(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】路側機及び運行方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240329BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2020054838
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】緒方 俊文
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-520815(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
H05B 39/00-39/10、45/00-45/59、
47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側機であって、
照明ユニットと、
前記路側機の周辺に位置する物体を検知する少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサによって前記路側機の周辺
に車両が停止したことが検知された場合に、
停止した前記車両が自動運転車両であるか否かを判定し、停止した前記車両が前記自動運転車両であると判定した場合に、停止した後の前記自動運転車両が1以上の所定の動作の1つを起こすときの安全性の判定を行う演算装置と、
前記
安全性の判定の結果を前記自動運転車両に送信する通信部とを備える
路側機。
【請求項2】
前記1以上の所定の動作には、前記自動運転車両のドアを開けることが含まれる
請求項1に記載の路側機。
【請求項3】
前記1以上の所定の動作には、前記自動運転車両による車両通行帯への復帰の開始が含まれる
請求項1又は2に記載の路側機。
【請求項4】
前記照明ユニットは、前記少なくとも1つのセンサによって前記自動運転車両による前記復帰の開始が検知された場合、点灯する
請求項3に記載の路側機。
【請求項5】
前記演算装置は、前記自動運転車両による前記復帰が完了するまでの期間、前記安全性の判定を繰り返し行い、前記
安全性の判定の結果を前記自動運転車両に送信する
請求項3又は4に記載の路側機。
【請求項6】
前記演算装置は、前記少なくとも1つのセンサによって検知された物体のうち、前記自動運転車両以外の物体の位置及び速度に基づいて前記安全性の判定を行う
請求項1~5のいずれか1項に記載の路側機。
【請求項7】
自動運転車両の運行方法であって、請求項1~6のいずれか1項に記載の路側機を停留所として利用する
運行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路側機及び運行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外照明にセンサを設け、センサが検知した情報を自動運転に利用するシステムが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、自動運転を行う車両(自動運転車両)が普及していくにあたって、自動運転車両と自動運転を行っていない車両とが混在して道路を走行する状況が想定される。この場合に、自動運転車両が停止した後に行う動作によっては、円滑な交通及び安全な通行の妨げになる場合がある。このため、停止後の自動運転車両には、適切な動作を行わせることが求められる。
【0005】
そこで、本発明は、自動運転車両の停止後の動作を支援することができる路側機及び運行方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る路側機は、照明ユニットと、前記路側機の周辺に位置する物体を検知する少なくとも1つのセンサと、前記少なくとも1つのセンサによって前記路側機の周辺に自動運転車両が停止したことが検知された場合に、停止した後の前記自動運転車両が1以上の所定の動作の1つを起こすときの安全性の判定を行う演算装置と、前記判定の結果を前記自動運転車両に送信する通信部とを備える。
【0007】
本発明の一態様に係る運行方法は、自動運転車両の運行方法であって、上記一態様に係る路側機を停留所として利用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自動運転車両の停止後の動作を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る路側機と道路とを示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る路側機の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る路側機による、自動運転車両からの乗員の降車を支援する動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、自動運転車両から乗員が降車する様子を示す概略図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る路側機による、自動運転車両の車線復帰を支援する動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、自動運転車両の車線復帰を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施の形態に係る路側機及び運行方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
また、本明細書において、「自動運転」は、無人の車両が完全に自動で運転される完全自動運転(レベル5)を意味するだけでなく、車両を運転する運転者をサポートする運転支援(レベル1)、部分自動運転(レベル2)、条件付自動運転(レベル3)及び高度自動運転(レベル4)をも意味している。
【0013】
(実施の形態)
[概要]
まず、実施の形態に係る路側機の概要について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る路側機1と道路2とを示す概略図である。
【0014】
図1に示される路側機1は、道路2上又は道路2の近傍に設置された構造物である。本実施の形態では、路側機1は、自動運転車両90の停止目標になる。つまり、従来のバス停及びタクシースタンドの標識のように、路側機1は、自動運転車両90が停止すべき位置として定められた区域の近傍に設置されている。路側機1の近傍において、自動運転車両90への乗員の乗り降りが行われる。路側機1の近傍は、自動運転車両90の停留所として機能する。
【0015】
図1に示される道路2は、片側2車線の道路である。道路2は、2つの車両通行帯3a及び3bと、路肩4と、歩道5とを含んでいる。車両通行帯3aには、自動運転車両90と、一般車両91及び94とが走行している。車両通行帯3bには、一般車両92及び93が走行している。
【0016】
本実施の形態では、自動運転車両90は、自動運転によって旅客の運送サービスを行う車両である。自動運転車両90は、旅客ではなく、荷物の運送サービスを行ってもよい。
【0017】
一般車両91~94はいずれも、自動運転を行っていない、又は、自動運転を行うことができない車両である。このように、道路2では、自動運転車両90と、自動運転を行わない一般車両91~94とが混在している。
【0018】
自動運転車両90と一般車両91~94とがいずれも走行している場合、及び、自動運転車両90が路側機1の近傍に停止しようとする場合、道路2の円滑な交通を確保することは比較的簡単である。例えば、自動運転車両90が停止する場合には、方向指示器又はハザードランプなどを利用することにより、停止の意思を周囲の一般車両91~94に知らせることができる。
【0019】
一方で、停止した自動運転車両90が次に行う動作を一般車両91~94に知らせることは難しい。例えば、一般車両91~94は、自動運転車両90がドアを開けようとしているのか、車線復帰を行おうとしているのかを判別することが難しい。また、自動運転車両90にとっても、一般車両91~94の動きを予測することが難しいので、安全かつ円滑に車線復帰を行うことが難しい。
【0020】
そこで、本実施の形態に係る路側機1は、自動運転車両90の停止後の動作を支援する。具体的には、路側機1は、路側機1の周辺環境に基づいて、自動運転車両90が所定の動作を起こすときの安全性の判定を行い、当該判定の結果を自動運転車両90に送信する。これにより、自動運転車両90の動作の支援及び円滑な交通の確保を実現することができる。
【0021】
[構成]
続いて、路側機1の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図2は、本実施の形態に係る路側機1の構成を示すブロック図である。
図1及び
図2に示されるように、路側機1は、照明ユニット10と、センサ20と、演算装置30と、通信部40とを備える。
【0022】
照明ユニット10は、道路2を照明する道路灯である。例えば、
図1に示されるように、照明ユニット10は、支柱6の上部に取り付けられており、車両通行帯3a及び3b、路肩4並びに歩道5を照明する。
【0023】
照明ユニット10が道路2に向けて照射する照明光は、例えば白色光であるが、特に限定されない。照明光は、自動運転車両90及び一般車両91~94の走行を妨げない程度の有色光であってもよい。照明ユニット10は、例えば、複数のLED(Light Emitting Diode)素子を有する。あるいは、照明ユニット10は、レーザ光源又は有機EL(Electroluminescence)素子を有してもよい。
【0024】
センサ20は、路側機1の周辺に位置する物体を検知する。センサ20の検知範囲(すなわち、路側機1の周辺)は、照明ユニット10が照明する道路2を含む範囲である。例えば、検知範囲は、数mから数百mの範囲であるが、これに限定されない。検知範囲には、車両通行帯3a、路肩4及び歩道5が含まれる。検知範囲と、照明ユニット10からの照明光の照明範囲とは、少なくとも一部が重複している。例えば、検知範囲は、照明範囲の一部又は全部を含んでいる。あるいは、照明範囲が、検知範囲の一部又は全部を含んでいてもよい。検知範囲と照明範囲とは完全に一致していてもよい。
【0025】
センサ20は、例えばイメージセンサである。なお、センサ20は、熱画像センサ、赤外線センサ又はLIDAR(Light Detection and Ranging)であってもよい。
【0026】
なお、路側機1は、複数のセンサ20を備えてもよい。複数のセンサ20の各々の検知範囲は、互いに異なっていてもよく、同じであってもよい。例えば、複数のセンサ20は、同種のセンサであってもよく、異種のセンサであってもよい。複数のセンサ20を利用することで、路側機1の周辺の検知範囲及び検知精度を高めることができる。例えば、路側機1は、道路2の上流側を撮影するイメージセンサ(カメラ)と、下流側を撮影するイメージセンサと、支柱6の近傍を撮影するイメージセンサとが設けられていてもよい。
【0027】
センサ20は、道路2を撮影することにより、画像又は映像を取得する。センサ20は、画像又は映像を解析することにより、道路2上に位置する物体を検知する。検知対象の物体には、車両通行帯3a若しくは3b又は路肩4を通行する自動運転車両90及び一般車両91~94が含まれる。また、検知対象の物体には、歩道5を通行する歩行者及び自転車などが含まれる。また、検知対象の物体には、車両からの落下物若しくは周辺から飛ばされた看板、又は、放置自転車などの道路2の通行を妨げる障害物が含まれる。センサ20は、検知した物体の画像及び位置情報を演算装置30に出力する。
【0028】
演算装置30は、センサ20による検知結果を用いて所定の演算処理を行う。具体的には、演算装置30は、センサ20によって路側機1の周辺に自動運転車両90が停止したことが検知された場合に、停止した後の自動運転車両90が1以上の所定の動作の1つを起こすときの安全性を判定する。
【0029】
演算装置30は、路側機1の周辺に停止した車両が自動運転車両90であるか否かを、当該車両との通信の可否によって判定する。具体的には、演算装置30は、路側機1の周辺に車両が停止したことがセンサ20によって検知された場合、通信部40を制御することで、当該車両との通信を試みる。演算装置30は、通信が確立された場合に当該車両が自動運転車両90であると判定する。演算装置30は、通信が確立できなかった場合に当該車両が自動運転車両90ではないと判定する。
【0030】
本実施の形態では、演算装置30は、自動運転車両90が複数の所定の動作のうちの1つを行うときの安全性を判定する。所定の動作の1つは、自動運転車両90のドアを開けることである。また、所定の動作の1つは、自動運転車両90による車両通行帯3aへの復帰の開始である。具体的な判定の例については、後で説明する。
【0031】
演算装置30は、例えば、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)によって実現される。なお、集積回路は、LSIに限られず、専用回路又は汎用プロセッサであってもよい。演算装置30は、例えば、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサなどを含んでいる。また、演算装置30は、プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内の回路セルの接続及び設定が再構成可能なリコンフィギュラブルプロセッサであってもよい。演算装置30が実行する機能は、ソフトウェアで実現されてもよく、ハードウェアで実現されてもよい。
【0032】
通信部40は、自動運転車両90と通信する。通信部40による通信は、例えば、電波を利用した無線通信である。無線通信は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)若しくはZigBee(登録商標)、又は、4G LTE(Long Term Evolution)若しくは5Gなどの移動体通信である。あるいは、通信部40による通信は、可視光通信又はLi-Fi通信であってもよい。
【0033】
通信部40は、演算装置30による判定の結果を自動運転車両90に送信する。演算装置30による判定の結果は、例えば、自動運転車両90が所定の動作を行うのに安全であるか否かを示すフラグ情報である。自動運転車両90は、安全であることを示すフラグ情報を受信した場合、所定の動作(例えば、ドアの開閉又は車線復帰など)を行う。自動運転車両90は、安全でないことを示すフラグ情報を受信した場合、所定の動作の実行を停止又は待機する。
【0034】
[動作]
続いて、路側機1の動作について説明する。本実施の形態では、路側機1の動作は、乗員の降車の支援処理と、自動運転車両90の車線復帰の支援処理とを含んでいる。
【0035】
[降車支援]
以下では、まず、路側機1による乗員の降車の支援処理について、
図3及び
図4を用いて説明する。
【0036】
図3は、本実施の形態に係る路側機1による、自動運転車両90からの乗員の降車を支援する動作を示すフローチャートである。
図4は、自動運転車両90から乗員80が降車する様子を示す概略図である。
【0037】
図3に示されるように、まず、センサ20が撮影を開始する(S10)。なお、照明ユニット10は、常時点灯していてもよく、夜間のみ点灯していてもよい。あるいは、照明ユニット10は、センサ20によって自動運転車両90、一般車両91~94、歩行者81又は自転車82が検知された場合にのみ、検知されてから一定期間、又は、検知されなくなるまで点灯してもよい。
【0038】
次に、路側機1の近傍に自動運転車両90が停止するのをセンサ20が検知するまで待機する(S11でNo)。自動運転車両90が停止した場合(S11でYes)、演算装置30は、センサ20による検知結果に基づいて自動運転車両90の周辺状況を確認する(S12)。
【0039】
具体的には、演算装置30は、センサ20によって検知された物体の位置と速度(進行方向も含む)とに基づいて、自動運転車両90の周辺に障害物が現に存在している、又は、一定期間内に進入する可能性が高いか否かを判定する。一定期間は、数秒から数分間の範囲であるが、特に限定されない。
【0040】
図4には、自動運転車両90の周辺95を破線で模式的に表している。自動運転車両90の周辺95は、例えば、自動運転車両90のドアが開閉時に通過する範囲である。あるいは、自動運転車両90の周辺95は、自動運転車両90の周囲の幅1m~数mの範囲であってもよい。また、自動運転車両90の停止位置が固定であると仮定することで、自動運転車両90の周辺95は、路側機1の近傍の予め定められた範囲であってもよい。
【0041】
障害物は、歩行者81若しくは自転車82、又は、一般車両91~94などの他の車両などのドアの開閉を妨げうる物体である。なお、乗員80の降車が歩道5側に限定されている場合(例えば、自動運転車両90の車両通行帯3b側のドアのロックが解錠できない場合)、障害物は、歩道5を通行する歩行者81又は自転車82のみであってもよい。この場合、自動運転車両90の周辺95は、歩道5を含み、路肩4、車両通行帯3a及び3bを含まなくてもよい。
【0042】
演算装置30は、障害物が自動運転車両90の周辺95に存在しない、かつ、一定期間内に進入する可能性が低い場合に、安全であると判定する。演算装置30は、障害物が自動運転車両90の周辺95に存在している、又は、一定期間内に進入する可能性が高い場合に、安全ではないと判定する。障害物が自動運転車両90の周辺95に進入するか否かは、障害物の現在位置と速度と進行方向とによって判定することができる。例えば、
図4に示される例では、歩行者81及び自転車82が自動運転車両90の周辺95から離れた位置に位置しているので、安全であると判定することができる。
【0043】
演算装置30が安全ではないと判定した場合(S13でNo)、演算装置30は、通信部40を介して、安全ではないこと、すなわち、降車の待機を自動運転車両90に通知する(S14)。以降、周辺状況の確認(S12)と安全性の判定(S13)とが繰り返される。このとき、自動運転車両90は、乗員80の降車を待機させるためのメッセージをディスプレイ又はスピーカなどから出力することで、乗員80に降車ができない状況であることを通知する。あるいは、自動運転車両90は、ドアのロックの解錠を許可しない(すなわち、施錠状態を維持する)ことにより、乗員80が降車するのを防止してもよい。乗員80への通知と施錠状態の維持とはいずれか一方のみが行われてもよく、両方が行われてもよい。
【0044】
演算装置30が安全であると判定した場合(S13でYes)、演算装置30は、通信部40を介して、安全であること、すなわち、降車可能であることを自動運転車両90に通知する(S15)。自動運転車両90は、乗員80の降車が可能であることを示すメッセージをディスプレイ又はスピーカなどから出力することで、乗員80の降車を促すことを通知する。あるいは、自動運転車両90は、安全であることの通知を受けるまでは、ドアのロックの施錠状態を維持し、安全であることの通知を受けた後にドアのロックを解錠してもよい。
【0045】
演算装置30は、センサ20による検知結果に基づいて乗員80の降車を確認する(S16)。乗員80の降車が確認できない場合(S16でNo)、路側機1は、周辺状況の確認(S12)からの処理を繰り返す。これにより、安全性が保たれた状態で乗員80を自動運転車両90から降車させることができる。
【0046】
図4に示されるように、自動運転車両90から乗員80が降車したことが確認できた場合(S16でYes)、路側機1による降車の支援処理が終了する。本実施の形態では、降車の支援処理が終了した後、路側機1は、
図5に示される車線復帰の支援処理を行う。
【0047】
[車線復帰の支援]
次に、路側機1による自動運転車両90の車線復帰の支援処理について、
図5及び
図6を用いて説明する。
【0048】
図5は、本実施の形態に係る路側機1による、自動運転車両90の車線復帰を支援する動作を示すフローチャートである。
図6は、自動運転車両90の車線復帰を示す概略図である。
【0049】
まず、演算装置30は、センサ20による検知結果に基づいて自動運転車両90の周辺状況を確認する(S20)。なお、センサ20による撮影が行われていない場合には、最初にセンサ20が撮影を開始する。
【0050】
具体的には、演算装置30は、センサ20によって検知された物体の位置と速度(進行方向も含む)とに基づいて、車両通行帯3a又は3bを走行する一般車両91~94が車線復帰の障害になるか否かを判定する。例えば、演算装置30は、各車両の位置及び速度に基づいて、自動運転車両90が安全に車線復帰できるか否かを判定する。
【0051】
図6には、自動運転車両90が車線復帰する際に通過する通行範囲96を破線で模式的に表している。通行範囲96は、例えば、自動運転車両90の現在位置から斜め前方に向けて広がる範囲であり、車両通行帯3a及び路肩4に含まれている。通行範囲96は、自動運転車両90の停止位置、並びに、車線復帰時の自動運転車両90の進行方向及び速度に応じて定められる。また、自動運転車両90の停止位置、車線復帰時の進行方向及び速度が固定であると仮定することで、通行範囲96は、路肩4及び車両通行帯3aに含まれる、路側機1の近傍の予め定められた範囲であってもよい。
【0052】
演算装置30は、他の車両(一般車両91~94など)が通行範囲96に存在しない、かつ、一定期間内に進入する可能性が低い場合に、安全であると判定する。演算装置30は、他の車両が通行範囲96に存在している、又は、一定期間内に進入する可能性が高い場合に、安全ではないと判定する。障害物が通行範囲96に進入するか否かは、障害物の現在位置と速度と進行方向とによって判定することができる。例えば、
図6に示される例では、一般車両91~94が通行範囲96から離れた位置に位置しているので、安全であると判定することができる。
【0053】
演算装置30が安全ではないと判定した場合(S21でNo)、演算装置30は、通信部40を介して、安全ではないこと、すなわち、車線復帰の待機を自動運転車両90に通知する(S22)。以降、周辺状況の確認(S20)と安全性の判定(S21)とが繰り返される。このとき、自動運転車両90は、車線復帰が可能であることが通知されるまで、車線復帰の動作を行わない。
【0054】
演算装置30が安全であると判定した場合(S21でYes)、演算装置30は、通信部40を介して、安全であること、すなわち、車線復帰可能であることを自動運転車両90に通知する(S23)。自動運転車両90は、当該通知を受けることにより、車線復帰の動作を開始する。
【0055】
また、演算装置30は、照明ユニット10を所定の態様で点灯させる(S24)。例えば、照明ユニット10が常時点灯している場合には、照明ユニット10は、点灯の態様を変更する。具体的には、照明ユニット10は、点滅点灯を行う。あるいは、照明ユニット10は、通常点灯とは異なる色(例えば、赤色)の光を出射してもよい。照明ユニット10の点灯の態様が変化することにより、一般車両91~94などに自動運転車両90の車線復帰を知らせることができる。
【0056】
次に、演算装置30は、センサ20による検知結果に基づいて自動運転車両90の発進開始を確認する(S25)。発進開始は、自動運転車両90の移動が開始されることである。演算装置30は、センサ20によって自動運転車両90の位置を検出することによって発進開始を確認可能である。自動運転車両90の発進開始が確認できない場合(S25でNo)、路側機1は、周辺状況の確認(S20)からの処理を繰り返す。これにより、安全性が保たれた状態で自動運転車両90の車線復帰を行わせることができる。
【0057】
次に、発進開始が確認された場合(S25でYes)、演算装置30は、センサ20による検知結果に基づいて自動運転車両90の周辺状況を確認する(S26)。ステップS26は、ステップS20と同じである。通行範囲96は、自動運転車両90の位置に応じて随時更新されてもよい。
【0058】
演算装置30が安全ではないと判定した場合(S27でNo)、演算装置30は、通信部40を介して、安全ではないこと、すなわち、車線復帰の一時停止を自動運転車両90に通知する(S28)。以降、周辺状況の確認(S26)と安全性の判定(S27)とが繰り返される。このとき、自動運転車両90は、車線復帰が可能であることが通知されるまで、車線復帰の動作を行わない。
【0059】
演算装置30が安全であると判定した場合(S27でYes)、演算装置30は、車線復帰が完了するまで(S29でNo)、周辺状況の確認(S26)と安全性の判定(S27)とを繰り返す。自動運転車両90の車線復帰が完了した場合(S29でYes)、路側機1による車線復帰の支援処理が終了する。
【0060】
このように、一度、ステップS21で演算装置30が安全であると判定した場合であっても、急に歩行者若しくは車両が現れる場合、又は、車両の予期せぬ動き(例えば、一般車両93の急な車線変更)によって安全性が損なわれる場合がある。このため、自動運転車両90が車線復帰のために発進を開始した後も、ステップS26~S29に示されるように、センサ20及び演算装置30が随時、自動運転車両90の周辺を監視する。これにより、車線復帰が完了するまで安全性の判定が継続して行われ、自動運転車両90は、安全を保ちながら車線復帰を完了させることができる。
【0061】
なお、照明ユニット10による点灯の態様の変更は、乗員80の降車時に行われてもよい。つまり、
図3に示されるステップS15において、照明ユニット10は、所定の態様で点灯してもよい。これにより、歩行者81などに自動運転車両90からの降車(ドアが開くこと)を知らせることができる。
【0062】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る路側機1は、照明ユニット10と、路側機1の周辺に位置する物体を検知する少なくとも1つのセンサ20と、少なくとも1つのセンサ20によって路側機1の周辺に自動運転車両90が停止したことが検知された場合に、停止した後の自動運転車両90が1以上の所定の動作の1つを起こすときの安全性の判定を行う演算装置30と、判定の結果を自動運転車両90に送信する通信部40とを備える。
【0063】
これにより、停止後の自動運転車両90が所定の動作を行う場合に安全性が確保されているか否かを自動運転車両90に知らせることができるので、自動運転車両90の停止後の動作を支援することができる。
【0064】
また、例えば、1以上の所定の動作には、自動運転車両90のドアを開けることが含まれる。
【0065】
これにより、安全な状態でドアを開けることができるので、乗員80の降車を安全に行わせることができる。
【0066】
また、例えば、1以上の所定の動作には、自動運転車両90による車両通行帯3aへの復帰の開始が含まれる。
【0067】
これにより、安全かつ円滑な交通を維持しながら自動運転車両90を車線復帰させることができる。
【0068】
また、例えば、照明ユニット10は、少なくとも1つのセンサ20によって自動運転車両90による車両通行帯3aへの復帰の開始が検知された場合、点灯する。
【0069】
これにより、照明ユニット10を利用して周辺の一般車両91~94に、自動運転車両90の車線復帰の意思を伝えることができる。
【0070】
また、例えば、演算装置30は、自動運転車両90による車両通行帯3aへの復帰が完了するまでの期間、安全性の判定を繰り返し行い、判定の結果を自動運転車両90に送信する。
【0071】
これにより、車線復帰が完了するまで安全性を確保することができる。
【0072】
また、例えば、演算装置30は、少なくとも1つのセンサ20によって検知された物体のうち、自動運転車両90以外の物体の位置及び速度に基づいて安全性の判定を行う。
【0073】
これにより、周辺の物体の動きを精度良く判別することができるので、安全性の判定精度を高めることができる。
【0074】
また、本実施の形態に係る運行方法は、自動運転車両90の運行方法であって、路側機1を停留所として利用する。
【0075】
これにより、路側機1を自動運転車両90の停留所として利用することで、乗員の乗り降りをスムーズに行うことができる。
【0076】
(その他)
以上、本発明に係る路側機及び運行方法について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0077】
例えば、上記の実施の形態では、停止後の自動運転車両90の動作として、ドアを開けること、及び、車線復帰の2つの動作を説明したが、安全性の判定が行われる動作は、これら2つの動作の一方のみでもよい。また、安全性の判定が行われる動作には、他の動作が含まれていてもよい。
【0078】
また、例えば、路側機1は、自動運転車両90専用の停留所でなくてもよい。路側機1は、電柱、道路標識、信号機、道路灯又は街路灯などであってもよい。
【0079】
また、上記実施の形態で説明した装置間の通信方法については特に限定されるものではない。装置間で無線通信が行われる場合、無線通信の方式(通信規格)は、例えば、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、又は、無線LAN(Local Area Network)などの近距離無線通信である。あるいは、無線通信の方式(通信規格)は、インターネットなどの広域通信ネットワークを介した通信でもよい。また、装置間においては、無線通信に代えて、有線通信が行われてもよい。有線通信は、具体的には、電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)又は有線LANを用いた通信などである。
【0080】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよく、あるいは、複数の処理が並行して実行されてもよい。また、路側機1が備える構成要素の複数の装置への振り分けは、一例である。例えば、一の装置が備える構成要素を他の装置が備えてもよい。
【0081】
例えば、上記実施の形態において説明した処理は、単一の装置(システム)を用いて集中処理することによって実現してもよく、又は、複数の装置を用いて分散処理することによって実現してもよい。また、上記プログラムを実行するプロセッサは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、又は分散処理を行ってもよい。
【0082】
また、上記実施の形態において、演算部などの構成要素の全部又は一部は、専用のハードウェアで構成されてもよく、あるいは、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサなどのプログラム実行部が、HDD又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0083】
また、制御部などの構成要素は、1つ又は複数の電子回路で構成されてもよい。1つ又は複数の電子回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0084】
1つ又は複数の電子回路には、例えば、半導体装置、IC又はLSIなどが含まれてもよい。IC又はLSIは、1つのチップに集積されてもよく、複数のチップに集積されてもよい。ここでは、IC又はLSIと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又は、ULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれるかもしれない。また、LSIの製造後にプログラムされるFPGAも同じ目的で使うことができる。
【0085】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路又はコンピュータプログラムで実現されてもよい。あるいは、当該コンピュータプログラムが記憶された光学ディスク、HDD若しくは半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0086】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1 路側機
2 道路
10 照明ユニット
20 センサ
30 演算装置
40 通信部
90 自動運転車両
91、92、93、94 一般車両