(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】吸込具
(51)【国際特許分類】
A47L 9/04 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
A47L9/04 A
(21)【出願番号】P 2020104758
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100157808
【氏名又は名称】渡邉 耕平
(72)【発明者】
【氏名】貞広 政紀
(72)【発明者】
【氏名】水野 陽章
(72)【発明者】
【氏名】大高 弘之
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-000382(JP,A)
【文献】国際公開第2019/115992(WO,A1)
【文献】特開2000-166826(JP,A)
【文献】特開2015-136396(JP,A)
【文献】特表2021-505317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/00- 9/32
A47L11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵埃を吸引する清掃機に取り付けられる吸込具であって、
塵埃を掻き取るようにそれぞれ回転可能に構成されているとともに先端間に空隙が形成されるように前記吸込具の幅方向において間隔を空けて配置された2つの掻取ローラと、
下方に開口した吸込空間を区画しているとともに前記吸込空間内で前記2つの掻取ローラを保持するように構成されたハウジングと、
前記2つの掻取ローラの外周部に付着した塵埃を前記2つの掻取ローラの前記先端間の前記空隙に向けて移動させるとともに、前記2つの掻取ローラの前記先端に移動した塵埃を前記2つの掻取ローラの前記先端間の前記空隙に押し出すように形成された送出部と、を備え
、
前記2つの掻取ローラの前記先端間の前記空隙は、前記吸込具の前記幅方向における中央位置に形成されており、
前記送出部は、前記中央位置において、前記ハウジングの内面から前記吸込空間内に突出した突条部を含み、
前記突条部は、前記2つの掻取ローラの一方に付着した塵埃を前記一方の掻取ローラの回転に伴って前記一方の掻取ローラの先端に向けて移動させるように傾斜した姿勢で前記一方の掻取ローラの外周部に接触する接触部と、前記接触部から前記2つの掻取ローラの前記先端間の前記空隙に入り込むように延設された押出部と、を含んでおり、
前記ハウジングの前記内面からの前記接触部の突出量は、前記ハウジングの前記内面からの前記押出部の突出量よりも小さい、吸込具。
【請求項2】
前記送出部は、前記接触部の基端よりも更に基端側で前記一方の掻取ローラに付着した塵埃を捕捉するように前記ハウジングの前記内面から突出した他の突条部を含み、
前記他の突条部は、前記一方の掻取ローラの回転方向において前記接触部の上流側に塵埃を送り出すように構成されている、請求項
1に記載の吸込具。
【請求項3】
前記一方の掻取ローラは、前記先端に向けて細くなるテーパ形状を有し、
前記接触部の突出量は、他の突条部の突出量よりも大きくなっている、請求項
1又は2に記載の吸込具。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記吸込空間内で前記掻取ローラを保持するように構成された本体部と、前記吸込空間を上側から塞ぐように設けられているとともに前記本体部から取り外し可能に構成されたカバー部材と、を含み、
前記送出部は、前記カバー部材の内面に設けられている、請求項1に記載の吸込具。
【請求項5】
前記カバー部材を前記本体部に接続させるように構成された接続部を更に備え、
前記接続部は、前記カバー部材の下縁から突出した下爪部と、前記下爪部の上側において前記カバー部材上で所定の方向にスライド可能に構成されたスライド片と、を含み、
前記本体部には、前記下爪部がはめ込まれる係合穴部及び前記下爪部が前記係合穴部にはめ込まれた状態で前記スライド片が前記所定の方向に移動されると前記スライド片が挿入される挿入空間が形成され、
前記本体部は、前記下爪部が前記係合穴部にはめ込まれていない状態で前記カバー部材が前記吸込空間を塞ぐように前記本体部に設置されたときに、前記スライド片が前記挿入空間に挿入されないように構成されている、請求項
4に記載の吸込具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸引式の清掃機に取り付けられる吸込具に関する。
【背景技術】
【0002】
吸引式の清掃機に取り付けられる様々な吸込具が開発されている(特許文献1を参照)。特許文献1の吸込具は、床面上に塵埃を吸い込むように下方に開口した吸込空間が区画されたハウジングと、吸込空間内で回転駆動される掻取ローラとを備えている。
【0003】
ハウジングには、ハウジングの幅方向における略中心において吸込空間に向けて開口した流路が形成されている。この流路は、吸込空間に吸い込まれた塵埃を清掃機に流すために設けられている。
【0004】
掻取ローラは、吸込空間の下端の開口を通じて床面に接触するように吸込空間内で保持されている。掻取ローラは、吸込空間内においてハウジングの幅方向に延設され、ハウジングによって両持ち支持されている。
【0005】
掻取ローラの外周部に付着した塵埃の除去を促すために、特許文献1の吸込具は、ハウジングの内面に設けられた複数の突条部を有している。これらの突条部は、掻取ローラの外周部に付着した塵埃を、ハウジングの幅方向における中央位置に向けて移動させるように傾斜した姿勢でハウジングの内面から突出し、掻取ローラの外周部に接触している。
【0006】
掻取ローラが回転すると、掻取ローラの外周部に付着した塵埃は、突条部の傾斜に従ってハウジングの幅方向における中央位置に移動する。ハウジングの幅方向における中央位置では、上述の流路が開口しているので、中央位置に移動した塵埃は、比較的強い吸引力を受けて流路に吸い込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
長い塵埃(たとえば、毛髪)が掻取ローラに巻き付いている場合、巻き付いた塵埃を掻取ローラの軸方向に移動させ、強い吸引力を受ける位置に到達させたとしても、当該塵埃が掻取ローラから除去されないことがある。この場合、掻取ローラに巻き付いた塵埃が掻取ローラの長手方向における中央位置に溜まることになる。
【0009】
本発明は、塵埃が掻取ローラに付着した状態を解消することができる吸込具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の局面に係る吸込具は、塵埃を吸引する清掃機に取り付けられるように構成されている。吸込具は、塵埃を掻き取るようにそれぞれ回転可能に構成されているとともに先端間に空隙が形成されるように吸込具の幅方向において間隔を空けて配置された2つの掻取ローラと、下方に開口した吸込空間を区画しているとともに吸込空間内で2つの掻取ローラを保持するように構成されたハウジングと、2つの掻取ローラの外周部に付着した塵埃を2つの掻取ローラの先端間の空隙に向けて移動させるとともに、2つの掻取ローラの先端に移動した塵埃を2つの掻取ローラの先端間の空隙に押し出すように形成された送出部と、を備えている。2つの掻取ローラの先端間の空隙は、吸込具の幅方向における中央位置に形成されている。送出部は、中央位置において、ハウジングの内面から吸込空間内に突出した突条部を含んでいる。突条部は、2つの掻取ローラの一方に付着した塵埃を一方の掻取ローラの回転に伴って一方の掻取ローラの先端に向けて移動させるように傾斜した姿勢で一方の掻取ローラの外周部に接触する接触部と、接触部から2つの掻取ローラの先端間の空隙に入り込むように延設された押出部と、を含んでいる。ハウジングの内面からの接触部の突出量は、ハウジングの内面からの押出部の突出量よりも小さい。
【0011】
上記の構成によれば、2つの掻取ローラの外周部に付着した塵埃は、送出部により先端側に送り出される。これらの掻取ローラの先端に到達した塵埃は、送出部によってこれらの掻取ローラの先端間の空隙に押し出され、掻取ローラの外周部に付着した塵埃が除去される。
【0013】
一方の掻取ローラの外周部に付着した塵埃は、突条部の接触部により当該掻取ローラの先端に送り出される。その後、塵埃は、突条部の押出部により、2つの掻取ローラの先端間の空隙に押し出される。たとえば、塵埃の一部が掻取ローラの外周部に付着しており、塵埃の残りの部分が2つの掻取ローラの先端間の空隙にはみ出した状態にあるとき、空隙にはみ出した塵埃の部分は、突条部によって空隙内に押し込まれる。このとき、外周部に付着した塵埃の部分は、掻取ローラの先端側に引っ張られる。この結果、掻取ローラの外周部からの塵埃の除去が促進される。
【0015】
突条部の接触部の突出量は、比較的小さいので、突条部は、掻取ローラに過度に強く当たらない。すなわち、突条部は、掻取ローラの回転に対して過度に大きな抵抗を生じさせない。
【0016】
上記の構成に関して、前記送出部は、前記接触部の基端よりも更に基端側で前記一方の掻取ローラに付着した塵埃を捕捉するように前記ハウジングの前記内面から突出した他の突条部を含んでいてもよい。前記他の突条部は、前記一方の掻取ローラの回転方向において前記接触部の上流側に塵埃を送り出すように構成されていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、突条部の接触部の基端よりも更に基端側で掻取ローラの外周部に付着した塵埃は、まず、他の突条部によって捕捉される。この塵埃は、他の突条部によって掻取ローラの回転方向における接触部の上流側に送り出される。この塵埃が、掻取ローラの外周部に付着したまま掻取ローラの回転により掻取ローラの軸周りに周回すると、突条部の接触部に接触し、掻取ローラの先端側への移動が更に促される。
【0018】
上記の構成に関して、前記一方の掻取ローラは、前記先端に向けて細くなるテーパ形状を有していてもよい。前記接触部の突出量は、他の突条部の突出量よりも大きくなっていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、掻取ローラは、先端に向けて細くなるテーパ形状を有しているので、掻取ローラに巻き付いた塵埃の巻付力の分力は、掻取ローラの先端に向きやすい。したがって、掻取ローラの先端に向かう塵埃の移動は、送出部だけでなく掻取ローラのテーパ形状によっても促される。
【0020】
また、接触部の突出量は、他の突条部の突出量よりも大きくなっているので、掻取ローラがテーパ形状を有していても、掻取ローラに対する接触部の当たりは、過度に弱くならない。
【0021】
掻取ローラが先端側において細くなっている場合、掻取ローラの先端側における塵埃の巻付力は、掻取ローラの基端側における塵埃の巻付力よりも小さくなりやすい。この結果、掻取ローラの先端側における塵埃の巻付力の分力も小さくなり、掻取ローラのテーパ形状による塵埃の送出効果は小さくなる。この送出効果の低減は、接触部が掻取ローラの外周部に接触することによって補われる。
【0022】
上記の構成に関して、ハウジングは、吸込空間内で掻取ローラを保持するように構成された本体部と、吸込空間を上側から塞ぐように設けられているとともに本体部から取り外し可能に構成されたカバー部材とを含んでいてもよい。送出部は、カバー部材の内面に設けられていてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、カバー部材は、吸込空間を上側から塞ぎ、使用者が掻取ローラに意図せず接触することを防ぐ。カバー部材が本体部から取り外されると、使用者は、吸込空間内で保持された掻取ローラに上側からアクセスすることができる。したがって、掻取ローラの点検及びメンテナンスが容易になる。加えて、本体部から取り外されたカバー部材をひっくり返すことにより、使用者は、カバー部材の内面に設けられた送出部を視認することができ、送出部の点検が容易になる。
【0024】
上記の構成に関して、吸込具は、前記カバー部材を前記本体部に接続させるように構成された接続部を更に備えていてもよい。前記接続部は、前記カバー部材の下縁から突出した下爪部と、前記下爪部の上側において前記カバー部材上で所定の方向にスライド可能に構成されたスライド片とを含んでいてもよい。前記本体部には、前記下爪部がはめ込まれる係合穴部及び前記下爪部が前記係合穴部にはめ込まれた状態で前記スライド片が前記所定の方向に移動されると前記スライド片が挿入される挿入空間が形成されていてもよい。前記本体部は、前記下爪部が前記係合穴部にはめ込まれていない状態で前記カバー部材が前記吸込空間を塞ぐように前記本体部に設置されたときに、前記スライド片が前記挿入空間に挿入されないように構成されていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、カバー部材が本体部に取り付けられるとき、カバー部材の下縁から下方に突出した下爪部が係合穴にはめ込まれる。この状態で、使用者が、カバー部材に設けられたスライド片を所定の方向にスライドさせると、スライド片は、本体部の挿入空間に挿入される。この結果、カバー部材は、下爪部及びスライド片によって本体部に接続される。
【0026】
下爪部が係合穴部にはめ込まれていない状態でカバー部材が吸込空間を塞ぐように、使用者がカバー部材を本体部に設置しようとすることがある。この場合、使用者が、スライド片は挿入空間に挿入されない。したがって、使用者は、本体部に対するカバー部材の取付状態が正しくないことに気づきやすくなる。
【発明の効果】
【0027】
上述の吸込具は、塵埃が掻取ローラに付着した状態を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】清掃機に取付可能に構成された吸込具の概略的な展開斜視図である。
【
図5】吸込具のハウジングの本体部に取付可能に構成されたカバー部材のスライド片の概略的な平面図である。
【
図8】吸込具のカバー部材の概略的な底面図である。
【
図9】カバー部材の内面に設けられた送出部の概略図である。
【
図11】塵埃が掻取ローラに巻き付いたときに塵埃に作用する力を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、吸込具100が取り付けられた清掃機101の概略的な側面図である。
図2は、吸込具100の概略的な展開斜視図である。
図3は、吸込具100の内部構造を表す概略的な平面図である。
図4は、吸込具100の概略的な縦断面図である。
図1乃至
図4を参照して、清掃機101及び吸込具100が説明される。
【0030】
清掃機101は、吸引ファン(図示せず)や吸引ファンを駆動するモータ(図示せず)を内蔵する清掃本体部102と、清掃本体部102から吸込具100へ延設されたホース103と、ホース103に設けられた操作部104とを備えている。ホース103の先端部は、吸込具100に接続可能に構成されている。操作部104は、ユーザの操作を受けて、清掃本体部102及び吸込具100を作動させるように構成されている。清掃本体部102及び吸込具100から操作部104への電気的な配線は、ホース103に沿って行われている。
【0031】
吸込具100は、ホース103の内部空間よりも幅広の吸引領域を得るためにホース103の先端に取り付けられている。吸込具100は、床面上の塵埃を掻き取りながら吸い込むように構成されている。
【0032】
吸込具100は、床面上の塵埃を吸い込むように下方に開口した吸込空間110を区画しているハウジング120と、ハウジング120によって保持された回転シャフト320,321をそれぞれ含む掻取ローラ131,132とを有している。加えて、吸込具100は、これらの回転シャフト320,321にそれぞれ接続された駆動機構150を有している。
【0033】
ハウジング120は、吸込具100の幅方向に広い吸込空間110を得るために前後方向よりも幅方向に広い形状を有している。吸込空間110は、ハウジング120の前側に形成されている。
【0034】
ハウジング120は、
図2に示されるように、平面視において前方に開口した略C字形状を有している本体部121と、本体部121に対して着脱可能に構成されたカバー部材122とを含んでいる。加えて、ハウジング120は、カバー部材122を本体部121に取り付けるための上爪141~144、載置板145及び接続部292を含んでいる。
【0035】
本体部121は、吸込空間110を幅方向に挟むように互いに離間した位置に設けられた一対の側部123,124と、側部123,124及び吸込空間110の後側(すなわち、清掃本体部102側)に設けられた後部125とを含んでいる。側部123,124及び後部125は、中空構造を有している。側部123,124及び後部125の内部空間は、駆動機構150を本体部121内に収容するために利用される。
【0036】
後部125は、上壁部191と、後壁部192と、前壁部240(
図4を参照)と、ホース103と吸込具100との接続に用いられる接続凹部193とを有している。
【0037】
上壁部191は、後部125の内部空間を上側から塞ぐように略水平な姿勢で設けられている。上壁部191は、上下方向に所定の厚さを有し、前縁面198(
図2を参照)を形成している。
【0038】
後壁部192は、後部125の内部空間を後側から塞ぐように構成されている。詳細には、後壁部192は、前縁面198とは反対側で立設した姿勢で上壁部191に接続され、上壁部191と角隅部を形成している。
【0039】
接続凹部193は、ハウジング120の幅方向における略中央位置において、後壁部192と上壁部191とによって形成された角隅部に対して前方及び下方に凹没するように形成されている。接続凹部193は、吸込具100とホース103との接続に用いられる。
【0040】
接続凹部193は、吸込具100の幅方向において互いに離間した一対の側壁部194,195と、これらの側壁部194,195の下端間に設けられた下壁部196とを含んでいる。下壁部196には、開口部197(
図3を参照)が形成されている。開口部197から延設され吸込空間110に繋がる流路241(
図4を参照)が、後部125内において形成されている(図示せず)。開口部197は、ホース103の内部空間に繋がる部分である。
【0041】
前壁部240(
図4を参照)は、上壁部191の前縁面198よりも後側で、吸込空間110から後部125の内部空間を仕切るように立設されている。言い換えると、前壁部240は、吸込空間110の後端を形成している。前壁部240(吸込具100の幅方向における略中央位置)上で、上述の流路241が開口している。
【0042】
側部123は、後部125の左端部分から前方に突出するように設けられている。側部123は、吸込空間110に対して左側に位置している部分である。側部123は、側部123の内部空間を上側から塞ぐように構成された湾曲壁部181と、側部123の内部空間を前側から塞ぐように構成された前壁部182と、側部123の内部空間を吸込空間110側から塞ぐように構成された内側壁部172とを有している。
【0043】
湾曲壁部181は、前縁面198の左端部分において前縁面198の下縁と一体化され、前縁面198との接続部分から前方且つ下方に湾曲しながら延設されている。湾曲壁部181は、カバー部材122が載置される部分である。
【0044】
前壁部182は、湾曲壁部181の下側において立設した姿勢で設けられている。前壁部182は、前後方向に所定の厚さを有しており、湾曲壁部181の下端から前方に突出した上端面183を有している。前壁部182の上端面183は、カバー部材122の下端を支持するために用いられている。前壁部182の上端面183には、上方に開口した係合穴部184が形成されている。係合穴部184は、本体部121にカバー部材122の下部を固定するために利用される。
【0045】
内側壁部172は、吸込空間110の左端を区画するように、吸込空間110の左側で立設した姿勢で設けられている。内側壁部172は、吸込具100の幅方向において所定の厚さを有している。内側壁部の外周面185の上部は、湾曲壁部181に対して右側に隣接し、前壁部182と同様の湾曲形状を有している。外周面185の下部は、前壁部182に対して右側に隣接し、前壁部182と同様に立設した姿勢をとっている。
【0046】
内側壁部172には、貫通孔及び凹部が設けられている。内側壁部172の貫通孔には、掻取ローラ131の回転シャフト320が挿通されている。内側壁部172の凹部には、回転シャフト320用の軸受380が吸込空間110側からはめ込まれている。内側壁部172の貫通孔及び凹部は、回転シャフト320の先端(吸込空間110側の端部)が回転シャフト320の基端よりも前方且つ下方に位置する傾斜姿勢を回転シャフト320がとるように形成されている。
【0047】
右側の側部124は、左側の側部123に対して左右対称的な構造を有している。側部123の説明は、これらの側部123,124の対称性を考慮して、側部124に援用される。
【0048】
上爪141~144及び載置板145(
図2を参照)は、上壁部191の前縁面198から前方に突出している。
【0049】
載置板145は、吸込空間110の上側で、前縁面198から突出している略三角形状の板部分である。載置板145は、吸込具100の幅方向において吸込空間110と略等しい長さを有している。載置板145は、内側壁部172の外周面185の上端部分と略等しい高さ位置に設けられている。載置板145の左端は、左側の内側壁部172に対して右側に離間した位置にあり、載置板145の左端と左側の内側壁部172との間に空隙が形成されている。載置板145の右端は、右側の内側壁部172に対して左側に離間した位置にあり、載置板145の右端と右側の内側壁部172との間に空隙が形成されている。
【0050】
上爪141は、載置板145の左端と内側壁部172の外周面185の上端との間の空隙の上側で、前縁面198から前方に突出している。上爪141は、内側壁部172の外周面185の上端及び載置板145の上面よりも高い位置にあり、上爪141と内側壁部172の外周面185の上端及び載置板145の上面との間には、挿入空間291が形成されている。挿入空間291は、本体部121にカバー部材122を取り付けるために利用される。
【0051】
上爪143は、上爪141から左側に離間した位置で前縁面198から前方に突出している。前縁面198からの上爪143の突出量は、前縁面198からの上爪141の突出量よりも小さくなっている。
【0052】
上爪142,144は、上爪141,143に対してそれぞれ左右対称的なレイアウトの下で前縁面198から突出している。上爪141,143の説明は、対称性を考慮して、上爪142,144に援用される。
【0053】
カバー部材122は、吸込空間110を上側から塞ぐように構成されている。カバー部材122は、主板部211と、一対の固定フラップ部212,213とを有している。
【0054】
主板部211は、カバー部材122が本体部121に取り付けられたときに載置板145に載せられる部分である。主板部211は、吸込空間110の前側及び上側を塞ぐように構成され、吸込具100の幅方向において吸込空間110と略等しい長さを有している。主板部211は、側部123の上部と略等しい曲率で前方且つ下方に湾曲した上板部221と、上板部221の下端縁から下方に突出し、吸込空間110の前側を塞ぐ下板部222とを含んでいる。上板部221は、カバー部材122が本体部121に取り付けられたときに左右の上爪141,142を上側から覆う。
【0055】
固定フラップ部212は、上板部221の左縁から左方に突出している。固定フラップ部212は、カバー部材122が本体部121に取り付けられたときに左側の側部123上に載置されるように構成されている。すなわち、固定フラップ部212は、内側壁部172の外周面185及び前壁部171の湾曲壁部181の湾曲形状に沿うような湾曲形状を有している。
【0056】
固定フラップ部212の上端には、吸込具100の幅方向に延びる溝部223が形成されている。溝部223は、上爪143が溝部223内においてスライド片216の下部と係合することを許容するように形成されている。すなわち、溝部223は、上爪143が溝部223において前方に突出できるように形成されている。また、溝部223は、溝部223の右端において上爪141の下側の挿入空間291に繋がるような深さを有している。
【0057】
固定フラップ部213は、主板部211に対して固定フラップ部212と左右対称的な構造を有している。固定フラップ部212の説明は、対称性を考慮して、固定フラップ部213に援用される。
【0058】
接続部292は、カバー部材122に設けられている。詳細には、接続部292は、固定フラップ部212,213の溝部223にそれぞれ配置されたスライド片216,217と、固定フラップ部212,213の下縁から下方にそれぞれ突出した下爪部214,215とを含んでいる。
【0059】
スライド片216は、溝部223に沿って吸込具100の幅方向に移動可能に構成されている。
図2において、スライド片216は、固定フラップ部212の左端縁から左側にはみ出した位置にあり、
図2に示されている位置から右方に移動可能である。スライド片216の概略的な平面図が
図5に示されている。スライド片216の概略的な背面図が
図6に示されている。スライド片216の概略的な底面図が
図7に示されている。
図2、
図5乃至
図7を参照して、カバー部材122が更に説明される。
【0060】
スライド片216は、ユーザによって操作される略矩形板状の操作片231と、操作片231の右端から右方に突出した突出片232と、操作片231の下面に設けられた係合部233とを含んでいる。
【0061】
突出片232は、ユーザが操作片231を操作しスライド片216を右方に移動させたときに、溝部223の右端に形成された開口を通じて上爪141の下側の挿入空間291に入り込むように構成されている(
図5において、上爪141は、点線で示されている)。このとき、上爪141は、カバー部材122の主板部211と突出片232との間に位置している。
図5に示されるように、スライド片216が右方に移動されたときにおいて、上爪141は、突出片232を越えて前方に突出した状態になる。
【0062】
係合部233は、ユーザが操作片231を操作しスライド片216を右方に移動させたときに上爪143とかみ合う位置に形成されている。詳細には、係合部233は、操作片231の下面から下方に離間した位置に設けられた下板部235と、下板部235と上爪143とを繋ぐ接続板部236とを有している。ユーザが操作片231を操作しスライド片216を右方に移動させたときに、下板部235と操作片231の下面との間に形成された空間に上爪143が入り込む。
【0063】
下爪部214は、固定フラップ部212の下縁から下方に突出している。下爪部214は、カバー部材122が本体部121に取り付けられたときに左側の側部123の係合穴部184にはめ込まれる。
【0064】
下爪部215及びスライド片217は、下爪部214及びスライド片216と左右対称的な構造を有している。下爪部214及びスライド片216の説明は、対称性を考慮して、下爪部215及びスライド片217に援用される。
【0065】
駆動機構150は、一対のモータ151,152と一対の駆動ベルト153,154とを有している(
図3を参照)。モータ151,152及び駆動ベルト153,154は、本体部121の内部空間に配置されている。
【0066】
モータ151は、本体部155と、本体部155から左方に突出したモータシャフト156とを有している。モータ151は、接続凹部193に対して左側で後部125の内部空間に配置されている。モータ151は、モータシャフト156が掻取ローラ131の回転シャフト320に略平行となるように固定されている。モータシャフト156には、プーリ157が取り付けられている。また、回転シャフト320の基端部分には、プーリ340が取り付けられている。
【0067】
駆動ベルト153は、後部125の内部空間から側部123の内部空間に延設され、プーリ157,340に掛け回されている。
【0068】
モータ152及び駆動ベルト154は、接続凹部193に対して右側の内部空間に配置されている。右側のモータ152及び駆動ベルト154は、左側のモータ151及び駆動ベルト153に対して左右対称的な構造を有している。左側のモータ151及び駆動ベルト153の説明は、対称性を考慮して、右側のモータ152及び駆動ベルト154に援用される。
【0069】
掻取ローラ131は、上述の回転シャフト320に加えて、回転シャフト320の先端部分に接続された中空のテーパ筒部311と、テーパ筒部311の外周面に設けられた複数のブラシ部312とを有している。
【0070】
テーパ筒部311は、吸込空間110内で延設された筒状の部分である。詳細には、テーパ筒部311は、内側壁部172に対して右側に隣接した基端から幅方向における吸込空間110の中央位置に向けて延設されている。テーパ筒部311の先端は、吸込空間110の中央位置に対して左側に位置している。
【0071】
テーパ筒部311は、基端から先端に向けて徐々に細くなるテーパ形状を有している。テーパ筒部311の基端は、内側壁部172に向けて開口しており、回転シャフト320の先端部分は、基端の開口を通じてテーパ筒部311の内部に挿入されている。テーパ筒部311は、テーパ筒部311が回転シャフト320と同軸回転するように回転シャフト320と接続される内部構造(たとえば、スプライン結合)を有している。テーパ筒部311は、回転シャフト320と接続されることにより、回転シャフト320を介してハウジング120に保持される。
【0072】
テーパ筒部311は、回転シャフト320と同様の傾斜姿勢をとっている。すなわち、テーパ筒部311は、テーパ筒部311の先端の回転中心がテーパ筒部311の基端の回転中心に対して前方且つ下方に位置するような傾斜姿勢をとっている。
【0073】
ブラシ部312は、掻取ローラ131が
図2の矢印の方向に回転されたときに、床面に対して後方に擦れる線状の部材である。これらのブラシ部312は、床面と擦れたときに床面を傷つけない程度に軟質の部材から構成されている。
【0074】
ブラシ部312は、テーパ筒部311の外周面上でテーパ筒部311の基端から先端に向けて延設されており、テーパ筒部311の外周面から突出している。テーパ筒部311の外周面からのブラシ部312の突出量は、ブラシ部312の全長に亘って略一定である。ブラシ部312は、螺旋状に捩じれた姿勢でテーパ筒部311の外周面に固定されている。ブラシ部312は、テーパ筒部311の外周面とともに掻取ローラ131の外周部を構成している。
【0075】
掻取ローラ132は、掻取ローラ131と左右対称的な構造を有している。掻取ローラ131の説明は、対称性を考慮して、掻取ローラ132に援用される。
【0076】
掻取ローラ131の先端は、幅方向における吸込空間110の中央位置に対して左側に位置しているのに対して、掻取ローラ132の先端は、幅方向における吸込空間110の中央位置に対して右側に位置している。したがって、掻取ローラ131,132の先端間には空隙が形成されている。この空隙の後側で、ハウジング120の後部125に形成された流路241が開口している(
図4を参照)。
【0077】
掻取ローラ131,132の外周部に付着した塵埃を、これらの掻取ローラ131,132の先端間の空隙に向けて送り出す送出部250(
図8を参照)が、カバー部材122の内面(吸込空間110に臨む面)に設けられている。
図8は、カバー部材122の概略的な底面図である。
図9は、送出部250と掻取ローラ132との間の概略的な位置関係を表す概略的な平面図である。
図10は、
図9に示されるX-X線に沿うカバー部材122の概略的な断面図である。
図8乃至
図10を参照して、送出部250が説明される。
【0078】
送出部250は、吸込具100の幅方向において互いに間隔を空けてカバー部材122の内面から突出した複数の突条部251~255を有している。突条部251は、掻取ローラ131,132の先端間の空隙に対応する位置においてカバー部材122の内面から突出している。突条部252は、突条部251から左方に間隔を空けた位置でカバー部材122の内面から突出している。突条部253は、突条部252から左方に間隔を空けた位置でカバー部材122の内面から突出している。突条部254,255は、突条部251に対して突条部252,253と左右対称の位置でカバー部材122の内面から突出している。
【0079】
突条部251は、平面視において略Y字形状を有している。詳細には、突条部251は、一対の傾斜部261,262と、これらの傾斜部261,262から連続的に延設された中央部263とを含んでいる。中央部263は、掻取ローラ131,132の先端間の空隙に対応する位置(すなわち、幅方向におけるカバー部材122の略中央位置)に配置されている。
【0080】
傾斜部261は、平面視においてテーパ筒部311の外周面が前方に移動するように掻取ローラ131が回転したときに、掻取ローラ131の外周部に付着した塵埃を中央部263に送り出すような傾斜姿勢で延設されている。詳細には、傾斜部261は、掻取ローラ131の外周部の上側にある基端(後端)から前方に傾斜しながら中央部263に向けて延設されている。傾斜部261は、掻取ローラ131の外周部に上下方向に重なっている接触部264と、掻取ローラ131の外周部に上下方向に重ならない位置において接触部264から斜め前方に延出された延出部265とを含んでいる。
【0081】
接触部264の下縁は、接触部264がブラシ部312に略一定の量だけ食い込むように湾曲した形状を有している(
図10を参照)。ブラシ部312に対する接触部264の食込量は、掻取ローラ131の外周部に付着した塵埃を捕捉するのに十分であって、掻取ローラ131に対して過度に大きな抵抗を生じさせない大きさに設定されている。接触部264は、ブラシ部312に接触しながらブラシ部312に付着した塵埃を掻取ローラ131の先端側に移動させるために設けられている。
【0082】
接触部264がブラシ部312に接触するのに対して、延出部265は、掻取ローラ131,132の先端間の空隙に対応する位置にあり、これらの掻取ローラ131,132の外周部には接触していない。延出部265の前端は、中央部263と接続されている。カバー部材122の内面からの延出部265の突出量は、中央部263との接続部分(すなわち、延出部265の前端)に向けて徐々に大きくなっている。
【0083】
中央部263は、傾斜部261に対して屈曲し前方に延出されている。中央部263は、カバー部材122の内面から掻取ローラ131,132の中心軸に向けて突出し、掻取ローラ131,132の先端間の空隙に入り込んでいる。カバー部材122の内面からの中央部263の突出量は、カバー部材122の内面からの接触部264の突出量よりも大きくなっている。中央部263及び延出部265は、塵埃を掻取ローラ131,132の先端間の空隙に押し出す押出部266を構成している。
【0084】
傾斜部262は、掻取ローラ132の外周部に付着した塵埃を掻取ローラ131,132の先端間の空隙に送り出すように、中央部263に対して傾斜部261と左右対称に設けられている。傾斜部261の説明は、対称性を考慮して傾斜部262に援用される。
【0085】
突条部252は、接触部264と略平行な姿勢で延設されている。突条部252は、突条部252の先端(前端)から所定の区間に亘って、掻取ローラ131の回転方向(
図9に示されている矢印の方向)において接触部264の上流側に位置している。掻取ローラ131の回転方向において接触部264と重なる突条部252の部分は、以下の説明において「重畳部271」と称される。重畳部271は、接触部264に塵埃を受け渡すために設けられている。
【0086】
残りの部分は、掻取ローラ131の軸方向において、接触部264の基端(後端)よりも掻取ローラ131の基端側に位置し、掻取ローラ131の回転方向において接触部264と重なっていない。この部分は、以下の説明において「捕捉部272」と称される。捕捉部272は、接触部264の基端よりも掻取ローラ131の基端側で付着した塵埃を捕捉するために設けられている。
【0087】
突条部252の下縁は、突条部252がブラシ部312に対して略一定の量だけ食い込むように湾曲した形状を有している。カバー部材122の内面からの突条部252の突出量は、ブラシ部312に対する接触部264の食込量に略等しい食込量が得られるように、突条部252及び接触部264の接触部分における掻取ローラ131の太さの相違を考慮して設定されている。詳細には、掻取ローラ131は、突条部252との接触部分において接触部264との接触部分よりも太くなっている。したがって、突条部252の突出量は、接触部264の食込量と略等しい食込量を得るために、接触部264の突出量よりも小さくなっている。
【0088】
突条部253は、突条部252と略平行な姿勢で延設されている。突条部253は、突条部253の先端(前端)から所定の区間に亘って、掻取ローラ131の回転方向において突条部252の上流側に位置している。掻取ローラ131の回転方向において突条部252と重なる突条部252の部分は、以下の説明において「重畳部273」と称される。重畳部273は、突条部252に塵埃を受け渡すために設けられている。
【0089】
残りの部分は、掻取ローラ131の軸方向において、突条部252の基端(後端)よりも掻取ローラ131の基端側に位置し、掻取ローラ131の回転方向において突条部252と重なっていない。この部分は、以下の説明において「捕捉部274」と称される。捕捉部274は、突条部252の基端よりも掻取ローラ131の基端側で付着した塵埃を捕捉するために設けられている。
【0090】
突条部253の下縁は、突条部252の下縁と同様に、突条部252がブラシ部312に対して略一定の量だけ食い込むように湾曲した形状を有している。また、突条部253がブラシ部312に対する突条部252の食込量に略等しい食込量でブラシ部312に食い込むように、カバー部材122の内面からの突条部253の突出量は、突条部252の突出量よりも小さくなっている。
【0091】
吸込具100及び清掃機101の動作が以下に説明される。
【0092】
操作部104が操作されると、清掃機101が作動し、吸引力がホース103及び吸込具100の後部125に形成された流路241を通じて吸込空間110に作用する。この結果、床面上の塵埃が吸込空間110の下向きの開口を通じて、吸込空間110に流入する。その後、塵埃は、流路241及びホース103を通じて清掃機101内に集塵される。
【0093】
この間、吸込具100に内蔵されたモータ151が作動し、モータ151の駆動力は、駆動ベルト153を通じて回転シャフト320に伝達される。回転シャフト320の先端部分は、テーパ筒部311の内部でテーパ筒部311に連結されているので、掻取ローラ131は、回転シャフト320とともに回転する。
【0094】
このとき、テーパ筒部311の外周面から突出したブラシ部312は、床面に接触しながら床面上の塵埃を掻き取り後方に送り出す。掻取ローラ131の後方において流路241が形成されているので、掻取ローラ131の後側では、比較的強い吸引力が作用している。したがって、ブラシ部312によって後方に送り出された塵埃は、比較的強い吸引作用を受け、清掃機101内に吸い込まれる。
【0095】
掻取ローラ131が床面上の塵埃を掻き取っているとき、長い塵埃が掻取ローラ131に巻き付くことがある(
図11を参照)。掻取ローラ131は、先端に向けて細くなるテーパ形状を有しているので、長い塵埃の巻き付き力の分力は、掻取ローラ131の先端側に向きやすい。したがって、掻取ローラ131に巻き付いた長い塵埃を掻取ローラ131の先端に向けて移動させることができる。
【0096】
掻取ローラ131は、先端に向けて細くなっているので、長い塵埃の巻き付き力は、掻取ローラ131の基端側よりも掻取ローラ131の先端側において小さくなりやすい。したがって、掻取ローラ131に巻き付いた塵埃を掻取ローラ131の先端側に移動させる分力は、塵埃が掻取ローラ131の先端に近づくにつれて小さくなりやすい。掻取ローラ131のテーパ形状による先端側への塵埃の移動効果は、掻取ローラ131の先端の近くにおいて小さくなるけれども、この移動効果は、送出部250によって補われる。送出部250による塵埃の移動効果が以下に説明される。
【0097】
図9に示される点P1の位置に塵埃が付着している場合、この塵埃は、掻取ローラ131が回転すると、送出部250の中で掻取ローラ131の最も基端側に位置する突条部253の基端(後端)側の部分(すなわち、捕捉部274)で捕捉される。この塵埃は、掻取ローラ131の回転に伴って、突条部253の傾斜に従って斜め前方に移動し、突条部253の先端(前端)(
図9において、点P2の位置)に到達する。
図9の点P2の位置は、掻取ローラ131の回転方向において突条部252の上流側である。
【0098】
突条部253の先端(前端)は、突条部253に対して掻取ローラ131の先端側に設けられた突条部252と掻取ローラ131の回転方向において重なる重畳部273である。したがって、塵埃が掻取ローラ131の外周部に付着した状態で掻取ローラ131が更に回転すると、塵埃は、掻取ローラ131の回転方向において突条部252に接触する位置(
図9において、点P3の位置)に移動する。掻取ローラ131が更に回転すると、塵埃は、突条部252の傾斜に従って、突条部252の先端(前端)(
図9において、点P4の位置)に到達する。
図9の点P4の位置は、掻取ローラ131の回転方向において接触部264の上流側である。
【0099】
突条部252の先端(前端)は、突条部252に対して掻取ローラ131の先端側に設けられた接触部264と掻取ローラ131の回転方向において重なる重畳部271である。したがって、塵埃が掻取ローラ131の外周部に付着した状態で掻取ローラ131が更に回転すると、塵埃は、掻取ローラ131の回転方向において接触部264に接触する位置(
図9において、点P5の位置)に移動する。
【0100】
掻取ローラ131が更に回転すると、塵埃は、接触部264の傾斜に従って、掻取ローラ131,132の先端間の空隙に向けて移動する。押出部266(延出部265及び中央部263)は、送出部250の他の部分よりも大きな突出量で掻取ローラ131,132の間の空隙に入り込んでいる。したがって、塵埃は、押出部266によって掻取ローラ131,132の先端間の空隙内に押し出される。
【0101】
押出部266によって掻取ローラ131,132の先端間の空隙の後側には流路241が開口している。したがって、押出部266によって掻取ローラ131,132の先端間の空隙内に押し出された塵埃は、流路241からの吸引力を受け、流路241及びホース103を通じて清掃機101に集塵される。
【0102】
掻取ローラ131の先端の近くでは、上述の如く、掻取ローラ131のテーパ形状による塵埃の移動能力は、掻取ローラ131の基端側よりも弱くなっている。この場合、塵埃が掻取ローラ131の先端の近くに溜まり、掻取ローラ131の近くで塵埃の塊が形成されることが想定される。たとえば、塵埃の塊の一部が掻取ローラ131の外周部に付着し、残りの部分が掻取ローラ131,132の間の空隙にはみ出した状態になることが考えられる。
【0103】
塵埃の塊が、上述の如く掻取ローラ131に付着している場合、掻取ローラ131,132の間の空隙にはみ出した部分が、押出部266によって掻取ローラ131,132の間の空隙内に押し出される。このとき、掻取ローラ131の外周部に付着した塵埃の塊の部分は、掻取ローラ131の先端側に引っ張られる。したがって、掻取ローラ131の先端側への塵埃の移動が、送出部250によって補われる。
【0104】
接触部264及び突条部252,253の突出量は、掻取ローラ131のテーパ形状に合わせて設定され、ブラシ部312に対する接触部264及び突条部252,253の食込量は、互いに略等しくなっている。この食込量は、掻取ローラ131の回転に対して過度に大きな抵抗を与えないように設定されているので、掻取ローラ131を駆動するモータ151に対して、過度に大きな負荷が加わらない。
【0105】
送出部250の点検に関して、カバー部材122は、本体部121から取り外し可能に構成されているので、ユーザがカバー部材122を本体部121から取り外し上下反転することにより、送出部250を容易に点検することができる。このとき、吸込空間110は、上方に開口した状態になるので、ユーザは、吸込空間110の上側から掻取ローラ131,132にアクセスし、掻取ローラ131,132を点検及びメンテナンスすることができる。
【0106】
ユーザがカバー部材122の下爪部214,215を側部123,124の係合穴部184にそれぞれ挿入することにより、カバー部材122の下部は、本体部121に固定される。その後、ユーザがスライド片216,217を
図2に示されている位置から幅方向におけるカバー部材122の中央位置に向けてスライドさせると、カバー部材122の上部も、本体部121に固定される。
【0107】
すなわち、スライド片216,217がカバー部材122の中央位置に向けてスライドされると、スライド片216,217の係合部233は、ハウジング120の上壁部191の前縁面198から前方に突出した上爪143,144と係合する。このとき、スライド片216の突出片232は、固定フラップ部212の溝部223の右端から突出し、上爪141の下側の挿入空間291に入り込む。同様に、スライド片217の突出片232は、固定フラップ部212の溝部223の左端から突出し、上爪142の下側の挿入空間291に入り込む。
【0108】
上述の如く、ユーザがカバー部材122の下爪部214,215を側部123,124の係合穴部184にそれぞれ挿入すれば、カバー部材122は、本体部121に適切に固定される。しかしながら、下爪部214,215が側部123,124の係合穴部184の前側にずれた状態で、カバー部材122が吸込空間110を上側から塞ぐようにユーザがカバー部材122を本体部121上に設置してしまうことが考えられる。
【0109】
下爪部214,215が係合穴部184にそれぞれ挿入された状態であるときの左側の溝部223の右端周囲におけるカバー部材122の概略的な断面図が、
図12に示されている。下爪部214,215が側部123,124の係合穴部184の前側にずれた状態で、カバー部材122が本体部121上に設置されたときの左側の溝部223の右端周囲におけるカバー部材122の概略的な断面図が、
図13に示されている。
図12及び
図13において、スライド片216の突出片232は、
図2に示される位置にある。
【0110】
下爪部214,215が係合穴部184にそれぞれ挿入された状態であるとき、突出片232全体は、上爪141の下側にあり、スライド片216の移動方向において挿入空間291に重なっている。すなわち、突出片232及び上爪141は、スライド片216の移動方向において重なっていない。
【0111】
一方、下爪部214,215が側部123,124の係合穴部184の前側にずれた状態(下爪部214,215が係合穴部184にはめ込まれていない状態)であるとき、カバー部材122は、
図12に示される位置よりも前側にずれた位置で設置される。また、下爪部214,215が係合穴部184に下方に差し込まれていないので、カバー部材122は、
図12に示される位置よりも浮き上がった位置で設置される。カバー部材122の位置が、
図12に示されるカバー部材122の位置に対して前側且つ上側にずれるので、スライド片216の突出片232も、
図12に示される突出片232の位置に対して前側且つ上側にずれる。
【0112】
前側且つ上側にずれた突出片232に対してスライド片216の移動方向に重なるように、上爪141が構成されている。すなわち、上爪141の先端は、
図5に示されるように、突出片232に対して前側に位置している。したがって、突出片232が前方にずれた位置にあっても、
図13に示されるように、上爪141は、上側にずれた位置にある突出片232とスライド片216の移動方向において部分的に重なる。
図13に示されている状態で、ユーザがスライド片216を右方に移動させると、突出片232の先端は、上爪141の左側面に突き当たり、スライド片216の移動が阻止される。この結果、ユーザは、カバー部材122が本体部121に正しく設置されていないことに気づきやすくなる。
【0113】
上述の実施形態に関して、掻取ローラ131,132の先端間の空隙に対応する位置に配置された突条部251は、掻取ローラ131,132の両方から塵埃を除去するように構成されている。代替的に、
図14に示されるように、掻取ローラ131,132の先端間の空隙に対応する位置に2つの突条部256,257が設けられてもよい。
図14において、突条部256は、掻取ローラ131の先端の塵埃を除去するように構成され、突条部257は、掻取ローラ132の先端の塵埃を除去するように構成されている。
【0114】
上述の実施形態に関して、送出部250は、カバー部材122の内面に設けられている。代替的に、送出部250は、ハウジング120の後部125の前壁部240(流路241が開口された部分の上側又は下側の部分)に設けられていてもよい。
【0115】
上述の実施形態に関して、ハウジング120は、本体部121と本体部121から取り外し可能なカバー部材122とを有している。代替的に、ハウジング120は、カバー部材122に対応する部分を本体部121の一部として有し、カバー部材122に対応する部分が他の部分から分離不能な構造であってもよい。この場合、ハウジング120は、構造的に簡素化される。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本実施形態の原理は、清掃作業に用いられる装置に好適に利用される。
【符号の説明】
【0117】
100・・・・・・・・・・吸込具
101・・・・・・・・・・清掃機
110・・・・・・・・・・吸込空間
120・・・・・・・・・・ハウジング
121・・・・・・・・・・本体部
122・・・・・・・・・・カバー部材
131,132・・・・・・掻取ローラ
214,215・・・・・・下爪部
216,217・・・・・・スライド片
250・・・・・・・・・・送出部
251・・・・・・・・・・突条部
264・・・・・・・・・・接触部
266・・・・・・・・・・押出部
291・・・・・・・・・・挿入空間
292・・・・・・・・・・接続部