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  • 特許-非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240329BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240329BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240329BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20240329BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240329BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/66 A
H01M10/0569
H01M4/40
H01M4/134
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021558159
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2020016986
(87)【国際公開番号】W WO2021100225
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019211855
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 正久
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-063940(JP,A)
【文献】特開2015-099849(JP,A)
【文献】特開2016-115457(JP,A)
【文献】特開2001-243957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 4/66
H01M 10/0569
H01M 4/40
H01M 4/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムを吸蔵または放出可能な正極、
負極集電体を含む負極、および
溶媒を含む電解液
を具備し、
充電時に前記負極上にリチウム金属が析出し、放電時に前記リチウム金属が前記電解液に溶解し、かつ
前記溶媒が、ビニレンカーボネートのみからなる、
非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記負極集電体は、リチウムと合金を形成しない金属で構成されている、
請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記負極集電体は、銅を含む、
請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池の研究開発が盛んに行われている。リチウム二次電池では、リチウム二次電池のために用いられる電極に依存して、充放電電圧、充放電サイクル特性、および保存特性のような電池特性が変化する。電極活物質を改善することにより、電池特性の向上が図られている。
【0003】
特許文献1は、金属リチウムまたは難黒鉛化性炭素材料のいずれかよりなる負極、正極、および非水電解液を備えた非水電解質二次電池を開示している。特許文献1は、非水溶媒としてビニレンカーボネートを含む非水電解質二次電池が良好なサイクル特性を有することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-268230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、サイクル特性が向上した非水電解質二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
リチウムを吸蔵または放出可能な正極、
負極集電体を含む負極、および
溶媒を含む電解液
を具備し、
充電時に前記負極上にリチウム金属が析出し、放電時に前記リチウム金属が前記電解液に溶解し、かつ
前記溶媒が、ビニレンカーボネートのみからなる、
非水電解質二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、サイクル特性が向上した非水電解質二次電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態による非水電解質二次電池の縦断面図である。
図2図2は、実施例および比較例1から比較例4の非水電解質二次電池のサイクル試験の結果を示すグラフである。
図3図3は、図2のグラフの一部分を拡大したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
負極活物質としてリチウム金属が用いられる場合、高い重量エネルギー密度および高い体積エネルギー密度を有するリチウム二次電池が得られる。しかしながら、当該リチウム二次電池では、充電時に負極上に析出したリチウム金属の一部が電解液と反応する。当該反応により、負極活物質としてリチウム金属が用いられたリチウム二次電池では、充放電効率が低く、およびサイクル特性が劣悪であるという問題が引き起こされる。
【0010】
本発明者は、上記の課題を克服するため鋭意検討した結果、以下に示す本開示の非水電解質二次電池を完成させた。
【0011】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係る非水電解質二次電池は、
リチウムを吸蔵または放出可能な正極、
負極集電体を含む負極、および
溶媒を含む電解液
を具備し、
充電時に前記負極上にリチウム金属が析出し、放電時に前記リチウム金属が前記電解液に溶解し、かつ
前記溶媒が、ビニレンカーボネートのみからなる。
【0012】
第1態様に係る非水電解質二次電池は、ビニレンカーボネートのみからなる溶媒を含む電解液を具備しているので、ビニレンカーボネートが還元されることによって緻密な被膜が負極表面上に形成される。充電時におけるリチウム金属の析出は、この被膜と負極との間で生じる。すなわち、この被膜により、負極上に析出したリチウム金属が保護されるので、析出したリチウム金属に電解液が触れにくくなる。このため、電解液および析出したリチウム金属の間の反応が抑制される。したがって、第1態様に係る非水電解質二次電池のサイクル特性が向上する。
【0013】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る非水電解質二次電池では、前記負極集電体は、リチウムと合金を形成しない金属で構成されていてもよい。
【0014】
第2態様では、サイクル特性が向上した非水電解質二次電池が得られる。
【0015】
本開示の第3態様において、例えば、第1または第2態様に係る非電解質二次電池では、前記負極集電体は、銅を含んでいてもよい。
【0016】
銅は非常に高い導電性を有するので、負極集電体の集電特性が向上する。したがって、第3態様に係る非水電解質二次電池では、サイクル特性がより向上する。
【0017】
以下、本開示に係る非水電解質二次電池の実施形態について説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0018】
(実施形態)
図1は、本開示の一実施形態に係る非水電解質二次電池10を模式的に示す縦断面図である。図1に示すように、非水電解質二次電池10は、円筒形の電池ケース、巻回式の電極群14、および図示しない電解液を備える円筒形電池である。電極群14は、電池ケース内に収容されており、かつ電解液と接している。
【0019】
電池ケースは、有底円筒形の金属製容器であるケース本体15と、ケース本体15の開口部を封口する封口体16とによって構成されている。ケース本体15と封口体16との間には、ガスケット27が配置されている。ガスケット27によって、電池ケースの密閉性が確保されている。ケース本体15内において、電極群14の巻回軸方向における電極群14の両端には、絶縁板17および18がそれぞれ配置されている。
【0020】
ケース本体15は、例えば、段部21を有する。段部21は、ケース本体15の側壁を部分的に外側からプレスすることによって形成され得る。段部21は、ケース本体15の側壁において、ケース本体15によって規定された仮想円の周方向に沿って環状に形成されていてもよい。このとき、封口体16は、例えば、段部21の開口部側の面によって支持される。
【0021】
封口体16は、フィルタ22、下弁体23、絶縁部材24、上弁体25、およびキャップ26を備えている。封口体16では、これらの部材がこの順番で積層されている。封口体16は、キャップ26がケース本体15の外側に位置し、フィルタ22がケース本体15の内側に位置するように、ケース本体15の開口部に装着される。
【0022】
封口体16を構成する上記の各部材のそれぞれは、例えば、円板形状またはリング形状である。上記の各部材は、絶縁部材24を除いて、互いに電気的に接続している。
【0023】
電極群14は、正極11、負極12、およびセパレータ13を有する。正極11、負極12、およびセパレータ13は、いずれも帯状である。帯状の正極11および負極12の幅方向は、例えば、電極群14の巻回軸に平行である。セパレータ13は、正極11と負極12との間に配置されている。正極11および負極12は、これらの電極の間にセパレータ13を介在させた状態で渦巻状に巻回されている。
【0024】
電極群14の巻回軸に垂直な方向における非水電解質二次電池10の断面を観察したとき、正極11および負極12は、これらの電極間にセパレータ13を介在させた状態で、ケース本体15によって規定された仮想円の半径方向に交互に積層されている。
【0025】
正極11は、正極リード19を介して、正極端子を兼ねるキャップ26と電気的に接続されている。正極リード19の一端は、例えば、正極11の長さ方向における正極11の中央付近に接続されている。正極リード19は、絶縁板17に形成された貫通孔を通って、正極11からフィルタ22まで延びている。正極リード19の他端は、例えば、フィルタ22の電極群14側の面に溶接されている。
【0026】
負極12は、負極リード20を介して、負極端子を兼ねるケース本体15と電気的に接続されている。負極リード20の一端は、例えば、負極12の長さ方向における負極12の端部に接続されている。負極リード20の他端は、例えば、ケース本体15の内底面に溶接されている。
【0027】
以下では、非水電解質二次電池10の各構成が具体的に説明される。
【0028】
(正極11)
正極11は、リチウムを吸蔵または放出することができる。正極11は、例えば、リチウムを含有する。正極11は、正極集電体と、正極活物質層とを有していてもよい。正極活物質層は、例えば、正極集電体上に配置されている。正極活物質層は、例えば、正極集電体の表面に、正極集電体に直接接して配置されている。正極集電体および正極活物質層のそれぞれは、例えば、帯状である。正極集電体は、例えば、互いに向かい合う1対の主面を有する。「主面」とは、正極集電体の最も広い面積を有する面を意味する。正極11では、2つの正極活物質層が、それぞれ、正極集電体の1対の主面上に形成されていてもよい。ただし、正極11では、1つの正極活物質層が正極集電体の一方の主面上のみに形成されていてもよい。正極11において、正極リード19と接続している領域および負極12と対向していない領域からなる群から構成される少なくとも1つの領域では、正極集電体の一方の主面上のみに正極活物質層が形成されていてもよい。
【0029】
正極集電体には、公知の非水電解質二次電池に用いられる正極集電体が用いられ得る。正極集電体の材料としては、例えば、金属材料が挙げられる。金属材料としては、銅、ステンレス鋼、鉄、およびアルミニウムが挙げられる。
【0030】
正極活物質層は、正極活物質を含む層である。正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出する特性を有する材料であり得る。正極活物質は、例えば、リチウムを含有し、かつ当該リチウムを吸蔵または放出し得る材料である。正極活物質としては、遷移金属酸化物、フッ化物、ポリアニオン、フッ素化ポリアニオン、遷移金属硫化物、およびオリビン構造を有するリン酸化物が挙げられる。遷移金属酸化物としては、LiCoO2、LiNiO2、およびLi2Mn24が挙げられる。リン酸化物としては、LiFePO4、LiNiPO4、およびLiCoPO4が挙げられる。正極活物質層は、複数の種類の正極活物質を含んでいてもよい。
【0031】
正極活物質層は、必要に応じて、導電助剤、イオン伝導体、およびバインダーを含んでいてもよい。
【0032】
導電助剤およびイオン伝導体は、正極11の抵抗を低減するために用いられる。
導電助剤として、
(i) カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、フラーレン、および酸化黒鉛のような炭素材料(すなわち、炭素導電助剤)、および
(ii) ポリアニリン、ポリピロール、およびポリチオフェンのような導電性高分子化合物
が挙げられる。
イオン伝導体として、
(i)ポリメチルメタクリレートおよびポリメタクリル酸メチルのようなゲル電解質、
(ii)ポリエチレンオキシドのような有機固体電解質、および
(iii)Li7La3Zr212のような無機固体電解質
が挙げられる。
【0033】
バインダーは、正極11を構成する材料の結着性を向上させるために用いられる。バインダーとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびポリイミドのような高分子材料が挙げられる。
【0034】
正極11は、リチウム金属で構成されていてもよい。正極として、リチウム金属を用いた場合、金属正極としての溶解析出の制御が容易となる。
【0035】
(負極12)
非水電解質二次電池10の負極12では、充電によりリチウム金属が析出する。より具体的には、電解液に含まれるリチウムイオンが、充電により負極12で電子を受け取ってリチウム金属になり、次いで当該リチウム金属が負極12に析出する。電解液に含まれるリチウムイオンは、例えば、正極11に含有されるリチウムおよび電解液の電解質塩としてのリチウム塩からなる群から選択される少なくとも1つに由来する。負極12で析出したリチウム金属は、放電により電解液中にリチウムイオンとして溶解する。すなわち、非水電解質二次電池10では、充電時に負極12上に析出したリチウム金属が、負極活物質として用いられる。
【0036】
負極12は、負極集電体を有する。負極集電体は、例えば、帯状である。負極集電体は、例えば、互いに向かい合う1対の主面を有する。
【0037】
負極集電体は、通常、導電性シートから構成されている。負極集電体の材料は、金属および合金のような金属材料であってもよい。金属材料は、リチウムと反応しない材料であればよい。より具体的には、金属材料は、リチウムと合金を形成しない材料であってもよい。このような金属材料としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、およびこれらの金属元素を含む合金が挙げられる。合金は、銅合金およびステンレス鋼であってもよい。負極集電体は、これらのリチウムと合金を形成しない金属材料で構成されていてもよい。高い導電性、非水電解質二次電池10の容量の向上、および充放電効率の向上の観点から、金属材料は、銅および銅合金からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。負極集電体は、少なくとも1種の金属材料含んでいてもよい。負極集電体は、金属材料以外の導電性材料を含んでいてもよい。
【0038】
負極集電体の形状の例としては、箔およびフィルムが挙げられる。負極集電体は、多孔質であってもよい。高い導電性の観点から、負極集電体は、金属箔であってもよい。負極集電体は、銅を含む金属箔であってもよい。銅を含む金属箔としては、例えば、銅箔および銅合金箔が挙げられる。金属箔における銅の含有率は、50質量%以上であってもよく、80質量%以上であってもよい。特に、金属箔は、金属として実質的に銅のみを含む銅箔であってもよい。負極集電体の厚さは、例えば、5μm以上20μm以下である。
【0039】
負極12は、非水電解質二次電池10の完全放電状態において、負極集電体のみから構成されていてもよい。
【0040】
(セパレータ13)
セパレータ13は、例えば、イオン透過性および絶縁性を有する。セパレータ13としては、例えば、多孔性シートが用いられる。セパレータ13としては、例えば、微多孔フィルム、織布、および不織布が挙げられる。セパレータ13の材料は、特に限定されず、高分子材料であってもよい。
【0041】
高分子材料としては、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、およびセルロースが挙げられる。オレフィン樹脂は、エチレンおよびプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1つをモノマー単位として含む重合体を含んでいてもよい。この重合体は、単独重合体であってもよく、または共重合体であってもよい。この重合体としては、ポリエチレン、およびポリプロピレンが挙げられる。
【0042】
セパレータ13は、高分子材料の他に、必要に応じて、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、無機フィラーが挙げられる。
【0043】
(電解液)
電解液は、溶媒を含む。溶媒は、ビニレンカーボネートのみからなる。ビニレンカーボネートはその環内に二重結合を含んでいるため、重合されやすい。ビニレンカーボネートは、還元時に負極12上で重合される。このようなビニレンカーボネートの還元時の重合により、ビニレンカーボネートのポリマーからなる緻密な被膜が負極12の表面上に形成される。充電時におけるリチウム金属の析出は、この被膜と負極12との間で生じる。すなわち、この被膜により、負極12上に析出したリチウム金属が保護される。その結果、析出したリチウム金属に電解液が触れにくくなる。このため、電解液と析出したリチウム金属との間の反応が抑制される。これにより、非水電解質二次電池10のサイクル特性が向上する。
【0044】
電解液にリチウム塩が存在する状態でビニレンカーボネートが還元された場合、リチウム塩を含むビニレンカーボネートのポリマーが生成される。このようなリチウム塩を含むポリマーからなる被膜は、リチウムイオン伝導性を有する。このようなポリマーからなる被膜によって負極12の表面が被覆されることにより、ビニレンカーボネートのさらなる還元が抑制される。このようにして、負極12でのリチウム金属の析出反応が進行する。したがって、非水電解質二次電池10は、高い充放電効率を有する。
【0045】
電解液において、ビニレンカーボネートに他の溶媒が混合されている場合、生成されるポリマーに他の溶媒および他の溶媒の分解生成物からなる群から選択される少なくとも1つが含まれる。この結果、ポリマーからなる被膜による負極12の表面が完全に被覆されなくなる。その結果、析出したリチウム金属が電解液に直接的に接触することになる。この接触が、電解液と析出したリチウム金属との間の反応を招き、サイクル特性を低下させる。したがって、電解液の溶媒には、ビニレンカーボネートのみからなる溶媒を用いることが重要である。
【0046】
電解液は、電解質塩をさらに含んでいてもよい。電解質塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2CF3)(SO249)、LiC(SO2CF33、LiClO4、およびリチウムビスオキサレートボレートのようなリチウム塩が挙げられる。これらの電解質塩から選ばれる1種を用いてもよい。あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。電解液には、リチウムが溶解されていてもよい。
【0047】
電解液における電解質塩の濃度は特に限定されない。電解質塩は、例えば、ビニレンカーボネートに0.1mol/リットル以上3.0mol/リットル以下の濃度で溶解していてもよい。
【0048】
電解液に含まれるリチウムイオンは、非水電解質に添加されたリチウム塩に由来してもよく、あるいは充電により正極11から供給されてもよい。電解液は、電解液に添加されたリチウム塩に由来するリチウムイオンおよび充電により正極11から供給されたリチウムイオンの両方を含有していてもよい。
【0049】
(その他)
本開示の実施形態では、図1に示された電池、すなわち円筒形の電池ケースを備えた円筒形の非水電解質二次電池10が説明されている。しかし、本開示に係る非水電解質二次電池は、図1に示された電池に限定されない。本開示に係る非水電解質二次電池は、例えば、角形の電池ケースを備えた角形電池、または、アルミニウムラミネートシートのような樹脂外装体を備えたラミネート電池などであってもよい。本開示に係る非水電解質二次電池における電極群も、巻回型の電極群に限定されない。本開示に係る非水電解質二次電池における電極群は、例えば、複数の正極と複数の負極とが、正極と負極との間にセパレータが介在するように交互に積層された積層型の電極群であってもよい。
【0050】
(実施例)
以下の実施例を参照して、本開示の非水電解質二次電池をさらに詳細に説明する。以下の実施例は一例であって、本開示は以下の実施例のみに限定されない。
【0051】
(実施例)
作用極および対極として、Cu箔(2×2cm)およびリチウム金属がそれぞれ用いられた。作用極は、非水電解質二次電池の負極として機能した。対極は、非水電解質二次電池の正極として機能した。Cu箔は、セルガード社製セパレータ(3401)で二重に被覆された。電解液として、LiPF6を1.0mol/リットルの濃度で溶解させたビニレンカーボネート(以下、「VC」という)が用いられた。このようにして、実施例の試験セルが得られた。
【0052】
(比較例1)
VCに代えて、VCおよびメチルエチルカーボネート(以下、「MEC」という)を1:1の体積比で含む混合溶媒が用いられたこと以外は、実施例と同様にして、比較例1の試験セルが得られた。
【0053】
(比較例2)
VCに代えて、VCおよびジメチルカーボネート(以下、「DMC」という)を4:6の体積比で含む混合溶媒(すなわち、VC/DMCの体積比は4/6に等しい)が用いられたこと以外は、実施例と同様にして、比較例2の試験セルが得られた。
【0054】
(比較例3)
VCに代えて、プロピレンカーボネート(以下、「PC」という)が用いられたこと以外は、実施例と同様にして、比較例3の試験セルが得られた。
【0055】
(比較例4)
VCに代えて、エチレンカーボネート(以下、「EC」という)およびMECを1:3の体積比で含む混合溶媒(すなわち、EC/MECの体積比は1/3に等しい)が用いられたこと以外は、実施例と同様にして、比較例4の試験セルが得られた。
【0056】
(充放電のサイクル試験)
実施例および比較例1から比較例4の試験セルを充放電のサイクル試験に供して、サイクル特性を評価した。1サイクルにおいて、1mAの定電流にて、試験セルを1時間充電し、その後、電圧が1Vになるまで放電した。充放電が30サイクル繰り返された。
【0057】
図2は、実施例および比較例1から比較例4の充放電効率の測定結果を示すグラフである。図2において、横軸および縦軸は、それぞれ、サイクル数および充放電効率を示している。n番目(ここで、nは2以上の整数である)のサイクルにおける充放電効率は、n番目のサイクルにおける充電容量に対するn番目の放電容量の割合である。言い換えれば、数式上は、n番目のサイクルにおける充放電効率は、以下のように定義される。

(n番目のサイクルでの充放電効率)=(n番目のサイクルでの放電容量)/(n番目のサイクルでの充電容量)

図3は、図2のグラフの一部分が拡大されたグラフを示す。図3においても、横軸および縦軸は、それぞれ、サイクル数および充放電効率を示している。
【0058】
図2および図3に示す結果から、実施例の試験セル(すなわち、VCのみからなる溶媒を用いた試験セル)のサイクル特性は、比較例1から比較例4の試験セルのサイクル特性よりも、格段に高かった。すなわち、実施例の試験セルのサイクル特性は、比較例1および比較例2の試験セル(すなわち、VCだけでなく他の溶媒も含む混合溶媒を用いた試験セル)のサイクル特性よりも優れていた。実施例の試験セルのサイクル特性は、比較例3および比較例4の試験セル(すなわち、VC以外の溶媒を用いた試験セル)のサイクル特性よりも優れていた。
【0059】
以上の結果から、VCのみからなる溶媒を用いることで、非水電解質二次電池のサイクル特性が顕著に向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の技術によれば、サイクル特性が顕著に向上した非水電解質二次電池を提供できる。
【符号の説明】
【0061】
10 非水電解質二次電池
11 正極
12 負極
13 セパレータ
14 電極群
15 ケース本体
16 封口体
17,18 絶縁板
19 正極リード
20 負極リード
21 段部
22 フィルタ
23 下弁体
24 絶縁部材
25 上弁体
26 キャップ
27 ガスケット
図1
図2
図3