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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/0622 20140101AFI20240329BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240329BHJP
【FI】
B23K26/0622
B23K26/064 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020082637
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021176643
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 出
(72)【発明者】
【氏名】葛西 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆幸
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-053579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0363518(US,A1)
【文献】特開2003-048093(JP,A)
【文献】特開2017-051990(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220832(WO,A1)
【文献】特開2015-174103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/0622
B23K 26/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ発振器を含む光源部と、
前記光源部に電流を供給する電源と、
前記光源部から出射される前記レーザ光の光路中に配設され、前記レーザ光の透過量を変化させる光学素子を含む偏向ユニットと、
前記偏向ユニットを通過した前記レーザ光の光路中に配設され、前記偏向ユニットで偏向された高次光を遮蔽し、0次光を透過させる光分離ユニットと、
前記レーザ光が前記光学素子によって偏向されるタイミングと同期して、前記電源から前記光源部に供給される電流のオン/オフを制御する信号同期ユニットと、
を備え
前記信号同期ユニットは、前記電源の電流立ち上がりから10μs以上経過した後に、前記光学素子による前記レーザ光の透過をオン状態とする、
レーザ加工装置。
【請求項2】
レーザ光を出射するレーザ発振器を含む光源部と、
前記光源部に電流を供給する電源と、
前記光源部から出射される前記レーザ光の光路中に配設され、前記レーザ光の透過量を変化させる光学素子を含む偏向ユニットと、
前記偏向ユニットを通過した前記レーザ光の光路中に配設され、前記偏向ユニットで偏向された高次光を遮蔽し、0次光を透過させる光分離ユニットと、
前記レーザ光が前記光学素子によって偏向されるタイミングと同期して、前記電源から前記光源部に供給される電流のオン/オフを制御する信号同期ユニットと、
を備え
前記信号同期ユニットは、前記電源の電流立ち下がり前に、前記光学素子による前記レーザ光の透過をオフ状態とする、
レーザ加工装置。
【請求項3】
前記電源は、パルス状の電流を前記光源部へ供給し、
前記信号同期ユニットは、前記偏向ユニットにおける前記0次光の通過量が最小となるタイミングで前記電源からの電流の供給をオフにする、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記光学素子は、音響光学素子である、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザ発振器は、2以上の異なる波長が重畳されたレーザ光を出射する、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザ発振器は、WBC型のDDL発振器である、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記レーザ光の波長は、300nm以上で、且つ、2000nm以下の範囲内である、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記電源から前記光源部に供給する電流のパルスの繰り返し周波数は、CW以上で且つ50kHz以下の範囲内である、
請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記光源部は、1%以上で且つ50%以下の範囲内のパルスデューティを有するレーザ光を出力する、
請求項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記光分離ユニットを通過した前記レーザ光の前記0次光により、加工対象物の加工を行う、
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を用いた加工技術において、連続的なレーザビームでの加工に加えて、パルスレーザビームでの加工が必要となる場合がある。パルスレーザビームを用いた加工は、例えば、加工対象物への熱影響を抑制し、高精度な加工を実施したい場合に利用される。
【0003】
例えば、特許文献1には、CW又は準CWレーザビームを、光学シャッタを用いてレーザパルス列を生成しレーザビームとすることが開示されている。
【0004】
図7に、特許文献1に記載された単一のRF(Radio Frequency)パルスレーザから複数のビームを生成するシステム1400を示す。図7において、RFパルスレーザ1410は、レーザビームを生成し、このレーザビームは、直列に配置された音響光学変調器(acousto-optic modulator:AOM)1412,1414,1416を通過する。システム1400は、複数のビームを提供するために、AOM1412,1414,1416を用いて、時間的なパルス内スライスを生成し、加工ヘッドに向かう各パスにレーザビームを分配することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5638054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年のレーザ加工装置では、ハイパワー出力を可能とするため、WBC(Wavelength Beam Combining)型DDL発振器が用いられるケースがしばしばある。
【0007】
この点、特許文献1に記載のレーザ加工装置では、RFパルスレーザの出力光をAOMによる回折現象を利用して、パルス的にレーザビームの高次光を偏向させ加工ヘッドへ導いている。このときのレーザビームの偏向角は、当該レーザビームの波長毎に、異なる角度となる。そのため、偏向された高次光を加工に使用する特許文献1に記載のレーザ加工装置において、WBC型DDL発振器を採用した場合には、AOMにより回折したレーザ光が拡がってしまい、集光してもスポット形状が歪んでしまうおそれがある。
【0008】
他方、パルスレーザを用いて、レーザ加工を行う際には、当該パルスレーザの波形が加工精度に直結するところ、特許文献1等の従来技術においては、パルスレーザの波形のより好適な制御方式については検討されておらず、加工精度向上の点で改善の余地がある。
【0009】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、優れた加工精度を有するレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
レーザ光を出射するレーザ発振器を含む光源部と、
前記光源部に電流を供給する電源と、
前記光源部から出射される前記レーザ光の光路中に配設され、前記レーザ光の透過量を変化させる光学素子を含む偏向ユニットと、
前記偏向ユニットを通過した前記レーザ光の光路中に配設され、前記偏向ユニットで偏向された高次光を遮蔽し、0次光を透過させる光分離ユニットと、
前記レーザ光が前記光学素子によって偏向されるタイミングと同期して、前記電源から前記光源部に供給される電流のオン/オフを制御する信号同期ユニットと、
を備えるレーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0011】
本開示のレーザ加工装置によれば、高い加工精度でのレーザ加工を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係るレーザ加工装置の模式図
図2図2(a)は、本開示の一実施形態に係るレーザ光と回折光とを示す模式図、図2(b)は、本開示の一実施形態に係る回折光の光強度を示す図。
図3図3(a)は、本開示の一実施形態に係る光分離ユニットの模式図、図3(b)は、本開示の一実施形態に係る光分離ユニットの模式図
図4】AOM変調信号のみで、レーザ光のパルス出力を制御した場合における、AOM変調信号の波形と光出力(0次光)の波形を示す図
図5】本開示の一実施形態に係る光出力制御における、AOM変調信号の波形、電源変調信号の波形、及び、光出力(0次光)の波形を示す図
図6】本開示の一実施形態に係る光出力制御における、AOM変調信号の波形、電源変調信号の波形、及び、光出力(0次光)の波形のオシロスコープによる観察結果を示す図
図7】従来のパルス列生成方式の模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
本開示のレーザ加工装置は、光源部1と、電源1aと、偏向ユニット2と、光分離ユニット5と、信号同期ユニット4と、を有する(図1を参照)。
【0015】
光源部1は、レーザ光3を出射するレーザ発振器を含む。電源1aは、光源部1に電流を供給する。偏向ユニット2は、レーザ光3の透過量を変化させる光学素子21を含む。光分離ユニット5は、偏向ユニット2で偏向された高次光を遮蔽し、0次光を透過させる。信号同期ユニット4は、レーザ光3が光学素子21によって偏向されるタイミングと同期して、電源1aから光源部1に供給される電流を制御する。
【0016】
本開示のレーザ加工装置では、偏向ユニット2で偏向された高次光を遮蔽し、0次光を透過させることで、0次光を加工に用いる。また、信号同期ユニット4が、レーザ光3が光学素子21によって偏向されるタイミングと同期して、電源1aから光源部1に供給される電流を制御するため、電源1aの電流立ち上がりタイミング及び立ち下がりタイミングと、光学素子21によるレーザ光3の透過とのタイミングとを調整することが可能である。
【0017】
これによって、高い加工精度を実現すると共に、光出力の立ち上がり及び立ち下がり時の電流ロス及び効率の低下を抑制することができる。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本実施形態のレーザ加工装置の模式図である。
【0019】
レーザ加工装置は、光源部1を有する。光源部1は、レーザ発振器を含む。レーザ発振器は、例えば、ハイパワー出力を可能とするため、複数のダイレクトダイオードレーザ(DDL)から出射される異なる波長のレーザ光を、それぞれ光整形手段を用いてコリメートし、コリメートされた光を、合成手段を用いて合成し、合成された光を、集光手段を用いて集光させる構造を有していてよい。すなわち、レーザ発振器としては、WBC(Wavelength Beam Combining)型のレーザ発振器を用いてよい。光源部1は、レーザ光3を出射する。レーザ光3は、複数の異なる波長のレーザ光が重畳された重畳レーザ光であってよい。
【0020】
レーザ加工装置は、電源1aを有する。電源1aは、光源部1に電流を供給する。電源1aから供給される電流を変調することで、レーザ発振器は連続的なCWレーザ光及びパルス状のレーザ光の発振が可能である。
【0021】
レーザ加工装置は、光源部1から出射されるレーザ光3の光路中に配設された偏向ユニット2を有する。偏向ユニット2は、レーザ光の透過量を変化させる光学素子21を含む。光学素子21は、音響光学素子(以下、AOMともいう)であることが好ましい。本実施形態では、偏向ユニット2は、AOM21とAOMドライバ22とを含む。AOM21は、レーザ光3をAOMドライバ22の信号のオン・オフに応じて回折光24と0次光23に分岐させる。
【0022】
図2(a)に、本実施形態のレーザ加工装置におけるレーザ光3の進み方を示す。図2において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0023】
本実施形態では、レーザ発振器として、WBC型のDDL発振器を用いているため、光源部1から出射されるレーザ光3は、複数の波長λ,λ,λ,λのレーザ光が重畳したものとなっている。波長λ,λ,λ,λ図2(b)に示す分布図のように、それぞれが重ならない様に分布している。DDL発振器から出射されるレーザ光3は、異なる波長λ,λ,λ,λのレーザ光を含み、それらは同軸上に重畳され一本のレーザ光3として出射される。レーザ光3がAOMドライバ22から信号が入力されている状態のAOM21に入ると回折が起こり、波長によって回折角が異なる回折光24となる。回折光24は、波長ごとの回折角の違いから徐々に拡がっていってしまう。このとき、AOM21ではすべての入射したレーザ光3が回折光24として回折されるわけではなく、レーザ光3の約1割程度が0次光23として透過する。一方、AOMドライバ22から信号が入力されていない状態のAOM21では回折が起こらず、すべてのレーザ光3が0次光23として透過する。このように、0次光23のみを選択的に取り出して加工に利用するため、レーザ光3は、レンズ(図示せず)などで集光された際にも、複数の波長のレーザ光それぞれがスポットからずれることなく重なることになる。これによって、良好な加工を行うことができるといった利点がある。
【0024】
本実施形態では、波長λ,λ,λ,λはそれぞれ975nm、980nm、985nm、990nmとしたが、2つ以上の異なる波長のレーザ光を重畳したものであればよい。なお、このときの波長域は300nm以上で且つ2000nm以下の範囲内であることが好ましい。例えば、450nm付近の青色の光源を用いる場合、高出力でのレーザ加工が可能である。
【0025】
又、レーザ加工装置は、偏向ユニット2を通過したレーザ光3の光路中に配設された光分離ユニット5を有する。光分離ユニット5は、偏向ユニット2で偏向された回折光24と0次光23とを分離し、高次光である回折光24を遮光し、0次光23のみを透過させる。そして、光分離ユニット5から出力される0次光23が、レーザ加工に使用される。即ち、光分離ユニット5から出力される0次光23が、加工対象物と対向して配設され、レーザ光を出射する加工ヘッド(図示せず)に供給される。
【0026】
図3に、光分離ユニット5の模式図を示す。図3において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。図3(a)は、光分離ユニット5の一例である。光分離ユニット5は、複数のミラー52を有することが好ましい。ミラー52は、回折光24と0次光23と反射させることで光路を折りたたむため、光分離ユニット5の大きさをさほど大きくすることなく光路長を長くとることができる。これにより、徐々に回折光24と0次光23との間の距離が大きくなるようにして、回折光24のみをダンパー51へと誘導する。光分離ユニット5は、ダンパー51を有しており、ダンパー51は、ミラー52によって誘導された回折光24を遮蔽する。このようにして、光分離ユニット5は0次光23のみを透過させる。なお、図3(a)に示す光分離ユニット5は、ミラー52の数を2個としたが、3個以上のミラー52を用いて多数の折返しを行なってもよい。
【0027】
図3(b)は、光分離ユニット5の他の例である。図3(b)に示す光分離ユニット5は、レンズ53と円錐状のピンホール55とレンズ54とダンパー51とを備える。0次光23と回折光24とがレンズ53によって集光されるが、回折光24の集光点の位置は0次光23の集光点とは異なる位置になる。円錐状のピンホール55は、0次光23だけが透過するように配置されため、ピンホール55を透過した0次光23はレンズ54によって平行光に戻されるが、回折光24はダンパー51へと向かい遮蔽される。なお、レンズ53とレンズ54とはコリメータを形成し、レンズ53とレンズ54とのそれぞれの焦点距離の比を適切に設定することによって、0次光23のビーム径を必要に応じて拡大又は縮小することが可能である。また、レンズ54を透過した0次光23を平行光に戻すとしたが、用途によっては、レンズ53とレンズ54との間の距離を調整して、0次光23を拡大ビーム又は縮小ビームとしてもよい。
【0028】
なお、ダンパー51、ミラー52、及びピンホール55は、高出力のレーザ光を受けるため、水冷や空冷による冷却機構を備えていても良い。
【0029】
信号同期ユニット4は、レーザ光3が光学素子21によって偏向されるタイミングと同期して、電源1aから光源部1に供給される電流を制御する。本実施形態では、信号同期ユニット4は、電源変調信号41を電源1aへインプットすることで、電流が光源部1(ここでは、レーザ発振器)へ供給されるタイミングを制御し、これにより、光源部1からレーザ光が発振されるタイミングを制御している。また、信号同期ユニット4は、AOMドライバ変調信号42をAOMドライバ22へインプットすることで、AOM21によって0次光23を透過させるタイミングを制御している。
【0030】
図4に、AOM変調信号42のみで、レーザ光のパルス出力を制御した場合における、AOM変調信号42の波形と光出力(0次光23)の波形を示す図である。図4において、AOM変調信号42がオンのときにはAOM21が回折格子として機能するが、AOM21ではすべての光を回折できず、0次光23として透過してしまう。このとき、光分離ユニット5を透過して出力される0次光23は、およそ10%程度となる。AOM変調信号42がオフのときには、AOM21は回折格子として機能しないため、0次光23は光分離ユニット5を透過し、ほぼ100%の光出力となる。
【0031】
つまり、図4に示すような光出力制御を行った場合、光源部1のレーザ発振器として1000W出力のものを使用したときには、パルスがオフになっているときでも、10%のおよそ100Wのレーザ光が出力されることになる。そのため、かかる光出力制御では、加工の際に、加工対象物に対して熱影響によるダメージを与えたり、加工対象物を変形させるおそれがある。
【0032】
かかる観点から、本実施形態に係る光出力制御においては、AOM変調信号42と電源変調信号41とを協調して、レーザ光のパルス出力を制御する。
【0033】
図5に、本実施形態に係る光出力制御における、AOM変調信号42の波形、電源変調信号41の波形、及び、光出力(0次光23)の波形を示す図である。
【0034】
図4に示したように、AOM変調信号42のみによってレーザ光をパルス化した場合、AOM変調信号42がオンになっている際にも光出力は0%とならなかったが、本実施形態に係る光出力制御では、図5のように、AOM変調信号42がオンになっているタイミングに合わせて電源変調信号41をオフにする。これによって、レーザ光の出力をオフにするタイミングでは、0次光23の光出力を0%まで抑えることが可能となる。
【0035】
本実施形態に係る光出力制御では、AOM21の変調タイミングによって、レーザ光のパルス出力の立ち上がり及び立ち下がりを制御する。これによって、400ns程度の時間でレーザ光のパルス出力の立ち上がり及び立ち下がりが実現できる。これにより、レーザ光による加工精度をより一層向上することが可能となる。
【0036】
尚、一般的な電源変調により、レーザ光のパルス出力の立ち上がり及び立ち下がりを制御した場合、レーザ光のパルス出力の立ち上がり及び立ち下がり時間は、数十マイクロ秒である。そのため、本実施形態に係る光出力制御では、一般的な電源変調により、レーザ光のパルス出力の立ち上がり及び立ち下がりを制御する場合と比較して、レーザ光のパルス出力の立ち上がり及び立ち下がり時間を1/10以下とすることができることになる。
【0037】
具体的には、本実施形態に係る光出力制御では、レーザ光のパルス出力の立ち上がりを制御する際には、電源変調信号41のオフからオンへの立ち上がり開始からAOM変調信号42のオンからオフへの立ち下がり開始までのディレイ時間を少なくとも10μs以上、より好ましくは50μs以上確保する構成としている。尚、当該ディレイ時間の上限としては、例えば、500μsが設定される。即ち、本実施形態に係る光出力制御では、電源1aの電流立ち上がりから10μs以上経過した後に、AOM21によるレーザ光の透過をオン状態とする。これによって、レーザ光のパルス出力の立ち上がり時間がAOM21によって律速されるため、ナノ秒オーダーの立ち上がりを実現することができる。
【0038】
尚、この際、仮に、電源変調信号41をオフからオンに切り替えるのと同時に、AOM変調信号42をオンからオフに切り替える制御とすると、電源変調信号41の立ち上がりがマイクロ秒オーダーであることに律速され、レーザ光のパルス出力の立ち上がり時間はマイクロ秒オーダーとなる。
【0039】
また、本実施形態に係る光出力制御では、レーザ光のパルス出力の立ち下がりを制御する際には、AOM変調信号42のオフからオンへの立ち上がり開始点以降に、電源変調信号41をオンからオフへの立ち下がりが開始するように設定する。即ち、本実施形態に係る光出力制御では、電源1aの電流立ち下がり前に、AOM21によるレーザ光3の透過をオフ状態とする。これによって、レーザ光のパルス出力の立ち下がり時間がAOM変調信号42に律速されるため、ナノ秒オーダーの立ち下がりを実現することができる。
【0040】
図6は、本実施形態に係る光出力制御における、AOM変調信号42の波形、電源変調信号41の波形、及び、光出力(0次光23)の波形のオシロスコープによる観察結果を示す図である。図6において、横軸は400μs/Divであり、縦軸に電源変調信号41、AOM変調信号42、及び光出力の波形を示す。図6において、電源変調信号41の立ち上がりから、AOM変調信号42の立ち上がりまでのディレイ時間を100μsと設定している。また、立ち下がりについては、AOM変調信号42の立ち下がりタイミングから電源変調信号41の立ち上がりまで、100μsのディレイ時間を設定している。
【0041】
図6に示すように、0次光23の波形は、約400nsでの立ち上がり及び立ち下がりが実現できていることが分かる。又、0次光23の出力がオンになっている前後のわずかな期間を除いて、0次光23の出力が0%となるパルスを生成できていることが分かる。
【0042】
以上のように、本実施形態に係るレーザ加工装置によれば、レーザ光の波形を高精度に制御することができるため、高い加工精度を実現することが可能である。また、これによって光出力の立ち上がり及び立ち下がり時の電流ロス及び効率の低下を抑制することもできる。
【0043】
なお、本実施形態に係るレーザ加工装置において、パルス動作の際のパルスデューティは、例えば、1%以上で且つ50%以下の設定が可能である。
【0044】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置においては、立ち上がり及び立ち下がり応答時間の速い電源1aを用いた場合にはディレイ時間を少なく設定できるため、例えば10μsのディレイ時間としてもよい。
【0045】
また、本実施形態に係るレーザ加工装置においては、電源変調信号41及びAOM変調信号42の応答を考慮すれば、パルスの繰り返し周波数は、CW以上で且つ50kHz以下の範囲内であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示のレーザ加工装置は、優れた加工精度を有するため、樹脂や金属など種々の材料の加工に適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 光源部
1a 電源
2 偏向ユニット
21 光学素子
22 AOMドライバ
23 0次光
24 回折光
3 レーザ光
4 信号同期ユニット
41 電源変調信号
42 AOM変調信号
5 光分離ユニット
51 ダンパー
52 ミラー
53 レンズ
54 レンズ
55 ピンホール
1400 システム
1410 RFパルスレーザ
1412 AOM
1414 AOM
1416 AOM
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7