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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】金型交換装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/04 20060101AFI20240328BHJP
   B21D 5/02 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B21D37/04 R
B21D5/02 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022144577
(22)【出願日】2022-09-12
(65)【公開番号】P2024039877
(43)【公開日】2024-03-25
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】晩田 光貴
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-122972(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063579(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/017540(WO,A1)
【文献】特開2000-071028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/04
B21D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げ加工機の上部テーブルに固定され、前記上部テーブルに設けられた上金型ホルダに沿って左右方向に延在する上部ガイドと、
前記上部ガイドに案内されて前記左右方向に移動し、前記上金型ホルダに対して上金型を配置する上金型交換部と、
前記曲げ加工機の下部テーブルに固定され、前記下部テーブルに設けられた下金型ホルダに沿って前記左右方向に延在する下部ガイドと、
前記下部ガイドに案内されて前記左右方向に移動し、前記下金型ホルダに対して下金型を配置する下金型交換部と、を備え、
前記上部テーブルが前記下部テーブルに対して相対的に接近してワークに対して曲げ加工を行う場合、前記上金型交換部及び前記下金型交換部は、それぞれ前記曲げ加工機の加工範囲である前記上金型ホルダ及び前記下金型ホルダよりも前記左右方向の一方側の前記上部ガイド及び前記下部ガイドに移動して、互いに前記左右方向に離隔したそれぞれの基準位置で待機し、
前記上金型交換部及び前記下金型交換部は、前記基準位置にあるときに互いに対向する部位に、相手から離れる方向に逃げる逃げ部を有する
金型交換装置。
【請求項2】
前記上金型交換部は、互いに独立して動作する左右の上金型交換ユニットを含み、
前記上金型交換部の前記逃げ部は、前記下金型交換部側に位置する一方の上金型交換ユニットに設けられ、
前記下金型交換部は、互いに独立して動作する左右の下金型交換ユニットを含み、
前記下金型交換部の前記逃げ部は、前記上金型交換部側に位置する一方の下金型交換ユニットに設けられている
請求項1記載の金型交換装置。
【請求項3】
前記上金型交換部は、左右対称に構成された左右の上金型交換ユニットを含み、
前記上金型交換部の前記逃げ部は、前記左右の上金型交換ユニットにそれぞれ設けられ、
前記下金型交換部は、左右対称に構成された左右の下金型交換ユニットを含み、
前記下金型交換部の前記逃げ部は、前記左右の下金型交換ユニットにそれぞれ設けられている
請求項1記載の金型交換装置。
【請求項4】
前記左右の上金型交換ユニットのそれぞれは、前記上金型の交換動作を行うための機構が搭載される矩形状の上部ベースプレートを有し、
前記左右の上金型交換ユニットにそれぞれ設けられる前記逃げ部は、前記上部ベースプレートにおいて上下方向に延びる鉛直縁部に設けられ、
前記左右の下金型交換ユニットのそれぞれは、前記下金型の交換動作を行うための機構が搭載される矩形状の下部ベースプレートを有し、
前記左右の下金型交換ユニットにそれぞれ設けられる前記逃げ部は、前記下部ベースプレートにおいて上下方向に延びる鉛直縁部に設けられる
請求項2又は3記載の金型交換装置。
【請求項5】
前記曲げ加工機の前記左右方向の一方側には、前記上金型及び前記下金型を収納する金型収納装置が配置され、
前記上金型交換部は、前記上金型ホルダと前記金型収納装置との間で、前記上金型の交換を行い、
前記下金型交換部は、前記下金型ホルダと前記金型収納装置との間で、前記下金型の交換を行う
請求項1記載の金型交換装置。
【請求項6】
前記上部ガイド及び前記下部ガイドは、前記金型収納装置の前側までそれぞれ延在しており、
前記基準位置は、前記金型収納装置の前側に位置する
請求項5記載の金型交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキなどの曲げ加工機と、曲げ加工機の側方に隣接配置された金型収納装置との間で、金型交換装置を用いて金型を自動で交換する技術が知られている。例えば特許文献1には、下部テーブルに設けられた下金型ホルダ(金型装着部)に下金型を配置する下金型交換部と、上部テーブルに設けられた上金型ホルダ(金型装着部)に上金型を配置する上金型交換部と、を備えた金型交換装置が開示されている。
【0003】
曲げ加工機が曲げ加工を行う場合、上金型交換部及び下金型交換部は、曲げ加工の加工範囲との干渉を避ける必要がある。そのため、上金型交換部及び下金型交換部は、加工範囲よりも側方にある金型収納装置の前側に設定された基準位置でそれぞれ待機する。また、曲げ加工時の上部テーブルの上下方向の移動に連動して、上金型交換部も下金型交換部に対して上下方向に移動する。そのため、上金型交換部の基準位置及び下金型交換部の基準位置は、互いの干渉を避けるために左右方向に離隔した位置に設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-083673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
とこで、大型機械である加工機においても省スペース化が求められており、金型収納装置における左右方向のサイズについても小型化が望まれている。すなわち、上金型交換部の基準位置と下金型交換部の基準位置とが接近する傾向にある。上金型交換部と下金型交換部との間に十分な隔たりが確保できない場合には、上金型交換部と下金型交換部との間にある物体と、上金型交換部及び下金型交換部とが干渉してしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、曲げ加工機の上部テーブルに固定され、上部テーブルに設けられた上金型ホルダに沿って左右方向に延在する上部ガイドと、上部ガイドに案内されて左右方向に移動し、上金型ホルダに対して上金型を配置する上金型交換部と、曲げ加工機の下部テーブルに固定され、下部テーブルに設けられた下金型ホルダに沿って左右方向に延在する下部ガイドと、下部ガイドに案内されて左右方向に移動し、下金型ホルダに対して下金型を配置する下金型交換部と、を備え、上部テーブルが下部テーブルに対して相対的に接近してワークに対して曲げ加工を行う場合、上金型交換部及び下金型交換部は、曲げ加工機の加工範囲よりも左右方向の一方側に移動して、互いに左右方向に離隔したそれぞれの基準位置で待機し、上金型交換部及び下金型交換部は、基準位置にあるときに互いに対向する部位に、相手から離れる方向に逃げる逃げ部を有する金型交換装置である。
【0007】
本発明の一態様によれば、上金型交換部及び下金型交換部がそれぞれ逃げ部を有しているので、上金型交換部と下金型交換部とが上下方向に接近した場合でも、上金型交換部と下金型交換部との間には、空間的な隔たりが確保される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、上金型交換部と下金型交換部との間にある空間的な隔たりにより、上金型交換部及び下金型交換部が物体に対して干渉することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る金型交換装置を含む曲げ加工システムの構成を模式的に示す正面図である。
図2図2は、金型収納装置の要部を示す斜視図である。
図3図3は、右側の上金型交換ユニットを示す正面図である。
図4図4は、左側の下金型交換ユニットを示す正面図である。
図5図5は、基準位置で待機する左右の上金型交換ユニット及び左右の下金型交換ユニットを示す説明図である。
図6図6は、図5に対して左右を反転させた基準位置で待機する左右の上金型交換ユニット及び左右の下金型交換ユニットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本実施形態に係る金型交換装置について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る金型交換装置を含む曲げ加工システムの構成を模式的に示す正面図である。以下の説明では、方向の定義として、左右方向、前後方向、及び上下方向を用いる。左右方向及び前後方向は、水平方向において直交する2つの方向に対応し、上下方向は鉛直方向に対応する。図1において、紙面手前側が前方向に相当し、紙面奥側が後方向に相当する。もっとも、これらの方向は、曲げ加工機の構成を説明するために、便宜的に用いられるに過ぎない。
【0012】
金型交換装置5は、曲げ加工機1の上部テーブル14に固定され、上部テーブル14に設けられた上金型ホルダ20に沿って左右方向に延在する上部ガイド57と、上部ガイド57に案内されて左右方向に移動し、上金型ホルダ20に対して上金型4を配置する上金型交換部と、曲げ加工機1の下部テーブル12に固定され、下部テーブル12に設けられた下金型ホルダ18に沿って左右方向に延在する下部ガイド58と、下部ガイド58に案内されて左右方向に移動し、下金型ホルダ18に対して下金型2を配置する下金型交換部、を備える。上部テーブル14が下部テーブル12に対して相対的に接近してワークWに対して曲げ加工を行う場合、上金型交換部及び下金型交換部は、曲げ加工機1の加工範囲よりも左右方向の一方側に移動して、互いに左右方向に離隔したそれぞれの基準位置で待機する。上金型交換部及び下金型交換部は、基準位置にあるときに互いに対向する部位に、相手から離れる方向に逃げる逃げ部555、565を有している。
【0013】
つぎに、曲げ加工システムの詳細について説明する。曲げ加工システムは、曲げ加工機1と、金型交換装置5と、金型収納装置6と、を備えている。
【0014】
曲げ加工機1は、例えばプレスブレーキであり、下金型2と上金型4との協働により、板金などの板状のワークWに対して曲げ加工を行う加工機である。
【0015】
曲げ加工機1は、一対のサイドプレート10と、下部テーブル12と、上部テーブル14と、テーブル駆動機構16と、を備えている。
【0016】
一対のサイドプレート10は、左右方向に離隔して配置されている。一対のサイドプレート10の下部には、左右方向に延びた下部テーブル12が設けられ、一対のサイドプレート10の上部には、左右方向に延びた上部テーブル14が設けられている。上部テーブル14は、上下方向に移動可能に構成されている。個々のサイドプレート10の上部には、上部テーブル14を上下方向に移動させるテーブル駆動機構16が設けられている。テーブル駆動機構16は、例えば油圧シリンダであるが、サーボモータなどでもよい。上部テーブル14は、下部テーブル12に対して相対的に移動可能であればよく、曲げ加工機1は、上部テーブル14を固定した状態で、下部テーブル12を上下方向へ移動させるように構成されていてもよい。
【0017】
下部テーブル12の上側には、ダイなどの下金型2を着脱可能に保持する下金型ホルダ18が設けられている。下金型ホルダ18は、曲げ加工機1の加工範囲の全域をカバーするように、左右方向に沿って延在している。下金型ホルダ18には、下金型2のシャンク部(基部)を挿入するためのホルダ溝が左右方向に沿って形成されている。下金型ホルダ18は、下金型2を固定するクランプ機構を有している。
【0018】
上部テーブル14の下側には、パンチなどの上金型4を着脱可能に保持する上金型ホルダ20が設けられている。上金型ホルダ20は、曲げ加工機1の加工範囲の全域をカバーするように、左右方向に沿って延在している。上金型ホルダ20には、上金型4のシャンク部(基部)を挿入するためのホルダ溝が左右方向に沿って形成されている。上金型ホルダ20は、上金型4を固定するクランプ機構を有している。
【0019】
曲げ加工機1の右側には、金型収納装置6が隣接して設けられている。金型収納装置6は、複数の下金型2及び複数の上金型4を収納する。
【0020】
図2は、金型収納装置の要部を示す斜視図である。金型収納装置6は、本体フレーム60と、複数の下金型ストッカ65と、複数の上金型ストッカ67と、を備えている。
【0021】
本体フレーム60は、前後方向に延びるベースフレーム60aと、ベースフレーム60aに対して起立する支柱60bと、を備えている。
【0022】
複数の下金型ストッカ65は、本体フレーム60に設けられた下部支持フレーム60dに支持されており、下部支持フレーム60dに沿って前後方向に並んでいる。個々の下金型ストッカ65は、左右方向に延在し、1つ以上の下金型2を保持している。個々の下金型ストッカ65は、下金型2の先端(刃先)が上向きとなる姿勢で、下金型2を保持している。
【0023】
複数の上金型ストッカ67は、本体フレーム60に設けられた上部支持フレーム60eに支持されており、上部支持フレーム60eに沿って前後方向に並んでいる。個々の上金型ストッカ67は、左右方向に延在しており、1つ以上の上金型4を保持している。個々の上金型ストッカ67は、上金型4の先端(刃先)が下向きとなる姿勢で、上金型4を保持している。
【0024】
図1に示す金型交換装置5は、金型収納装置6と上金型ホルダ20との間で上金型4の交換を行うとともに、金型収納装置6と下金型ホルダ18との間で下金型2の交換を行う。金型収納装置6は、上金型ステーション70と、下金型ステーション80と、を備えている。
【0025】
上金型ステーション70は、金型収納装置6の上側に配置されている。上金型ステーション70は、本体フレーム60の上側に配設された、前後方向に延びるステーションフレーム60cに片持ち支持されている。上金型ステーション70をステーションフレーム60cによって片持ち支持することで、一対のフレームによって両端支持する構成に比べて、本体フレーム60、ひいては金型収納装置6を左右方向に小型化することができる。
【0026】
図2では上金型ステーション70は省略されているが、上金型ステーション70は、上下方向及び前後方向に移動可能に構成されている。上金型ステーション70は、複数の上金型ストッカ67の中から、任意の上金型ストッカ67を取り出す。上金型ステーション70は、取り出した上金型ストッカ67を上下方向及び前後方向に移動することによって、この上金型ストッカ67を所定の上金型交換位置に位置決めすることができる。上金型交換位置は、上金型ホルダ20の右側に隣接する位置に設定されている。
【0027】
下金型ステーション80は、金型収納装置6の下側に配置されている。下金型ステーション80は、上下方向及び前後方向に移動可能に構成されている。下金型ステーション80は、複数の下金型ストッカ65の中から、任意の下金型ストッカ65を取り出す。下金型ステーション80は、取り出した下金型ストッカ65を上下方向及び前後方向に移動することによって、この下金型ストッカ65を所定の下金型交換位置に位置決めすることができる。下金型交換位置は、下金型ホルダ18の右側に隣接する位置に設定されている。
【0028】
図1に示すように、金型交換装置5は、左右の上金型交換ユニット55L、55Rと、左右の下金型交換ユニット56L、56Rと、上部ガイド57と、下部ガイド58と、を備えている。
【0029】
左右の上金型交換ユニット55L、55Rは、上金型ホルダ20に対して上金型4を配置する上金型交換部を構成している。具体的には、左右の上金型交換ユニット55L、55Rは、上金型交換位置に位置決めされた上金型ストッカ67(図1では省略)から上金型ホルダ20への上金型4の移動、上金型ホルダ20における上金型4の位置決めなどを行う。左右の上金型交換ユニット55L、55Rは、上部テーブル14の後側に設けられている。
【0030】
上部ガイド57は、上部テーブル14の後側に固定されている。上部ガイド57は、上金型ホルダ20に沿って左右方向に延在している。上部ガイド57の左右端は、上金型ホルダ20よりも左右方向に延在している。例えば、上部ガイド57の右端は、金型収納装置6の右端側まで延在している。
【0031】
左右の下金型交換ユニット56L、56Rは、下金型ホルダ18に対して下金型2を配置する下金型交換部を構成している。具体的には、左右の下金型交換ユニット56L、56Rは、下金型交換位置に位置決めされた下金型ストッカ65(図1では省略)から下金型ホルダ18への下金型2の移動、下金型ホルダ18における下金型2の位置決めなどを行う。左右の下金型交換ユニット56L、56Rは、下部テーブル12の後側に設けられている。
【0032】
下部ガイド58は、下部テーブル12の後側に固定されている。下部ガイド58は、下金型ホルダ18に沿って左右方向に延在している。下部ガイド58の左右端は、下金型ホルダ18よりも左右方向に延在している。例えば、下部ガイド58の右端は、金型収納装置6の右端側まで延在している。
【0033】
曲げ加工機1は、制御装置100を有している。制御装置100は、曲げ加工機1、金型交換装置5の動作を制御する装置である。制御装置100は、例えばNC(Numerical Control:数値制御)装置などのコンピュータである。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)などのハードウェアプロセッサと、メモリと、各種のインターフェースと、を主体に構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。
【0034】
コンピュータには、所定のコンピュータプログラムがインストールされている。ハードウェアプロセッサがコンピュータプログラムを実行することにより、コンピュータは、制御装置100が備える複数の機能を実行する。
【0035】
以下、左右の上金型交換ユニット55L、55Rの構造について説明する。左右の上金型交換ユニット55L、55Rは、左右対称に構成されているため、以下、右側の上金型交換ユニット55Rを例示して説明を行う。図3は、右側の上金型交換ユニットを示す正面図である。
【0036】
上金型交換ユニット55Rは、上部ベースプレート550と、上金型保持機構551と、上部スライダ552と、上部移動機構553と、を備えている。
【0037】
上部ベースプレート550は、上金型4の交換動作を行うための機構が搭載されるための板材である。この機構には、上金型保持機構551及び上部移動機構553が含まれる。
【0038】
上金型保持機構551は、上金型4を保持するための上金型保持部材551aと、この上金型保持部材551aを前後方向及び上下方向へ移動する空気圧シリンダなどのアクチェエータと、を含んでいる。
【0039】
上部スライダ552は、上部ガイド57に対して摺動可能に取り付けられる。上金型交換ユニット55Rは、上部スライダ552を介して左右方向へ移動することができる。
【0040】
上部移動機構553は、上金型交換ユニット55Rを左右方向へ移動させる。上部移動機構553は、サーボモータ、減速機、上部ガイド57のラック部材と噛み合うピニオンギアなどを含んでいる。
【0041】
以下、上部ベースプレート550の構造について説明する。上部ベースプレート550は、上下方向に延びる一組の鉛直縁部550a、550bと、左右方向に延びる一組の水平縁部550c、550dと、を含んでいる。4つの縁部550a、550b、550c、550dのうち、右側の鉛直縁部550a及び下側の水平縁部550cは、上金型交換ユニット55Rの全体における右下側の外縁を形成している。
【0042】
小型化の観点から、上金型交換ユニット55Rを構成する各機構は集約してレイアウトされており、上部ベースプレート550自体も小型化が図られている。すなわち、右側の鉛直縁部550aは、上部ベースプレート550の機能及び強度を満たす範囲で、可能な限り左側の鉛直縁部550bへと近づくように設計されている。同様に、下側の水平縁部550cは、上部ベースプレート550の機能及び強度を満たす範囲で、可能な限り上側の水平縁部550dへと近づくように設計されている。
【0043】
右側の鉛直縁部550aの一部には切欠きが設けられ、段差状に形成されている。すなわち、鉛直縁部550aの下側領域550a1は、鉛直縁部550aの上側領域550a2よりも左方向にオフセットしている。このため、右側の鉛直縁部550aと下側の水平縁部550cとが接続するコーナー部も左方向へとオフセットしている。
【0044】
このような段差形状により、右側の鉛直縁部550aには、この鉛直縁部550aの一部(下側領域550a1)が左方向に逃げる逃げ部555が設けられることになる。ただし、この逃げ部555は、右側の鉛直縁部550aの段差形状に起因する構造と捉えることもできるが、下側の水平縁部550cの段差形状に起因する構造と捉えることも可能である。すなわち、下側の水平縁部550cにも、水平縁部550cの一部(右側領域)が上方向に逃げる逃げ部555が設けられることになる。
【0045】
つぎに、左右の下金型交換ユニット56L、56Rの構造について説明する。左右の下金型交換ユニット56L、56Rは、左右対称に構成されているため、以下、左側の下金型交換ユニット56Lを例示して説明を行う。図4は、左側の下金型交換ユニットを示す正面図である。
【0046】
下金型交換ユニット56Lは、下部ベースプレート560と、下金型保持機構561と、下部スライダ562と、下部移動機構563と、を備えている。個々の要素は、上金型交換ユニット55Rにおける上部ベースプレート550と、上金型保持機構551と、上部スライダ552と、上部移動機構553と同様である。
【0047】
つぎに、下部ベースプレート560の構造について説明する。下部ベースプレート560は、上下方向に延びる一組の鉛直縁部560a、560bと、左右方向に延びる一組の水平縁部560c、560dと、を含んでいる。4つの縁部560a、560b、560c、560dのうち、左側の鉛直縁部560a及び上側の水平縁部560cは、下金型交換ユニット56R全体における左上側の外縁を形成している。
【0048】
小型化の観点から、下金型交換ユニット56Lを構成する各機構は集約してレイアウトされており、下部ベースプレート560自体も小型化が図られている。すなわち、左側の鉛直縁部560aは、下部ベースプレート560の機能及び強度を満たす範囲で、可能な限り右側の鉛直縁部560bへと近づくように設計されている。同様に、上側の水平縁部560cは、下部ベースプレート560の機能及び強度を満たす範囲で、可能な限り下側の水平縁部560dへと近づくように設計されている。
【0049】
左側の鉛直縁部560aの一部には切欠きが設けられ、段差状に形成されている。すなわち、鉛直縁部560aの上側領域560a1は、鉛直縁部560aの下側領域560a2よりも右方向にオフセットしている。このため、左側の鉛直縁部560aと上側の水平縁部560cとが接続するコーナー部も右方向へとオフセットしている。
【0050】
このような段差形状により、左側の鉛直縁部560aには、この鉛直縁部560aの一部(上側領域560a1)が右方向に逃げる逃げ部565が設けられることになる。ただし、この逃げ部565は、左側の鉛直縁部560aの段差形状に起因する構造と捉えることもできるが、上側の水平縁部560cの段差形状に起因する構造と捉えることも可能である。すなわち、上側の水平縁部560cにも、水平縁部560cの一部(左側領域)が下方向に逃げる逃げ部565が設けられることになる。
【0051】
図5は、基準位置で待機する左右の上金型交換ユニット及び左右の下金型交換ユニットを示す説明図である。このような構造の曲げ加工システムでは、上部テーブル14が下部テーブル12に向かって下方向に移動してワークWに対して曲げ加工を行う。曲げ加工を行う場合、左右の上金型交換ユニット55L、55Rは、曲げ加工機1の加工範囲よりも右側方に移動して、基準位置で待機する。同様に、左右の下金型交換ユニット56L、56Rも、曲げ加工機1の加工範囲よりも右側方に移動して、基準位置で待機する。
【0052】
左右の上金型交換ユニット55L、55Rの基準位置、及び左右の下金型交換ユニット56L、56Rの基準位置は、金型収納装置6の前側にそれぞれ設定されている。左右の上金型交換ユニット55L、55Rが基準位置にある場合、両者は互いに接近した状態で横並びとなる。同様に、左右の下金型交換ユニット56L、56Rが基準位置にある場合、両者は互いに接近した状態で横並びとなる。
【0053】
左右の上金型交換ユニット55L、55Rの基準位置、及び左右の下金型交換ユニット56L、56Rの基準位置は、左右方向に離隔している。これにより、左右の上金型交換ユニット55L、55Rは、左右の下金型交換ユニット56L、56Rよりも左側に存在し、逆に、左右の下金型交換ユニット56L、56Rは、左右の上金型交換ユニット55L、55Rよりも右側に存在する。より具体的には、右側の上金型交換ユニット55Rは、左側の下金型交換ユニット56Lよりも左側に存在し、左側の下金型交換ユニット56Lは、右側の上金型交換ユニット55Rよりも右側に存在する。
【0054】
それぞれの金型交換ユニット55L、55R、56L、56Rが基準位置にあるとき、右側の上金型交換ユニット55Rの右下側の外縁は、左側の下金型交換ユニット56Lに対して対向する。逆に、左側の下金型交換ユニット56Lの左上側の外縁は、右側の上金型交換ユニット55Rに対して対向する。右側の上金型交換ユニット55Rの右下側の外縁を造形する上部ベースプレート550には、左側の下金型交換ユニット56Lから離れる方向(左方向及び上方向)に逃げる逃げ部555が存在する。同様に、左側の下金型交換ユニット56Rの左上側の外縁を造形する下部ベースプレート560には、右側の上金型交換ユニット55Rから離れる方向(右方向及び下方向)に逃げる逃げ部565が存在している。
【0055】
このため、上部テーブル14が下部テーブル12に対して最も接近した位置に到達した場合でも、右側の上金型交換ユニット55Rと左側の下金型交換ユニット56Lとの間には、上下方向に対して距離S1及び左右方向に対して距離S2となる空間的な隔たりが確保される。これにより、右側の上金型交換ユニット55Rと左側の下金型交換ユニット56Lとの干渉を抑制することができる。加えて、右側の上金型交換ユニット55Rと左側の下金型交換ユニット56Lとの間に物体が進入したとしても、この物体に対する右側の上金型交換ユニット55Rと左側の下金型交換ユニット56Lとの干渉を抑制することができるのである。
【0056】
このように、本実施形態の金型交換装置5において、上金型交換部は、左右対称に構成された左右の上金型交換ユニット55L、55Rを含み、上金型交換部の逃げ部555は、左右の上金型交換ユニット55L、55Rにそれぞれ設けられる。また、下金型交換部は、左右対称に構成された左右の下金型交換ユニット56L、56Rを含み、下金型交換部の逃げ部565は、左右の下金型交換ユニット56L、56Rにそれぞれ設けられている。
【0057】
この構成によれば、上述した通り、対向する関係にある上金型交換部と下金型交換部との干渉、ひいては、上金型交換部と下金型交換部との間にある物体との干渉も抑制することができる。
【0058】
図6は、図5に対して左右を反転させた基準位置で待機する左右の上金型交換ユニット及び左右の下金型交換ユニットを示す説明図である。図6に示すように、左右の上金型交換ユニット55L、55Rの基準位置と、左右の下金型交換ユニット56L、56Rの基準位置とを左右反転させた状況を想定する。本実施形態の金型交換装置5によれば、基準位置が左右反転した状況であっても、互いに対向する左側の上金型交換ユニット55Lと右側の下金型交換ユニット56Rとの間には、上下方向に対して距離S1及び左右方向に対して距離S2となる空間的な隔たりが確保される。これにより、左側の上金型交換ユニット55Lと右側の下金型交換ユニット56Rとの干渉、ひいては、左側の上金型交換ユニット55Lと右側の下金型交換ユニット56Rとの間にある物体との干渉も抑制することができる。このため、必要に応じて、左右の上金型交換ユニット55L、55Rの基準位置と、左右の下金型交換ユニット56L、56Rの基準位置と左右反転させるといった運用も可能となる。
【0059】
なお、上金型交換部の逃げ部555は、下金型交換部側にある一方の上金型交換ユニット55L、55Rにのみ設けられてもよい。同様に、下金型交換部の逃げ部565は、上金型交換部側にある一方の下金型交換ユニット56L、56Rにのみ設けられてもよい。
【0060】
本実施形態において、逃げ部555は、上部ベースプレート550において上下方向に延びる鉛直縁部550aに設けられ、逃げ部565は、下部ベースプレート560において上下方向に延びる鉛直縁部560aに設けられている。
【0061】
この構成によれば、左右の上金型交換ユニット55L、55Rのなかで、左右の下金型交換ユニット56L、56Rと対向する部位に逃げ部555を設定することができる。同様に、左右の下金型交換ユニット56L、56Rのなかで、左右の上金型交換ユニット55L、55Rと対向する部位に逃げ部565を設定することができる。これにより、対向する関係にある上金型交換部と下金型交換部との干渉、ひいては、上金型交換部と下金型交換部との間にある物体との干渉も抑制することができる。
【0062】
本実施形態において、曲げ加工機1の右側には、上金型4及び下金型2を収納する金型収納装置6が配置される。上金型交換部は、上金型ホルダ20と金型収納装置6との間で、上金型4の交換を行う。下金型交換部は、下金型ホルダ18と金型収納装置6との間で、下金型2の交換を行う。
【0063】
そして、上部ガイド57及び下部ガイド58は、金型収納装置6の前側までそれぞれ延在しており、基準位置は、金型収納装置6の前側に位置している。
【0064】
省スペース化の要請により、金型収納装置6の左右方向のサイズも小型化される傾向にある。そのため、基準位置にいるときの上金型交換部と下金型交換部との相対的な距離が近くなる。しかしながら、本実施形態によれば、逃げ部555、565の存在により、上金型交換部と下金型交換部との干渉、ひいては、上金型交換部と下金型交換部との間にある物体との干渉も抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、左右の上金型交換ユニット55L、55Rを構成する各機構は集約してレイアウトされており、左右の上金型交換ユニット55L、55Rについても小型化が図られている。左右の上金型交換ユニット55L、55Rのサイズが大きい場合、右側の上金型交換ユニット55Rが上部ガイド57の右端まで移動したとしても、左側の上金型交換ユニット55Lが右側まで寄せきれず、上金型保持部材551aの位置が相対的に左側に存在することになる。このため、上金型交換位置に位置決めされた上金型ストッカ67において右端にある上金型4よりも、左側の上金型交換ユニット55Lの上金型保持部材551aが左側に位置し、左側の上金型交換ユニット55Lで右端の上金型4を保持することができないということが考えられる。この点、本実施形態に係る左右の上金型交換ユニット55L、55Rによれば、ユニット全体が小型化されているので、左側の上金型交換ユニット55Lをより右側まで移動させることができる。これにより、左右いずれの上金型交換ユニット55L、55Rであっても右端の上金型4を保持することができる。その結果、上金型交換ユニット55L、55Rによる上金型4の配置を効率的に行うことができる。なお、このようなメリットは、左右の下金型交換ユニット56L、56Rであって同様である。
【0066】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0067】
1 曲げ加工機
12 下部テーブル
14 上部テーブル
16 テーブル駆動機構
18 下金型ホルダ
20 上金型ホルダ
2 下金型
4 上金型
5 金型交換装置
55L、55R 上金型交換ユニット
550 上部ベースプレート
551 上金型保持機構
552 上部スライダ
553 上部移動機構
555 逃げ部
56L、56R 下金型交換ユニット
560 下部ベースプレート
561 下金型保持機構
562 下部スライダ
563 下部移動機構
565 逃げ部
57 上部ガイド
58 下部ガイド
70 上金型ステーション
80 下金型ステーション
6 金型収納装置
60 本体フレーム
65 下金型ストッカ
67 上金型ストッカ
100 制御装置
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6