(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】効率的な変調制御
(51)【国際特許分類】
H04B 10/11 20130101AFI20240328BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20240328BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H04B10/11
H04J14/02 198
H04L27/26 113
(21)【出願番号】P 2023520416
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2021077215
(87)【国際公開番号】W WO2022073893
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-06-05
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】シグニファイ ホールディング ビー ヴィ
【氏名又は名称原語表記】SIGNIFY HOLDING B.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 48,5656 AE Eindhoven,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100163821
【氏名又は名称】柴田 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ヴァーヘニンヘン アンドリース
(72)【発明者】
【氏名】リンナーツ ヨハン パウル マリー ヘラルド
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/104166(WO,A1)
【文献】特表2015-522983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0071406(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03240303(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02945307(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0233980(US,A1)
【文献】国際公開第2017/073156(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/11
H04J 14/02
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答を有する、通信チャネルでデータを転送するためのマルチキャリアワイヤレス通信システムにおけるビットローディング制御方法であって、当該ビットローディング制御方法は、
装置によって、テスト信号の要求を送ることと、
前記装置によって、リモートデバイスからの前記テスト信号を受信することと、
前記受信したテスト信号に基づいて複数のサブキャリアにわたる前記通信チャネルの推定チャネル応答を得ることと、
前記推定チャネル応答に従って、前記複数のサブキャリアを、各々が2つ以上の隣接するサブキャリアを含む、1つ以上の重複しない周波数セグメントに割り振る、及び、前記周波数セグメントの各々に、前記2つ以上の隣接するサブキャリアによって共有される個別変調スキームを割り当てるためのビットローディングスキームを決定することであって、前記個別
変調スキームは、周波数が増加するにつれて単調に減少する変調次数で割り当てられる、ことと、
を含む、方法。
【請求項2】
当該方法は、
前記通信チャネルのチャネル応答の変化を検出すると前記ビットローディングスキームを更新することであって、前記更新は、個別変調スキームが割り当てられる各周波数セグメントを同じ数のサブキャリアを含んだままにする、及び、前記チャネル応答の変化に応じて前記周波数セグメントの割り振りを周波数において上又は下にシフトさせることによって行われる、こと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該方法は、
前記通信チャネルを介して前記装置と通信する際に前記リモートデバイスが使用するために前記ビットローディングスキームを前記リモートデバイスに送ること、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
当該方法は、
前記ビットローディングスキームをローカルに記憶すること、
を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記テスト信号は、専用プローブパケット又はデータ若しくは管理パケット内の専用フィールドのいずれかに含まれる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記テスト信号の要求は、前記専用プローブパケット又は前記データ若しくは管理パケット内の専用フィールドに関連するパラメータを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ビットローディングスキームは、
各周波数セグメント内の最低サブキャリアのインデックス、いかなる周波数セグメントにおける最高サブキャリアのインデックス、
各周波数セグメント内の最高サブキャリアのインデックス、いかなる周波数セグメントにおける最低サブキャリアのインデックス、
いかなる周波数セグメントにおける最低サブキャリアのインデックス、及び、低周波数から高周波数に従って順次リストされる各周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数、
いかなる周波数セグメントにおける最高サブキャリアのインデックス、及び、高周波数から低周波数に従って順次リストされる各周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数、
低周波数から高周波数に従って順次リストされる各周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数、
の表現のうちの少なくとも1つを含む情報を用いるフォーマットで構成される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記個別変調スキームは、前記周波数セグメントの各々に均一なパワーローディングで実施される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
マルチキャリアワイヤレス通信システムにおける、周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答を有する、通信チャネルでのデータの転送を支援するためのビットローディング制御装置であって、当該ビットローディング制御装置は、
テスト信号の要求を送るように構成されるトランスミッタと、
リモートデバイスからの前記テスト信号を受信するように構成されるレシーバと、
コントローラであって、
前記受信したテスト信号に基づいて複数のサブキャリアにわたる前記通信チャネルの推定チャネル応答を得る、及び
前記推定チャネル応答に従って、前記複数のサブキャリアを、各々が2つ以上の隣接するサブキャリアを含む、1つ以上の重複しない周波数セグメントに割り振る、及び、前記周波数セグメントの各々に、前記2つ以上の隣接するサブキャリアによって共有される個別変調スキームを割り当てるためのビットローディングスキームを決定し、前記個別
変調スキームは、周波数が増加するにつれて単調に減少する変調次数で割り当てられる、
ように構成されるコントローラと、
を含む、ビットローディング制御装置。
【請求項10】
当該ビットローディング制御装置は、前記マルチキャリアワイヤレス通信システムにおける前記リモートデバイスとワイヤレス通信を行うように構成され、前記トランスミッタは、
前記ビットローディングスキームに従って同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する1つ以上の隣接するサブキャリアで送られるデータを変調する、及び
前記変調されたデータを前記通信チャネルを介して前記リモートデバイスに送信する、
ように構成される、請求項9に記載のビットローディング制御装置。
【請求項11】
当該ビットローディング制御装置は、前記マルチキャリアワイヤレス通信システムにおける前記リモートデバイスとワイヤレス通信を行うように構成され、前記レシーバは、
前記通信チャネルを介して前記リモートデバイスからのデータを受信する、及び
前記ビットローディングスキームに従って同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する2つ以上の隣接するサブキャリアで受信されるデータを復調する、
ように構成される、請求項9に記載のビットローディング制御装置。
【請求項12】
前記トランスミッタは、
当該ビットローディング制御装置と通信する際に前記リモートデバイスが使用するために前記ビットローディングスキームを前記リモートデバイスに送る、
ように構成される、請求項9乃至11のいずれか一項に記載のビットローディング制御装置。
【請求項13】
前記通信チャネルは、光通信チャネルであり、当該ビットローディング制御装置は、前記光通信チャネルでデータを送信及び受信するために前記トランスミッタ及び前記レシーバに接続されるように構成される光フロントエンドを含む、請求項9乃至12のいずれか一項に記載のビットローディング制御装置。
【請求項14】
周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答を有する通信チャネルを有するマルチキャリアワイヤレス通信システムであって、当該マルチキャリアワイヤレス通信システムは、
請求項10に記載の
ビットローディング制御装置として動作する第1のトランシーバ
と、リモートデバイス
とを含み、前記リモートデバイスは、前記第1のトランシーバからのビットローディングスキームを受信する、及び、前記受信したビットローディングスキームに従って前記第1のトランシーバから受信されるデータを復調するように構成される、又は
請求項11に記載の
ビットローディング制御装置として動作する第2のトランシーバ
と、第2のリモートデバイス
とを含み、前記第2のトランシーバは、前記第2のリモートデバイスに第2のビットローディングスキームを送るように構成され、前記第2のリモートデバイスは、
前記第2のトランシーバからの前記第2のビットローディングスキームを受信する、
前記受信したビットローディングスキームに従って同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する1つ以上の隣接するサブキャリアで送られるデータを変調する、及び
当該マルチキャリアワイヤレス通信システムにおける前記通信チャネルを介して前記変調されたデータを前記第2のトランシーバに送信する、
ように構成される、マルチキャリアワイヤレス通信システム。
【請求項15】
コンピューティングプログラムであって、当該コンピューティングプログラムが処理手段を含むビットローディング制御装置によって実行された場合、前記処理手段に請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法を実行させるコード手段を含む、コンピューティングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチキャリアワイヤレス通信システムにおける物理(PHY: physical)層変調制御の分野に関する。とりわけ、トランスミッタ及びレシーバのペアが効率的に適応変調制御方法を実行するのを支援することに関連する、様々な方法、装置、システム及びコンピュータ可読媒体が本明細書に開示される。
【背景技術】
【0002】
ラップトップ、タブレット、スマートフォン等、ますます多くの電子デバイスがワイヤレスでインターネットに接続することを可能にするために、ワイヤレス通信は、データレート及びリンク品質に関するこれまでにない要件に直面し、IoT(Internet-of-Things)に関する新たなデジタル革命を踏まえ、このような要件は年々高まっている。Wi-Fi(登録商標)等の無線周波数技術(Radio frequency technology)は、この革命に取り組むにはスペクトルキャパシティ(spectrum capacity)が限られている。一方、ライトフィデリティ(light fidelity)(Li-Fi)は、その本質的なセキュリティ強化(intrinsic security enhancement)、及び、可視光、紫外線(UV)、赤外線(IR)スペクトルの利用可能な帯域幅でより高いデータレートをサポートするケイパビリティ(capability)でますます注目を集めている。さらに、Li-Fiは指向性があり、光遮断材料によって遮蔽されるため、同じ帯域幅を空間的に再利用することによりユーザの密なエリアに、Wi-Fi(登録商標)と比較して、より多くのアクセスポイントを配備する可能性を備える。ワイヤレス無線周波数通信に対するこれらの重要な優位性は、Li-FiをIoTアプリケーションのための混雑した無線スペクトル(crowded radio spectrum)への圧力を緩和する有望なソリューションにしている。Li-Fiの他の利点としては、特定のユーザに保証される帯域幅、及び電磁干渉を受けやすいエリアにおいて安全に機能する能力(ability)が挙げられ得る。それゆえ、Li-Fiは、次世代のイマーシブコネクティビティ(immersive connectivity)を可能にする非常に有望な技術である。
【0003】
照明ベースの通信の分野ではいくつかの関連するターミノロジーがある。可視光通信(VLC:visible-light communication)は、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)等の強度変調光源によって、人間の目の持続性(persistence)よりも速くデータを送信する。Li-Fiは、日常照明器具(everyday luminaire)、例えば、室内照明又は屋外照明等の照明源によって発せられる光に信号を埋め込み、斯くして、照明器具からの照明を情報のキャリアとして使用することを可能にするために用いられることが多い。斯くして、光は、部屋等の対象環境を照らすための可視照明寄与(典型的には、光の主要な目的)と、環境に情報を提供するための埋め込まれた信号(典型的には、光の副次的な機能と考えられる)との両方を含み得る。このような場合、変調は、典型的には、人間の知覚を超えるように十分に高い周波数で、又は、少なくとも、目に見える一時的な光アーティファクト(例えば、フリッカ及び/又はストロボアーティファクト等)が、人間が気づかない若しくは少なくとも人間が許容できるように十分に高い周波数で十分に弱くなるように行われる。斯くして、埋め込まれた信号は、主要な照明機能に影響を与えない。すなわち、ユーザは、全体的な照明を知覚するだけで、当該照明に変調されているデータの効果は知覚しない。
【0004】
IEEE 802.15.7可視光通信パーソナルエリアネットワーク(VPAN:visible-light communication personal area network)規格は、対象のアプリケーションを4つのトポロジ(ピアツーピア、スター、ブロードキャスト、協調(coordinated))にマッピングする。光ワイヤレスPAN(OWPAN:Optical Wireless PAN)は、通信に、UV、IR等、不可視光も許容する、VPANよりも一般的な用語である。斯くして、Li-Fiは、双方向データ通信をサポートするために広範囲の光スペクトルを利用する、光ワイヤレス通信(OWC:optical wireless communication)技術の派生技術として一般に受け入れられている。
【0005】
Li-Fiシステムにおいて、信号は、さまざまな適切な変調技術のいずれかに従って、光のプロパティ、典型的には強度を変調することによって埋め込まれる。高速通信の場合、可視光通信ではなく赤外線(IR)通信が用いられることがよくある。紫外線及び赤外線放射は人間の目には見えないが、スペクトルのこれらの領域を利用する技術は、屈折率の場合等、波長依存性の結果としてばらつきが生じる可能性はあるが、同様である。多くの場合、紫外線及び/又は赤外線を利用することは、これらの周波数範囲が人間の目には見えず、よりフレキシビリティがシステムに導入されることができるため、有利である。無論、紫外量子(ultraviolet quantum)は、赤外及び/又は可視光に比べてより高いエネルギレベルを有するため、状況によっては紫外光の使用が望ましくない場合もある。
【0006】
変調に基づいて、光における情報は、任意の適切な光センサを使用して検出されることができる。例えば、光センサは、フォトダイオードであってもよい。光センサは、専用のフォトセル(ポイントディテクタ)、場合によってはレンズ、リフレクタ、ディフューザ又は蛍光体コンバータ(低速用)を備えたフォトセルのアレイ、又はフォトセル(ピクセル)のアレイ及びアレイに像を形成するためのレンズであってもよい。例えば、光センサは、スマートフォン、タブレット又はラップトップ等のユーザデバイスにプラグインするドングルに含まれる専用のフォトセルであってもよく、又は、センサは、統合されてもよく及び/又は3D顔認識のために元々は設計されている赤外線ディテクタのアレイ等、二重目的であってもよい。どちらにしても、これにより、ユーザデバイス上で動作するアプリケーションは、光を介してデータを受信することが可能になる。
【0007】
多くのワイヤレス通信システムにおいて、通信チャネルの周波数応答は、周波数依存又は周波数選択的である。通信チャネルの容量を向上させるために、適応変調又はチャネル上の適応ビットローディングが採用され、ビット数は、当該サブキャリアのチャネル特性に依存して各サブキャリアに割り当てられる。第1のサブキャリアが第2のサブキャリアよりも優れたチャネル特性を有するつ場合、より多くのビット数が、相応に第1のサブキャリアに割り当てられるべきである。直交周波数分割多重(OFDM:orthogonal frequency-division multiplexing)システム等、マルチキャリアワイヤレス通信システムでは、従来の適応ビットローディング方法は、チャネル容量が最大化されるように個々のサブキャリアに最適な変調スキームを割り当てる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
典型的に、ワイヤレスチャネルは、エンドデバイスの移動性(mobility)に起因して急速に変化する可能性があり、それゆえ、適応変調スキームは、チャネルの動的周波数応答に起因して頻繁に更新されなければならない可能性がある。複数のサブキャリア上で適切な変調スキームを導出するための計算の複雑さ、及び、変調スキームについてリモートトランスミッタ及びレシーバのペア間でアラインする(align)ためのシグナリング交換(signaling exchange)のオーバーヘッドは、相当なもの(substantial)となり得、チャネル上での有効データスループットを向上させる意図を損なう可能性がある。さらに、この方法を実施するための複雑さ及びオーバーヘッドは、サブキャリアの数に応じてスケーリングする(scale)可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記に鑑み、本開示は、マルチキャリアワイヤレス通信システムにおけるトランスミッタ及びレシーバペア間の適応ビットローディング制御方法をサポートするためのメカニズムを提供するための方法、装置、システム、コンピュータプログラム及びコンピュータ可読媒体に関する。とりわけ、本発明の目的は、請求項1に記載のビットローディング制御方法、請求項9に記載のビットローディング制御装置、請求項14に記載のマルチキャリアワイヤレス通信システム、及び請求項15に記載のコンピュータプログラムによって達成される。
【0010】
したがって、マルチキャリアワイヤレス通信システムにおいて適応変調を実施するためのオーバーヘッドを低減するために、本発明で提案される変調制御方法は、チャネル応答の単調性(monotonicity)を利用して、複数のサブキャリアに対する適切なビットローディングスキームを見つけるためのアルゴリズムの高速化を図る、及び、スキームについてリモートデバイスに知らせるためのシグナリングオーバーヘッド(signaling overhead)を低減する。複数のサブキャリアは、まず、チャネル応答に従って2つ以上のサブキャリアを含む周波数セグメントに分割され、個々の変調スキームは、サブキャリアごとにではなく、周波数セグメントごとに決定される。チャネル応答の単調性は、決定された変調スキームの表現(representation)又は記憶を単純化するためにさらに活用される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、ビットローディング制御方法(bit loading control method)が提供される。周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答を有する、通信チャネルでデータを転送するためのマルチキャリアワイヤレス通信システムにおけるビットローディング制御方法。ビットローディング制御方法は、装置によって、テスト信号の要求を送るステップと、装置によって、リモートデバイスからのテスト信号を受信するステップと、受信したテスト信号に基づいて複数のサブキャリアにわたる通信チャネルの推定チャネル応答(estimated channel response)を得るステップと、推定チャネル応答に従って、複数のサブキャリアを、各々が2つ以上の隣接するサブキャリアを含む、1つ以上の重複しない周波数セグメントに割り振る(allocate)、及び、周波数セグメントの各々に、2つ以上の隣接するサブキャリアによって共有される個別変調スキーム(individual modulation scheme)を割り当てる(assign)ためのビットローディングスキーム(bit loading scheme)を決定するステップであって、個別共有変調スキームは、周波数が増加するにつれて単調に減少する変調次数(modulation order)で割り当てられる、ステップとを含む。
【0012】
モバイルワイヤレスチャネル(mobile wireless channel)は、経時的及び周波数的な(over frequency)チャネル強度の変動によって特徴付けられる。このような変動は、大規模フェージング又は小規模フェージングのいずれかに起因し得る。大規模フェージングは、ある距離にわたる信号伝搬に起因する信号減衰及び伝播経路にある物体の周囲の回折の結果である。小規模フェージングは、トランスミッタとレシーバの間の空間的なポジショニングの(半波長程度の)小さな変化の結果として経験し得る信号振幅及び位相の変化を指す。したがって、大規模フェージングは、通信範囲を推定する等、リンクバジェット計算により関連し、小規模フェージングは、信頼性が高く効率的な通信システムの設計により関連する。
【0013】
チャネル状態情報(CSI:Channel state information)は、典型的には、信号がトランスミッタからレシーバへどのように伝播するかを述べるために使用され、距離による電力減衰、散乱、及び小規模フェージングの複合効果を表す。CSIを導出する方法は、チャネル推定と呼ばれる。チャネル推定は、データ支援アプローチ(data-aided approach)又はブラインドアプローチ(blind approach)のいずれかで実施されることができる。データ支援アプローチにおいて、チャネル推定は、トランスミッタ及びレシーバの両方に知られているパイロットデータ又はトレーニングシーケンスに基づく。ブラインドアプローチにおいて、推定は、受信される未知のデータのみに基づく。典型的には、データ支援アプローチは、パイロットデータ又はトレーニングシーケンスを定義及び送信するためのシステムレベルの複雑さを犠牲にしてより優れたチャネル推定精度を達成することが想定される。本発明は、データ支援アプローチを考慮する。
【0014】
システム設計を容易にするために、通信チャネルは、通常、周波数チャネル応答、略して、チャネル応答の観点でモデル化される。斯くして、チャネル応答は、周波数領域においてCSIを規定する、CSIの概念に包含される。
【0015】
とりわけモバイルアプリケーションのリンクに適しているが、本発明は、環境の変化に起因するデバイス間の通信で経験するチャネル変動を明示的に考慮することにより、静的なリンクを構成するためにも使用されてもよい。
【0016】
強度変調光波通信の場合、光信号の半波長(数百ナノメートル)のオーダの小さな変化は、チャネルの変化につながらない可能性がある。実際、光子強度束(photon intensity flux)のインコヒーレントな性質は、単一の狭いスペクトル線でのキャンセルを可能にしない。一方、高速変調の場合、変調の領域(例えば数百MHz又はGHz)においてキャンセル効果が生じ得、対応する波長はメートルのオーダになる。典型的には、室内の拡散光及び反射が信号に干渉する傾向があり、その結果、使用される変調周波数範囲の高い部分で減衰が知覚され、これにより、周波数応答の低下を経験する。これは、LED等のエミッタ、及びフォトダイオード等のディテクタが、入射光を捕らえるために、大きな表面積を持ち、斯くして、高い電気容量を持ち得るという観察とともに、高い周波数範囲における周波数応答の優位な低下(predominantly declining frequency response)に寄与する。本発明者らは、これらの効果は、単独で又は共同で、高速光通信に特徴的であり、光通信に特有の効率向上の機会を開くものであると認識している。同時に、他のワイヤレス通信チャネルは、主にローパス応答を有する可能性もある。とりわけ、キャリアシフトされた狭帯域変調とは対照的に、広ベースバンド変調を採用するシステムは、この挙動を示す。
【0017】
周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答(declining channel response with increasing frequency)の特徴は、チャネル帯域幅全体にわたるチャネル応答の一般的な傾向を述べることに留意されたい。突発的なノイズ又は干渉に起因して個々のサブキャリアに散発的なスパイクが現れることも十分にあり得る。
【0018】
本発明で取り上げられる通信チャネルは、周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答を有するものとして特徴付けられることができ、これは、チャネルを通過する信号が、低い周波数帯/部分よりも高い周波数帯/部分においてより多くの減衰を経験することを意味する。チャネル応答のこのような単調性は、システム最適化を促進するためのさらなる機会を提供する。
【0019】
上記のように、適応変調又は適応ビットローディングは、当該サブキャリアのチャネル特性に依存して各サブキャリアにビット数を割り当てることにより、マルチキャリアシステムにおいてチャネル容量を向上させるために用いられる方法である。しかしながら、サブキャリアごとに基づいてこの方法を適用することは、余分な計算の複雑さ及びシグナリングオーバーヘッドに起因する効率ペナルティ(efficiency penalty)を被る可能性がある。それゆえ、複数のサブキャリアを1つ以上の重複しない周波数セグメントに割り振り、各周波数セグメントは、1つ以上の隣接するサブキャリアを含み、少なくとも1つの周波数セグメントは、2つ以上の隣接するサブキャリアを含むことが有利である。適切な変調スキームを導出するための計算は、セグメントごとに基づいて実施されてもよい。導出された変調スキームは、同じセグメントに含まれるすべてのサブキャリアによって共有されることができる。
【0020】
各周波数セグメントが、2つ以上の隣接するサブキャリアを含むことが好ましい。しかしながら、場合によっては、いくつかの周波数セグメントにおいて1つのサブキャリアのみが含まれることが起こってもよい。
【0021】
適切な変調スキームを導出するために、変調制御方法は、チャネル応答に加えて、トランスミッタの出力電力、レシーバがチャネルに沿って移動する受信データを復調及びデコードするために最低限必要な信号対雑音比(SNR:signal to noise ratio)等、いくつかの他の要因を考慮してもよい。しかしながら、トランスミッタの出力電力及びある変調スキームの最小SNR要件は、典型的には、あらかじめ定義された又は既知の情報とみなされる。それゆえ、チャネル応答は、評価における主動的要因である。
【0022】
通信チャネルが比較的動的である場合又はローカル若しくは履歴チャネル情報が利用可能ではない場合、リモートデバイスからのテスト信号に基づいて推定チャネル応答を得ることが好ましい。最新のチャネル応答を導出するためのプロシージャを初期化するために、まず、リモートデバイスに要求が送られる。その後、受信したテスト信号に基づいて、複数のサブキャリアにわたる通信チャネルの推定チャネル応答が得られる。要求は、独立した制御又はシグナリングメッセージとして送られてもよく、又はデータパケットにピギーバックされてもよい。同様に、テスト信号は、専用のテストパケットに含まれるトレーニングシーケンスとして実施されてもよく、又はリモートデバイスから受信される別のデータバケットにピギーバックされてもよい。
【0023】
リモートデバイスのペアが最新のチャネル応答情報を維持するために、このようなテストパケット、又は専用の制御若しくはシグナリングメッセージは、2つのデバイスのうちの1つの移動があり得る、又は伝播チャネルを部分的にブロックするさらなるデバイスがある、伝播チャネルの変化時等、イベントドリブンベースで送られてもよい。最近受信したパケットの信号品質劣化を鑑みて、リモートデバイスのペアのうちの1つが、まず要求を送ることによって、更新されたチャネル応答を導出する及びビット割り振りスキームをリフレッシュするためのプロシージャをトリガしてもよい。また、プロシージャは、あるタイムスケジュールに従って等、定期的に行なわれてもよい。また、時折、リモートデバイスのペアは、ビット割り振りスキームを常に最新に保つために開示される方法を実施するためにアイドル期間を利用してもよい。
【0024】
さらなるオプションでは、要求は、装置によってブロードキャスト又はマルチキャストメッセージとして送られてもよい。装置の周囲のすべてのリモートデバイス、又は近隣のリモートデバイスのサブセットが、要求を受信してもよい。要求を受信するリモートデバイスの1つ以上は、装置にテスト信号を送ることによって要求に応答してもよい。この意味で、装置は、同時に各応答するリモートデバイスと装置との間のリンクのチャネル応答を確立するためのプロシージャをトリガしてもよい。
【0025】
プロシージャは、意図されたセッションのレシーバ又はトランスミッタのいずれかによって開始されてもよい。一例では、まずレシーバがトランスミッタにテスト信号の要求を送り、導出された推定チャネル応答に基づいて、レシーバはトランスミッタとレシーバとの間の意図されたセッションで使用されるべきビットローディングスキームを決定する。この意味で、トランスミッタ及びレシーバの役割が代替的に交換する、双方向リンクの場合、このようなプロシージャは、各単方向リンクに対してそれぞれトリガされてもよい。場合によっては、対称的な双方向リンク状態が想定されるができる。この場合、プロシージャは、一度だけトリガされてもよい。対称的な双方向リンク状態を想定することにより、トランスミッタが、まず意図されたレシーバに要求を送ることによって、プロシージャを初期化することもあり得る。この場合、トランスミッタは、意図されたレシーバから受信されるテスト信号に基づいて推定チャネル応答を導出し、さらに、ビットローディングスキームを決定する。その後、トランスミッタは、意図されたレシーバとの後続のデータセッションにおいてビットローディングスキームをさっそく(straightaway)使用する。
【0026】
この提案された実装例は、一見すると、データスループットの最大化に関して、サブキャリアごとのアプローチと比較して最適でないように見える可能性がある。しかしながら、計算及びシグナリングオーバーヘッドを考慮すると、特にチャネル応答がほぼ単調で、周波数にわたって大きく変化しない場合、提案された実装例でもってシステム全体がさらに効率的になる可能性がある。実際には、実際の周波数応答が厳密には単調ではないが、実質的に単調に低下している場合、とりわけ高周波数において系統的に低い応答(ystematically lower response)を利用する提案された方法を用いた単調に低下する応答による近似が、依然として有益である。
【0027】
実際的観点から、通信規格は、典型的には、物理(PHY)層仕様において、潜在的な(potential)変調スキームの限られたセットを定義する。多くの規格では、このような潜在的な変調スキームはまた、コーディングスキームと組み合わせて定義され、これらは、変調及びコーディングスキームと呼ばれる。それゆえ、本発明で取り上げられる変調スキームは、それらのシステムに対して変調及びコーディングスキームと同様に理解されるべきである。したがって、レシーバがある受信データを復調及び復号するための最小SNR要件も、変調次数及びコーディングレートの両方の組み合わせを前提として定められる。さらに、PHY層仕様は、典型的には、単調な順序でリスト化される、レシーバ側によってサポートされるべき変調(及びコーディング)スキームの限られたセットに対する斯様な最小SNR要件も示す。斯くして、1つ以上の周波数セグメントに対する個々の適切な変調スキームの選択は、これらの周波数セグメントのチャネル応答の同じ単調性を考慮して、さらに単純化される。
【0028】
1つ以上の隣接するサブキャリアで送られるデータは、割り当てられる同じ変調スキームで変調される。ここで、変調は、データビットをシンボルにマッピングするものとして理解されるべきである。変調スキームがコンステレーション(constellation)によって表される場合、このようなビットトゥシンボルマッピング(bit-to-symbol mapping)は、コンステレーションマッピングとも呼ばれる。この場合、異なる変調スキームは、異なるコンステレーションサイズによって区別されてもよい。チャネルコーディングがまず変調又はビットトゥシンボルマッピングのステップの前に生データビットに適用されてもよいことに留意されたい。
【0029】
OFDMベースのシステムでは、複数のサブキャリア上のパラレル周波数領域データを、チャネル上で送られるべきシリアル時間領域データに変換するために逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)を行うことによって実行される、OFDM変調のさらなるステップが必要である。
【0030】
有利には、方法はさらに、通信チャネルのチャネル応答の変化を検出するとビットローディングスキームを更新するステップを含み、更新は、個別変調スキームが割り当てられる各周波数セグメントを同じ数のサブキャリアを含んだままにする、及び、チャネル応答の変化に応じて周波数セグメントの割り振りを周波数において上又は下に(up or down in frequency)シフトさせることによって行われる。
【0031】
1つ以上の重複しない周波数セグメントの各々に割り当てられる個別共有変調スキームは、一種のビットローディングプロファイルを構成する。チャネル条件の変化を検出すると、特にチャネル条件の観察された変化が大幅(significant)でない場合、全く新しいビットローディングスキームを導出するための新しいプロシージャをトリガする代わりに、元のビットローディングスキームを調整することもオプションであり得る。
【0032】
ビットローディングスキームの調整は、ビット割り振りテーブルを水平方向にシフトさせることによって行われる。ある変調スキームについて、各周波数セグメントを含まれるサブキャリアの数は同じままであり、セグメントの割り振りが周波数領域においてシフトされる。シフトの粒度は、サブキャリア毎に基づくことができる。例えば、チャネル条件が改善される場合、1つ以上の周波数セグメントの割り振りは、サブキャリアの第1の数だけ高い周波数にシフトされてもよく、チャネル条件が劣化する場合、1つ以上の周波数セグメントの割り振りは、サブキャリアの第2の数だけ低い周波数にシフトされてもよい。各周波数セグメントについて、セグメントに含まれるサブキャリアの数は変更されない。斯くして、これは、周波数領域におけるビットローディングスキームの一種の水平シフトである。
【0033】
境界条件について、ビットローディングスキームがサブキャリアの第1の数だけ(高い周波数に向けて)右にシフトされる場合、サブキャリアの第1の数を含む、新しいセグメントが、周波数帯の始めに生成されることが起こり得る。新しいセグメントは、チャネルによって以前にサポートされていないさらに高次の変調スキームで新たな変調スキームを使用してもよい。場合によっては、実用的なシステムでサポートされるべきさらに高次の変調スキームがない場合、新しいセグメントは、以前と同じ最高の変調スキームを使用してもよく、これは、このような境界条件において第1の周波数セグメントの拡張に相当し得る。
【0034】
同様に、ビットローディングスキームがサブキャリアの第2の数だけ(低い周波数に向けて)左にシフトされる場合、周波数帯の下限における第1の周波数セグメントは、サブキャリアの第2の数がシフトアウトされる等、以前よりも少ないサブキャリアを含み得る。第1の周波数セグメントがサブキャリアの第2の数よりも少ないサブキャリアを含む場合、第1のセグメントは完全にシフトアウトされ得、第2のセグメントの一部もシフトアウトされ得、これは、以前の最高次の変調スキームがこれ以上チャネルによってサポートされることができないことを意味する。この場合、周波数帯の上位帯における最後の周波数セグメントは、システムがサポートする場合、さらに低い変調次数を使用してもよい。そうでなければ、周波数帯の上位帯における最後の第2の数のサブキャリアは、ビットをロードするためにこれ以上使用されなくてもよい。
【0035】
代替的に、別の更新は、1つ以上の重複しない周波数セグメントの同じ割り振りを保つ、及び、チャネル応答の変化に応じて1つ以上の重複しない周波数セグメントの各々に割り当てられる個別共有変調スキームを周波数において上又は下にシフトさせることによって行われてもよい。
【0036】
したがって、他の更新における調整は、1つ以上の重複しない周波数セグメントの割り振り又はサブキャリアのグルーピングには触れないまま、ビットローディングプロファイルをシフトさせることのみによって行われる。個別共有変調スキームは、周波数が増加するにつれて単調に減少する変調次数で割り当てられるので、各周波数セグメントに割り当てられる個別共有変調スキームを上又は下に単にシフトさせることにより、チャネルの変化に容易に対応し得る。例えば、チャネルが劣化する場合、ある周波数セグメントに対して元々割り当てられた変調スキームが機能しない可能性があり、この場合、より高い周波数の別の周波数セグメントに元々割り当てられている別の変調スキーム(別の変調スキームはより低い変調次数を有する)がリンクバジェット基準を満たす可能性がある。通信チャネル上の変化の程度に依存して、シフトは、すぐ隣の周波数セグメントに、又は周波数がより離れている別の周波数セグメントに元々割り当てられている変調スキームに関連してもよい。同様に、チャネル条件が改善される場合、シフトは、より低い周波数の第1の周波数セグメントに元々割り当てられている変調スキームをより高い周波数の新しい周波数セグメントに再利用することにより実施される。
【0037】
また、他の更新におけるビットローディングプロファイルのこのようなシフティングは、1つ以上の周波数セグメントの各1つが、チャネル応答が劣化する場合に1つ以上の周波数セグメントの各々に割り当てられる個別変調スキームの変調次数を減少させる、又はチャネル応答が改善される場合に1つ以上の周波数セグメントの各々に割り当てられる個別変調スキームの変調次数を増加させるものと理解されてもよい。
【0038】
一例において、通信チャネルは光通信チャネルであり、チャネル応答は、信号伝播チェーンにおける1つ以上のコンポーネントによって支配される(dominated)可能性がある。あり得るコンポーネントの1つは、発光ダイオード(LED)等、トランスミッタの光フロントエンドであることができる。市販のLEDの変調帯域幅は、典型的には、光ワイヤレス通信スペクトルと比較してかなり制約がある。LEDの動的応答、すなわち、キャリア再結合プロセスに起因して、LEDは、電力制限された一次ローパス挙動(power-limited first-order low-pass behavior)を示し、これが、光通信チャネルのチャネル応答を支配する可能性がある。光通信チャネルの動的特性(dynamics)は、同じチャネルプロファイルのまま、単にチャネル応答の周波数シフトに反映されることが非常に多い。斯くして、周波数セグメントの同じ割り振りを保ち、相応にビットローディングプロファイルをただシフトすることは、新しいビットローディングスキームを導出するためのプロシージャ全体を再初期化する代替オプションと比較して、非常に効率的である。
【0039】
一実施形態において、方法はさらに、通信チャネルを介して装置と通信する際にリモートデバイスが使用するためにビットローディングスキームをリモートデバイスに送るステップを含む。
【0040】
開示される方法がレシーバによってトリガされる場合、レシーバは、トランスミッタが後続のデータ通信においてスキームを適用することができる前に、決定されたビットローディングスキームをリモートトランスミッタにまず伝達することになる。しかしながら、開示される方法がトランスミッタによってトリガされる場合、又はビットローディングスキームがトランスミッタによって導出される場合、ビットローディングスキームを意図されたリモートレシーバに事前に伝達することは必要ない可能性がある。無論、リモートデバイスが適切な設定でデータパケットを検出することを容易にするために、トランスミッタが、周波数セグメントの割り振り及び個別変調スキームの対応する割り当てについてデバイスに知らせることも有益である。そうでなければ、余分な複雑さが、パケットを適切に復調及び復号するために斯かる情報を導出するためにリモートデバイス側に導入される可能性がある。ビットローディングスキームに関連する情報は、決定されたビットローディングスキームが行われるのと同じデータパケット内に含まれてもよい。例えば、トランスミッタは、パケットヘッダに、又はパケットヘッダの直後で、データパケットのペイロードの前に情報を挿入してもよい。
【0041】
好ましくは、方法はさらに、ビットローディングスキームをローカルに記憶するステップを含む。
【0042】
リモートデバイスのペアが主に静止している場合、2つのデバイス間の通信チャネルはある期間安定する可能性があり、同じビットローディングスキーム、又は元のビットローディングスキームに含まれる情報の少なくとも一部が、同じリモートデバイスのペア間の1つ以上のセッションによって再利用されてもよい。例えば、チャネル応答の変化に関するビットローディングプロファイルのシフティングは、元のビットローディングスキームに基づく。したがって、デバイスがこのような情報をローカルに記憶することはかなり有益であり得る。
【0043】
好ましいセットアップにおいて、テスト信号は、専用プローブパケット(dedicated probe packet)又はデータ若しくは管理パケット内の専用フィールドのいずれかに含まれる。
【0044】
リモートデバイスのペア間で新しいセッションを確立するため、最新のビットローディングスキームを決定するために、専用制御パケット又はフレームが使用されてもよい。例えば、テスト信号は、専用プローブパケット又はプローブフレームに含まれてもよい。リモートデバイスのペア間に既に先行セッションがある場合、テスト信号は、データ又は管理パケット内の専用フィールドに配置される等、データ又は管理パケット又はフレームにピギーバックされてもよい。専用プローブパケットと比較して、ピギーバックアプローチはより効率的であり得る。
【0045】
有利には、テスト信号の要求はさらに、専用プローブパケット又はデータ若しくは管理パケット内の専用フィールドに関連するパラメータを含む。
【0046】
トランスミッタ又はレシーバのいずれかである、ビットローディング制御方法のイニシエータは、要求に構成パラメータを含めることによって、テスト信号の準備においてレスポンダに指示してもよい。構成パラメータは、専用プローブパケット又は他のパケット内の専用フィールドの選択、テスト信号のパターン、テスト信号の持続時間、又はテスト信号のための専用フィールドを挿入するためにデータ又は管理パケットのどの部分が使用されることができるかに関する情報を含んでもよい。
【0047】
別の実施形態において、ビットローディングスキームは、
各周波数セグメント内の最低サブキャリアのインデックス、いかなる周波数セグメントにおける最高サブキャリアのインデックス、
各周波数セグメント内の最高サブキャリアのインデックス、いかなる周波数セグメントにおける最低サブキャリアのインデックス、
いかなる周波数セグメントにおける最低サブキャリアのインデックス、及び、低周波数から高周波数に従って順次リストされる各周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数、
いかなる周波数セグメントにおける最高サブキャリアのインデックス、及び、高周波数から低周波数に従って順次リストされる各周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数、
低周波数から高周波数に従って順次リストされる各周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数、
の表現のうちの少なくとも1つを含む情報を用いるフォーマットで構成される。
【0048】
リモートデバイスに通信されるビットローディングスキームは、少なくとも、周波数セグメントの1つ以上の割り振りに関する情報を含む。周波数に沿ったチャネル応答の観点での周波数セグメントの単調性を考慮すると、個別変調(及び/又はコーディング)スキームは、通信規格のPHY層仕様で定義される変調及びコーディングスキーム(MSC)テーブル等、予め定められたルックアップテーブルに基づいて導出されてもよい。規格で定義されるMCSテーブルは、典型的には、増加する変調次数に従ってフォーミュレートされ(formulated)、MCS0、MCS1、MCS2等としてリストされることに留意されたい。一例において、最高サブキャリア周波数を有する周波数セグメントは、MCS0等、最も低い変調次数が割り当てられてもよい。この場合、サブキャリア周波数が減少するにつれて各後続の周波数セグメントは、MCSテーブルにおける次に高い変調次数が割り当てられてもよい。チャネル応答の劇的低下に起因してMCSテーブルにおける1つ又は2つのオプションがスキップされる等、MCSテーブルにおいて提供されるオプションと周波数セグメントに割り当てられる変調次数との間のマッピングの例外がある場合、追加の情報が、変調制御ユニットによって提供されてもよい。1つの可能性は、MCSテーブルにおける各周波数セグメントに対する割り当てられた変調次数のインデックス、又はMCSテーブルにおけるスキップされた変調次数のインデックス等、追加の情報が、リモートデバイスに送られてもよいことである。
【0049】
チャネル応答の単調性はさらに、とりわけ、方法についてリモートデバイスに知らせるためのより効率的なシグナリングメッセージと、変調及び/又は復調、並びにエンコーディング及び/又はデコーディング等、信号処理のための関連情報を記憶するトランスミッタ及び/又はレシーバのメモリにおけるサイズの縮小に関して、適応変調又はビットローディング方法の表現を単純化するために採用される。チャネル応答が周波数が増加するにつれて単調に低下するという事実を考慮すると、割り振られた変調次数も、周波数が増加するにつれて単調に減少することになる。
【0050】
重複しない周波数セグメントは、各周波数セグメントが1つ以上の隣接するサブキャリアを含むように割り振られるので、このようなビットローディングスキームは、非常にコンパクトに表現され得る。周波数の増加順又は周波数の減少順等、表現のいくつかのオプションがある。一つのオプションは、順次、各周波数セグメントについて、当該周波数セグメントが開始する最低サブキャリアのインデックス、及び、すべての周波数セグメントを含む全帯域の最高サブキャリアのインデックスを示すことによって情報を提示することである。ここで、最低サブキャリア又は最高サブキャリアは、最も低いサブキャリア周波数を有するサブキャリア又は最も高いサブキャリア周波数を有するサブキャリアを意味することに留意されたい。別のオプションは、すべての周波数セグメントを含む全帯域の最低サブキャリアのインデックス、及び、低周波数から高周波数に従って順次リストされる各周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数を示すことによって情報を提示することである。同様に、上記2つのオプションは、すべての周波数セグメントを含む全帯域の最高サブキャリアから開始することによって周波数の減少順に提示されることもできる。さらなるオプションは、1つ以上の周波数セグメントの割り振りが、低周波数から高周波数に従う等、各周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数を順次リストすることによって記録されることである。このオプションでは、サブキャリアの範囲は、例えば、最初のサブキャリアインデックス及び最後のサブキャリアインデックスを定義することによって、リモートデバイスのペアの間で既に合意されていてもよい。
【0051】
周波数セグメントの1つ以上の割り振りについてリモートデバイスに知らせるために、情報を伝達するために使用されるコンパクトなフォーマットが、専用シグナリングパケット又はメッセージに含められ、データパケット伝送の開始前にリモートデバイスに送られてもよい。このような専用シグナリングメッセージは、あるチャネル条件を前提として情報が最も確実に配信されるように、可能な限り低い変調次数又は最もロバストな変調及びコーディングスキームで送信されてもよい。
【0052】
このようなコンパクトなフォーマットが、各データフレーム又はデータパケットのヘッダ部に埋め込まれることはさらに有益であり得る。通信システムにおいて、データパケットは、典型的には、少なくとも2つの部分、すなわち、それぞれ、制御情報及びユーザデータに関連する、ヘッダ部及びペイロード部を含むことに留意されたい。ヘッダ部に含まれる制御情報は、プリアンブル、アドレス情報、シーケンス情報、ペイロード部で使用される変調及び/又はコーディングスキーム、ペイロード長等であってもよい。コンパクトなフォーマットを各データパケット又はデータフレームのヘッダ部に埋め込むことにより、周波数セグメントの割り振りは、より動的に更新され得る。
【0053】
トランスミッタがビットローディング制御方法のイニシエータである場合、トランスミッタは、リモートデバイスからのACKに基づいて更新されたチャネル応答を導出してもよく、その後、周波数セグメントの新しい割り振りが決定されてもよく、又は個別変調スキームのシフトが採用されてもよい。新しい割り振りを伝えるコンパクトなフォーマットを次のデータパケットのパケットヘッダに埋め込むことにより、リモートデバイスは、タイムリーに更新を得ることができる。その結果、システムは、通信チャネルの変化に取り組む際によりロバスト(robust)且つアジャイル(agile)である。
【0054】
同様に、レシーバがビットローディング制御方法のイニシエータである場合、レシーバは、最近受信したデータパケットに基づいて更新されたチャネル応答を導出し、相応にビットローディングスキームを更新してもよい。更新を伝えるコンパクトなフォーマットは、最近受信したデータパケットのACKに斯かる情報をピギーバックすることによって直ちにトランスミッタにフィードバックしてもよい。
【0055】
一例において、通信チャネルは光通信チャネルであり、コンパクトなフォーマットは、照明通信データフレームのヘッダ部に埋め込まれてもよい。照明通信データフレームは、高速光ワイヤレスデータ通信に関するIEEE 802.11規格又はITU G.9991規格に準拠してもよい。
【0056】
好ましくは、個別変調スキームは、周波数セグメントの各々に均一なパワーローディング(power loading)で実施される。
【0057】
ワイヤレス通信では、トランスミッタの放射は、米国の連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)又は欧州の欧州電気通信標準化機構(ETSI:European Telecommunications Standards Institute)によって定められる規制等、電磁両立性(EMC:electromagnetic compatibility)に関する地域又は国の規制を受ける。それゆえ、トランスミッタが、周波数セグメントの各々に均一なパワーローディング、又はマルチキャリアシステムの全帯域で均一なパワースペクトル密度(PSD:power spectral density)を適用することは有益である。これは、帯域全体に対して最大許容出力パワーを使用する機会をトランスミッタに提供するためである。
【0058】
代替的に、トランスミッタは、レシーバ側における帯域にわたる均一な受信スペクトル密度のために周波数選択的チャネル応答(frequency selective channel response)を補償するプリエンファシス技術を適用してもよい。この場合、トランスミッタの出力パワーは、まず高い周波数で限定され、低い周波数でのチャネル容量を犠牲にする。低下するチャネル応答が、プリエンファシスフィルタによって完全に又は大幅に補償される場合、同じ変調次数又は変調及びコーディングスキームが、全帯域、すなわち複数のサブキャリアに適用されてもよい。
【0059】
本発明の第2の態様によれば、ビットローディング制御装置が提供される。マルチキャリアワイヤレス通信システムにおける、周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答を有する、通信チャネルでのデータの転送を支援するためのビットローディング制御装置であって、当該ビットローディング制御装置は、テスト信号の要求を送るように構成されるトランスミッタと、リモートデバイスからのテスト信号を受信するように構成されるレシーバと、受信したテスト信号に基づいて複数のサブキャリアにわたる通信チャネルの推定チャネル応答を得る、及び、推定チャネル応答に従って、複数のサブキャリアを、各々が2つ以上の隣接するサブキャリアを含む、1つ以上の重複しない周波数セグメントに割り振る、及び、周波数セグメントの各々に、2つ以上の隣接するサブキャリアによって共有される個別変調スキームを割り当てるためのビットローディングスキームを決定し、個別共有変調スキームは、周波数が増加するにつれて単調に減少する変調次数で割り当てられる、ように構成されるコントローラとを含む、ビットローディング制御装置。
【0060】
上述したように、ビットローディング制御装置は、スループット向上と実施オーバーヘッド(implementation overhead)との間の良好なバランスを提供する、提案された適応ビットローディング又は適応変調スキームを効率的に実施するためにリモートデバイスのペアを支援するためにトランスミッタ又はレシーバに含まれてもよい。
【0061】
有利には、ビットローディング制御装置はさらに、各周波数セグメントが1つ以上の隣接するサブキャリアを含む1つ以上の重複しない周波数セグメントの1つ以上の割り振り、及び、1つ以上の重複しない周波数セグメントの各々に割り当てられる対応する個別変調スキーム等、導出されたビットローディングスキームを記憶するためにメモリを含む。
【0062】
適応ビットローディング方法を果たすために導出された周波数セグメントの1つ以上の割り振りは、同じリモートデバイスに宛てられるいくつかの連続したデータパケットによって再使用されてもよいので、斯かる情報をメモリにローカルに記憶することは有益である。極めてコンパクトなフォーマットが使用され得ることを考慮すると、情報の読み取り及び書き込みの記憶スペース及びリソースの観点でメモリに大きな負担をかけることはないであろう。
【0063】
一実施形態において、ビットローディング制御装置はさらに、マルチキャリアワイヤレス通信システムにおけるリモートデバイスとワイヤレス通信を行うように構成され、トランスミッタはさらに、ビットローディングスキームに従って同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する1つ以上の隣接するサブキャリアで送られるデータを変調する、及び、変調されたデータを通信チャネルを介してリモートデバイスに送信するように構成される。
【0064】
この実施形態では、ビットローディング制御装置は、トランスミッタ主導アプローチ(transmitter-initiated approach)で動作する。斯くして、意図されたセッションのトランスミッタ側が、ビットローディング制御方法を初期化し、その後、同じデバイスが、リモートレシーバデバイスへ送信されるべきデータを変調する際に決定されたビットローディングスキームを適用する。
【0065】
別の実施形態において、ビットローディング制御装置はさらに、マルチキャリアワイヤレス通信システムにおけるリモートデバイスとワイヤレス通信を行うように構成され、レシーバはさらに、通信チャネルを介してリモートデバイスからのデータを受信する、及び、ビットローディングスキームに従って同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する2つ以上の隣接するサブキャリアで受信されるデータを復調するように構成される。
【0066】
このオプションの場合、ビットローディング制御装置のトランスミッタはさらに、ビットローディング制御装置と通信する際にリモートデバイスが使用するためにビットローディングスキームをリモートデバイスに送るように構成される。
【0067】
このオプションでは、ビットローディング制御装置は、レシーバ主導アプローチ(receiver-initiated approach)で動作する。斯くして、意図されたセッションのレシーバ側が、ビットローディング制御方法を初期化し、ビットローディングスキームをリモートトランスミッタに提供する。その後、ビットローディング制御装置は、リモートトランスミッタデバイスから受信されるデータを復調する際に決定されたビットローディングスキームを適用する。
【0068】
好ましいシステムセットアップにおいて、通信チャネルは、光通信チャネルであり、ビットローディング制御装置はさらに、光通信チャネルでデータを送信及び受信するためにトランスミッタ及びレシーバに接続されるように構成される光フロントエンドを含む。
【0069】
光フロントエンドは、トランスミッタチェーンにおいて電気送信信号を出力光信号に変換する、及びレシーバチェーンにおいて受信した光信号を電気信号に変換するために使用される。光フロントエンドは、少なくとも、LED、レーザダイオード(LD:Laser diode)、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等、トランスミッタチェーンにおける光源と、少なくとも、レシーバチェーンにおける受光センサ又はフォトダイオードを含む。市販のLEDは、通常、電力制限された一次ローパス挙動を示す。光通信チャネルのチャネル応答がLEDによって支配される場合、周波数が増加するにつれて単調に低下するチャネル応答を示すであろう。
【0070】
本発明の第3の態様によれば、マルチキャリアワイヤレス通信システムが提供される。周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答を有する通信チャネルを有するマルチキャリアワイヤレス通信システムであって、当該マルチキャリアワイヤレス通信システムは、
本発明による第1のトランシーバ及びリモートデバイスを含み、リモートデバイスは、第1のトランシーバからのビットローディングスキームを受信する、及び、受信したビットローディングスキームに従って第1のトランシーバから受信されるデータを復調するように構成される、又は
本発明による第2のトランシーバ及び第2のリモートデバイスを含み、第2のトランシーバはさらに、第2のリモートデバイスに第2のビットローディングスキームを送るように構成され、第2のリモートデバイスはさらに、第2のトランシーバからの第2のビットローディングスキームを受信する、受信したビットローディングスキームに従って同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する1つ以上の隣接するサブキャリアで送られるデータを変調する、及び、当該マルチキャリアワイヤレス通信システムにおける通信チャネルを介して変調されたデータを第2のトランシーバに送信する、
ように構成される、マルチキャリアワイヤレス通信システム。
【0071】
開示されるビットローディング制御方法はトランスミッタ主導アプローチ又はレシーバ主導アプローチのいずれかを取ってもよいので、システムは、2つの構成があってもよい。第1の構成では、システムの第1のトランシーバはトランスミッタ主導アプローチで動作し、第2の構成では、システムの第2のトランシーバはレシーバ主導アプローチで動作する。
【0072】
トランシーバは、直交周波数分割多重(OFDM)ベースのワイヤレスシステム等、このようなマルチキャリアシステムにおいてワイヤレス通信を行うことが可能である。ワイヤレスチャネルは、無線周波数(radio frequency)、マイクロ波周波数、又は赤外、可視、若しくは紫外等の光部分(optical part)等、異なる電磁スペクトルに位置してもよい。したがって、トランシーバに含まれるフロントエンドは、アナログフロントエンド又は光フロントエンドであってもよい。光フロントエンドの一例では、LEDが、ベースバンドからの電気信号を光信号に変換して、チャネルを介して送出するために使用される。
【0073】
本発明はさらに、コンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムが処理手段を含むビットローディング制御装置によって実行された場合、処理手段に本発明のビットローディング制御方法を実行させるコード手段を含む、コンピュータプログラムに具現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図面中、同様の参照文字は、一般に、異なる図にわたって同じ部分を指す。また、これらの図面は、必ずしも正しい縮尺ではなく、その代わりに、全般的に、本発明の原理を例示することに重点が置かれている。
【
図1】OWCネットワーク、及びこれに接続されるバックボーンネットワークの概要を示す。
【
図2】Li-Fiアクセスポイントの基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図3】複数の光フロントエンドを有するLi-Fiアクセスポイントの基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図4】Li-Fiエンドポイントの基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図5】Li-Fiアクセスポイント又はLi-Fiエンドポイントに含まれる光フロントエンドの基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図6】周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答の例を示す。
【
図7】1つ以上の周波数セグメントの割り振りの例を示す。
【
図8】OFDM PHYのIEEE 802.11(2016)で定義される変調依存パラメータを示す。
【
図10】本発明のビットローディング制御装置の基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図11】一実施形態によるビットローディング制御装置の基本的な構成要素を概略的に示す。
【
図12】ビットローディング制御方法のフロー図を示す。
【
図13】初期ビット割り振りテーブルの一例を示す。
【
図14】
図13の初期ビット割り振りに対してビット割り振りテーブルにおける値を2つだけシフトアップした結果を示す。
【
図15】
図13の初期ビット割り振りに対してビット割り振りテーブルにおける値を2つだけシフトダウンした結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
ここで、本発明の様々な実施形態が、
図1に示されるように、光ワイヤレス通信(OWC)ネットワークシステム100、より具体的には、Li-Fiネットワークシステムに基づいて述べられる。説明のために、Li-Fiネットワーク100は、IPルータ15及びEthernet(登録商標)スイッチ14を介してバックボーンネットワーク20に接続されているが、実際のシステムでは、より多くのルータ及びスイッチが、バックボーンネットワークをLi-Fiネットワークに接続するために展開されてもよい。この例では、Li-Fiネットワークとバックボーンネットワークとの間の接続は、バックボーン接続21と呼ばれる。バックボーン接続は、Ethernet(登録商標)等の有線接続、又は無線周波数(RF)若しくはミリ波に基づくワイヤレス接続であることができる、安定した高速リンクである。また、バックボーン接続は、エンドポイントが光マルチセルワイヤレスネットワークで実行しているものとは異なる別の種類の光ワイヤレスリンクであることもできる。他の種類の光ワイヤレスリンクの一例は、自由空間ポイントツーポイント光リンク(free space point-to-point optical link)であることができる。
【0076】
・ Li-Fiシステムの概要及びネットワークアーキテクチャ
ローカルエリアネットワーキングのためのワイヤレス通信技術として、Li-Fiは、最後の数十メートルの接続性を提供するためにWi-Fi(登録商標)と同様の役割を果たす。Li-Fiネットワーク100は、複数の光アクセスポイント(AP)120及びネットワークデバイス又はエンドポイント(EP)110を含んでもよい。各エンドポイント110は、アクセスポイント120のそれぞれの1つに選択的に関連付けられ、同期される。Li-Fi AP120は、Li-Fiデバイス又はLi-Fiエンドポイント(EP)110へのアクセスを提供するために、1つ又は複数の光フロントエンド又はLi-Fiトランシーバ(TRX)121に接続されてもよい。破線で示された台形は、個々のLi-Fiトランシーバ121の視野(FoV)又はカバレッジを示している。EP110は、Li-Fi AP120のカバレッジ内に位置する場合にのみ、当該AP120からのダウンリンク通信を受信することが可能となる。光通信の対称的なアップリンク及びダウンリンクを仮定することにより、双方向光リンクが、同じ条件下で構築されることができる。光通信リンクの見通し線特性のため、隣接するアクセスポイント120は、互いの間に直接光リンクを有さないが、隣接するアクセスポイント120のカバレッジのオーバーラップしたエリアに位置するエンドポイント110は、両方のアクセスポイントからの光信号を検出することが可能である。
【0077】
一例では、Li-Fi AP120は、G.hn、 ITU G.9960及びG.9961に従って追加の機能性を有するドメインマスタとして動作し、複数のLi-Fi EP110を管理してもよい。一実装例では、EPが一方のドメインから他方のドメインにローミングする場合にハンドオーバが起こる。別の実装例では、各Li-Fi AP120は、最大255個のLi-Fi EPであることができる、複数のLi-Fi EPをホストする個々のドメインを管理するドメインマスタとして動作される。このようなLi-Fi AP120は、典型的には、天井に位置する。これらは、特に通信が可視光に基づかない場合、照明器具とコロケート(collocate)されてもよいが、必ずしもそうである必要はない。Li-Fi AP120の主な機能としては、AP120の存在を周囲のLi-Fi EP110にアドバタイズすること、Li-Fi EP110を登録及び解除すること、関連付けられているLi-Fi EP110間で媒体アクセス制御(MAC:medium access control)スケジューリングを行うこと、EP110から干渉レポートを集めること、干渉レポートに応答してローカルスケジュールを調整すること、及び/又は、Li-Fiコントローラ13にネイバ関係を報告すること等が挙げられる。干渉回避のためのMACスケジューリング等、Li-Fi AP120の機能のいくつかは、Li-Fiコントローラ13によって集中的に実装されてもよい。
【0078】
Li-Fi EP又はLi-Fiデバイス110は、エンドデバイスがLi-Fiネットワーク100に接続することを容易にするエンドユーザモデムである。現在、Li-Fi EP110は、典型的には、ラップトップ又は他のエンドデバイスに接続される専用エンティティである。将来的には、Li-Fi EP110は、スマートフォン、タブレット、コンピュータ、リモートコントローラ、スマートテレビ、ディスプレイデバイス、ストレージデバイス、家電製品、又は他のスマート電子デバイスに部分的又は完全に統合される可能性がある。
【0079】
Li-Fiネットワーク100内の複数のアクセスポイント120に接続されるL-Fiコントローラ又は中央コントローラ13が存在してもよい。Li-Fiコントローラ又は中央コントローラ13は、トポロジ及びネイバ関係に関する情報の導出、干渉抑制のための異なるLi-Fiアクセスポイント(AP)間のスケジューリングの決定等、必要に応じてLi-Fiシステムを集中的に制御することを担う。さらに、Li-Fiコントローラ13は、ITマネージャ等、ユーザ又は管理者が、複数のLi-Fi AP間のスケジュールをコンフィギュレーションする、これらのLi-Fi APからのレポートを監視する、及び/又はシステム性能に関するさらなる統計情報を導出することを可能にするユーザインターフェースを提供するために用いられてもよい。典型的には、個々のAPから見えるLi-Fiコントローラ13は1つだけであるようにされ、これは、Li-Fiコントローラ13への及びLi-Fiコントローラ13からのトラフィックが、仮想LAN(VLAN)等を介して、それ自身のネットワークセグメント内に隔離されるようなネットワークコンフィギュレーションによって達成される。さらに、CAPWAP(Control and Provisioning of Wireless Access Points)プロトコル等のプロトコルが、複数のコントローラを発見する、及び、インフラストラクチャに参加するアクセスポイントをホスト/管理するための空きリソースを有する1つのコントローラを選択するために使用されることができる。
【0080】
Li-Fiシステムの1つの例示的な実装例では、Li-Fi同期サーバ16が、システムに接続され、これは、異なるG.vlcドメインのG.vlc媒体アクセス制御(MAC)サイクルを同期する(又はアラインする)ことを担う。これは、近隣の(neighboring)AP120を検出する、及び、近隣のAP120のオーバーラップしたエリアに位置するEP110への干渉を回避するためにいくつかの共通タイムスロットをアラインする(align)ために必要である。光リンクの見通し線特性のため、近隣のAP120は、典型的には、互いからの信号を直接検出することができない。しかしながら、2つの近隣のAP120のオーバーラップしたエリアに位置するEP110は、近隣のAP120が同時に送信している場合に干渉を受ける可能性がある。このような状況を回避するために、近隣のAP120を共通のタイムベースに同期させる、及びこれらが同じ時点に送信するのを防止するようにすることが必要であり得る。ネットワーク同期のための好ましいオプションの1つは、PTP(Precision Time Protocol)、IEEE 1588v2を用いることである。PTPは、サブマイクロ秒の精度を提供し、これは、G.vlcドメイン間MACアライメント(inter G.vlc domain MAC alignment)にとって十分である。PTPの精度を保つために、Ethernet(登録商標)スイッチのサポートが必要であり、これもPTPが可能であるべきである。PTPの精度を保つために、Ethernet(登録商標)ネットワーク内のどの要素もPTPを扱う必要があり、ゆえに、どのような展開(deployment)においても選択されるスイッチは、PTPモードをサポートし、それに応じて動作するように構成される必要がある。
【0081】
また、PTPが既存のインフラストラクチャによってサポートされていないレガシーシステムにLi-Fiシステムが展開されるべきであることも起こり得る。したがって、追加の措置が、異なる、恐らくは準最適なやり方で近隣のAP120を同期させるために取られるべきであり、それに応じて、近隣のAP120間の非理想的な同期に対処するためにEP110のための解決策が見出されるべきである。
【0082】
・ 詳細なシステムの説明
・ Li-Fi AP
Li-Fi AP120は、Li-Fiネットワーク100を確立するための重要なユニットである。いくつかのシナリオでは、Li-Fi AP120は、既存のITインフラストラクチャとLi-Fiネットワーク100の間のインターフェースも形成する。Li-Fi AP120のハイレベルのブロック図が
図2に示されている。
【0083】
一方の側では、Li-Fi AP120は、有線接続(Ethernet(登録商標))、又はワイヤレス接続(RF、ミリ波、又はLi-Fi EPが実行しているものとは異なる他の種類の光ワイヤレス)であることができる、バックボーンネットワークへのインターフェース124を有する。他方の側では、Li-Fi AP120は、1つ以上のLi-Fi EP110との光リンクを可能にするための光フロントエンド121を有する。さらに、Li-Fi AP120は、異なる変調スキーム間の変換及びアナログ信号のコンディショニングの観点で、バックボーンネットワーク20上のデータと光リンク上のデータとの間の双方向翻訳又は変換を実施する機能も実行する。それゆえ、Li-Fi AP120は、少なくとも、デジタルモジュレータ及びデモジュレータコンポーネント123及びアナログフロントエンド122も含む。送信経路において、アナログフロントエンド(AFE)122は、光フロントエンドを駆動するためにベースバンド信号をコンディショニング及び増幅するためのプログラマブル増幅器、フィルタ、及びドライバを含んでもよい。受信経路について、AFE122は、さらなるデジタル処理のために受信信号を調整する(accommodate)ための減衰器、低ノイズ増幅器、フィルタ、及びプログラマブル利得増幅器を含んでもよい。
【0084】
少なくとも光源及び光センサを含む光フロントエンド121は、電気信号及び光信号間の変換を実施する。トランスミッタチェーンにおいて、光フロントエンド121は、電気的な送信信号を光源を介して出力される光信号に変換するために使用される。レシーバチェーンにおいて、光フロントエンド121は、受信した光信号を、さらなる信号処理のために光センサを介して出力される電気信号に変換するために使用される。光フロントエンド121は、Li-Fiトランシーバ(TRX)とも呼ばれ、
・ LiFi-トランスミッタ(Tx)は、AFEから得られる電気信号を(例えば、LEDによって発せられるべき)光信号に変換し、
・ Li-Fi レシーバ(Rx)は、(例えば、フォトダイオードから)受信した光信号をAFEのための電気信号に変換する。
【0085】
Li-Fi AP120は、単一のLi-Fi TRX121、又は複数のLi-Fi TRX121に接続され、異なる光路で光信号を送信することが可能であってもよい。Li-Fi AP120が複数のLi-Fi TRX121に接続される場合、Li-Fi APは、通信リンクを確立するために、これらを1つのコヒーレント信号として扱ってもよく、又は(部分的に)別個のインコヒーレント信号として扱ってもよい。
図3は、複数のLi-Fi TRX121を有するLi-Fi AP120の一例を示している。Li-Fiインターフェースコンポーネント125が、複数のLi-Fi TRX121に送られる又複数のLi-Fi TRX121から受信されるデータを分割又は結合するために採用される。
【0086】
・ Li-Fi EP
Li-Fi EP又はLi-Fiデバイス110のハイレベルの概要が
図4に示されている。Li-Fi AP120と同様に、Li-Fi EP110は、少なくとも、光フロントエンド111、アナログフロントエンド112、デジタルモジュレータ/デモジュレータ113、及びエンドデバイス又はプロセッサへのインターフェース114を含む。
【0087】
Li-Fi EP110は、ケーブルを介して別個のエンティティとしてエンドデバイスに接続されてもよく、又は部分的若しくは全体的にエンドデバイスに統合されてもよい。ラップトップ、スマートフォン、リモートコントローラ等、多くのエンドデバイスにとって、Ethernet(登録商標)は、エンドデバイスのオペレーティングシステムにおいて確立されたインターフェースである。Li-Fiは、追加的又は代わりにエンドデバイスに通信インターフェースを提供するために使用されてもよい。エンドデバイスのオペレーティングシステムへのLi-Fi EP又はLi-Fiデバイスのシステム統合を簡素化するために、Ethernet(登録商標) over USBを用いることが有利である。それゆえ、1つのオプションにおいて、Li-Fi EP又はLi-Fiデバイス110は、標準USBケーブル又はプラグを介してエンドデバイスに接続されることができる。Ethernet over USBを使用する例の場合、Li-Fi EP110は、Ethernet over USBインターフェース114を含み、USBケーブル115を介してエンドデバイスに接続してもよい。また、Li-Fi EP110は、Li-Fi AP120と同様、1つ以上のクライアント光TRX111に接続されてもよい。代替的に、各トランシーバ/レシーバが異なるそれぞれの方向に向けられるセグメント化されたトランスミッタ/レシーバを有する単一の光フロントエンドも想定される。
【0088】
別の例では、異なるインターフェース114がLi-Fi EPをエンドデバイスのオペレーションシステムに接続するために使用されてもよく、対応するインターフェース114(Ethernet over USB)及び/又はケーブル115が相応に置き換えられるべきである。
【0089】
図5は、Li-Fi AP120及びLi-Fi EP110に含まれる又は接続される光フロントエンド又は光TRX111、121の例示的な構成要素を示している。光TRX111、121は、少なくとも、光源1211、光センサ1212、ドライバ1213、及び増幅器1214を含む。光源1211は、電気的な送信信号を出力光信号に変換するために使用され、発光ダイオード(LED:Light-emitting diode)、レーザダイオード(LD:Laser diode)、又は垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser )であることが可能である。光センサ1212は、受信した光信号を出力電気信号に変換するために使用され、フォトダイオード、アバランシェダイオード、又は他のタイプの光センサであることが可能である。ドライバ1213は、主に、光源1211に必要とされる電力を調整するために使用される。増幅器1214は、主に、光センサ1212によって受信された信号を、電気回路におけるさらなる処理に適した信号にするようにコンディショニングするために使用される。一例では、増幅器1214は、1つ以上の演算増幅器で実装される電流-電圧コンバータである、トランスインピーダンス増幅器(TIA:transimpedance amplifier)であることが可能である。TIAは、最小量のノイズで信号を増幅するために受光センサ又はフォトダイオード1212の近くに位置してもよい。
【0090】
・ Li-Fiシステムにおけるインターコネクション(inter-connection)
典型的に、Li-Fi AP120は、天井に展開される。このようなAP120は、通信アクティビティを行うためにまず給電される必要がある。それゆえ、AP120への接続は、電力及びデータの両方のことを意味する。AP120は、一方ではバックボーン接続21を介してクラウド、又はバックボーンネットワーク20との双方向リンクをセットアップし、他方では、AP120は、光リンクを介して1つ以上の関連付けられているEP110と通信する。EP110は、典型的には、EPが結合される又は統合されているエンドデバイスから電力を得、光リンクを介して関連付けられているAP120と通信する。
【0091】
・ バックボーンネットワークへのLi-Fi APの接続
Li-Fi AP120がバックボーンネットワーク20に接続されるために、異なるオプションが取られることができる。
【0092】
一態様において、データ及び電力はLi-Fi APに一緒に(jointly)に供給されてもよく、これは、電力線通信(PLC:power line communication)による単一の電力ケーブル又はPower over Ethernet(登録商標)(PoE)による単一のEthernet(登録商標)ケーブルを介して実装されることができる。
【0093】
PLCは、既存の電力線ケーブル、すなわち、デバイスに主電源を供給するためのケーブルを、データ通信にも利用する。HomePlug(登録商標)又はG.hn等、普及しているPLC通信規格は、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)技術を利用し、これは、Li-Fiシステムにも採用されている。したがって、PLCシステム及びLi-Fiシステムの物理層(PHY:physical layer)は、両システムで使用される変調方法及び同期方法等、非常に類似する可能性がある。しかしながら、一般に、OFDMはバイポーラ信号を使用するのに対し、光ドメインにおける伝送はユニポーラである。その結果、光ネットワークにおける伝送に何らかの適応が必要である可能性がある。シンプルな解決策は、光伝送前にOFDMベースのPLC信号の復調及びその後の再変調を必要としないDCオフセットの使用、又は代替的に、ACO-OFDM、DCO-OFDM、ADO-OFDM及び/又はフリップOFDM等のユニポーラOFDM変調技術を用いた復調及びその後の再変調の使用である。それゆえ、典型的には天井で照明器具とコロケートされる、Li-Fi AP120が、既存の電力ケーブルを利用してバックボーンネットワーク20へのデータ接続も得ることは非常に好都合であり得る。
【0094】
しかしながら、主電源線がアンテナとして機能し、主電源線上に存在する通信信号と干渉する可能性のあるあらゆる種類の望ましくない信号を拾う可能性があることを考えると、PLCシステムのチャネルはかなりノイズが多いことも認識される。斯くして、Li-Fi over PLC対応デバイスは、このような外部干渉に対処することが重要である。さらに、主電源線上の通信信号は、製造時に予測されることができず、一日のうちでも変化する可能性がある、ある量の減衰を経験する。インパクトファクタとしては、建物ごとに異なるケーブルの長さ、高周波に対して多かれ少なかれ短絡を形成し、スイッチオン又はオフがなされる電力負荷等が挙げられる。
【0095】
PLCシステムによって導入されるシグナルインテグリティ(signal integrity)の問題に対処するための既知の解決策は、Li-Fi over PLC対応デバイスに、主電源線を介して受けるPLC通信信号を復号するためのPLCデコーダを設けることである。通信信号の障害はデジタル的に処理される。例えば、狭帯域干渉物(narrowband interferer)は、OFDM変調信号の1つのサブキャリアにエラーをもたらす。誤り訂正アルゴリズムを用いて再構成データは訂正されてもよい。その後、再構成データは、少なくとも1つのLEDに流れるLED電流を変調するためにアナログドメインに再び変換される。このようにして、データの損失が低減される、よりロバストなオペレーティングデバイスが提供されることができるが、この解決策の不利な点の1つは、デバイスのサイズが大きくなり、複雑で、コストがかかるということである。
【0096】
一方、電力がEthernet(登録商標)ケーブルを介して供給されることができる場合、Li-Fi APが、既存のITインフラストラクチャを利用して電力及びバックボーンネットワーク20への接続の両方を得ることも好都合であり得る。PoE(Power over Ethernet(登録商標))は、IEEE802.3af/at規格に述べられ、現在、IEEE Task Force P802.3btにおいて4ペアパワー(4-pair power)に向けて拡張されている。PoEは、制御及び通信目的のためのデータ線に沿って、PSE(Power Sourcing Equipment)から(複数の)PD(Powered Device)に40V~48Vの電源電圧レベルを供給することが意図されている。PSEデバイスは、PoEスイッチとも呼ばれる。PoE照明システムにおいて、PDは、光源、ユーザインターフェースデバイス及びセンサであってもよい。PSEは、典型的には、IEC/TR 60083規格に準拠する等、主電源から給電される。従来のPoEシステムは、ネットワーク及びそのエンドポイント、したがって、PSE及びPD間でデータ及び電力をトランスポートする。
【0097】
それゆえ、データは、例えば、Ethernet(登録商標)プロトコルを使用するEthernet(登録商標)接続を介して、制御デバイスによって受信されることができる。データは、Power over Ethernet(登録商標)システムのデバイス間でEthernet(登録商標)プロトコルを介して通信される。それゆえ、Ethernet(登録商標)コントローラの形態のマイクロチップが、デバイス間の通信リンクを確立するために使用されることができ、これは、オープンシステムインターコネクションモデル(OSI(Open Systems Interconnection)モデル)のメディアアクセス制御(MAC:Media Access Control)及び物理層(PHY)をサポートする。
【0098】
Ethernet(登録商標)接続は、例えば、光ファイバ、電線、又はツイストペアケーブル、例えば、Cat 3ケーブル、Cat 4ケーブル、Cat 5ケーブル、Cat 5eケーブル、Cat 6ケーブル、Cat 6Aケーブル、Cat 7ケーブル、Cat 7Aケーブル、Cat 8ケーブル、Cat 8.1ケーブル、Cat 8.2ケーブル等であることができる。Ethernet(登録商標)接続は、複数ペアのケーブル、例えば、2ペア、3ペア、4ペア、又はそれ以上のペアのケーブルを有することができる。ケーブルは、非シールド又はシールド、とりわけ、個別又は全体的にシールドされることができる。電力及びデータは、Ethernet(登録商標)接続の同じファイバ、ワイヤ、又はケーブルを介して、又はEthernet(登録商標)接続の異なるファイバ、ワイヤ、又はケーブルを介して伝送されることができる。光ファイバを介した電力伝送の場合、電力は、データ受信デバイスのソーラーセルユニットによって受けられる光子の形態で伝送されることができる。
【0099】
PoEシステムにおけるデータ受信デバイスは、1つ以上のポートを含むことができる。各ポートは、1つ以上のピンを含むことができる。ピンは、電力、データ、又は電力及びデータを受けるように構成されることができる。追加的に、又は代替的に、ポートは、光子の形態で電力を受けるための1つ以上のソーラーセルユニットを含むこともできる。ポートはEthernet(登録商標)接続を介して電力及びデータを受けることができるため、一部のピンに電力が供給され、他のピンにEthernet(登録商標)接続を介してデータが供給されることができる。代替的に、又は追加的に、ピンには、Ethernet(登録商標)接続を介して電力及びデータが供給されることもできる。
【0100】
別の態様では、データ及び電力は別個にLi-Fi APに供給されてもよく、オプションは、電力ケーブル及びEthernet(登録商標)ケーブル(バックボーンネットワークへの有線接続)の両方、又は電力ケーブル及びバックボーン20へのワイヤレスリンク(光ワイヤレスリンク又は自由空間光リンク)の組み合わせを介すことがあり得る。
【0101】
好ましくは、Li-Fiシステムは、Wi-Fi(登録商標)システム又はセルラーシステム等、既存のワイヤレス通信システムに統合されてもよい。したがって、Li-Fi AP120は、Wi-Fi(登録商標)アクセスポイント又はセルラー基地局に統合又は直接接続されてもよい。Li-Fi AP120とWi-Fi(登録商標)アクセスポイント又はセルラー基地局との間の信号の変換又は翻訳を有することにより、Wi-Fi(登録商標)システム又はセルラーシステムの既存のインフラストラクチャが、Li-Fi AP120のためのバックボーンネットワーク20への接続を提供するために用いられることができる。
【0102】
・ Li-Fi APへのLi-Fi EPの接続
Li-Fi EP110は、Li-Fi AP120を介してLi-Fiシステムにアクセスし、関連付けられているLi-Fi AP120は、ローカルAPと呼ばれることが多い。Li-Fi EP110とLi-Fi AP120の接続には考慮されるべきいくつかの側面がある。
- カバレッジ:Li-Fi EPは、そのロケーション、その向き、Li-Fi APのポジショニング、及びLi-Fi EPのトランスデューサ/センサカバレッジエリアのサイズに依存して、必ずしもLi-Fi APを見ることができるとは限らない可能性がある。
- ダウンリンク干渉:複数の光ダウンリンクのオーバーラップしたカバレッジエリアにあるLi-Fi EPは、これらのLi-Fi APが同時に送信する場合に干渉を受ける。
- アップリンク干渉:Li-Fi EPが、関連付けられているLi-Fi APに、別のLi-Fi EPがこの同じLi-Fi APに送信している際に信号を送信することは、Li-Fi APにおけるアップリンク干渉を引き起こす。
- ハンドオーバ:Li-Fi EPの移動性のため、Li-Fi EPがあるLi-Fi APのカバレッジエリアから近隣のLi-Fi APに移動する場合にハンドオーバが必要とされる。すなわち、(例えば、ユーザデバイス、クライアントデバイス、携帯電話等に接続される又は含まれる)Li-Fi EPが現在のセルから近隣のセルに移動する場合、アクティブな通信は、当該近隣のセルのノード又はアクセスポイントに引き継がれなければならない。ハンドオーバは、進行中の通信又はデータ転送の途絶を減らすためにできるだけ早く行われることが意図されており、これを促進するために準備期間を含んでもよい。既存のLi-Fi APとのリンクが切れる前に新しいLi-Fi APへのリンクを準備及び確立するために利用可能な時間が不十分である場合、Li-Fi EPは、接続がない期間を経験する可能性がある。光リンクの見通し線特性に起因するLi-Fiセルの比較的小さなサイズを考慮すると、シームレスなハンドオーバは、リンク品質及びユーザ体験を保証するために重要である。
【0103】
基本的に、Li-Fi EP110は、双方向光リンク、又はハイブリッドのダウンリンク及びアップリンクを介してLi-Fi AP120に接続されることができる。ここでは、ダウンリンクは、Li-Fi AP120からLi-Fi EP110への通信リンクを意味し、アップリンクは、Li-Fi EP110からLi-Fi AP120への通信リンクを意味することに留意されたい。双方向光リンクは、Li-Fi EP110とLi-Fi AP120との間の比較的対称的な接続を可能にする。したがって、ダウンリンク及びアップリンクの両方が、上述したように同様のLi-Fi通信の利点を享受する。しかしながら、ウェブサーフィン又はビデオストリーミングのため等、いくつかのアプリケーションシナリオでは、Li-Fi APとLi-Fi EPとの間のリンクは、Li-Fi AP120からLi-Fi EP110への光ダウンリンクと、Li-Fi EP120からLi-Fi AP110への無線周波数(RF)アップリンクとの組み合わせである、ハイブリッドリンクであることもできる。RFリンクは、Wi-Fi(登録商標)、BLE、若しくはZigbee(登録商標)等、普及している短距離ワイヤレス通信プロトコルに従ってもよく、又は、4G若しくは5Gセルラー等、セルラー通信プロトコルに従ってもよい。
【0104】
Li-Fi AP120は、Li-Fi AP機能及びWi-Fi(登録商標)アクセスポイント又はセルラー基地局機能の両方をサポートするコンボデバイスを介して構築されてもよいというオプションに戻ると、このようなハイブリッドリンクは、Li-Fi AP側のコントローラによってシームレスに処理されることができる。Li-Fi EP110は、典型的には、スマートフォン、タブレット、コンピュータ、又は他のスマートデバイスであることができる、エンドデバイスに接続又は統合されるので、エンドデバイスは、ハイブリッドリンクで使用される短距離ワイヤレス通信プロトコル又はセルラープロトコルのハードウェアサポートを既に有する可能性がある。それゆえ、このようなハイブリッドリンクはエンドデバイスの既存のリソースも活用し、受信経路のみを必要とし、送信経路を必要としないLi-Fi EPのための簡素化された解決策を提供する。EP110のコスト、消費電力(power consumption)、及びフォームファクタは、このようにしてさらに低減され得る。相応にして、Li-Fi AP120も、主として、光ダウンリンクを介してLi-Fi EP110にデータを送るための光トランスミッタを含むことにより簡素化されるのに対し、Li-Fi EP110からAP120へのRFベースのアップリンクは、コンボデバイス又はコロケートされるWi-Fi(登録商標)アクセスポイント/セルラー基地局におけるRFレシーバを活用することにより、又はLi-Fi AP120自身に含まれる専用のRFレシーバを介して受信されてもよい。
【0105】
・ 光マルチセルワイヤレスネットワーク内のスケジューリング及び干渉抑制
複数のLi-Fi AP120が隣り合わせに展開される場合、又は複数のEP110が同じローカルAP120若しくは隣接するAP120に関連付けられる場合、干渉のない光通信のために媒体アクセス制御(MAC)が必要となる。時分割多重アクセス(TDMA:time-division multiple access)、周波数分割多重アクセス(FDMA:frequency-division multiple access)、キャリアセンス多重アクセス(CSMA:carrier-sense multiple access)、符号分割多重アクセス(CDMA:code division multiple access)、空間分割多重アクセス(space-division multiple access)、又は1つ以上の上記のメカニズムの組み合わせ等、異なるMACメカニズムが光マルチセルワイヤレスネットワークで用いられることが可能である。TDMAは、時分割多重化スキームに基づき、無線リソース(radio resource)が時間ドメインでスケジュールされ、異なるタイムスロットは、典型的には周期的な繰り返しフレーム構造又はMACサイクルで異なるトランスミッタに割り当てられる。FDMAは、周波数分割多重化に基づき、異なる周波数帯域が、同時送信のために異なるデバイスに割り当てられる。光通信において、FDMAは、波長分割多重化に基づく、波長分割多重アクセス(WDMA:wavelength division multiple access)に発展されることも可能である。FDMAの別の先進的なバージョンは、直交周波数分割多重アクセス(OFDMA:orthogonal frequency-division multiple access)であり、各デバイスは、全帯域のうちの1つ以上のサブキャリアを使用し得る。OFDMAは、よりフレキシブルに異なるユーザに異なるデータレート又はサービス品質を提供し、一方、このようなダイバーシティにもかかわらず、高いリソース効率が維持されることができる。CSMAは、典型的には、「リッスンビフォアトーク(listen-before-talk)」アプローチを用い、デバイスは、共有媒体で送信する前に他のトラフィックがないことを確認する(verify)。CSMAは疎なネットワークで広く使用され、ノードの密度が高くなる場合、さらなる衝突回避技術が必要になる。CDMAは、典型的には、スペクトラム拡散の上に構築され、一般的な形態は、直接シーケンススペクトラム拡散(direct-sequence spread spectrum)に基づく直接シーケンスCDMA(direct-sequence CDMA)であり、異なるデバイスが、互いに直交する異なる拡散コードで同時にメッセージを送る。無線リンク(radio link)と比較して典型的にはより小さい光リンクのFoVを考えると、空間分割多重アクセスも、ここでは非常に魅力的な解決策であり得る。
【0106】
複数のAP120を有するTDMAベースのマルチセルネットワークでは、直接通信がないことに起因して、隣接するAP120は時として同期したMACサイクルを有さない可能性がある。1つのMACサイクル又はスーパーフレームの持続時間は、典型的には、ネットワーク内のすべてのAP120について同じであるが、MACサイクルの開始時刻は、個々のAP120について異なり得る。MACサイクルの開始時刻は、ワイヤレス媒体を連続するタイムスロットに分割するためのローカル時間基準としてAPによって使用されることに留意されたい。2つの隣接するAP120間のMACサイクルのこのようなオフセットは、オーバーラップしたエリア内のEP110との通信のために時間スロットが1つのAP120に独占的に割り当てられる場合でも、これら2つの隣接するAP120のオーバーラップしたカバレッジエリアに位置するEP110に干渉を引き起こす可能性がある。それゆえ、AP120は、共通のタイムベースに同期する必要があり得る。共通のタイムベースは、同期ハンドシェイク(synchronization handshake)を介して、ネットワーク上で配布される基準クロック(同期Ethernet(登録商標)クロック等)を介して、若しくはネットワーク内の専用の同期サーバを介して得られてもよく、又は主電源のゼロクロス等、共通の信号から導出されてもよい。しかしながら、ネットワーク内の不確実な遅延又は干渉に起因して、タイミング基準に対するAPのタイミング同期の不確実性(timing synchronization uncertainty)が依然としてあり得る。少なくとも2つの隣接するAP120のオーバーラップしたエリアに位置するEP110が、通常のデータ通信リンク又は帯域外シグナリングメッセージ(out-of-band signaling message)であり得る、これらのAPからのダウンリンク通信に基づいて、少なくとも2つのAP120のMACサイクルに関するタイミング情報を導出することが依然として必要であり得る。少なくとも2つのAP120のMACサイクルに関する導出されたタイミング情報に基づいて、EP110はさらに、2つの隣接するAP120のうちの少なくとも一方が、他方とアラインされるように自身のMACサイクルを調整するのを支援してもよい。
【0107】
・ 効率的な変調制御(Efficient modulation control)
OFDMは、狭帯域干渉又は周波数選択性フェージング等、厳しいチャネル条件に対してロバストであるという大きな利点を持つため、多くの通信システムにおけるデジタルマルチキャリア変調方法として広く使用されている。また、全帯域を複数のサブキャリアに分割することにより、システムは、個々のサブキャリアに異なる変調及びコーディングスキームを適用するフレキシビリティを有し、これは、チャネルの容量を最大化するために使用され得る。先のセクションで述べられるように、適応変調又はビットローディング方法はまた、特にサブキャリアの数がスケールアップする場合、システムの複雑さ及びシグナリングオーバーヘッドに対するペナルティに直面し、その結果、システム全体の性能の向上は限定的であり得る。より効率的な適応変調方法を実現するために、本発明は、実施の複雑さ(implementation complexity)及びシグナリングオーバーヘッドを大幅に単純化するために特定のチャネル特性を利用する方法を開示する。
【0108】
開示される発明は、本発明によって取り組まれるのと同様のチャネル条件を有する任意のマルチキャリアワイヤレスシステムに適用されてもよい。一般性を失うことなく、システムは、Li-Fiシステム等、光ワイヤレス通信システムであってもよい。LEDが、Li-Fiシステムにおける電気-光変換を実施するために使用される。OWCスペクトルは全無線スペクトルよりも約2600倍大きいが、Li-Fiシステムは、データを自由に送信するために斯かるスペクトルを十分に利用できない可能性がある。標準的な照明LEDは、通信目的を意図せず又は通信目的のために最適化されず、市販のLEDの変調帯域幅は、典型的には、OWCスペクトルと比較してかなり制約がある。LEDの動的応答、又はキャリア再結合プロセスに起因して、LEDは、電力制限された一次ローパス挙動を示す。LEDのこのローパス特性、とりわけ、その接合キャパシタンスは、スペクトルの大部分を劣化させるが、これらは依然としてスループットに貢献することができる。OFDMは、特定のパワー及び信号コンステレーションでスペクトルの異なる部分の使用を可能にする。比較的多量のノイズを含む、スペクトルのより激しく減衰された部分では、よりロバストな信号が使用されることができる。よりロバストな信号は、実際の信号対雑音比(SNR)レベルに応じてシンボルあたりより少ないビットを搬送する、より小さなコンステレーションを示す。
【0109】
さらに、最大使用可能LED帯域幅も動的であり、LEDから受信フォトダイオードまでの距離、温度、ノイズレベル、調光レベル等に依存する。適応アルゴリズムが、実際の最大使用可能LED帯域幅に応じて、周波数上の出力パワーをより効率的に割り振るために必要とされてもよい。
【0110】
周波数選択的チャネル応答を鑑みて、様々なストラテジが、様々な周波数成分にパワー及びビットローディングを割り当てるために提案されている。ウォーターフィリング(Waterfilling)は、すべての周波数ビンにパワーをロードするための最適なストラテジであることが知られている。ビット数/s/Hzは、様々な周波数ビンのSNRに応じて選択される。ウォーターフィリングは、計算集中的ソリューション(computation-intensive solution)とみなされる、理論的ラグランジュ最適化(theoretical Lagrange optimization)に基づく。より実用的なストラテジは、プリエンファシスによる均一なビットローディング及び均一なパワーローディングである。均一なパワーローディングは、すべての周波数で同じパワーを送信するが、相応にコンステレーションサイズを適応させる。一方、プリエンファシスされたパワーローディング(pre-emphasized power loading)は、サブキャリアあたり(同じコンステレーションサイズを使用して)同じビット数を送信することを試みるが、チャネル減衰を反転させるようにパワーを適応させる。
【0111】
LEDチャネルの高周波部分における大きな減衰を考慮すると、プリエンファシスを適用することは、非常に減衰された高周波数は避けられるべきである、又は小さなコンステレーションサイズしか使用されることができないことを意味し得る。対照的に、適応ビットローディングは、チャネルの大部分が激しく減衰される場合により効果的である。
【0112】
図6は、周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答によって特徴付けられる、このような通信チャネルの例示的な図を提供する。図に示される周波数チャネル応答の滑らかなエンベロープは、デモンストレーションを容易にするためであり、チャネルプロファイル上に1つ以上の小さなリップルがあるチャネル条件を排除するものではないことに留意されたい。また、これは、単調なチャネル特性は、全体的な周波数帯域に対して観察され、小さな偏差は、あるサブキャリアに対して依然として存在してもよいことを意味する。これは、実用的な通信システムにおける典型的なケースでもある。
【0113】
各サブキャリアに対して適切な変調スキームを計算する代わりに、まず、複数のサブキャリアを、各セグメントが2つ以上のサブキャリアを含む1つ以上の重複しない周波数セグメントに分割することによって、アルゴリズムの高速化を図ることが有利である。その後、適切な変調スキームが、各周波数セグメントに割り当てられ、同じ周波数セグメントに含まれるすべてのサブキャリアによって共有される。このような1つ以上の周波数セグメントの割り振りの一例が
図7に示されている。周波数セグメントの範囲は、破線の枠で示されている。図に示されるように、個々の周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数は、互いに異なってもよい。このような周波数セグメントの割り振りは、いくつかの要因に依拠してもよい。一方では、これは、チャネル応答の傾き又は隣接するサブキャリア間のチャネル応答の偏差等、チャネル応答特性に依存する。チャネル応答が平坦であるほど、又は隣接するサブキャリア間のチャネル応答の偏差が小さいほど、より多くのサブキャリアが、1つの周波数セグメントに含まれてもよい。他方、これは、異なる変調次数に対する所要最小SNR、又はシステムの通信規格におけるMCSテーブルで定義される隣接する変調(及びコーディング)スキームに対する所要最小SNRのステップ等、システムによってサポートされる変調スキームの特性にも依存する。さらに、これは、スループットの最大化とオーバーヘッドの最小化との間の性能トレードオフのストラテジにも依存し得る。単一の周波数セグメントに含まれる異なるサブキャリア間のチャネル応答のより少ない偏差を可能にする、周波数セグメントの割り振りが細かい(1つのセグメント内のサブキャリアが少ない)ほど、データスループットを向上させる可能性が高くなるが、これは、システムのオーバーヘッドの増加にもつながる。
【0114】
一例として、1つ以上の重複しない周波数セグメントは、各周波数セグメントが、システムによってサポートされる異なる変調次数又はMCSに割り当てられるべきであるように割り振られる。斯くして、各セグメントに含まれる2つ以上のサブキャリア間のチャネル応答の偏差は、2つの隣接する変調次数又はMCSの最小SNR要件間のステップサイズよりも大きくない。あるシステム設計では、ある変調次数及び最小所要SNR間の相関は決定論的(deterministic)である。
【0115】
例えば、1/2の同じコーディング率で、BPSK(Binary Phase Shift Keying)変調信号を復調することは3dBのSNRを必要とし得るが、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調信号では、5.5dBが必要とされ得、16-QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調信号では、12dBが必要とされ得る。斯くして、隣接する変調次数間の最小所要SNRのステップサイズも異なる。この例では、BPSKとQPSKの間のステップサイズは2.5dBにすぎず、QPSKと16QAMの間のステップサイズは6.5dBである。チャネル応答がdBスケールで比較的線形に変化する場合、各周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数は、主に、隣接する変調及びコーディングスキームの最小SNR要件間の差によって決定されることになる。ここで言及される数は単に説明目的のためのものであり、他のシステムパラメータ及びハードウェア実装に応じて異なってもよいことに留意されたい。
【0116】
図8は、OFDM PHYのIEEE 802.11(2016)で定義されるMCSテーブルの別の例を提供する。テーブルは、変調次数が増加するにつれて、及び、同じ変調次数については、コーディング率が増加するにつれて組織化されていることが分かる。斯くして、適切な復調及び復号のためのレシーバ側での最小SNR要件も、テーブルにおけるインデックスが増加するにつれて単調に増加する。先の例と同様に、変調次数及びコーディング率の組み合わせに依存して、テーブルで定義される2つの隣接するMCS間の所要最小SNRのステップサイズも数dB異なることがある。斯くして、チャネル応答の傾きが極めて線形であっても、各周波数セグメントに含まれるサブキャリアの数は、変調特性により、異なることがある。
【0117】
1つ以上の周波数セグメントを割り振る際に、変調特性及び推定チャネル応答の両方が考慮されるため、周波数セグメントと個別変調スキームとの間のマッピングが容易になる。斯くして、1つのオプションとして、1つ以上の重複しない周波数セグメントの割り振りについてのみリモートデバイスに知らせる、及び、リモートデバイスが各周波数セグメントについて対応する変調スキームをローカルに導出するようにすることが有利である、なぜなら、システムによってサポートされる潜在的な変調次数又はMCSテーブルに関する情報は、リモートデバイスでも利用可能であるはずだからである。
【0118】
特別なケースでは、より大きな周波数セグメントは、1つ以上の潜在的な変調次数又はMCSをスキップすることによって割り振られてもよい。これは、チャネル応答の一部が劇的な変化/減衰を経験する場合に起こり得る。別のあり得るシナリオは、隣接する高い周波数セグメントが少数のサブキャリアしか含まない場合、同じ低い変調次数を使用して低い周波数セグメントとマージすることがより効率的であるということがあり得る。このような特別なケースの場合、周波数セグメントに対する変調次数又はMCSのインデックス等、追加の情報が、トランスミッタの変調制御ユニットによってリモートデバイスに提供されてもよい。
【0119】
ストレージ及びシグナリングのオーバーヘッドをさらに減らすために、周波数セグメントの割り振りは、コンパクトなフォーマットで構成されることができる。これは、トランスミッタがパケット又はデータフレームごとに基づいてリモートデバイスにこのような情報を提供する必要がある場合に特に有益であり得る。
図9は、ヘッダ部及びペイロード部の2つの部分を含む簡略化されたデータフレームフォーマットの図を提供する。パケットヘッダは、パケット受信のための制御情報に関連し、ペイロード部は、実際のユーザデータを含む。パケットヘッダはさらに、プリアンブル、アドレス情報、シーケンス情報、ペイロード部で使用される変調及び/又はコーディングスキーム、ペイロード長等、いくつかのサブフィールドを含んでもよい。したがって、周波数セグメントの割り振りに関するコンパクトなフォーマットを各データパケット又はデータフレームのヘッダ部に埋め込むことが好ましい。斯くして、提案される適応変調スキームは、リモートデバイスからの先行パケットの受信時等、より動的に更新され得る。ビットローディング制御装置は更新されたチャネル応答を導出してもよく、その後、周波数セグメントの新しい割り振りが適用されてもよい。したがって、リモートデバイスは、各データパケット、確認応答(ACK:acknowledgement)パケット、又は専用制御パケットに埋め込まれる新しい割り振りを伝えるコンパクトなフォーマットでタイムリーに更新を得ることができる。その結果、システムは、通信チャネルの変化に取り組む際によりロバスト且つアジャイルである。
【0120】
図10は、本発明のビットローディング制御装置1010の基本的な構成要素を概略的に示している。ビットローディング制御装置1010は、少なくとも、コントローラ1011、トランスミッタ1012、及びレシーバ1013を含む。トランスミッタ1012は、テスト信号の要求を送るように構成され、レシーバ1013は、テスト信号を受信するように構成される。コントローラ1011は、ビットローディング制御方法700に開示されるように、推定チャネル応答を得る、及び、推定チャネル応答に基づいてビットローディングスキームを導出するように構成される。ビットローディング制御装置1010はさらに、信号処理又はリモートデバイスとの通信の用途のため1つ以上の重複しない周波数セグメントの割り振りを少なくとも記憶するためのメモリ1014を含んでもよい。周波数セグメントと、システムによってサポートされる潜在的な変調次数又はMCSとの間のマッピングに依存して、追加の情報が、各周波数セグメントに対する変調次数又はMCSの割り当てを明確にするために記憶されてもよい。
【0121】
ビットローディング制御装置1010はさらに、適応ビットローディング方法を実施した後、マルチキャリアワイヤレス通信システムにおいてワイヤレス通信を行うように構成されてもよい。ビットローディング制御装置1010がトランスミッタ主導アプローチで動作するように構成される場合、ビットローディング制御装置1010のトランスミッタ1012はさらに、ビットローディングスキームに従って同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する1つ以上の隣接するサブキャリアで送られるデータを変調する、及び、変調されたデータを通信チャネルを介してリモートデバイスに送信するように構成される。
【0122】
ビットローディング制御装置1010がレシーバ主導アプローチで動作するように構成される場合、ビットローディング制御装置1010のトランスミッタ1012はさらに、決定されたビットローディングスキームをリモートデバイスに送るように構成され、リモートデバイスは、データセッションの意図されたトランスミッタであり、ビットローディング制御装置1010は、データセッションの意図されたレシーバ側である。ビットローディング制御装置1010のレシーバ1013はさらに、通信チャネルを介してリモート送信デバイスからのデータを受信する、及び、ビットローディングスキームに従って同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する2つ以上の隣接するサブキャリアで受信されるデータを復調するように構成される。
【0123】
したがって、マルチキャリアワイヤレス通信システムは、トランスミッタ主導アプローチでビットローディング制御装置1010として動作する第1のトランシーバ1100と、リモート受信デバイスとを含んでもよい。第1のトランシーバ1100はさらに、ビットローディングスキームに従って同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する1つ以上の隣接するサブキャリアで送られるデータを変調する、及び、変調されたデータを通信チャネルを介してリモート受信デバイスに送信するように構成される。リモート受信デバイスは、第1のトランシーバ1100からのビットローディングスキームを受信する、及び、受信したビットローディングスキームに従って第1のトランシーバ1100から受信されるデータを復調するように構成される。
【0124】
ここで、変調は、ビットトゥシンボルマッピングを示す。変調スキームがコンステレーションダイアグラム(constellation diagram)によって表される場合、このようなビットトゥシンボルマッピングは、コンステレーションマッピングとも呼ばれる。この場合、異なる変調スキームは、異なるコンステレーションサイズによって区別されてもよい。組み合わせ変調及びコーディングスキームが割り当てられると、生のデータビットは、まずチャネルエンコーディングを経て、その後、コード化されたビットが、データシンボルに変調される。OFDMベースのシステムでは、データシンボルに対してさらなる処理を行うためにOFDM変調のさらなるステップが必要であり、さらなるステップは、複数のサブキャリア上のパラレル周波数領域データを、チャネル上で送るべきシリアル時間領域データに変換するために逆高速フーリエ変換(IFFT)を行うことによって実行される。
【0125】
したがって、OFDMベースのシステムの場合、データシンボルのビットへの復調又はデマッピングの前に、OFDM復調のためにチャネルからの受信データを処理する先行ステップが必要である。高速フーリエ変換(FFT)が、シリアル時間領域受信データを複数のサブキャリア上のパラレル周波数領域データシンボルに変換するために使用される。その後、復調制御ユニットは、決定された同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する1つ以上の隣接するサブキャリア上のデータシンボルを復調してもよい。
【0126】
第2のセットアップとして、マルチキャリアワイヤレス通信システムは、レシーバ主導アプローチでビットローディング制御装置1010として動作する第2のトランシーバ1200と、第2のリモート送信デバイスとを含んでもよい。第2のトランシーバ1200はさらに、第2のリモートデバイスに第2のビットローディングスキームを送るように構成され、第2のリモート送信デバイスはさらに、第2のトランシーバ1200からの第2のビットローディングスキームを受信する、受信したビットローディングスキームに従って同じ個別変調スキームで同じ周波数セグメントに属する1つ以上の隣接するサブキャリアで送られるデータを変調する、及び、マルチキャリアワイヤレス通信システムにおける通信チャネルを介して変調されたデータを第2のトランシーバ1200に送信するように構成される。
【0127】
ビットローディング制御装置1010は、任意選択的に、ユーザインターフェースを含んでもよく、これにより、ユーザにデバイスの状態照会(status inquiry)又は操作の追加の利便性を提供することができる。
【0128】
図11は、一実施形態によるビットローディング制御装置1010の基本的な構成要素を概略的に示している。ビットローディング制御装置1010はさらに、トランスミッタ1012及びレシーバ1013に接続されるフロントエンド1050を含む。フロントエンド1050は、ワイヤレス通信チャネルでデータを送信及び受信するように構成され、無線周波数スペクトル、マイクロ波周波数スペクトル、又は光スペクトル等、いくつかの電磁スペクトルのうちの1つを利用してもよい。さらに、赤外線スペクトル、可視スペクトル、又は紫外線スペクトル等、光スペクトルのサブセットを使用してもよい。好ましいセットアップにおいて、フロントエンド1050は、光フロントエンド111、121であり、フロントエンド1050は、先のセクション及び
図5に開示されるようなサブブロックを使用して構築されてもよい。斯くして、光フロントエンド1050、111、121は、ビットローディング制御装置によって生成されるような電気信号を、例えばLEDを使用して、光チャネルを介して伝送するための光信号に変換する。同様に、光フロントエンド1050、111、121は、光信号を受信し、これを、例えばフォトダイオード又は他のフォトディテクタを用いて、電気信号に変換する。
【0129】
好ましいシステムセットアップにおいて、ビットローディング制御装置1010は、Li-Fiアクセスポイント120又はLi-Fiエンドポイント110の一部として組み込まれてもよい。開示される方法は、より効率的な適応ビットローディングが、Li-Fiアクセスポイント120とLi-Fiエンドポイント110との間の光リンクに適用されることを容易にする。
【0130】
変調制御方法700のフロー図が
図12に示されている。ステップS701において、ビットローディング制御装置は、テスト信号の要求を送り、ステップS702において、テスト信号を受信する。複数のサブキャリアにわたる通信チャネルの推定チャネル応答が、ステップS703において、受信したテスト信号に基づいて得られる。その後、ステップS704において、ビットローディングスキームが、推定チャネル応答に従って、複数のサブキャリアを、各々が2つ以上の隣接するサブキャリアを含む、1つ以上の重複しない周波数セグメントに割り振る、及び、周波数セグメントの各々に、2つ以上の隣接するサブキャリアによって共有される個別変調スキームを割り当てるために決定され、個別共有変調スキームは、周波数が増加するにつれて単調に減少する変調次数で割り当てられる。
【0131】
方法700はさらに、通信チャネルのチャネル応答の変化を検出するステップS705と、検出すると、ビットローディングスキームを更新するステップS706とを含み、更新は、1つ以上の重複しない周波数セグメントの同じ割り振りを維持する、及び、チャネル応答の変化に応じて1つ以上の重複しない周波数セグメントの各々に割り当てられる個別共有変調スキームを周波数において上又は下にシフトさせることによって行われてもよい。
【0132】
本発明で取り組まれるワイヤレス通信チャネルの特性を考慮すると、チャネル応答のプロファイルはほぼ変化しないままである一方、応答は周波数でシフトする可能性がある。チャネルは、周波数が増加するにつれて低下するチャネル応答を有するので、チャネルのさらなる劣化は、より低い周波数に向かう元のチャネル応答曲線のシフトを示すことがあり得、チャネルのさらなる改善は、より高い周波数に向かう元のチャネル応答のシフトを示すことがあり得る。斯くして、チャネルの変化を検出すると別のビットローディングスキームを決定するために全く新しいプロシージャをトリガする必要はない可能性がある。代わりに、同じ周波数セグメントを維持する、及び、周波数応答のシフトに従って各周波数セグメントにビットローディングプロファイルのシフトを適用することは、特にチャネル応答の変化が大幅でない場合、非常に効率的なソリューションとなり得る。
【0133】
任意選択的に、方法700はさらに、通信チャネルを介してリモートデバイスと通信するためのビットローディングスキームを送るステップS707を含んでもよい。開示される方法がトランスミッタ主導アプローチ又はレシーバ主導アプローチで動作されることに依存して、リモートデバイスは、予期される(anticipated)データリンクの受信デバイス又は送信デバイスのいずれかであり得る。
【0134】
別の例では、方法700はさらに、後の使用のためにビットローディングスキームをローカルに記憶するステップS708を含んでもよい。
【0135】
開示される発明は、Li-Fi関連規格に組み込まれる可能性がある。ここでは、システムアーキテクチャ及び物理層に関する家庭内ネットワークのITU勧告を記述する、ITU-T G.9960及びITU-T G.9961を背景にして例を挙げる。各サブチャネルにロードされることができるビット数を決定するために、いわゆるビット割り振りテーブル(BAT:Bit Allocation Table)が適用される。ITU-T G.9960によるフレームは、プリアンブル、ヘッダ、追加チャネル推定シンボル、及びペイロードを含む。フレームのヘッダは、フレームのタイプを示す。データフレーム、管理フレーム、及び肯定応答(ACK)フレームに対して、適用されるBATは、5ビット識別子BAT_IDでヘッダの可変部に示される。BATを決定するために、レシーバは、トランスミッタによって送信されるテスト信号に従って信号品質を測定する。テスト信号は、ペイロード部においてプローブシンボルを搬送するプローブフレーム、及び、ヘッダとペイロード部との間に置かれるデータ又は管理フレームに追加されるACEシンボルの、2つのタイプのいずれかであってもよい。その後、レシーバは、トランスミッタがどのBATを適用してもよいか決定する。
【0136】
BATは、MACサイクルの一部/領域に適用されることができる。MACサイクルのある領域でチャネルを推定するために、レシーバは、MACサイクルの当該領域でプローブフレームを送るようにトランスミッタに指示してもよい。異なるBATは、MACサイクルの異なる領域に適用されることができる。サブキャリアは、グループあたり2、4、8、又は16のサブキャリアでグループ化されることができる。このようなグループ化は、非常に初歩的であり、グループ化がバンドプランのすべてのサブキャリアにわたって均一であることを意味する。
【0137】
チャネル推定プロトコルは、レシーバが、CE_Initiation.reqメッセージを送信することによって開始され、これに対して、トランスミッタは、CE_Initiation.cnfメッセージで返信する。また、トランスミッタが、CE_Initiation.indメッセージを送信することにより、レシーバがチャネル推定を開始するのをトリガしてもよい。
【0138】
レシーバは、CE_Initiation.reqメッセージを送信する際にトランスミッタに対して以下のパラメータを提供する:
・ 新BAT-ID
・ グループ化のための最小値
・ チャネル推定ウィンドウ(MACサイクルのどの部分で推定すべきか)
・ プローブフレームのためのパラメータ。
【0139】
レシーバは、プローブフレームを要求してもよい(及びそのためのパラメータを変更してもよい)。要求があると、トランスミッタはプローブフレームを送信する。プローブフレームを送信するために、トランスミッタは、MAC/サイクルのリソースを必要とし、これは、ドメインマスタから得ることを必要とする。レシーバは、チャネル推定の結果を、BATに関する情報を提供する更新メッセージとともに送信することによりプロセスを終了する。レシーバは、CE_ParamUpdate.reqを送信し、これに対して、トランスミッタは、CE_ParamUpdate.cnfメッセージで返信する。トランスミッタは、CE_ParamUpdate.indメッセージでチャネル推定結果の再送を要求してもよい。
【0140】
プロトコルは、開始プロセスを省略(CE_ParamUpdate.req、CE_ParamUpdate.cnfを省略)し、直接プロセスのサブパートにジャンプすることにより、より高速なチャネル適応を可能にする。
【0141】
■ アンソリシテッド要求(Unsolicited request) - 更新メッセージを送信することにより新しいBATを決定する:CE_ParamUpdate.reqは、以下のパラメータを含む:
・ 新BAT-ID
・ バンドプラン(Bandplan)
・ グループ化(Grouping)
・ BAT有効マスク(BAT valid mask) - BATのどれがノードに対して現在有効であるか
・ MACサイクルにおけるBAT有効時間(BAT valid times) - これは、MACサイクル部分に特定のBATを作ることを可能にする
・ 非ゼロビットを有するサブキャリアの範囲(サブキャリアグループの範囲)(TIDXMIN...TIDXMAX)
・ (すべてのサブキャリアに対する)グループごと又はサブキャリアごとに4ビットのビット割り振りテーブル。
【0142】
■ 部分更新要求(Partial update request) - 既存のBATを更新することにより新しいBATを決定する
CE_PartialBatUpdate.reqは、以下のようなパラメータを搬送する
・ 旧BAT ID+新BAT ID(新BAT IDはBATの変更後である)
・ 更新されるべきBATエントリの数
・ (サブキャリアの一部に対する)グループごと又はサブキャリアごとに4ビット+サブキャリアインデックスのビット割り振りテーブル-エントリ。
【0143】
■ プローブ要求(Probe request) - プローブフレームを直接要求する。CE_ProbeRequest.ind、ACK_CE_CTRL。
【0144】
■ ACE要求(ACE request) - ACEシンボルを挿入することを依頼する。CE_ACESymbols.ind。
・ トランスミッタが(ヘッダとペイロードとの間で)全フレームに付加しなければならないACEシンボルの数。
【0145】
CE_ParamUpdate.reqメッセージにおけるテーブルビット割り振りを含むフィールドは、圧縮されることができる。そのために、テーブルは、グループ(圧縮及び非圧縮)に分割される。圧縮されたグループの場合、グループ内のサブキャリアに対してインスタンス数及びビット割り振りが示される。
【0146】
初期ビット割り振りは、レシーバによって決定され、CE_ParamUpdate.reqメッセージを介してトランスミッタに通知されてもよい。グループ化が適用されない場合(G=1)、BATインデックスはサブチャネルを表す。グループ化が適用される場合(G>1)、BATインデックスはサブチャネルのグループを表す。上位のサブチャネルに対して、BAT値は、対応するサブチャネル(グループ)がロードされない(unloaded)ことを意味する、0であってもよいことに留意されたい。
【0147】
ひとたびBATが確定されると、BATにおけるBAT値をシフトさせることによって適応されることができる。信号品質が向上する場合、BAT値は、BATにおいて上に(高い周波数に向かって)シフトされる。
【0148】
図13は、初期BATの一例を提供する。
図14は、
図13の初期ビット割り振りに対してBATにおける値を2つだけシフトアップした結果を示している。最初の2つのBAT-エントリは新しい値を有し、非ゼロ値を有するBAT範囲は、
図13の初期割り振りと比較して、より高い周波数境界における2つのエントリで増加されていることに留意されたい。チャネル条件が悪くなる場合、BAT値は、BATにおいてシフトダウンされる。
図15は、
図13の初期ビット割り振りに対してBATにおける値を2つだけシフトダウンした結果を示している。最後の2つのBAT-エントリはここではゼロであり、非ゼロ値を有する範囲は、
図13の初期割り振りと比較して、より高い周波数境界における2つのエントリで減少されていることに留意されたい。
【0149】
ITU勧告のプロトコルは、2つの新たなメッセージを定義することによって拡張されることができる:
・ CE_ParamShift.req(表1(Table 1)及び表2(Table 2)参照、トランスミッタ、レシーバのいずれかが新しいTIDX
MIN及びTIDX
MAXを決定する)
・ CE_ParamShift.cnf(表3(Table 3)参照)
【0150】
ITU勧告に対する別の拡張は、ビットローディングスキームに応じてトランスミッタがそのサブキャリアのパワーを動的にスイッチオン/オフできるようにすることである。デフォルトでは、バンドプラン内のマスクされていないすべてのサブキャリアがスイッチオンされる。この拡張は、トランスミッタが、対応するBATエントリがゼロに設定されているサブキャリアをスイッチオフすることを可能にする。
【0151】
BATエントリが0に設定されているサブキャリアをスイッチオン/オフするために以下のオプションが選択されることができる。
・ 非ゼロのBATエントリに隣接するサブチャネルは、オンに維持されてもよい
・ 非ゼロのBATエントリに隣接しないサブチャネルは、スイッチオフされてもよい
・ 非ゼロのBATエントリに隣接するサブチャネルは、スイッチオフされてもよいが、以下の場合は一時的にスイッチオンされてもよい
・ プローブ記号を送信する
・ ACEシンボルを送信する
【0152】
本発明による方法は、コンピュータ実施方法(computer implemented method)としてコンピュータで、又は専用のハードウェアで、又は両方の組み合わせで実施されてもよい。
【0153】
本発明による方法のための実行可能コードは、コンピュータ/機械可読記憶手段に記憶されてもよい。コンピュータ/機械可読記憶手段の例としては、不揮発性メモリデバイス、光記憶媒体/デバイス、ソリッドステート媒体、集積回路、サーバ等が挙げられる。好ましくは、コンピュータプログラムプロダクトは、当該プログラムプロダクトがコンピュータで実行される場合に本発明による方法を実行するためのコンピュータ可読媒体に記憶された非一時的プログラムコード手段を含む。
【0154】
方法、システム及びコンピュータ可読媒体(一時的及び非一時的)は、上述の実施形態の選択された態様を実施するために提供されてもよい。
【0155】
用語「コントローラ」は、本明細書では、一般に、数ある機能の中でもとりわけ、1つ以上のネットワークデバイス又はコーディネータの動作に関連する様々な装置を述べるために使用される。コントローラは、本明細書で論じられる様々な機能を実行するように、数多くのやり方で(例えば、専用ハードウェアを用いて)実装されることができる。「プロセッサ」は、本明細書で論じられる様々な機能を実行するように、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされてもよい、1つ以上のマイクロプロセッサを採用する、コントローラの一例である。コントローラは、プロセッサを用いて、又はプロセッサを用いずに実装されてもよく、また、一部の機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ、及び関連回路)との組み合わせとして実装されてもよい。本開示の様々な実施形態で採用されてもよいコントローラ構成要素の例としては、限定するものではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field-programmable gate array)が挙げられる。
【0156】
様々な実装形態では、プロセッサ又はコントローラは、1つ以上の記憶媒体(本明細書では「メモリ」と総称され、例えば、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM等の揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ、コンパクトディスク、光ディスク等)に関連付けられてもよい。一部の実装形態では、これらの記憶媒体は、1つ以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、本明細書で論じられる機能の少なくとも一部を実行する、1つ以上のプログラムでエンコードされてもよい。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定されてもよく、あるいは、それらの記憶媒体上に記憶されている1つ以上のプログラムが、本明細書で論じられる本発明の様々な態様を実施するために、プロセッサ又はコントローラ内にロードされることができるように、可搬性であってもよい。用語「プログラム」又は「コンピュータプログラム」は、本明細書では、1つ以上のプロセッサ又はコントローラをプログラムするために採用されることが可能な、任意のタイプのコンピュータコード(例えば、ソフトウェア又はマイクロコード)を指すように、一般的な意味で使用される。
【0157】
本明細書で使用される用語「ネットワーク」は、任意の2つ以上のデバイス間での、及び/又はネットワークに結合された複数のデバイスの間での、(例えば、デバイス制御、データ記憶、データ交換等のための)情報の転送を容易にする、(コントローラ又はプロセッサを含む)2つ以上のデバイスの任意の相互接続を指す。