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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】仮想体験システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 31/00 20060101AFI20240328BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20240328BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20240328BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240328BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20240328BHJP
   G08B 23/00 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
G08B31/00 Z
G02B27/02 Z
G06F3/0481
G06F3/01 510
G09B9/00 M
G08B23/00 510Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023082117
(22)【出願日】2023-05-18
【審査請求日】2023-08-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 孝甫
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0039085(US,A1)
【文献】特開2018-124624(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0030651(US,A1)
【文献】特開2020-174329(JP,A)
【文献】特開2018-192107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B27/00-30/60
G06F3/01
3/048-3/04895
G08B23/00-31/00
G09B1/00-9/56
17/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災時の視界をユーザに仮想体験させるための仮想体験システムであって、
頭部装着型ディスプレイと、
前記頭部装着型ディスプレイの向きを検出するための1以上のセンサと、
前記ユーザにより選択された煙の濃度を特定する特定部と、
前記1以上のセンサが検出した向きと前記特定部が特定した濃度とに応じた煙の画像を前記頭部装着型ディスプレイに表示させる表示制御部と
を備える仮想体験システム。
【請求項2】
前記1以上のセンサは、前記頭部装着型ディスプレイの位置をさらに検出し、
前記表示制御部は、前記1以上のセンサが検出した向きおよび位置と前記特定部が特定した濃度とに応じた煙の画像を前記ディスプレイに表示させる
ことを特徴とする、請求項1に記載の仮想体験システム。
【請求項3】
前記特定部は、頭部装着型ディスプレイと通信接続されたコントローラから出力される操作信号に基づいて前記煙の濃度を特定することを特徴とする、請求項1に記載の仮想体験システム。
【請求項4】
前記頭部装着型ディスプレイは、煙の濃度を選択するための操作手段をさらに備え、
前記特定部は、前記操作手段を用いた操作に基づいて前記煙の濃度を特定することを特徴とする、請求項1に記載の仮想体験システム。
【請求項5】
前記煙の画像は、経時的に変化する画像であることを特徴とする、請求項1に記載の仮想体験システム。
【請求項6】
前記煙の画像は、火災発生時には仮想空間の上方に層を形成し、時間の経過とともに下方に降りてきて、最終的には仮想空間全体に均一に広がる煙の画像であることを特徴とする、請求項5に記載の仮想体験システム。
【請求項7】
火災時の視界をユーザに仮想体験させるためのプログラムであって、
コンピュータに、
頭部装着型ディスプレイの向きを特定するステップと、
前記ユーザにより選択された煙の濃度を特定するステップと、
前記特定した向きと前記特定した濃度とに応じた煙の画像を前記頭部装着型ディスプレイに表示させるステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時の視界をユーザに仮想体験させるためのシステムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消防関係者等が火災訓練を行うための装置が知られている。例えば、特許文献1には、実火災訓練装置が記載されている。この実火災訓練装置は、火災現場に準じた臨場感で濃煙と熱気を体感させる装置であって、本体部と排煙処理装置を有してなる。本体部は、内部が訓練対象者の訓練ブースとなる大型ケーシング状をなすとともに、奥側に、濃煙と熱気を発生させる燃焼発煙コーナーが設けられ、反対側に、外気吸気口付きのコンテナ扉が設けられている。排煙処理装置は、本体部の上位に設けられ、バーナーと煙燃焼エリアと排煙ブロワ等を備えており、本体部から濃煙が排煙として導入され、完全燃焼により無煙無害化されて大気放出される。この実火災訓練装置によれば、訓練対象者は、火災現場の臨場感を十分に体感することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-34024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の実火災訓練装置は大掛かりな装置であるため、手軽に火災現場を体験させたいというニーズには適さない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、火災時の視界を手軽にユーザに仮想体験させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明に係る仮想体験システムは、火災時の視界をユーザに仮想体験させるための仮想体験システムであって、頭部装着型ディスプレイと、前記頭部装着型ディスプレイの向きを検出するための1以上のセンサと、前記ユーザにより選択された煙の濃度を特定する特定部と、前記1以上のセンサが検出した向きと前記特定部が特定した濃度とに応じた煙の画像を前記頭部装着型ディスプレイに表示させる表示制御部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、火災時の視界を手軽にユーザに仮想体験させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、仮想体験システム100の一例を示す。
図2図2は、スマートグラス101の構成例を示す。
図3図3は、仮想空間の一例を示す。
図4図4は、仮想体験処理の一例を示す。
図5図5は、煙濃度5%/mの煙の画像の一例を示す。
図6図6は、煙濃度10%/mの煙の画像の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.実施例
本発明の一実施例について、図面を参照して説明する。
1-1.構成
図1は、本発明の一実施例に係る仮想体験システム100の一例を示す。
仮想体験システム100は、火災時の視界をユーザに仮想体験させるためのシステムである。この仮想体験システム100は、例えば、避難訓練に利用される。
【0009】
この仮想体験システム100は、スマートグラス101とコントローラ102からなる。
スマートグラス101は、頭部装着型のディスプレイ装置であり、より具体的には眼鏡型のウエアラブル端末である。このスマートグラス101は、拡張現実(AR)技術により、現実の風景に重ねて煙の画像を表示する。
【0010】
コントローラ102は、スマートグラス101を操作するための携帯型の端末装置である。このコントローラ102は、タッチパネル等の操作入力装置を備える。また、このコントローラ102は、スマートグラス101と有線または無線で通信接続され、スマートグラス101に対して操作信号を出力する。
以下では、スマートグラス101についてより詳細に説明する。
【0011】
図2は、スマートグラス101の構成例を示すブロック図である。
スマートグラス101は、RAM等の主記憶装置201と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置202、CPU等のプロセッサ203と、各種センサや操作ボタン等の入力装置204と、ディスプレイやスピーカ等の出力装置205と、無線通信モジュール等の通信制御部206を備える。
【0012】
このうち、入力装置204には、スマートグラス101の位置と向きを検出するための1以上のセンサ207が含まれる。この1以上のセンサ207は、例えば、加速度センサ、地磁気センサおよび角速度センサである。仮にこれらのセンサを使用する場合、スマートグラス101の位置は、加速度センサと地磁気センサの出力値に基づき、自律航法により推定される。一方、スマートグラス101の向きは、角速度背センサの出力値に基づいて推定される。
【0013】
出力装置205には、光学透過型のディスプレイ208が含まれる。この光学透過型のディスプレイ208は、左眼用のサブディスプレイと右眼用のサブディスプレイからなる。左眼用のサブディスプレイには左眼用の画像が表示され、右眼用のサブディスプレイには右眼用の画像が表示される。これらのサブディスプレイに視差を有する画像を表示させることで、ユーザに3次元画像を視認させることができる。
【0014】
主記憶装置201には、各種のプログラムが記憶されている。これらのプログラムは、非一時的な記憶媒体やインターネット等のネットワークを介して頒布可能なプログラムである。これらのプログラムには、仮想体験プログラムが含まれる。この仮想体験プログラムは、火災時の視界をユーザに仮想体験させるためのプログラムである。この仮想体験プログラムをプロセッサ203が実行することで、各種の機能が実現される。実現される機能には、仮想空間生成部211、オブジェクト制御部212、仮想カメラ制御部213、視界画像生成部214、表示制御部215、操作受付部216が含まれる。以下、各機能について説明する。
【0015】
仮想空間生成部211は、仮想空間情報221に基づいて仮想空間を生成する。図3は、生成される仮想空間の一例を示す。同図に示す仮想空間301は、半天球の空間である。
【0016】
オブジェクト制御部212は、オブジェクト情報222に基づいて仮想空間に煙オブジェクトを配置する。配置される煙オブジェクトは、複数のパーティクルからなる3次元の画像である。図3に示す煙オブジェクト302は、仮想空間301に配置される煙オブジェクトの一例である。
このオブジェクト制御部212は、ユーザにより煙の濃度が選択されると、選択された煙濃度を特定する。本実施例でオブジェクト制御部212は、コントローラ102から出力される操作信号に基づいて煙濃度を特定する。そしてオブジェクト制御部212は、特定した煙濃度の煙オブジェクトを仮想空間に配置する。
【0017】
仮想カメラ制御部213は、仮想空間に仮想カメラを配置する。図3に示す仮想カメラ303は、仮想空間301に配置される仮想カメラの一例である。
仮想カメラ制御部213は、スマートグラス101の移動および傾きに連動するように仮想カメラを制御する。そのために仮想カメラ制御部213は、センサ207の出力値に基づいて、スマートグラス101の位置および向きを特定する。そして仮想カメラ制御部213は、特定した位置および向きに応じて、仮想空間内の仮想カメラの位置および向きを変更する。例えば仮想カメラ制御部213は、ユーザが前方向に前進し、右方向を向いた場合には、仮想カメラを前方向に移動させ、右方向に向ける。
【0018】
視界画像生成部214は、仮想空間に配置された仮想カメラの位置および向きに基づいて、ユーザの視界を特定する。図3に示す視界304は、特定されるユーザの視界の一例である。
視界画像生成部214は、ユーザの視界を特定後、特定した視界に含まれる煙オブジェクトの画像を生成する。ここで生成される画像は視界画像である。生成される視界画像は左眼用の画像と右眼用の画像の2つの画像からなる。これら2つの画像は、立体視が可能なように視差が設けられている。
【0019】
表示制御部215は、視界画像生成部214により生成された視界画像をディスプレイ208に表示させる。表示される視界画像は、ユーザの視界に煙オブジェクトが含まれている場合には、煙を含む画像となる。この画像に含まれる煙は、スマートグラス101の位置および向きと、ユーザにより選択された煙濃度とに応じたものとなっている。
視界画像が表示される結果、ユーザは、自身の視界に煙オブジェクトが含まれている場合には、風景に重畳された煙を視認する。
【0020】
操作受付部216は、コントローラ102から出力される操作信号を受け付ける。受け付けられる操作信号には、表示する煙の濃度を変更するための変更指示と、仮想体験プログラムを終了するための終了指示が含まれる。
【0021】
次に、補助記憶装置202について説明する。
補助記憶装置202は、仮想空間情報221とオブジェクト情報222を記憶する。このうち、仮想空間情報221は、仮想空間の定義情報である。
一方、オブジェクト情報222は、仮想空間に配置される煙オブジェクトに関する情報である。具体的には当該情報は、煙オブジェクトの画像情報と、仮想空間に配置される際の位置および向きを示す情報である。
【0022】
煙オブジェクトは、複数のパーティクルからなる3次元の画像である。本実施例では、2種類の煙オブジェクトが記憶されている。第1の煙オブジェクトは、煙濃度5%/mの煙を表す煙オブジェクトであり、第2の煙オブジェクトは、煙濃度10%/mの煙を表す煙オブジェクトである。これら2種類の煙オブジェクトは、ユーザの選択に応じて切り替えて表示される。
【0023】
なお、煙オブジェクトにより表される煙には、濃度ムラがあってもよい。煙オブジェクトにより表される煙は、火元に近づくにつれて濃くなるような煙であってもよい。そのような煙オブジェクトを仮想空間に配置した場合、仮想空間内の位置や視線方向に応じて煙の濃度が変わることになる。
【0024】
1-2.動作
次に、スマートグラス101により実行される仮想体験処理について説明する。図4は、スマートグラス101により実行される仮想体験処理の一例を示すフロー図である。同図に示す仮想体験処理400を開始するにあたり、ユーザは、スマートグラス101を自身の頭部に装着する。そしてユーザは、コントローラ102を操作して、仮想体験プログラムの実行をスマートグラス101に指示する。スマートグラス101のプロセッサ203は、この実行指示を受けて、仮想体験プログラムを実行する。この結果、仮想体験処理400が開始される。
【0025】
本処理の開始後、まず仮想空間生成部211は、仮想空間情報221に基づいて仮想空間を生成する(ステップ401)。ここで生成される仮想空間は、図3に例示するような、半天球の空間である。
【0026】
次に、オブジェクト制御部212は、オブジェクト情報222に基づいて、生成した仮想空間に煙オブジェクトを配置する(ステップ402)。ここで配置される煙オブジェクトは、煙濃度5%/m時の煙オブジェクトである。
【0027】
次に、仮想カメラ制御部213は、生成した仮想空間内の初期位置に、所定の方向に向けた仮想カメラを配置する(ステップ403)。一例として仮想カメラは、図3に例示するように、仮想空間の中心305に配置される。
【0028】
次に、視界画像生成部214は、配置された仮想カメラの位置および向きに基づいて、ユーザの視界を特定する。そして視界画像生成部214は、特定した視界に含まれる煙オブジェクトの画像を生成する(ステップ404)。ここで生成される画像は視界画像である。生成される視界画像は左眼用の画像と右眼用の画像の2つの画像からなる。これら2つの画像は、立体視が可能なように視差が設けられている。
【0029】
次に、表示制御部215は、生成された視界画像をディスプレイ208に表示させる(ステップ405)。この結果、ユーザは、自身の視界に煙オブジェクトが含まれている場合には、風景に重畳された煙濃度5%/mの煙を視認する。
【0030】
図5は、煙濃度5%/mの煙の画像の一例を示す。同図に示す煙の画像は、景色に重ねて表示されている。この煙の画像のせいで景色が見えにくくなっている。
【0031】
次に、仮想カメラ制御部213は、センサ207の出力値に基づいて、スマートグラス101の位置および向きを特定する(ステップ406)。そして仮想カメラ制御部213は、特定した位置および向きに応じて、仮想空間内の仮想カメラの位置および向きを変更する(ステップ407)。例えば仮想カメラ制御部213は、ユーザが前方向に前進し、右方向を向いた場合には、仮想カメラを前方向に移動させ、右方向に向ける。
【0032】
次に、視界画像生成部214は、変更された仮想カメラの位置および向きに基づいて、ユーザの視界を特定する。そして視界画像生成部214は、特定した視界に含まれる煙オブジェクトの画像を生成する(ステップ408)。ここで生成される画像は視界画像である。生成される視界画像は左眼用の画像と右眼用の画像の2つの画像からなる。これら2つの画像は、立体視が可能なように視差が設けられている。
【0033】
次に、表示制御部215は、生成された視界画像をディスプレイ208に表示させる(ステップ409)。この結果、ユーザは、自身の視界に煙オブジェクトが含まれている場合には、風景に重畳された煙濃度5%/mの煙を視認する。
【0034】
ここでユーザは、コントローラ102を操作することで、煙濃度を10%/mに変更することができる。ユーザが煙濃度を10%/mに変更するための操作を行うと、コントローラ102は煙濃度の変更をスマートグラス101に指示する。
【0035】
スマートグラス101の操作受付部216は、コントローラ102から出力された変更指示を受け付ける(ステップ410のYES)。オブジェクト制御部212は、この変更指示が受け付けられると、オブジェクト情報222に基づいて煙オブジェクトを変更する(ステップ411)。具体的にはオブジェクト制御部212は、煙濃度5%/mの煙オブジェクトに代えて、煙濃度10%/mの煙オブジェクトを仮想空間に配置する。
【0036】
次に、視界画像生成部214は、仮想カメラの位置および向きに基づいて、ユーザの視界を特定する。そして視界画像生成部214は、特定した視界に含まれる煙オブジェクトの画像を生成する(ステップ412)。ここで生成される画像は視界画像である。生成される視界画像は左眼用の画像と右眼用の画像の2つの画像からなる。これら2つの画像は、立体視が可能なように視差が設けられている。
【0037】
次に、表示制御部215は、生成された視界画像をディスプレイ208に表示させる(ステップ413)。この結果、ユーザは、自身の視界に煙オブジェクトが含まれている場合には、風景に重畳された煙濃度10%/mの煙を視認する。
【0038】
図6は、煙濃度10%/mの煙の画像の一例を示す。同図に示す煙の画像は、景色に重ねて表示されている。この画像の煙は、5%/mの煙と比べて濃度が高いため、景色がより見えにくくなっている。
【0039】
なお、上記のステップ410において、操作受付部216がコントローラ102から変更指示を受け付けない場合には(ステップ410のNO)、ステップ411~413はスキップされる。
【0040】
ここでユーザは、コントローラ102を操作することで、仮想体験プログラムを終了することができる。ユーザが仮想体験プログラムを終了するための操作を行うと、コントローラ102は同プログラムの終了をスマートグラス101に指示する。
【0041】
スマートグラス101の操作受付部216は、コントローラ102から出力された終了指示を受け付ける(ステップ414のYES)。この終了指示が受け付けられると、本仮想体験処理400は終了する。
【0042】
一方、ステップ414において、操作受付部216がコントローラ102から終了指示を受け付けない場合には(ステップ414のNO)、再びステップ406が実行される。
以上が、仮想体験処理400についての説明である。
【0043】
以上説明した仮想体験システム100によれば、ユーザは火災時の視界を仮想体験することができる。この仮想体験システム100は、上記の特許文献1に記載の実火災訓練装置のような大掛かりな装置ではないため、ユーザは手軽に火災時の視界を仮想体験できる。
【0044】
またユーザは、コントローラ102を操作することで、表示する煙の濃度を自由に変更することができる。そのためユーザは、煙の濃度ごとに異なる風景の見え方を仮想的に体験することができる。
【0045】
2.変形例
上記の実施例を下記のように変形してもよい。以下の変形例は互いに組み合わせてもよい。
(1)上記の実施例では、スマートグラス101単体で、図4に示す仮想体験処理400のすべてを実行している。これに代えて、画像処理用のサーバを用意し、仮想体験処理400の一部または全部のステップを当該サーバに実行させてもよい。すなわち、スマートグラス101は、画像処理用のサーバと協働して、仮想体験処理400を実行してもよい。
【0046】
(2)上記の実施例では、ユーザに仮想体験を提供するためのハードウェアとしてスマートグラスが採用されている。しかし、スマートグラスはあくまで一例にすぎない。スマートグラスに代えて、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を採用してもよい。HMDを採用する場合、その表示方式として、非透過型、光学透過型、ビデオ透過型のいずれを採用してもよい。
【0047】
(3)上記の実施例では、一例として、加速度センサ等の出力値に基づいてスマートグラス101の位置および向きを推定することを想定している。しかし、この方法はあくまで一例にすぎない。別の方法としてポジショントラッキングを採用してもよい。その際、Outside-in方式(スマートグラス101の外部にカメラを設置し、当該カメラでスマートグラス101を観測することでスマートグラス101をトラッキングする方式)を採用してもよいし、Inside-out方式(スマートグラス101にカメラを搭載し、当該カメラで外界を観測することでスマートグラス101をトラッキングする方式)を採用してもよい。
【0048】
(4)上記の実施例では、煙濃度として、5%/mと10%/mの2種類が選択可能となっている。しかし、これらの煙濃度はあくまで一例にすぎない。別の値の煙濃度を選択可能としてもよい。また、3種類以上の煙濃度を選択可能としてもよい。
【0049】
(5)上記の実施例では、スマートグラス101の位置と向きに応じて仮想カメラを制御している。しかし、位置情報は必ずしも必須ではない。本システムの利用シーンとして、ユーザが移動しない状況を想定した場合、スマートグラス101の向きのみに応じて仮想カメラを制御するようにしてもよい。
【0050】
(6)上記の実施例では、コントローラ102を用いてスマートグラス101を操作するようになっている。これに代えて、スマートグラス101に操作手段を搭載し、この操作手段を用いてスマートグラス101を操作可能としてもよい。例えば操作手段としてスライドスイッチを搭載し、このスライドスイッチを用いて煙濃度を切り替えられるようにしてもよい。この場合、オブジェクト制御部212は、操作手段を用いた操作に基づいて煙濃度を特定する。
【0051】
また別の例として、スマートグラス101にマイクを搭載し、音声操作を受け付け可能としてもよい。あるいは、スマートグラス101にカメラを搭載し、ジェスチャー操作を受け付け可能としてもよい。
【0052】
(7)煙オブジェクトは、アニメーション画像であってもよい。すなわち煙オブジェクトは、経時的に変化する画像であってもよい。例えば煙オブジェクトは、火災発生時には仮想空間の上方に層を形成し、時間の経過とともに下方に降りてきて、最終的には仮想空間全体に均一に広がるような煙の画像であってもよい。
【0053】
(8)上記の実施例に係るスマートグラス101は、平時の避難訓練の際に使用することを想定している。このスマートグラス101を、火災時に避難支援のために使用してもよい。具体的には、平時の建物内の風景画像を位置情報と対応付けてスマートグラス101に記録しておく。そして火災時には、スマートグラス101の位置および向きに応じて平時の建物内の風景画像をディスプレイ208に表示させる。これによりユーザは、火災時に煙に視界を奪われたとしても、平時の風景をたよりに建物から避難することができる。
【0054】
なお、平時の風景画像に加えて音声避難ガイドを位置情報と対応付けてスマートグラス101に記録しておくことで、現在位置に応じた避難ガイドを音声出力させてもよい。
【0055】
(9)なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0056】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0057】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
【符号の説明】
【0058】
100…仮想体験システム、101…スマートグラス、102…コントローラ、211…仮想空間生成部、212…オブジェクト制御部、213…仮想カメラ制御部、214…視界画像生成部、215…表示制御部、216…操作受付部、221…仮想空間情報、222…オブジェクト情報
【要約】
【課題】火災時の視界を手軽にユーザに仮想体験させる。
【解決手段】本発明に係る仮想体験システムは、火災時の視界をユーザに仮想体験させるための仮想体験システムであって、頭部装着型ディスプレイと、頭部装着型ディスプレイの向きを検出するための1以上のセンサと、ユーザにより選択された煙の濃度を特定する特定部と、1以上のセンサが検出した向きと特定部が特定した濃度とに応じた煙の画像を頭部装着型ディスプレイに表示させる表示制御部とを備える。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6