IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 華為技術有限公司の特許一覧

特許7461975半導体デバイス、並びに関連するモジュール、回路、及び製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】半導体デバイス、並びに関連するモジュール、回路、及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20240328BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240328BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H01L29/78 655B
H01L29/78 653A
H01L29/78 658A
H01L29/78 658H
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016166
(22)【出願日】2022-02-04
(65)【公開番号】P2022121395
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】202110170393.0
(32)【優先日】2021-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヤーン,ウエンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,ロウチュヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,チャオファン
(72)【発明者】
【氏名】ズゥオ,ホゥイリーン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ジアーン
(72)【発明者】
【氏名】ホウ,ジャオジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホワーン,ボーニーン
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093190(WO,A1)
【文献】特開2018-078216(JP,A)
【文献】特開2018-082191(JP,A)
【文献】特開2014-099643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
P型コレクタ層、N型ドリフト層、前記P型コレクタ層と前記N型ドリフト層との間のフィールドストップ層を有する半導体デバイスであって、前記フィールドストップ層は、前記N型ドリフト層の表面上に続けて配置された第1のドープ領域及び第2のドープ領域を有し、前記第2のドープ領域内の不純物の粒径が、前記第1のドープ領域内の不純物の粒径より大きく、且つ前記第1のドープ領域及び前記第2のドープ領域の両方のドーピング密度が、前記N型ドリフト層のドーピング密度より高く、
前記第2のドープ領域の厚さは2マイクロメートルから10マイクロメートルであり、
前記第2のドープ領域は、第1及び第2のサブレイヤを有し、前記第1のサブレイヤは前記第1のドープ領域に接し、前記第2のサブレイヤは前記P型コレクタ層に接し、前記第1のサブレイヤのドーピング密度の方が前記第2のサブレイヤのドーピング密度より低い、
半導体デバイス。
【請求項2】
前記第1のドープ領域内の前記不純物は水素イオン又はヘリウムイオンであり、前記第2のドープ領域内の前記不純物はリン原子又は砒素原子である、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記第1のドープ領域の厚さは前記第2のドープ領域の前記厚さより大きい、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
前記第1のドープ領域の前記厚さは5マイクロメートルから50マイクロメートルである、請求項3に記載の半導体デバイス。
【請求項5】
前記第1のドープ領域の前記ドーピング密度は、前記P型コレクタ層から離れる方向に実質的に低下する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項6】
前記フィールドストップ層とは反対側を向いた前記N型ドリフト層の表面上に配置されたP型ベース層と、
前記N型ドリフト層とは反対側を向いた前記P型ベース層の表面上に配置されたN型エミッタ層と、
酸化物層を用いて前記P型ベース層に接続されたゲートと、
を更に有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体デバイス。
【請求項7】
前記ゲートは、前記N型エミッタ層及び前記P型ベース層を通り抜けている、又は
前記ゲートは、前記N型ドリフト層とは反対側を向いた前記P型ベース層の表面上に配置されている、
請求項6に記載の半導体デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体デバイスを少なくとも1つ有するパワーモジュール。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体デバイスを少なくとも1つ有する電力変換回路。
【請求項10】
半導体デバイスを製造する方法であって、
互いに反対側にある第1表面及び第2表面を有するN型基板を用意し、
前記第1表面上にP型ベース層、N型エミッタ層、酸化物層、及びゲートを形成し、前記P型ベース層は、前記N型基板の前記第1表面上に配置され、前記N型エミッタ層は、前記N型基板とは反対側を向いた前記P型ベース層の表面上に配置され、前記ゲートは、前記酸化物層を用いて前記P型ベース層に接続され、
前記第2表面に第1の不純物粒子及び第2の不純物粒子を注入し、前記第1の不純物粒子の粒径は前記第2の不純物粒子の粒径より小さく、且つ前記第1の不純物粒子の注入深さは前記第2の不純物粒子の注入深さより大きく、
前記第2表面上にP型コレクタ層を形成する、
ことを有し、
前記第2の不純物粒子の前記注入深さは2マイクロメートルから10マイクロメートルであり、
前記第2表面に第1の不純物粒子及び第2の不純物粒子を前記注入することは、
第1の注入エネルギーを用いて前記第2表面に前記第1の不純物粒子を注入して、第1のドープ領域を形成することと、
第2の注入エネルギーを用いて前記第2表面に前記第2の不純物粒子を注入して、第2のドープ領域を形成することと、
を有し、
前記第1の注入エネルギー及び前記第2の注入エネルギーは、前記第1の不純物粒子の前記注入深さが前記第2の不純物粒子の前記注入深さより大きくなることを可能にし、
第2の注入エネルギーを用いて前記第2表面に前記第2の不純物粒子を注入することは、
前記第2のドープ領域が第1及び第2のサブレイヤを有し、前記第1のサブレイヤが前記第1のドープ領域に接し、前記第2のサブレイヤが前記P型コレクタ層に接し、前記第1のサブレイヤのドーピング密度の方が前記第2のサブレイヤのドーピング密度より低くなるように、前記第2の注入エネルギーが高いほど、前記第2の不純物粒子の注入密度を低くする、
ことを有する、
方法。
【請求項11】
第1のドープ領域内の不純物は水素イオン又はヘリウムイオンであり、第2のドープ領域内の不純物はリン原子又は砒素原子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の不純物粒子の前記注入深さは5マイクロメートルから50マイクロメートルである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
第1の注入エネルギーを用いて前記第2表面に前記第1の不純物粒子を前記注入することは、
前記第1の注入エネルギーが高いほど、前記第1の不純物粒子の注入密度を低くする、
ことを有する、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2表面に第1の不純物粒子及び第2の不純物粒子を前記注入した後に、当該方法は更に、
前記第1の不純物粒子及び前記第2の不純物粒子が注入された前記N型基板をアニールする、
ことを有する、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記アニールの最高温度は200℃から500℃である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体技術の分野に関し、特に、半導体デバイス、並びに関連するモジュール、回路、及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor、IGBT)は、バイポーラ接合トランジスタ(bipolar junction transistor、BJT)と絶縁ゲート電界効果トランジスタ(例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(metal-oxide semiconductor field-effect transistor、MOSFET))とを含んだ、複合的なフル制御電圧駆動のパワー半導体デバイスである。BJTは、低い飽和電圧降下及び高い通電容量を有するが、大きい駆動電流を有する。MOSFETは、非常に低い駆動電力及び高いスイッチング速度を有するが、高いオン状態電圧降下及び低い通電容量を有する。IGBTは、MOSFETの利点とBJTの利点とを組み合わせて、例えば、高い入力インピーダンス、高いスイッチング速度、良好な熱安定性、単純な駆動回路、小さい駆動電流、低い飽和電圧降下、高い耐電圧、及び高い通電容量などの利点を有する。従って、IGBTは、例えば交流モータ、周波数変換器、スイッチング電源、照明回路、トラクション・伝送などの分野といった、600V以上の直流電圧の変換器システムに適用可能である。
【0003】
ノンパンチスルーIGBT(すなわち、NPT-IGBT)と比較して、フィールドストップ層を有するIGBT(すなわち、FS-IGBT)では、その裏面にN型フィールドストップ層(これは、N型バッファ層とも呼ばれる)が追加され、N型フィールドストップ層のドーピング密度は、FS-IGBTの基板のドーピング密度より僅かに高い。この場合、電場の強度をすぐに低下させることができ、その結果、電界全体が台形の形状となって電界を停め、N型ドリフト領域の必要厚さを大幅に減少させ得る。加えて、N型フィールドストップ層は、IGBTがターンオフされるときに存在するテール電流及び損失を改善すべく、エミッタの伝送効率を調整するために更に使用され得る。
【0004】
従来技術においては、プロトン(H)又はこれに類するものを注入することによってフィールドストップ層を形成することで、フィールドストップ層の幅を増加させることがある。しかしながら、対応するIGBTのコレクタ-エミッタ間リーク電流ICESが、高温で大きいものとなる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、プロトン(H)を注入することによってそのフィールドストップ層が形成される半導体デバイスの大きいリーク電流の問題を軽減するための、半導体デバイス、並びに関連するモジュール、回路、及び製造方法を提供する。
【0006】
第1態様によれば、この出願の実施形態は、以下を含む半導体デバイス、すなわち、
互いに反対側にある第1表面及び第2表面を持つN型ドリフト層と、
N型ドリフト層の第1表面上に配置されたP型ベース層と、
N型ドリフト層とは反対側を向いたP型ベース層の表面上に配置されたN型エミッタ層と、
酸化物層を用いてP型ベース層に接続されたゲートと、
N型ドリフト層の第2表面上に続けて積層された第1のドープ領域及び第2のドープ領域を含むフィールドストップ層であり、第1のドープ領域内の不純物の粒径は、第2のドープ領域内の不純物の粒径より小さく、且つ第1のドープ領域及び第2のドープ領域の両方のドーピング密度が、N型ドリフト層のドーピング密度より高い、フィールドストップ層と、
N型ドリフト層とは反対側を向いたN型フィールドストップ層の表面上に配置されたP型コレクタ層と、
を含む半導体デバイス、を提供する。
【0007】
当該半導体デバイスによれば、当該半導体デバイスのフィールドストップ層が、より小さい粒径を有する第1の不純物粒子でドープされた第1のドープ領域と、より大きい半径を有する第2の不純物粒子でドープされた第2のドープ領域とを含む。第1の不純物粒子は小さいサイズを持つので、大きい厚さを有するフィールドストップ層を実装することができる。第2の不純物粒子の注入深さは浅く、非常に高いアニール温度は必要とされないので、N型基板の前面上のMOSFET構造が高温アニールによってダメージを受けることを防ぐことができる。従って、当該半導体デバイスによれば、フィールドストップ層の厚さを増加させながらIGBTのコレクタ-エミッタ間リーク電流を減少させることができる。
【0008】
取り得る一実装において、第1のドープ領域内の不純物は水素イオン又はヘリウムイオンであり、第2のドープ領域内の不純物はリン原子又は砒素原子である。理解されるべきことには、水素イオン(H)又はヘリウムイオン(He)は、小さい注入エネルギーを用いることによってN型基板のある深さに注入され得る。これは、フィールドストップ層の厚さを大幅に増加させる。
【0009】
取り得る一実装において、第1のドープ領域の厚さは第2のドープ領域の厚さより大きい。第1のドープ領域の厚さが大きいほど、フィールドストップ層の厚さが大きいことを示す。これは、IGBTがターンオフされるときに存在するテール電流及び損失を低減させることができる。
【0010】
オプションで、第1のドープ領域の厚さは5マイクロメートルから50マイクロメートルであり、第2のドープ領域の厚さは2マイクロメートルから10マイクロメートルである。
【0011】
取り得る一実装において、第1のドープ領域のドーピング密度は、P型コレクタ層から離れる方向に実質的に低下する。
【0012】
理解されるべきことには、フィールドストップ層における不純物粒子のより高いドーピング密度は、電界のより大きい変化率を指し示す。勾配ドーピングが用いられるとき、IGBTがターンオフされるときに、フィールドストップ層における電界の変化率は、最初は小さく、次いで大きくなる。これは、IGBTがターンオフされるときに存在する電圧ストレスを低減させて、デバイスの耐電圧を向上させることができる。
【0013】
取り得る一実装において、第2のドープ領域のドーピング密度は、P型コレクタ層から離れる方向に実質的に低下する。
【0014】
取り得る一実装において、ゲートは、N型エミッタ層及びP型ベース層を通り抜けている。この場合、当該半導体デバイスはトレンチ型IGBTである。プレーナ型IGBTと比較して、トレンチ型IGBTは、ターンオフ中に存在する損失を増加させることなく、オン状態電圧降下を大幅に低減させることができる。3つの主な理由は、以下の通りである。(1)プレーナ型IGBTと比較して、トレンチ型IGBTはJFET効果を除去する。(2)エミッタ近傍の位置で、トレンチ型IGBTのキャリア密度は、プレーナ型IGBTのキャリア密度より遥かに高い。加えて、トレンチ型IGBTでは、適切なトレンチ幅及びギャップは、Nドリフト層の表面近くの層におけるキャリア密度を改善して、Nドリフト領域の抵抗を低減させ得る。(3)プレーナ型IGBTと比較して、トレンチ型IGBTの縦型構造は、シリコン表面上に導通チャネルを生成するための領域を省いて、コンパクトなセル設計を更に容易にする。換言すれば、同じチップ面積に、より多くのIGBTセルを作ることができる。従って、これは、導通チャネルの幅を増加させ、チャネル抵抗を低下させる。
【0015】
取り得る一実装において、ゲートは、N型ドリフト層とは反対側を向いたP型ベース層の表面上に配置されている。
【0016】
第2態様によれば、この出願の実施形態は更に、以下を含む半導体デバイス製造方法、すなわち、
互いに反対側にある第1表面及び第2表面を含むN型基板を用意し、
第1表面上にP型ベース層、N型エミッタ層、酸化物層、及びゲートを形成し、P型ベース層は、N型基板の第1表面上に配置され、N型エミッタ層は、N型基板とは反対側を向いたP型ベース層の表面上に配置され、ゲートは、酸化物層を用いてP型ベース層に接続され、
第2表面に第1の不純物粒子及び第2の不純物粒子を注入し、第1の不純物粒子の粒径は第2の不純物粒子の粒径より小さく、且つ第1の不純物粒子の注入深さは第2の不純物粒子の注入深さより大きく、
第2表面上にP型コレクタ層を形成する、
ことを含む半導体デバイス製造方法、を提供する。
【0017】
この出願のこの実施形態にて提供される半導体デバイス製造方法においては、半導体デバイスのフィールドストップ層が、第1の不純物粒子及び第2の不純物粒子の両方を注入することによって形成される。第2の不純物粒子の注入深さは浅く、非常に高いアニール温度は必要とされない。従って、N型基板の前面上のMOSFET構造がダメージを受けることを防ぐことができる。さらに、第1の不純物粒子を注入することによって導入される多量の有益な欠陥が減少することを回避することができ、デバイスのコレクタ-エミッタ間リーク電流を減少させることができる。
【0018】
取り得る一実装において、第1のドープ領域内の不純物はHイオン又はヘリウムイオンであり、第2のドープ領域内の不純物はリン原子又は砒素原子である。理解されるべきことには、水素イオン(H)又はヘリウムイオン(He)は、小さい注入エネルギーを用いることによってN型基板のある深さに注入され得る。これは、フィールドストップ層の厚さを大幅に増加させる。
【0019】
取り得る一実装において、第2表面に第1の不純物粒子及び第2の不純物粒子を注入することは、
第1の注入エネルギーを用いて第2表面に第1の不純物粒子を注入することと、
第2の注入エネルギーを用いて第2表面に第2の不純物粒子を注入することと、
を含み、
第1の注入エネルギー及び第2の注入エネルギーは、第1の不純物粒子の注入深さが第2の不純物粒子の注入深さより大きくなることを可能にする。
【0020】
取り得る一実装において、第1の不純物粒子の注入深さは5マイクロメートルから50マイクロメートルであり、第2の不純物粒子の注入深さは2マイクロメートルから10マイクロメートルである。
【0021】
第1のドープ領域の厚さが大きいほど、フィールドストップ層の厚さが大きいことを示す。これは、デバイスがターンオフされるときに存在するテール電流及び損失を低減させることができる。
【0022】
取り得る一実装において、第1の注入エネルギーが高いほど、第1の不純物粒子の注入密度が低いことを指し示す。この方法において、第1の不純物粒子のドーピング密度は、第2表面から離れる方向に実質的に低下することができ、すなわち、第1の不純物粒子の勾配ドーピング又は実質的な勾配ドーピングが実現される。勾配ドーピングは、デバイスがターンオフされるときに存在する電圧ストレスを低減させてデバイスの耐電圧を向上させ得るとともに、ドーピングに起因してN型基板に生成されるストレスを更に低減させてデバイスの性能及び歩留まりを向上させ得る。
【0023】
取り得る一実装において、第の注入エネルギーが高いほど、第の不純物粒子の注入密度が低いことを指し示す。
【0024】
同様に、この方法において、第2の不純物粒子のドーピング密度は、第2表面から離れる方向に実質的に低下することができ、すなわち、第2の不純物粒子の勾配ドーピング又は実質的な勾配ドーピングが実現される。勾配ドーピングは、デバイスがターンオフされるときに存在する電圧ストレスを低減させてデバイスの耐電圧を向上させ得るとともに、ドーピングに起因してN型基板に生成されるストレスを更に低減させてデバイスの性能及び歩留まりを向上させ得る。
【0025】
取り得る一実装において、第2表面に第1の不純物粒子及び第2の不純物粒子を注入した後に、当該方法は更に、
第1の不純物粒子及び第2の不純物粒子が注入されたN型基板をアニールする、
ことを含む。
【0026】
オプションで、アニールの最高温度は200℃から500℃である。
【0027】
第3態様によれば、この出願の実施形態は更にパワーモジュールを提供し、当該パワーモジュールは、第1態様又は第1態様の実装のうちのいずれか1つにおける半導体デバイスを少なくとも1つ含むことができ、あるいは、第2態様又は第2態様の実装のうちのいずれか1つにおける方法を用いることによって製造された半導体デバイスを少なくとも1つ含むことができる。
【0028】
例えば、半導体デバイスはIGBTであり、当該パワーモジュールは、IGBTディスクリートデバイス、IGBTモジュール、インテリジェントパワーモジュール(intelligent power module、IPM)、又はこれらに類するものとし得る。
【0029】
第4態様によれば、この出願の実施形態は更に、第1態様又は第1態様の実装のうちのいずれか1つにおける半導体デバイスを少なくとも1つ含んだ、あるいは、第2態様又は第2態様の実装のうちのいずれか1つにおける方法を用いることによって製造された半導体デバイスを少なくとも1つ含んだ、電力変換回路を提供する。
【0030】
当該電力変換回路は、例えば周波数変換、変換(conversion)、変相、整流、逆変換(inversion)、及び電圧/電流のスイッチングオンなどの機能を実装するように構成された回路である。当該電力変換回路は、インバータ回路(inverter circuit)、整流回路(rectifier)、コンバータ回路、又はこれらに類するものとし得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下にて、実施形態を説明するために必要な添付の図面を簡単に説明する。
図1】この出願の一実施形態に従ったトレンチ型IGBTの概略断面図である。
図2】この出願の一実施形態に従ったプレーナ型IGBTの概略断面図である。
図3】この出願の一実施形態に従った半導体デバイス製造方法の概略フローチャートである。
図4A図4A図4Eは、この出願の一実施形態に従った一部の半導体デバイス製造プロセスの概略断面図である。
図4B図4A図4Eは、この出願の一実施形態に従った一部の半導体デバイス製造プロセスの概略断面図である。
図4C図4A図4Eは、この出願の一実施形態に従った一部の半導体デバイス製造プロセスの概略断面図である。
図4D図4A図4Eは、この出願の一実施形態に従った一部の半導体デバイス製造プロセスの概略断面図である。
図4E図4A図4Eは、この出願の一実施形態に従った一部の半導体デバイス製造プロセスの概略断面図である。
図5A】この出願の一実施形態に従った、ある深さを有するフィールドストップ層における不純物のドーピング密度の分布の概略図である。
図5B】この出願の一実施形態に従った、ある深さを有するフィールドストップ層における不純物のドーピング密度の分布の別の概略図である。
図6A図6A図6Dは、この出願の一実施形態に従った、異なる温度で複数のIGBTのリーク電流がコレクタ-エミッタ間電圧とともに変化することの概略説明図である。
図6B図6A図6Dは、この出願の一実施形態に従った、異なる温度で複数のIGBTのリーク電流がコレクタ-エミッタ間電圧とともに変化することの概略説明図である。
図6C図6A図6Dは、この出願の一実施形態に従った、異なる温度で複数のIGBTのリーク電流がコレクタ-エミッタ間電圧とともに変化することの概略説明図である。
図6D図6A図6Dは、この出願の一実施形態に従った、異なる温度で複数のIGBTのリーク電流がコレクタ-エミッタ間電圧とともに変化することの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
先ず、この出願の実施形態における幾つかの重要な用語を説明する。
【0033】
(1)N型半導体:N(Negative)型は電子型である。主に電子に基づいて導電性の半導体をN型半導体と呼ぶ。N型半導体は、真性半導体をドナー不純物でドープすることによって得られる。例えば、純粋シリコンが少量のV族元素(リン又は砒素など)でドープされ、リンが周囲のIV族シリコン原子と共有結合を形成して余分な自由電子を生成する。N型は、N型(電子充足型)とN型(電子不足型)とに更に分類され、N型半導体のドーピング密度の方がN型半導体のドーピング密度よりも高い。理解されるべきことには、N型(電子充足型)とN型(電子不足型)は互いに対して相対的なものである。
【0034】
この出願において、N型ドリフト層、N型ドリフト層、N型エミッタ層、N型エミッタ層、N型基板、及びこれらに類するものは全てN型半導体である。
【0035】
(2)P型半導体:P(Positive)型は正孔型である。主に正孔に基づいて導電性の半導体をP型半導体と呼ぶ。P型半導体は、真性半導体をアクセプタ不純物でドープすることによって得られる。例えば、純粋シリコンが少量のIII族元素(ボロン又はインジウムなど)でドープされると、ボロンが周囲のIV族シリコン原子と共有結合を形成して、電子を欠いた正孔を形成する。P型は、P型(正孔充足型)とP型(正孔不足型)とに更に分類され、P型半導体のドーピング密度の方がP型半導体のドーピング密度よりも高い。
【0036】
この出願において、P型ベース層、P型ベース層、P型基層、P型コレクタ層、P型コレクタ層、及びこれらに類するものは全てP型半導体である。
【0037】
(3)IGBTは性能パラメータを持つ。様々な製造業者が、対応する仕様書にそれらのパラメータの範囲を規定しており、それらのパラメータは、最小若しくは最大の能力又は使用プロセスにおけるパラメータの制限条件に対して制限される必要がある。パラメータは、IGBTの動作プロセスにおける最高又は最低の定格値を超えることはできない。主なパラメータは以下の通りである。
【0038】
コレクタ-エミッタ間阻止電圧(Collector-Emitter blocking voltage)BVCESは、ゲートとエミッタとを短絡させたときのコレクタ-エミッタ間最大電圧である。
【0039】
ゲート-エミッタ間最大電圧(Gate-Emitter voltage)VGESは、コレクタとエミッタとを短絡させたときのゲート-エミッタ間最大電圧である。
【0040】
許容最大コレクタ直流電流(Continuous collector current)は、通常、Iを用いて表され、概して、ジャンクション温度が25℃のケース温度から150℃の最高ジャンクション温度まで上昇するときに必要とされる直流電流値を意味する。
【0041】
過渡状態下では、IGBTは、IGBTの最大連続電流よりも高いピーク電流(Peak collector repetitive current)を通電することができ、これは通常ICMを用いて表される。
【0042】
ジャンクション温度が25℃のケース温度から150℃の最高値まで上昇するときに必要な消費電力(Maximum power dissipation)をPと表記する。
【0043】
動作中のIGBTのジャンクション温度の許容温度範囲(Junction temperature)は、通常、Tを用いて表される。
【0044】
ゲートとエミッタとを短絡させてコレクタとエミッタとの間に規定電圧及び規定温度を印加したときに存在するリーク電流(Collector-Emitter leakage current)は、通常、ICESを用いて表される。
【0045】
ゲート-エミッタ間閾値電圧(Gate-Emitter threshold voltage)は、通常、VGE(th)を用いて表され、IGBTは電圧範囲内でターンオンされる。閾値電圧は、負の温度係数を持つ。閾値電圧は、ゲート酸化物層の厚さとともに線形に増加し、P型ベース領域のドーピング密度の平方根に正比例する。酸化物とシリコンとの間の界面における固定表面電荷、及びゲート酸化物層における可動イオンが、閾値電圧のオフセットを生じさせ得る。
【0046】
規定コレクタ電流及び規定ゲート電圧の場合のコレクタ-エミッタ間電圧(Collector-Emitter saturation voltage)は、通常、VCE(SAT)を用いて表される。
【0047】
コレクタとエミッタとを短絡させて測定される入力キャパシタンス(Input capacitance)Ciesは、ゲート-エミッタ間キャパシタンスとミラー(Miller)キャパシタンスとの和であり、ゲート-エミッタ間キャパシタンスの方がミラーキャパシタンスよりも遥かに大きい。
【0048】
ゲートとエミッタとを短絡させたときに存在するコレクタ-エミッタ間キャパシタンス(Output capacitance)Coesは、典型的にPN接合電圧依存性を持つ。
【0049】
ゲート-コレクタ間ミラーキャパシタンス(Reverse transfer capacitance)Cresは、複雑な電圧依存性を持つ。
【0050】
CESが主要パラメータとして使用される第1の理由は、次の通りであり。ICESは、IGBTがターンオフされているときに存在するリーク電流であって、規定コレクタ-エミッタ間電圧及び規定ゲート-エミッタ間電圧の場合にコレクタからエミッタに流れるリーク電流であり、待機モードでのデバイスのリーク損失に直接影響する。リーク損失は、ICESの値にコレクタ-エミッタ間電圧を乗算することによって得られる。リーク電流は温度と共に増加するので、ICESの規格は室温と高温の両方で規定される。第2の理由は、次の通りである。デバイスの熱抵抗と周囲温度が変化しないとき、より大きいICESは、デバイスのより大きい電力消費及びより高いジャンクション温度を指し示す。
【0051】
以下、この出願の一実施形態における半導体デバイスを説明する。当該半導体デバイスは、パワー半導体デバイス、IGBTデバイス、IGBTチップ、又はこれらに類するものとして参照されることができ、1つ以上のIGBTを含み得る。
【0052】
図1及び図2は、この出願の実施形態に従った2つのIGBTの概略断面図である。図1はトレンチ型IGBTを示し、図2はプレーナ型IGBTを示している。図1及び図2に示すように、IGBTは、N型ドリフト層11、P型ベース層2、N型エミッタ層21、酸化物層3、ゲート4、誘電体層5、エミッタ6、フィールドストップ層10、P型コレクタ層7、コレクタ8などにて、一部又は全ての層構造を含み得る。
【0053】
N型ドリフト層11及びフィールドストップ層10はどちらもN型基板1に属する。フィールドストップ層10は、N型基板1の裏面(コレクタ8近傍の表面)に不純物粒子を注入することにより形成され、N型ドリフト層11よりも高いドーピング密度を持つ。従って、フィールドストップ層10をN+フィールドストップ層10とも称し、N型ドリフト層11をN-ドリフト層11とも称する。
【0054】
N型ドリフト層11は、N型基板1の一部であり、互いに反対側にある第1表面及び第2表面を持つ。P型ベース層2は、N型ドリフト層11の第1表面上に配置されている。N型ドリフト層11の第1表面は、N型基板1の第1表面又は前面であってよく、P型ベース層2はN型基板1上のエピタキシャル層であってよい。あるいは、N型基板1の前面は、N型ドリフト層11とは反対側を向いたP型ベース層2の表面であってもよい。この場合、P型のベース層2は、N型基板1の前面に不純物を注入することによって形成される。ここでは、コレクタ8に近いN型基板1の表面をN型基板1の第2表面又は裏面と称する。N型基板1の第1表面及び第2表面は、互いに反対側のN型基板1の2つの表面である。
【0055】
N型エミッタ層21は、N型ドリフト層とは反対を向いたP型ベース層2の表面上に配置されており、不純物を注入することによって形成され得る。複数のN型エミッタ層21が、P型ベース層2上に間隔をあけて配置される。オプションで、P型ベース層2上に、IGBTの2つのN型エミッタ層21間にP型ベース領域22が更に含められてもよい。この場合、P型ベース層2をP型ベース層2とも称し得る。
【0056】
酸化物層3はP型ベース層2を覆っており、酸化物層3を用いてゲート4がP型ベース層2に接続される。斯くして、ゲート4とエミッタ6との間に臨界値VGESよりも高い電圧VGSが印加されると、酸化物層3に隣接するP型ベース層2の位置に、N型エミッタ層21とN型ドリフト層11とを接続するためのチャネルが形成され得る。
【0057】
IGBTは、ゲート4の異なる位置に基づいてトレンチ型IGBTとプレーナ型IGBTとに区別され得る。
【0058】
図1に示す半導体デバイスでは、当該半導体デバイスにおけるIGBTはトレンチ型IGBTであり、ゲート4がN型エミッタ層21及びP型ベース層2を通り抜けている。
【0059】
図2に示す半導体デバイスでは、当該半導体デバイスにおけるIGBTはプレーナ型IGBTであり、ゲート4が、N型ドリフト層11とは反対側を向いたP型ベース層2の表面上に配置されている。
【0060】
プレーナ型IGBTと比較して、トレンチ型IGBTは、ターンオフ中に存在する損失を増加させることなく、オン状態電圧降下を大幅に低減させることができる。3つの主な理由は、以下の通りである。(1)プレーナ型IGBTと比較して、トレンチ型IGBTはJFET効果を除去する。(2)エミッタ近傍の位置で、トレンチ型IGBTのキャリア密度は、プレーナ型IGBTのキャリア密度より遥かに高い。加えて、トレンチ型IGBTでは、適切なトレンチ幅及びギャップは、Nドリフト層の表面近くの層におけるキャリア密度を改善して、Nドリフト領域の抵抗を低減させ得る。(3)プレーナ型IGBTと比較して、トレンチ型IGBTの縦型構造は、シリコン表面上に導通チャネルを生成するための領域を省いて、コンパクトなセル設計を更に容易にする。換言すれば、同じチップ面積に、より多くのIGBTセルを作ることができる。従って、これは、導通チャネルの幅を増加させ、チャネル抵抗を低下させる。
【0061】
フィールドストップ層10のドーピング密度は、N型基板1のドーピング密度より僅かに高い。フィールドストップ層10の導入は、電場の強度をすぐに低下させることができ、その結果、電界全体が台形の形状となって電界を停め、N型ドリフト領域の必要厚さを大幅に減少させ得る。加えて、フィールドストップ層10は、ターンオフ中に存在するテール電流及び損失を変えるべく、Pエミッタ層21の伝送効率を調整するために更に使用され得る。特定の範囲内で、フィールドストップ層がより厚い場合、IGBTをターンオフさせる過程において存在する電圧ストレスを低減させて、デバイスの耐電圧を向上させることができる。
【0062】
P型コレクタ層7は、N型ドリフト層11とは反対側を向いたN型フィールドストップ層10の表面上に配置されている。コレクタ8は、N型フィールドストップ層10とは反対側を向いたP型コレクタ層7の表面上に配置されている。
【0063】
フィールドストップ層10の厚さを増加させながらコレクタ-エミッタ間リーク電流を減少させるために、この出願のこの実施形態は、N型ドリフト層11の第2表面上に続けて積層された第1のドープ領域12及び第2のドープ領域13を含む複数の層構造を持つフィールドストップ層10を提供する。第1のドープ領域12内の不純物(第1の不純物粒子とも称する)の粒径は、第2のドープ領域13内の不純物(第2の不純物粒子とも称する)の粒径よりも小さく、且つ第1のドープ領域12及び第2のドープ領域13のどちらのドーピング密度も、N型ドリフト層11のドーピング密度よりも高い。
【0064】
第1のドープ領域12内の不純物は、N型基板1の裏面に第1の不純物粒子を注入することによって形成される。同様に、第2のドープ領域13内の不純物は、N型基板1の裏面に第2の不純物粒子を注入することによって形成される。
【0065】
当該半導体デバイスのフィールドストップ層は、より小さい粒径を有する第1の不純物粒子と、より大きい粒径を有する第2の不純物粒子との両方を注入することによって形成されることができる。第1の不純物粒子は小さいサイズを持つので、大きい厚さを有するフィールドストップ層を実装することができる。第2の不純物粒子の注入深さは浅く、非常に高いアニール温度は必要とされないので、N型基板の前面上のMOSFET構造が高温アニールによってダメージを受けることを防ぐことができる。従って、この出願にて提供される半導体デバイスによれば、フィールドストップ層の厚さを増加させながらIGBTのコレクタ-エミッタ間リーク電流を減少させることができる。
【0066】
一部の実施形態において、第1の不純物粒子は、水素イオン(H)又はヘリウムイオン(He)であり、第2のドープ領域内の不純物は、例えばリン原子又は砒素原子などのV族原子である。水素イオン(H)又はヘリウムイオン(He)は、小さい注入エネルギーを用いることによってN型基板のある深さに注入され得る。これは、フィールドストップ層の厚さを大幅に増加させる。
【0067】
一部の実施形態において、第1のドープ領域12の厚さは第2のドープ領域13の厚さより大きい。例えば、第1のドープ領域12の厚さは5マイクロメートルから50マイクロメートルであり、第2のドープ領域13の厚さは2マイクロメートルから10マイクロメートルである。第1のドープ領域12の厚さが大きいほど、フィールドストップ層の厚さが大きいことを指し示す。これは、IGBTがターンオフされるときに存在するテール電流及び損失を低減させることができる。
【0068】
一部の実施形態において、第1のドープ領域12のドーピング密度は、P型コレクタ層7から離れる方向に低下又は実質的に低下し、すなわち、第1のドーピング粒子の注入深さとともに低下又は実質的に低下する。ここで、深さは、不純物粒子からN型基板1の裏面までの距離である。
【0069】
一部の実施形態において、第2のドープ領域13のドーピング密度は、P型コレクタ層7から離れる方向に低下又は実質的に低下し、すなわち、第2のドーピング粒子の注入深さとともに低下又は実質的に低下する。
【0070】
理解されるべきことには、フィールドストップ層10における不純物粒子のより高いドーピング密度は、電界のより大きい変化率を指し示す。勾配ドーピングが用いられるとき、IGBTがターンオフされるときに、フィールドストップ層10における電界の変化率は、最初は小さく、次いで大きくなる。これは、IGBTがターンオフされるときに存在する電圧ストレスを低減させて、デバイスの耐電圧を向上させることができる。
【0071】
更に理解されるべきことには、ドーピング密度が高いほど、フィールドストップ層10における自由電子の量が多いことを指し示す。IGBTがターンオフされるとき、これらの電子が、単位時間当たりに、P型コレクタ層7におけるいっそう多くの正孔と再結合する。この場合、電流が急速に変化し、より大きい電圧ストレスを引き起こす。大きい電圧ストレスは、デバイスの劣った耐電圧を生じさせ得る。勾配ドーピングが用いられるとき、ドーピング密度が、P型コレクタ層7からフィールドストップ層10への方向に連続的に減少し、その結果、電流は、最初に急速に変化し、その後、ゆっくりと変化することができる。これは、ターンオフ速度に影響を及ぼすことなく、IGBTがターンオフされるときに存在する電圧ストレスを低減させて、デバイスの耐電圧を向上させる。
【0072】
なお、第1のドープ領域12のドーピング密度又は第2のドープ領域13のドーピング密度は、P型コレクタ層7から離れる方向に減少するのでなくてもよい。これは、ここで限定されることではない。
【0073】
図3に示すIGBT製造方法の概略フローチャート及び図4A図4Eに示す一部のIGBT製造プロセスの概略断面図を参照して、以下、この出願の一実施形態にて提供されるIGBT製造方法を説明する。当該方法は、図1及び図2に示したIGBTを製造するのに使用されることができ、当該方法は、限定を課すものではない以下の工程を含み得る。
【0074】
S101. 互いに反対側にある第1表面及び第2表面を有するN型基板1を用意する。
図4Aを参照し得る。
【0075】
S102. N型基板1の第1表面上にNチャネルMOSFET構造を形成し、該NチャネルMOSFET構造は、P型ベース層2、N型エミッタ層21、酸化物層3、ゲート4、誘電体層5、及びエミッタ6などを含む。誘電体層5及びエミッタ6は、NチャネルMOSFET構造に必要な層構造というわけではない。一部の実施形態において、当該半導体デバイスは、誘電体層5及びエミッタ6を含まなくてもよい。IGBTは、NチャネルMOSFET構造におけるゲートの異なる位置に基づいて、トレンチ型IGBTとプレーナ型IGBTとに分類され得る。
【0076】
以下、N型基板1の第1表面上にNチャネルMOSFET構造を形成する方法を、トレンチ型IGBTの製造技術とプレーナ型IGBTの製造技術とに基づき別々に説明する。
【0077】
一部の実施形態において、製造される半導体デバイスはトレンチ型IGBTである。図4Bを参照するに、N型基板1の第1表面上にNチャネルMOSFET構造を形成する方法は、以下のようにし得る。
【0078】
S1021. N型基板1の第1表面にP型ベース層2を形成する。
【0079】
P型ベース層2は、複数の手法で製造され得る。例えば、P型ベース層2は、N型基板1の第1表面上にエピタキシャル成長を通じて形成されることができ、あるいは、N型基板1の第1表面に不純物を注入することによってPウェルが形成され、該PウェルがP型ベース層2となる。
【0080】
S1022. N型基板とは反対側を向いたP型ベース層2の表面の一部に不純物を注入して、間隔をあけて配置された複数のN型エミッタ層21を形成する。N型エミッタ層21は、IGBTのソース領域を形成する。
【0081】
S1023. P型ベース層2を通り抜けるトレンチを形成する。
【0082】
S1024. トレンチの内壁に酸化物層3を形成し、酸化物層3を含むトレンチ内に導電材料を充填して、ゲート4を形成する。この場合、ゲート4は、酸化物層3を用いてP型ベース層2に接続される。斯くして、ゲート4とエミッタ6との間に臨界値VGESよりも高い電圧VGSが印加されると、酸化物層3に隣接するP型ベース層2の位置に、N型エミッタ層21とN型ドリフト層11とを接続するためのチャネルが形成され得る。
【0083】
S1025. ゲート4の表面上に、誘電体層5及びエミッタ6を形成し、誘電体層5は、ゲート4をエミッタ6から絶縁するように構成され、エミッタ6は、N型エミッタ層21に接続される。
【0084】
オプションで、N型基板とは反対側を向いたP型ベース層2の表面に更にP型ベース領域22を形成してもよく、P型ベース領域22は、2つの隣接するN型エミッタ層21の間に配置され得る。
【0085】
一部の実施形態において、製造される半導体デバイスはプレーナ型IGBTである。図4Cを参照するに、N型基板1の第1表面上にNチャネルMOSFET構造を形成する方法は、以下のようにし得る。
【0086】
S1026. N型基板1の第1表面にP型ベース層2を形成する。例えば、N型基板1の第1表面に不純物を注入することによってPウェルが形成され、該PウェルがP型ベース層2となる。
【0087】
S1027. N型基板とは反対側を向いたP型ベース層2の表面の一部に不純物を注入して、間隔をあけて配置された複数のN型エミッタ層21を形成する。
【0088】
S1028. N型基板とは反対側を向いたP型ベース層2の表面上に、酸化物層3及びゲート4を続けて形成する。酸化物層3はP型ベース層2を覆い、ゲート4は、酸化物層3を用いてP型ベース層2に接続される。斯くして、ゲート4とエミッタ6との間に臨界値VGESよりも高い電圧VGSが印加されると、酸化物層3に隣接するP型ベース層2の位置に、N型エミッタ層21とN型ドリフト層11とを接続するためのチャネルが形成され得る。
【0089】
S1029. ゲート4の表面上に、誘電体層5及びエミッタ6を形成し、誘電体層5は、ゲート4をエミッタ6から絶縁するように構成され、エミッタ6は、N型エミッタ層21に接続される。
【0090】
なお、前述の層構造は、フォトリソグラフィ技術及び薄膜形成技術を用いることによって製造され得る。これは、ここで限定されることではない。
【0091】
更に留意されたいことには、図4B及び図4Cは限定を課すものではなく、別の構造及び別の製造方法も含まれ得る。これは、この出願のこの実施形態において限定されることではない。
【0092】
S103. N型基板の第2表面に、第1の注入エネルギーを用いて第1の不純物粒子を注入して、第1のドープ領域12を形成する。
【0093】
S104. N型基板の第2表面に、第2の注入エネルギーを用いて第2の不純物粒子を注入して、第2のドープ領域13を形成する。
【0094】
図4Dに示すように、第1のドープ領域12と第2のドープ領域13との組み合わせをフィールドストップ層と称し、P型ベース層2とフィールドストップ層との間のN型基板1をN型ドリフト層11と称することができる。N型ドリフト層11は、N型エミッタ層21よりも低いドーピング密度を持つ。従って、N型ドリフト層11をN型ドリフト層11とも称し、N型エミッタ層21をNエミッタ層とも称する。
【0095】
第1の不純物粒子の粒径は第2の不純物粒子の粒子半径よりも小さく、第1の不純物粒子の注入深さは第2の不純物粒子の注入深さよりも大きい。形成された第1のドープ領域の深さは、第2のドープ領域の深さよりも大きい。ここで、深さは、注入された不純物粒子から第2の表面までの距離である。
【0096】
第1の不純物粒子は、水素イオン(H)又はヘリウムイオン(He)であり、第2の不純物粒子は、リン原子、砒素原子、若しくはこれらの両方、又はこれらに類するものである。水素イオン(H)が半導体材料に注入された後、アニール工程後に正孔/水素関連錯体が形成され、この水素関連錯体がドナーとして存在する。
【0097】
第1の注入エネルギー及び第2の注入エネルギーは、第1の不純物粒子の注入深さが第2の不純物粒子の注入深さより大きくなることを可能にする。第1の注入エネルギー及び/又は第2の注入エネルギーは、エネルギー値であってもよいし、エネルギー範囲であってもよい。オプションで、第1の注入エネルギーは50KeVから5MeVの範囲であり、第2の注入エネルギーは50KeVから5MeVの範囲である。例えば、第1の注入エネルギーは230KeVから2MeVであり、第2の注入エネルギーは230KeVから2MeVである。
【0098】
図5A及び図5Bは、ある深さを有するフィールドストップ層における不純物のドーピング密度の分布の概略図である。図5Aでは、リン原子及び水素イオンがどちらも、単一の工程を用いて注入されている。図5Bでは、リン原子及び水素イオンがどちらも、複数の工程を用いて注入されており、水素イオンは4工程を用いて注入され、リン原子は2工程を用いて注入されている。注入工程の全てで、注入深さが異なり、ドーピング密度も異なる。図5Aにおいて、リン原子のドーピング密度は深さとともに低下し、水素イオンのドーピング密度は深さとともに実質的に低下している。図5Bにおいて、リン原子のドーピング密度は、1つの注入工程の中で深さとともに低下するとともに、もう1つの注入工程の中で深さとともに低下している。水素イオンのドーピング密度は深さととも連続的に変化し、全体的な傾向として低下している。
【0099】
オプションで、第1の不純物粒子の注入深さd1は5マイクロメートルから50マイクロメートルであり、第2の不純物粒子の注入深さd2は2マイクロメートルから10マイクロメートルである。理解されるべきことには、特定の不純物粒子について、注入エネルギーが大きいほど、N型基板への注入深さが大きいことを指し示し、また、注入継続時間が長いほど、又は注入ドーズ量が多いほど、不純物のドーピング密度が高いことを指し示す。この場合、不純物の注入深さは、注入エネルギーを制御することによって制御されることができ、ドーピング密度は、注入継続時間又は注入ドーズ量を制御することによって制御されることができる。
【0100】
オプションで、第1の不純物粒子の注入ドーズ量は5E11から1E16の範囲であり、第2の不純物粒子の注入ドーズ量は5E11から1E16の範囲である。ドーズ量は、単位面積あたり注入される不純物粒子の総量であり、不純物粒子のドーピング密度の、深さに関する積分である。
【0101】
更に理解されるべきことには、異なる不純物粒子は、同じ注入エネルギーの場合に異なる注入深さを有つ。不純物粒子の粒径が大きいほど、注入深さが小さいことを指し示す。逆に、不純物粒子の粒径が小さいほど、注入深さが大きいことを指し示す。従って、より小さい粒径を不純物粒子が持つ場合、N型基板のある深さに不純物粒子を注入するのがいっそう容易である。換言すれば、粒子を同じ深さに注入する必要があるとき、ヘリウムイオン(He)を注入するには、水素イオン(H)の場合よりも大きいエネルギーが必要である。
【0102】
理解されるべきことには、同じ幅のフィールドストップ層の場合、Pを注入することによるフィールドストップ層の形成手法と比較して、水素イオン(H)又はヘリウムイオン(He)を注入することによるフィールドストップ層の形成手法では、大きい注入エネルギーを用いることなく大きい注入深さを得ることができ、大きい幅を有するフィールドストップ層がいっそう容易に得られる。
【0103】
なお、第1の不純物粒子又は第2の不純物粒子を複数回で注入されることができ、2回での注入に限定されない。さらに、S103及びS104は、順に実行されなくてもよく、同時に実行されてもよい。
【0104】
オプションで、第1の不純物粒子の第1の注入エネルギー及び注入継続時間(又は注入ドーズ量)は、第1の注入エネルギーが高いほど第1の不純物粒子の注入密度が低いことを指し示すように制御され得る。この方法において、第1の不純物粒子のドーピング密度は、第2表面から離れる方向に実質的に低下することができ、すなわち、図5Aに示されるように、第1の不純物粒子の勾配ドーピング又は実質的な勾配ドーピングが実現される。勾配ドーピングは、IGBTがターンオフされるときに存在する電圧ストレスを低減させてデバイスの耐電圧を向上させ得るとともに、ドーピングに起因してN型基板1に生成されるストレスを更に低減させてIGBTの性能及び歩留まりを向上させ得る。
【0105】
オプションで、第2の不純物粒子の第2の注入エネルギー及び注入継続時間(又は注入ドーズ量)は、第2の注入エネルギーが高いほど第2の不純物粒子の注入密度が低いことを指し示すように制御され得る。この方法において、第2の不純物粒子のドーピング密度は、第2表面から離れる方向に実質的に低下することができ、すなわち、図5Bに示されるように、第2の不純物粒子の勾配ドーピング又は実質的な勾配ドーピングが実現される。これは、ドーピングに起因してN型基板1に生成されるストレスを低減させてIGBTの性能及び歩留まりを向上させ得る。
【0106】
エピタキシャル成長を通じて第2のドープ領域を形成する手法と比較して、第2の不純物粒子を注入する前述の方法では、製造コストを低減させることができるとともに、製造効率を向上させることができる。また、第1の不純物粒子及び第2の不純物粒子は別々に注入されるので、第2の不純物粒子の注入深さを小さくして、ウエハのスクラップリスクが減らすことができる。
【0107】
S105. 第2表面にP型コレクタ層7を形成する。
【0108】
一部の実施形態において、P型コレクタ層7は、第2表面上にエピタキシャル成長を通じて形成されることができ、あるいは、P型コレクタ層7は、第2表面に不純物を注入することによって形成されてもよい。
【0109】
S106. P型コレクタ層7の表面上にコレクタ8を形成する。
【0110】
一部の実施形態において、ステップS103、S104、S105、又はS106の後に、アニール処理が行われ得る。理解されるべきことには、アニール処理は、第1の不純物粒子及び第2の不純物粒子が注入されたN型基板をアニールすることであるとし得る。
【0111】
この出願のこの実施形態において、アニール処理は、格子構造を回復させて欠陥を減らすために使用されることができ、また、格子間不純物原子を置換不純物原子に変えることもできる。従って、アニール処理は必要なプロセスである。
【0112】
オプションで、このアニールの最高温度は200℃から500℃である。理由は以下の通りである。H+がシリコン(Si)に注入された後、H+は、Si内の不純物、欠陥、及びダングリングボンドと直ちに結合して、複数の水素関連錯体(H-related complex)を形成することができる。正孔及び水素関連錯体は、フィールドストップ領域内のドナーを形成する。ドーピング密度は、単位体積当たりのドナー量に依存する。アニールが約200℃で行われると、正孔及び水素関連錯体の分布は基本的に不変のままである。しかし、アニール温度が上がった後には、水素関連錯体の密度が急速に低下し、特にアニール温度が450℃を超えると、水素関連錯体の量は半分近く減少する。結果として、コレクタ内のより少ない正孔としか水素関連錯体が再結合しない。これは、大きいリーク電流を生じさせる。
【0113】
理解され得ることには、P原子がフィールドストップ層に深く注入されるとき、通常、高いアニール温度が必要とされる。しかしながら、Pを注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTでは、高いアニール温度は、N型基板の前面上のMOSFET構造を破壊する。Hを注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTでは、高いアニール温度は、Hの注入によって導入された有益な欠陥を減少させ、リーク電流を増加させる。
【0114】
この出願のこの実施形態にて提供される、H及びPの両方を注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTによれば、Pの注入深さは浅く、非常に高いアニール温度は必要とされない。従って、N型基板の前面上のMOSFET構造がダメージを受けることを防ぐことができる。さらに、Hを注入することによって導入される多量の有益な欠陥が減少することを回避することができ、IGBTのコレクタ-エミッタ間リーク電流を減少させることができる。
【0115】
図6A図6Dは、この出願の一実施形態に従った、異なる温度で複数のIGBTのリーク電流がコレクタ-エミッタ間電圧とともに変化することの概略説明図である。図6A図6B図6C、及び図6Dでは、Hを注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTと、この出願のこの実施形態にて提供されるH及びリン(P)の両方を注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTとについて、それらがターンオフ状態にあるときのこれら2つのIGBTのリーク電流ICESの、異なる温度での、コレクタ-エミッタ間電圧VCEに伴う変化を比較している。“25 H注入サンプル1”及び“25 H注入サンプル2”における“25”は試験温度を意味し、“H注入サンプル1”及び“H注入サンプル2”は、Hを注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTの2つのサンプルであり、“H+P注入サンプル1”及び“H+P注入サンプル2”は、この出願にて提供されるH及びリン(P)の両方を注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTの2つのサンプル、すなわち、図1又は図2に示した半導体デバイスの2つのサンプルである。図6A図6Dは、それぞれ、25℃、125℃、150℃、及び175℃の試験温度での、ターンオフ状態にある4つのサンプルのICES-VCEカーブを示している。

【0116】
図6Aから見て取れることには、常温25℃では、Hを注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTのリーク電流は、H及びリン(P)を注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTのリーク電流と基本的に同じである。図6B図6Dから見て取れることには、125℃、150℃、及び175℃では、H及びPを注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTのリーク電流の方が、Hを注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTのリーク電流よりも小さい。加えて、温度が上昇するにつれて、又は電圧が上昇するにつれて、H注入サンプルとH+P注入サンプルとの間の測定リーク電流の差がますます大きくなる。分かることには、この出願のこの実施形態にて製造される、H及びPの両方を注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTによれば、Hを注入することによってフィールドストップ層が形成されるIGBTの大きいリーク電流という問題を大いに軽減することができる。
【0117】
スイッチングデバイスとして、IGBTは、例えば周波数変換、変換、変相、整流、逆変換、及び電圧/電流のスイッチングオンなどの機能を実装するエネルギー変換及び伝送回路に使用される。適用プロセスにおいて、IGBTデバイスは、例えば、IGBTディスクリートデバイス、IGBTモジュール、及びインテリジェントパワーモジュール(intelligent power module、IPM)といった、パワーモジュールとして封入され得る。IGBTディスクリートデバイスは、単一チューブのIGBTであってもよいし、単一チューブのIGBTと逆並列ダイオードとを含むデバイスであってもよい。IGBTモジュールは、絶縁を介して複数のIGBTチップ及びダイオードチップをDBC基板に組み立て、そして、封入を行うことによって得られる。IPMは、例えばIGBTなどのパワーデバイスを、例えば駆動回路、過電圧・過電流保護回路、温度監視・過熱保護回路などの周辺回路と一体化した“複合”デバイスである。
【0118】
IGBTは、例えば、インバータ回路(inverter circuit)、整流回路(rectifier)、又はコンバータ回路といった、例えば周波数変換、変換、変相、整流、逆変換、及び電圧/電流のスイッチングオンなどの機能を実装する電力変換回路において使用され得る。以下、これらの回路及びその適用シナリオを別々に説明する。
【0119】
(1)インバータ回路は、直流電気エネルギーを定周波数・定電圧交流電力又は周波数変調・電圧調整交流電力に変換する回路であり、通常、インバータブリッジ、論理制御回路、フィルタ回路、及びこれらに類するものを含む。前述のIGBTデバイスは、インバータブリッジのスイッチングデバイスとして使用される。この出願にて提供される半導体デバイスをスイッチングデバイスとして使用するインバータ回路は、電源が直流電源であり且つ交流負荷に電力を供給する必要があるシナリオに適用され得る。例えば、電気自動車のバッテリが交流モータに電力を供給するとき、インバータ回路を用いて電気エネルギーを変換する必要がある。他の一例では、太陽電池によって生成された電力を交流送電網に供給する前に、インバータ回路を用いて電気エネルギーを変換する必要がある。
【0120】
(2)整流回路は、交流電気エネルギーを直流電気エネルギーに変換する回路であり、通常、主回路、フィルタ、及びコンバータを含む。主回路は、整流ダイオードと、この出願にて提供されるIGBTデバイスとを含み得る。フィルタは、主回路と負荷との間に接続され、脈動する直流電圧内の交流成分をフィルタリング除去するように構成される。コンバータを配置すべきかどうかは、具体的なケースに依存する。コンバータは、交流入力電圧と直流出力電圧とのマッチングを実行するとともに、交流送電網を整流回路から電気絶縁するように構成される。この出願にて提供される半導体デバイスをスイッチングデバイスとして使用する整流回路は、交流電力を直流電力に変換する必要があるシナリオに適用され得る。例えば、電気自動車がバッテリを充電するとき、充電パイル、又は整流回路を含む充電器を用いて、交流電力が、電気自動車によって必要とされる直流電力であって、ある定格電圧を持つ直流電力へと変換され得る。
【0121】
(3)コンバータ回路は、ブーストコンバータ(Boost Converter)又はバックコンバータ回路(Buck Converter)とし得る。
【0122】
ブーストコンバータは昇圧コンバータとも呼ばれ、電圧を上げることができる直流-直流変換器であり、ブーストコンバータの出力(負荷)電圧は入力(電源)電圧よりも高い。ブーストコンバータは、主に、少なくとも1つのダイオードと、少なくとも1つのトランジスタと、少なくとも1つのエネルギー蓄積素子(インダクタ)とを含む。この出願にて提供されるIGBTデバイスはトランジスタとして使用されることができる。
【0123】
バックコンバータは降圧コンバータとも呼ばれ、電圧を下げることができる直流-直流変換器であり、バックコンバータの出力(負荷)電圧は入力(電源)電圧より低いが、バックコンバータの出力電流は入力電流より大きい。バックコンバータは、主に、少なくとも1つのダイオードと、少なくとも1つのトランジスタと、及び少なくとも1つのエネルギー蓄積素子(キャパシタ、インダクタ、又は両方)を含む。オプションで、電圧リップルを低減させるために、出力端及び入力端に更に、主にキャパシタを含むフィルタが付加され得る。この出願にて提供されるIGBTデバイスはトランジスタとして使用されることができる。
【0124】
例えば、ソーラーパネルの電圧は、時間又は天候変化によって絶えず変化する。全てのソーラーパネルが定格電力を出力することを確保するため、インバータ回路に入力される電圧をレギュレートして、太陽電池から放出される電気エネルギーが交流送電網に供給されるように、太陽電池インバータにブーストコンバータが付加される。
【0125】
前述の回路は限定を課すものではない。この出願にて提供されてスイッチングデバイスとして使用される半導体デバイスは、例えば直流ブースト回路又は直流バック回路といった、パワー半導体デバイスを必要とする他の回路に適用されてもよい。これは、ここで限定されることではない。
【0126】
本発明の実施形態にて使用されている技術用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されており、本発明を限定することを意図していない。この明細書において、単数形の“一”、“この”及び“その”は、文脈において別段の明確な規定がない限り、複数形を同時に含むことを意図している。また、この明細書で使用される“含む”及び/又は“含有する”という用語は、機構、全体、工程、操作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指すが、1つ以上の他の機構、全体、工程、操作、要素及び/又はコンポーネントの存在又は追加を除外するものではない。
【0127】
添付の請求項において、全ての装置若しくは工程及び機能要素の対応する構造、材料、作用、及び等価形態(もしあれば)は、他の明示的に要求される要素を参照して機能を実行するのに使用される任意の構造、材料、又は作用を含むことが意図される。本発明の説明は、実施形態及び説明の目的のために与えられており、網羅的であることや本発明を開示形態に限定することを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D