す。
図12】本発明による配置物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明による様々な実施形態の以下の説明では、様々な実施形態において構成要素の寸法または形が異なっていても、同じ構成要素に同じ参照符号が与えられる。
【0059】
図1図4は、二つの構成要素の間に配置するための本発明による距離補償要素2の第一実施形態を示し、図面は、金属箔4の様々な状態および図を示す。
【0060】
まず、完成した距離補償要素2が図1に斜視図で示され、金属箔4および金属箔4と一体に形成されたばね要素6からなる。ばね要素6は金属箔4の平面Eから突出し、構成要素の少なくとも一つと接触するように設計される。そのような配置物が図12に示され、以下でより詳細に説明される。
【0061】
未加工の金属箔4に、最初にスリット配置物8が提供される。図2は、さらなる加工前のスリット配置物8を備えた金属箔4のセクションを示す。スリット配置物8は、機能的形状を形成する互いに平行に挿入されたいくつかのスリット10からなる。スリット10は、ナイフ、切断または打ち抜きを用いて、あるいはエッチングによって金属箔4に作製される。
【0062】
図3は、金属箔4が形成された後の金属箔の同じセクションを示し、図1は、金属箔2全体の斜視図を示す。何れの場合も、二つのスリット10の間のセクションが、金属箔4の平面Eから一方の側に向かって形成され、すなわち打ち抜かれており、スリット10の間の隣接するセクションは他方の側に打ち抜かれている。したがって、形成されたセクションは金属箔4の両側に交互にあり、ばね要素6を形成する。ばね要素6はそれぞれ、設置時に構成要素の一つと接触する平坦セクションを有する。突出するばね要素6の側面は深絞りされる。
【0063】
ばね要素6のこの配置物は、図4およびあるセクションの拡大図である図4aからも明らかである。図4は、金属箔4の断面を示し、図4aは、ばね要素6の交互の進路をはっきりと示す。
【0064】
上述の金属箔4の材料選択は、距離補償要素2が一つの構成要素で二つの異なる機能性を満たすように、良好な弾性および良好な熱伝導率の組み合わせを同時に可能にする。
【0065】
図5は、金属箔4を延伸することによって生産される、本発明による距離補償要素2のさらなる実施形態を示す。図5aは、延伸前のスリット配置物8のスリット10が挿入された初期状態の金属箔4を示す。スリット10は距離aを有する。
【0066】
図5bでは金属箔4が延伸後に、すなわちエキスパンドメタルとして示される。金属箔4を左に示す二つの矢印の方向に延伸することにより、スリットが引き離されて、ウェブ13が間に配置された楕円形開口部11が形成される。この結果、一方では延伸された金属箔4のより大きな長さが生じて、距離a’が元の距離aよりも大きくなる。他方で、ウェブ13は延伸時に常であるように金属箔4の平面E(図5の上側セクションの描画平面)に対して横方向に設けられ、ウェブ13は図5にしたがって上方および下方に撓められ、上方および下方に突出するばね要素6を形成する。
【0067】
ウェブ13は図5bに斜線として示される。拡大されたセクションにおいて、文字HおよびTは、二つの楕円形開口部11の間のウェブ13の対応するエッジが上方(H-高)または下方(T-低)に突出することを示す。
【0068】
このように、金属箔4は、延伸によって距離補償要素に変形されている。突出するばね要素6は、金属箔4の平面Eに対してある角度ではしり、高さの変化を引き起こし、このようにして弾性ばね要素6を形成する。
【0069】
図6a~図6fは、異なる形態のスリット配置物10を有する金属箔4の六つのさらなる設計をセクションで示す。全ての例において、引っ張りの方向は垂直であり、スリット8によって境界された金属箔4のそれぞれの例示的な斜線付きセクションは、金属箔4が延伸されたときに平面E(図6の描画平面)に対して横方向に真直ぐに延び、ばね要素6を形成する。
【0070】
図7aおよび図7bは、ある実施形態の例を示し、延伸されていない金属箔4が図7aに示される。図7bは、延伸後の金属箔4を示す。図示の矢印の方向に延伸することにより、中央セクションがねじれ、平面E(図7a、図7bの描画平面)を横断する突出するばね要素6を両側に形成する。
【0071】
図6および図7を参照して上で説明したばね要素6は、金属箔4の平面Eを横断してある角度で突出する。ばね要素6が構成要素と接触して停止すると、ばね要素6は部分的に曲げられ、その結果弾性ばね力を生成する。このプロセスにおいて、ばね要素6は、熱伝達を実現するために少なくとも部分的に構成要素と表面接触する。
【0072】
図8は、本発明による距離補償要素2のさらなる設計を示す。図8aによれば、金属箔4は、初期状態で長方形または正方形の基面を有するスリット配置物10を有する。入れ子に配置された正方形のスリット10は、側部エッジに沿って角部または中央で交互に中断部を有する。
【0073】
図8bは、金属箔4の形成を示し、金属箔はスリット構造体の外側エリアにおいて相対的に下方に押され、中央エリアは相対的に上方に押される。これにより、金属箔4の平面Eから突出するピラミッドに類似したアコーディオン状構造体が作製される。
【0074】
さらなる実施形態では、図8を参照して前述したばね要素2が距離補償要素2に複数提供されうる。
【0075】
図9は、円筒形バッテリ16のためのレセプタクル14を備えたバッテリホルダ12の形の図8による距離補償要素2の応用例を示す。レセプタクル14は、図9aでは弛緩状態の右エッジに突出するばね要素6を備えた距離補償要素2を有する。図9bに示すようにバッテリ16が挿入されると、ばね要素6は部分的に圧縮され、バッテリ16をレセプタクル14内にしっかりと保持する。同時に、距離補償要素2は、熱放散および電気接触ならびにばね要素6とバッテリ16の負極との平坦接触を通じた電気エネルギーの伝達の両方を保証する。
【0076】
図10a、図10bおよび図11は、それぞれシャーリングされた金属箔4からなる距離補償要素2の二つのさらなる実施形態を示す。
【0077】
図10aは、金属箔4の断面を示し、図10bは、一部を切断した三次元描写を示す。前述の実施形態の例とは対照的に、金属箔4はスリット構造体を有さず、平坦な開始金属箔を平行線に沿って規則的に繰り返される間隔で折って曲げることによって生産される。その結果、細長ばね要素6が両側に突出する三次元構造体が生じる。図10aに示す断面では、各ばね要素6が断面に斜めにはしる内側セクション6aを有するのが見え、これらは力が垂直に作用した場合に倒れ、ばね要素6の必要な弾性を引き起こす。
【0078】
図10bでは、ばね要素6が、折って曲げる前に平坦なばね要素6を打ち抜くことによって導入された、離隔された突出する接触要素18を有するのも見える。接触要素18により、ばね要素6のばね力は、いくつかの接触セクションに集中される。
【0079】
図11は、図10の例と類似の別の実施形態を示す。図10の距離補償要素2は、ばね要素6および内側セクション6aの突出する表面の進路が真直ぐである。一方で、図11による距離補償要素は、ばね要素6の突出する表面のわずかに湾曲した進路を示す。
【0080】
図12は、複数の充電式バッテリ22の形の第一構成要素、図1による距離補償要素、およびバッテリトレイ24の形の第二構成要素からなる本発明による配置物20を示す。距離補償要素2は、二つの構成要素22および構成要素24の間に配置される。カバー26を閉じ、必要に応じてラッチすることにより、バッテリ22が距離補償要素2に対して下方に押し付けられ、それによりバッテリトレイ24およびカバー26によって形成されるバッテリハウジング内に固定される。
【0081】
したがって距離補償要素2のばね要素6は、個々のばね要素6が互いに独立して変形可能であり、異なるばね力を加えうることから、バッテリ22の寸法の変動を補償する。加えて、距離補償要素2は、構成要素22および構成要素24の両方に載ることによって、使用中または充電中のバッテリの熱エネルギーをバッテリ22からバッテリトレイ24に伝達する。
【0082】
図12の配置物の図は概略図であり、このようなバッテリセル配置物に必要な電気的接続は考慮に入れていない。
図1
図2
図3
図4
図4a
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
図12