(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】自転車
(51)【国際特許分類】
B62K 5/02 20130101AFI20240329BHJP
【FI】
B62K5/02
(21)【出願番号】P 2019230949
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 祐司
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-149828(JP,A)
【文献】中国実用新案第207809660(CN,U)
【文献】実開昭60-67294(JP,U)
【文献】特開2002-104278(JP,A)
【文献】特開2017-7612(JP,A)
【文献】特開2014-97756(JP,A)
【文献】特開2007-50723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 1/00- 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
少なくとも一つの前車輪と、
少なくとも二つの後車輪とを備える自転車であって、
前記フレームは、
前記一つの前車輪が取り付けられた前部フレームと、
前記二つの後車輪が取り付けられた後部フレームと、
前記前部フレームと前記後部フレームとを相対回転可能に連結した連結部材と、
を有し、
前記相対回転を規制する回転規制機構を更に備え、
前記回転規制機構は、
前記相対回転に伴って連動する連動部材と、
前記連動部材を制動する制動部材とを有し、
検知装置を更に備え、
前記連動部材は、前記相対回転に伴って回転するプレートであり、
前記制動部材は、前記プレートと接触して前記プレートの回転を制動する電気式のブレーキパッドであり、利用者が自転車から降りた状態を前記検知装置が検知した場合にのみ、前記連動部材を制動する、
自転車。
【請求項2】
前記電気式のブレーキパッドは、一対のブレーキパッドであり、
前記連動部材は、前記一対の電気式ブレーキパッドの間に位置し、
前記一対の電気式ブレーキパッドは、互いに近づく方向と互いに離れる方向とに駆動し、
前記制動部材は、利用者が自転車から降りた状態を前記検知装置が検知した場合にのみ、前記一対の電気式ブレーキパッドが前記連動部材を挟むことで、前記連動部材を制動する、
請求項1に記載の自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自転車に関し、詳しくは、少なくとも一つの前車輪と、少なくとも二つの後車輪とを備えた自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、三輪自転車が開示されている。この三輪自転車は、前輪を支持する前フレームと、後二輪を支持する後フレームとを備えている。前フレームは、後フレームに対して左右に揺動可能である。このため、カーブを曲がる等の旋回走行時において、前フレームが後フレームに対して傾くことで、スムーズな走行を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した三輪自転車は、前フレームが後フレームに対して回転するため、例えば、駐車時において安定した姿勢を維持し難く、倒れる恐れがある。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、駐車時等において安定した姿勢を維持することができる自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る自転車は、フレームと、少なくとも一つの前車輪、少なくとも二つの後車輪を備える。前記フレームは、前記一つの前車輪が取り付けられた前部フレームと、前記二つの後車輪が取り付けられた後部フレームと、前記前部フレームと前記後部フレームとを相対回転可能に連結した連結部材とを有する。前記自転車は、前記相対回転を規制する回転規制機構を更に備える。前記回転規制機構は、前記相対回転に伴って連動する連動部材と、前記連動部材を制動する制動部材とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係る自転車は、駐車時等において安定した姿勢を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る自転車の側面図である。
【
図3】
図3は、同上の自転車が備える後部フレームの平面図である。
【
図4】
図4は、同上の後部フレームの鉛直面断面図である。
【
図5】
図5は、同上の後部フレームにおいて、連結体等の図示を省略した平面図である。
【
図6】
図6A~
図6Cは、同上の自転車における揺動復元機構の動作を示す背面図である。
【
図7】
図7は、同上の自転車が備える回転規制機構を示す背面図である。
【
図8】
図8Aは、同上の自転車が備える操作装置の側面図である。
図8Bは、同上の自転車が備える制動部材が回転規制位置にある状態における操作装置の側面図である。
図8Cは、同上の自転車が備える操作部材が保持部材によって保持された状態における操作装置の側面図である。
【
図10】
図10は、同上の自転車におけるハブモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)実施形態
(1.1)概要
本実施形態の自転車1は、
図1に示すように、フレーム2と複数の車輪91,92とを備えている。複数の車輪91,92は、フレーム2を走行面100上で支える。
【0010】
自転車1は、複数の車輪として、少なくとも1つの前車輪92と、少なくとも二つの後車輪91とを備えている。フレーム2は、前部フレーム21、後部フレーム3及び連結部材4を有している。前部フレーム21には、前車輪92が取り付けられている。後部フレーム3には、二つの後車輪91が取り付けられている。連結部材4は、前部フレーム21と後部フレーム3とを相対回転可能に連結している。
【0011】
前部フレーム21及び後部フレーム3のうちの一方を一方フレームとすると共に他方を他方フレームとする。連結部材4は、一方フレームに対して平面視において前後方向に沿った回転軸41(
図3参照)を中心に回転可能に連結され、かつ他方フレームに対して回転軸41を中心に回転不能に連結されている。連結部材4が一方フレームに対して回転軸41を中心に回転することで、前部フレーム21は、後部フレーム3に対して回転軸41を中心に回転する。以下、この前部フレーム21の後部フレーム3に対する回転を「スイング」という。なお、本開示における「平面視」は、対象物を上方から見ることを意味する。
【0012】
本実施形態では、一方フレームが後部フレーム3であり、他方フレームが前部フレーム21である。すなわち、連結部材4は、後部フレーム3に対して回転軸41を中心に回転可能に連結され、前部フレーム21に対して回転軸41を中心に回転不能に連結されている。
【0013】
自転車1は、回転規制機構5を更に備えている。回転規制機構5は、前記相対回転(スイング)を規制する機構である。
図7に示すように、回転規制機構5は、連動部材50と、制動部材51とを有している。連動部材50は、前記相対回転に伴って連動する。制動部材51は、連動部材50を制動する。
【0014】
本実施形態の自転車1では、回転規制機構5により、前記相対回転を規制し得る。このため、例えば、自転車1の駐車時等おいては、前部フレーム21が後部フレーム3に対して回転することを規制して、自転車1を倒れ難く安定した姿勢に維持することができる。また、自転車1に荷物又は子供等を載せ下ろしする際にも自転車1を倒れ難くすることができるため、利便性に優れる。
【0015】
また、回転規制機構5は、制動部材51が連動部材50を制動することによって、前記相対回転を規制する。このため、後部フレーム3に対して回転する前部フレーム21を、その回転範囲内における任意の回転位置(全ての回転位置)で固定することができる。したがって、例えば、坂の傾斜や段差等に応じて前部フレーム21を後部フレーム3に対して適切な回転位置に位置させた状態で、前部フレーム21の後部フレーム3に対する回転位置を固定することで、自転車1を坂等にも安定した姿勢で駐車することができる。
【0016】
(1.2)全体構成
図1及び
図2に示す本実施形態の自転車1は、電動アシスト自転車である。本開示における「電動アシスト自転車」は、利用者の踏む力(以下、「踏力」という)を、モータユニット7が備えるモータ(図示せず)の駆動出力により補って、駆動輪となる車輪を回転させる自転車を意味する。したがって、本開示でいう「電動アシスト自転車」は、法規上、電動アシスト自転車に属する自転車だけでなく、法規上は電動アシスト自転車に属さないモータを持つ自転車も含まれる。また、本開示でいう「駆動出力」は、モータが駆動輪となる車輪91に与える回転出力を意味する。
【0017】
なお、自転車1は、電動アシスト自転車以外の電動自転車であってもよい。例えば、自転車1は、踏力により車輪91,92に動力を与える人力駆動系と、モータにより車輪91,92に動力を与えるモータ駆動系とが独立している自転車(モータのみでも走行可能な自転車)であってもよい。なお、本開示では、人力駆動系とモータ駆動系とが独立した自転車と、電動アシスト自転車とを含む自転車を「電動自転車」という。また、自転車1は、電動自転車に限定されず、人力駆動系及びモータ駆動系のうち、人力駆動系のみを有する自転車であってもよい。
【0018】
本実施形態の自転車1を利用する利用者は、主に、高齢者、足腰が弱い者、バランスをとるのが苦手な者、障害者等である。なお、利用者は、特に限定されず、若年者、中年者、健常者等であってもよい。
【0019】
自転車1が走行する走行面100は、前車輪92の下端と後車輪91の下端とを通る面である。以下では、自転車1を水平な走行面100に沿って配した状態における方向を用いて、自転車1の各要素を説明する。具体的には、走行面100と直交する2方向のうち、走行面100から自転車1に向かう方向を「上方向」とし、その反対方向を「下方向」と定義する。また、上方向及び下方向の2方向を「上下方向」と定義する。また、自転車1が走行面100に沿って直進する方向を「前方向」とし、その反対方向を「後方向」と定義する。また、前方向及び後方向の2方向を「前後方向」と定義し、走行面100と平行で、かつ、前後方向に直交する2方向を「左右方向」と定義する。
【0020】
なお、これら方向の定義は、自転車1の使用態様を限定する趣旨ではない。また、自転車1が実際に走行する走行面100は、水平な平面に限定されない。自転車1が走行する走行面100は、例えば、凹凸面、水平面に対して傾斜した傾斜面、湾曲した面等であってもよい。また、図面中の矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0021】
(1.3)フレーム
フレーム2は、自転車1の骨組みである。フレーム2は、例えば、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金から形成される。なお、フレーム2の材料は、限定されず、例えば、鉄、クロムモリブデン鋼、ハイテンスチール、チタン又はマグネシウム等であってもよい。また、フレーム2の材料は、金属に限定されず、例えば、カーボン、木材、竹又は繊維強化合成樹脂(例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics))等であってもよい。
【0022】
(1.4)前車輪及び後車輪
本実施形態の自転車1は、三輪自転車であって、複数の車輪として、一つの前車輪92及び二つの後車輪91のみを備えている。なお、自転車1は、三輪自転車に限定されない。すなわち、自転車1は、四つ以上の車輪を備えてもよい。
【0023】
前車輪92及び二つの後車輪91の各々は、タイヤ920、ホイール921及びハブ922を有している。前車輪92のハブ922には、前ハブ軸93が通っている。前車輪92は、前ハブ軸93に対して回転可能に取り付けられている。
【0024】
なお、本開示において「取り付ける」とは、物を、取付対象物に対して、直接的又は間接的に設置することを意味する。ここで、「直接的」とは、取付対象物に物が接触した状態で、取付対象物に物が設置されていることを意味する。また、「間接的」とは、取付対象物と物との間に、例えば、パッキン、取付金具、ブラケット等の他部材を介在させた状態で、取付対象物に物が設置されていることを意味する。
【0025】
前車輪92は、前ハブ軸93の中心軸を中心に回転する。すなわち、前車輪92の回転軸は、走行面100に対して平行な前ハブ軸93の中心軸と一致する。
【0026】
二つの後車輪91は、
図2に示すように、左右方向に離れている。二つの後車輪91には、
図3に示す二つの後ハブ軸94がそれぞれ固定されている。各後ハブ軸94は、後部フレーム3に対して回転可能に取り付けられている。これにより、二つの後車輪91の各々は、後部フレーム3に対して独立して回転することができる。本実施形態では、二つの後車輪91のうちの一方が駆動輪であり、他方が従動輪である。なお、両方の後車輪91を駆動輪としてもよい。この場合、例えば、デファレンシャルギア(差動装置)が用いられる。
【0027】
(1.5)前部フレーム
図1に示すように、フレーム2における前側の部分は、前部フレーム21で構成されている。前部フレーム21には、前車輪92が取り付けられている。
【0028】
本実施形態の前部フレーム21は、ヘッドパイプ24、ダウンチューブ22、シートチューブ23及びシートステイ25を有している。本開示でいう「パイプ」とは、細長くて中空な部材を意味し、特に記載する場合を除き、パイプの断面形状は限定されない。パイプの断面形状は、例えば、円形状(正円、長円及び楕円を含む)、長方形状(正方形を含む)、六角形状、八角形状等であってもよい。
【0029】
本実施形態の自転車1は、前ホーク26を更に備えている。前ホーク26は、一対のホーク足261と、一対のホーク足261の上端部同士を接続するホーク肩262と、ホーク肩262から上側に向かって突出したホークステム263とを有している。一対のホーク足261には、前車輪92を支持する前ハブ軸93が取り付けられている。ホークステム263の突出方向(長手方向)は、ホーク肩262から、上方向に行くに従って後方向に行くように、走行面100に対して傾いている。
【0030】
ヘッドパイプ24は、前ホーク26のホークステム263を回転可能に支持している。ヘッドパイプ24の中心軸は、上方向に行くに従って後方向に行くように、上下方向に対して傾いている。ヘッドパイプ24には、ヘッドパイプ24の中心軸とホークステム263の中心軸とが一致するように、ホークステム263が通っている。ホークステム263は、ヘッドパイプ24の中心軸と一致した回転軸を中心に回転する。
【0031】
本実施形態の自転車1は、ハンドル20を更に備えている。ハンドル20は、前ホーク26のホークステム263に取り付けられている。利用者は、ハンドル20を操作することで、前車輪92の向きを変更することができる。本実施形態のハンドル20は、正面視略U字状に形成されている。なお、本開示における「正面視」は、対象物を前方から見ることを意味する。ハンドル20は、先端にグリップ200を有している。
【0032】
本実施形態の自転車1は、バスケット290を更に備えている。バスケット290は、ハンドル20に取り付けられており、ホークステム263の上方に位置している。なお、バスケット290は、後部フレーム3に取り付けられてもよい。また、前部フレーム21又は後部フレーム3には、バスケット290に代えて子供乗せ(子供を乗せるためのシート)を取り付けてもよい。
【0033】
ヘッドパイプ24の後方には、シートチューブ23が位置している。ヘッドパイプ24とシートチューブ23とは、ダウンチューブ22によって連結されている。本実施形態の自転車1は、モータブラケット73を更に備えている。モータブラケット73は、ダウンチューブ22に取り付けられている。
【0034】
本実施形態の自転車1は、モータユニット7、一対のクランクアーム96及び一対のペダル95を更に備えている。モータユニット7は、モータブラケット73に取り付けられている。すなわち、本実施形態のモータユニット7は、ダウンチューブ22に取り付けられた、いわゆるセンタユニット方式のモータユニットである。
【0035】
モータユニット7は、クランク軸700を有している。クランク軸700における左右方向の両端には、一対のクランクアーム96がそれぞれ取り付けられている。一対のクランクアーム96には、一対のペダル95がそれぞれ取り付けられている。
【0036】
モータユニット7は、ペダル95から入力された踏力を補助する力を駆動出力として出力する。利用者がペダル95を漕ぎ、クランクアーム96を介して、踏力(外力)がクランク軸700に入力されると、クランク軸700は回転する。このようにクランク軸700が回転すると、モータユニット7は、クランク軸700の回転速度及びクランク軸700に生じるトルクを検出し、その検出結果に応じた力を駆動出力として出力する。
【0037】
本実施形態のモータユニット7は、モータと、動力伝達体74が掛けられる駆動スプロケット71とを更に有している。モータユニット7は、駆動スプロケット71として、踏力によって回転する第一駆動スプロケット710と、モータによって回転する第二駆動スプロケット(図示せず)とを有している。すなわち、本実施形態に係るモータユニット7は、踏力と、駆動出力とを別々に動力伝達体74に対して伝える二軸式である。第一駆動スプロケット710及び第二駆動スプロケットが回転することで、駆動輪である後車輪91が回転する。
【0038】
なお、モータユニット7は、クランク軸700から入力された踏力と、モータの駆動出力とを一つの駆動スプロケットに伝達した上で、動力伝達体74に動力を伝達する一軸式であってもよい。
【0039】
ダウンチューブ22の後端部には、シートチューブ23の下端部が連結されている。シートチューブ23は、前後方向において、前車輪92と後車輪91との間に位置している。シートチューブ23は、正面視において上下方向に延びている。本実施形態のシートチューブ23の中心軸は、上方向に行くに従って後方向に行くように、上下方向に対して傾斜している。
【0040】
本実施形態の自転車1は、サドル28を更に備えている。サドル28は、シートピラー280を有している。シートピラー280は、サドル28において利用者が座る部分から下側に向かって突出している。本実施形態のシートピラー280は、下方向に行くに従って前方向に行くように、上下方向に対して傾斜している。
【0041】
シートピラー280の一部は、シートチューブ23の内側に位置している。シートピラー280の中心軸とシートチューブ23の中心軸とは一致している。シートピラー280は、シートチューブ23に対して、シートチューブ23の中心軸(長手方向)に沿って移動可能に取り付けられている。
【0042】
本実施形態の自転車1は、バッテリブラケット27を更に備えている。バッテリブラケット27は、ダウンチューブ22の後端部に取り付けられている。バッテリブラケット27は、載置部271を有している。
【0043】
本実施形態の自転車1は、バッテリ装置6を更に備えている。バッテリ装置6は、バッテリブラケット27に取り付けられている。バッテリ装置6は、装着部61及びバッテリ62を有している。装着部61には、バッテリ62が取外可能に装着されている。
【0044】
バッテリ62は、電気的エネルギーを蓄える二次電池である。バッテリ62には、単数又は複数のセルが内蔵されている。バッテリ62は、装着部61に電気的に接続されている。
【0045】
バッテリ装置6の装着部61は、バッテリブラケット27の載置部271に載せられた状態で固定されている。装着部61は、モータユニット7に電気的に接続されている。バッテリ62は、装着部61を介してモータユニット7に電力を供給する。なお、バッテリ装置6は、モータユニット7に対してのみ電力を供給するように構成されてもよいし、モータユニット7に加えて、例えば、モータのON/OFFを操作する操作部又はヘッドライト等に電力を供給するように構成されてもよい。
【0046】
本実施形態のモータブラケット73は、バッテリブラケット27よりも前方に位置しており、シートチューブ23の中心軸の延長線よりも前方に配されている。このため、モータブラケット73がシートチューブ23の中心軸の延長線上にある場合よりも、利用者はペダル95を漕ぎやすい。モータブラケット73がシートチューブ23の中心軸の延長線よりも前方に配されていると、ペダル95とサドル28との距離を大きく取りやすいからである。なお、モータブラケット73とバッテリブラケット27とは、接続されてもよい。
【0047】
シートチューブ23には、シートステイ25が取り付けられている。シートステイ25は、シートチューブ23を補強している。シートステイ25は、縦支持体251と、横支持体252とを有している。縦支持体251は、水平面と交差する方向に延びており、シートチューブ23と略平行である。横支持体252は、縦支持体251の上端部とシートチューブ23とを連結している。
【0048】
(1.6)後部フレーム
フレーム2における後側部分は、後部フレーム3によって構成されている。後部フレーム3は、前部フレーム21よりも後側に配されている。後部フレーム3は、
図3及び
図4に示すように、後部フレーム3の主体を構成する後部フレーム本体30を有している。
【0049】
後部フレーム本体30は、
図5に示すように、複数(ここでは六つ)のプレート302を有している。複数のプレート302は、左右方向に並んでいる。各プレート302は、左右方向と略直交する板状に形成されている。複数のプレート302のうち、最も外側のプレート302には、後述する後車輪ブレーキ81が取り付けられている。
【0050】
本実施形態の後部フレーム本体30は、複数の軸受304を更に有している。複数の軸受304は、複数のプレート302のうち、後車輪ブレーキ81が取り付けられたプレート302を除く各プレート302に、それぞれ取り付けられている。複数の軸受304は、二つの後車輪91がそれぞれ固定された二つの後ハブ軸94を回転可能に支持している。各後ハブ軸94の回転軸は、当該後ハブ軸94の中心軸と一致する。
【0051】
軸受304の種類は、例えば、スラスト荷重、ラジアル荷重、潤滑性等を考慮して、転がり軸受又は滑り軸受等から適宜選択される。転がり軸受としては、例えば、ラジアル玉軸受、ラジアルころ軸受等が挙げられる。滑り軸受としては、例えば、静圧気体軸受、動圧気体軸受、静圧流体軸受、動圧流体軸受、スクイーズ油膜軸受、ハイブリッド軸受、固体潤滑軸受、無潤滑軸受、自己潤滑軸受、多孔質自己潤滑軸受、焼結含油軸受、自給式滑り軸受ユニット等が挙げられる。
【0052】
後部フレーム3は、リアスプロケット305を更に有している。駆動輪となる後車輪91に取り付けられた後ハブ軸94には、リアスプロケット305が固定されている。リアスプロケット305の回転軸は、後ハブ軸94の回転軸と一致している。
【0053】
自転車1は、動力伝達体74を更に備えている。リアスプロケット305は、
図1に示すモータユニット7の駆動スプロケット71に対し、動力伝達体74を介して連結されている。
【0054】
動力伝達体74はチェーンである。駆動スプロケット71から出力された回転動力は、動力伝達体74を介してリアスプロケット305に伝達され、駆動輪となる後車輪91を回転させる。なお、動力伝達体74は、ベルト又はワイヤ等であってもよい。
【0055】
図4に示すように、後部フレーム本体30は、複数の連結体303を更に有している。本実施形態の後部フレーム本体30は、複数の連結体として、二つの連結体303を有している。複数の連結体303は、上下方向に間隔をあけて並んでいる。
【0056】
複数のプレート302(
図5参照)は、複数の連結体303によって連結されている。各連結体303は、角パイプである。ただし、各連結体303は、角パイプに限らず、例えば、丸パイプ、軸体、プレート等であってもよい。
【0057】
後部フレーム3は、固定部34及びシャフト33を更に有している。固定部34は、後部フレーム本体30の連結体303に固定されている。連結体303に対する固定部34の固定は、例えば、溶接による結合、クサビによる結合、嵌め合いによる結合、ねじによる結合等により実現される。
【0058】
固定部34には、シャフト33が固定されている。シャフト33は、後部フレーム3において連結部材4が回転可能に取り付けられる部分である。本実施形態のシャフト33は、後端部が固定部34に固定されている。固定部34とシャフト33との固定は、例えば、溶接による結合、スプライン結合、キー溝とキーとによる結合、クサビによる結合、嵌め合いによる結合、ねじによる結合等により実現される。本開示における「スプライン結合」は、例えば、角形スプライン、インボリュートスプライン、ボールスプライン、三角山セレーション、インボリュートセレーション等による結合を含む。
【0059】
シャフト33は、固定部34から前側に向かって突出している。シャフト33は、平面視において、前後方向と平行な長手方向を有している。
【0060】
シャフト33の中心軸は、走行面100に対して傾いている。シャフト33の中心軸と走行面100とのなす角は、0°より大きく、30°以下であることが好ましく、10°以上20°以下であることがより好ましい。
【0061】
(1.7)ブレーキ装置
図5に示すように、本実施形態の自転車1は、ブレーキ装置8を更に備えている。ブレーキ装置8は、前車輪92と後車輪91との回転運動を制動する装置である。本実施形態のブレーキ装置8は、二つの後車輪ブレーキ81と、前車輪ブレーキ(不図示)と、後車輪ブレーキレバー84(
図1参照)と、前車輪ブレーキレバー(不図示)とを有している。
【0062】
二つの後車輪ブレーキ81は、二つの後車輪91の回転運動を制動する。具体的には、各後車輪ブレーキ81は、
図1に示す後車輪ブレーキレバー83の操作によって、後車輪91の回転運動を制動する制動位置と、後車輪91の回転運動を制動しない非制動位置とに切り替えられる。
【0063】
図5に示す各後車輪ブレーキ81は、バンドブレーキで構成されている。なお、後車輪ブレーキ81は、サーボブレーキ、ディスクブレーキ、キャリパーブレーキ等であってもよい。
【0064】
二つの後車輪ブレーキ81は、二つのプレート302にそれぞれ取り付けられている。本実施形態の二つの後車輪ブレーキ81は、二つの後車輪91の各々に対応して設けられており、互いの動作が同期している。
【0065】
前車輪ブレーキは、前車輪92の回転運動を制動する。前車輪ブレーキは、前車輪ブレーキレバーの操作によって、前車輪92の回転運動を制動する制動位置と、前車輪92の回転運動を制動しない非制動位置とに切り替えられる。前車輪ブレーキは、キャリパーブレーキで構成されている。なお、前車輪ブレーキは、サーボブレーキ、ディスクブレーキ又はバンドブレーキ等であってもよい。
【0066】
(1.8)連結部材
図4に示すように、前部フレーム21と後部フレーム3とは、連結部材4を介して連結されている。本実施形態の連結部材4は、ケース40及び取付具43を有している。ケース40は、筒状に形成されている。ケース40の中心軸は、平面視において前後方向に沿っている。本実施形態のケース40の中心軸は、後方向に行くに従って下方向に行くように、走行面100に対して傾斜している。
【0067】
自転車1は、複数の軸受351を更に有している。本実施形態の自転車1は、複数の軸受として、二つの軸受351を有している。複数の軸受351は、シャフト33とケース40との間に設けられている。複数の軸受351は、ケース40の長手方向の両端部に取り付けられている。軸受351は、例えば、滑り軸受である。なお、ケース40のシャフト33の中心軸と平行な方向への移動は、例えば、E型の止め輪354等によって制限されている。
【0068】
シャフト33は、複数の軸受351を介して、ケース40をシャフト33の中心軸周りに回転可能に支持している。これにより、ケース40(連結部材4)は、シャフト33に対して、相対的に回転可能に取り付けられている。ケース40のシャフト33に対する回転軸は、ケース40の中心軸と一致している。
【0069】
本実施形態の連結部材4は、ケース40がシャフト33に対して回転可能に取り付けられることで、一方フレームである後部フレーム3に対し、平面視において前後方向に沿った回転軸41を中心に回転可能に連結されている。すなわち、回転軸41は、シャフト33の中心軸と一致し、また、ケース40の中心軸と一致する。連結部材4(ケース40)がシャフト33に対して回転軸41を中心に回転することで、前部フレーム21はスイングする。
【0070】
以下、シートチューブ23(
図1参照)の中心軸が、正面視において上下方向と平行になるときの前部フレーム21の位置を「基準位置」という。また、本開示では、特に記載する場合を除き、前部フレーム21が基準位置に位置している状態について説明する。また、以下の説明では、前部フレーム21が基準位置にあるときの他の部材の位置についても「基準位置」という場合がある。
【0071】
ケース40には、取付具43が固定されている。取付具43は、連結部材4において、前部フレーム21に連結される部分である。本実施形態の取付具43は、バッテリブラケット27に対し、取付軸44を介して回転可能に取り付けられている。前部フレーム21は、連結部材4に対して取付軸44を中心にして回転可能である。
【0072】
連結部材4に対して回転する前部フレーム21の回転軸42は、取付軸44の中心軸と一致し、左右方向と平行である。すなわち、前部フレーム21は、連結部材4に対して、平面視において回転軸41と交差する方向に延びる回転軸42を中心に回転可能である。以下、回転軸42を第2回転軸42という。前部フレーム21が連結部材4に対して第2回転軸42を中心に回転することで、前車輪92及び二つの後車輪91が走行面100に追従しやすくなる。
【0073】
本実施形態の自転車1は、減衰装置291を更に有している。減衰装置291は、前部フレーム21の振動を減衰する。この振動は、例えば、自転車1の走行時における後部フレーム3の振動が、前部フレーム21に伝達し、前部フレーム21が連結部材4に対して第2回転軸42を中心に回転することにより発生する。
【0074】
本実施形態の減衰装置291は、スプリングとオイルダンパとを備えたサスペンションである。減衰装置291の一端部は、前部フレーム21のシートステイ25に回転可能に取り付けられている。減衰装置291のシートステイ25に取り付けられた部分とは反対側の端部は、連結部材4のケース40に回転可能に取り付けられている。減衰装置291は、前部フレーム21の振動を減衰させることで、サドル28(
図1参照)に座った利用者が受ける振動を和らげる。
【0075】
なお、減衰装置291は、スプリングなどの弾性体のみで構成されてもよいし、オイルダンパのみで構成されてもよい。
【0076】
(1.9)揺動復元機構
本実施形態の自転車1は、
図6A~
図6Cに示す揺動復元機構31を更に備えている。揺動復元機構31は、前部フレーム21がスイングすることにより、基準位置から外れた位置に配された前部フレーム21に対して、基準位置に戻そうとする力を与える機構である。したがって、本実施形態に係る自転車1では、例えば、利用者が乗車中において、左右方向のいずれかに進行方向を変える際、後部フレーム3に対して、前部フレーム21を左右方向のいずれかに傾けた場合に、前部フレーム21が基準位置に戻りやすい。
【0077】
図4に示すように、本実施形態の揺動復元機構31は、後部フレーム本体30の前方において、シャフト33に取り付けられている。なお、揺動復元機構31は、例えば、後部フレーム本体30の後方において、シャフト33に取り付けられてもよく、揺動復元機構31の取付位置は特に限定されない。
【0078】
揺動復元機構31は、
図6Aに示すように、第一レバー313、第二レバー317及び弾性体318を有している。第一レバー313及び第二レバー317の各々は、
図6A~
図6Cに示すように、シャフト33に対して、回転可能に取り付けられている。第一レバー313及び第二レバー317の回転軸は、連結部材4の回転軸41(シャフト33の中心軸)と一致している。
【0079】
本実施形態の自転車1は、
図4に示す接続部材13及び押部材14を更に備えている。押部材14は、接続部材13を介して、連結部材4のケース40に取り付けられている。
【0080】
接続部材13は、厚み方向が回転軸41と平行な板状に形成されており、ケース40の外周面からラジアル方向に突出している。本実施形態の接続部材13は、
図4に示すように、ケース40の外周面から上側に向かって突出している。なお、接続部材13は、例えば、棒状又はブロック状等に形成されてもよい。
【0081】
本実施形態の押部材14は、軸方向がシャフト33の中心軸と平行な棒状に形成されている。押部材14は、ケース40に対して、ラジアル方向に離れている。
【0082】
前部フレーム21がスイングしたとき、接続部材13及び押部材14は、前部フレーム21及びケース40と共に回転軸41を中心に回転する。
図6Bに示すように、第一レバー313は、回転軸41を中心に回転する押部材14に押されることによって、回転軸41を中心に一方向に回転する。第二レバー317は、回転軸41を中心に回転する押部材14に押されることによって、
図8Cに示すように回転軸41を中心に他方向に回転する。
【0083】
図6Aに示すように、本実施形態の二つのレバー313,317は、互いに同一形状に形成されている。このため、以下では、主に第一レバー313について説明し、第二レバー317において第1レバー313と共通する要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。なお、二つのレバー313,317は、互いに同一形状に形成されたものに限定されない。例えば、二つのレバー313,317は、互いに鏡像対称に形成されてもよい。
【0084】
第一レバー313は、レバー本体320を有している。レバー本体320は、第一レバー313の主体を構成する部材である。レバー本体320は、
図4に示すように、シャフト33の軸方向の中間部分(後部フレーム3とケース40との間)に対し、回転可能に取り付けられている。レバー本体320の回転軸は、シャフト33の回転軸41と一致している。本実施形態のレバー本体320は、
図6Aに示すように、シャフト33の軸方向に見て、略L字状に形成されている。なお、レバー本体320は、シャフト33の軸方向に見て、例えば、円形状、矩形状等に形成されてもよく、レバー本体320の形状は限定されない。
【0085】
レバー本体320は、押され部315を有している。押され部315は、回転軸41よりも上方に位置している。押され部315は、押部材14の側面に対向する面である。押され部315は、押部材14が回転軸41を中心にして一方向(第二レバー317の場合は他方向)に回転すると、押部材14に押される。レバー本体320は、押部材14によって押され部315が押されることで、回転軸41を中心に回転する。
【0086】
レバー本体320は、複数の立上片3190を更に有している。複数の立上片3190の各々は、回転軸41に直交する面に対して交差する方向に延びる板状に形成されている。立上片3190は、レバー本体320の強度を高めている。
【0087】
第一レバー313は、弾性体取付部314を更に有している。弾性体取付部314は、レバー本体320に取り付けられている。本実施形態の弾性体取付部314は、アイボルトであり、ナットによってレバー本体320の立上片3190に取り付けられている。
【0088】
本実施形態の弾性体取付部314は、回転軸41よりも上方に位置している。第一レバー313の弾性体取付部314には、弾性体318の一端部が取り付けられており、第二レバー317の弾性体取付部314には、弾性体318の他端部が取り付けられている。なお、本開示では、弾性体取付部314は、弾性体318が取付可能であれば、アイボルトに限らず、フックであってもよいし、立上片3190に形成された切欠きであってもよい。また、弾性体取付部314は、立上片3190に取り付けられなくてもよく、レバー本体320において、シャフト33の軸方向に向く面に取り付けられてもよい。
【0089】
弾性体318は、第一レバー313及び第二レバー317に対して、押部材14から加えられる回転力とは反対方向の力を与える。弾性体318は、本実施形態では、引張コイルばねである。なお、弾性体318は、レバー313,317に対して力を付与できればよく、引張コイルばねに限定されない。弾性体318は、例えば、板ばね、ねじりコイルばね又はゴム等であってもよい。
【0090】
揺動復元機構31は、固定体319を更に有している。固定体319は、
図4に示すように、シャフト33に対して固定されている。固定体319は、固定具353と、軸体352とを有している。固定具353は、シャフト33から下側に向かって突出している。固定具353とシャフト33とは溶接等により固定されている。軸体352は、固定具353に取り付けられている。軸体352は、シャフト33の中心軸と略平行である。
【0091】
図6Aに示すように、第一レバー313及び第二レバー317の各々は、移動規制部316を更に有している。本実施形態の移動規制部316は、ボルトであり、ナットによってレバー本体320の立上片3190に取り付けられている。移動規制部316は、回転軸41よりも下側に位置している。固定体319の軸体352は、第一レバー313の移動規制部316と、第二レバー317の移動規制部316との間に位置している。
【0092】
例えば、前部フレーム21が
図6Aに示すように基準位置にあるときに、前部フレーム21がスイングし、ケース40(
図4参照)がシャフト33に対して回転軸41を中心に一方向に回転したとする。この場合、押部材14は、
図6Bに示すように、回転軸41を中心にして一方向(
図6Bの黒矢印の方向)に回転し、第一レバー313の押され部315が押部材14によって押され、第一レバー313が回転軸41を中心に一方向に回転する。これにより、弾性体318の一端部は、第一レバー313の弾性体取付部314によって(ここでは右側に)引っ張られる。
【0093】
このとき、弾性体318は、第二レバー317に対して、引張力を与える。第二レバー317は、弾性体318から引張力を受けると、回転軸41を中心に一方向に回転しようとするが、移動規制部316が固定体319に当たる。このため、第二レバー317は、一方向には回転しない。したがって、弾性体318は、弾性的に伸び、第一レバー313に対して、他方向に向かう回転力(
図6Bの白抜き矢印)を与える。このように第一レバー313に他方向に向かう回転力が与えられることで、連結部材4に連結された前部フレーム21は基準位置に戻ろうとする。
【0094】
例えば、前部フレーム21が
図6Aに示すように基準位置にあるときに、前部フレーム21がスイングし、ケース40がシャフト33に対して回転軸41を中心に他方向に回転したとする。この場合、押部材14は、
図6Cに示すように、回転軸41を中心にして他方向(
図6Cの黒矢印の方向)に回転し、第二レバー317の押され部315が押部材14によって押され、第二レバー317を回転軸41を中心に他方向に回転する。これにより、弾性体318の他端部は、第二レバー317の弾性体取付部314によって(ここでは左側に)引っ張られる。
【0095】
このとき、弾性体318は、第一レバー313に対して、引張力を与える。第一レバー313は、弾性体318から引張力を受けると、他方向に回転しようとするが、移動規制部316が固定体319に当たる。このため、第一レバー313は、他方向には回転しない。したがって、弾性体318は、弾性的に伸び、第二レバー317に対して、一方向に向かう回転力(
図6Cの白抜き矢印)を与える。このように第二レバー317に対して一方向に向かう回転力が与えられることで、連結部材4に連結された前部フレーム21は基準位置に戻ろうとする。
【0096】
(1.10)回転規制機構
自転車1は、
図7に示す回転規制機構5を更に備えている。回転規制機構5は、前部フレーム21(
図1参照)のスイング、すなわち、前部フレーム21の後部フレーム3に対する回転軸41を中心とした相対回転を規制する。
図7に示すように、回転規制機構5は、連動部材50と、制動部材51とを有している。連動部材50は、前部フレーム21がスイングしたときに、連結部材4(
図4参照)と共に回転軸41を中心に回転する。制動部材51は、連動部材50を制動することで、連動部材50の回転を規制する。
【0097】
本実施形態の回転規制機構5は、機械式又は液圧式のディスクブレーキである。連動部材50は、厚み方向が回転軸41と平行な板状に形成されたプレートである。連動部材50は、シャフト33によって回転可能に支持されている。連動部材50の回転軸は、連結部材4(ケース40)の回転軸41と一致している。
【0098】
図4に示すように、連動部材50の前面は、押部材14の後端面に沿っている。連動部材50は、押部材14及び接続部材13を介してケース40に取り付けられており、ケース40に対して固定されている。
【0099】
本実施形態の自転車1は、連動部材50を貫通するボルト15を更に備えている。連動部材50は、ボルト15により、押部材14の後端部に固定されている。なお、押部材14は、連動部材50に対して、溶接等によって固定されてもよい。
【0100】
連動部材50は、
図7に示すように、取付部500と、取付部500につながった円弧状部501とを有している。取付部500は、シャフト33によって回転軸41を中心に回転可能に支持されている。
【0101】
本実施形態の円弧状部501は、取付部500と一体に形成されている。円弧状部501の上縁は、回転軸41を中心とする円弧状に形成されている。なお、円弧状部501の上縁の中心は、回転軸41と異なる位置に存在してもよい。
【0102】
連動部材50は、前部フレーム21のスイングに伴って、回転軸41を中心に回転する。制動部材51は、この連動部材50の回転動作に対して制動力を与える。制動部材51は、後部フレーム3に取り付けられている。制動部材51は、例えば、
図4に示すように、断面略L字状の固定具511を介して、後部フレーム本体30の連結体303に取り付けられる。
【0103】
図7に示す制動部材51は、例えば、機械式、油圧式若しくは空気式等の液圧式、又は電気式のブレーキパッドである。制動部材51は、連動部材50の回転軸41(シャフト33の中心軸)の上方に位置している。本実施形態の制動部材51は、一対のブレーキパッド510を有している。連動部材50の円弧状部501は、一対のブレーキパッド510の間に位置している。一対のブレーキパッド510は、互いに近づく方向と、互いに離れる方向とに駆動する。制動部材51は、一対のブレーキパッド510が連動部材50の円弧状部501を挟むことで、回転する連動部材50に接触し、このときに発生する摩擦力によって連動部材50を制動する。
【0104】
制動部材51は、後部フレーム3に対して回転する前部フレーム21がいずれの回転位置に位置した場合でも、ブレーキパッド510により連動部材50に摩擦力を与えることで、連動部材50の回転を停止させることができる。すなわち、制動部材51は、後部フレーム3に対して回転する前部フレーム21の回転位置を、その回転範囲内における全ての回転位置で固定することができる。なお、回転規制機構5は、ディスクブレーキに限定されず、例えば、ドラムブレーキ等であってもよい。
【0105】
(1.11)操作装置
図1に示すように、本実施形態の自転車1は、回転規制機構5の制動部材51を操作する操作装置16を更に備えている。操作装置16は、例えば、前部フレーム21のシートステイ25に取り付けられ、サドル28の下方に位置する。なお、操作装置16は、自転車1に乗車した利用者が接触しない位置に取り付けられることが好ましいが、その取付位置は限定されない。例えば、操作装置16は、ハンドル20、ヘッドパイプ24、ダウンチューブ22又は後部フレーム3等に取り付けられてもよい。
【0106】
回転規制機構5の制動部材51の位置は、利用者が操作装置16を操作することにより、回転規制位置と非回転規制位置とに切り替えられる。ここで、「回転規制位置」とは、制動部材51が連動部材50を制動して前部フレーム21の回転を規制する位置である。また、「非回転規制位置」とは、制動部材51が連動部材50を制動しない位置であり、すなわち、前部フレーム21の回転を規制しない位置である。
【0107】
図8A~
図8Cに示す本実施形態の操作装置16は、ロック機能付きのハンドルレバー型操作装置であり、ハンドル部材160、操作部材161及び保持部材162を有している。ハンドル部材160は、棒状に形成されており、シートステイ25に取り付けられている。操作部材161は、ハンドル部材160に回転可能に取り付けられたレバーであり、ハンドル部材160に対向している。操作部材161は、例えば、ワイヤ又はホース等の接続部材52を介して制動部材51(
図7参照)に連結されている。操作部材161には、ばねのような弾性体(図示せず)等により、ハンドル部材160から遠ざかる方向の力が常時加えられている。
【0108】
保持部材162は、例えば、操作部材161又はハンドル部材160に対して回転可能又はスライド可能に取り付けられ、操作部材161を保持する保持位置と保持しない非保持位置とに移動可能である。
【0109】
例えば、
図8Aに示す状態において、利用者は、
図8Bに示すように、ハンドル部材160及び操作部材161を握り、操作部材161をハンドル部材160に近付けるように回転させることで、制動部材51を回転規制位置に配することができる。これにより、前部フレーム21のスイングが規制される。
【0110】
例えば、
図8Bに示す状態において、利用者は、ハンドル部材160及び操作部材161を握る力を弱め、操作部材161をハンドル部材160から遠ざかるように移動させることで、制動部材51を非回転規制位置に配することができる。これにより、回転規制機構5による前部フレーム21のスイングの規制を解除することができる。
【0111】
例えば、
図8Bに示すように、操作部材161をハンドル部材160に近付けた状態において、利用者は、保持部材162を
図8Bに示す矢印方向に操作することで、
図8Cに示すように、保持部材162を保持位置に配して操作部材161を保持することができる。このように保持部材162によって操作部材161を保持することで、制動部材51を回転規制位置に位置した状態が維持され、回転規制機構5による前部フレーム21のスイングの規制が維持される。
【0112】
例えば、
図8Cに示すように、保持部材162によって操作部材161が保持された状態において、利用者は、保持部材162を
図8Bに示す矢印方向とは反対方向に操作することで、保持部材162を非保持位置に配して保持部材162による操作部材161の保持を解除することができる。これにより、回転規制機構5による前部フレーム21のスイングの規制が解除される。
【0113】
なお、保持部材162は、例えば、操作部材161と連動し、利用者がハンドル部材160及び操作部材161を握って操作部材161をハンドル部材160に近づけることにより、保持位置から非保持位置に配されるように構成されてもよい。また、操作装置16は、ハンドルレバー型に限定されず、公知の操作装置を用いることができる。また、本実施形態の操作装置16は、回転規制機構5による前部フレーム21のスイングの規制及びこの規制の解除の切替えのみを行うものであるが、これに限定されない。例えば、操作装置16(操作部材161)は、前車輪92及び後車輪91のうちの少なくとも一方の回転を規制する際に操作される操作装置(操作部材)を兼ねてもよい。この操作装置としては、例えば、前車輪92及び後車輪91のうちの少なくとも一方の回転を規制する駐輪ブレーキが挙げられる。この他、操作装置としては、後車輪ブレーキレバー83又は前車輪ブレーキレバーを、対応する車輪ブレーキが制動位置に位置する状態で保持する保持部材84(
図1参照)であってもよい。
【0114】
また、本実施形態の回転規制機構5による前部フレーム21のスイングの規制及びこの規制の解除は、手動で切り換えられるが、自動で切り換えられてもよい。例えば、制動部材51として、電気式のブレーキパッドを採用し、センサ等の検知装置を用いて利用者が自転車1から降りた状態を検知した場合にのみ、回転規制機構5による前部フレーム21のスイングの規制が行われるように、制動部材51を制御してもよい。
【0115】
(2)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の変形例の説明では、上記実施形態と異なる事項について詳述し、上記実施形態と共通する要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0116】
図9に変形例の自転車1を示す。本変形例のモータユニット7は、前車輪92に取り付けられたフロントハブユニット方式のモータユニットである。本変形例の自転車1は、モータユニット7としてのハブモータ75と、踏力検出ユニットブラケット730と、踏力検出ユニット70とを備えている。
【0117】
踏力検出ユニットブラケット730は、ダウンチューブ22に取り付けられている。踏力検出ユニットブラケット730には、踏力検出ユニット70が取り付けられている。なお、本変形例の踏力検出ユニットブラケット730は、上記実施形態のモータブラケット73(
図1参照)と、同じ構造であり、踏力検出ユニットブラケット730とモータユニット7とに、共通して使用することができる。
【0118】
踏力検出ユニット70は、クランク軸700に入力された踏力を検出する。本変形例の踏力検出ユニット70は、踏力の検出として、トルクを検出する。このトルクの検出は、例えば、磁歪式トルクセンサによって、クランク軸700に生じたひずみを検出することで行われる。なお、踏力の検出として、クランク軸700の軸回りの回転を、回転センサで検出してもよい。
【0119】
踏力検出ユニット70で検出された検出結果は、ハブモータ75に出力される。ハブモータ75は、踏力検出ユニット70の検出結果に基づいて、駆動出力を発生する。本変形例のハブモータ75は、前車輪92に取り付けられている。ハブモータ75は、
図10に示すように、一対の固定軸76、モータ装置77、減速機構78及びハブケース79を有している。
【0120】
固定軸76は、前車輪92の回転軸に沿って延びており、フレーム2(
図9参照)に取り付けられている。具体的に固定軸76は、一対のホーク足261に取り付けられ、当該一対のホーク足261に対して固定されている。
【0121】
モータ装置77は、モータ771を駆動源として、駆動出力として回転動力を出力する。モータ装置77は、モータ771及びハウジング772を有している。ハウジング772には、一方の固定軸76が固定されている。モータ771は、ハウジング772に取り付けられている。モータ771は、ロータ774、ステータ773及び出力軸775を有している。ロータ774には、出力軸775が固定されている。出力軸775の外周には、減速機構78に噛み合う歯部776が形成されている。
【0122】
減速機構78は、ハブケース79の内部に配されている。モータ装置77の出力軸775から出力された回転動力が、減速機構78に入力されると、減速機構78は、回転速度を減速した上で、ハブケース79を回転させる。本変形例の減速機構78は、複数の平歯車781を有した遊星歯車機構である。複数の平歯車781は、出力軸775の周囲に配置され、かつ歯部776に噛み合っている。本変形例の減速機構78では、複数の平歯車781は、出力軸775の周りを公転しないが、公転可能に構成されてもよい。平歯車781は、歯部776に対してかみ合い、かつハブケース79の内周面にかみ合っている。
【0123】
ハブケース79は、ハウジング772及び他方の固定軸76(ハウジング772が固定された固定軸76とは異なる固定軸76)に対して、回転可能に取り付けられている。ハブケース79の回転軸は、固定軸76の中心軸と一致し、前車輪92の回転軸と一致している。ハブケース79とハウジング772との間及びハウジング772と固定軸76との間には、ベアリング791が配されている。ハブケース79には、前車輪92のスポーク942が取り付けられている。モータ771の出力軸775からハブケース79までの動力伝達経路には、ワンウェイクラッチが設けられている。ワンウェイクラッチは、自転車が走行中において、モータ771による加速をハブケース79に伝えるが、ハブケース79からモータ771への動力伝達を遮断する。
【0124】
モータ装置77から回転動力が出力されると、その回転動力は、減速機構78に伝達し、ハブケース79を回転させる。ハブケース79は、前車輪92のホイール921(
図9)を回転させ、前車輪92に対して駆動出力を伝達する。
【0125】
なお、本変形例のモータユニット7は、前車輪92に取り付けられたフロントハブユニット方式のモータユニットであるが、後車輪91に取り付けられた、いわゆるリアハブユニット方式のモータユニットであってもよい。
【0126】
(3)その他の変形例
上記実施形態は、上記変形例の他にも適宜設計変更可能である。例えば、上記実施形態の連結部材4は、後部フレーム3に対して、回転軸41を中心に回転可能に連結されているが、前部フレーム21に対して、回転軸41を中心に回転可能に連結されてもよい。すなわち、一方フレームは、前部フレーム21であってもよい。この場合、連結部材4と後部フレーム3とは、左右方向に延びた軸周りに回転可能に連結されることが好ましい。
【0127】
また、上記実施形態では、連結部材4と他方フレームである前部フレーム21とは、左右方向に延びた第2回転軸42を中心に回転可能に取り付けられたが、連結部材4は、他方フレームに対して回転不能に固定されてもよい。例えば、上記実施形態では、連結部材4と前部フレーム21とは溶接で固定されてもよい。また、連結部材4とバッテリブラケット27とが一体であってもよい。また、連結部材4と他方フレームとは一体的に形成されてもよい。
【0128】
また、上記実施形態では、揺動復元機構31は、後部フレーム3に設けられているが、前部フレーム21に設けられてもよい。また、揺動復元機構31は省略可能である。また、上記実施形態では、連結部材4の長手方向は、走行面100に対して交差していたが、走行面100に対して略平行であってもよい。また、揺動復元機構31は省略可能である。
【0129】
また、本開示にて、「略平行」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0130】
また、本開示において「前端部」及び「前端」などのように、「…端部」と「…端」とで区別した表現が用いられている。例えば、「前端部」とは、「前端」を含む一定の範囲を持つ部分を意味する。他の「…端部」を伴った表現についても同様である。
【0131】
(3)態様
以上説明した実施形態から明らかなように、第1の態様の自転車(1)は、フレーム(2)、少なくとも一つの前車輪(92)及び少なくとも二つの後車輪(91)を備えた自転車であって、以下に示す構成を有する。フレーム(2)は、前部フレーム(21)、後部フレーム(3)及び連結部材(4)を有する。前部フレーム(21)には、一つの前車輪(92)が取り付けられる。後部フレーム(3)には、二つの後車輪(91)が取り付けられる。連結部材(4)は、前部フレーム(21)と後部フレーム(3)とを相対回転可能に連結する。回転規制機構(5)は、前記相対回転を規制する。回転規制機構(5)は、連動部材(50)と制動部材(51)とを有する。連動部材(50)は、前記相対回転に伴って連動する。制動部材(51)は、連動部材(50)を制動する。
【0132】
この態様によれば、例えば、自転車(1)の駐車時等おいて、回転規制機構(5)により、前記相対回転を規制することで、自転車1を倒れ難く安定した姿勢に維持することができる。また、自転車(1)に荷物又は子供等を載せ下ろしする際にも自転車(1)を倒れ難くすることができるため、利便性に優れる。また、回転規制機構(5)は、制動部材51が連動部材(50)を制動することによって、前記相対回転を規制する。このため、回転規制機構(5)は、後部フレーム(3)に対して回転する前部フレーム(21)を、その回転範囲内における任意の回転位置で固定することができる。したがって、例えば、坂の傾斜や段差等に応じて前部フレーム(21)を後部フレーム(3)に対して適切な回転位置に位置させた状態で、前記相対回転を固定して、自転車(1)を坂等にも安定した姿勢で駐車することができる。
【0133】
第2の態様の自転車(1)は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様の自転車(1)は、操作部材(161)を更に備える。操作部材(161)は、制動部材(51)を作動させる。
【0134】
この態様によれば、使用者は、操作部材(161)を操作することで、回転規制機構(5)により、前記相対回転を規制することができる。
【0135】
第3の態様の自転車(1)は、第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様の自転車(1)は、以下に示す構成を有する。自転車(1)は、保持部材(162)を更に備える。保持部材(162)は、制動部材(51)により連動部材(50)を制動した状態で、操作部材(161)を保持する。
【0136】
この態様によれば、保持部材(162)によって操作部材(161)を保持することで、連動部材(50)を制動部材(51)で制動した状態、すなわち、回転規制機構(5)により前記相対回転を規制した状態を、維持することができる。
【0137】
第4の態様の自転車(1)は、第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様の自転車(1)は、以下に示す構成を有する。操作部材(161)は、前車輪(92)及び後車輪(91)のうちの少なくとも一方の回転を規制する際に操作される操作部材を兼ねる。
【0138】
この態様によれば、利用者が、操作部材(161)を操作して前車輪(92)及び後車輪(91)のうちの少なくとも一方の回転を規制した際に、回転規制機構(5)により前記相対回転を規制することができる。
【0139】
第5の態様の自転車(1)は、第1~第4のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現され得る。第5の態様の自転車(1)は、以下に示す構成を有する。連動部材(50)は、前記相対回転に伴って回転するプレートである。制動部材(51)は、連動部材(50)と接触することで、連動部材(50)の回転を制動するブレーキパッドである。
【0140】
この態様によれば、プレートとブレーキパッドとを用いて、前記相対回転を規制することができる。
【符号の説明】
【0141】
1 自転車
161 操作部材
162 保持部材
2 フレーム
21 前部フレーム
3 後部フレーム
4 連結部材
5 回転規制機構
50 連動部材
51 制動部材
91 後車輪
92 前車輪