(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】温度安定性を向上させたFGF7ポリペプチドおよびその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 14/50 20060101AFI20240328BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20240328BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240328BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240328BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240328BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240328BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240328BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240328BHJP
【FI】
C07K14/50 ZNA
A61K38/18
A61P9/00
A61P3/04
A61P1/02
A61P17/02
A61Q19/08
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2022212265
(22)【出願日】2022-12-28
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】10-2022-0025352
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518304915
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ オーシャン サイエンス テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ヒョン-スン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,キョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,イェ ウン
(72)【発明者】
【氏名】チャ,キウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウォン キュ
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-020575(JP,A)
【文献】特表平10-507452(JP,A)
【文献】Protein Engineering, Design and Selection,2006年,19(4),147-153
【文献】International Journal of Peptide Research and Therapeutics,2022年03月29日,28:85
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 14/50
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で、120番目のアラニン(A)がシステイン(C)で置換され、
126番目のリシン(K)がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)で置換されることか、178番目のリシン(K)がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)で置換されることのうちから選択された少なくとも一つ以上の置換を含んで175番目のアルギニン(R)と塩橋を形成し、
133番目のシステイン(C)と137番目のシステイン(C)とが二硫化結合さ
れ、
配列番号1のN末端で2~54番目のアミノ酸を欠失した(Δ53N)配列を有し、
FGF7活性を有する温度安定性が向上した(thermally stable)ポリペプチド。
【請求項2】
前記126番目のリシン(K)がグルタミン酸(E)で置換され、
前記178番目のリシン(K)がグルタミン酸(E)で置換された
配列を有する、請求項1に記載の温度安定性が向上したポリペプチド。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の温度安定性が向上したポリペプチド、および、薬剤学的にまたは化粧用に許容可能な担体を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、温度安定性を向上させたFGF7ポリペプチドおよびその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
FGF(Fibroblast Growth Factor)は、細胞の成長、増殖、分化を調節する重要な役割を果たす因子である。人体の各組織の機能を維持するために多様な種類のFGFが生成され、これらは細胞の分化と増殖に固有の機能を果たしている。しかし、老化が進行するにつれて皮膚など各組織でFGFの濃度は漸進的に低まり、これにより細胞の再生および分裂機能が弱化して皮膚にシワが形成され弾力が減少するようになる。
【0003】
多様なFGFのうち、FGF7(Fibroblast Growth Factor 7)はケラチノサイト成長因子とも呼ばれ、これは哺乳類細胞で強い上皮細胞-特異的成長因子と知られている。また、FGF7は皮膚再生、細胞増殖および細胞分化を調節することにおいて重要な役割を果たす。
【0004】
FGF7は、放射線治療後口腔炎治療剤として既に市販されているだけでなく、傷治癒を促進させる医薬品として開発されているだけでなく、皮膚再生、シワ除去、または弾力増加のための化粧品原料としても広く使用されている。
【0005】
FGF1、FGF2、FGF7、そしてFGF10をはじめとするFGF familyは、温度に対する安定性が非常に低くて24時間水溶液状態で静置時、常温以上の温度条件でその活性が急激に消失して活性損失が深刻に発生することが報告されている。
【0006】
したがって、人体内で多様な機能を有するFGF7が産業的な用途に適するように使用されるためには、FGF7の熱力学的安定性が担保されることが必須の条件である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、温度安定性を向上させたFGF7ポリペプチドを提供しようとする。本開示は、温度安定性を向上させたFGF7ポリペプチドを含む薬剤学的または化粧用組成物を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による温度安定性を向上させたFGF7ポリペプチドは、配列番号1で、120番目のアラニン(A)がシステイン(C)で置換され、126番目のリシン(K)がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)で置換されることか、178番目のリシン(K)がグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)で置換されることのうちから選択された少なくとも一つ以上の置換を含んで175番目のアルギニン(R)と塩橋を形成し、133番目のシステイン(C)と137番目のシステイン(C)とが二硫化結合された、FGF7活性を有する温度安定性が向上した(thermally stable)ポリペプチドである。
【0009】
実施形態による組成物は、温度安定性を向上させたポリペプチド、および、薬剤学的にまたは化粧用に許容可能な担体を含む。
【発明の効果】
【0010】
実施形態によるFGF7ポリペプチドは、製品製造後に野生型ヒトFGF7ポリペプチドと比較時、向上した温度安定性を示す。温度安定性を向上させたポリペプチドは、流通と保管過程中にも、既存の野生ヒトFGF7製品と異なり活性維持が可能である。したがって、これを、薬剤学的または化粧用組成物の有効性分として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】野生型FGF7のポリペプチド(配列番号1)である。
【
図2】野生型FGF7で配列の番号2~54を欠失させpCold I siteを含むΔ53N-hFGF7配列を示す。
【
図3】還元および非還元サンプルに対して得られた基本ピーククロマトグラムを示す。
【
図4】二硫化結合ペプチド(ECNEDCNFK、550.194 Da、+2電荷)の細部断片スペクトルを示す。
【
図5】FGF7の野生型と突然変異体とについて、3D構造とリボン構造とを示す。
【
図6】FGF7突然変異体のリボン構造で、R175とK126Eの間の距離、および、R175とK178Eの間の距離を、スイスモデルサーバーを用いて測定した結果を示す。
【
図8】野生型FGF7(Δ30N_hFGF7)およびΔ53N_hFGF7(palifermin)と、FGF7変異体(Δ53N_hFGF7(A120C)、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K178E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E、K178E))とについて、37℃での安定性を測定するためのSDS-PAGEを示す。
【
図9】野生型FGF7(Δ30N_hFGF7)およびΔ53N_hFGF7(palifermin)と、FGF7変異体(Δ53N_hFGF7(A120C)、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K178E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E、K178E))とについて、SDS-PAGEに残っているタンパク質バンドの密度を時間によって測定した結果を示すグラフである。
【
図10】野生型FGF7(Δ30N_hFGF7)およびΔ53N_hFGF7(palifermin)と、FGF7変異体(Δ53N_hFGF7(A120C)、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K178E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E、K178E))とについて、45℃での安定性を測定するためのSDS-PAGEを示す。
【
図11】野生型FGF7(Δ30N_hFGF7)およびΔ53N_hFGF7(palifermin)と、FGF7変異体(Δ53N_hFGF7(A120C)、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K178E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E、K178E))とについて、45℃での安定性を測定するためのSDS-PAGEに残っているタンパク質バンドの密度を時間によって測定した結果を示すグラフである。
【
図12】野生型FGF7(Δ30N_hFGF7)およびΔ53N_hFGF7(palifermin)と、FGF7変異体(Δ53N_hFGF7(A120C)、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K178E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E、K178E))とについて、45℃での細胞増殖活性の変化を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように実施形態について詳細に説明する。実施形態は様々の異なる形態に実現でき、ここで説明する具体的な実施形態にのみ限定されない。
【0013】
本開示で使用される一部用語の定義が以下で別に定義されない限り、本願に使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者が通常理解するところと同一な意味を有する。
【0014】
本開示で記述された技法および工程は、一般に通例的な方法によって行われ、これは本願全体に提示される。一般に、本開示に使用された命名および分子生物学、生化学、分析化学および細胞培養での実験手続は、当該技術分野で広く公知されており通常使用されるところと同一である。
【0015】
[変異体]
本開示は、部位特異的な突然変異誘発によって熱的に安定化されたFGF7ポリペプチドを提供する。本開示では、生物情報分析およびコンピュータを用いたタンパク質設計を通じて、従来知られていなかった新規位置で最も適したアミノ酸を合理的に予測した後、部位-特異的な突然変異誘発によって、突然変異させた配列で構成された遺伝子およびポリペプチドを製造した。
【0016】
図1は、野生型ヒトFGF7のポリペプチド配列を示す。
【0017】
本開示で、用語「野生型」は、種の構成員で最も共通的なアミノ酸配列を有する天然型FGF7を意味する。本開示で、野生型FGF7は、アミノ酸194個の長さの(配列番号1、
図1)タンパク質であるヒトFGF7である。
【0018】
本開示で、「断片」は、FGF7活性を有するFGF7ポリペプチドの機能性断片を称する。また、配列番号1の配列と85%以上の配列同一性を有するFGF7ポリペプチドの機能性断片を称する。FGF7ポリペプチドの断片はまた、本発明による一つ以上の置換を少なくとも有する。少なくとも96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性が好ましい。断片は、完全なポリペプチド配列および構造の一部のみから構成されるポリペプチドであると意図され、変異体のC-末端欠損またはN-末端欠損が存在してもよい。このような機能性断片は、本発明による対象FGF7タンパク質の細胞結合領域とヘパリン結合セグメントとを保有することができる。
【0019】
本開示で、「配列同一性」は、同一なアミノ酸残基が、前述のような本発明によるFGF7ポリペプチドで発見されることを意味する。FGF7ポリペプチドのアミノ酸配列の明示された連続セグメントを整列して、基準分子に該当する特定アミノ酸配列と比較した時、野生型ヒトFGF7ポリペプチドが基準として使用される。配列同一性の%は、両側配列で同一なアミノ酸残基が存在する位置の数を測定することによって一致した位置の数を算定し、これを基準分子と比較するセグメントの全体位置個数で割り、これに100をかけて、配列同一性の%を算出することによって、計算する。配列整列方法は、当該技術分野でよく知られている。本願に使用される基準配列は、本発明による特定の対応するヒト野生型FGF7タンパク質を称する。例えば、マウス、ラット、ウサギ、霊長類、豚、犬、牛、馬、およびヒトなどの哺乳類種の場合、FGF7は高度に保存されており、広範囲な種で85%以上の配列同一性を示す。好ましくは、配列同一性は、少なくとも96%、97%、98%、または99%以上または100%である。当該技術分野の当業者であれば、本発明によるFGF7タンパク質の全長で残り15%以下のアミノ酸は、例えば、FGF7種の他のソースを用いるか、または、当該技術分野で一般に知られた適した非-FGF7ペプチド配列若しくはタグの付加によって、可変的であってもよいのを、理解するはずである。FGFファミリーの他のメンバーは一般に非常に低い配列同一性を有するので、野生型FGF7に対して85%以上の同一性を有する本発明の実施形態によるFGF7タンパク質が、類似のFGF7以外の他のタンパク質を含む可能性は低い。
【0020】
本発明者は、野生型ヒトFGF7で120番目位置と、126番目位置と、178番目位置とが、それぞれFGF7ポリペプチドの熱的安定性と関連した位置であるのを確認した。熱的安定性と関連した位置で最も適切なアミノ酸に換えることは、発明者の創意的努力(inventive step)を要することである。
【0021】
本発明者は、120番目位置のアラニン(A)をシステイン(C)で置換することにより、133番目位置のシステイン(C)と137番目位置のシステイン(C)とが形成する二硫化結合(disulfide bond)に近接して位置するようにすることによって、熱的安定性を向上させることができるのを確認した。
【0022】
また、126番目位置のリシン(K)をグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)で置換して、175番目位置のアルギニン(R)との塩橋(Salt bridge)形成を誘導して、熱的安定性をよりさらに向上させることができるのを確認した。
【0023】
また、178番目位置のリシン(K)をグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)で置換して、175番目位置のアルギニン(R)との塩橋形成を誘導して、熱的安定性をよりさらに向上させることができるのを確認した。
【0024】
本開示で可能な変異体は、下記表1に開示された多様な変異体のうちのいずれか一つであってもよい。
【0025】
【0026】
上記多様な変異体のうち、単一位置の突然変異も熱的安定性を向上させることができるが、2つ以上の突然変異が熱的安定性向上に好ましいものであり得る。さらに、3つの突然変異が、より熱的安定性向上に好ましいものであり得る。一般に、FGF7のコーディング遺伝子をクローニングした後、形質転換された有機体、好ましくは微生物で発現させる。宿主有機体は、発現条件でFGF7を生産するように外来遺伝子を発現する。また、合成組換えFGF7は、真核生物、例えば、酵母またはヒト細胞において作られてもよい。FGF7は、組換え生産方法によって194個のアミノ酸形態、2~54番を欠失させた141個のアミノ酸形態、1~30番を欠失させた164個のアミノ酸形態、または、これらの混合形態であってもよい。
図2には、配列の番号2~54を欠失させpCold I siteを含むΔ53N-hFGF7配列が、例示されている。この時合成されるポリペプチドは、2~54番が欠失した141個のアミノ酸の形態、または、pCold I siteの配列のうちの一番目であるメチオニン(M)が残った142個のアミノ酸の形態であってもよい。
【0027】
本願に提示された説明は、野生型FGF7での一部変化が、野生型タンパク質よりも高い温度安定性と長い半減期とを有するFGF7突然変異を構築することを、最初に立証する。
【0028】
本願に記述された置換を挿入するために使用される、本発明によるFGF7タンパク質は、本願に指定された基準を充足する限り、即ち、野生型FGF7の好ましい生物活性を保有しながら熱-安定化される限り、例えば、マウス、ラット、ウサギ、霊長類、豚、犬、牛、馬、鯨、およびヒトなどの任意の哺乳類に由来したものであってもよい。好ましくは、対象FGF7タンパク質は、ヒトソース(human source)に由来する。しかし、比較の基準として使用される配列番号1のヒトFGF7タンパク質のアミノ酸配列に対して、85%以上、最も好ましくは約96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の配列同一性を有する、哺乳類FGF7に対する全ての生物学的に活性である変異体が、本発明で使用できる。
【0029】
一部実施形態で、本願に記述された本発明による安定的なFGF7ポリペプチドは、検出、精製、特定組織または細胞へのタギング、改善された安定性、延長された活性、改善された発現などを容易に行うために使用することができる、当該技術分野で知られた任意の付加的なFGFペプチド以外の配列またはタグを、さらに含むことができる。
【0030】
[薬剤学的および化粧品組成物]
表1に開示されている多様な変異体は、薬剤学的にまたは化粧用に許容可能な担体と共に、薬剤学的および/または化粧品組成物として提供できる。
【0031】
表1に開示されている多様な変異体は、血管新生促進、傷治癒促進、軟骨形成若しくは骨形成の促進、若しくは神経発生促進を必要とする対象体に投与することができ、または、しわ改善、皮膚弾力改善、皮膚老化防止、脱毛防止若しくは発毛促進、皮膚保湿改善、シミ除去若しくはニキビ治療のような皮膚状態の改善を必要とする対象体に投与することができる。また、放射線治療後の口腔炎治療剤、頭頚部癌治療剤、移植片対宿主病治療剤などとして対象体に投与することができる。表1に開示されている多様な変異体は、「元の状態」形態で投与することができ、または、所望の場合、塩、エステル、アミド、前駆薬物、誘導体などの形態で投与することができ、但し、前記塩、エステル、アミド、前駆薬物または誘導体は薬理的に適し、即ち、本方法に効果的な物質から選択することができる。ペプチドの塩、エステル、アミド、前駆薬物および他の誘導体は、合成有機化学分野の熟練家に知られており、例えば、公知の標準手続を使用して製造することができる。
【0032】
表1に開示されている多様な変異体は、皮下投与、非経口投与、経口投与、経鼻投与(またはそうでなければ吸入による投与)、直腸投与、または局所投与のために、例えばエアゾール、クリーム、セラム(serum)、そしてパッチ形態の経皮投与型製品へと剤形化することができる。組成物は、投与方法によって多様な単位服用形態で投与することができる。適した単位服用形態は、非制限的に、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、ロゼンジ、座薬、パッチ、鼻腔スプレー、注射剤、移植可能持続放出剤形、脂質複合体などを含むことができる。
【0033】
表1に開示されている多様な変異体が、化粧用に許容可能な担体と組み合わせられて化粧品組成物を形成する場合、充填剤(例えば、ヒアルロン充填剤、ポリメチルメタクリレート(PMMA)マイクロ球体およびコラーゲン充填剤)などを追加的に含むことができる。本組成物は、好ましくは、局所、皮下、または経皮投与用であってもよい。
【0034】
本組成物は、注射用組成物であってもよい。
【0035】
本組成物は、コラーゲン(例えば、牛、豚、またはヒトコラーゲン)ヒアルロン酸を追加的に含むことができる。コラーゲンは合成コラーゲンであってもよく、ヒアルロン酸は、鶏冠または微生物の発酵産物であってもよい。
【0036】
本組成物は、麻酔剤(例えば、リドカイン)を追加的に含むことができる。
【0037】
本組成物は、皮膚クリーム(例えば、フェイスクリーム、ネッククリーム、ボディークリーム)であってもよい。
【0038】
本組成物は、セラムまたはトナー形態の液状型製剤であってもよい。
【0039】
本組成物は、ゲル状態の半固形製剤であってもよい。
【0040】
薬剤学的に許容可能な担体は、米国連邦若しくは州政府の管理機関によって承認されている他の一般に認識された薬局方で列挙されているもの、または、米国薬局方(USP)で使用、若しくは、動物(詳しくはヒト若しくは動物)に対して若しくはより詳しくはヒトに対して使用するためのものを含む。「担体」は、例えば、本開示で記載された1以上のペプチドと共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、補助剤、またはビヒクルを意味する。
【0041】
薬剤学的に許容可能な担体は、例えば、組成物を安定化させる又は表1に開示されている多様な変異体の吸収を増加若しくは減少させるものとして作用する、1以上の生理的に許容可能な化合物を含有することができる。生理的に許容可能な化合物は、下記を含むことができる:例えば、炭水化物(例えばグルコース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、マンニトール、レバン、またはデキストラン)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、保護および吸収増強剤(例えば、脂質)、ペプチドの掃除能または加水分解を減少させる化合物、または他の賦形剤、安定剤および/またはpH調節緩衝剤であってもよい。
【0042】
特に、錠剤、カプセル、ジェルカプセル(gel cap)などの製造で使用される他の生理的に許容可能な化合物は、非制限的に、結合剤、希釈剤/充填剤、崩壊剤、潤滑油、および懸濁化剤を含むことができる。
【0043】
経口服用形態(例えば、錠剤)を製造するために、賦形剤、任意の崩壊剤、結合剤、および任意の潤滑油などが表1に開示されている多様な変異体に付加され得られた組成物は、圧縮されてもよい。必要な場合、圧縮された生成物は、味を遮断するか腸での溶解または持続放出のために知られた方法を使用して、コーティングすることができる。
【0044】
表1に開示されている多様な変異体と剤形化できる他の生理的に許容可能な化合物は、微生物の成長または作用を防止することに特に有用な湿潤剤、乳化剤、分散剤または保存剤を含むことができる。賦形剤は、滅菌され汚染物質がない状態で使用することができる。
【0045】
表1に開示されている多様な変異体は、化粧品用途のための剤形に組み込まれて局所に塗布することができ、皮膚クリーム(例えば、フェイスクリーム、ネッククリーム、ボディークリーム)またはボディーローション、シワ-除去クリーム、保湿クリーム、アイクリーム、美白クリームとして剤形されるか、化粧品、日焼け止め、または保湿剤に組み込まれることができる。
【0046】
また、表1に開示されている多様な変異体は、充填剤、保湿剤、ビタミン(例えば、ビタミンE、ビタミンC)、および/または着色剤/染色薬を任意に追加的に含む剤形に組み込まれることができる。
【0047】
適した注射可能化粧品剤形は、1以上の充填剤物質と共に、表1に開示されている多様な変異体を組み込んだ剤形を、非制限的に含むことができる。注射可能化粧品シワ充填剤として使用可能な例示的な物質は、非制限的に、一時的(吸収性)充填剤、例えばコラーゲン(例えば、合成コラーゲン、牛コラーゲン、豚コラーゲン、ヒトコラーゲンなど)、ヒアルロン酸ゲル、カルシウムヒドロキシルリン灰石(典型的にゲルの形態で移植される)、またはポリ-L-乳酸(PLLA)などを含むことができる。
【0048】
ペプチドは、永久的(非吸収性)充填剤を含有する注射可能化粧品剤形にまた編入できる。例証的な「永久的」充填剤は、非制限的に、ポリメチルメタクリレートビーズ(PMMAマイクロ球体)を含むことができる。
【0049】
表1に開示されている多様な変異体は、真皮充填剤、注射可能剤形などに組み込まれるか共に投与できる:そのような注射可能剤形は、麻酔剤(例えば、リドカインまたはその類似体)を追加的に含むことができる。注射可能剤形は、実質的に滅菌されるか滅菌され/されるか皮下注射可能充填剤用管理機関指針に符合する。
【0050】
表1に開示されている多様な変異体は、当該技術で知られた任意の経路を使用して対象体に投与することができ、その経路は例えば、注射で(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、または真皮内)、吸入、経皮適用、直腸投与、膣投与、または経口投与を含む。好ましい投与経路は、皮下、経皮、または局所適用を含む。
【0051】
効果的な量の表1に開示されている多様な変異体は、局所(即ち、非全身)投与を通じて、例えば、末梢筋肉内、線上内、および皮下投与を非制限的に含む末梢投与によって投与することができる。
【0052】
表1に開示されている多様な変異体の投与は、任意の便利な方式、例えば、注射で、静脈内および動脈ステント(溶出ステント含む)、カテーテル、経口投与、吸入、経皮適用、直腸投与などであってもよい。
【0053】
表1に開示されている多様な変異体は、投与前に、例えば、前述のとおり、薬剤学的に許容可能な担体と共に剤形化することができる。薬剤学的に許容可能な担体は、投与される特定の組成物によって、だけでなく、組成物を投与するために使用された特定の方法によって部分的に決定される。
【0054】
対象体で投与された容量は、本願で記載された方法の脈絡から、経時的に前記対象体で有益な治療的反応(例えば、増加された皮下脂肪生成)に影響を与えるに十分でなければならない。容量は、用いられた特定のビヒクル/伝達方法の効能、投与部位、投与経路、および前記対象体の状態、だけでなく、治療される対象体の体重または表面積によって決定されるはずである。容量の大きさはまた、特定の対象体において特定のペプチドの投与を伴う任意の否定的な副作用の存在、性、および程度によって決定されるはずである。
【0055】
表1に開示されている多様な変異体は、当該分野の熟練家によく知られた標準方法によって全身に(例えば、経口で、または注射剤として)投与することができる。ペプチドは、ロゼンジ、エアゾールスプレー、口腔清潔剤、コーティングされた綿棒などのような多様な形態で口腔に投与することができる。多様な口腔、および舌下剤形も考慮することができる。表1に開示されている多様な変異体は、一定期間にわたって治療を提供するために注射剤として剤形化される時、デポ(depot)剤形で投与することができる。
【0056】
表1に開示されている多様な変異体は、例えば、皮膚表面に、局所病変または創傷に、手術部位などに局所に投与することができる。
【0057】
表1に開示されている多様な変異体は、従来の経皮薬物伝達システム、即ち、経皮「パッチ」を用いて皮膚を通じて伝達することができる。表1に開示されている多様な変異体は、典型的に皮膚に付着する薬物伝達装置として提供される積層された構造内に含有されてもよい。
【0058】
局所伝達のための他の剤形は、非制限的に、軟膏、ゲル、スプレー、流体、およびクリームを含む。軟膏は、典型的にワセリンまたは他の石油誘導体に基づいた半固形調製物であってもよい。他の担体またはビヒクルと同様に、軟膏基剤は、不活性であり、安定しており、無刺激であり未感作でなければならない。選択された表1に開示されている多様な変異体を含有するクリームは、典型的に粘性液体または半固体エマルジョン、時々水中油または油中水であってもよい。クリーム基剤は、典型的に水洗浄性であり、オイル相、乳化剤および水性相を含む。使用される特定軟膏またはクリーム基剤は、当該分野の熟練家によって認められるように、最適の薬物伝達のために提供されている基剤ある。
【0059】
表1に開示されている多様な変異体は、希釈のために準備された保存容器(例えば、予め測定された体積で)内に、または、多量の水、アルコール、過酸化水素、若しくは他の希釈剤への添加のために準備された可溶性カプセル内に、「濃縮物」として提供されてもよい。例えば、前記ペプチドは、以後再構成のために凍結乾燥することができる。
【0060】
表1に開示されている多様な変異体は、多様な用途を有することができる。表1に開示されている多様な変異体は、多くの適した用途を有することができる。例えば、皮下脂肪は皮膚に豊満さと堅固さを提供するので、皮下脂肪の形成を向上させることにおいて、成形手術手続での用途を有する。老化する皮膚は、含んでいる皮下脂肪が少ない。従って、本開示で記載された一つ以上の表1に開示されている多様な変異体を、所望の部位に投与して、皮下脂肪形成を促進することは、さらに豊満でさらに幼く見える皮膚をもたらすことができる。このアプローチ方法は、低い成功率を示す場合が多いプロセスである、身体の他の部位(例えば、股またはお尻)から脂肪細胞を移植する現在の方法に、代替することができる。
【0061】
表1に開示されている多様な変異体は、皮下脂肪組織を選択的に向上させるために(例えば、内臓脂肪および/または他の脂肪組織を実質的に増加させないながら皮下脂肪組織を向上させるために)投与することができる。表1に開示されている多様な変異体の投与に反応して、脂肪細胞形成が真皮線維芽細胞で起こり、対象において選択された皮下部位内で体積が追加される。
【0062】
表1に開示されている多様な変異体は、瘢痕を減らすのに使用することができる。これは、一つ以上の表1に開示されている多様な変異体を、瘢痕部位を減らし/減らすか瘢痕部位の外観を改善するのに十分な量で投与することによって、達成することができる。瘢痕は、例えば、火傷によって生成された瘢痕、手術によって生成された瘢痕、にきびによって生成された瘢痕、生検によって生成された瘢痕、または負傷でできた瘢痕であってもよい。
【0063】
表1に開示されている多様な変異体は、例えば、皮膚の外観を改善するために、多様な化粧過程で使用することができる。これは、一つ以上のペプチドを、対象の部位に、皮膚の外観を改善するのに十分な量で投与することによって、達成することができる。そのような投与は、唇、まぶた、ほお、額、あご、首などのような領域への皮下投与を含むことができる。前記ペプチドは、シワを減らし、たるんだ皮膚を減らし、皮膚の表面質感を改善し、シワを減らすか、除去するか、埋め、老人斑点を除去するか減らし、および/または目の下のくまを除去するこれら方法などに使用することができる。これら化粧適用は、例示的であり、制限しようとするのではない。
【0064】
表1に開示されている多様な変異体は、対象の部位で、組織体積を改善するのに使用することができる。これは、本願に記載された一つ以上のペプチドを、対象の部位で、組織体積を増加させるのに十分な量で投与することによって、達成することができる。例えば、組織体積の増加は、乳房組織を堅固にするか増大させること、および/または、お尻組織若しくは身体若しくは顔の他の部位を堅固にするか増大させることを、含むことができる。
【0065】
この時使用されるFGF7は、0.01~10ppmの量で使用することができる。10ppm以上では、過多な量で異常反応を誘導することがある副作用の可能性がある。したがって、実際的使用範囲は、0.01~10ppmであり、好ましくは0.01~2ppmであってもよい。
【0066】
表1に開示されている多様な変異体はまた、対象の部位内の皮膚をやわらかくするのに使用することができる。これは、本願に記載された一つ以上のペプチドを、所望の部位で、皮膚をやわらかくするのに十分な量で投与することによって、達成することができる。前記やわらかくするのは、にきびによって瘢痕のある皮膚をやわらかくすること、セルライトの部位をやわらかくすること、妊娠線をやわらかくするか縮めること、および/またはシワを伸すことを含むことができる。
【0067】
表1に開示されている多様な変異体は、対象で、幹細胞を皮下脂肪の形成に動員するのに使用することができる。これは、表1に開示されている多様な変異体を、幹細胞が皮下脂肪の形成に動員されるのに十分な量で投与することによって、達成することができる。これは、例えば、多様な再建手術過程などで有用性を有する。
【0068】
表1に開示されている多様な変異体は、対象で、組織を再建するのに使用することができる。そのような再建は、例えば、乳房再建(例えば、腫ようを除去する手術後)、または、顔若しくは腕と脚の再建(例えば、自動車事故若しくは火傷後)を含むことができる。これは、表1に開示されている多様な変異体を、組織再建過程の間または以後に、組織の体積を増加させる量で投与することによって、達成することができる。表1に開示されている多様な変異体は、組織移植物質または皮膚または負傷した組織の治癒を向上させる他の手続と共に、任意に使用することができる。
【0069】
表1に開示されている多様な変異体は、歩く時、前記対象によって経験される踵の痛みを減少させるのに十分な量で投与することによって、対象における踵の痛みを減少させるのに使用することができる。
【0070】
表1に開示されている多様な変異体は、体温調節を増加させ/増加させるか免疫機能を改善するために皮下脂肪の拡大のために、投与することができる。対象は、疾患を予防するか、非制限的に心血管疾患を含む増加された臓器脂肪と関連した進行中の疾患、および他の肥満関連した疾患を治療するために、表1に開示されている多様な変異体で処理できる。
【0071】
これら方法のうちのいずれかでの投与は、局所または全身であってもよく、本願に記載された任意の経路、例えば、局所、皮下、経皮、経口、鼻、膣、および/または直腸投与によってもよい。好ましくは、表1に開示されている多様な変異体は、皮下注射によって投与することができる。代案的に、前記表1に開示されている多様な変異体は、フェイスクリームのような皮膚クリームの形態で局所投与されるか、または経皮パッチを通じて経皮に投与することができる。
【0072】
前記用途および方法がヒトでの用途と関連して記載されているにもかかわらず、これらはまた、動物、例えば、随意的用途に適する。したがって、ある好ましい有機体は、非制限的にヒト、非ヒト霊長類、イヌ科、馬、猫、豚、有蹄類、ウサギ類などを含む。
【0073】
[培地]
表1に開示されている多様な変異体は、少なくとも5回の継代培養の間に未分化された状態で万能性幹細胞を維持させるのに必要な量に該当する「培地学的有効量」で含まれて、ヒト万能性幹細胞培地に提供できる。
【0074】
ヒト胚芽幹細胞および誘導された万能性幹細胞の両方ともを含む、本開示で、用語「ヒト万能性幹細胞」は、同一な自分の後代とヒト身体の実質的に全ての細胞タイプを生成することができるようにする万能性を形成する能力-自己-再生力(self-renewal capacity)-を特徴とする。
【0075】
本開示で、用語「幹細胞を万能性状態で維持させる」ということは、実際全ての細胞タイプに分化できる能力を有する未分化した状態で細胞を維持させることを意味する。このような万能性状態は、FGF7が最も重要な成長因子である成長因子の幹性(stemness)-サポートカクテルに依存する。FGF7は、多様な方式で自己-再生を支援する:分裂促進因子活性化プロテインキナ-ゼ経路を直接活性化し、トランスフォーミング増殖因子β1およびアクチビンのシグナル伝達を間接的に触媒する(Greber, et al.2008, Stem Cells25, 455-464)。FGF7は、細胞付着および生存機能を通じて、ヒトPSCの万能性に複合的に寄与する(Eisellova, et al. 2009, Stem Cells27, 1847-1857)。
【0076】
本開示は、操作された対象FGF7の特徴糾明、タンパク質での置換効果の立証、ヒトPSC培養でのタンパク質の利用方法、およびヒトPSCを未分化した状態で培養することに適した本願に記述された一つ以上の耐熱性FGF7タンパク質を含む培地を提供する。本願に提供された実施形態で使用されるヒト胚芽幹細胞(ESC)は、医師による事前同意下で得られた胚盤胞期胚芽に由来した。29-41回継代の特徴がよく糾明されたヒトESC細胞株(Adewumi, et al. 2007, Nat Biotechnol 25, 803-816)CCTL14(Centre of Cell Therapy Line)を使用した。ヒトの誘導された万能性幹細胞(iPSC)のように、山中のカクテル(Yamanaka's cocktail)およびセンダイウイルストランスフェクション(Sendai virus transfection)による皮膚線維母細胞のリプログラミングを用いて由来したAM13細胞株は34-41回継代状態を使用した(Kruta et al. 2014, Stem Cells and Development 23, 2443-2454)。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の理解のために好ましい実験例を提示するが、下記実験例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記実験例に限定されるのではない。
【0078】
[pCold Iベクターを用いた突然変異体の構築および精製]
FGF7について、1つの位置の突然変異(A120C)、2つの位置の突然変異(A120C、K126E)、2つの位置の突然変異(A120C、K178E)、3つの位置の突然変異(A120C、K126E、K178E)を合成し、His-Tagを有するpCold Iベクターにサブクローニングした。FGF7が挿入された組換えベクターを、BL21(DE3)細胞に形質転換して、発現させた。
【0079】
10ml LB media(Ambrothia)(0.25g使用)に接種し、アンピシリン(Ampicillin、50mg/ml)を10μl添加後、37℃で前培養した。
【0080】
前培養液10mlと、アンピシリン(Ampicillin、50mg/ml)1mlとを、1L LB media(ambrothia)(25g使用)に接種して、37℃で本培養した。OD600の数値が0.6である時、4℃の冷蔵庫で培養液を10分間冷却させた後、β-D-1-チオガラクトピラノシド(β-D-lーthiogalactopyranoside;IPTG)5mMを添加して、17℃で24時間発現を誘導した大腸菌細胞を得た。
【0081】
遠心分離後、最適に溶解した上清液を、Ni-NTAビーズがあるカラムに注入した。カラムに注入されたpCold I_FGF7タンパク質の体積の3倍になる一番目の洗浄(wash)緩衝溶液(20mM Tris pH8.0、200mM NaCl)と二番目の洗浄(wash)緩衝溶液(20mM Tris pH8.0、200mM NaCl、30mMイミダゾール)とで洗浄し、100ml溶離緩衝溶液(elution buffer、20mM Tris pH8.0、200mM NaCl、1Mイミダゾール)を使用して、順次にイミダゾール濃度を高めながらFGF7タンパク質を溶離して1次精製した。
【0082】
1次親和性クロマトグラフィー(Ni-NTA)実験を通じて精製された上清液を、次にヘパリン(heparin)ビーズがあるカラムに注入した。カラムに注入されたpCold I_hFGF7タンパク質の体積の3倍になる一番目の洗浄緩衝溶液(20mM Tris 8.0、200mM NaCl)で洗浄し、60ml溶離緩衝溶液(20mM Tris pH8.0、1500mM NaCl)で溶離して、2次精製した。
【0083】
最後に、pCold I_hFGF7タンパク質分画は、HiLoadTM16/60 Superdex75(Amersham Biosciences)カラムと、1X PBSバッファー(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、2mM KH2PO4、pH7.4)、(WELGENE)とを用いたゲルろ過方法によって、精製された。
【0084】
[突然変異体のスペクトル分析]
組換えFGF7タンパク質に対してスペクトルデータを測定した。
図3を参照すれば、還元(Reduced Condition)および非還元(Non-reduced Condition)サンプルに対して得られた基本ピーククロマトグラム(base peak chromatogram)は、ペプチド(14.4、26.3、and 32.63min)が二硫化結合と関連があることを示す。
【0085】
図4は、二硫化結合ペプチド(ECNEDCNFK、550.194Da、+2電荷)の細部断片スペクトルを示す。スペクトルは、二硫化結合(ECNEDCNFK、550.194/1098.375Da、+2/+1電荷)によって連結されたペプチドの骨格切断による特徴的なb/yイオンを示す。二硫化結合ペプチドの理論質量(1098.375Da、+1電荷)は、実験質量(1098.373Da、+1電荷、-1.89ppm)と完全に一致する結果を示す。
【0086】
[突然変異体の塩橋構造分析]
図5および
図6に示されているように、3D構造を基盤にして分析した結果、175番目アルギニン(R)残基(R175)が126番目残基と178番目残基との間の中間に位置しており、アミノ酸の間の距離が塩橋を形成する程度に十分に近いことを確認することができる。スイスモデルサーバーを用いて予測した結果、126番目リシン(K)がグルタミン酸(E)で置換された(K126E)場合に、K126Eの陰イオン性OE2とR175のNH2との間の距離が、2.56Åで維持されることが分かる。そして、178番目リシン(K)がグルタミン酸(E)で置換された(K178E)の場合にも、K178EのOE1とR175のNH1との間の距離は、2.76Åで維持されることが分かる。これら分析は、R175の陽に荷電されたグアニジニウム(guanidinium)が、K125EおよびK178Eの陰に荷電されたカルボキシル基と相互作用して、水素結合とイオン結合との2種類の非共有相互作用の組み合わせである塩橋を形成することができることを示唆する。
【0087】
[突然変異体の熱力学的安定性分析]
Δ53_hFGF7(palifermin)とFGF7突然変異体との熱力学的安定性を比較するために、190nmでCD分光器を使用して、FGF7突然変異体の熱による形態変化をモニターした。その結果が
図7に示されている。中間点転移温度(Tm)は、熱変性曲線を使用して分析した。Δ53_hFGF7(palifermin)のTm値は、51.9℃であって、野生型FGF7の45.5℃よりも6.4℃高かった。反面、FGF7突然変異体(A120C、A120C/K126E、A120C/K178E、A120C/K126E/K178E)のTm値は、それぞれ、52.6℃、60.4℃、58.8℃、67.1℃であった。FGF7突然変異体を従来のΔ53_hFGF7(palifermin)と比較すれば、Tm値が、それぞれ、0.67℃、8.53℃、6.89℃および15.24℃増加した。特に、K126E/K178E二重突然変異を含む場合のTm値は、K126EまたはK178Eの単一突然変異のTm値よりも高く示されることを、確認することができた。
【0088】
[37℃安定性実験]
精製されたFGF7タンパク質について、1X PBSバッファーを基本使用して0.5mg/ml濃度で37℃で0、4、8、12、15日間反応させ、クマシーブルー染色試薬で染色して、15%SDS-PAGE電気泳動を実施した。SDS-PAGE GELに残っているタンパク質バンドについて、ImageJプログラム(Wayne Rasband、NIH)を使用して、定量的に密度(density)を測定した。
【0089】
図8に例示されているように、15%SDS-PAGEを通じて確認されたFGF7ポリペプチドバンドから、変異体の熱的安定性が向上したことが分かる。
【0090】
密度測定では、imageJプログラム(Wanyne Rasband)を使用して、SDS-PAGE GELの密度を測定した。その結果が下記表2に記載されており、
図9にグラフで表示されている。
【0091】
【0092】
表2および
図9の結果から、Δ53N_hFGF7(palifermin)は15日目にタンパク質バンドが18%に減少した反面、Δ53N_hFGF7(A120C)は15日目の日に66%が残っていることが分かる。Δ53N_hFGF7(A120C、K126E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K178E)は、それぞれ、15日目にそれぞれ96%および100%のタンパク質が残っていることが分かる。3つの位置の突然変異を全て導入したΔ53N_hFGF7(A120C、K126E、K178E)は、15日目になる日に118%であって0日目よりも増えた誤差を示すが、100%近くのバンドを15日間は安定的に維持していることが分かる。
【0093】
N-末端(N-terminal)の長さによる安定性を確認するための、Δ30N_hFGF7(wild)とΔ53N_hFGF7(palifermin)との安定性の比較結果から、シグナルペプチド(signal peptide)を除去したΔ30N_hFGF7(野生型)と、N-末端がさらに短いΔ53N_hFGF7(palifermin)との15日目になる日の密度がそれぞれ、4%と18%とであって、N-末端の長さがさらに短いΔ53N_hFGF7(palifermin)が37℃温度でさらに安定していることが分かる。
【0094】
[45℃安定性実験]
精製されたFGF7タンパク質について、1X PBSバッファーを基本使用して0.5mg/ml濃度で45℃で0、1、2、3、4、5、6、7日間反応させ、クマシーブルー染色試薬で染色して、15% SDS-PAGE電気泳動を実施した。
図10にその結果が例示されている。
【0095】
図10に例示されているように、15%SDS-PAGEを通じて確認されたFGF7ポリペプチドバンドから、変異体の熱的安定性が向上したことが分かる。
【0096】
密度測定では、imageJプログラム(Wanyne Rasband)を使用して、SDS-PAGEゲルの密度を測定した。その結果が、下記表3および
図11に記載されている。
【0097】
【0098】
表3および
図11の結果から、全ての変異体において、野生型hFGF7よりも熱的安定性が向上したことが分かる。
【0099】
Δ53N_hFGF7は一日でタンパク質バンドが0%になった反面、Δ53N_hFGF7(A120C)は3日目に0%になったことが分かる。Δ53N_hFGF7(A120C、K126E)、Δ53N_hFGF7(A120C、K178E)は、それぞれ、7日目の日に22%、9%タンパク質が残っているのを確認することができた。先に確認された突然変異を全て導入したΔ53N_hFGF7(A120C、K126E、K178E)は、7日目の日に79%のタンパク質バンドを確認することができた。
【0100】
また、45℃の温度で、Δ30_hFGF7(野生型)とΔ53_hFGF7(palifermin)とのように、N-terminalの長さによる差が大きく存在しないのを確認することができた。
【0101】
[実験例3:突然変異体の細胞増殖能確認]
突然変異体に対してHaCaT細胞を使用し、10%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum)を含むDMEM培地で、培養および維持した。FGF7による細胞増殖活性を確認するために、細胞には、0.03%BSAを含む無血清(serum-free)DMEM培地を使用した。
【0102】
96ウェルプレートに細胞数0.6×104/wellで培養し、ヘパリン(heparin)(10ug/ml)と共にFGF7(300ng/ml)で40時間処理した。細胞数増加は、WST-8[2-(2-methoxy-4-nitrophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium、monosodiumsalt]を使用して、電子媒介体(electron mediator)と細胞内脱水素酵素(dehydrogenases)とによって形成される、WST-8ホルマザン(formazan)生成の程度を測定することによって、確認した。WST-8ホルマザン生成の程度は、吸光度(450nm)を通じて確認することができる。実験は4回繰り返し、「平均±標準偏差」方式で表現した。
【0103】
FGF7タンパク質について、45℃で、0、0.5、1、2、4、6、8日間それぞれ保管した後、細胞増殖活性変化を確認した。その結果が、表4および
図12に例示されている。
【0104】
【0105】
表4および
図12を参照すれば、Δ30N_hFGF7(野生型)の場合は、45℃でタンパク質を保管する時間が長くなることによって細胞増殖活性が減少するようになって50%活性(ED50)を有する時点が0.8日である反面、Δ53N_hFGF7(palifermin)の場合は、ED50が1.7日まで増加されたタンパク質であることを確認した。一方、Δ53N_hFGF7(A120C)はED50が8日まで増加し、Δ53N_hFGF7(A120C、K178E)のED50は33.9日、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E)は1107日まで増加するのを確認した。また、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E、K178E)を45℃で8日間保管したが、細胞増殖活性の減少が観察されないことを通じて、Δ53N_hFGF7(A120C、K126E、K178E)が熱に対する安定性が最も増加された変異タンパク質であることを確認した。前述したように多様な実施形態について説明したが、権利範囲は、これによって限定されるのではない。実現される形態は、発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも権利範囲に属することは当然である。
【配列表】