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特許7462158学習済みモデルの生成方法、装置、及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】学習済みモデルの生成方法、装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240329BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240329BHJP
   B65H 18/28 20060101ALI20240329BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20240329BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240329BHJP
【FI】
H01M10/04 W
G05B23/02 301X
B65H18/28
H01M10/0587
H01M10/052
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020040271
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021141029
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠中 伸也
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0023428(KR,A)
【文献】特開2021-082384(JP,A)
【文献】特開平10-310297(JP,A)
【文献】特開2013-165025(JP,A)
【文献】特開2018-022554(JP,A)
【文献】特開2006-145298(JP,A)
【文献】特開2018-113199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
G05B 23/02
B65H 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、
第1巻芯と、
所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、
前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全のための学習済みモデルの生成方法であって、
前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得し、
前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断し、
前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記第1供給機構、前記第2供給機構、前記第1貼合ローラ、前記第2貼合ローラのうちの何れであるかを判断し、
前記不良の原因を報知する情報を表示装置に出力し、
前記不良の原因が保全される前の前記第1巻回体の不良の第1発生度合いと前記不良の原因が保全された後の前記第1巻回体の不良の第2発生度合いとに基づいて、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを、前記学習済みモデルを生成するために用いるか否かを判断し、用いると判断した場合に、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを生成することを含む、
学習済みモデルの生成方法。
【請求項2】
前記第1電極シートは電池の正極シートであり、前記第2電極シートは電池の負極シートである、
請求項1に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項3】
前記第1電極シートは電池の負極シートであり、前記第2電極シートは電池の正極シートである、
請求項1記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項4】
前記学習済みモデルを生成する場合において、
前記第1発生度合いは、前記不良の原因が保全される前の前記第1巻回体の不良率を示す第1不良率であり、前記第2発生度合いは、前記不良の原因が保全される前の前記第1巻回体の不良率を示す第2不良率であり、
前記第1不良率と前記第2不良率との第1差分が所定値以上である場合には、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルを生成するためには用いず、前記第1差分が所定値以上である場合には、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを生成する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項5】
前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断する場合において、
前記第1供給機構において前記第1電極シートの交換作業が行われた後に巻き取られた交換後巻回体の前記第1端面の位置の連続が所定範囲外であることを表している場合、前記第1巻回体が不良であると判断し、
前記交換作業が行われる前に巻き取られた交換前巻回体の前記第1端面の位置を示す交換前群データを取得し、
前記不良の原因が前記シート材供給部のどの構成であるかを判断する場合において、
前記交換前群データが示す前記交換前巻回体の前記第1端面の位置の連続が前記所定範囲内であることを表している場合、前記不良の原因が前記第1供給機構であると判断する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項6】
前記巻取装置は、前記駆動機構により前記所定の巻付け位置で前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付け第2巻回体を生成する第2巻芯をさらに備え、
前記センサは、さらに、前記第2巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第2巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第3端面及び前記第2電極シートの第4端面を読み取り、
前記学習済みモデルの生成方法において、
前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データ、前記第2巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第3端面の位置を表す第3群データ、及び、前記第2巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第4端面の位置を表す第4群データを前記センサから取得し、
前記第1群データ及び前記第2群データが示す前記第1端面の位置の連続及び前記第2端面の位置の連続が基準線から傾斜していることを表しており、かつ、前記第3群データ及び前記第4群データが示す前記第3端面の位置の連続及び前記第4端面の位置の連続が前記基準線から傾斜していることを表している場合、前記第1巻回体および第2巻回体が不良であり、かつ、前記不良の原因は前記第1貼合ローラまたは前記第2貼合ローラであると判断する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項7】
前記巻取装置において、前記シート材供給部は、前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける際に前記第1巻芯と前記第1貼合ローラおよび前記第2貼合ローラとの間に張力を付与するシリンダをさらに有し、
前記学習済みモデルの生成方法において、前記第1巻回体の前記第1端面の位置の連続および前記第1巻回体の前記第2端面の位置の連続のうち少なくとも一方が前記基準線から蛇行していることを表している場合、前記第1巻回体が不良であり、かつ、前記不良の原因は前記シリンダであると判断する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項8】
第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、
第1巻芯と、
所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、
前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの
第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全のための学習済みモデルの生成方法であって、
前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得し、
前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断し、
前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記シート材供給部のどの構成であるかを判断し、
前記不良の原因を報知する情報を表示装置に出力し、
前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第1確率と前記不良の原因が保全された後の前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第2確率との第2差分が所定値未満と判断された場合、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データは前記学習済みモデルを更新するためには用いず、一方、前記第2差分が前記所定値以上と判断された場合、前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを更新することを含む、
学習済みモデルの生成方法。
【請求項9】
第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、
第1巻芯と、
所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、
前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全に関する情報を表示するための情報を出力する装置であって、
前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得する取得部と、
前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断するとともに、前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記シート材供給部のどの構成であるかを判断し、前記不良の原因を報知する情報を保全のために表示装置に出力する報知判定部と、
前記不良の原因が保全される前の前記第1巻回体の不良の第1発生度合いと前記不良の原因が保全された後の前記第1巻回体の不良の第2発生度合いとに基づいて、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを、学習済みモデルを生成するために用いるか否かを判断し、用いると判断した場合に、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
を備える、装置。
【請求項10】
第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前
記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、
第1巻芯と、
所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付け、前記所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、
前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全に関する情報を表示するための情報を出力する装置であって、
前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得する取得部と、
前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断するとともに、前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記シート材供給部のどの構成であるかを判断し、前記不良の原因を報知する情報を保全のために表示装置に出力する報知判定部と、
前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第1確率と前記不良の原因が保全された後の前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第2確率との第2差分が所定値未満と判断された場合、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データは前記学習済みモデルを更新するためには用いず、一方、前記第2差分が前記所定値以上と判断された場合、前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを更新するモデル生成部と、
を備える、装置。
【請求項11】
第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、
第1巻芯と、
所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、
前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全のための学習済みモデルを生成するコンピュータが実行するプログラムであって、
前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得する手順と、
前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断する手順と、
前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記
シート材供給部のどの構成であるかを判断する手順と、
前記不良の原因を報知する情報を表示装置に出力する手順と、
前記不良の原因が保全される前の前記第1巻回体の不良の第1発生度合いと前記不良の原因が保全された後の前記第1巻回体の不良の第2発生度合いとに基づいて、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを、前記学習済みモデルを生成するために用いるか否かを判断し、用いると判断した場合に、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを生成する手順と、
を前記コンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項12】
第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、
第1巻芯と、
所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、
前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全のための学習済みモデルを生成するコンピュータが実行するプログラムであって、
前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得する手順と、
前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断する手順と、
前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記シート材供給部のどの構成であるかを判断する手順と、
前記不良の原因を報知する情報を表示装置に出力する手順と、
前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第1確率と前記不良の原因が保全された後の前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第2確率との第2差分が所定値未満と判断された場合、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データは前記学習済みモデルを更新するためには用いず、一方、前記第2差分が前記所定値以上と判断された場合、前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを更新する手順と、
を前記コンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産設備の保全に関する情報を表示するために用いられる学習済みモデルの生成方法、装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある設備について、劣化や故障等を予防し、正常な運転を維持するために保全システムを設けることが一般的に行われている。特許文献1には、変電所における排水ポンプ故障や配電盤地絡等の異常の発生を監視し、異常が発生した場合には設備関係者に対して報知を行い、報知を受けた設備関係者が行った、異常に対する保守保全業務に関する情報を記憶する保全システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-167708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、設備に異常が発生してから設備関係者に対する報知が行われる。このため、設備関係者による保全が実施されるのは、異常が発生した後となる。異常の発生後に保全が行われる場合、設備の運転を停止する必要が生じてしまうので、異常の発生前に保全の必要が生じたと判断された時点で報知が行われることが所望されている。このため、設備に生じる異常の予兆を検知することが要望されている。
【0005】
本開示の目的は、異常の予兆を検知するための学習済みモデルの生成方法、装置、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の学習済みモデルの生成方法は、第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、第1巻芯と、所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全のための学習済みモデルの生成方法であって、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得し、前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断し、前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記第1供給機構、前記第2供給機構、前記第1貼合ローラ、前記第2貼合ローラのうちの何れであるかを判断し、前記不良の原因を報知する情報を前記表示装置に出力し、前記不良の原因が保全される前の前記第1巻回体の不良の第1発生度合いと前記不良の原因が保全された後の前記第1巻回体の不良の第2発生度合いとに基づいて、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを、前記学習済みモデルを生成するために用いるか否かを判断し、用いると判断した場合に、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを生成することを含む。
【0007】
本開示の学習済みモデルの生成方法は、第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、第1巻芯と、所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全のための学習済みモデルの生成方法であって、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得し、前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断し、前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記シート材供給部のどの構成であるかを判断し、前記不良の原因を報知する情報を前記表示装置に出力し、前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第1確率と前記不良の原因が保全された後の前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第2確率との第2差分が所定値未満と判断された場合、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データは前記学習済みモデルを更新するためには用いず、一方、前記第2差分が前記所定値以上と判断された場合、前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを更新することを含む。
【0008】
本開示の装置は、第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、第1巻芯と、所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全に関する情報を表示するための情報を出力する装置であって、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得する取得部と、前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断するとともに、前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記シート材供給部のどの構成であるかを判断し、前記不良の原因を報知する情報を保全のために前記表示装置に出力する報知判定部と、前記不良の原因が保全される前の前記第1巻回体の不良の第1発生度合いと前記不良の原因が保全された後の前記第1巻回体の不良の第2発生度合いとに基づいて、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを、学習済みモデルを生成するために用いるか否かを判断し、用いると判断した場合に、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを生成するモデル生成部と、を備える。
【0009】
本開示の装置は、第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、第1巻芯と、所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付け、前記所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全に関する情報を表示するための情報を出力する装置であって、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得する取得部と、前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断するとともに、前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記シート材供給部のどの構成であるかを判断し、前記不良の原因を報知する情報を保全のために前記表示装置に出力する報知判定部と、前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第1確率と前記不良の原因が保全された後の前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第2確率との第2差分が所定値未満と判断された場合、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データは前記学習済みモデルを更新するためには用いず、一方、前記第2差分が前記所定値以上と判断された場合、前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを更新するモデル生成部と、を備える。
【0010】
本開示のプログラムは、第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、第1巻芯と、所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全のための学習済みモデルを生成するコンピュータが実行するプログラムであって、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得する手順と、前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断する手順と、前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記シート材供給部のどの構成であるかを判断する手順と、前記不良の原因を報知する情報を前記表示装置に出力する手順と、前記不良の原因が保全される前の前記第1巻回体の不良の第1発生度合いと前記不良の原因が保全された後の前記第1巻回体の不良の第2発生度合いとに基づいて、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを、前記学習済みモデルを生成するために用いるか否かを判断し、用いると判断した場合に、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを生成する手順と、を前記コンピュータに実行させる。
【0011】
本開示のプログラムは、第1電極シートを供給する第1供給機構、第2電極シートを供給する第2供給機構、前記第1電極シート側に設けられた第1貼合ローラ、及び前記第2電極シート側に設けられ、前記第1貼合ローラと対となって前記第1電極シートと前記第2電極シートとを貼り合わせる第2貼合ローラを有するシート材供給部と、第1巻芯と、所定の巻付け位置に前記第1巻芯を移動させて前記第1巻芯に前記第1電極シートと前記第2電極シートとを重ねて巻き付ける駆動機構と、前記第1巻芯に複数周に重ねて前記第1電極シート及び前記第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って前記第1電極シートの第1端面及び前記第2電極シートの第2端面を読み取るセンサと、を備えた巻取装置の保全のための学習済みモデルを生成するコンピュータが実行するプログラムであって、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第1端面の位置を表す第1群データ、前記第1巻回体の半径方向に沿って読み取られた前記第2端面の位置を表す第2群データを前記センサから取得する手順と、前記第1群データが示す前記第1端面の位置の連続、前記第2群データが示す前記第2端面の位置の連続、及び基準線の位置関係に基づいて、前記第1巻回体が不良であるか、及び、不良である場合に不良の原因が前記シート材供給部であるか否かを判断する手順と、前記不良の原因が前記シート材供給部であると判断した場合に、前記不良の原因が前記シート材供給部のどの構成であるかを判断する手順と、前記不良の原因を報知する情報を前記表示装置に出力する手順と、前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第1確率と前記不良の原因が保全された後の前記第1群データ及び前記第2群データを前記学習済みモデルに入力して得られる前記第1巻回体の不良が改善される第2確率との第2差分が所定値未満と判断された場合、前記不良の原因が保全される前に読み取られた前記第1群データ及び前記第2群データは前記学習済みモデルを更新するためには用いず、一方、前記第2差分が前記所定値以上と判断された場合、前記不良の原因が保全される前の前記第1群データ及び前記第2群データを用いて前記学習済みモデルを更新する手順と、を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、設備において、異常の予兆を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】保全表示装置と、保全表示装置が適用される巻取装置と、を含むネットワーク図
図2】保全表示装置の全体の処理工程について説明するためのフローチャート
図3A】巻取装置において巻回体を生産する巻回部の構成を例示した図
図3B】巻回部において生産される巻回体を例示した斜視図
図4A】検査機が巻回体を検査する様子を例示した模式図
図4B】巻回体の半径方向に沿った断面形状を例示した模式図
図4C図4Bに示す巻回体の断面を検査機が走査して生成した画像を例示した図
図5】不良の原因が巻芯である場合の、巻回体の断面形状と形状データの例を示した模式図
図6】不良の原因が第1貼合ロール及び第2貼合ロールである場合の、巻回体の形状データの例を示した模式図
図7】不良の原因が第1供給リールである場合の、巻回体の形状データの例を示した模式図
図8】不良の原因がシリンダである場合の、巻回体の形状データの例を示した模式図
図9】第1の実施の形態に係る保全表示装置の機能構成を例示したブロック図
図10A】生産実績データについて例示した図
図10B】生産実績データについて例示した図
図11】保全実績データについて例示した図
図12】保全表示装置における処理の全体の流れを概略的に説明するシーケンス図
図13】保全表示装置における処理の全体の流れを概略的に説明するシーケンス図
図14】学習処理において、保全効果判定部が実行する処理について説明するためのフローチャート
図15A】学習処理における保全作業の効果を判定する様子を説明するための概念図
図15B】学習処理における保全作業の効果を判定する様子を説明するための概念図
図16】学習処理において、設備状態診断モデル生成部が実行する処理について説明するためのフローチャート
図17】識別処理において、設備状態診断部が実行する処理について説明するためのフローチャート
図18】識別処理において、報知判定部が実行する処理を説明するためのフローチャート
図19】保全案リストの具体例を示す図
図20】更新処理において、保全効果判定部が実行する処理について説明するためのフローチャート
図21A】更新処理における保全作業の効果を判定する様子を説明するための概念図
図21B】更新処理における保全作業の効果を判定する様子を説明するための概念図
図22】更新処理において、設備状態診断モデル生成部が実行する処理について説明するためのフローチャート
図23】第2の実施の形態に係る保全表示装置の構成を例示した図
図24】第2の実施の形態において、保全効果判定部が実行する処理について説明するためのフローチャート
図25】第3の実施の形態に係る保全表示装置の構成を例示した図
図26】第3の実施の形態において、設備状態診断モデル生成部が行う処理について説明するためのフローチャート
図27】第3の実施の形態における、報知判定部が行う処理について説明するためのフローチャート
図28A】学習処理における、保全効果判定部による保全作業の効果の有無の判定方法の変形例を説明するための図
図28B】学習処理における、保全効果判定部による保全作業の効果の有無の判定方法の変形例を説明するための図
図29A】更新処理における、保全効果判定部による保全作業の効果の有無の判定方法の変形例を説明するための図
図29B】更新処理における、保全効果判定部による保全作業の効果の有無の判定方法の変形例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明、例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明等は省略する場合がある。
【0015】
なお、以下の説明及び参照される図面は、当業者が本開示を理解するために提供されるものであって、本開示の請求の範囲を限定するためのものではない。
【0016】
(第1の実施の形態)
<保全表示装置100及び巻取装置200>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る保全表示装置100と、保全表示装置100が適用される巻取装置200と、を含むネットワーク図である。本実施の形態において説明する保全表示装置100は、リチウムイオン二次電池を生産するための巻取装置200の保全表示を行う装置である。図1に示す例では、保全表示装置100は1つの巻取装置200に対して適用されているが、本開示はこれに限定されず、1つの保全表示装置が複数の巻取装置に対して適用されてもよい。また、本実施の形態において、保全表示装置100は装置として説明されるが、本開示はこれに限定されず、個々の構成がネットワークを介して接続された保全表示システムであってもよい。
【0017】
保全表示装置100は、記憶部110及び制御部120を有するサーバ10、及び、報知部130を備える。サーバ10は、ネットワークNTを介して巻取装置200と通信可能に接続されている。ネットワークNTは、例えばインターネット等の公衆ネットワーク、または、例えば社内LAN(Local Area Network)等のローカルなネットワークである。
【0018】
サーバ10は、例えば汎用のコンピュータであり、図1に示すように記憶部110及び制御部120を有する。
【0019】
記憶部110は、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置(図示せず)、及び/または例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置(図示せず)を含む。
【0020】
制御部120は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサ(図示せず)であり、記憶部110に記憶されたプログラムを展開して実行することで、保全表示装置100全体の制御を行う。
【0021】
記憶部110及び制御部120は一体のコンピュータとして構成されていなくともよい。すなわち、記憶部110及び制御部120は、互いに通信可能に構成されていれば、互いに別体に構成され、離れた位置に配置されていてもよい。また、保全表示装置100は、図1に図示しない操作部を有し、外部からの操作入力を受け付けてもよい。記憶部110及び制御部120の詳細については後述する。
【0022】
報知部130は、図1に示す例では、巻取装置200に含まれており、サーバ10とネットワークNTを介して接続されている。報知部130は、制御部120の制御に基づいて、保全表示装置100のユーザに対する報知を行う。なお、本実施の形態において、保全表示装置100のユーザとは、保全表示装置100の管理者、または、巻取装置200を用いて巻回体(後述の図3Bを参照)の生産を行う作業者等を含む。
【0023】
図1に示すように、報知部130は、警報部131、及び表示部132を有する。警報部131は、例えばブザーやランプ等、音や光等によりユーザに対して警報を発する構成である。表示部132は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示デバイスであり、警告の内容を表示する構成である。なお、報知部130は、警報部131及び表示部132以外にも、例えばあらかじめ登録されたユーザのメールアドレスに対して警告の内容を含むメールを送信する送信部等を含んでいてもよい。
【0024】
巻取装置200は、本実施の形態においては、正極シート及び負極シートを巻き取ってリチウムイオン二次電池を生産するための装置である。図1に示すように、巻取装置200は、巻回部201及び検査機207を有する。巻回部201は、詳細は後述するが、正極シート及び負極シートを巻き取って巻回体を生産する。検査機207は、巻回部201が生産した巻回体の検査を行う。
【0025】
なお、図1に示す例では、報知部130は巻取装置200に含まれているが、本開示はこれに限定されず、報知部130は巻取装置200の外部に設置されてもよい。また、図1に示す例では、報知部130はネットワークNTを介してサーバ10に接続されているが、本開示はこれに限定されず、サーバ10と報知部130とはネットワークNTを介さずに直接接続されていてもよい。
【0026】
また、本実施の形態では、巻取装置200がリチウムイオン二次電池の正極シート及び負極シートを巻き取るための巻取装置である場合について説明を行うが、本開示はこれに限定されない。本開示の保全表示装置はリチウムイオン二次電池の巻取装置以外の生産設備に適用されてもよい。さらに、本開示の保全表示装置は生産設備以外の種々の設備に適用されてもよい。
【0027】
図2は、保全表示装置100の全体の処理工程について説明するためのフローチャートである。
【0028】
ステップS1において、制御部120は、巻取装置200の巻回部201において巻回体を生産させる。
【0029】
ステップS2において、制御部120は、検査機207に、生産された巻回体の検査を行わせる。検査機207による巻回体の検査の詳細については後述する。
【0030】
ステップS3において、制御部120は、検査機207による検査結果を記憶部110に記憶させる。これとともに、ステップS4において、制御部120は、検査機207による検査の結果、巻回体が不良品であるか否かを判定する。不良品ではないと判定した場合(ステップS4:NO)、制御部120は、処理をステップS5に進め、不良品であると判定した場合(ステップS4:YES)、処理をステップS6に進める。
【0031】
不良品ではないと判定された場合、ステップS5において、制御部120は、巻取装置200に、当該巻回体を次工程へと供給させる。
【0032】
不良品であると判定された場合、ステップS6において、制御部120は、報知部130により、不良品を検知したことを報知する。報知部130による報知についての詳細は、後述する。
【0033】
ステップS7において、制御部120は、巻取装置200に、不良品と判定された巻回体を廃棄させる。
【0034】
なお、図2に示すフローチャートのステップS5及びステップS7において、制御部120は、巻回体の次工程への供給、または巻回体の廃棄を、巻取装置200に実行させているが、本開示はこれに限定されない。例えば報知部130を介して、保全表示装置100のユーザに対して、巻回体の次工程への供給、または巻回体の廃棄を行わせるような報知を行うことで、ユーザに供給または廃棄を行わせるようにしてもよい。
【0035】
次に、巻取装置200の巻回部201及び検査機207について詳細に説明する。
【0036】
<巻回部201>
図3Aは、巻回部201の構成を例示した図である。
【0037】
図3Aに示すように、巻回部201は、第1供給リール50、第2供給リール51、第1貼合ロール205A、第2貼合ロール205B、巻芯206、巻芯回転駆動部206M、インデックステーブル208、切断部209、押さえ部210、タブ溶接部211、テープ貼り部212、及びシリンダ213を有する。巻回部201は、第1供給リール50から供給される第1シート材202と第2供給リール51から供給される第2シート材203とを第1貼合ロール205A及び第2貼合ロール205Bによって貼り合わせ、巻芯206に巻き取ることで、巻回体204を生産する装置である。巻芯回転駆動部206Mは、巻芯206を所望の回転速度で駆動させる。
【0038】
以下の説明において、巻回部201の構成のうち、巻芯206に巻回体の材料を供給する構成である、第1供給リール50、第2供給リール51、第1貼合ロール205A、第2貼合ロール205B、切断部209、押さえ部210、タブ溶接部211、テープ貼り部212、及びシリンダ213をまとめて、シート材供給部220と記載することがある。
【0039】
第1シート材202は、例えば正極材料が塗布されたシート状の部材(正極シート)であり、第2シート材203は、例えば負極材料が塗布されたシート状の部材(負極シート)である。第1シート材202は、本開示の第1電極シートの一例であり、第2シート材203は、本開示の第2電極シートの一例である。なお、上述した例では、第1シート材202が正極シート材であり、第2シート材203が負極シート材であったが、本開示はこれに限定されず、第1シート材202が負極シート材、第2シート材203が正極シート材であってもよい。
【0040】
図3Aに示す例では、インデックステーブル208が3つの巻芯206α、206β、及び206γを把持している。これら3つの巻芯206α、206β、及び206γのいずれか1つが本開示の第2巻芯の一例であり、それ以外が本開示の第1巻芯の一例である。なお、以下の説明において、3つの巻芯206α、206β、及び206γを合わせて巻芯206と記載することがある。
【0041】
インデックステーブル208は、所定の角度毎にステップ回転しながら巻芯206のそれぞれを円軌道に沿って回転させる。これにより、3つの巻芯206のうち1つが巻取位置に配置される。巻取位置とは、巻芯回転駆動部206Mによって巻芯206が回転可能となる位置である。図3Aに示す例では、巻芯206αが巻取位置に配置されている。1つの巻芯206に対する巻き取りが終了すると、インデックステーブル208によって順次次の巻芯206に切り替えられる。以下の説明において、巻芯206αに巻き取られた巻回体を巻回体204α、巻芯206βに巻き取られた巻回体を巻回体204β、巻芯206γに巻き取られた巻回体を巻回体204γと記載する。なお、以下の説明において、3つの巻回体204α、204β、及び204γをまとめて巻回体204と記載することがある。
【0042】
なお、図3Aに示す例ではインデックステーブル208が3つの巻芯を順次切り替える構成について示したが、本開示はこれに限定されず、インデックステーブル208により保持される巻芯206の数は2つ以上であればいくつでもよい。
【0043】
切断部209は、1つの巻芯206における巻き取りが完了した際に、第1シート材202及び第2シート材203を切断する。この際、押さえ部210が巻芯206に巻かれた巻回体204を押さえ、切断された第1シート材202及び第2シート材203の末端部のばたつきを押さえる。図3Aに示す例では、切断部209は第1シート材202及び第2シート材203が貼り合わせられる前に切断する位置に配置されているが、第1シート材202及び第2シート材203が貼り合わせられた後に切断する位置に配置されていてもよい。
【0044】
タブ溶接部211は、第1シート材202に対して集電タブを溶接する。テープ貼り部212は、巻芯206における巻き取り完了後に切断部209によって切断したとき、巻回体204がばらけないようにテープで留める。シリンダ213は、第2貼合ロール205Bを介して第1シート材202及び第2シート材203へ掛かる張力を調節する。
【0045】
図3Bは、巻回部201において生産される巻回体204を例示した斜視図である。図3Bでは、巻回体204を構成する第1シート材202及び第2シート材203の終端部(切断部209によって切断された端部)が巻き取られていない様子が示されている。図3Bに示すように、第1シート材202よりも第2シート材203の方が、幅(巻回体204の軸方向に沿った長さ)が大きく形成されている。
【0046】
<検査機207>
検査機207は、生産された巻回体204の検査を行う。検査機207は、例えばSS-OCT(Swept Source-Optical Coherence Tomography)装置である。検査機207は、本開示のセンサの一例である。
【0047】
図4Aは、検査機207が巻回体204を検査する様子を例示した模式図である。図4Aに示すように、検査機207は、検査対象の巻回体204に照射する光Lを巻回体204の径方向内側から外側に向かって移動させて走査し、光Lの干渉性を利用して巻回体204の内部構造の形状を示す画像を生成する。
【0048】
図4Bは、巻回体204の半径方向に沿った断面形状を例示した模式図である。また、図4Cは、図4Bに示す巻回体204の断面を検査機207が走査して生成した画像Iを例示した図である。図4B及び図4Cにおいて、上下方向が巻回体204の軸方向に、左右方向が巻回体204の半径方向に、それぞれ対応している。
【0049】
図4Bに示すように、巻回体204の半径方向に沿った断面では、第1シート材202と、第1シート材202より幅が大きい第2シート材203と、が交互に積層されている。検査機207は、巻回体204の半径方向における、第1シート材202の軸方向に沿った両端部、及び第2シート材203の軸方向に沿った両端部の位置を抽出して画像化する。図4Cに示す例(画像I)では、菱形(◆)が第1シート材202の両端部の位置を示す第1シート材端部位置データ群(本開示の第1群データの一例)に、黒丸(●)が第2シート材203の両端部の位置を示す第2シート材端部位置データ群(第2群データの一例)に、それぞれ対応している。
【0050】
巻回部201における巻回体204の生産時に、不良品が発生することがある。不良品は、例えば上述した巻回部201の各構成の不具合によって生じうる。検査機207は、上述したように巻回体204の半径方向に沿った断面形状を示す画像を生成し、形状データとして記憶部110に記憶させる。形状データに基づいて行われる、巻回体204が不良品であるか否かの判定の結果も、同様に記憶部110に記憶される。なお、形状データに基づく、不良品であるか否かの判定は、図1に示す制御部120が行ってもよいし、検査機207が行ってもよいし、図1または図3Aに図示しない他の構成が行ってもよい。以下では、制御部120が、形状データに基づいて、不良品であるか否かの判定を行う場合について説明する。
【0051】
不良品が生産される原因(以下、不良の原因)によって、不良品の断面形状が異なることが経験的に分かっている。例えば、巻芯206が不良の原因である場合と、シート材供給部220の構成のいずれかが不良の原因である場合とでは、断面形状が以下のように異なる。
【0052】
図5は、不良の原因が巻芯206である場合の、巻回体204の断面形状と形状データの例を示した模式図である。図5の上段には、図3Aに示す巻芯206α、206β、206γのそれぞれに巻き取られた巻回体204α、204β、204γそれぞれの断面形状が例示されている。図5に示す例では、巻回体204α、204βにおいては、第1シート材202及び第2シート材203の両端部の高さが揃っているが、巻回体204γにおいては第1シート材202及び第2シート材203の両端部の高さが斜めになっている。
【0053】
図5の下段には、図5の上段に例示した巻回体204α、204β、204γの断面形状のそれぞれに基づいて生成される画像Iα、Iβ、Iγが例示されている。なお、図5に示す基準線とは、第1シート材202及び第2シート材203の両端部のあるべき位置を示す、基準となる線である。図5に示すように、画像Iα、Iβでは第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線と一致(基準線と平行)であるが、画像Iγでは第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線から斜めになっている。
【0054】
図5に示す巻回体204α、204βのように、第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線と平行な断面形状を有する巻回体は、検査機207によって検査結果「良」と判断される。一方、図5に示す巻回体204γのように、第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線に対して斜めになった断面形状を有する巻回体は、検査機207によって「不良」と判断される。
【0055】
このように第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線から斜めとなる不良は、主に巻芯206に不具合が生じている場合に生じうる。巻芯206の不具合とは、例えば巻芯206の片側が摩耗等によって削れている状態等である。複数の巻芯206のいずれかに不具合が生じている場合、不良が生じた巻芯206に巻き取られた巻回体204のみが不良と判断されると考えられる。
【0056】
一方、図6図7、及び図8は、不良の原因がシート材供給部220である場合の、巻回体204の形状データの例を示した模式図である。
【0057】
図6は、不良の原因が第1貼合ロール205A及び第2貼合ロール205Bである場合に対応している。図5と同様に、図6の上段には、巻回体204α、204β、204γそれぞれの断面形状が例示されており、図6の下段には、巻回体204α、204β、204γの断面形状のそれぞれに基づいて生成される画像Iα、Iβ、Iγが例示されている。
【0058】
図6に示す例では、巻回体204α、204β、204γの全てにおいて、第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続が、同じように基準線に対して斜めになっている。制御部120は、新たに生産された巻回体204α、204β、204γから得られた形状データが、図6に示すような画像Iα、Iβ、Iγを含む場合、巻回体204α、204β、204γのすべてを「不良」であると判断する(図2のステップS4)。
【0059】
そして、制御部120は、不良の原因が、第1貼合ロール205A及び第2貼合ロール205Bであると判断する。より具体的には、図6に示すような不良は、第1貼合ロール205A及び第2貼合ロール205Bの取付け軸が、経年劣化等により傾いてしまったような場合に生じると考えられる。なお、制御部120による不良の原因の判断は、図2に示すステップS4(不良か否かの判定)と同時に行われるようにすればよい。
【0060】
図7は、不良の原因が、第1供給リール50である場合に対応している。図7では、シート材交換前の画像Iαbefore、Iβbefore、Iγbefore、および、シート材交換後の画像Iαafter、Iβafter、Iγafterが例示されている。
【0061】
図7に示す例では、シート材交換前の画像Iαbefore、Iβbefore、Iγbeforeにおいて、第1シート材202の両端部の位置(図7に示す◆)及び第2シート材203の両端部の位置(図7に示す●)の連続は基準線上にある。そして、シート材交換後の画像Iαafter、Iβafter、Iγafterにおいて、第2シート材203の両端部の位置(●)の連続は基準線上のままであるが、第1シート材202の両端部の位置(◆)の連続は、基準線と平行、かつ基準線から離れた位置となっている。
【0062】
制御部120は、新たに生産された巻回体204α、204β、204γから得られた形状データにおいて、図7に示すシート材交換後の画像Iαafter、Iβafter、Iγafterのように、第1シート材202の両端部の位置の連続が基準線と平行、かつ基準線から離れた位置にある場合、巻回体204α、204β、204γのすべてを「不良」であると判断する。そして、制御部120は、不良の原因が、第1供給リール50における第1シート材202の取り付けの不具合である可能性があると判断し、シート材交換前の画像Iαbefore、Iβbefore、Iγbeforeを記憶部110から読み出す。
【0063】
そして、制御部120は、シート材交換前の画像Iαbefore、Iβbefore、Iγbeforeにおいて、第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続がいずれも基準線上にある場合、不良の原因が、第1供給リール50における第1シート材202の取り付けの不具合であると判断する。なお、制御部120は、シート材交換前の画像Iαbefore、Iβbefore、Iγbeforeにおいても、第1シート材202の両端部の位置の連続が基準線と平行、かつ基準線から離れた位置にある場合には、不良の原因が他の要因、例えば検査機207の不良であると判断する。
【0064】
なお、図7に示す例では、第1供給リール50が不良の原因である場合について示している。第2供給リール51に対する第2シート材203の取り付けが正しく行われていない場合には、第1シート材202の両端部の位置の連続は基準線上のままであるが、第2シート材203の両端部の位置の連続が、基準線と平行、かつ基準線から離れた位置となる。
【0065】
図8は、不良の原因が、シリンダ213である場合に対応している。図8に示す例では、画像Iα、Iβ、Iγの全てにおいて、第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続が、基準線に対して同じように蛇行している。制御部120は、新たに生産された巻回体204α、204β、204γから得られた形状データが、図8に示すような画像Iα、Iβ、Iγを含む場合、巻回体204α、204β、204γのすべてを「不良」であると判断する。
【0066】
そして、制御部120は、不良の原因がシリンダ213であると判断する。より具体的には、図8に示すような不良は、例えばシリンダ213によって第1シート材202及び第2シート材203の少なくともいずれかに与えられる張力が基準値から外れているような場合に生じると考えられる。
【0067】
以上、巻芯206が不良の原因である場合と、シート材供給部220の構成のいずれかが不良の原因である場合の巻回体204の断面形状の違いについて説明した。図5に示すように、不良の原因が巻芯206である場合には、いずれかの巻芯206に巻き取られた巻回体204のみが不良となる可能性が高い。一方、図6図7、及び図8に示すように、不良の原因がシート材供給部220のいずれかの構成である場合には、全ての巻芯に巻き取られた巻回体204が同じように不良となる可能性が高くなる。
【0068】
このように、不良の原因によって巻回体204から得られる形状データは異なる。このような違いから、巻回体204に生じた不良の原因が巻芯206であるか、シート材供給部220のいずれかの構成であるかが、保全表示装置100の制御部120によって判定される。
【0069】
なお、上述した図5及び図6に関する説明では、第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線と平行であるか斜めであるかによって、その巻回体204が「良」か「不良」かを判断するとした。本開示では、より詳細に、第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線から斜めになっている場合、当該連続の傾きの大きさによって、不良の度合いを段階的に判断するようにしてもよい。具体的には、例えば第1シート材202及び第2シート材203の両端部の位置の連続の傾斜角が所定値以下である場合には当該巻回体204が「可」であると判断され、当該傾斜角が所定値を越える場合に当該巻回体204が「不良」であると判断されるようにしてもよい。同様に、図7のように第1シート材202または第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線から離れている場合、離れている距離の大きさによって、不良の度合いを段階的に判断するようにしてもよい。さらに、図8のように第1シート材202または第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線に対して蛇行している場合、蛇行の大きさによって、不良の度合いを段階的に判断するようにしてもよい。
【0070】
<保全表示装置100>
次に、上述した巻取装置200に対して行われるべき保全作業に関する情報を表示する保全表示装置100の機能構成と動作について詳細に説明する。なお、本実施の形態における保全作業とは、巻取装置200に対して、各構成の調整や部品交換等を適宜行うことで、巻取装置200で生産される巻回体204に不良が生じないようにする作業を意味する。本開示では、保全作業とは、特に上述した巻芯206の不具合を保全するための作業である。保全作業は、巻取装置200を実地で取り扱う作業員等によって行われる。
【0071】
<記憶部110>
図9は、第1の実施の形態に係る保全表示装置100の機能構成を例示したブロック図である。上述したように、保全表示装置100は、記憶部110、制御部120及び報知部130を有する(図1参照)。
【0072】
図9に示すように、記憶部110は、生産実績データベース111、設備状態診断モデルデータベース112、及び保全実績データベース113を有する。
【0073】
生産実績データベース111は、巻取装置200の生産実績に関する生産実績データが登録されたデータベースである。生産実績データには、生産された巻回体204の生産日時と、巻回体204の形状データとが含まれる。
【0074】
図10A及び図10Bは、生産実績データPDについて例示した図である。図10Aには、生産実績データPDの一部がテーブル形式で示されている。図10Aに示すように、生産実績データPDは、「生産日時」、「設備」、「検査結果」、「第1シート材」、「第2シート材」、「形状データID」等の各データを含む。
【0075】
「生産日時」データは、巻回体204が生産された生産日時に関するデータである。「設備」データは、巻取装置200が複数存在する場合に、生産実績をあげた設備を識別するためのデータである。図10Aでは例として、互いに異なる巻取装置200の識別子である「A」、「B」、「C」が示されている。
【0076】
「検査結果」データは、巻取装置200において生産された巻回体204の検査結果(図5参照)を示すデータである。図10Aでは、例として「良」または「不良」が検査結果として示されている。
【0077】
「第1シート材」データ及び「第2シート材」データは、巻回体204を生産するために使用される材料に関するデータである。「第1シート材」データ及び「第2シート材」データとしては、それぞれの材料を識別するための識別子が記憶されている。
【0078】
「形状データID」は、巻回体204の断面形状を示す形状データ(図5のIα、Iβ、Iγを参照)に対応付けられた識別番号である。図10Bには、形状データIDと形状データとの対応関係が例示されている。
【0079】
このような生産実績データPDのうち、形状データを除く各データは、例えば巻取装置200において巻回体204が生産される度に、自動で、もしくは作業員の手によって入力され、生産実績データベース111に登録される。形状データは、生産された巻回体204が検査機207(図1または図4Aを参照)によって検査された際に生成され、形状データIDと対応付けられて登録される。すなわち、生産実績データPDには、巻回体204の形状データが実質的に含まれる。これにより、生産実績データベース111には、巻回体204が生産される度に、生産された巻回体204の生産実績データPDが登録される。
【0080】
設備状態診断モデルデータベース112は、複数の設備状態診断モデルMが登録されたデータベースである。設備状態診断モデルMとは、巻取装置200に対して保全作業が必要であるか否かを診断するために使用される、診断の基準となる学習済みモデルである。設備状態診断モデルMは、不良品が生産されていた巻取装置200が、保全作業により改善された(不良品の生産割合が下がった)場合に、どのような不良に対してどのような保全作業が有効であるかが学習された学習済みモデルである。より具体的には、設備状態診断モデルMは、複数の不良品を含む巻回体の形状データと、その不良品の不良を改善するために行われた保全作業の内容と、を含むデータの集合体である。設備状態診断モデルMは、後述の設備状態診断モデル生成部124により生成される。
【0081】
設備状態診断モデルMは、その保全作業によってそれ以後の巻回体の生産時に不良品の生産割合が下がった保全作業毎に生成される。すなわち、例えば、昨日行われた保全作業に係る設備状態診断モデルMと、本日行われた保全作業に係る設備状態診断モデルMとは、それぞれ独立に生成される。
【0082】
また、設備状態診断モデルMの形式は、特に限定されないが、より診断精度を向上させるために、ニューラルネットワークモデル等の機械学習モデルが採用されることが望ましい。設備状態診断モデルMに採用されるモデルの選択は、保全表示装置100のユーザにより図示しない操作部等を介して行われてもよいし、設備状態診断モデル生成部124によりおこなわれてもよい。
【0083】
保全実績データベース113は、巻取装置200に対して実際に行われた保全作業に関する保全実績データMDが登録されたデータベースである。保全実績データMDには、例えば巻取装置200を識別するための設備データ、保全作業が行われた日時(保全日時)に関するデータ、行われた保全作業の内容を示すデータ等が含まれる。例えば数分等の短い時間で終了する保全作業の場合、保全日時は保全作業の開始時刻でも終了時刻でもよい。また保全作業が例えば数時間等と長くかかる場合、保全日時は保全作業の中央時刻とすることが望ましい。図11は、保全実績データMDについて例示した図である。保全実績データMDは、保全作業が実行された直後に、例えば巻取装置200の保全作業を実際に行った作業員等の手によって、図1に図示しない操作部等を介して保全表示装置100に入力される。
【0084】
<制御部120>
図9に示すように、制御部120は、設備状態診断部121、報知判定部122、保全効果判定部123、設備状態診断モデル生成部124、を有する。
【0085】
設備状態診断部121は、巻取装置200において新たに生産された巻回体204の形状データ、及び設備状態診断モデルMを用いて、巻取装置200の状態を診断する。診断結果は、新たに生産された巻回体204の形状データと、設備状態診断モデルMに含まれる過去の形状データと、が一致する度合いを示す一致度Cとして算出される。ここで、設備状態診断モデルMには、保全作業の内容とその保全作業が行われた時点より前の形状データとが含まれる。このことは、過去に設備状態診断モデルMに含まれる形状データを有する巻回体204の不良が発生した場合に、設備状態診断モデルMに含まれる保全作業を行ったことにより、巻回体204の不良が低減したことを意味する。すなわち、新たに生産された巻回体204の形状データと設備状態診断モデルMに含まれる形状データとの一致度Cは、設備状態診断モデルMに含まれる保全を行うことにより巻回体204の不良が改善される確率を示す。
【0086】
報知判定部122は、一致度Cに基づいて、巻取装置200の保全作業に関する報知を行うか否かを判定する。報知判定部122は、一致度Cが所定の閾値以上である場合に、保全作業を行うべき旨の報知を行うと判定し、一致度Cが所定の閾値未満である場合には、報知を行わないと判定する。保全作業に関する報知には、ユーザの注意を引くための警報や、行うことにより効果が見込める保全作業の内容を知らせる表示等が含まれる。
【0087】
保全効果判定部123は、巻取装置200に対する保全作業による効果の有無を判定する。保全効果判定部123は、例えば保全作業前と後との不良率(生産総数に対する不良品の割合)、もしくは、保全作業前と後との巻回体204の形状データ(図5参照)に基づいて、保全作業による効果の有無を判定する。
【0088】
設備状態診断モデル生成部124は、効果ありと判定された保全実績データMDと、当該保全作業が行われる前に生産された不良品の形状データと、に基づいて、設備状態診断モデルMを生成する。設備状態診断モデル生成部124が生成した設備状態診断モデルMは、上述の設備状態診断モデルデータベース112に登録される。
【0089】
<保全表示装置100における処理の全体の流れ>
次に、図12及び図13を参照して、図9に示す機能構成を有する保全表示装置100における処理の全体の流れについて説明する。図12及び図13は、保全表示装置100における処理の全体の流れを概略的に説明するシーケンス図である。
【0090】
図12には、保全表示装置100における学習処理、及び学習処理で生成された学習済みモデルを用いた識別処理の概略が示されている。
【0091】
[学習処理]
保全表示装置100における学習処理は、巻取装置200によって不良品が生産された場合に、どのような形状データの不良品が、どのような保全作業によって改善されたか、が学習された学習済みモデル(設備状態診断モデルM)を生成するための処理である。従って、学習処理は、その開始前に保全作業が行われていることが前提となっている。
【0092】
ステップS11において、保全効果判定部123は、学習処理の開始前に行われた保全作業よりさらに前に生産された複数の巻回体204の生産実績データPD(図10B参照)に含まれる形状データ(図5図6図7、及び図8参照)を取得し、これに基づいて保全作業前の不良率Nfbeforeを算出する。不良率Nfbeforeは、例えば保全作業前に製造された巻回体204のうち、不良と判定された巻回体204の数を、保全作業前の生産総数で除して算出される。不良率Nfbeforeは、本開示の第1不良率の一例である。
【0093】
ステップS12において、保全効果判定部123は、保全作業より後に生産された複数の巻回体204の生産実績データPDに含まれる形状データを取得し、これに基づいて保全作業後の不良率Nfafterを算出する。不良率Nfafterは、例えば保全作業後に製造された巻回体204のうち、不良と判定された巻回体204の数を、保全作業後の生産総数で除して算出される。不良率Nfafterは、本開示の第2不良率の一例である。
【0094】
ステップS13において、保全効果判定部123は、保全作業前後の不良率NfbeforeとNfafterとを比較し、保全作業の効果の有無を判定する。学習処理における、保全効果判定部123による保全作業の効果の判定処理についての詳細は後述する。
【0095】
ステップS13で保全作業の効果ありと判定した場合、保全効果判定部123は、ステップS14において、学習処理開始前に行われた保全作業の内容を示す保全実績データMD(図11参照)を設備状態診断モデル生成部124に出力する。
【0096】
ステップS15において、設備状態診断モデル生成部124は、効果ありと判定された保全実績データMDを用いて、設備状態診断モデルMを生成する。設備状態診断モデルMの詳細については後述する。
【0097】
ステップS16において、設備状態診断モデル生成部124は、生成した設備状態診断モデルMを設備状態診断モデルデータベース112(図9参照)に登録する。
【0098】
以上説明したステップS11からステップS16までの処理が、保全表示装置100の学習処理である。
【0099】
[識別処理]
以下説明する識別処理は、新たに生産された複数の巻回体204の断面形状を示す形状データに基づいて、巻取装置200に異常、または異常の予兆が生じているか否かを、学習処理で生成された設備状態診断モデルMを用いて識別する処理である。
【0100】
ステップS17において、設備状態診断部121は、新たに生産された複数の巻回体の形状データ(以後、新たな形状データ)を取得する。
【0101】
ステップS18において、設備状態診断部121は、新たな形状データ及び設備状態診断モデルMを用いて、一致度Cを算出する。一致度Cは、新たな形状データと、設備状態診断モデルMに含まれる過去の形状データとが一致する度合いを示す値である。すなわち、一致度Cが大きいほど、巻取装置200に異常または異常の予兆が生じており、新たに生産された巻回体204が不良品となる確率が高くなっていることになる。
【0102】
ステップS19において、報知判定部122は、一致度Cが所定の閾値以上である場合に、保全表示装置100のユーザに対して報知が必要であると判定する。一致度Cが所定の閾値以上である場合とは、巻取装置200に異常、または異常の予兆が発生しており、改めて保全作業が必要である場合に対応する。
【0103】
ステップS110において、報知判定部122は、ユーザに報知すべき保全作業の内容を報知部130に対して出力する。ユーザに報知すべき保全作業の内容は、一致度Cが所定の閾値以上であった設備状態診断モデルMに基づいて決定される。
【0104】
ステップS111及びS112において、報知部130はユーザに対して保全作業を行うべき旨の報知を行う。ステップS111では、警報部131が警報を発する。また、ステップS112では、表示部132が、ユーザに対して報知すべき保全作業の内容等を表示する。なお、図12では、ステップS111における警報、及びステップS112における保全作業の内容表示が両方行われる例が示されているが、例えば警報は発令されず、保全作業の内容表示のみが行われてもよい。
【0105】
このように、ステップS111及びS112における報知によって、報知を受けた作業者は、報知された保全作業の内容に基づいて、巻取装置200に対する保全作業を実行することになる。
【0106】
以上説明したステップS17からステップS112までの処理が、学習処理で生成された学習済みモデルを用いた保全表示装置100の識別処理である。
【0107】
図13には、保全表示装置100における更新処理、及び更新処理で更新された学習済みモデルを用いた識別処理の概略が示されている。
【0108】
[更新処理]
保全表示装置100における更新処理は、上述した学習処理より後に、新たに保全作業が行われた場合、当該保全作業による保全作業の結果に基づいて、学習済みモデル(設備状態診断モデルM)を更新する処理である。すなわち、更新処理は、その開始前に保全作業が行われていることが前提となっている。
【0109】
ステップS21において、保全効果判定部123は、保全作業前に生産された複数の巻回体204の生産実績データPD(図10A参照)に含まれる形状データ(図5参照)、及び、設備状態診断モデルデータベース112に登録された設備状態診断モデルMを用いて、保全作業前の一致度Cbeforeを算出する。
【0110】
ステップS22において、保全効果判定部123は、保全作業より後に生産された複数の巻回体204の生産実績データに含まれる形状データ、及び、設備状態診断モデルデータベース112に登録された設備状態診断モデルMに含まれる過去の形状データを用いて、保全作業後の一致度Cafterを算出する。
【0111】
ステップS23において、保全効果判定部123は、保全作業前後の一致度CbeforeとCafterとを比較し、保全作業の効果の有無を判定する。更新処理における、保全効果判定部123による保全作業の効果の判定処理についての詳細は後述する。
【0112】
ステップS23で保全作業の効果ありと判定した場合、保全効果判定部123は、ステップS24において、更新処理開始前に行われた保全作業の内容を示す保全実績データMDを設備状態診断モデル生成部124に出力する。
【0113】
ステップS25において、設備状態診断モデル生成部124は、効果ありと判定された保全実績データMDを用いて、設備状態診断モデルMを更新する。設備状態診断モデルMの更新処理の詳細については後述する。
【0114】
ステップS26において、設備状態診断モデル生成部124は、生成した設備状態診断モデルMを用いて、設備状態診断モデルデータベース112(図9参照)を更新する。
【0115】
以上説明したステップS21からステップS26までの処理が、保全表示装置100の更新処理である。
【0116】
[識別処理]
以下説明する識別処理は、新たに生産された複数の巻回体204の断面形状を示す形状データに基づいて、巻取装置200に異常、または異常の予兆が生じているか否かを、更新処理で更新された設備状態診断モデルMを用いて識別する処理である。
【0117】
ステップS27において、設備状態診断部121は、新たに生産された複数の巻回体の形状データ(以後、新たな形状データ)を取得する。
【0118】
ステップS28において、設備状態診断部121は、新たな形状データ及び設備状態診断モデルMを用いて、一致度Cを算出する。一致度Cは、新たな形状データと、設備状態診断モデルMに含まれる過去の形状データとが一致する度合いを示す値である。
【0119】
ステップS29において、報知判定部122は、一致度Cが所定の閾値以上である場合に、保全表示装置100のユーザに対して報知が必要であると判定する。一致度Cが所定の閾値以上である場合とは、巻取装置200に異常、または異常の予兆が発生しており、改めて保全作業が必要である場合である。
【0120】
ステップS210において、報知判定部122は、ユーザに報知すべき保全作業の内容を報知部130に対して出力する。ユーザに報知すべき保全作業の内容は、一致度Cが所定の閾値以上であった設備状態診断モデルMに基づいて決定される。
【0121】
ステップS211及びS212において、報知部130はユーザに対して保全作業を行うべき旨の報知を行う。ステップS211では、警報部131が警報を発する。また、ステップS212では、表示部132が、ユーザに対して報知すべき保全作業の内容等を表示する。なお、図13では、ステップS211における警報、及びステップS212における保全作業の内容表示が両方行われる例が示されているが、例えば警報は発令されず、保全作業の内容表示のみが行われてもよい。
【0122】
ステップS211及びS212における報知を受けた作業者は、報知された保全作業の内容に基づいて、巻取装置200に対する保全作業を実行する。
【0123】
以上説明したステップS27からステップS212までの処理が、保全表示装置100の識別処理である。なお、図13に示すステップS27からステップS212までの識別処理は、図12に示すステップS17からステップS112までの識別処理と実質的に同じ処理である。
【0124】
<各処理の詳細>
以下では、図12及び図13に示す学習処理、識別処理、及び更新処理のそれぞれについて詳細に説明する。
【0125】
[学習処理]
まず、保全効果判定部123及び設備状態診断モデル生成部124による学習処理について説明する。
【0126】
(保全効果判定部123の処理)
以下では、学習処理における、保全効果判定部123が実行する処理(図12のステップS11からステップS14の処理)について説明する。図14は、学習処理において、保全効果判定部123が実行する処理について説明するためのフローチャートである。
【0127】
ステップS31において、保全効果判定部123は、生産実績データベース111に登録されている生産実績データのうち、学習処理の前に保全作業が行われた時刻から所定時間の間に生産された巻回体204の生産実績データをすべて含む生産実績データリストPLbeforeを生産実績データベース111から読み出す。所定時間は、あらかじめ設定された長さの時間であり、ある程度以上の数の巻回体204が製造されるために必要な時間である。
【0128】
ステップS32において、保全効果判定部123は、生産実績データリストPLbeforeに含まれる生産実績データに基づいて、保全前不良率Nfbeforeを算出する。上述したように、保全前不良率Nfbeforeは、生産実績データリストPLbeforeに含まれる生産実績データの形状データ及び検査結果に基づいて、不良と判定された巻回体204の数を、保全作業前の生産総数で除して算出される。
【0129】
ステップS33において、保全効果判定部123は、保全が行われた時刻から所定時間後までに生産された巻回体204の生産実績データをすべて含む生産実績データリストPLafterを生産実績データベース111から読み出す。
【0130】
ステップS34において、保全効果判定部123は、生産実績データリストPLafterに含まれる生産実績データに基づいて、保全後不良率Nfafterを算出する。上述したように、保全後不良率Nfafterは、生産実績データリストPLafterに含まれる生産実績データの形状データ及び検査結果に基づいて、不良と判定された巻回体204の数を、保全作業後の生産総数で除して算出される。
【0131】
ステップS35において、保全効果判定部123は、保全前不良率Nfbeforeと保全後不良率Nfafterとの差分を取り、この差分が所定の閾値Thより大きいか否かを判定する。差分が閾値Thより大きい場合(ステップS35:YES)、保全効果判定部123は処理をステップS36に進め、そうでない場合(ステップS35:NO)、処理をステップS37に進める。
【0132】
ステップS36において、保全効果判定部123は、保全前不良率Nfbeforeより保全後不良率Nfafterの方が小さくなっていることから、保全作業の効果ありと判定する。ここで言う保全作業とは、学習処理の前、すなわち図12のステップS11より前に行われた保全作業である。
【0133】
一方、ステップS37において、保全効果判定部123は、保全前不良率Nfbeforeより保全後不良率Nfafterの方が小さくなっていないことから、保全作業の効果なし、あるいは効果が非常に小さいと判定する。
【0134】
このように、保全効果判定部123は、学習処理において、学習処理より前に行われた保全作業の効果があったか否かを判定する。
【0135】
図15A及び図15Bは、学習処理における保全作業の効果を判定する様子を説明するための概念図である。図15Aは、保全作業の効果ありと判定される場合の例を、図15Bは、保全作業の効果なしと判定される場合の例を、それぞれ示している。図15A及び図15Bには、複数の巻芯206のうちのある1つの巻芯206に巻き取られた5つの巻回体の形状データが示されている。
【0136】
図15A及び図15Bに示す例では、保全前において、ある1つの巻芯206に巻き取られた5つの巻回体のうち、2つが不良と判定されている。すなわち、保全前不良率Nfbeforeは40%である。図15Aに示す例では、保全後において、ある1つの巻芯206に巻き取られた5つの巻回体のうち、不良と判定される巻回体は0となっている(保全後不良率Nfafter=0)。一方、図15Bに示す例では、保全後において、ある1つの巻芯206に巻き取られた5つの巻回体のうち、不良と判定される巻回体は保全前と変わらず、2つとなっている(保全後不良率Nfafter=40%)。
【0137】
従って、図15Aに示す例では、保全前不良率Nfbeforeと保全後不良率Nfafterとの差分は40%である。一方、図15Bに示す例では、保全前不良率Nfbeforeと保全後不良率Nfafterとの差分は0である。従って、例えば保全効果の有無を判定する閾値Thが例えば20%である場合、図15Aに示す例では保全作業の効果ありと判定され、図15Bに示す例では保全作業の効果なしと判定される。
【0138】
なお、図15A及び図15Bでは、不良と判定される形状データの例として、第1シート材の両端部の位置(●)の連続及び第2シート材の両端部の位置(◆)の連続が、基準線から斜めになっている形状データを採用した。しかしながら、実際には、不良と判定される形状データとして、第1シート材または第2シート材の位置の連続が基準線から離れている形状データ(図7参照)、または第1シート材及び第2シート材の位置の連続が基準線に対して蛇行している形状データ(図8参照)もあり得る。後述する図21図28、及び図29においても同様である。
【0139】
(設備状態診断モデル生成部124の処理)
次に、学習処理における、設備状態診断モデル生成部124が実行する処理(図12のステップS15及びS16の処理)について説明する。図16は、学習処理において、設備状態診断モデル生成部124が実行する処理について説明するためのフローチャートである。
【0140】
ステップS41において、設備状態診断モデル生成部124は、保全効果判定部123において効果があると判定された保全作業の保全実績データMDを読み出す。
【0141】
ステップS42において、設備状態診断モデル生成部124は、生産実績データベース111から、保全前生産実績データリストPLbeforeを読み出す。なお、ここで設備状態診断モデル生成部124によって読み出される保全前生産実績データリストPLbeforeは、保全効果判定部123の処理において読み出される保全前の生産実績データリストPLbeforeと同じものである(図14のステップS31参照)。
【0142】
ステップS43において、設備状態診断モデル生成部124は、読み出した保全実績データMDと、生産実績データリストPLbeforeに含まれる生産実績データPDと、を用いて設備状態診断モデルMnewを生成する。
【0143】
ステップS44において、設備状態診断モデル生成部124は、新たに生成した設備状態診断モデルMnewを設備状態診断モデルデータベース112に登録する。
【0144】
このように、学習処理においては、どのような形状データの不良品が、どのような保全作業によって改善されたか、が学習された設備状態診断モデルMnewが新たに生成され、設備状態診断モデルデータベース112に登録される。
【0145】
[識別処理]
次に、設備状態診断部121及び報知判定部122による識別処理について説明する。
【0146】
(設備状態診断部121の処理)
以下では、識別処理における、設備状態診断部121が実行する処理(図12のステップS17及びステップS18の処理)について説明する。図17は、識別処理において、設備状態診断部121が実行する処理について説明するためのフローチャートである。
【0147】
ステップS51において、設備状態診断部121は、生産実績データベース111に新たな生産実績データPDnewが登録されたか否かを判定する。新たな生産実績データPDnewが登録されていない場合(ステップS51:NO)、設備状態診断部121は、ステップS51を繰り返す。新たな生産実績データPDnewが登録されていた場合(ステップS51:YES)、設備状態診断部121は、処理をステップS52に進める。
【0148】
ステップS52において、設備状態診断部121は、新たに登録された生産実績データPDnewに基づいて、生産実績データベース111から生産実績データリストPLを抽出する。生産実績データリストPLは、生産実績データベース111に登録されている生産実績データPDのうち、新たに登録された生産実績データPDnewの生産日時から所定時間の間に生産された巻回体204の生産実績データPDを抽出してリスト化したものである。すなわち、生産実績データリストPLには、少なくとも新たに登録された生産実績データPDnewが含まれている。
【0149】
ステップS53において、設備状態診断部121は、生産実績データリストPLに含まれる形状データと、設備状態診断モデルデータベース112から読み出した設備状態診断モデルMに含まれる過去の形状データとを用いて、一致度Cを生成する。
【0150】
より詳細には、設備状態診断部121は、生産実績データリストPLに含まれる1以上の生産実績データから、それぞれ形状データ(図5図6図7、及び図8参照)を抽出する。一方、設備状態診断部121は、設備状態診断モデルデータベース112に登録されている、複数の設備状態診断モデルMを抽出する。複数の設備状態診断モデルMは、それぞれ異なる保全作業に対応している。
【0151】
設備状態診断部121は、1以上の生産実績データから抽出された形状データと、複数の設備状態診断モデルMとの全ての組み合わせにおいて、複数の一致度Cを算出する。
【0152】
(報知判定部122の処理)
以下では、識別処理における、報知判定部122の実行する処理(図12のステップS19からステップS112の処理)について説明する。図18は、識別処理において、報知判定部122が実行する処理を説明するためのフローチャートである。
【0153】
ステップS61において、報知判定部122は、設備状態診断部121の生成した複数の一致度Cに基づいて、保全グループ毎に一致度Cを集計する。保全グループとは、保全作業の内容に対応するグループである。
【0154】
以下の説明において、保全グループ毎に一致度Cを集計した結果を集計値Aとする。集計値Aを生成する方法は、複数種類の集計方法の中から適宜決定されればよい。複数種類の集計方法の具体例としては、例えば単に一致度Cを合計する方法、一致度Cの平均を取る方法、一致度Cの中から最大値を選択する方法、上位所定数の一致度Cを抽出して平均を取る方法等が挙げられる。
【0155】
ステップS62において、報知判定部122は、保全案リストMLを生成する。保全案リストMLとは、保全グループのリストであり、例えば保全グループは集計値Aが大きい順に並べられている。図19は、保全案リストMLの具体例を示す図である。
【0156】
図19に示すように、保全案リストMLには、「保全案ID」、「設備」、「保全案」、及び「集計値」等の各データが含まれる。「保全案ID」データは、集計値の大きさによって並べ替えられた保全グループ毎に与えられた識別子である。「保全案ID」データとしては、例えば集計値が大きいほど若い番号が与えられる。「保全案」データは、保全グループに対応する保全の内容を示すデータである。「集計値」データは、保全グループ毎に集計された集計値Aの値を示すデータである。
【0157】
図19に示す例では、保全案リストMLには、巻回設備「A」において、複数の巻芯206の1つである第1巻芯の調整が保全グループ1として登録されており、第1貼合ロール205Aの調整が保全グループ2として登録されている。そして、第2供給リール51における第2シート材203の取り付け具合の調整が保全グループ3として登録されており、シリンダ213の調整が保全グループ4として登録されている。なお、図19に示す保全案リストMLに登録されている保全グループ1~4は、以下のような理由によりあらかじめ設定されている。
【0158】
図5及び図6を参照して説明したように、第1シート材端部位置データ群が示す第1シート材202の上端面の位置の連続と、第2シート材端部位置データ群が示す第2シート材203の上端面の位置の連続とが基準線から斜めになっている場合、その巻回体204は不良(または可)と判断される。そして、複数の巻芯206のいずれかに巻かれた巻回体204のみが不良である場合、その巻回体204の不良の原因は、その巻回体204が巻かれた巻芯206である可能性が高いことが過去の経験から分かっている。そして、複数の巻芯206に巻かれた全ての巻回体204が不良である場合、その巻回体204の不良の原因は、第1貼合ロール205Aまたは第2貼合ロール205Bである可能性が高いことが過去の経験から分かっている。このため、図19に示す例では、保全グループ1として第1巻芯の調整が登録されており、保全グループ2として第1貼合ロール205Aの調整が登録されている。なお、図19には図示しないが、保全案リストMLには、その他の巻芯の調整、及び第2貼合ロール205Bの調整も、他の保全グループとして登録されていることが望ましい。
【0159】
そして、図7を参照して説明したように、第1シート材端部位置データ群が示す第1シート材202の上端面の位置の連続、または、第2シート材端部位置データ群が示す第2シート材203の上端面の位置の連続が基準線から離れた位置にある場合、その巻回体204は不良と判断される。このような巻回体204の不良の原因は、第1供給リール50に対する第1シート材202の取り付け、または第2供給リール51に対する第2シート材203の取り付けの不具合である可能性が高いことが過去の経験から分かっている。このため、図19に示す例では、保全グループ3として、第2供給リール51における第2シート材203の取り付け調整が登録されている。なお、図19には図示しないが、保全案リストMLには、第1供給リール50における第1シート材202の取り付け調整も他の保全グループとして登録されていることが望ましい。
【0160】
さらに、図8を参照して説明したように、第1シート材端部位置データ群が示す第1シート材202の上端面の位置の連続、または、第2シート材端部位置データ群が示す第2シート材203の上端面の位置の連続が、基準線に対して蛇行している場合、その巻回体204は不良と判断される。このような巻回体204の不良の原因は、シリンダ213による、第1シート材202または第2シート材203へ付与される張力の不具合である可能性が高いことが過去の経験から分かっている。このため、図19に示す例では、保全グループ4として、シリンダ213の調整が登録されている。
【0161】
なお、図19において、集計値Aは一致度Cを集計した値であるため、一致度Cと同様の性質を有する。このため、集計値Aが大きいほど、その保全グループの保全内容は、対象の巻取装置200に対して行われる必要性が高いことになる。また、保全案リストMLは集計値Aが大きい順に並べられた保全グループのリストであるため、保全案リストMLの上位にある保全グループほど対象の巻取装置200に対する保全の必要性が高いことになる。
【0162】
図18の説明に戻る。ステップS63において、報知判定部122は、保全グループ毎に、集計値Aが所定の予兆閾値Thより大きいか否かを判定する。所定の予兆閾値Thとは、巻取装置200に異常が発生する予兆が生じていることが想定される集計値の最小値である。なお、本実施の形態において、巻取装置200の異常とは、例えば巻取装置200が検査結果「不良」の巻回体204を所定割合以上生産することを意味する。また、巻取装置200の異常の予兆とは、例えば巻取装置200が検査結果「可」の巻回体204を所定割合以上生産することを意味する。所定の予兆閾値Thは、例えば過去の保全実績データMD等に基づいて経験的に決定されればよい。
【0163】
集計値Aが予兆閾値Thより大きい保全グループが保全案リストMLに1つでも含まれる場合(ステップS63:YES)、報知判定部122は、処理をステップS64に進める。集計値Aが予兆閾値Thより大きい保全グループが保全案リストMLに1つも含まれない場合(ステップS63:NO)、報知判定部122は、保全を行うべき旨の報知を行う必要がないとして、処理を終了する。
【0164】
ステップS64において、報知判定部122は、保全案リストMLに含まれる保全グループのうち、集計値Aが所定の異常閾値Thより大きい保全グループがあるか否かを判定する。所定の異常閾値Thとは、予兆の段階を通り過ぎて、巻取装置200に異常が生じていることが想定される集計値の最小値である。このため、異常閾値Thは予兆閾値Thより大きな値に、例えば過去の保全実績データMD等に基づいて経験的に決定される。集計値Aが異常閾値Thより大きい保全グループが保全案リストMLに含まれる場合(ステップS64:YES)、報知判定部122は、処理をステップS66に進める。集計値Aが異常閾値Thより大きい保全グループが保全案リストMLに含まれない場合(ステップS64:NO)、報知判定部122は、処理をステップS65に進める。
【0165】
ステップS65において、報知判定部122は、ステップS63において集計値Aが予兆閾値Thより大きいと判定された保全グループに対応する保全内容を、報知部130の表示部132に報知させる。より詳細には、報知判定部122は、例えば表示部132に「以下の保全内容を実行して下さい。」等のメッセージとともに、実行が推奨される保全作業の内容を表示させる。なお、実行が推奨される保全作業の内容は、図19に示した保全案リストMLに含まれる「保全案」データに対応した内容である。
【0166】
ここで、報知判定部122は、集計値Aが予兆閾値Thより大きい保全グループが複数ある場合には、複数の保全作業の内容を集計値で順位付けをして表示するようにしてもよい。この場合、より詳細には、報知判定部122は、「以下の保全内容を実行して下さい。上位の保全内容を実行しても改善されない場合、下位の保全内容を実行すれば改善されることがあります。」等のメッセージとともに、実行が推奨される保全作業の内容を上位から順に複数表示させるようにすればよい。
【0167】
また、報知判定部122は、保全作業内容とともに、当該保全内容の保全グループに対応づけられた保全案IDを報知する。保全作業を行った作業員が保全実績データMDを入力するときに、保全実績データMDと、保全を行う契機となった保全案IDと、を対応付けて入力することで、入力された保全実績データMDが、保全表示装置100の報知を契機として実行された保全作業に対応するデータであるか否かが容易に判別可能となる。
【0168】
ステップS66において、報知判定部122は、ステップS65と同様に、表示部132に保全作業の内容を表示させるとともに、警報部131に、対象の巻取装置200に異常が生じていることを報知するための警報を発させる。対象の巻取装置200に異常の予兆ではなく、異常が生じている場合、緊急の保全作業が必要な事態である。このため、報知判定部122は、表示部132による保全作業の内容表示だけでなく、警報部131によって警報を発させ、保全表示装置100のユーザに対して速やかに異常の発生を通知する。
【0169】
このように、識別処理においては、新たに生産された巻回体の204の生産実績データPD(特に形状データ)、及び設備状態診断モデルMを用いて、巻取装置200に異常(不良品が所定割合以上生産される事態)や異常の予兆が発生しているか否かが判定される。そして、異常または異常の予兆が発生していると判定された場合、ユーザに対して報知が行われる。これにより、ユーザは巻取装置200に異常が発生している場合には異常を速やかに知ることができるとともに、異常を改善するために行うべき保全作業の内容を知ることができる。
【0170】
なお、本開示では、巻回体204の不良の原因が、巻回体204が巻かれた巻芯206、または、シート材供給部220の構成(第1貼合ロール205A、第2貼合ロール205B、第1供給リール50、第2供給リール51、またはシリンダ213)のいずれかであることが想定されている。保全表示装置100では、上述したように、複数の巻芯206のいずれか、または、シート材供給部220の構成のいずれかを保全作業の対象として保全グループ毎の集計値を算出し、集計値の大きさによってどの保全作業を行うべきかを判断している。このような判断により、複数の巻芯206のいずれか、またはシート材供給部220の構成のいずれかのうち、保全作業が行われることにより巻回体204の不良が解消される可能性が高い保全作業が抽出され、表示されることになる。
【0171】
具体的には、例えば複数の巻芯206に巻かれた巻回体204のうち一部においてのみ、第1シート材202または第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線から斜めになる不良が生じていると判断された場合、不良と判断された巻回体204が巻かれた巻芯206の保全作業に対応する保全グループの集計値が高くなる。例えば複数の巻芯206に巻かれた巻回体204の全てにおいて、第1シート材202または第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線から斜めになる不良が生じていると判断された場合には、第1貼合ロール205Aまたは第2貼合ロール205Bの保全作業に対応する保全グループの集計値が高くなる。
【0172】
そして、例えば複数の巻芯206に巻かれた巻回体204の全てにおいて、第1シート材202または第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線から離れた位置となる不良が生じていると判断された場合、第1供給リール50における第1シート材202の取り付けまたは第2供給リール51における第2シート材203の取り付けに対する保全作業に対応する保全グループの集計値が高くなる。
【0173】
さらに、例えば複数の巻芯206に巻かれた巻回体204の全てにおいて、第1シート材202または第2シート材203の両端部の位置の連続が基準線に対して蛇行する不良が生じていると判断された場合、シリンダ213に対する保全作業に対応する保全グループの集計値が高くなる。
【0174】
なお、複数の巻芯206に巻かれた巻回体204のうち、全てが不良と判断される事態は、第1貼合ロール205Aまたは第2貼合ロール205Bに不具合が生じた場合だけでなく、複数の巻芯206の全てに同時に不具合が生じた場合にも生じうる。しかしながら、複数の巻芯206の全てに同時に不具合が生じる確率は、第1貼合ロール205Aまたは第2貼合ロール205Bに不具合が生じる確率よりも大幅に低いことが想定される。このため、報知判定部122による表示内容には、より上位に第1貼合ロール205Aまたは第2貼合ロール205Bを保全する保全内容が含まれ、より下位に複数の巻芯206を保全する保全内容が含まれることが想定される。
【0175】
[更新処理]
次に、保全効果判定部123及び設備状態診断モデル生成部124による更新処理について説明する。
【0176】
(保全効果判定部123の処理)
以下では、更新処理における、保全効果判定部123が実行する処理(図13のステップS21からステップS24の処理)について説明する。図20は、更新処理において、保全効果判定部123が実行する処理について説明するためのフローチャートである。
【0177】
ステップS71において、保全効果判定部123は、記憶部110の保全実績データベース113に新たな保全実績データMDnewが登録されたか否かを判定する。新たな保全実績データMDnewが登録されていないと判定した場合(ステップS71:NO)、保全効果判定部123は、ステップS71を繰り返す。新たな保全実績データMDnewが登録されたと判定した場合(ステップS71:YES)、保全効果判定部123は、処理をステップS72に進める。
【0178】
ステップS72において、保全効果判定部123は、新たに登録された保全実績データMDnewに含まれる、「保全日時」データ(図11参照)に基づいて、新たに登録された保全実績データMDnewに対応する保全が行われてから現在までに所定時間が経過したか否かを判定する。
【0179】
保全作業の実行時刻から所定時間が経過したと判定した場合(ステップS72:YES)、保全効果判定部123は、処理をステップS73に進める。保全作業の実行時刻からまだ所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS72:NO)、保全効果判定部123は、ステップS72の処理を繰り返す。
【0180】
ステップS73において、保全効果判定部123は、保全作業から所定時間前までに生産された巻回体204の生産実績データPDをすべて含む保全前生産実績データリストPLbeforeを生産実績データベース111から読み出す。
【0181】
ステップS74において、保全効果判定部123は、新たな保全実績データMDnewに対応する保全内容の保全グループに属する設備状態診断モデルMを設備状態診断モデルデータベース112から読み出し、読み出した設備状態診断モデルMと、生産実績データリストPLbeforeとに基づいて、保全前一致度Cbeforeを生成する。保全前一致度Cbeforeの生成方法については、図17のステップS53における、設備状態診断部121による一致度Cの生成方法と同様である。
【0182】
ステップS75において、保全効果判定部123は、保全作業から所定時間後までに生産された巻回体204の生産実績データPDをすべて含む生産実績データリストPLafterを生産実績データベース111から読み出す。
【0183】
ステップS76において、保全効果判定部123は、新たに保全実績データMDnewに対応する保全内容の保全グループに属する設備状態診断モデルMを設備状態診断モデルデータベース112から読み出し、読み出した設備状態診断モデルMと、生産実績データリストPLafterとに基づいて、保全後の一致度Cafterを生成する。一致度Cafterの生成方法については、図17のステップS53における設備状態診断部121による一致度Cの生成方法と同様である。
【0184】
ステップS77において、保全効果判定部123は、保全前の一致度Cbeforeと保全後の一致度Cafterとの差分を取り、この差分が所定の閾値Thより大きいか否かを判定する。差分が閾値Thより大きい場合(ステップS77:YES)、保全効果判定部123は処理をステップS78に進め、そうでない場合(ステップS77:NO)、処理をステップS79に進める。所定の閾値Thは、過去の保全作業の実績等に基づいて、適宜決定されればよい。
【0185】
ステップS78において、保全効果判定部123は、保全前の一致度Cbeforeより保全後の一致度Cafterの方が小さくなっていることから、報知判定部122により報知された保全内容に基づいて行われた保全作業の効果ありと判定する。
【0186】
ステップS79において、保全効果判定部123は、保全前の一致度Cbeforeより保全後の一致度Cafterの方が小さくなっていないことから、報知判定部122により報知された保全内容に基づいて行われた保全作業の効果がない、あるいは非常に小さいと判定する。
【0187】
図21A及び図21Bは、更新処理における保全作業の効果を判定する様子を説明するための概念図である。図21Aは、保全作業の効果ありと判定される場合の例を、図21Bは、保全作業の効果なしと判定される場合の例を、それぞれ示している。
【0188】
図21A及び図21Bに示す例では、保全前に生産された巻回体204の形状データ、及び設備状態診断モデルMにより、保全前一致度Cbefore=0.90が算出されている。
【0189】
そして、図21Aに示す例では、保全後に生産された巻回体204の形状データ、及び設備状態診断モデルMにより、保全後一致度Cafter=0.20が算出されている。一方、図21Bに示す例では、保全後に生産された巻回体204の形状データ、及び設備状態診断モデルMにより、保全後一致度Cafter=0.90が算出されている。
【0190】
従って、図21Aに示す例では、保全前一致度Cbeforeと保全後一致度Cafterとの差分は0.70となっている。一方、図21Bに示す例では、保全前一致度Cbeforeと保全後一致度Cafterとの差分は0となっている。従って、例えば保全効果の有無を判定する閾値Thが0.30である場合、図21Aに示す例では保全作業の効果ありと判定され、図21Bに示す例では保全作業の効果なしと判定される。
【0191】
(設備状態診断モデル生成部124の処理)
次に、更新処理における、設備状態診断モデル生成部124が実行する処理(図13のステップS25及びS26の処理)について説明する。図22は、更新処理において、設備状態診断モデル生成部124が実行する処理について説明するためのフローチャートである。
【0192】
ステップS81において、設備状態診断モデル生成部124は、保全効果判定部123において効果があると判定された保全作業の保全実績データMDnewを読み出す。
【0193】
ステップS82において、設備状態診断モデル生成部124は、生産実績データベース111から、保全前生産実績データリストPLbeforeを読み出す。なお、ここで設備状態診断モデル生成部124によって読み出される保全前生産実績データリストPLbeforeは、保全効果判定部123の処理において読み出される保全前の生産実績データリストPLbeforeと同じものである(図14のステップS31参照)。
【0194】
ステップS83において、設備状態診断モデル生成部124は、読み出した保全実績データMDと、生産実績データリストPLbeforeに含まれる生産実績データPDと、を用いて新たな設備状態診断モデルMnewを生成する。
【0195】
ステップS84において、設備状態診断モデル生成部124は、新たな設備状態診断モデルMnewを用いて、設備状態診断モデルデータベース112に既に登録されている設備状態診断モデルMを更新する。
【0196】
このように、更新処理においては、学習処理において生成された設備状態診断モデルMを用いて新たな設備状態診断モデルMnewが生成され、新たな設備状態診断モデルMnewを用いて設備状態診断モデルデータベース112に既に登録されている設備状態診断モデルMが更新される。このように、効果があった保全作業に基づいて新たな設備状態診断モデルMnewを用いて設備状態診断モデルデータベース112の設備状態診断モデルMが更新されることにより、設備状態診断部121における巻取装置200の設備状態の診断精度が次第に向上する。
【0197】
本開示に係る生産装置の保全のための情報を表示する表示方法は、本開示に係る学習済みモデルの生成方法によって作成された学習済みモデルに、第1巻芯に複数周に重ねて第1電極シート及び第2電極シートが巻かれた第1巻回体の半径方向に沿って第1電極シートの第1端面の位置を表す第1群データ、第1巻回体の半径方向に沿って第1電極シートの第2端面の位置を表す第2群データを入力する。そして、第1巻回体が不良であり、不良の原因がシート材供給部であると判断され、不良の原因が第1巻芯である旨の情報が学習済みモデルから出力された場合に、第1巻回体が不良であり、かつ不良の原因はシート材供給部である旨の情報を表示装置に出力する。
【0198】
<第1の実施の形態の保全表示装置100の作用・効果>
以上説明したように、保全表示装置100の制御部120は、報知判定部122と、モデル生成部の一例である設備状態診断モデル生成部124とを有する。報知判定部122は、巻回体204の半径方向に沿って読み取られた第1端面の位置を表す第1群データ、第2端面の位置を表す第2群データをセンサとしての検査機207から取得する。そして報知判定部122は、第1群データが示す第1端面の位置の連続、第2群データが示す第2端面の位置の連続、及び予め設定された基準線に基づいて、巻回体204が不良であるか否か、及び、不良である場合に不良の原因がシート材供給部220であるか否かを判定する。巻回体204が不良である場合、報知判定部122は、不良の原因がシート材供給部220の有する第1供給リール50、第2供給リール51、第1貼合ロール205A、第2貼合ロール205B、シリンダ213のうちのどの構成であるかを判断する。そして、報知判定部122は、不良の原因に関する情報を保全のために表示部132に出力する。設備状態診断モデル生成部124は、不良の原因が保全される前後の第1群データ及び第2群データに基づき、不良の原因が保全される前の巻回体204の第1不良率と不良の原因が保全された後の巻回体204の第2不良率との第1差分を算出する。そして設備状態診断モデル生成部124は、第1差分が所定値未満と判断された場合、不良の原因が保全される前に読み取られた第1群データ及び第2群データを、学習済みモデルを生成または更新するためには用いない。一方、第1差分が所定値以上と判断された場合、不良の原因が保全される前に読み取られた第1群データ及び第2群データを用いて学習済みモデル(設備状態診断モデルM)を生成または更新する。
【0199】
一方、設備状態診断モデル生成部124は、不良の原因が保全される前の第1群データ及び第2群データを学習済みモデルに入力して得られる巻回体204の不良が改善される第1確率(一致度)を算出する。また設備状態診断モデル生成部124は、不良の原因が保全された後の第1群データ及び第2群データを学習済みモデルに入力して得られる巻回体204の不良が改善される第2確率(一致度)を算出する。そして設備状態診断モデル生成部124は、第1確率と第2確率との第2差分を算出する。第2差分が所定値未満と判断された場合、不良の原因が保全される前に読み取られた第1群データ及び第2群データは学習済みモデルを作成または更新するためには用いない。一方、第2差分が所定値以上と判断された場合、不良の原因が保全される前の第1群データ及び第2群データを用いて学習済みモデルを作成または更新する。
【0200】
以上のように、第1の実施の形態に係る保全表示装置100によれば、巻取装置200の設備状態を診断するための設備状態診断モデルMを学習により生成する学習処理と、設備状態診断モデルMを用いて、巻取装置200に異常または異常の予兆が発生しているか否かを識別し、異常または異常の予兆が発生している場合にはこれを報知する識別処理と、報知に基づいて行われた保全作業に対応する保全実績データMDに基づいて設備状態診断モデルMを更新する更新処理と、を実行することができる。
【0201】
より詳細には、学習処理においては、保全表示装置100は、新たに登録された保全実績データMDと、保全作業の前後に生産された巻回体204の生産実績データPDに含まれる形状データと、に基づいて保全作業の効果の有無を判定し、効果があると判定された保全作業に対応する保全実績データMDと形状データとを用いて設備状態診断モデルMを生成する。
【0202】
また、識別処理においては、保全表示装置100は、保全作業後に生産された巻回体204の形状データと設備状態診断モデルMとの一致度Cを保全グループ毎に算出し、一致度Cの大きさに基づいて、警報の発令と保全作業の内容の報知とを行うか、保全作業の内容の報知のみ行うか、報知自体を行わないか、を判定する。
【0203】
また、更新処理においては、保全表示装置100は、新たに登録された保全実績データMDと、保全作業の前後に生産された巻回体204の生産実績データPDに含まれる形状データと、に基づいて保全作業の効果の有無を判定し、効果があると判定された保全作業に対応する保全実績データMDと形状データとを用いて新たな設備状態診断モデルMnewを生成し、新たな設備状態診断モデルMnewを用いて設備状態診断モデルMを更新する。
【0204】
このような構成により、実際に行われた保全作業のうち、効果がある(不良率が下がった)保全作業に基づいて生成した学習済みモデル(設備状態診断モデルM)を用いて巻取装置200の状態を適切に診断することができる。また、学習済みモデルを随時更新するため、診断の精度を向上させることができる。さらに、巻取装置200に異常が発生したと診断した場合には警報を発して緊急の対応をユーザに行わせることができるとともに、異常の予兆が発生したと診断した場合には、改善を見込める保全作業の内容をユーザに報知するので、巻取装置200における不良品の発生率が低い内に保全作業が実行されうる。
【0205】
第1の実施の形態に係る保全表示装置100では、巻回体204に生じる不良の原因として、シート材供給部220のいずれかの構成、すなわち、第1供給リール50、第2供給リール51、第1貼合ロール205A、第2貼合ロール205B、またはシリンダ213が想定されている。第1の実施の形態に係る保全表示装置100では、報知判定部122が、一致度Cを保全グループ毎に集計し、集計値Aの大きさに基づいてユーザに報知する保全作業の内容を決定する。このため、シート材供給部220のいずれかの構成のうち、最も保全による不良改善の可能性が高い保全作業がユーザに対して報知される。可能性が高い保全作業が複数ある場合には、順位付けされた状態で複数の保全作業が表示される。これにより、ユーザが報知された保全作業を順位が高い順に行うことで、巻回体204の不良が好適に改善される。
【0206】
本実施の形態に係る保全表示装置は、報知部と、保全効果判定部と、設備状態診断モデル生成部と、を有する。報知部は、過去に行われた保全作業毎に、保全作業の内容とその保全作業より前の生産実績データとが関連づけられてデータベースに登録された設備状態診断モデルと、新たに入力された生産実績データとに基づいて、保全作業の内容を報知する。保全効果判定部は、保全作業が行われた時点より前の生産実績データと、保全作業が行われた時点より後の生産実績データとに基づいて、保全作業の効果があったか否かを判定する。設備状態診断モデル生成部は、効果があったと判定された保全作業が行われた時点より前の生産実績データと、効果があったと判定された保全作業の内容とに基づいて、新たな設備状態診断モデルを生成する。
【0207】
本実施の形態に係る保全表示装置は、新たに登録された生産実績データと、設備状態診断モデルに含まれる保全作業前の生産実績データと、が一致する度合いである設備状態診断指標を生成する設備状態診断部をさらに有する。そして、報知部は、設備状態診断指標に基づいて保全作業の内容の報知を行う。
【0208】
本実施の形態に係る保全表示装置において、設備状態診断モデル生成部は、効果があると判定された保全作業が行われた時点より前の生産実績データと、その保全作業に関する保全実績データと、を用いて、機械学習により設備状態診断モデルを生成する。
【0209】
本実施の形態に係る保全表示装置は、報知部が報知した保全作業の内容に基づかない保全作業が実行され、その保全作業に関する保全実績データが新たに入力された場合に、生産実績データに含まれる生産設備の生産物の検査結果に関するデータに基づいて、新たに入力された保全実績データの保全作業が行われた時点から所定時間前までの間の生産実績データのうち検査結果が不良である不良率を算出する。さらに、新たに入力された保全実績データの保全作業が行われた時点から所定時間後までの間の生産実績データのうち検査結果が不良である不良率を算出する。そして、保全効果判定部は、保全作業前の不良率と保全作業後の不良率との差分を算出し、差分の大きさに基づいて保全作業の効果があったか否かを判定する。
【0210】
(第2の実施の形態)
以下では、本開示の第2の実施の形態について説明する。図23は、第2の実施の形態に係る保全表示装置100Aの構成を例示した図である。第2の実施の形態に係る保全表示装置100Aは、サーバ10Aの制御部120Aが有する保全効果判定部123Aの行う処理が上記説明した第1の実施の形態に係る保全効果判定部123と異なっている。
【0211】
以下では、第1の実施の形態との相違点について説明を行う。第1の実施の形態と同様の構成については、第1の実施の形態と同様の符号を付して説明し、第1の実施の形態と異なる構成については符号に「A」を付して説明する。
【0212】
第1の実施の形態では、保全表示装置100のユーザが、保全表示装置100により報知された内容以外の保全作業を行うことについては想定していなかった。しかしながら、実際には、巻取装置200の運用上、現場の判断等によって適宜必要な保全作業(保全表示装置100の報知した保全内容以外の保全作業)が随時行われうる。本第2の実施の形態では、このように保全表示装置100Aが報知した保全内容以外の保全作業が行われる場合にも対応できる保全表示装置100Aについて説明する。
【0213】
図24は、第2の実施の形態において、保全効果判定部123Aが実行する処理について説明するためのフローチャートである。
【0214】
図24のステップS91において、保全効果判定部123Aは、記憶部110の保全実績データベース113に新たに保全実績データMDnewが登録されたか否かを判定する。新たな保全実績データMDnewが登録されていないと判定した場合(ステップS91:NO)、保全効果判定部123Aは、ステップS91を繰り返す。新たな保全実績データMDnewが登録されていたと判定した場合(ステップS91:YES)、保全効果判定部123Aは、処理をステップS92に進める。
【0215】
ステップS92において、保全効果判定部123Aは、新たに登録された保全実績データMDnewに含まれる保全日時データに基づいて、新たに登録された保全実績データMDnewに対応する保全作業から所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、第1の実施の形態にて説明した所定時間と同様、例えば保全作業が行われてから対象の巻取装置200において、ある程度以上の数の巻回体204が製造されるために必要な時間である。
【0216】
保全作業から所定時間が経過したと判定した場合(ステップS92:YES)、保全効果判定部123Aは、処理をステップS93に進める。保全作業から所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS92:NO)、保全効果判定部123Aは、ステップS92の処理を繰り返す。
【0217】
ステップS93において、保全効果判定部123Aは、新たに登録された保全実績データMDnewと対応付けられた保全案IDが存在するか否かを判定する。第1の実施の形態にて説明したように、報知判定部122は、保全作業内容とともに、当該保全内容の保全グループに対応づけられた保全案IDを報知する。これにより、保全作業を行った作業員が保全実績データMDを入力するときに、保全実績データMDと、保全を行う契機となった保全案IDと、が対応付けられる。本ステップS93では、このようにして、新たに登録された保全実績データMDnewが保全表示装置100Aによる報知を契機として行われた保全であるか否かを判定している。
【0218】
ステップS93において、新たに登録された保全実績データMDnewと対応付けられた保全案IDが存在する場合、その保全実績データMDnewに対応する保全作業は、保全表示装置100Aによる保全内容の報知を契機としたものであると判断される。また、新たに登録された保全実績データMDnewと対応付けられた保全案IDが存在しない場合、その保全実績データMDnewに対応する保全作業は、保全表示装置100Aによる保全内容の報知を契機としたものではないと判断される。
【0219】
ステップS93において、新たに登録された保全実績データMDnewに保全案IDが含まれていると判定された場合(ステップS93:YES)、保全効果判定部123Aは、処理をステップS94に進める。一方、保全実績データMDnewに保全案IDが含まれていないと判定した場合(ステップS93:NO)、保全効果判定部123Aは、処理をステップS95に進める。
【0220】
ステップS94は、新たに登録された保全実績データMDnewに対応する保全作業が保全表示装置100Aによる保全内容の報知を契機とした場合の処理である。このためステップS94において、保全効果判定部123Aは、保全表示装置100Aによる保全内容の報知を契機とした保全作業の効果の有無を判定する処理へと移行する。なお、保全表示装置100Aによる保全内容の報知を契機とした保全に対する保全効果判定処理は、上述した第1の実施の形態において図20を参照して説明した処理とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0221】
一方、ステップS95は、保全実績データMDnewに対応する保全作業が保全表示装置100Aによる保全内容の報知を契機としたものではない場合の処理である。このため、保全効果判定部123Aは、保全表示装置100Aを契機としない保全作業の効果の有無を判定する処理へと移行する。なお、保全表示装置100Aによる保全内容の報知を契機とした保全に対する保全効果判定処理は、上述した第1の実施の形態において図14を参照して説明した処理とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0222】
以上説明したように、第2の実施の形態に係る保全表示装置100Aによれば、保全表示装置100Aによる保全内容の報知を契機としたものではない保全作業が行われた場合でも、保全実績データMDnewを好適に登録することができる。なお、図24にて説明した保全効果判定部123Aの処理は、上述した学習処理または更新処理のいずれにおいても実行されうる。
【0223】
本実施の形態に係る保全表示装置は、新たに登録された保全実績データの保全作業が行われた時点から所定時間前までの間の生産実績データと、新たに入力された保全実績データの保全作業の契機となった報知における保全作業の内容が関連づけられた設備状態診断モデルと、に基づいて保全作業前の設備状態診断指標を生成する。そして、新たに入力された保全実績データの保全作業が行われた時点から所定時間後までの間の生産実績データと、新たに入力された保全実績データの保全作業の契機となった報知における保全作業の内容が関連づけられた設備状態診断モデルと、に基づいて保全作業後の設備状態診断指標を生成する。そして、保全効果判定部は、保全作業前の設備状態診断指標と保全作業後の設備状態診断指標との差分を算出し、差分の大きさに基づいて保全作業の効果があったか否かを判定する。
【0224】
(第3の実施の形態)
以下、本開示の第3の実施の形態について説明する。図25は、第3の実施の形態に係る保全表示装置100Bの構成を例示した図である。第3の実施の形態に係る保全表示装置100Bは、サーバ10Bの記憶部110Bが効果なし設備状態診断モデルデータベース114をさらに有し、制御部120Bが報知判定部122B、保全効果判定部123B、及び設備状態診断モデル生成部124Bを有する点で上記説明した第1の実施の形態に係る保全表示装置100と異なっている。
【0225】
上述した第1の実施の形態において、設備状態診断モデル生成部124は、効果があると判定された保全実績データMDを用いて新たな設備状態診断モデルMnewを生成していた(図16参照)。第3の実施の形態においては、設備状態診断モデル生成部124Bは、保全の効果がないと判定された保全実績データMDも用いて、新たな設備状態診断モデルMnewを生成する。
【0226】
図26は、第3の実施の形態において、設備状態診断モデル生成部124Bが行う処理について説明するためのフローチャートである。なお、図26にて説明する処理は、学習処理または更新処理のいずれにおいても実行されうる。
【0227】
ステップS101において、設備状態診断モデル生成部124Bは、新たに登録された保全実績データMDnewを保全実績データベース113から読み出す。ここで、設備状態診断モデル生成部124Bは、保全効果判定部123Bによる効果の判定結果にかかわらず、保全実績データMDnewを読み出す。
【0228】
ステップS102において、設備状態診断モデル生成部124Bは、生産実績データベース111から、保全作業前の生産実績データリストPLbeforeを読み出す。
【0229】
ステップS103において、設備状態診断モデル生成部124Bは、読み出した保全実績データMDnewと、生産実績データリストPLbeforeに含まれる生産実績データPDと、を用いて、設備状態診断モデルMnewを生成する。
【0230】
ステップS104において、設備状態診断モデル生成部124Bは、新たに生成された設備状態診断モデルMnewのうち、効果なしと判定された保全実績データMDに基づいて生成されたモデルを、効果なし設備状態診断モデルデータベース114に登録する。一方、設備状態診断モデル生成部124Bは、新たに生成された設備状態診断モデルMnewのうち、効果ありと判定された保全実績データMDに基づいて生成されたモデルを、設備状態診断モデルデータベース112に登録する。
【0231】
このように、設備状態診断モデル生成部124Bは、効果があると判定された保全の保全実績データMDを用いた設備状態診断モデルMを生成するだけでなく、効果がないと判定された保全の保全実績データMDを用いた設備状態診断モデルMを生成する。
【0232】
このように生成された設備状態診断モデルMを用いて、設備状態診断部121及び報知判定部122Bによる識別処理が実行される。設備状態診断部121が実行する処理については、上述した第1の実施の形態において図17を参照して説明した処理とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0233】
以下では、第3の実施の形態の識別処理において、報知判定部122Bが実行する処理について説明する。図27は、第3の実施の形態において、報知判定部122Bが行う処理について説明するためのフローチャートである。
【0234】
ステップS111において、報知判定部122Bは、設備状態診断部121の生成した一致度Cを用いて、保全グループ毎に一致度Cを集計し、集計値Aを生成する。なお、第3の実施の形態において、各保全グループには、効果があると判定された保全作業か否かを示す情報(フラグ)が、保全効果判定部123Bによって関連づけられている。
【0235】
ステップS112において、報知判定部122Bは、集計値Aの大きい順に並べられた保全グループのリストである保全案リストMLを生成する。
【0236】
ステップS113において、報知判定部122Bは、保全案リストMLに含まれる保全グループ毎に、効果ありと判定されたか否かを判定する。上記したように、第3の実施の形態においては、設備状態診断部121によって保全グループ毎に効果があるか否かを示すフラグが関連づけられているので、報知判定部122Bはこのフラグを参照することで本ステップS113の処理を行う。報知判定部122Bは、効果ありと判定された保全作業の保全グループ(ステップS113:YES)に関しては、処理をステップS114に進める。一方、報知判定部122Bは、効果なしと判定された保全作業の保全グループ(ステップS113:NO)に関しては、処理をステップS117に進める。
【0237】
ステップS114において、報知判定部122Bは、効果ありと判定された保全グループ毎に、集計値Aが所定の予兆閾値Thより大きいか否かを判定する。集計値Aが予兆閾値Thより大きい保全グループが1つでも存在する場合(ステップS114:YES)、報知判定部122Bは、処理をステップS115に進める。集計値Aが予兆閾値Thより大きい保全グループが存在しない場合(ステップS114:NO)、報知判定部122Bは、処理を終了する。
【0238】
ステップS115において、報知判定部122Bは、効果ありと判定された保全グループのうち、集計値Aが所定の異常閾値Thより大きい保全グループがあるか否かを判定する。集計値Aが異常閾値Thより大きい保全グループが存在する場合(ステップS115:YES)、報知判定部122Bは、処理をステップS116に進める。集計値Aが異常閾値Thより大きい保全グループが存在しない場合(ステップS115:NO)、報知判定部122Bは、処理をステップS118に進める。
【0239】
ステップS116において、報知判定部122Bは、ステップS114において集計値Aが予兆閾値Thより大きいと判定された保全グループに対応する保全内容を報知するとともに、対象の巻取装置200に異常が生じていることを報知するための警報を発報する。
【0240】
ステップS117において、報知判定部122Bは、効果なしと判定された保全の保全グループ毎に、集計値Aが所定の効果なし閾値Thieより大きいか否かを判定する。効果なし閾値Thieは、効果がないことを報知するべきと想定される集計値の最小値である。集計値Aが効果なし閾値Thieより大きい保全グループが存在する場合(ステップS117:YES)、報知判定部122Bは、処理をステップS118に進める。集計値Aが効果なし閾値Thieより大きい保全グループが存在しない場合(ステップS117:NO)、報知判定部122Bは、処理を終了する。
【0241】
ステップS118において、報知判定部122Bは、ステップS114において集計値Aが予兆閾値Thより大きいと判定された保全グループに対応する保全内容を報知する。同時に、報知判定部122Bは、ステップS117において集計値Aが効果なし閾値Thieより大きいと判定された保全グループに対応する保全内容を報知する。
【0242】
このような構成により、第3の実施の形態に係る保全表示装置100Bによれば、巻取装置200を改善することができると想定される保全内容だけでなく、過去に実施されたが効果がなかった保全作業の内容についてユーザに報知することができる。これにより、ユーザは、効果がない保全作業を繰り返し行う事態を回避することができるので、保全に要する時間を短縮するとともに、保全に要する労力を軽減することができる。
【0243】
本実施の形態に係る保全表示装置において、設備状態診断モデル生成部は、効果がないと判定された保全作業が行われた時点より前の生産実績データと、その保全作業に関する保全実績データと、に基づいて、新たな設備状態診断モデルを生成する。報知部は、効果があると判定された保全作業の内容を効果がある保全作業として報知するとともに、効果がないと判定された保全作業に関する保全実績データに基づいて生成された設備状態診断モデルに関連づけられた保全作業の内容を、効果がない保全作業として報知する。
【0244】
(変形例)
以上、図面を参照しながら本開示に係る実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素は任意に組み合わせられてもよい。
【0245】
<変形例1>
上述した実施の形態では、学習処理において、保全効果判定部123による保全作業の効果の有無の判定処理では、保全作業前後の不良率の差分が所定の閾値より大きいか否かによって効果の有無を判定していた(図15A及び図15Bを参照)。
【0246】
しかしながら、保全効果判定部123は、他の方法を用いて保全作業の効果の有無を判定してもよい。図28A及び図28Bは、学習処理における、保全効果判定部123による保全作業の効果の有無の判定方法の変形例を説明するための図である。
【0247】
図28A及び図28Bに示す例では、保全前不良率は参照せず、保全後不良率Nfafterが所定閾値(例えば20%)より大きいか否かに基づいて、効果の有無を判定している。図28Aに示す例ではNfafter=0%であり、所定閾値20%より小さいため、効果ありと判定される。一方、図28Bに示す例ではNfafter=40%であり、所定閾値20%より大きいため、効果なしと判定される。
【0248】
同様に、更新処理においても、保全効果判定部123は、上述した実施の形態とは異なる方法を用いて保全作業の効果の有無を判定してもよい。
【0249】
また、上述した実施の形態では、更新処理において、保全効果判定部123による保全作業の効果の有無の判定処理では、保全作業前後の一致度の差分が所定の閾値より大きいか否かによって効果の有無を判定していた(図21A及び図21Bを参照)。
【0250】
図29A及び図29Bは、更新処理における、保全効果判定部123による保全作業の効果の有無の判定方法の変形例を説明するための図である。
【0251】
図29A及び図29Bに示す例では、保全前一致度は参照せず、保全後一致度Cafterが所定閾値(例えば0.30)より大きいか否かに基づいて、効果の有無を判定している。図29Aに示す例ではCafter=0.20であり、所定閾値0.30より小さいため、効果ありと判定される。一方、図29Bに示す例ではCafter=0.90であり、所定閾値0.30より大きいため、効果なしと判定される。
【0252】
<変形例2>
上述した実施の形態では、設備状態診断モデル生成部124が、どのような不良に対してどのような保全作業が有効であるかが学習された学習済みモデルである設備状態診断モデルMを生成し、報知判定部122が当該モデルを用いて、保全作業を行うべきとの報知を行うか否かを判定していた。しかしながら、本開示はこれに限定されず、単に生産された巻回体204の形状データ(図5参照)に基づいて巻回体204が不良であるか否かの判定を行ってもよい。そして、巻回体204が不良である場合には不良の原因であるシート材供給部220のいずれかの構成の保全作業を行うように報知してもよい。
【0253】
このような変形例2では、保全表示装置の制御部が、以下のような制御を行う。すなわち、制御部は、新たな巻回体の形状データを取得したとき、第1シート材及び第2シート材の両端部の位置の連続が基準線から外れているか否かを判断する。基準線から外れていないと判断された場合、制御部は、保全作業を行うべきとの報知を行わない。基準線から外れていると判断された場合、制御部は、形状データに基づいて、不良の原因を判断する。
【0254】
変形例2において、制御部は、基準線から外れている度合いが所定の度合い以下である場合と、所定の度合いより大きい場合とで報知方法を変更してもよい。このような構成により、設備状態診断モデルMを生成せずとも、シート材供給部220のいずれかの構成を保全すべきであるかを判断して報知することができる。しかしながら、本変形例2よりも上述した実施の形態1~3の方が不良の原因を判断する精度が高いため、本開示の目的を達成するためには、上述した実施の形態1~3の方が本変形例2よりも好適である。
【0255】
<変形例3>
上述した実施の形態では、説明のため、保全表示装置100(100A、100B)が記憶部110(110B)、制御部120(120A、120B)、および報知部130を備える構成について説明したが、本開示はこれに限定されない。上述した実施の形態でも説明したが、本開示では、記憶部および制御部が、互いに通信可能に構成されていれば、互いに別体に構成され、離れた位置に配置されていてもよい。また、報知部は生産装置に含まれていても、生産装置の外部に設置されていてもよい。また、報知部は記憶部および制御部とネットワークを介して接続されていても、直接接続されていてもよい。
【0256】
このように、本開示に係る保全表示装置において、記憶部、制御部、および報知部のそれぞれは互いに独立した別体の装置であって、かつ互いに独立して動作する装置であってもよい。また、記憶部、制御部、および報知部のそれぞれは互いに通信可能であれば、配置される場所については特に限定されない。報知装置は例えば生産装置が配置される工場等に配置され、記憶部および制御部は例えばクラウド上に配置されるいわゆるクラウドサーバに含まれてもよい。
【0257】
また、上述した実施の形態では、制御部120(120A、120B)が、学習処理、更新処理、及び識別処理を全て行っていた。なお、学習処理とは設備状態診断モデルMを生成する処理であり、更新処理とは設備状態診断モデルMを更新する処理である。また、識別処理とは設備状態診断モデルMを用いて新たに生産された複数の巻回体204に異常、または異常の予兆が生じているか否かを、設備状態診断モデルMを用いて識別する処理である。そして、識別処理において、制御部120(120A、120B)が報知部130を制御して報知処理を行っていた。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0258】
例えば、制御部は学習処理または更新処理のみを行い、報知部が制御部から設備状態診断モデルを受信して、受信した設備状態診断モデルを用いて識別処理を行うようにしてもよい。このような構成により、制御部と報知部との通信量の増大を抑えることができるとともに、複数の報知部が制御部に接続されている場合でも、識別処理の負荷を各報知部に分散できるので、制御部に処理が集中することによる処理の遅延を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0259】
本開示は、生産設備の保全に関する情報を表示する保全表示装置に有用である。
【符号の説明】
【0260】
10、10A、10B サーバ
50 第1供給リール
51 第2供給リール
100、100A、100B 保全表示装置
110、110B 記憶部
111 生産実績データベース
112 設備状態診断モデルデータベース
113 保全実績データベース
114 効果なし設備状態診断モデルデータベース
120、120A、120B 制御部
121 設備状態診断部
122、122B 報知判定部
123、123A、123B 保全効果判定部
124、124B 設備状態診断モデル生成部
130 報知部
131 警報部
132 表示部
200 巻取装置
220 シート材供給部
201 巻回部
202 第1シート材
203 第2シート材
204、204α、204β、204γ 巻回体
205A 第1貼合ロール
205B 第2貼合ロール
206、206α、206β、206γ 巻芯
206M 巻芯回転駆動部
207 検査機
208 インデックステーブル
209 切断部
210 押さえ部
211 タブ溶接部
212 テープ貼り部
213 シリンダ
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図29A
図29B