(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】洗浄水供給装置
(51)【国際特許分類】
A61C 17/00 20060101AFI20240329BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61C17/00 H
A61C19/00 C
(21)【出願番号】P 2020009856
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】318006228
【氏名又は名称】大平研究所株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【氏名又は名称】石川 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】大平 猛
(72)【発明者】
【氏名】森川 直樹
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-016353(JP,A)
【文献】特開2018-183716(JP,A)
【文献】特開2017-195869(JP,A)
【文献】登録実用新案第3204991(JP,U)
【文献】特開2014-076425(JP,A)
【文献】特開2008-295887(JP,A)
【文献】特開2012-182441(JP,A)
【文献】特開2013-017916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/00,19/00
B01F 23/2373-23/2375
B08B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を外部に供給する洗浄水供給装置であって、
浄水が供給され液体を貯蔵する内部を含むタンクと、
供給された液体に対して、10nm以上1000nm未満の直径を有する気泡であるウルトラファインバブルを包含させることにより、気泡混合液を作製する気泡混合装置と、
前記タンクの内部から前記気泡混合装置に供給される液体が流通する第1の流通路と、
前記気泡混合装置から前記タンクの内部に供給される前記気泡混合液が流通する第2の流通路であって、前記第1の流通路とは異なる第2の流通路と、
前記タンクの内部への浄水の供給を制御する第1の制御部と、
前記タンクの内部への前記気泡混合液の供給を制御する第2の制御部と、
前記タンクの内部に貯蔵された液体を洗浄水として、前記洗浄水供給装置の外部に供給する洗浄水供給路と
、
前記第1の流通路に設けられ、前記タンクの内部に貯蔵された液体を前記気泡混合装置に供給する流通路ポンプと、
前記第1の流通路に設けられたセンサーとを備え、
前記センサーは、
前記第1の流通路を流通する液体に対して電磁波を照射する照射部と、
前記照射部によって照射された前記第1の流通路を流通する液体から散乱された電磁波を検知する検知部とを含み、
前記第2の制御部は、前記検知部にて検知した電磁波の強度に基づいて前記流通路ポンプの動作を制御することにより、前記タンクの内部への前記気泡混合液の供給を制御する、洗浄水供給装置。
【請求項2】
前記気泡混合装置に供給される気体が流通する気体供給路をさらに備え、
前記第2の制御部は、前記検知部にて受信した電磁波の強度に基づいて、前記気泡混合装置への気体の供給をさらに制御する、請求項
1に記載の洗浄水供給装置。
【請求項3】
時間を計測するタイマーをさらに備え、
前記第2の制御部は、前記気泡混合装置への気体の供給を開始した後で前記タンクの内部に貯蔵された液体の前記気泡混合装置への供給を開始し、
前記第2の制御部にて前記気泡混合装置への気体の供給を開始してからの前記タイマーにて計測した経過時間が第1の時間に達した場合、および前記検知部にて受信した電磁波の強度が所定の強度を上回った場合のうち少なくとも一方の場合に、前記第2の制御部は、前記気泡混合装置への気体の供給および前記タンクの内部に貯蔵された液体の前記気泡混合装置への供給の各々を停止する、請求項
2に記載の洗浄水供給装置。
【請求項4】
前記第2の制御部は、前記気泡混合装置への気体の供給および前記タンクの内部に貯蔵された液体の前記気泡混合装置への供給の各々を停止してからの前記タイマーにて計測した経過時間が第2の時間に達した場合に、前記気泡混合装置への気体の供給を開始する、請求項
3に記載の洗浄水供給装置。
【請求項5】
前記第1の制御部は、
前記タンクの内部への浄水の供給を制御する浄水用弁と、
前記タンクの内部の液体の水位を検知するボールタップとを含み、
前記ボールタップは、検知した水位が所定の水位よりも低い場合に前記浄水用弁を開き、前記ボールタップは、検知した水位が前記所定の水位よりも高い場合に前記浄水用弁を閉じる、請求項1~
4のいずれかに記載の洗浄水供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水供給装置に関する。より特定的には、本発明は、洗浄水を外部に供給する洗浄水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療の際には、歯が切削され、レジンなどの接着剤を用いて、切削された部分に封止材や補綴素材が固定される。歯の切削された部分にはスミアー層が付着する。スミアー層とは、歯を切削した際に発生する切削片が、象牙質の象牙細管に詰まることによって形成される層である。スミアー層は、封止材や補綴素材を歯に固定する際の接着を阻害する。このため、封止材や補綴素材を固定する前には、EDTA(Ethylenediaminetetraacetic Acid)を含有する洗浄剤などを用いた洗浄により、スミアー層が除去される。
【0003】
なお、下記特許文献1~4などには、水にマイクロバブルを混合して洗浄水を作製する従来の洗浄水供給装置が開示されている。
【0004】
下記特許文献1には、上水の供給路と洗面水洗との間に、電界次亜水生成器および微細気泡供給手段が接続された装置が開示されている。上水は、供給路を通じて電界次亜水生成器に供給され、そこで次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする微アルカリ性の水溶液とされる。この水溶液は微細気泡供給手段に供給され、そこでマイクロバブルを含む微細気泡混合次亜塩素酸ナトリウム希釈液とされる。
【0005】
下記特許文献2には、1次タンクと、微細気泡発生装置と、洗浄水タンクと、ジャンクションボックスとを備えた装置が開示されている。1次タンクは浄水を貯留する。微細気泡発生装置は、1次タンクから供給される浄水に微細気泡を溶解させて洗浄水を作る。洗浄水タンクは、微細気泡の溶解している洗浄水を吐出ノズルから混合撹拌して噴射し、4~20μmのマイクロバブルの混合した洗浄水を貯留する。ジャンクションボックスは、洗浄水を洗浄水タンクから歯科ユニットへ供給する。
【0006】
下記特許文献3の洗浄水供給装置では、歯科ユニットにおいて洗浄水を使用する操作がされると、圧力開閉弁が電気的に開放される。圧力開閉弁が開放されるのと同時に、微細気泡発生装置の発電機およびポンプが始動し、供給路の浄水が吸引される。吸引された浄水は微細気泡発生装置において、微細気泡が混合または溶解した空気溶解液とされる。空気溶解液は洗浄水生成部に送られ、吐出ノズルから排出される。これにより、直径約1~50μmのマイクロバブルが洗浄水に噴射され混合される。マイクロバブルを混合した洗浄水は、ジャンクションボックスを経て歯科ユニットに供給される。
【0007】
下記特許文献4には、上水道等洗浄水供給源から供給された水が、主洗浄配管内の液体処理ノズルを通過した後、歯科ユニットの洗浄ノズルや吐出部から流出する装置が開示されている。液体処理ノズルを洗浄水が通過する際には、洗浄水に微細気泡が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-5130号公報
【文献】特開2008-295887号公報
【文献】国際公開第2009/031711号明細書
【文献】特開2018-75334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来においては、スミアー層を除去するための洗浄剤として、特別な薬剤を購入して準備する必要があった。このため、洗浄作業が煩雑であった。
【0010】
近年、ウルトラファインバブルを包含する水であるウルトラファインバブル水が、スミアー層を除去する優れた性能を有していることが確認された。また、ウルトラファインバブル水が、特定の菌に対する殺菌効果を有していることが確認された。ウルトラファインバブルとは、10nm以上1000nm未満の直径を有する気泡である。ウルトラファインバブル水は、ナノバブル水とも呼ばれている。ウルトラファインバブル水は、水および気体(典型的には空気)から作製することが可能である。このため、スミアー層を除去するための洗浄剤として、ウルトラファインバブル水を用いた場合には、特別な薬剤を購入して準備する必要がなくなる。
【0011】
特許文献1~4に記載の装置はいずれも、ウルトラファインバブルではなくマイクロバブルを包含する洗浄水を供給する装置である。一般的に、マイクロバブルとは、1μm以上100μm以下の直径を有する気泡である。特許文献1~4に記載の装置に基づいて、ウルトラファインバブルを包含する洗浄水を作製した場合、次のような問題があった。
【0012】
特許文献1、3、および4に記載の装置では、作製された洗浄水が、貯蔵されずに直ちに外部に供給されていた。このため、特許文献1、3、および4に記載の装置には、供給される洗浄水に含まれる気泡の濃度が安定せず、所望の品質の洗浄水を外部に供給することができないという問題があった。
【0013】
特許文献2の装置では、作製された洗浄水が、上水を貯留する1次タンクとは別の洗浄水タンクに貯留されていた。このため、特許文献2の装置には、構成が複雑であるという問題があった。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その一の目的は、所望の品質の洗浄水を外部に供給することのできる洗浄水供給装置を提供することである。
【0015】
また、本発明の他の目的は、構成を簡素化することのできる洗浄水供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一の局面に従う洗浄水供給装置は、洗浄水を外部に供給する洗浄水供給装置であって、浄水が供給され液体を貯蔵する内部を含むタンクと、供給された液体に対して、10nm以上1000nm未満の直径を有する気泡であるウルトラファインバブルを包含させることにより、気泡混合液を作製する気泡混合装置と、タンクの内部から気泡混合装置に供給される液体が流通する第1の流通路と、気泡混合装置からタンクの内部に供給される気泡混合液が流通する第2の流通路であって、第1の流通路とは異なる第2の流通路と、タンクの内部への浄水の供給を制御する第1の制御部と、タンクの内部への気泡混合液の供給を制御する第2の制御部と、タンクの内部に貯蔵された液体を洗浄水として、洗浄水供給装置の外部に供給する洗浄水供給路と、第1の流通路に設けられ、タンクの内部に貯蔵された液体を気泡混合装置に供給する流通路ポンプと、第1の流通路に設けられたセンサーとを備え、センサーは、第1の流通路を流通する液体に対して電磁波を照射する照射部と、照射部によって照射された第1の流通路を流通する液体から散乱された電磁波を検知する検知部とを含み、第2の制御部は、検知部にて検知した電磁波の強度に基づいて流通路ポンプの動作を制御することにより、タンクの内部への気泡混合液の供給を制御する。
【0019】
上記洗浄水供給装置において好ましくは、気泡混合装置に供給される気体が流通する気体供給路をさらに備え、第2の制御部は、検知部にて受信した電磁波の強度に基づいて、気泡混合装置への気体の供給をさらに制御する。
【0020】
上記洗浄水供給装置において好ましくは、時間を計測するタイマーをさらに備え、第2の制御部は、気泡混合装置への気体の供給を開始した後でタンクの内部に貯蔵された液体の気泡混合装置への供給を開始し、第2の制御部にて気泡混合装置への気体の供給を開始してからのタイマーにて計測した経過時間が第1の時間に達した場合、および検知部にて受信した電磁波の強度が所定の強度を上回った場合のうち少なくとも一方の場合に、第2の制御部は、気泡混合装置への気体の供給およびタンクの内部に貯蔵された液体の気泡混合装置への供給の各々を停止する。
【0021】
上記洗浄水供給装置において好ましくは、第2の制御部は、気泡混合装置への気体の供給およびタンクの内部に貯蔵された液体の気泡混合装置への供給の各々を停止してからのタイマーにて計測した経過時間が第2の時間に達した場合に、気泡混合装置への気体の供給を開始する。
【0023】
上記洗浄水供給装置において好ましくは、第1の制御部は、タンクの内部への浄水の供給を制御する浄水用弁と、タンクの内部の液体の水位を検知するボールタップとを含み、ボールタップは、検知した水位が所定の水位よりも低い場合に浄水用弁を開き、ボールタップは、検知した水位が所定の水位よりも高い場合に浄水用弁を閉じる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、所望の品質の洗浄水を外部に供給することのできる洗浄水供給装置を提供することができる。また、構成を簡素化することのできる洗浄水供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における洗浄水供給装置1の構成を模式的に示す図である。
【
図2】センサー50の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図3】マイクロバブルおよびウルトラファインバブルの特徴を比較した図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態における洗浄水供給装置1の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0028】
[第1の実施の形態]
【0029】
始めに、本実施の形態における洗浄水供給装置1の構成について説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗浄水供給装置1の構成を模式的に示す図である。
【0031】
図1を参照して、洗浄水供給装置1(洗浄水供給装置の一例)は、洗浄水供給装置1の外部に洗浄水を供給する。洗浄水供給装置1が供給する洗浄水には、ウルトラファインバブルが包含されている。ウルトラファインバブルとは、10nm以上1000nm未満の直径を有する気泡である。
【0032】
洗浄水供給装置1は、タンク10(タンクの一例)と、水位制御部20(第1の制御部の一例)と、気泡混合装置30(気泡混合装置の一例)と、ポンプ40(流通路ポンプの一例)と、センサー50(センサーの一例)と、圧力調整部60(圧力調整部の一例)と、浄水供給路71と、流通路72および73(第1および第2の流通路の一例)と、気体供給路74(気体供給路の一例)と、洗浄水供給路75(洗浄水供給路の一例)と、シーケンサー80(第2の制御部の一例)と、タイマー81(タイマーの一例)と、コンプレッサー91と、流量調整弁92と、電磁弁93と、流量計94とを備えている。
【0033】
タンク10は、その内部に液体を貯蔵する。タンク10には、浄水供給路71が接続されている。タンク10の内部には、上水道から浄水供給路71を通じて浄水が供給される。上水道から供給される浄水は、たとえば0.2MPaの圧力を有している。
【0034】
水位制御部20は、タンク10の内部への浄水の供給を制御する。水位制御部20は、浄水用弁21(浄水用弁の一例)と、ボールタップ22(ボールタップの一例)とを含んでいる。浄水用弁21は、タンク10の内部への浄水の供給を制御する。ボールタップ22は、タンク10の内部の液体の水位を検知する。ボールタップ22の先端には浮き玉が設けられている。浮き玉は、タンク10の内部の液体の水面に浮かべられている。ボールタップ22は、タンク10の内部の液体の水面の上下変動による浮き玉の変位によって、浄水用弁21の開閉を制御する。すなわち、ボールタップ22は、検知した水位が所定の水位WLよりも低い場合に浄水用弁21を開く。ボールタップ22は、検知した水位が所定の水位WLよりも高い場合に浄水用弁21を閉じる。これにより、タンク10の内部の液体が洗浄水として外部に供給された結果、タンク10の内部の液体が少なくなった場合に、浄水供給路71を通じて浄水がタンク10の内部に供給される。
【0035】
流通路72および73の各々は、タンク10の内部と気泡混合装置30との間に接続されている。流通路72および73の各々は、互いに異なる流通路である。流通路72には、タンク10の内部から気泡混合装置30に供給される液体が流通する。流通路73には、気泡混合装置30からタンク10の内部に供給される液体が流通する。
【0036】
ポンプ40は、流通路72に設けられている。ポンプ40は、タンク10の内部に貯蔵された液体を、気泡混合装置30に供給する。ポンプ40は、シーケンサー80の制御により動作する。
【0037】
センサー50は、流通路72に設けられている。センサー50は、浄水供給路71を流通する液体中のウルトラファインバブルの濃度を検知する。
【0038】
気体供給路74は、コンプレッサー91と気泡混合装置30との間に接続されている。気体供給路74には、コンプレッサー91から気泡混合装置30に供給される気体(ここでは空気)が流通する。
【0039】
コンプレッサー91は、気体供給路74における空気の流通方向の上流側端部に設けられている。コンプレッサー91は、たとえば0.2MPaの圧力まで空気を圧縮する。コンプレッサー91によって圧縮された空気は、気体供給路74を通じて気泡混合装置30に供給される。
【0040】
流量調整弁92、電磁弁93、および流量計94の各々は、空気の流通方向の上流側(コンプレッサー91側)から下流側(気泡混合装置30側)に向かってこの順序で気体供給路74に設けられている。
【0041】
流量調整弁92は、気体供給路74を流通する空気の量を所定の量に調整する。
【0042】
電磁弁93は、シーケンサー80の制御により気体供給路74を開閉する。
【0043】
流量計94は、気体供給路74を流通する空気の量を計測し、洗浄水供給装置1の使用者に対して計測した量を表示する。
【0044】
気泡混合装置30は、気泡混合装置30に供給された液体に対してウルトラファインバブルを包含させることにより、気泡混合液を作製する。ウルトラファインバブルは、気体供給路74を通じて供給された空気を用いて作製される。気泡混合液は、ウルトラファインバブルと、流通路72を通じて供給された液体とを混合することにより作製される。気泡混合装置30は、作製した気泡混合液を、気泡混合装置30から流通路73を通じてタンク10の内部に供給する。
【0045】
気泡混合装置30は、微細孔フィルター方式、気液二相流旋回方式、エジェクター方式、ベンチュリー方式、スタティックミキサー方式、気液二相流せん断方式、または超音波発生による生成方式などにより、気泡混合液を作製することができる。特に気泡混合装置30は、微細孔フィルター方式により気泡混合液を作製することが好ましい。
【0046】
微細孔フィルター方式では、液体が一定の圧力でノズルに送られる。送られた液体は、ノズルに空いているナノオーダーの直径を有する複数の穴を通じて微細気泡となり、水中に吐出される。
【0047】
気液二相流旋回方式は、ノズル内の円筒面に沿って液体を高速旋回させてノズル中心に負圧を発生させるものである。この負圧によりノズル内に気体が導入され高速旋回する気液二相旋回流が形成される。この旋回流をノズル出口から開放することにより気液二相流体がせん断され微細気泡が発生する。
【0048】
エジェクター方式は、ウルトラファインバブルの発生装置のメイン部分にエジェクターを使用したものである。エジェクター方式では、幅を徐々に狭めた管路に水が圧送される。これにより、水の流速が増加し、圧送の圧力の大部分が動圧に変換され、静圧が低下する。管路内に負圧が発生して管路の外部から空気が吸引される。圧送された水は、吸引された空気と混合して気液混相状態となる。水は、幅が徐々に広がった管路を流通する。これにより、水の流速が低下し、圧送の圧力が動圧から静圧に変換される。加圧により空気が水に溶解する。その後、水は大気圧下に吐出される。これにより、水は過飽和状態になり、微細気泡が発生する。
【0049】
ベンチュリー方式は、ベンチュリー管を用いて気泡混合液を作製するものである。ベンチュリー方式では、気泡を含む液体がベンチュリー管の収縮部に通過する際に、液体の流速は加速し、液体の圧力は減少し、気泡が膨張する。気泡を含む液体がベンチュリー管の膨張部に通過する際に、液体の流速は減速し、液体の圧力は減少し、気泡が膨張する。その後、気泡は崩壊して収縮する。衝撃波面が形成される。
【0050】
圧力調整部60は、タンク10に設けられている。圧力調整部60は、タンク10の内部の気体(ここでは空気)の圧力を所定の圧力P1(圧力P1はたとえば0.1MPa)に調整する。圧力調整部60は、気体排出路61と、圧力調整弁62と、防虫用フィルター63とを含んでいる。気体排出路61は、タンク10の内部の空間と洗浄水供給装置1の外部の空間との間に接続されている。気体排出路61には、タンク10の内部から放出される空気が流通する。
【0051】
圧力調整弁62は、タンク10の内部の空気の圧力が所定の圧力P1を超えた場合に気体排出路61を開く。圧力調整部60は、タンク10の内部の空気の圧力が所定の圧力P1以下である場合に気体排出路61を閉じる。
【0052】
防虫用フィルター63は、空気の流通方向の下流側端部に設けられている。
【0053】
洗浄水供給路75は、タンク10の内部の液体と洗浄水供給装置1の外部との間に接続されている。洗浄水供給路75は、タンク10の内部に貯蔵された液体を洗浄水として、洗浄水供給装置1の外部に供給する。供給される洗浄水は、たとえば0.1MPaの圧力を有している。
【0054】
シーケンサー80は、タンク10の内部への気泡混合液の供給を制御する。またシーケンサー80は、電磁弁93の開閉を制御する。
【0055】
タイマー81は、時間を計測する。タイマー81は、計測した時間をシーケンサー80に出力する。
【0056】
図2は、センサー50の構成の一例を模式的に示す図である。
【0057】
図2を参照して、センサー50は、レーザー光散乱方式を用いて液体中のウルトラファインバブルの濃度を検知する。センサー50は、照射部51(照射部の一例)と、検知部52(検知部の一例)とを含んでいる。照射部51は、シーケンサー80の制御の下で、流通路72を流通する液体に対して電磁波(たとえば可視光線よりも小さい波長を有するレーザー光)LTを照射する。検知部52は、照射部51にて照射した電磁波であって流通路72を流通する液体で散乱された電磁波を検知する。検知部52は、検知した電磁波の強度を指標する情報をシーケンサー80に出力する。
【0058】
なお、センサー50は、レーザー光散乱方式の代わりに、電気抵抗計測方式などを用いてウルトラファインバブルの濃度を検知してもよい。電気抵抗計測方式の場合、センサー50は、流路閉塞式電気抵抗計測計であってもよい。電気抵抗計測方式では、液体が細孔を通過する際に生じる2つの電極間の電気抵抗の変化に基づいて、液体中のウルトラファインバブルの濃度が検知される。
【0059】
流通路72を流通する液体に対して照射された電磁波は、液体に包含されているウルトラファインバブルの表面で散乱される。ウルトラファインバブルの濃度が高いほど、散乱された電磁波の強度は大きくなる。したがって、検知部52が検知した電磁波の強度が基準値に到達した場合には、タンク10の内部に貯蔵された液体のウルトラファインバブルの濃度が必要な濃度に到達している。
【0060】
図1および
図2を参照して、シーケンサー80は、検知部52にて検知した電磁波の強度に基づいてポンプ40の動作を制御することにより、タンク10の内部への気泡混合液の供給を制御する。また、シーケンサー80は、検知部52にて検知した電磁波の強度に基づいて、気泡混合装置30への気体の供給を制御する。
【0061】
次に、本実施の形態における洗浄水供給装置1の動作について説明する。
【0062】
本実施の形態においては、一定時間毎(たとえば1時間毎)に空気供給および循環ポンプ(ポンプ40)を駆動する運転を行うことで、ウルトラファインバブルを発生させる。ウルトラファインバブルが充分に発生した場合、もしくは循環ポンプが一定時間(たとえば30分間)動作した場合、運転を停止する。運転開始時には空気供給を先行して起動し、一定時間(たとえば30秒)経過後に循環ポンプを起動する。運転停止時には循環ポンプを先行して停止し、一定時間(たとえば30秒)経過後に空気供給を停止する。運転間隔は、洗浄水の消費量に基づいて設定される。洗浄水の消費速度が速い場合には、運転間隔は短縮(たとえば1時間から30分に短縮)されてもよい。洗浄水の消費速度が遅い場合には、運転間隔は延長(たとえば1時間から2時間に延長)されてもよい。具体的な洗浄水供給装置1の動作は次の通りである。
【0063】
水位制御部20によって、タンク10の内部の液体の水位は所定の水位WLに常に維持される。
【0064】
シーケンサー80は、所定の開始のタイミングTM2で、電磁弁93を開くことにより、気泡混合装置30への空気の供給を開始する。シーケンサー80は、気泡混合装置30への空気の供給を開始した後で、ポンプ40の駆動を開始する。これにより、タンク10の内部に貯蔵された液体は、流通路72、気泡混合装置30、および流通路73により構成された経路の循環を開始する。すなわち、タンク10の内部に貯蔵された液体は流通路72を通じて、気泡混合装置30に供給される。
【0065】
所定の開始のタイミングTM2は、気泡混合装置30への気体の供給およびポンプ40の運転を停止した後の経過時間が第2の時間に達したタイミングであってもよい。気泡混合装置30への気体の供給およびポンプ40の運転を停止した後の経過時間は、タイマー81にて計測される。第2の時間は、タンク10の容量と洗浄水の供給量とに基づいて決定されることが好ましい。
【0066】
気泡混合装置30に供給された液体は、気泡混合装置30によってウルトラファインバブルを混合され、気泡混合液とされる。気泡混合装置30から排出された気泡混合液は、流通路73を通じてタンク10の内部に戻される。このように、タンク10の内部に貯蔵された液体は、流通路72、気泡混合装置30、および流通路73により構成された経路を循環することによって、ウルトラファインバブルの濃度が高められる。
【0067】
その後、シーケンサー80は、所定の停止のタイミングTM3で、気泡混合装置30への空気の供給およびタンク10の内部に貯蔵された液体の気泡混合装置30への供給の各々を停止する。
【0068】
所定の停止のタイミングTM3は、気泡混合装置30への空気の供給を開始してからの経過時間が第1の時間に達したタイミングであってもよい。気泡混合装置30への空気の供給を開始してからの経過時間は、タイマー81にて計測される。第1の時間は、タンク10の内部に貯蔵された液体のウルトラファインバブルの濃度が、確実に基準値に到達するのに要する時間に基づいて決定されることが好ましい。また、所定の停止のタイミングTM3は、検知部52にて検知した電磁波の強度もしくは電気抵抗値が所定のウルトラファインバブルの濃度を充足したタイミング(言い換えれば、所定の強度または電池抵抗値を上回ったタイミング)であってもよい。
【0069】
タンク10の内部に貯蔵された液体の圧力は、圧力調整部60の作用によって常に所定の圧力P1に調整される。タンク10の内部に貯蔵された液体は、洗浄水供給路75の下流側に設けられた栓であって洗浄水供給装置1の外部の栓(図示無し)が開かれた場合に、洗浄水供給路75を通じて洗浄水供給装置1の外部に供給される。
【0070】
図3は、マイクロバブルおよびウルトラファインバブルの特徴を比較した図である。
【0071】
図3を参照して、マイクロバブルは、1μm以上100μm以下の直径を有している。マイクロバブルを包含する水は、可視光の散乱により白濁する。マイクロバブルは、液体中においてゆっくりと上昇する性質を有している。たとえば10μmの直径を有するマイクロバブルは、1分間に3mm程度の速度で上昇する性質を有している。この速度は、一般的な1mm程度の直径を有する気泡(ミニバブル)の速度の2000分の1程度である。マイクロバブルは液体中で徐々に上昇し、やがて液体中で消滅する性質を有している。
【0072】
一方、ウルトラファインバブルは、10nm以上1000nm未満の直径を有している。ウルトラファインバブルを包含する水は、可視光の散乱がほとんど無いため無色透明である。ウルトラファインバブルは、液中安定性に優れており、液体中において数週間~3ヶ月程度の寿命を有している。ウルトラファインバブルは液体中でブラウン運動を行う。
【0073】
さらに、ウルトラファインバブルは、血管や細胞への侵入が可能であるという性質、物体の表面に高密度に吸着するという性質、および圧壊する際にOH(ヒドロキシル)ラジカルを生成するという性質も有している。
【0074】
[第2の実施の形態]
【0075】
図4は、本発明の第2の実施の形態における洗浄水供給装置1の構成を模式的に示す図である。
【0076】
図4を参照して、本実施の形態の洗浄水供給装置1は、フロースイッチ95(供給検知部の一例)と、圧力制御弁96とをさらに備えている。フロースイッチ95は、洗浄水供給路75に設けられている。フロースイッチ95は、洗浄水供給路75による洗浄水供給装置1の外部への洗浄水の供給を検知する。フロースイッチ95は、検知結果をシーケンサー80に出力する。
【0077】
圧力制御弁96は、第1の実施の形態の流量調整弁92の代わりに気体供給路74に設けられている。圧力制御弁96は、気体供給路74を開閉することにより、気体供給路74を流通する空気の圧力を所定の圧力P2(たとえば0.12MPa)に調整する。
【0078】
流通路72に、ポンプ40およびセンサー50は設けられていない。
【0079】
気泡混合装置30は、ミキサー31(気泡混合部の一例)と、流通路32および33(第1および第2の内部流通路の一例)と、ポンプ34(内部ポンプの一例)と、気体供給路35とを含んでいる。
【0080】
ミキサー31は、供給された液体に対して、ウルトラファインバブルを包含させることにより、気泡混合液を作製する。
【0081】
流通路32は、流通路72とミキサー31との間に接続されている。流通路32には、流通路72からミキサー31に供給される液体が流通する。
【0082】
流通路33は、流通路73とミキサー31との間に接続されている。流通路33には、ミキサー31から流通路73に供給される液体が流通する。
【0083】
ポンプ34は、流通路32に設けられている。ポンプ34は、タンク10の内部に貯蔵された液体を、流通路72および32を通じてミキサー31に供給する。ポンプ34は、シーケンサー80の制御により動作する。
【0084】
気体供給路35は、気体供給路74とミキサー31との間に接続されている。気体供給路35には、コンプレッサー91から気泡混合装置30に供給される気体が流通する。
【0085】
次に、本実施の形態における洗浄水供給装置1の動作について説明する。
【0086】
本実施の形態においては、洗浄水供給装置1の使用開始時に、タンク10の内部に貯蔵された液体が含有するウルトラファインバブルの濃度が適切な濃度に調節される。濃度の調節後は、基本的に洗浄水を使用した場合にのみ、ウルトラファインバブルの補充が行われる。濃度の調節後の具体的な洗浄水供給装置1の動作は次の通りである。
【0087】
水位制御部20によって、タンク10の内部の液体の水位は所定の水位WLに常に維持される。
【0088】
シーケンサー80は、所定の開始のタイミングTM1で、電磁弁93を開くことにより、気泡混合装置30への空気の供給を開始する。シーケンサー80は、気泡混合装置30への気体の供給を開始した後で、ポンプ34を起動することにより、タンク10の内部への気泡混合液の供給を開始する。
【0089】
所定の開始のタイミングTM1は、フロースイッチ95にて洗浄水供給装置1の外部への洗浄水の供給を検知した場合であってもよい。
【0090】
タンク10の内部に貯蔵された液体は流通路72を通じて、気泡混合装置30に供給される。気泡混合装置30に供給された液体は、気泡混合装置30によってウルトラファインバブルを混合され、気泡混合液とされる。気泡混合装置30から排出された気泡混合液は、流通路73を通じてタンク10の内部に戻される。このように、タンク10の内部に貯蔵された液体は、流通路72、気泡混合装置30、および流通路73により構成された経路を循環することによって、ウルトラファインバブルの濃度が高められる。
【0091】
その後、シーケンサー80は、所定の停止のタイミングTM2で、気泡混合装置30への気体の供給およびタンク10の内部に貯蔵された液体の気泡混合装置30への供給の各々を停止する。
【0092】
所定の停止のタイミングTM2は、気泡混合装置30への空気の供給を開始してからの経過時間であって、タイマー81にて計測した経過時間が第1の時間に達した場合であってもよい。
【0093】
タンク10の内部に貯蔵された液体の圧力は、圧力調整部60の作用によって常に所定の圧力P1に調整される。タンク10の内部に貯蔵された液体は、洗浄水供給路75の下流側に設けられた栓で閉止されており、洗浄水供給装置1の外部の栓が開かれた場合に、洗浄水供給路75を通じて洗浄水供給装置1の外部に供給される。
【0094】
なお、本実施の形態における上述以外の洗浄水供給装置1の構成および動作は、第1の実施の形態の場合と同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0095】
第1および第2の実施の形態では、上水道の水圧を利用し、空気の自動排除とボールタップとを組み合わせることで、気泡混合装置30の連続運転を可能としている。特に洗浄水が歯科治療に用いられる場合には、歯科医院が有する通常のユーティリティ(水道水、圧縮空気、および電気など)を用いてウルトラファインバブルを連続的に発生させることができる。洗浄水は歯の切削時や患者のうがい時に使用することができる。これにより、特別な薬剤を購入して準備することなくスミアー層を除去することができる。薬剤の購入費用の削減および作業の単純化を実現することができる。
【0096】
[実施の形態の効果]
【0097】
気泡混合装置30が作製する気泡混合液に包含されるのはウルトラファインバブルである。ウルトラファインバブルはマイクロバブルに比べて液中安定性に優れるため、タンク10の内部での長期保存が可能である。上述の実施の形態によれば、タンク10の内部に貯蔵された液体は、流通路72、気泡混合装置30、および流通路73により構成された経路を循環することによってウルトラファインバブルの濃度が高められた後で、タンク10の内部に戻される。これにより、所望の品質の洗浄水(特にウルトラファインバブルの濃度が所望の濃度である洗浄水)をタンク10内に貯蔵することができる。その結果、タンク10の内部から洗浄水供給装置1の外部に、所望の品質の洗浄水を供給することができる。加えて、浄水を供給するタンク10と、気泡混合液を供給するタンク10とが同一であるため、構成の簡素化を図ることができる。
【0098】
[その他]
【0099】
第1および第2の実施の形態において、気泡混合装置30、ならびに流通路72および73は、タンク10の内部に設けられていてもよい。
【0100】
洗浄水供給装置1が供給する洗浄水は、歯科治療時において、切削用タービンやスケーラーの使用時に口内に注がれる洗浄水として用いられてもよい。洗浄水供給装置1が供給する洗浄水は、歯科治療時において、患者が使用するうがい用の洗浄水としてとして用いられてもよい。さらに、洗浄水供給装置1が供給する洗浄水は、家庭や工場などにおいて、物質の洗浄に用いられてもよい。
【0101】
上述の実施の形態および変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0102】
上述の実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
1 洗浄水供給装置(洗浄水供給装置の一例)
10 タンク(タンクの一例)
20 水位制御部(第1の制御部の一例)
21 浄水用弁(浄水用弁の一例)
22 ボールタップ(ボールタップの一例)
30 気泡混合装置(気泡混合装置の一例)
31 ミキサー(気泡混合部の一例)
32,33,72,73 流通路(第1および第2の流通路、ならびに第1および第2の内部流通路の一例)
34,40 ポンプ(流通路ポンプおよび内部ポンプの一例)
35,74 気体供給路(気体供給路の一例)
80 シーケンサー(第2の制御部の一例)
50 センサー(センサーの一例)
51 照射部(照射部の一例)
52 検知部(検知部の一例)
60 圧力調整部(圧力調整部の一例)
61 気体排出路
62 圧力調整弁
63 防虫用フィルター
71 浄水供給路
75 洗浄水供給路(洗浄水供給路の一例)
81 タイマー(タイマーの一例)
91 コンプレッサー
92 流量調整弁
93 電磁弁
94 流量計
95 フロースイッチ(供給検知部の一例)
96 圧力制御弁