(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】分注装置
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20240329BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20240329BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240329BHJP
G01F 13/00 20060101ALI20240329BHJP
B01J 4/02 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N35/10 G
G01N1/00 101K
G01F13/00 321M
B01J4/02 B
(21)【出願番号】P 2021509104
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011545
(87)【国際公開番号】W WO2020196057
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019056950
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 久人
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/141764(WO,A1)
【文献】特開平10-048222(JP,A)
【文献】特開2004-245697(JP,A)
【文献】特開2010-025804(JP,A)
【文献】特開2006-098336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
G01N 1/00
B01J 4/00 - 4/02
B01L 3/02
B65D 83/76
G01F 13/00
G01F 11/00
G01F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジと、
前記シリンジ内を移動するピストンと、
前記シリンジとチップとを接続するチップ接続部と、を有し、
前記チップ接続部は、第1流路と、第2流路と、前記チップが装着される先端部の側面に全周に亘ってそれぞれ設けられると共に前記チップの挿入方向に離間した2本の溝と、前記2本の溝のそれぞれに設けられた弾性体と、を有し、
前記第1流路は、前記ピストンの移動方向に延在して前記チップ接続部を貫通し、
前記第2流路は、前記第1流路とは離間しており、一端が、前記2本の溝の相互間に露出
し、他端が、前記2本の溝よりも前記シリンジ側に配置され、
さらに、圧力発生手段と、バルブと、圧力検出手段と、制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第2流路の前記他端から、前記第2流路内に向けて、正圧または負圧を加えるよう、前記バルブを制御し、
前記圧力検出手段は、前記第2流路内の圧力を検出し、
前記制御部は、前記圧力検出手段によって計測された圧力に基づき、前記チップの装着状態を判断する、
分注装置。
【請求項2】
前記第2流路は、前記他端が、前記チップ接続部に前記チップが装着された状態において前記チップと干渉しない位置に配置される、
請求項
1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記圧力検出手段によって計測された圧力と、前記バルブを開くことによって加えられた圧力と、を比較することで、前記チップの装着状態を判断する、
請求項
1又は2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記チップを前記チップ接続部に装着した際に、前記圧力検出手段で計測された圧力が、第1閾値を上回った場合、前記チップが前記チップ接続部へ正常に装着されていると判断する、
請求項
3に記載の分注装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記チップを前記チップ接続部から分離した際に、前記圧力検出手段で計測された圧力が、第2閾値を下回った場合、前記チップが前記チップ接続部から完全に分離されていると判断する、
請求項
3又は4に記載の分注装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記チップの前記チップ接続部への装着状態が不良であると一定回数連続して判断した場合、前記弾性体が劣化していると判断する、
請求項
3~5の何れか一項に記載の分注装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばバイオ関連技術での培養工程又は医薬品の製造工程で必要とされる、様々な液体をディスポ-ザブルチップを使用して吸上げ/注入する分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばバイオ関連技術での培養工程又は医薬品の製造工程で用いられている液体の分注装置において、ディスボーサブルのチップを用いるものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された従来の分注装置を示す図である。
【0004】
分注装置は、ディスポ-ザブルチップ5と、ディスポーザブルチップ5を装着し得るノズル軸1と、液体を吸引・吐出するための体積変化を付与する体積変化発生装置2とから構成される。
【0005】
さらに、ディスポ-ザブルチップ5と体積変化発生装置2との間に配設された圧力検知手段7と、制御手段9とが設けられている。制御手段9は、ノズル軸1の先端にディスポーザブルチップ5が装着された後に、液体試料を吸引する前に当該分注装置を制御してノズル軸1から気体を吸引又は吐出させる。このような構成により、ノズル軸1から気体を吸引又は吐出させた際に圧力検知手段7で検知された圧力から、ディスポーザブルチップ5の有無或いはディスポーザブルチップ5の良否が判定することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の装置では、ディスポーザブルチップ5が装着されていた場合には、ディスポーザブルチップ5の良否判定の際、実際にディスポーザブルチップ5から気体を吸引又は吐出させることとなる。これより、ディスポーザブルチップ5の劣化を早めてしまう、という課題を有している。
【0008】
本開示は、前記従来の課題を解決するもので、チップの劣化を早めることなく、チップの装着又は分離の状態を判断できる分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の分注装置は、シリンジと、前記シリンジ内を移動するピストンと、前記シリンジとチップとを接続するチップ接続部と、を有し、前記チップ接続部は、第1流路と、第2流路と、前記チップが装着される先端部の側面に全周に亘ってそれぞれ設けられると共に前記チップの挿入方向に離間した2本の溝と、前記2本の溝のそれぞれに設けられた弾性体と、を有し、前記第1流路は、前記ピストンの移動方向に延在して前記チップ接続部を貫通し、前記第2流路は、前記第1流路とは離間しており、一端が、前記2本の溝の相互間に露出し、他端が、前記2本の溝よりも前記シリンジ側に配置され、さらに、圧力発生手段と、バルブと、圧力検出手段と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2流路の前記他端から、前記第2流路内に向けて、正圧または負圧を加えるよう、前記バルブを制御し、前記圧力検出手段は、前記第2流路内の圧力を検出し、前記制御部は、前記圧力検出手段によって計測された圧力に基づき、前記チップの装着状態を判断する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本開示の分注装置によれば、チップの劣化を早めることなく、チップの装着又は分離の状態を判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態における分注装置のチップ接続部へチップが正常に装着されている状態を正面から見た断面図
【
図2】本実施形態における分注装置のチップ接続部へチップが正常に装着されていない状態を正面から見た断面図
【
図3】本実施形態における分注装置のチップ接続部へチップが装着されていない状態を正面から見た断面図
【
図4】本実施形態におけるチップ接続部へチップを装着した際のチップの装着状態を判断するフローチャート
【
図5】本実施形態におけるチップ接続部からチップを分離した際のチップの分離状態を判断するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における分注装置のチップ接続部へチップが正常に装着されている状態を正面から見た断面図である。
【0014】
チップ接続部51には、上部にシリンジ52が、下部にチップ53が装着されている。
【0015】
チップ接続部51には、内部に第1流路61及び第2流路62が設けられている。
【0016】
チップ接続部51のうち、チップ53が装着される先端部は円柱状となっている。この先端部の側面には、全周に亘って2本の円環状の溝54a、54bが、チップ53の挿入方向(
図1の紙面における上下方向)に離間して設けられている。これらの溝54a、54bには、それぞれに嵌合する弾性体55a、55bが装着されている。
【0017】
ここで弾性体55a、55bには、装着されるチップ53の内径とほぼ同じ直径となるものが選定される。
【0018】
シリンジ52とピストン56とは同じ軸上に配される。
【0019】
第1流路61は、分注の際、ピストン56を移動させることで発生した空気圧によって、チップ53内部に試料を吸引/吐出するための流路であり、ピストン56の移動方向に延在してチップ接続部51を貫通する。また、第1流路61の両端は、シリンジ52およびピストン56の当該軸上に配されている。
【0020】
第2流路62は、第1流路61とは離間している。第2流路62の一端側が、第1流路61に対して垂直に延在し、第2流路62の一端が、チップ接続部51の先端部において、2本の円周状の溝54a、54bの相互間に露出している。
【0021】
第2流路62の他端は、チップ接続部51における後端部(
図1の紙面上側)で、L字継手57を介して、ホース58と接続される。そこで、この他端は、チップ接続部51にチップ53が装着されたとき、チップ53によって塞がれない位置にある必要がある。そのため、本実施の形態では、第2流路62の他端部側を、第1流路61に対して垂直な方向に延在させて、第2流路62のホース58と装着されるこの第2流路62の他端がチップ接続部51の後端部の側面において開口するようにしている。
【0022】
つまり、チップ接続部51は先端部(
図1の紙面下側)よりも後端部(
図1の紙面上側)の径が大きな形状とされている。この結果、この先端部と後端部との間の段差がストッパとなって、このストッパにより、チップ53のチップ接続部51への差し込み量が規制されるようになっている。したがって、チップ接続部51の後端部の側面は、チップ53により塞がれることがないので、この後端部の側面において、第2流路62の他端を開口させている。
【0023】
ホース58の先には、空気圧発生手段70(圧力発生手段)と、空気圧検出手段72(圧力検出手段)と、バルブ71とが装着されている。
【0024】
空気圧発生手段70は、例えばコンプレッサーもしくは真空ポンプであり、コンプレッサーによって加圧することで第2流路62に正圧を、真空ポンプで吸引することで第2流路62に負圧を発生させることができる。空気圧発生手段70としては、一般的に用いられる加圧、減圧手段を用いることができる。
【0025】
空気圧発生手段70とチップ接続部51との間にはバルブ71が設けられている。一般的に、空気圧発生手段70で発生された圧力が常時供給されてしまう状況は好ましくない。そのため、必要時にバルブ71を開くことで、第2流路62に圧力を供給するようにしている。
【0026】
空気圧検出手段72は、ホース58中の空気圧を計測する圧力スイッチである。空気圧検出手段72は、計測された空気圧を表示するだけでなく、少なくとも2つの閾値を設定することが可能で、計測された空気圧が閾値よりも高いか低いに応じて、HIGH/LOWの信号を出力する。
【0027】
さらに分注装置は、制御部73を備えている。制御部73は、バルブ71の開閉制御だけでなく、空気圧検出手段72から出力されるHIGH/LOWの信号に応じて、チップ接続部51に対するチップ53の装着状態を判断する。
【0028】
これとは別に、空気圧検出手段72は計測した空気圧に相関するアナログ信号を発生し、このアナログ信号を制御部73に入力するようにしてもよい。この場合は、制御部73は、空気圧検出手段72から入力されたアナログ信号と閾値と比較することで、チップ接続部51へのチップ53の装着状態を判断する。
【0029】
チップ接続部51にチップ53が装着されているか否かによって空気圧検出手段72で計測される空気圧が変化するため、チップ53の装着状態を判断することができる。以下、空気圧検出手段72によって計測される空気圧によってチップ53の装着状態を判断する方法について説明する。
【0030】
チップ接続部51へチップ53が正常に装着されている場合を、
図1を参照して説明する。
【0031】
この場合、チップ接続部51の溝54a,54bの相互間に露出している第2流路62の出口(一端)は、チップ53の内壁と弾性体55a、55bとで塞がれる。
【0032】
このため、空気圧検出手段72で計測される空気圧は、空気圧発生手段70により発生させた空気圧に対して、微小な隙間などの要因による圧損分が減圧された圧力となる。したがって、空気圧検出手段72により計測される空気圧の絶対値は、空気圧発生手段70により発生させた空気圧の絶対値を下回る。
【0033】
一方、チップ接続部51へチップ53が正常に装着されていない場合を、
図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態における分注装置のチップ接続部へチップが正常に装着されていない状態を正面から見た断面図である。
【0034】
この場合、チップ接続部51の溝54a,54bの相互間に露出している第2流路62の出口(一端)は、完全には封止されない。すなわち、第2流路62の出口は、チップ53の内壁と弾性体55a、55bとで塞がれない。
【0035】
このため、空気圧検出手段72で計測される空気圧は、空気圧発生手段70により発生させた空気圧に対して、第2流路62の出口の塞がれていない部分から漏れる空気量相当が減圧されたものとなる。
【0036】
具体的には、
図2の状態において、空気圧検出手段72により計測される空気圧の絶対値は、空気圧発生手段70により発生させた空気圧の絶対値を下回り、
図1に示す正常な装着状態において空気圧検出手段72により計測される空気圧の絶対値を下回る。
【0037】
また、チップ接続部51へチップ53が装着されていない場合を、
図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態における分注装置のチップ接続部51へチップ53が装着されていない状態を正面から見た断面図である。
【0038】
この場合、チップ接続部51の溝54a,54bの相互間に露出している第2流路62の出口(一端)は、完全に開放された状態となる。
【0039】
このため、空気圧検出手段72で計測される空気圧は、空気圧発生手段70により発生させた空気圧に対して、第2流路62の出口から漏れる空気量相当が減圧されたものとなる。
【0040】
具体的には、
図3の状態において、空気圧検出手段72により計測される空気圧の絶対値は、空気圧発生手段70により発生させた空気圧の絶対値を下回り、
図2の状態において空気圧検出手段72により計測される空気圧の絶対値をさらに下回る。
【0041】
上記の装着様態のパターンを判断するフローについて説明する。
【0042】
まず、空気圧での判定のために、第1閾値と第2閾値の2つの閾値を設定する。
【0043】
第1閾値は、上述した、チップ接続部51へチップ53が正常に装着されている状態を判断するための値である。
【0044】
第2閾値は、上述した、チップ接続部51へチップ53が装着されていない状態を判断するための値である。
【0045】
第1閾値、第2閾値は、統計学の理論に従って、次の様にして決定することができる。
1)チップ53をチップ接続部51へ装着し、状態を確認する。
2)正常に装着されていた場合、試行回数i回目での装着時の空気圧の絶対値Pciを記録する。
3)チップ53をチップ接続部51から分離する。
4)試行回数i回目での分離時の空気圧の絶対値Psiを記録する。
5)1)~4)をn回繰返す。
6)チップ53がチップ接続部51へ正常に装着された状態での空気圧の記録値Pc1、Pc2、…、Pcnの平均Pcaveと標準偏差Pcdevとを算出する。
7)チップ53がチップ接続部51へ装着されていない状態での空気圧の記録値Ps1、Ps2、…、Psnの平均Psaveと標準偏差Psdevとを算出する。
8)第1閾値を下式(1)により決定する。
第1閾値=正常に装着された状態での空気圧の平均Pcave-正常に装着された状態での空気圧の標準偏差Pcdev ・・・(1)
9)第2閾値を下式(2)により決定する。
第2閾値=装着されていない状態での空気圧の平均Psave+装着されていない状態での空気圧の標準偏差Psdev ・・・(2)
【0046】
こうして決定された第1閾値、第2閾値については、以下のように解釈できる。
【0047】
チップ接続部51へチップ53が正常に装着されている状態であるにもかかわらず、その状態での空気圧が第1閾値を下回る確率は約15.966%となる。
【0048】
チップ接続部51へチップ53が装着されていない状態にもかかわらず、その状態で空気圧が第2閾値を上回る確率は、約15.966%となる。
【0049】
第1閾値または第2閾値もしくはその両方を、上式(1)または上式(2)によって算出された閾値に任意の安全率をかけた値としても良い。このように安全率を使用することで、チップ53の装着状態に対する判断の精度を向上させることができる。
【0050】
チップ接続部51へチップ53を装着した際のチップ53の装着状態を判断するフローについて、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態におけるチップ接続部51へチップ53を装着した際のチップ53の装着状態を判断するフローチャートである。
【0051】
まず、チップ接続部51へチップ53を装着する(S1)。
次に、制御部73がバルブ71を開くことで、第2流路62に対して圧力を供給する(S2)。
次に、制御部73が、空気圧検出手段72から出力された信号を確認する(S3)。
【0052】
空気圧検出手段72から出力された信号によって、現在の状態での空気圧が、第1閾値を上回った場合(S4でYes)、制御部73は、チップ53が正常に装着されていると判断する(S5)。
【0053】
空気圧検出手段72によって計測された空気圧が、第1閾値を以下となった場合(S4でNo)、制御部73は、チップ53が装着不良状態または装着されていないと判断する(S6)。
【0054】
上記のフローによって、チップ接続部51へチップ53を装着するときの装着状態を判断することができる。
【0055】
装着不良があった場合、分注時の液漏れや空気漏れによる液量精度の悪化等を招く可能性がある。そのため、チップ接続部51へのチップ53の装着時は、装着不良を確実に防止するため、第1閾値を用いて装着状態を判断することが望ましい。
【0056】
次に、チップ接続部51からチップ53を分離した際のチップ53の分離状態を判断するフローについて、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態におけるチップ接続部51からチップ53を分離した際のチップ53の分離状態を判断するフローチャートである。
【0057】
まず、チップ接続部51からチップ53を分離する(S11)。
【0058】
次に、制御部73がバルブ71を開くことで、第2流路62に対して圧力を供給する(S12)。
【0059】
次に、制御部73が、空気圧検出手段72から出力された信号を確認する(S13)。
【0060】
制御部73が、空気圧検出手段72から出力された信号に基づいて、空気圧が第2閾値を下回ったと判断した場合(S14でYes)、制御部73は、チップ53が完全に分離されていると判断する(S15)。
【0061】
空気圧検出手段72によって計測された空気圧が、第2閾値以上となった場合(S14でNo)、制御部73は、チップ53の分離が不完全な状態(分離不良状態)であると判断する(S16)。
【0062】
上記のフローによって、チップ接続部51からチップ53が分離されたときの分離状態を判断することができる。
【0063】
分離不良があった場合、次の分注作業に移行する際に分離されていないチップ53が存在することで、作業不良を起こす可能性がある。そのため、チップ接続部51からのチップ53の分離時は、分離不良を確実に予防するため、第2閾値を用いて装着状態を判断することが望ましい。
【0064】
チップ53と接する弾性体55a、55bは、チップ53が装着または分離される毎に、チップ53の内側により擦られるため、ある程度の回数、チップ53の装着または分離が行われると劣化する。
【0065】
弾性体55a、55bが劣化することによって、チップ接続部51へチップ53を装着するとき、チップ53が正常に装着されたとしても、空気圧検出手段72で計測される空気圧が第1閾値を上回らない状態となる可能性がある。
【0066】
そこで、制御部73が、チップ53が装着不良状態であるとの判断、または、チップ53が装着されていないとする判断を、一定回数連続して行った場合、制御部73は、弾性体55a、55bが劣化していると判断するようにしても良い。
【0067】
本開示の実施の形態によれば、実際にチップ53の先端から空気などの流体を吸引又は吐出させなくとも、チップ53の装着後や分離後に、チップ53の装着又は分離の状態を判断できる。したがって、チップ53の劣化を早めることなくチップ53の装着又は分離の状態を判断できる。
【0068】
2019年3月25日出願の特願2019-056950の日本出願に含まれる明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示の分注方法とこれを実施する分注装置は、チップを装着した直後に、または分離した直後に、実際にチップから流体を吸引又は吐出させなくとも、チップの装着の有無や良否を正確に判断することができ、チップ53の劣化を早めることなく当該判断を行える。このため、バイオ関連技術での培養工程や医薬品の製造工程で自動化されたでの分注工程に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
51 チップ接続部
52 シリンジ
53 チップ
54a 溝
54b 溝
55a 弾性体
55b 弾性体
56 ピストン
57 L字継手
58 ホース
61 第1流路
62 第2流路
70 空気圧発生手段(圧力発生手段)
71 バルブ
72 空気圧検出手段(圧力検出手段)
73 制御部