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特許7461994医療用ヘッドマウント及び医療用光学照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】医療用ヘッドマウント及び医療用光学照明装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/53 20160101AFI20240328BHJP
   A61B 90/30 20160101ALI20240328BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240328BHJP
   F21V 21/084 20060101ALI20240328BHJP
   F21L 4/00 20060101ALI20240328BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240328BHJP
【FI】
A61B90/53
A61B90/30
F21S2/00 610
F21V21/084
F21L4/00 510
F21Y115:10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022121275
(22)【出願日】2022-07-29
(65)【公開番号】P2024018147
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2023-04-03
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505425878
【氏名又は名称】中村 正一
(73)【特許権者】
【識別番号】592248835
【氏名又は名称】日本エー・シー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】中村 正一
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-502492(JP,A)
【文献】中国実用新案第209103011(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0210801(US,A1)
【文献】特開2021-183730(JP,A)
【文献】特表2013-519001(JP,A)
【文献】米国特許第05954642(US,A)
【文献】特表2014-500594(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0310145(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0303776(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0086066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/53
A61B 90/30
F21S 2/00
F21V 21/084
F21L 4/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術等の際に施術者が頭部に装着して、LED光源デバイス、撮像装置、双眼ルーペ又はVRディスプレイの何れか一つ又は複数、及び制御ユニットを着脱可能に搭載する医療用ヘッドマウントであって、
施術者の前頭部、左右の側頭部から後頭部に至って切れ目なく周回し、施術者の頭部周囲を押圧状態に接して位置ズレしないように形成された周回ベルトと、
施術者の前頭部から頭頂部及び後頭部に至って前記周回ベルトを半円弧状に接続する縦ベルトと、から構成され、
前記周回ベルトに設けられ、当該周回ベルトの長さを調整する第1調整手段と、
前記縦ベルトに設けられ、当該縦ベルトの長さを調整する第2調整手段と、
前記周回ベルト又は前記縦ベルトの施術者の前頭部側の位置に設けられ、前記LED光源デバイスを着脱可能に装着するためのLED光源装着部と、
前記LED光源装着部の近傍に設けられ、前記LED光源デバイスが照射する方向の画像を撮影する撮像装置を着脱可能に装着するための撮像装置装着部と、
前記LED光源装着部の下側に設けられ、施術箇所を視覚的に拡大して観るための双眼ルーペを着脱可能に装着するための双眼ルーペ装着部と、
前記縦ベルトの中央部から後頭部における前記周回ベルトとの接続部の間に取り付けられ、前記LED光源デバイス及び/又は前記撮像装置のオンオフ、光量調整若しくは記録画像の調整を行うための第1のバッテリーを内蔵する制御ユニットを装着可能に装着するための制御ユニット装着部と、を備え、
前記制御ユニットは、前記制御ユニット装着部に装着された際に、施術者が施術中に被施術者の施術箇所に向かって所定の角度の前かがみの姿勢状態において、前記制御ユニットが真横から見て最高位置に位置するように配置され、
前記第2調整手段は、前記縦ベルトの頭頂部から前頭部に至る箇所に取り付けられ、スライドノブボタンと、当該スライドノブボタンを押した状態で前記縦ベルトの長さを調整可能となるスライドロック機構とするためのスライドノブと、を有するスライドロック機構により構成されている、
ことを特徴とする医療用ヘッドマウント。
【請求項2】
前記第1調整手段は、前記周回ベルトにおける前記縦ベルトとの後方接続箇所において設けられ、前記周回ベルトの長さを調整する回転ノブを有する回転ロック機構により構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療用ヘッドマウント。
【請求項3】
前記第2調整手段は、前記縦ベルトの頭頂部から前頭部に至る箇所に取り付けられ、前記縦ベルトの長さを調整するための回転ノブを有する回転ロック機構により構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療用ヘッドマウント。
【請求項4】
前記LED光源デバイスは、
予め用意された一又は複数のLED光源デバイスの中から任意に選択された一つが前記LED光源装着部において着脱自在に装着され、その照射方向は上下方向及び左右方向に自在に調整可能である、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載の医療用ヘッドマウント。
【請求項5】
前記撮像装置は、予め用意された一又は複数の撮像装置の中から任意に選択された一つが前記撮像装置装着部又は前記LED光源デバイスに装着され、その撮像方向を調整可能であることを特徴とする請求項に記載の医療用ヘッドマウント。
【請求項6】
前記双眼ルーペは、予め用意された一又は複数の双眼ルーペの中から任意に選択された一つが前記双眼ルーペ装着部に装着され、その視覚方向を調整可能に装着されることを特徴とする請求項に記載の医療用ヘッドマウント。
【請求項7】
前記双眼ルーペ装着部には、前記双眼ルーペに替えて、VRディスプレイが取り付けられることを特徴とする請求項に記載の医療用ヘッドマウント。
【請求項8】
前記VRディスプレイは、前記撮像装置が撮像した、施術箇所の映像を半透明的に写すと共に、当該施術を補助するための表示又画像を表示することを特徴とする請求項7に記載の医療用ヘッドマウント。
【請求項9】
前記制御ユニットは、搭載されるLED光源デバイス、撮像装置、双眼ルーペ又はVRディスプレイの何れか一つ又は複数に応じて、予め用意された一又は複数の制御ユニットの中から任意に選択された一つが前記制御ユニット装着部に装着されることを特徴とする請求項に記載の医療用ヘッドマウント。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記LED光源デバイスからの光量を調整可能な電力を供給するための電気回路と、一又は複数のバッテリーの中から選択された一つのバッテリーと、を内蔵することを特徴とする請求項9に記載の医療用ヘッドマウント。
【請求項11】
前記撮像装置は、レンズと撮像素子とからなり、
当該撮像装置によって撮像された画像データは、前記制御ユニット内に配置された記憶装置に記憶され、
前記LED光源デバイスのオン操作に連動して、画像データが前記記憶装置に送信されて記憶される、ことを特徴とする請求項に記載の医療用ヘッドマウント。
【請求項12】
請求項に記載された医療用ヘッドマウントと、
施術者の腰回りに装着するベルトと当該ベルトの後方側に装着可能なベルトパワーパックと、から成り、
当該ベルトパワーパックには、前記制御ユニット内に備えられたバッテリーよりも大容量の第2のバッテリーが接続可能であり、
前記医療用ヘッドマウントに搭載可能な制御ユニットと電気接続するコードを差し込むためのジャックを備える第2の制御ユニットが装着される、
ことを特徴とする医療用光学照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術等の際に医療施術者が頭部に装着して被施術者の施術部位に光を照射するヘッドマウント式の医療用照明装置に関し、施術者の頭部に安定的にフィットし、その光照射方向がターゲットの施術部位からブレが生じないようにした医療用ヘッドマウントに関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の外科手術等においては、施術者がベッド又はチェア上に横たわる患者に近づいて施術作業をする。施術者は、通常、立脚姿勢で施術を行い、室内を移動したり、施術中にメス、ハサミ、鉗子等の手術器具を頻繁に持ち替えたり、施術作業を補助する看護師等に対して指示を与え、頭の方向を変える必要性も生じる。
【0003】
このような場合、施術者が頭上に装着して被施術者の施術部位に光を照射するための医療用照明装置の装着状態が変動してズレたり、ベッドやチェアの上方や側頭部に設置されている種々の器具、施術助手や看護師に接触することにより、ヘッドマウントが動いてしまうことがある。
【0004】
また、施術の開始前の準備として、医療用照明装置の装着は短時間にスムースに行なう必要がある。さらに、医療用照明装置の装着後、施術者は、医療用照明装置の装着位置の微修正や光源の照射方向を修正する操作が必要である。また、施術者は、施術中に手元の手術部位での照度が不足していると感じた場合等には、医療用照明装置の照射光度を上げる調整する必要性が生じる。
【0005】
このため、従来から、医療用照明装置の装着容易性に優れ、さらには、施術者の視線方向と同じ方向に光源からの光を照射し、被施術者の施術部位における充分な照度を確保できるようにした種々のタイプの医療用照明装置が考案されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3を参照)。
【0006】
特許文献1の医療用照明装置は、前方の光照射部を軽く且つコンパクトにするべく、光照射部とLED光源とを光ファイバーケーブル等で接続し、光ファイバーケーブルを含めた導光部の部分が長くなって光照射部からの光の照度が低下する欠点を解決するようにした医療用照明装置を開示している。
【0007】
また、特許文献2の医療用照明装置は、施術者の所望する対象物に使用者の視野方向が向けられた場合に制御信号を発信するようにして、施術者が、施術中に医療用ヘッドマウントの光照射方向の微小な調整や変更操作を軽減するようにした照明装置を開示している。
【0008】
また、特許文献3の医療用ヘッドマウントは、手術を行う部位方向に正確に照明するために、ヘッドレスト内の回路基板上にアレイ配置されたLED群と、LEDに電力を供給する電源と、制御スイッチを含む制御ユニットと、を内蔵したヘッドマウントを開示している。
【0009】
さらに、特許文献4は、特許文献1と同様に、LEDから成る光源ユニットおよびレンズ等による光照射部を別体にして、光源ユニットと光照射部との間を光ファイバーケーブルによって接続し、光源ユニットにLEDと共にヒートシンクや熱絶縁部材が組み込むことによりその光照射部の容積を小さく、光源ユニットを施術者の眼の近くに取り付けたヘッドレストを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第6234749号公報
【文献】特開2006-107846号公報
【文献】特開2006-175235号公報
【文献】国際公開WO02/099332A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
外科手術等の施術の開始は、麻酔や輸血等の関係から、施術者が手術室への入室後は、迅速に行わなければならず、ヘッドマウントの装着は短時間にスムースに行なわれる必要がある。また、ヘッドマウントを装着した後、施術者は、ヘッドマウントの装着位置の微修正や光源の照射方向を修正する。さらに、施術者は、施術中における血管の縫合等微細で正確な操作を必要とする場合や、施術中に手元の手術部位における照度が不足していると感じた場合には、ヘッドレストの照射光度を上げる調整操作行う必要性が生じる場合もある。
【0012】
また、施術が長時間(5時間以上)に及ぶ場合や、施術者は、施術中に被施術者の施術箇所に向かって常に一定の角度を保った前かがみの姿勢で施術を行うために、ヘッドレストは、極力、小型、軽量且つ低発熱であることが望ましく、前かがみの姿勢を長時間維持させるためには、ヘッドレストを装着した頭部に重力方向に働くトルク(長さ×重量)を極力小さくする必要がある。
【0013】
このため、近年においては、特許文献1乃至4に開示されているように、光照射部にLED素子が用いられるが、LED素子は、直流電源(直流電流)で、発熱量が少なく高効率で発光する。このことから、施術者の移動容易性からも、例えば、特許文献3に開示されているように、ヘッドレスト内部にLED素子の電源としてバッテリーを搭載するタイプが多く用いられている。
【0014】
しかし、上記したヘッドマウントを含む従来のヘッドマウントは、以下のような解決すべき課題を有していた。すなわち、
(a)ヘッドマウントの装着容易性や施術中の操作容易性に関して、上記したような従来のヘッドマウントは必ずしも満足するものではなかった。つまり、施術中において施術者の手指には、被施術者の血液や体液が付着しているのでヘッドレストの操作は、より簡便で且つ容易でなければならない。
【0015】
(b)施術者は、主に立脚姿勢で施術を行い、室内を移動したり、施術中にメス、ハサミ、鉗子等の手術器具を頻繁に持ち替えたり、施術作業を補助する看護師等に対して指示を与えたり頭の方向を変える必要性があるので、頭上に装着しているヘッドマウントの装着状態が変動してズレたり、ベッドやチェアの上方や側頭部に設置されている種々の器具、施術助手や看護師に接触することにより、ヘッドマウントが動いてしまったり、ヘッドマウントが頭から外れてしまうことがあった。
【0016】
(c)LED素子は、高効率であるものの、これを駆動するバッテリーは重量があることから、ヘッドマウントの重量を軽減化させるためには、光源ユニットと光照射部とを別にして光ファイバーケーブル等で接続するようにする必要がある。このような場合、小さいバッテリー容量でより長時間使用可能にするためには、光ファイバーケーブルを含めた導光部の部分が長くなっても光の漏れ量を極力少なくして、光照射部からの光の照度が低下しないようにする必要がある。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みて、装着性に優れ、操作性に優れ、ヘッドマウントが動いたり、万が一にも頭から外れてしまう危険性がなく、長時間使用しても疲れずに使用することが可能な医療用ヘッドマウントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このため、本発明は、外科手術等の際に施術者が頭部に装着して、LED光源デバイス、撮像装置、双眼ルーペ又はVRディスプレイの何れか一つ又は複数、及び制御ユニットを着脱可能に搭載する医療用ヘッドマウントであって、施術者の前頭部、左右の側頭部から後頭部に至って切れ目なく周回し、施術者の頭部周囲を押圧状態に接して位置ズレしないように形成された周回ベルトと、施術者の前頭部から頭頂部及び後頭部に至って前記周回ベルトを半円弧状に接続する縦ベルトと、から構成され、前記周回ベルトに設けられ、当該周回ベルトの長さを調整する第1調整手段と、前記縦ベルトに設けられ、当該縦ベルトの長さを調整する第2調整手段と、前記周回ベルト又は前記縦ベルトの施術者の前頭部側の位置に設けられ、前記LED光源デバイスを着脱可能に装着するためのLED光源装着部と、前記LED光源装着部の近傍に設けられ、前記LED光源デバイスが照射する方向の画像を撮影する撮像装置を着脱可能に装着するための撮像装置装着部と、前記LED光源装着部の下側に設けられ、施術箇所を視覚的に拡大して観るための双眼ルーペを着脱可能に装着するための双眼ルーペ装着部と、前記縦ベルトの中央部から後頭部における前記周回ベルトとの接続部の間に取り付けられ、前記LED光源デバイス及び/又は前記撮像装置のオンオフ、光量調整若しくは記録画像の調整を行うための第1のバッテリーを内蔵する制御ユニットを装着可能に装着するための制御ユニット装着部と、を備え、前記制御ユニットは、前記制御ユニット装着部に装着された際に、施術者が施術中に被施術者の施術箇所に向かって所定の角度の前かがみの姿勢状態において、前記制御ユニットが真横から見て最高位置に位置するように配置され、前記第2調整手段は、前記縦ベルトの頭頂部から前頭部に至る箇所に取り付けられ、スライドノブボタンと、当該スライドノブボタンを押した状態で前記縦ベルトの長さを調整可能となるスライドロック機構とするためのスライドノブと、を有するスライドロック機構により構成されている、ことを特徴とする。
【0019】
ここで、前記第1調整手段は、前記周回ベルトにおける前記縦ベルトとの後方接続箇所において設けられ、前記周回ベルトの長さを調整する回転ノブを有する回転ロック機構により構成されている。
【0021】
本発明に係る医療用ヘッドマウントは、上記構成により、以下の作用効果を奏する。すなわち、
(a)ヘッドバンドの前方に取り付けられているLED光源デバイスが、施術者の前頭部からの照光方向を上下方向及び左右方向の何れの方向にも自在に調整可能であることから、施術中において、指や手の一部を軽く触る(ノブのスライド操作又は回転操作)だけで、照射したい方向に光を的確に照射させることを可能としつつ、前頭部から後頭部に至る周回ベルトが施術者の前頭部から側頭部及び後頭部に至って切れ目なく周回していることから、いかなる場合も、照明装置が、施術者の頭から外れることはない。
【0022】
(b)さらに、周回ベルトは、施術者の両側頭部を押圧状態に維持して位置ズレしないように形成されていることから、施術者が頭を急に動かすようなことがあっても、周回ベルトの長さを調整する第1調整手段を強く締め過ぎることなく長時間使用しても、頭(頭囲)が締めつれられることによる痛みは生じない。このことは、例えば、マスクの左右の耳掛け紐が緩くても、長時間使用していると耳が痛くなることをからも容易に理解でき、本医療用ヘッドマウントにおける重要な要素である。
【0023】
(c)そして、この周回ベルトの長さを調整するための第1調整手段は、例えば、時計回り又は反時計回りの回転操作により簡易に調整することができると共に、この第1調整手段が、周回ベルトと縦ベルトの後方接続箇所に配置されていることから、一旦調整してしまえば、視覚の邪魔になることは無く、さらには、側頭部に配置されていないことから、ベッド周りの装置や看護師や施術助手と接触してしまうことがない。
【0024】
(d)縦ベルトの長さを調整する第2調整手段は、当該縦ベルトにおける施術者の前頭部から後方部に配置され、スライドノブ又は回転ノブにより、上述した第1調整手段と同様に、施術者は片手(指先)で、容易に長さ調整をすることができと共に、視覚の邪魔になることは無く、さらには、頭頂前方に配置されていないことから、施術を行うベッド周りの装置や看護師や施術助手と接触してしまうことがない。
【0025】
また、本医療用ヘッドマウントの第1態様として、縦ベルトの中央部から後頭部における前記周回ベルトとの接続部の間に取り付けられLED光源デバイスからの光量の調整及びオンオフ操作を可能にするためのLED光源制御ユニット部が、設けられている。これによって、施術者は、施術中にLED光源デバイスから照射される光量を自ら調整することが可能である。
【0027】
これにより、本医療用ヘッドマウントにおいては、
(e)施術者が、長時間に亘って前かがみの姿勢を維持しながら施術する際にヘッドレストは、極力、小型、軽量且つ低発熱であることが望ましく、前かがみの姿勢を長時間維持させるためには、ヘッドレストを装着した頭部に重力方向に働くトルク(長さ×重量)を極力小さくすることができるので、施術者の腰や首に掛かる負担を最小にしたのである。
【0028】
そして、本医療用ヘッドマウントにおいては、制御ユニットは、前記LED光源デバイスからの光量を調整可能な電力を供給するための電気回路と、必要に応じて小容量バッテリーと、を内蔵することを特徴とする。
【0029】
これにより、
(f)比較的に短時間の施術においては、高効率で低電力消費のLED発光素子により、施術者は外部から電力の供給を受けるためのコードに拘束されることがなく身軽に施術を行うことができる。
【0030】
また、本医療用ヘッドマウントにおいては、LED光源デバイスには、レンズと撮像素子とからなる撮像装置が備えられ、前記撮像装置は、前記制御ユニット内に配置された記憶装置に記憶され、前記LED光源デバイスのオンによって起動し、前記記憶装置に画像データが送信されて記憶されるようにしてもよい。この撮像装置は、予め用意された一又は複数の撮像装置の中から任意に選択された一つが前記撮像装置装着部又は前記光源デバイスに装着され、その撮像方向を調整可能である。
【0031】
そして、本医療用ヘッドマウントの第2態様は、上述した構成のヘッドバンドと、施術者の腰回りに取り付ける腰ベルトと、から成り、この腰ベルトの後方には、大容量バッテリーと、前記ヘッドバンドに搭載されている制御ユニットと電気接続するコードを差し込むためのジャックと、を搭載するベルトパワーパックが取り付けられていることを特徴とする。
【0032】
これにより、
(g)コードに拘束されることがなく身軽に施術を長時間行うことができる。
【0033】
そしてこの第2態様においても、LED光源デバイスには、レンズと撮像素子とからなる撮像装置が備えられ、前記撮像装置は、このベルトパワーパック内に配置された記憶装置に記憶され、前記LED光源デバイスのオンによって起動し、前記記憶装置に画像データが送信されて記憶することが可能である。
【0034】
本医療用ヘッドマウントは双眼ルーペを装着可能であるが、双眼ルーペに替えてVRディスプレイを取り付けることができる。これにより、例えば、医学生や研修医が外科手術の研修の際に、手術現場の現実に行われている手術の映像画像を透かして(実際の手術画像と共に)、VRディスプレイに映し出される教育的な映像や解説を見せたり、外科手術に立ち会う看護師や助手に対して、執刀外科医がいちいち指示をしなくても、手術の進展具合に応じて、次に準備すべきハサミや鉗子等の手術器具の準備を促す画像等を映し出したり、過去の成功した手術の画像を映し出すことにより、執刀外科医の参考にさせたり、いろいろな用途が考えられる。
【発明の効果】
【0035】
上述したように、本発明に係る医療用ヘッドマウントは、装着性に優れ、操作性に優れ、ヘッドマウントが動いたり、万が一にも頭から外れてしまう危険性がなく、長時間使用しても疲れずに使用することを可能としたのである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】本発明の第1の実施形態に係る医療用ヘッドマウントの外観を示す斜視図であり、(a)はその斜視図、(b)は横側面図を示す。
図1B】本発明の第2の実施形態に係る医療用ヘッドマウントの外観を示す斜視図であり、(a)はその斜視図、(b)は横側面図を示す。
図2】本医療用ヘッドマウントを装着して施術を行う施術者の横方向からの姿勢を示す。
図3】本医療用ヘッドマウントにおける回転ノブ式の第1調整手段及び第2調整手段が共通に備えるギアシャフト及びピニオンギアの構成図を示す。
図4】本医療用ヘッドマウントにおける頭回りの周回ベルト及び縦ベルトが共通に備えられて、図1Bに示す回転ノブ式のベルト長の調整手段ピニオンギアと噛合うラックギアを備える長孔の構成図を示す。
図5】本医療用ヘッドマウントに装着されるLED光源デバイスの構成図を示す。
図6】本医療用ヘッドマウントに装着される撮像装置の構成図を示す。
図7】本医療用ヘッドマウントに装着される双眼ルーペの構成図を示す。
図8】本医療用ヘッドマウントに装着されるVRディスプレイの例を示す。
図9】本医療用ヘッドマウントへの制御ユニットの装着の説明図であり、(a)は制御ユニット装着部の具体例図、(b)は制御ユニット装着部に取り付けられる制御ユニットの背面図を示す。
図10】施術者が、本医療用ヘッドマウントを装着する手順の例を示す。
図11】施術者が、本医療用ヘッドマウントを装着した後、調整操作する例を示す。
図12】本発明に係る医療用ヘッドマウントの第2態様を示し、施術者の腰回りに取り付ける腰ベルトの後方には、大容量バッテリーと、前記ヘッドバンドに搭載されている制御ユニットと電気接続するコードを差し込むためのジャックと、を搭載するベルトパワーパックの例を示す。
図13】本発明の実施形態に係る医療用ヘッドマウントにおいて、例えば、図5に示したベルトパワーパックを使用する場合において、LED光源制御ユニット部がない場合の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の最適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0038】
図1Aは、本発明に係る第1の実施例に係る医療用ヘッドマウント1の構成を示すものである。そして、図1Bは、本発明に係る第2の実施例に係る医療用ヘッドマウント1の構成を示すものである。図1Aに示す第1の実施例に係る医療用ヘッドマウント1と図1Bに示す第2の実施例に係る医療用ヘッドマウント1とは、縦ベルト22の長さを調整する第2の調整手段が、図1Aに示す例はスライドノブ式の長さ調整手段12A(図1A)であり、図1Bに示す例は、回転ノブ式の長さ調整手段12Bである。
【0039】
図1A及び図1Bに示す本発明に係る医療用ヘッドマウント1は、図2に示すように施術者の頭部に装着されたとき、施術者の前頭部から側頭部及び後頭部に至って切れ目なく周回し、施術者の両側頭部を押圧状態に維持して位置ズレしないように形成された周回ベルト21と、施術者の前頭部から後頭部を半円弧状に接続する縦ベルト22と、周回ベルト21と縦ベルト22の後方接続箇所に設けられ、周回ベルト21の長さを時計回り又は反時計回りの回転操作により調整するための第1調整手段11と、縦ベルト22の前方に設けられ、当該縦ベルト22の長さを、図1Aに示す実施例の場合はスライドノブ12Aのスライド操作で調整し、図1Bに示す実施例の場合は回転ノブの時計回り又は反時計回りの回転操作により調整する第2調整手段12A又は12Bと、を有する。
【0040】
図1A及び図1Bに示す回転ノブ式の第1調整手段11と、図1Bに示す回転ノブ式の第2調整手段12の各背面には、図3に示すように、ギアシャフト64が挿入される貫通孔60が形成されている。そして、ギアシャフト64は、軸64aから等間隔で放射状に延びるピニオンギア65を備えている。
【0041】
周回ベルト21は、通常、1本のベルトで構成されその両端には長孔62、63がそれぞれ設けられており、長孔62の下側の直線部分には、ピニオンギア65と噛合うラックギア62aが形成され、長孔43の上側の直線部分には、ピニオンギア65と噛合うラックギア63aが形成されている。よって、周回ベルト21の両端の長孔62、63を重ねてラックギア62a、63aを共にピニオンギア65と噛合わせることで、周回ベルト21は環状に保持されて、第1調整手段11を時計方向又は反時計方向に回動すればピニオンギア65が長孔62、63内を往復移動することで医療用ヘッドマウント1の着用者の頭回りの寸法に応じて調整を行える。
【0042】
縦ベルト22も2本のベルトで構成されているが、互いに連結することで1本のベルトとなる点で周回ベルト21と異なる。しかし、縦ベルト22も周回ベルト21と同様に、それぞれの連結側の端部にラックギア62a、63aを有する長孔62、63が形成されており、長孔62、63を重ねてラックギア62a、63aを共にピニオンギア65に噛合わせることで1本に連結される。そして、図1Aに示すように第2調整手段(スライドノブ式)12Aのスライドノブボタンを押した状態でスライドさせて調整する例を示し、図1Bに示すように第2調整手段(スライドノブ)12Bの回転ノブを時計方向又は反時計方向に回動すればピニオンギア65が長孔62、63内を往復移動することで医療用ヘッドマウント1の着用者の額から後頭部に掛けての寸法に応じて調整を行える。
【0043】
周回ベルト21又は縦ベルト22の施術者の前頭部位置にはLED光源デバイス14を着脱可能に装着するためのLED光源装着部23が設けられている。LED光源装着部23は、図示においては、周回ベルト21と縦ベルト22とが施術者の額前頭部で重なる部分に設けられている。LED光源装着部23としては、例えば面ファスナーが利用可能であり、面ファスナーのフック状に起毛されたフック面又はループ状に密集して起毛されたループ面の一方が周回ベルト21又は縦ベルト22の施術者の前頭部位置に接着されている。
【0044】
LED光源デバイス14は、図5に示すように、LEDチップ及びドライバを含むLEDパッケージが実装されているLED基板33とヒートシンク34と冷却ファン35とを収容する本体部16と、LEDチップ光を対象物にスポット的に照射するための複数の凸レンズから成るレンズ系36とレンズ系36に到達する光量を調節する絞り機構37を内蔵する照光部15から成る。絞り機構37は、外方に突出しているピン37aを回すことで絞りが調整される。
【0045】
本体部16の後方には一組のリンク板を有するリンク機構9が設けられている。リンク機構9の他端にはLED光源装着部23に脱着可能な着脱部10が設けられている。着脱部10の背面には、LED光源装着部23の面ファスナーのフック面(又はループ面)に張り付くループ面(又はフック面)が接着されている。よって、LED光源デバイス14は面ファスナーにより医療用ヘッドマウント1から着脱自在に装着することができる。LED光源デバイス14の本体部16はリンク機構9の調節により前後に伸縮し上下にも移動でき、そして、接続されるリンク板とは左右に移動可能に取り付けられている。
【0046】
周回ベルト21は、縦ベルト22と施術者の額前頭部において重なる部分から下方に延び出す補助片21aが設けられる。補助片21aには、LED光源デバイス14が光源を照射する方向の画像を撮影する撮像装置30を着脱可能に装着するための撮像装置装着部24と、視覚的に施術箇所を拡大して観るための双眼ルーペを着脱可能に装着するための双眼ルーペ装着部25とが設けられている。撮像装置装着部24及び双眼ルーペ装着部25は、後述する撮像装置40や双眼ルーペ50の各取付片を差し込むことが可能なポケットで構成されている。
【0047】
撮像装置40は、CCD又はCMOSによるイメージセンサを用いて動画又は静止画の撮像を行うもので、図6に示すように、フラットなフレキシブルコード41から、電源や制御信号が供給されると共にイメージセンサによる撮像信号を出力する。撮像装置40には超小型のマイクロカメラ42を使用することで、医師が手術を行う際に着用して容易に保持することができる。このようなマイクロカメラとしては、例えば、16.5mm(W)×10.3mm(H)×18.0mm(D)の外形寸法に1319万画素のイメージセンサを搭載して、フルハイビジョン動画や高画質な静止画が撮像可能なマイクロカメラが市販されており、このようなカメラが本発明に係わる医療用ヘッドマウント1に装着する撮像装置40として好適である。マイクロカメラ42は、取付片43aを有する基台43に取り付けられて、取付片43aを撮像装置装着部24へ差し込むことで医療用ヘッドマウント1に装着される。
【0048】
撮像装置40は、LED光源デバイス14がLED光を照射する方向の画像を撮影するためにLED光源装着部23の近傍に取り付けられる。よって、撮像装置装着部24は、本例では補助片21aのLED光源装着部23の直下の部分に設けているが、周回ベルト2におけるLED光源装着部23の左右に隣接して設けてもよい。或いは、縦ベルト22のLED光源装着部23の真上の位置に撮像装置装着部24を設けてもよい。
【0049】
双眼ルーペ50は、精密作業での手先の局所的な視覚対象物を拡大して視認する手段として、医療分野、精密工作、宝石加工等の各分野に広く使用されており、図7に示すように、眼鏡と同じ構造の主鏡取付用フレーム51と、作業対象の像を拡大するための双眼ルーペ本体52(主鏡)と、双眼ルーペ本体22を主鏡取付用フレーム51に取り付けるための主鏡取付部53と、精密操作者の視力の保障が可能な焦点調整部54と、双眼ルーペ本体を取り付けるための主鏡取付用キャリアレンズ55と、精密操作者に装着するためのフレーム蔓部56とから構成されている。そして、主鏡取付用フレーム51はブリッジから下方に延び出して取付片51aが設けられており、取付片51aを双眼ルーペ装着部25に差し込むことで医療用ヘッドマウント1に装着される。
【0050】
双眼ルーペ50は双眼ルーペ装着部25で医療用ヘッドマウント1に取り付け可能であるため特にフレーム蔓部56を有さないタイプのものであってもよい。しかしながら、双眼ルーペ本体52は比較的重量があるため、2つのフレーム蔓部56と双眼ルーペ装着部25を介しての医療用ヘッドマウント1との3点で支持することで着用者の負担が軽減される。
【0051】
このように、撮像装置装着部24及び双眼ルーペ装着部25は各取付片43a、51aが差し込まれるポケットで説明したが、LED光源装着部23と同様に面ファスナーとしてもよく、またLED光源装着部23はLED光源デバイス14の着脱部10が差し込まれるポケットで構成されてもよい。他の態様としては、LED光源14、撮像装置30、双眼ルーペ50側には突起又はピンを設けて、LED光源装着部23、撮像装置装着部24、双眼ルーペ装着部25はこの突起又はピンが嵌まり込み着脱自在に保持する受部で構成することもでき、これ以外にも種々の構成が考えられる。
【0052】
双眼ルーペ装着部25には、図8に示すVRディスプレイ60も装着可能としている。ここで、本願においては、VRディスプレイ60とは、平面状のディスプレイまたは曲面状の例えばゴーグル状のディスプレイを含む。また、VRディスプレイ60に表示される画像は、二次元画像若しくは三次元画像を表示する。
【0053】
さらに、本願発明において使用されるVRディスプレイは、仮想現実(バーチャルリアリティ)を体験することができるレンズ61付のディスプレイであり、例えば医療現場においては、医学生や研修医が外科手術の研修の際に、手術現場の現実に行われている手術の映像画像を透かして(実際の手術画像と共に)、VRディスプレイに映し出される教育的な映像、一例としては撮像装置40が撮像した施術箇所の映像や加えてその解説を半透明的に写すと共に、当該施術を補助するための表示又画像を表示する。
【0054】
また、外科手術に立ち会う看護師や助手に対して、執刀外科医がいちいち指示をしなくても、手術の進展具合に応じて、次に準備すべきハサミや鉗子等の手術器具の準備を促す画像等を映し出したり、過去の成功した手術の画像を映し出すことにより、執刀外科医の参考にさせたりするなど幅広い用途に用いられる。
【0055】
図8は、VRディスプレイ60の裏側(着用されたとき使用者の顔に面する側)を示しており、装着時に使用者の目を外界から遮蔽するための遮蔽部62の上部には取付片62aが設けられており、取付片62aを双眼ルーペ装着部25に差し込むことで医療用ヘッドマウント1に装着される。本例のVRディスプレイは、バッテリーやCPUを内蔵するスタンドアローンタイプであるため重量があるが、本発明に係る医療用ヘッドマウント1に装着すれば使用者の頭部に安定して着用することができる。
【0056】
縦ベルト22の中央部から後頭部における周回ベルト21との接続部の間には、LED光源デバイス14及び/又は撮像装置のオンオフ、光量調整若しくは記録画像の調整を行うための制御ユニット13が着脱自在に取り付けられる。縦ベルト22の中央部から後頭部における周回ベルト21との接続部の間には制御ユニット装着部26が設けられている。
【0057】
制御ユニット装着部26は、図9(a)に示すように、円柱状のピンで構成されており、このピンの上端の部分の径は円柱部分の径より大きい皿の形状となっている。そして、制御ユニット13の背面には、縦ベルト22の長手方向に沿って溝27が形成されている。この溝27の短手方向の寸法は、図9(b)に示すように、制御ユニット装着部26の円柱部分の直径と略等しく、溝27の一端には制御ユニット装着部26の上端の皿形状の部分が挿入可能な差込部27aが形成されている。したがって、制御ユニット13は、予め用意された一又は複数の制御ユニットの中から任意に選択された一つが制御ユニット装着部26に装着することができる。かかる制御ユニット装着部26は、制御ユニット13が装着された際に、施術者が施術中に被施術者の施術箇所に向かって所定の角度の前かがみの姿勢状態において、制御ユニット13が真横から見て最高位置になるように配置される。
【0058】
制御ユニット13は、ハーネス13aを介してLED光源デバイス14及び/又は撮像装置30に接続されてオンオフ信号や光量調整信号若しくは記録画像の調整信号を供給すると共に内蔵するバッテリーからLED光源デバイス14や撮像装置に電源を供給する。しかしながら、制御ユニット13は制御ユニット装着部26を介して医療用ヘッドマウント1に着脱自在であるから予め用意された一又は複数の制御ユニット13の中から任意に選択された一つが装着される。
【0059】
この場合の制御ユニット13の種類としては、医療用ヘッドマウント1にLED光源デバイス14だけを装着するのであれば、制御ユニット13は、LED光源デバイス14からの光量を調整可能な電力を供給するための電気回路と、使用時間に応じて一又は複数のバッテリーの中から選択された一つのバッテリーと、を内蔵するものである。そして、撮像装置30を医療用ヘッドマウント1に装着するのであれば、撮像装置40へオンオフ信号及び電力を供給する制御ユニット13が選択される。
【0060】
また、制御ユニット13は、撮像装置40によって撮像された画像データを内蔵する記憶装置を備えて、LED光源デバイス14のオン操作に連動して、撮像装置40が撮影する画像データはこの記憶装置に送信されて記憶させる。
【0061】
本発明の第1態様として、LED光源デバイス14からの光量の調整及びオンオフ操作を可能にするための制御ユニット13が医療用ヘッドマウント1の制御ユニット装着部26に取り付けられ、施術者は、施術中にLED光源デバイスから照射される光量を絞り機構37のピン37aを操作することで光量調整が行える。
【0062】
図10は、第1調整手段11と第2調整手段12を調整して施術者の頭部に医療用ヘッドマウント1を装着するときの説明図を示している。同図はLED光源デバイス14が取り付けられた医療用ヘッドマウント1であるため、撮像装置装着部24及び双眼ルーペ装着部25を備える補助片21aについての図示は省略されている。
【0063】
先ず、周回ベルト21が完全に開くまで第1調整手段11を反時計方向に回す。そして、制御ユニット13を持って医療用ヘッドマウント1を頭部に被せて、図10(a)に示すように、周回ベルト21が頭部に確実に固定されて且つ閉めすぎない快適な状態となるまで第1調整手段11を反時計方向に回す。次に図10(b)に示すように、第2調整手段12を回して縦ベルト22の長さを調整し、頭部にフィットさせたら第2調整手段12を離す。
【0064】
医療用ヘッドマウント1の装着後、LED光源デバイス14の照光角度を調整するには、図10(c)に示すように、片方の手で周回ベルト21又は縦ベルト22の後方を押さえて、もう片方の手で制御ユニット13を前後に動かしてLED光源デバイス14のリンク機構9を伸縮させて行う。
【0065】
そして、LED光源デバイス14のプロジェクションの位置を調整するには、図11(d)に示すように片手で医療用ヘッドマウント1を押さえて、もう片方で本体部16を上下に移動させる。また、LED光源デバイス14のレンズを左右に動かすには、図11(e)に示すように、本体部16を掴み固定させて照光部15を左右に回転させる。照射する光の大きさを変えるには、図11(f)に示すように、ピン37aを動かして絞りを調節する。
【0066】
このように本発明に係る医療用ヘッドマウント1はLED光源デバイス14を装着すれば医療用光学照明装置としての側面を有する。しかしながら、かかる医療用光学照明装置にあっては、制御ユニット13はバッテリーを内蔵するものの、頭部に装着することから重量を考慮すると比較的小容量のバッテリーを用いるため長時間の施術には向かない。
【0067】
そこで、大容量のバッテリーが必要な医療用光学照明装置では、図12に示すように、大容量のバッテリーを備えるベルトパワーパック70を施術者の腰回りに取り付けるベルト71に装着する。ベルトパワーパック70は、2個の大容量バッテリー72と、LED光源デバイス14及び/又は撮像装置のオンオフ、光量調整若しくは記録画像の調整を行うための制御ユニット73と、電気接続するコードを差し込むためのジャック75と、を搭載している。
【0068】
このようなベルトパワーパック70を備える医療用光学照明装置においては、本発明の第2態様である制御ユニット13を有さない図13に示すような医療用ヘッドマウント1Aが用いられる。同図において、医療用ヘッドマウント1と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0069】
ベルトパワーパック70は、図12(c)に示すように制御ユニット73の電源スイッチ76を下方へスライドさせて電源が入ると、ハーネス74を通じて、LED光源デバイス14及び/又は撮像装置30に接続されてオンオフ信号や光量調整信号若しくは記録画像の調整信号とバッテリー電源を供給する。そして、電源スイッチ76を下方にスライドさせるほど、LED光源デバイス14への供給電流が大となり照度が高くなる。
【0070】
以上、詳述したように本発明に係る医療用ヘッドマウント1は、装着性に優れ、操作性にも優れると共にヘッドマウントが動いたり、また万が一にも脱落する危険性がない。加えて、複数の中から任意に選択されたLED光源デバイス、撮像装置、双眼ルーペ、制御ユニット等を任意に着脱自在に搭載することができ汎用性の高い医療用ヘッドマウントである。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、外科手術等の際に医療施術者が頭部に装着して被施術者の施術部位に光を照射するLED光源デバイス等を着脱可能に装着可能な医療用ヘッドマウントに関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0073】
1 本発明に係る医療用ヘッドマウント
11 第1調整手段
12A 第2調整手段(スライドノブ式)
12B 第2調整手段(回転ノブ式)
13 制御ユニット
14 LED光源デバイス
16 光量調整手段
21 周回ベルト
22 縦ベルト
23 LED光源装着部
24 撮像装置装着部
25 双眼ルーペ装着部
26 制御ユニット装着部
30 撮像装置
50 双眼ルーペ
60 VRディスプレイ
70 ベルトパワーパック
72 (大容量の)バッテリー
73 制御ユニット
75 ジャック
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13