IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社バイオネット研究所の特許一覧

特許7462178動体自動追跡装置、動体自動追跡方法、及び動体自動追跡プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】動体自動追跡装置、動体自動追跡方法、及び動体自動追跡プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/20 20170101AFI20240329BHJP
【FI】
G06T7/20 300Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022150762
(22)【出願日】2022-09-21
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】510222006
【氏名又は名称】株式会社バイオネット研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】新川 隆朗
【審査官】笠田 和宏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109599162(CN,A)
【文献】国際公開第2021/192908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動体物についての動体自動追跡装置であって、
前記動体物を計測する計測部と、
前記計測部の計測結果を評価する評価部と、を備え、
前記計測部は、
前記動体物を撮影する画像取得部と、
前記画像取得部による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得部と、を備え、
前記評価部は、
撮影された前記画像から前記動体物に関する特徴点を抽出する特徴点位置判断部と、
抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算部と、
前記特徴点までの前記空間距離に基づいて前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成部と、
前記動体物の前記骨格に基づいて前記動体物の不変量若しくは漸変量を推定する不変量推定部と、
前フレームにおける前記動体物の前記不変量若しくは前記漸変量並びに変量を取得する前フレームでの不変量・変量情報取得部と、
前記特徴点までの前記空間距離又は前記動体物の前記骨格を用いて当該フレームにおける前記動体物の前記変量を推定する変量推定部と、
前記前フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量と前記当該フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量とを比較するとともに、前記前フレームにおける前記変量と前記当該フレームにおける前記変量とを比較する最適選択推定部と、を備え、
前記最適選択推定部は、
前記当該フレームにおける全ての前記動体物の概略重心位置について前記動体物の前記概略重心位置間が所定間隔a以内となる動体物の組において前記動体物各々の前記概略重心位置を中心に半径がa/2の円が繋がった連続的閉領域を定義し、
前記当該フレームの或る前記連続的閉領域を構成する前記動体物の前記概略重心位置と、前記前フレームにおいて前記当該フレームの前記或る前記連続的閉領域内に存在する前記動体物の前記概略重心位置と、の組み合わせのうち前記概略重心位置どうしの間の距離がa/2以下の組み合わせに基づいて、前記前フレームにおける前記動体物と前記当該フレームにおける前記動体物とを対応付けるとともに、前記当該フレームにおいて新たな動体物が生成したこと、及び前記当該フレームにおいて前記前フレームにおける既存の動体物が消滅したことを推定する、
ことを特徴とする動体自動追跡装置。
【請求項2】
前記画像取得部は、前記動体物について連続する動画像を撮影し、
前記距離取得部は、撮影された前記動画像の各フレーム画像に同期し、撮影された前記フレーム画像と重複する視野をもち、前記動体物までの距離を計測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の動体自動追跡装置。
【請求項3】
前記画像取得部は、時間的に同期して、前記動体物について異なった視野からの複数の画像を撮影し、
前記距離取得部は、撮影と時間的に同期し、撮影された前記複数の画像と重複する視野をもち、前記動体物までの異なる視点からの複数の距離を計測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の動体自動追跡装置。
【請求項4】
前記画像取得部は、前記動体物について異なった視野からの複数の画像を撮影し、
前記距離取得部は、撮影された前記複数の画像から前記動体物までの距離を計測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の動体自動追跡装置。
【請求項5】
動体物についての動体自動追跡方法であって、
前記動体物を計測する計測ステップと、
前記計測ステップの計測結果を評価する評価ステップと、を備え、
前記計測ステップは、
前記動体物を撮影する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップによる撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得ステップと、を備え、
前記評価ステップは、
撮影された前記画像から前記動体物に関する特徴点を抽出する特徴点位置判断ステップと、
抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算ステップと、
前記特徴点までの前記空間距離に基づいて前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成ステップと、
前記動体物の前記骨格に基づいて前記動体物の不変量若しくは漸変量を推定する不変量推定ステップと、
前フレームにおける前記動体物の前記不変量若しくは前記漸変量並びに変量を取得する前フレームでの不変量・変量情報取得ステップと、
前記特徴点までの前記空間距離又は前記動体物の前記骨格を用いて当該フレームにおける前記動体物の前記変量を推定する変量推定ステップと、
前記前フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量と前記当該フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量とを比較するとともに、前記前フレームにおける前記変量と前記当該フレームにおける前記変量とを比較する最適選択推定ステップと、を備え、
前記最適選択推定ステップにおいて、
前記当該フレームにおける全ての前記動体物の概略重心位置について前記動体物の前記概略重心位置間が所定間隔a以内となる動体物の組において前記動体物各々の前記概略重心位置を中心に半径がa/2の円が繋がった連続的閉領域を定義し、
前記当該フレームの或る前記連続的閉領域を構成する前記動体物の前記概略重心位置と、前記前フレームにおいて前記当該フレームの前記或る前記連続的閉領域内に存在する前記動体物の前記概略重心位置と、の組み合わせのうち前記概略重心位置どうしの間の距離がa/2以下の組み合わせに基づいて、前記前フレームにおける前記動体物と前記当該フレームにおける前記動体物とを対応付けるとともに、前記当該フレームにおいて新たな動体物が生成したこと、及び前記当該フレームにおいて前記前フレームにおける既存の動体物が消滅したことを推定する、
ことを特徴とする動体自動追跡方法。
【請求項6】
動体物についての動体自動追跡プログラムであって、
コンピュータに、
前記動体物を計測する計測処理と、
前記計測処理の計測結果を評価する評価処理と、を実行させ、
前記計測処理は、
前記動体物を撮影する画像取得処理と、
前記画像取得処理による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得処理と、を備え、
前記評価処理は、
撮影された前記画像から前記動体物に関する特徴点を抽出する特徴点位置判断処理と、
抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算処理と、
前記特徴点までの前記空間距離に基づいて前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成処理と、
前記動体物の前記骨格に基づいて前記動体物の不変量若しくは漸変量を推定する不変量推定処理と、
前フレームにおける前記動体物の前記不変量若しくは前記漸変量並びに変量を取得する前フレームでの不変量・変量情報取得処理と、
前記特徴点までの前記空間距離又は前記動体物の前記骨格を用いて当該フレームにおける前記動体物の前記変量を推定する変量推定処理と、
前記前フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量と前記当該フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量とを比較するとともに、前記前フレームにおける前記変量と前記当該フレームにおける前記変量とを比較する最適選択推定処理と、を備え、
前記最適選択推定処理において、
前記当該フレームにおける全ての前記動体物の概略重心位置について前記動体物の前記概略重心位置間が所定間隔a以内となる動体物の組において前記動体物各々の前記概略重心位置を中心に半径がa/2の円が繋がった連続的閉領域を定義し、
前記当該フレームの或る前記連続的閉領域を構成する前記動体物の前記概略重心位置と、前記前フレームにおいて前記当該フレームの前記或る前記連続的閉領域内に存在する前記動体物の前記概略重心位置と、の組み合わせのうち前記概略重心位置どうしの間の距離がa/2以下の組み合わせに基づいて、前記前フレームにおける前記動体物と前記当該フレームにおける前記動体物とを対応付けるとともに、前記当該フレームにおいて新たな動体物が生成したこと、及び前記当該フレームにおいて前記前フレームにおける既存の動体物が消滅したことを推定する、
ことを特徴とする動体自動追跡プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動体物についてのその位置の自動追跡装置、自動追跡方法、及び自動追跡プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造業における製造現場や手作業による建築現場などでは、作業者の安全管理や作業負担の軽減のために様々な取り組みがなされている。例えば、製鉄所の溶鉱炉付近においては、立ち入り禁止区域の設定などが為されているが、誤って、立ち入り禁止区域に入った時の警報発生などの取り組みは十分とは言えない。また建設現場などの立ち入り禁止区域、危険区域などは工程の進捗により日々、区割りが変わることが想定され、簡易な手段で、立体的な禁止区域の設定と、立ち入り者の有無を計測できるような装置及びプログラムが求められている。また、個々の作業員についても、大きな作業場などでは、自身がどの位置にいるかの位置同定も容易でない。位置計測のための手段も従来は、例えばBLEビーコンを使った位置測定等の手段もあるが、一定距離の間隔で、センサーを設置する必要が有り、簡便な手段とは言えない。他の電波帯域を用いた無線による位置認識方法も、遮蔽物等が有ると、作業者に届かない、或いは作業者から発する無線信号が受信側に届かないという欠点がある。
【0003】
このような状況に対応するため、例えば、製造現場や建築現場における作業者の位置を把握して安全管理を行うための安全管理装置(特許文献1参照)や建設機械(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-005229号公報
【文献】特開2020-183623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来技術では、同一の動体物を時系列で追跡することができない、という問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に着目してなされたもので、動体物の位置を非接触で定時間ごとに定量的に計測し、その特徴量を評価し、同一個体の位置のトレースを行う、動体自動追跡装置、動体自動追跡方法、及び動体自動追跡プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために本発明の第1の観点は、動体物についての動体自動追跡装置であって、前記動体物を計測する計測部と、前記計測部の計測結果を評価する評価部と、を備え、前記計測部は、前記動体物を撮影する画像取得部と、前記画像取得部による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得部と、を備え、前記評価部は、撮影された前記画像から前記動体物に関する特徴点を抽出する特徴点位置判断部と、抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算部と、前記特徴点までの前記空間距離に基づいて前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成部と、前記動体物の前記骨格に基づいて前記動体物の不変量若しくは漸変量を推定する不変量推定部と、前フレームにおける前記動体物の前記不変量若しくは前記漸変量並びに変量を取得する前フレームでの不変量・変量情報取得部と、前記特徴点までの前記空間距離又は前記動体物の前記骨格を用いて当該フレームにおける前記動体物の前記変量を推定する変量推定部と、前記前フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量と前記当該フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量とを比較するとともに、前記前フレームにおける前記変量と前記当該フレームにおける前記変量とを比較することにより、前記前フレームにおける前記動体物と前記当該フレームにおける前記動体物とを対応付ける最適選択推定部と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
上記した課題を解決するために本発明の第2の観点は、動体物についての動体自動追跡方法であって、前記動体物を計測する計測ステップと、前記計測ステップの計測結果を評価する評価ステップと、を備え、前記計測ステップは、前記動体物を撮影する画像取得ステップと、前記画像取得ステップによる撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得ステップと、を備え、前記評価ステップは、撮影された前記画像から前記動体物に関する特徴点を抽出する特徴点位置判断ステップと、抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算ステップと、前記特徴点までの前記空間距離に基づいて前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成ステップと、前記動体物の前記骨格に基づいて前記動体物の不変量若しくは漸変量を推定する不変量推定ステップと、前フレームにおける前記動体物の前記不変量若しくは前記漸変量並びに変量を取得する前フレームでの不変量・変量情報取得ステップと、前記特徴点までの前記空間距離又は前記動体物の前記骨格を用いて当該フレームにおける前記動体物の前記変量を推定する変量推定ステップと、前記前フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量と前記当該フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量とを比較するとともに、前記前フレームにおける前記変量と前記当該フレームにおける前記変量とを比較することにより、前記前フレームにおける前記動体物と前記当該フレームにおける前記動体物とを対応付ける最適選択推定ステップと、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
上記した課題を解決するために本発明の第3の観点は、動体物についての動体自動追跡プログラムであって、コンピュータに、前記動体物を計測する計測処理と、前記計測処理の計測結果を評価する評価処理と、を実行させ、前記計測処理は、前記動体物を撮影する画像取得処理と、前記画像取得処理による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、前記動体物までの距離を計測する距離取得処理と、を備え、前記評価処理は、撮影された前記画像から前記動体物に関する特徴点を抽出する特徴点位置判断処理と、抽出された前記特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算処理と、前記特徴点までの前記空間距離に基づいて前記動体物の骨格を再構成する3次元骨格再構成処理と、前記動体物の前記骨格に基づいて前記動体物の不変量若しくは漸変量を推定する不変量推定処理と、前フレームにおける前記動体物の前記不変量若しくは前記漸変量並びに変量を取得する前フレームでの不変量・変量情報取得処理と、前記特徴点までの前記空間距離又は前記動体物の前記骨格を用いて当該フレームにおける前記動体物の前記変量を推定する変量推定処理と、前記前フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量と前記当該フレームにおける前記不変量若しくは前記漸変量とを比較するとともに、前記前フレームにおける前記変量と前記当該フレームにおける前記変量とを比較することにより、前記前フレームにおける前記動体物と前記当該フレームにおける前記動体物とを対応付ける最適選択推定処理と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、動体物の位置を非接触で定時間ごとに定量的に計測し、その特徴量を評価し、同一個体の位置のトレースを行う、動体自動追跡装置、動体自動追跡方法、及び動体自動追跡プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る動体自動追跡装置の全体構成(計測部、評価部、選択結果表示部)を説明する図である。
図2図1の動体自動追跡装置の計測部並びに評価部の特徴点(関節)位置判断部及び特徴点(関節)距離計算部を説明する図であり、計測部が複数の光学カメラで構成される場合(例1)の例である。
図3図1の動体自動追跡装置の計測部並びに評価部の特徴点(関節)位置判断部及び特徴点(関節)距離計算部を説明する図であり、計測部が1台の光学カメラ及び1台の距離カメラで構成される場合(例2)の例である。
図4図1の動体自動追跡装置の評価部の特徴点(関節)位置判断部を説明する図である。
図5】3次元関節の位置を説明する図である。
図6】ステレオカメラを用いた従来のテンプレート・マッチング法の問題点を説明する図(その1)である。
図7】ステレオカメラを用いた従来のテンプレート・マッチング法の問題点を説明する図(その2)である。
図8】ステレオカメラを用いた従来のテンプレート・マッチング法の問題点を説明する図(その3)である。
図9】ステレオカメラを用いた従来のテンプレート・マッチング法の問題点を説明する図(その4)である。
図10】ステレオカメラを用いた従来のテンプレート・マッチング法の問題点を説明する図(その5)である。
図11図1の動体自動追跡装置の評価部の特徴点(関節)距離計算部のアルゴリズムを説明する図である。
図12図1の動体自動追跡装置の評価部の特徴点(関節)距離計算部を説明する図である。
図13図1の動体自動追跡装置の評価部の3次元骨格再構成部を説明する図である。
図14】3次元関節の位置に関係する不変量を説明する図である。
図15図1の動体自動追跡装置の評価部の不変量推定部が姿勢評価を行う場合を説明する図である。
図16】姿勢評価の一例としてOWAS法を説明する図(その1)である。
図17】姿勢評価の一例としてOWAS法を説明する図(その2)である。
図18】姿勢評価のアルゴリズムを説明する図(その1)である。
図19】姿勢評価のアルゴリズムを説明する図(その2)である。
図20】姿勢評価のアルゴリズムを説明する図(その3)である。
図21】姿勢評価のアルゴリズムを説明する図(その4)である。
図22】姿勢評価のアルゴリズムを説明する図(その5)である。
図23】姿勢評価のアルゴリズムを説明する図(その6)である。
図24】姿勢評価のアルゴリズムを説明する図(その7)である。
図25】下肢分類1~7について、人間の姿勢変化として、通常の動画撮影時のフレーム間隔の30ms間で、変化可能な状態の遷移例を示す図である。
図26】連続的閉領域を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図1から図25に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0013】
[自動追跡装置の全体構成]
まず、図1により、本実施形態に係る動体自動追跡装置1の全体構成について説明する。なお、本明細書では、動体自動追跡装置1を構成する各部に対し、それぞれが実行する動作を冠した個別の名を付している。
【0014】
動体自動追跡装置1は、例えば、人体、動物、及びロボットのうちの少なくとも1つの動体物MOを対象としてその位置を追跡する。図1ほかでは、動体物MOの例として人体を想定して図示しているが、動体自動追跡装置1の追跡対象としての動体物は人体に限られないことに留意されたい。図1に示すように、動体物MOについての動体自動追跡装置1は、動体物MOを計測する計測部10と、計測部10による計測結果を評価する評価部20と、評価部20による処理結果(具体的には、時系列で同一の動体物の選択結果)を表示する選択結果表示部30とを備える。なお、この発明の要点はあくまでも動体物MOの位置を追跡することであり、選択結果表示部30はこの発明において必須の構成ではない。
【0015】
計測部10は、動体物MOを撮影する画像取得部11と、画像取得部11による撮影と時間的に同期し(つまり、画像取得部11によって撮影された動画像の各フレーム画像に同期し)、撮影された画像と重複する視野をもつ、動体物MOまでの距離を計測する距離取得部12とを備える。画像取得部11によって撮影された動画像について、解析対象とする時系列における或る時点(例えば、現時点)における画像を「当該フレーム」と称し、前記の或る時点よりも前の時点における画像を「前フレーム」と称する。
【0016】
評価部20は、撮影された画像から動体物MOに関する任意の特徴点(例えば、関節位置)を抽出する特徴点位置判断部(関節位置判断部)21と、抽出された特徴点(例えば、関節位置)までの空間距離を計算する特徴点距離計算部(関節距離計算部)22と、計算された、特徴点(例えば、関節位置)までの空間距離に基づいて動体物MOの骨格を再構成する3次元骨格再構成部23と、再構成された動体物MOの骨格に基づいて動体物MOの不変量若しくは漸変量を推定する不変量推定部24と、前フレームにおける動体物MOの不変量若しくは漸変量並びに変量を取得する前フレームでの不変量・変量情報取得部25と、計算された、特徴点(例えば、関節位置)までの空間距離、又は、再構成された動体物MOの骨格を用いて当該フレームにおける動体物MOの変量を推定する変量推定部26と、前フレームにおける不変量若しくは漸変量と当該フレームにおける不変量若しくは漸変量とを比較するとともに、前フレームにおける変量と当該フレームにおける変量とを比較することにより、前フレームにおける動体物MOと当該フレームにおける動体物MOとを対応付ける最適選択推定部27と、を備える。
【0017】
選択結果表示部30は、評価部20による処理結果(具体的には、時系列で同一の動体物の選択結果)を表示する。
【0018】
以下、計測部10、評価部20、及び選択結果表示部30の各部について、詳しく説明する。
【0019】
[計測部]
計測部10の例について、図2から図4を参照して説明する。図2は計測部10の例1を、図3は計測部10の例2を、それぞれ示している。
【0020】
図2に示すように、例1は、画像取得部11として空間位置が予め既知の複数の光学カメラ11a1,11a2,11a3を相互に同期するように設け、これらによって動体物MOを同時に撮影して取得された複数の画像P1,P2,P3について、距離取得部12において同一の動体物MOの画像上の視差から距離を測定する方法を用いて、距離を計算して距離情報Dを取得する例である。
【0021】
図3に示すように、例2は、画像取得部11として空間位置が予め既知の光学カメラ11aを、距離取得部12として空間位置が予め既知の距離カメラ12a(例えば、TOF<Time-Of-Flight>カメラ、パターン投影カメラ、レーザ距離計、レーザスキャナ、ライダー<LiDAR:Light Detection And Ranging>などの距離情報を直接計測できるデバイスであり、以下、「距離カメラ」と称する)を相互に同期するように設け、動体物MOを同時に撮影することにより、画像Pと距離情報Dとを別々に取得する例である。なお、この場合、光学カメラ11aと距離カメラ12aとは、必ずしも同一視野範囲となっている必要はないが、それぞれの視野内に計測対象物である動体物MOが含まれなければならない。
【0022】
例3は、計測部10の例1と例2とを組み合わせた例である。すなわち、複数の光学カメラ11a1,11a2,11a3は画像取得部11として広域の複数の画像P1,P2,P3を取得する手段として用いられ、複数の距離カメラ12a1,12a2は距離取得部12としてそれぞれ特定の視野範囲の距離情報Dを取得する手段として用いられる。
【0023】
例3は、複数の光学カメラ11a1,11a2,11a3により得られた複数の画像P1,P2,P3上の動体物MOの視差を基に広域での動体物MOまでの距離情報Dを推定するとともに、距離カメラ12a1,12a2で捉えられている視野領域については、推定された距離情報Dを距離カメラ12a1,12a2で得られた距離情報Dで補完するようにする。
【0024】
画像取得部11は、上記の各例によって取得された画像P1又は画像Pを評価部20の特徴点位置判断部(関節位置判断部)21へと、距離取得部12は、同じく取得された距離情報Dを評価部20の特徴点距離計算部(関節距離計算部)22へと、それぞれ出力する。
【0025】
[評価部]
[[関節位置判断部]]
次に、評価部20の特徴点位置判断部(関節位置判断部)21の例について、図4及び図5を参照して説明する。特徴点は人体の関節に限られないが、以下では、特徴点を人体の関節とした場合を想定して、関節位置判断部21として説明する。図4に示すように、関節位置判断部21は、被検体である動体物MOの動画像(作業者であれば人体の動画像)について、予め機械学習で学習した学習済の関節位置判断用重み付けデータ21aを備えており、これを用いて、計測部10の画像取得部11から入力された画像P1又はPにおいて、関節部位に相当する画像の存否を推定し、関節位置判断21bを行う。機械学習の方法については様々な方法が提唱されているが、特定の方法に限定する必要はない。動画像の1フレームを入力し、例えば、図4の下段に例示するように、図5で示す人体の特徴点としての関節部位(ここでは、右肩SR、左肩SL、右肘ER)の光学カメラ11a1又は11a上の関節位置2次元座標TwDを抽出できればよい。
【0026】
ここで、図5は、動体物MOが人体である場合について、特徴点として関節部位及び線分を含む各部位を次のように例示している。すなわち、HD:頭部、S:肩幅、両肩:SL/SR、両肩の中点:S0、B:背部(背骨)、W:腰幅、両腰:WL/WR、両腰の中点:W0、両上腕:ArmL1/ArmR1、両肘:EL/ER、両前腕:ArmL2/ArmR2、両手首:HL/HR、両大腿:ThiL/ThiR、両膝:KL/KR、両下腿:LlimL/LlimR、両足首:AnL/AnR、である。
【0027】
なお、前述したとおり、特徴点は、図5に示した関節部位を含む各部位に限られるものではない。動体物MOの種類によって、あるいは動体物MOが人体でも評価すべき基本的な姿勢の違いによって、任意に設定してよい。例えば、動体物MOが動物の場合には、犬であれば耳や尾を特徴点としてもよく、ロボットの場合には、人型ではなく基台に対して作業部が回動するものであれば作業部の基準点を特徴点としてもよい。また、横臥している状態が通常の人体の場合には、寝返り姿勢を評価するために頭部HDや背部Bについても左右に分けて特徴点としてもよい。これらの意味において、関節位置判断部21は、特徴点位置判断部21に拡張して把握することができる。
【0028】
[[関節距離計算部]]
次に、評価部20の特徴点距離計算部(関節距離計算部)22の例は図12に示すとおりであるが、後ほど説明することとし、その説明に先立ち、図6から図10を参照して従来のステレオカメラを用いた関節距離計算の課題について述べるとともに、図11を参照して本実施形態に係る関節距離計算について述べる。
【0029】
関節距離計算の実施においては、上記した計測部10の例2及び例3のように距離カメラ12a,12a1,12a2を用いる場合は、距離情報Dを直接計測できるために、光学カメラ11a,11a1,11a2,11a3と距離カメラ12a,12a1,12a2との位置と視野方向とが確定されていれば、画像P又はP1上の特徴点例えば関節位置と距離カメラ12a,12a1,12a2上の関節位置とは座標変換により容易に決定できる。しかし、上記した計測部10の例1のように複数の光学カメラ11a1,11a2,11a3を用いて距離計算する場合は、困難が伴う。その理由は、従来は光学カメラを用いた距離測定において2台の光学カメラを用いるステレオカメラが多く用いられており、ステレオカメラの場合、計測に大きな制約があったことによる。その制約とは、次のようなものである。なお、以下では、説明の便宜上、ステレオカメラを構成する2台の光学カメラを各別にカメラA、カメラBとして説明するが、構造的に1台のステレオカメラの場合も同様である。
【0030】
従来のステレオカメラを用いる手法の場合、左右のカメラA、カメラBで撮った共通部分の画像上の視差を計算するには、共通部分が同一の物体であるという事実を見出すためにテンプレート・マッチング法が必要となる。テンプレート・マッチング法とは、例えば一方のカメラAで撮ったある領域の画像が、他方のカメラBで撮った画像の中のどの位置に対応するかを、画像処理アルゴリズムにより画像マッチングを行い、その位置を特定する方法である。両者の画像の位置のずれから、カメラA、カメラBの視差角を計算し、距離を推定することができる。その結果、図6から図8に示すような(1)から(3)の制約が生じる。
【0031】
(1)カメラ間隔が小さい場合
図6「ステレオカメラ1:カメラを近づけた場合」参照)
カメラA、カメラBそれぞれと対象物との距離の違いにより、マッチングを取る対象領域の範囲が大きく異なってくる。すなわち、カメラAとカメラBを近づけたとき、観察できる範囲は広がるが、対象物との距離により、マッチング範囲(視差角の変化量)が異なる。対象物までの距離は予め分かっているわけではないので、広い距離範囲を計測しようとすると、広い範囲でのマッチングが必要となり、誤認識が生じやすい。また、マッチングで誤認識をした場合でも、誤認識かどうかを判別する手段がなく、この点が立体形状測定にとって致命的である。
【0032】
図6の例を補足すると、カメラAとカメラBを例えば10cmの間隔に近づけた場合、500cm先の視差θは、sinθ≒θとして、10/500=0.02ラジアン≒1°となり、カメラA及びカメラBの視野角を60°、横方向の画素数を1000とすれば、1°の差は約20画素に当たる。一方、50cm先の視差θは、同様に、10/50=0.2ラジアン≒12°となり、200画素となる。200画素離れていることは、1画像の1/5離れている同じ画像を探し出す必要があることを意味する。
【0033】
(2)カメラ間隔が大きい場合
図7「ステレオカメラ2:カメラを離した場合」参照)
視差は大きくとれるが、距離計算対象領域が狭くなってくる。すなわち、カメラAとカメラBを離したとき、マッチング範囲(視差角の変化量)は狭くなり、観測できる範囲も狭いものとなる。また、カメラAやカメラBの面前の対象物を計測できないという状態に陥る。
【0034】
(3)カメラの方向を変えた場合
図8「ステレオカメラ3:カメラの向きを変えた場合」参照)
カメラA及びカメラBそれぞれで捉える対象物の形状が異なってくる。すなわち、カメラAとカメラBの向きを変えたとき、マッチング範囲(視差角の変化量)はある程度広がるが、左右のカメラA及びカメラBで見る同一の対象物の形状が歪み、マッチングが困難となる。
【0035】
上記した(1)から(3)の制約は、ステレオカメラの限界を示すものである。つまり、対象物との距離や位置がある程度限定され、かつ対象物の形状が既知の場合は、簡便な距離計算法として、ある程度有効であった。しかし、対象物との距離が50cm~500cmと広い範囲の、しかも対象物の形状も時事刻々と変化する、例えば作業現場における作業者などの計測は極めて困難であった。
【0036】
ステレオカメラの欠点を端的に示す例を図9に示す。図9の左側に示した白黒の縦縞模様をステレオカメラでテンプレート・マッチングすると、マッチング・ポイント(一致画像)が多数現れ(例えば、図中、破線で囲んだ範囲の複数の画像)、計測不能になる。類似の状況は頻繁に現れることが知られていて、ステレオカメラによる距離計算法は限定的にしか使えないことが分かる。図9の右側に示したように、カメラAでテンプレート領域を決定して、カメラBの画像内で、同一部位に相当する画像を探すとき、幾らでも一致点が見つかるので、当該テンプレートまでの距離に関する情報が既知でないと、解は不定となる。
【0037】
そうすると、ステレオカメラを用いる方法は、例えば作業場の工作機械のように、直線が多い画像では、どこでもマッチングが起こりうることと、距離が不定であり、事前の視差量が推定できないために、テンプレート・マッチングする範囲が決まらなくなるので、マッチングエラー(マッチング無し)や、複数マッチングの頻発が起こると予測される。
【0038】
さらに、図10は、カメラA、カメラBの2台のカメラを用いて円形物体COと矩形物体ROについて、テンプレート・マッチングを行う例を示す。図10の左側に示したような位置関係にある円形物体COと矩形物体ROをカメラA、カメラBでそれぞれ撮影すると、カメラA、カメラBからそれぞれ見える図は図10の右側に示したようなものとなり、マッチングエラーを起こす(マッチングできない、すなわち、距離計算できない)ことが分かる。円形物体COと矩形物体ROが異なる距離に有るという情報が無いので、円形物体COと矩形物体ROの組み合わせが単一物体か否かの違いを数学的に区別できないからである。
【0039】
以上述べたステレオカメラを用いた手法に対し、本実施形態では、光学カメラ11a1,11a2,11a3から得られた画像上の特徴点を用いて距離計算する手法を提案する。本実施形態では、複数の光学カメラ11a1,11a2,11a3を用いて距離計算する場合に、テンプレート・マッチングを行わないこととし、また、ステレオカメラではなく、3台以上の光学カメラ11a1,11a2,11a3によって、相互に同期した撮影で得られる複数画像からの距離再構成を行うことを特徴とする。
【0040】
その手法は、次のとおりである。
(a)予め、各光学カメラ11a1,11a2,11a3の位置及び視野方位を測定しておく。
(b)相互に同期して取得した複数の画像P1,P2,P3から機械学習により動体物MOの関節位置を抽出する。
(c)各光学カメラ11a1,11a2,11a3の位置及び視野方位をもとに、各関節位置の光学カメラ毎の視線方位を計算する。その交点方向の近接領域において複数画像上に関節位置を認めた場合に、それらの複数画像の組み合わせが、特定個体である動体物MOの特定の関節位置を示していると仮定する。
(d)上記によりサンプリングされた複数画像に関し、後記するアルゴリズムを適用することにより、一般化された3次元座標系内での当該関節位置を求める。
【0041】
上記の手法により、動体物MOの関節部位を含む各部位の3次元座標のみを効果的に抽出でき、かつ多方向からの計測により、従来のステレオカメラ法より、遮蔽物に妨げられる頻度が低い、ロバストな計測が可能となる。
【0042】
多方向からの画像による3次元座標位置計算のアルゴリズムとして、N台の光学カメラで1つの対象物を撮影した場合に、対象物の位置を推定する具体的なアルゴリズムの一例について図11を参照して以下に説明する。
【0043】
(§1 設定)
設定条件は、以下のとおりである。
・対象物は、3次元空間R^3のある1点P_0である、とする。ただし、その座標値(x,y,z)は未知とする。
・N台の光学カメラのインデックスをk=1,2,・・・,Nとする。第k光学カメラの位置をP_kとする。ただし、P_kの座標値は既知とする。
・P_kを始点とし、P_0を終点とするベクトルをV_kとする。つまり、V_k=P_0-P_kとする。
・ベクトルVのノルムをnorm(V)と表すことにして、ノルムが1のベクトルU_kをV_k/norm(V_k)と定義する。
・P_0が未知なのでV_kも未知ではあるが、マッチングの結果得られた視差データから、U_kは既知である、とする。ただし、U_kはあくまでも光学カメラ撮影で得られたものなので、誤差が混入していることを考慮する。
・P_kからU_kの方向に伸びる直線をL_kとする。もしも、U_kに誤差がないならば、L_1,L_2,・・・,L_NはP_0を交点として共有するはずであるが、U_kは誤差をもつので、互いに異なるインデックスiとjとに対して、L_iとL_jとは交点をもつとは限らない。
【0044】
(§2 推定方法)
上記の設定を踏まえて、P_0の位置を推定する方法は、以下のとおりである。
・ベクトルP_0は、(x,y,z)座標値からなる縦ベクトルであるとする。
・同様に、P_1,P_2,・・・,P_Nも、U_1,U_2,・・・,U_Nも、(x,y,z)座標値からなる縦ベクトルとする。
・Xを任意のベクトル又は行列として、その転置をX^*と表すことにする。
・Iを3行3列の単位行列とする。
・k=1,2,・・・,Nに対して、3行3列の行列Q_kを
Q_k=I-U_k U_k^*
と定義する。定義から、Q_kはランクが2(後記参照)の対称行列であり、非負定置である。しかも、Q_kは射影行列である。つまり、Q_k^2=Q_kが成り立つ。ただし、^2は2乗を意味するものとする。
・次に、3行3列の行列Rを
R=Q_1+Q_2+・・・+Q_N
と定義する。一般的には、Rの行列式det(R)はゼロ以上の実数であり、det(R)=0となる可能性があるが、以下では、det(R)>0である、と仮定する。det(R)>0の仮定から、Rは逆行列inv(R)をもつことになる。
・k=1,2,・・・,Nに対して、縦ベクトルS_kを
S_k=inv(R) Q_k P_k
と定義する。
・すると、P_0の推定値は、S_1+S_2+・・・+S_Nである。
【0045】
上記したQ_kのランクについては、次のとおりである。
・U_kと直交するノルムが1の縦ベクトルをG_kとし、U_kともG_kとも直交するノルムが1の縦ベクトルをH_kとすると、
I=U_k U_k^*+G_k G_k^*+H_k H_k^*
であるから、
Q_k=G_k G_k^*+H_k H_k^*
である。したがって、Q_kのランクは、2である。
【0046】
(§3 導出方法)
上記したP_0の推定値は、以下の方法で導出されたものである。
・3次元空間R^3の任意の点を3次元縦ベクトルWで表し、3次元空間R^3の任意の直線をLで表わすことにする。
・また、LとWの距離dist(L,W)を、WからLにおろされた垂線の長さ、として定義する。
・すると、k=1,2,・・・,Nに対して、dist(L_k,W)は、ベクトルW-P_kからU_kに平行な成分を除外したベクトルのノルム、つまり、W-P_kをU_kに垂直な平面に射影してから求めたノルムであるから、
dist(L_k,W)=norm[(I-U_k U_k^*)(W-P_k)]
=sqrt[(W-P_k)^* Q_k (W-P_k)]
である。
・そして、dist(L_1,W),dist(L_2,W),・・・,dist(L_N,W)の二乗和をf(W)と書くことにする。つまり、
f(W)=dist(L_1,W)^2+dist(L_2,W)^2+・・・
+dist(L_N,W)^2
とする。
・対象物の位置P_0の推定値は、このf(W)の値を最小にするWと定義する。
・すると、平方完成によって(後記参照)、S_1+S_2+・・・+S_NがP_0の推定値となる。
【0047】
平方完成については、次のとおりである。
・f(W)の式変形をすると、
f(W)=Σ_(k=1)^N (W-P_k)^* Q_k (W-P_k)
=(W-inv(R) Σ_(k=1)^N Q_k P_k)^* R(W-inv(R) Σ_(k=1)^N Q_k P_k)+定数項
=(W-Σ_(k=1)^N S_k)^* R(W-Σ_(k=1)^N S_k)+定数項
であるから、f(W)が最小になるのはW=Σ_(k=1)^N S_kのときである。
【0048】
評価部20の関節距離計算部22の例は、前述したように、図12のとおりである。図12に示すように、関節距離計算部22では、関節位置判断部21で位置決定された光学カメラ11a,11a1,11a2,11a3から得られた関節位置2次元座標TwDを入力し、光学カメラ座標系から、距離カメラ座標系へ座標変換22aを行った後に、距離カメラ12a,12a1,12a2から得られた距離情報Dより、当該関節位置の、距離カメラ座標系における関節位置3次元座標計算22bを行う。
【0049】
関節位置3次元座標ThDの計算アルゴリズムは、距離カメラ12a,12a1,12a2等で得られた関節距離のデータを、カメラの画素数と視野角の仕様に基づいて極座標(天頂角、方位角、半径)に変換後、直交座標(x,y,z)に変換し、関節位置3次元座標ThDとする。図12の下段には、図5で示した人体の特徴点としての関節部位(ここでは、右肩SR、左肩SL、右肘ER)の光学カメラ11a1又は11a上の関節位置3次元座標ThDを例示している。
【0050】
[[3次元骨格再構成部]]
次に、評価部20の3次元骨格再構成部23の例について、図13を参照して説明する。図13に示すように、3次元骨格再構成部23は、関節位置3次元座標ThDを基に、隣接する関節までの関節間距離及び角度の計算23aを行った後、それらの妥当性の検証23bを行う。
【0051】
具体的には、対象物の動体物MOが人体であれば、関節間距離を計算した後、計算結果が人体の関節間距離として妥当かどうかを評価し、妥当であれば骨格データ(関節間距離データLD)として採用し、不適であれば、その部分の骨格を計測不可として排除する。同様に、隣接する関節までを結ぶ直線を骨と仮定したときに、骨と近接する骨の開き角を求め、人体の骨の可動範囲から人体の骨と骨の接する角度として妥当かどうか評価し、妥当であれば骨格データ(角度データAD)として採用し、不適であれば、その部分の骨格を計測不可として排除する。例えば、左右腰WL,WRに対し、背骨(背部B)の前傾度や後傾度の測定を行う。通常、立位姿勢の場合は、前傾については90度以上の前傾も姿勢として取りうるが、後傾は立位姿勢の場合は30度以上となると転倒する確率が高い。このように通常あり得ない数値が出た場合は、その部分の骨格を計測不可として排除する。
【0052】
図13の下段には、関節間距離データLDとして、図5で示した人体の特徴点としての部位(ここでは、肩幅S、腰幅W、背丈B(背部B)、右上腕ArmR1、左上腕ArmL1、右大腿ThiR、左大腿ThiL)の長さ[cm]を、角度データADとして、後記する図22から図23に示す開き角(ここでは、腰幅Wに対する背部Bのひねり角θ1、横曲げ角θ2、前曲げ角θf、後ろ曲げ角θb)の角度[°]を例示している。図13の下段に示す例のような関節間距離データLD及び角度データADに基づいて、3次元骨格再構成部23により、動体物MOの骨格(具体的には、3次元骨格図)が再構成される。
【0053】
[[不変量推定部]]
不変量推定部24では、被写体(具体的には、対象物の動体物MO)の不変量若しくは漸変量を3次元骨格図より求める。ここで重要な点は、図14のような各関節の3次元位置情報(具体的には、関節位置3次元座標ThD;尚、これらの集合として、対象物の動体物MOについての3次元骨格図が構成される)が得られた場合に、動体物の姿勢の変化に対し、より数値が不変な物理量を選択することである。
【0054】
<不変量の例1>
例えば、1次元情報としては、図14内の背骨の線分Bの長さを動体物MO固有の不変量として用いることが考えられる。Bは左肩SLと右肩SRとを結ぶ線分の中点をS0とするとともに、左腰WLと右腰WRとを結ぶ線分の中点をW0としたときに、S0とW0とを結ぶ線分とする。Bは、空間の平行移動と回転変換に関して不変量となる。両肩や両腰の4点の3次元位置情報は、カメラと動体物との位置関係から、必ずしも4点全て正確に得られるとは限らないものの、4点のいずれかが欠けた場合にも、他の位置情報を補完して推定できる背骨の線分Bは不変性が高い。例えば右肩SRの3次元位置の推定ができないときは、左肩SLと左腰WLとの距離(SL-WL)で補完することが考えられる。
【0055】
<不変量の例2>
また、動体物MO固有の不変量として、図14中の左肩SL、右肩SR、左腰WL、及び右腰WRの4点の3次元位置情報から求まる四辺形の面積を用いることも考えられる。ただし、この場合は、立体計測時のカメラの位置と動体物の位置との関係によっては、面積が変動する可能性が有る。例えば人体を体側方向から距離計測すると、カメラに近い側の肩及び腰の位置は正確に計測できるが、反対側の肩や腰は計測できない、又は誤った3次元位置を計測する可能性が高い。
【0056】
<不変量の例3>
また、動体物MO固有の不変量として、背の高さを用いることも考えられる。背の高さは図14の背骨の線分Bと、左右の足の長さ(WL-KL-AnL 及び WR-KR-AnR)の平均値とを足すことで足から首までの長さが求まる。
【0057】
<不変量の例4>
また、骨格情報をさらに細分化して、前から見た左肩位置SLF、後ろから見た左肩位置SLB、前から見た右肩位置SRF、後ろから見た右肩位置SRB、前から見た左腰位置WLF、後ろから見た左腰位置WLB、前から見た右腰位置WRF、及び後ろから見た右腰位置WRBの8個の3次元位置情報から求まる6面体の3次元空間を胴体体積と考え、動体物MO固有の不変量として用いることも考えられる。
【0058】
<不変量若しくは漸変量の例>
また、3次元骨格図を解析して得られる、姿勢の分類結果を不変量、又は漸変量(変量の変化に対して時間的制約がある変量)として用いることも考えられる。
【0059】
3次元骨格図を解析して得られる、姿勢の分類(「姿勢評価」とも称する)結果を不変量、又は漸変量(変量の変化に対して時間的制約がある変量)として用いる場合の例について、図15を参照して説明する。図15に示すように、不変量推定部24は、関節位置3次元座標ThD並びに関節間距離データLD及び角度データADを基に、対象となる動体物MOの態様に応じた姿勢評価アルゴリズムAL1,AL2,・・・を選択して、姿勢の評価24aを行う。評価の結果は、姿勢評価データPEDとして出力される。図15の下段には、姿勢評価データPEDとして、上半身、下半身、手に区分した場合の評価の結果を例示している。
【0060】
姿勢評価アルゴリズムAL1,AL2,・・・は、動体物MOの計測の目的に対応した姿勢評価基準により、様々なアルゴリズムを用いることができる。
【0061】
動体自動追跡装置1は動体物MOの計測(言い換えると、追跡、トレース)の種々の目的に対応することが可能であることから、その姿勢評価に用いる関節位置3次元座標ThDや関節間距離データLDと角度データADも、図13図14に挙げた例に限られることはない。例えば、肩SL/SR、肘EL/ER、手首HL/HRに指の各関節を特徴点として追加し、上肢の動きに特化した関節位置3次元座標ThDや関節間距離データLDと角度データADを生成してもよく、その場合には、上肢のみについての姿勢評価アルゴリズムが用いられる。
【0062】
(姿勢評価の例)
以下では、不変量推定部24による姿勢評価の例として、図16及び図17を参照して、作業者の姿勢負荷の評価として使われているOWAS法の分類(OWAS:Ovako Working Posture Analyzing System)を応用した場合を例として挙げる。
【0063】
(OWAS法の概要)
まず、OWAS法の概要について、以下の説明を抜粋して引用する(引用元:「OWAS:Ovako式作業姿勢分析システム」http://www.nrec.sakura.ne.jp/OWAS.htmより。ただし、一部図番等修正)。
【0064】
「[2]各種作業姿勢評価法とOWAS
OWASは、フィンランドの製鉄会社(Ovako Oy,現Fundia Wire)に勤めていたKarhuやNasmanらやフィンランド労働衛生研究所(Institute of Occupational Health)のKuorinkaらによって1970年代前半に開発が開始された。(中略)測定者間の姿勢判別の一致率は90%以上と高く、20以上の業種でテストされた。1980年代後半以降OWASを調査や作業改善に利用した報告が増えている。
[3]OWASによる作業姿勢の記録法
図16の例に示すように、OWASではある時点の作業姿勢を背部・上肢・下肢・重さの4項目でとらえ、これをコード化した4桁の数字(姿勢コード)で記録する。この姿勢コードの分類は、不快感の主観的評価・姿勢による健康影響・実用可能性を考慮して決定されたものである。」
【0065】
ここで、OWAS法では、図16に示すように、姿勢コードが「1.背部:1)から4)の4つの姿勢に分類(例えば、1)は「まっすぐ」)」、「2.上肢:1)から3)の3つの姿勢に分類(例えば、1)は「両腕とも肩より下」)」、「3.下肢:1)から7)の7つの姿勢に分類(例えば、1)は「すわる」)」、「4.重さまたは力:1)から3)の3つの程度に分類(例えば、1)は「10kg以下」)」に整理されているが、このうち、「4.重さまたは力」は作業する対象物の重さや、作業者の力を要する程度を示すものなので、ここでは計測対象外とする。
【0066】
次に、OWAS法では、上記の姿勢に関する記録を行った後に、姿勢の負担度と改善要求度を以下の4段階に分類して判定する(AC:Action Category)。
AC1:この姿勢による筋骨格系負担は問題ない。改善は不要である。
AC2:この姿勢は筋骨格系に有害である。近いうちに改善すべきである。
AC3:この姿勢は筋骨格系に有害である。できるだけ早期に改善すべきである。
AC4:この姿勢は筋骨格系に非常に有害である。ただちに改善すべきである。
【0067】
この判定にあたっては、図17に示すAC判定表が用いられる。AC判定表では、図17に示すように、左側に「1.背部」と「2.上肢」が、上側に「3.下肢」と「4.重さまたは力」が、それぞれ組み合わされている。組み合わせの数は、「1.背部」の1)から4)の分類それぞれに「2.上肢」の1)から3)の分類を組み合わせた12通りの区分と、「3.下肢」の1)から7)の分類それぞれに「4.重さまたは力」の1)から3)の分類を組み合わせた21通りの区分とにより、全体として252通りの区分が設定される。そして、それぞれの区分にAC1からAC4の判定が割り振られている。
【0068】
(姿勢評価アルゴリズム)
次に、図18から図24を参照して、姿勢評価アルゴリズムを説明する。姿勢評価アルゴリズムでは、OWAS法の分類を応用して以下のアルゴリズムで姿勢評価を自動化する。図18に、座標位置及び線分、角度に関する名称の定義を、図19に、アルゴリズムとして、対象となる部位(「1.背部」、「2.上肢」、「3.下肢」)、部位ごとの姿勢の分類、判定方法とデフォルト値を示す。図19における3つの部位及び部位ごとの姿勢の分類は、図16に示したOWAS法の分類と同様である一方、前述したとおり、「4.重さまたは力」はアルゴリズムに含まれない。
【0069】
姿勢評価アルゴリズムは図19に示したとおりであるが、それらのうち、「2.上肢の分類:1)から3)」、及び「3.下肢の分類:1)から6)」については、図18に記載した、座標位置(例えば、左右手首HL,HRのX,Y,Z座標)、線分(例えば、右肩SRと右肘ERの間の右上腕ArmR1)、角度(例えば、両肩の中点S0から床面への垂線の交点をS0Z0とした時の、S0Z0-S0-W0で決まる角度θ_S0Z0SW)の定義に基づいて、関連する指標同士の大小関係によって判断されるので、図19によって説明に代える。それら以外の「1.背部の分類:1)から4)」及び「3.下肢の分類:7)」について、以下に補足する。
【0070】
まず、「1.背部の分類:1)から4)」について、図20から図24を参照して説明する。背部Bの曲げの判断に使用する関節及び線分は、図20に示すように、肩幅S、両肩SL/SR、肩幅Sの中点S0、腰幅W、両腰WL/WR、腰幅Wの中点W0、中点S0と中点W0を結ぶ背部B(背骨に相当する)を用いる。
【0071】
背部Bの曲げは、以下の4つの曲げを取り扱う。
(イ)ひねり
(ロ)横曲げ
(ハ)前曲げ
(ニ)後ろ曲げ
【0072】
4つの曲げの定義にあたって、前提条件として、空間のx-y-z方向を、光学カメラ11a,11a1,11a2,11a3で撮影する画角の左右方向をx軸、距離カメラ12a,12a1,12a2のレンズ中心から被写体(動体物MO)方向に進む光線方向をy軸、光学カメラ11a,11a1,11a2,11a3で撮影する画角の上下方向をz軸とする。分かり易いように、座標系は、図21のように、人体の概略重心位置GCを原点(x=0、Y=0、Z=0)として設定する。概略重心位置GCは、例えば、左肩SL、右肩SR、左腰WL、右腰WRの4点の座標平均でもよいし、左肘EL、右肘ER、左膝KL、右膝KRを加えた8点の座標平均でもよい。
【0073】
(イ)ひねり
図22に示すように、図20において、背部B(S0-W0)に垂直であり、中点W0を含む平面を平面Pとし、肩幅Sの平面Pへの射影線を線分S’、腰幅Wの平面Pへの射影線を線分W’とする。そして、線分S’及び線分W’のなす角をθ1とする。θ1は、右腰WRの平面Pへの射影点をWR’、右肩SRの平面Pへの射影点をSR’としたときに、WR’-W0-SR’のなす角となる。このθ1が、
θ1>θ1_ひねりlimit
のとき、ひねり状態と認定する。この定義は、一般的な、例えば横臥位、腹臥位も考慮した定義とするためである。
【0074】
(ロ)横曲げ
図23に示すように、図20において、腰幅Wと背部Bを含む平面をQとする。平面Q上で、中点W0を通り、腰幅Wに垂直な垂線上への背部Bの射影線を線分B”とし、中点S0の射影点をS0”とする。そして、S0-W0-S0”のなす角をθ2とする。このθ2が、
θ2>θ2_横曲げlimit
のとき、横曲げ状態と認定する。この定義は、背骨が左右に曲がっているかを考慮したものである。
【0075】
(ハ)前曲げ、(ニ)後ろ曲げ
図24に示すように、図20において、腰幅Wをz軸方向から、x-y平面に射影する。射影された端点をそれぞれWL’及びWR’とし、その中点をW0’とする。背骨に相当する背部Bを平行移動し、W0’を端点とした線分B’(W0’-S0’)を作る。線分WL’-WR’の中点W0’を通る線分に垂直な平面への線分B’の射影線を線分Bfとする。z’-W0’-S0fで作られる角度がyプラス方向の角度であれば前曲げ角度θfとする。yマイナス方向の角度すなわちz’-W0’-S0’で作られる角度であれば、後ろ曲げ角度θbとする。図24は、前曲げ角度θfの場合を図示している。このθf又はθbが、それぞれ、
θf>θf_前曲げlimit
のとき、前曲げ状態と認定し、
θb>θb_後ろ曲げlimit
のとき、後ろ曲げ状態と認定する。なお、θfを±で定義した場合には、図19に示したように、後ろ曲げ状態は次のように置き換えてもよい。
θf<θf_後ろ曲げlimit
【0076】
以上を踏まえ、「1.背部の分類:1)から4)」は、図19に示すように、次のとおり判定される。
・分類2)の判定:「θf>θf_前曲げlimit」又は「θb>θb_後ろ曲げlimit(θfが±で定義される場合は、θf<θf_後ろ曲げlimit)」であれば、背部Bは、「分類2):前または後ろに曲げる」と判定される。
・分類4)の判定:分類2)でなく、「θ2>θ2_横曲げlimit」かつ「θ1>θ1_ひねりlimit」であれば、背部Bは、「分類4):ひねりかつ横に曲げる、または斜め前に曲げる」と判定される。
・分類3)の判定:分類4)でなければ、背部Bは、「分類3):ひねるまたは横に曲げる」と判定される。
・分類1)の判定:分類3)でなければ、背部Bは、「分類1):まっすぐ」と判定される。
【0077】
次に、「3.下肢の分類:7)」について、図19に示した姿勢評価アルゴリズムでは、OWAS法における「3.下肢の分類:7)歩く又は移動する」に関する判定については、別のアルゴリズムで求めるとしている。これは、「歩く又は移動する」を検知するためには、動画による連続的な動体の動きの計測と、その動画の各フレームに同期した動体物MOの関節までの距離情報Dを用いて、3次元骨格図の時系列的変化を計測し、評価する必要があることによる。この場合は、連続するある一定期間の、フレーム間での一個体である動体物MOの動きを認識する必要がある。
【0078】
そのためには、動体物MOを空間上の1点又は有限な3次元空間領域として捉える。例えば頭部HDの1点を動体物MOの代表点として捉え、その点の動きを、標準的な動画のサンプリング・タイムである30フレーム/secでサンプリングした場合、約30msecごとの3次元空間上での頭部HDの移動時間から、「歩く又は移動する」を推定できる。この場合、代表点は、前述の人体の概略重心位置GCを用いてもよい。また、足が見える状態であれば、両足首AnL/AnRを代表点としてもよい。通常人の歩行は2~3m/secであり、30フレーム/secでサンプリングした場合、1フレーム間での移動距離は7~10cm程度であるので、7~10cm程度の移動量で一定方向に一定間隔以上移動していれば、「歩く又は移動する」と判定してよい。このほか、複数の関節位置情報から動体物MOを特定の空間領域として捉え、その個体が、3次元空間内を歩いていると考え、歩行の場合の骨格の動きを考慮して「歩く又は移動する」を判断してもよい。
【0079】
以上により、OWAS法の分類に従い、人体の姿勢が、背部、上肢、及び下肢の3部に分けて、それぞれについて、背部4分類、上肢4分類、及び下肢7分類に分けられる。ただし、人体の姿勢の分類(即ち、姿勢評価)は、OWAS法に従う分類に限定されるものではなく、他の手法に従って分類されるようにしてもよい。そして、人体の姿勢の分類結果が、不変量、又は漸変量(変量の変化に対して時間的制約がある変量)として用いられるようにしてもよい。
【0080】
(複数の距離情報からの3次元骨格再構成)
3次元骨格再構成部23については前述したが、ここで一部補足する。設置場所や視野角の異なる複数の距離カメラ12a1,12a2による同一の動体物MOの関節距離が得られた場合には、複数の距離情報Dから一個体の3次元骨格の再構成を行うこととなる。この場合は、例えば、各距離カメラ12a1,12a2で得られた一個体の3次元関節位置の情報を用いて、それぞれの距離カメラ12a1,12a2で得られている個体が同一個体であることを認識する必要がある。そのためには、前述のような一個体の頭部HDの3次元座標位置や、動体物MOの概略重心位置GC又は中心位置を用いて、3次元空間上の位置の同一性を判断する必要がある。
【0081】
同一個体と判定された場合は、各関節部の位置関係の整合性を確認する。遮蔽物等により欠落した距離情報Dが有り、当該する関節位置が別の距離カメラ12a1,12a2で得られる場合は、別の距離カメラ12a1,12a2で得られた値を採用する。ただし、両肩SL/SRや両腰WL/WRなどの関節部はカメラに対する人体の向きに依存し、人体の背部、臀部の厚さ分に応じて誤差が生じるので、必要に応じて補正することにする。これにより、遮蔽物による関節データの欠落を少なくし、可能な限りの完成度の高い3次元骨格を再構成することが可能となる。
【0082】
[[前フレームでの不変量・変量情報取得部]]
前フレームでの不変量・変量情報取得部25は、動画の前フレームの解析で得られた3次元骨格情報から求まる、上記の不変量若しくは漸変量(例えば、背骨の線分Bの長さ、人体の姿勢の分類結果)と、変量として、動体物MOの位置(例えば、動体物の3次元重心位置で、簡易的には背骨の線分Bの中点B0の3次元位置としてもよい)、速度(速度量と進行方向)、加速度(加速度量と加速度方向)を得る。本情報は、動体物MOとして、画像上で捉えられているすべての物体に対して取得する。
【0083】
[[変量推定部]]
変量推定部26では、当該フレームの当該動体物MOの位置と、前フレームで計測された全ての動体物の位置、速度情報との組み合わせにより、予想される変量の組を作る。例えば当該のiフレームでn番目に計測された動体物の位置をP(i)n(P(i)nx,P(i)ny,P(i)nz)とし、前の(i-1)フレームでM個の動体物位置P(i-1)1,P(i-1)2,・・・,P(i-1)M、速度V(i-1)1,V(i-1)2,・・・,V(i-1)M、加速度α(i-1)1,α(i-1)2,・・・,α(i-1)Mが得られているとすると、新たな、M個の変量の組み合わせが考えられる。
【0084】
動体物MOの位置P(i)n(P(i)nx,P(i)ny,P(i)nz)は、前述と同じく、例えば動体物の3次元重心位置で、簡易的には背骨の線分Bの中点B0の3次元位置としてもよい。動体物MOの位置P(i)n(P(i)nx,P(i)ny,P(i)nz)は、3次元骨格再構成部23によって再構成された動体物MOの3次元骨格が用いられて計算されるようにしてもよく、或いは、(動体物MOの3次元骨格は用いられないで、)関節距離計算部22によって計算された、特徴点(例えば、関節位置)までの空間距離から直接計算されるようにしてもよい。
【0085】
速度V(i)nの候補は、(P(i)n-P(i-1)1)/Δt,(P(i)n-P(i-1)2)/Δt,・・・,(P(i)n-P(i-1)M)/Δt となる。
【0086】
加速度α(i)nの候補は、((P(i)n-P(i-1)1)/Δt-V(i-1)1)/Δt,((P(i)n-P(i-1)2)/Δt-V(i-1)2)/Δt,・・・,((P(i)n-P(i-1)M)/Δt-V(i-1)M)/Δt となる。
【0087】
記載を分かり易くするため、速度V(i)nの候補を V(i)n・1,V(i)n・2,・・・,V(i)n・M と記載し、加速度α(i)nの候補を α(i)n・1、α(i)n・2、・・・α(i)n・M と記載する。
【0088】
いま、当該フレームにおいてN個の動体物を計測したとすると、前フレームで計測されたM個の動体物との組み合わせで生じる速度Vや加速度αの組み合わせの数はN×M個となる。例えば、当該フレームで10個の動体物が計測され、前フレームでも10個の動体物が計測された場合、組み合わせの数は10×10=100個となる。
【0089】
[[最適選択推定部]]
最適選択推定部27は、変量推定部26で得られたm個の速度候補と加速度候補との中から、変量の妥当性と、不変量若しくは漸変量を用いて最も妥当性の高い動体物MOの軌跡と思われるペアを想定する。
【0090】
この際、動体物の移動速度、加速度の限界等を考慮する。具体的には例えば、動体物が人体であれば、通常の人の歩行速度を例えば、1分間に120m以内と仮定すれば1秒2mであり、秒間30フレームでの動画撮影とすれば1フレーム間での移動距離は約7cmとなる。7cm以内であれば、通常の人体の大きさに比して十分小さく、3次元座標計算により人体の特定は容易に行われる。しかしながら、例えば、人体の最高速と思われる秒速10mで走っている場合は、移動距離は秒間30フレームの動画撮影では30cm強の変化となる。また、複数人が立ち話や、交差する又は衝突したりするような場合の最適な、動体物の追跡は容易ではない。
【0091】
本実施形態では、下記のアルゴリズムを1例として、3次元計測による不変量若しくは漸変量を用いることで、この問題を解決する。下記説明では、簡略化のため3次元空間について、高さ方向(z軸方向)を省略し、x-y軸方向に射影された2次元平面で説明する。
【0092】
<1>
当該フレーム内で観測された全ての動体物MOの概略重心位置GCについて、相互の概略重心位置GC間が一定間隔a(例えば、60cm。即ち、上記で検討した30cm強のの凡そ2倍)以内となる動体物の組において、各動体物の概略重心位置GCを中心に半径がa/2の円が繋がった連続的閉領域Sを定義する(図25;図中の網掛けの領域が連続的閉領域S)。いま、或るi番目の連続的閉領域SiがK個の動体物から構成されていると仮定する。
【0093】
<2>
前フレームにおいて、当該連続的閉領域S内にL個の概略重心位置GCが存在すると仮定する。したがって、連続的閉領域S内では、K×L個の組み合わせが想定される。
【0094】
<3>
K×L個の組み合わせについて、概略重心位置GC間の距離がa/2以下の組み合わせを抽出する。その結果、J個の組み合わせが生じたとする。j番目の組み合わせに関し、組み合わせの結果は以下の6種類となる。
ア)当該フレームには概略重心位置GCが存在するが、前フレームにおいて、該当する組み合わせが無い。この場合、新たな動体物が生成したと考えられる。
イ)当該フレームと前フレームとにおいて、該当する組み合わせが1対1で対応する。
ウ)当該フレームと前フレームとにおいて、該当する組み合わせが1対多で対応する。
エ)当該フレームと前フレームとにおいて、該当する組み合わせが多対1で対応する。
オ)当該フレームと前フレームとにおいて、該当する組み合わせが多対多で対応する。
カ)前フレームには概略重心位置GCが存在するが、当該フレーム内に、該当する組み合わせが無い。この場合、既存の動体物が消滅したと考えられる。
【0095】
<4>
上記<3>におけるウ、エ、及びオに関して、変量(概略重心位置GC、速度V、加速度α)と不変量若しくは漸変量(例えば、背骨の線分Bの長さ、人体の姿勢の分類結果)から、当該フレーム内の動体物との対応で、最も蓋然性が高い、前フレーム内の動体物の組み合わせを抽出する(尚、動体物の生成、消滅を含む)。
【0096】
具体的には、3次元骨格図から求められる物理量(例えば、背骨の線分Bの長さ)が不変量として用いられる場合には、例えば下記のように判断されるようにしてもよい。
ウであれば、当該フレームの当該動体物に最も不変量が近い(不変量の変化率が低い)前フレームの動体物を、適正な組み合わせとし、他の前フレームの動体物を消滅とする。
エであれば、前フレームの動体物に最も不変量が近い(不変量の変化率が低い)当該フレームの動体物を、適正な組み合わせとし、他の当該フレームの動体物を生成とする。
オであれば、当該フレームと前フレームの動体物に関する全ての組み合わせにおける、不変量が近い(不変量の変化率が低い)組み合わせから、順に組み合わせを選択する。当該フレームと前フレームの動体物の個数が異なる場合は、少ない方の個数分の組み合わせを終了後、当該フレームに動体物が残った場合は、その残った動体物を生成とし、また、前フレームに動体物が残った場合は、その残った動体物を消滅とする。
【0097】
なお、3次元骨格図を解析して得られる人体の姿勢の分類結果(例えば、OWAS法に従う人体の姿勢の分類結果)が不変量、又は漸変量(変量の変化に対して時間的制約がある変量)として用いられる場合には、上記における「不変量が近い」は例えば以下のように判断されるようにしてもよい。
【0098】
基本的な考え方としては、動画のフレーム間の時間(例えば、通常の光学カメラで30ms程度)の間で姿勢が変化していない場合や姿勢の変化としてあり得ると考えられる場合には「不変量が近い」と判断する。具体的には例えば、OWAS法に従う姿勢の分類結果に基づいて下記のように判断することが考えられる。
・前フレームが「両膝をまっすぐにして立つ」(下肢分類2)で当該フレームも「両膝をまっすぐにして立つ」(下肢分類2)である場合は、姿勢が変化していないので、「不変量が近い」と判断する。
・前フレームが「両膝をまっすぐにして立つ」(下肢分類2)で当該フレームが「両膝を曲げて立つか中腰」(下肢分類4)である場合は、フレーム間の時間(例えば、30ms程度)の間での姿勢の変化としてあり得ると考えられるので、「不変量が近い」と判断する。
・前フレームが「歩くまたは移動する」(下肢分類7)で当該フレームが「すわる」(下肢分類1)である場合は、フレーム間の時間の間で歩行状態から座る状態へと移行することは困難である(更に言えば、姿勢の変化としてあり得ない)と考えられるので、「不変量が近い」とは判断しない。
・前フレームが「歩くまたは移動する」(下肢分類7)で当該フレームが「両膝をまっすぐにして立つ」(下肢分類2)又は「両膝を曲げて立つか中腰」(下肢分類4)である場合は、フレーム間の時間の間での姿勢の変化としてあり得ると考えられるので、「不変量が近い」と判断する。
【0099】
上記のように、動画のフレーム間の時間の間で姿勢が変化していない場合に加えて姿勢が変化していても姿勢の変化としてあり得ると考えられる場合を含む点において特に、人体の姿勢の分類結果は不変量若しくは漸変量であるといえる。
【0100】
下肢分類1~7について、人間の姿勢変化として、通常の動画撮影時のフレーム間隔の30ms間で、変化可能な状態の遷移例を図25に示す。
【0101】
<5>
なお、図26は、2次元平面上の模式図であり、実際の動体物の概略重心位置GC間の距離計算は、3次元空間上の距離を計算する。概略重心位置GC、速度V、加速度αも3次元空間領域を用いた計算となる。
【0102】
最適選択推定部27における処理により、時間経過に合わせて取得される複数のフレームにおいて同一の動体物の選択が行われ、ひいては、時系列で同一の動体物の追跡が行われる。最適選択推定部27は、すなわち、前フレームにおける、動体物の不変量若しくは漸変量と当該フレームにおける動体物の不変量若しくは漸変量とを比較するとともに、前フレームにおける動体物の変量と当該フレームにおける動体物の変量とを比較することにより、前フレームにおける動体物と当該フレームにおける動体物との対応付け(尚、前フレームと当該フレームとの対比として、当該フレームにおける動体物の生成や消滅を含む)を行う。
【0103】
[選択結果表示部]
次に、選択結果表示部30の例について説明する。選択結果表示部30では、上記した最適選択推定部27による処理結果に基づき、動体自動追跡装置1が用いられる目的に応じて、いろいろな表示方法が採用されてよいが、主に次の3種類に大別される。
【0104】
(1)数値情報
数値情報としては、例えば、動体物MOごとに、時間の経過に伴う概略重心位置GCについて、3次元位置情報(距離カメラ系、被写体座標系、一般座標系などのような座標系によって数値及び単位は異なる)を表示する。
(2)文字情報、音情報
動体自動追跡装置1は、動体物MOの計測(言い換えると、追跡、トレース)の種々の目的に対応することが可能である。文字情報や音情報としては、例えば、立ち入り禁止区域や危険区域などへの進入監視システムの場合には、動体物が所定の区域へと接近している(言い換えると、所定の区域への進入ルートを辿っている)ときに、「接近注意」の文字を表示したり、「警報音」を発したりしてもよい。なおこの場合は、例えば、選択結果表示部30が管理室に設置されて管理人などに対して報知されるようにしてもよく、或いは、選択結果表示部30が所定の区域の周辺に設置されて所定の区域へと接近している動体物に対して報知されるようにしてもよい。
(3)図情報
図情報としては、例えば、動体物MOごとの概略重心位置GCや3次元骨格図の、時間の経過に伴う移動の軌跡を、x-z平面投影図、y-z平面投影図、又はx-y平面投影図や、任意の視点から見た鳥瞰図などとして表示する。
【0105】
選択結果表示部30は、すなわち、最適選択推定部27による前フレームにおける動体物と当該フレームにおける動体物との対応付けの結果を数値情報、文字情報、音情報、及び図情報のうちの少なくとも1つをもって表示する。
【0106】
[動体自動追跡方法]
以上、動体自動追跡装置1について実施形態を説明したが、動体自動追跡装置1において採用されている方法は、動体自動追跡方法として構成されてもよい。すなわち、動体物MOについての動体自動追跡方法は、動体物MOを計測する計測ステップと、計測ステップの計測結果を評価する評価ステップと、を備える。計測ステップは、動体物MOを撮影する画像取得ステップと、画像取得ステップによる撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、動体物MOまでの距離を計測する距離取得ステップとを備える。評価ステップは、撮影された画像から動体物MOに関する任意の特徴点を抽出する特徴点位置判断ステップ(関節位置判断ステップ)と、抽出された特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算ステップ(関節距離計算ステップ)と、計算された、特徴点までの空間距離に基づいて動体物MOの骨格を再構成する3次元骨格再構成ステップと、再構成された動体物MOの骨格に基づいて動体物の不変量若しくは漸変量を推定する不変量推定ステップと、前フレームにおける動体物の不変量若しくは漸変量並びに変量を取得する前フレームでの不変量・変量情報取得ステップと、計算された、特徴点までの空間距離、又は、再構成された動体物MOの骨格を用いて当該フレームにおける動体物MOの変量を推定する変量推定ステップと、前フレームにおける不変量若しくは漸変量と当該フレームにおける不変量若しくは漸変量とを比較するとともに、前フレームにおける変量と当該フレームにおける変量とを比較することにより、前フレームにおける動体物MOと当該フレームにおける動体物MOとを対応付ける最適選択推定ステップと、を備える。なお、最適選択推定ステップによる前フレームにおける動体物と当該フレームにおける動体物との対応付けの結果を数値情報、文字情報、音情報、及び図情報のうちの少なくとも1つをもって表示する、選択結果表示ステップがさらに備えられるようにしてもよい。
【0107】
[動体自動追跡プログラム]
また、この動体自動追跡方法は、その実行内容をプログラム化し、コンピュータに実行させるように動体自動追跡プログラムとして構成されてもよい。すなわち、動体物MOについての動体自動追跡プログラムは、コンピュータに、動体物MOを計測する計測処理と、計測処理の計測結果を評価する評価処理と、を実行させる。計測処理は、動体物MOを撮影する画像取得処理と、画像取得処理による撮影と時間的に同期し、撮影された画像と重複する視野をもつ、動体物MOまでの距離を計測する距離取得処理とを備える。評価処理は、撮影された画像から動体物MOに関する任意の特徴点を抽出する特徴点位置判断処理(関節位置判断処理)と、抽出された特徴点までの空間距離を計算する特徴点距離計算処理(関節距離計算処理)と、計算された、特徴点までの空間距離に基づいて動体物MOの骨格を再構成する3次元骨格再構成処理と、再構成された動体物MOの骨格に基づいて動体物の不変量若しくは漸変量を推定する不変量推定処理と、前フレームにおける動体物の不変量若しくは漸変量並びに変量を取得する前フレームでの不変量・変量情報取得処理と、計算された、特徴点までの空間距離、又は、再構成された動体物MOの骨格を用いて当該フレームにおける動体物MOの変量を推定する変量推定処理と、前フレームにおける不変量若しくは漸変量と当該フレームにおける不変量若しくは漸変量とを比較するとともに、前フレームにおける変量と当該フレームにおける変量とを比較することにより、前フレームにおける動体物MOと当該フレームにおける動体物MOとを対応付ける最適選択推定処理と、を備える。なお、最適選択推定処理による前フレームにおける動体物と当該フレームにおける動体物との対応付けの結果を数値情報、文字情報、音情報、及び図情報のうちの少なくとも1つをもって表示する、選択結果表示処理がさらに備えられるようにしてもよい。
【0108】
[実施形態の効果]
上記の実施形態に係る動体自動追跡装置1、動体自動追跡方法、及び動体自動追跡プログラムについて説明したが、動体自動追跡装置1、動体自動追跡方法、及び動体自動追跡プログラムは、上記のように構成したことにより、動体物MOの形状を非接触で定時間ごとに3次元的に計測し、その位置と移動方向を決定することができ、延いては動体物MOの位置を非接触で定時間ごとに定量的に計測し、その特徴量を評価し、同一個体(動体物MO)の位置のトレースを行うことができる。
【0109】
また、動体自動追跡装置1、動体自動追跡方法、及び動体自動追跡プログラムを利用することにより、具体的には例えば、計測対象空間全体に対する必要な計測機器の最適配置決定手段を提供することができる。例えば、溶鉱炉等の危険な場所を抱えた作業場を想定した場合、作業場は、作業員が作業する作業領域の立体領域と、溶鉱炉等の立入禁止領域の立体領域とから構成される。計測の対象領域は、作業領域と立入禁止領域との接面部分、又は、立入禁止領域の相当部分からなると想定される。その場合、作業員の位置を推定できる計測装置をできるだけ数を少なくし、効率的に配置できるかを推定する手段が必要となる。動体自動追跡装置1、動体自動追跡方法、及び動体自動追跡プログラムを利用することにより、そのような手段を提供することも可能となる。
【符号の説明】
【0110】
1 動体自動追跡装置
10 計測部
11 画像取得部
11a,11a1,11a2,11a3 光学カメラ
12 距離取得部
12a,12a1,12a2 距離カメラ
20 評価部
21 関節位置判断部(特徴点位置判断部)
22 関節距離計算部(特徴点距離計算部)
23 3次元骨格再構成部
24 不変量推定部
25 前フレームでの不変量・変量情報取得部
26 変量推定部
27 最適選択推定部
30 表示部
MO 動体物
A,B ステレオカメラ
CO 円形物体
RO 矩形物体
【要約】
【課題】動体物の位置を非接触で定時間ごとに定量的に計測し、その特徴量を評価し、同一個体の位置のトレースを行う。
【解決手段】動体自動追跡装置1は、動体物MOの関節位置を抽出する関節位置判断部21と、関節位置までの空間距離を計算する関節距離計算部22と、動体物MOの骨格を再構成する3次元骨格再構成部23と、動体物MOの不変量若しくは漸変量を推定する不変量推定部24と、前フレームにおける動体物MOの不変量若しくは漸変量並びに変量を取得する前フレームでの不変量・変量情報取得部25と、当該フレームにおける動体物MOの変量を推定する変量推定部26と、前フレームと当該フレームとの不変量若しくは漸変量を比較するとともに、前フレームと当該フレームとの変量を比較することにより、前フレームにおける動体物MOと当該フレームにおける動体物MOとを対応付ける最適選択推定部27と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26