(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】コンクリート床版、コンクリート床版要素、ならびにコンクリート床版及びコンクリート床版要素を製造する方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20240328BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20240328BHJP
E04C 5/08 20060101ALI20240328BHJP
E04B 5/48 20060101ALI20240328BHJP
E04B 5/04 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
E04B5/43 A
E01D19/12
E04C5/08
E04B5/48 A
E04B5/48 B
E04B5/04
(21)【出願番号】P 2022514821
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2019073887
(87)【国際公開番号】W WO2021043428
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】515070930
【氏名又は名称】ツェーペーツェー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】CPC AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラート-グロルマン,ヨーゼフ・ペーター
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082581(JP,A)
【文献】特開平03-028153(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102535710(CN,A)
【文献】特開2015-110860(JP,A)
【文献】特表2005-510382(JP,A)
【文献】特開平04-272352(JP,A)
【文献】特開2010-168759(JP,A)
【文献】特開平08-128016(JP,A)
【文献】特開平09-144200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00 - 5/48
E04C 5/08
E01D 19/12
E04B 1/06
E04C 2/30,2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-上面(11)を有する、及び少なくとも1つのFRCスラブ(100)を備える平面状の基礎構造(10)と、
-少なくとも1つのFRCウェブ(20)と、
を備える
コンクリート床版要素(2)であって、
前記FRCウェブ(20)が前記上面(11)に配置され、かつ部分的に前記基礎構造(10)と接続されており、
前記少なくとも1つのFRCウェブ(20)が、前記基礎構造(10)との前記部分的な接続を提供する少なくとも2つの支柱(201)を有し、
-少なくとも1つの支柱(201)は、末端に、及び前記上面(11)の方に向けて少なくとも1つの延長部(204)を有し、前記延長部(204)は、前記基礎構造(10)のFRCスラブ(100)の切欠き(110)に配置され、かつ前記延長部(204)より大きく寸法設定されたこの切欠き(110)に固定され、ならびに/あるいは
-前記基礎構造(10)の少なくとも1つのFRCスラブ(100)は、前記上面(11)に少なくとも1つの延長部(204)を有し、前記延長部(204)は、末端に配置されて前記上面(11)の方に向いた支柱(201)の切欠き(110)に配置され、かつ前記延長部(204)より大きく寸法設定されたこの切欠き(110)に固定されている、コンクリート床版要素。
【請求項2】
前記少なくとも2つの支柱(201)の間に空所(202)が存在する、請求項1に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項3】
少なくとも2つのFRCウェブ(20)を備え、前記FRCウェブ(20)が互いに平行に、ならびに/あるいは互いに180°未満で0°より大きい角度で、互いに配置されている、請求項1または請求項2に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項4】
前記互いに平行に配置されたFRCウェブ(20)の少なくとも一部が互いに等距離に配置されている、請求項3に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項5】
FRCウェブ密度がより高い少なくとも1つの領域が形成されるように、前記互いに平行に配置されたFRCウェブ(20)の一部が前記互いに平行に配置されたFRCウェブ(20)の別の部分に対して等距離にない、請求項3又は請求項4に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項6】
少なくとも2つのFRCウェブ(20)を備え、前記少なくとも2つのFRCウェブ(20)が交点で交わるように、前記FRCウェブ(20)の少なくとも2つが互いに180°未満で0°より大きい角度で、互いに配置され、かつ前記少なくとも2つのFRCウェブ(20)が前記交点で差し込まれている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項7】
前記FRCウェブ(20)の前記少なくとも2つは、前記交点において各1つの互いに逆向きの溝(203)を有する、請求項6に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項8】
前記FRCウェブ(20)の少なくとも3つ、または少なくとも4つは、それらが空間(30)を包囲するように互いに配置され、前記空間(30)にコンクリートが少なくとも部分的に流し込まれている、請求項3~請求項7のいずれか1項に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項9】
前記FRCウェブ(20)の少なくとも1つが中実に形成され、及び/又は前記FRCウェブ(20)の少なくとも1つが少なくとも1つの空隙(205)を有する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの空隙に引張要素が備えられている、請求項9に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項11】
前記基礎構造(10)は、少なくとも2つの平面状に並べて配置された隣り合うFRCスラブ(100)を備える、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項12】
前記FRCスラブ(100)が、それらの互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に接着されている、請求項11に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項13】
少なくとも1つの接続要素(32)が、前記上面(11)上で、前記FRCスラブ(100)
の互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に取り付けられている、請求項1
1に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの延長部(204)と前記切欠き(110)は、横断面においてくさびの形状を有する、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項15】
前記切欠き(110)の寸法と前記延長部(204)の寸法は、前記延長部(204)を横方向に継合可能に互いに調整されている、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項16】
前記延長部(204)と前記切欠き(110)とは、横断面において、1つの傾斜平面のみを有するくさびの形状を有する、請求項1~請求項15のいずれか1項に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項17】
請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の少なくとも1つのコンクリート床版要素(2)を備えるコンクリート床版(1)。
【請求項18】
基礎構造(10)の上面(11)に配置され、FRCウェブ(20)の少なくとも1つの空所(202)に通されている少なくとも1つの線管(40)を備える、請求項17に記載のコンクリート床版(1)。
【請求項19】
前記FRCウェブ(20)で支持されるカバー層(50)を備える、請求項17又は請求項18に記載のコンクリート床版(1)。
【請求項20】
前記少なくとも2つのFRCウェブ(20)は互いに直交している、請求項3又は請求項6に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項21】
前記溝(203)の深さは合計で、少なくとも前記交点における前記FRCウェブ(20)の高さに相当する、請求項7に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項22】
前記FRCウェブ(20)の少なくとも1つが、スロットの形の少なくとも1つの空隙(205)を有する、請求項9に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項23】
前記引張要素が引張棒である、請求項10に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項24】
前記少なくとも1つの空隙は、少なくとも部分的に充填材(31)で充填されている、請求項10又は請求項23に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項25】
前記充填材(31)はモルタルである、請求項24に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項26】
前記少なくとも1つの接続要素(32)が接続パッチである、請求項13に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項27】
前記少なくとも1つの延長部(204)と前記切欠き(110)は、横断面において1つ又は2つの傾斜平面を有するくさびの形状を有する、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項28】
前記切欠き(110)は、前記切欠き(110)の最も狭い箇所が前記延長部(204)の最も幅の広い箇所より大きく形成されている、請求項15に記載のコンクリート床版要素(2)。
【請求項29】
前記カバー層(50)は、木材及び/又は石及び/又はFRCコンクリートからなるフロアパネルを含む、請求項19に記載のコンクリート床版(1)。
【請求項30】
2つのFRCコンクリート要素(100、20)を接続するための差込みフィット接続の使用であって、
前記差込みフィット接続は、切欠き(110)に差込まれた延長部(204)を含み、
前記切欠き(110)は、前記延長部(204)より大きく寸法設定されており、
前記延長部(204)は、前記差込みフィット接続の力結合的接続が充填材によってのみ得られるように、前記充填材によって前記切欠き(110)にフィットされる、差込みフィット接続の使用。
【請求項31】
コンクリート床版(1)を製造する方法であって、
-請求項1~請求項16または請求項20~請求項28のいずれか1項に記載の少なくとも1つのコンクリート床版要素(2)を提供する工程、
-基礎構造(10)の上面(11)に少なくとも1つの線管(40)を配置する、及びこの線管(40)をFRCウェブ(20)の少なくとも1つの空所(202)に通す工程、ならびに/あるいは
-カバー層(50)を前記FRCウェブ(20)で支持する工程、を包含する方法。
【請求項32】
-請求項1~請求項16または請求項20~請求項28のいずれか1項に記載の少なくとも2つのコンクリート床版要素(2)を提供する工程、
-前記少なくとも2つのコンクリート床版要素(2)を平面状に並べて配置する工程、
-前記少なくとも2つのコンクリート床版要素(2)を、それらの互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に接着する工程、及び/又は、
-少なくとも1つの接続要素(32)を、上面(11)上で、前記平面状に並べて配置された隣り合うコンクリート床版要素(2)に沿って少なくとも部分的に取り付ける工程、を包含する、請求項31に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項33】
-前記基礎構造(10)の前記上面(11)に少なくとも1つの追加的FRCウェブ(20)を配置する工程を包含する、請求項31又は32に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項34】
前記少なくとも2つのコンクリート床版要素(2)が互いに隣り合って配置される、請求項32に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項35】
前記基礎構造(10)の前記上面(11)に少なくとも1つの追加的FRCウェブ(20)を、少なくとも1つのコンクリート床版要素(2)の少なくとも1つのすでに存在するFRCウェブ(20)に対して180°未満で0°より大きい角度で配置する、請求項33に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの追加的FRCウェブ(20)を前記少なくとも1つのすでに存在するFRCウェブ(20)上に差し込む工程をさらに包含する、請求項33に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項37】
コンクリート床版(1)を製造する方法であって、
-基礎構造(10)を形成するために少なくとも1つのFRCスラブ(100)を提供する工程であって、前記FRCスラブ(100)は切欠き(110)を有する、または前記上面(11)に少なくとも1つの延長部(204)を有する、前記少なくとも1つのFRCスラブ(100)を提供する工程と、
-FRCウェブ(20)の支柱(201)の延長部(204)を前記切欠き(110)に導入すること、及び充填材(31)を使って前記延長部(204)を前記切欠き(110)に固定することによって、少なくとも2つの支柱(201)を有する少なくとも1つのFRCウェブ(20)を前記基礎構造(10)の前記上面(11)に配置する工程、又は前記FRCスラブの前記上面(11)の前記少なくとも1つの延長部(204)を前記切欠き(110)に導入し、充填材を使って前記延長部(204)を前記切欠き(110)に固定することによって、少なくとも2つの支柱(201)を有する少なくとも1つのFRCウェブ(20)を前記基礎構造(10)の前記上面(11)に配置する工程と、
-カバー層(50)を前記FRCウェブ(20)で支持する工程と、を包含する方法。
【請求項38】
-前記基礎構造(10)の前記上面(11)に少なくとも1つの別のFRCウェブ(20)を配置する工程を包含する、請求項37に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項39】
-基礎構造(10)を形成するための少なくとも2つのFRCスラブ(100)を提供する工程、
-前記少なくとも2つのFRCスラブ(100)を平面状に並べて配置する工程を包含する、請求項37又は請求項38に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項40】
前記切欠き(110)及び/又は各1つの前記延長部(204)がくさび形の横断面を有する、請求項37に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項41】
前記方法は、前記基礎構造(10)の前記上面(11)に少なくとも1つの線管(40)を配置する工程をさらに包含する、請求項37に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項42】
前記基礎構造(10)の前記上面(11)の前記少なくとも1つの線管(40)は、前記切欠き(110)が覆われないように配置される、請求項41に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項43】
前記基礎構造(10)の前記上面(11)の前記少なくとも1つの別のFRCウェブ(20)は、すでに配置された少なくとも1つのFRCウェブ(20)に対して180°未満で0°より大きい角度で配置される、及び/又は
前記方法は、前記少なくとも1つの追加的FRCウェブ(20)を前記少なくとも1つのFRCウェブ(20)に差し込む工程をさらに包含する、請求項38に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項44】
前記少なくとも2つのFRCスラブ(100)は、横断面がくさび形状の切欠き(110)を有する、請求項39に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項45】
前記方法は、
-前記少なくとも2つのFRCスラブ(100)をこれらの互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に接着する工程、及び/又は
-少なくとも1つの接続要素(32)を、前記上面(11)上で、互いに隣りに並べて配置された隣り合う前記FRCスラブ(100)の互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に取り付ける工程をさらに包含する、請求項39に記載のコンクリート床版(1)を製造する方法。
【請求項46】
-基礎構造(10)を形成するための少なくとも1つのFRCスラブ(100)を提供する工程と、
-前記FRCウェブ(20)の支柱(201)の延長部(204)を切欠き(110)に導入することによって、又は前記少なくとも1つのFRCスラブ(100)の延長部(204)を前記FRCウェブ(20)の前記支柱(201)の切欠き(110)に導入することによって、少なくとも1つのFRCウェブ(20)を前記基礎構造(10)の前記上面(11)に配置する工程とを包含する、請求項1~請求項16または請求項20~請求項28のいずれか1項に記載のコンクリート床版要素(2)を製造する方法。
【請求項47】
前記切欠き(110)及び/又は各1つの前記延長部(204)は、横断面がくさび形である、請求項46に記載のコンクリート床版要素(2)を製造する方法。
【請求項48】
前記延長部(204)は、充填材を使って前記切欠き(110)に固定される、請求項46に記載のコンクリート床版要素(2)を製造する方法。
【請求項49】
前記方法は、前記基礎構造(10)の前記上面(11)に少なくとも1つの別のFRCウェブ(20)を配置する工程をさらに包含する、請求項46に記載のコンクリート床版要素(2)を製造する方法。
【請求項50】
前記少なくとも1つの別のFRCウェブ(20)は、すでに配置された少なくとも1つのFRCウェブ(20)に対して、180°未満で0°より大きい角度で配置される、及び/又は、前記方法は、少なくとも1つのすでに配置されたFRCウェブ(20)上に前記少なくとも1つの追加的FRCウェブ(20)を差し込む工程をさらに包含する、請求項49に記載のコンクリート床版要素(2)を製造する方法。
【請求項51】
前記少なくとも1つの延長部(204)は
、差込みフィット接続の力結合的接続が充填材によってのみ得られるように前記充填材によって前記切欠き(110)にフィットされる、請求項1~請求項16または請求項20~請求項28のいずれか1項に記載のコンクリート床版要素(2)を製造する方法。
【請求項52】
少なくとも1つの接続要素(32)が、前記上面(11)上で、前記FRCスラブ(100)の前記互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に取り付けられている、請求項12に記載のコンクリート床版要素(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけコンクリート床版、コンクリート床版要素、ならびにコンクリート床版を製造する、及びコンクリート床版要素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物建設において、鋼補強材にもとづいて高い圧縮力の他に高い引張力も受けることができ、それによって特に安定している古典的な鉄筋コンクリートの床版が広く普及している。通常、このような鉄筋コンクリートの床版は、用意できた建物の壁に、まず配電盤が平面状に配置され、支柱を使って支持されることにより組み立てられる。次いで、配電盤によって形成された平面上にスペーサが置かれ、その上にもまた第1の鋼格子が配置される。大抵の場合、第1の鋼格子上にスペーサの別の層がさらに続き、この層上にもまた別の鋼格子が配置される。のちの鉄筋コンクリート床版を形成するために全部をコンクリート打ちできるより前に、鋼格子からなる構造にさらにまだ、例えば床暖房のための管又はケーブルダクトなどの線管(Leitung)が敷設されなければならない。すでに述べたように、この床版は特に安定しているが、大量の原材料、特にコンクリートを必要とし、自重が大きい。新しい線管の敷設など、後になってからの適合が困難になり、建設現場でのそのような鉄筋コンクリート床版の初めの製造も、そのときの気象条件にある程度依存するため、常に円滑に進むとは限らない。寒気、猛暑、又は多大な降水は、コンクリートの凝固過程に作用し、したがって鉄筋コンクリート床版の品質に影響を及ぼす可能性があり、それによってその製造時に気象条件を合わせて考慮に入れることが絶対に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、従来技術から知られる鉄筋コンクリート床版の少なくとも1つの欠点を克服するコンクリート床版を提供することである。本発明の態様は、コンクリート床版を製造するためのコンクリート床版要素、コンクリート床版を製造する方法、及びコンクリート床版それ自体に関する。本発明の他の態様は、FRCコンクリート要素の使用、及びFRC要素のための特別な接続技術の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、請求項1に記載のコンクリート床版要素により解決される。
上記のコンクリート床版要素は、少なくとも1つのFRCスラブを備える、及び上面を有する平面状の基礎構造を備える。さらに、コンクリート床版要素は少なくとも1つのFRCウェブを備える。FRCウェブは上面に配置され、かつ基礎構造と部分的に接続されている。
【0005】
FRCスラブ及びFRCウェブの「FRC」という文字は、「Fiber Reinforced Concrete」を表す。FRCスラブは、とりわけWO2014/040653A1に記載され、その内容は本出願の開示の一部と解されるべきである。FRCスラブは、例えば炭素、ガラス、ケブラー、玄武岩、鋼、天然繊維、又はそれに類するものからなる繊維でプレストレスが与えられ、その断面積は、例えば5mm2未満であり、厚さは数センチメートル(例えば1cm~10cm)である。幅と長さもまた、数メートル(1m、2m、...、5mなど)から10mまで、それどころか20mから40mまでの範囲である。スラブの補強は、繊維相互の異なった間隔と配置にもとづいて行うことができる。さらなる詳細は、WO2014/040653A1から読み取ることができる。使用される繊維が非常に大きい引張強度を有し、好ましくは腐食しないため、それに伴い特に耐荷重能力のある薄いコンクリートスラブを製造することができる。従来の鉄筋コンクリートスラブで必要な3~4センチメートルの補強覆いは必要でなくなる。したがって、FRCスラブは、従来に比べて格段に薄くなり、重量がより軽く、しかも耐荷重能力は同じである。FRCスラブの特別な実施形態はCPCスラブである。「CPC」という文字は、「カーボンプレストレストコンクリート(carbon prestressed concrete)」を表し、かつ本発明により使用することができる、特に細線細工(filigran)でありながら荷重に耐えられる薄いプレストレストカーボンモール(vorgespannte Carbonlitze)で補強されたコンクリートスラブを表現する。CPCスラブの特別な点は、繊維によりプレストレスが与えられることから、純引張荷重下でも非常に剛性が高く、使用荷重下でひび割れが発生しない。これは基礎構造として使用する場合の利点に他ならない。これらをディスクとして使用した場合も、これらは使用状態において高い剛性でひび割れが発生せず、非常に高いせん断力を受けることができる。
【0006】
コンクリート床版要素に使用される典型的なFRCスラブは、防火を考慮して10~100mm、特に20~60mmの、例えば25mm又は30mm、特に40mmの厚さであり、例えば4層のCFK補強を有する。大きさに関して、FRCスラブは数メートルの長さと幅を有することができる。例えば1m×2m、2m×2m、2m×4mから20m×40mまでである。問題のない道路輸送がまだ可能であることから最大2.4mの幅が好ましい。しかし、困難な輸送条件を受け入れて3.5mまで、それどころか6mまでの幅も考えられる。FRCスラブの長さは、張り渡されるべき空間又は建物の寸法の床面積によって予め定められることが好ましく、典型的には、約4m又は5mから12m、それどころか20mまでの範囲である。通常、FRCスラブの下面と上面は同じに形成され、それにより、コンクリート床版の製造のさらなる過程でどちらの面が上面として機能するのかは、FRCウェブ又は複数のFRCウェブの取り付けだけで決まる。
【0007】
FRCウェブもFRCからなり、好ましくはFRCスラブから切り取られる。本発明との関連で、ウェブは、一種のリブ又は薄片(Lamelle)のように基礎構造に取り付けることができるが、基礎構造とその全長に沿って接続している必要はない細長い構造である。FRCウェブは、好ましくは2cm~10cm、特に4cm~8cm、例えば6cmの厚さを有し、この厚さは、FRCウェブの全長及び幅にわたって一定に、又は様々に延在する。ウェブの長さは、例えばFRCスラブの長さないしは幅に適合され、したがって、典型的には数メートルの範囲、例えば1mから20m、それどころか40mまでである。FRCウェブ若しくはFRCウェブの支柱の高さは、とりわけコンクリート床版要素の下の張り渡されるべき空間の長さの大きさによっても異なり、大抵の場合、床版が張り渡されるべき空間の10分の1~30分の1の範囲である。特に、これは2つの隣り合う支承点(Auflagerpunkt)間の距離であり、この距離を10~30で割ってFRCウェブの高さが求められる。しかし、例えば床版要素の高さに線管を通す必要があるか、又は隣接する空間の支承間隔(Auflagerabstand)がはるかに大きく、床版要素の厚さが床版全体にわたって一定に保たれるべき場合、構造に応じてウェブの高さをより高くすることもできる。支承点が角にある幅2.4m、長さ6mのFRCスラブの場合、計算の結果、FRCウェブ高さは8cm~24cm若しくは20cm~60cmになる。2つの支承点の最大間隔がFRCウェブの寸法設定に決定的な役割をするので、これらは20cm~60cmの高さで製造される。FRCウェブを交差させて使用する場合、横方向及び縦方向に延びるCPCウェブに同じ高さを設定することが場合によっては考えられる。
【0008】
「コンクリート床版要素」という名前が表すように、そのようなコンクリート床版要素は、コンクリート床版を製造するために使用することができる。しかしこの名称は、決して限定するものと解されるべきでない。例えば、そのようなコンクリート床版要素を、橋、特にトラフ橋を製造するために使用することも可能である。
【0009】
さらに言及される実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、FRCウェブは、基礎構造との部分的な接続を提供する少なくとも2つの支柱を有する。
【0010】
支柱を介したFRCウェブの基礎構造との接続に関しては、この接続が力結合的であることが好ましく、例えば支柱ごとに1つ又は複数の延長部を介して行われる。これらの延長部は、基礎構造の上面に接するだけでなく、基礎構造に係合することが好ましい。
【0011】
さらに言及される実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、少なくとも2つの支柱の間に空所が存在する。
【0012】
そのようなウェブは、特に力結合して、及び延長部を使って基礎構造と少なくとも部分的に接触するように設けられている領域、支柱と、基礎構造とまさに接触しない、とりわけ力結合的に接触しないように設けられている領域、空所とから構成される。空所は、特に自由空間若しくは通路を提供する。弧状の空所、特に半円形の空所を有するウェブが特に安定し、製造が複雑でないが、基本的に、例えば楕円形、三角形、矩形、又はそれ以外の多角形など他の空所形状も実現可能である。空所の高さは、すでに述べたFRCウェブ若しくはFRCウェブの支柱の高さと比較して約1%~約80%であり得る。FRCウェブ高さが例えば20cmの場合、空所の高さはわずか2mm、又は16cmまでであり得る。しかし空所が、予定される床版の荷重及びスパンに応じて支柱間に4cm~20cmの最小材料厚さが残るだけの大きさであることが好ましい。空所の開口長さは、コンクリート床版要素の支承領域において、ウェブの高さの約0.5~2倍、特に少なくとも10cm、それどころか少なくとも20cm、又は少なくとも30cmである。空所の開口長さは、スパンの中央領域においてウェブの高さの数倍であり得る。基本的に、FRCウェブの空所は、様々な大きさ(開口長さと開口高さの両方に該当)を有することができ、特にFRCウェブの中央では端の領域よりも大きくすることができる。計画された用途に応じて、1つの空所のみと2つの支柱とを有するウェブ、又はn個の複数の空所(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、...)とm個の複数の支柱とを有するウェブを使用することができ、支柱の数は、例えばn、n+1、又はn-1である。安定性のために、m=n+1個の構成を有するウェブが考えられるが、それはその場合、ウェブを両端で、基礎構造上の対応する支柱を用いて、したがって間接的に支承体(Auflager)で支持することができるからである。
【0013】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、FRCウェブは、互いに平行に向きが合わせられているか、又は互いに180°未満で0°より大きい角度で、特に90°の角度で、つまり直交又は直角に互いに向きが合わせされている。コンクリート床版要素が2つよりも多いFRCウェブを備える場合、FRCウェブの一部を互いに平行に配置できるのに対して、別の一部は前述の一部に対して180°未満で0°より大きい角度、特に90°の角度で配置される。
【0014】
直角に設置されるべきコンクリート床版では、大抵の場合、互いに平行に配置された縦方向に延びる複数のFRCウェブと、互いに平行に配置された横方向に延びる複数のFRCウェブの使用が考えられ、横方向に延びるFRCウェブは、縦方向に延びるFRCウェブに対して直交に向きが合わせられる。六角形、平行四辺形の形、又は台形状などの変わった床版基本形状の場合、例えば、互いに、及び平行四辺形の一辺に対して平行に配置された縦方向に延びるFRCウェブに対して、互いに、及び平行四辺形の別の辺に対して平行に配置された一組の横方向に延びるFRCウェブを使用することがコンクリート床版の安定性のために有利であり得、その際に、縦方向に延びる、及び横方向に延びるFRCウェブの、例えば60°、70°、75°、80°、又は85°の交差角が実現される。台形の場合もまた、単に、一組の縦方向に延びるFRCウェブを互いに、及び台形の2つの平行の辺に対して平行に向きを合わせ、横方向に延びるFRCウェブもまた、互いに平行にではなく鋭角に配置することが得策であり得、そのことからも縦方向に延びるFRCウェブとの異なった交差角が生じる。コンクリート床版基本形状が六角形の場合、例えば蜘蛛の巣に匹敵するFRCウェブ配置を用いることができる。配置は、支承状況に明示的に関係づけることができ、例えば床版は矩形であるが、支承点は台形に配置されている。その場合、ウェブを床版支柱、つまり支承体上に、又は支承状況に対して平行に走らせることが場合によって有利であり得る。それでも、縦方向及び横方向に延びるFRCウェブの直交配置が最も多く使用される配置であろうが、その際、FRCウェブが床版縁に対して常に平行に向きが合わせられるとは限らないだろう。
【0015】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、互いに平行に配置されるFRCウェブの少なくとも一部が互いに等距離にも配置されている。
【0016】
基本的に、FRCウェブの配置が均一であればあるほど、コンクリート床版がすべての箇所で同じ安定性を有する確率が高くなると考えることができる。等距離の配置もまた、均一な配置に寄与する。平行に配置されたFRCウェブの典型的な間隔は、20cm、それどころか50cmから200cm、それどころか300cmのオーダーである。
【0017】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、互いに平行に配置されたFRCウェブの少なくとも一部が互いに等距離に配置されていない。
【0018】
そのような配置は、静力学の点で等距離の配置より好ましいかもしれず、使用技術的に不利な点がない。特に、空間に張り渡すために複数のコンクリート床版要素を並列させる必要がある場合、非等距離の配置になり得る。例えば、各2つのFRCウェブを有する2.4mの幅の2つのFRCスラブが互いに1.6mの間隔をおいて、かつFRCスラブの縁に対して0.4mの距離で並べて配置される場合である。
【0019】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、FRCウェブ密度がより高い少なくとも1つの領域が形成されるように、互いに平行に配置されたFRCウェブの一部が互いに平行に配置されたFRCウェブの別の部分に対して等距離にない。
【0020】
より高いFRCウェブ密度、つまり基礎構造の上面の単位面積当たりのFRCウェブがより多いことによって、コンクリート床版要素が局所的に強化される。このような強化は、例えば、コンクリート床版の製造プロセスにおいてコンクリート床版要素が建物の側壁又は床版支柱に載る、若しくは支持されることにより、特に負荷がかかるコンクリート床版要素の領域を強化するために有利である。このような比較的狭い間隔は、通常の間隔の半分から1/4の範囲、すなわち例えば5cm又は10cmから75cm又は150cm、特に30cmであり得る。
【0021】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、FRCウェブの少なくとも2つは、少なくとも2つのFRCウェブが交点で交わるように、180°未満で0°より大きい角度で、特に互いに直交に互いに配置されている。この交点で少なくとも2つのFRCウェブが互いの中に、若しくは互いの上に差し込まれる。
【0022】
差込み接続は、FRCウェブの互いの向きの固定を可能にする一方で、もう1つのFRCウェブがすでに他の方法で基礎構造と接続されている限りで嵌め着けられた若しくは嵌め込まれたFRCウェブの固定をもたらすか、又は少なくとも寄与する。さらに、差込み接続は、FRCウェブが基礎構造の上面に、例えばさらなる過程において取り付けられるべき寄木床板又はそれに類するもののための平らな支持面の形成をもたらすことができる。
【0023】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、2つのFRCウェブの少なくとも1つが交点において溝を有する。
【0024】
特に、すでに存在するFRCウェブに対して角度を付けて配置されるべき別のFRCウェブだけが、すでに存在するFRCウェブに嵌め着けられるように溝を有することができる。その場合、後から配置される別のFRCウェブの上縁は、すでに存在するFRCウェブのそれよりもはるかに上に位置することになろう。
【0025】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、FRCウェブの少なくとも2つが交点において各1つの互いに逆向きの溝を有する。
【0026】
両方のFRCウェブをそれらの交点において詳しく見ると、一方のFRCウェブは上向きに開いた溝を有し、もう一方のFRCウェブは、逆向きの、すなわち下向きに開いた溝を有する。相互の差し込みが機能するようにするため、一方のFRCウェブの溝は少なくとももう一方のFRCウェブの幅と、及びその逆に同じ幅でなければならない。差込みの過程が不必要に複雑にならないようにするために、溝は、大抵の場合、いくらか大きめに設計され、それによりある程度の遊びをもたらす。その結果として、接触面の代わりに、交点においてFRCウェブの周りに空き空間が形成される。次に平らな支持面もさらに形成できるようにするために、2つの溝の深さは合計で、同じ高さを有するFRCウェブの少なくとも交点における高さに相当する。
【0027】
FRCウェブが大きな縦方向の圧縮力を受けることができるようにするために、例えば、上向きに開いた溝に充填材(例えばモルタル)を供給でき、それにより隙間の不正確さ、つまり上記の遊びとそれによって生じる空き空間が補償される。
【0028】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、FRCウェブ、又は複数の断片から構成されるFRCウェブの断片が、少なくとも2つの他のFRCウェブ間に180°未満で0°より大きい角度で、特に直交に配置され、これらと接続されている。
【0029】
FRCウェブ、若しくはこのようなものの断片と2つの横方向に延びる他のFRCウェブとの接続は、例えば、例えばモルタル又は接着剤などの結合剤を用いて行うことができる。このようなものにより、1つのFRCウェブ若しくはFRCウェブ断片と、それぞれ隣接する2つの他のFRCウェブの端部間の間隔を少なくとも部分的に埋めることができる。これに代えて、断片若しくはFRCウェブを円錐形に成形することができ、それにより2つの他のFRCウェブ間に差し込む、ないしは締め付けることができる。例えばくさび又はそれに類するものを間隔に押し込むことによって締付け接続(Klemmverbindung)を提供することもできる。
【0030】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、FRCウェブの少なくとも3つ、特に少なくとも4つが、少なくとも部分的にコンクリートが流し込まれた空間をそれらが包囲するように互いに配置されている。
【0031】
1つ又は複数のこのような空間をふさぐことによって、コンクリート床版要素を的確に、若しくは局所的に(punktuell)、しかしさらに、より広い面積にわたって強化することができる。
【0032】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、FRCウェブの少なくとも1つが中実に(massiv)形成されている、及び/又はFRCウェブの少なくとも1つが空隙(Kavitaet)を有する。
【0033】
FRCウェブの個々の形態は、コンクリート床版要素を、その上に構築するコンクリート床版の安定性要件に最適に適合させる可能性を提供する。より簡単な実施形態では、例えばすべてのFRCウェブが同一に形成され、かつ中実である。これに対して、より特別な実施形態では、FRCウェブの的確に一部、又は全部に例えばスロットの形の各1つ、又は複数の空隙を備えて設計することができる。その場合、これらの空隙に引張補強材を挿入することができる。FRCウェブとの結合を確保するために、空隙に、例えばモルタル又は接着剤などが流し込まれる。特に床版支柱又は壁の上に、空隙を使って上部引張補強材を設置することが有意義である。上部引張補強材として、例えば、引張棒などの引張要素、あるいは鋼補強材又は繊維補強材(例えばガラス、炭素、アラミド、玄武岩ベースの)が考えられる。空隙は、例えば10mm~30mmの幅である。ウェブが比較的太い、すなわち比較的厚い場合、例えばウェブ幅マイナス20mmまで幅を広くすることができる。空隙は、例えば40mmから100mmまで、それどころか150mmまで深さである。
【0034】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、基礎構造は、少なくとも2つの平面状に並べて配置された隣り合うFRCスラブを備える。
【0035】
計画されたコンクリート床版の大きさに応じて、しかしさらに、建設現場の、例えばそこへの輸送路などの諸条件に応じて、FRCスラブとFRCウェブを別々に配送すること、次いで現場で、基礎構造が1つより多いFRCスラブを必要とするぴったりと合うコンクリート床版要素を製造することが有利であり得る。コンクリート床版が例えば8m×8mの面積をカバーすべきであるが、建設現場に2m×8mの面積のFRCスラブしか引き渡せない場合、現場でこのコンクリート床版のために、基礎構造に各4つのFRCスラブを有する合計4つのコンクリート床版要素を製造することができる。しかし、特殊サイズのコンクリート床版要素が所望される場合にも、これらを標準サイズで製造された複数のFRCスラブから簡単に組み立てて、裁断することさえできる。
【0036】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、FRCスラブは、それらの互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に接着される。
【0037】
1つよりも多いFRCスラブを備える安定した基礎構造を提供できるようにするために、FRCスラブを互いに接続することができる。考えられる接続技術は、特に、例えば、例えばモルタルや接着剤などの結合剤にもとづいた接着である。
【0038】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、少なくとも1つの接続要素が、上面上で、平面状に並べて配置された隣り合うFRCスラブの互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に取り付けられている。
【0039】
特に安定した基礎構造を実現するために、平面状に並べて配置された隣り合うFRCスラブの互いに向きを合わせた面に沿って、引張接続の形の接続要素を、例えば、上側から貼り付けられる、例えば接続パッチ(例えば繊維複合プラスチック(FRCK)、炭素繊維プラスチック(CFK)、あるいは例えば鋼又はFRP(Fiber Reinforced Plastic)スラブストリップからなる薄片)によって設置することができる。
【0040】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、少なくとも1つの支柱が末端に、及び上面の方に向けて延長部を有する。同時に、基礎構造のFRCスラブは、延長部より大きく形成されている切欠きを有する。したがって、延長部と切欠きは形状結合用に寸法設定されていない。延長部は切欠きに配置され、そこに固定されている。
【0041】
固定は、例えば充填材を使って行うことができる。例えば、接着剤又はモルタルなどの結合剤、しかし、例えば砂も充填材として考えられる。さらに、固定は、例えば(例えばくさび形の)小板の形の遮断物を取り付けることによってでき、この小板が上から切欠きに打ち込まれ、その中で延長部が「くさび固定(verkeilt)」されるようにこれが縮小される。選択された固定手法によっては、充填材、特に結合剤のより良い付着を可能にするために、延長部の外面を少なくとも部分的にざらざらにすることが有利であり得る。基本的に、延長部は、横断面において、例えば矩形、円形、又は楕円形などの極めて多様な形状を有することができる。支柱ごとの延長部の数、及びその形態も様々であり得る。例えば、各支柱、又は1つおき、又は2つおきの支柱にだけ各1つの延長部を配置することができ、延長部は、例えばある支柱ではその長手方向の広がり全体にわたって延在し、別の支柱でもまた長手方向の広がりの一部のみを占める。しかし1つの支柱に複数の、例えば2、3、4つなどのより短く形成された延長部が存在することもでき、これらの延長部は縦方向に並べて配置されている。これに対応して、FRCスラブ(単数又は複数)若しくは基礎構造の切欠きは、相補的に配置されているか、又は一貫した溝の形で実現されている。
【0042】
延長部は、一方では切欠きに差し込まれ、そこに充填材によってフィットさせるので、作成された接続は2つのコンセプトを統合し、ここでは差込みフィット接続(Steck-Pass-Verbindung)と呼ばれる。一方では、2つの部品が縦方向の動きにより互いにくさび固定され、それによりFRCスラブの横方向の引張荷重が可能になる。その一方で、FRCスラブに対して横方向に歯が継合され(gefuegt)、それにより接続とともに非常に大きい縦方向の力を受けることができる。初めにコンクリート床版要素の差込みフィット接続が形状結合にもとづくのではなく、延長部と切欠きが、ある程度の遊びを有することにより、これらを形成する場合の公差が比較的大きくてもよく、そのことが製造を簡単にする。それでもくさび固定の形の強力な接続を達成するために、遊びを埋め合わせる、若しくは補償する充填材が、例えば結合剤(例えば液圧で結合されたモルタル)を注入する、充填材として砂を詰める、あるいはくさび又は小板を打ち込むことによって切欠きに導入され、この場合、くさびないしは小板を充填材とみなすことができる。したがって、FRCウェブとFRCスラブを接続する場合に、ねじ又は有機接着剤の使用を完全にやめることができる。
【0043】
製造の観点から、FRCウェブの支柱に対応する延長部、及びFRCスラブに対応する切欠きを装え付けることがより簡単であるので、実施例は、主にこの実施形態を扱う。しかし、これらの2つの要素の差込みフィット接続を逆に、つまりFRCスラブに延長部を設け、FRCウェブに切欠き(場合によっては一貫した溝の形で実現される)を設けることにより実装することも問題なく可能である。その場合、切欠きを、延長部の代わりに、すでに説明された延長部の配置パターンに従って配置することができる。差込みフィット接続を実現するために、これらの2つの変形形態を組み合わせることも可能であり、つまり延長部及び切欠きを有するFRCスラブと、延長部及び切欠きを有するFRCウェブを形成することが可能である。
【0044】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、延長部及び切欠きは、横断面においてくさびの形状を有する。
【0045】
この場合、形状を定義するくさびは、1つの傾斜面又は2つの傾斜面を有するくさびであり得る。延長部のジオメトリ、つまりくさび形にもとづいて、これは横方向に引っ張られた場合に切欠きに締め付けられる。差込みフィット接続を実現するために、切欠きにおける延長部の固定が、例えば結合剤(例えばモルタル、接着剤、...)又は砂などの充填材を使って行われることが好ましい。この実施形態では、差込みフィット接続が特に強力であり、非常に大きい縦方向力、及び横方向引張力も良好に受けることができる。
【0046】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、切欠きの寸法と延長部の寸法は、特に切欠きの最も狭い箇所が延長部の最も幅の広い箇所より大きく形成されていることにより、延長部を上側から切欠きに導入可能であるように互いに調整されている。
【0047】
この実施形態では、延長部と切欠きは、これらが歯のように横方向に継合され得る、つまり延長部を上側から切欠きに導入できる大きさの遊びを設けて製造される。延長部と切欠きが横方向にもはや解離せず、それどころかこの方向に力を受けることができるようにするために、これらの間の隙間に、すでに説明したように、モルタル、接着剤、砂、くさび、小板、又は他の充填材料が流し込まれるか、若しくは締め付けられる。
【0048】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、延長部と切欠きとは、横断面において1つの傾斜面のみを有するくさびの形状を有する。
【0049】
驚くべきことに、切欠きと延長部とが横断面において2つの傾斜面を有するくさびの形状を有することは必要でなく、むしろ、大きい縦方向力と、さらに横方向引張力を受けるという有利な特性が、傾斜面が1つだけのくさびの形状の横断面が存在する場合にすでに生じ、このことによっても製造がより簡単になる。
【0050】
本発明の一態様は、少なくとも1つの上記のコンクリート床版要素を備えるコンクリート床版に関する。
【0051】
通常の鉄筋コンクリート床版と比較して大幅な重量の節減の他に、本発明によるコンクリート床版要素にもとづいて資源を著しく節減することもできる。その場合、節減は、第1に床版それ自体に影響を与えるが、床版を担持する構造にも作用する。床版がより軽くなると、壁と担持する柱もそれほど重厚に(massiv)形成しなくてもよい。上記のコンクリート床版要素にもとづく工法の別の利点は、作業の大部分を屋内工場で行うことができ、建設現場での作業がはるかに短縮され、天候依存性もはるかに減じられる。それにもかかわらず、トラックで輸送される個々の要素(例えばコンクリート床版要素又はFRCスラブ)よりもはるかに大きい大型の床版を構築することが可能である。現場で組み立てられた基礎構造は複数の方向に持ちこたえ、床版製造過程の後に最終的に、例えば3つ又は4つの床版支柱のみで立つ。
【0052】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、これは、基礎構造の上面に配置され、FRCウェブの少なくとも1つの空所に通される少なくとも1つの線管を備える。
【0053】
従来の鉄筋コンクリート床版では、線管はコンクリートに埋め込まれ、それにより後から線管を敷設することは多大な手間と結びついている。しかし本発明によるコンクリート床版要素は、線管をFRCウェブの、例えば弧の形の空所に通すことを可能にし、コンクリートへの埋め込みを不必要にする。このようにして、コンクリート床版の完成後も、例えば改築の過程で線管を簡単に、かつ複雑でなく敷設することができる。すべての床版に線管を敷設する必要はないため、これは当然、任意的な特徴である。
【0054】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、コンクリート床版は、FRCウェブで支持されるカバー層を備える。このようなカバー層は、例えば木材(例えば寄木張りの床)、石(例えば屋上テラスプレート)、セラミック(例えばタイル)、及び/又はFRCコンクリートからなるフロアパネルを含むことができる。
【0055】
カバー層がFRCウェブで支持されることにより、床版構造全体、特にコンクリート床版要素、場合によってはそれに敷設された線管への上からのアクセス性が保証されている。このことにより、改修及び維持補修作業が特に複雑でなくなる。
【0056】
本発明の別の態様は、2つのFRCコンクリート要素を接続するための差込みフィット接続の使用に関する。
【0057】
差込みフィット接続は、すでに説明したように、好ましくは横断面においてくさびの形状を有する延長部と、延長部が導入され、そこに固定される好ましくは横断面においてくさびの形状を有する切欠きとにもとづいている。固定は、特に充填材を使って行われる。FRCコンクリート要素の1つは延長部を有し、もう1つのFRCコンクリート要素もまた切欠きを有する。
【0058】
本発明のまた別の態様は、コンクリート床版を製造する方法に関し、少なくとも1つのコンクリート床版要素を提供することを包含する。さらに、方法は、任意的に、基礎構造の上面に少なくとも1つの線管を配置すること、及びこの線管をFRCウェブの少なくとも1つの空所に通すこと、ならびに/あるいはFRCウェブでカバー層を支持することを包含する。
【0059】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、方法は、少なくとも2つのコンクリート床版要素を提供すること、及び少なくとも2つのコンクリート床版要素を平面状に並べて配置することを包含する。任意的に、特に続いて、方法は、少なくとも2つのコンクリート床版要素をそれらの互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に接着することを包含する。同様に任意的に、補足又は代替として、方法は、少なくとも1つの接続要素を、上面上で、平面状に互いに並べて配置された隣り合うコンクリート床版要素の互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に取り付けることを包含することができる。
【0060】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、方法は、基礎構造の上面に少なくとも1つの追加的FRCウェブを配置することを包含する。
【0061】
配置することは、少なくとも1つのコンクリート床版要素の少なくとも1つのすでに存在するFRCウェブに対して、例えば180°未満で0°より大きい角度で行われる。配置することは、例えば少なくとも1つの追加的FRCウェブを少なくとも1つのすでに存在するFRCウェブ上に差し込むことを包含する。
【0062】
本発明の一態様は、コンクリート床版を製造する別の方法に関し、基礎構造を形成するために少なくとも1つのFRCスラブを提供することを包含する。さらに、方法は、任意的に、少なくとも1つの線管を基礎構造の上面に配置すること、及び少なくとも1つのFRCウェブを基礎構造の上面に配置することを包含する。さらに、方法は、カバー層をFRCウェブで支持することを包含する。特に、工程は上記の順序で行われる。
【0063】
少なくとも1つのFRCスラブは、好ましくは横断面がくさび形状の切欠きを有する。少なくとも1つの線管は、好ましくは切欠きが覆われない(frei bleiben)ように配置される。少なくとも1つのFRCウェブを配置することは、好ましくは、FRCウェブの支柱の横断面がくさび形の延長部を各1つの切欠きに導入すること、及び充填材を使って延長部を切欠きに固定することによって行われる。
【0064】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、方法は、基礎構造の上面に少なくとも1つの別のFRCウェブを配置することを包含する。
【0065】
配置することは、特にすでに配置された少なくとも1つのFRCウェブに対して180°未満で0°より大きい角度で行われ、ならびに/あるいは少なくとも1つのすでに配置されたFRCウェブ上に少なくとも1つの追加的FRCウェブを差し込むことを包含する。
【0066】
さらに言及される、及びすでに言及された実施形態の各々と矛盾しない限りで組み合わせることができる本発明によるコンクリート床版要素の一実施形態では、方法は、基礎構造を形成するために少なくとも2つのFRCスラブを提供すること、及び少なくとも2つのFRCスラブを平面状に並べて配置することを包含する。任意的に、方法はさらに、特に少なくとも2つのFRCスラブをそれらの向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に接着することを包含する。同様に任意的に、上述した工程に代えて、又は加えて、方法は、特に少なくとも1つの接続要素を、上面上で、平面状に並べて配置された隣り合うFRCスラブの互いに向きを合わせた面に沿って少なくとも部分的に取り付けることを包含する。少なくとも2つのFRCスラブは、好ましくは横断面がくさび形の切欠きを有する。
【0067】
本発明の別の態様は、コンクリート床版要素を製造する方法に関し、基礎構造を形成するために少なくとも1つのFRCスラブを提供すること、及び少なくとも1つのFRCウェブを基礎構造の上面に配置することを包含する。
【0068】
方法は、任意的に、基礎構造の上面に少なくとも1つの別のFRCウェブを、好ましくはすでに配置された少なくとも1つのFRCウェブに対して180°未満で0°より大きい角度で配置することを包含し、ならびに/あるいは、好ましくは少なくとも1つの追加のFRCウェブを少なくとも1つのすでに配置されたFRCウェブ上に差し込むことを包含する。
【0069】
少なくとも2つのFRCスラブは、好ましくは横断面がくさび形の切欠きを有する。少なくとも1つのFRCウェブを配置することは、特にFRCウェブの支柱の横断面がくさび形の延長部を各1つの切欠きに導入すること、及び充填材を使って切欠きに延長部を固定することによって行われる。
【0070】
以下、本発明の実施例について図をもとにしてさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1a】
図1aは、既知のコンクリート床版を通る模式的縦断面図である。
【
図1b】
図1bは、本発明によるコンクリート床版を通る模式的縦断面図である。
【
図2a】
図2aは、一実施形態によるFRCウェブを通る模式的縦断面図である。
【
図2b】
図2bは、別の実施形態によるFRCウェブを通る模式的縦断面図である。
【
図2c】
図2cは、本発明によるコンクリート床版要素を通る模式的縦断面図である。
【
図3a】
図3aは、本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素を通る模式的横断面図である。
【
図3b】
図3bは、本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素を通る模式的横断面図である。
【
図3c】
図3cは、本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素を通る模式的横断面図である。
【
図3d】
図3dは、本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素の上面斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素の上面斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による複数の並べて配置されたコンクリート床版要素の上面斜視図である。
【
図6a】
図6aは、床版支柱に載っている本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素の上面斜視図である。
【
図6b】
図6bは、本発明による床版要素の模式的側面図である。
【
図6c】
図6cは、本発明によるコンクリート床版要素の上面斜視図である。
【
図6d】
図6dは、本発明によるコンクリート床版要素を通る模式的断面図である。
【
図7a】
図7aは、空間に結合剤が流し込まれた本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素の上面斜視図である。
【
図7b】
図7bは、空間に結合剤が流し込まれた本発明の別の実施形態によるコンクリート床版要素の上面斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明による互いに接続された2つのコンクリート床版要素の上面斜視図である。
【
図9】
図9は、部分的にカバー層を備える本発明によるコンクリート床版の上面斜視図である。
【
図10a】
図10aは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の実施形態である。
【
図10b】
図10bは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の実施形態である。
【
図10c】
図10cは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の実施形態である。
【
図10d】
図10dは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の実施形態である。
【
図10e】
図10eは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の実施形態である。
【
図11a】
図11aは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の別の実施形態である。
【
図11b】
図11bは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の別の実施形態である。
【
図11c】
図11cは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の別の実施形態である。
【
図11d】
図11dは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の別の実施形態である。
【
図11e】
図11eは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の別の実施形態である。
【
図12a】
図12aは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の別の実施形態である。
【
図12b】
図12bは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の別の実施形態である。
【
図12c】
図12cは、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の別の実施形態である。
【
図13a】
図13aは、差込みフィット接続を有する本発明の実施形態によるコンクリート床版要素を通る模式的断面図である。
【
図13b】
図13bは、差込みフィット接続を有する本発明の実施形態によるコンクリート床版要素を通る模式的断面図である。
【
図13c】
図13cは、差込みフィット接続を有する本発明の実施形態によるコンクリート床版要素を通る模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1aにおいて、カバー層のない既知のコンクリート床版0を通る縦断面図が模式的に示されている。コンクリート床版0は、約300mmの厚さで中実である。このようなコンクリート床版0は、活荷重が2kN/m
2、永久荷重が2kN/m
2、死荷重が7.5kN/m
2である。そのことから、合計11.5kN/m
2になる。
【0073】
図1bにおいて、カバー層のない本発明によるコンクリート床版1を通る模式的縦断面図が示される。この例のコンクリート床版は、
図1aに示される通常のコンクリート床版と同じ面積を有し、同様に約300mmの厚さであるが、中実に形成されていない。むしろ、コンクリート床版1は、基礎構造10を形成する複数のFRCスラブ100から構成される。この基礎構造10、したがってFRCスラブ100の上面11には、縦方向に延びるFRCウェブ21と、これに対して横方向に延びるFRCウェブ22が配置され、これらと接続されている。縦断面が通る縦方向に延びるFRCウェブ21は、合計3つの空所202と4つの支柱201を有する(明瞭化のために1つの空所と支柱のみに参照符号が付されている)。支柱201は、基礎構造10とウェブ20との間の接続を提供するものである。さらに、図示されるコンクリート床版1は、4つの横方向に延びるFRCウェブ22を有し、これらはすなわち、縦方向に延びるFRCウェブ21に対して実質的に直交に向きが合わせられ、特に縦方向に延びるFRCウェブ21の支柱201の高さでこれらと交差する。本発明によるそのようなコンクリート床版は、活荷重が2kN/m
2、永久荷重が2kN/m
2、死荷重が1.8kN/m
2である。そのことから、合計5.8kN/m
2になる。次に、
図1aからの通常のコンクリート床版を
図1bからの本発明によるコンクリート床版と比較すると、本発明によるコンクリート床版が提供する利点がいかに大きいかがすぐにわかる。これは、同じ耐荷重能力でごくわずかな死荷重を伴い、したがって同じ安定性ではるかに軽量に構築する可能性を提供し、このことがさらに材料節約の大きな可能性を秘めている。
【0074】
図2aにおいて、3つの空所202と4つの支柱201を有するFRCウェブ20を通る模式的縦断面図が示されている。このFRCウェブは、例えば最終的な組立てで縦方向に延びるFRCウェブになるものである。次に、図示されるこのFRCウェブ20に対して直交して延びるさらなるFRCウェブを収容できるようにするために、図示されるFRCウェブ20は、支柱201の高さに溝203を有し、その中に、差込み方式で直交に向きを合わせたFRCウェブを収容することができる。溝203は、支柱201の上領域に設けられ、したがって基礎構造の上面から離れる方向を指す開口である。
【0075】
図2bにおいて、3つの空所202と4つの支柱201を有するFRCウェブ20を通る模式的縦断面図が示されている(明瞭化のために、1つの空所と1つの支柱のみに参照符号が付されている)。このFRCウェブ20は、例えば最終的な組立てで横方向に延びるFRCウェブになるものである。例えば2aに示されるように、差込み方式で縦方向に延びるFRCウェブと接続できるようにするために、FRCウェブ20は、縦方向に延びる、及び横方向に延びるFRCウェブが平坦な面を定義し、基礎構造の上面に配置されて同一の高さを有するように、縦方向に延びるFRCウェブの溝に適合するように調整されている溝203を支柱に有している(明瞭化のために、溝のうちの1つのみに参照符号が付されている)。溝203は、支柱201の下領域に設けられ、したがって基礎構造の上面の方を指す開口である。
【0076】
図2cは、基礎構造10の上面11に取り付けられた、平行にだけ延びるFRCウェブ20を有するコンクリート床版要素2を通る模式的縦断面図を示す。横方向に延びる他のFRCウェブを収容する必要がないため、FRCウェブ20を溝なしで形成することができる。
【0077】
図3aは、本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素2を通る模式的断面図を示す。示されているのは、上面11を有する基礎構造10を提供するFRCスラブ100とFRCウェブ20との間の差込みフィット接続(Steck-Pass-Verbindung)である。横断面は、1つの傾斜面のみを有するくさびの形状の延長部204を有するFRCウェブ20の支柱201を通って延びる。FRCスラブ100もまた、1つの傾斜面のみを有するくさびの形状の切欠き110を有する。切欠き110は、延長部204を上面11から切欠き110に配置できるのに十分な大きさに設計されている。したがって、接続は、さしあたり形状結合的接続ではない。それにもかかわらず形状結合が生じるようにするために、切欠き110と延長部204との間の空洞(Hohlraum)に、例えばモルタル、砂、又はそれに類するものといった充填材31が少なくとも部分的又は完全に流し込まれるか若しくは充填され、そのようにしてくさび固定される。
【0078】
図3bは、本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素2を通る模式的横断面図を示す。
図3aの実施形態とは対照的に、延長部204と切欠き110が2つの傾斜面を有するくさびの形状にならって作られている。この形を発想させるくさびが破線で描かれている。
【0079】
図3cは、
図3aと同じコンクリート床版要素2を通る横断面図を示すが、1つの傾斜面のみを有するくさびが破線で描かれ、その形に支柱の延長部204と切欠き110が対応する。
【0080】
図3dは、本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素2の上面斜視図を示す。
図3aのように、
図3bにおいても上面11を有する基礎構造10を提供するFRCスラブ100とFRCウェブ20との間に差込みフィット接続が示されている。FRCウェブ20の支柱201の延長部204は、表面11を有する基礎構造10の一部である、FRCスラブ100における細長い切欠き110に入っている。細長い切欠き110と細長い延長部204は両方とも、1つの傾斜面のみを有するくさびの形状の横断面を備え、充填材31によって互いに接続されている。
【0081】
図4は、本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素2の上面斜視図を示す。その基礎構造10はFRCスラブ100からなり、基礎構造10の上面11の上面と同じであるその上面に2つのFRCウェブ20が配置されている。これらのFRCウェブ20は互いに平行に向きが合わせられ、互いに同一に組み立てられている。各FRCウェブ20は、12個の弧状の空所202と13個の支柱201を有する(明瞭化のために、2つのFRCウェブ20のうちの一方の空所202と1つの支柱201のみに参照符号が付されている)。このようなコンクリート床版要素2は、コンクリート床版を製造するために使用でき、FRCスラブ100は、下型枠及び引張フランジとして用いられ、FRCウェブ20は圧縮フランジとして機能する。
【0082】
基礎構造10のFRCスラブ100と、FRCウェブ20が切り取られるFRCスラブ(単数又は複数)(図示せず)は、例えば縦方向のみに、あるいは縦方向と横方向にプレストレスがかけられた。通常、縦方向に張力がかけられた繊維が横方向に張力がかけられた繊維と接続されることもないし、縦方向に張力がかけられた繊維ないしは横方向に張力がかけられた繊維同士が接続されることもない。縦方向に張力をかけるための繊維と横方向に張力をかけるための繊維は複数の層にして配置することができる。(例えば、炭素、ガラス、ケブラー、玄武岩、鋼、天然繊維などからなる)繊維によるプレストレスがかけられ、「繊維」という用語には、個々の、又は複数の細長い可撓性の補強要素、例えば単一フィラメント、マルチフィラメント、(例えば綯われた又は撚られた)繊維束、ワイヤ、あるいは(典型的には2,000~約16,000本のフィラメントを含む)1つ又は複数の粗紡糸を含む。繊維の正味断面積(すなわち、樹脂含侵なし)は、例えば約5mm2より小さく、特に約0.1mm2~約1mm2の範囲である。繊維の正味断面積に対するその引張強度は、例えば約1000N/mm2より大きく、特に約1800N/mm2より大きい。繊維の引張歪み特性は、例えば約1%より大きい。一例では、繊維、特に炭素繊維に、繊維の破壊応力の約50%~約95%、特に少なくとも約80%、特に少なくとも約90%の応力で応力をかけることができる。例えば、補強間隔(=2つの隣り合う繊維間の距離)は、約5mm~約40mm、特に約8mm~約25mmであり、及び/又はFRCスラブは、少なくとも10本、特に少なくとも40本の繊維を含む。例えば、補強間隔は、FRCスラブの高さの2倍以下である。FRCスラブの補強密度(Armierungsgehalt)は、例えば幅1m当たり20mm2を超える。例えば、プレストレスを与える場合に、FRCスラブの負荷要件(次元力)に応じて少なくとも約30kN/m又は少なくとも約300kN/mの応力が生成される。
【0083】
図5は、4つの並べて配置された同じ実施形態のコンクリート床版要素2の上面斜視図を示す。各コンクリート床版要素2は、3つの互いに平行に延び同一に形成されたFRCウェブ20を有し、これらのFRCウェブは、これらが配置されているそれぞれのFRCスラブ100の全長に沿って延在し、それらの支柱の1つでこれと面一に終端する。合計4つのFRCスラブ100が面一に配置され、末端で各1つの側壁で支持されている。隣り合うFRCスラブ100は、互いに隣接する側で互いに接続されている。ここに示される例では、結合剤は、FRCスラブ100の互いに隣接する側の接触面に沿って塗布される(図には見えない)。複数のFRCスラブ100を並置する結果としてFRCウェブ20が等距離で平行に配置された1つの大きなFRCスラブのようになるように、FRCスラブ100上に各3つのFRCウェブ20が配置されている。
【0084】
図6aは、床版支柱上に載っている本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素2の上面斜視図を示す(図示される部分図において右前方に床版支柱が見える)。コンクリート床版要素2は、縦方向に延びるFRCウェブ21と横方向に延びるFRCウェブ22とを有する。縦方向に延びるFRCウェブ21は、支柱でFRCスラブ100と面一に終端するのに対して、横方向に延びるFRCウェブ22は、空所でFRCスラブ100と面一に終端する。横方向に延びるFRCウェブ22が互いに等距離に配置されるのに対して、縦方向に延びるFRCウェブ21の場合、等距離ではあるが互いにより幅の広い配置の領域25と、同じく等距離であるが互いにより狭い配置の領域26がある。図示される例では、より狭いFRCウェブ配置の領域26は、床版支柱にわたって縦方向の強化をもたらす。隣り合うFRCスラブ100は互いに隣接する側で、接続要素32としての各1つの薄片が互いに隣接する側の接触面に沿ってFRCスラブ100の全長にわたって貼着されていることにより互いに接続される。個々のFRCスラブ100は、大抵の場合、幅が一方向に制限されているが(輸送のため)、横方向に延びるFRCウェブ22と貼着された接続ストリップ32によって、床版を両方向に任意の自由なスパンで構築することができる。
【0085】
図6bは、本発明による床版要素2の模式的側面図を示し、これに対して
図6cは、このコンクリート床版要素2の模式的上面図を示す。FRCスラブ100に配置された縦方向に延びるFRCウェブ21を見ることができる。2つの横方向に延びるFRCウェブ22も見ることができる。縦方向に延びるFRCウェブ21への横方向に延びるFRCウェブ22の嵌め着けを可能にするために、これは交点において上方に開いた溝203を有する。溝203は、横方向に延びるFRCウェブ22の幅の広さより広く形成されている。それに対応して、交点において横方向に延びるFRCウェブ22の左右に空洞ができ、この空洞に、例えばモルタルなどの充填材31が少なくとも部分的に充填され、それにより引張力を受けることができる接続が縦方向に延びる、及び横方向に延びるウェブ21、22の間に作成される。
【0086】
図6dは、本発明によるコンクリート床版要素2を通る模式的断面図を示す。より厳密に言えば、これは第1の方向に向きを合わせたFRCウェブ、ここでは縦方向に延びるFRCウェブ21を通る横断面である。この縦方向に延びるFRCウェブ21に対して横向きに延びるFRCウェブ22を通り、縦方向に延びるFRCウェブ21によって2つに分割されているように見える断面を見ることができる。FRCウェブ21、22は、FRCスラブ100に配置されている。縦方向に延びるFRCウェブ21が空隙205を有し、この空隙に補強棒の形の2つの補強材33が挿入され、充填材31が流し込まれている。このような実施形態は、大きい引張力を受けることを可能にする。任意的に、このような補強材33は、ここに破線で示されるように、十字形に延びることもできる。つまり、横方向に延びるFRCウェブ21だけでなく、縦方向に延びるFRCウェブ22も、例えば充填材に埋め込まれた2つの補強棒(破線で示される)が入っている空隙(この図示には見て取れない)を有する。縦方向に延びる、及び横方向に延びる補強材が互いに邪魔しないようにするために、これらは好ましくは異なるレベルに配置される。
【0087】
図7aは、本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素2の上面斜視図を示す。FRCウェブ20は、FRCウェブ20によって区切られる個々の空間30を有する一種のカセット構造を形成するように互いに配置されている。さらなる階の構築を可能にするために、例えばこれらの空間30の個々にコンクリートなどの結合剤31が流し込まれ、それにより局所的な強化を形成することにより、図示されるコンクリート床版要素2上に形成されるべきコンクリート床版を強化することができる。
【0088】
図7bは、
図7aに示されるものと同等の本発明の一実施形態によるコンクリート床版要素2の上面斜視図を示す。しかしここでは空間30をコンクリート31で埋めることによる局所的な強化が切断されている。
【0089】
図8は、結合剤によって固定された接続要素32を用いて、及び隣り合うFRCスラブ100の互いに向きが合わせられた互いの方を指す面を貼り合わせることによって、接続が実現する、互いに接続された2つの本発明によるコンクリート床版要素2の上面斜視図を示す。縦方向に延びるFRCウェブ21は、これらがFRCスラブ100の互いに隣接する側の接触面に対して平行に延びるように向きが合わせられ、それに対して横方向に延びるFRCウェブ22は、FRCスラブ100の互いに隣接する側の接触面の上に空所202の1つが掛かるように向きが合わせられている。それに対応して、接続要素32は、横方向に延びるFRCウェブ22の列を形成する完全に等しい弧状の空所202を通って敷設されている。
【0090】
図9は、部分的にカバー層50を備えた本発明によるコンクリート床版1の上面斜視図を示す。スロットの形の空隙205を部分的に有する縦方向に延びるFRCウェブ21と横方向に延びるFRCウェブ22が、目に見えるコンクリート床版要素2の基礎構造の表面11から配置されている。空隙205は上方に開き、つまりそれらの開口は上面11から離れる方向を指し、したがって引張要素(例えば鉄筋、FRCK棒、又はそれに類するもの)を上から挿入し、例えばモルタルなどの結合剤を流し込むことができ、それにより追加の補強が提供される。ここに示される空隙205には(まだ)引張要素及びモルタルが充填されていない。例えば寄木板がFRCウェブ21、22で支持されることにより、FRCウェブ21、22によって形成される平面上にカバー層50を載せることができる。
【0091】
本発明によるコンクリート床版1を製造する方法について、
図10a~
図10eに示される上面斜視図を用いて説明する。
図10aに示される第1の工程において、複数のコンクリート床版要素2(ここでは4つ)が例えば木製方杖及び床版支柱によって形成されるトラス上に提供される。次いで、第2の工程において、
図10bに見て取れるように、これらのコンクリート床版要素2は互いに向きが合わせられ、厳密には、これらは1つの大きい面を形成し(ここでは大きい矩形)、すべての空間方向に向かって互いに面一に配置されている。個々のコンクリート床版要素2の相対位置を固定するために、これらが続いて少なくとも部分的に互いに接着される(図示せず)。提供されたコンクリート床版要素2が縦方向に延びるFRCウェブ21だけを備えていたので、次の工程において、
図10cに示されるように、横方向に延びるFRCウェブ22が上面11に配置され、それにより強化が達成される。例えば縦方向に延びるFRCウェブ21と横方向に延びるFRCウェブ22に存在し、互いに向きを合わせた溝を用いて、横方向に延びるFRCウェブ22が、例えばすでに存在している縦方向に延びるウェブ21に嵌め着けられる。純粋な差込み接続よりも堅固な接続を達成するために、横方向に延びるFRCウェブ22の支柱に存在する延長部を基礎構造の上面11に存在する切欠き110に入れ、そこで、例えばモルタルなどの結合剤を充填することによって固定することができる。その後、
図10eに見て取れるように、トラスを取り外すことができ、床版は、決定的支承点、ここでは床版支柱に載っているにすぎない。しかしこの工程を後から、例えば線管40が敷設された後に、それどころかカバー層50が配置された後に初めて行うこともできる。これに続く、しかし横方向に延びるFRCウェブ22を取り付ける工程の前に行うこともできる
図10dを用いて説明される工程において、様々な線管40が敷設される。これらの線管40は、基礎構造11の上面11上に配置され、FRCウェブ21、22の空所202に通される。線管40の少なくとも一部が敷設された場合、カバー層50の取り付け、したがってコンクリート床版1の製造の完了を開始することができる。
【0092】
本発明によるコンクリート床版1を製造する別の方法について、
図11a~
図11eに示される上面斜視図を用いて説明する。第1の工程において、少なくとも1つのFRCスラブ100が提供される。複数のFRCスラブ100(
図11aに示されるように、ここでは4つ)が提供される場合、1つの大きな(大抵の場合矩形の)面が作られるように、これらのFRCスラブ100は互いに面一に向きが合わせられる。個々のFRCスラブ100を互いに接続するために、
図11bに示されるように、隣り合うFRCスラブ100の接触面に沿って接着される。このために、一方では結合剤を接触面に直接載せることができ、他方で、これに代えて、又はこれに加えて薄片のような接続要素32を、隣り合うFRCスラブ100の接触面に沿って上面11に貼り付けることができる。それに続く
図11cに示される工程において、線管40が敷設される。この工程がFRCウェブを配置する前に行われる場合、線管40は、後から配置されるべきFRCウェブ20の固定用に予定される箇所とぶつからないように敷設されなければならない。このような箇所は、例えばFRCウェブ20の支柱を収容するための切欠き110であり得る。図示される実施形態では、これらは個々のFRCスラブ100にわたって規則的に配置され、上面視で十字形に形成されている。代替的に線管40を敷設する前に行うこともできる
図11dに示される工程は、FRCウェブ20をとりわけFRCスラブ100によって形成される基礎構造10の上面11に取り付けることを包含する。例えば、最初に、一方の向きのFRCウェブ(例えば縦方向に延びるFRCウェブ21)、続いて、もう一方の向きのFRCウェブ(例えば横方向に延びるFRCウェブ22)が取り付けられる。例えばねじ留めなどの既知の固定の種類の他に、FRCウェブ20を、特にすでに説明した(
図3a及び
図3bを参照)差込みフィット接続によって取り付けることができる。基礎構造10のFRCウェブ21、22の十字形の配置が安定性を十分に与えること、基礎構造10を担持するために必要なのは、角ごとに1つの、4つの担持体若しくは支承体(Auflager)だけであることがよくわかる。しかし基礎構造10は、3つの担持体の形の3つの支承体のみで立つのに十分に安定しているであろう。残りの屋根支柱は取り外すことができる(トラスがなくなった
図11eを参照)。交差するFRCウェブ21、22を適切に取り付けることができるようにするために、これらが互いの中に、ないしは互いの上に差し込むことを可能にする協働手段を有することが好ましい。このような手段は、一般に、例えば互いに向きを合わせた溝又は相補的な突出部と切欠きなどの相補的な形状であり得る。次に、
図11eに示された最後の工程において、カバー層50がFRCウェブ20で支持され、コンクリート床版1の製造が終了する。
【0093】
図12a~
図12cをもとにして、本発明によるコンクリート床版を製造する方法の一実施形態の部分工程と、それによって本発明によるコンクリート床版要素2の構造についても説明される。
図12aは、並べて配置された3つのFRCスラブ100から構成される、上面11を有する基礎構造10を示す。FRCスラブ100は、上面11に取り付けられた接続要素32を介して互いに接続されている。FRCスラブ100は、FRCウェブの支柱、若しくは支柱の1つの延長部ないしは複数の延長部を収容するための切欠き110を有する。これは側面図であり、この実施形態の切欠き110はFRCスラブ100の全長を通って延在しない(他の実施形態において同じことがいえる)ので、図の平面の内方に置かれることを明確にするためにこれらは破線でしか示されない。個々のFRCスラブ110が互いに接続された後に、好ましくは、示唆される切欠き110と、FRCウェブ21の支柱の延長部201とを利用して、差込みフィット接続によって、FRCスラブ100ごとに各2つの縦方向に延びるFRCウェブ21が配置される。明瞭化のために、1つの延長部204のみに参照符号が付されている。延長部201は図の平面の内方に置かれているので、同様に破線で示されている。次に横方向に延びるFRCウェブ22を配置するために、これらを、すでに存在する縦方向のFRCウェブ21の間の個々の断片に差し込むことができる。例えば、モルタル又はそれに類するものといった、例えば充填材又は結合剤を使って隣接する縦方向に延びるFRCウェブ21と接着されることにより断片が支えられる。しかし断片を、末端で、すなわち隣接する縦方向に延びるFRCウェブ21の方向を指して、円錐形に形成することができ、それにより縦方向に延びるFRCウェブ21の間に規則通り締め付けることもできる。円錐形は、例えば図の左の横方向に延びるFRCウェブ22に示されている。ここでは、上面11に近い下領域に隙間が残り、この隙間が充填材で満たすこともできるが、覆われないこともできる。さらに、横方向に延びるFRCウェブ22の断片は、その支柱、若しくはこれらの支柱の延長部201を介して差込みフィット接続によってFRCスラブ100に配置される。明瞭化のために、1つの延長部204のみに参照符号が付されている。これらが導入される切欠き110は、
図12a及び
図12bには図示されず、
図12cに一度だけ参照符号が付されている。
【0094】
図13a~
図13cにおいて、本発明によるコンクリート床版要素2を通る断面を用いて差込みフィット接続の様々な変形形態が示されている。差込みフィット接続は、FRCウェブ20を部分的に基礎構造10と接続するために用いられる。基礎構造10は、上面11を有し、かつ少なくとも1つのFRCスラブ100を備える。FRCスラブ100はまた、ここに示される例では横断面がくさび形であり、上面11に向かって開いている少なくとも1つの切欠き110を有する。FRC要素20の支柱の同様に横断面がくさび形の延長部204が切欠き110内に突出する。切欠き110は、延長部204が上面11からそれの中に挿入できるようにその大きさが選択されている。次に力結合的接続を得るために、延長部204が切欠き110に、厳密には充填材31を使って固定される。切欠き110において延長部204を締め付け、それによりFRCウェブ20を基礎構造10と接続するために、モルタルや砂等の手段の他に、例えば横断面が矩形の簡単な小板(
図13aを参照)、くさび(
図13cを参照)、又は好ましくは互いに逆に向きを合わせた2つのくさび(
図13bを参照)を使用することもできる。
【符号の説明】
【0095】