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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240329BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20240329BHJP
   G01N 21/94 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B23K26/00 M
H01S3/00 B
H01S3/00 G
G01N21/94
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020043817
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021142550
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 諒
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直也
(72)【発明者】
【氏名】井本 大暉
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-090583(JP,A)
【文献】特開2000-015470(JP,A)
【文献】特開2010-207901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護ガラスを有するレーザ加工ヘッドと、レーザ光を発振するレーザ発振器と、該レーザ発振器で発振された該レーザ光を該レーザ加工ヘッドに伝送する伝送ファイバとを備えた、レーザ加工装置であって、
前記伝送ファイバの出射端に設けられたエンドキャップと、
前記伝送ファイバの出射側の端部を覆う筒状のコネクタ部と、
前記伝送ファイバから出射された後で再び該伝送ファイバに向かう戻り光のうち、該伝送ファイバに入射されなかった戻り光を検出する検出部と、
前記検出部で検出された戻り光の光量が所定の閾値以上であるかを判定する判定部とを備え
前記伝送ファイバは、クラッドの外周部に設けられた被覆部を有し、
前記伝送ファイバの外周部における出射側の端部には、前記被覆部が除去されて露出した前記クラッドにおける所定区間にモードストリッパ部が設けられ、
前記検出部は、前記コネクタ部の内部に配置されており、前記モードストリッパ部よりも出射方向の上流側で且つ前記被覆部よりも出射方向の下流側において、前記クラッドの外側に配置されている、
レーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記レーザ加工ヘッドは、コリメータレンズ及び集光レンズをさらに有し、
前記検出部は、前記保護ガラス、前記コリメータレンズ、及び前記集光レンズのうち少なくとも1つで反射された戻り光を検出する、レーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記判定部は、前記レーザ光が照射される対象物の溶け込み量が所定量以上である場合に、前記検出部で検出された戻り光の光量の判定を行う、レーザ加工装置。
【請求項4】
請求項において、
前記判定部は、前記対象物に形成されたキーホールの深さが所定値よりも大きい場合に、該対象物の溶け込み量が所定量以上であると判定する、レーザ加工装置。
【請求項5】
請求項において、
前記判定部は、前記レーザ光の出力と該レーザ光の照射時間とを積算したエネルギー量が所定量よりも大きい場合に、該対象物の溶け込み量が所定量以上であると判定する、レーザ加工装置。
【請求項6】
請求項1乃至のうち何れか1つにおいて、
前記レーザ光が照射される対象物は、該レーザ光の波長吸収率が所定値よりも高い材料で構成されている、レーザ加工装置。
【請求項7】
請求項1又は2において、
前記レーザ光が照射される対象物は、該対象物の焦点位置での戻り光の光量が所定量よりも少ない部材で構成されている、レーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ加工ヘッドに設けられた保護ガラスの汚れや損傷等をモニタリングする機能を備えたレーザ加工ヘッドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、プローブ光を発生させるプローブ光発生器と、発生したプローブ光をファイバコリメータに導く光ファイバと、ファイバコリメータから照射されて保護ガラスを透過した透過光の光強度を検出する光検出素子とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-196029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の発明では、保護ガラスの汚れを検出するために、プローブ光発生器、光ファイバ、ファイバコリメータ、光検出素子等が別途必要である。そのため、装置構成が複雑となり、部品点数が増えることでコストが増大するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構成で、保護ガラスの汚れを検出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、保護ガラスを有するレーザ加工ヘッドと、レーザ光を発振するレーザ発振器と、該レーザ発振器で発振された該レーザ光を該レーザ加工ヘッドに伝送する伝送ファイバとを備えた、レーザ加工装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、前記伝送ファイバから出射された後で再び該伝送ファイバに向かう戻り光のうち、該伝送ファイバに入射されなかった戻り光を検出する検出部と、
前記検出部で検出された戻り光の光量が所定の閾値以上であるかを判定する判定部とを備えている。
【0009】
第1の発明では、伝送ファイバに向かう戻り光のうち、伝送ファイバに入射されなかった戻り光を検出部で検出するようにしている。これにより、比較的簡単な構成で、保護ガラスの汚れを検出することができる。
【0010】
具体的に、伝送ファイバから出射されたレーザ光の一部は、加工対象物であるワークで反射され、伝送ファイバに向かう戻り光となる。ワークからの戻り光は、伝送ファイバのクラッドの内部に集中的に入射される。
【0011】
一方、保護ガラスにヒュームやスパッタが付着して汚れが生じている場合、汚れ部分にレーザ光が照射されて熱が生じることで、保護ガラスの反射率が増加する。そのため、レーザ光の一部が保護ガラスに付着した汚れで反射され、伝送ファイバに向かう戻り光となる。
【0012】
ここで、保護ガラスは、ワークに対するレーザ光の焦点位置よりも出射方向の上流側に配置されているから、保護ガラスからの戻り光のビーム径は、ワークでの焦点位置のビーム径に対してデフォーカスされた状態となり、伝送ファイバのクラッドの外径よりも大きくなる。その結果、保護ガラスに付着した汚れで反射された、保護ガラスからの戻り光の一部は、伝送ファイバのクラッドの内部に集中的に入射されないこととなる。
【0013】
このように、保護ガラスの汚れが生じている場合に、所定の閾値以上の戻り光が検出部で検出されることとなるので、検出部の検出結果に基づいて、保護ガラスの汚れや異常の発生を判断することができる。これにより、保護ガラスの交換やメンテナンスを行うタイミングを適切に判断することができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
前記伝送ファイバの出射端に設けられたエンドキャップを備えている。
【0015】
第2の発明では、伝送ファイバの出射端にエンドキャップが設けられているので、伝送ファイバの出射端におけるレーザ光のエネルギー密度を下げ、伝送ファイバの出射端の損傷を抑えることができる。
【0016】
また、保護ガラスに汚れが生じている場合の戻り光は、エンドキャップにおける伝送ファイバのクラッドよりも径方向外側から漏れ出すこととなる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記伝送ファイバの出射側の端部を覆う筒状のコネクタ部を備え、
前記検出部は、前記コネクタ部の内部に配置されている。
【0018】
第3の発明では、コネクタ部の内部に検出部を配置している。これにより、伝送ファイバに入射されなかった戻り光が、コネクタ部の内部で反射されながら検出部に向かい、検出部で検出されやすくなる。
【0019】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記伝送ファイバの外周部における出射側の端部には、モードストリッパ部が設けられ、
前記検出部は、前記モードストリッパ部よりも出射方向の上流側に配置されている。
【0020】
第4の発明では、モードストリッパ部よりも出射方向の上流側に検出部を配置している。これにより、伝送ファイバのクラッドに入射した戻り光を、モードストリッパ部で減衰させて除去して、検出部で誤検出されるのを抑えることができる。
【0021】
第5の発明は、第1乃至第4の発明のうち何れか1つにおいて、
前記レーザ加工ヘッドは、コリメータレンズ及び集光レンズをさらに有し、
前記検出部は、前記保護ガラス、前記コリメータレンズ、及び前記集光レンズのうち少なくとも1つで反射された戻り光を検出する。
【0022】
第5の発明では、保護ガラスだけでなく、レーザ加工ヘッド内の光学部品であるコリメータレンズや集光レンズについても、汚れや破損等の異常の発生を判定することができる。
【0023】
第6の発明は、第1乃至第5の発明のうち何れか1つにおいて、
前記判定部は、前記レーザ光が照射される対象物の溶け込み量が所定量以上である場合に、前記検出部で検出された戻り光の光量の判定を行う。
【0024】
第6の発明では、対象物の溶け込み量が所定量以上である場合、すなわち、対象物からの戻り光が少ない状態で、戻り光の光量の判定を行うようにしている。
【0025】
これにより、保護ガラスの汚れの有無や破損等の不具合を、安定した高品質で検出することができる。
【0026】
第7の発明は、第6の発明において、
前記判定部は、前記対象物に形成されたキーホールの深さが所定値よりも大きい場合に、該対象物の溶け込み量が所定量以上であると判定する。
【0027】
第7の発明では、対象物に形成されたキーホールの深さに基づいて、対象物の溶け込み量を判定するようにしている。これにより、対象物が十分に溶けており、対象物からの戻り光が少ない状態で、戻り光の光量の判定を行うことで、誤検出を抑えることができる。
【0028】
第8の発明は、第6の発明において、
前記判定部は、前記レーザ光の出力と該レーザ光の照射時間とを積算したエネルギー量が所定量よりも大きい場合に、該対象物の溶け込み量が所定量以上であると判定する。
【0029】
第8の発明では、レーザ光の出力とレーザ光の照射時間とを積算したエネルギー量に基づいて、対象物の溶け込み量を判定するようにしている。これにより、対象物が十分に溶けており、対象物からの戻り光が少ない状態で、戻り光の光量の判定を行うことで、誤検出を抑えることができる。
【0030】
第9の発明は、第1乃至第8の発明のうち何れか1つにおいて、
前記レーザ光が照射される対象物は、該レーザ光の波長吸収率が所定値よりも高い材料で構成されている。
【0031】
第9の発明では、対象物として、鉄系やステンレスなどのレーザ光の波長吸収率が高い材料を用いている。これにより、レーザ加工中において、対象物からの戻り光の発生を低下させることで、誤検出を抑えることができる。
【0032】
第10の発明は、第1乃至第5の発明のうち何れか1つにおいて、
前記レーザ光が照射される対象物は、該対象物の焦点位置での戻り光の光量が所定量よりも少ない部材で構成されている。
【0033】
第10の発明では、対象物として、ビームダンパ等のような、焦点位置での戻り光としての反射光が少ない測定治具を用いている。これにより、対象物からの戻り光の発生を低下させることで、誤検出を抑えることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、比較的簡単な構成で、保護ガラスの汚れを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本実施形態に係るレーザ加工装置の構成を示す斜視図である。
図2】レーザ加工装置の構成を示す側面断面図である。
図3】保護ガラスに汚れが生じていない場合の戻り光の光路を説明するための側面断面図である。
図4】保護ガラスに汚れが生じている場合の戻り光の光路を説明するための側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0037】
〈レーザ加工装置の構成〉
図1に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ発振器10と、伝送ファイバ20と、レーザ加工ヘッド30と、制御部5と、電源6とを備えている。
【0038】
レーザ発振器10は、複数のレーザモジュール11と、ビーム結合器12と、集光ユニット15とを有する。図1に示す例では、レーザモジュール11は4つ設けられている。
【0039】
複数のレーザモジュール11は、異なる波長のレーザビームを発する複数のレーザダイオード又はレーザアレイで構成されている。レーザモジュール11内で波長合成されたレーザビームは、各々のレーザモジュール11からそれぞれ出射される。
【0040】
ビーム結合器12は、複数のレーザモジュール11からそれぞれ出射されたレーザビームを一つのレーザビームに結合する。ビーム結合器12は、レーザビームを集光ユニット15に出射する。
【0041】
集光ユニット15は、レーザ光Lを集光する。集光ユニット15で集光されたレーザ光Lは、所定の倍率でビーム径が縮小され、伝送ファイバ20に入射される。
【0042】
伝送ファイバ20の入射端は、集光ユニット15に接続されている。伝送ファイバ20の出射端には、コネクタ部25が設けられている。伝送ファイバ20の出射端は、コネクタ部25を介してレーザ加工ヘッド30に接続されている。伝送ファイバ20は、集光ユニット15を介してレーザ発振器10から受け取ったレーザ光Lを、レーザ加工ヘッド30に向かって導光する。
【0043】
レーザ加工ヘッド30は、伝送ファイバ20で導光されたレーザ光Lを外部に向けて照射する。例えば、図1に示すレーザ加工装置1では、所定の位置に配置された加工対象物であるワークWに向けてレーザ光Lを出射する。
【0044】
レーザ加工ヘッド30の内部には、レーザ光の出射方向の上流側から順に、コリメータレンズ31、集光レンズ32、保護ガラス33が配置されている(図2も参照)。
【0045】
コリメータレンズ31は、伝送ファイバ20の出射端から出射されたレーザ光Lを平行化する。
【0046】
集光レンズ32は、コリメータレンズ31で平行化されたレーザ光Lを集光する。集光レンズ32で集光されたレーザ光Lは、保護ガラス33を透過して、ワークWに出射される。
【0047】
保護ガラス33は、ワークWと集光レンズ32との間に配置されている。保護ガラス33は、ワークWのレーザ加工時に発生するヒュームやスパッタが集光レンズ32に付着しないように、集光レンズ32を保護している。保護ガラス33には、反射防止膜としてのARコーティングが施されている。
【0048】
制御部5は、レーザ発振器10のレーザ発振を制御する。具体的に、制御部5は、レーザ発振器10に接続された電源6に対して、出力電圧やオン時間等の制御信号を供給することで、各々のレーザモジュール11のレーザ発振制御を行う。
【0049】
なお、制御部5は、各々のレーザモジュール11に対して個別にレーザ発振制御を行うことも可能である。例えば、レーザモジュール11にレーザ発振出力やオン時間等を異ならせるようにしてもよい。また、制御部5は、レーザ加工ヘッド30が取り付けられたマニピュレータ(図示せず)の動作を制御してもよい。
【0050】
なお、詳しくは後述するが、制御部5は、保護ガラス33等の光学部品に汚れ35が付着しているかを判定する判定部5aを有する。
【0051】
電源6は、レーザ発振を行うための電力を、レーザ発振器10の複数のレーザモジュール11に対してそれぞれ供給する。なお、制御部5からの指令により、各々のレーザモジュール11に供給される電力を異ならせるようにしてもよい。
【0052】
また、電源6は、レーザ加工装置1の可動部に対してそれぞれ電力を供給するようにしてもよいし、レーザ加工装置1の可動部向けには別の電源(図示せず)から電力を供給するようにしてもよい。
【0053】
〈伝送ファイバの構成〉
図2に示すように、伝送ファイバ20は、図示しないコアと、コアの外周部に設けられたクラッド21と、クラッド21の外周部に設けられた被覆部22とを有する。伝送ファイバ20は、石英ガラスで構成されている。
【0054】
伝送ファイバ20の出射端には、エンドキャップ23が設けられている。エンドキャップ23は、円柱状の石英ガラスで構成されている。エンドキャップ23は、伝送ファイバ20の出射端に融着接続されている。
【0055】
エンドキャップ23の外径は、伝送ファイバ20のクラッド21の外径よりも大きい。エンドキャップ23は、伝送ファイバ20の出射端におけるレーザ光Lのエネルギー密度を下げ、伝送ファイバ20の出射端の損傷を抑えることができる。
【0056】
伝送ファイバ20の出射側の端部には、筒状のコネクタ部25が設けられている。コネクタ部25の内部には、被覆部22が除去されてクラッド21が露出した伝送ファイバ20が収納されている。コネクタ部25には、図示しない水冷機構が設けられ、コネクタ部25の内部の伝送ファイバ20を冷却している。
【0057】
伝送ファイバ20のクラッド21には、モードストリッパ24が設けられている。モードストリッパ24は、コネクタ部25の内部に配置されたクラッド21における所定区間に設けられている。
【0058】
モードストリッパ24は、クラッド21に入射されたレーザ光Lをクラッド21外部に放出して除去するものである。モードストリッパ24は、例えば、クラッド21の外周面にエッチング処理を施すことで形成される。
【0059】
コネクタ部25の内部には、検出センサ26(検出部)が設けられている。検出センサ26は、モードストリッパ24よりも出射方向の上流側に配置されている。検出センサ26は、コネクタ部25の内部に入射した戻り光を検出する。具体的に、検出センサ26は、伝送ファイバ20から出射された後で再び伝送ファイバ20に向かう戻り光のうち、伝送ファイバ20に入射されなかった戻り光を検出する。検出センサ26の検出結果は、制御部5に送信される。
【0060】
〈保護ガラスの汚れの検出〉
図3に示すように、保護ガラス33に汚れ35が生じていない場合、ワークWに出射されたレーザ光Lの一部は、ワークWで反射(正反射)され、伝送ファイバ20に向かう戻り光となる。
【0061】
このとき、ワークWからの戻り光は、伝送ファイバ20のコアに入射される。なお、戻り光が伝送ファイバ20のクラッド21に入射された場合であっても、モードストリッパ24によって、クラッド21に入射された戻り光が減衰されて除去される。
【0062】
このように、保護ガラス33に汚れ35が生じていない場合には、ワークWでの焦点位置で正反射した戻り光が伝送ファイバ20に向かい、この戻り光が集中的に伝送ファイバ20のクラッド21の内部に入射される。
【0063】
ワークWからの戻り光(正反射した反射光)がクラッド21へ入射し、モードストリッパ24の径方向に向かう漏れ光としての光成分は、モードストリッパ24で減衰されて除去される。
【0064】
ところで、モードストリッパ24の径方向に向かう漏れ光としての光成分(反射光)がモードストリッパ24で除去しきれなく、さらに、モードストリッパ24の外側とコネクタ部25の内部との間で反射する間(モードストリッパ24の領域)に減衰しきれないことがある。この場合、このわずかな漏れ光としての反射光がコネクタ部25の内部で反射しながら検出センサ26に向かい、検出センサ26で検出されることがある。そこで、汚れ検出の閾値設定を最適化することで、保護ガラス33の汚れ35の誤検出を防止している。
【0065】
具体的に、ワークWからの反射光がクラッド21へ入射し、モードストリッパ24で除去しきれなかった場合には、検出センサ26に到達する反射光がわずかであるため、検出レベルが低い。
【0066】
そこで、検出センサ26で検出された反射光の光量が所定の閾値以下の場合、判定部5aは、保護ガラス33に汚れ35が発生していないと判定する。これにより、汚れ35の誤検出を防止することができる。
【0067】
一方、図4に示すように、保護ガラス33にヒュームやスパッタが付着して汚れ35が生じている場合、汚れ部分にレーザ光Lが照射されて熱が生じることで、保護ガラス33のARコーティングの状態が変化し、反射率が増加する。そのため、レーザ光Lの一部が保護ガラス33に付着した汚れ35で反射され、伝送ファイバ20に向かう戻り光となる。
【0068】
ここで、保護ガラス33は、ワークWに対するレーザ光Lの焦点位置よりも出射方向の上流側に配置されているから、保護ガラス33からの戻り光のビーム径は、ワークWでの焦点位置のビーム径に対してデフォーカスされた状態となり、伝送ファイバ20のクラッド21の外径よりも大きくなる。
【0069】
その結果、保護ガラス33に付着した汚れ35で反射された、保護ガラス33からの戻り光の一部は、伝送ファイバ20のクラッド21の内部に集中的に入射されないこととなる。
【0070】
具体的には、保護ガラス33に生じた汚れ35で正反射及び乱反射した光成分の戻り光は、エンドキャップ23における伝送ファイバ20のクラッド21よりも径方向外側の、エンドキャップ23と伝送ファイバ20のクラッド21との接続面からコネクタ部25の内部に漏れ出すこととなる。コネクタ部25の内部に入射した戻り光は、コネクタ部25の内部で反射しながら検出センサ26に向かい、検出センサ26で検出される。
【0071】
なお、汚れ35が生じていない保護ガラス33で反射する戻り光は極めて少ない。また、汚れ35が生じていない保護ガラス33を透過したワークWの焦点位置からの戻り光がクラッド21に入射した場合には、モードストリッパ24で減衰されて除去されるため、検出センサ26で誤検出されるのを抑えることができる。
【0072】
これに対し、保護ガラス33の汚れ35で反射する戻り光が、クラッド21の外側に入射すると、検出センサ26の検出感度がかなり大きくなる。
【0073】
このように、汚れ35が生じていない保護ガラス33と比較し、保護ガラス33の汚れ35が生じている場合には、検出センサ26において、保護ガラス33の汚れ35を判断するための所定の閾値以上の戻り光が検出されることとなる。
【0074】
判定部5aは、検出センサ26で検出された反射光の光量が所定の閾値以上の場合、保護ガラス33に汚れ35が発生していると判定する。
【0075】
これにより、検出センサ26の検出結果に基づいて、保護ガラス33の汚れ35や保護ガラス33の破損等の異常の発生を判断することができる。保護ガラス33に破損等の異常が発生した場合についても、汚れ35が生じている保護ガラス33と同様なメカニズムにより、検出センサ26で所定の閾値以上の戻り光が検出されることとなるためである。
【0076】
これにより、保護ガラス33の交換やメンテナンスを行うタイミングを適切に判断することができる。
【0077】
なお、保護ガラス33が汚れていない場合であっても、例えば、コネクタ部25の内部に収納されている伝送ファイバ20が断線していると、コネクタ部25の内部で戻り光が反射して検出センサ26で検出されることとなる。そのため、検出センサ26を用いて、伝送ファイバ20の断線検出を行うこともできる。
【0078】
なお、保護ガラス33だけでなく、レーザ加工ヘッド30内の光学部品であるコリメータレンズ31や集光レンズ32等に、汚れや破損等の異常が発生した場合についても、汚れ35が生じている保護ガラス33と同様なメカニズムにより、レーザ加工ヘッド30内の光学部品の汚れ35や不具合を判定することができる。ここで、汚れ35は、ワークWのレーザ加工時に発生するヒュームやスパッタによって、ワークWに近い側の保護ガラス33側から発生しやすい。
【0079】
なお、保護ガラス33の汚れ35の有無や保護ガラス33の破損等の不具合を効果的に判定するためには、ワークWでの焦点位置において、レーザ光Lの一部が、伝送ファイバ20に向かって適正量で安定して正反射されることが好ましい。これにより、この適正な量の戻り光が、伝送ファイバ20のクラッド21の内部に集中的に入射され、モードストリッパ24で減衰されて効果的に除去される。
【0080】
なお、ワークWの焦点位置での正反射光や散乱光(乱反射光)が大きすぎる場合、保護ガラス33の汚れ35の有無や破損等の不具合を誤検出しないようにすることが好ましい。
【0081】
具体的に説明すると、保護ガラス33の汚れ35の有無や破損等の不具合を、安定した高品質で検出するためのタイミングや条件としては、ワークWからの戻り光が少ない場合、すなわち、ワークWが十分に溶けている状態が好ましい。
【0082】
言い換えると、加工初期の溶け込みが不十分な期間や、波長吸収率が低い高反射材料に対して低出力でレーザ照射をした場合は、ワークWからの戻り光としての反射光が増えてしまうため、好ましくない。
【0083】
このため、ワークWからの戻り光が少なくなるような十分に溶け込み出した以降のタイミングで、検出センサ26による保護ガラス33、コリメータレンズ31、集光レンズ32等のレーザ加工ヘッド30内の光学部品等の汚れの有無や破損等の不具合検出を行うことが好ましい。
【0084】
これにより、ワークWの波長吸収率が低い高反射材料であっても、レーザ加工中にレーザ加工ヘッド30内の光学部品等の汚れの有無や破損等の不具合検出を行うことができる。この溶け込み出した以降のタイミングの判定は、ワークWに対してのレーザ照射によるキーホール深さの検出やレーザの出力とレーザ照射時間の積によるエネルギー量に応じて、行っても良い。
【0085】
また、アルミや銅系材料等の高反射材料になるほど、溶け込みが発生した場合と発生していない場合では、戻り光の量の差が大きい特性がある。これは、特に高反射材料において、固相から液相に変化したときの反射率の減少率、すなわち、波長吸収率の増加率が大きいことによるものである。
【0086】
これにより、上述したように、特に高反射材料において十分な溶け込みが発生していないときでは、戻り光としての反射光の量が大きくなるので、誤検出しないように留意する必要がある。
【0087】
また、戻り光の検出時のレーザ光Lの照射対象としては、ワークWとしているが、ワークWの波長吸収率の影響を受けないビームダンパ等のような、焦点位置での戻り光としての反射光が少ない測定治具を用いても良い。
【0088】
また、鉄系やステンレスなどのレーザ光Lの波長吸収率が高い材料の場合は、レーザ加工中において、過剰な戻り光の発生が相対的に低くなる。そのため、レーザ加工中の戻り光を用いた検出センサ26による、レーザ加工ヘッド30内の光学部品等の汚れの有無や破損等の不具合検出には、レーザ加工中における、測定タイミングやレーザ出力等の条件の自由度が高くなり好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明は、比較的簡単な構成で、保護ガラスの汚れを検出することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0090】
1 レーザ加工装置
5 制御部
5a 判定部
10 レーザ発振器
20 伝送ファイバ
23 エンドキャップ
24 モードストリッパ部
25 コネクタ部
26 検出センサ(検出部)
30 レーザ加工ヘッド
33 保護ガラス
L レーザ光
W ワーク(対象物)
図1
図2
図3
図4