(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】ピペットチップラックシステム
(51)【国際特許分類】
B01L 9/00 20060101AFI20240328BHJP
B01L 3/00 20060101ALI20240328BHJP
B65D 45/20 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
B01L9/00
B01L3/00
B65D45/20
(21)【出願番号】P 2022541845
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2021012448
(87)【国際公開番号】W WO2021142084
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514114770
【氏名又は名称】インテグラ バイオサイエンシーズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ボンノワット,ジョージ,ケー.ジュニア.
(72)【発明者】
【氏名】ラクロワ,クリストファー
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-529331(JP,A)
【文献】特表2019-536619(JP,A)
【文献】実開昭60-098670(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008001(US,A1)
【文献】特開昭62-227452(JP,A)
【文献】登録実用新案第3178839(JP,U)
【文献】特開2017-124652(JP,A)
【文献】特開2006-001597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00-99/00
G01N 1/00-1/44
G01N 35/00-37/00
C12M 1/00-3/10
G01F 11/00-13/00,17/00-22/02
B65D 35/44-35/54,39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットチップを装填したチップデッキを保持する、又はピペットチップを装填したチップデッキを有するクラムシェルチップ容器を保持することが可能なピペットチップディスペンサであって、
底壁と、横側壁と、前方側壁と、後方側壁とを含むベース
、及び上面と、横側壁と、前方側壁と、後方側壁とを含むカバー
であり、前記ベースはベースンを画定し、前記ベースン
では、前記ピペットチップを装填した前記チップデッキ、又は前記ピペットチップを装填した前記チップデッキを有する前記クラムシェルチップ容器がセット可能であり、前記カバーの少なくとも一部が透明な材料で形成され
ている、ベース及びカバーと、
前記カバーの前記後方側壁を、前記ベースの前記後方側壁に枢軸的に接続する少なくとも1つのヒンジと、
前記ベースンの上にわたって閉鎖位置で、前記カバーを前記ベースに解除可能に保持し得るラッチと、
前記ラッチが解除されて、前記ベースに対して前記カバーが旋回することを可能にした場合に、ホルダの前記カバーを開放位置に持ち上げ、ディスペンサに保持された前記ピペットチップを露出させる少なくとも1つのリフト機構と
、
を備え
、
前記リフト機構は、チップディスペンサの前記ベースに枢軸的に接続されている少なくとも1つのリフトアームと、チップディスペンサの前記ベースの上のバネであり、前記ベースの前記カバーを持ち上げるために前記リフトアームを回転させるように付勢されているバネとを含み、
前記ラッチは押し下げ可能なボタンを含み、押し下げ可能な前記ボタンは、チップディスペンサの前記ベースの前記前方側壁の上にあり、押し下げられたときに前記ラッチを解除し、前記カバーが移動することを可能にし、また、少なくとも1つの前記リフト機構が、前記ホルダの前記カバーを開放位置に持ち上げ、チップディスペンサに保持されている前記ピペットチップを露出させることを可能にする、ピペットチップディスペンサ。
【請求項2】
さらに、ディスペンサの蓋が開放する速度を減速する、ディスペンサの前記蓋のための減衰機構を備えている、請求項
1記載のピペットチップディスペンサ。
【請求項3】
前記減衰機構は、ディスペンサの前記ベースの外の前記後方側壁に沿って配置されたシリンダ内に取り付けられたシールを有するピストンと、リターンバネとを含み、
前記シリンダは計量孔を有し、前記計量孔は、前記ピストンと取り付けられた前記シールとが、開放する前記蓋の動きにより、前記リターンバネの抵抗に抗して、さらに深く前記シリンダの中で下方へ押された場合に、空気が前記シリンダから逃げることを可能にし、
ディスペンサの前記蓋が閉鎖している場合、又は閉鎖しつつある場合に、前記リターンバネは、前記ピストンと取り付けられた前記シールとを上方へ押す、請求項
2記載のピペットチップディスペンサ。
【請求項4】
前記チップデッキは、前記ピペットチップを保持する孔のアレイを含み、
各孔の中心線は、4.5mm又は9mmの間隔で互いに離されて位置し、前記チップデッキに保持された前記ピペットチップがフィットするフィッティングの構成を表す色で、前記チップデッキは形成されている、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載のピペットチップディスペンサ。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか1項に記載のピペットチップディスペンサと、クラムシェルチップ容器とを備えている、ピペットチップラックシステムであって、
底壁と、横側壁と、前方側壁と、後方側壁とを有するチップレセプタクルであり、前記ピペットチップを格納するためのウェルを画定するチップレセプタクルと、
前記ウェルの上にわたり、前記チップレセプタクルの側壁によって支持されているチップデッキであり、ピペットフィッティングへの前記ピペットチップの取り付けを容易にするために、それぞれの前記ピペットチップのカラーを上方に向けつつ、前記ピペットチップのアレイを実質的に垂直に保持するように構成されているチップデッキと、
上壁と、横側壁と、前方側壁と、後方側壁とを有する蓋と、
前記蓋をヒンジに沿って前記チップレセプタクルから離して回転させることによって、前記クラムシェルチップ容器が開放されるように、前記蓋の前記後方側壁を前記チップレセプタクルの前記後方側壁に接続する少なくとも1つのヒンジと、
を備え、
少なくとも1つの前記リフト機構は、前記クラムシェルチップ容器の前記蓋と、前記ピペットチップディスペンサの前記カバーとを、ともに開放位置に持ち上げ、前記ラッチが解除された場合に、前記ピペットチップディスペンサでの前記カバーが前記ピペットチップディスペンサの前記ベースに対して旋回することを可能にするように、前記チップデッキに保持された前記ピペットチップを露出させる、ピペットチップラックシステム。
【請求項6】
前記クラムシェルチップ容器の前記チップレセプタクルと、前記蓋と、前記ヒンジとは、熱成形プラスチック材料で作られている、請求項
5記載のピペットチップラックシステム。
【請求項7】
前記クラムシェルチップ容器は第1張り出しウイングを含み、前記第1張り出しウイングは、前記クラムシェルチップ容器の前記蓋の前記横側壁のうちの1つの下縁に沿って、リムの少なくとも一部から外へ延び、
前記第1張り出しウイングは、対応する位置で、前記チップレセプタクルの上縁に沿ってリムの一部よりも外へ延び、
前記ピペットチップディスペンサの前記ベースのリフトアームは、前記第1張り出しウイングを枢軸的に上方へ押して前記クラムシェルチップ容器の前記蓋を開放し、同時にディスペンサカバーを枢軸的に上方へ押して前記ディスペンサカバーを開放する、請求項
5記載のピペットチップラックシステム。
【請求項8】
前記クラムシェルチップ容器は第2張り出しウイングを
さらに含み、前記第2張り出しウイングは、前記クラムシェルチップ容器の前記蓋の側壁のうちの他の側壁の下縁に沿って、リムの少なくとも一部から外へ延び、
前記第2張り出しウイングは、対応する位置で、前記チップレセプタクルの上縁に沿ってリムの一部よりも外へ延び、
前記ピペットチップディスペンサの前記ベースの第2リフトアームが、前記第2張り出しウイングを枢軸的に上方へ押して前記クラムシェルチップ容器の前記蓋を開放し、同時に前記ディスペンサカバーを枢軸的に上方へ押して前記ディスペンサカバーを開放する、請求項
7記載のピペットチップラックシステム。
【請求項9】
前記チップディスペンサの前記カバーを閉鎖することは、前記リフトアームを押して、前記クラムシェルチップ容器での前記張り出しウイングの高さよりも下方へ、前記リフトアームを回転させ、
さらに、前記リフトアームが前記張り出しウイングを通過するまで下方へ回転されると、前記リフトアームは外へガイドされ、
又は、前記チップディスペンサの前記カバーを閉鎖することは、前記リフトアームを押して、前記クラムシェルチップ容器での前記張り出しウイングの前記高さよりも下方へ、前記リフトアームを回転させ、
さらに、各リフトアームが
各張り出しウイングを越えて下方へ回転されると、各リフトアームの下方対向面の角度付き区間と
前記各張り出しウイングとの係合によって、前記リフトアームは外へガイドされる、請求項
7記載のピペットチップラックシステム。
【請求項10】
前記クラムシェルチップ容器は、前記蓋の前記前方側壁の下縁に沿っているヒンジ式ロックタブを含み、
前記ロックタブは形成された係合突起を含み、形成された前記係合突起は、前記クラムシェルチップ容器での前記蓋を解除可能に閉鎖するために、前記チップレセプタクルの前記前方側壁での形成されたキャッチディテントに係合し、
形成された前記係合突起は、それぞれが前記係合突起の一方の側から横方向に延びる一対のラッチボスを含み、
前記キャッチディテントの側壁の各遠位部分の間の距離は、前記ラッチボスの間の全範囲よりも小さく、前記ロックタブが閉鎖位置にある場合に、前記ラッチボスは、前記キャッチディテントの側壁の各近位部分の間に位置する、請求項
5ないし
9のいずれか1項に記載のピペットチップラックシステム。
【請求項11】
クラムシェルでの前記蓋は、ディスペンサカバーが容器蓋の上に閉鎖されたときに摩擦ばめ及び締まりばめによって前記ディスペンサカバーの中に保持され、摩擦ばめ及び締まりばめは、前記ディスペンサカバーが開放した場合に、前記容器蓋を保持して持ち上げるために十分である、請求項
5ないし
10のいずれか1項に記載のピペットチップラックシステム。
【請求項12】
前記クラムシェルチップ容器内の前記チップデッキは、孔のアレイを取り囲む周辺部を含み、
前記周辺部は、ブリムと、スカートの上に前記ブリムが張り出す状態で前記ブリムから下方へ延びるスカートとを含み、
前記クラムシェルチップ容器はリムを含み、前記リムは、開口の周囲にあり、前記チップデッキの前記ブリムを支持するための前記開口の周囲で、前記チップデッキの前記スカートと少なくとも1つの支持面とを受容及び位置合わせするように構成され、
さらに、少なくとも1つの前記支持面は、前記チップレセプタクルの他の部分よりも上方の高さにある、請求項
5ないし
11のいずれか1項に記載のピペットチップラックシステム。
【請求項13】
底壁と、横側壁と、前方側壁と、後方側壁とを有する下部レセプタクルと、
前記下部レセプタクルの前記前方側壁の上に形成されたキャッチディテントであり、キャッチディテントは、ベース壁と、前記ベース壁から外へ延びる側壁とを含み、各側壁は、前記ベース壁に隣接する近位部分と、遠位部分とを有し、各遠位部分の間の距離が、各近位部分の間の距離よりも小さい、キャッチディテントと、
上壁と、横側壁と、前方側壁と、後方側壁とを有する蓋と、
後側ヒンジに沿って前記蓋を前記下部レセプタクルから離れるように回転させることによって、クラムシェルチップ容器が開放されるように、前記蓋の前記後方側壁を前記下部レセプタクルの前記後方側壁に接続する少なくとも1つの後側ヒンジと、
前記蓋の前記前方側壁の下縁に沿っているヒンジ式ロックタブであり;ロックタブは形成された係合突起を含み、形成された前記係合突起は、クラムシェルチップ容器での前記蓋を解除可能に閉鎖するために、前記下部レセプタクルの前記前方側壁での形成された前記キャッチディテントに係合し;形成された前記係合突起は、それぞれが前記係合突起の一方の側から横方向に延びる一対のラッチボスを含み;前記キャッチディテントの側壁の各遠位部分の間の距離は、前記ラッチボスの間の全範囲よりも小さく、ロックタブが閉鎖位置にある場合に、前記ラッチボスは、前記キャッチディテントの側壁の各近位部分の間に位置する、ヒンジ式ロックタブと
、
を備え、
前記下部レセプタクルと、前記蓋と、前記ロックタブと、前記後側ヒンジとは、熱成形プラスチック材料で形成されている、クラムシェル容器。
【請求項14】
さらに、ピペットチップを保持する孔のアレイを含むチップデッキを備え、
各孔の中心線は、4.5mm又は9mmの間隔で互いに離されて位置し、前記チップデッキに保持された前記ピペットチップがフィットするフィッティングの構成を表す色で、前記チップデッキは形成されている、請求項
13記載のクラムシェル容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペットチップラックに関し、さらに詳細には、実験室のベンチトップ上で容器とチップとを格納するために、ディスペンサとともに使用される、環境に優しい使い捨てチップ容器に関する。ディスペンサとチップ容器とは、ともに、特に、便利なワンタッチ操作を可能にするように構成されている。ユーザは、ピペットチップをディスペンサに装填したら、ディスペンサを使用することができる。これは、たとえ物品が両手を占めていても、ユーザは、汚染の恐れがなく使用できる。
【背景技術】
【0002】
チップをピペットに取り付けるのに便利な方式で、使い捨てピペットチップを配列するために、ピペットチップラックが使用される。ラックは、典型的には、8×12アレイのような孔のアレイを有するチップデッキ又はプラスチックインサートを含み、これを通して、上方に露出されたチップカラーによりピペットチップが吊される。ピペットチップが孔を通過し、それらのカラーによって懸架されるのに十分な高さにチップデッキを懸架する、相当に剛性を有するボックスを、従来のラックは備えている。ボックス、特に下部レセプタクルの剛性は、ピペットチップをピペットの取り付けシャフト又はフィッティングに確実に取り付けるために、重要である。剛性は、複数のピペットチップをマルチチャンネルピペットのフィッティングに取り付ける場合に、特に重要である。さらに、チップラックボックスは、通常透明であるカバーを有する。カバーの取り外しには両手で行うことが多いが、片手で開閉しやすいように設計されているものがある。一般的な方法は、ラック内の残りのチップを覆い、汚染のリスクを減らすために、ピペットチップの一部を取り付けた後にカバーを交換することである。
【0003】
堅固なチップラックを使用すると、実験室でかなりのプラスチック廃棄物が発生する可能性がある。廃棄物を減らすために、リサイクル可能な熱成形クラムシェルチップ容器が開発され、いくつかの実験室で使用されている。これらの熱成形クラムシェルチップ容器は、下部チップレセプタクルと、後側ヒンジによって連結された蓋と、下部チップレセプタクル内のウェルにわたるチップデッキ又はインサートとを含む。チップデッキは、従来のチップラックで使用されるものと同様であり、典型的には、射出成形されたプラスチックで作られる。ピペットチップのアレイは、チップデッキを通る孔の中に保持される。クラムシェル容器の前面にあるロックタブは、ヒンジ式蓋を、締まりばめで閉鎖位置にロックすることを可能にし、例えば容器が落下した場合でもチップがこぼれることを防止する。市販されている製品の一つは、リサイクル可能なPETE(ポリエチレンテレフタレート)から作られたクラムシェル容器を使用している。
【0004】
使用済みのチップラックは、実験室内で多くのスペースを占める可能性があり、大量のプラスチック廃棄物となる可能性がある。一方、既知のクラムシェルチップ容器は、互いに入れ子式に挿入することができ、軽量であるので、使用済み容器を一層容易に保管し、廃棄することができる。熱成形されたクラムシェルチップ容器はまた、従来のチップラックよりも製造及び輸送のコストがはるかに安い。熱成形されたクラムシェルチップ容器は、構造的支持を追加するためにリッジを備えて設計されているが、それらは、典型的には、従来のチップラックほど安定ではないため、実験室で使用することに関して扱いにくい場合がある。ピペットチップを装着する際には、熱成形したクラムシェルチップ容器を保持するために、しばしば作業員が手を離して(off hand)使用する必要がある。従来のチップラックよりも一層重量感があることや、向上された安定性のために、熱成形されたクラムシェルチップ容器のために再利用可能なベースを使用することが知られている。1つの市販のベースはウェルを含み、ウェルは、床板と、側方、後方及び前方側壁とによって画定される熱成形チップ容器を保持する。チップ容器は床板に載り、ホルダの前方側壁は切断されて、ユーザがクラムシェル容器の前面のヒンジ式ロックタブにアクセスすることが可能にされている。典型的には、実験室の作業員は、使用の間に蓋とロックタブとを閉鎖するが、特に、実験室の作業員が、他方の手で片手で、クラムシェルロックタブを単独で開閉しながら、ピペットを片手で保持しようとしている場合には、多少不便になることがある。
【発明の概要】
【0005】
別の問題は、熱成形されたチップ容器のためのこの市販のベースが、チップデッキのみに保持された、即ち熱成形されたクラムシェルチップ容器なしで保持された、ピペットチップの格納及び分配に使用できないことである。例えば、チップデッキに装填されているが板紙パッケージにパッケージされている販売されている補充チップは、以前使用されていた従来のチップラックに装填されることが意図されている。上述の市販のベースは、チップデッキのための側壁を介して独立した支持を提供しない。なぜならば、チップ容器は、ベースの床板上に位置し、クラムシェルチップ容器のリムは、ベース側壁の上方リムよりも上方の位置でありベース側壁の上方リムに接触しない位置にあるからである。
【0006】
本発明は、主として、熱成形されたクラムシェルチップ容器、また実験室ベンチトップ上のクラムシェルチップ容器を保持及び支持するためのチップディスペンサに関する。チップディスペンサは、熱成形クラムシェルチップ容器を保持するための中実なベースと、ヒンジ式カバーとを含む。リフト機構は、例えば、ベースの前方にあるボタンを押すことによって、ディスペンサベースのラッチが解除されると、熱成形されたチップ容器の蓋とディスペンサのカバーとを持ち上げる。チップディスペンサとクラムシェルチップ容器とは、ともに、ディスペンサのカバーとクラムシェルチップ容器の蓋とを開閉するワンタッチ操作を容易にするように構成されている。ディスペンサでのラッチは、実験室の作業員が両手で満杯になったときに、例えば手の甲、こぶし又は肘で解放できることが望ましい。ワンタッチ操作により、ピペットチップへのアクセスが便利になり、また、1つ以上のチップをハンドヘルドピペットに取り付けた後に残りのチップをカバーすることが便利になる。
【0007】
一態様では、本発明は、熱成形クラムシェルチップ容器とカバーされたチップディスペンサホルダとの組み合せを含むピペットチップラックシステムに関する。好ましくは、クラムシェルチップ容器は、リサイクル可能な、透明又は着色された透明熱成形プラスチック、例えばPETで作られる。それは、熱成形クラムシェルパッケージングに典型的なように、下部チップレセプタクルと、ヒンジによって接続された蓋とを含む。チップレセプタクルは、底壁と、横側壁と、前方側壁と、後方側壁とを有し、ピペットチップを保持及び格納するためのウェルを画定する。チップ容器はまた、ウェルの上にわたるチップデッキを含む。チップデッキは、ラックインサートと呼ばれることもあるが、好ましくは射出成形プラスチックで作られ、熱成形されたチップ容器内のウェルの周囲の側壁の上縁に沿ってリム上に支持される。チップデッキは、ピペットチップのアレイを実質的に垂直に保持し、各ピペットチップのカラーを上方に向けて、ピペットチップをピペットフィッティング上に取り付けやすくするように構成されている。当技術分野で知られているように、チップデッキは、ピペットチップを保持するための孔のアレイを含み、各孔の中心線は、384個のチップのアレイでは4.5mm、96個のチップのアレイでは9mmの間隔で互いに離されている。好ましくは、チップデッキに保持されたピペットチップがフィットするフィッティングの構成を表す色で、チップデッキは形成されている、実験室の作業員が望む場合には、熱成形されたチップ容器の壁は、チップディスペンサを使用せずにチップをピペットフィッティングに取り付けることを可能にするために、補強リッジを含む。しかし、チップディスペンサを使用しない場合は、実験室の作業員は、一方の手で熱成形された容器を保持し容器を安定させ、同時に、もう一方の手でピペットを保持しチップ(複数可)を装着する必要があると思われる。
【0008】
前述のように、チップディスペンサは、熱成形されたチップ容器とチップデッキとをベース内に確実に固定することにより、確実なワンタッチ操作を容易にする。ベースは、一層の安定性を提供するために重みを加えてよい。加えて、減衰機構(dampening mechanism,制動機構)を使用して、ディスペンサカバーが開放する速度を緩和することができる。使用に先立ち、ピペットチップを充填したクラムシェルチップ容器をベースにセットし、熱成形クラムシェル容器の蓋のロックタブを解除し、蓋が開放されることを可能にする。一実施形態では、蓋の前方側壁は、ロックタブをクラムシェルの蓋の前方側壁に対して保持するために、ロックタブ上の1つ以上のディテントの背面と係合する1つ以上のディテントを有する。ロックタブを蓋に押し付けると、ディスペンサのラッチの邪魔にならないように(out of the way,通路の外になるように)収納される。代替的に、ロックタブは、チップ容器を装填するときにディスペンサのカバーの下にロックタブを収容することによって、クラムシェル蓋の前方側壁とディスペンサカバーの前方側壁との間に手動で収容してよい。その後、チップディスペンサのカバーを閉鎖して、閉鎖された状態にラッチする。ディスペンサのカバーは、透明な材料で形成されることが好ましく、また、前述のようにクラムシェルチップ容器は、透明な材料で形成され、カバーが閉鎖されたときにユーザがピペットチップとチップデッキとを見ることを可能にすることが好ましい。実験室の作業員がピペットチップにアクセスする必要がある場合に、ラッチは、好ましくは、ディスペンサベースの前面にあるボタンを押すことによって解除され、リフト機構は、自動的にディスペンサカバーを持ち上げ、同時にクラムシェルチップ容器の蓋を持ち上げて、チップデッキに保持されたピペットチップを露出させる。次いで、実験室の作業員は、1つ以上のピペットチップをピペットに取り付け、ディスペンサカバーとクラムシェルの蓋とを閉鎖し、これにより汚染のリスクを減らす。実験室の作業者は、前述のように、両手が一杯でも便利にディスペンサカバーを開閉することができる。
【0009】
本発明の例示的な実施形態では、リフト機構は少なくとも1つのリフトアームを含み、少なくとも1つのリフトアームは、ベース上の側壁の上方リムに沿って、チップディスペンサのベースに枢軸的に接続されている。各横側壁のリムに1つのリフトアームを有する2つのリフトアームを有することが好ましい。リフトアームは、それぞれのリフトアームを回転させてディスペンサカバーを持ち上げるように、即ち、ヒンジ式カバーを上方及び後方に回転させるように、それぞれバネで付勢される。前述のように、リフトアームは、ディスペンサカバーが持ち上げられると同時に、クラムシェルチップ容器の蓋もまた持ち上げる。クラムシェルチップ容器上のロックタブが開放されると、クラムシェルチップ容器の蓋又は収納されたロックタブとディスペンサカバーとの間の摩擦又は干渉は、通常、ディスペンサカバーが持ち上げられたときに、ディスペンサカバー内のクラムシェル蓋を保持するのに十分である。しかしながら、クラムシェルチップ容器蓋の同時の持ち上げを容易にするために、クラムシェルチップ容器は張り出しウイングを有し、これは、蓋のそれぞれの横側壁の下縁に沿ってリムから外へ延びる。ディスペンサが2つのリフトアームを含む場合に、クラムシェルチップ容器は、容器の蓋の両側に張り出しウイングを有することが好ましい。各張り出しウイングは、下部レセプタクルの上端に沿って、リムの対応する部分よりも外へ延びている。これにより、クラムシェルチップ容器の下部レセプタクルを持ち上げることなく、上方に持ち上げてクラムシェルチップ容器の蓋を開放するために、チップディスペンサの各リフトアームが、各張り出しウイングを直接上方へ押すことが可能になる。また、各リフトアームは、好ましくは、ディスペンサカバーを押し上げてカバーを持ち上げる棚を有する。このようにして、クラムシェルチップ容器の蓋は、ディスペンサのカバーと同時に持ち上げられる。
【0010】
下部レセプタクルと蓋とのリムには締まりばめがないため、ロックタブが解除されると蓋が自由に開放されることができる。下部レセプタクルが上昇しないこと、さもなければディスペンサのベース内で安定したままであることを確実にするために、熱成形レセプタクルの1つ以上の壁は、任意には、壁の通常の平面から外へ延びる形成された突起を含む。任意の突起が使用される場合に、チップディスペンサのベース上の対応する壁の内面は、クラムシェルチップ容器がディスペンサ内の所定の位置に完全にセットされているときに、形成された突起を受け入れるためのディテント又は開口を有するものとする。
【0011】
本発明の一実施形態では、リフトアームの下方側面は角度付き区間を含み、角度付き区間は、ディスペンサのカバーが閉鎖されているときにリフトアームが下方に回転した場合に、リフトアームをクラムシェルチップ容器でのウイングの周囲で横方向に案内する。各リフトアームは、ディスペンサに枢軸的に取り付けられているが、ピボットピンの軸受孔は、リフトアームがその通常の旋回面から横方向に移動できるように拡大されている。従って、ディスペンサカバーを閉鎖するとき、カバーは、リフトアームを押し下げ、角度付き区間が張り出しウイングに乗るように、それらを下方に回転させる。リフトアームが張り出しウイングを越えて回転するにつれて、リフトアームは、それぞれの張り出しウイングの周りをガイドされる。リフトアームがそれぞれのウイングを通過し、ディスペンサカバーがディスペンサベースのリムに対して閉鎖されると、センタリング角度がリフトアームをそれぞれの張り出しウイングの下にセンタリングするのに役立つ。さらに、リフトアームを張り出しウイングの下方にもどす他の適切な方法を、使用してよい。
【0012】
本発明の例示的な一実施形態では、熱成形されたクラムシェルチップ容器は、ディスペンサの床板上のレセプタクルの底部とともに設置され、チップデッキの垂直支持体は、通常、熱成形された容器の壁によって提供される。この構成は、熱成形された容器上のそれぞれの張り出しウイングの下にあるディスペンサでのリフトアームに対して一層大きな許容度を与え、信頼性の高い動作を容易にする。ディスペンサベースの壁は、熱成形クラムシェルの下部レセプタクルの側壁に対して横方向の支持を提供するために、内側に支持支柱を有することが望ましい。
【0013】
クラムシェル容器の別の態様は、信頼性のあるロック機構を有する必要性に対処する。レセプタクルと蓋とのリムは、ディスペンサが蓋を繰り返し開閉する必要があるため、他の熱成形された容器に共通するような締まりばめを有さない。従って、クラムシェル容器の下部レセプタクルの前方側壁に閉鎖された蓋をラッチするために、ヒンジ式ロックタブが使用される。本発明の一実施形態では、クラムシェル容器は、特に信頼性の高いラッチ機構を使用する。ラッチ機構は、下部レセプタクルの前方側壁の上に形成されたキャッチディテントを含む。キャッチディテントは、ベース壁と、ベース壁から外へ延びる側壁とを有する。各側壁は、ベース壁に隣接する近位部分と、遠位部分とを有する。各遠位部分の間の距離は、キャッチの動作のための干渉を形成するそれぞれの近位部分の間の距離よりも小さい。ヒンジ式ロックタブが、蓋の前方側壁の下縁に沿って設けられている。ロックタブは形成された係合突起を有し、形成された係合突起は、蓋を解除可能に閉鎖するために、下部レセプタクルの前方側壁上の形成されたキャッチディテントと係合する。形成された係合突起は、一対のラッチボスを含み、各ラッチボスは係合突起の片側から横方向に延びている。キャッチディテントの側壁のそれぞれの遠位部分の間の距離は、ラッチボスの間の全範囲よりも短いが、ロックタブが閉鎖位置にあるときには、ラッチボスは、キャッチディテントの側壁のそれぞれの近位部分の間に存在する。ロックタブが閉鎖されると、係合突起とロックタブ上の横方向に延びるラッチボスが、下部レセプタクル上のキャッチディテントの遠位部分の間の開口を通して押圧を行う。他方では、ロックタブが閉鎖されたときに、キャッチディテントの遠位部分は、係合突起と、横方向に延びるラッチボスと、ロックタブ全体とを、所定の位置に保持する。キャッチディテントの側壁に沿ったラッチ干渉とロックタブの係合突起とを有することは、熱成形ヒンジの作動の不完全性、又はその他のために垂直方向のオフセットがあっても、確実なラッチオペレーションを可能にする。ロック機構を開放するために、係合タブは引っ張られて、キャッチディテントの遠位部分を越えて係合突起と各ラッチボスとを引っ張る。望ましくは、近位壁は、ロックタブが閉鎖位置にあるときに、ロックタブの移動のための空間を提供するように構成される。これにより、ラッチを開放するようにこれを引っ張るために、ロックタブをユーザがつかむことが容易になる。
【0014】
別の望ましい特徴は、ピペットチップカラーがディスペンサベースの上方リムとクラムシェルレセプタクルの上方リムとよりも高いレベルで提示されるように、チップ容器とディスペンサとの両方を構成することである。これにより、実験室の作業員は、ベースのリムから張り出した一部のチャンネルを有するマルチチャンネルピペットを使用して、チップをマウントすることができる。
【0015】
実験室の作業員が試薬又はサンプルをピペッティングする間に、上述のピペットチップラックシステムは、1つ以上のチップがピペットに取り付けられた後に、実験室の作業員がディスペンサ内のピペットチップに繰り返しアクセスし、ディスペンサ内のチップを覆うことを可能にする。このシステムは、主に、前述のように、信頼性の高いワンタッチ操作を容易にするように構成されており、これにより、実験室の作業員は、チップ装着プロセス全体を通じて、ピペットを手元に保持してよい。前述のように、実験室の作業員はさらに、他のことで両手が占有された状態でディスペンサを操作してよい。例えば、カバー解除器を作動させ、手の甲でディスペンサカバーを閉鎖してよい。
【0016】
本発明の別の態様では、本発明は、上述の熱成形クラムシェルチップ容器に関する。例えば、蓋のリムに張り出しウイングを有する上述したようなクラムシェル容器である。又は、ロックタブを開放位置に保持する蓋の前面にあるディテントである。
【0017】
本発明のさらに別の態様では、さらに、チップデッキのみに保持された、即ち熱成形クラムシェルチップ容器なしの、ピペットチップを格納及び供給するために、チップディスペンサを使用してよい。本発明のこの態様において、チップデッキは、ディスペンサベースのリムに直接設置される。例えば、チップデッキに装填されたが厚紙パッケージにパッケージされた補充チップを、従来のチップラックに装填する代わりに、上述のチップディスペンサに装填することができる。同様に、緩んだピペットチップをディスペンサ内の使用済みのチップデッキに装填してよい。
【0018】
本発明の他の特徴及び利点は、図面及びその以下の説明を検討すれば当業者に明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の1つの例示的な実施形態に従って構成され、蓋が開放位置になっている、クラムシェルチップ容器の斜視図である。
【
図2】
図1に示すクラムシェルチップ容器の蓋の一部の詳細図である。
【
図3】
図1に示すクラムシェルチップ容器の下部チップレセプタクルの一部の詳細図である。
【
図6】
図1に示すクラムシェルチップ容器内に組み込まれているピペットチップのアレイを装填したチップデッキの組立図である。
【
図7】チップデッキにピペットチップを挿入及び装填した
図1、
図6のクラムシェルチップ容器を示す。
【
図8】
図1ないし
図7のクラムシェルチップ容器の斜視図であり、ロックタブは開いているが、中立位置に吊られている。
【
図9】
図8と同様のクラムシェルチップ容器の図であり、閉鎖されたクラムシェルチップ容器をラッチするために、下部レセプタクルの前方側壁上の1つ以上のディテントに対してロックタブが摩擦ばめを行う。
【
図10】
図8及び
図9と同様のクラムシェルチップ容器の図であり、ロックタブの背面が、ロックタブを上昇位置に収納するために、蓋の前方側壁上の1つ以上のディテントに対して摩擦ばめを行う。
【
図11A】
図8の線11A-11Aに沿って得た断面図である。
【
図11B】
図9の線11B-11Bに沿って得た断面図である。
【
図12A】本発明の別の例示的な実施形態に従って構成されたクラムシェルチップ容器を示す。
【
図12B】本発明の別の例示的な実施形態に従って構成されたクラムシェルチップ容器を示す。
【
図12C】
図12Aの矢印12C-12Cにより丸で囲まれた領域の詳細図を示し、ロックタブの特徴を示す。
【
図12D】
図12Bの矢印12D-12Dにより丸で囲まれた領域の詳細図を示し、容器の下部レセプタクル上のロックタブとキャッチディテントとの特徴を示す。
【
図12E】
図12Cに示されるような閉鎖位置におけるロックタブの詳細な底面図であって、下部レセプタクルの前方側壁のキャッチディテント内に係合したロックタブ上の係合突起を示す。
【
図13】本発明の例示的な実施形態に従って構成されたチップディスペンサの組立図である。
【
図14】閉鎖位置におけるチップディスペンサの斜視図を示す。
【
図15】
図13及び14に示すチップディスペンサの開放位置での斜視図を示す。
【
図16】
図14の開放したチップディスペンサに装填される準備が整っている、上昇位置にロックタブを収容した、
図7ないし10のクラムシェルチップ容器を示す。
【
図17】チップディスペンサ内に予備的にセットされているクラムシェルチップ容器を示す。
【
図18】チップディスペンサに完全に装填されるように押し下げられているクラムシェルチップ容器を示す。
【
図21】
図18及び20に示すディスペンサにクラムシェルチップ容器が装填された状態で閉鎖されているチップディスペンサのカバーを示す。
【
図22】フロントラッチ解除時にクラムシェルチップ容器の蓋とディスペンサのカバーとをともに持ち上げるディスペンサのリフト機構を示す。
【
図24】
図21中の丸で囲んだ領域を、一部破断して示した詳細図である。
【
図26】本発明の好ましい実施形態において使用されるリフトアームの1つの詳細図である。
【
図28】ディスペンサカバーが閉鎖位置にあるときのリフトアーム及びバネを示すために、一部を破断した、チップディスペンサの側面立面図である。
【
図29】ディスペンサカバーが開放位置にあるときのリフトアームとバネとを示すために、一部を破断した、チップディスペンサの側面立面図である。
【
図30A】ディスペンサのカバーが閉鎖されているときのクラムシェルチップ容器上の張り出しウイングの周りのディスペンサでのリフトアームの案内と、リフトアームが開放位置に回転しているときのディスペンサのカバーとクラムシェルチップ容器の蓋とのリフティングとを示す一連の断面図である。
【
図30B】ディスペンサのカバーが閉鎖されているときのクラムシェルチップ容器上の張り出しウイングの周りのディスペンサでのリフトアームの案内と、リフトアームが開放位置に回転しているときのディスペンサのカバーとクラムシェルチップ容器の蓋とのリフティングとを示す一連の断面図である。
【
図30C】ディスペンサのカバーが閉鎖されているときのクラムシェルチップ容器上の張り出しウイングの周りのディスペンサでのリフトアームの案内と、リフトアームが開放位置に回転しているときのディスペンサのカバーとクラムシェルチップ容器の蓋とのリフティングとを示す一連の断面図である。
【
図30D】ディスペンサのカバーが閉鎖されているときのクラムシェルチップ容器上の張り出しウイングの周りのディスペンサでのリフトアームの案内と、リフトアームが開放位置に回転しているときのディスペンサのカバーとクラムシェルチップ容器の蓋とのリフティングとを示す一連の断面図である。
【
図31】ディスペンサの後壁に減衰ピストン機構を有するチップディスペンサの別の実施形態の背面斜視図である。
【
図32】同様にクラムシェル容器を内側に有する、
図31に示すチップディスペンサを通して得られた断面図である。
【
図34】
図32の線34-34で概略を示した断面の詳細図であり、チップディスペンサのカバーは、ここでは閉鎖されている。
【
図35】
図34と同様の図であり、開放中のチップディスペンサのカバーを示す。
【
図36】
図34及び35と同様の図であり、全開位置でのチップディスペンサのカバーを示す。
【
図37】クラムシェルチップ容器なしで、開放したチップディスペンサに装填される準備が整ったピペットチップを装填したチップデッキを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の例示的な実施形態に従って構成された熱成形クラムシェルチップ容器10を示す。チップ容器10は、ヒンジ22により接続された下部レセプタクル12と上部蓋14とを含む。下部レセプタクル12は、前方側壁24と、後壁26と、横側壁28,30と、底壁32とを含む。底壁32と、横側壁28,30と、前方側壁24と、後壁26とは、ピペットチップを格納するためのウェル34を画定する。底壁32は、容器10が平坦な表面に載置されたときに容器10を支持する外側部分35によって囲まれた、隆起した平坦な長方形の部分33を有する。隆起した又は凹んだ平坦な長方形の部分33は、安定したマルチコンテナの積層を容易にするために、蓋の隆起した矩形部分37(
図2)の上に嵌合する。横側壁28,30と、前方側壁24と、後壁26とは、補強リブを含む。クラムシェルチップ容器10上の蓋14は、上壁36と、横側壁38,40と、後壁42と、前方側壁44とを含む。さらにロックタブ20を、蓋14は含む。クラムシェルチップ容器の
図1の構成要素、即ち、レセプタクル12と、蓋14と、レセプタクル12と蓋14との間のヒンジ22と、ロックタブ20とは、PETのような熱成形プラスチックで作られている。開始シート又はフィルムの適切なゲージは、
図1に示すような容器10の場合に、0.025インチである。成形プロセス中の伸張の増大を考慮すると、一層長いピペットチップを格納するように構成された一層高い容器に、一層厚いゲージが望ましい場合がある。
【0021】
任意の支持リッジ46が、前方側壁24の中央部を横切ることを除いて、チップレセプタクル12の壁24,26,28及び30の頂部の実質的に周囲に延びている。以下で一層詳細に説明するように、支持リッジ46は、チップデッキを支持する。前方側壁24の中央部分に沿ったリムは、リムから下方へ延びるロック突起54の背面に対応する凹みを含む。
【0022】
蓋14上のロックタブ20は、
図2によく示されている。さらに
図2は、ロックタブ20の背面50と相互作用してロックタブを上昇位置に保持する、蓋14の前方側壁44の部分を示している。
図12A及び12Bは、この特徴を含まない、本発明に従って構成されたクラムシェル容器310の別の実施形態を示す。
図3は、クラムシェルチップ容器10を閉鎖位置にロックするために、ロックタブ20の前面48(
図1)と相互作用する下部レセプタクル12上の前方側壁24の部分を示す。
図2及び
図3だけでなく、
図1と、
図4及び
図5に示す断面図とを参照すると、ロックタブ20は、蓋14をレセプタクル12にロックするために使用される前面48と、ロックタブ20を邪魔にならないように上に保持するために蓋14の前側のディテントに締結する背面50とを含む。用語「ディテント」は、本明細書では、熱成形されたチップ容器10の凹み又は突起のいずれかを指すために使用される。当業者には明らかなように、熱成形表面からの突起は、表面の背面に対応する凹みを生じさせる。ヒンジ56は、ロックタブ20を蓋14の下前縁に接続する。ロックタブ20は、レセプタクル12の上方リムから下方へ延びる突起54と相互作用する2つのロックディテント52を、その前面48に含む。蓋14の前方側壁44から延びるディテント58は、ロックタブ20を蓋14の前方側壁44に対して保持するために、ディテント52の間でロックタブ20の背面50上の凹み(ディテント)68と相互作用する。ロックタブ20がどのようにして閉鎖されたチップ容器10をロックするか、またロックタブ20が蓋14の前方側壁44に対してどのように保持されるかについて、
図8ないし
図11A-11Cを参照して以下に詳述する。
【0023】
図6及び
図7を参照すると、ピペットチップ18を装填したチップデッキ16が示されている。望ましくは、上述のチップデッキ16は、ポリプロピレンのような射出成形プラスチックで作られ、クラムシェルチップ容器10のレセプタクル12に挿入される。図示した実施形態では、チップデッキ16は、96個のピペットチップ18を保持するための孔の8×12アレイを含む。望ましくは、それぞれの孔は、SBSフォーマット要件に従って9mmで互いに離される。他の実施形態では、一層多い又は少ないピペットチップ18を、同じ又は異なる間隔で保持してよい。例えば、384個のピペットチップを、(各孔の中心線を基準として)4.5mmで間隔をおいた孔の16×24アレイに保持してよい。チップデッキ16上の孔のアレイを取り囲む周辺部は、ブリム60と、下方へ延びるスカート62とを含む。ブリム60は、スカート62から張り出している。チップデッキ16がレセプタクル12内に挿入されると、スカート62は、レセプタクル12の開口部と整列する。前述したような、レセプタクル12の前方側壁24上のラッチの領域の中を除いて、ブリム60は、レセプタクル12の上縁部の周囲に延びる支持リッジ46上に載る。前部支持スリーブ63は、下部レセプタクル12の前方側壁24上のラッチの領域内でデッキスカート62から下方へ延びている。デッキスカート62の後部から下方へ延びる同様の支持スリーブがあり、これは図に示さない。下部レセプタクル12の前方側壁24は、チップデッキ16が所定の位置にあるときに前部支持スリーブ63が載置される、クリアランスディテント55を含む。後部支持スリーブのための下部レセプタクルの後壁26にも、同様のクリアランスディテント57がある。各クリアランスディテント55、57は、前方側壁24と後壁26とのそれぞれに補強フット59、61を有し、チップ装填中の中心崩壊を防止するために、チップデッキ16上の支持スリーブを支持する。
図6及び
図7から分かるように、支持リッジ46とブリム60とは、レセプタクル12のいずれの他の部分よりも上方の高さにある。これは、ピペット上のチャンネルの一部が張り出していても、マルチチャンネルピペットを使用する実験室の作業員が、便利にチップ18にアクセスすることを可能にする。なお、
図6及び
図7を参照すると、さらに、チップデッキ16を所定の位置に保持するのを助けるために、レセプタクル12のリム上のディテント66内にスナップ留めされる固定フィンガー64を、例示的なチップデッキ16は含む。
図6は、チップデッキ16の一方の側面上の固定フィンガー64を示しているが、同様の固定フィンガーがチップデッキ16の他方の側面上に配置されていることを理解するものとする。同様に、
図6は、レセプタクル12の一方の側面に沿ったリムの内面上のディテント66を示しているが、同様のディテントが他方の側面に配置されていることを理解するものとする。
【0024】
図7は、ピペットチップ18がアクセス可能となるように開放されたクラムシェルチップ容器10を示す。ディスペンサを使用せずに、実験室の作業員は、
図7に示されるように、蓋14を開放し、ピペットチップ18にアクセスすることを選択してよい。ただし、本発明によれば、
図13ないし36に示されたディスペンサ110と同一又は類似のディスペンサ110を使用することが好ましい。
【0025】
図8は、ロックタブ20が解除され中立位置にあるときの、閉鎖されたクラムシェルチップ容器10を示す。
図9において、ロックタブ20は、蓋14をレセプタクル12にロックするために下方へ押圧される。
図10では、ロックタブ20が解除され、蓋14の前方側壁44に対して保持されるように上方へ押されている。
図11Aないし11Cの断面図は、これらの相互作用を一層詳細に説明している。
図11Aは、
図8に対応し、解除位置かつ中立位置に延ばされたロックタブ20を示す。上述したように、ヒンジ56は、ロックタブ20を蓋14に接続する。
図11Aの下側であるロックタブの前面48は、突起52を含み、これは、チップ容器10を閉鎖するためにレセプタクル12上の突起54と締まりばめ(interference fit)を形成する。
図9及び
図11Bは、閉鎖位置のロックタブ20を示している。突起52及び54は、容器10をロック及び閉鎖された状態に保つための締まりばめを形成することに留意するものとする。容器10のロックを解除するために、ユーザは、
図8及び
図11Aに示すように、ロックタブ20を上に持ち上げ、最初に中立位置まで上方に回転させる。次に、ロックタブ20を蓋14の前方側壁44に対して上方に保持することが望ましい場合には、
図10及び
図11Cに示す位置に保持する。
図10、
図11C及び
図2を参照すると、ロックタブ20の背面50は、ロックタブ20の前面48上の突起52の位置の間に、凹み(ディテント)68を含む。前述のように、蓋14の前方側壁44は突起58を含む。ロックタブ20が上方に回転されて蓋14の前方側壁44に押し付けられると、ディテント68は蓋14の前方側壁44上の突出部58に対して摩擦ばめを行い、タブ20を前蓋14に押し付ける。
図10及び
図11Cに示される位置は、チップディスペンサ内に熱成形されたチップ容器10を装填する際に、ロックタブ20が邪魔にならないように(out of the way,通路の外になるように)保持することが便利であるため、チップディスペンサ内にチップ容器を装填する場合に有用である。
【0026】
図12A及び12Bは、本発明の別の例示的な実施形態に従って構成された熱成形クラムシェルチップ容器310を示す。クラムシェルチップ容器310は、
図1ないし11A-11Cに示されているクラムシェルチップ容器10と同様であるが、容器蓋14A上のディテント58、又はディテントをラッチするように構成されたロックタブ20Aの裏側の凹み(ディテント)68を含まない。容器310の蓋14A上の張り出しウイング74Aのような、
図12A及び12Bに示す熱成形クラムシェル10Aの多くの特徴は、
図1ないし11A-11Cに示したクラムシェル容器10に関して説明したものと同じである。
図12A及び
図12Bで容器310を使用する場合に、ロックタブ20Aは、
図12Aの位置から解除されて、下部レセプタクル12Aから蓋14Aを解除する。次に、ロックタブ12Aは、チップ容器310をディスペンサ110に装填する際に、ディスペンサ110が使用されているときにロックタブ20Aを邪魔にならないように収容するために、
図12Bに示された位置に、蓋14Aの前部58Aに対して保持されることが好ましい。通常は好ましくないが、
図12Bに示す位置に折り畳まずに下方に吊り下げてロックタブ20Aを解除した状態で、チップ容器310をディスペンサ110内で使用してよい。
図12Cないし
図12Eを参照すると、ロックタブ20Aは係合突起320を含み、係合突起320は、ロックタブ20Aを蓋14Aの前リムに取り付けるヒンジ322に対して長手方向に平行に延びる。ヒンジ322は、ロックタブ20Aのためのヒンジ軸が十分に規定されるように穿孔されることが好ましく、これは、ロックタブ20Aが下部レセプタクル12Aの前方側壁のキャッチディテント324の中に確実にラッチするのを助ける。キャッチディテント324は細長くされ、ロックタブ20Aが
図12Cに示されるように下方へ押されると、係合突起320がキャッチディテント324内に捕捉を行うように、キャッチディテント324は全体的にサイズが決定される。
図12Eは、
図12Cに示されるラッチの下から見た閉鎖位置のロックタブ20Aを示す。次に、
図12D及び12Eを参照すると、キャッチディテント324は、ベース壁326と2つの側壁328とによって画定される。各横側壁328は、ベース壁326に隣接する近位部分330と、遠位部分332とを含む。それぞれの近位部分330間の距離は、それぞれの遠位部分332間の距離よりも大きい。ラッチボス334は、ロックタブ20A上の係合突起320の各側から横方向に延びている。ロックタブ20A上の係合突起320上のラッチボス334間の全範囲は、下部レセプタクル12A上のキャッチディテント324の側壁328の遠位部分332間の距離よりも大きい。ロックタブ20Aが閉鎖位置へ下方へ押圧されると、ラッチボス334は、キャッチディテント324の側壁の遠位部分332の間の開口を通して押圧される。キャッチディテント324の側壁の近位部分330間の距離は、例えば、
図12Eに示されるように、ラッチボス334間の全範囲と同じか、わずかに大きい。ロックタブ20A上の係合突起320から横方向に延びるラッチボス334と、下部レセプタクル上のキャッチディテント324の側壁の遠位部分332との間の干渉は、ラッチボス334がキャッチディテント324の側壁の遠位部分332を通り過ぎる(clear)のに十分な力でロックタブ12Aが引っ張られない限り、蓋14Aを閉鎖されたままにする。側壁の近位部分330の長さは、ロックタブ20Aが閉鎖されたときに係合突起320がキャッチディテント324内でわずかに移動するための空間を提供するのに十分であることが望ましいことに留意するものとする。このクリアランスは、ラッチを開放することが望ましいときに、ユーザがロックタブ20Aを把持することを容易にする。記載されたラッチ機構は、特に頑強であり、開閉を繰り返すのに適している。(側壁328の深さとは対照的に)側壁328の垂直高さは、必要であれば、閉鎖された場合にヒンジ322を介したロックタブ12Aの一貫しない垂直方向の変位を考慮するために、修正されてよい。
【0027】
図13ないし
図30A-30Dは、本発明の例示的な実施形態に従って構成されたチップディスペンサ110を示す。まず、
図14及び15を参照すると、チップディスペンサ110は、ベース112とカバー114とを含む。カバー114の前方側壁はラッチタブ116を含む。ラッチタブ116は、ベース112に閉鎖されたカバー114をラッチするために、ベース112上の解除可能なラッチ118に受け入れられる。ラッチ118は、押し下げ可能なボタン120をディスペンサベース112の前方側壁に含むことが好ましい。押し下げ可能なボタン120は、押し下げられたときにラッチを解除する。例えば、
図15に示すように、ディスペンサ110はさらに、ラッチ118が解除されたときにカバー114を自動的に持ち上げる第1及び第2リフト機構122,124を含む。
【0028】
チップディスペンサ110の構成要素は、
図13の組立図に最もよく示されている。ディスペンサ110は、例えば、ポリカーボネートのような射出成形プラスチックから作られたメインフレーム126を含む。メインフレーム126の底部には、例えば、メインフレーム126の底部に成形されたねじ付きフィッティング(取り付け具)に締結されたねじで、ウェイトプレート128が取り付けられている。ウェイトプレート128は、好ましくは陽極酸化アルミニウムで作られているが、他の材料を使用してよい。ゴム脚はまた、ウェイトプレート128の底部に取り付けてよい。ウェイトプレート128は任意であるが、それは、ディスペンサがユーザに即座につかまれることなく所定の位置に留まるように、実験室の作業員に一層の安定性と信頼性とを提供する。ウェイトプレート128の代わりに、ウェイトプレート又は他の重りを、例えば、製造を一層容易に又は一層安価にするために、プラスチックで作られた底部プレートの頂部に取り付けてよい。
【0029】
成形リム構成要素130もまた、メインフレーム126に取り付けられている。望ましくは、リム構成要素130はさらに、ポリカーボネート又はアセタールのような射出成形プラスチックから作られる。ベース112のメインフレーム126は、底壁又は床板132と、横側壁134,136と、後壁138と、前方側壁140とを含む。床板132と壁134,136,138及び140との内面は、
図1ないし
図11A-
図11Cのクラムシェルチップ容器10、又は
図12A,12Bのクラムシェル容器310が設置できるベースン(basin,凹部)を形成する。上方リム構成要素130は、ボタン120と協働してラッチタブ116をカバー上に固定するラッチバネ舌部142を含む。ボタン120は、成形ピンによってリム構成要素130上の所定の位置にスナップ留めされる。ボタン120のピボット軸は、バネ舌部142のベースの上方の高さにある。ボタン120が所定の位置にスナップ留めされると、バネ舌部142は、ボタン120を閉鎖位置に付勢し、ボタンの上部はリム構成要素130の前面に向かって回転し、ほぼ前面に向かって回転する。カバー114上のラッチタブ116は、斜角のあるラッチフィンガーを含む。カバー114が押し下げられると、フィンガーがボタン120の上面を通り過ぎる(clear)まで、ラッチフィンガーの斜角の下面が、バネの付勢に抗してリム構成要素130から離れるようにボタン120の上部を押す。次に、フィンガーをボタン120の上壁の下にラッチして、バネ舌部142の付勢は、ボタン120を閉鎖位置に回転させる。ラッチを開放するために、ボタン120は、バネによる付勢に逆らって下方へ押し下げられ、フィンガーを解放する。ユーザの両手が満杯であっても、例えば、ユーザの手の甲を使用して、前述のように、カバー114を閉鎖することができ、ラッチを解除して、ユーザがカバー114を開放することができる。このワンタッチ制御により、カバーの使用が促進され、また汚染のリスクが軽減される。
【0030】
リム構成要素130の前部の内側には、クラムシェルチップ容器10のためのレセプタクル12上のロック突起54のためのクリアランスを提供する切欠144が含まれている。さらにリム構成要素130の各側の前部は、実験室の作業員の親指及び指によるアクセスを提供して、クラムシェルチップ容器10をディスペンサ110から引っ張るためのフィンガー開口146,148を含む。リム構成要素130の側部の後部は、リフト機構122,124のための凹状マウント150,152を含む。各リフト機構は、リフトアーム154,156、旋回ねじ158,160、引張バネ162,164、及びリフトアームカバー166,168を含む。リフトアームとカバー、並びにボタンは、アセタールのような成形プラスチックで作られることが望ましい。
【0031】
望ましくはカバー114は、射出成形された透明なポリカーボネートで作られる。一対のヒンジは、カバー114の後壁をベース112の後壁に枢軸的に連結する。メインフレーム126は、後壁138の頂部に沿った一対のヒンジマウント190と、直立した減衰タブ(dampening tab)192とを含む。減衰タブ192の目的は、ディスペンサカバー114を開いたときに、カバーの後方への動きを減速し(slow the motion)、感触を柔らかくすることである。カバーが全開回転(全開位置)に近づくと、減衰タブ192は、カバー114の後壁、又はカバー114の後壁からの突起と干渉する。減衰タブ192は、接触を減衰させるために弾力性があるようにしてよい。これに加えて、又はこれに代えて、エラストマーのバンパー194を使用して、接触を減衰させてよい。
図32は、さらに相当大きな減衰が望まれる場合に有用であることが可能な、減衰ピストンを有するチップディスペンサの別の実施形態を示す。これに代えて、もし望むならば、チップディスペンサは、本質的に制御された緩慢な開く移動を提供するリフト機構を採用することによって、減衰機構の必要性を回避してよい。
【0032】
図14ないし
図25は、ディスペンサ110に装填及び使用する際に関係するステップを示す。
図14は、閉鎖位置にある空のチップディスペンサ110を示す。
図15は、ディスペンサ110の前面にあるボタン120を押して空のディスペンサ110を、ユーザが開放することを示す。次に、
図16を参照すると、前述したように、クラムシェルチップ容器10の蓋14の前方側壁に対して、
図1ないし
図11A-11Cに示されたクラムシェル容器10が使用される場合に、容器10をチップディスペンサ110にセットする前に、ロックタブ20を上昇位置に保持することができる。代替的に、
図12A及び12Bに示すクラムシェル容器310が使用される場合に、チップ容器がディスペンサ110に装填されているとき、即ち、
図21に示すステップの前に、ロックタブ20Aは、ユーザによってディスペンサ110のカバーの下に収容される。又は、上述のように、ロックタブ20Aを解除し、下方に垂れさせてよい。これは、ディスペンサカバー114が閉鎖されたときにクラムシェル容器10の蓋14がわずかに開く(ajar)ことを必要とする可能性がある。ディスペンサのベースン内の壁は、いくつかの支柱170を含むことが望ましい。これらの支柱170は、クラムシェルチップ容器10,310の下部レセプタクル12,312のリブ付き壁の上の対応する位置と嵌合し、クラムシェルチップ容器10,310のレセプタクルの側方支持体を提供するように構成される。先に説明したように、チップディスペンサ110は、
図15に示すようにボタン120を押すことによって開放される。
図15は、ユーザの指で押されているボタン120を示しているが、ボタン120は、ユーザの手が一杯のときに、前述のように、手の甲又はこぶしを使用して押すことができる。
図15に示すように、チップディスペンサ110を開いた状態で、クラムシェルチップ容器10がディスペンサ110内に配置される。これを
図16に示す。さらに
図16を参照すると、熱成形クラムシェル容器10,310の下部レセプタクル12は、望ましくは、各側壁28、30上に突起70を含む。
図16は、横側壁28上の突起70を示すが、横側壁30及びその突起は、
図16では見えない。
図1は、側壁30の内側と、側壁30上に突起を形成する凹みの一部とを示す図である。
図16において、突出部70は、横側壁28上に示され、別の同様の突出部が横側壁30上に配置されているが、
図16には示されないことは理解されるものとする。横側壁134,136の内面は、クラムシェルチップ容器10,310がディスペンサ110の所定の位置に完全にセットされたときに突起70を受け入れるためのディテント又は開口172を含む。特に、
図17及び
図19を参照すると、クラムシェルチップ容器10,310がディスペンサ110内に最初にセットされたとき、突起70は、典型的には、容器10,310をその完全に設置された位置よりもわずかに上に保持する。しかし、
図18、20に示すように、容器10,310に下向きの圧力を加えることにより、突起70を開口又はディテント172に押し込む。この任意の特徴は、例えば、ディスペンサカバー114と容器蓋14とが持ち上げられてピペットチップを露出させる場合に、チップ容器10,310を適切な垂直位置に維持するのに役立つ。このシステムは、
図18及び20に示すように、チップ容器10,310がディスペンサベース112の床板132に設置されるように設計される。
図23は、ディスペンサ110内に閉鎖されたチップ容器10,310を配置して、ディスペンサ110のカバー114を保持する、リフト機構122のうちの1つのクローズアップの図を示す。
【0033】
図21は、ディスペンサ110のカバー114を閉鎖している動作の次のステップを示す。例えば、
図1及び
図12を参照すると、チップ容器10,310の蓋14,14Aは、第1及び第2張り出しウイング74,76,74Aを含む。これらの張り出しウイング74,76,74Aは、蓋14,14Aの下方リムから外へ延び、蓋14,14Aの各横側壁の下縁に沿って配置される。リフト機構122,124がディスペンサカバー114を持ち上げるのと同時に、クラムシェルチップ容器10,310の蓋14,14Aを持ち上げるために、張り出しウイング74,76,74Aはチップディスペンサ110上のリフト機構122,124によって使用される。クラムシェルチップ容器10,310が最初にディスペンサ110に装填され、ディスペンサカバー114が閉鎖位置に下方へ押されると、リフト機構122,124は下方へ回転され、クラムシェルチップ容器10,310の蓋14,314上の張り出しウイング74,76,74Aの周囲及び下方にガイドされる。このプロセスについては、以下でさらに詳しく論じる。本発明のいくつかの実施形態では、蓋14,14Aは、カバー114が閉鎖されたときに、ディスペンサカバー114の内側に対する摩擦ばめ又は締まりばめ(friction or interference fit)によって保持され、これは、摩擦ばめ又は締まりばめが十分に強い場合には、張り出しウイングが必要でない可能性があることを意味する。例えば、
図12Bに示すようにロックタブ20Aが折り返されてディスペンサカバー114内に収容されると、カバー114の内面に対するロックタブ20Aの圧力は、ディスペンサカバー114が張り出しウイング74Aからの補助なしで持ち上げられたときに、クラムシェル容器310の蓋14Aを保持するのに十分である可能性が高い。
【0034】
図22ないし30A-30Dは、リフト機構122,124の構成要素及び動作を示す。リフト機構124は、
図22ないし
図29A-Dに示すリフト機構122と同一又は類似の構成要素、及び同一又は類似の動作を有することが理解されるものとする。また、本発明の多くの態様は、異なるリフト機構を使用して達成されてよいことも理解されるものとする。開示された実施形態は、バネで付勢されたピボット式リフトアームを使用するが、機械的バネの代わりにさらに、他のタイプの弾性構成要素又はエラストマー構成要素を使用してよい。さらに、重みを加えたレバー機構を、開示されたバネ付勢機構の代わりに使用してよい。また、チップディスペンサへの種々の取付点を有するリフティングピストンを、ピボット式リフトアームの代わりに使用してよい。他の種類の機械的リフターも、特に、リフターがクラムシェル容器の蓋14,114を持ち上げることを必要とされない状況において使用してよい。
【0035】
図28を簡単に参照する。カバー114を閉鎖するようにラッチするタブ116(
図22参照)に対して、リフト機構122は、ピボット式リフトアーム154を
図22で反時計方向に引っ張るように付勢された、引張バネ162が伸長位置で示される。
図21及び
図24にも示されるが、ディスペンサ110内にチップ容器10,310を有するこの閉鎖位置では、リフトアーム154は、それぞれの張り出しウイング74の下に位置する。
図24を参照するものとする。
【0036】
図29において、リフトアーム154は、全開位置に回転される。
図29は、ラッチ118が解除された後、ディスペンサカバー114が開放されることを可能にした後の、後退位置における引張バネ162を示す。さらに
図22及び25に、チップ容器10,310が装填された全開位置が示されている。好ましくは、ディスペンサ110の他方の側のリフトアーム156と引張バネ164とは、同じ方法で構成される。
図28及び
図29は、引張バネ162の使用を示しているが、ねじりバネのような他のタイプのバネを使用して、それぞれのリフトアーム154,156を持ち上げることができることを、当業者は理解することである。
【0037】
図23を
図24と比較すると、クラムシェルチップ容器10が先にチップディスペンサ110内に装填された場合に、前述のように、リフトアーム154は、ディスペンサカバー114が閉鎖されたときに、リフトアーム154の上面184が張り出しウイング74の下方に位置するように、それぞれの張り出しウイング74(374)の周囲及び下方でガイドされなければならない。この場合に、ユーザはディスペンサ110のボタン120を押してラッチ118を解除してよい。クラムシェルチップ容器10,310の蓋14とディスペンサ110のカバー114とを同時に持ち上げるように、バネ162,164がそれぞれのリフトアーム154,156を回転することを可能にする。これを
図22に示す。
図25は、クラムシェルチップ容器10とディスペンサカバー114との張り出しウイング74と蓋14とを同時に持ち上げるリフトアーム154の詳細図を示す。また、
図22には、クラムシェルチップ容器10の蓋14の前面にあるロックタブ20が、ディスペンサ110のカバー114の下に収容されていることも示されている。
図22のようにピペットチップを露出させると、実験室の作業員はピペットに1つ以上のピペットチップを取り付けてよい。チップの取り付けが完了すると、ユーザは単にカバー114を下方へ押してラッチ118を閉鎖する。チップをさらに取り付けることが望ましくなるときまで、ピペットチップ18をカバーしたままにする。
【0038】
図23ないし
図25を参照すると、ディスペンサベース112のリム130の各側面は、切欠174を含む。この切欠174は、リフトアーム154の外面から延びる棚176のための凹所を提供する。ディスペンサベース112の他方の側は、切欠174と同様の切欠を含み、ディスペンサの他方の側のリフトアーム156は、棚176と同様の棚を含む。また、
図24に示すように、角度付き区間178は、棚176の上方でリフトアーム154のためのカバー166から横方向に外へ延びている。ディスペンサ110の他方の側のアーム156を持ち上げるためのカバー168は、同様の角度付き区間を含む。
【0039】
図26及び27は、リフトアーム154の詳細な外観を示す。クラムシェルチップ容器10,310上のそれぞれのウイング74に係合するリフトアーム154の部分に沿って配置された角度付き下向き表面180を、リフトアーム154は有する。
図26は、ピボット式リフトアーム154の内面を貫通する取り付け孔182を示す。図には示されないが、この孔は、リフトアーム154の外側で拡大されている。これにより、リフトアーム154が下方へ回転されたときに、それぞれの張り出しウイング74を通り過ぎるために、リフトアームを横方向及び/又は回転方向に移動させることができる。リフトアーム154が張り出しウイング74の下方に位置すると、リフトアームの上面184が張り出しウイング74に対して上方へ押され、同時に、リフトアームの上方に延びる棚176がカバー114の側壁の下縁に対して上方へ押される。このようにして、クラムシェルチップ容器10,310の蓋14,14Aは、カバー114と同時に持ち上げられる。
【0040】
上述のように、リフトアーム用のカバー166は、角度付き区間178を含む。それぞれのリフトアーム154が張り出しウイング74を過ぎて下方へ回転された後に、この角度付き区間178は、それぞれのリフトアーム154を真っ直ぐにするのを助けるために使用される。この特徴は、リフトアーム154が、その下方回転の間に張り出しウイング74を通り過ぎた後に、ウイング74の下の位置に自然に復帰する傾向があるので、任意である。また、角度付き区間178は、持ち上げ動作の初期部分の間、リフトアーム154を位置合わせしたままにするのに役立つ。
【0041】
位置合わせ(alignment)のための他の手段は、ベース112の上方リムに組み込んでよい。例えば、リム上の設置領域を、リムが完全に下方へ回転されたときに、リフトアーム154のためのレベル位置に適合するように構成することである。
【0042】
次に
図30Aないし30Dを参照すると、一連の断面図は、リフトアーム154とクラムシェルチップ容器10の蓋14の張り出しウイング74との間の相互作用、及びディスペンサ110のカバー114との相互作用を示す。チップ容器310上で、蓋に対する参照番号14Aと、張り出しウイングに対する参照番号74Aとが、
図12A及び12Bに示される。これは、これらの特徴及びこの動作モードが、開示されたチップ容器10,310と、同様に蓋上に張り出しウイングを有する他の類似のチップ容器の両方に関連することを思い出させる。
図30Aは、リフトアーム154を下方へ回転させるために、リフトアーム154の棚176に対して下方へ押されているディスペンサカバー114を示す。ディスペンサ110のヒンジの回転軸は、クラムシェルチップ容器10,310のヒンジの回転軸とは異なることに留意するものとする。また、
図30Aないし30Dの断面図の平面は互いに異なり、リフトアーム154の動作を概略的に示すように選択されている。例えば、
図30Aでは、この断面に沿ったカバー114の下縁は、リフトアーム154上の棚176と接触するように示されないが、リフトアーム154は、実際には、リフトアーム154のピボットアクセスに一層近い点で、棚176と接触している。
図30Aでは、リフトアーム154上の角度付き下向き表面180は、まだクラムシェルチップ容器の蓋14,14A上の張り出しウイング74,74Aと接触していない。
図30Bは、カバー114がさらに下方へ押し下げられた、又は回転されたプロセスにおけるその後の時間を示す。張り出しウイング74,74Aの側面までリフトアーム154が通り過ぎるために、張り出しウイング74,74Aは、角度付き下向き表面180に接触して、
図30Bの矢印で示すようにリフトアーム154を外側へ案内する。
図30Cは、全閉位置に押し下げられているカバー114を示す。この位置では、上面184を含むリフトアーム154全体が、クラムシェルチップ容器の蓋14,14Aの張り出しウイング74,74Aの下方で通り過ぎる。さらに、カバー114の側壁は、リフトアーム154のためのカバーの角度付き区間178を下方へ押し下げ、リフトアーム154を中へ押し込んで、リフトアーム154の上面184の少なくとも一部が張り出しウイング74,74Aの下方に位置するようにしている。クラムシェルチップ容器10,310の下部レセプタクル12のリムは、上昇リフトアーム154によって捕捉されるのに十分なほど外側へ延びていないことに留意するものとする。
図30Dは、ボタン120が押し下げられてディスペンサ110上のラッチ118を解除し、それぞれのバネがそれぞれのリフトアーム154,156を上方に回転したときに生じる、持ち上げられたカバー114を示している。リフトアーム154が上方に回転されると、その上面184は、クラムシェルチップ容器10,310の蓋14,14Aを持ち上げるために、張り出しウイング74,74Aに押し付ける。同時に、リフトアーム154上の棚176がディスペンサカバー114を上方へ押す。クラムシェルチップ容器10,310の下部レセプタクル12が不注意に持ち上げられないように保持する、ディスペンサベース112の内側の側壁の上のディテント又は開口172内に、クラムシェルチップ容器上の突起70はセットされることに留意するものとする。
【0043】
図37は、開放したチップディスペンサ110に装填される準備が整ったピペットチップ218を装填したチップデッキ216を示す。この実施形態で示されるチップデッキ216は、96個のピペットチップ218のアレイを有する。周囲では、チップデッキ216は、ブリム220と、スカート222と、前後にある解除タブ224とを備えている。スカート222は、ディスペンサのリム130の内側輪郭内に嵌合し、一方、ブリム220は、リム130の上面に直接支持される。換言すれば、チップデッキ216がクラムシェルチップ容器なしで使用される場合に、チップデッキ216は、ベース112のリム130に支持されるものとする。チップデッキ216がディスペンサ110に装填されると、ユーザは、チップがクラムシェルチップ容器10,310内で提示される場合と同様の態様でディスペンサ110を使用してよい。ベース112のリム130の内側はさらに、チップデッキ216上の解除タブ224と相互作用するための小さな凹み又は突起を含む。
【0044】
図31ないし36は、ディスペンサベース412の後方側壁418上に減衰ピストン機構420を有するチップディスペンサ410の別の実施形態を示す。減衰機構420は、ディスペンサ410をベンチトップ上で快適に安定に維持するために、ディスペンサ410の蓋414の後壁416と相互作用して、蓋414が開放する速度を減速する。
図33を参照すると、減衰機構420は、ディスペンサ410のベース412の外の後方側壁418に沿って配置されたシリンダ424内に、ピストン422を含む。シリンダ424とピストン422とは、ディスペンサベース412の後方側壁418に取り付けられるハウジング430に取り付けられる。ピストン422の上部は、ピストン422を下方へ押すために蓋が開放されたときに蓋414の後壁416に係合するボタン436に接続されている。ピストン422がシリンダ内をスライドするとき、シール426がピストン422の底部に設けられてシリンダ424に対してシールされる。底部キャップ428がシリンダ424の底部に取り付けられ、シール432もこの接続のために設けられている。シリンダ424のための底部キャップ428は、ピストン422が、蓋414の後方運動からシリンダの中で下方へ押されるときに、空気がシリンダ424から逃げることを可能にする計量孔を有する。必要に応じて、フィルタ、チューブ、穿孔プレート又は他の手段を使用して、計量孔を通る空気流量を調整してよい。リターンバネ434は、蓋414が閉鎖されたときにピストンを上方へ押すように設けられている。
図33はまた、成形された底部プレート450と、ウェイトプレート452とを示す。多重ウェイトプレートは、単一ウェイトプレート452の代わりに使用されてよい。ウェイトプレート452又はプラスチック成形ベースプレートを有するプレートを使用することは、通常、ベンチトップ上に平らに設置するように一体の金属プレートを機械加工するよりも安価で製造が容易である。
【0045】
図34は、閉鎖位置にあるディスペンサ蓋414(410)を示す。この位置では、リターンバネ434とピストン422とは完全に延びている。
図35は、蓋414の後壁416が、減衰機構420のためのボタン436の頂部と係合する点で開放する、蓋414を示す。蓋414が開放されている間の後壁416の高さに対するボタン436の高さは、開放プロセスの所望の点で減衰プロセスを開始するように選択される。
図36は、ピストン422とリターンバネ434とが完全に後退した位置にあるように、蓋414の後壁416がボタン436に対して下方へ押し下げられた全開位置の蓋414を示す。ピストン422が下方に移動すると、ピストン422がリターンバネ434に押し付けられるが、減衰ピストン422の底部に対する空気圧力が、下方への移動に対する抵抗の大部分を提供することが好ましい。
【0046】
本発明は、以下の請求項の主題に包括される限りは、上述の例示的な実施形態に限定されない。