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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-27
(45)【発行日】2024-04-04
(54)【発明の名称】分岐配管及び分岐配管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/02 20060101AFI20240328BHJP
   F16L 13/00 20060101ALI20240328BHJP
   B23K 9/23 20060101ALN20240328BHJP
【FI】
F16L41/02
F16L13/00
B23K9/23 B
B23K9/23 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024504518
(86)(22)【出願日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2023031939
【審査請求日】2024-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519355493
【氏名又は名称】日揮グローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112453641(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112439979(CN,A)
【文献】特開昭61-070396(JP,A)
【文献】特開平08-141741(JP,A)
【文献】特開昭56-131079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/02
F16L 13/00
B23K 9/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管内層部、及び前記主管内層部を囲む主管外層部を有し、前記主管内層部及び前記主管外層部を貫通すると共に、前記主管外層部の外周面である外層外周面に形成された開口の直径が前記主管内層部の内周面である内層内周面に形成された開口の直径よりも大きい主管分岐穴が設けられた主管と、
前記主管の軸方向と交差する方向に延在する枝管と、
前記主管の前記外層外周面に前記枝管の端部を連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、
前記主管内層部と前記主管外層部とが互いに接触すると共に前記主管分岐穴に露出する主管接触部を覆う主管側連結溶接部と、
前記主管側連結溶接部と前記枝管の端部との間に設けられて、前記枝管を前記主管に連結する枝管側連結溶接部と、
前記主管分岐穴に配置されるリング部材と、を有し、
前記主管外層部は、前記主管内層部とは異なる材料によって構成されており
前記主管側連結溶接部は、
前記内層内周面から露出した内側肉盛り露出面と、
前記主管分岐穴の内周面である分岐穴内周面に接すると共に前記主管接触部を覆う肉盛り外周面と、
前記リング部材の外周面であるリング外周面に接する肉盛り内周面と、を含む、分岐配管。
【請求項2】
前記外層外周面に沿った前記主管側連結溶接部の面積は、前記内側肉盛り露出面の面積より大きい、請求項に記載の分岐配管。
【請求項3】
前記主管、前記枝管及び前記連結部によって形成される流路は、前記内層内周面と、前記内側肉盛り露出面と前記リング部材の内周面であるリング内周面と、前記枝管側連結溶接部の内周面である連結溶接部内周面と、前記枝管の内周面である枝管内周面と、によって規定され、
前記主管内層部、前記主管側連結溶接部、前記リング部材、前記枝管側連結溶接部及び前記枝管は、互いに同等の耐腐食性を有する材料によって構成されている、請求項1又は請求項2に記載の分岐配管。
【請求項4】
前記枝管の軸線方向から見て、前記枝管の外周縁の位置は、前記主管側連結溶接部の外周縁の位置よりも外側である、請求項1又は請求項2に記載の分岐配管。
【請求項5】
前記枝管の軸線方向から見て、前記枝管の外周縁の位置は、前記主管側連結溶接部の外周縁の位置よりも内側である、請求項1又は請求項2に記載の分岐配管。
【請求項6】
前記枝管の軸線方向から見て、前記枝管の内周縁の位置は、前記主管側連結溶接部の内周縁の位置よりも内側である、請求項1又は請求項2に記載の分岐配管。
【請求項7】
主管内層部、及び前記主管内層部を囲み前記主管内層部とは異なる材料によって構成された主管外層部を有する主管に、前記主管内層部及び前記主管外層部を貫通すると共に、前記主管外層部の外周面である外層外周面に形成される開口の直径が前記主管内層部の内周面である内層内周面に形成される開口の直径よりも大きい主管分岐穴を形成する工程と、
前記主管分岐穴にリング部材を設ける工程と、
前記主管内層部と前記主管外層部とが互いに接触すると共に前記主管分岐穴に露出する主管接触部を覆う主管側連結溶接部を形成する工程と、
前記主管の軸方向と交差する方向に延在すると共に前記主管側連結溶接部に対面するように配置された枝管の端部と前記主管側連結溶接部との間に、前記枝管を前記主管に連結する枝管側連結溶接部を形成する工程と、を有し、
前記主管側連結溶接部を形成する工程では、前記主管分岐穴の内周面である分岐穴内周面と前記リング部材の外周面であるリング外周面との間に前記主管側連結溶接部を形成する、分岐配管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐配管及び分岐配管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油処理又はガス処理等が行われるプラントは、硫化水素又は塩化物と言った腐食性を有する流体(以下「腐食性流体」と称する)が流れる部位を含む。塔槽、機器及び配管等のように腐食性流体が流れる部位には、いわゆるクラッド管が用いられることがある。クラッド管は、異種金属を接合した複合材である。クラッド管は、例えば、炭素鋼により構成された母材部と、ニッケル合金などにより構成された合材部と、が積層された構成を有する。合材部の材料を適宜選択することによって、腐食性流体に対する耐腐食性を持たせることができる。
【0003】
石油処理又はガス処理等が行われるプラントでは、流体を分岐させたり、流体を合流させたりする。このような分岐や合流のために、クラッド管に分岐部を設ける。例えば、特許文献1には、耐食合金複合管に分岐管を連結する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第112439979号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クラッド管に分岐部を設ける場合には、クラッド管に貫通穴を設けることになる。クラッド管は、異種材料が積層されているので、この貫通穴の内周面には、異種材料が互いに接合された部位が露出する。異種材料が互いに接合された部位に流体が触れると、イオン化傾向が相対的に大きい方の材料の腐食が促進される。この現象は、ガルバニック腐食と称されている。従って、クラッド管を含む分岐配管を形成する場合には、ガルバニック腐食の発生を抑制するための処置が要求される。
【0006】
そこで、本発明は、ガルバニック腐食の発生を抑制可能な分岐配管及び当該分岐配管の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態である分岐配管は、主管内層部、及び主管内層部を囲む主管外層部を有し、主管内層部及び主管外層部を貫通すると共に、主管外層部の外周面である外層外周面に形成された開口の直径が主管内層部の内周面である内層内周面に形成された開口の直径よりも大きい主管分岐穴が設けられた主管と、主管の軸方向と交差する方向に延在する枝管と、主管の外層外周面に枝管の端部を連結する連結部と、を備える。連結部は、主管内層部と主管外層部とが互いに接触すると共に主管分岐穴に露出する主管接触部を覆う主管側連結溶接部と、主管側連結溶接部と枝管の端部との間に設けられて、枝管を主管に連結する枝管側連結溶接部と、を有し、主管外層部は、主管内層部とは異なる材料によって構成されている。
【0008】
この分岐配管では、外層外周面に形成された開口の直径が、内層内周面に形成された開口の直径よりも大きい。このような構成である主管分岐穴によれば、外層外周面に形成された開口から内層内周面に形成された開口に向かって溶接棒を挿入しやすいので、主管内層部と主管外層部とが互いに接触する部位に主管側連結溶接部を容易に設けることができる。従って、主管内層部と主管外層部とが互いに接触する部位に流体が触れることがないので、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【0009】
一形態の分岐配管において、主管側連結溶接部は、内層内周面から露出した内側肉盛り露出面を有してもよい。この構成によれば、主管内層の内層内周面から内側肉盛り露出面が露出している。その結果、主管側連結溶接部は、主管内層部と主管外層部とが互いに接触する部位から内層内周面に形成された開口までの領域を覆っている。従って、主管内層部と主管外層部とが互いに接触する部位に流体が到達しにくくなるので、ガルバニック腐食の発生をさらに抑制することができる。
【0010】
一形態の分岐配管において、外層外周面に沿った主管側連結溶接部の面積は、内側肉盛り露出面の面積より大きくてもよい。この構成によれば、主管側連結溶接部と枝管側連結溶接部とが接する領域を大きく確保することができる。その結果、主管側連結溶接部を枝管側連結溶接部に良好に接続することができる。
【0011】
一形態の分岐配管において連結部は、主管分岐穴に配置されるリング部材をさらに有し、主管側連結溶接部は、主管分岐穴の内周面である分岐穴内周面に接すると共に主管接触部を覆う肉盛り外周面と、リング部材の外周面であるリング外周面に接する肉盛り内周面と、を含んでもよい。この構成によれば、主管分岐穴に配置されるリング部材の内周面が流路を規定する。その結果、流路の構成を所望の構成とすることができる。
【0012】
一形態の分岐配管において、主管、枝管及び連結部によって形成される流路は、内層内周面と、内側肉盛り露出面とリング部材の内周面であるリング内周面と、枝管側連結溶接部の内周面である連結溶接部内周面と、枝管の内周面である枝管内周面と、によって規定され、主管内層部、主管側連結溶接部、リング部材、枝管側連結溶接部及び枝管は、互いに同等の耐腐食性を有する材料によって構成されてもよい。この構成によれば、互いに同等の耐腐食性を有する材料によって、腐食性流体が流れる流路を形成することができる。
【0013】
一形態の分岐配管において、枝管の軸線方向から見て、枝管の外周縁の位置は、主管側連結溶接部の外周縁の位置よりも外側であってもよい。この構成によれば、比較的太い枝管を連結することができる。
【0014】
一形態の分岐配管において、枝管の軸線方向から見て、枝管の外周縁の位置は、主管側連結溶接部の外周縁の位置よりも内側であってもよい。この構成によれば、比較的細い枝管を連結することができる。
【0015】
一形態の分岐配管において、枝管の軸線方向から見て、枝管の内周縁の位置は、主管側連結溶接部の内周縁の位置よりも内側であってもよい。この構成によれば、枝管の内周面と主管側連結溶接部の内周面との間に段差が設けられる。そして、この段差にリング部材を配置することができる。
【0016】
本発明の別の形態である分岐配管の製造方法は、主管内層部、及び主管内層部を囲み、主管内層部とは異なる材料によって構成された主管外層部を有する主管に、主管内層部及び主管外層部を貫通すると共に、主管外層部の外周面である外層外周面に形成される開口の直径が主管内層部の内周面である内層内周面に形成される開口の直径よりも大きい主管分岐穴を形成する工程と、主管内層部と主管外層部とが互いに接触すると共に主管分岐穴に露出する主管接触部を覆う主管側連結溶接部を形成する工程と、主管の軸方向と交差する方向に延在すると共に主管側連結溶接部に対面するように配置された枝管の端部である枝管の端部と主管側連結溶接部との間に、枝管を主管に連結する枝管側連結溶接部を形成する工程と、を有する。
【0017】
この分岐配管の製造方法では、外層外周面に形成された開口の直径が、内層内周面に形成された開口の直径よりも大きい主管分岐穴を設ける。このような構成である主管分岐穴によれば、外層外周面に形成された開口から内層内周面に形成された開口に向かって溶接棒を挿入しやすいので、主管内層部と主管外層部とが互いに接触する部位に主管側連結溶接部を容易に設けることができる。従って、主管内層部と主管外層部とが互いに接触する部位に流体が触れることがないので、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【0018】
別の形態の分岐配管の製造方法は、主管分岐穴を形成する工程の後に、主管分岐穴にリング部材を設ける工程をさらに有してもよい。主管側連結溶接部を形成する工程では、主管分岐穴の内周面である分岐穴内周面とリング部材の外周面であるリング外周面との間に主管側連結溶接部を形成してもよい。この工程によれば、流体の流路を主管分岐穴に配置されるリング部材の内周面によって規定することができる。その結果、流路の構成を所望の構成とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の分岐配管、及び分岐配管の製造方法によれば、ガルバニック腐食の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、一部が断面図で表示された分岐配管の斜視図である。
図2図2は、図1の部分拡大図である。
図3図3は、図2の部分拡大図である。
図4図4(a)は、変形例に係る分岐配管の枝管と主管側連結溶接部とを拡大して示す断面斜視図である。図4(b)は、別の変形例に係る分岐配管の枝管と主管側連結溶接部とを拡大して示す断面斜視図である。
図5図5は、分岐配管の製造方法のフローチャートである。
図6図6は、主管基材を示す斜視図である。
図7図7は、主管基材に仮貫通穴を形成する工程を示す図である。
図8図8は、主管分岐穴を形成する工程を示す図である。
図9図9は、リング基材を主管に仮留めする工程を示す図である。
図10図10は、主管側連結溶接部を形成する工程を示す図である。
図11図11は、リング部材を形成する工程を示す図である。
図12図12は、枝管を連結する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1に示す分岐配管1は、内部に腐食性流体が流れる配管である。腐食性流体としては、例えば、硫化水素及び塩化物を含む流体が挙げられる。石油処理又はガス処理等が行われるプラントにおいて、分岐配管1は、その内部を流れる腐食性流体を分岐又は合流させるために用いられる。
【0023】
分岐配管1は、主管2と、枝管3と、連結部4とを備える。主管2の内部には、腐食性流体が流れる。主管2の内部を流れる腐食性流体の一部は分岐され、枝管3の内部には、当該腐食性流体の一部が流れる。
【0024】
主管2は、いわゆるクラッド管である。主管2は、円筒状の形状を有する。主管2は、軸線X21を有する。枝管3は、円筒状の形状を有する。枝管3の軸線X3は、軸線X21と交差する。本実施形態では、軸線X3は、軸線X21と直交する。軸線X3は、軸線X21と直交していなくてもよい。例えば、軸線X3は、軸線X21に対して45°傾斜していてもよい。枝管3の内径は、主管2の内径より小さくてもよい。また、枝管3の外径は、主管2の外径より小さくてもよい。連結部4は、主管2の外周面の枝管3の端部との間に設けられており、主管2に枝管3を連結する。
【0025】
図2は、枝管3及び連結部4を拡大して示す断面斜視図である。主管2は、主管内層部21と、主管外層部22とを有する。主管2の主管内層部21は、主管2の内側部分を構成する。主管内層部21は、主管2の内周面を構成する内層内周面21aを有する。内層内周面21aには、腐食性流体が接触する。主管内層部21は、耐腐食性を有する材料によって構成されている。本明細書では、「耐腐食性」は、腐食性流体によって、腐食され難い性質を指す。なお、本実施形態の分岐配管1は、耐腐食性に注目するものである。耐腐食性を確保するための分岐配管1を構成する材料については、後に詳細に説明する。
【0026】
主管外層部22は、主管内層部21を囲む部分である。主管外層部22は、主管2の外周面を構成する外層外周面22aを有する。主管外層部22は、主管内層部21とは異なる材料によって構成されている。主管外層部22は、主管2の強度を向上させる材料によって構成されている。
【0027】
主管2には、主管分岐穴2Hが設けられている。主管分岐穴2Hは、枝管3の軸線X3と重なる軸線X22を有すると共に、主管内層部21及び主管外層部22を貫通する。主管分岐穴2Hは、内層側開口21hと、外層側開口22hとを有する。内層側開口21hは、内層内周面21aに形成されている。外層側開口22hは、外層外周面22aに形成されている。外層側開口22hの内径は、内層側開口21hの内径よりも大きい。つまり、主管分岐穴2Hは、円錐台の形状を有する。より詳細には、主管分岐穴2Hの内径は、軸線X21から遠ざかるほど大きい。
【0028】
枝管3は、枝管下端面3aと、枝管上端面3bと、枝管内周面3cと、枝管外周面3dと、を有する。枝管下端面3aは、連結部4を介して主管2と対面する。枝管上端面3bは、枝管下端面3aに対して逆側の端面であり、図示しない別の管と接続される。枝管内周面3cは、枝管3の内周面であって、前述した腐食性流体と接する。枝管外周面3dは、枝管3の外周面であり、目視可能な面である。
【0029】
連結部4は、主管分岐穴2Hを定義する分岐穴内周面2Sを枝管下端面3aに連結する。さらに詳細には、分岐穴内周面2Sは、主管内層部21の一部が露出している内層露出面21sと、主管外層部22の一部が露出している外層露出面22sとを有する。連結部4は、これら内層露出面21s及び外層露出面22sの両方を覆う。そして、枝管下端面3aは、下端平面3a1と、下端斜面3a2と、を含む。連結部4は、これら下端平面3a1及び下端斜面3a2の両方を覆う。
【0030】
さらに図3を参照して連結部4を詳細に説明する。図3に示すように、連結部4は、リング部材41と、主管側連結溶接部42と、枝管側連結溶接部43とを有する。
【0031】
リング部材41は、腐食性流体が流れる流路を定義する部材である。リング部材41は、耐腐食性を有する材料によって構成されている。リング部材41は、例えば、枝管3と同じ材料によって形成してよい。リング部材41は、円筒状の形状を有する。リング部材41は、主管分岐穴2Hに配置されている。リング部材41は、軸線X3と重なる軸線を有する。リング部材41は、リング下端面41aと、リング上端面41bとを有する。リング下端面41aは、軸線X3に沿う方向におけるリング部材41の端面のうち、軸線X21により近いほうの端面である。リング下端面41aは、リング上端面41bとは反対側に位置する端面である。リング上端面41bは、枝管下端面3aから離間しており、リング上端面41bと枝管下端面3aとの間には、枝管側連結溶接部43の一部が挟まれている。リング上端面41bは、軸線X21を中心とする径方向において、外層外周面22aとほぼ面一である。
【0032】
リング部材41は、リング内周面41cと、リング外周面41dとを有する。リング内周面41cは、リング部材41の内周面である。リング内周面41cには、腐食性流体が接触する。図2の例示において、リング内周面41cを基準として、軸線X3の方向から枝管3を見たとき、枝管3の枝管内周面3cは、リング内周面41cと概ね一致する。リング外周面41dは、リング部材41の外周面である。リング外周面41dは、主管2の分岐穴内周面2Sから離間しており、リング外周面41dと分岐穴内周面2Sとの間には、主管側連結溶接部42が挟まれている。
【0033】
主管側連結溶接部42は、リング部材41を主管2に連結する。主管側連結溶接部42は、リング外周面41dと分岐穴内周面2Sとの間に充填されるように設けられている。換言すると、主管側連結溶接部42は、分岐穴内周面2Sを覆っている。さらに詳細には、主管側連結溶接部42は、分岐穴内周面2Sが含む主管接触部2Cを覆う。主管接触部2Cは、主管分岐穴2Hに露出する内層露出面21sの縁21s1と、外層露出面22sの縁22s1とが互いに接する部分である。分岐穴内周面2Sは、内層露出面21s及び外層露出面22sを含むので、内層露出面21s及び外層露出面22sの双方は、腐食性流体が流れる流路に露出しない。さらに、主管接触部2Cも腐食性流体が流れる流路に露出しない。
【0034】
主管側連結溶接部42は、耐腐食性を有する材料によって構成されている。主管側連結溶接部42は、内側肉盛り露出面42aと、外側肉盛り露出面42bと、肉盛り内周面42cと、肉盛り外周面42dと、を有する。
【0035】
内側肉盛り露出面42aは、軸線X21を中心とする径方向と交差する。内側肉盛り露出面42aは、主管2の内部空間から見たときに、内層内周面21aとリング下端面41aとの間に位置している。内側肉盛り露出面42aは、内層内周面21aに対して面一であってもよい。内側肉盛り露出面42aは、リング下端面41aに対して面一であってもよい。
【0036】
外側肉盛り露出面42bは、軸線X21を中心とする径方向と交差する。外側肉盛り露出面42bは、主管2の外部空間から見たときに、外層外周面22aとリング上端面41bとの間に位置している。外側肉盛り露出面42bは、外層外周面22aに対して面一であってもよい。外側肉盛り露出面42bはリング上端面41bに対して面一であってもよい。
【0037】
外側肉盛り露出面42bの外周縁は、主管側連結溶接部42の肉盛り外周縁42baを構成する。肉盛り外周縁42baを基準として、軸線X3の方向から枝管3を見たとき、枝管3の枝管外周面3dは、肉盛り外周縁42baと概ね一致する。
【0038】
なお、軸線X3から見たときの枝管3の枝管外周面3dは、肉盛り外周縁42baとの関係は、図4(a)及び図4(b)に示す構成であってもよい。図4(a)に示す例示では、軸線X3の方向から枝管3を見たとき、枝管3の枝管外周面3dは、肉盛り外周縁42baの外側に位置する。図4(b)に示す例示では、軸線X3の方向から枝管3を見たとき、枝管3の枝管外周面3dは、肉盛り外周縁42baの内側に位置する。
【0039】
リング部材41と主管側連結溶接部42とが溶融し互いに一体化されると、溶接に起因する溶け込み線42s(溶接線)が形成される。肉盛り内周面42cは、溶け込み線42sをリング外周面41dと共有する。図3に示す溶け込み線42sは、直線状を呈している。しかしながら、溶け込み線42sは、直線状を呈するものに限定されない。図3の例示において、肉盛り内周面42cを基準として、軸線X3の方向から枝管3を見たとき、枝管3の枝管内周面3cは、肉盛り内周面42cよりも内側に位置する。肉盛り外周面42dは、分岐穴内周面2Sに接する。分岐穴内周面2Sが斜面であるから、肉盛り外周面42dも斜面である。
【0040】
枝管側連結溶接部43は、枝管3をリング部材41及び主管側連結溶接部42に連結する。枝管側連結溶接部43は、耐腐食性を有する材料によって構成されている。
【0041】
枝管側連結溶接部43は、連結溶接部下端面43aと、連結溶接部上端面43bと、連結溶接部内周面43cと、連結溶接部外周面43dと、を有する。
【0042】
さらに、枝管側連結溶接部43は、主管側連結溶接部42と枝管3との間を充填するように設けられている。詳細には、枝管側連結溶接部43は、リング部材41と枝管下端面3aとの間、及び主管側連結溶接部42と下端斜面3a2との間に設けられている。枝管側連結溶接部43は、連結薄肉部431と、連結厚肉部432とを有する。連結薄肉部431は、リング部材41と枝管下端面3aとの間に位置する。連結厚肉部432は、主管側連結溶接部42と下端斜面3a2との間に位置する。連結薄肉部431は、一定の厚みを有する。連結厚肉部432は、連結薄肉部431から遠ざかるほど増加する厚みを有する。枝管側連結溶接部43は、連結厚肉部432の一部及び連結薄肉部431を介して枝管3をリング部材41に連結している。枝管側連結溶接部43は、連結厚肉部432を介して枝管3を主管側連結溶接部42に連結している。
【0043】
枝管側連結溶接部43は、枝管側連結溶接部43の内周面である連結溶接部内周面43cと、枝管側連結溶接部43の外周面である連結溶接部外周面43dとを有する。連結溶接部内周面43cには、腐食性流体が接触する。連結溶接部外周面43dは、枝管外周面3dよりも外側に位置する。
【0044】
<主管、枝管、連結部の材料>
本実施形態の分岐配管1は、腐食性流体が流れる流路を構成する。従って、腐食性流体に接触する箇所は、すべて耐腐食性を有する材料によって形成される。
【0045】
耐腐食性を有する材料として、例えば、ニッケルクロム鉄合金及び高ニッケル鉄基合金が挙げられる。ニッケルクロム鉄合金の例示は、インコネル(登録商標)であり、ニッケルを主材として、鉄、クロム、ニオブ、モリブデンといった添加材料を含む。インコネルの具体例のひとつが、インコネル625(ALLOY 625)である。インコネルの別の具体例は、ALLOY 82及びALLOY 182である。ALLOY 82及びALLOY 182は、ALLOY 625と同様に優れた耐食性を有する。米国溶接協会(American Welding Society:AWS)が定める規格(AWS)によれば、ALLOY 625の規格番号は、ENiCrMo-3又はERNiCrMo-3である。ALLOY 82の規格番号は、ERNiCr-3である。ALLOY 182の規格番号は、ENiCrFe-3である。高ニッケル鉄基合金の例示は、インコロイであり、オーステナイト系ニッケル-鉄-クロム合金にチタン、銅及びモリブデンを添加材料として含む。インコロイの具体例のひとつが、インコロイ825(ALLOY 825)である。
【0046】
耐腐食性を有する別の材料として、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼も挙げることができる。オーステナイト系ステンレス鋼の具体例は、SUS316L及びSUS309LMoである。SUS309LMoは、溶接棒の材料としても用いられるものであるから、溶接によって形成される連結部4の材料として採用することができる。
【0047】
上記に例示した金属材料は、一般に耐腐食性が高い材料として知られている。本実施形態でいう「同等の耐腐食性を有する材料」とは、上記に例示した金属材料に含まれるものを意味する。つまり、同等の耐腐食性を有する材料に含まれるものの例示は、インコネル625(ALLOY 625)、インコロイ825(ALLOY 825)、SUS316L及びSUS309LMoである。また、ニッケルクロム鉄合金、高ニッケル鉄基合金及びーステナイト系ステンレス鋼に属するその他の材料にも、同等の耐腐食性を有する材料に含めてよいものが存在する。
【0048】
具体的な材料の組み合わせを例示する。しかし、本実施形態の分岐配管1を構成するに際して、以下の材料の組み合わせに限定されない。例えば、主管内層部21が鍛造によって形成される場合には、主管内層部21及びリング部材41は同じ材料によって形成してよい。主管内層部21が肉盛り溶接によって形成される場合には、主管内層部21、主管側連結溶接部42及び枝管側連結溶接部43は同じ材料によって形成してよい。
【0049】
第1の例示は以下のとおりである。
・主管内層部21:ステンレス鋼(SUS316L)
・主管外層部22:炭素鋼
・枝管3:ステンレス鋼(SUS316L)
・リング部材41:ステンレス鋼(SUS316L)
・主管側連結溶接部42及び枝管側連結溶接部43:ステンレス鋼(SUS309LMo)
【0050】
第2の例示は以下のとおりである。
・主管内層部21:Alloy625(ニッケルクロム鉄合金)
・主管外層部22:炭素鋼
・枝管3:Alloy825(高ニッケル鉄基合金)
・リング部材41:Alloy825(高ニッケル鉄基合金)
・主管側連結溶接部42及び枝管側連結溶接部43:Alloy625(ニッケルクロム鉄合金)
【0051】
例えば、第1の例示では、主管2は、炭素鋼とステンレス鋼との接触部位を含む。ここで、それぞれの材料における標準電極電位を比較すると、ステンレス鋼の標準電極電位が比較的高く、炭素鋼の標準電極電位が比較的低い。つまり、ステンレス鋼はイオン化しにくく、炭素鋼はイオン化しやすい。このイオン化傾向の相違は、いわゆるガルバニック腐食の原因となる。しかし、本実施形態の分岐配管1は、ステンレス鋼からなる主管内層部21と炭素鋼からなる主管外層部22との接触部位が、主管側連結溶接部42に覆われている。従って、異種金属が接触する部位が腐食性流体にさらされることがないので、ガルバニック腐食の発生を抑制できる。
【0052】
さらに、腐食性流体にさらされる部位である、主管内層部21、枝管3、主管側連結溶接部42及び枝管側連結溶接部43は、いずれもオーステナイト系ステンレス鋼又はニッケル合金によって構成されている。これらの材料では、具体的な組成比が異なっていたとしても、互いに近い標準電極電位を有するので、基本的にガルバニック腐食は生じない。
【0053】
つまり、本実施形態の分岐配管1は、第1に異種金属が接する部位を腐食性流体にさらさない構成を有し肉盛り外周面、第2に腐食性流体にさらされる部位は耐腐食性が高く互いに近い標準電極電位を有する材料によって構成されている、という2つの理由により、腐食性流体に対する耐腐食性を確保している。
【0054】
次に、分岐配管1において、主管2から枝管3に向かって腐食性流体が流れる場合の流路について説明する。主管2から枝管3に向かって腐食性流体が流れる場合、まず腐食性流体は、主管2の主管内層部21が構成する内層内周面21aによって画定された領域を流れる。次に、主管分岐穴2Hに向かって流れる腐食性流体は、主管側連結溶接部42の内側肉盛り露出面42a、リング部材41のリング下端面41a、及びリング部材41のリング内周面41cに沿って流れる。次に、腐食性流体は、枝管側連結溶接部43の連結溶接部内周面43c、及び枝管3の枝管内周面3cに沿って流れる。したがって、主管2、枝管3及び連結部4によって形成される流路は、内層内周面21aと、内側肉盛り露出面42aと、リング下端面41aと、リング内周面41cと、連結溶接部内周面43cと、枝管内周面3cとによって規定されている。
【0055】
次に、図5図12を参照しながら、本実施形態の分岐配管1の製造方法を説明する。図5は、分岐配管1の製造方法のフローチャートである。図6は、主管基材M2を示す斜視図である。図7は、主管基材M2に仮貫通穴M2Hを形成する工程を示す図である。図8は、主管分岐穴2Hを形成する工程を示す図である。図9は、リング基材M41を主管2に仮留めする工程を示す図である。図10は、主管側連結溶接部42を形成する工程を示す図である。図11は、リング部材41を形成する工程を示す図である。図12は、枝管3を連結する工程を示す図である。
【0056】
まず、図6に示すように、主管基材M2を準備する(S1)。主管基材M2は、主管分岐穴2Hが形成されていない点において、主管2と主に相違する。続いて、図7に示すように、主管基材M2に仮貫通穴M2Hを形成する(S2)。仮貫通穴M2Hの径は、一定の大きさである。
【0057】
続いて、図8に示すように、主管分岐穴2Hを形成する(S3)。主管分岐穴2Hは、仮貫通穴M2Hの内周面を削ることによって形成される。主管分岐穴2Hが形成されることによって、主管2が得られる。
【0058】
続いて、図9に示すように、リング基材M41を主管2に仮留めする(S4)。リング基材M41は、リング部材41のもとになる部材である。リング基材M41は、円筒状の形状を有する。リング基材M41の長さは、リング部材41よりも長い。のちの工程(S6)において、リング基材M41が切断されることによって、所定の長さであるリング部材41が形成される。
【0059】
リング基材M41の外周面M41dは、主管2の分岐穴内周面2Sとは接触していない。リング基材M41の下端面は、主管2の内層内周面21aに概ね一致する。リング基材M41は、溶接仮留め部M5によって主管2に固定されている。溶接仮留め部M5は、リング基材M41から遠ざかるように湾曲した形状を有する。溶接仮留め部M5の一端は、外層外周面22aに連結される。溶接仮留め部M5の他端は、リング基材M41の外周面M41dに連結されている。図9には、2本の溶接仮留め部M5を図示する。リング基材M41を仮固定するための溶接仮留め部M5の数は、任意である。
【0060】
続いて、図10に示すように、主管側連結溶接部42を形成する(S5)。主管側連結溶接部42は、例えば、ガスタングステンアーク溶接(GTAW溶接)によって形成される。主管分岐穴2Hの外層側開口22hから内層側開口21hに向かって例えばアーク溶接のための溶接棒を挿入する。そして、リング基材M41の外周面M41dと分岐穴内周面2Sとの間において、内層側開口21hから外層側開口22hに向かって主管側連結溶接部42を形成する。主管側連結溶接部42は、外層外周面22aの位置と一致するか、外層外周面22aより突出するまで形成される。
【0061】
なお、主管2の肉厚が厚い場合には、主管側連結溶接部42は、異なる種別の溶接によって形成されてもよい。例えば、主管側連結溶接部42は、内層露出面21sに接する部位および内側肉盛り露出面42aを含む溶接下層部42rと、外層露出面22sに接する部位および外側肉盛り露出面42bを含む溶接上層部42pと、を含むものとする。上述の説明のように、溶接下層部42r及び溶接上層部42pは、いずれもガスタングステンアーク溶接によって形成してもよい。また、溶接下層部42rをもガスタングステンアーク溶接によって形成し、溶接上層部42pをシールドメタルアーク溶接(SMAW溶接)又はフラックス入りアーク溶接(FCAW溶接)によって形成してもよい。
【0062】
続いて、図11に示すように、リング部材41を形成する(S6)。より詳細には、リング基材M41のうち主管分岐穴2Hから突出した部分の一部を切断する。リング基材M41は、軸線X22に沿う方向と直交する方向において切断される。切断の結果得られたリング部材41のリング上端面41bは、外層外周面22aと面一であってもよい。この場合には、リング上端面41bは、外層外周面22aに沿った曲面状である。また、リング上端面41bは、外層外周面22aから突出してもよい。この場合には、リング上端面41bは、軸線X3に直交する平面である。なお、この工程S6では、主管側連結溶接部42の一部を削りとってもよい。このような切断加工又は研削加工の結果、外側肉盛り露出面42bが形成されてもよい。この場合には、外側肉盛り露出面42bは、外層外周面22aと面一であり、外層外周面22aに沿った曲面状であってもよい。
【0063】
続いて、図12に示すように、枝管3を配置する(S7)。具体的には、枝管3がリング部材41から軸線X3に沿う方向において離間するとともに、主管側連結溶接部42に対面する位置に配置する。
【0064】
そして、枝管3とリング部材41との間、及び枝管3と主管側連結溶接部42との間に、枝管側連結溶接部43を形成する(S8)。溶接棒を枝管3の枝管外周面3d側から枝管3と主管側連結溶接部42との間に差し込み、溶接棒の先端を枝管3とリング部材41との間に位置させる。そして、溶接棒の先端を軸線X3周りに回転させながら外周側に移動させることによって、枝管側連結溶接部43を形成する。その結果、枝管3はリング部材41及び主管側連結溶接部42に連結される。
【0065】
<作用効果>
分岐配管1は、主管内層部21、及び主管内層部21を囲む主管外層部22を有し、主管内層部21及び主管外層部22を貫通すると共に、主管外層部22の外周面である外層外周面22aに形成された開口の直径が主管内層部21の内周面である内層内周面21aに形成された開口の直径よりも大きい主管分岐穴2Hが設けられた主管2と、主管2の軸線X21の方向と交差する方向に延在する枝管3と、主管2の外層外周面22aに枝管3の端部を連結する連結部4と、を備える。連結部4は、主管内層部21と主管外層部22とが互いに接触すると共に主管分岐穴2Hに露出する主管接触部2Cを覆う主管側連結溶接部42と、主管側連結溶接部42と枝管3の端部との間に設けられて、枝管3を主管2に連結する枝管側連結溶接部43と、を有する。主管外層部22は、主管内層部21とは異なる材料によって構成されている。
【0066】
外層外周面22aに形成された開口の直径は、内層内周面21aに形成された開口の直径よりも大きい。このような構成である主管分岐穴2Hによれば、外層外周面22aに形成された開口から内層内周面21aに形成された開口に向かって溶接棒を挿入しやすいので、主管内層部21と主管外層部22とが互いに接触する部位に主管側連結溶接部42を容易に設けることができる。従って、主管内層部21と主管外層部22とが互いに接触する部位に流体が触れることがないので、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【0067】
主管側連結溶接部42は、内層内周面21aから露出した内側肉盛り露出面42aを有する。この構成によれば、主管2の内層内周面21aから内側肉盛り露出面42aが露出している。その結果、主管側連結溶接部42は、主管内層部21と主管外層部22とが互いに接触する部位から内層内周面21aに形成された開口までの領域を覆っている。従って、主管内層部21と主管外層部22とが互いに接触する部位に流体が到達しにくくなるので、ガルバニック腐食の発生をさらに抑制することができる。
【0068】
外層外周面22aに沿った外側肉盛り露出面42bの面積は、内側肉盛り露出面42aの面積より大きい。この構成によれば、主管側連結溶接部42と枝管側連結溶接部43とが接する領域を大きく確保することができる。その結果、主管側連結溶接部42を枝管側連結溶接部43に良好に接続することができる。
【0069】
連結部4は、主管分岐穴2Hに配置されるリング部材41をさらに有する。主管側連結溶接部42は、主管分岐穴2Hの内周面である分岐穴内周面2Sに接すると共に主管接触部2Cを覆う肉盛り外周面42dと、リング部材41の外周面であるリング外周面41dに接する肉盛り内周面42cと、を含む。この構成によれば、主管分岐穴2Hに配置されるリング部材41の内周面が流路を規定する。その結果、流路の構成を所望の構成とすることができる。
【0070】
主管2、枝管3及び連結部4によって形成される流路は、内層内周面21aと、内側肉盛り露出面42aとリング部材41の内周面であるリング内周面41cと、枝管側連結溶接部43の内周面である連結溶接部内周面43cと、枝管3の内周面である枝管内周面3cと、によって規定される。主管内層部21、主管側連結溶接部42、リング部材41、枝管側連結溶接部43及び枝管3は、互いに同等の耐腐食性を有する材料によって構成される。この構成によれば、互いに同等の耐腐食性を有する材料によって、腐食性流体が流れる流路を形成することができる。
【0071】
枝管3の軸線X3の方向から見て、枝管3の外周縁の位置は、主管側連結溶接部42の外周縁の位置よりも外側であってもよい(図4(a)参照)。この構成によれば、比較的太い枝管3を連結することができる。
【0072】
一形態の分岐配管1において、枝管3の軸線X3の方向から見て、枝管3の外周縁の位置は、主管側連結溶接部42の外周縁の位置よりも内側であってもよい(図4(b)参照)。この構成によれば、比較的細い枝管3を連結することができる。
【0073】
一形態の分岐配管1において、枝管3の軸線X3の方向から見て、枝管3の内周縁の位置は、主管側連結溶接部42の内周縁の位置よりも内側である。この構成によれば、枝管3の内周面と主管側連結溶接部42の内周面との間に段差が設けられる。そして、この段差にリング部材41を配置することができる。
【0074】
分岐配管1の製造方法は、主管内層部21、及び主管内層部21を囲み、主管内層部21とは異なる材料によって構成された主管外層部22を有する主管2に、主管内層部21及び主管外層部22を貫通すると共に、主管外層部22の外周面である外層外周面22aに形成される開口の直径が主管内層部21の内周面である内層内周面21aに形成される開口の直径よりも大きい主管分岐穴2Hを形成する工程(S2、S3)と、主管内層部21と主管外層部22とが互いに接触すると共に主管分岐穴2Hに露出する主管接触部2Cを覆う主管側連結溶接部42を形成する工程(S5)と、主管2の軸線X21の方向と交差する方向に延在すると共に主管側連結溶接部42に対面するように配置された枝管3の端部と主管側連結溶接部42との間に、枝管3を主管2に連結する枝管側連結溶接部43を形成する工程(S8)と、を有する。
【0075】
分岐配管1の製造方法では、外層外周面22aに形成された開口の直径が、内層内周面21aに形成された開口の直径よりも大きい主管分岐穴2Hを設ける(S2、S3)。このような構成である主管分岐穴2Hによれば、工程S5において、外層外周面22aに形成された開口から内層内周面21aに形成された開口に向かって溶接棒を挿入しやすいので、主管内層部21と主管外層部22とが互いに接触する部位に主管側連結溶接部42を容易に設けることができる。従って、主管内層部21と主管外層部22とが互いに接触する部位に流体が触れることがないので、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【0076】
主管分岐穴2Hを形成する工程(S2、S3)の後に、主管分岐穴2Hにリング部材41を設ける工程(S4、S6)をさらに有する。主管側連結溶接部42を形成する工程(S5)では、主管分岐穴2Hの内周面である分岐穴内周面2Sとリング部材41の外周面であるリング外周面41dとの間に主管側連結溶接部42を形成する。この工程によれば、流体の流路を主管分岐穴2Hに配置されるリング部材41の内周面によって規定することができる。その結果、流路の構成を所望の構成とすることができる。
【0077】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明の分岐配管、及び分岐配管の製造方法は、上記の実施形態で説明した態様に限定されるものではない。
【0078】
上記の実施形態では、枝管3は、クラッド管であるか否かは特定しなかった。枝管3は、クラッド管であってもよいし、クラッド管でなくてもよい。クラッド管を枝管3(オレット:Olet)として用いる場合には、枝管3の枝管内層部の材料は、主管側連結溶接部42及び枝管側連結溶接部43と同じ材料を選択すればよい。また、クラッド管でない管材を枝管3として用いる場合には、枝管3の材料は、リング部材41と同じ材料を選択すればよい。
【符号の説明】
【0079】
1…分岐配管、2…主管、2C…主管接触部、2H…主管分岐穴、2S…分岐穴内周面、3…枝管、3c…枝管内周面、4…連結部、21…主管内層部、21a…内層内周面、22…主管外層部、22a…外層外周面、41…リング部材、41c…リング内周面、41d…リング外周面、42…主管側連結溶接部、42a…内側肉盛り露出面、42c…肉盛り内周面、42d…肉盛り外周面、43…枝管側連結溶接部、M41d…外周面。
【要約】
分岐配管1は、主管内層部21、及び主管内層部21を囲む主管外層部22を有し、主管内層部21及び主管外層部22を貫通すると共に外層外周面22aに形成される外層側開口22hの直径が内層内周面21aに形成される内層側開口21hの直径よりも大きい主管分岐穴2Hが設けられた主管2と、主管2の軸線X21方向と交差する方向に延在する枝管3と、主管2の主管分岐穴2Hに枝管3の枝管下端面3aを連結する連結部4と、を備え、連結部4は、主管分岐穴2Hに露出する主管内層部21の縁と主管外層部22の縁とが互いに接触する部位2d3を覆う主管側連結溶接部42と、主管側連結溶接部42と枝管下端面3aとの間に設けられて、枝管3を主管2に連結する枝管側連結溶接部43と、を有し、主管外層部22は、主管内層部21とは異なる材料によって構成されている。
図1
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図12