(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】少なくとも1つのバッテリのバッテリ状態の試験方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/389 20190101AFI20240328BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20240328BHJP
【FI】
G01R31/389
G01R31/367
(21)【出願番号】P 2022562046
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2020061445
(87)【国際公開番号】W WO2021213669
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】515207581
【氏名又は名称】ツェーエムヴェーテック テヒノロギー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CMWTEC technologie GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】アリ-オガリ、モハメッド ラドヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブス、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ツィンガー、エリク
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-163957(JP,A)
【文献】特開昭60-144675(JP,A)
【文献】特開2014-232697(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106249165(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバッテリにおけるバッテリ状態の試験方法であって、該方法は少なくとも以下の工程:
バッテリ(10)の内部抵抗を求めることを含む第1のインピーダンス試験(1)の実行、この場合、バッテリ(10)は所定の周波数を有する電流推移が印加され、その結果として生じるバッテリ(10)の電圧応答が測定される;
この第1のインピーダンス試験(1)の測定結果(5)の取得及び記憶;
試験パルスないし放電パルスによるバッテリ(10)の大電流負荷試験(3)の実行;
第2のインピーダンス試験(2)の実行;
この第2のインピーダンス試験(2)の測定結果(6)の取得及び記憶;
バッテリ状態
が導き出されることができるように、前記第1のインピーダンス試験(1)の測定結果、前記第2のインピーダンス試験(2)の測定結果及び/又は前記大電流負荷試験(3)の測定結果が互いに関係付けられ
ることによる、試験の評価(7)
を含むこと
を特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記第1のインピーダンス試験(1)の測定結果と前記第2のインピーダンス試験(2)の測定結果の差分値(8)が生成され、これから、この差分値(8)が予め設定される閾値(9)又は予め設定される範囲の外部にあるか否かについて導き出されること
を特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記大電流負荷試験(3)は凡そ1~10秒の期間
又は3秒の期
間実行されること
を特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の方法において、
個々の測定の測定
値は、自由に構成可能に互いに関係付けられること
を特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の方法において、
複数
の個別試験方法が1つのバッテリ(10)について実行され、個々の測定結果の結果が互いに関係付けられることにより、異常のあるバッテリ(10)が同定されること
を特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記1つのバッテリ(10)についての複数の個別試験方法は、一定の電流でのバッテリ(10)の放電、一定の電圧での放電、一定の電力での放電、直流電圧内部抵抗測定又は交流抵抗の測定であり
、これらの試験方法の幾つか又は全てが試験シーケンスにおいて順次実行され、対応する測定結果が互いに組み合わせられること
を特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れかに記載の方法において、
前記バッテリ(10)の前記第1のインピーダンス試験(1)及び/又は前記第2のインピーダンス試験(2)は一定の周波数
で実行されること
を特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の方法において、
前記バッテリ(10)の前記第1のインピーダンス試験(1)及び/又は前記第2のインピーダンス試験(2)は複数の周波数
で実行されること
を特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1~8の何れかに記載の方法において、
前記バッテリ(10)の前記第1のインピーダンス試験(1)及び/又は前記第2のインピーダンス試験(2)は所定の周波数スペクトル
で実行されること
を特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載の方法において、
前記大電流負荷試験(3)の試験パルスは1~10秒の
又は2~4秒の
又は3秒
のパルス継続時間の間維持されること
を特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れかに記載の方法において、
前記大電流負荷試験(3)の試験パルスは500~3000アンペアの電流強さを有すること、又は、前記大電流負荷試験(3)の試験パルスは前記バッテリ(10)のCレートの1倍から10倍の間の値にほぼ相当する電流強さを有すること
を特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項1~11の何れかに記載の方法において、
前記大電流負荷試験(3)の試験パルスの電流強さは段階的に大きくされること
を特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1~12の何れかに記載の方法において、
前記バッテリ(10)の放電は、一定の電流又は一定の電圧で又は一定の電力で測定され、測定結果が記憶されること
を特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1~13の何れかに記載の方法を実行するための、少なくとも1つのバッテリ(10)についてのバッテリ状態の試験装置であって、
前記試験装置(11)は、バッテリ(10)の内部抵抗を求めることを含む少なくとも第1のインピーダンス試験(1)及び第2のインピーダンス試験(2)を実行するためのインピーダンス測定装置(12)を有し、
前記試験装置(11)は、試験パルスないし放電パルスによるバッテリ(10)の大電流負荷試験(3)を実行するための大電流装置(13)を有し、
前記試験装置(11)は、試験の評価(7)をするための評価ユニット(16)を有すること
を特徴とする、試験装置。
【請求項15】
請求項14に記載の試験装置において、
前記評価ユニット(16)は、前記第1のインピーダンス試験(1)及び前記第2のインピーダンス試験(2)の測定結果(5)を取得及び記憶するよう構成されていること
、
前記評価ユニット(16)によって、前記第1のインピーダンス試験(1)、前記第2のインピーダンス試験(2)及び/又は前記大電流負荷試験(3)の測定結果は、バッテリ状態
が導き出されることができるように、互いに関係付けら
れること
を特徴とする、試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念(前置部)に応じた少なくとも1つのバッテリのバッテリ状態の試験方法に関する。本発明の第2の視点は、請求項14の上位概念(前置部)に応じた少なくとも1つのバッテリのバッテリ状態の試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のための、バッテリは、その製造の際に既にいわゆるバッテリ異常(バッテリエラー:Batteriefehler)を有し得る。それ故、このバッテリ異常を可及的に早期に発見(検出)し、異常のあるバッテリを選別して排除するという目的がある。
【0003】
極めて頻繁に生じるバッテリ異常は一方ではいわゆるバッテリのセパレータに関係し得る。
【0004】
バッテリセパレータは、バッテリのカソードとアノードないしは蓄電池の負極及び正極を空間的に分離するという課題を有する。セパレータは、内部短絡を回避するために、両電極を互いに対し電気的に絶縁するバリアでなければならない。尤も、セパレータは、電気化学反応がセル内において進行できるためには、同時に、イオンに対して透過性でなければならない。
【0005】
バッテリセパレータは、良好な出力データ(特性)及び高容量が可能であるよう、内部抵抗が可及的に小さくかつ高パッキング密度(Packungsdichte)が達成できるよう、薄くなければならない。更に、セパレータは、電解液を吸収し、及び、密閉されたセルにおいてガス交換を保証する(可能にする)機能を有する。
【0006】
典型的なバッテリ異常は、英語で“damaged separator”とも称される損傷セパレータである。
【0007】
「ショートセパレータ(short separator)」と称されるバッテリ異常の場合、セパレータは短縮(収縮)されており、そのため、セパレータと電極のプレート表面との間の接触面は幾何学的に完全にはカバーされない。
【0008】
更に、製造時にバッテリのカソード又はアノード上に不純物として蓄積し、そのため、バッテリの性質(特性)を明確に悪化させる不所望のいわゆる物質塊(Massenklumpen)、英語では“mass lump”が生じ得る。
【0009】
更に、バッテリの短絡を引き起こし得る、英語で“bent plate”とも称される、湾曲電極プレートも存在し得る。
【0010】
頻繁に見られる更なるバッテリ異常は逆極性(“reverse polarity”)である。これは、バッテリの製造時に誤って電極が取り違えられて使用された場合に起こり得る。
【0011】
バッテリ異常は、バッテリの製造時だけではなく、バッテリの運転ないし使用中にも起こり得る。なぜなら、バッテリはその寿命の経過中に何回もの充放電プロセスの影響を受けるからである。それに加えて、温度変動による負荷も生じる。これらの要因は、複数の異なる種類の不所望のバッテリ異常ないしバッテリ欠陥の発生可能性に寄与する。
【0012】
DE 10 2015 005 132 A1から、バッテリの個別セル(複数)のセル電圧を検出し、検出したセル電圧を自動的に試験パラメータと比較する自動車用バッテリの試験方法が既知である。これにより、自動車(修理)工場で交換されるバッテリがその引渡し前にその安全性に関し評価されることができる。
【0013】
EP 1 037 063 A1は、電圧計と電流計を含むバッテリセットにおいて異常検出(発見)のための検出装置を記載している。異常検出は、バッテリセットの内部抵抗を求める(決定する)ことによって行われる。
【0014】
DE 10 2013 013 471 A1から、配線異常検出のための、マルチセル式バッテリパックにおけるリード線インピーダンスを求める(決定する)方法が既知である。この場合、バッテリパック内の異なるセルにおける夫々の電位差が異なる符号を有する場合、配線異常が存在すると結論付けられる(推定される)。
【0015】
バッテリのこの内部抵抗ないしインピーダンスは周波数依存性が強い。内部抵抗は周波数が増大すると小さくなり、無効成分を有し得る。従って、複素インピーダンスともいわれ、大きさ(ゲイン)と位相に応じて、例えばボード線図として、又は、実数部と虚数部に応じて、この場合は(ベクトル)軌跡(Ortskurve)として、表される。
【0016】
バッテリ挙動を極めて広範囲に観測することにより、電気インピーダンス分光法、略してEIS、とも称される、いわゆるスペクトルインピーダンス測定が可能になる。この場合―複素数の―内部抵抗が複数の周波数で、例えば0.1Hz~1kHzで測定されることができるが、これは測定プロセスを数分間長くし得る。周波数応答ないし(ベクトル)軌跡から電気化学的挙動を読み取ることができる。(ベクトル)軌跡が例えば典型的な推移から大きく外れると、損傷(障害)があると推定する(結論付ける)ことができる。
【0017】
例えばDE 10 2004 063 431 A1からも、電流推移の電流時間積分から及び直線的に低下する電圧応答の電圧時間積分からバッテリの内部抵抗を求める(決定する)ことが見出される。
【0018】
既述のように、このインピーダンス分光法(EIS)は、電気化学系において、即ち、バッテリにおいて、例えば鉛酸蓄電池において、当該系の電気化学的特性(性質)を分析し、特徴付け及び試験するために、既知の方法で使用される。この測定技術では、例えばμHzからMHzの間の周波数領域を有する正弦波信号のスペクトルがエネルギ蓄積器に、例えばバッテリに印加され、周波数応答が分析される。
【0019】
インピーダンスは振幅増大と位相シフトを反映する。インピーダンスは、数キロヘルツから始まってミリヘルツ領域に至るまでの複数の異なる周波数で求められ、かくして、バッテリのインピーダンススペクトルが検出される。温度、充電状態(State of Charge,SOC)又は電力負荷によるバッテリ挙動の変化は、対応して変化されるインピーダンス曲線に反映される。
【0020】
EP 1 892 536 A1からも、経時劣化状態(SoH)、充電状態(SoC)及び機能実現(Funktionserfuellung)度(SoF)の監視が既知であり、そのために、インピーダンス分光法が実行される。インピーダンス分光法においては、バッテリは負荷が加えられず、そのため、この方法は、バッテリ状態即ち充電状態及び経時劣化状態の決定についてのみ適合されている。両パラメータは、小さな負荷電流及び定義された温度において、実際に取得可能な容量ないしフル充電状態において取得可能な最大容量によって計算される。
【0021】
これを出発点として、DE 10 2016 216 664 A1は、(1つの)試験パルスが印加される、少なくとも部分的に電気的に駆動される乗物の低電圧バッテリの機能信頼性(機能的安全性)を確認する(求める)ための方法を提案している。この方法では、バッテリの機能信頼性(機能的安全性)はバッテリにおいて試験パルス中に生じる電圧推移と予め設定された機能要求との相関関係から(生じ)、機能信頼性(機能的安全性)は、試験パルス中におけるバッテリの電圧推移が複数の独立の試験基準を満たす場合に、与えられる。
【0022】
従って、既知の方法では、複数の異常(エラー)を一義的に同定するために、まず、バッテリの1つの異常を特定(確認ないし発見)するためにただ1つの試験が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】DE 10 2015 005 132 A1
【文献】EP 1 037 063 A1
【文献】DE 10 2013 013 471 A1
【文献】DE 10 2004 063 431 A1
【文献】EP 1 892 536 A1
【文献】DE 10 2016 216 664 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
1つ又は複数のバッテリ異常の正確な同定のために、既知の方法では、まず、バッテリにおいて(1つの)単独の測定が行われる。次いで、バッテリは数週間にわたって検疫(検査:Quarantaene)に供される、即ち例えば倉庫において保管される。その後、バッテリは、可能であれば(1つの)更なる異常を検出可能にするために、更に一回試験される。
【0025】
しかしながら、これは、多数のバッテリが数週間にわたって保管されなければならず、そのため、莫大な保管コストが生じるため、不利である。
【0026】
これらの既知の試験法によっては、同様に、最も頻繁に生じる5つの異常のうちの検出可能であるのは3つまでのみである。これらの最も頻繁な異常のうちの2つは、バッテリの出荷後及び1~2年の運転期間後にようやく検出されることができる。
【0027】
この異常検出は、予め設定される試験時間における異常の作用(影響)の程度に依存する。バッテリの製造時における通常の試験は大電流試験(HRD)である。しかしながら、この試験によって同定できるのは、直ちに区別される電気的測定値、例えば明白な欠陥のあるセル又は分断されたセルブリッジについてのもの、を有する異常のみである。
【0028】
しかしながら、品質管理において、新たに製造されたバッテリについて既に、該バッテリが高い電圧ないし容量損失を引き起こす異常を有するか否かについて確認(検出)可能にするために、バッテリは、「検疫所」において保管される必要があり、そして数週間後に電圧ないし容量喪失についての試験が実行可能になる。
【0029】
更に、既知の試験方法によっては、バッテリ異常の一部はバッテリの長期にわたる機械的又は熱的使用後に又は経時劣化(Alterung)によってようやく有効に(利用可能に)なり得る。例えば、湾曲プレートは、何らかの振動又は経時劣化(硫酸化)後にようやく短絡を引き起こし得るであろう。
【0030】
既知の先行技術における欠点は、更に、バッテリの機能実現は不十分にしか確認(検出)できないことである。
【0031】
既述の欠点(複数)を前提とし、本発明の課題は、簡単な手段によってバッテリ異常の格別に早期にかつ正確な検出を可能にする冒頭に掲げたタイプの方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
この課題は、請求項1に応じた少なくとも1つのバッテリにおけるバッテリ状態の試験方法によって解決される。この課題は、請求項14に応じた少なくとも1つのバッテリにおけるバッテリ状態の試験装置によって同様に解決される。
具体的には、本発明の第1の視点により、少なくとも1つのバッテリにおけるバッテリ状態の試験方法が提供される。該方法は少なくとも以下の工程:
バッテリの内部抵抗を求めることを含む第1のインピーダンス試験の実行、この場合、バッテリは所定の周波数を有する電流推移が印加され、その結果として生じるバッテリの電圧応答が測定される;
この第1のインピーダンス試験の測定結果の取得及び記憶;
試験パルスないし放電パルスによるバッテリの大電流負荷試験の実行;
第2のインピーダンス試験の実行;
この第2のインピーダンス試験の測定結果の取得及び記憶;
バッテリ状態が導き出されることができるように、前記第1のインピーダンス試験の測定結果、前記第2のインピーダンス試験の測定結果及び/又は前記大電流負荷試験の測定結果が互いに関係付けられることによる、試験の評価
を含むこと
を特徴とする(形態1)。
更に、本発明の第2の視点により、本発明の方法を実行するための、少なくとも1つのバッテリについてのバッテリ状態の試験装置が提供される。
前記試験装置は、バッテリの内部抵抗を求めることを含む少なくとも第1のインピーダンス試験及び第2のインピーダンス試験を実行するためのインピーダンス測定装置を有し、
前記試験装置は、試験パルスないし放電パルスによるバッテリの大電流負荷試験を実行するための大電流装置を有し、
前記試験装置は、試験の評価をするための評価ユニットを有すること
を特徴とする(形態14)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここに本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)上記形態1に記載の方法において、
前記第1のインピーダンス試験の測定結果と前記第2のインピーダンス試験の測定結果の差分値が生成され、これから、この差分値が予め設定される閾値又は予め設定される範囲の外部にあるか否かについて導き出されることが好ましい。
(形態3)上記形態1又は2に記載の方法において、
前記大電流負荷試験は凡そ1~10秒の期間又は3秒の期間実行されることが好ましい。
(形態4)上記形態1~3の何れかに記載の方法において、
個々の測定の測定値は、自由に構成可能に互いに関係付けられることが好ましい。
(形態5)上記形態1~4の何れかに記載の方法において、
複数の個別試験方法が1つのバッテリについて実行され、個々の測定結果の結果が互いに関係付けられることにより、異常のあるバッテリが同定されることが好ましい。
(形態6)上記形態5に記載の方法において、
前記1つのバッテリについての複数の個別試験方法は、一定の電流でのバッテリの放電、一定の電圧での放電、一定の電力での放電、直流電圧内部抵抗測定又は交流抵抗の測定であり、これらの試験方法の幾つか又は全てが試験シーケンスにおいて順次実行され、対応する測定結果が互いに組み合わせられることが好ましい。
(形態7)上記形態1~6の何れかに記載の方法において、
前記バッテリの前記第1のインピーダンス試験及び/又は前記第2のインピーダンス試験は一定の周波数で実行されることが好ましい。
(形態8)上記形態1~7の何れかに記載の方法において、
前記バッテリの前記第1のインピーダンス試験及び/又は前記第2のインピーダンス試験は複数の周波数で実行されることが好ましい。
(形態9)上記形態1~8の何れかに記載の方法において、
前記バッテリの前記第1のインピーダンス試験及び/又は前記第2のインピーダンス試験は所定の周波数スペクトルで実行されることが好ましい。
(形態10)上記形態1~9の何れかに記載の方法において、
前記大電流負荷試験の試験パルスは1~10秒の又は2~4秒の又は3秒のパルス継続時間の間維持されることが好ましい。
(形態11)上記形態1~10の何れかに記載の方法において、
前記大電流負荷試験の試験パルスは500~3000アンペアの電流強さを有すること、又は、前記大電流負荷試験の試験パルスは前記バッテリのCレートの1倍から10倍の間の値にほぼ相当する電流強さを有することが好ましい。
(形態12)上記形態1~11の何れかに記載の方法において、
前記大電流負荷試験の試験パルスの電流強さは段階的に大きくされることが好ましい。
(形態13)上記形態1~12の何れかに記載の方法において、
前記バッテリの放電は、一定の電流又は一定の電圧で又は一定の電力で測定され、測定結果が記憶されることが好ましい。
(形態14)上記本発明の第2の視点参照。
(形態15)上記形態14に記載の試験装置において、
前記評価ユニットは、前記第1のインピーダンス試験及び前記第2のインピーダンス試験の測定結果を取得及び記憶するよう構成されていること、
前記評価ユニットによって、前記第1のインピーダンス試験、前記第2のインピーダンス試験及び/又は前記大電流負荷試験の測定結果は、バッテリ状態が導き出されることができるように、互いに関係付けられることが好ましい。
【0034】
本発明は、とりわけバッテリ異常を特定(確認ないし発見)するための、少なくとも1つのバッテリにおけるバッテリ状態の試験方法に関し、該方法は少なくとも以下の工程を含む:
バッテリの内部抵抗を求める(決定する)ことを含む第1のインピーダンス試験の実行、この場合、バッテリは所定の電流推移が負荷(印加)され、その結果として生じるバッテリの電圧応答が測定される;
この第1のインピーダンス試験の測定結果の取得及び記憶;
好ましくは数秒間の、試験パルスないし放電パルスによるバッテリの大電流負荷試験(Belastungs-Hochstromtest)の実行;
好ましくは1~10秒の、とりわけ2秒の、休止(間を空けた)後の、第2のインピーダンス試験の実行;
この第2のインピーダンス試験の測定結果の取得及び記憶;
バッテリ状態が、とりわけ異常のあるバッテリが存在するか否かについて、導き出されることができるように、第1のインピーダンス試験の測定結果、第2のインピーダンス試験の測定結果及び/又は大電流負荷試験の測定結果が互いに関係付けられる、とりわけ差引計算される(verrechnet)、ことによる(ことによって行われる)、試験の評価。
【0035】
換言すれば、まず、バッテリについて1つのインピーダンス試験が行われる。この種のバッテリ試験は数秒間持続し得る。次いで、大電流負荷試験が行われ、そして、もう一度、1つのインピーダンス試験が第1のインピーダンス試験に対する比較測定として行われる。
【0036】
第1のインピーダンス試験の測定結果は、第2のインピーダンス試験の測定結果と関係付けられる、例えば差引計算される。そして、この結果から及び大電流試験(の結果)によって、欠陥のあるバッテリが選別されることができ、そして、欠陥のあるバッテリは簡単な方法で(選別)排除されることができる。
【0037】
既述のように、内部抵抗は、電圧が予め定義された閾値、例えばカットオフ電圧(Abschaltspannung)未満に低下する前に、所定のエネルギを処理するバッテリの能力を特徴付ける。
【0038】
バッテリの全内部抵抗は、オーム抵抗と、分極抵抗とも称される電荷移動抵抗(英語でCharge Transfer (Resistance) RCT)とからなる。オーム抵抗は、電極抵抗、電解液抵抗、セパレータ抵抗及び各部の接触抵抗を意味し、ただ1つの周波数での電気化学的インピーダンス試験、いわゆるACRによって評価されることができる。
【0039】
バッテリの電荷移動抵抗を求める(決定する)ために、バッテリは2つの高速インパルスで放電され、電圧降下が放電電流に応じて評価されることができる。このプロセスは、バッテリの直流のみを使用し、DCR試験とも称される。このようにして、バッテリの全内部抵抗を得て、これから電荷移動抵抗を求めることができる。これら2つの試験方法即ちACR及びDCRは、極めて限定された試験時間中におけるバッテリ出力(性能)の最大の試験可能性を提供するが、このことはとりわけ生産ラインにおいて有利である。なぜなら、それによって、サイクル時間(Taktzeiten)は延長(遅延)されないからである。
【0040】
大電流負荷試験では、バッテリは試験パルスないし放電パルスによって相対的に大きな電流で放電され、電圧は試験中及び試験後に観察(モニタ)される。バッテリのこの負荷によって、バッテリの電気化学的性質(特性)は変化される。この変化は、インピーダンス分析によって異常のあるバッテリと異常のないバッテリの比率として反映されることができる。
【0041】
英語でハイレート放電(High Rate Discharge)、HRD、とも称される大電流負荷試験は、大電流によるバッテリの放電によって行われる。例えば、バッテリは10倍超のいわゆるCレートで放電されることができる。
【0042】
Cレートは、バッテリの、とりわけ蓄電池(Akku)の、その容量に関する充電又は放電電流を記述する。Cレートによって、例えば、定格容量に依存する、最大許容可能充電又は放電電流が与えられることができる。逆の場合に(逆に)、放電電流の強さに依存する蓄電池容量を規定するために、ファクタも使用される。Cファクタ(C-Faktor)は、この電流と容量の商として定義される。例えば、70Ahの容量の場合、10倍放電電流は700Aの電流強さに相当するであろう。バッテリは一定電流、一定電圧又は一定電力で放電可能である。
【0043】
大電流負荷試験では、バッテリ状態についてのメッセージを出すために、開路(開放)電圧(open circuit voltage、OCV)と放電パルスの終点における負荷(閉路)電圧(constant current voltage)を使用することができる。
【0044】
被試験バッテリは、例えば、いわゆる液式(geflutet)鉛酸蓄電池であり得るが、密閉式蓄電池やリチウムイオン蓄電池でもあり得る。
【0045】
本発明の第1の有利な実施形態に応じ、第1のインピーダンス試験の測定結果と第2のインピーダンス試験の測定結果の差分(値)が生成され、これから、この差分値が予め設定される範囲(Intervall)の外部にあるか否かについて導き出される。差分値を用いることによって、バッテリ状態の容認できない悪化(劣化)が存在するか又は切迫している(その兆候がある)かについて、求められる(確認される)。例えば、異常のあるバッテリは異常のないバッテリに対して10%~30%の、とりわけ20%の、偏差(Abweichung)を有し得る。
【0046】
本発明の有利な一発展形態に応じ、大電流負荷試験は凡そ1~10秒の期間、とりわけ3秒の期間、実行される。この期間は、バッテリの品質を保証するために、及び、より多くの異常のあるバッテリを選別することができるために、有利である。従来技術から知られているような顕著により長い試験時間は、生産の遅延をもたらし、製造プロセスにおける莫大なエネルギ損失を引き起こす。
【0047】
本発明の更なる有利な一変形形態では、個々の測定の測定値(複数)は自由に構成可能に(konfigurierbar)互いに関係付けられる。個々の方法ステップ(工程)の測定値を記憶することにより、これらの測定値は複数の異なる試験プロフィール(Testprofile)について比較され、更なる評価及び統計計算(処理)のために考慮されることができる。ユーザは、バッテリのタイプと容量に応じて、電流、電圧、試験時間、休止時間(Pausezeit)及び評価限界(Auswertungslimit)のような特定の試験パラメータを調節することができる。そして、実際の測定値は従前の測定データと統計的に比較されることができる。このため、結果(複数)の平均値と標準偏差を求め、例えば評価閾値を規定(定義)するために使用することができる。
【0048】
本発明の有利な一実施形態では、複数の、とりわけ3~5の、個別試験方法が1つのバッテリについて実行され、個々の測定結果の結果が互いに関係付けられることにより、異常のあるバッテリが同定される。例えば、一定の電流でのバッテリの放電(定電流放電:constant current discharge)、一定の電圧での放電(定電圧放電:constant voltage discharge)、一定の電力での放電(定電力放電:constant power discharge)、直流電圧内部抵抗測定(DC(直流)内部抵抗:DC internal resistance)及び交流抵抗の測定(AC(交流)インピーダンス:AC impedanz)の試験方法が(1つの)試験シーケンスにおいて順次実行され、対応する測定結果が互いに組み合わせられることができる。
【0049】
本発明の更なる一発展形態に応じ、バッテリの第1のインピーダンス試験及び/又は第2のインピーダンス試験は一定の(固定)周波数で、とりわけ凡そ1kHzの周波数で、実行される。この測定は単一周波数測定とも称される。選択される周波数は、バッテリタイプ及び試験時間に依存する。例えば鉛蓄電池の場合、インピーダンス値は、安定的な(一定の)実部と凡そ100Hzから凡そ1kHzまでの小さな虚部を有する。単一周波数試験は、(1つの)周波数スペクトルでの測定と比べて、試験時間が短縮され、それにも拘らず、バッテリ(状態)の意味のある指標(情報)が得られるという利点を有する。単一周波数法は、電解液抵抗とも称されるバッテリの内部オーム抵抗を表すACR試験としても知られている。本発明に応じ、本方法は数ミリ秒で実行可能である。かくして、バッテリの製造時に生産ラインにおいていわゆる(ライン)終端試験機(End-of-Line-Testmaschinen)での使用は問題なく可能である。
【0050】
本発明の一発展形態では、バッテリの第1のインピーダンス試験及び/又は第2のインピーダンス試験は複数の周波数で、とりわけ凡そ0.5Hz、50Hz及び500Hzで実行される。これは、測定結果が可及的により意味のある最適な周波数領域を得る可能性を提供する。
【0051】
本発明の更なる有利な一実施形態では、バッテリの第1のインピーダンス試験及び/又は第2のインピーダンス試験が(1つの)周波数スペクトルで、とりわけ0.1Hzから1MHzの間の周波数スペクトルで実行される。
【0052】
インピーダンスを計算する場合、フーリエ級数を使用することができる。かくして、スペクトルの特定の周波数領域、例えば鉛酸蓄電池については0.1Hzから7.5kHz、を使用することによって、バッテリの等価回路(Ersatzschaltkreis)のパラメータを同定(特定)することができる。例えば、いわゆるナイキスト線図を用いることにより、インピーダンスの測定値は複素数へのフーリエ変換によって実数及び虚数として記述されることができる。このために、バッテリは凡そ0.1Hzから7.5kHzの周波数スペクトルで刺激(活性化)され、信号応答が測定される必要がある。この線図を用いることにより、等価回路のパラメータが特定されないし読み取られることができる。このパラメータ化は、バッテリの電気化学的特性(性質)をより良好に試験可能にすることに寄与する。このようにして、バッテリにおける異常(エラー)もインピーダンス分析に反映されることができる。
【0053】
本発明の更なる一変形形態に応じ、大電流負荷試験の放電パルスは1~10秒の、好ましくは2~4秒の、とりわけ3秒の、パルス継続時間(パルス幅)の間維持される。これは、生産サイクルを増大し、エネルギ損失を低減する。
【0054】
鉛酸蓄電池の領域においては、大電流負荷試験の試験パルスないし放電パルスが凡そ500から3000アンペアの電流強さを有することが想定され得る。選択される電流強さはバッテリ容量に依存し、バッテリメーカー及び負荷時間に応じて特定(規定)され得る。ここでは、原理的には、バッテリのCレートが適用され、例えば、バッテリは、Cレートの1倍から20倍(1Cから20C)の間の(1つの)値で負荷されることができる。既述のように、Cレートは、バッテリの、とりわけ蓄電池の、その容量に関する充電電流又は放電電流を記述する。Cレートによって、例えば、定格容量に依存する、最大許容可能充電又は放電電流が与えられることができる。例えば、15倍のCレート(15C)は1500Aの電流強さの100AHバッテリに相当するであろう。
【0055】
有利な一方法では、大電流負荷試験の試験パルスないし放電パルスの電流強さは段階的に(階段状に)大きくされることができる。これによって、夫々のバッテリ構造について、異常(エラー)が可能な限り良好に同定(特定)されることができる最適な負荷度を規定する(定める)ことができる。更に、バッテリの不必要な負荷も回避される。
【0056】
負荷下におけるバッテリの挙動を正確に試験するために、いわゆる放電曲線、即ち、試験中におけるバッテリの放電時の電圧と電流(の関係)を形成することも可能である。バッテリの放電は、一定の電流又は一定の電圧又は一定の電力で測定され、その測定値は記憶されることができる。
【0057】
本発明の独立の一思想に応じ、とりわけ上記の方法を実行するための、少なくとも1つのバッテリについてのバッテリ状態の試験装置が提供される。該試験装置は、バッテリの内部抵抗を求める(決定する)ことを含む少なくとも第1のインピーダンス試験及び第2のインピーダンス試験を実行するためのインピーダンス測定装置を有し、該試験装置は、試験パルスないし放電パルスによるバッテリの大電流負荷試験を実行するための大電流装置を有し、該試験装置は、試験の評価をするための評価ユニットを有する。
【0058】
本発明の有利な一実施形態に応じ、評価ユニットは、第1のインピーダンス試験及び第2のインピーダンス試験の測定結果を取得及び記憶するよう構成されており、とりわけ、評価ユニットによって、第1のインピーダンス試験及び第2のインピーダンス試験及び/又は大電流負荷試験の測定結果は、バッテリ状態が、とりわけ異常のあるバッテリが存在するか否かについて、導き出されることができるように、互いに関係付けられ、とりわけ差引計算される(verrechnet)。
【0059】
本発明の更なる目標、利点、特徴及び適用可能性は図面を用いた一実施例についての以下の説明から明らかになる。これに関し、説明される及び/又は図面に記載される特徴はすべてそれ自体(単独)で又は意味のある任意の組み合わせで、特許請求の範囲又はその参照引用(Rueckbeziehung)におけるそれらの関係とは独立にも、本発明の対象を構成する。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】バッテリ状態決定方法の一例のフロー(チャート)。
【実施例】
【0061】
同じ又は同じ作用を有する構成要素は、実施例を用いて以下に説明する図面の各図において、可読性を改善するために、(同じ)図面参照符号が付記されている。
【0062】
例えば自動車のためのバッテリ10は製造時において既にいわゆるバッテリ異常(エラー)を有し得る。従って、目標は、このバッテリ異常を可及的に早期に検出(認識)し、異常のあるバッテリ17を選別して排除することである。
【0063】
既に説明したように、典型的なバッテリ異常の1つは、英語で“damaged separator”とも称される損傷セパレータである。“ショートセパレータ(short separator)”と称されるバッテリ異常の場合、セパレータは短縮(収縮)されており、そのため、セパレータと電極のプレート表面との間の接触面は幾何学的に完全にはカバーされない。
【0064】
更に、製造時にバッテリのカソード又はアノードに不純物として蓄積し、そのため、バッテリの性質(特性)を明確に悪化させる不所望のいわゆる物質塊(Massenklumpen)、英語では“mass lump”が生じ得る。
【0065】
更に、バッテリの短絡を引き起こし得る、英語で“bent plate”とも称される、湾曲電極プレートも存在し得る。
【0066】
頻繁に見られる更なるバッテリ異常は逆極性(“reverse polarity”)である。これは、バッテリ10の製造時に誤って電極(正極と負極)が取り違えられて使用された場合に起こり得る。
【0067】
さて、この種の異常をバッテリ10の製造時において既に確認(検出)可能にして、欠陥バッテリ17を直接的に(直ちに)選別して排除可能にするために、本発明は、バッテリ状態を決定するための方法及び装置11を提案する。
【0068】
図1は、とりわけバッテリ異常を特定(確認ないし発見)するための、少なくとも1つのバッテリ10におけるバッテリ状態の試験方法であって、少なくとも以下の工程(複数)を含む方法の一例のフローチャートを示す。
【0069】
バッテリ10の内部抵抗を求める(決定する)ことを含む第1のインピーダンス試験の実行(をする工程)、この場合、バッテリ10は所定の周波数を有する電流推移が加えられ、その結果として生じるバッテリ10の電圧応答が測定される;この種のバッテリ試験は数秒間持続し得る。
【0070】
この場合、この第1のインピーダンス試験1の測定結果が収集(取得)され、記憶5される。これらの測定値は後の更なるインピーダンス試験のための基準値として用いられる。
【0071】
次に、試験パルスないし放電パルスによるバッテリ10の大電流負荷試験(負荷・大電流試験)3が実行される。大電流負荷試験3では、バッテリ10は、相対的に大きな電流を有する試験パルスないし放電パルスによって放電され、電圧は試験中及び試験後に観測(モニタ)される。バッテリ10のこの負荷によって、その電気化学的特性は変化される。この変化は、異常のないバッテリ10に対する異常のあるバッテリ10の割合(比率)を反映するため、インピーダンス分析において利用可能である。
【0072】
例えば、バッテリ10は、いわゆるCレート(C-Rate)の10倍超で放電され得る。ここで、Cレートは、バッテリの、とりわけ蓄電池の、その容量に関係付けられた充電電流又は放電電流を記述する。例えば70Ahの容量の場合、10倍放電電流は700Aの電流(の強さ)に相当するであろう。バッテリは、一定の電流、一定の電圧又は一定の電力で放電され得る。
【0073】
大電流負荷試験3では、バッテリ状態についてメッセージを出すために、開路(開放)電圧及び放電パルスの終点における負荷電圧を使用することができる。
【0074】
被試験バッテリ10は、例えば、いわゆる液式(geflutet)鉛酸蓄電池であり得るが、密閉式蓄電池やリチウムイオン蓄電池でもあり得る。
【0075】
バッテリ10のこの負荷に続けて、第2のインピーダンス試験2が実行され、その測定結果もまた収集(取得)され、記憶6される。この第2のインピーダンス試験2は、第1のインピーダンス試験1に対する比較測定として使用される。
【0076】
バッテリ10の第1のインピーダンス試験1及び/又は第2のインピーダンス試験2は、一定の(1つの)周波数で、とりわけ凡そ1kHzの周波数で実行可能である。この測定は単一周波数測定とも称される。選択される周波数は、バッテリのタイプ及び許容(される)試験時間に依存する。例えば鉛蓄電池の場合、インピーダンス値は、一定の(stabil)実部と凡そ100Hzから凡そ1kHzまでの小さな虚部を有する。尤も、バッテリ10の第1のインピーダンス試験1及び/又は第2のインピーダンス試験2は複数の周波数で、とりわけ凡そ0.5Hz、50Hz及び500Hzで、或いは、所定の周波数スペクトルで、とりわけ0.1Hzから1MHzの周波数スペクトルで実行されることも考えられる。
【0077】
本発明において本質的であるのは、これらの試験、即ち、インピーダンス試験1、2とそれらの間に行われる大電流負荷試験3の評価7である。第1のインピーダンス試験1の測定結果と第2のインピーダンス試験2の測定結果は、バッテリ状態が、とりわけ異常のあるバッテリ17が存在するか否かについて、導き出されることができるように、評価ユニット16において互いに関係付けられる、とりわけ差引計算される(verrechnet)。
【0078】
本実施例では、第1のインピーダンス試験1の測定結果と第2のインピーダンス試験2の測定結果との差分(値)8が生成され、これから、この差分値8が予め設定される範囲の外部にあるか否かについて導き出される。バッテリ状態の容認できない悪化(劣化)が存在するか又は切迫している(その兆候がある)かについて、差分値8によって求められる(確認される)。例えば、異常のあるバッテリ10は異常のないバッテリ10に対して10%~30%の、とりわけ20%の、偏差(Abweichung)を有し得る。
【0079】
図3はそのような試験の結果を示す。同図において、x軸(横軸)には被試験バッテリ10の数(番号)4が記載(プロット)されている、即ち、各被試験バッテリ10には、対応する測定点を有する一義的な(固有の)数が割り当てられている。従って、本実施例では、26個のバッテリ10を試験した。
【0080】
y軸(縦軸)には、第1のインピーダンス試験1と第2のインピーダンス試験2の測定値の差分(値)8が記載されている。本実施例では、これの範囲は0.09~0.17である。
【0081】
図3から更に見出すことができるように、評価のために、インピーダンス測定1、2の間の差分(値)8のための0.13の閾値9が予め設定された。所定の範囲(ないし幅)を予め設定することも考えられるであろう。
【0082】
1~21の番号が割り当てられたバッテリ10はすべて、閾値9より小さい差分を表す値8を有する。これに対し、22~26の番号を有するバッテリ10についての差分値8はこの閾値9より顕著に大きい。これらのバッテリ10は欠陥バッテリ17、即ちバッテリ異常を有するバッテリである。
【0083】
図2は、とりわけ上記の方法を実行するための、少なくとも1つのバッテリ10についてのバッテリ状態の試験装置11の一例を示す。試験装置11は、バッテリ10の内部抵抗を求める(決定する)ことを含む、少なくとも第1のインピーダンス試験1及び第2のインピーダンス試験2を実行するためのインピーダンス測定装置12を有する。
【0084】
2つのインピーダンス試験1、2より多くのインピーダンス試験及び複数の大電流負荷試験3を実行し、個々の測定結果を相応に組み合わせることも、本発明の意義において考えられることは勿論である。
【0085】
更に、試験パルスないし放電パルスによってバッテリ10の大電流負荷試験3を実行し、測定するための大電流装置13が設けられている。
【0086】
測定コンタクト(接触)部、とりわけインピーダンス測定のための4極式測定コンタクト(接触)部には図面参照符号15が付記されている。これに続いて、とりわけクランプ電流計(Zangenstrom)ないし電流計クランプ(Stromzange)として構成可能なクランプメータ(Stromklemmen)14を備えている。
【0087】
更に、試験装置11は、試験の評価7のための評価ユニット16を有する。評価ユニット16は、第1のインピーダンス試験1、第2のインピーダンス試験2及び/又は大電流試験3の測定結果の取得及び記憶をするよう構成されている。
【0088】
評価ユニット16は、試験装置11のコントロールないしレギュレーションのために使用され、デジタルベースでプログラムされるプログラマブルロジックコントローラ(SPS:speicherprogrammierbare Steuerung)であり得る。SPSは、最も単純な場合、入力部(複数)、出力部(複数)、オペレーティングシステム(ファームウェア)及びインタフェイスを有し、アプリケーションプログラムはインタフェイスを介してロード可能である。アプリケーションプログラムは、入力部(複数)に依存して出力部(複数)がスイッチされる仕方を規定する。更に、評価ユニット16は、本実施例では、(第1、第2の)インピーダンス試験の測定値を分析し、測定結果を出力するよう構成されている。
【0089】
(1つの)バッテリ10について複数の、とりわけ3つから5つの個別試験方法が実行され、個別測定結果(複数)の結果(複数)が互いに関係付けられることにより、異常のあるバッテリ17を同定(特定)することも、本発明の意義において考えられる。例えば、一定の電流でのバッテリ10の放電(定電流放電)、一定の電圧での放電(定電圧放電)、一定の電力での放電(定電力放電)、直流電圧内部抵抗測定(DC内部抵抗)及び交流抵抗の測定(ACインピーダンス)の試験方法が(1つの)試験シーケンスにおいて順次実行され、対応する測定結果が互いに組み合わせられることができる。
【0090】
ここに本発明の可能な態様を付記する。
(付記1)とりわけバッテリ異常を特定するための、少なくとも1つのバッテリにおけるバッテリ状態の試験方法。該方法は少なくとも以下の工程:
バッテリの内部抵抗を求めることを含む第1のインピーダンス試験の実行、この場合、バッテリは所定の周波数を有する電流推移が印加され、その結果として生じるバッテリの電圧応答が測定される;
この第1のインピーダンス試験の測定結果の取得及び記憶;
試験パルスないし放電パルスによるバッテリの大電流負荷試験の実行;
第2のインピーダンス試験の実行;
この第2のインピーダンス試験の測定結果の取得及び記憶;
バッテリ状態が、とりわけ異常のあるバッテリが存在するか否かについて、導き出されることができるように、前記第1のインピーダンス試験の測定結果、前記第2のインピーダンス試験の測定結果及び/又は前記大電流負荷試験の測定結果が互いに関係付けられる、とりわけ差引計算される、ことによる、試験の評価
を含む。
(付記2)上記の方法において、
前記第1のインピーダンス試験の測定結果と前記第2のインピーダンス試験の測定結果の差分値が生成され、これから、この差分値が予め設定される閾値又は予め設定される範囲の外部にあるか否かについて導き出される。
(付記3)上記の、とりわけ付記1又は2に記載の方法において、
前記大電流負荷試験は凡そ1~10秒の期間、とりわけ3秒の期間、実行される。
(付記4)上記の、とりわけ付記1~3の何れかに記載の方法において、
個々の測定の測定値、とりわけ前記第1のインピーダンス試験、前記第2のインピーダンス試験及び/又は前記大電流負荷試験測定値は、自由に構成可能に互いに関係付けられる。
(付記5)上記の、とりわけ付記1~4の何れかに記載の方法において、
複数の、とりわけ3~5の、個別試験方法が1つのバッテリについて実行され、個々の測定結果の結果が互いに関係付けられることにより、異常のあるバッテリが同定される。
(付記6)上記の、とりわけ付記5に記載の方法において、
前記1つのバッテリについての複数の個別試験方法は、一定の電流でのバッテリの放電、一定の電圧での放電、一定の電力での放電、直流電圧内部抵抗測定又は交流抵抗の測定であり、とりわけ、これらの試験方法の幾つか又は全てが試験シーケンスにおいて順次実行され、対応する測定結果が互いに組み合わせられる。
(付記7)上記の、とりわけ付記1~6の何れかに記載の方法において、
前記バッテリの前記第1のインピーダンス試験及び/又は前記第2のインピーダンス試験は一定の周波数で、とりわけ凡そ1kHzの周波数で、実行される。
(付記8)上記の、とりわけ付記1~7の何れかに記載の方法において、
前記バッテリの前記第1のインピーダンス試験び/又は前記第2のインピーダンス試験は複数の周波数で、とりわけ凡そ0.5Hz、50Hz及び500Hzで、実行される。
(付記9)上記の、とりわけ付記1~8の何れかに記載の方法において、
前記バッテリの前記第1のインピーダンス試験及び/又は前記第2のインピーダンス試験は所定の周波数スペクトルで、とりわけ0.1Hzから1MHzの周波数スペクトルで、実行される。
(付記10)上記の、とりわけ付記1~9の何れかに記載の方法において、
前記大電流負荷試験の試験パルスは1~10秒の、好ましくは2~4秒の、とりわけ3秒の、パルス継続時間の間維持される。
(付記11)上記の、とりわけ付記1~10の何れかに記載の方法において、
前記大電流負荷試験の試験パルスは500~3000アンペアの電流強さを有すること、又は、前記大電流負荷試験の試験パルスは前記バッテリのCレートの1倍から10倍の間の値にほぼ相当する電流強さを有する。
(付記12)上記の、とりわけ付記1~11の何れかに記載の方法において、
前記大電流負荷試験の試験パルスの電流強さは段階的に大きくされる。
(付記13)上記の、とりわけ付記1~12の何れかに記載の方法において、
前記バッテリの放電は、一定の電流又は一定の電圧で又は一定の電力で測定され、測定結果が記憶される。
(付記14)上記の、とりわけ付記1~13の何れかに記載の方法を実行するための、少なくとも1つのバッテリについてのバッテリ状態の試験装置。
前記試験装置は、バッテリの内部抵抗を求めることを含む少なくとも第1のインピーダンス試験及び第2のインピーダンス試験を実行するためのインピーダンス測定装置を有する;
前記試験装置は、試験パルスないし放電パルスによるバッテリの大電流負荷試験を実行するための大電流装置を有する;
前記試験装置は、試験の評価をするための評価ユニットを有する。
(付記15)上記の、とりわけ付記14に記載の試験装置において、
前記評価ユニットは、前記第1のインピーダンス試験及び前記第2のインピーダンス試験の測定結果を取得及び記憶するよう構成されている;
とりわけ、前記評価ユニットによって、前記第1のインピーダンス試験、前記第2のインピーダンス試験及び/又は前記大電流負荷試験の測定結果は、バッテリ状態が、とりわけ異常のあるバッテリが存在するか否かについて、導き出されることができるように、互いに関係付けられ、とりわけ差引計算される(verrechnet)。
【符号の説明】
【0091】
1 第1のインピーダンス試験
2 第2のインピーダンス試験
3 大電流負荷試験
4 被試験バッテリの数(番号)
5 測定結果の取得及び記憶
6 測定結果の取得及び記憶
7 試験の評価
8 差分(値)
9 予め設定される閾値
10 バッテリ
11 試験装置
12 インピーダンス測定装置
13 大電流装置
14 電流クランプ
15 インピーダンス測定のための測定コンタクト(接触)部
16 評価ユニット
17 欠陥バッテリ