(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】陰極からの金属の剥離
(51)【国際特許分類】
C25C 7/08 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
C25C7/08 A
(21)【出願番号】P 2021506659
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 AU2019050876
(87)【国際公開番号】W WO2020037362
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】515080401
【氏名又は名称】グレンコア テクノロジー プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLENCORE TECHNOLOGY PTY LTD
(73)【特許権者】
【識別番号】000174909
【氏名又は名称】三井金属エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン ペル オラ
(72)【発明者】
【氏名】キムリン ノエル ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】木村 直文
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-516943(JP,A)
【文献】特表2013-515849(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103393(WO,A1)
【文献】特表2002-531697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極板上に析出した金属を剥離する方法であって、前記陰極板は、第1の面に析出した第1の金属シートと、第2の面に析出した第2の金属シートとを有し、前記陰極板の下縁部に形成された金属ブリッジが、前記第1の金属シートと前記第2の金属シートを相互接続している、方法において、
第1のロボットアームに連結された第1の剥離装置を動かして前記第1の金属シートを前記陰極板の前記第1の面から分離するステップと、前記第1の剥離装置は、第1の把持装置を有する、
第2のロボットアームに連結された第2の剥離装置を動かして前記第2の金属シートを前記陰極板の前記第2の面から分離するステップと、前記第2の剥離装置は、第2の把持装置を有し、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートは、前記下縁部において前記金属ブリッジによって相互接続されたままである、
前記第1の把持装置で前記陰極板を把持し、前記第1のロボットアームを作動させて前記陰極板を剥離ステーションから取り出し前記陰極板を貯蔵領域または輸送領域に置くようにするステップと、
前記第2の把持装置を使用して前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートの一方または両方を把持し、前記第2のロボットアームを作動させて前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを金属貯蔵領域または金属輸送領域に移動させるステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第2の金属シートは、サイドガイドによって所定の位置に保持され、プッシャが、前記第1の金属シートを前記剥離装置の方へ押し、
前記第2の把持装置が、前記第1の金属シートおよび/または前記第2の金属シートを把持し、前記第2のロボットアームが、作動して、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記金属貯蔵領域または金属輸送領域に移動させる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の金属シートは、前記第2の把持装置によって把持され、前記プッシャが、前記第1の金属シートを前記剥離装置の方へ押して前記第1の金属シートと前記第2の金属シートの間の隙間を閉じ、
前記第2のロボットアームが、作動して、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記金属貯蔵領域または金属輸送領域に移動させる、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の金属シートが前記第2の金属シートの方へ押されると、前記第2の把持装置が、前記第1の金属シートを把持する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のロボットアームが、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを可動支持体に移動させ、第2の把持装置が、作動して、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを解放し、
前記可動支持体が、動いて、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートをコンベヤの上に移動させる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記可動支持体は、支持面を有するダウンエンダを備え、前記支持面は、少なくとも部分的に前記コンベヤの下方に位置する下方位置と、前記支持面が前記コンベヤの上方に延在する上方位置との間で可動であり、
前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートは、前記第2のロボットアームによって、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートが前記上方位置において前記支持面によって支持される位置に移動し、前記第2の把持装置が、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを解放し、
前記第2のロボットアームが、作動して、前記第2の把持装置を前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートから離し、
前記ダウンエンダが、作動して、前記支持面を前記下方位置に移動させ、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記コンベヤと接触させて前記コンベヤによって搬出する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記陰極板の両面からそれぞれ分離するステップは、
前記第1の剥離装置を前記陰極板と前記第1の金属シートの間に配置し、前記第2の剥離装置を前記陰極板と前記第2の金属シートの間に配置するステップであって、前記第1の剥離装置は、前記第1のロボットアームによって移動し、前記第2の剥離装置は、前記第2のロボットアームによって移動する、ステップと、
前記第1の剥離装置を前記第1の金属シートと前記陰極板の間で動かして前記第1の金属シートを前記陰極板から分離し、前記第2の剥離装置を前記第2の金属シートと前記陰極板の間で動かして前記第2の金属シートを前記陰極板から分離するステップであって、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートは、前記下縁部において前記金属のブリッジによって相互接続されたままである、ステップと、
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記剥離ステーションに配置する前に、前記陰極板を曲げて、析出した前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートと前記陰極板との間の上部に小さな隙間を開けた後、剥離プロセスを完了するために前記剥離装置を前記剥離ステーションにおける前記小さな隙間に挿入する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
陰極板上に析出した金属を剥離する装置であって、前記陰極板の第1の面に析出した第1の金属シートと、前記陰極板の第2の面に析出した第2の金属シートと、を有する前記陰極板を支持する支持体を有する剥離ステーションを備え、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートは、前記陰極板の下縁部に析出した金属ブリッジによって相互接続されている、装置において、
前記陰極板の第1の側に配置される第1の剥離マシンと、前記第1の剥離マシンは、第1の剥離装置を搬送する第1のロボットアームを備え、前記第1の剥離装置は、第1の把持装置を有し、前記第1の把持装置は、前記第1のロボットアームを作動させて、前記陰極板からの前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートの剥離の後に、前記陰極板を前記剥離ステーションから取り出すことができるように、前記陰極板を把持するように適合されている、
前記陰極板の第2の側に配置される第2の剥離マシンと、前記第2の剥離マシンは、第2の剥離装置を搬送する第2のロボットアームを備え、前記第2の剥離装置は、第2の把持装置を有し、前記第2の把持装置は、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートの一方または両方を把持するように適合され、前記第2のロボットアームは、前記陰極板からの前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートの剥離の後に、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを金属貯蔵領域または金属輸送領域に移動させるように動作可能である、
を備え、
前記第1の剥離装置および前記第2の剥離装置は、前記第1の金属シートと前記第2の金属シートを相互接続する前記金属ブリッジを壊すことなく、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記陰極板から剥離するように動作可能である、
前記装置。
【請求項10】
前記第1の剥離装置は、前記第1のロボットアームに連結され、前記第2の剥離装置は、前記第2のロボットアームに連結されている、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の剥離装置は、前記第1のロボットアームに直接取り付けられ、前記第2の剥離装置は、前記第2のロボットアームに直接取り付けられ、または、
前記第1の剥離装置は、前記第1のロボットアームと前記第1の剥離装置の間の1つ以上の中間部分を介して間接的に前記第1のロボットアームに取り付けられ、前記第2の剥離装置は、前記第2のロボットアームと前記第2の剥離装置の間の1つ以上の中間部分を介して間接的に前記第2のロボットアームに取り付けられている、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記剥離装置は、前記金属の少なくとも一部を前記陰極板から分離するために、前記金属と前記陰極板の間に挿入するように適合された1つ以上の挿入手段を含む、
請求項9~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記挿入手段は、1つ以上のペンチやナイフ、のみ、くさびなど、またはそれらの任意の組み合わせを具備する、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記金属の外表面に近接して配置されるように適合された補完的手段をさらに備え、前記挿入手段および前記補完的手段が、前記金属の少なくとも一部を把持するように適合されたペンチを形成するようになされている、
請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記挿入手段を複数備え、当該複数の挿入手段は、前記金属の幅全体が前記陰極板から分離されることを確実にするために、前記陰極板の幅の少なくとも一部に沿った点で前記金属と前記陰極板の間の隙間に挿入されるように、互いに間隔をおいて配置されている、
請求項12~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記剥離装置は、剥離手段を備え、前記剥離手段は、前記金属と前記陰極板の間に前記剥離手段を打ち込むだけで十分に前記金属を前記陰極板から剥離することができる形状を有する、
請求項9~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記剥離手段は、くさび形部分を含み、前記くさび形部分は、前記金属と前記陰極板の間に先端から打ち込まれる、
請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記くさび形部分の先端は、剥離中に前記陰極板の底部まで打ち込まれる、
請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記くさび形部分は、前記くさび形部分が前記陰極板の底部まで打ち込まれた時に、前記金属シートと前記陰極板の間の角度が20°以下、15°以下、または約10~12°であるような寸法を有する、
請求項17または18に記載の装置。
【請求項20】
前記くさび形部分は、両面の間の角度が20°以下、15°以下、または約10~12°である、
請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記くさび形部分は、前記くさび形部分の高さが前記金属シートの高さにほぼ等しく、前記くさび形部分の幅が前記陰極板の幅にほぼ等しいような寸法を有する、
請求項17~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記くさび形部分は、複数設けられている、
請求項17~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記複数のくさび形部分は、前記陰極板の幅にわたって互いにほぼ等間隔で配置されている、
請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記剥離手段は、前記剥離手段が前記金属と前記陰極板の間の隙間に打ち込まれる際の摩擦を低減するための1つ以上のローラを備えている、
請求項17~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記剥離手段は、一対のローラを備え、前記一対のローラの一方は、前記金属の内面に接触するように適合され、前記一対のローラの他方は、前記陰極板の表面に接触するように適合されている、
請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記1つ以上のローラは、前記装置の使用中、前記金属の垂直縁部にまたは前記金属の垂直縁部に隣接して位置するように適合されている、
請求項24または25に記載の装置。
【請求項27】
前記1つ以上のローラは、前記金属の各垂直縁部に位置するように適合され、前記くさび形部分は、前記金属の各垂直縁部に位置するように適合された前記1つ以上のローラの中間に位置する、
請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記剥離手段は、前記陰極板に接触する少なくとも1つのローラと、前記金属に接触する少なくとも1つの突起と、を有する、
請求項16~27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記少なくとも1つのローラは、前記陰極板に接触し、それにより前記陰極板への損傷を最小化する、
請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記剥離手段は、前記ロボットアームと一体的に形成され、または、前記ロボットアームは、前記剥離手段の取り付けを可能にするように適合されている、
請求項16~
29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
各ロボットアームは、第1のアームおよび前記第1のアームに枢動可能に連結された第2のアームを備え、前記剥離装置は、前記各ロボットアームの前記第2のアームに枢動可能に連結され、前記各ロボットアームの前記第1のアームは、基台に枢動可能に連結され、前記基台は、垂直軸の周りを回転可能であり、前記第1のアームは、前記基台に水平軸の周りを枢動可能に連結され、前記第2のアームは、前記第1のアームに枢動可能に連結されている、
請求項9~
30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
前記第1のロボットアームおよび前記第2のロボットアームは、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートをそれぞれ前記陰極板から剥離する間中、前記第1の剥離装置および前記第2の剥離装置が互いに同時に動くように制御される、
請求項9~
31のいずれか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記第1の把持装置は、1つ以上のクランプ、吸引装置、もしくはクリップ、またはそれらの任意の組み合わせを具備し、
前記第2の把持装置は、1つ以上のクランプ、吸引装置、もしくはクリップ、またはそれらの任意の組み合わせを具備する、
請求項9~32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
前記第1の把持装置は、1つ以上のクランプを具備し、前記1つ以上のクランプは、電気的に、油圧的に、もしくは空気圧的に、またはそれらの任意の組み合わせで作動し、
前記第2の把持装置は、1つ以上のクランプを具備し、前記1つ以上のクランプは、電気的に、油圧的に、もしくは空気圧的に、またはそれらの任意の組み合わせで作動する、
請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記第1の把持装置は、前記第1の剥離装置の一方の側に配置される少なくとも1つのクランプと、前記第1の剥離装置の反対の側に配置される少なくとも1つのクランプと、を具備し、
前記第2の把持装置は、前記第2の剥離装置の一方の側に配置される少なくとも1つのクランプと、前記第2の剥離装置の反対の側に配置される少なくとも1つのクランプと、を具備する、
請求項9~34のいずれか一項に記載の装置。
【請求項36】
前記第1の把持装置は、前記第1の剥離装置の一部を形成するフレームまたは支持体に取り付けられ、
前記第2の把持装置は、前記第2の剥離装置の一部を形成するフレームまたは支持体に取り付けられている、
請求項9~35のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極板から金属を剥離する方法に関する。また、本発明は、陰極板から金属を剥離する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学プロセスを用いた金属の製造は、陰極板上への金属の析出を伴う。例えば、銅の電解採取または電解精錬では、銅金属がステンレス鋼の陰極板上に析出する。析出銅金属が所望の厚さまで成長すると、陰極板が電解セルから除去され、析出金属が陰極板から剥離される。この分野の労働者の中には、陰極板を陰極ブレードと呼ぶ者もいる。これらの用語は、互換的に使用される。
【0003】
析出金属の陰極板からの剥離は、剥離プラントにおいて高いスループットを達成するために、大幅に自動化されたプロセスを使用して行われることが望ましい。例えば、特許文献1(その全内容は相互参照により本明細書に組み込まれている)には、電気的に析出銅を陰極から剥離するための方法が記載されている。この方法では、陰極が、析出金属と陰極の間の接着結合の強度を超えるが陰極の弾性限界を超えない量だけ曲げられる。これにより、析出金属の少なくとも一部が陰極から分離し、析出金属のその部分と陰極との間に隙間が残る。次いで、陰極の表面と析出金属との間に滑り込むくさびを使用して、析出金属を陰極から剥離する。金属を陰極から剥離するためのくさびの使用は、上下動の動きを見せるくさびを含む。くさびは、金属と陰極板の間の角度が一般的に15~25度となるように、陰極板から離れて金属をえぐる。次いで、把治具を使用して、金属がこの位置にある時に当該金属を把持し、当該金属を陰極板の底部の周りに水平位置まで枢動させる。くさびは、一般的に、高さと幅において陰極よりもはるかに小さく、把持具と共に使用される場合、剥離された金属の底部に弓形のものを生成することがある。特許文献1には、析出金属を陰極から剥離するためにガスブラスト処理を使用することも記載されている。
【0004】
特許文献1の方法は、世界中の多くの銅工場で商業的に実施されており、この方法は、本出願人から市販されているISA PROCESS(登録商標)技術の一部を形成する。
【0005】
金属が陰極板上に析出する場合、金属が陰極板の垂直縁部または側縁部に沿って析出しないようにするために、一般的に陰極板の垂直縁部にエッジストリップが配置される。その結果、金属のシートが陰極板の両側に析出する。このような陰極板の両側の金属シートは、自身の垂直縁部に沿って互いに接合されていない。
【0006】
いくつかのプラントでは、陰極板の底縁部上に金属が析出する前に、陰極板の底縁部をワックスで覆い、または、陰極板の底縁部にボトムストリップを取り付ける。これにより、金属が陰極板の底縁部に沿って析出することが防止され、その結果、陰極板の両側に析出金属のシートは互いに分離したままである。
【0007】
別のプラントでは、陰極板の底縁部が、金属の析出前に、ワックスをかけられたりまたはボトムストリップを取り付けられたりすることなく、その結果、金属が陰極板の底縁部に沿っても析出する。陰極にほぼ平坦な底縁部を設けてもよく(例えば、底縁部に沿って析出金属を壊すことを望まない場合)、あるいは、底縁部にノッチや溝などを設けてもよい。この最後に述べたタイプの陰極は、特許文献2に記載されているように、陰極からの金属の剥離を助けるように設計されている。この場合、陰極は、その上に金属を電着するように設計される。陰極は、その底部に溝を有するように設計され、金属は、その上に析出して壊れやすい部分を形成する。溝は、この溝内に析出金属に弱線が形成されるように成形されるため、析出2つの金属シートの分離は、その弱線上で生じる。このようなプラントでは、陰極板の両側に析出金属シートが、底縁部に沿って析出金属によって互いに接続されている。金属が陰極板の両面だけでなく底縁部に沿っても析出している陰極の剥離の間、くさびは、金属シートを陰極板の両面から押し離して把持具に押し出し、約15~20度の角度になる。その後、把持具は、銅を水平位置に持っていき、引っ張って分離する。
【0008】
しかし、陰極板の底縁部上に析出金属が最初の剥離動作中に壊れない場合、その金属が壊れるまで、金属シートを上下方向に順次曲げる必要がある。その後、把持具を使用して、金属シート間を相互接続する金属が壊れるまで、金属シートを上下方向に曲げる。
【0009】
本出願人の特許文献3(その全内容は相互参照により本明細書に組み込まれている)には、陰極板から金属を剥離するための装置が記載されている。この装置は、金属を陰極板から分離する際に金属と陰極板の間に配置されるように適合された剥離手段を備え、この剥離手段の移動は、ロボットアームの移動によって達成される。
【0010】
特許文献3には、陰極板の両側に析出金属シートを接続する金属ブリッジを壊して陰極板の両側の金属シートを互いに分離することができるいくつかの方法が記載されている。このようにして、各陰極板から2つの別々の金属シートが回収される。別々の金属シートは、通常、多数の金属シートからなるスタックに成形される。
【0011】
特許文献3に記載された装置の変形例は、世界中の多くの場所に設置されている。
【0012】
いくつかの陰極剥離動作において、陰極析出物は、剥離プロセスの間、互いに分離されない。言い換えれば、陰極板の一方の面に析出した金属シートと、陰極板の他方の面に析出した金属シートとを接続する金属ブリッジは、剥離中に壊されることはない。通常は、剥離の後に、下縁部でブリッジを介してまだ接続されている反対側の金属シートを、剥離後に一緒に折り返す。このような剥離システムはより複雑であり、マシンの高スループット(例えば、1時間当たり約500陰極)を達成するためには、剥離マシンにおいて2つの剥離ステーションが必要とされることがわかっている。
【0013】
先行技術の刊行物が本明細書で言及される場合、この言及が、当該刊行物がオーストラリアまたは他のあらゆる国において当該技術分野における周知の一般知識の一部を形成すると認めるものでないことは、明確に理解されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第4840710号明細書
【文献】オーストラリア特許第768314号明細書
【文献】オーストラリア特許第2010210310号明細書
【文献】PCT/FI2004/000719(WO2005/054546A1)
【文献】オーストラリア特許第625243号明細書
【発明の概要】
【0015】
本発明は、陰極板から金属を剥離する方法および陰極板から金属を剥離する装置であって、良好なスループットを提供しつつ、剥離動作中に、陰極板の両面にある析出金属シートを接続する金属ブリッジをそのままの状態に維持することを目的とするものに向けられている。
【0016】
上記の観点から、一態様の本発明は、陰極板上に析出した金属を剥離する方法であって、前記陰極板は、第1の面に析出した第1の金属シートと、第2の面に析出した第2の金属シートとを有し、前記陰極板の下縁部に形成された金属ブリッジが、前記第1の金属シートと前記第2の金属シートを相互接続している、方法において、
第1のロボットアームを備えた第1の剥離装置を動かして前記第1の金属シートを前記陰極板の前記第1の面から分離するステップと、
第2のロボットアームを備えた第2の剥離装置を動かして前記第2の金属シートを前記陰極板の前記第2の面から分離するステップと、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートは、前記下縁部において前記金属ブリッジによって相互接続されたままである、
前記第1のロボットアームに関連付けられた第1の把持装置で前記陰極板を把持し、前記第1のロボットアームを作動させて前記陰極板を剥離ステーションから取り出し前記陰極板を貯蔵領域または輸送領域に置くようにするステップと、
前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを金属貯蔵領域または金属輸送領域に移動させるステップと、
を含む、前記方法に広く存在する。
【0017】
一実施形態において、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを金属貯蔵領域または金属輸送領域に移動させる前記ステップは、前記第2のロボットアームを使用して、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを金属貯蔵領域または金属輸送領域に移動させるステップを含む。一実施形態において、前記方法は、前記第2のロボットアームに関連付けられた第2の把持装置を使用して、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートの一方または両方を把持するステップと、前記第2のロボットアームを作動させて、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記金属貯蔵領域または前記金属輸送領域に移動させるステップと、を含み得る。
【0018】
一実施形態において、前記第2の金属シートは、サイドガイドによって所定の位置に保持され、プッシャが、前記第1の金属シートを前記剥離装置(例えば、くさび)の方へ押し、前記第2のロボットアームに関連付けられた第2の把持装置が、前記第1の金属シートおよび/または前記第2の金属シートを把持し、前記第2のロボットアームが、作動して、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記金属貯蔵領域または金属輸送領域に移動させる。
【0019】
一実施形態において、前記第2の金属シートは、前記第2のロボットアームに関連付けられた前記第2の把持装置によって把持され、前記プッシャが、前記第1の金属シートを前記剥離装置(例えば、くさび)の方へ押して前記第1の金属シートと前記第2の金属シートの間の隙間を閉じ、前記第2のロボットアームが、作動して、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記金属貯蔵領域または金属輸送領域に移動させる。いくつかの実施形態では、前記第1の金属シートが前記第2の金属シートの方へ押されると、前記第2の把持装置が、前記第1の金属シートを把持する。
【0020】
一実施形態では、前記第2のロボットアームが、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを可動支持体に移動させ、前記第2の把持装置が、作動して、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを解放し、前記可動支持体が、動いて、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートをコンベヤの上に移動させる。
【0021】
前記可動支持体は、支持面を有するダウンエンダを備えることができ、前記支持面は、少なくとも部分的に前記コンベヤの下方に位置する下方位置と、前記支持面が前記コンベヤの上方に延在する上方位置との間で可動であり、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートは、前記第2のロボットアームによって、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートが前記上方位置において前記支持面によって支持される位置に移動し、前記第2の把持装置が、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを解放し、前記第2のロボットアームが、作動して、前記第2の把持装置を前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートから離し、前記ダウンエンダが、作動して、前記支持面を前記下方位置に移動させ、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記コンベヤと接触させて前記コンベヤによって搬出する。
【0022】
本発明の方法は、ロボットアームの1つを使用して、陰極板からの金属の剥離後に、陰極板を剥離ステーションから取り出す。もう1つのロボットアームは、剥離した金属シートを金属輸送領域または金属貯蔵領域に移動させるのに使用する。このようにして、ロボットアームの非常に効率的な利用が達成される。さらに、剥離後に剥離ステーションから陰極板を取り出すための個別の搬送手段を有することに関連する資本コストを回避することができる。
【0023】
一実施形態において、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記陰極板の両面からそれぞれ分離するステップは、前記第1の剥離装置を前記陰極板と前記第1の金属シートの間に配置し、前記第2の剥離装置を前記陰極板と前記第2の金属シートの間に配置するステップであって、前記第1の剥離装置は、前記第1のロボットアームによって移動し、前記第2の剥離装置は、前記第2のロボットアームによって移動する、ステップと、前記第1の剥離装置を前記第1の金属シートと前記陰極板の間で動かして前記第1の金属シートを前記陰極板から分離し、前記第2の剥離装置を前記第2の金属シートと前記陰極板の間で動かして前記第2の金属シートを前記陰極板から分離するステップであって、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートは、前記下縁部において前記金属のブリッジによって相互接続されたままである、ステップと、を含む。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、前記陰極板を、前記剥離ステーションに配置する前に曲げてある。このようにして、析出した前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートと前記陰極板との間の上部に小さな隙間を開けることができ、その後、剥離プロセスを完了するために前記剥離装置を前記剥離ステーションにおける前記小さな隙間に挿入することができる。陰極板と析出金属シートの間に剥離装置を挿入する前に陰極板を曲げて析出金属を陰極板から部分的に分離するステップは、当該技術分野において周知である。
【0025】
また、本発明は、陰極板から金属を剥離する装置に関する。
【0026】
第2の態様によれば、本発明は、陰極板上に析出した金属を剥離する装置であって、前記陰極板の第1の面に析出した第1の金属シートと、前記陰極板の第2の面に析出した第2の金属シートと、を有する前記陰極板を支持する支持体を有する剥離ステーションを備え、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートは、前記陰極板の下縁部に析出した金属ブリッジによって相互接続されている、装置において、
前記陰極板の第1の側に配置される第1の剥離マシンと、前記第1の剥離マシンは、第1の剥離装置を搬送する第1のロボットアームを備え、前記第1の剥離マシンは、前記第1のロボットアームに関連付けられた第1の把持装置を有し、前記第1の把持装置は、前記第1のロボットアームを作動させて、前記陰極板からの前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートの剥離の後に、前記陰極板を前記剥離ステーションから取り出すことができるように、前記陰極板を把持するように適合されている、
前記陰極板の第2の側に配置される第2の剥離マシンと、前記第2の剥離マシンは、第2の剥離装置を搬送する第2のロボットアームを備え、前記第2の剥離マシンは、前記第2のロボットアームに関連付けられた第2の把持装置を有し、前記第2の把持装置は、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートの一方または両方を把持するように適合され、前記第2のロボットアームは、前記陰極板からの前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートの剥離の後に、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを金属貯蔵領域または金属輸送領域に移動させるように動作可能である、
を備え、
前記第1の剥離装置および前記第2の剥離装置は、前記第1の金属シートと前記第2の金属シートを相互接続する前記金属ブリッジを壊すことなく、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートを前記陰極板から剥離するように動作可能である。
【0027】
典型的には、前記第1の剥離装置および前記第2の剥離装置を、析出金属シートと陰極板の間の隙間に挿入する。その後、ロボットアームを作動して前記第1の剥離装置および前記第2の剥離装置を陰極板に沿って動かす。これにより、第1の析出金属シートおよび第2の析出金属シートを陰極板から効果的に押し離し、これによって、金属シートが陰極板から剥離されることになる。
【0028】
前記第1の剥離装置は、前記第1のロボットアームに連結されてもよい。前記第2の剥離装置は、前記第2のロボットアームに連結されてもよい。前記剥離装置は、前記ロボットアームに直接取り付けられてもよく、または、前記剥離装置は、間接的に前記ロボットアームと前記剥離装置の間の1つ以上の中間部分に取り付けられてもよい。
【0029】
一実施形態において、前記剥離装置は、1つ以上の挿入手段を含み得る。前記挿入手段は、前記金属の少なくとも一部を前記陰極板から分離するために、前記金属と前記陰極板の間に挿入するように適合され得る。例えば、1つ以上のペンチやナイフ、のみ、くさびなど、またはそれらの任意の組み合わせなど(しかし、これらに限定されない)、任意の適当な挿入手段が提供され得る。いくつかの実施形態では、補完的手段を設けてもよい。この補完的手段は、前記金属の外表面に近接して配置されるように適合されており、前記挿入手段および前記補完的手段が、例えば、前記金属の少なくとも一部を把持するように適合されたペンチを形成するようになされている。
【0030】
いくつかの実施形態では、1つ以上の挿入手段が存在する。本発明のこの実施形態において、当該複数の挿入手段は、好ましくは、前記金属の幅全体が前記陰極板から分離されることを確実にするために、前記陰極板の幅の少なくとも一部に沿った点で前記金属と前記陰極板の間の隙間に挿入され得るように、互いに間隔をおいて配置されている。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記剥離装置は、剥離手段を備え、前記剥離手段は、前記金属と前記陰極板の間に前記剥離手段を打ち込むだけで十分に前記金属を前記陰極板から剥離することができる形状を有し得る。例えば、前記剥離手段は、くさび形部分を含むことができ、前記くさび形部分は、前記金属と前記陰極板の間に先端から打ち込まれる。前記くさび形部分が前記金属に沿って打ち込まれるため、前記くさび形部分の末広面により、前記金属が前記陰極板から剥離されることになる。くさび形部分が使用される本発明の実施形態では、前記くさび形部分の先端は前記陰極板の底部まで打ち込まれることが好ましい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、前記くさび形部分の寸法は、前記くさび形部分が前記陰極板の底部まで打ち込まれた場合でも、前記陰極と前記金属シートの間に比較的小さな角度のみが作られるようなものである。本発明の好ましい実施形態において、前記金属シートと前記陰極板の間の角度は、前記くさび形部分が前記陰極板の底部まで打ち込まれた時に、20°以下、より好ましくは15°以下、最も好ましくは約10~12°である。本発明の好ましい実施形態において、前記陰極と前記金属シートの間の前記比較的小さな角度は、前記くさび形部分に対し、くさびの先端で合流する前記くさび形部分の両面の間に比較的小さな角度を設けることによって達成される。好ましくは、前記くさび形部分の両面の間の角度は、20°以下、より好ましくは15°以下、最も好ましくは約10~12°である。
【0033】
剥離中に陰極板と金属の間の角度を比較的小さな角度に維持することによって(好ましくは、くさび形部分に対して、くさびの先端で合流する両面の間に比較的小さな角度を設けることによって)、金属の、外側へ向かう曲げ(特に金属シート間の相互接続している金属の上方における)を低減または防止することができる。
【0034】
また、好ましくは、前記くさび形部分は、前記くさび形部分の高さが前記金属シートの高さにほぼ等しく、前記くさび形部分の幅が前記陰極板の幅にほぼ等しいような寸法を有する。このようにして、金属とくさび形部分の間の接触を最大にすることができ、剥離プロセスを高効率で実行することができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、複数のくさび形部分を設けてもよい。例えば、本発明の好ましい一実施形態では、4つのくさび形部分を設けてもよい。好ましくは、複数のくさび形部分が存在する場合、前記複数のくさび形部分は、前記陰極板の幅にわたって互いにほぼ等間隔で配置されている。
【0036】
好ましくは、前記剥離手段は、金属と陰極板の間の隙間内に、ほぼ垂直方向に下方に打ち込まれる。本発明のいくつかの実施形態において、金属と陰極板の間の隙間にくさび形部分を打ち込むことは、陰極板から金属を分離させるのに十分であり得るものの、本発明の他の実施形態において、前記剥離手段は、前記剥離手段が前記金属と前記陰極板の間の隙間に打ち込まれる際の摩擦を低減するための1つ以上のローラを備え得る。本発明の一実施形態において、前記剥離手段は、一対のローラを備える。本発明のこの実施形態において、好ましくは、前記一対のローラの一方は、前記金属の内面に接触するように適合され、前記一対のローラの他方は、前記陰極板の表面に接触するように適合されている。本発明のいくつかの実施形態において、前記1つ以上のローラは、前記装置の使用中、前記金属の垂直縁部にまたは前記金属の垂直縁部に隣接して位置するように適合されていてもよい。本発明の好ましい実施形態において、前記1つ以上のローラは、前記金属の各垂直縁部に位置するように適合されている。本発明のこの実施形態において、前記くさび形部分は、前記金属の各垂直縁部に位置するように適合された前記1つ以上のローラの中間に位置する。
【0037】
別の実施形態において、前記剥離手段は、前記陰極板に接触する少なくとも1つのローラと、前記金属に接触する少なくとも1つの突起と、を有する。この突起は、くさび形の突起であってもよい。この突起は、前記少なくとも1つのローラの下方に突き出てもよい。この実施形態において、前記少なくとも1つのローラは、前記陰極板に接触し、それにより前記陰極板への損傷を最小化する。これは、陰極板が何度も再使用されるため、望ましい。
【0038】
また、本発明では、特許文献3に記載された剥離手段など、他の剥離手段を使用してもよい。
【0039】
本発明では、任意の適切なロボットアームを使用することができる。しかし、好ましくは、ロボットアームは、陰極から金属を剥離し且つ陰極板または剥離した金属シートを移動させるのに必要な動き(例えば、曲げおよび/または枢動)をすることができるような適切な構造を有する。したがって、好ましくは、ロボットアームには、当該ロボットアームが必要な動きをすることを可能にする1つ以上のヒンジ部分が設けられている。
【0040】
ロボットアームは、例えば、バッテリや商用電源、発電機、太陽光発電など、またはそれらの任意の組み合わせなど(しかし、これらに限定されない)、任意の適切なエネルギー源を使用して電力供給され得る。
【0041】
一実施形態において、各ロボットアームは、第1のアームおよび前記第1のアームに枢動可能に連結された第2のアームを備え得る。前記剥離装置は、前記各ロボットアームの前記第2のアームに枢動可能に連結され得る。前記各ロボットアームの前記第1のアームは、基台に枢動可能に連結され得る。前記基台は、垂直軸の周りを回転可能であり得る。前記第1のアームは、前記基台に、例えば水平軸の周りを枢動可能に連結され得る。前記第2のアームは、前記第1のアームに、例えば水平軸の周りを枢動可能に連結され得る。剥離装置は、第2のアームに、例えば水平軸の周りを枢動可能に連結され得る。ロボットアームは、第2のアームの遠位端が基台に対して上下方向および内外方向に動くことができるように配置され得る。ロボットアームは、プログラマブルコントローラによって制御され得る。ロボットアームの動きは、プログラマブルコントローラにプログラムされ得る。第1のロボットアームは、一連の第1動作を完了するようにプログラムされ得る。第2のロボットアームは、一連の第2動作を完了するようにプログラムされ得る。前記第1のロボットアームおよび前記第2のロボットアームは、前記第1の金属シートおよび前記第2の金属シートをそれぞれ前記陰極板から剥離する間中、前記第1の剥離装置および前記第2の剥離装置が互いに同時に動くように制御され得る。
【0042】
前記剥離手段は、前記ロボットアームと一体的に形成されてもよく、または、前記ロボットアームは、前記剥離手段の取り付けを可能にするように適合されてもよい。剥離手段は、任意の適切な技術を使用してロボットアームに取り付けられ得る。典型的には、剥離手段は、ボルトやナット等によってロボットアームに連結される可能性が高い。
【0043】
前記第1の把持装置は、陰極板を把持し保持することができる任意の適切な把持装置を具備し得る。当該把持装置は、1つ以上のクランプ、吸引装置、もしくはクリップ、またはそれらの任意の組み合わせを具備し得る。本発明のいくつかの実施形態において、当該把持装置は、1つ以上のクランプを具備し、前記1つ以上のクランプは、電気的に、油圧的に、もしくは空気圧的に、またはそれらの任意の組み合わせで作動し得る。
【0044】
前記第1の把持装置は、前記第1の剥離装置の一部を形成するフレームまたは支持体に取り付けられ得る。
【0045】
前記第1の把持装置は、前記第1の剥離装置の一方の側に配置される少なくとも1つのクランプと、前記第1の剥離装置の反対の側に配置される少なくとも1つのクランプとを具備し得る。適切には、第1の把持装置が陰極板の両側縁部で陰極板を把持することにより、陰極板が剥離ステーションから外へ移動する間中陰極板をしっかりと保持する。
【0046】
前記第2の把持装置は、金属シートを把持し保持することができる任意の適切な把持装置を具備し得る。前記第2の把持装置は、1つ以上のクランプ、吸引装置、もしくはクリップ、またはそれらの任意の組み合わせを具備し得る。本発明のいくつかの実施形態において、前記第2の把持装置は、1つ以上のクランプを具備し、前記1つ以上のクランプは、電気的に、油圧的に、もしくは空気圧的に、またはそれらの任意の組み合わせで作動し得る。
【0047】
前記第2の把持装置は、前記第2の剥離装置の一方の側に配置される少なくとも1つのクランプと、前記第2の剥離装置の反対の側に配置される少なくとも1つのクランプと、を具備し得る。適切には、第2の把持装置が金属シートの両側縁部で金属シートの一方または両方を把持することにより、金属シートが剥離ステーションから外へ移動する間中金属シートをしっかりと保持する。一実施形態では、第1の金属シートを保持するために第1の一連のクランプが設けられ、第2の金属シートを保持するために第2の一連のクランプが設けられる。
【0048】
前記第2の把持装置は、前記第2の剥離装置の一部を形成するフレームまたは支持体に取り付けられ得る。
【0049】
一実施形態では、第1のロボットアームに関連付けられた把治具を使用して、陰極板の縁部を把持し、陰極板を銅の外被(析出した銅)から持ち上げる。これらの把治具は、陰極板への引っかき傷または他の損傷を避けるために、滑らかな把持面を有し得る。第2のロボットアームに関連付けられた把治具は、外被銅(析出した銅)を把持する。いくつかの実施形態では、剥離用くさびの各側(互いに反対側)に2つの把治具があり、両方の銅シートを持ち上げのために固定するようになっている。一次把治具は、下方への剥離動作が完了した時に銅を把持する。反対側の二次把治具は、第1のロボットアームが外皮の内側から陰極板を取り外すのを待つ。押圧装置は、二次把治具が把持できるように、二次銅シートをくさびに押し上げている。銅把治具は、本出願人の特許文献3に記載されたオリジナルのロボット剥離マシンに類似した設計になっている。
【0050】
本発明の全ての態様において、曲げステーション(これは、陰極から金属シートを剥離する前に陰極を曲げる)が提供される。この曲げステーションは、陰極を曲げ、陰極と金属の少なくとも一部との間の接着結合を壊す。これは、例えば、特許文献1に記載された方法に従って、または、特許文献4に記載されているように陰極の垂直方向に回動可能に動かせる剥離素子を使用することによって、達成され得る。また、隙間を形成するために、当業者に知られているまたは当該文献に記載されている任意の他の曲げ動作を使用してもよい。
【0051】
陰極板と金属の間の隙間を維持するために、金属と正極板の間に1つ以上のくさびを挿入してもよい。この点に関する一例は、特許文献5の
図12および
図13に紹介されている。あるいは、金属と正極板の間に1つ以上のアームを挿入し、そのアームを陰極板から少し引き離して金属と陰極板の間の隙間を維持するようにしてもよい。あるいは、金属と陰極板の間に1つ以上のアームを挿入し、金属を棒の方へ押して、銅シートに小さな外側への曲げを作るようにしてもよい。これにより、銅シートが陰極ブレードに後退するのを防ぐ。
【0052】
本発明は、電解採取プラントおよび電解精製プラントの両方に使用され得る。
【0053】
本明細書に記載された特徴はいずれも、本発明の範囲内で、本明細書に記載された他の1つ以上のいずれの特徴とも任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0054】
本明細書におけるどの先行技術への言及も、先行技術が周知の一般知識の一部を形成すると認めたりいかなる形態であれ示唆したりするものとして解釈されず、また解釈されるべきでもない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
以下の図面を参照して、本発明のさまざまな実施形態を説明する。
【0056】
【
図1】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わる一ステップの側面図を示す。なお、
図1~
図14では、明確化のため、剥離装置が取り付けられているロボットアームは取り除かれている。
【
図2】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わる一ステップの斜視図を示す。
【
図3】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わる他のステップの側面図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わる他のステップの斜視図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わるさらに他のステップの側面図を示す。
【
図6】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わるさらに他のステップの斜視図を示す。
【
図7】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わるさらに他のステップの側面図を示す。
【
図8】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わるさらに他のステップの斜視図を示す。
【
図9】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わるさらに他のステップの側面図を示す。
【
図10】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わるさらに他のステップの斜視図を示す。
【
図11】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わるさらに他のステップの側面図を示す。
【
図12】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わるさらに他のステップの側面図を示す。
【
図13】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わるさらに他のステップの側面図を示す。
【
図14】本発明の一実施形態による、析出金属を陰極板から剥離することに関わるさらに他のステップの側面図を示す。
【
図15】本発明による、析出金属を陰極板から剥離するステップを行う装置の斜視図を示す。なお、
図15では、ロボットアームが示されている。
【
図16】析出金属を陰極板から剥離し、その陰極板を剥離ステーションから外に移動させるのに使用することができる剥離装置の正面図を示す。
【
図19】析出金属を陰極板から剥離し、その剥離した金属析出物を剥離ステーションから外に移動させるのに使用することができる剥離装置の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図面は、本発明の好ましい実施形態を例示する目的で提供されていることを理解されたい。したがって、当業者は、本発明が図面に示される特徴のみに限定されると考えられるべきではないことを理解するであろう。
【0058】
まず
図15を参照すると、同図は本発明の方法の使用に適した装置を示しているが、析出金属12、14のシートが、電解採取または電着プロセスの間にその金属シートが析出陰極板16から除去されることがわかる。陰極板16は、通常、ハンガーバー18に接続されたステンレス鋼板からなる。陰極板は、従来の構造を有しており、さらに説明する必要はない。
【0059】
析出金属12、14は、剥離ステーション20において陰極板から取り除かれる。剥離ステーション20は、4つの直立部(そのうちの3つは、22、23、24で示されている)および上部水平部材25、26を有する支持フレームを含む。この支持フレームは、一般に陰極板のハンガーバーを陰極板16がほぼ垂直方向に延びるように案内する陰極板支持体(
図15では隠れて見えない)を支える。このフレームには横行コンベアに沿ってガイドが取り付けられており、コンベアでの移動中陰極は直立状態のままである。また、剥離ステーションは、剥離作業中に陰極板を持ち上げる陰極リフト装置(この場合、油圧シリンダによって作動する)を有する。この場合も先と同様に、剥離ステーションは、一般的に従来の構造を有しており、当業者にはよく理解されるであろう。
【0060】
剥離ステーションの下にはチェーンコンベヤ28が配置されている。陰極板の一方の側にはプッシャ30が配置されている。プッシャ30は、2つの直立部31、32および水平接触部材33を有する。直立部31、32の下端は、軸34の周りに枢動可能に取り付けられ、アクチュエータ35を使用して、プッシャを
図15に示す位置から右に枢動させて、プッシャを析出金属シートの一方と接触させ、この析出金属シートを第2の剥離装置(および陰極板上に析出した他方の析出金属シート)の方へ移動させるようになっている。また、アクチュエータは、プッシャを
図15に示す位置まで戻すこともできる。
【0061】
また、剥離ステーションは、陰極板16のプッシャ30とは反対側に配置されたダウンエンダ(
図15では隠れて見えない)を含む。このダウンエンダの構造および動作については、以下でさらに詳しく説明する。
【0062】
剥離ステーションの一方の側には第1のロボット36が配置され、剥離ステーションの他方の側には第2のロボット38が配置されている。
図15では、第1のロボット36は、部分的に隠れて見えない。第1のロボット36は、第1の剥離装置40を搬送し、第2のロボット38は、第2の剥離装置42を搬送する。これらについては、以下でさらに詳しく説明する。
【0063】
第1のロボット36は、基台43を備えている。基台43は、床面に固定されている。基台43は、ロボットベースユニット44を支えている。ロボットベースユニット44は、垂直軸の周りを回転することができる。ロボットベースユニット44は、第1のロボットアーム46を支えている。第1のロボットアーム46は、ロボットベースユニット44に、軸またはピボットピン47の周りに取り付けられている。軸またはピボットピン47は、第1のロボットアームが水平軸の周りを回転することを可能にする。第2のロボットアーム48は、第1のロボットアーム46の先端に、軸またはピボットピン49で取り付けられている。この場合もやはり、軸またはピボットピン49は、第2のロボットアームが水平軸の周りを回転することを可能にする。第2のロボットアーム48の先端にはユニバーサルジョイント50が取り付けられており、このユニバーサルジョイント50に第1の剥離装置40が取り付けられている。ユニバーサルジョイント50は、水平軸51と、垂直軸52と、アーム48の長手軸とほぼ一致するさらなる軸52Aとを有する。第2のロボットアーム48の構成により、第2の剥離装置42は、広範囲に移動可能であり、水平方向に、垂直方向に、ならびに水平軸および垂直軸の周りを回転可能に動くことができる。本発明では、異なる設計の他のロボットの使用も可能であることを理解されたい。
【0064】
第1のロボット46および第2のロボット48は、好適には従来の設計である。これらのロボットの動作は、ロボットに組み込まれた適切なコントローラおよびアクチュエータによって制御される。この場合もやはり、これらは従来のものであってもよく、さらに説明する必要はない。
【0065】
図16、
図17、および
図18は、それぞれ、第1の剥離装置40の正面図、斜視図、および側面図を示す。第1の剥離装置40は、垂直部材53、54、55、上端部材56、および底面部材57を有するフレームを含む。底面部材57は、くさび58が、一体的に形成されているか、あるいは、取り付けられている。フレームの強度を追加するために、多数のクロス部材(そのいくつかは59および60で示されている)が、隣接する垂直部材の間に、ボルト止めされ、または他の方法で結合されている。
【0066】
上端部材56には、マウント61が取り付けられている。マウント61は、第1の剥離装置を第1のロボットアームに取り付けることを可能にする。マウント61は、上端部材56に溶接された短いシリンダと、フランジが取り付けられた短いシリンダと、強度を追加するために前記フランジおよび上端部材に溶接された多数のガセット板とを含む。なお、マウントは、他の設計のものを使用してもよい。
【0067】
また、第1の剥離装置40は、フレームの両側に取り付けられたクランプ62、63の形態をとった2つの把持手段を有する。クランプ62、63は、基本的に互いに同一である。クランプ62は、側板53に溶接されまたは他の方法で接合された2つの耳部64、65を含む。当該耳部は、ピン66を支持する。ピン66には、回転可能なクランプ板67が、短いアーム68、69を介して取り付けられている。偏心アーム70が、軸71の周りを回転するために取り付けられている。油圧シリンダまたは空気圧シリンダ72のような駆動部を伸縮させて偏心アーム70が軸71の周りを動くようにすることができる。これにより、順次、ピン66が回転し、さらに、回転可能なクランプ板67も回転する。このようにして、クランプ板を選択的に開閉することができる。
【0068】
クランプ63は、基本的に同一の構造を有する。他の駆動構成によって油圧シリンダまたは空気圧シリンダ72を取り替えてもよい。
図18に最もよく示されているように、クランプ62は、側面部材53の内周面を越えて延在する。このようにして、クランプが作動すると、クランプ板67は、陰極板16の縁部の周りを動くことができるため、クランプ板67は、陰極板16を第1の剥離装置40にクランプすることができる。クランプ63も、同様に作動して、陰極板16を第1の剥離装置40にクランプする。
【0069】
また、第1の剥離装置40は、複数のローラも含み、そのいくつかは73、74で番号付けされている。
図17からわかるように、ローラ73は、ローラ74からオフセットされている。使用中、ローラ73または74の一方は、陰極板または析出金属の表面に接触して転がることができ、ローラ73、74の他方は、析出金属シートの表面に接触しそれに沿って転がることができる。このようにして、陰極板および第1の金属シートに沿った第1の剥離装置の動きによって生じ得る陰極板および析出金属シートへの損傷の可能性を最小限に抑えることができる。また、ローラは、下方への剥離動作中にくさびを支持し、移動中にくさび、銅の析出物、および陰極板の間の摩擦を低減する。
【0070】
図19、
図20、および
図21は、それぞれ、第2の剥離装置42の正面図、斜視図、および側面図を示す。第2の剥離装置42は、第1の剥離装置と共通の多くの特徴を有する。便宜上、第2の剥離装置42が第1の剥離装置40と共通の特徴を有する場合、第1の剥離装置40に関してこれらの特徴を示すのに使用される同じ参照番号を使用して
図19~21における同じ特徴を示すが、「’」を追加する。例えば、第1の剥離装置40のくさび58は、第2の剥離装置42のくさび58’に対応する。これらの特徴は、さらに説明する必要はない。
【0071】
第2の剥離装置42は、第2の剥離装置42が別の一対のクランプ76、77を含む点で、第1の剥離装置40と異なる。この別の一対のクランプ76、77は、クランプ62、63と基本的に同一の駆動構成を有する基本的に同一の構造を有するものであってもよい。しかし、
図21からわかるように、クランプ62’、63’は、第2の剥離装置42の外周面を過ぎて延在し得るクランプ板を有するのに対し、クランプ76、77は、第2の剥離装置42の内周面を過ぎて延在するクランプ板を有する。このようにして、クランプ76、77は、陰極板から剥離されて第2のクランプ装置42の内周面に隣接して存在する析出金属シート(これは、陰極板の第1の剥離装置が沿って動く側においてその陰極板から取り除かれる析出金属シートに対応する)の上にクランプ可能であるのに対し、クランプ62’、63’は、第2の剥離装置によって陰極板から剥離された析出金属シートの上にクランプ可能である(これは、陰極板の第2の剥離装置が沿って動く側においてその陰極板から取り除かれる析出金属シートに対応する)。
【0072】
また、第2の剥離装置42は、第2の剥離装置42の各側面部材53’、54’に取り付けられたサイドガイド78、79を含む。ガイド78は、第1の部分80と、外向きに角度の付いた第2の部分81とを有する、角度の付いたガイド板を備える。ガイド78は、側面部材53’に溶接された側板82に取り付けられ、またはこれと共に形成されている。ガイド79は、基本的に同様の構造を有する。両ガイドは、当該サイドガイドによって第2の金属シート14を所定の位置に保持するのを助け、プッシャは、第1の金属シートを剥離装置の方へ押す。両ガイドは、剥離動作中に陰極が傾くのを防ぐ。さもなければ、陰極の析出物がクランプ/把持具の到達範囲外に移動してしまう可能性がある。
【0073】
上記のように、第1の剥離装置40は、第1のロボット36のロボットアームに取り付けられ、第2の剥離装置42は、第2のロボット38のロボットアームに取り付けられる。
【0074】
析出金属を陰極板から剥離し、剥離された陰極板を剥離ステーションから除去し、そして剥離した金属を輸送領域または貯蔵領域に移動させるための、第1および第2の剥離装置ならびに第1および第2のロボットの動作について、
図1~14を参照して説明する。
図1~
図14では、明確化のため、ロボットアームは省略してある。しかし、当業者は、ロボットアームを使用して第1および第2の剥離装置の必要な動きを実現することを理解するであろう。ロボットアームは、上記必要な動きが必ず起こるようにするために、コマンドの適切なシーケンスでプログラムされてもよい。同様に、ロボットアームの動きを制御する制御システムは、第1の剥離装置および第2の剥離装置の各クランプの動作を制御するようにしてもよい。
【0075】
剥離ステーションにおいて析出金属シートがその上にある陰極板を配置する前に、陰極板を曲げて析出金属シートと陰極板の間の最上部に小さな隙間を開く。剥離プロセスを完了するために、剥離ステーションにおいてその小さな隙間に剥離装置を挿入することができる。陰極板と析出金属シートの間に剥離装置を配置する前に陰極板を曲げて析出金属を陰極板から部分的に分離するステップは、当技術分野において周知であり、さらに説明する必要はない。
【0076】
従来の陰極ハンドリング装置を使用して、上記のように曲げた陰極板を剥離ステーション20に配置する。これを
図1および
図2に示す。
図1は、析出金属12、14の屈曲シートをその上に有する陰極板16を示す。また、
図1は、第1の剥離装置40のくさび58が析出金属シート12と陰極板16の間の隙間に配置されるように第1の剥離装置40が配置されていることを示している。同様に、第2の剥離装置42は、そのウェッジ58’が析出金属シート14と陰極板16の間の隙間に配置されるように配置される。
【0077】
また、
図1および
図2は、ダウンエンダ84を示す。ダウンエンダ84は、それぞれの下端で軸88の周りを枢動可能に取り付けられた2つの離間したフレーム部材85、86を備える。別の選択肢では、軸を使用するのではなく、フレーム部材85、86の下端を別々のベアリングで独立してジャーナルするようにしてもよい。ベアリングは、互いに適切に一直線上にある。アクチュエータ90(これは、関連したギア機構を有する電気モータであってもよい)を使用して、ダウンエンダ84を、
図1に示す直立位置から、ダウンエンダ84の上端部(
図1に示すような)がチェーンコンベア28の上面の下になる位置まで、下げることができる。ダウンエンダの動作については、以下でさらに詳しく説明する。
【0078】
また、
図1および
図2は、プッシャ30を示す。
図1に最もよく示されているように、プッシャ30は、水平接触部材33が剥離サイクルの当該段階で析出金属シート12から離間するように配置される。
【0079】
(
図1に示すように)析出金属シート12、14と陰極板16の間の隙間にくさび58、58’を挿入した後、第1のロボットアームおよび第2のロボットアームによって、第1の剥離装置40および第2の剥離装置42を、陰極板16および各析出金属シート14、12に沿って下方に同時に移動させる。
図1および
図3からわかるように、第1の剥離装置40は、陰極板16の一方の側にあり、第2の剥離装置42は、陰極板16の他方の側にある。
【0080】
図3および
図4は、第1の剥離装置40および第2の剥離装置42が、それぞれの下端部が陰極板16の下縁部に隣接するように配置されることを示す。この段階において、析出金属シート14、16は、まだその下縁部に沿って互いに接続されているが、陰極板16からは有効に分離されている。また、剥離ステーション20の一部を形成し得るリフト装置(図面では隠れて見えない)によって、陰極を上方に短い距離(例えば、約70mm)持ち上げて、剥離作業中に陰極板を析出金属から確実に切り離すことができる。
【0081】
この段階で、第1の剥離装置のクランプ62、63を作動して陰極板16を把持させる。同様に、第2の剥離装置のクランプ62’、63’を作動して析出金属シート14の上にクランプさせる。次いで、第1のロボットアームを作動して第1の剥離装置40を上方に持ち上げ始める。また、これは、陰極板16を剥離ステーション20から取り出し始める。この動きの最初のステップを
図5に示す。
図5に示すように、第1の剥離装置40は、小さな距離だけ上方に移動したため、今や金属シート12と第1の剥離装置40の間に小さな隙間ができている。別の析出金属シート14は、第2の剥離装置42のクランプ62’、63’によって把持されているため、その別の金属シート14および接続されている金属シート12は、所定の位置に留まる。
【0082】
図7および
図8は、第1の剥離装置40を第1のロボットアームによって引き続き上方に持ち上げて、陰極板16を剥離ステーション20から有効に取り出すことを示す。プッシャ30を作動して、水平接触部材33を金属シート12に接触させ、金属シート12を第2の剥離装置42の方へ押すようにする。次いで、クランプ76、77を作動させて、他方の金属シート12を把持させる。このようにして、両方の金属シート12、14は、第2の剥離装置42に取り付けられたクランプまたは把持具によって把持される。
【0083】
図9および
図10において、第1の剥離装置40は、第1のロボットによって陰極板の輸送または貯蔵領域に移動している。この段階で、第1の剥離装置40のクランプ62、63を作動して陰極板16を解放させてもよい。その後、必要に応じて陰極板16を貯蔵または移動する。典型的には、陰極板16を、電着プラントまたは電解採取プラントでの再利用に必要とされるまで、貯蔵する。
【0084】
図11および
図12は、第2の剥離装置42が第2のロボットアームによって移動して析出金属シート14がダウンエンダ84に接触または隣接していることを示す。その後、クランプ76、77および62’、63’を作動して、各析出金属シート14、12を解放する。次いで、第2のロボットアームを作動して、析出金属シート12、14がダウンエンダ84の上に存在し続けるように、第2の剥離装置42を上方に持ち上げて析出金属シート12、14から離れるようにする。
図11および
図12に示すステップが、第1の剥離装置40の底部が上昇して析出金属シート12の上端部から離れるとすぐに開始可能であることは理解されるであろう。換言すれば、
図11および
図12に示すステップは、第1の剥離装置40が
図7および
図8に示す位置に到達するとすぐに行われ得る。
【0085】
第2の剥離装置42を析出金属シート12と析出金属シート14の間から取り出すと、ダウンエンダ84を
図13および
図14に示す位置まで下げる。第2の剥離装置42を析出金属シート12と析出金属シート14の間から取り出すのに続いて、しかしダウンエンダ84が依然として
図11に示す位置にある間に、プッシャ30をさらに作動させて、析出金属シート12を押して析出金属シート14に近づけ、これにより析出金属シート12、14の上端部で隙間を閉じるようにしてもよい。これは、任意選択的なステップであってもよい。いくつかの実施形態では、ダウンエンダが十分に回転して、ダウンエンダ84の後端部92(
図14参照)が第1ロボットによって剥離された金属に接触し押して第2ロボットによって剥離された金属に突き当たるようにし、もって析出金属シートどうしがコンベア上の水平位置でくっつくようにする。
【0086】
ダウンエンダ84が
図13に示す位置に到達した場合、ダウンエンダ84は、チェーンコンベヤ28の上面の下方に位置する。しかし、金属シート12、14は、チェーンコンベヤ28の隣接するチェーン間の距離よりも広いため、析出金属シート14は、チェーンコンベヤ28のチェーンと接触する。これらのチェーンは、望ましくは、一対の析出金属シート12、14を受け取ると作動し始め、ダウンエンダ84が
図13および
図14に示す位置に到達した後にチェーンコンベアに乗って移動し始める。これにより、析出金属シート12、14は、剥離ステーション20から取り除かれ、また、ダウンエンダから除去される。一実施形態では、コンベアが駆動用ドッグを有し、一対の陰極析出物を受け取るたびに、チェーンが動き始めて一定の距離を進む。コンベヤは、従来の設計および動作を有するものであってもよい。
【0087】
別の陰極板から析出金属を剥離するための剥離ステーション20を準備するために、プッシャ30をより直立した向きに戻し(
図13に示すように)、ダウンエンダ84を上げて
図1に示す位置に戻す。その後、析出金属が付着している次の陰極板をその剥離ステーション20に配置することができ、この一連の動作を繰り返すことができる。
【0088】
本発明の好ましい実施形態は、陰極板およびこの陰極板から除去された剥離された金属の効率的な取り扱いを可能にする。これにより、生産性の向上および剥離ステーションからの金属の増産をもたらすことができる。さらに、陰極板はロボットの1つによって剥離ステーションから取り出されるため、剥離ステーションから剥離陰極板を取り出すための別々の陰極板ハンドリング装置は必要とされない。
【0089】
本明細書および特許請求の範囲において(もしあれば)、「有する(comprising)」という単語ならびにその派生語(「comprises」、「comprise」を含む)は、記載された各整数を含むが、1つ以上のさらなる整数を含むことを排除するものではない。
【0090】
本明細書全体を通じて「一実施形態」(「one embodiment」または「an embodiment」)への言及は、その実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じてさまざまな箇所における「一実施形態」(「one embodiment」または「an embodiment」)という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、任意の適切な方法で組み合わせて1つ以上の組み合わせとしてもよい。
【0091】
法律に従って、多少構造的または方法的特徴に特有の表現で本発明を説明してきた。本明細書に記載された手段は本発明を実施する好ましい形態を構成するため、本発明は図示または記載された具体的な特徴に限定されないことを理解されたい。したがって、本発明は、当業者によって適切に解釈される添付の特許請求の範囲(もしあれば)の適切な範囲内で、その形態または修正のいずれかで特許請求される。