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特許7461959カメラモジュールのためのアクチュエータアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】カメラモジュールのためのアクチュエータアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20240328BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240328BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240328BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240328BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240328BHJP
   G03B 13/34 20210101ALI20240328BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240328BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20240328BHJP
   G03B 30/00 20210101ALN20240328BHJP
【FI】
G02B7/04 E
C08L101/00
C08L67/04
C08K3/013
C08L63/00
G03B13/34
H04N23/50
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFC
C08J5/04 CFD
C08J5/04 CFG
G03B30/00
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2021546705
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2020021833
(87)【国際公開番号】W WO2020190568
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】62/821,077
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/885,333
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/978,846
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-197067(JP,A)
【文献】特開2013-156295(JP,A)
【文献】特開2015-084035(JP,A)
【文献】特表2017-513976(JP,A)
【文献】特表2018-525496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G03B 5/00 - 5/08
G03B 29/00 - 30/00
G03B 17/02
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 - 23/76
H04N 23/90 - 23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュールであって、
1以上のレンズを含むレンズモジュールがその中に配置されているハウジング;
前記レンズモジュールを光学軸方向に駆動するように構成されるアクチュエータアセンブリであって、前記アクチュエータアセンブリは前記ハウジングと前記レンズモジュールとの間に配置されたガイドユニットを含み、前記ガイドユニットは芳香族ポリマーを含むポリマーマトリクスを含むポリマー組成物を含み、前記ポリマー組成物は、ISO試験番号178:2010にしたがって23℃において求めて約7,000MPa以上の曲げ弾性率、及びASTM-D785-08(スケールM)にしたがって求めて約25以上のロックウェル表面硬度を示す上記アクチュエータアセンブリ;
を含み、
前記ポリマー組成物がシリカ粒子を含む1種類以上の無機フィラーを含む上記カメラモジュール。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、ISO試験番号179-1:2010にしたがって23℃において求めて約2kJ/mのシャルピーノッチ無し衝撃強さを示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、ISO試験番号527:2012にしたがって求めて、約20~約500MPaの引張強さ、約0.5%以上の引張破断歪み、及び/又は約5,000MPa~約30,000MPaの引張弾性率を示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、VDA-230-206:2007にしたがって求めて約1.0以下の動摩擦係数及び/又は約500マイクロメートル以下の摩耗深さを示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
前記ポリマーマトリクスが、前記ポリマー組成物の約20重量%~約70重量%を構成する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
前記芳香族ポリマーが約200℃以上の融点を有する、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項7】
前記芳香族ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項8】
前記芳香族ポリマーが液晶ポリマーを含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項9】
前記液晶ポリマーがヒドロキシカルボン酸から誘導される1以上の繰り返し単位を含み、前記ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位が前記ポリマーの約50モル%以上を構成する、請求項8に記載のカメラモジュール。
【請求項10】
前記液晶ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を含む、請求項9に記載のカメラモジュール。
【請求項11】
前記液晶ポリマーが、前記ポリマーの約50モル%~約90モル%の量の4-ヒドロキシ安息香酸から誘導される繰り返し単位を含み、前記ポリマーの約10モル%~約50モル%の量の6-ヒドロキシ-2-ナフト酸から誘導される繰り返し単位を含む、請求項10に記載のカメラモジュール。
【請求項12】
前記液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ヒドロキノン、4,4’-ビフェノール、アセトアミノフェン、4-アミノフェノール、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を更に含む、請求項10に記載のカメラモジュール。
【請求項13】
前記液晶ポリマーが、前記ポリマーの約10モル%以上の量のナフテン系ヒドロキシカルボン酸及び/又はジカルボン酸から誘導される繰り返し単位を含む、請求項8に記載のカメラモジュール。
【請求項14】
前記ポリマー組成物が、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,3-プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4-ブチレン2,6-ナフタレート)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、上記のいずれかの誘導体、又はそれらの組合せを含む半結晶質ポリエステルを更に含む、請求項8に記載のカメラモジュール。
【請求項15】
前記液晶ポリマーが前記ポリマー組成物の約15重量%~約85重量%を構成し、前記半結晶質ポリエステルが前記ポリマー組成物の約1重量%~約50重量%を構成する、請求項14に記載のカメラモジュール。
【請求項16】
前記ポリマー組成物が、前記シリカ粒子に加えて、1種類以上の無機フィラーを含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項17】
前記無機フィラーが前記ポリマーマトリクス100重量部当たり約20~約100重量部を構成する、請求項に記載のカメラモジュール。
【請求項18】
前記1種類以上の追加の無機フィラーが、モース硬度スケールに基づいて約2.0以上の硬度値を有する、請求項16に記載のカメラモジュール。
【請求項19】
前記無機フィラーが無機繊維含む、請求項に記載のカメラモジュール。
【請求項20】
前記ポリマー組成物がさらに硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、又はそれらの組み合わせを含む無機粒子を含む、請求項に記載のカメラモジュール。
【請求項21】
前記無機繊維が珪灰石繊維を含む、請求項19に記載のカメラモジュール。
【請求項22】
記無機繊維が前記ポリマー組成物の約1重量%~約40重量%を構成し、機粒子が前記ポリマー組成物の約2重量%~約50重量%を構成する、請求項19に記載のカメラモジュール。
【請求項23】
前記ポリマー組成物がガラス繊維を概して含まない、請求項16に記載のカメラモジュール。
【請求項24】
前記ポリマー組成物が耐衝撃性改良剤を含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項25】
前記耐衝撃性改良剤がオレフィンポリマーを含む、請求項24に記載のカメラモジュール。
【請求項26】
前記オレフィンポリマーが(メタ)アクリル酸モノマー単位を含むコポリマーである、請求項25に記載のカメラモジュール。
【請求項27】
前記ポリマー組成物がエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項28】
前記ポリマー組成物が静電防止フィラーを含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項29】
前記ポリマー組成物が、トライボロジー剤、滑剤、熱伝導性フィラー、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、垂れ防止添加剤、成核剤、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項30】
前記ポリマー組成物が、ISO試験番号11443:2005にしたがい、400秒-1のせん断速度及び前記組成物の融点よりも15℃高い温度で求めて約30~約400Pa・秒の溶融粘度を示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項31】
前記アクチュエータアセンブリが、前記レンズモジュールを前記光学軸方向に移動させるように構成された磁性体及びコイルを含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項32】
前記コイルが基材上に取り付けられており、前記基材が前記ハウジングに取り付けられている、請求項31に記載のカメラモジュール。
【請求項33】
前記ガイドユニットが、ばね、ボールベアリング、静電力発生器、油圧力発生器、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項34】
前記ガイドユニットが複数のボールベアリングを含む、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項35】
前記レンズモジュールがレンズホルダーに接続されたレンズバレルを含み、更に前記ボールベアリングが前記レンズホルダーの外面及び前記ハウジングの内面に接触している、請求項34に記載のカメラモジュール。
【請求項36】
前記ボールベアリングが前記光学軸方向に垂直の方向に積層されている、請求項34に記載のカメラモジュール。
【請求項37】
前記ボールベアリングが約800マイクロメートル以下の平均径を有する、請求項34に記載のカメラモジュール。
【請求項38】
前記ポリマー組成物が、1.5mmの直径及び75グラムの重量を有する金属球を15センチメートルの高さから落下させてポリマー組成物と接触させた際に約50マイクロメートル以下のくぼみを示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項39】
前記ポリマー組成物が、1.5mmの直径及び5gの重量を有する金属球を150ミリメートルの高さから落下させてポリマー組成物と10,000回接触させた際に約50マイクロメートル以下のくぼみを示す、請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項40】
請求項1に記載のカメラモジュールを備える電子機器。
【請求項41】
前記機器が無線通信機器である、請求項40に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2019年3月20日の出願日を有する米国仮特許出願第62/821,077号;2019年8月12日の出願日を有する米国仮特許出願第62/885,333号;及び2020年2月20日の出願日を有する米国仮出願第62/978,846号(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)の出願の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]カメラモジュール(又はコンポーネント)はしばしば、携帯電話、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどにおいて使用されている。一般に、カメラモジュールは、レンズモジュール、及び対象物の画像を電気信号に変換するためのイメージセンサーを含む。レンズモジュールは、ハウジング内に配置することができ、1以上のレンズがその中に配置されたレンズバレルを含み得る。更に、カメラモジュールには、手ぶれによって生じる解像度の損失又はぼけを低減する光学的画像安定化(OIS)のためのアクチュエータアセンブリを含ませることができる。アクチュエータアセンブリは、特定の信号を受け取った後にレンズモジュールを目標位置に移動させることによって機能する。移動中にレンズモジュールの適切な位置合わせを確実にするのを助けるために、多くのアクチュエータアセンブリはまた、望ましい方向にレンズモジュールを案内するのを助けるボールベアリングを含む。従来、これらのボールベアリングは、使用中に加えられる力に耐えるのに十分に強靱なセラミック材料から形成されている。しかしながら、ボールベアリングは、強靱である一方で、カメラモジュールの表面上に「くぼみ」を形成し、それがノイズを生起して性能に影響を与える可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]したがって、カメラモジュールにおいて使用した場合により良好な性能を示すことができるアクチュエータアセンブリに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本発明の一実施形態によれば、1以上のレンズを含むレンズモジュールがその中に配置されているハウジング、及びレンズモジュールを光学軸方向に駆動するように構成されるアクチュエータアセンブリを含むカメラモジュールが与えられる。アクチュエータアセンブリは、ハウジングとレンズモジュールとの間に配置されたガイドユニットを含む。ガイドユニットは芳香族ポリマーを含むポリマーマトリクスを含むポリマー組成物を含み、ポリマー組成物は、ISO試験番号178:2010にしたがって23℃において求めて約7,000MPa以上の曲げ弾性率、及びASTM-D785-08(スケールM)にしたがって求めて約25以上のロックウェル表面硬度を示す。
【0005】
[0005]下記において、本発明の他の特徴及び態様をより詳細に示す。
[0006]当業者に対するそのベストモードを含む本発明の完全かつ実施可能な開示を、添付の図面に対する参照をを含む本明細書の残りの部分においてより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】[0007]図1は、本発明の一実施形態にしたがって形成することができるカメラモジュールの斜視図である。
図2】[0008]図2は、本発明のカメラモジュールを含む電子機器の一実施形態の上面斜視図である。
図3】[0009]図3は、図2に示す電子機器の底面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0010]本議論は例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広い態様を限定する意図はないことが当業者によって理解される。
[0011]一般的に言えば、本発明は、1以上のレンズを含むレンズモジュールがその中に配置されたハウジングを含むカメラモジュールに関する。アクチュエータアセンブリは、レンズモジュールの動きを光学軸方向に駆動するように構成される。アクチュエータアセンブリは、ハウジングとレンズモジュールとの間に配置されたガイドユニット(例えば、1つ又は複数のばね、1つ又は複数のボールベアリングなど)を含み、レンズモジュールの所望の方向への動きをガイドするのを助ける。特に、ガイドユニットは、レンズモジュールの移動中にハウジング及び/又はレンズモジュールの表面上に与えられる欠陥(例えばくぼみ)の数を最小限にすることを可能にする、曲げ強さと硬度の独特の組み合わせを有する本ポリマー組成物を含む。より具体的には、本ポリマー組成物は、ISO試験番号178:2010(ASTM-D790-10と技術的に同等)にしたがって23℃において求めて約7,000MPa以上、幾つかの実施形態においては約9,000MPa以上、幾つかの実施形態においては約10,000MPa~約30,000MPa、幾つかの実施形態においては約12,000MPa~約25,000MPaの曲げ弾性率を示し得る。本ポリマー組成物はまた、ASTM-D785-08(スケールM)にしたがって求めて約25以上、幾つかの実施形態においては約35以上、幾つかの実施形態においては約45以上、幾つかの実施形態においては約55~約100のロックウェル表面硬度を示し得る。更に、本明細書に記載の「ボールくぼみ」試験に供した場合に、本ポリマー組成物は、1.5mmの直径及び75グラムの重量を有する金属球を用いて求めて僅か約50マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約45マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約1~約40マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約20マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約10マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約5マイクロメートルのくぼみを示し得る。勿論、より小さい重量(例えば35又は50グラム)の球を用いて試験した場合に、本ポリマー組成物はまた、上記の範囲内のくぼみを示し得る。更に、本明細書に記載される「ミニドロップ」試験に供した場合に、本ポリマー組成物は、1.5mmの直径及び5グラムの重量を有する金属球を用いて150ミリメートルの高さから20,000回の落下について求めて僅か約50マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約45マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約1~約40マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約20マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約10マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約5マイクロメートルのくぼみを示し得る。勿論、より少ない数の落下(例えば10,000回の落下)を用いて試験した場合に、本ポリマー組成物はまた、上記の範囲内のくぼみを示し得る。
【0008】
[0012]勿論、上記のものに加えて、本ポリマー組成物はまた、他の良好な強度特性を示し得る。例えば、本組成物は、ISO試験番号179-1:2010(ASTM―D256-10e1と技術的に同等)にしたがって23℃において測定して約2kJ/m、幾つかの実施形態においては約4~約40kJ/m、幾つかの実施形態においては約8~約30kJ/mのシャルピーノッチ無し及び/又はノッチ付き衝撃強さを示し得る。本組成物はまた、約20~約500MPa、幾つかの実施形態においては約50~約400MPa、幾つかの実施形態においては約60~約350MPaの引張り強さ;約0.5%以上、幾つかの実施形態においては約0.8~約15%、幾つかの実施形態においては約1~約10%の引張破断歪み;及び/又は約5,000MPa~約30,000MPa、幾つかの実施形態においては約7,000MPa~約25,000MPa、幾つかの実施形態においては約10,000MPa~約20,000MPaの引張弾性率も示し得る。引張特性は、ISO試験No.527-1:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって23℃において求めることができる。本組成物はまた、約40~約500MPa、幾つかの実施形態においては約50~約400MPa、幾つかの実施形態においては約100~約350MPaの曲げ強さ、及び/又は約0.5%以上、幾つかの実施形態においては約0.8%~約15%、幾つかの実施形態においては約1%~約10%の曲げ破断歪みも示し得る。曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM-D790-15e2と技術的に同等)にしたがって23℃において求めることができる。本組成物はまた、ASTM-D648-07(ISO試験番号75-2:2013と技術的に同等)にしたがって1.8MPaの規定荷重において測定して約180℃以上、幾つかの実施形態においては約190℃~約280℃の荷重撓み温度(DTUL)も示し得る。
【0009】
[0013]従来、かかる良好な機械特性を有する組成物はまた、低摩擦表面を有しないと考えられていた。しかしながら、従来の考えに反して、本発明の組成物は、低い程度の表面摩擦を有していて、ガイドユニットの使用中にスキン層が剥離する程度を最小にすることができることが見出された。例えば、本ポリマー組成物は、VDA-230-206:2007にしたがって求めて約1.0以下、幾つかの実施形態においては約0.4以下、幾つかの実施形態においては約0.35以下、幾つかの実施形態においては約0.1~約0.3の動摩擦係数を示し得る。また、摩耗深さは、VDA-230-206:2007にしたがって求めて約500マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約200マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約100マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約10~約70マイクロメートルであり得る。
【0010】
[0014]更に、本組成物はまた、特に静電防止フィラーを上記で議論したポリマー組成物内に含ませる場合には、優れた静電防止挙動も示し得る。かかる静電防止挙動は、IEC-60093にしたがって求めて比較的低い表面及び/又は体積抵抗率によって特徴付けることができる。例えば、本組成物は、約1×1015オーム以下、幾つかの実施形態においては約1×1014オーム以下、幾つかの実施形態においては約1×1010オーム~約9×1013オーム、幾つかの実施形態においては約1×1011~約1×1013オームの表面抵抗率を示し得る。また、本組成物は、約1×1015オーム・m以下、幾つかの実施形態においては約1×10オーム・m~約9×1014オーム・m、幾つかの実施形態においては約1×1010~約5×1014オーム・mの体積抵抗率も示し得る。勿論、かかる静電防止挙動は決して必須ではない。例えば、幾つかの実施形態においては、本組成物は、約1×1015オーム以上、幾つかの実施形態においては約1×1016オーム以上、幾つかの実施形態においては約1×1017オーム~約9×1030オーム、幾つかの実施形態においては約1×1018~約1×1026オームのような比較的大きな表面抵抗率を示し得る。
【0011】
[0015]ここで、本発明の種々の実施形態をより詳細に説明する。
I.ポリマー組成物
A.ポリマーマトリクス
[0016]ポリマーマトリクスは、通常は、一般にポリマー組成物の約20重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約30重量%~約65重量%、幾つかの実施形態においては約40重量%~約60重量%の量の1種類以上の芳香族ポリマーを含む。芳香族ポリマーは、ポリマーの特定の性質に応じて、比較的高いガラス転移温度及び/又は高い融点を有するという点で、「高性能」ポリマーとみなすことができる。したがって、かかる高性能ポリマーは、得られるポリマー組成物に相当な程度の耐熱性を与えることができる。例えば、芳香族ポリマーは、約100℃以上、幾つかの実施形態においては約120℃以上、幾つかの実施形態においては約140℃~約350℃、幾つかの実施形態においては約150℃~約320℃のガラス転移温度を有し得る。芳香族ポリマーはまた、約200℃以上、幾つかの実施形態においては約220℃~約350℃、幾つかの実施形態においては約240℃~約300℃の融点を有し得る。ガラス転移温度及び融点は、当該技術において周知なように、示差走査熱量測定(DSC)を使用して、例えばISO試験番号11357-2:2013(ガラス転移温度)及び11357-3:2011(融点)によって求めることができる。
【0012】
[0017]芳香族ポリマーは、実質的に非晶質、半結晶質、又は結晶質であり得る。好適な半結晶質芳香族ポリマーの一例は、例えば芳香族又は半芳香族ポリアミドである。芳香族ポリアミドは、通常は、アミド結合(NH-CO)によって一緒に保持された繰り返し単位を含み、ジカルボン酸(例えば芳香族ジカルボン酸)、ジアミン(例えば脂肪族ジアミン)などの重縮合によって合成される。例えば、芳香族ポリアミドには、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-フェニレンジオキシ二酢酸、1,3-フェニレンジオキシ二酢酸、ジフェン酸、4,4’-オキシ二安息香酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等、並びにこれらの組合せのような芳香族ジカルボン酸から誘導される芳香族繰り返し単位を含ませることができる。テレフタル酸が特に好適である。勿論、脂肪族ジカルボン酸単位、多官能性カルボン酸単位等のような他のタイプの酸単位を用いることもできることも理解すべきである。芳香族ポリアミドにはまた、通常は4~14個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンから誘導される脂肪族繰り返し単位を含ませることもできる。かかるジアミンの例としては、1,4-テトラメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン等のような線状脂肪族アルキレンジアミン;2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン等のような分岐脂肪族アルキレンジアミン;並びにこれらの組合せが挙げられる。1,9-ノナンジアミン及び/又は2-メチル-1,8-オクタンジアミンから誘導される繰り返し単位が特に好適である。勿論、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンのような他のジアミン単位を用いることもできる。
【0013】
[0018]特に好適なポリアミドとしては、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(PA9T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンデカンジアミド)(PA9T/910)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンドデカンジアミド)(PA9T/912)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド(PA9T/11)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド)(PA9T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/11-アミノウンデカンアミド)(PA10T/11)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/12-アミノドデカンアミド)(PA10T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/テトラメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/46)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA10T/6)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/66)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンドデカンジアミド)(PA12T/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/カプロラクタム)(PA12T/6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド(PA12T/66)などを挙げることができる。好適な芳香族ポリアミドの更に他の例は、Harderらの米国特許8,324,307に記載されている。
【0014】
[0019]使用することができる好適な半結晶質芳香族ポリマーは、8~14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸と少なくとも1種類のジオールとの縮合生成物である芳香族ポリエステルである。好適なジオールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、及び式:HO(CHnOH(式中、nは2~10の整数である)の脂肪族グリコールを挙げることができる。好適な芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルなど、並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。また、1,4-、又は1,5-、或いは2,6-ナフタレンジカルボン酸におけるように、縮合環が存在していてもよい。かかる芳香族ポリエステルの特定の例としては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(1,3-プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4-ブチレン2,6-ナフタレート)(PBN)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)(PEN)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)、並びに上記のコポリマー、誘導体、及び混合物が挙げられる。
【0015】
[0020]更に、かかる芳香族ポリエステルの変性物又はコポリマーを使用することもできる。例えば、一実施形態においては、変性酸又は変性ジオールを使用して、変性ポリエチレンテレフタレートポリマー及び/又は変性ポリブチレンテレフタレートポリマーを製造することができる。本明細書中において使用する「変性酸」及び「変性ジオール」の用語は、それぞれポリエステルの酸及びジオール繰り返し単位の一部を形成することができ、ポリエステルを変性して、その結晶化度を低下させることができるか、又はポリエステルを非晶質にすることができる化合物を規定するように意図される。勿論、ポリエステルは非変性で、変性酸又は変性ジオールを含まなくてもよい。いずれの場合においても、変性酸成分の例としては、イソフタル酸、フタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタリンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、1,12-ドデカン二酸などを挙げることができるが、これらに限定されない。実際には、ジカルボン酸のジメチル、ジエチル、又はジプロピルエステルのようなその官能性酸誘導体を使用することがしばしば好ましい。これらの酸の無水物又は酸ハロゲン化物も、実用的な場合には使用することができる。変性ジオール成分の例としては、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル1,3-シクロブタンジオール、Z,8-ビス(ヒドロキシメチルトリシクロ-[5.2.1.0]-デカン(ここで、Zは、3、4又は5を表す);1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエーテル[ビス-ヒドロキシエチルビスフェノールA]、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルフィド[ビス-ヒドロキシエチルビスフェノールS]、及び鎖中に1個以上の酸素原子を含むジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどを挙げることができるが、これらに限定されない。一般に、これらのジオールは、2~18個、幾つかの実施形態においては2~8個の炭素原子を含む。脂環式ジオールは、それらのシス又はトランス配置で、又は両方の形態の混合物として使用することができる。
【0016】
[0021]ポリアリーレンスルフィドもまた、好適な半結晶質芳香族ポリマーである。ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。例えば、複数のジハロ芳香族化合物の選択的組み合わせによって、2つ以上の異なる単位を含むポリアリーレンスルフィドコポリマーをもたらすことができる。例えば、p-ジクロロベンゼンをm-ジクロロベンゼン又は4,4’-ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて使用した場合には、式:
【0017】
【化1】
【0018】
の構造を有するセグメント、及び式:
【0019】
【化2】
【0020】
の構造を有するセグメント、又は式:
【0021】
【化3】
【0022】
の構造を有するセグメントを含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。
[0022]ポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状、分岐、又は架橋型であってよい。線状ポリアリーレンスルフィドは、通常は80モル%以上の繰り返し単位:-(Ar-S)-を含む。かかる線状ポリマーはまた、少量の分岐単位又は架橋単位を含んでいてもよいが、分岐又は架橋単位の量は、通常はポリアリーレンスルフィドの全モノマー単位の約1モル%未満である。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上記に記載の繰り返し単位を含むランダムコポリマー又はブロックコポリマーであってよい。また、半線状ポリアリーレンスルフィドは、3つ以上の反応性官能基を有する少量の1種類以上のモノマーをポリマー中に導入した架橋構造又は分岐構造を有していてよい。例として、半線状ポリアリーレンスルフィドを形成するのに用いるモノマー成分に、分岐ポリマーの製造において用いることができる分子あたり2以上のハロゲン置換基を有する所定量のポリハロ芳香族化合物を含ませることができる。かかるモノマーは、式:R’X(式中、それぞれのXは、塩素、臭素、及びヨウ素から選択され、nは3~6の整数であり、R’は、約4個以下のメチル置換基を有していてよい価数nの多価芳香族基であり、R’中の炭素原子の総数は6~約16の範囲内である)によって表すことができる。半線状ポリアリーレンスルフィドを形成するのに用いることができる分子あたり2個より多いハロゲンで置換されている幾つかのポリハロ芳香族化合物の例としては、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3-ジクロロ-5-ブロモベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、1,2,3,5-テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロ-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’-テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’-テトラヨードビフェニル、2,2’,6,6’-テトラブロモ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル、1,2,3,4-テトラクロロナフタレン、1,2,4-トリブロモ-6-メチルナフタレン
など、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
[0023]上記に示したように、明確な融点温度を有しない実質的に非晶質のポリマーも、ポリマー組成物に使用することができる。好適な非晶質ポリマーとしては、例えば、ポリフェニレンオキシド(PPO)、芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリエーテルイミドなどを挙げることができる。例えば、芳香族ポリカーボネートは、通常は約130℃~約160℃のガラス転移温度を有し、1種類以上の芳香族ジオールから誘導される芳香族繰り返し単位を含む。特に好適な芳香族ジオールは、2つのフェノール基が2価の連結基の単一の炭素原子に結合しているgem-ビスフェノールのようなビスフェノールである。かかるビスフェノールの例としては、例えば、4,4’-イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、4,4’-エチリデンジフェノール、4,4’-(4-クロロ-a-メチルベンジリデン)ジフェノール、4,4’-シクロヘキシリデンジフェノール、4,4-(シクロヘキシルメチレン)ジフェノールなど、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。芳香族ジオールは、ホスゲンと反応させることができる。例えば、ホスゲンは、式C(O)Clを有する塩化カルボニルであってよい。芳香族ポリカーボネートの合成に至る別の経路は、ジフェニルカーボネートによる芳香族ジオール(例えばビスフェノール)のエステル交換を含み得る。
【0024】
[0024]上記で参照したポリマーに加えて、ポリマー組成物中において結晶質ポリマーを使用することもできる。金型の小さな空間を有効に満たすことを可能にする高い結晶化度を有する液晶ポリマーが特に好適である。液晶ポリマーは、一般に、棒状構造を有し、それらの溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)で結晶挙動を示すことができる限りにおいて「サーモトロピック」として分類される。かかるポリマーは、当該技術において公知なように、1以上のタイプの繰り返し単位から形成することができる。液晶ポリマーは、例えば、一般に次式(I):
【0025】
【化4】
【0026】
(式中、
環Bは、置換又は非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレン又は1,3-フェニレン)、置換又は非置換の5又は6員アリール基に縮合している置換又は非置換の6員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、或いは置換又は非置換の5又は6員アリール基に結合している置換又は非置換の6員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
及びYは、独立して、O、C(O)、NH、C(O)HN、又はNHC(O)である)
によって表される1種類以上の芳香族エステル繰り返し単位を含み得る。
【0027】
[0025]通常は、Y及びYの少なくとも1つはC(O)である。かかる芳香族エステル繰り返し単位の例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式Iにおいて、Y及びYはC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式Iにおいて、YはOであり、YはC(O)である)、並びにこれらの種々の組み合わせを挙げることができる。
【0028】
[0026]例えば、4-ヒドロキシ安息香酸; 4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸; 2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸; 2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸; 3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸; 2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、並びにアルキル、アルコキシ、アリール及びそれらのハロゲン置換基、並びにそれらの組み合わせのような芳香族ヒドロキシカルボン酸から誘導される芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位を使用することができる。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)である。使用する場合、ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBA及び/又はHNA)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約50モル%以上、幾つかの実施形態においては約60モル%以上、幾つかの実施形態においては約80モル%~100モル%を構成する。
【0029】
[0027]テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ジカルボン酸から誘導される芳香族ジカルボン酸繰り返し単位を用いることもできる。特に好適な芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸(TA)、イソフタル酸(IA)、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)を挙げることができる。使用する場合、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA、及び/又はNDA)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約1モル%~約50モル%、幾つかの実施形態においては約2モル%~約40モル%、幾つかの実施形態においては約5モル%~約30%を構成する。
【0030】
[0028]また、ポリマー中において他の繰り返し単位を用いることもできる。例えば幾つかの実施形態においては、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(又は4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、並びにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、及びハロゲン置換体、並びにこれらの組み合わせのような芳香族ジオールから誘導される繰り返し単位を用いることができる。特に好適な芳香族ジオールとしては、例えばヒドロキノン(HQ)及び4,4’-ビフェノール(BP)を挙げることができる。用いる場合には、芳香族ジオール(例えばHQ及び/又はBP)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約1モル%~約30モル%、幾つかの実施形態においては約2モル%~約25モル%、幾つかの実施形態においては約5モル%~約20モル%を構成する。また、芳香族アミド(例えばアセトアミノフェン(APAP))、及び/又は芳香族アミン(例えば、4-アミノフェノール(AP)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)から誘導されるもののような繰り返し単位を用いることもできる。用いる場合には、芳香族アミド(例えばAPAP)及び/又は芳香族アミン(例えばAP)から誘導される繰り返し単位は、通常はポリマーの約0.1モル%~約20モル%、幾つかの実施形態においては約0.5モル%~約15モル%、幾つかの実施形態においては約1モル%~約10モル%を構成する。また、種々の他のモノマー繰り返し単位をポリマー中に導入することができることも理解すべきである。例えば幾つかの実施形態においては、脂肪族又は脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどのような非芳香族モノマーから誘導される1以上の繰り返し単位をポリマーに含ませることができる。勿論、他の実施形態においては、ポリマーは、非芳香族(例えば脂肪族又は脂環式)モノマーから誘導される繰り返し単位を含まないという点で「全芳香族」であってよい。
【0031】
[0029]必ずしも必須ではないが、液晶ポリマーは、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸及びナフテン系ジカルボン酸、例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(NDA)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)、又はそれらの組み合わせから誘導される繰り返し単位を比較的高い含量で含む限りにおいて、「高ナフテン系」ポリマーであり得る。すなわち、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸及び/又はジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、又はHNAとNDAの組み合わせ)から誘導される繰り返し単位の総量は、通常はポリマーの約10モル%以上、幾つかの実施形態においては約15モル%以上、幾つかの実施形態においては約20モル%~約35モル%である。多くの従来の「低ナフテン系」ポリマーとは異なり、得られる「高ナフテン系」ポリマーは、良好な熱及び機械特性を示すことができると考えられる。例えば、1つの特定の実施形態においては、液晶ポリマーは、4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)、並びに種々の他の随意的な構成成分から誘導される繰り返し単位から形成することができる。4-ヒドロキシ安息香酸(HBA)から誘導される繰り返し単位は、ポリマーの約50モル%~約90モル%、幾つかの実施形態においては約60モル%~約85モル%、幾つかの実施形態においては約65モル%~約80モル%を構成し得る。また、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)から誘導される繰り返し単位は、ポリマーの約10モル%~約50モル%、幾つかの実施形態においては約15モル%~約40モル%、幾つかの実施形態においては約20モル%~約35モル%を構成し得る。
【0032】
[0030]本発明の幾つかの実施形態においては、複数の芳香族ポリマーのブレンドを使用してポリマー組成物の所望の特性を達成するのを助けることもできる。例えば、ポリマー組成物に、上記記載のもののような半結晶質芳香族ポリエステルと組み合わせて液晶ポリマーを含ませることができる。例えば1つの特定の実施形態においては、芳香族ポリエステルは、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)のようなポリアルキレンテレフタレート、並びにそのコポリマー及び誘導体であってよい。芳香族ポリエステルが液晶ポリマーと反応する程度を最小にするのを助けるためには、ポリマー中のカルボキシル末端基の含量を、約100ミリ当量/キログラム(meq/kg)以下、幾つかの実施形態においては約50meq/kg以下、幾つかの実施形態においては約30meq/kg以下のように比較的低く保つことが一般に望ましい。また、ポリマー中のヒドロキシル末端基の含量は、約100meq/kg以下、幾つかの実施形態においては約50meq/kg以下、幾つかの実施形態においては約30meq/kg以下であることが一般に望ましい。カルボキシル及びヒドロキシル末端基の含量は、滴定法(例えば電位差測定法)のような任意の公知の技術によって求めることができる。
【0033】
[0031]かかるブレンドを使用する場合、液晶ポリマーは、ブレンドの約30重量%~約85重量%、幾つかの実施形態においては約40重量%~約80重量%、及び幾つかの実施形態においては約60重量%~約75重量%を構成し得る一方で、半結晶質芳香族ポリエステルは、ブレンドの約15重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約60重量%、及び幾つかの実施形態においては約25重量%~約40重量%を構成し得る。液晶ポリマーは、例えば、ポリマー組成物全体の約15重量%~約85重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約75重量%、幾つかの実施形態においては約30重量%~約50重量%を構成し得る一方で、半結晶質芳香族ポリエステルは、ポリマー組成物全体の約1重量%~約50重量%、幾つかの実施形態においては約5重量%~約45重量%、幾つかの実施形態においては約10重量%~約40重量%を構成し得る。
【0034】
B.無機フィラー
[0032]上記に示したように、本ポリマー組成物は、ポリマーマトリクス内に分配された1種類以上の無機フィラーを含む。かかる1種類又は複数の無機フィラーは、通常はポリマーマトリクス100重量部当たりの重量基準で約20~約100部、幾つかの実施形態においては約35~約90部、幾つかの実施形態においては約50~約80部を構成する。1種類又は複数の無機フィラーは、例えばポリマー組成物の約5重量%~約60重量%、幾つかの実施形態においては約10重量%~約55重量%、幾つかの実施形態においては約25重量%~約40重量%を構成し得る。
【0035】
[0033]ポリマー組成物において使用される1種類又複数の無機フィラーの性質は、無機粒子、無機繊維(又はウィスカー)など、並びにそれらのブレンドのように変化し得る。通常は、ポリマー組成物において使用される無機フィラーは、組成物の機械的強度、接着強度、及び表面特性を改善するのを助けるために特定の硬度値を有し、これにより組成物がカメラモジュールの小さなガイドユニットを形成するのに独特に適していることを可能にする。例えば、硬度値は、モース硬度スケールに基づいて約2.0以上、幾つかの実施形態においては約2.5以上、幾つかの実施形態においては約3.0以上、幾つかの実施形態においては約3.0~約11.0、幾つかの実施形態においては約3.5~約11.0、幾つかの実施形態においては約4.5~約6.5であってよい。例えば幾つかの実施形態においては、本ポリマー組成物は無機粒子及び無機繊維のブレンドを含み得る。かかるブレンドを使用する場合、無機繊維は、ブレンドの約25重量%~約70重量%、幾つかの実施形態においては約30重量%~約60重量%、幾つかの実施形態においては約35重量%~約50重量%を構成し得る一方で、無機粒子は、ブレンドの約30重量%~約75重量%、幾つかの実施形態においては約40重量%~約70重量%、及び幾つかの実施形態においては約50重量%~約65重量%を構成し得る。無機繊維は、例えば、ポリマー組成物全体の約1重量%~約40重量%、幾つかの実施形態においては約3重量%~約30重量%、幾つかの実施形態においては約5重量%~約20重量%を構成し得る一方で、無機粒子は、ポリマー組成物全体の約2重量%~約50重量%、幾つかの実施形態においては約5重量%~約40重量%、幾つかの実施形態においては約5重量%~約30重量%、幾つかの実施形態においては約10重量%~約30重量%を構成し得る。
【0036】
[0034]一般に、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、パリゴルスカイト、パイロフィライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪酸アルミニウム、珪灰石のような天然及び/又は合成シリケート鉱物;硫酸塩、リン酸塩、リン酸塩、フッ化物、ホウ酸塩などから形成されるもののような任意の種々の異なるタイプの無機粒子を本ポリマー組成物において使用することができる。炭酸カルシウム(CaCO;3.0のモース硬度)、炭酸水酸化銅(CuCO(OH);4.0のモース硬度);フッ化カルシウム(CaFI;4.0のモース硬度);ピロリン酸カルシウム(Ca;5.0のモース硬度)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO;3.5のモース硬度)、水和リン酸アルミニウム(AlPO・2HO;4.5のモース硬度);シリカ(SiO;5.0~6.0のモース硬度)、カリウムアルミニウムシリケート(KAlSi;6のモース硬度)、ケイ酸銅(CuSiO3・HO、5.0のモース硬度);ホウケイ酸水酸化カルシウム(CaSiO(OH);3.5のモース硬度);アルミナ(AlO;10.0のモース硬度);硫酸カルシウム(CaSO;3.5のモース硬度)、硫酸バリウム(BaSO;3~3.5のモース硬度)、マイカ(2.5~5.3のモース硬度)など、並びにこれらの組合せのような所望の硬度値を有する粒子が特に好適である。例えば、マイカが特に好適である。一般に、例えば、モスコバイト(KAl(AlSi)O10(OH))、バイオタイト(K(Mg,Fe)(AlSi)O10(OH))、フロゴパイト(KMg(AlSi)O10(OH))、レピドライト(K(Li,Al)2~3(AlSi)O10(OH))、グローコナイト(K,Na)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10(OH))などをはじめとする任意の形態のマイカを使用することができる。モスコバイト系マイカが、本ポリマー組成物において使用するのに特に好適である。
【0037】
[0035]幾つかの実施形態においては、硫酸バリウム及び/又は硫酸カルシウムの粒子のような無機粒子は、本質的に概して顆粒状又は球状である形状を有する可能性がある。かかる実施形態においては、粒子は、ISO-13320:2009にしたがい、(例えばHoriba LA-960粒度分布分析器を用いて)レーザー回折技術を使用して求めて約0.5~約20マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1~約15マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約1.5~約10マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約2~約8マイクロメートルのメジアン径(例えば直径)を有し得る。他の実施形態においては、約4以上、幾つかの実施形態においては約8以上、幾つかの実施形態においては約10~約500のような比較的高いアスペクト比(例えば、平均直径を平均厚さで割ったもの)を有するマイカ粒子のようなフレーク状無機粒子を使用することも望ましい場合がある。かかる実施形態においては、粒子の平均直径は、例えば約5マイクロメートル~約200マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約8マイクロメートル~約150マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約10マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲であってよい。また、平均厚さは、ISO-13320:2009にしたがって(例えば、Horiba LA-960粒度分布分析器を使用し)レーザー回折技術を使用して求めて約2マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約5ナノメートル~約1マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約20ナノメートル~約500ナノメートルであってよい。無機粒子はまた、狭い寸法分布を有し得る。即ち、粒子の少なくとも約70体積%、幾つかの実施形態においては粒子の少なくとも約80体積%、幾つかの実施形態においては粒子の少なくとも約90体積%が、上記の範囲内の寸法を有し得る。
【0038】
[0036]また、好適な無機繊維としては、ネオシリケート、ソロシリケート、イノシリケート(例えば、珪灰石のようなカルシウムイノシリケート;トレモライトのようなカルシウムマグネシウムイノシリケート;アクチノライトのようなカルシウムマグネシウム鉄イノシリケート;アントフィライトのようなマグネシウム鉄イノシリケート;など)、フィロシリケート(例えば、パリゴルスカイトのようなアルミニウムフィロシリケート)、テクトシリケートなどのようなシリケート;硫酸カルシウムのような硫酸塩(例えば、脱水又は無水石膏);ミネラルウール(例えば、ロックウール又はスラグウール);などを由来とするものが挙げられる。Nyco MineralsからNyglos(登録商標)(例えば、Nyglos(登録商標)4W又はNyglos(登録商標)8)の商品名で商業的に入手できる珪灰石(4.5~5.0のモース硬度)のようなイノシリケート由来の繊維などの所望の硬度値を有する繊維が特に好適である。無機繊維は、約1~約35マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約2~約20マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約3~約15マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約7~約12マイクロメートルのメジアン幅(例えば直径)を有していてよい。無機繊維はまた、狭い寸法分布を有していてよい。即ち、繊維の少なくとも約60体積%、幾つかの実施形態においては繊維の少なくとも約70体積%、幾つかの実施形態においては繊維の少なくとも約80体積%が、上記の範囲内の寸法を有していてよい。理論によって限定されることは意図しないが、上記の寸法特性を有する無機繊維は、成形装置を通ってより容易に移動することができ、これによりポリマーマトリクス内の分布が増大し、表面欠陥の生成が最小になると考えられる。上記の寸法特性を有することに加えて、無機繊維はまた、得られるポリマー組成物の機械特性及び表面品質を更に向上させるのを助ける比較的高いアスペクト比(平均長さをメジアン幅で割った値)を有していてよい。例えば、無機繊維は、約2~約100、幾つかの実施形態においては約2~約50、幾つかの実施形態においては約3~約20、幾つかの実施形態においては約4~約15のアスペクト比を有していてよい。かかる無機繊維の体積平均長さは、例えば、約1~約200マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約2~約150マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約5~約100マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約10~約50マイクロメートルの範囲であってよい。
【0039】
C.随意的な成分
i.ガラス繊維
[0037]本発明の1つの有益な態様は、得られる部品の寸法安定性に悪影響を及ぼすことなく良好な機械的特性を達成することができることである。この寸法安定性を確実に維持することを助けるために、ポリマー組成物はガラス繊維のような従来の繊維状フィラーを実質的に含まないままであることが一般に望ましい。したがって、もし使用するとしても、ガラス繊維は、通常は、ポリマー組成物の約10重量%以下、幾つかの実施形態においては約5重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.001重量%~約3重量%を構成する。
【0040】
ii.耐衝撃性改良剤
[0038]所望であれば、ポリマー組成物の衝撃強度及び柔軟性を改良するのを助けるために、ポリマー組成物中において耐衝撃性改良剤を使用することができる。使用する場合、耐衝撃性改良剤は、通常は、ポリマーマトリクス100重量部当たりの重量部で約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.5~約15部、幾つかの実施形態においては約1~約10部を構成する。例えば、耐衝撃性改良剤は、ポリマー組成物の約0.1重量%~約15重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約12重量%、及び幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約10重量%を構成し得る。
【0041】
[0039]例えば幾つかの実施形態においては、耐衝撃性改良剤は、1種類以上のα-オレフィンから誘導されるオレフィン性モノマー単位を含むポリマーであってよい。かかるモノマーの例としては、例えば、2~20個の炭素原子、通常は2~8個の炭素原子を有する直鎖及び/又は分枝α-オレフィンが挙げられる。具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ヘキセン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ヘプテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-オクテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ノネン;エチル、メチル、又はジメチル置換1-デセン;1-ドデセン;及びスチレンが挙げられる。特に望ましいα-オレフィンモノマーは、エチレン及びプロピレンである。オレフィンポリマーは、当該技術において公知の他のモノマー単位を含むコポリマーの形態であってよい。例えば、別の好適なモノマーとしては、アクリル及びメタクリルモノマー、並びにその塩又はエステル、例えばアクリレート及びメタクリレートモノマーを包含する「(メタ)アクリル」モノマーを挙げることができる。かかる(メタ)アクリルモノマーの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、s-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、i-アミルアクリレート、イソボルニルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-デシルアクリレート、メチルシクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-プロピルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、i-アミルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、メチルシクロヘキシルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートなど、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。例えば一実施形態においては、耐衝撃性改良剤は、エチレンメタクリル酸コポリマー(EMAC)であってよい。使用する場合、モノマー成分の相対割合は選択的に制御することができる。例えば、α-オレフィンモノマーは、コポリマーの約55重量%~約95重量%、幾つかの実施形態においては約60重量%~約90重量%、幾つかの実施形態においては約65重量%~約85重量%を構成し得る。他のモノマー成分(例えば、(メタ)アクリルモノマー)は、コポリマーの約5重量%~約35重量%、幾つかの実施形態においては約10重量%~約32重量%、幾つかの実施形態においては約15重量%~約30重量%を構成し得る。
【0042】
[0040]他の好適なオレフィンコポリマーは、平均して分子当たり2以上のエポキシ官能基を含むという点で「エポキシ官能化」されたものであってよい。コポリマーはまた、エポキシ官能性モノマー単位を含み得る。かかる単位の一例は、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分である。例えば、好適なエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーとしては、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのような1,2-エポキシ基を含むものを挙げることができるが、これらに限定されない。他の好適なエポキシ官能性モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエチルアクリレート、及びグリシジルイタコネートが挙げられる。また、所望の分子量を達成するのを助けるために、他の好適なモノマーを使用することもできる。例えば1つの特定の実施形態においては、コポリマーは、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分、α-オレフィンモノマー成分、及び非エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分から形成されるターポリマーであってよい。コポリマーは、例えばポリ(エチレン-co-ブチルアクリレート-co-グリシジルメタクリレート)であってよい。使用する場合、1種類又は複数のエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーは、通常は、コポリマーの約1重量%~約20重量%、幾つかの実施形態においては約2重量%~約15重量%、幾つかの実施形態においては約3重量%~約10重量%を構成する。
【0043】
iii.エポキシ樹脂
[0041]幾つかの実施形態においては、例えばポリマー組成物の形成中に芳香族ポリマー(例えば、液晶ポリマー及び半結晶質芳香族ポリエステル)のブレンドが一緒に反応する程度を最小にするために、エポキシ樹脂を使用することもできる。使用する場合、エポキシ樹脂は、通常は、ポリマーマトリクス100部当たりの重量基準で約0.01~約5部、幾つかの実施形態においては約0.05~約4部、幾つかの実施形態においては約0.1~約2部を構成する。例えば、エポキシ樹脂は、ポリマー組成物の約0.01重量%~約5重量%、幾つかの実施形態においては約0.1重量%~約4重量%、幾つかの実施形態においては約0.3重量%~約2重量%を構成し得る。
【0044】
[0042]エポキシ樹脂は、ポリマー組成物中において使用するのに特に有効であり得る特定のエポキシ当量を有する。即ち、エポキシ当量は、一般に、ASTM-D1652-11e1にしたがって求めて約250~約1,500、幾つかの実施形態においては約400~約1,000、幾つかの実施形態においては約500~約800グラム/グラム当量である。エポキシ樹脂はまた、通常は、平均して分子あたり少なくとも約1.3、幾つかの実施形態においては約1.6~約8、幾つかの実施形態においては約3~約5のエポキシド基を含む。エポキシ樹脂はまた、通常は、25℃の温度においてASTM-D445-15にしたがって求めて、約1センチポアズ~約25センチポアズ、幾つかの実施形態においては2センチポアズ~約20センチポアズ、幾つかの実施形態においては約5センチポアズ~約15センチポアズのような比較的低い動粘度を有する。室温(25℃)においては、エポキシ樹脂はまた、通常は約50℃~約120℃、幾つかの実施形態においては約60℃~約110℃、幾つかの実施形態においては約70℃~約100℃の融点を有する固体又は半固体材料である。
【0045】
[0043]エポキシ樹脂は、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐、脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式であってよく、オキシランとの反応を実質的に妨害しない置換基を有していてよい。好適なエポキシ樹脂としては、例えば、エピクロロヒドリンを、場合によりアルカリ反応条件下で少なくとも1.5個の芳香族ヒドロキシル基を含むヒドロキシル化合物と反応させることによって調製されるグリシジルエーテル(例えばジグリシジルエーテル)が挙げられる。多官能性化合物が特に好適である。例えば、エポキシ樹脂は、二価フェノールのジグリシジルエーテル、水素化二価フェノールのジグリシジルエーテル、三価フェノールのトリグリシジルエーテル、水素化三価フェノールのトリグリシジルエーテルなどであってよい。二価フェノールのジグリシジルエーテルは、例えば、エピハロヒドリンと二価フェノールとを反応させることによって形成することができる。好適な二価フェノールの例としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA);2,2-ビス-4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブタン;ビス(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)メタン;1,5-ジヒドロキシナフタレン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-アルキルフェニル)エタンなどが挙げられる。好適な二価フェノールはまた、フェノールとホルムアルデヒドのようなアルデヒドとの反応から得ることもできる(例えば、ビスフェノールF)。かかる多官能性エポキシ樹脂の商業的に入手できる例としては、862、828、826、825、1001、1002、1009、SU3、154、1031、1050、133、及び165の名称でHexionから入手可能なEpon(登録商標)樹脂を挙げることができる。他の好適な多官能性エポキシ樹脂は、Huntsmanから商品名Araldite(登録商標)(例えば、Araldite(登録商標)ECN-1273及びAraldite(登録商標)ECN-1299)で入手可能である。
【0046】
iv.静電防止フィラー
[0044]成形操作、輸送、回収、組み立て等の間に静電荷を生成する傾向を減少させるのを助けるために、ポリマー組成物中において静電防止フィラーを使用することもできる。かかるフィラーは、使用する場合、通常はポリマーマトリクス100重量部当たりの重量基準で約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.2~約10部、幾つかの実施形態においては約0.5~約5部を構成する。例えば、静電防止フィラーは、ポリマー組成物の約0.1重量%~約10重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約8重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約4重量%を構成し得る。
【0047】
[0045]その静電防止特性を改良するのを助けるために、一般にポリマー組成物中において任意の種々の静電防止フィラーを使用することができる。好適な静電防止フィラーの例としては、例えば、金属粒子(例えばアルミニウムフレーク)、金属繊維、炭素粒子(例えば、黒鉛、膨張黒鉛、黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラックなど)、カーボンナノチューブ、炭素繊維などを挙げることができる。例えば一実施形態においては、静電防止フィラーはイオン液体であってよい。かかる材料の1つの利点は、静電防止剤であることに加えて、イオン液体は溶融加工中に液体形態で存在することもでき、これにより、ポリマーマトリクス内でより均一にブレンドすることができることである。これにより、電気的接続性が改善され、それにより、組成物がその面から静電荷を迅速に放散する能力が向上する。イオン液体は、一般に、液晶ポリマーと共に溶融処理した場合に液体の形態となることができるように十分に低い溶融温度を有する塩である。例えば、イオン液体の溶融温度は、約400℃以下、幾つかの実施形態においては約350℃以下、幾つかの実施形態においては約1℃~約100℃、幾つかの実施形態においては約5℃~約50℃であってよい。塩は、カチオン種及び対イオンを含む。カチオン種は、「カチオン中心」として少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、窒素又はリン)を有する化合物を含む。かかるヘテロ原子化合物の例としては、例えば、以下の構造:
【0048】
【化5】
【0049】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、独立して、水素;置換又は非置換のC~C10アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル等);置換又は非置換のC~C14シクロアルキル基(例えば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、シクロヘキセニル等);置換又は非置換のC~C10アルケニル基(例えば、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ペンチレン等);置換又は非置換のC~C10アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル等);置換又は非置換のC~C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ等);置換又は非置換のアシルオキシ基(例えば、メタクリロキシ、メタクリロキシエチル等);置換又は非置換のアリール基(例えばフェニル);置換又は非置換のヘテロアリール基(例えば、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、キノリル等);などからなる群から選択される)
を有する第四級オニウムが挙げられる。例えば1つの特定の実施形態においては、カチオン種は、構造:N(式中、R、R、及び/又はRは、独立してC~Cアルキル(例えば、メチル、エチル、ブチル等)であり、Rは、水素又はC~Cアルキル基(例えばメチル又はエチル)である)を有するアンモニウム化合物であってよい。例えば、カチオン成分は、トリブチルメチルアンモニウム(R、R、及びRはブチルであり、Rはメチルである)であってよい。
【0050】
[0046]カチオン種に対する好適な対イオンとしては、例えば、ハロゲン(例えば、塩素、臭素、ヨウ素等);スルフェート又はスルホネート(例えば、硫酸メチル、硫酸エチル、硫酸ブチル、硫酸ヘキシル、硫酸オクチル、ハイドロジェンスルフェート、メタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ドデシルスルフェート、トリフルオロメタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムドデシルエトキシスルフェート等);スルホスクシネート;アミド(例えばジシアンアミド);イミド(例えば、ビス(ペンタフルオロエチル-スルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチル)イミド等);ボレート(例えば、テトラフルオロボレート、テトラシアノボレート、ビス[オキサラト]ボレート、ビス[サリチラト]ボレート等);ホスフェート又はホスフィネート(例えば、ヘキサフルオロホスフェート、ジエチルホスフェート、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィネート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリス(ノナフルオロブチル)トリフルオロホスフェート等);アンチモネート(例えばヘキサフルオロアンチモネート);アルミネート(例えばテトラクロロアルミネート);脂肪酸カルボキシレート(例えば、オレエート、イソステアレート、ペンタデカフルオロオクタノエート等);シアネート;アセテート;など、並びに上記の任意のものの組み合わせを挙げることができる。液晶ポリマーとの相溶性を改善するのを助けるために、イミド、脂肪酸カルボキシレート等のような本来概して疎水性の対イオンを選択することが望ましい場合がある。特に好適な疎水性対イオンとしては、例えば、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びビス(トリフルオロメチル)イミドを挙げることができる。
【0051】
v.トライボロジー剤(tribological formulation)
[0047]また、通常は、ポリマー組成物中において使用される1種類又は複数の芳香族ポリマー100部当たり約1~約30部、幾つかの実施形態においては約2~約15部、幾つかの実施形態においては約4~約12部の量のトライボロジー剤も、ポリマー組成物中において使用することができる。例えば、トライボロジー剤は、ポリマー組成物の約1重量%~約30重量%、幾つかの実施形態においては約2重量%~約25重量%、及び幾つかの実施形態においては約4重量%~約10重量%を構成し得る。
【0052】
[0048]トライボロジー剤には、内部潤滑性を改善し、他の表面に接触する組成物の摩耗及び摩擦特性を強化するのにも役立つシロキサンポリマーを含ませることができる。かかるシロキサンポリマーは、通常は組成物中において使用される1種類又は複数の芳香族ポリマー100部当たり約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.4~約10部、幾つかの実施形態においては約0.5~約5部を構成する。トライボロジー剤において、任意の種々のシロキサンポリマーを使用することができる。シロキサンポリマーは、例えば、主鎖中に式:
SiO(4-r/2)
(式中、
Rは、独立して水素又は置換若しくは非置換の炭化水素基であり、
rは、0、1、2、又は3である)
を有するシロキサン単位を含む任意のポリマー、コポリマー、又はオリゴマーを包含し得る。
【0053】
[0049]好適な基Rの幾つかの例としては、例えば、場合によって置換されているアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニル、又はアルキニル、或いはシクロアルキル基が挙げられ、これらはヘテロ原子が介在していてもよく、すなわち炭素鎖又は環中に1つ又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい。好適なアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル及びtert-ペンチル基、ヘキシル基(例えばn-ヘキシル)、ヘプチル基(例えばn-ヘプチル)、オクチル基(例えばn-オクチル)、イソオクチル基(例えば2,2,4-トリメチルペンチル基)、ノニル基(例えばn-ノニル)、デシル基(例えばn-デシル)、ドデシル基(例えばn-ドデシル)、オクタデシル基(例えばn-オクタデシル)などを挙げることができる。また、好適なシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基などを挙げることができ;好適なアリール基としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、及びフェナントリル基を挙げることができ;好適なアルキルアリール基としては、はo-、m-、又はp-トリル基、キシリル基、エチルフェニル基などを挙げることができ;好適なアルケニル又はアルキニル基としては、ビニル、1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、5-ヘキセニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、エチニル、プロパルギル、1-プロピニルなどを挙げることができる。置換炭化水素基の例は、ハロゲン化アルキル基(例えば、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、及びペルフルオロヘキシルエチル)、及びハロゲン化アリール基(例えば、p-クロロフェニル、及びp-クロロベンジル)である。1つの特定の実施形態においては、シロキサンポリマーは、Si原子の少なくとも70モル%に結合したアルキル基(例えばメチル基)、及び場合によってはSi原子の0.001~30モル%に結合したビニル及び/又はフェニル基を含む。シロキサンポリマーはまた、好ましくは主としてジオルガノシロキサン単位から構成される。ポリオルガノシロキサンの末端基は、トリアルキルシロキシ基、特にトリメチルシロキシ基、又はジメチルビニルシロキシ基であってよい。しかしながら、これらのアルキル基の1つ以上が、ヒドロキシ基、又はメトキシ又はエトキシ基のようなアルコキシ基で置換されていることもあり得る。シロキサンポリマーの特に好適な例としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、ビニルメチルポリシロキサン、及びトリフルオロプロピルポリシロキサンが挙げられる。
【0054】
[0050]シロキサンポリマーはまた、ポリマーのシロキサンモノマー単位の少なくとも一部の上に、ビニル基、ヒドロキシル基、ヒドリド、イソシアネート基、エポキシ基、酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、及びオクタノイルオキシ)、ケトキシメート基(例えば、ジメチルケトキシム、メチルケトキシム、及びメチルエチルケトキシム)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、及びブチルアミノ)、アミド基(例えば、N-メチルアセトアミド、及びN-エチルアセトアミド)、酸アミド基、アミノ-オキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基(例えば、ビニルオキシ、イソプロペニルオキシ、及び1-エチル-2-メチルビニルオキシ)、アルコキシアルコキシ基(例えば、メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、及びメトキシプロポキシ)、アミノオキシ基(例えば、ジメチルアミノオキシ、及びジエチルアミノオキシ)、メルカプト基などの1以上のような反応性官能基を含んでいてもよい。
【0055】
[0051]その特定の構造にかかわらず、シロキサンポリマーは比較的高い分子量を有していてよく、これによりそれがポリマー組成物の表面に移動又は拡散する傾向が減少し、したがって相分離の可能性が更に最小になる。例えば、シロキサンポリマーは、通常は、約100,000グラム/モル以上、幾つかの実施形態においては約200,000グラム/モル以上、幾つかの実施形態においては約500,000グラム/モル~約2,000,000グラム/モルの重量平均分子量を有する。シロキサンポリマーはまた、約10,000センチストークス以上、幾つかの実施形態においては約30,000センチストークス以上、幾つかの実施形態においては約50,000~約500,000センチストークスのような比較的高い動粘度を有していてもよい。
【0056】
[0052]所望であれば、シリカ粒子(例えばヒュームドシリカ)をシロキサンポリマーと組み合わせて用いて、組成物中に分散するその能力の向上を助けることもできる。かかるシリカ粒子は、例えば、約5ナノメートル~約50ナノメートルの粒径、約50平方メートル/グラム(m/g)~約600m/gの表面積、及び/又は約160キログラム/立方メートル(kg/m)~約190kg/mの密度を有していてよい。使用する場合には、シリカ粒子は、通常はシロキサンポリマー100重量部を基準とする重量基準で約1~約100部、幾つかの実施形態においては約20~約60部を構成する。一実施形態においては、シリカ粒子は、シロキサンポリマーと混合した後に、この混合物をポリマー組成物に加えることができる。例えば、超高分子量ポリジメチルシロキサン及びヒュームドシリカを含む混合物をポリマー組成物中に導入することができる。かかる予め形成された混合物は、Wacker Chemie, AGからGenioplast(登録商標)ペレットSとして入手できる。
【0057】
[0053]トライボロジー剤にはまた、得られるポリマー組成物が低い摩擦と良好な耐摩耗性との良好な組合せを達成するのを助けることができる他の成分を含ませることもできる。例えば一実施形態においては、トライボロジー剤は、シロキサンポリマーと組み合わせてフッ素化添加剤を使用することができる。理論によって限定されることは意図しないが、フッ素化添加剤は、中でも、より良好な金型充填性、内部潤滑、離型性など与えることなどによって組成物の加工性を改善することができると考えられる。使用する場合、シロキサンポリマーに対するフッ素化添加剤の重量比は、通常は約0.5~約12、幾つかの実施形態においては約0.8~約10、幾つかの実施形態においては約1~約6である。例えば、フッ素化添加剤は、組成物中において使用される1種類又複数の芳香族ポリマー100部当たり約0.1~約20部、幾つかの実施形態においては約0.5~約15部、幾つかの実施形態においては約1~約10部を構成し得る。
【0058】
[0054]特定の実施形態においては、フッ素化添加剤には、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された炭化水素骨格ポリマーを含むフルオロポリマーを含ませることができる。骨格ポリマーはポリオレフィン性であってよく、フッ素置換の不飽和オレフィンモノマーから形成することができる。フルオロポリマーは、かかるフッ素置換モノマーのホモポリマー、又はフッ素置換モノマーのコポリマー、或いはフッ素置換モノマーと非フッ素置換モノマーの混合物であってよい。フッ素原子に加えて、フルオロポリマーは、塩素及び臭素原子のような他のハロゲン原子で置換されていてもよい。本発明において使用するためのフルオロポリマーを形成するのに好適な代表的なモノマーは、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテルなど、並びにそれらの混合物である。好適なフルオロポリマーの具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-ペルフルオロアルキルビニルエーテル)、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなど、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0059】
[0055]フッ素化添加剤にはフルオロポリマーのみを含ませることができ、又はポリマー組成物内に均一に分散するその能力を助けるもののような他の成分を含ませることができる。例えば一実施形態においては、フッ素化添加剤に、複数の担体粒子と組み合わせてフルオロポリマーを含ませることができる。例えばかかる実施形態においては、フルオロポリマーを担体粒子上に被覆することができる。タルク(MgSi10(OH))、ハロイサイト(AlSi(OH))、カオリナイト(AlSi(OH))、イライト((K,HO)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10[(OH),(HO)]、モンモリロナイト(Na,Ca)0.33(Al,Mg)Si10(OH)・nHO)、バーミキュライト((MgFe,Al)(Al,Si)10(OH)・4HO)、パリゴルスカイト((Mg,Al)Si10(OH)・4(HO))、パイロフィライト(AlSi10(OH))、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、マイカ、珪藻土、珪灰石などのようなシリケート粒子が、この目的のために特に好適である。例えば、マイカは本発明において用いるのに特に好適な鉱物である可能性がある。地質学的存在状態における相当な相違を有する幾つかの化学的に異なるマイカ種が存在するが、全て実質的に同じ結晶構造を有する。本明細書において用いる「マイカ」という用語は、モスコバイト(KAl(AlSi)O10(OH))、バイオタイト(K(Mg,Fe)(AlSi)O10(OH))、フロゴパイト(KMg(AlSi)O10(OH))、レピドライト(K(Li,Al)2~3(AlSi)O10(OH))、グローコナイト(K,Na)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10(OH))など、並びにこれらの組み合わせのような任意のこれらの種を総称的に包含すると意図される。担体粒子は、約5~約50マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約10~20マイクロメートルの平均粒径を有し得る。所望の場合には、担体粒子はまた、その厚さに対する長軸の比が2以上であるという点で、板状粒子の形状であってもよい。
【0060】
vi.他の添加剤
[0056]また、滑剤、熱伝導性フィラー、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、垂れ防止添加剤、成核剤(例えば窒化ホウ素)、並びに特性及び加工性を高めるために添加される他の材料のような広範囲の更なる添加剤をポリマー組成物中に含ませることもできる。例えば、実質的に分解することなく液晶ポリマーの加工条件に耐えることができる滑剤を、ポリマー組成物中において用いることができる。かかる滑剤の例としては、脂肪酸エステル、その塩、エステル、脂肪酸アミド、有機ホスフェートエステル、及びエンジニアリングプラスチック材料の処理において滑剤として通常用いられているタイプの炭化水素ワックス、並びにこれらの混合物が挙げられる。好適な脂肪酸は、通常は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデカン酸、パリナリン酸などのように、約12~約60個の炭素原子の骨格炭素鎖を有する。好適なエステルとしては、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、及びコンプレックスエステルが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、脂肪酸第1級アミド、脂肪酸第2級アミド、メチレン及びエチレンビスアミド、並びにアルカノールアミド、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’-エチレンビスステアラミドなどが挙げられる。また、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどのような脂肪酸の金属塩;パラフィンワックス、ポリオレフィン及び酸化ポリオレフィンワックス、並びに微結晶質ワックスなどの炭化水素ワックス;も好適である。特に好適な滑剤は、ステアリン酸の酸、塩、又はアミド、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、カルシウムステアレート、又はN,N’-エチレンビスステアラミドである。用いる場合には、1種類又は複数の滑剤は、通常は、ポリマー組成物の約0.05重量%~約1.5重量%、幾つかの態様においては約0.1重量%~約0.5重量%(重量基準)を構成する。
【0061】
II.形成
[0057]ポリマー組成物の成分(例えば、1種類又複数の芳香族ポリマー、1種類又複数の無機フィラーなど)は、溶融加工又は一緒にブレンドすることができる。成分は、バレル(例えば円筒形のバレル)内に回転可能に取り付けられてその中に収容されている少なくとも1つのスクリューを含み、スクリューの長さに沿って供給セクション、及び供給セクションから下流に位置する溶融セクションを画定する押出機に、別々か又は組み合わせて供給することができる。押出機は、一軸又は二軸押出機であってよい。スクリューの速度は、所望の滞留時間、剪断速度、溶融加工温度などを達成するように選択することができる。例えば、スクリュー速度は、約50~約800回転/分(rpm)、幾つかの実施形態においては約70~約150rpm、幾つかの実施形態においては約80~約120rpmの範囲であってよい。また、溶融ブレンド中のみかけ剪断速度は、約100秒-1~約10,000秒-1、幾つかの実施形態においては約500秒-1~約5000秒-1、幾つかの実施形態においては約800秒-1~約1200秒-1の範囲であってよい。みかけせん断速度は、4Q/πR(式中、Qはポリマー溶融体の体積流量(m/秒)であり、Rはそれを通って溶融ポリマーが流れる毛細管(例えば押出機ダイ)の半径(m)である)に等しい。
【0062】
[0058]それが形成される特定の方法にかかわらず、得られるポリマー組成物は優れた熱特性を有し得る。例えば、ポリマー組成物を小さい寸法を有する金型のキャビティ中に容易に流入させることができるように、ポリマー組成物の溶融粘度を十分に低くすることができる。1つの特定の実施形態においては、ポリマー組成物は、400秒-1の剪断速度において求めて約30~約400パスカル・秒(Pa・秒)、幾つかの実施形態においては約40~約250Pa・秒、幾つかの実施形態においては約50~約220Pa・秒の溶融粘度を有し得る。溶融粘度は、ISO試験No.11443:2005にしたがって、組成物の融点(例えば305℃)よりも15℃高い温度において求めることができる。
【0063】
III.カメラモジュール
[0059]上記に示したように、本発明のポリマー組成物はカメラモジュールのアクチュエータアセンブリ(例えばガイドユニット)において使用される。カメラモジュールの特定の構造は、当業者に公知なように変更することができる。例えば図1を参照すると、ハウジング内に含まれるレンズモジュール120を含み、レンズモジュール120はレンズホルダー123に結合されたレンズバレル121を含むカメラモジュール100の一実施形態が示されている。レンズバレル121は、対象物を結像させるための複数のレンズを光学軸方向1でその中に収容することができるように、中空の円筒形状を有していてよい。レンズバレル121は、レンズホルダー123内に与えられた中空キャビティ中に挿入され、レンズバレル121及びレンズホルダー123は、締結具(例えばネジ)、接着剤などによって互いに結合することができる。レンズバレル121を含むレンズモジュール120は、アクチュエータアセンブリ150によって、(例えばオートフォーカスのために)光学軸方向1において移動可能であってよい。例えば示されている実施形態においては、アクチュエータアセンブリ150には、レンズモジュール120を光学軸方向1に移動させるように構成されている磁性体151及びコイル153を含ませることができる。磁性体151はレンズホルダー123の一方の側の上に取り付けることができ、コイル153は磁性体151に面するように配置することができる。コイル153は、基材155上に取り付けることができ、これは次に、コイル153が磁性体151に面するようにハウジング130に取り付けることができる。アクチュエータアセンブリ150には、基材155上に取り付けられ、制御入力信号に応じてアクチュエータアセンブリ150を駆動するための信号(例えば電流)を出力する駆動装置160を含ませることができる。アクチュエータアセンブリ150は、信号を受け取り、レンズモジュール120を光学軸方向1において移動させる駆動力を生成することができる。所望の場合、光学軸方向1におけるレンズモジュール120の移動距離を制限するために、ハウジング130上にストッパー140を取り付けることもできる。更に、シールドケース110(例えば金属)をハウジング130に結合させて、ハウジング130の外表面を被包して、これによりカメラモジュール100の駆動中に発生する電磁波を遮断することもできる。
【0064】
[0060]上記に示したように、カメラモジュールのアクチュエータアセンブリは、本発明のポリマー組成物を含み、レンズモジュールの移動を導くのを助けるためにハウジングとレンズモジュールとの間に配置されるガイドユニットも含む。1つ又は複数のばね、1つ又は複数のボールベアリング、静電力発生器、油圧力発生器などのような当該技術において公知の任意の種々のガイドユニットを使用することができる。例えば、レンズモジュールに作用し、それを所望の光学軸方向に導く予荷重を生成するバネを使用することができる。或いは、図1に示される実施形態において示されるように、ボールベアリング170をアクチュエータアセンブリ150のガイドユニットとして機能させることができる。より具体的には、ボールベアリング170をレンズホルダー123の外表面及びハウジング130の内表面と接触させて、レンズモジュール120の光学軸方向1における移動を導くことができる。即ち、ボールベアリング170をレンズホルダー123とハウジング130との間に配置することができ、転動によってレンズモジュール120の光学軸方向の移動を導くことができる。
【0065】
[0061]この目的のために、一般に、2以上、幾つかの実施形態においては3~20、幾つかの実施形態においては4~12のような任意の数のボールベアリング170を使用することができる。ボールベアリング170は、間隙を有しているか又は互いに接触していてよく、また、光学軸方向1に対して垂直な方向に積層することもできる。ボールベアリング170の寸法は、当業者に公知なように変更することができる。しかしながら、本発明のポリマー組成物の強化された強度特性のために、より大きなベアリングと同程度の構造的一体性を達成しながら、比較的小さなボールベアリングを使用することが可能である。かかるより小さいボールベアリングは、例えば、約800マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約600マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約400マイクロメートル以下、幾つかの実施形態においては約50~約200マイクロメートルの平均寸法(例えば直径)を有し得る。
【0066】
[0062]ガイドユニットは、種々の異なる技術を用いて形成することができる。好適な技術としては、例えば、射出成形、低圧射出成形、押出圧縮成形、ガス射出成形、フォーム射出成形、低圧ガス射出成形、低圧フォーム射出成形、ガス押出圧縮成形、フォーム押出圧縮成形、押出成形、フォーム押出成形、圧縮成形、フォーム圧縮成形、ガス圧縮成形などを挙げることができる。例えば、その中でポリマー組成物を射出することができる金型を含む射出成形システムを使用することができる。インジェクター内部の時間は、ポリマーマトリクスが早期に固化しないように制御及び最適化することができる。サイクル時間に達して、バレルが排出のために満杯になった時点で、ピストンを使用して組成物を金型キャビティに射出することができる。圧縮成形システムを使用することもできる。射出成形と同様に、ポリマー組成物の所望の物品への成形も金型内で行われる。組成物は任意の公知の技術を使用して、例えば自動化ロボットアームによって取り上げることによって圧縮金型中に配置することができる。金型の温度は、固化を可能にするために、所望の時間、ポリマーマトリクスの固化温度以上に維持することができる。次に、成形品を融点より低い温度にすることによって、成形品を固化させることができる。得られた生成物を離型することができる。それぞれの成形プロセスに関するサイクル時間は、ポリマーマトリクスに適合するように、十分な結合を達成するように、及びプロセス全体の生産性を高めるように調整することができる。
【0067】
[0063]ガイドユニットにおいて使用することに加えて、本発明のポリマー組成物はまた、カメラモジュールの任意の他の部分において使用することができる。例えば再び図1を参照すると、本ポリマー組成物を使用して、ハウジング130、レンズバレル121、レンズホルダー123、基材155、ストッパー140、シールドケース110、及び/又はカメラモジュールの任意の他の部分の全部又は一部を形成することができる。
【0068】
[0064]その特定の構造及び構造にかかわらず、得られるカメラモジュールは、当該技術において公知な広範囲の電子機器において、例えば携帯電子機器(例えば、携帯電話、携帯コンピュータ、タブレット、時計など)、コンピュータ、テレビ、自動車部品などにおいて使用することができる。1つの特定の実施形態においては、本ポリマー組成物は、無線通信機器(例えば携帯電話)において一般的に使用されるもののようなカメラモジュールにおいて使用することができる。例えば図2~3を参照すると、カメラモジュール100を含む電子機器2(例えば電話)の一実施形態が示されている。示すように、カメラモジュール100のレンズを、開口部2bを通して電子機器2の外部に曝露して、外部の対象物を撮像することができる。また、カメラモジュール100を、特定用途向け集積回路2cに電気的に接続して、ユーザの選択に応じて制御動作を実行することができる。
【実施例
【0069】
[0065]本発明は以下の実施例を参照することにより、より良く理解することができる。
試験方法
[0066]摩擦及び摩耗: SSP-03機を使用し、VDA-230-206:2007(スティックスリップ試験)にしたがって求める平均動摩擦係数(無次元)によって、試料によって発生する摩擦の程度を特徴付けることができる。また、VDA-230-206:2007にしたがって、試験試料の摩耗の程度を求めることもできる。より詳しくは、ポリマー生成物を使用して、射出成形プロセスによってボール形状の試験片及びプレート形状の試験片を調製する。ボール試験片は直径0.5インチである。プレート試験片は、引張棒材の2つの端部領域を切断することによって、ISO引張棒材の中央部から得られる。プレート試験片を試料ホルダー上に固定し、ボール試験片を、150mm/秒及び15Nの力でプレート試験片と接触させて移動させる。1000サイクル後、動摩擦係数が得られる。摩耗の深さは、摩耗したボール領域の直径を測定することによって、ボール試験片から得られる。磨耗領域の直径に基づいて、ボール試験片の磨耗深さを計算して求める。
【0070】
[0067]溶融粘度:溶融粘度(Pa・秒)は、ISO試験No.11443:2005にしたがい、Dynisco LCR 7001毛細管流量計を用いて、400秒-1の剪断速度、及び融点よりも15℃高い温度(例えば305℃)において求めることができる。流量計のオリフィス(ダイ)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、及び180°の入口角を有していた。バレルの直径は9.55mm+0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
【0071】
[0068]融点:融点(Tm)は、当該技術において公知なように示差走査熱量測定(DSC)によって求めることができる。融点は、ISO試験No.11357-2:2013によって求められる示差走査熱量測定(DSC)ピーク融解温度である。DSC手順においては、TA-Q2000装置上で行うDSC測定を用いて、ISO標準規格10350に示されているように試料を20℃/分で加熱及び冷却した。
【0072】
[0069]荷重撓み温度(DTUL):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2:2013(ASTM-D648-07と技術的に同等)にしたがって求めることができる。より詳しくは、80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する試験片試料を、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8メガパスカルである沿層方向3点曲げ試験にかけることができる。試験片をシリコーン油浴中に降下させることができ、そこで0.25mm(ISO試験No.75-2:2013に関しては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させる。
【0073】
[0070]引張弾性率、引張応力、及び引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって試験することができる。80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する同じ試験片試料について、弾性率及び強度の測定を行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は1又は5mm/分であってよい。
【0074】
[0071]曲げ弾性率、曲げ応力、及び曲げ伸び:曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM-D790-10と技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は64mmの支持材スパンに関して行うことができる。試験は、未切断のISO-3167多目的棒材の中央部分について行うことができる。試験温度は23℃であってよく、試験速度は2mm/分であってよい。
【0075】
[0072]ノッチ無し及びノッチ付きシャルピー衝撃強さ:シャルピー特性は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM-D256-10,方法Bと技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は、タイプ1の試験片寸法(80mmの長さ、10mmの幅、及び4mmの厚さ)を用いて行うことができる。ノッチ付き衝撃強さを試験する場合には、ノッチはタイプAのノッチ(0.25mmの底半径)であってよい。試験片は、一枚歯フライス盤を用いて多目的棒材の中央部分から切り出すことができる。試験温度は23℃であってよい。
【0076】
[0073]ロックウェル硬さ:ロックウェル硬さは材料の押し込み抵抗性の指標であり、ASTM-D785-08(スケールM)にしたがって求めることができる。試験は、まず規定の小荷重を用いて鋼球圧子を材料の表面中に押し込むことによって行う。次に、荷重を規定の大荷重に増加させ、減少させて元の小荷重に戻す。ロックウェル硬さは、圧子の深さの正味の増加分の指標であり、貫入量を目盛分割で割った値を130から減じることによって計算される。
【0077】
[0074]表面/体積抵抗率:表面及び体積抵抗率の値は、一般にIEC-60093(ASTM-D257-07と同等)にしたがって求められる。この手順によると、標準試験片(例えば1メートル立方)を2つの電極の間に配置する。電圧を60秒間印加し、抵抗を測定する。表面抵抗率は、電位勾配(V/m)と単位電極長さあたりの電流(A/m)との商であり、概して絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。電極の4つの端が正方形を画定するので、商において長さは約分されて表面抵抗率はΩで報告されるが、Ω/スクエアのより説明的な単位を見ることも通常的である。体積抵抗率もまた、電流密度に対する材料において電流に平行な電位勾配の比として求められる。SI単位においては、体積抵抗率は1メートル立方の材料の対向面の間の直流抵抗(Ω・m)に数値的に等しい。
【0078】
[0075]ボールへこみ試験:物理的な力に耐える材料の能力を試験するために、「ボールへこみ」試験を行うことができる。より具体的には、試料組成物を、40mmの幅及び長さ並びに2mmの厚さを有する試験片に射出成形することができる。0.2mmのような他の厚さも試験することができる。形成したら、金属ボール(直径1.5mm)を、試験片の上面から10cm又は15cmの距離から1回落下させることができる。35グラム、50グラム、及び75グラムのような種々のボール重量を試験することができる。ボールが試験片に接触した後、Keyence製の画像測定センサーを使用して、試験片中に形成されたへこみの深さ及び直径を測定する。
【0079】
[0076]ミニドロップ試験:物理的な力に耐える材料の能力を試験するための別の技術は、「ミニドロップ」試験である。より具体的には、試料組成物を、40mmの幅及び長さ並びに2mmの厚さを有する試験片に射出成形することができる。0.2mmのような他の厚さも試験することができる。形成したら、金属ボール(直径1.5mm、5グラム)を、試験片の上面から150mmの距離から何度も(例えば10,000又は20,000回)落下させることができる。その後、Keyence製の画像測定センサーを使用して、試験片中に形成されたへこみの深さ(マイクロメートル)を測定する。
【0080】
実施例1
[0077]種々の割合の液晶ポリマー(LCP)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、珪灰石繊維(Nyglos(登録商標)4W)、マイカ(C-4000)、タルク(Flextalc(登録商標)815)、エチレンメタクリル酸コポリマー(EMAC(登録商標)SP-2260)、窒化ホウ素、第1のエポキシ樹脂(Araldite(登録商標)ECN-1299、エポキシ樹脂1)、第2のエポキシ樹脂(Epon(登録商標)1009F、エポキシ樹脂2)、黒色顔料、滑剤(Licowax(商標)PED-521)、及び種々の酸化防止安定剤(AO-1010及びAO-126)から試料1~5を形成する。PCTポリマーは、0.62の固有粘度を有する。試料2においては、LCPポリマー(LCP-1)は、79.3モル%のHBA、20モル%のHNA、及び0.7モル%のTAから形成される(Tm=325℃)。試料3においては、LCPポリマー(LCP-2)は、73モル%のHBA及び27モル%のHNAから形成される(Tm=280℃)。試料4においては。LCPポリマー(LCP-3)は、60モル%のHBA、4.25モル%のHNA、17.875モル%のBP、及び17.875モル%のTAから形成される(Tm=360℃)。最後に、試料5においては。LCPポリマー(LCP-4)は、42.86モル%のHBA、8.57モル%のTA、28.57モル%のHQ、及び20モル%のNDAから形成される(Tm=300℃)。配合は、18mm一軸押出機を使用して行った。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0081】
【表1】
【0082】
[0078]試料1~5を、熱及び機械特性について試験した。結果を下表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
実施例2
[0079]種々の割合の上記記載のLCP-2、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、珪灰石繊維(Nyglos(登録商標)4W)、マイカ(C-4000)、タルク(Flextalc(登録商標)815)、エチレンメタクリル酸コポリマー(EMAC(登録商標)SP-2260)、窒化ホウ素、第1のエポキシ樹脂(Araldite(登録商標)ECN-1299、エポキシ樹脂1)、第2のエポキシ樹脂(Epon(登録商標)1009F、エポキシ樹脂2)、黒色顔料、滑剤(Licowax(商標)PED-521)、イオン液体(FC-4400)、及び種々の酸化防止安定剤(AO-1010及びAO-126)から試料6~9を形成する。PCTポリマーは、0.62の固有粘度を有する。配合は、18mm一軸押出機を使用して行った。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0085】
【表3】
【0086】
[0080]試料7~8を機械特性について試験した。結果を下表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
実施例3
[0081]種々の割合の液晶ポリマー(上記記載のLCP-1、LCP-2、LCP-3、又はLCP-4)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、珪灰石繊維(Nyglos(登録商標)4W)、マイカ(C-4000)、タルク(Flextalc(登録商標)815)、エチレンメタクリル酸コポリマー(EMAC(登録商標)SP-2260)、窒化ホウ素、第1のエポキシ樹脂(Araldite(登録商標)ECN-1299、エポキシ樹脂1)、第2のエポキシ樹脂(Epon(登録商標)1009F、エポキシ樹脂2)、黒色顔料、滑剤(Licowax(商標)PED-521)、イオン液体(FC-4400)、及び種々の酸化防止安定剤(AO-1010及びAO-126)から試料10~13を形成する。PCTポリマーは、0.62の固有粘度を有する。配合は、18mm一軸押出機を使用して行った。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0089】
【表5】
【0090】
[0082]試料10~13を機械特性について試験した。結果を下表6に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
実施例4
[0083]種々の割合の液晶ポリマー(上記記載のLCP-1及びLCP-2)、珪灰石繊維(Nyglos(登録商標)4W)、マイカ、エチレン/n-ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレートターポリマー(Elvaloy(登録商標)PTW)、超高分子量シロキサンポリマー(Genioplast(登録商標)ペレットS)、ポリエチレン、及び/又はイオン液体(FC-4400)から試料14~16を形成する。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0093】
【表7】
【0094】
[0084]試料14~16を機械特性について試験した。結果を下表8に示す。
【0095】
【表8】
【0096】
実施例5
[0085]種々の割合の液晶ポリマー(上記記載のLCP-1及びLCP-2)、珪灰石繊維(Nyglos(登録商標)4W)、硫酸バリウム、エチレン/n-ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレートターポリマー(Elvaloy(登録商標)PTW)、及び/又はイオン液体(FC-4400)から試料17~20を形成する。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0097】
【表9】
【0098】
[0086]試料17~20を機械特性について試験した。結果を下表10に示す。
【0099】
【表10】
【0100】
実施例6
[0087]種々の割合の液晶ポリマー(上記記載のLCP-1及びLCP-2)、珪灰石繊維(Nyglos(登録商標)4W)、無水硫酸バリウム、イオン液体(FC-4400)、及び黒色顔料から試料21~22を形成する。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0101】
【表11】
【0102】
[0088]試料21~22を機械特性について試験した。結果を下表12に示す。
【0103】
【表12】
【0104】
実施例7
[0089]種々の割合の液晶ポリマー(上記記載のLCP-1及びLCP-2)から試料23~26を形成し、種々の割合の液晶ポリマー(上記記載のLCP-1及びLCP-2)、珪灰石繊維(Nyglos(登録商標)4W)、非晶質シリカ(1.7μmのメジアン粒径)、エチレン、アクリル酸エステル、及びグリシジルメタクリレートのターポリマー(Lotarder(登録商標)AX8900)、超高分子量シロキサンポリマー(Genioplast(登録商標)ペレットS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、硫酸カルシウム、及びマイカから試料14~16を形成する。試料をプラーク(60mm×60mm)に射出成形して部品を形成する。
【0105】
【表13】
【0106】
[0090]試料23~26を機械特性について試験した。結果を下表14に示す。
【0107】
【表14】
【0108】
[0091]本発明のこれら及び他の修正及び変形は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的に又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載は単に例示の目的であり、添付の特許請求の範囲に更に記載される発明を限定することは意図しないことを認識する。
図1
図2
図3