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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】接地電極の埋設用工具および埋設方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/66 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
H01R4/66 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020164807
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056843
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014649
【氏名又は名称】日本地工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 明弘
(72)【発明者】
【氏名】小松 元
(72)【発明者】
【氏名】菅原 実
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 達朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 升
(72)【発明者】
【氏名】加藤 安莉沙
(72)【発明者】
【氏名】藤原 敦
(72)【発明者】
【氏名】志村 孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 功一
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-022434(JP,Y1)
【文献】特開平01-109669(JP,A)
【文献】特開平10-284151(JP,A)
【文献】実開平06-054220(JP,U)
【文献】特開2005-293985(JP,A)
【文献】特開平05-266961(JP,A)
【文献】実開平05-051573(JP,U)
【文献】実開平06-026186(JP,U)
【文献】特開2000-164312(JP,A)
【文献】米国特許第5337836(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0058559(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/58- 4/72
H01R 43/00-43/02
E02D 7/00-13/10
E04H 5/00- 5/12
E04H 7/00- 7/32
E04H 12/00-14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気設備に対し所望の接地抵抗を確保するための導電材からなる接地電極を地中に埋設するための埋設用工具であって、
先端に尖頭部を有する打込みロッドと、
前記打込みロッドの外径よりも大きな内径を有し、前記尖頭部が貫通可能な孔を有し円錐形をなす先端追従管を先端に備えた外管と、からなり、
前記打込みロッドと前記外管には、前記打込みロッドの軸方向先端側へ向かう力を前記外管へ伝える打込み力伝達部が設けられていることを特徴とする接地電極の埋設用工具。
【請求項2】
前記尖頭部は、大径部と小径部とを有し前記大径部と小径部との境界に第1テーパ部が形成され、
前記先端追従管の内周には前記第1テーパ部と同一傾斜を有する第2テーパ部が形成され、前記第1テーパ部と前記第2テーパ部とにより、前記打込みロッドの軸方向先端側へ向かう力を前記外管へ伝える前記打込み力伝達部が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の接地電極の埋設用工具。
【請求項3】
前記打込みロッドと前記外管は、それぞれ端部に他の同種部材を連結するための連結構造が設けられた継ぎ足し用ロッドと継ぎ足し管を備えており、
前記継ぎ足し用ロッドの連結位置と前記継ぎ足し管の連結位置は、互いに軸方向にずれるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の接地電極の埋設用工具。
【請求項4】
請求項3に記載の接地電極の埋設用工具を用いて接地電極を地中に埋設するための埋設方法であって、
先端に尖頭部を有する前記打込みロッドが前記先端追従管を先端に備えた前記外管に挿入された状態で、前記打込みロッドの後端を打ち込んで地中に進入させる第1工程と、
前記外管の後端が打ち込み地点の地表面よりも低くなる前に、前記打込みロッドの後端に継ぎ足し用ロッドを連結し、前記外管の後端に継ぎ足し管を連結する第2工程と、
を含み、前記第1工程と前記第2工程とを繰り返して、前記尖頭部が所定深さに達した後に、
連結状態の前記打込みロッドを引き抜く第3工程と、
前記外管の内側への接地棒の挿入と接地抵抗低減剤の注入を実施する第4工程と、
前記連結状態の外管を引き抜く第5工程と、
を有することを特徴とする接地電極の埋設方法。
【請求項5】
前記第3工程の途中においては、地上に露出した前記継ぎ足し用ロッドを外しながら引き抜きを行い、
前記第5工程の途中においては、地上に露出した前記継ぎ足し管を外しながら引き抜きを行うことを特徴とする請求項4に記載の接地電極の埋設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な接地電極の埋設用工具およびそれを用いた埋設方法に関し、例えば屋外の電気設備に対し所望の接地抵抗を確保して接地電極の施工を行う場合に適用して有効な接地電極の埋設用工具および埋設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道沿線の機器室や電車線等鉄道の電気設備の接地は、直接地盤に接地棒を打ち込んで接地電極とするのが一般的であった。しかしながら、鉄道沿線は用地が狭隘な箇所が多く存在するため、そのような箇所で接地電極の埋設を行う場合、電気抵抗を下げるために接地電極を地中深くまで打ち込まなくてはならない。そこで、接地電極の先端に尖頭部を設けて地中に打ち込み、途中で接地電極をネジ式の継手によって継ぎ足すことによって、所望の長さ以上の接地電極とすることができるようにした技術がある。このような技術については、例えば特許文献1に記載されている。
また、電気抵抗を下げるとともに地面に対して容易に接地電極を埋設できるようにするため、ドリル式の接地電極を使用するようにした発明も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-195580号公報
【文献】特開2016-219340号公報
【文献】特開2005-293985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている継ぎ足し方式と特許文献2に記載されているドリル式とを組み合わせることで、充分に地中深くまで接地電極を埋設できるようにすることが考えられる。しかし、ドリル式の接地電極の場合、地中に小石等があると充分な接地抵抗が得られないことがある。また、ドリル式の接地電極は製作コストが高いという課題がある。
一方、接地電極の接地抵抗を減らすため、接地電極の周囲に抵抗低減剤を充填する技術が実施されている。しかし、接地電極を埋設する地中に柔らかい箇所があると周囲の土壌が崩壊して抵抗低減剤を充填することが困難になり、思うような接地抵抗低減効果が得られないという課題がある。
【0005】
そこで、先端に尖頭部を有する接地用の電極を収容する中空部を有する外管を用いて電極を打ち込むことで、土壌の崩壊を防止しつつ電極を打ち込み外管の内側へ抵抗低減剤を充填することで接地抵抗を減らすことができるようにした治具に関する発明も提案されている(例えば特許文献3)。
しかしながら、特許文献1や3に記載されている発明にあっては、接地電極の先端の尖頭部が地中に残存することとなり、更に、市販品でない強力な打ち込み力に堪えうる専用の接地極が必要となるため、無駄な資材が多くコストアップを招いてしまうという課題がある。
【0006】
更に、特許文献3に記載されている中空部を有する外管を用いる方法は、接地抵抗低減剤を充填する前に外管を引き抜くという工程があるため、接地抵抗低減剤を充填する前もしくは接地抵抗低減剤を流し込むと同時に孔が崩れてしまい、接地極を接地抵抗低減剤で覆うことが出来ず、本来の目標としていた接地抵抗値が確保できないことや、孔崩れによる空隙が発生し、その空隙の溶存酸素の存在で接地電極の腐食が促進される恐れもある。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、接地抵抗低減剤が接地電極の最下部まで確実に充填できる構造および工程を有し、これによって、孔内に接地抵抗低減剤が確実に行きわたることで接地抵抗値を低減できるとともに、資材の無駄を減らしコストアップを抑えることができる接地電極の埋設用工具およびそれを用いた埋設方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、接地抵抗低減剤を充填する前の孔の崩壊を防止して接地電極全体を接地抵抗低減剤で覆うことが可能とし、それによって電極の腐食を防止することができる接地電極の埋設用工具およびそれを用いた埋設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本出願に係る発明は、
電気設備に対し所望の接地抵抗を確保するための導電材からなる接地電極を地中に埋設するための埋設用工具において、
先端に尖頭部を有する打込みロッドと、
前記打込みロッドの外径よりも大きな内径を有し、前記尖頭部が貫通可能な孔を有し円錐形をなす先端追従管を先端に備えた外管と、からなり、
前記打込みロッドと前記外管には、前記打込みロッドの軸方向先端側へ向かう力を前記外管へ伝える打込み力伝達部が設けられているように構成したものである。
【0009】
上記のように構成された埋設用工具によれば、工具を地中に打ち込んだ後に打込みロッドのみを引き抜き、外管の内側に接地棒と接地抵抗低減剤を入れた後に外管を引き抜くことによって、接地電極として従来より使用している市販品の接地棒のみが埋設されそれ以外のものが地中に残らないため、資材の無駄を減らしコストアップを抑えることができる。また、接地抵抗低減剤を注入する際に周囲の土壌が崩れたり混入したりすることがないため、電極の腐食を防止することができる。さらに簡易な構成で、接地電極の周囲に注入された接地抵抗低減剤が流下することができ、それによって電極の接地面積が増大するため、電気抵抗を減らし所定値以下の接地抵抗を得ることができる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記尖頭部は大径部と小径部とを有し前記大径部と小径部との境界に第1テーパ部が形成され、
前記先端追従管の内周には前記第1テーパ部と同一傾斜を有する第2テーパ部が形成され、前記第1テーパ部と前記第2テーパ部とにより、前記打込みロッドの軸方向先端側へ向かう力を前記外管へ伝える前記打込み力伝達部が構成されているようにする。
【0011】
かかる構成によれば、第1テーパ部と第2テーパ部との接触により、打込みロッドの軸方向先端側へ向かう力を記外管へ伝えるため、埋設用工具を地中深くまで打ち込むことができる。また、打込みロッドを引き抜いた後で接地棒を挿入する際に接地棒の下端が先端追従管の内周の第1テーパ部で誘導されるため、先端追従管を貫通して下方の土壌に確実に到達させることができる。
【0012】
また、望ましくは、前記打込みロッドと前記外管は、それぞれ端部に他の同種部材を連結するための連結構造が設けられた継ぎ足し用ロッドと継ぎ足し管を備えており、
前記継ぎ足し用ロッドの連結位置と前記継ぎ足し管の連結位置は、互いに軸方向にずれるように構成されているようにする。
【0013】
上記のようなる構成によれば、継ぎ足し用ロッドと継ぎ足し管を継ぎ足すことで地中深くまで接地電極を埋設することができるとともに、継ぎ足し用ロッドの連結位置と継ぎ足し管の連結位置は、互いに軸方向にずれているため、必ず継ぎ足し用ロッドの上端を継ぎ足し管の上端より突出させることができ、継ぎ足し用ロッドに打ち込み力を作用させて地中に打ち込むことができる。
【0014】
本出願に係る他の発明は、上記のような構成を有する埋設用工具を用いて接地電極を地中に埋設するための埋設方法において、
先端に尖頭部を有する前記打込みロッドが前記先端追従管を先端に備えた前記外管に挿入された状態で、前記打込みロッドの後端を打ち込んで地中に進入させる第1工程と、
前記外管の後端が打ち込み地点の地表面よりも低くなる前に、前記打込みロッドの後端に継ぎ足し用ロッドを連結し、前記外管の後端に継ぎ足し管を連結する第2工程と、
を含み、前記第1工程と前記第2工程とを繰り返して、前記尖頭部が所定深さに達した後に、
連結状態の前記打込みロッドを引き抜く第3工程と、
前記外管の内側への接地棒の挿入と接地抵抗低減剤の注入を実施する第4工程と、
前記連結状態の外管を引き抜く第5工程と、を有するようにしたものである。
【0015】
上記のような方法によれば、接地電極としての接地棒のみが埋設されそれ以外のものが地中に残らないため、資材の無駄を減らしコストアップを抑えることができる。また、途中で継ぎ足し用ロッドと継ぎ足し管を継ぎ足すため、接地電極としての接地棒を地中深くまで打ち込むことができるとともに、任意の深さに接地電極を埋設することができる。
【0016】
さらに、望ましくは、前記第3工程の途中においては、地上に露出した前記継ぎ足し用ロッドを外しながら引き抜きを行い、
前記第5工程の途中においては、地上に露出した前記継ぎ足し管を外しながら引き抜きを行うようにする。
かかる方法によれば、大型の機械を使用することなく継ぎ足し用ロッドと継ぎ足し管を地中より引き抜くことができるため、線路脇等の用地が狭隘な場所でも工事を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る接地電極の埋設用工具およびそれを用いた埋設方法によれば、接地抵抗値をより確実に低減できるとともに資材の無駄を減らしコストアップを抑えることができる。また、接地抵抗低減剤を注入する前の孔の崩壊を防止して電極の腐食を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る接地電極の埋設用工具の一実施形態を示すもので、(A)は打込み用ロッドの一例を示す正面図、(B)は外管の一例を示す正面図、(C)は打込み用ロッドを外管内に挿入した状態を示す正面図である。
図2】実施形態の埋設用工具と外管の先端部の構造の詳細を示す断面正面図である。
図3】実施形態の埋設用工具を埋設工事の最初に使用する先端部分のセット状態を示す図である。
図4】実施形態の接地電極の埋設方法の手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。本発明に係る接地電極の埋設方法に使用する工具(埋設用工具)は、先端に尖頭部を有する打込み用ロッドとこのロッドを内側に収容する外管とから構成される。図1(A)には打込み用ロッド10の構成例が、また図1(B)には外管20の構成例、図1(C)には打込み用ロッド10と外管20を組み合わせた使用状態が示されている。なお、打込み用ロッド10と外管20は、いずれも鋼製である。
【0020】
本実施形態における埋設用工具を構成する打込み用ロッド10は、図1(A)に示すように、先端ほど径が小さくなる形状を有する尖頭部11と、継ぎ足し用ロッド12A,12B,12C,12D……とにより構成され、継ぎ足し用ロッド12Aの前端側に尖頭部11が連結されている。以下、それぞれのロッドを区別しない場合には、継ぎ足し用ロッド12と記す。
【0021】
尖頭部11は、後端側の外径が例えば約36mmで、全長は例えば約125mmであり、後端側に雄ネジ部11a(図2参照)が形成されている。継ぎ足し用ロッド12は、図3に示すように、後端側に雄ネジ部12aが形成され、前端側に雌ネジ部12bが形成されており、雄ネジ部12aに他のロッドの雌ネジ部12bに螺合されることで、継ぎ足し可能に構成されている。なお、特に限定されるものでないが、各継ぎ足し用ロッド12は、軸部の径が例えば27.5mmで、長さが例えば105cmである。
【0022】
外管20は、図1(B)に示すように、円錐形状を有する先端追従管21と、円筒状の継ぎ足し管22A,22B,22C,22D……とから構成されている。先端追従管21は、後端側に雌ネジ部が形成されている。継ぎ足し管22は、図3に示すように、前端側に雄ネジ部22aが形成され、後端側に雌ネジ部22bが形成されており、雄ネジ部22aに他の継ぎ足し管22の雌ネジ部22bに螺合されることで、継ぎ足し可能に構成されている。
なお、特に限定されるものでないが、各継ぎ足し管22は、外径が例えば48.6mm、内径が継ぎ足し用ロッド12の外径よりも約10mm大きい例えば37.6mmである。長さは継ぎ足し管22Aが例えば78cmで、それ以外の継ぎ足し管22B,22C,22D……の長さは例えば103cmである。
【0023】
このように、先端側の継ぎ足し管22Aの長さが他の継ぎ足し管22B,22C,22D……の長さよりも短くなるように設定されているのは、図1(C)に示すように、打込み用ロッド10と外管20のそれぞれの継ぎ足し部が軸方向にずれるようにするためである。これにより、打込み用ロッド10と外管20をそれぞれ継ぎ足した際に、打込み用ロッド10の後端が外管20の後端から飛び出すことで、打込み用ロッド10の後端に杭打機の打撃力を伝えることができるようになっている。
【0024】
図2には、外管20の先端追従管21に打込み用ロッド10の尖頭部11を挿入した状態が示されている。図示のように、打込み用ロッド10の尖頭部11は、小径部11bと大径部11cを有しており、小径部11bと大径部11cの境界に約30°のテーパ部11dが形成され、大径部11cの後端に上記雄ネジ部11aが設けられている。また、小径部11bの先端が円錐状に形成されている。
【0025】
一方、外管20の先端追従管21は、後端側に雌ネジ部21aが形成され、先端側に前記打込み用ロッド10の尖頭部11の小径部11bが挿通可能な貫通孔21bを有する円錐筒部21cが設けられている。また、円錐筒部21cの内周面には、打込み用ロッド10の尖頭部11のテーパ部11dに対応して、約30°のテーパ部21dが形成されている。テーパ部21dの傾斜角は30°に限定されず、先端追従管21の材質の摩擦抵抗や使用する接地電極の先端形状等に応じて適宜決定すればよい。
【0026】
上記のように、円錐筒部21cの内周面にテーパ部21dが形成されていることにより、後に説明するように、打込み用ロッド10のみを地中より引き抜いて、代わりに接地電極を差し込んだ際に、接地電極の先端がテーパ部21dに誘導されて、貫通孔21b内へ落ち込み易くなっている。また、尖頭部11のテーパ部11dが円錐筒部21cのテーパ部21dに接触することによって、打込み用ロッド10に加えられた打撃力を効率良く先端追従管21へ伝達できるようになっている。
【0027】
次に、上記のような構成を有する埋設用工具を使用した接地電極の埋設方法の手順について、図3および図4を用いて説明する。
接地電極を埋設するにあたっては、先ず図3に示すように、尖頭部11を先端に装着した継ぎ足し用ロッド12Aを、先端追従管21が先端に装着された継ぎ足し管22Aに挿入したものと、ばらばらの状態の複数の継ぎ足し用ロッド12と複数の継ぎ足し管22を用意する。
【0028】
次に、埋設箇所を決定して、地面に数10cmの穴を掘って、図4(a)に示すように、図3の状態の工具を掘削穴の底に垂直に立て、杭打機の打込みヘッド31を継ぎ足し用ロッド12Aの後端(上端)に結合し、打ち込みを開始する。なお、図4(a)に示されている杭打機は、打込みヘッド31と油圧ポンプを有する油圧ユニット32と油送ホース33とを備える油圧式杭打機であるが、杭打機はこのような構成のものに限定されるものではない。
【0029】
その後、図4(b)に示すように、継ぎ足し管22Aの後端(上端)が地表に近づいた時点で一旦打ち込みを停止し、打込みヘッド31を外して、先ず継ぎ足し用ロッド12Bの後端(上端)に継ぎ足し用ロッド12Bを、雄ネジ部12aに雌ネジ部12bを螺合させることで連結し、次に、継ぎ足し管22Aの後端(上端)に継ぎ足し管22Bを、雌ネジ部22bに雄ネジ部22aを螺合させることで連結する。
続いて、継ぎ足し用ロッド12Bの後端(上端)に杭打機の打込みヘッド31を結合し、打ち込みを再開する。
【0030】
上記作業を繰り返して、図4(c)に示すように、継ぎ足し用ロッド12Bの先端が所望の深さまで達したなら、杭打機による打ち込みを停止して打込みヘッド31を外し、図4(d)に示すように、人力で継ぎ足し用ロッド12A,12B……を引き抜く。次に、接地電極として例えば外径10mmまたは14mmで所定の長さの銅製もしくは銅被覆鋼製の接地棒41を、地中に残っている継ぎ足し管22A,22B……の中へ挿入する。この際、接地棒41の下端は、先端追従管21内周のテーパ部21dの傾斜で誘導されて、先端追従管21を貫通して土壌に到達した状態になる。
【0031】
その後、図4(e)に示すように、継ぎ足し管22A,22B……の中へ接地抵抗低減剤43を注入する。この際、接地棒41が掘削孔の中心からずれないように、飛び出している上端を手で押さえるようにしても良い。それから、図4(f)に示すように、三脚引き抜き工具50等を使用して、継ぎ足し管22A,22B……を地中より引き抜く。その際、接地棒41は自重で掘削孔内に残る。1本分の継ぎ足し管22が抜けたら、その継ぎ足し管22を外し、残りの継ぎ足し管22を引き抜く。また、継ぎ足し管22を引き抜くに連れて、接地抵抗低減剤が下方へ移動して表面が下がるので、目減りした分の接地抵抗低減剤43を追加注入する。
最後に残った継ぎ足し管22Aの引き抜きが終わったら、図4(g)に示すように、接地棒41の上端にリードケーブルの付いたリード端子42を結合してから、掘削穴を埋め戻して作業が完了する(図4(h))。
【0032】
上記手順の作業によれば、埋設箇所によって接地棒41を埋設する深さが変わったとしても、使用する継ぎ足し管22の数と継ぎ足し用ロッド12の数を調整することで容易に対応することができる。また、接地抵抗低減剤43を注入してから継ぎ足し管22A,22B,22C,22D……を地中より引き抜くようにしているため、掘削孔の周囲の土壌が崩壊して接地抵抗低減剤を充填することが困難になったり、接地抵抗低減剤を注入する前に孔が崩壊して孔中に空隙ができることで電極の腐食が進み易くなったりすることがないという利点がある。
【0033】
また、上記実施形態の接地電極の埋設方法は、継ぎ足し用ロッド12Aの先端の尖頭部11および継ぎ足し管22Aの先端追従管21を含めて埋設用工具をすべて地中より回収できるため、地中には何も残すことがなく、資材の無駄をなくすことができるためコストアップを抑えることができるという利点がある。
さらに、埋設した接地棒41を接地抵抗低減剤43で囲繞した電極構造であるため、接地電極の表面積を増大させて接地抵抗を減らすことができる。
【0034】
なお、継ぎ足し管22A,22B,22C,22D……の中へ注入する接地抵抗低減剤43は、先端部の内径が20mm程度の先端追従管21と、外径14mmの接地棒41との隙間を通って下方へ移動する必要があるので、使用する接地抵抗低減剤は流動性が良好のものが望ましい。また、注入後数分で硬化することが可能で、遅延剤の混入で硬化時間を1時間ほどまで延長できるものが提供されているので、そのような性質の接地抵抗低減剤を使用するのが望ましい。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、前記実施形態では、所望の長さの接地電極を地中に埋設するため、ロッド(12)と外管(22)を継ぎ足すように構成しているが、埋設する接地電極がそれほど長くなく、施工箇所の周囲に広い空間がある場所に埋設する場合には、それぞれ比較的長い1本のロッド(12)と外管(22)を使用するようにしても良い。
【0036】
また、前記実施形態では、継ぎ足し用ロッド12同士の結合や継ぎ足し管22同士の結合に、雄ネジと雌ネジの螺合を利用しているが、一方の外周にピンを立て、他方にはL字形のスリットを形成して、ピンとスリットの係合で連結するように構成しても良い。
さらに、前記実施形態では、尖頭部の外周と先端追従管の内周にそれぞれ同一傾斜角を有するテーパ部が形成され、テーパ部同士の接触で継ぎ足し用ロッドの打込み力を先端追従管へ伝達するように構成しているが、テーパの代わりに互いに接触可能な段差部を設けるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0037】
10 打込み用ロッド
11 尖頭部
11a 雄ネジ部
11b 小径部
11c 大径部
11d テーパ部
12 継ぎ足し用ロッド
12a 雄ネジ部
12b 雌ネジ部
20 外管
21 先端追従管
21b 貫通孔
22 継ぎ足し管
22a 雄ネジ部
22b 雌ネジ部
30 油圧杭打機
31 打込みヘッド
32 油圧ユニット
33 油送ホース
41 接地棒(接地電極)
42 リード端子
43 接地抵抗低減剤
図1
図2
図3
図4