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特許7462121電荷量測定方法、及び電荷量測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】電荷量測定方法、及び電荷量測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/24 20060101AFI20240328BHJP
【FI】
G01R29/24 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023549314
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035456
(87)【国際公開番号】W WO2023047600
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-01-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年3月5日にZoomウェビナー(https://zoom.us/w/99791192277?tk=ROGTLCLdIUeYV9XmAG0YqrzAJo2lhC8nhPOc0IZr91g.DQIAAAAXPATA1RZPOFF1TU5SNFJ3aWw1YXM0bVZxdlhBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA&pwd=dUVGSVU5SjJhWWNldHBhczFBS2lydz09&uuid=WN_xVAn17iZQ52RmcMjNYt5rQ)で開催された第16回有機光エレクトロニクス産業化研究会において発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592105859
【氏名又は名称】株式会社東陽テクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝
(72)【発明者】
【氏名】大藪 範昭
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-243638(JP,A)
【文献】特開2019-45185(JP,A)
【文献】特開平11-95205(JP,A)
【文献】特開平2-117659(JP,A)
【文献】特開2009-138023(JP,A)
【文献】国際公開第2008/090786(WO,A1)
【文献】特開2020-8586(JP,A)
【文献】INOUE, Masaru et al.,Correlation between ion impurity in thermally activated delayed fluorescence organic light-emitting diode materials and device lifetime,J Soc Inf Display,米国,2020年11月30日,Volume 28. Issue 11,,905 - 910
【文献】苗村 省平,液晶中の可動性微量イオンの定量評価,応用物理,日本,1996年10月10日,第65巻 第10号,1065-1066
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 29/00-29/26、
G01N 27/60-27/70、
27/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧を印加しても液晶分子が回転しない無極性液晶に測定対象の材料を混ぜた試料が封入された液晶セルにおいて、前記試料を挟むように位置する一対の電極間に周期的に変化する電圧を印加し、
前記電圧の印加により前記一対の電極及び前記試料を流れる電流に基づいて、前記測定対象の材料についての電荷量を測定する、
電荷量測定方法。
【請求項2】
前記無極性液晶は、前記無極性液晶についての電荷量の時間経過に伴うばらつきが0.1pC以下となる純度を有する、
請求項1に記載の電荷量測定方法。
【請求項3】
誘電率異方性が正である液晶に測定対象の材料を混ぜた試料が垂直配向膜で挟む形で封入された液晶セルにおいて、前記試料及び前記垂直配向膜を挟むように位置する一対の電極間に周期的に変化する電圧を印加し、
前記電圧の印加により前記一対の電極及び前記試料を流れる電流に基づいて、前記測定対象の材料についての電荷量を測定する、
電荷量測定方法。
【請求項4】
前記一対の電極間に電圧を印加するステップは、常温よりも高い温度下で行われる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電荷量測定方法。
【請求項5】
前記測定対象の材料についての電荷量を測定するステップは、前記測定対象の材料に含まれる不純物イオンのイオン量を測定するステップである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電荷量測定方法。
【請求項6】
電圧を印加しても液晶分子が回転しない無極性液晶に測定対象の材料を混ぜた試料が封入された液晶セルにおいて、前記試料を挟むように位置する一対の電極間に周期的に変化する電圧を印加する電圧印加部と、
前記電圧の印加により前記一対の電極及び前記試料を流れる電流に基づいて、前記測定対象の材料についての電荷量を測定する測定部と、を備える、
電荷量測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定対象の材料についての電荷量を測定する電荷量測定方法、及び電荷量測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、緑色のTADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence:熱活性化遅延蛍光)ドーパント粉末を含むキシレン溶液をテストセルに封入し、このテストセルに三角波電圧を印加して電流を測定することにより、TADFドーパント粉末に含まれる不純物イオンの量を測定する方法が開示されている。
【0003】
非特許文献2には、オリゴヌクレオチドDNA(deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)溶液と液晶溶液とを混合し、混合した溶液を封入した液晶セルに三角波電圧を印加して電流を測定することにより、オリゴヌクレオチドDNAの物性を分析する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Inoue M, Oyabu N, Kaneko Y, Kim J-Y, Yang J-H. Correlation between ion impurity in thermally activated delayed fluorescence organic light-emitting diode materials and device lifetime. J. Soc Inf Disp. 2020; 28(11); 905-910.
【文献】Kazuki Iwabata et al 2013 Jpn. J. Appl. Phys. 52 097301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1,2に開示の技術では、いずれも測定対象の材料についての電荷量の測定精度が不十分であるという課題がある。
【0006】
そこで、本開示は、測定対象の材料についての電荷量の測定精度を向上することのできる電荷量測定方法、及び電荷量測定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示の一態様に係る電荷量測定方法は、電圧を印加しても液晶分子が回転しない無極性液晶に測定対象の材料を混ぜた試料が封入された液晶セルにおいて、前記試料を挟むように位置する一対の電極間に周期的に変化する電圧を印加し、前記電圧の印加により前記一対の電極及び前記試料を流れる電流に基づいて、前記測定対象の材料についての電荷量を測定する。
【0008】
また、上記の目的を達成するために、本開示の一態様に係る電荷量測定方法は、誘電率異方性が正である液晶に測定対象の材料を混ぜた試料が垂直配向膜で挟む形で封入された液晶セルにおいて、前記試料及び前記垂直配向膜を挟むように位置する一対の電極間に周期的に変化する電圧を印加し、前記電圧の印加により前記一対の電極及び前記試料を流れる電流に基づいて、前記測定対象の材料についての電荷量を測定する。
【0009】
また、上記の目的を達成するために、本開示の一態様に係る電荷量測定システムは、電圧印加部と、測定部と、を備える。前記電圧印加部は、電圧を印加しても液晶分子が回転しない無極性液晶に測定対象の材料を混ぜた試料が封入された液晶セルにおいて、前記試料を挟むように位置する一対の電極間に周期的に変化する電圧を印加する。前記測定部は、前記電圧の印加により前記一対の電極及び前記試料を流れる電流に基づいて、前記測定対象の材料についての電荷量を測定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る電荷量測定方法、及び電荷量測定システムによれば、測定対象の材料についての電荷量の測定精度を向上することができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る電荷量測定システムの構成を示す概要図である。
図2図2は、実施の形態に係る液晶セルを作成する過程を示す概要図である。
図3図3は、実施の形態に係る液晶セルを示す概要図である。
図4図4は、有極性液晶を封入した液晶セルに三角波電圧を印加した場合に流れる変位電流を測定して得られる電圧(時間)対電流プロットのグラフの一例を示す図である。
図5図5は、無極性液晶を封入した液晶セルに三角波電圧を印加した場合に流れる変位電流を測定して得られる電圧(時間)対電流プロットのグラフの一例を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係る電荷量測定方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、実施の形態に係る電荷量測定方法による測定結果の一例を示す図である。
図8図8は、図7に示す測定結果の一例を一部拡大した図である。
図9図9は、キシレンに含まれる不純物イオンのイオン量の測定結果の一例を示す図である。
図10図10は、無極性液晶に含まれる不純物イオンのイオン量の測定結果の一例を示す図である。
図11図11は、実施の形態の第1変形例に係る液晶セルを示す概要図である。
図12図12は、実施の形態の第2変形例に係る液晶セルを示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0013】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0014】
図1は、実施の形態に係る電荷量測定システム100の構成を示す概要図である。図2は、実施の形態に係る液晶セル3を作成する過程を示す概要図である。実施の形態に係る電荷量測定方法及び電荷量測定システム100は、測定対象の材料5についての電荷量を測定する。具体的には、実施の形態に係る電荷量測定方法及び電荷量測定システム100では、無極性液晶6に測定対象の材料5を混ぜた試料4が封入された液晶セル3について、液晶セル3が有する一対の電極31に電圧を印加することにより、測定対象の材料5についての電荷量を測定する。
【0015】
電荷量測定システム100は、図1に示すように、電圧印加部1と、測定部2と、を備えている。
【0016】
電圧印加部1は、液晶セル3の有する一対の電極31(後述する)間に接続されており、一対の電極31間に周期的に変化する電圧を印加する。実施の形態では、電圧印加部1は、ファンクションジェネレータであって、周期的に変化する電圧として三角波電圧を生成し、生成した三角波電圧を一対の電極31間に印加する。三角波電圧は、一例として周波数が0.01Hz、振幅が±10Vである。
【0017】
なお、三角波電圧の周波数及び振幅はいずれも一例であり、これに限定されない。ただし、三角波電圧の周波数は、比較的低い周波数であるのが好ましい。というのも、三角波電圧の周波数が高くなると、測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51(図11参照)が絶縁膜32(後述する)に到達する前に電圧の極性が反転するため、測定対象である液晶中を移動する不純物イオン51に起因する電流が測定できなくなるからである。
【0018】
測定部2は、電圧印加部1により一対の電極31及び試料4に流れる電流に基づいて、測定対象の材料5を測定する。実施の形態では、測定部2は、I-Vコンバータ21と、電圧計22と、を備えている。I-Vコンバータ21は、液晶セル3の一対の電極31と直列に接続されており、一対の電極31及び試料4に流れる電流を電圧に変換する。電圧計22は、I-Vコンバータ21により変換された電圧を計測する。つまり、測定部2は、I-Vコンバータ21により変換された電圧を電圧計22で計測することにより、一対の電極31及び試料4に流れる電流を計測する。
【0019】
また、詳しくは後述するが、測定部2は、一対の電極31及び試料4に流れる電流(変位電流)を測定することにより、測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51のイオン量を測定する。
【0020】
図3は、実施の形態に係る液晶セル3を示す概要図である。液晶セル3は、図3に示すように、一対のガラス基板30と、一対の電極31と、一対の絶縁膜32と、シール剤33と、で構成されている。実施の形態では、液晶セル3は、平面視で数cm角の正方形状である。なお、図3は、液晶セル3に試料4が封入された状態を示している。
【0021】
一対の電極31は、いずれもITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)電極であって、透明電極である。なお、一対の電極31を構成する材料は特に限定されない。例えば、一対の電極31は、いずれもAl(アルミニウム)電極であってもよい。一対の電極31のうちの一方(ここでは、上方)の電極31は、一対のガラス基板30のうちの一方(ここでは、上方)のガラス基板30の一面(ここでは、下面)に形成されている。また、一対の電極31のうちの他方(ここでは、下方)の電極31は、一対のガラス基板30のうちの他方(ここでは、下方)のガラス基板30の一面(ここでは、上面)に形成されている。
【0022】
一対の絶縁膜32は、いずれもSiN(シリコンナイトライド)絶縁膜である。なお、一対の絶縁膜32を構成する材料は特に限定されない。例えば、一対の絶縁膜32は、いずれもポリイミド絶縁膜であってもよい。一対の絶縁膜32のうちの一方(ここでは、上方)の絶縁膜32は、一対の電極31のうちの一方(ここでは、上方)の電極31の一面(ここでは、下面)に形成されている。また、一対の絶縁膜32のうちの他方(ここでは、下方)の絶縁膜32は、一対の電極31のうちの他方(ここでは、下方)の電極31の一面(ここでは、上面)に形成されている。一対の絶縁膜32は、試料4が封入される空間Sp1を挟んで対向して配置されている。したがって、一対のガラス基板30及び一対の電極31も、同様に上記空間Sp1を挟んで対向して配置されている。
【0023】
シール剤33は、上記空間Sp1を覆うように、一対のガラス基板30、一対の電極31、及び一対の絶縁膜32の間に塗布される。つまり、一対のガラス基板30、一対の電極31、一対の絶縁膜32、及びシール剤33により上記空間Sp1が形成される。なお、一対の電極31の各々の一部は外部に露出しており、露出した部位に電圧印加部1及び測定部2が電線を介して電気的に接続可能となっている。
【0024】
測定対象の材料5は、例えば有機太陽電池の材料として用いられるP3HT(Poly(3-hexylthiophene))、又は有機EL(electroluminescence)のHTL(Hole Transport Layer:正孔輸送層)に用いられる材料等の有機材料である。実施の形態では、測定対象の材料5は、有機ELのHTLに用いられる材料である。なお、測定対象の材料5は、例えばDNA等の有機材料であってもよいし、無機材料であってもよい。実施の形態では、無極性液晶6に混ぜる測定対象の材料5は、顆粒、粉末、又は液体である。なお、ここでいう液体は、測定対象の材料5が溶解した溶液を含む他、測定対象の材料5自体である溶媒を含み得る。
【0025】
無極性液晶6は、電圧を印加しても液晶分子が回転しない液晶である。無極性液晶6は、言い換えればニュートラル液晶ともいう。さらに言えば、無極性液晶6は、誘電率異方性Δεが零又は殆ど零の液晶である。誘電率異方性Δεは、液晶分子の軸方向の誘電率と、液晶分子の軸方向と直交する方向の誘電率との差分により表される。実施の形態では、無極性液晶6は、フッ素系のネマティック液晶である。より具体的には、実施の形態では、無極性液晶6は、例えばDIC株式会社製の型名:NA-1345である。もちろん、無極性液晶6は、上記製品の液晶に特に限定されない。
【0026】
ここで、無極性液晶6と有極性液晶との特性の違いについて、図4及び図5を用いて説明する。ここでいう有極性液晶は、電圧を印加することにより液晶分子が回転する液晶をいう。言い換えれば、有極性液晶は、誘電率異方性Δεが正である液晶、又は誘電率異方性Δεが負である液晶である。
【0027】
図4は、有極性液晶を封入した液晶セルに三角波電圧を印加した場合に流れる変位電流を測定して得られる電圧V(時間)対電流Iプロットのグラフ(V-I曲線)の一例を示す図である。図5は、無極性液晶6を封入した液晶セルに三角波電圧を印加した場合に流れる変位電流を測定して得られる電圧V(時間)対電流Iプロットのグラフ(V-I曲線)の一例を示す図である。ここでは、液晶セルに封入されるのは液晶のみであり、測定対象の材料5は液晶に混ぜられていない。
【0028】
図4において、V軸に対する傾きA1の逆数は、有極性液晶の抵抗値を表している。また、図4において、平行四辺形状のグラフのI軸方向の縦幅A2は、有極性液晶のキャパシタンスを表している。また、図4において、平行四辺形状のグラフのI軸方向のピークA3は、有極性液晶のスイッチング電圧(言い換えれば、スイッチング電流)を表している。また、図4において、平行四辺形状のグラフから突出する凸部A4の面積は、有極性液晶に含まれる不純物イオン51の密度を表している。そして、図4において、平行四辺形状のグラフのV軸方向の横幅A5は、有極性液晶に含まれる不純物イオン51の移動度を表している。ピークA3、凸部A4、及び横幅A5は、第1象限のみならず第3象限にも現れている。
【0029】
図4に示すように、有極性液晶を溶媒として液晶セルに用いた場合、有極性液晶のスイッチング電流(ピークA3)が変位電流の測定結果に現れ、かつ、有極性液晶に含まれる不純物イオン51の物性(凸部A4及び横幅A5)が変位電流の測定結果に現れる。このため、有極性液晶に測定対象の材料5を混ぜた試料を液晶セルに封入した場合、変位電流の測定結果には、測定対象の材料5についての物性が現れるだけでなく、有極性液晶の物性が現れることになる。
【0030】
図5において、V軸に対する傾きの逆数は、無極性液晶6の抵抗値Rを表している。また、図5において、平行四辺形状のグラフの上側の辺は、液晶セルに印加される電圧の上昇時において液晶セルを流れる電流Ipを表しており、平行四辺形状のグラフの下側の辺は、液晶セルに印加される電圧の下降時において液晶セルを流れる電流Inを表している。そして、図5において、平行四辺形状のグラフのI軸方向の縦幅は、上記の電流Ipと電流Inとの差分ΔIであって、無極性液晶6のキャパシタンスを表している。
【0031】
図5に示すように、無極性液晶6を溶媒として液晶セルに用いた場合、液晶分子が電圧の印加によって回転しないことから、有極性液晶のようなスイッチング電流が変位電流の測定結果に現れない。また、この場合、無極性液晶6は、有極性液晶と比較して純度が高いことから、不純物イオン51が殆ど含まれておらず、不純物イオン51の物性が変位電流の測定結果に現れないか、現れたとしても非常に小さくなる。このため、無極性液晶6に測定対象の材料5を混ぜた試料を液晶セルに封入した場合、変位電流の測定結果には、測定対象の材料5についての物性のみが現れることになる。
【0032】
以下、液晶セル3の作成方法について図2及び図3を用いて説明する。まず、測定対象の材料5及び無極性液晶6を用意し、無極性液晶6に測定対象の材料5を混ぜることで、試料4を作成する。次に、空間Sp1が空の液晶セル3を用意し、作成した試料4を液晶セル3内に封入する。ここで、液晶セル3においてシール剤33が塗布された領域には、2つの注入口34が形成されている。作成した試料4は、これら2つの注入口34の少なくとも一方から液晶セル3内へと毛細管現象を利用して封入される。以上の工程を経ることで、試料4が封入された液晶セル3を作成することが可能である。
【0033】
<方法>
以下、実施の形態に係る電荷量測定システム100の動作、つまり電荷量測定方法について図6を用いて説明する。図6は、実施の形態に係る電荷量測定方法の一例を示すフローチャートである。図6においては、上述の液晶セル3を作成する工程も含まれている。
【0034】
まず、測定対象の材料5を無極性液晶6に混ぜることで、試料4を作成する(ステップS1)。次に、作成した試料4を空間Sp1が空の液晶セル3に封入することにより、試料4が封入された液晶セル3を作成する(ステップS2)。
【0035】
次に、液晶セル3を加熱する(ステップS3)。ここでは、液晶セル3の周囲温度が摂氏60度程度になるまで、液晶セル3を加熱する。そして、液晶セル3を加熱しながら、又は液晶セル3が高温の環境に置かれた状態で、電圧印加部1により液晶セル3の一対の電極31間に電圧(ここでは、三角波電圧)を印加する(ステップS4)。つまり、実施の形態では、一対の電極31間に電圧を印加するステップS4は、常温よりも高い温度(ここでは、摂氏60度程度)下で行われる。
【0036】
このように液晶セル3を加熱することにより、無極性液晶6の粘度を下げることができ、無極性液晶6中における測定対象の材料5の電荷、又は測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51の移動度を向上することができる。具体的には、イオンの移動度は、以下の式により表される。以下の式において、「μ」はイオンの移動度、「Z」はイオンの価数、「e」は電気素量、「η」は液晶の粘度、「γ」はイオンのストークス半径を表している。
【0037】
【数1】
【0038】
上記の式に示すように、液晶の粘度「η」が小さくなればなる程、イオンの移動度、つまり不純物イオン51の移動度が大きくなる。これにより、測定対象の材料5についての電荷量を測定するステップS5において、液晶セル3を加熱しない場合と比較して、測定対象の材料5の電荷、又は測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51の電荷量の測定精度を更に向上することができる。
【0039】
次に、測定部2により液晶セル3の一対の電極31及び試料4に流れる電流(変位電流)を測定し、測定した電流に基づいて測定対象の材料5についての電荷量を測定する(ステップS5)。
【0040】
ここで、測定対象の材料5についての電荷量の測定の具体例について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、実施の形態に係る電荷量測定方法による測定結果の一例を示す図である。図8は、図7に示す測定結果の一例を一部拡大した図である。図7及び図8に示す測定結果は、縦軸が一対の電極31及び試料4に流れる電流(単位は「pA」)を、横軸が一対の電極31間に印加される電圧(単位は「V」)を表している。
【0041】
図7及び図8において、実線は、測定対象の材料5を無極性液晶6に混ぜて作成された試料4を封入した液晶セル3についての測定結果を表している。また、図7及び図8において、点線は、無極性液晶6のみを封入した液晶セル3についての測定結果を表している。また、図7及び図8において、破線は、昇華精製により不純物を取り除いた測定対象の材料5を無極性液晶6に混ぜて作成された試料を封入した液晶セル3についての測定結果を表している。いずれの試料においても、測定対象の材料5の濃度は、1wt%である。
【0042】
図7及び図8の点線に示すように、無極性液晶6のみを封入した液晶セル3についての測定結果においては、平行四辺形状のグラフから突出するピークが生じていない。一方、図7及び図8の実線に示すように、測定対象の材料5に不純物が含まれている(不純物イオン51が含まれている)場合には、平行四辺形状のグラフから突出するピークが生じている。つまり、このピークを含む領域(図7におけるドット領域)の面積を算出することにより、測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51の電荷量、言い換えれば不純物イオン51のイオン量を測定することが可能である。
【0043】
さらに、図8の破線に示すように、測定対象の材料5について昇華精製を行った場合の測定結果においても、平行四辺形状のグラフから突出するピークが生じていることがわかる。したがって、このピークを含む領域(図8におけるドット領域)の面積を算出することにより、昇華精製により測定対象の材料5から不純物を取り除いた場合でも、測定対象の材料5に僅かに残留する不純物イオン51の電荷量、言い換えれば不純物イオン51のイオン量を測定することが可能である。
【0044】
<利点>
以下、実施の形態に係る電荷量測定方法及び電荷量測定システム100の利点について説明する。まず、実施の形態に係る電荷量測定方法及び電荷量測定システム100のように、測定対象の材料5についての電荷量を測定するに至った技術的背景について説明する。
【0045】
例えば、有機材料又は無機材料に不純物イオン51が含まれる場合、この不純物イオン51が有機材料又は無機材料を用いたデバイス(例えば、太陽電池等)の特性に悪影響を及ぼし得る。このため、デバイスを作成するに当たっては、デバイスの作成に用いられる有機材料又は無機材料に不純物イオン51が含まれるか否かを測定することが重要となる。
【0046】
ここで、測定対象の材料5を分析する手法としては、例えばHPLC(High Performance Liquid Chromatography:高効率液体クロマトグラフィー)等の科学的分析手法が知られている。しかしながら、HPLCでは、測定対象の材料5に不純物イオン51が含まれるか否かを検出することが難しい。
【0047】
これに対して、測定対象の材料5についての電荷量を測定する電気的分析手法により、測定対象の材料5に不純物イオン51が含まれるか否かを検出する手法が知られており、例えば非特許文献1及び非特許文献2に開示されている。
【0048】
非特許文献1には、背景技術でも述べたように、緑色のTADFドーパント粉末を含むキシレン溶液をテストセルに封入し、このテストセルに三角波電圧を印加して電流を測定することにより、TADFドーパント粉末に含まれる不純物イオンの量を測定する方法が開示されている。しかしながら、非特許文献1に開示の技術では、キシレン溶液自体に含まれる不純物イオンが測定に影響を及ぼし得る、という課題がある。以下、具体的に説明する。
【0049】
図9は、キシレンに含まれる不純物イオンのイオン量の測定結果の一例を示す図である。図9において、縦軸は不純物イオンのイオン量、横軸は時間を表している。ここでは、不純物イオンのイオン量は、不純物イオンの電荷量の合計で表されている。図9に示すように、キシレンに含まれる不純物イオンのイオン量は、時間経過に伴ってばらつきがあり、かつ、イオン量も数pC~数十pCと比較的大きい。
【0050】
このため、非特許文献1に開示の技術を用いて測定対象の材料5についての電荷量を測定しようとしても、測定結果にはキシレンに含まれる不純物イオンのイオン量が含まれるため、測定対象の材料5についての電荷量を精度良く測定することは難しい。また、キシレンに含まれる不純物イオンのイオン量は時間経過に伴ってばらつきがあるため、事前にキシレンのみの不純物イオンのイオン量を測定し、測定対象の材料5についての電荷量の測定結果との差分を算出するという手法を適用することも難しい。
【0051】
これに対して、本願の発明者は、無極性液晶6に測定対象の材料5を混ぜた場合、無極性液晶6が高純度の液晶であり、かつ、測定結果にスイッチング電流が含まれないことから、測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51の電荷量のみを測定可能である、つまり測定対象の材料5に不純物イオン51が含まれるか否かを精度良く検出可能であることを見い出した。
【0052】
図10は、無極性液晶6に含まれる不純物イオンのイオン量の測定結果の一例を示す図である。この測定結果は、常温よりも高い温度(ここでは、摂氏60度程)下で行われた測定の結果である。図10において、縦軸は不純物イオンのイオン量、横軸は時間を表している。ここでは、不純物イオンのイオン量は、不純物イオンの電荷量の合計で表されている。図10に示すように、無極性液晶には、不純物イオンが零に近いレベルで存在しておらず、また、ごく微量の不純物イオンが存在していたとしても、そのイオン量が時間経過に伴って殆ど変動しない。すなわち、無極性液晶6は、無極性液晶6についての電荷量(ここでは、無極性液晶6に含まれる不純物イオンのイオン量)の時間経過に伴うばらつきが0.1pC以下となる純度を有している。
【0053】
したがって、実施の形態に係る電荷量測定方法及び電荷量測定システム100では、測定対象の材料5を混ぜる溶媒としてキシレンを用いる場合と比較して、測定対象の材料5についての電荷量(ここでは、測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51のイオン量)を精度良く測定することが可能である。具体的には、実施の形態に係る電荷量測定方法及び電荷量測定システム100では、測定対象の材料5に含まれるごく微量(例えば、数pC)の不純物イオン51を測定することが可能である。
【0054】
非特許文献2には、背景技術でも述べたように、オリゴヌクレオチドDNA溶液と液晶溶液とを混合し、混合した溶液を封入した液晶セルに三角波電圧を印加して電流を測定することにより、オリゴヌクレオチドDNAの物性を分析する方法が開示されている。より具体的には、非特許文献2では、誘電率異方性Δεが負である液晶にオリゴヌクレオチドDNAを混ぜた試料を作成し、この試料を水平配向膜を有する液晶セルに封入している。つまり、非特許文献2では、電圧の印加に伴う液晶分子の回転を水平配向膜で規制することにより、スイッチング電流を抑制している。
【0055】
非特許文献2に開示の技術では、オリゴヌクレオチドDNAの電荷量を測定することが可能であるが、液晶の純度が比較的低いことに起因して、その電荷量の測定値が数百pCオーダーであるため、数pCオーダーの測定精度を実現することが難しい。したがって、非特許文献2に開示の技術では、測定対象の材料5に不純物イオン51が含まれるか否かを精度良く検出することは難しい。これに対して、実施の形態に係る電荷量測定方法及び電荷量測定システム100では、既に述べたように、測定対象の材料5に不純物イオン51が含まれるか否かを精度良く検出することが可能である。
【0056】
また、非特許文献2では、測定の準備段階においてオリゴヌクレオチドDNAを増幅させなければ、オリゴヌクレオチドDNAの電荷量を測定することが難しいという課題もある。一方、本開示の電荷量測定方法及び電荷量測定システム100では、測定対象の材料5がDNAである場合でも、測定の準備段階においてDNAを増幅せずともDNAの電荷量を測定することが可能である。
【0057】
上述のように、実施の形態に係る電荷量測定方法及び電荷量測定システム100は、非特許文献1及び非特許文献2に開示の技術と比較して、測定対象の材料5についての電荷量の測定精度を向上することができる、という利点がある。
【0058】
(変形例)
以上、本開示に係る電荷量測定方法及び電荷量測定システムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施した形態、又は実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0059】
上記実施の形態では、液晶セル3の一対の電極31間に電圧を印加するステップS4は、常温よりも高い温度下で行われているが、これに限られない。例えば、上記ステップS4は、常温下で行われてもよい。
【0060】
上記実施の形態では、液晶セル3には、無極性液晶6に測定対象の材料5を混ぜた試料4が封入されているが、これに限られない。以下、液晶セルの第1変形例及び第2変形例について、それぞれ図11及び図12を用いて説明する。
【0061】
図11は、実施の形態の第1変形例に係る液晶セル3Aを示す概要図である。図11に示すように、液晶セル3Aには、誘電率異方性Δεが正である液晶6Aに測定対象の材料5を混ぜた試料4Aが封入されている。また、液晶セル3Aにおいては、一対の絶縁膜32の代わりに、一対の垂直配向膜35が形成されている。このため、液晶セル3Aにおいては、電圧の印加に伴う液晶6A中の液晶分子の回転を一対の垂直配向膜35で規制することにより、スイッチング電流を抑制している。
【0062】
第1変形例では、液晶6Aの純度を無極性液晶6の純度に近づけることができれば、無極性液晶6を用いた場合と同様に、測定対象の材料5についての電荷量の測定精度を向上することが可能である。
【0063】
図12は、実施の形態の第2変形例に係る液晶セル3Bを示す概要図である。図12に示すように、液晶セル3Bには、誘電率異方性Δεが負である液晶6Bに測定対象の材料5を混ぜた試料4Bが封入されている。また、液晶セル3Bにおいては、一対の絶縁膜32の代わりに、一対の水平配向膜36が形成されている。このため、液晶セル3Bにおいては、電圧の印加に伴う液晶6B中の液晶分子の回転を一対の水平配向膜36で規制することにより、スイッチング電流を抑制している。
【0064】
第2変形例では、第1変形例と同様に、液晶6Bの純度を無極性液晶6の純度に近づけることができれば、無極性液晶6を用いた場合と同様に、測定対象の材料5についての電荷量の測定精度を向上することが可能である。
【0065】
上記実施の形態では、電荷量測定方法及び電荷量測定システム100は、測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51のイオン量を測定しているが、これに限られない。既に述べたように、例えば測定対象の材料5がDNAである場合、電荷量測定方法及び電荷量測定システム100は、DNAの電荷量を測定することになる。つまり、電荷量測定方法及び電荷量測定システム100は、測定対象の材料5自体の電荷量を測定するために用いてもよいし、測定対象の材料5に含まれる不純物の電荷量を測定するために用いてもよい。
【0066】
(まとめ)
以上述べたように、本開示に係る電荷量測定方法は、電圧を印加しても液晶分子が回転しない無極性液晶6に測定対象の材料5を混ぜた試料4が封入された液晶セル3において、試料4を挟むように位置する一対の電極31間に周期的に変化する電圧を印加し(ステップS4)、電圧の印加により一対の電極31及び試料4を流れる電流に基づいて、測定対象の材料5についての電荷量を測定する(ステップS5)。
【0067】
これによれば、無極性液晶6由来の変位電流が殆ど存在しないことから、測定対象の材料5のみに由来する電荷量を測定することができる。つまり、これによれば、無極性液晶6以外の溶媒を用いる場合と比較して、測定対象の材料5についての電荷量の測定精度を向上することができる、という利点がある。
【0068】
また、本開示に係る電荷量測定方法では、無極性液晶6は、無極性液晶6についての電荷量の時間経過に伴うばらつきが0.1pC以下となる純度を有する。
【0069】
これによれば、測定対象の材料5のみに由来する電荷量をより精度良く測定することができるので、測定対象の材料5についての電荷量の測定精度を更に向上することができる、という利点がある。
【0070】
また、本開示に係る電荷量測定方法は、誘電率異方性が正である液晶6Aに測定対象の材料5を混ぜた試料4Aが垂直配向膜35で挟む形で封入された液晶セル3Aにおいて、試料4A及び垂直配向膜35を挟むように位置する一対の電極31間に周期的に変化する電圧を印加し(ステップS4)、電圧の印加により一対の電極31及び試料4Aを流れる電流に基づいて、測定対象の材料5についての電荷量を測定する(ステップS5)。
【0071】
これによれば、液晶6A由来の変位電流が殆ど存在しないことから、測定対象の材料5のみに由来する電荷量を測定することができる。つまり、これによれば、無極性液晶6及び液晶6A以外の溶媒を用いる場合と比較して、測定対象の材料5についての電荷量の測定精度を向上することができる、という利点がある。
【0072】
また、本開示に係る電荷量測定方法では、一対の電極31間に電圧を印加するステップS4は、常温よりも高い温度下で行われる(ステップS3)。
【0073】
これによれば、試料4の溶媒である液晶の粘度を下げることができるので、液晶中に存在する測定対象の材料5の電荷、又は測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51の移動度を向上することができ、結果として測定対象の材料5についての電荷量の測定精度を更に向上することができる、という利点がある。
【0074】
また、本開示に係る電荷量測定方法では、測定対象の材料5についての電荷量を測定するステップS5は、測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51のイオン量を測定するステップである。
【0075】
これによれば、液晶6A由来の変位電流が殆ど存在しないことから、測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51のみに由来する電荷量を測定することができる。つまり、これによれば、無極性液晶6及び液晶6A以外の溶媒を用いる場合と比較して、測定対象の材料5に含まれる不純物イオン51のイオン量の測定精度を向上することができる、という利点がある。
【0076】
また、本開示に係る電荷量測定システム100は、電圧印加部1と、測定部2と、を備える。電圧印加部1は、電圧を印加しても液晶分子が回転しない無極性液晶6に測定対象の材料5を混ぜた試料4が封入された液晶セル3において、試料4を挟むように位置する一対の電極31間に周期的に変化する電圧を印加する。測定部2は、電圧の印加により一対の電極31及び試料4を流れる電流に基づいて、測定対象の材料5についての電荷量を測定する。
【0077】
これによれば、無極性液晶6由来の変位電流が殆ど存在しないことから、測定対象の材料5のみに由来する電荷量を測定することができる。つまり、これによれば、無極性液晶6以外の溶媒を用いる場合と比較して、測定対象の材料5についての電荷量の測定精度を向上することができる、という利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、例えば測定対象の材料についての電荷量を測定する方法及びシステムに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 電圧印加部
2 測定部
21 I-Vコンバータ
22 電圧計
3、3A、3B 液晶セル
30 ガラス基板
31 電極
32 絶縁膜
33 シール剤
34 注入口
35 垂直配向膜
36 水平配向膜
4、4A、4B 試料
5 測定対象の材料
51 不純物イオン
6 無極性液晶
6A 誘電率異方性が正である液晶
6B 誘電率異方性が負である液晶
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12