IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ヘッドセットおよびイヤーパッド
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
H04R1/10 102
H04R1/10 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021077917
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171330
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉岡 慎児
(72)【発明者】
【氏名】滝口 麗王
(72)【発明者】
【氏名】福塚 弘敬
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0379962(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドバンドの一端部に設けられるハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられるブーム本体部と、
前記ブーム本体部と反対側の前記ハウジングに取り付けられるイヤーパッドと、を備え、
前記イヤーパッドは、装着者の耳介の全体を内径部に挿入して覆うカップ部を有し、
前記カップ部には、前記内径部を外部に開放する複数の貫通穴が、前記内径部のカップ開口部よりも前記ハウジングの近くに形成され
前記カップ部は、前記内径部における前記カップ開口部の周囲に、外側へ曲面で曲がった曲り部を有する、
ヘッドセット。
【請求項2】
前記貫通穴が、前記カップ部の円周方向に等間隔で設けられている、
請求項1に記載のヘッドセット。
【請求項3】
前記カップ部の外周面には、前記貫通穴を囲んで前記外周面から起立するリブが、前記カップ部の底部中心を中心に放射状に形成されている、
請求項2に記載のヘッドセット。
【請求項4】
ヘッドバンドの一端部に設けられるハウジングに装着されるイヤーパッドであって、
前記ハウジングに取り付けられ、装着者の耳介の全体を内径部に挿入して覆うカップ部を有し、
前記カップ部には、前記内径部を外部に開放する複数の貫通穴が、前記内径部のカップ開口部よりも前記ハウジングの近くに形成され
前記カップ部は、前記内径部における前記カップ開口部の周囲に、外側へ曲面で曲がった曲り部を有する、
イヤーパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドセットおよびイヤーパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ信号を音として出力するスピーカを備えたハウジングと、スピーカの外周部に対応する位置にあり、凹部に使用者の耳が挿入された状態で使用者の耳をその外周で覆い装着面全体が耳の周囲の頭部にフィットする環状のイヤーパッドとを備え、ハウジングおよびイヤーパッドにより使用者の耳全体を覆うように装着されるヘッドホンが知られている(例えば特許文献1参照)。この種の耳全体を覆うように装着されるヘッドホン(いわゆる、オーバーイヤータイプのヘッドホン)は、イヤーパッドの装着面全体が耳の周囲の頭部にフィットすることで、耳介への圧迫がなく、長時間にわたる装着においても苦痛を感じさせることがなく、ユーザへの負担が少ない。また、耳の周囲の頭部と装着面との間からの音漏れが抑制され、音質の劣化が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-139523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、イヤーパッドの装着面全体が耳の周囲の頭部にフィットさせ、イヤーパッドによりユーザの耳全体を覆った場合、イヤーパッドで囲まれた空間が密閉空間となり、長時間使用するとイヤーパッドの内部空間が蒸れやすくなり、装着者であるユーザが不快に感じるという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、長時間の使用においても、イヤーパッドの内部空間に蒸れが生じにくくし、ユーザの装着感の劣化を抑制するヘッドセットおよびイヤーパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ヘッドバンドの一端部に設けられるハウジングと、前記ハウジングに取り付けられるブーム本体部と、前記ブーム本体部と反対側の前記ハウジングに取り付けられるイヤーパッドと、を備え、前記イヤーパッドは、装着者の耳介の全体を内径部に挿入して覆うカップ部を有し、前記カップ部には、前記内径部を外部に開放する複数の貫通穴が、前記内径部のカップ開口部よりも前記ハウジングの近くに形成され、前記カップ部は、前記内径部における前記カップ開口部の周囲に、外側へ曲面で曲がった曲り部を有する、ヘッドセットを提供する。
【0007】
また、本開示は、ヘッドバンドの一端部に設けられるハウジングに装着されるイヤーパッドであって、前記ハウジングに取り付けられ、装着者の耳介の全体を内径部に挿入して覆うカップ部を有し、前記カップ部には、前記内径部を外部に開放する複数の貫通穴が、前記内径部のカップ開口部よりも前記ハウジングの近くに形成され、前記カップ部は、前記内径部における前記カップ開口部の周囲に、外側へ曲面で曲がった曲り部を有する、イヤーパッドを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、長時間の使用においても、イヤーパッドの内部空間に蒸れが生じにくくし、ユーザの装着感の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るヘッドセットが用いられるファストフード店の注文システムのシステム構成例を示す図
図2図1に示したヘッドセットの斜視図
図3図2のヘッドセットをカップ部側から見た斜視図
図4】イヤーパッドをカップ部側から見た斜視図
図5】イヤーパッドに耳介が挿入されて側頭部に配置されたヘッドセットのイヤーパッドを切り欠いた部分断面図
図6】イヤーパッドを開口部側から見た正面図
図7図6のA-A断面図
図8】変形例1に係るイヤーパッドをカップ部側から見た斜視図
図9】変形例1に係るイヤーパッドに耳介が挿入されて側頭部に配置されたヘッドセットのイヤーパッドを切り欠いた部分断面図
図10】変形例1に係るイヤーパッドを開口部側から見た正面図
図11図10のB-B断面図
図12】変形例1に係るイヤーパッドを斜め上後方から見た斜視図
図13】変形例1に係るイヤーパッドの背面図
図14】変形例2に係るイヤーパッドをカップ部側から見た斜視図
図15】変形例2に係るイヤーパッドに耳介が挿入されて側頭部に配置されたヘッドセットのイヤーパッドを切り欠いた部分断面図
図16】変形例2に係るイヤーパッドを開口部側から見た正面図
図17図16のC-C断面図
図18】変形例2に係るイヤーパッドを斜め上後方から見た斜視図
図19】変形例2に係るイヤーパッドの背面図
図20】変形例3に係るイヤーパッドをカップ部側から見た斜視図
図21】変形例3に係るイヤーパッドに耳介が挿入されて側頭部に配置されたヘッドセットのイヤーパッドを切り欠いた部分断面図
図22】変形例3に係るイヤーパッドを開口部側から見た正面図
図23図22のD-D断面図
図24】変形例3に係るイヤーパッドを斜め上後方から見た斜視図
図25】変形例3に係るイヤーパッドの背面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るヘッドセットおよびイヤーパッドを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
[構成]
図1は、実施の形態1に係るヘッドセット11が用いられるファストフード店の注文システムのシステム構成例を示す図である。図1に示すファストフード店の注文システムは、1つ以上のヘッドセット11と、1つ以上のオーダーポスト13と、センターモジュール15とを含む構成である。
【0012】
ヘッドセット11は、例えばファストフード産業、コールセンタ業、小売業など種々の産業において多用できる。例えば、ファストフード店においては、ファストフード店の敷地内に既設のドライブスルーレーン17に車両で来店した顧客(つまり、車両の運転手)から車両越しで注文を受けるために、複数のユーザである従業員のそれぞれは、異なるヘッドセット11を装着して注文に応対する。
【0013】
例えば複数のドライブスルーレーン17が設けられたファストフード店では、それぞれのドライブスルーレーン17にオーダーポスト13が設置される。オーダーポスト13は、車両の運転手の発した音声を収音するマイクと、従業員の発した声を出力するスピーカ(不図示)とを備える。
【0014】
店内にはセンターモジュール15が設置される。
【0015】
センターモジュール15は、通信用のインターフェース部と、プロセッサと、メモリ等とを主に備え、ヘッドセット11を装着した店内の従業員の音声データと店外の顧客の音声データとを無線通信を使って送受信(言い換えると、中継)する。通信方式としては、例えば、デジタルコードレス電話の通信規格である1.9GHz帯のDECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)等が用いられる。従業員は、どのオーダーポスト13の顧客と話をするかを選択できる。例えば、ドライブスルーレーン17として2つのレーンが並列で配置されている場合、従業員は、ヘッドセット11の後述するシフトボタンをダブルクリックすることにより、通話先をいずれかのレーン(つまり、ドライブスルーレーン17)に切り替えることができる。また、センターモジュール15は、店内の従業員同士として、例えば異なるドライブスルーレーン17をそれぞれ担当する従業員A、B間の通話も中継可能としている。
【0016】
図2は、図1に示したヘッドセット11の斜視図である。実施の形態1に係るヘッドセット11は、ハウジング19と、イヤーパッド21と、ブーム本体部23と、アーム部25と、第1マイク27(図3参照)と、第2マイク29とを主要な構成として有する。
【0017】
ハウジング19は、ヘッドバンド31の一端部33に設けられる。ヘッドバンド31の他端部35には、ヘッドパッド37が設けられる。ハウジング19は、円形部39と突起部41とによりティアドロップ形状の板状に形成される。ヘッドセット11は、ヘッドパッド37に、ヘッドバンド31の他端部35が進退可能に接続され、装着者の頭部の大きさに応じてヘッドバンド31の長さ調節が可能となっている。
【0018】
イヤーパッド21は、円形部39のヘッドパッド37に対向する面に取り付けられる。イヤーパッド21の中央部には、スピーカ音の出る開口部43が形成される(図3参照)。開口部43の背面には、ブーム本体部23に収容されるスピーカが連通して配置される。ヘッドセット11は、従業員がヘッドバンド31を頭部に掛けることにより、一方の側頭部をヘッドパッド37が押さえ、他方の耳にイヤーパッド21が配置されて装着される。
【0019】
イヤーパッド21と反対側のハウジング19には、マイクブーム45が回転自在に取り付けられる。マイクブーム45は、ブーム本体部23と、アーム部25とにより一体に形成される。ブーム本体部23は、扁平円柱形状に形成される。ブーム本体部23は、ハウジング19の円形部39と同一中心で回転する。
【0020】
ブーム本体部23の表面には、複数のスイッチが設けられる。これらのスイッチは、例えばトークボタン47、音量調節ボタン49、ページボタン51、シフトボタン53などを含む。
【0021】
トークボタン47は、オーダーポスト13の前にいる顧客との会話をするためのボタンである。例えば、トークボタン47を1度押すと、現在接続しているドライブスルーレーン17のオーダーポスト13の近傍にいる顧客(つまり、車両に乗車中の顧客)と通話ができ、再度、トークボタン47を押すと、通話を終了する。
【0022】
音量調節ボタン49は、ボタンを押すと音量が大きくなる。音量の上限になるとビープ音が鳴り、更にボタンを押すと音量の下限に戻る。
【0023】
ページボタン51は、従業員同士の通話を制御する。ページボタン51は、1度押すと、現在接続しているドライブスルーレーン17を担当している従業員との間で通話ができ、再度押すと、その通話を終了する。なお、ページボタン51は、ヘッドセット11に対する設定操作によって動作が変わる。
【0024】
シフトボタン53は、シフトボタン53を押す、またはシフトボタン53と他のボタンを同時に押すことで種々の機能が使用可能となる。例えば、シフトボタン53により、接続先のドライブスルーレーン17の切り換え、アラート通知が可能となる。
【0025】
また、ブーム本体部23の外周には、カラーチップ55が着脱自在に設けられる。カラーチップ55は、付け替えることで、ヘッドセット11の色分けを可能とし、実際に複数の従業員によってそれぞれ異なる複数のヘッドセット11が使用される運用時の使い勝手を向上できる。
【0026】
この他、ブーム本体部23には、表示灯部57やレーン表示灯59が設けられる。表示灯部57には、不図示の電源表示灯や設定表示灯が配置される。レーン表示灯59は、点灯色によりヘッドセット11が接続されているドライブスルーレーン17を表す。
【0027】
アーム部25は、ブーム本体部23に設けられ、ハウジング19を挟みヘッドバンド31の一端部33と反対側に突出する。アーム部25は、従業員の装着時に、頬に沿って突出先端が口元に向くように、湾曲した角錐形状に形成される。アーム部25の内部は、ブーム本体部23と連通した不図示の電装品収容部となっている。
【0028】
図3は、図2のヘッドセット11をカップ部側から見た斜視図である。アーム部25の突出先端には、第1マイク27が設けられる。第1マイク27は、アーム部25の突出先端において、従業員の口元に対向するアーム内面に配置される。
【0029】
第1マイク27、第2マイク29には、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクとしての無指向性マイクが用いられる。ヘッドセット11では、複数の無指向性マイク(例えば、第1マイク27および第2マイク29)が用いられることにより、指向性の形成を容易としている。
【0030】
ブーム本体部23には、電池を収容する電池収容部(不図示)が設けられている。電池は、電池収容部に挿入すると、電池ロック(不図示)により保持される。電池の取り外しは、電池ロックを押すことにより可能となる。
【0031】
ハウジング19は、円形部39に、ブーム本体部23の軸部(不図示)を回転自在に挿入して係止している。軸部には、スピーカ(不図示)を収容するスピーカ収容筒部(不図示)が形成される。スピーカ収容筒部は、ハウジング19の円形部39を貫通して、イヤーパッド21の開口部43に対面する。スピーカ収容筒部は、先端開口がイヤーパッド21の開口部43に対面することにより、スピーカからの音声をイヤーパッド21から出力可能とする。ヘッドセット11は、電装品の全てがブーム本体部23に収容されている。
【0032】
実施の形態1に係るヘッドセット11では、従業員(装着者の一例。以下同様。)の口元と第1マイク27とを通る略直線上に、第1マイク27を挟んでその従業員の口元と反対側に第2マイク29が配置される。即ち、ヘッドセット11では、口元に近い順に、第1マイク27と、第2マイク29とが略直線上に配置される。ヘッドセット11は、口元に対して離間する異なる距離の2つの第1マイク27と第2マイク29により、従業員の音声検出を行う。また、ヘッドセット11は、音声検出とともに、第1マイク27と第2マイク29により、口元に対する指向性制御が可能となる。ヘッドセット11は、単一マイクの構成に比べ、連続的な周囲騒音の抑圧を容易にすることができる。従って、ヘッドセット11は、例えば騒音環境下においても音声がクリアに聞こえる程に収音性能を向上することと、軽量化することとを両立させている。
【0033】
図4は、イヤーパッド21をカップ部側から見た斜視図である。実施の形態1に係るイヤーパッド21は、従業員(装着者の一例。以下同様。)の耳介61(図5参照)の全体を内径部63に挿入して覆うカップ部65を有する。内径部63は、カップ開口部67の反対側が底部69となる。カップ部65は、底部69からカップ開口部67に向かって徐々に拡径される有底筒状となる。つまり、カップ部65は、碗状やすり鉢状となる。イヤーパッド21は、底部69を挟んでカップ開口部67と反対側に、円筒状のハウジング装着部71が連続して形成される。イヤーパッド21は、これらカップ部65、底部69、ハウジング装着部71が、一体に成形される。イヤーパッド21の成形材料としては、例えばシリコンゴム、ウレタンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。これらの素材は、硬度60°程度の柔らかさのものが好適に用いられる。
【0034】
図5は、イヤーパッド21に耳介61が挿入されて側頭部に配置されたヘッドセット11のイヤーパッド21を切り欠いた部分断面図である。ハウジング装着部71は、底部69と反対側が装着開口部73となる。つまり、底部69は、内径部63とハウジング装着部71との隔壁となっている。ハウジング装着部71には、装着開口部73よりも奥側(底部側)の内周面に周溝75が形成される。周溝75は、弾性変形により拡径させた装着開口部73から挿入されるハウジング19の固定フランジ部77を嵌め入れ可能としている。固定フランジ部77の先端面からは、上述したスピーカ収容筒部の筒前部79が突出する。筒前部79は、底部69の開口部43に対向して配置される。
【0035】
図6は、イヤーパッド21を開口部側から見た正面図である。底部69は、円板状に形成される。底部69は、スピーカからの音声を内径部63へ出力する複数の開口部43を中央部に集中して備えている。開口部43は、底部中心81を中心に例えば37個が六角形状に配列される。これにより、イヤーパッド21は、筒前部79からのスピーカ音が、開口部43を通じて内径部63へ出力可能となっている。
【0036】
カップ部65には、内径部63を外部へ開放する複数の貫通穴83が設けられている。貫通穴83は、開口部43を包囲するようにして、カップ部65の底部中心81を中心とした円周方向に、等間隔で設けられている。貫通穴83は、例えば真円で形成される。貫通穴83は、例えば6個が配置される。なお、貫通穴83の形状、数は、これに限定されない。
【0037】
図7は、図6のA-A断面図である。内径部63を外部に開放する複数の貫通穴83は、カップ開口部67よりもハウジング19の近くに形成されている。貫通穴83は、ハウジング19とカップ開口部67との間である距離d(図5参照)の中間位置(d/2)よりもハウジング側に設けられている。即ち、貫通穴83は、内径部63のカップ開口部67よりも底部69の近くに形成されている。
【0038】
また、イヤーパッド21は、カップ開口部67の周囲に曲り部85を有する。曲り部85は、カップ開口部67に連続して外側へ断面C字状の曲面で曲がる。カップ部65は、耳介61を内径部63に挿入したカップ開口部67が、この曲面で側頭部の肌に接触する。なお、曲り部85は、断面C字状に曲げた例を示すが、渦巻き状に巻かれ(つまり、カールされ)ていてもよい。
【0039】
[変形例]
次に、実施の形態1の変形例を説明する。
【0040】
(変形例1)
図8は、変形例1に係るイヤーパッド87をカップ部側から見た斜視図である。変形例1に係るイヤーパッド87は、従業員(装着者の一例)の耳介61(図9参照)の全体を内径部63に挿入して覆うカップ部65を有する。内径部63は、そのカップ開口部67の反対側が底部69となる。カップ部65は、底部69からカップ開口部67に向かって徐々に拡径される有底筒状となる。つまり、カップ部65は、碗状やすり鉢状となる。イヤーパッド87は、底部69を挟んでカップ開口部67と反対側に、円筒状のハウジング装着部71が連続して形成される。イヤーパッド87は、これらカップ部65、底部69、ハウジング装着部71が、一体に成形される。イヤーパッド87の成形材料としては、例えばシリコンゴム、ウレタンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。これらの素材は、硬度60°程度の柔らかさのものが好適に用いられる。
【0041】
図9は、変形例1に係るイヤーパッド87に耳介61が挿入されて側頭部に配置されたヘッドセット11のイヤーパッド87を切り欠いた部分断面図である。ハウジング装着部71は、底部69と反対側が装着開口部73となる。つまり、底部69は、内径部63とハウジング装着部71との隔壁となっている。ハウジング装着部71には、装着開口部73よりも奥側(底部側)の内周面に周溝75が形成される。周溝75は、弾性変形により拡径させた装着開口部73から挿入されるハウジング19の固定フランジ部77を嵌め入れ可能としている。固定フランジ部77の先端面からは、筒前部79が突出する。筒前部79は、底部69の開口部43に対向して配置される。
【0042】
カップ部65は、カップ開口部67からハウジング装着部71に向かうに従って、肉厚が徐々に厚くなっている。これにより、カップ部65は、より潰れにくくなっている。貫通穴83は、この肉厚部分に、後方(ハウジング側)に向けて開口している。変形例1に係るイヤーパッド87は、開口部43(スピーカ穴)と貫通穴83が同方向となるので、スピーカ音と外部音とに違和感が生じにくくなっている。
【0043】
図10は、変形例1に係るイヤーパッド87を開口部側から見た正面図である。底部69は、円板状に形成される。底部69は、スピーカからの音声を内径部63へ出力する複数の開口部43を中央部に集中して備えている。開口部43は、底部中心81を中心に例えば37個が六角形状に配列される。これにより、イヤーパッド21は、筒前部79からのスピーカ音が、開口部43を通じて内径部63へ出力可能となっている。
【0044】
変形例1に係るイヤーパッド87の貫通穴83は、開口部43を包囲するようにして、カップ部65の底部中心81を中心とした円周方向に、等間隔で複数が設けられている。変形例1に係るイヤーパッド87の貫通穴83は、例えば内径部63の円周方向に長い長円形で形成される。変形例1に係るイヤーパッド87の貫通穴83は、例えば6個が配置される。なお、貫通穴83の形状、数は、これに限定されない。
【0045】
図11は、図10のB-B断面図である。内径部63を外部に開放する複数の貫通穴83は、カップ開口部67よりもハウジング19の近くに形成されている。変形例1に係るイヤーパッド87の貫通穴83は、ハウジング19とカップ開口部67との間である距離d(図9参照)の中間位置(d/2)よりもハウジング側に設けられている。即ち、変形例1に係るイヤーパッド87の貫通穴83は、内径部63のカップ開口部67よりも底部69の近くに形成されている。
【0046】
また、イヤーパッド87は、カップ開口部67の周囲に曲り部85を有する。曲り部85は、カップ開口部67に連続して外側へ断面C字状の曲面で曲がる。カップ部65は、耳介61を内径部63に挿入したカップ開口部67が、この曲面で側頭部の肌に接触する。なお、曲り部85は、断面C字状に曲げた例を示すが、渦巻き状に巻かれ(つまり、カールされ)ていてもよい。
【0047】
図12は、変形例1に係るイヤーパッド87を斜め上後方から見た斜視図である。変形例1に係るイヤーパッド87は、カップ部65の外周面に、複数のリブ89が設けられる。リブ89は、貫通穴83を囲んで外周面から起立する。リブ89は、貫通穴83を挟んでカップ部65の外周面から起立する一対の平行な起立壁が、ハウジング装着部71から曲り部85の近傍に向かって形成される。一対のリブ89の間は、ハウジング装着部71の近傍が開放部91となる以外は、架橋部93により起立先端同士が連結される。つまり、リブ89は、この開放部91から貫通穴83を後方(ハウジング側)に向けて外部へ開放している。
【0048】
図13は、変形例1に係るイヤーパッド87の背面図である。リブ89は、カップ部65の底部中心81を中心に放射状に形成されている。リブ89は、円周方向に例えば6個が設けられるが、数はこれに限定されない。リブ89の数は、貫通穴83に応じていれば、例えば3個、5個、4個、7個、8個などであってもよい。
【0049】
(変形例2)
図14は、変形例2に係るイヤーパッド95をカップ部側から見た斜視図である。変形例2に係るイヤーパッド95は、従業員(装着者の一例)の耳介61(図15参照)の全体を内径部63に挿入して覆うカップ部65を有する。内径部63は、そのカップ開口部67の反対側が底部69となる。カップ部65は、底部69からカップ開口部67に向かって徐々に拡径される有底筒状となる。つまり、カップ部65は、碗状やすり鉢状となる。イヤーパッド87は、底部69を挟んでカップ開口部67と反対側に、円筒状のハウジング装着部71が連続して形成される。イヤーパッド95は、これらカップ部65、底部69、ハウジング装着部71が、一体に成形される。イヤーパッド95の成形材料としては、例えばシリコンゴム、ウレタンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。これらの素材は、硬度60°程度の柔らかさのものが好適に用いられる。
【0050】
図15は、変形例2に係るイヤーパッド95に耳介61が挿入されて側頭部に配置されたヘッドセット11のイヤーパッド95を切り欠いた部分断面図である。ハウジング装着部71は、底部69と反対側が装着開口部73となる。つまり、底部69は、内径部63とハウジング装着部71との隔壁となっている。ハウジング装着部71には、装着開口部73よりも奥側(底部側)の内周面に周溝75が形成される。周溝75は、弾性変形により拡径させた装着開口部73から挿入されるハウジング19の固定フランジ部77を嵌め入れ可能としている。固定フランジ部77の先端面からは、筒前部79が突出する。筒前部79は、底部69の開口部43に対向して配置される。
【0051】
カップ部65は、カップ開口部67からハウジング装着部71に向かうに従って、肉厚が徐々に厚くなっている。これにより、カップ部65は、より潰れにくくなっている。貫通穴83は、この肉厚部分に、後方(ハウジング側)に向けて開口している。変形例2に係るイヤーパッド95は、開口部43(スピーカ穴)と貫通穴83が同方向となるので、スピーカ音と外部音とに違和感が生じにくくなっている。
【0052】
図16は、変形例2に係るイヤーパッド95を開口部側から見た正面図である。底部69は、円板状に形成される。底部69は、スピーカからの音声を内径部63へ出力する複数の開口部43を中央部に集中して備えている。開口部43は、底部中心81を中心に例えば37個が六角形状に配列される。これにより、イヤーパッド21は、筒前部79からのスピーカ音が、開口部43を通じて内径部63へ出力可能となっている。
【0053】
変形例2に係るイヤーパッド95の貫通穴83は、開口部43を包囲するようにして、カップ部65の底部中心81を中心とした円周方向に、等間隔で複数が設けられている。変形例2に係るイヤーパッド95の貫通穴83は、カップ部65の半径方向外側に長い長円で形成される。変形例2に係るイヤーパッド95の貫通穴83は、例えば6個が配置される。なお、貫通穴83の形状、数は、これに限定されない。
【0054】
図17は、図16のC-C断面図である。内径部63を外部に開放する複数の貫通穴83は、カップ開口部67よりもハウジング19の近くに形成されている。変形例2に係るイヤーパッド95の貫通穴83は、ハウジング19とカップ開口部67との間である距離d(図15参照)の中間位置(d/2)よりもハウジング側に設けられている。即ち、変形例2に係るイヤーパッド95の貫通穴83は、内径部63のカップ開口部67よりも底部69の近くに形成されている。
【0055】
また、イヤーパッド95は、カップ開口部67の周囲に曲り部85を有する。曲り部85は、カップ開口部67に連続して外側へ断面C字状の曲面で曲がる。カップ部65は、耳介61を内径部63に挿入したカップ開口部67が、この曲面で側頭部の肌に接触する。なお、曲り部85は、断面C字状に曲げた例を示すが、渦巻き状に巻かれ(つまり、カールされ)ていてもよい。
【0056】
図18は、変形例2に係るイヤーパッド95を斜め上後方から見た斜視図である。変形例2に係るイヤーパッド95は、カップ部65の外周面に、複数のリブ97が設けられる。リブ97は、貫通穴83を囲んで外周面から起立する。リブ97は、貫通穴83を挟んでカップ部65の外周面から起立する一対の平行な起立壁が、ハウジング装着部71から曲り部85の近傍に向かい、徐々に接近して形成される。言い換えれば、一対のリブ97は、ハウジング装着部71を底辺とした三角形の2辺となって形成される。一対のリブ97の間は、ハウジング装着部71の近傍で大きく離間して貫通穴83を開放させている。つまり、リブ97は、この開放部91から貫通穴83を後方(ハウジング側)に向けて外部へ開放している。
【0057】
図19は、変形例2に係るイヤーパッド95の背面図である。リブ97は、カップ部65の底部中心81を中心に放射状に形成されている。リブ97は、円周方向に例えば6個が設けられるが、数はこれに限定されない。リブ97の数は、貫通穴83に応じていれば、例えば3個、5個、4個、7個、8個などであってもよい。
【0058】
(変形例3)
図20は、変形例3に係るイヤーパッド99をカップ部側から見た斜視図である。変形例3に係るイヤーパッド99は、従業員(装着者の一例)の耳介61(図21参照)の全体を内径部63に挿入して覆うカップ部65を有する。内径部63は、カップ開口部67の反対側が底部69となる。カップ部65は、底部69からカップ開口部67に向かって徐々に拡径される有底筒状となる。つまり、カップ部65は、碗状やすり鉢状となる。イヤーパッド99は、底部69を挟んでカップ開口部67と反対側に、円筒状のハウジング装着部71が連続して形成される。イヤーパッド99は、これらカップ部65、底部69、ハウジング装着部71が、一体に成形される。イヤーパッド99の成形材料としては、例えばシリコンゴム、ウレタンゴム、天然ゴムなどが挙げられる。これらの素材は、硬度60°程度の柔らかさのものが好適に用いられる。
【0059】
図21は、変形例3に係るイヤーパッド99に耳介61が挿入されて側頭部に配置されたヘッドセット11のイヤーパッド99を切り欠いた部分断面図である。ハウジング装着部71は、底部69と反対側が装着開口部73となる。つまり、底部69は、内径部63とハウジング装着部71との隔壁となっている。ハウジング装着部71には、装着開口部73よりも奥側(底部側)の内周面に周溝75が形成される。周溝75は、弾性変形により拡径させた装着開口部73から挿入されるハウジング19の固定フランジ部77を嵌め入れ可能としている。固定フランジ部77の先端面からは、筒前部79が突出する。筒前部79は、底部69の開口部43に対向して配置される。
【0060】
カップ部65は、カップ開口部67からハウジング装着部71に向かうに従って、肉厚が徐々に厚くなっている。これにより、カップ部65は、より潰れにくくなっている。貫通穴83は、この肉厚部分に、後方(ハウジング側)に向けて開口している。変形例3に係るイヤーパッド99は、開口部43(スピーカ穴)と貫通穴83が同方向となるので、スピーカ音と外部音とに違和感が生じにくくなっている。
【0061】
図22は、変形例3に係るイヤーパッド99を開口部側から見た正面図である。底部69は、円板状に形成される。底部69は、スピーカからの音声を内径部63へ出力する複数の開口部43を中央部に集中して備えている。開口部43は、底部中心81を中心に例えば37個が六角形状に配列される。これにより、イヤーパッド21は、筒前部79からのスピーカ音が、開口部43を通じて内径部63へ出力可能となっている。
【0062】
変形例3に係るイヤーパッド99の貫通穴83は、開口部43を包囲するようにして、カップ部65の底部中心81を中心とした円周方向に、等間隔で複数が設けられている。変形例3に係るイヤーパッド99の貫通穴83は、例えば内径部63の半径方向内側が頂点部分となる略三角形で形成される。変形例3に係るイヤーパッド99の貫通穴83は、例えば6個が配置される。なお、貫通穴83の形状、数は、これに限定されない。
【0063】
図23は、図22のD-D断面図である。内径部63を外部に開放する複数の貫通穴83は、カップ開口部67よりもハウジング19の近くに形成されている。変形例3に係るイヤーパッド99の貫通穴83は、ハウジング19とカップ開口部67との間である距離d(図21参照)の中間位置(d/2)よりもハウジング側に設けられている。即ち、変形例3に係るイヤーパッド99の貫通穴83は、内径部63のカップ開口部67よりも底部69の近くに形成されている。
【0064】
また、イヤーパッド99は、カップ開口部67の周囲に曲り部85を有する。曲り部85は、カップ開口部67に連続して外側へ断面C字状の曲面で曲がる。カップ部65は、耳介61を内径部63に挿入したカップ開口部67が、この曲面で側頭部の肌に接触する。なお、曲り部85は、断面C字状に曲げた例を示すが、渦巻き状に巻かれ(つまり、カールされ)ていてもよい。
【0065】
図24は、変形例3に係るイヤーパッド99を斜め上後方から見た斜視図である。変形例3に係るイヤーパッド99は、カップ部65の外周面に、複数のリブ101が設けられる。リブ101は、貫通穴83を囲んで外周面から起立する。リブ101は、貫通穴83を挟んでカップ部65の外周面から起立する一対の平行な起立壁が、ハウジング装着部71から曲り部85の近傍に向かって形成される。一対のリブ101の間は、ハウジング装着部71の近傍が開放部91となる以外は、架橋部93により起立先端同士が連結される。つまり、リブ101は、この開放部91から貫通穴83を後方(ハウジング側)に向けて外部へ開放している。リブ101は、包囲する貫通穴83が略三角形であること、起立する一対の平行な起立壁の離間距離が小さいこと、開放部91がカップ部65の半径方向に沿って細長いことが、変形例1に係るイヤーパッド87のリブ89と異なっている。
【0066】
図25は、変形例3に係るイヤーパッド99の背面図である。リブ101は、カップ部65の底部中心81を中心に放射状に形成されている。リブ101は、円周方向に例えば6個が設けられるが、数はこれに限定されない。リブ101の数は、貫通穴83に応じていれば、例えば3個、5個、4個、7個、8個などであってもよい。
【0067】
なお、変形例1、変形例2、変形例3で示したリブ89、リブ97、リブ101は、実施の形態1に係るイヤーパッド21に形成されてもよい。
【0068】
[作用]
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0069】
なお、実施の形態1には、変形例1に係るイヤーパッド87、変形例2に係るイヤーパッド95、変形例3に係るイヤーパッド99のそれぞれの構成が含まれるが、以下の説明では、イヤーパッド21をその代表例として記す。
【0070】
実施の形態1に係るヘッドセット11は、ヘッドバンド31の一端部33に設けられるハウジング19と、ハウジング19に取り付けられるブーム本体部23と、ブーム本体部23と反対側のハウジング19に取り付けられるイヤーパッド21と、を備える。イヤーパッド21は、従業員(装着者の一例)の耳介61の全体を内径部63に挿入して覆うカップ部65を有する。カップ部65には、内径部63を外部に開放する複数の貫通穴83が、カップ開口部67よりもハウジング19の近くに形成されている。
【0071】
実施の形態1に係るヘッドセット11では、イヤーパッド21が、カップ部65を有する。カップ部65は、底部69からカップ開口部67に向かって徐々に拡径される有底筒状となる。つまり、カップ部65は、碗状やすり鉢状となる。カップ部65は、内径部63を外部に開放する複数の貫通穴83を有する。イヤーパッド21は、耳介61が内径部63に挿入され、カップ開口部67が側頭部に押し付けられることにより、カップ開口部67が閉鎖される。
【0072】
この状態で、イヤーパッド21は、カップ開口部67が閉鎖され、内径部63が貫通穴83により外部へ開放される。貫通穴83は、複数設けられるので、一部の貫通穴83から流入した空気が、他の貫通穴83から流出する。つまり、風通しがよくなり、湿り空気が外部へ排出され、蒸れが生じにくくなる。
【0073】
従来のイヤーパッドは、カップ開口部67が閉鎖されると内径部63が密閉空間となる。この密閉空間は、外耳道を介して鼓膜に通じる。鼓膜は、奥側の空間が中耳となる。耳は、カップ部65で塞がれて外耳道の先が密閉空間になると、耳のつまった感じ(閉塞感)の生じる場合がある。また、密閉空間となったカップ部65は、ハウジング19のボタンが押下されることにより、内径部63の気圧が中耳よりも高くなる場合がある。ボタンの押下が繰り返されれば、内径部63の気圧の変動も大きくなる。そのため、内径部63と中耳内との気圧のバランスが崩れて鼓膜に圧迫を与え、耳が詰まったような不快感や痛みが生じる虞もある。中耳は、耳管によって上咽頭につながり、中耳の圧力を一定に調整するが、ボタンの押下が頻繁となれば不快感や痛みが生じやすくなる。
【0074】
これに対し、実施の形態1に係るイヤーパッド21は、カップ開口部67が閉鎖された使用時においても、空気が貫通穴83を通って外部と行き来するので、上記した耳の詰まったような不快感や痛みの生じることがない。これにより、密閉空間に耳介61が覆われてしまうことによる聴覚的な閉塞感や、鼓膜が圧迫されることによる聴力の低下が生じなくなる。また、ハウジング側から出るスピーカ音も籠もりにくくなる。
【0075】
ヘッドセット11は、イヤーパッド21に貫通穴83が設けられることによって、外部からの音が聞こえやすくなる。これにより、ヘッドセット11は、スピーカ音を聞きながら、他の従業員との直接的な会話音も聞こえやすくすることができる。
【0076】
更に、イヤーパッド21は、貫通穴83がハウジング19の近くに配置される。即ち、貫通穴83は、ハウジング19とカップ開口部67との間の距離dの中間位置(d/2)よりもハウジング側に設けられる。つまり、貫通穴83は、カップ部65の中央側となる底部69の近傍に配置される。これにより、イヤーパッド21は、通常よりも内径部63で耳介61の占める割合が大きい人の場合であっても、貫通穴83が耳介61によって塞がれにくくなっている。
【0077】
また、ヘッドセット11は、貫通穴83が、カップ部65の円周方向に等間隔で設けられている。
【0078】
このヘッドセット11では、貫通穴83が、カップ部65の円周方向に等間隔で設けられる。これにより、カップ部65の円周方向で強度的な偏りが生じにくくなる。ヘッドセット11は、ブーム本体部23の表面に、例えばトークボタン47やシフトボタン53等の複数のボタンが設けられている。これらのボタンは、押されることによる荷重が、ハウジング19を介してイヤーパッド21に伝わり、その押下荷重がヘッドセット11を装着した従業員の側頭部により受けられる。つまり、イヤーパッド21には、カップ部65の中心軸に沿う方向の圧縮荷重が作用する。
【0079】
カップ部65は、貫通穴83が、カップ部65の円周方向に等間隔で設けられていることにより、この圧縮荷重が作用した場合、円周方向の一部分に脆弱部が片寄って発生しない。このため、円周方向の一部分に応力が集中し、一部分が先に潰れやすくなることが抑制される。その結果、イヤーパッド21は、比較的小径となるハウジング19の近い部位に複数の貫通穴83を穿設して肉厚が減量されても、ボタンの押下荷重を円周方向で均等に分散させて、潰れにくくすることができる。
【0080】
また、ヘッドセット11は、カップ部65の外周面に、貫通穴83を囲んで外周面から起立するリブ(例えば、リブ89、リブ97またはリブ101)が、カップ部65の底部中心81を中心に放射状に形成されている。
【0081】
このヘッドセット11では、カップ部65の外周面に、貫通穴83を囲むようなリブが起立して形成される。リブは、例えばカップ部65と一体に成形される。イヤーパッド21は、例えばシリコンゴムからなる。イヤーパッド21(イヤーパッド87、イヤーパッド95、イヤーパッド99)は、カップ部65の近傍に、貫通穴83を囲むようにリブが設けられることにより、貫通穴83が形成されることにより強度の低下したカップ部65の側壁部がリブにより補強される。これにより、カップ部65は、側壁部の剛性が高くなり、上述した貫通穴83の円周方向均等配置に加え、より潰れにくくなる。その結果、イヤーパッド21(イヤーパッド87、イヤーパッド95、イヤーパッド99)は、ブーム本体部23の表面に設けられる各種のボタンが押されることによる押下荷重が作用しても、カップ部65が潰れにくくなる。
【0082】
また、ヘッドセット11において、カップ部65は、内径部63におけるカップ開口部67の周囲に、外側へ曲面で曲がった曲り部85を有する。
【0083】
このヘッドセット11では、カップ部65が、カップ開口部67に、曲り部85を有する。カップ部65は、耳介61の挿入される内径部63の底部69と反対側の開口側が、カップ開口部67となる。イヤーパッド21は、カップ部65を含む全体が、シリコンゴムにより一体に成形される。
【0084】
例えばカップ部65は、側壁部が均一な厚みの碗状で、曲り部85が無い場合、カップ開口部67の周囲が同心円の外径周縁と内径周縁となる。この外径周縁と内径周縁との間は、環状平坦面となる。外径周縁と内径周縁との間の半径方向の距離は、側壁部の厚みとなる。つまり、外径周縁は側壁部へと繋がり、内径周縁は内径部63へと繋がる。この場合、側壁部の外周面と環状平坦面とが交わる角はほぼ90°のエッジとなり、環状平坦面と内径部63の内周面とが交わる角もほぼ90°のエッジとなる。イヤーパッド21は、このカップ開口部67の外周側および内周側がエッジとなることにより、装着時に、肌に応力が集中しやすくなり、装着感が不快と(痛みが生じやすく)なる。また、カップ開口部67の周囲が環状平坦面であると、肌との接触時に、隙間が生じやすくなる。
【0085】
これに対し、イヤーパッド21は、カップ開口部67に外側へ曲面で曲がる曲り部85を有するので、曲面が押し付けられることにより、圧縮変形に伴って内径部63の内周面が接触面積を徐々に増加させるように変形して肌に密着する。このため、イヤーパッド21は、カップ開口部67がエッジの場合よりも肌触りが良好と(肌に馴染みやすく)なる。これに加え、イヤーパッド21は、カップ開口部67がエッジである場合に比べ、拡径方向へ変形しやすくなるので、カップ開口部67の一部分が縮径方向に変形し、隙間が生じることも抑制することができる。つまり、側壁部の一部分が内径部側へ倒れ込むような不規則な変形が抑制される。
【0086】
また、実施の形態1に係るイヤーパッド21は、ヘッドバンド31のハウジング19に装着されるイヤーパッド21であって、ハウジング19に取り付けられて耳介61の全体を内径部63に挿入して覆うカップ部65を有し、カップ部65には、内径部63を外部に開放する複数の貫通穴83が、内径部63のカップ開口部67よりもハウジング19の近くに形成されている。
【0087】
実施の形態1に係るイヤーパッド21では、カップ部65が、底部69からカップ開口部67に向かって徐々に拡径される有底筒状となる。つまり、カップ部65は、碗状やすり鉢状となる。カップ部65は、内径部63を外部に開放する複数の貫通穴83を有する。イヤーパッド21は、耳介61が内径部63に挿入され、カップ開口部67が側頭部に押し付けられることにより、カップ開口部67が閉鎖される。
【0088】
この状態で、イヤーパッド21は、カップ開口部67が閉鎖され、内径部63が貫通穴83により外部へ開放される。貫通穴83は、複数設けられるので、一部の貫通穴83から流入した空気が、他の貫通穴83から流出する。つまり、風通しがよくなり、湿り空気が外部へ排出され、蒸れが生じにくくなる。
【0089】
従来のイヤーパッドは、カップ開口部67が閉鎖されると内径部63が密閉空間となる。この密閉空間は、外耳道を介して鼓膜に通じる。鼓膜は、奥側の空間が中耳となる。耳は、カップ部65で塞がれて外耳道の先が密閉空間になると、耳のつまった感じ(閉塞感)の生じる場合がある。また、密閉空間となったカップ部65は、ヘッドセット11のボタンが押下されることにより、内径部63の気圧が中耳よりも高くなる場合がある。ボタンの押下が繰り返されれば、内径部63の気圧の変動も大きくなる。そのため、内径部63と中耳内との気圧のバランスが崩れて鼓膜に圧迫を与え、耳が詰まったような不快感や痛みが生じる虞もある。中耳は、耳管によって上咽頭につながり、中耳の圧力を一定に調整するが、ボタンの押下が頻繁となれば不快感や痛みが生じやすくなる。
【0090】
これに対し、イヤーパッド21は、カップ開口部67が閉鎖された使用時においても、空気が貫通穴83を通って外部と行き来するので、上記した耳の詰まったような不快感や痛みの生じることがない。これにより、密閉空間に耳介61が覆われてしまうことによる聴覚的な閉塞感や、鼓膜が圧迫されることによる聴力の低下が生じなくなる。また、ハウジング側から出るスピーカ音も籠もりにくくなる。
【0091】
イヤーパッド21は、貫通穴83が設けられることによって、外部からの音が聞こえやすくなる。これにより、イヤーパッド21は、スピーカ音を聞きながら、他の従業員との直接的な会話音も聞こえやすくすることができる。
【0092】
更に、イヤーパッド21は、貫通穴83がハウジング19の近くに配置される。即ち、貫通穴83は、ハウジング19とカップ開口部67との間の距離dの中間位置(d/2)よりもハウジング側に設けられる。つまり、貫通穴83は、カップ部65の中央側となる底部69の近傍に配置される。これにより、イヤーパッド21は、通常よりも内径部63で耳介61の占める割合が大きい人の場合であっても、貫通穴83が耳介61によって塞がれにくくなっている。
【0093】
従って、実施の形態1に係るヘッドセット11およびイヤーパッド21によれば、長時間の使用においても、イヤーパッド21の内部空間に蒸れが生じにくい。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示は、長時間の使用においても、イヤーパッドの内部空間に蒸れが生じにくくし、ユーザの装着感の劣化を抑制するヘッドセットおよびイヤーパッドとして有用である。
【符号の説明】
【0096】
11 ヘッドセット
19 ハウジング
21 イヤーパッド
23 ブーム本体部
31 ヘッドバンド
33 一端部
61 耳介
63 内径部
65 カップ部
67 カップ開口部
69 底部
81 底部中心
83 貫通穴
85 曲り部
89、97、101 リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25