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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】真空気密電気フィードスルー
(51)【国際特許分類】
   G01L 21/34 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
G01L21/34
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022517877
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2019075368
(87)【国際公開番号】W WO2021052600
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】518303251
【氏名又は名称】インフィコン・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイザー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアウス,ベルンハルト
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第03712874(DE,A)
【文献】特表2010-537211(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082893(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 21/00-21/36
G01F 25/00-25/20
H01J 40/00-49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空気密電気フィードスルー(10)であって、
-貫通開口部(23)を有し、前記貫通開口部(23)に隣接する第1の境界面(21)を有し、前記貫通開口部にまた隣接し、かつ前記第1の境界面の反対側の第2の境界面(22)を有する電気絶縁絶縁体要素(2)と、
-導電性導体要素(1)であって、前記貫通開口部(23)を通って延在し、前記導電性導体要素(1)の円周線に沿って前記電気絶縁絶縁体要素(2)に真空気密に接続された、前記導電性導体要素(1)と、
を備え、
前記電気絶縁絶縁体要素(2)は、光波長範囲の電磁放射線(25’、25’’、hν)を透過し、
前記第1の境界面(21)および/または前記第2の境界面(22)は、曲面として形成され、
前記導電性導体要素(1)は、第2のロッド端部(12)が前記第2の境界面(22)を越えて突出するよりも前記第1の境界面(21)をさらに越えて突出する第1のロッド端部(11)を有するロッド形状設計であり、
前記電気絶縁絶縁体要素(2)は、前記第1の境界面(21)と前記第1のロッド端部(11)との間の領域内の少なくとも第1の物点を、前記第2のロッド端部(12)よりも前記第1の境界面から遠い第1の像点上に結像する撮像レンズを形成する、真空気密電気フィードスルー(10)。
【請求項2】
前記第1の境界面(21)および前記第2の境界面(22)を分離する前記電気絶縁絶縁体要素(2)の円周線に沿って前記電気絶縁絶縁体要素(2)に真空気密に接続された金属フレーム(4)をさらに備える、請求項1に記載の真空気密電気フィードスルー(10)。
【請求項3】
前記導電性導体要素(1)は軸に沿って延在し、前記第1の境界面(21)は第1の領域を有し、前記第2の境界面(22)は第2の領域を有し、前記第1の領域および前記第2の領域は、前記軸を共通の回転軸として有する第1の回転面および第2の回転面の形態である、請求項1または2のいずれか1項に記載の真空気密電気フィードスルー(10)。
【請求項4】
前記電気絶縁絶縁体要素(2)は、前記貫通開口部(23)を有する平凸レンズである、請求項に記載の真空気密電気フィードスルー(10)。
【請求項5】
前記電気絶縁絶縁体要素(2)はサファイアからなる、請求項1からのいずれか1項に記載の真空気密電気フィードスルー(10)。
【請求項6】
溶融ガラスリング(3)は、前記導電性導体要素(1)と前記電気絶縁絶縁体要素(2)との間に真空気密接続を形成する、請求項1からのいずれか1項に記載の真空気密電気フィードスルー(10)。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の真空気密電気フィードスルー(10)を有する真空圧力センサ(30)。
【請求項8】
前記真空圧力センサ(30)はコールドカソード真空計として形成され、前記導電性導体要素(1)は前記コールドカソード真空計のアノードを形成する、請求項に記載の真空圧力センサ(30)。
【請求項9】
前記第1の境界面(21)は、前記真空圧力センサ(30)のプラズマ領域(26)に面し、光センサ(7)は、前記光波長範囲の電磁放射線(25)が前記プラズマ領域(26)から前記電気絶縁絶縁体要素(2)を通って前記光センサ(7)まで伝播することができるように前記第2の境界面(22)の側に配置されている、請求項に記載の真空圧力センサ(30)。
【請求項10】
前記第1の物点は前記真空圧力センサ(30)の前記プラズマ領域(26)内に配置され、前記光センサ(7)は前記第1の像点に配置される、請求項に記載の真空圧力センサ(30)。
【請求項11】
前記プラズマ領域(26)は、磁石アセンブリ(6)によって前記電気絶縁絶縁体要素(2)から離れた前記アノードの端部に制限される、請求項または10に記載の真空圧力センサ(30)。
【請求項12】
前記導電性導体要素(1)は、前記電気絶縁絶縁体要素(2)に近い領域に電気絶縁性のコーティングを有する、請求項から11のいずれか1項に記載の真空圧力センサ(30)。
【請求項13】
光波長範囲の電磁放射線の放射強度を測定するための方法であって、
a)請求項1からのいずれか1項に記載の真空気密電気フィードスルー(10)を有する真空装置を提供するステップと、
b)前記導電性導体要素(1)を介して前記真空装置の真空領域内に電気エネルギーを供給して、前記真空領域内でプラズマに点火して維持するステップと、
c)前記プラズマから放出された電磁放射線の前記放射強度を光センサ(7)によって測定するステップと、
を含み、
前記電磁放射線は、前記プラズマから前記電気絶縁絶縁体要素(2)を通って前記光センサ(7)上に放射する、方法。
【請求項14】
光波長範囲の電磁放射線の放射強度を測定するための方法であって、
a)真空気密電気フィードスルー(10)を有する真空装置を提供するステップを含み、前記真空気密電気フィードスルー(10)は、
-貫通開口部(23)を有し、前記貫通開口部(23)に隣接する第1の境界面(21)を有し、前記貫通開口部にまた隣接し、かつ前記第1の境界面の反対側の第2の境界面(22)を有する電気絶縁絶縁体要素(2)と、
-導電性導体要素(1)であって、前記貫通開口部(23)を通って延在し、前記導電性導体要素(1)の円周線に沿って前記電気絶縁絶縁体要素(2)に真空気密に接続された、前記導電性導体要素(1)と、
を備え、
前記電気絶縁絶縁体要素(2)は、光波長範囲の電磁放射線(25’、25’’、hν)を透過し、
前記第1の境界面(21)および/または前記第2の境界面(22)は、曲面として形成され、
前記方法はさらに、
b)前記導電性導体要素(1)を介して前記真空装置の真空領域内に電気エネルギーを供給して、前記真空領域内でプラズマに点火して維持するステップと、
c)前記プラズマから放出された電磁放射線の前記放射強度を光センサ(7)によって測定するステップと、
を含み、
前記電磁放射線は、前記プラズマから前記電気絶縁絶縁体要素(2)を通って前記光センサ(7)上に放射する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空気密電気フィードスルーに関する。本発明はさらに、電気フィードスルーを有する真空圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマによって放出された電磁放射線を光学窓を通して真空領域から導き、それを測定または分析することが知られている。そのような放射線源は、多くの場合、点源の雲状の分布アレイの形態をとり、発散性の比較的弱い放射線を放出する。したがって、真空領域外で利用可能な放射強度は弱いことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、真空領域で放射される電磁放射線の測定および分析に利用可能な放射強度を高めることであった。特に、本発明の目的は、光学範囲内の真空圧力センサから放射される放射の測定および分析に利用可能な放射強度を高めることであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明によれば、請求項1に記載の真空気密電気フィードスルーによって解決される。
【0005】
本発明による真空気密電気フィードスルーは、貫通開口部を有し、貫通開口部に隣接する第1の境界面を有し、貫通開口部にまた隣接し、かつ第1の境界面の反対側の第2の境界面を有する電気絶縁絶縁体要素を備える。本発明による真空気密電気フィードスルーは、導電性導体要素であって、貫通開口部を通って延在し、導体要素の円周線に沿って真空気密に絶縁体要素に接続された、導体要素をさらに備える。絶縁体要素は、光波長範囲の電磁放射線を透過する。第1の境界面および/または第2の境界面は、曲面として形成される。曲面は、特に凸面または凹面として形成することができる。
【0006】
したがって、導電性導体要素は、絶縁体要素の貫通開口部を通って延在する。これは、電気フィードスルーのフィードスルー軸を画定する。第1の境界面および第2の境界面は各々、絶縁体要素の一方側において導体要素を囲んでおり、貫通軸方向に離間している。真空システムで使用する際に、境界面の一方、例えば第1の境界面は真空側に配置され、境界面の他方、例えば第2の境界面は、電気フィードスルーの真空とは反対側に配置される。絶縁体要素は、第1の境界面および第2の境界面に加えて、さらなる境界面、例えば、貫通軸に対して半径方向に貫通軸に面する貫通開口部の境界面を有することができる。さらに、電気フィードスルーは、電気フィードスルーの外周において第1の境界面および第2の境界面を分離する半径方向外側に面する縁部に境界面を有することができる。
【0007】
第1の境界面および第2の境界面の形状および構成は、貫通軸の方向に絶縁体要素に入射する電磁放射線が、絶縁体要素を通過するときに集束されるように、すなわち、絶縁体要素を通過する前に平行に延びる離間ビームが、通過後に互いに接近または交差するように設計される。第1の境界面および第2の境界面のうちの最大1つは平面であってもよい。特に、両凸状、両凹状、平凸状または平凹状の構成を形成する第1の境界面および第2の境界面の組み合わせが可能である。
【0008】
本発明者らは、電気エネルギーが電気フィードスルーを介して真空領域に供給されるのと同じ点で、真空領域外の光波長範囲の電磁放射線を供給することが特に効率的であることを認識した。供給される電気エネルギーは、例えば、プラズマを生成するための電気エネルギーとすることができる。絶縁体を通過し、導体と絶縁体とが真空気密に接続されている導電体を有する基本構造から既知のフィードスルーは、本発明による特徴の組み合わせにより、光フィードスルーとして同時に機能することができる。
【0009】
本発明者らは、本発明による電気フィードスルーが、真空領域への電気エネルギーの供給と真空領域から放出される放射線の測定または分析の両方が同時に可能になる装置のコンパクトな設計を可能にすることを認識した。湾曲した境界面は、放射線を集束させ、したがって放射線の強度を高めるために使用することができる。本発明者らは、電気および光フィードスルーが1つの同じ構成要素で実現され、この構成要素が同時にレンズの機能を有する場合、これが特に効率的であることをさらに認識した。したがって、本発明は、電気光学真空フィードスルーとして見ることができる。
【0010】
光波長範囲からの電磁放射線は、例えば、可視光、赤外線または紫外線であり得る。本発明による電気フィードスルーでは、例えば真空領域の外側の単純な両面平面窓を介して利用可能である放射強度と比較して、100倍以上の放射強度の増加を達成することができる。
【0011】
導体要素は金属で作ることができ、特に導体要素はモリブデンで作ることができる。絶縁体要素は、例えばサファイアからなることができる。
【0012】
電気フィードスルーの実施形態は、従属請求項2から8の特徴から生じる。
電気フィードスルーの一実施形態は、第1の境界面および第2の境界面を分離する絶縁体要素の周囲に沿って真空気密に絶縁体要素に接続された金属フレームをさらに備える。
【0013】
金属フレームは、電気フィードスルーを真空システムの他の要素に、例えば溶接によって真空気密に接続することを可能にする。絶縁体要素と金属フレームとの間の真空気密接続は、例えば溶融ガラスリングによって形成することができる。溶融ガラスリングは、特にはんだガラスからなることができる。金属フレームは、リングの形態であってもよい。金属フレームは、例えば、フレームのさらなる要素への溶接を容易にするように構成されたフランジを有することができる。金属フレームは、例えば、高い耐食性を特徴とするステンレスオーステナイト鋼、例えば鋼1.4435で作ることができる。
【0014】
電気フィードスルーの一実施形態では、導体要素は軸に沿って延在し、第1の境界面は第1の領域を有し、第2の境界面は第2の領域を有し、第1の領域および第2の領域は、軸を共通の回転軸とする第1の回転面および第2の回転面の形態である。
【0015】
第1の回転面および/または第2の回転面は、球面または非球面の回転面とすることができる。回転面の特別な場合は、軸に垂直な平面である。例えば、第1の境界面は、軸に垂直な平面に沿って延在してもよい。この場合、第2の境界面は必ず湾曲していなければならない。
【0016】
電気フィードスルーの一実施形態では、導体要素はロッド形状の設計であり、導体要素は、第2のロッド端部が第2の境界面を越えて延びるよりも第1の境界面をさらに越えて延びる第1のロッド端部を有する。
【0017】
この実施形態は、例えば、電磁放射線が第1のロッド端部の外側の領域に集束される場合に使用することができる。ロッドの第1の端部の領域における導体要素の電流供給への接続は、例えば、ロッドに対して横断方向にロッドの第1の端部付近の領域にもたらされるタブを介して行うことができる。このように配置されたタブは、放射線が焦点に到達することができる使用可能な断面積のごく一部を覆うにすぎない。
【0018】
電気フィードスルーの一実施形態では、絶縁体要素は、第1の境界面と第1のロッド端部との間の領域内の少なくとも第1の物点を、第2のロッド端部よりも第1の境界面からさらに離れた第1の像点上に結像する撮像レンズを形成する。
【0019】
撮像レンズは、その焦点距離Fによって特徴付けられる。レンズから距離Gの物点は、レンズから距離Bの像点に結像され、関係1/G+1/B=1/Fが適用される。
【0020】
球面収差および/または色収差のために補正されたレンズシステムは、異なる材料の多部分構造によって達成することができる。このようなシステムでは、レンズシステムの1つのレンズが、導体要素に真空気密に接続された絶縁体要素の役割を有していればよい。
【0021】
電気フィードスルーの一実施形態では、絶縁体要素は、中央貫通開口部を有する平凸レンズである。
【0022】
電気フィードスルーの一実施形態では、絶縁体要素はサファイアからなる。
サファイアは、200nm~5000nmの波長範囲で高い透過率を有し、真空領域からの損失をほとんど伴わずに電磁放射線を光学範囲外に誘導するのに特に適している。特に、200nmを超える紫外線領域の透過率が高い。さらに、サファイアは機械的に非常に堅牢である。
【0023】
電気フィードスルーの一実施形態では、溶融ガラスリングが導体要素と絶縁体要素との間に真空気密接続を形成する。
【0024】
真空気密接続を形成するために、溶融ガラスリングが溶融され、導体要素がガラスで囲まれる。溶融ガラスリングは、特にはんだガラスからなることができる。
【0025】
電気フィードスルーの実施形態の特徴は、相互に排他的でない限り、本発明の範囲内で所望に応じて組み合わせることができる。
【0026】
本発明はさらに、請求項9に記載の真空圧力センサに関する。本発明による真空圧力センサは、本発明による電気フィードスルーを有する。電気フィードスルーの上述の実施形態のすべては、本発明による真空圧力センサでの使用に適している。
【0027】
真空圧力センサの実施形態は、請求項10から14の特徴から生じる。
真空圧力センサの一実施形態では、真空圧力センサはコールドカソード真空計として設計され、導体要素はコールドカソード真空計のアノードを形成する。
【0028】
真空圧力センサの一実施形態では、第1の境界面は真空圧力センサのプラズマ領域に面し、第2の境界面の側の光センサは、光波長範囲の電磁放射線がプラズマ領域から絶縁体要素を通って光センサまで伝播することができるように配置される。
【0029】
絶縁体要素が、第1の境界面と第1のロッド端部との間の領域内の少なくとも第1の物点を、第2のロッド端部よりも第1の境界面からさらに離れた第1の像点上に結像する撮像レンズを形成する一実施形態による電気フィードスルーを有する真空圧力センサの一実施形態では、第1の物点は真空圧力センサのプラズマ領域内に配置され、光センサは第1の像点に配置される。
【0030】
真空圧力センサの一実施形態では、プラズマ領域は、磁石アセンブリによって、絶縁体要素から離れたアノードの端部に制限される。
【0031】
これは、例えば、強磁性材料の磁極片をアノードの周りのリング内に配置することによって達成することができ、磁極片は、電気フィードスルーの絶縁体要素に近い領域では、絶縁体要素から遠い第2の領域よりもアノードに近い。このような構成は、主放射線源を第2の領域に形成させる。
【0032】
真空圧力センサの一実施形態では、導体要素は、絶縁体要素に近い領域に電気絶縁性のコーティングを有する。
【0033】
このような電気絶縁性のコーティングは、絶縁体要素に近いプラズマの形成を抑制し、プラズマは、ターゲット領域、すなわち、アノードが絶縁性コーティングを有さない場所で点火される。電気絶縁性コーティングは、例えば、酸化アルミニウムの薄層(Al2O3層)からなり得る。コーティングは、例えば、原子層堆積(ALD)プロセスを使用してアノードに適用することができる。ALDプロセスの適用は、欠陥のない非常に均一なコーティング厚をもたらし、その結果、プラズマ発火の所望の抑制は、非常に薄い絶縁層で既に達成することができる。
【0034】
本発明はさらに、請求項15に記載の方法に関する。
これは、光波長範囲の電磁放射線の放射強度を測定するための方法であって、
a)本発明による電気フィードスルーを有する真空装置を提供するステップと、
b)導体要素を介して真空装置の真空領域内に電気エネルギーを供給して、真空領域内でプラズマに点火し維持するステップと、
c)プラズマから放出された電磁放射線の放射強度を光センサによって測定するステップと、を含み、
電磁放射線は、プラズマから絶縁体要素を通って光センサ上に放射する。
【0035】
特に、測定は、単一の波長、例えば真空中の残留ガスの特定の発光線に適用することができる。例えば、777nm程度に特徴的な酸素輝線を観測することができる。線強度の変化は、漏れの指標として機能することができる。漏れ検出は、例えばチャンバを600℃に加熱し、その後の冷却を待たなければならない方法とは異なり、60秒以内に可能である。
【0036】
あるいは、パージガスとして働く窒素などの他の線の強度を観察することができる。水素漏れまたは窒素漏れは、対応する水素または窒素放出線で強度を測定することによって迅速に検出することができる。
【0037】
真空圧力センサに関連する方法の適用は、電流-圧力特性のガス依存性の補正を可能にする。検出ガスに応じた圧力信号の線形化が可能となる。ガス組成物の成分は、規定の波長で測定された放射強度から決定することができる。
【0038】
本発明による電気フィードスルーの用途は、プラズマ源に特に適している。プラズマ源の例は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)イオン源、ペニング放電、誘導結合プラズマ(ICP)またはグロー放電源などである。ペニング、マグネトロンおよび逆マグネトロンアレイを有する真空圧力センサでは、放射線を放出するプラズマが生成される。これらのアレイは、非常にコンパクトに構築することができ、10-8mbarまでの低圧でも十分なイオン収率を確保することができる。後者の3つのプラズマ源は、ExB源という総称の下でグループ化される。これらの構成は、特に本発明による電気的実施態様から利益を得る。
【0039】
本発明による1つまたは複数の電気フィードスルーは、1つの同じ真空システムまたは真空装置、例えば真空圧力センサに取り付けることができる。電磁放射線をプラズマ領域から異なる経路に沿って真空領域から異なる電気フィードスルーの2つ以上の異なる絶縁体要素を介して導くことが可能である、あるいは、代替的にまたは組み合わせて、光学領域でレンズ効果を有する電気フィードスルーを介して2つ以上のプラズマ領域を観察することも可能である。例えば、絶縁体要素の境界面は、2つ以上の焦点領域に電磁放射線を集束させるように成形することができる。そのようなすべての場合において、関連する光波長範囲の電磁放射線が光検出器の1つにそれぞれ入射し、放射線の強度が増加するように、2つ(またはそれ以上)の光検出器をそれぞれの絶縁体要素の真空とは反対側に取り付けることができる。例えば、1つの検出器は、第1の波長または波長範囲の強度を測定するように設計されてもよく、第2の検出器は、第2の波長または波長範囲を測定するように設計されてもよい。この場合、検出器の各々は、本発明の効果、すなわち電磁放射線の強度の増加から利益を得る。
【0040】
本発明の例示的な実施形態は、図を参照して以下でさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明による真空気密電気フィードスルーの断面を簡略化して概略的に示す。
図2】電気フィードスルーの実施形態の断面を図2.a)~図2.d)に示す。
図3】真空圧力センサの一実施形態の断面図を示す。
図4a)】電磁放射線のビームの束および画像平面へのそれらの入射と共に真空圧力センサの一実施形態を通る断面図を示す。
図4b)】画像平面に入射する放射線の分布を画像平面の上面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明による真空気密電気フィードスルー10の断面図を示す。導電性導体要素1は、絶縁体要素2の貫通開口部23を通過する。図示の導体要素は、第1のロッド端部11および第2のロッド端部12を有するロッドの形状を有する。導体要素1と絶縁体要素2との間には真空気密接続があり、断面において黒丸で表されている。真空気密接続は、導体要素の周囲の円周線に沿って延在し、この断面図の平面内の2点で交差する。絶縁体要素の対向する二辺において、絶縁体要素の第1の境界面21および絶縁体要素の第2の境界面22は、貫通開口部に隣接している。例示的な電磁放射線経路25’、25’’が破線矢印で示されている。例示的な放射線経路25’、25’’は、光波長範囲で透過性である絶縁体要素を通過し、第1の境界面21および第2の境界面22で方向を変える。示されている2つの放射線経路は、互いに平行かつフィードスルー軸の方向に平行に、すなわち導体要素の長手方向の延長部に平行に絶縁体要素に当たる。絶縁体要素を通過した後、2つの放射線経路は収束し、本発明による電気フィードスルーの集束効果を示す。図示の実施形態では、第1の境界面は曲面であり、外側領域は形状が凹状であり、中央領域は形状が凸状である。図示の場合、第2の境界面は平坦である。
【0043】
図2.a)~図2.d)は、第1および第2の境界面の曲率タイプの可能な組み合わせの変形例を断面で示す。図2.a)は平凸構成を示し、図2.b)は両凸構成を示し、図2.c)は凹凸構成を示し、図2.d)は、完全に平坦な第1の境界面と、通過した導体要素1、1’の周囲の領域の平坦な第2の境界面とを有し、導体要素間の中央領域は凸設計である構成を示す。変形例2.d)は、2つ以上の導体要素を有する実施形態を示す。断面は、導体要素1を通り、また既に説明した導体要素1と同じ特性を有する別の導体要素1’を通って延びる。図2.a)~図2.c)は、導体要素が絶縁体要素の中心を通過するフィードスルーを示す。これらの断面は、例えば、回転対称構造の電気フィードスルーの断面であってもよい。グラフィック要素では図示されていないが、図2および以下の図に示すフィードスルーは、真空気密になるように設計されている。
【0044】
図3は、本発明による真空圧力センサの断面図である。これは、コールドカソード真空計として設計された真空圧力センサである。導体要素1は、コールドカソード真空計のアノードを形成する。導体要素1および絶縁体要素2は、本発明による電気フィードスルーを形成し、それによって、圧力センサ内の破線で位置が示されているプラズマ領域26に電圧源5から電気エネルギーを供給することができる。磁石アセンブリ6は、プラズマ領域内を移動する荷電粒子(電子、イオン)が湾曲した経路に沿って移動することを保証する。プラズマの状態に特徴的な電磁放射線(hν)は、少なくとも1つの光波長範囲で透過性である絶縁体要素2を通過して光センサ7に到達する。絶縁体要素の湾曲した境界面により、放射線は束ねられ、強度を高めて光センサ7に到達する。光センサ7は、単純な放射線センサ、例えば光センサ(light sensor)であってもよいが、より複雑な光センサ、例えば分光計であってもよい。図示の構成では、真空圧力センサの外壁は、コールドカソード真空計のカソードを形成する。これはまた、電圧源5に電気的に接続されている。真空システムに通じる真空圧力センサの側には、真空システムの詳細は示されていないが、「真空システム」とラベル付けされている。真空圧力センサのこの側は、真空システムに真空気密に接続されていることが理解される。図示の実施形態では、電気フィードスルーは金属フレーム4を備える。それぞれ1つの溶融ガラスリング3によって、導体要素1は絶縁体要素2に真空気密に接続され、絶縁体要素2は金属リング4に真空気密に接続される。金属リング4は、図示の実施形態では円筒形であり、かつ金属製でもあるカソードに溶接される。
【0045】
例えば、電気フィードスルーの絶縁体要素は、本明細書に示すように平凸レンズとして設計することができ、第1の境界面は、部分的に曲率半径Rを有する球面曲率を有する。絶縁体要素の屈折率がサファイアの屈折率に対応する場合、特に絶縁体要素がサファイアから作られる場合、光センサ7で高い放射強度を得るために、真空とは反対側の平坦な第2の境界面から例えば距離d=10mmに配置された分光計を有する構成は、例えば曲率半径R=8.5mmの第1の境界面と組み合わされる。片側が平坦な絶縁体要素は、電気フィードスルーの製造プロセス中に絶縁体要素の向きを非常に正確に制御できるという利点を有する。これにより、簡単な手段で焦点の位置を正確に制御することができ、焦点の位置の再現性が高くなるという利点がある。
【0046】
プラズマ領域26から放射され、放射線に透過性である絶縁体要素2によって光センサ7に向かって集束される電磁放射線25’、25’’の2つのビーム経路が示されている。波長電磁放射線hνは、光波長範囲内にある。磁極片27は、プラズマ領域26が絶縁体要素2から離れたアノードの領域に制限されるように磁石アセンブリ6の磁場を誘導する。アノードは、導体要素1によって形成されている。真空圧力センサのカソード28は、図示のセクションでは中央アノードの周りに円筒状に配置されている。破線で示されているカソードの領域は、真空システムへの移行部を任意の形状だが真空気密に形成することができる。真空システムへの方向は矢印で示されている。真空システムは、真空システム、例えば、基板上に薄膜を堆積させるための、および/または半導体ウェハを処理するための真空システムであってもよい。
【0047】
図4は、ビーム経路のシミュレーションから分かるように、電磁放射線のビーム束および画像平面29へのそれらの入射を有する本発明による真空圧力センサの断面を示す。アノードの周りの領域で発生し、絶縁体要素に入射する複数の異なるビームは、画像平面上に集束される。この場合、像面において放射線が入射する略円形の領域は、絶縁体要素において同じ複数の放射線が入射する領域よりも小さい。これは、像面上の円形領域における放射強度が、圧力センサの真空側に面する絶縁体要素の境界面における放射強度よりも高いことを意味する。圧力センサの一実施形態に存在するような光センサは、像面上の円形領域を見ることができる感度領域と共に配置することができる。像面のx軸およびy軸(x[mm]、y[mm])上のミリメートルスケールから読み取ることができるように、ビームは直径約0.5mmの円形領域に集束することができる。示されているシミュレーションでは、絶縁体要素2のサファイアの屈折率と共に、図3に記載されているような形状パラメータ、すなわち特にR=8.5mmおよびd=10mmを使用した。
【符号の説明】
【0048】
符号のリスト
1 導体要素
1’ 別の導体要素
2 絶縁体要素
3 溶融ガラスリング
4 金属フレーム(溶接リング)
5 電圧源
6 磁石アセンブリ
7 光センサ
10 電気フィードスルー
11 第1のロッド端部
12 第2のロッド端部
21 第1の境界面
22 第2の境界面
23 貫通開口部
24 真空気密接続
25’,25’’,hν 電磁放射線
26 プラズマ領域
27 磁極片
28 カソード
29 像面
30 真空圧力センサ
N,S 磁石アセンブリのN極、S極
U 電圧
真空側 動作中に真空が適用される側
図1
図2.a)】
図2.b)】
図2.c)】
図2.d)】
図3
図4.a)】
図4.b)】