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特許7462118レーダーセンサおよびロゴを形成する配列された複数層を含む車両アセンブリ
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  • 特許-レーダーセンサおよびロゴを形成する配列された複数層を含む車両アセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】レーダーセンサおよびロゴを形成する配列された複数層を含む車両アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20240328BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240328BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S13/931
H01Q1/42
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023533387
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2021082047
(87)【国際公開番号】W WO2022117348
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】2012488
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、アルボー
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、ルノー
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106384(JP,A)
【文献】特開2007-248167(JP,A)
【文献】特開2003-240838(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011115829(DE,A1)
【文献】特開2020-067291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0103668(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108448247(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
H01Q 1/42
B60R 13/00
B60R 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)向けの車両アセンブリ(1)であって、
- 波長(λ)範囲(Δ1)にわたってレーダー波(R1)を放射するよう構成されているレーダーセンサ(10)と、
- 前記レーダーセンサ(10)へ向けて配置されている配列された複数層(11)であって、光学的機能を果たすよう構成されていて各層(110)が屈折率(n10)および厚さ(e10)を有する複数層(110)から成る第1サブセット(S1)と、前記複数層(110)から成る前記第1セット(S1)に対して保護を提供するよう構成されていて各層(112)が屈折率(n20)および厚さ(e20)を有する複数層(112)から成る第2サブセット(S2)と、を含む前記配列された複数層(11)と、
を含み、
- 前記複数層(112)から成る前記第2サブセット(S2)の全厚(e2)は、前記配列された複数層(11)の全厚(e0)が前記複数層(110)から成る前記第1サブセット(S1)と前記複数層(112)から成る前記第2サブセット(S2)の等価屈折率(neq0)の2倍に前記レーダー波(R1)の入射角(θ)に対応する屈折角(r)のコサインを乗じたもので前記範囲(Δ1)内の波長(λ)を割ったもののm倍(mは整数)と等しくなるような寸法とされることを特徴とする、車両アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記レーダーセンサ(10)は、ミリ波、極超短波、またはマイクロ波のレーダーセンサである、請求項1に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記レーダー波(R1)は、100MHz~5GHzの範囲の周波数帯域にわたって放射される、請求項2に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記入射角(θ)がゼロと等しい場合は、前記複数層(112)から成る前記第2サブセット(S2)の前記全厚(e2)は、前記配列された複数層(11)の全厚(e0)が前記複数層(110)から成る前記第1サブセット(S1)と前記複数層(112)から成る前記第2サブセット(S2)の前記等価屈折率(neq0)の2倍で前記波長(λ)を割ったものと等しくなるような寸法とされる、請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記全厚(e0)はarctan(d1/(2e4))と等しい入射角(θ)を用いて規定され、e4は前記レーダーセンサ(10)と前記配列された複数層(11)の間の距離であり、d1は前記レーダーセンサ(10)の放射アンテナ(100)と受信アンテナ(101)の間の距離である、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記複数層(112)から成る前記第2サブセット(S2)は、出力層(112a)および保護層(112b)を含む、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記出力層(112a)は、前記複数層(110)から成る前記第1サブセット(S1)の等価屈折率(neq1)との差が0.1未満である屈折率(n20a)を有する、請求項6に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項8】
前記出力層(112a)は、前記複数層(110)から成る前記第1サブセット(S1)の等価屈折率(neq1)との差が0.05未満である屈折率(n20a)を有する、請求項7に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項9】
前記第1サブセット(S1)の各層(110)は、隣接する層(110)の屈折率(n10)との差が0.1未満である屈折率(n10)を有する、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項10】
前記第1サブセット(S1)の各層(110)は、隣接する層(110)の屈折率(n10)との差が0.05未満である屈折率(n10)を有する、請求項9に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項11】
前記複数層(110)から成る前記第1サブセット(S1)は、
- フィルム層(110d)と、
- 散乱層(110e)と、
- 反射層(110f)と、
- 不透明層(110g)と、
を含む、請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項12】
前記配列された複数層(11)は照射されないロゴを形成する、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項13】
前記配列された複数層(11)は照射されるロゴを形成する、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項14】
前記複数層(110)から成る前記第1サブセット(S1)は光学層(110c)をさらに含む、請求項13に記載の車両アセンブリ(1)。
【請求項15】
レーダーセンサ(10)へ向けて配置される配列された複数層(11)であって、前記レーダーセンサ(10)は波長(λ)範囲(Δ1)にわたってレーダー波(R1)を放射するよう構成され、前記配列された複数層(11)は、光学的機能を果たすよう構成されていて各層(110)が屈折率(n10)および厚さ(e10)を有する複数層(110)から成る第1サブセット(S1)と、前記複数層(110)から成る前記第1セット(S1)に対して保護を提供するよう構成されていて各層(112)が屈折率(n20)および厚さ(e20)を有する複数層(112)から成る第2サブセット(S2)と、
を含み、
- 前記複数層(112)から成る前記第2サブセット(S2)の全厚(e2)は、前記配列された複数層(11)の全厚(e0)が前記複数層(110)から成る前記第1サブセット(S1)と前記複数層(112)から成る前記第2サブセット(S2)の等価屈折率(neq0)の2倍に前記レーダー波(R1)の入射角(θ)に対応する屈折角(r)のコサインを乗じたもので前記範囲(Δ1)内の波長(λ)を割ったもののm倍(mは整数)と等しくなるような寸法とされることを特徴とする、配列された複数層(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両アセンブリに関する。本発明は自動車において特定の用途があるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
車両アセンブリは、当業者には既知の方法で、
- レーダー波を放射するよう構成されているレーダーセンサと、
- 前記レーダーセンサへ向けて配置される配列された複数層、と
を含む。
【0003】
この配列された複数層は照射されるロゴを形成する。したがって、レーダーセンサは照射されるロゴの後ろに配置されて、車両の外の環境にある物体を検出するための要件を満たす。
【0004】
先行技術の欠点は、レーダー波がレーダーセンサにより放射された際に、レーダー波が配列された複数層へと進んで、配列された複数層で反射することである。これにより2つの反射波が生成されて、そのうちの一つは配列された複数層の外面で反射され、他方は配列された複数層の内側で反射される。この2つの反射波は、レーダーセンサへと戻る、一次反射波と呼ばれる反射波である。これによりレーダー波の伝搬が妨げられる。このため前記レーダーセンサの信号対雑音比が低下し、したがって、レーダーセンサによる検出に対する外乱が引き起こされる。レーダーセンサは検出範囲を失う。その結果、物体が車両の外部環境に存在する場合であっても、前記物体の誤検出や検出漏れがもたらされうる。
【発明の概要】
【0005】
この文脈においては、本発明の目的は、前述の欠点への対処を可能とする車両アセンブリを提案することである。
【0006】
この目的のため、本発明は車両向けの車両アセンブリを提案し、前記車両アセンブリは、
- 波長範囲にわたってレーダー波を放射するよう構成されているレーダーセンサと
- 前記レーダーセンサへ向けて配置されている配列された複数層であって、光学的機能を果たすよう構成されていて各層が屈折率および厚さを有する複数層から成る第1サブセットと、前記複数層から成る第1セットに対して保護を提供するよう構成されていて各層が屈折率および厚さを有する複数層から成る第2サブセットと、を含む配列された複数層と、
を含み、
- 複数層から成る第2サブセットの全厚は、配列された複数層の全厚が複数層から成る第1サブセットと複数層から成る第2サブセットの等価屈折率の2倍にレーダー波の入射角に対応する屈折角のコサインを乗じたもので前記範囲内の波長を割ったもののm倍(mは整数である)と等しくなるような寸法とされることを特徴とする。
【0007】
非限定的な実施形態によれば、前記車両アセンブリはさらに、以下の中から選択される1つまたは複数の更なる特徴を、単独または任意の技術的に可能な組み合わせで含むことができる。
【0008】
非限定的な一実施形態によれば、前記レーダーセンサはミリ波、極超短波、またはマイクロ波のレーダーセンサである。
【0009】
非限定的な一実施形態によれば、前記レーダー波は100MHz~5GHzの範囲の周波数帯域にわたって放射される。
【0010】
非限定的な一実施形態によれば、入射角がゼロと等しい場合は、複数層から成る第2サブセットの全厚は、配列された複数層の全厚が複数層から成る第1サブセットと複数層から成る第2サブセットの等価屈折率の2倍で前記波長を割ったものと等しくなるような寸法とされる。
【0011】
非限定的な一実施形態によれば、全厚はarctan(d1/(2e4))と等しい入射角を用いて規定され、e4は前記レーダーセンサと前記配列された複数層の間の距離であり、d1は前記レーダーセンサの放射アンテナと受信アンテナの間の距離である。
【0012】
非限定的な一実施形態によれば、複数層から成る第2サブセットは出力層および保護層を含む。保護層は、抗紫外線層、および/または、傷防止層である。
【0013】
非限定的な一実施形態によれば、前記出力層は、複数層から成る第1サブセットの等価屈折率との差が0.1未満である屈折率を有する。
【0014】
非限定的な一実施形態によれば、前記出力層は、複数層から成る第1サブセットの等価屈折率との差が0.05未満である屈折率を有する。
【0015】
非限定的な一実施形態によれば、第1サブセットの各層は、隣接する層の屈折率との差が0.1未満である屈折率を有する。
【0016】
非限定的な一実施形態によれば、第1サブセットの各層は、隣接する層の屈折率との差が0.05未満である屈折率を有する。
【0017】
非限定的な一実施形態によれば、複数層から成る第1サブセットは、
- フィルム層と、
- 散乱層と、
- 反射層と、
- 不透明層と、
を含む。
【0018】
非限定的な一実施形態によれば、配列された複数層は照射されないロゴを形成する。
【0019】
非限定的な一実施形態によれば、配列された複数層は照射されるロゴを形成する。
【0020】
非限定的な一実施形態によれば、複数層から成る第1サブセットは光学層をさらに含む。
【0021】
非限定的な一実施形態によれば、複数層から成る第1サブセットは、
- 別の不透明層と、
- 別の反射層と、
をさらに含む。
【0022】
非限定的な一実施形態によれば、複数層から成る第1サブセットは保護層をさらに含む。
【0023】
また、レーダーセンサへ向けて配置される配列された複数層が提案され、前記レーダーセンサは波長範囲にわたってレーダー波を放射するよう構成され、前記配列された複数層は、光学的機能を果たすよう構成されていて各層が屈折率および厚さを有する複数層から成る第1サブセットと、複数層から成る第1セットに対して保護を提供するよう構成されていて各層が屈折率および厚さを有する複数層から成る第2サブセットと、を含み、
- 複数層から成る第2サブセットの全厚は、配列された複数層の全厚が複数層から成る第1サブセットと複数層から成る第2サブセットの等価屈折率の2倍にレーダー波の入射角に対応する屈折角のコサインを乗じたもので前記範囲内の波長を割ったもののm倍(mは整数である)と等しくなるような寸法とされることを特徴とする。
【0024】
本発明およびその様々な用途は、以下の明細書を読み、添付の図を参照することでより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の非限定的な一実施形態に係る車両アセンブリの概略図であり、前記車両アセンブリはレーダーセンサと配列された複数層とを含む。
図2】非限定的な一実施形態に係る図1の車両アセンブリのレーダーセンサにより放射され、図1の車両アセンブリの配列された複数層で部分的に反射するレーダー波の模式図である。
図3】非限定的な一実施形態に係る図1の車両アセンブリの配列された複数層の複数の層の模式図であり、前記配列された複数層は複数層から成る第1サブセットおよび複数層から成る第2サブセットを含む。
【0026】
様々な図で現れる構造または機能が同一の要素は、特に指定のない限り、同じ参照符号を使用する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る車両2の車両アセンブリ1について、図1図3を参照して説明する。車両アセンブリ1は車両システム1とも呼ばれる。非限定的な一実施形態では、車両2は自動車である。自動車は任意の種類の電動車両を意味すると理解される。この実施形態は、明細書の残りの部分を通して非限定的な例であるとみなされる。したがって、明細書の残りの部分を通して車両2は自動車2とも呼ばれる。非限定的な一実施形態では、車両アセンブリ1は自動車2のグリルに配置される。非限定的な別の実施形態では、車両アセンブリ1は自動車2の後部に位置する車体部分に組み込むことができる。
【0028】
図1に示されるように、車両配置1とも呼ばれる車両アセンブリ1は、
- レーダー波R1を放射するよう構成されているレーダーセンサ10と、
- 前記レーダーセンサ10へ向けて配置される配列された複数層11、と
を含む。
【0029】
これらの要素について以下で説明する。
【0030】
レーダーセンサ10について以下で説明する。図1に示されるように、レーダーセンサ10は配列された複数層11へ向けて配置される。非限定的な一実施形態では、レーダーセンサ10はミリ波(24GHz~300GHz)、極超短波(300MHz~81GHz)、またはマイクロ波(1GHz~300GHz)のレーダーセンサである。非限定的な別の一実施形態では、レーダーセンサ10は76GHz~81GHzの範囲内のレーダー周波数で動作する。レーダー波R1は波長λの範囲Δ1にわたって放射される。非限定的な一実施形態では、レーダー波R1は100MHz~5GHzの範囲の周波数帯域にわたって放射される。したがって、非限定的な一例では、センサが77GHzのレーダー周波数、つまり3.95mmの波長λで1GHzの周波数帯域で動作する場合、レーダーセンサ10は76.5GHzから775GHzの周波数帯域にわたって動作する。それゆえ、レーダー波R1は76.5GHzから77.5GHzの周波数範囲、つまり3.87mmから392mmの波長λの範囲Δ1にわたって放射される。したがって、非限定的な別の例では、レーダーセンサ10が78.5GHzのレーダー周波数で5GHzの周波数帯域で動作する場合、レーダーセンサ10は76GHzから81GHzの周波数帯域にわたって動作する。それゆえ、レーダー波R1は76GHzから81GHzの周波数範囲、つまり3.701mmから3.945mmの波長λの範囲Δ1にわたって放射される。
【0031】
図2に示されるように、放射されたレーダー波R1は入射角θで配列された複数層11に到達する。非限定的な一実施形態では、入射角θは0°~±30°の範囲である。したがって、レーダーセンサ10は、-30°~+30°の間で変化する視野FOVを含む。視野FOVの中心は、車両軸とも呼ばれる車両の前後軸に対して0°の角度にある。非限定的な別の実施形態では、視野FOVは-90°~+45°の間で変化する。視野FOVの中心は車両軸に対して-45°の角度にあり、配列された複数層11へのレーダー波R1の入射角0は0°に近いままである(車両アセンブリ1は車両軸に対して約45°に位置する)。
【0032】
レーダーセンサ10は、レーダー波R1を放射することで自動車2の外の環境を走査するよう構成される。したがって、図1に示されるように、レーダーセンサ10は、
- 一次レーダー波R1とも呼ばれるレーダー波R1を放射するよう構成されている少なくとも1つの放射アンテナ100と、
- 二次レーダー波R2または反射レーダー波R2とも呼ばれるレーダー波R2を受信するよう構成されている少なくとも2つの受信アンテナ101と、
を含む。
【0033】
レーダーセンサ10は、一次レーダー波R1を生成するよう構成されている少なくとも1つの放射器103と、代わりに受信される二次レーダー波R2を処理するよう構成されている少なくとも1つの受信機104とをさらに含む。非限定的な一実施形態では、一つの電子部品を放射機能と受信機能の2つに用いることができる。したがって、1つまたは複数の送受信機が存在する。前記放射器103は、後で放射アンテナ100により放射される一次レーダー波R1を生成し、このレーダー波は、自動車2の外部環境にある物体3(この場合は、図示されている非限定的な例における歩行者)に遭遇すると、前記物体3で反射する。このように反射されるレーダー波は、レーダーセンサ10へと放射されて戻る波である。これらの波は、受信アンテナ101で受信される二次レーダー波R2である。これらの波は、レーダーセンサ10へ向けて再送信されるレーダー波である。非限定的な一実施形態では、一次レーダー波R1および二次レーダー波R2は無線周波数波である。非限定的な一実施形態では、レーダーセンサ10は複数の放射器103および複数の受信機104を含む。
【0034】
アンテナ100とも呼ばれる放射アンテナ100は、放射器103により生成される一次レーダー波R1を放射するよう構成される。アンテナ101とも呼ばれる受信アンテナ101は、二次レーダー波R2を受信して、後でこの二次レーダー波R2を処理する受信機104へこの二次レーダー波R2を送信するよう構成される。自動車2の外部環境に位置する物体3の自動車2に対する角度位置の推測を可能とする位相シフトが受信アンテナ101により受信される複数の二次レーダー波R2の間に存在する。非限定的な実施形態では、アンテナ100、101はパッチアンテナまたはスロットアンテナである。
【0035】
非限定的な一実施形態では、アンテナ100、101、放射器103、および受信機104はプリント基板105上に配置される。非限定的な一実施形態では、プリント基板は、PCBA(プリント基板アセンブリ)とも呼ばれる硬いプリント基板、または「フレックスボード」とも呼ばれるフレキシブルプリント基板である。
【0036】
レーダーセンサ10は、放射器103および受信機104を制御するよう構成されている電子制御装置106をさらに含む。レーダーセンサは当業者には既知であるため、本明細書でより詳細に説明されることはない。
【0037】
配列された複数層11について以下で説明する。図1または図3に示されるように、配列された複数層11は、
- 光学的機能を果たすよう構成されている、複数層110から成る第1サブセットS1と、
- 前記複数層110から成る第1セットS1に対して保護を提供するよう構成されている、複数層112から成る第2サブセットS2と、
を含む。
【0038】
図1は概略図であるため、2つの層110だけが図1に示されていることに留意されたい。明細書の残りの部分を通して、複数層110から成る第1サブセットS1は第1サブセットS1とも呼ばれ、複数層112から成る第2サブセットS2は第2サブセットS2とも呼ばれる。非限定的な実施形態では、配列された複数層11は照射されるロゴまたは照射されないロゴを形成する。照射されるロゴの場合は、車両アセンブリ1は1つまたは複数の光源12を含む。照射されるロゴの非限定的な実施形態は、明細書の残りの部分を通して一例とみなされる。
【0039】
実際、図3に示されるように、非限定的な一実施形態では、ロゴは2つの光源12により照射される。示される非限定的な例では、光源12は複数層110から成る第1サブセットS1の両側面に配置される。全反射する光学素子12‘によって光源12により放射された光を以下で説明する層110cの中へ注入することができる。非限定的な一実施形態では、光源12は半導体光源である。非限定的な一実施形態では、半導体光源は発光ダイオードの一部を形成する。発光ダイオードは、任意の種類の発光ダイオード、非限定的な例ではLED、OLED(有機EL)、AMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)、またはさらにFOLED(フレキシブルOLED)のいずれかを意味すると理解される。非限定的な別の実施形態では、光源12はフィラメントを有する電球である。
【0040】
図1に示されるように、複数層110から成る第1サブセットS1はレーダーセンサ10へ向けて配置され、複数層112から成る第2サブセットS2は複数層110から成る第1サブセットS1に隣接して、自動車2の外側へ向けて配置される。
【0041】
図3に示されるように、第1サブセットS1の各層110は屈折率n10と厚さe10を有する。第1サブセットS1は、すべての厚さe10から作られる全厚e1を有する。第2サブセットS2の各層112は屈折率n20と厚さe20を有する。第2サブセットS2は、すべての厚さe20から作られる全厚e2を含む。したがって、配列された複数層11は、e0=e1+e2の全厚を含む。
【0042】
非限定的な一実施形態では、複数層110から成る第1サブセットS1は光学層110cを含む。光学層110cはレーダーセンサ10の方を向いている。光学層110cにより、光源12からの光線を放射することができる。光学層110cは、レーダー波R1、R2および可視光の両方が透過する層である。非限定的な実施形態では、光学層110cは、導光板またはプリズムを有するレンズとすることができる。
【0043】
図3に示されるように、非限定的な一実施形態では、複数層110から成る第1サブセットS1は、連続する複数の層110、すなわち、
- 光学層110cと、
- フィルム層110dと、
- 散乱層110eと、
- 反射層110fと、
- 不透明層110gと、
を含む。
【0044】
反射層110fを除くすべての層110は誘電体層であり、このため、レーダー波R1、R2はこれらの層を透過可能である。反射層110fはより吸収性があるが非常に薄く、このため、同様に、レーダー波R1はこの層を透過可能である。非限定的な一実施形態では、反射層110fはインジウムで作られる。非限定的な実施形態では、誘電体層はプラスチック材料、ガラス材料、またはセラミック材料で形成される。非限定的な一例では、プラスチックはポリカーボネート(PC)である。注意点として、誘電材料は非導電であり、それゆえ、導電材料とは異なりレーダー波R1が通ることができる。
【0045】
非限定的なこの実施形態では、光学層110cはフィルム層110dに対する支持物として機能する。フィルム層110dは光学層110cと反射層110fの間に配置される。非限定的な一例では、フィルム層110dはPC-IML(ポリカーボネートインモールドラベリング)で作られる。
【0046】
散乱層110eはフィルム層110dと不透明層110gの間に配置される。散乱層110eにより、前記散乱層110eの近くに配置される二次的源を作成することができる。その結果、これにより、照射されるロゴの構造が前記散乱層110eの場所にあると認識されるようにすることができる。非限定的な一実施形態では、散乱層110eは不透明層110g内に作られた開口111へ向けて配置される。開口111により、ロゴの構造を作り出すことができる。
【0047】
不透明層110gは、複数層112から成る第2セットS2へ向けて配置される。不透明層110gにより、特定の区域を隠して照射することができる。不透明層110gにより、照射されるロゴ用のパターンを作ることが可能となる。
【0048】
反射層110fにより、外側からロゴを観察した際に可視光の下で金属的な外観を与えることが可能となる。反射層110fは不透明層110g全体の下へ延ばすことができる。
【0049】
図3に示されるように、非限定的な一実施形態では、複数層110から成る第1サブセットS1は、
- 別の不透明層110aと、
- 別の反射層110bと、
をさらに含む。
【0050】
この他の不透明層110aが存在する場合は、この層はレーダーセンサ10へ向けて配置され、この他の反射層110bに隣接している。この層により、自動車2の外側から見えるであろう照射されるロゴの後での光漏れが防がれる。光源12からの光がこの層により吸収される。
【0051】
この他の反射層110bが存在する場合は、この層は不透明層110aと光学層110cの間に配置される。非限定的な一実施形態では、この他の反射層110bは白の塗装である。この層により、光源12により放射される光線を配列された複数層11の中心へ向けて反射することができる。
【0052】
図3に示されるように、非限定的な一実施形態では、複数層110から成る第1サブセットS1は、他の層110、特に反射層110fの酸化を防ぐための保護層110hをさらに含む。この保護層110hは、不透明層110gと複数層112から成る第2セットS2の間に配置される。
【0053】
非限定的な一実施形態では、複数層112から成る第2サブセットS2は、照射されるロゴの外側出力レンズを形成する出力層112aと、紫外線を阻止することで特に外側出力レンズ112aのプラスチックおよび保護層110hの黄変を防ぐ保護層112bと、を含む。非限定的な一実施形態では、保護層112bは傷防止層とすることもできる。非限定的な一実施形態では、出力層112aはPCで作られる。この層は、レーダー波R1、R2および可視光の両方が透過する層である。非限定的な一実施形態では、保護層112bは50マイクロメートルの厚さe20bを有する。非限定的な一実施形態では、保護層112bは保護用ワニスによる被覆である。
【0054】
複数層110がそれぞれ、別の隣接する層110、換言すると近接している層の屈折率n10に非常に近い屈折率n10を有している場合、第1サブセットS1内の一連の層110は全厚e1で等価屈折率neq1を有する一つの等価な層に相当すると考えることが可能であることに留意されたい。したがって、非限定的な一実施形態では、各層110は、隣接する層110の屈折率n10との差が0.1未満である屈折率n10を有する。この閾値により、第1サブセットS1の複数層110の間での内部反射波を無視することも可能となる。この非限定的な実施形態の非限定的な別の一実施形態では、この差は0.05未満である。
【0055】
同様に、複数層112がそれぞれ、隣接する層112、換言すると近接している層の屈折率n20に非常に近い屈折率n20を有している場合、第2サブセットS2内の一連の層112は全厚e2で等価屈折率neq2を有する一つの等価な層に相当すると考えることが可能であることに留意されたい。したがって、非限定的な一実施形態では、各層112は、隣接する層112の屈折率n20との差が0.1未満である屈折率n20を有する。この閾値により、第2サブセットS2の複数層112の間での内部反射波を無視することも可能となる。つまり、出力層112aは、隣接する保護層112bの屈折率n20bとの差が0.1未満である屈折率n20aを有する。この非限定的な実施形態の非限定的な別の一実施形態では、この差は0.05未満である。
【0056】
第1サブセットS1は等価屈折率neq1を有する。この等価屈折率neq1を計算するため、ステップバイステップで計算を行う。したがって、2つの第1隣接層110a、110bに対する等価屈折率neqaが最初に以下のように計算される。
【数1】
【0057】
したがって、2つの層110aおよび110bは、これら2つの層と同一の全厚e=e10a+e10bの一つの層で置き換えられる。そして等価屈折率は、この等価屈折率neqaの得られた層と次に隣接する層、すなわちこの場合は110cとの間で計算されて、同様に計算されていく。
【0058】
したがって、第1サブセットS1は、以下に示す等価屈折率neq1を有する。
【数2】
ここで、eは層110aから層110gの全厚であり、neqeは層110aから層110gの等価屈折率である。
【0059】
第2サブセットS2は、以下に示す等価屈折率neq2を有する。
【数3】
【0060】
それゆえ、第1サブセットS1と第2サブセットS2の等価屈折率neq0は以下と等しい。
【数4】
【0061】
屈折率nは層の誘電率から計算できることに留意されたい。この計算は当業者には既知であるため、本明細書では説明されない。
【0062】
図2に示されるように、レーダー波R1がレーダーセンサ10により放射されると、レーダー波R1は等価屈折率neq0および全厚e0を有する配列された複数層11まで進む。
【0063】
レーダー波R1は配列された複数層11で反射されて2つの反射波を生成し、そのうちの一つのR11は第1サブセットS1の外面で反射されたもので、他方は配列された複数層11の内側で反射されたものである。2つの反射波R11およびR12は、一次反射波と呼ばれる、レーダーセンサ10へ戻る反射波である。これらは寄生反射である。入射角θが0°とは異なる場合、対応する屈折角rも0°とは異なる。
【0064】
これら2つの反射波R11とR12の間の、位相シフトΔφとも呼ばれる位相差Δφは、以下と等しい。
【数5】
ここで、
- neqは第1サブセットS1と第2サブセットS2に対する全等価屈折率であり、
- δは2e0/cos(r)と等しい、材料内の反射波R12の進路であり、
nδ/λは材料を通る進路による位相シフトであり、
- πは第1サブセットS1および第2サブセットS2内での内部反射による位相シフトであり、
- ((2e0tan(r)sin(θ))/λ)は反射波R11の反射点Pt1と反射波R12の出現点Pt2の間の差による空気中での位相シフトである。
【0065】
sin(θ)=neq0×sin(r)なので、以下が得られる。
【数6】
【0066】
すなわち、
【数7】
これは屈折角rの値に関係なく当てはまる。
【0067】
反射波R11およびR12はレーダーセンサ10の方へ戻るので、これらの反射波はレーダーセンサ10に対する外乱を引き起こし、つまり信号対雑音比の減衰を引き起こす。これらの外乱を取り除くため、配列された複数層11の全厚e0は、相殺的干渉が作り出されるように反射波R11およびR12を逆位相とするように規定される。相殺的干渉を得るため、2つの反射波R11とR12の間の位相差Δφは2πを法とするπと等しくなければならない。したがって、Δφ=(2m+1)*πであり、mは自然数である。それゆえ、以下が得られる。
【数8】
【0068】
すなわち、
e0=mλ/(2neq0cos(r))
とする。
【0069】
方程式e0=mλ/(2neqcos(r))は角度rの値に関係なく適用されることに留意されたい。したがって、全厚e0は、複数層110から成る第1サブセットS1と複数層112から成る第2サブセットS2の等価屈折率neq0oの2倍にレーダー波R1の入射角θに対応する屈折角rのコサインを乗じたもので前記範囲Δ1内の波長λを割ったもののm倍(mは整数)と等しくなるような寸法とされる。それゆえ、全等価屈折率neq0とレーダーセンサ10の動作周波数範囲にわたって用いられる波長λとから、配列された複数層11の全厚e0を前記反射波R11およびR12がお互いに打ち消し合うように決定することができる。非限定的な一実施形態では、選択される波長λは、前記範囲Δ1の中心の波長である。
【0070】
理想的な全厚e0は入射角が0と等しい場合に規定され、mは1と等しい。θ=0の場合、r=0である。その結果、m=1に対して、配列された複数層11の理想的な全厚e0は、それゆえ、e0=λ/(2neq)である。r=0°の場合は、cos(r)=1である。
【0071】
配列された複数層11は、複数層110から成る第1サブセットS1の全厚e1および複数層112から成る第2サブセットS2の全厚e2により形成される全厚e0を有する。照射されるロゴの光学的性能を変更するのを回避するため、全厚e1の調整は回避するのが好ましく、θ=0の場合に理想的なe0=λ/(2neq0)を得るため、またはθ≠0の場合にe0=mλ/(2neq0cos(r))を得るために、全厚e2は適合される。全厚e2を調整することは照射されるロゴの光学的性能を変更しない。照射されないロゴの場合は、特にフィルム層110dの厚さe10dを変えることで全厚e1を調整することが可能であることにも留意されたい。
【0072】
したがって、複数層112から成る第2サブセットの全厚e2は、配列された複数層11の全厚e0がゼロと等しい入射角λに対して複数層110から成る第1サブセットS1と複数層112から成る第2サブセットS2の等価屈折率neq0の2倍で前記波長λを割ったものと等しくなるような寸法とされる。入射角θがゼロとは異なる場合、e0=mλ/(2neq0cos(r))が得られる。この方程式は、屈折角rの値に関係なく適用される。実際には、出力層112aの厚さe20aは調整されることに留意されたい。実際、保護層112bはすでに非常に薄いので、その厚さe20bは調整することができない。
【0073】
非限定的な一実施形態では、配列された複数層11は、前記理想的な全厚e0の0.8倍~1.2倍の範囲の全厚e0を有する。この値の範囲は、レーダーセンサ10の取り得る放射角度を考慮している。入射角θの取り得る値はレーダーセンサ10の技術仕様において規定され、これは、入射角θの取り得る値はレーダーセンサ10の視野内にあることを意味する。非限定的な一例では、入射角θは0°~±30°の範囲である。この0.8~1.2という値の範囲により、全厚e0の製造上の許容範囲を考慮することが可能となる。
【0074】
入射角θの値はレーダーセンサ10の取り得る放射角度の中に含まれることに留意されたい。入射角θの取り得る値はレーダーセンサ10の技術仕様において規定される。反射されたレーダー波R11およびR12がレーダーセンサ10の受信アンテナ101に対して最大の外乱を引き起こす入射角0の値が存在することに留意されたい。この入射角θは、入射の臨界角θと呼ばれる。非限定的な一実施形態では、この値はθ=arctan(d1/(2e4))と等しく、図2に示されるように、d1は放射アンテナ100と受信アンテナ101の間の距離であり、e4はレーダーセンサ10と配列された複数層11の間の距離である。したがって、全厚e0の値はarctan(d1/(2e4))と等しい入射角θに対して決定される。非限定的な一例では、d1を計算するために複数の受信アンテナ101の中点が選ばれることに留意されたい。
【0075】
したがって、全等価屈折率neq0の値およびレーダーセンサ10の動作周波数範囲(用いられている非限定的な例では76GHz~81GHz)にわたって用いられる波長λの値に応じて、全厚e0の値、より詳細には、一次反射波R11およびR12がお互いに打ち消し合うように第2サブセットs2の全厚e2の値を決定することができる。その結果、受信アンテナ101は受けるノイズが少なくなる。より良い信号対雑音比が実現される。
【0076】
出力層112aと複数層110から成る第1サブセットS1の間での内部反射波を回避するために、非限定的な一実施形態では、出力層112aは、複数層110から成る第1サブセットS1の等価屈折率neq1との差が0.1未満である屈折率n20aを有することに留意されたい。非限定的な別の一実施形態では、この差は0.05未満である。
【0077】
もちろん、本発明の説明は上述された実施形態、および上述された分野に限定されない。したがって、非限定的な別の実施形態では、レーダーセンサ10は2つ以上の放射アンテナ100と3つ以上の受信アンテナ101とを含む。それゆえ、非限定的な別の実施形態では、光源12は層110cの空洞に組み込まれている。したがって、照射されないロゴの非限定的な実施形態では、第1サブセットS1は、110a~110cの層と、任意選択で110dとを含まない。
【0078】
したがって、記載された本発明は、特に以下の利点を有する:
- レーダーセンサ10へ向けて反射する一次反射波R11およびR12を除去することができる。それゆえ、前記レーダーセンサ10の信号対雑音比はもはや低くない。レーダー波R1の放射が改善される。
- 照射されるロゴの光学的性能が変わらないように、第1サブセットS1の全厚e1を変更する必要なしに第2サブセットS2の全厚e2(特に出力層112aの厚さe20a)だけを調整することができる。
図1
図2
図3