(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】可動指示器付きカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/095 20060101AFI20240328BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240328BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20240328BHJP
【FI】
A61M25/095
A61M25/00 650
A61M25/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022165468
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2020517836の分割
【原出願日】2017-09-28
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】ステイプルトン,コーリー・イー
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,クレア
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0068190(US,A1)
【文献】特開2005-312615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0186461(US,A1)
【文献】特表平07-506509(JP,A)
【文献】米国特許第04757616(US,A)
【文献】米国特許第05657764(US,A)
【文献】特表2003-531675(JP,A)
【文献】特開2015-042272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/095
A61M 25/10
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置を行うための装置であって、当該装置が、
カテーテルであって、その端部分までの距離を示す複数の標識を有する管状本体を含むカテーテルと、
ヒンジにより接続された2つの部分的に円形である本体部分を含む指示器であって、前記指示器が更に解放可能なクランプを備え、前記解放可能なクランプは、作動されたときに前記本体部分を閉じさせて、より小さな直径を形成するようになっており、前記指示器は前記複数の標識のうちの少なくとも1つの位置を示すために前記管状本体上で再位置決め可能であり、拡大鏡を備え
、前記拡大鏡が前記標識を大きく見えるように使用され、かつ、前記カテーテルの前記端部分までの距離を決定するまたは示すための止め具として機能する、指示器と、
前記カテーテルを受け入れるための入口を有する導入器であって、前記指示器が前記入口の直径よりも大きい外径を有する、導入器と、
を備
え、
前記拡大鏡は前記本体部分に組み込まれている、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記指示器が、前記管状本体上に移動可能に位置決めされるカラーを備える、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記指示器が本体を備え、前記本体が、前記カテーテル上に前記本体を固定するための解放可能なクランプを含む、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
前記本体が、ヒンジによって連結された2つの部分を含む、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、
前記指示器が、コンプライアンス性のある内側材料を含む、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
前記指示器が、前記カテーテルの前記管状本体を部分的にのみ包囲する、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
前記カテーテルが、遠位先端に隣接したバルーンを含み、前記複数の標識のそれぞれが、前記バルーンの一部分または前記遠位先端のどちらかまでに対応する距離を示す、装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
前記指示器が、前記
管状本体に沿って摺動するように適合される、装置。
【請求項9】
医療処置を行うための装置であって、当該装置が、
少なくとも1つの印を有する管状本体を含むカテーテルと、
指示器であって、前記指示器は摺動可能に前記管状本体に係合し、前記管状本体に選択的に固定可能であり、前記指示器がヒンジにより接続された2つの部分的に円形である本体部分を含み、前記指示器は更に解放可能なクランプを含み、前記解放可能なクランプは、作動されたときに前記本体部分を閉じさせて、より小さな直径を形成するようになっている、指示器と、
を備え、
前記指示器が前記少なくとも1つの印を拡大するための、前記管状本体に接続された拡大鏡
を備え、前記拡大鏡が前記印を大きく見えるように使用され、かつ、前記カテーテルの端部分までの距離を決定するまたは示すための止め具として機能し、
前記拡大鏡は前記本体部分に組み込まれている、装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の装置であって、
前記指示器が、コンプライアンス性のある内側材料を含む、装置。
【請求項11】
請求項
9に記載の装置であって、
前記印が、数字を含む、装置。
【請求項12】
標識を有するカテーテルのための指示器であって、当該指示器が、
管状本体を備え、前記管状本体がヒンジにより接続された2つの部分的に円形である本体部分によって構成され、前記管状本体は解放可能なクランプを備え、前記解放可能なクランプは、作動されたときに前記本体部分を閉じさせて、より小さな直径を形成するようになっており、前記解放可能なクランプは前記カテーテルに前記管状本体を固定するためのものであり、前記管状本体が、前記カテーテルの前記標識を拡大するための拡大鏡を備
え、前記拡大鏡が前記標識を大きく見えるように使用され、かつ、前記カテーテルの端部分までの距離を決定するまたは示すための止め具として機能し、
前記拡大鏡は前記本体部分に組み込まれている、指示器。
【請求項13】
請求項
12に記載の指示器であって、
前記管状本体が、コンプライアンス性のある内側材料を含む、指示器。
【請求項14】
キットであって、当該キットが、
少なくとも1つの印を有する管状本体を含む第1のカテーテルであって、その上の第1の位置を示すための再位置決め可能な第1の指示器を含み、前記再位置決め可能な第1の指示器が、ヒンジにより接続された2つの部分的に円形である本体部分からなり、当該指示器が更に解放可能なクランプを備え、前記解放可能なクランプは、作動されたときに前記本体部分を閉じさせて、より小さな直径を形成するようになっ
ており、前記第1の指示器が前記第1のカテーテルの前記少なくとも1つの印を拡大するための、前記再位置決め可能な第1のカテーテルの前記管状本体に接続された拡大鏡であり、前記第1のカテーテルの前記拡大鏡が前記第1のカテーテルの前記少なくとも1つの印を大きく見えるように使用され、かつ、前記第1のカテーテルの端部分までの距離を決定するまたは示すための止め具として機能し、前記再位置決め可能な第1の指示器の拡大鏡が前記再位置決め可能な第1の指示器の前記本体部分に組み込まれている、第1のカテーテルと、
少なくとも1つの印を有する管状本体を含む第2のカテーテルであって、前記第1の位置に対応する前記第2のカテーテル上の第2の位置を示すための再位置決め可能な第2の指示器を
含み、前記再位置決め可能な第2の指示器が前記第2のカテーテルの前記少なくとも1つの印を拡大するための、前記第2のカテーテルの前記管状本体に接続された拡大鏡を備え、前記第2のカテーテルの前記拡大鏡が前記第2のカテーテルの前記印を大きく見えるように使用され、かつ、前記第2のカテーテルの端部分までの距離を決定するまたは示すための止め具として機能し、前記再位置決め可能な第2の指示器の拡大鏡が前記再位置決め可能な第2の指示器の前記本体部分に組み込まれている、第2のカテーテルと、
を備える、キット。
【請求項15】
請求項
14に記載のキットであって、
前記
再位置決め可能な第1
の指示器および前記
再位置決め可能な第2
の指示器のうちの少なくとも一方が、拡大鏡を含む、キット。
【請求項16】
請求項
14に記載のキットであって、
前記第1のカテーテルおよび前記第2のカテーテルのうちの少なくとも一方が、バルーンを支持する管状本体を有する、キット。
【請求項17】
請求項
14に記載のキットであって、
前記第1および第2のカテーテルが、前記カテーテルの遠位端部分までの距離を示す複数の整合された標識を有する近位端部分を含む、キット。
【請求項18】
請求項1に記載の装置であって、前記指示器がヒンジにより接続された2つの部分的に円形である本体部分を含み、前記指示器が更に解放可能なクランプを備え、前記解放可能なクランプは、作動されたときに前記本体部分を閉じさせて、より小さな直径を形成するようになっている、装置。
【請求項19】
請求項
18に記載の装置であって、前記本体部分のうちの少なくとも1つが前記拡大鏡を含み、前記拡大鏡がレンズを含む、装置。
【請求項20】
請求項
18に記載の装置であって、前記2つの部分的に円形である本体部分の両方が本体を構成し、前記本体が、拡大する能力を有する材料で形成されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は一般に、血管形成術などの介入医療処置に関し、より詳細には(膨張式バルーンなどの)治療器具(treatment)と治療領域との適切な位置合わせを確実にするのを支援するように適合されたカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]バルーンを含むカテーテルは、動脈または静脈などの身体の管状領域内の流量制限、または、おそらく、完全な閉塞ですら解消または対処するために日常的に使用されている。血管形成処置を行う臨床医は、バルーンが膨張したときに適切に位置決めされるように、膨張していないバルーンの位置を正確に特定することができるべきである。これは、バルーン作業面の端部に対応するカテーテルシャフト上に放射線不透過性のマーカ帯を取り付けることにより、慣例的に達成される。この「作業面」は、石灰化プラークに接触することなどの所望の治療効果を得るために使用されるバルーンの部分に沿った表面である(この表面は、近位端部および遠位端部において円錐形または先細の区間を有するバルーンの場合、典型的には、全体的に円筒状のバレル区間と同一の広がりを持つ)。
【0003】
[0003]しかし、シャフトに沿った設置中のマーカ帯の位置ずれにより、それらが作業面の範囲に正確に対応することができなくなることが時折ある。この位置ずれは、介入処置中に臨床医がバルーンの作業面の位置を正確に認識するのを妨げる可能性がある。また、第1のカテーテルを使用する事前拡張に続いて第2のカテーテルを使用する拡張が行われるときなどの、連続的な血管内治療介入が行われる場合、臨床医は、どこで事前拡張が起こったかを推測しなければならない。いずれにせよ、この不確かさは、意図された治療領域とバルーンの作業面との間での意図された接触の位置不整合(geographic misalignment)、すなわち、「ミス(的外れ)」につながり得る。そのような結果を避けることが特に望ましいのは、バルーンがペイロード(治療薬(例えば、パクリタキセル、ラパマイシン、ヘパリン、などのような薬物)、薬物、ステント、ステントグラフト、または組合わせなど)または作業要素(カッター、フォーカスドフォースワイヤ(focused force wire)、など)を脈管構造内の特定の位置まで送達するように設計されている場合である。ミスにより、少なくとも処置が(例えば、バルーンの再配置を必要とすること、または薬物被覆バルーンの場合には別のバルーンカテーテルの使用を必要とすることなどにより)長引き、また、位置ずれの結果として病変が適切に治療されなかった場合に予後不良がもたらされる可能性があるからである。
【0004】
[0004]再現可能かつ確実なやり方でカテーテルを挿入することを容易にするために、カテーテルシャフトの近位部分上に可視標識を設けることが提案されてきた。そのような処置中での蛍光透視法(又はX線透視法等)の使用により、介入性カテーテルは、典型的には、極めて低光量の状況において用いられる。そのような状況下では、標識は、とりわけ特に小さいサイズ(例えば、おおよそ1.3335mm(0.0525インチ)である、4フレンチ径)を有するカテーテルの場合、認識するのが困難であり得る。小型のカテーテルはまた、小さい周囲表面積を有し、これは、当然ながら、提供される測定値に関して正確さをなおも維持しながら使用され得る印刷のサイズを制限する。
【0005】
[0005]したがって、向上された正確さで、また、再現性が極めて高く信頼のおけるやり方でバルーンカテーテルを治療領域において脈管構造内に位置決めするための方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]本発明の1つの目的は、カテーテル上の標識の位置を示すための可動指示器を提供することである。別の目的は、カテーテル上の(数字などの)印が臨床医に大きく表示または見やすくするための可動指示器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本開示の第1の態様によれば、医療処置を行うための装置が提供される。装置は、カテーテルの端部分までの距離を示す複数の標識を有する管状本体を含むカテーテルと、複数の標識のうちの少なくとも1つの位置を示すための、管状本体上で再位置決め可能な指示器と、を備え得る。
【0008】
[0008]1つの実施形態では、指示器は、管状本体上に(摺動するかまたは再移動されて再位置決めされることなどにより)移動可能に位置決めされるカラーを備える。指示器は、拡大鏡をさらに備え得る。指示器は、カテーテル上に本体を固定するための解放可能なクランプを含む本体を有し得る。本体は、ヒンジによって連結された2つの部分、またはコンプライアンス性のある内側材料を含み得る。
【0009】
[0009]装置は、カテーテルを受け入れるための入口を有する導入器をさらに含むことができ、指示器は、入口の直径よりも大きい外径を有し得る。カテーテルは、遠位先端に隣接したバルーンを備えてもよく、複数の標識のそれぞれは、バルーンの一部分または遠位先端のどちらかまでに対応する距離を示す。指示器はまた、管状本体を部分的にのみ包囲してもよい。
【0010】
[0010]本開示のさらなる態様は、医療処置を行うための装置に関する。装置は、少なくとも1つの標識を有する管状本体を含むカテーテルと、少なくとも1つの標識を拡大するための、管状本体に接続された拡大鏡と、含む。
【0011】
[0011]1つの実施形態では、拡大鏡は、管状本体上に移動可能に位置決めされるカラーを備える。カラーは、クランプを含む本体を備え得る。本体は、ヒンジによって連結された2つの部分を含んでもよく、また、コンプライアンス性のある内側材料を含んでもよい。
【0012】
[0012]本開示のさらなる態様は、標識を有するカテーテルのための指示器に関する。指示器は、カテーテルに管状本体を固定するための解放可能なクランプを含む管状本体を備える。管状本体は、カテーテルの標識を拡大するための拡大鏡をさらに備える。
【0013】
[0013]1つの実施形態では、管状本体は、第1および第2の部分を備える。これらの部分は、一方の端部ではヒンジによって連結され、他方の端部では解放可能なクランプによって連結され得る。管状本体はまた、コンプライアンス性のある内側材料を含み得る。
【0014】
[0014]本開示のなおもさらなる態様は、(1)第1のカテーテルであって、その上の第1の位置を示すための再位置決め可能な第1の指示器を含む第1のカテーテルと、(2)第2のカテーテルであって、第1の位置に対応する第2のカテーテル上の第2の位置を示すための再位置決め可能な第2の指示器を含む第2のカテーテルと、を備えるキットに関する。第1の可動指示器および第2の可動指示器のうちの少なくとも一方は、拡大鏡を含み得る。さらに、第1のカテーテルおよび第2のカテーテルのうちの少なくとも一方は、バルーンを支持する管状本体を有する。
【0015】
[0015]本明細書に組み込まれて本明細書の一部を形成する添付の図面は、可動指示器を含むカテーテルのいくつかの態様を示すものであり、また、記述と一緒に、その特定の原
理を説明する働きをするものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】[0016]バルーンを含む部分的カテーテルの斜視図である。
【
図2】[0017]
図1の線2-2に沿った断面図である。
【
図3】[0018]バルーンカテーテルの上面斜視図である。
【
図4】[0019]バルーンカテーテルの側面図である。
【
図5】[0020]シャフトに沿って標識が付いたバルーンカテーテルの側面図である。
【
図6】シャフトに沿って標識が付いたバルーンカテーテルの側面図である。
【
図7A】[0021]本開示による可動指示器が付いたバルーンカテーテルのあり得る使用モードを概略的に示す図である。
【
図7B】本開示による可動指示器が付いたバルーンカテーテルのあり得る使用モードを概略的に示す図である。
【
図8】[0022]可動指示器を含むバルーンカテーテルの拡大側面図である。
【
図9】可動指示器を含むバルーンカテーテルの拡大側面図である。
【
図11】[0024]位置合わせされた可動指示器を含む2つのカテーテルの側面図である。
【
図12】[0025]拡大鏡を有する可動指示器を含むカテーテルの部分的に破断された側面図である。
【
図13】[0026]拡大鏡付きの可動指示器の1つの実施形態の斜視図である。
【
図14】拡大鏡付きの可動指示器の1つの実施形態の斜視図である。
【
図15】拡大鏡付きの可動指示器の1つの実施形態の側面図である。
【
図16】[0027]提案された拡大の使用者によって与えられる改善を示す、異なる直径を有する2つの隣接したカテーテルの図である。
【
図17】提案された拡大の使用者によって与えられる改善を示す、異なる直径を有する2つの隣接したカテーテルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0028]次に、添付の図面にその例が示されている可動指示器付きカテーテルの発明性のある態様のただ今開示される実施形態を詳細に参照する。
[0029]図に関して以下に提供される説明は、特段の記述がない限り全ての実施形態に適用され、また、各実施形態に共通の特徴は、同じように図示されかつ番号付けされる。
【0018】
[0030]カテーテルチューブ14上にバルーン12が取り付けられた遠位部分11を有するカテーテル10が提供され、カテーテルチューブ14は、バルーンを選択的に膨張させる際に使用する流体を受け入れるための少なくとも1つの開口端部を有する管状本体である。
図1、2、および3を参照すると、バルーン12は、中間区間16、すなわち作業面Wを有する「バレル」と、端部区間18、20とを有する。1つの実施形態では、端部区間18、20は、中間区間16をカテーテルチューブ14に接合するために直径が減少する(したがって、区間18、20は一般に、錐体、または錐体区間と呼ばれる)。バルーン12は、カテーテルチューブ14内に延在しかつバルーン12の内部と連通する1つまたは複数の膨張用内腔17を介したバルーン12の膨張を可能にするために、端部区間18、20上のバルーン端部(近位端部15aおよび遠位端部15b)において、カテーテルチューブ14に封着される。
【0019】
[0031]カテーテルチューブ14はまた、ガイドワイヤ26をカテーテル10に通すガイドワイヤ用内腔23を形成する、細長い管状のシャフト24を含む。
図3に示されるように、このガイドワイヤ26は、「オーバーザワイヤ」(OTW:over the wire)構成を得るために、ハブ27などのコネクタの第1のポート25を通して内腔23
内に挿入され得るが、ガイドワイヤ26が、遠位端部により近い側方開口部14a(
図4参照)を介して内腔に侵入する「迅速交換」構成で提供されてもよい。また、第2のポート29が、膨張用内腔17を介してバルーン12の内部に流体(例えば、生理食塩水、造影剤、またはその両方)を導入するために、コネクタ(例えば、ハブ27)などによりカテーテル10に関連付けられ得る。
【0020】
[0032]バルーン12は、単層または多層のバルーン壁28を含み得る。バルーン12は、バルーンが膨張したときに1つまたは複数の方向においてそのサイズおよび形状を維持するバルーン壁28を有する、コンプライアンス性のないバルーンであってもよい。そのような場合、バルーン12はまた、膨張中および膨張後に一定のままである所定の表面積を有し、さらに、膨張中および膨張後にそれぞれがまたはどちらも一定のままである、所定の長さおよび所定の周径を有する。しかし、バルーン12は代わりに、具体的な使用法に応じて、半コンプライアンス性のものまたはコンプライアンス性のあるものであってもよい。カテーテル10はまた、限定されることなしに、ステント、ステントグラフト、スコアリングバルーン、などを含む様々な治療器具に関連して使用され得る。
【0021】
[0033]介入処置中の位置特定性能(locatability)の強化を実現するために、カテーテル10は、チューブ14沿いなどの、処置中身体の外部にある部分沿いに標識30を備え得る。
図5に示されるように、標識30は、帯(これは、以下でさらに概説されるように、数字による距離指示器に関連付けられ得る)などの、離間された複数の印32を含み得る。これらの印32は、コネクタ27付近から、バルーン12の近位端部15aまで、またはバルーン12の任意の部分(これは、バルーン12を含む遠位部分とは対照的に、カテーテル10の「近位部分」と見なされる)まで、延在し得る。印32は、均等に、または不均等に離間され得る(例えば、印は、シャフト24の長さに沿って徐々に接近してもよい)。印32は、例えば
図5に示されるような黒色などの単色のものとされ得るが、
図6に示されるように、異なる色調または色で設けられてもよい。印32はまた、数字、文字、または記号(
図8~9および16~17参照)によって識別される目盛りを含む定規を形成する、ハッシュ線(hash line)を含み得る。あるいは、またはさらに、標識30は、直接目に見えないときでも計数され得るノッチ、突起、隆起、凹部、または同様の構造物などの形態で、触覚による関与を可能にする態様で設けられ得る。
【0022】
[0034]使用に際して、また、
図7Aおよび7Bを参照すると、標識30を含むカテーテル100が、病変Lを含むものとして示されている特定の治療領域Aまで血管V内に挿入され得る。その部位の事前拡張診断を提供することなどのためである。カテーテル100は、放射線不透過性の性質を(関連するバルーン112の下層にあってバレル区間116の端部を画定するか、あるいはバルーン表面上またはバルーン表面内に設けられる、1つまたは複数の帯102を設けることなどにより)有することができ、この性質は、治療領域Aに対するバルーンの位置を特定するために、蛍光透視法に関連して使用され得る。これは、帯102の位置または同等にあらゆる種類の放射線不透過性のマーカの位置が治療領域Aの位置に相当することを意味することを、当業者(skilled reader)は
図7Aおよび7Bから理解するであろう。
【0023】
[0035]この時点で、臨床医は、治療が行われている身体の外部の位置にある標識30を見て、カテーテル100が治療領域Aに導入された量を推定することができる。これは、具体的な距離(示された実施形態では、コネクタ27から基準点Rまでの距離であるX)を表わす導入器Iの近位縁部などの基準点Rに対して、導入器Iの外部にある印32を計数すること(
図5の実施形態の場合)または特定の特徴(
図6の実施形態の場合、特定の印32’の色または色調)に注意することを伴い得る。
【0024】
[0036]次いで、治療領域Aに治療器具T(薬物、ステント、ステントグラフト、バルーン212、または組合わせ)を提供するために、同様の標識30を含む第2のカテーテルまたは治療用カテーテル200が使用される。このカテーテル200は、対応する印32’が前もって決定された基準点Rと一致するまで導入器Iに通されてもよく、基準点Rは、カテーテル100、200が同様の長さのものである場合には、やはり距離Xに対応し得る)。当業者は、そのような位置決め方法によりバルーンの作業面と治療領域Aとが実質的に一致することを、この説明から理解する。これにより、臨床医は、意図されたやり方で治療領域Aに治療が適用されることを確かめられ、また、位置不整合の問題を回避するのに役立つ。次いで、第2のカテーテル200のバルーン212を膨張させて病変Lを圧縮すること、および/またはステントもしくはステントグラフトを配置することなどにより、治療が提供され得る。場合により、第2のカテーテル200のバルーン212の位置の確認を支援するために、帯202などの放射線不透過性マーカが設けられ得る。
【0025】
[0037]本開示の1つの態様によれば、特定の印32の位置(これは、遠位先端、または作業面などのバルーン12上の位置までの距離に対応し得る)などのカテーテル10上の位置を示すために、可動指示器が設けられ得る。1つの実施形態では、可動指示器は、導入の深さを制御するために使用され得る、カテーテル10に関連付けられた止め具300を含む。
図8および9に示されるように、止め具300は、バルーン12または治療を提供するための他のデバイスなどの関連する構造の位置の表示を提供するために、相対運動を選択的に可能にする態様で、チューブ14などのカテーテルシャフトによって支持され得る。
【0026】
[0038]
図10に示されるように、止め具300は、チューブ14などのカテーテル10の一部を受け入れるための中央開口部を含むカラー(collar)の形で、環状の構造を備え得る。止め具300は、ハブ27に隣接した位置からバルーン12の近位端部15aにより近い近位位置までなどと、長手方向Yにおいて往復摺動するように配置され得る。したがって、理解され得るように、止め具300は、チューブ14の外径に実質的に等しいかそれよりもわずかに大きい内径を有し得る。止め具300をカテーテル10に沿って移動させるのに適度な量の力を必要とする十分な抵抗(これは、比較的高い摩擦係数を有する材料の使用によって得ることまたは高めることができ、臨床医の手による力を入力しないかぎり自由に摺動することを防ぐのに十分なものを意味する)を生じさせるためである。さらに、止め具300は、その外側の大きさに関して、チューブ14(バルーン12が存在するのであれば、バルーン12を含む)近位端部部分を受け入れるための導入器I(例えば、
図10に示されるような入口E(弁と呼ばれることもある)を取り囲むもの)など、動作制御のための関連デバイスの周辺部分に係合するのに十分なサイズまたは直径のものとされ得る。
[0039]
図7Aに戻り参照すると、1つの可能な使用モードでは、カテーテル10は、適切な位置が維持されることを保証する位置まで止め具300が移動された状態で、印32を使用して、望ましい位置に位置決めされ得る。しかし、止め具は、カテーテル10が挿入される前に、事前位置決めされてもよい。いずれの場合でも、治療のための正確な位置にカテーテル10を設けることまたは維持することは、距離に対応する印または任意の関連する数値表示を認識する臨床医の能力と関係なく、導入器Iとの係合の結果として保証される。止め具300はまた、その後の介入時に同じカテーテル10を同じ正確な位置に再導入することを容易にし得る。さらに、止め具300は、その摺動する性質を考慮すると、同じカテーテル10を使用するその後の介入に必要とされるのであれば、下層のチューブ14によって生じる摩擦力を克服することにより、容易に再位置決めされ得る。
【0027】
[0040]
図10に示されるように、また、上記のように、止め具300は、使用時にカテーテル10の対応する部分(チューブ14)を包囲する、環状の材料の単一部品を含み得る。あるいは、止め具300は、カテーテル10の一部分を部分的にのみ包囲してもよく
、したがって(
図10において破線302で示されるように)半円形の構造を形成してもよい。この構成では、止め具300を形成する材料は、再位置決めされるための往復摺動運動を許容する形で止め具300がチューブ14沿いなどでカテーテル10上にスナップ留めまたはクリップ留めされ得るように、弾力性のあるもの(エラストマ(ゴム)などの、ポリマー材料)とされ得る(しかし、この場合もやはり、選択された位置が処置中に確実に維持されることを保証するために十分な抵抗を伴う)。指示器として機能する止め具300はまた、以下の説明でさらに概説されるように、解放可能なクランプの形態を取ることができる。
【0028】
[0041]止め具300は、安価な(ポリマーなどの)材料から作られてもよく、したがって、使用し終えたら(使用は、述べたように、医療処置の過程において、単回使用または複数回使用であり得る)カテーテル10と一緒に廃棄されてもよい。上述のように、サイズおよび材料はまた、手動での再位置決めのために望まれたときに相対運動が可能であるが休止状態中は位置を示すために相対運動が阻止されるように、十分な摩擦を作り出すように設計されるべきである。材料はまた、折り畳まれたバルーンなどのカテーテル10の端部上の任意の拡大された構造体を止め具300が通り越すことを可能にするように十分に柔軟であるかまたは拡張可能であってもよく、または、材料は、製造工程中に任意のそのような拡大された構造体が取り付けられる前にカテーテル10上に設けられてもよい。
【0029】
[0042]全医療処置の一部として1人の患者に対して2つのカテーテル100、200が一緒に使用され得る上記のような状況では、最初の介入およびその後の介入時に正確な挿入距離が達成されることを確実にするために止め具300などの指示器が各カテーテル上に設けられ得ることもまた、理解され得る。
図11に示されるように、これは、各カテーテル100、200上に止め具300a、300bを設けることと、処置に先立って各止め具を対応する距離に合わせることとを伴い得る。理解され得るように、止め具300a、300bはまた、いかなる標識も含まないカテーテル100、200上に互いに対応するように配置されてもよく、当然ながら、挿入距離が一致することを確実にするようになおも機能するはずである。止め具300a、300bを含むカテーテル100、200はまた、事前拡張介入などの処置中での使用のために、また、拡張のために、単一のキットとして提供され得る。
【0030】
[0043]本開示のさらなる態様によれば、カテーテル10はまた、とりわけ低光量条件下においておよび/または特に小径のカテーテルが用いられる場合に、臨床医が表示を認識するのを支援するために、カテーテル10上の任意の印の見やすくするかまたは大きく見えるようにされ得る。
図12に示されるように、1つの実施形態では、この機能は、拡大鏡400の形態をした指示器によって提供され、この拡大鏡400は、止め具300のように、カテーテル10に沿ってチューブ14上などに位置決めされ得る。
図13、14、および15を参照すると、拡大鏡400は、カテーテル10を受け入れるための管状または環状の本体402と、拡大窓またはレンズ404とを含むことができ、この拡大窓またはレンズ404を通して、チューブ14沿いなどのカテーテルの表面部分が、提供された引伸ばしまたは拡大の結果として、拡大された形で認識され得る。したがって、カテーテルを使用する臨床医は、上述のように距離測定値に対応する数値表示を含み得る印32を使用して、脈管構造内でのカテーテル10の適切な位置決めを確信することができる。
【0031】
[0044]さらに
図13、14、および15に示されるように、本体402は、連結された部分402a、402bで形成される2部品構成を含むことができ、部分402a、402bは部分的に円形であるように示されているが、他の形状を取ることもできる。連結は、ヒンジ406(これは、相互嵌合する部分によって形成されるものとして示されているが、可撓性ヒンジまたはリビング(一体成形)ヒンジ(すなわち、一体蝶番)であってもよい)によって確立されてもよく、また、解放可能なクランプ408が設けられて、作動されたときには本体部分402a、402bを閉じさせてカテーテル10の外部表面を把持するためのより小さな直径を形成し、解放されたときには再位置決めを可能にするための拡大された直径を形成してもよい。このようにして、拡大鏡400は、チューブ14沿いなどのカテーテル10上での位置決めのために広げられ、適切な距離測定値がレンズ404(これは、本体402に組み込まれた透明なプラスチック材料を含み得るが、本体全体が、拡大する能力を有する材料で形成されてもよい)を通して目に見えるときに要望通りに位置決めされて、使用中はその位置のままとされ得る。実際、拡大鏡400は、止め具300と同じように機能することもでき、したがって、導入器などの関連する構造体の対応する部分との係合の結果として適切な挿入距離が達成される(
図7Aおよび7B参照)ことを確実にすることが、理解され得る。場合により、部分402a、402b沿いなどの本体402の内部表面もまた、クランプ408がチューブ14上で固定されるときにある程度の弾力性をもたらし、それにより直径の不一致にもかかわらず様々なカテーテルと関連した使用を可能にするために、比較的柔軟なまたはコンプライアンス性のある材料(例えば、PEBAX材料などのポリエーテルブロックアミド)で覆われてよい。
【0032】
[0045]
図16および17は、拡大鏡400の使用によって与えられる改善点の本質を示す。
図16に示された第1のカテーテル500は、4フレンチ径であり、第2のカテーテル600は、5フレンチ径である。数字Nは、4フレンチバージョン上でははるかに小さく、通常の照明下でも認識するのが困難であることが、理解され得る。拡大レンズ404を含む指示器を第1のカテーテル500上に設置することは、標識を実質的に拡大表示し(拡大された数字N’参照)、その標識を、少なくとも、より大きい第2のカテーテル600上の数字と同じくらい大きくして、とりわけ低光量条件下でもはるかに認識しやすくする。
【0033】
[0046]要するに、カテーテル10は、関連する可動指示器によって決定されるような特定の距離だけ脈管構造内に挿入されるように適合されたものである。1つの実施形態では、指示器は、特定の標識30などと関連付けられたカテーテル10沿いの特定の距離に印を付けるために使用され得る、再位置決め可能な止め具300を含む。別の実施形態では、指示器は、再位置決め可能な拡大鏡400であり、この拡大鏡400は、挿入距離を示すためのシャフトまたはチューブ14などに沿ったカテーテル上の任意の印を大きく見えるようにするために使用されてもよく、また、拡大鏡400は、関連するカテーテルのための挿入距離を決定するまたは示すための止め具として機能してもよい。
【0034】
[0047]本開示は、本発明の概念を例示ために、特定の実施形態を提示するが、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲(sphere and scope)から逸脱することなしに、説明された実施形態に対する多数の修正、改変、および変更が可能である。例えば、拡大機能は、
図11のキットに使用される止め具300a、300bに適用されてもよい。指示器(止め具300または拡大鏡400)はまた、低光量条件での可視性を助長するために、光輝性材料または化学発光性材料で形成されるか、または照らされてもよい。種々の実施形態において提供されたいかなる範囲および数値も、公差に起因する変化、環境要因および材料品質のばらつきに起因する変化、ならびに構造およびバルーンの形状の修正に起因する変化を受けやすく、したがって、近似であると見なされてよく、また、用語「おおよそ」は、関連する値が少なくともそのような要因により変動し得ることを意味する。また、図面は、本発明の概念を例示しているが、正確な縮尺ではなく、また、いかなる具体的なサイズまたは寸法にも限定されるべきではない。したがって、本開示は、説明された実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の用語によって定められる全範囲とその均等物とを含むことが、意図されている。