(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ガラスパネルユニット、ゲッタ材
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20240329BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20240329BHJP
E06B 3/677 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C03C27/06 101J
B01J20/18 D
E06B3/677
(21)【出願番号】P 2022519930
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2021016576
(87)【国際公開番号】W WO2021225083
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2020082839
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020191933
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕之
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 英一
(72)【発明者】
【氏名】石橋 将
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和也
(72)【発明者】
【氏名】野中 正貴
(72)【発明者】
【氏名】清水 丈司
(72)【発明者】
【氏名】小杉 直貴
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/188424(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/167666(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/003475(WO,A1)
【文献】特開2016-108799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/06,
B01J 20/18,20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガラス板と、
前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する枠体と、
前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記枠体とで囲まれた減圧空間と、
前記減圧空間内に配置されたガス吸着体と、
を備え、
前記ガス吸着体は、ゲッタ材を含有し、
前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子
と、水素化触媒と、を含有し、
前記ゼオライトがZSM-5型の銅イオン交換ゼオライトであり、
前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が200nm以上であり、
前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である、
ガラスパネルユニット。
【請求項2】
前記複数の粒子の全重量のうち、前記粒子の径が200nm未満の粒子の重量が半分未満である、
請求項1に記載のガラスパネルユニット。
【請求項3】
前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が400nm以上である、
請求項1又は2に記載のガラスパネルユニット。
【請求項4】
前記減圧空間における窒素の分圧が0.1Pa以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスパネルユニット。
【請求項5】
前記粒子が吸着した窒素の20℃における総量が、前記減圧空間の容積をV(m
3)としたとき、0.1V(Pa・m
3)以上である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスパネルユニット。
【請求項6】
前記粒子は、一次粒子であり、
前記径は、前記粒子の最短幅である、
請求項1~5のいずれか一項に記載のガラスパネルユニット。
【請求項7】
第1ガラス板と、
前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する枠体と、
前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記枠体とで囲まれた減圧空間と、
前記減圧空間内に配置されたガス吸着体と、
を備え、
前記ガス吸着体は、ゲッタ材を含有し、
前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子と、水素化触媒と、を含有し、
前記ゼオライトがZSM-5型の銅イオン交換ゼオライトであり、
前記複数の粒子の全数のうちの半分以上の数を占める前記粒子の径が200nm以上であり、
前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である、
ガラスパネルユニット。
【請求項8】
第1ガラス板と、
前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する枠体と、
前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記枠体とで囲まれた減圧空間と、
前記減圧空間内に配置されたガス吸着体と、
を備え、
前記ガス吸着体は、ゲッタ材を含有し、
前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子と、水素化触媒と、を含有し、
前記ゼオライトがZSM-5型の銅イオン交換ゼオライトであり、
前記複数の粒子が占める全体積のうちの半分以上の体積を占める前記粒子の径が200nm以上であり、
前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である、
ガラスパネルユニット。
【請求項9】
ゼオライトの結晶からなる複数の粒子と、水素化触媒と、を含有し、
前記ゼオライトがZSM-5型の銅イオン交換ゼオライトであり、
前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が200nm以上であり、
前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である、
ゲッタ材。
【請求項10】
前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が400nm以上である、
請求項9に記載のゲッタ材。
【請求項11】
前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が600nm以上である、
請求項9又は10に記載のゲッタ材。
【請求項12】
前記複数の粒子の各径が1000nm以上である、
請求項9~11のいずれか一項に記載のゲッタ材。
【請求項13】
前記粒子は、一次粒子であり、
前記径は、前記粒子の最短幅である、
請求項9~12のいずれか一項に記載のゲッタ材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラスパネルユニット、ゲッタ材、ゲッタ材組成物及びガラスパネルユニットの製造方法に関する。詳細には、断熱用ガラスパネルユニット、ゲッタ材、ゲッタ材組成物及びガラスパネルユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部にガス吸着体を有するガラスパネルユニットが開示されている。また、特許文献1には、ガス吸着体としてゼオライト系の材料を用いる点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
しかし、特許文献1には、ガス吸着体を構成するゼオライトの大きさについて何ら開示されておらず、改良の余地がある。
【0005】
本開示の課題は、ガラスパネルユニットの製造プロセスを低温化しても、低圧領域で吸着性能を発揮するゲッタ材を有するガラスパネルユニット、ゲッタ材、ゲッタ材組成物及びガラスパネルユニットの製造方法を提供することである。
【0006】
本開示の一態様に係るガラスパネルユニットは、第1ガラス板と、前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、枠体と、減圧空間と、ガス吸着体と、を備える。前記枠体は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する。前記減圧空間は、前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記枠体とで囲まれる。前記ガス吸着体は、前記減圧空間内に配置される。前記ガス吸着体は、ゲッタ材を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が200nm以上である。前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である。
【0007】
本開示の一態様に係るガラスパネルユニットは、第1ガラス板と、前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、枠体と、減圧空間と、ガス吸着体と、を備える。前記枠体は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する。前記減圧空間は、前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記枠体とで囲まれる。前記ガス吸着体は、前記減圧空間内に配置される。前記ガス吸着体は、ゲッタ材を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子の全数のうちの半分以上の数を占める前記粒子の径が200nm以上である。前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である。
【0008】
本開示の一態様に係るガラスパネルユニットは、第1ガラス板と、前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、枠体と、減圧空間と、ガス吸着体と、を備える。前記枠体は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する。前記減圧空間は、前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記枠体とで囲まれる。前記ガス吸着体は、前記減圧空間内に配置される。前記ガス吸着体は、ゲッタ材を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子の全体積のうちの半分以上の体積を占める前記粒子の径が200nm以上である。前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である。
【0009】
本開示の一態様に係るガラスパネルユニットは、第1ガラス板と、前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、枠体と、減圧空間と、ガス吸着体と、を備える。前記枠体は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する。前記減圧空間は、前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記枠体とで囲まれる。前記ガス吸着体は、前記減圧空間内に配置される。前記ガス吸着体は、ゲッタ材を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子と、水素化触媒と、を含有する。
【0010】
本開示の一態様に係るゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が200nm以上である。前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である。
【0011】
本開示の一態様に係るゲッタ材組成物は、ゲッタ材と、溶媒と、を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記粒子の活性化可能温度は400℃以下である。
【0012】
本開示の一態様に係るゲッタ材組成物は、ゲッタ材と、溶媒と、を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子は、径が200nm以上の粒子を含む。
【0013】
本開示の一態様に係るガラスパネルユニットの製造方法は、加工工程と、組立工程と、接合工程と、排気工程と、を含む。前記加工工程は、前記ゲッタ材組成物を用意する。前記組立工程は、第1ガラス板と、第2ガラス板と、枠状の周壁と、内部空間と、前記ゲッタ材組成物から得られるガス吸着体と、排気口と、を備える組立て品を用意する。前記接合工程は、前記周壁を溶融させて前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する。排気工程は、排気口を介して前記内部空間を排気して減圧空間とする。
【0014】
本開示の一態様に係るガラスパネルユニットは、第1ガラス板と、前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、枠体と、減圧空間と、ガス吸着体と、を備える。前記枠体は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する。前記減圧空間は、前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記枠体とで囲まれる。前記ガス吸着体は、前記減圧空間内に配置される。前記ガス吸着体は、ゲッタ材を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が200nm以上である。封止材の軟化点または融点または接着可能温度の少なくとも1つが350℃以下である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1Aは、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの中間体である組立て品を示す平面図である。
図1Bは、
図1AのA-A線断面図である。
【
図2】
図2は、同上のガラスパネルユニットを示す平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図10】
図10は、平衡圧-吸着量の関係図(対数軸)である。
【
図12】
図12は、残留ガス量-結晶(粒子)の径の関係図である。
【
図13】
図13Aは、水と有機溶媒それぞれにおける残留ガス量-結晶(粒子)の径の関係図である。
図13Bは、残留ガス量比-結晶(粒子)の径の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本開示に至った経緯を説明する。
【0017】
ガラスパネルユニットは、二枚のガラス板の間に減圧空間(又は真空空間)を有することにより、断熱性を有する。このようなガラスパネルユニットの断熱性は、二枚のガラス板の間に減圧空間があっても、この減圧空間にガスが残ることで低下してしまうと考えられる。このため、減圧空間内にガスが残る量を減らすため、ガス吸着体が減圧空間内に設けられている。ガス吸着体として、ゼオライトからなるゲッタ材を有するものが従来用いられている(特許文献1参照)。
【0018】
大気中や溶液中等に置かれたゼオライトは、大量のガスを吸着した状態になっている。このため、減圧空間内で十分な吸着性能を持つガス吸着体としてゼオライトを用いるためには、真空中で加熱することによってゼオライトが吸着しているガスを脱離させ(活性化)、吸着サイトを発現させる必要がある。特に、銅イオン交換型ゼオライトは酸化銅が還元(酸素が脱離)することによって強力な窒素吸着サイトが発現する。このとき、十分高い温度で活性化しないと、酸素、または水分などの他のガスが脱離せず、十分な吸着性能が得られない。
【0019】
ガラスパネルユニットの製造プロセスにおけるゼオライトの活性化は、例えば第1溶融工程(接合工程)の途中又は終了時に開始される排気工程において行うことができる。このとき、排気工程においてゼオライトを十分加熱できれば、十分な吸着性能が得られる。一方、生産タクト改善や製造設備の簡略化、強化ガラスへの対応などのため、ガラスパネルユニットの製造工程は低温化が望まれている。このため、ゼオライトは低温の排気工程(低温の活性化)でも十分に吸着能力が発揮されることが望ましい。
【0020】
一般的に低圧領域での吸着が難しい窒素も、ガラスパネルユニットの製造プロセスや、製造後、ガラスパネルユニットを使用中に紫外線があたることによっても放出される。このため、窒素も吸着できる銅イオン交換ゼオライトは特に望ましい。しかし、低温プロセス(低温での排気工程、低温での活性化工程)で銅イオン交換ゼオライトを十分に活性化できない場合、窒素に対する強力な吸着サイトを発現させにくくなり、十分な吸着性能が得られない。
【0021】
ゼオライトの結晶からなる粒子においては、表面に多数の細孔が形成されており、この細孔より吸着対象であるガスが吸い込まれて、入り組んだ内部空間内に保持(吸着)される。このようなゼオライトの粒子のガス吸着能力は、一般的に、表面積の大きさに比例するとされている。ゼオライトの粒子の表面積については、多数のゼオライトの粒子の重量の合計値が一定である場合、言い換えると単位重量あたりにおいて、ゼオライトの粒子の径が小さくゼオライトの粒子の数が多いほど、ゼオライトの粒子の表面積の合計値が大きくなる。このため、ゼオライトの粒子の径が小さいほど、単位重量あたりのガス吸着能力は高くなる。なお、本開示では、ゼオライトの粒子の径と、ゼオライトの結晶サイズ(結晶の大きさ)とは、同義として説明する。また本開示では、ゼオライトの粒子は、一次粒子として説明している。すなわち、ゼオライトの粒子は、凝集体(二次粒子)ではなく、ゼオライトの結晶である。
【0022】
しかしながら、発明者らは、鋭意研究の結果、大気圧よりも所定量減圧された低圧領域(特に真空に近い領域)において、ゼオライトの粒子の体積の合計値が一定であっても、ゼオライトの粒子の径が大きい方が、ゼオライトの粒子の径が小さい場合よりもガス吸着能力が大きくなることを見出した。また、特にゼオライトが低温で活性化される場合において、この傾向が著しく顕著になることを見出した。このようなゼオライトの粒子の性質を利用して、低圧領域において高いガス吸着能力を得るため、本開示に至った。すなわち、本実施形態では、低圧領域において高いガス吸着能力を有するガス吸着体を得るための、真空又は減圧空間断熱用のゲッタ材及びゲッタ材組成物を提供することができる。
【0023】
<第1実施形態>
次に、本実施形態に係るガラスパネルユニット10及びその製造方法の概要を説明する。
【0024】
図2に示すように、ガラスパネルユニット10は、第1ガラス板20と、第1ガラス板20に対向する第2ガラス板30と、枠体40と、減圧空間50と、ガス吸着体60と、を備える。枠体40は、第1ガラス板20と第2ガラス板30とを気密に接合する。減圧空間50は、第1ガラス板20と、第2ガラス板30と、枠体40とで囲まれる。ガス吸着体60は、減圧空間50内に配置される。ガス吸着体60は、ゲッタ材を含有する。
【0025】
ガラスパネルユニット10の製造方法は、加工工程と、組立工程(
図3~
図5参照)と、接合工程(第1溶融工程、
図6参照)と、排気工程(
図6参照)とを含む。加工工程は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有するゲッタ材を得るゲッタ材作製工程を含む。組立工程は、組立て品100を用意する工程である。組立て品100は、第1ガラス板200と、第2ガラス板300と、枠状の周壁410と、内部空間500と、ガス吸着体60と、排気口700とを備える(
図1A及び
図1B参照)。第2ガラス板300は、第1ガラス板200に対向する。周壁410は、第1ガラス板200と第2ガラス板300との間にある。内部空間500は、第1ガラス板200と、第2ガラス板300と、周壁410とで囲まれる。ガス吸着体60は、内部空間500内に配置され、かつ上記のゲッタ材を含有する。排気口700は、内部空間500と外部空間とをつなぐ。接合工程は、周壁410を溶融させて第1ガラス板200と第2ガラス板300とを気密に接合させる工程である。排気工程は、排気口700を介して内部空間500を排気して減圧空間50とする工程である。ガラスパネルユニット10の製造方法(以下、製造方法という場合がある)を、
図1~
図8を参照して詳細に説明する。この製造方法は、
図2のようなガラスパネルユニット10を製造する方法である。なお、本実施形態では、方向D1は第1ガラス板200の厚み方向と平行な方向であり、方向D2は、方向D1と直交する方向であり、方向D3は方向D1及び方向D2と直交する方向である。また方向D1は第1方向であってもよく、方向D2は第2方向であってもよく、方向D3は第3方向であってもよい。
【0026】
製造方法は、準備工程と、除去工程とを含む。
【0027】
準備工程は、
図7に示す仕掛り品110を用意する工程である。仕掛り品110は、
図1A及び
図1Bに示す組立て品100から形成される。すなわち、仕掛り品110はガラスパネルユニット10(
図2参照)を作製するための中間生成物であり、組立て品100は仕掛り品110を作製するための中間生成物である。
【0028】
準備工程は、加工工程と、組立工程(
図3~
図5参照)と、接合工程(第1溶融工程、
図6参照)と、排気工程(
図6参照)と、封止工程(第2溶融工程、
図6及び
図7参照)とを含む。
【0029】
加工工程は、ゲッタ材組成物を用意する工程である。このゲッタ材組成物は、少なくとも、ゼオライトと、溶媒(例えば、水及び有機溶剤の少なくとも一方)とを含有する。そして、ガス吸着体60はゲッタ材組成物の乾燥物である。加工工程は、加熱工程と、ゲッタ材作製工程と、混合工程とを含む。ゲッタ材組成物は、液体、ペースト、インク、スラリーなど、流動性があることが好ましく、塗布又は印刷などで供給可能な形態であることが好ましい。
【0030】
加熱工程は、ガス吸着体60に含有されるゼオライトを加熱する工程である。加熱工程の温度は、排気工程の温度(後述の排気温度Te)よりも高いことが好ましく、第1溶融工程の温度(後述の第1溶融温度Tm1)よりも高いことがより好ましく、第2溶融工程の温度(後述の第2溶融温度Tm2)よりも高いことが特に好ましい。この場合、組立て品100を作製する前に、ゼオライトが吸着していたガス成分を脱離させることができる。また、加熱工程において、ゼオライトを加熱すると、ゼオライトに吸着されていた酸素を加熱工程によって脱離させることができる。これにより、接合工程以降で酸素を脱離させる量が減らすことができるため、排気工程を低温化でき、その結果、第1溶融工程、及び第2溶融工程を低温化させることができる。したがって、ガラスパネルユニット10の製造コストを削減することができる。なお、この加熱工程は任意の工程であり、行われなくてもよい。
【0031】
ゼオライトは、表面に多数の細孔が形成された、多孔質の結晶からなる小さな粒子(微粒子)である。ゼオライトの細孔より吸着対象であるガスが吸い込まれて、入り組んだ内部空間内にガスが保持(吸着)される。ゼオライトが吸着するガスとして、例えば、水蒸気、二酸化炭素、酸素、窒素、及びメタン等の炭化水素等が挙げられる。中でも、ゼオライトは、他の一般的な吸着材では吸着しにくい窒素及び炭化水素等のガス(特に窒素)を減圧空間内で吸着することができる。ゼオライト構造は、下記一般式(1)の組成を有する。
【0032】
Me2/XO・Al2O3・mSiO2・nH2O,…(1)
ここで、Meは細孔内に存在するx価のカチオンである。mはシリカ/アルミナ比であり、2以上の整数である。nは0以上の整数である。式(1)の組成中、各Alで1価の負電荷が生じている。このため、Meが2価以上のカチオンである場合、ゼオライトの細孔内で正電荷が生じる。また、Meが1価のカチオンである場合、細孔内は電気的に中性となる。
【0033】
ゼオライト構造では、Meは1価のカチオンであってもよい。Meは2価以上のカチオンであってもよい。Meは1価のカチオンと、2価以上のカチオンを組み合わせていてもよい。1価のカチオンとして、例えば、Li+、Na+、及びK+等のアルカリ金属イオン;プロトン;並びにアンモニウムイオン(NH4
+)、Ag+等が挙げられる。2価以上のカチオンとして、Ca2+、Mg2+、及びBa2+等のアルカリ土類金属イオン;並びにCu2+、Au2+、Fe2+、Zn2+及びNi2+等の遷移金属イオンが挙げられる。
【0034】
ゼオライト構造として、例えば、A型ゼオライト構造、X型ゼオライト構造、Y型ゼオライト構造、L型ゼオライト構造、β型ゼオライト構造、モルデナイト構造、フェリエライト構造、USYゼオライト構造、CHA型ゼオライト構造、SAPO型ゼオライト構造、及びZSM-5構造(MFI)等が挙げられる。ゼオライトは、上記の構造以外の任意のゼオライト構造を含有してもよい。
【0035】
一般式(1)中の水(H2O)は、結晶水としてゼオライトに含まれている。このような水は、例えば細孔内に含まれている。ゼオライトを加熱すると、この結晶水だけでなく、加熱前に吸着していた酸素等のガス成分をゼオライトから脱離させることができる。これにより、ゼオライトが有するガス吸着性を向上させることができる。なお、結晶水が完全に脱離すると、一般式(1)中のnは0になる。
【0036】
加熱工程で得られるゼオライトは、酸素が脱離し、かつ窒素、メタン及び水分等のうち少なくとも1種の成分(以下、吸着成分という場合がある)を吸着していることが好ましい。すなわち、加熱工程で得られるゼオライトの吸着容量は吸着成分で飽和していることが好ましい。この場合、吸着成分が排気工程等の加熱時にゼオライトから脱離することにより、ゼオライトのガス吸着性を回復させることができる。なお、加熱工程後のゼオライトが水と混合されると、このゼオライトに、窒素又はメタンが吸着されていても、その一部は水分に置換されると考えられる。
【0037】
ゼオライトは、銅イオン交換ゼオライトを含有することが好ましい。この銅イオン交換ゼオライトは、一般式(1)中のMeが銅イオンである成分である。ここで、銅イオン交換ゼオライトは、ゼオライト構造に銅イオンを保持させた成分である。このため、「銅イオン交換ゼオライト」は、ゼオライト構造に銅イオンを保持させる前の成分まで限定しない。また、ゼオライトの結晶構造はZSM-5型であることがより好ましい。銅イオン交換されたZSM-5型ゼオライト(Cu-ZSM-5)は、室温においても低圧下で窒素やメタン等を強く吸着することができる。なお、ZSM-5型のシリカ/アルミナのモル比は100以下が望ましく、20以上45以下がより望ましいが、特にこれに限るものではない。また、銅の含有量は1~10wt%であることが望ましいが、これに限るものではない。本開示に係るガス吸着体60が含有するゼオライトの結晶は、所定の条件を有するものであり、この点については、後で詳述する。
【0038】
ゲッタ材作製工程は、加熱工程後または未加熱のゼオライトを用いてゲッタ材を得る工程である。例えば、ゲッタ材作製工程は、ゼオライトからなる粒子(結晶)と、ゼオライト以外の化合物からなる粒子とを混合して複合ゲッタ材を得る工程を含む。またゲッタ材作製工程は、所定の粒度分布を有する複数の粒子(ゼオライトからなる粒子と、それとは種類の異なるゼオライトからなる粒子またはゼオライト以外の化合物からなる粒子)を調製する工程を含む。ゲッタ材は、組成や結晶構造、粒度分布等の異なる複数種のゼオライトを含んでいてもよく、ゼオライト以外の粒子を含んでいてもよい。ゲッタ材作製工程の後、混合工程が行われる。
【0039】
混合工程は、ゲッタ材と溶媒とを混合してゲッタ材組成物を得る工程である。ゲッタ材は上述のようなゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。またゲッタ材はゼオライト以外の化合物からなる粒子を含んでいてもよい。溶媒としては、水、有機溶媒、及び水と有機溶媒の混合物を使用することができる。
【0040】
溶媒として水を用いる場合、このゲッタ材組成物では水がゲッタ材を覆うようにして存在する。これにより、ゲッタ材組成物の状態で、ゲッタ材は空気と接しにくくなる。すなわち、ゲッタ材は空気(特に空気中の酸素)等を吸着しにくくなる。したがって、ゲッタ材組成物の保存が容易となり、ガラスパネルユニット10を製造する際の煩雑性を軽減できる。ゲッタ材組成物における水の含有量は、任意に選択できる。溶媒は水を使用できる。また溶媒は水を主成分とする溶液を使用できる。例えば、溶媒は、不純物としての有機物やカルシウム、ナトリウムなどの成分が混合された水であってもよい。
【0041】
また溶媒は、水と有機溶媒の混合物であってもよい。この場合、水と、50質量%以下のエタノール等の有機溶媒とが混合された混合溶媒であってもよい。また有機溶媒は、エタノール又はブチルカルビトールアセテート、ターピネオールなどの有機溶媒及びこれらの混合物であってもよい。溶媒として水を使用する場合は、可能な限り純水、超純水、イオン交換水、蒸留水等を用いることが望ましい。
【0042】
また溶媒として有機溶媒を用いる場合、有機溶媒の分子サイズが、ゼオライト(特に、ZSM-5型)の細孔径と同等か、細孔径よりも大きいことが好ましい。例えば、ゼオライトの細孔径が5.5Åの場合、有機溶媒の分子サイズ(分子の最大幅)が5.5Å以上であることが好ましい。
【0043】
有機溶媒の分子サイズが、ゼオライトの細孔径と同等の場合、ゼオライトの細孔に入り込む溶媒の分子が少なくなる。すなわち、ゼオライトへの有機溶媒の分子の拡散速度が遅く、ゼオライトの結晶内部にまでは拡散する有機溶媒の分子が少なくなる。したがって、ゼオライトの粒子の表面近傍に有機溶媒の分子が留まるので、有機溶媒の分子を脱離させるのにそれほどエネルギーを要さない。
【0044】
また有機溶媒の分子サイズが、ゼオライトの細孔径より大きい場合、多くの有機溶媒の分子がゼオライトの細孔に入りこめないため、ゼオライトの粒子の表面に有機溶媒の分子が留まり、有機溶媒の分子を脱離させるのに、さらにエネルギーを要さない。
【0045】
したがって、有機溶媒の分子サイズが、ゼオライトの細孔径と同等か、細孔径よりも大きい場合、ゲッタ材組成物から溶媒を除去してガス吸着体60を形成する場合に、ゼオライトの内部に拡散している有機溶媒が少ないため、大きなエネルギーを要することなく、溶媒を除去することができる。またゼオライトの内部に有機溶媒が残存しにくくなり、ゼオライトの粒子の径を大きくしたことによる効果が得やすくなる。
【0046】
一方、有機溶媒の分子サイズが、ゼオライトの細孔径より小さい場合、有機溶媒の分子がゼオライトの結晶内部に拡散するため、有機溶媒の分子を脱離させるのに多大なエネルギーを要する。
【0047】
分子サイズがゼオライト(ZSM-5)の細孔径(5.5Å)より大きい有機溶媒であって、芳香族化合物としては、例えば、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、mキシレンなどである。
【0048】
分子サイズがゼオライト(ZSM-5)の細孔径(5.5Å)より大きい有機溶媒であって、非芳香族化合物としては、シクロオクタン、シクロヘプタン、ジメチルキノリン、αピネン、βピネン、ピナン、αピネンオキシド、ピノカルベオール、カリオフィレン、ベルべノン、イソボニルシクロヘキサノールなどの環状構造を含む環式化合物が例示される。
【0049】
分子サイズがゼオライト(ZSM-5)の細孔径(5.5Å)と同程度の有機溶媒としては、pキシレン、pメンタン、dリモネン、lリモネン、αテルピネオール、βテルピネオール、γテルピネオール、テルピネン、メントール、ミルテナール、ミルテノール、pメンテン、安息香酸ベンジル、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテートなどの環状構造を含む環式化合物が例示される。
【0050】
このように本開示では、有機溶媒としては、芳香族化合物又は非芳香族化合物を含む環状構造を有する環式化合物を使用するのが好ましい。直鎖構造の有機溶媒の分子は、分子サイズが大きくてもゼオライトの細孔の中に入りやすいため、好ましくない。また環式化合物の中でも、芳香族系は人体に有害な場合が多いため、可能な限り使用を避けることが望ましく、非芳香族化合物を有機溶媒として使用することが好ましい。
【0051】
また、一般には極性の大きい分子、例えばOH基を持つような有機溶媒の方が、ゼオライトの極性と引き合い、脱離しにくい傾向があると考えられている。しかし、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM-5)と各種有機溶媒を混合し、その後、GCMSにて加熱による溶媒成分の脱離について調べたところ、分子サイズがゼオライト(ZSM-5)の細孔径(5.5Å)と同程度の有機溶媒の中では、pキシレン、pメンテン、dリモネンなどの炭素と水素のみで構成される極性の小さい有機溶媒の方が加熱によって脱離しにくく、Cu-ZSM-5の内部に残留しやすい傾向にあることが分かった。これは、ゼオライトと溶媒とを混合した際に、極性を持たない分子の場合は混合液として保管されている間に時間をかけてゼオライトの内部まで拡散するのに対し、溶媒分子にOH基やO、F、Nなどの元素が含まれ、比較的極性の大きい溶媒分子の場合はゼオライト細孔の入り口付近に吸着して細孔を塞ぎ、その溶媒分子自身が他の分子の侵入を防ぎ、結果として溶媒分子が内部まで拡散しにくいためであると考えられる。この効果は、ゼオライトの結晶サイズが大きいほど顕著に表れる。このため、例えばゼオライトの結晶サイズは200nm以上が有利で、さらに300nm以上が望ましく、さらに、400nm以上が望ましく、500nm以上がさらに望ましく、600nm以上であればより望ましい。また、ゼオライトの結晶サイズは、750nm以上、1000nm以上、1500nm以上、2000nm以上であればなおよい。
【0052】
なお、αピネン、βピネンのように分子サイズがゼオライト(ZSM-5)の細孔径(5.5Å)より大きい有機溶媒であって、かつ炭素と水素のみで構成されている極性の小さい溶媒については、溶媒がCu-ZSM-5から脱離しにくい傾向は見られなかった。このため、分子サイズがゼオライト(ZSM-5)の細孔径(5.5Å)より大きい有機溶媒を用いるか、または分子サイズがゼオライト(ZSM-5)の細孔径(5.5Å)と同程度であり、かつ分子構造にOH基や、O、N、Fなどの元素を持つ溶媒を用いることがより望ましい。すなわち、結晶サイズ200nm以上のCu-ZSM-5型ゼオライトと混合する有機溶媒としては、シクロオクタン、シクロヘプタン、ジメチルキノリン、αピネン、βピネン、ピナン、αピネンオキシド、ピノカルベオール、カリオフィレン、ベルべノン、イソボニルシクロヘキサノールや、αテルピネオール、βテルピネオール、γテルピネオール、メントール、ミルテナール、ミルテノール、安息香酸ベンジル、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテートのうち少なくとも1つを含むものが望ましい。また、この効果は、ガラスパネルユニット(複層ガラス)のプロセス温度がゼオライトから溶媒が脱離しにくい350℃以下の場合に特に顕著になり、すなわち封着材の(第1封着材または第2封着材のうち少なくとも一方の)軟化点または融点または接着可能温度(ガラスパネルユニットを封着材で封止する際に必要な最低温度)のいずれか1つが350℃以下のときにより効果的であり、さらに封着材の(第1封着材または第2封着材のうち少なくとも一方の)軟化点または融点または接着可能温度のいずれか1つが300℃以下のときにさらに効果的である。
【0053】
また、結晶サイズ400nm以上のCu-ZSM-5型ゼオライトと混合する有機溶媒としては、シクロオクタン、シクロヘプタン、ジメチルキノリン、αピネン、βピネン、ピナン、αピネンオキシド、ピノカルベオール、カリオフィレン、ベルべノン、イソボニルシクロヘキサノールや、αテルピネオール、βテルピネオール、γテルピネオール、メントール、ミルテナール、ミルテノール、安息香酸ベンジル、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテートのうち少なくとも1つを含むものがより望ましい。また、この効果は、ガラスパネルユニット(複層ガラス)のプロセス温度がゼオライトから溶媒が脱離しにくい350℃以下の場合に特に顕著になり、すなわち封着材の(第1封着材または第2封着材のうち少なくとも一方の)軟化点または融点または接着可能温度のいずれか1つが350℃以下のときにより効果的であり、さらに封着材の(第1封着材または第2封着材のうち少なくとも一方の)軟化点または融点または接着可能温度のいずれか1つが300℃以下のときにより効果的である。
【0054】
あるいは、結晶サイズ600nm以上のCu-ZSM-5型ゼオライトと混合する有機溶媒として、シクロオクタン、シクロヘプタン、ジメチルキノリン、αピネン、βピネン、ピナン、αピネンオキシド、ピノカルベオール、カリオフィレン、ベルべノン、イソボニルシクロヘキサノールや、αテルピネオール、βテルピネオール、γテルピネオール、メントール、ミルテナール、ミルテノール、安息香酸ベンジル、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテートのうち少なくとも1つを含むことがより望ましい。また、この効果は、ガラスパネルユニットのプロセス温度がゼオライトから溶媒が脱離しにくい350℃以下の場合に特に顕著になり、すなわち封着材の(第1封着材または第2封着材のうち少なくとも一方の)軟化点または融点または接着可能温度のいずれか1つが350℃以下のときにより効果的であり、さらに封着材の(第1封着材または第2封着材のうち少なくとも一方の)軟化点または融点または接着可能温度のいずれか1つが300℃以下のときにより効果的である。
【0055】
さらに、結晶サイズ750nm以上のCu-ZSM5型ゼオライトと混合する有機溶媒として、シクロオクタン、シクロヘプタン、ジメチルキノリン、αピネン、βピネン、ピナン、αピネンオキシド、ピノカルベオール、カリオフィレン、ベルべノン、イソボニルシクロヘキサノールや、αテルピネオール、βテルピネオール、γテルピネオール、メントール、ミルテナール、ミルテノール、安息香酸ベンジル、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテートのうち少なくとも1つを含むことがより望ましい。また、この効果は、ガラスパネルユニットのプロセス温度がゼオライトから溶媒が脱離しにくい350℃以下の場合に特に顕著になり、封着材の(第1封着材または第2封着材のうち少なくとも一方の)軟化点または融点または接着可能温度のいずれか1つが350℃以下のときにより効果的であり、さらに封着材の(第1封着材または第2封着材のうち少なくとも一方の)軟化点または融点または接着可能温度のいずれか1つが300℃以下のときにより効果的である。
【0056】
またゲッタ材組成物の溶媒は、沸点が300℃以下の有機溶媒を含むことが好ましい。これにより、低温であってもゲッタ材組成物から有機溶媒を除去しやすくなり、ガス吸着体60が形成しやすい。
【0057】
このように封止材の軟化点または融点または接着可能温度の少なくとも1つが300℃以下であって、ゼオライトの結晶サイズは200nm以上が有利で、さらに300nm以上が望ましく、さらに、400nm以上が望ましく、500nm以上がさらに望ましく、600nm以上であればより望ましい。また、ゼオライトの結晶サイズは、750nm以上、1000nm以上、1500nm以上、2000nm以上であればなおよい。
【0058】
ゲッタ材としては、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の他に、二酸化炭素吸着材からなる複数の粒子を含んでいてもよい。この場合、二酸化炭素の高い吸着性能を有する複合ゲッタ材が得られる。二酸化炭素吸着材からなる粒子としては、γ-Al2O3などのアルミナ、酸化亜鉛、シリカ、チタニア、白金などの白金族、珪酸リチウム、活性炭、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、酸化イットリウム、コバルト錯体などの金属錯体、酸化セリウム、水酸化セリウム等のセリウム化合物、からなる粒子を例示することができる。これらの二酸化炭素吸着材からなる粒子は、CO2吸着材として作用する。したがって、有機溶剤から放出されるCO2を二酸化炭素吸着材で吸着することができ、ゼオライトの粒子に二酸化炭素が吸着しにくくなる。したがって、ゼオライトの結晶からなる粒子の作用が二酸化炭素により低下するのを小さくすることができる。また、Cu-ZSM-5より二酸化炭素吸着能力が高く、Cu-ZSM5と異なる金属(例えばBaやSr、Pt、Pd、Ruなど)でイオン交換されたゼオライトの粒子や、Cu-ZSM-5とは異なる結晶構造、例えばゼオライト13XやA型ゼオライトなどの粒子と、Cu-ZSM-5とが混合されているゲッタ材の場合も同様の効果が期待できる。
【0059】
また、ゲッタ材は水素化触媒を含むことが望ましい。水素化触媒は、水素化反応の触媒である。水素化反応は,水素ガスを還元剤として、有機溶媒等の化合物(炭化水素など)の炭素-炭素結合などの多重結合部位に水素原子を付加させる反応をいう。このような反応は、化合物と金属触媒との接触により生じやすい。
【0060】
本実施形態において、水素化触媒はルテニウム、ロジウム、白金、パラジウムなどの白金族、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、鉄、銅、チタン、ジルコニウム、アルミニウムなどの金属、またはこれらの酸化物等の化合物など、一般的に知られたものを用いることができる。ゲッタ材がこれらを含むことで、有機溶媒の揮発を促進して封止工程で除去されやすくしたり、炭化水素をH2、CO2、H2O、あるいは他の反応性の高い炭化水素などに分解したりすることができ、分解後の分子を揮発させて除去したり、ゲッタ材で吸着して除去することができる。特に、ゲッタ材と有機溶媒を混合した場合には、不要な炭化水素が除去されやすくなり、大きな効果が得られる。また、例えば水素化触媒は他の物質に担持または添加されていてもよく、または白金黒及びパラジウムブラックのように白金族などの金属パウダーが金属多孔質体またはシングルミクロン以下のサイズの粉体として混合されていてもよい。
【0061】
なお、水素化触媒が担持される担体は、多孔質体が望ましい。多孔質体の比表面積は20m2/g以上であることが好ましく、さらには50m2/g以上であることがより好ましい。また、前述の二酸化炭素吸着材に担持されていてもよい。ただし、ゼオライトとして銅イオン交換ゼオライトを用いる場合、銅イオン交換ゼオライトは真空中で銅が還元されることによって活性化され、強い吸着力を発現する性質があるため、二酸化炭素吸着材としては、酸化セリウム以外のものを使用するのがより好ましい。酸化セリウムを用いても高い効果は得られるが、一方で酸化セリウムやセリア-ジルコニア固溶体のように、酸素貯蔵特性がある物質と銅イオン交換ゼオライトを混合すると、酸化セリウムやセリア-ジルコニア固溶体から放出される酸素が銅イオン交換ゼオライトの活性化を阻害して性能劣化を引き起こす場合がある。また、セリウムがゼオライトのシリカ部分と反応し、銅イオン交換ゼオライトを劣化させてしまう場合もある。さらに希少金属のレアアースであるセリウムの使用量は可能な限り減らすことが、コストや生産安定性の面で望ましい。このため、水素化触媒の担体は、アルミナ、シリカ、活性炭、硫酸バリウムなどの群から選ばれる少なくとも1つが特に望ましく、さらにはゼオライトと同じ金属成分を持つアルミナなどのAl化合物、シリカなどのSi化合物が特に好ましい。また、水素化触媒の担体の平均粒子径は1nm以上50μm以下が好ましい。なお、水素化触媒の担体の平均粒子径はSEM観察で確認することができる。また、担体に対する水素化触媒の質量割合は0.01重量%以上30重量%以下であることが、水素化触媒の利用効率の面で望ましい。
【0062】
水素化触媒が担持される担体は、例えばアルミナ、シリカ、活性炭、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどから選ばれる少なくとも1つの多孔質物質を用いることができる。この中でも多孔質アルミナはそれ自体が二酸化炭素吸着能力を持っており、特に望ましい。仮に酸化セリウムに水素化触媒を担持したり、二酸化炭素吸着材として酸化セリウムがゲッタ材に混合されたりする場合は、ゲッタ材全体の30wt%以下とすることが望ましい。さらに15wt%以下とすることがより望ましく、5wt%以下とすることがさらに望ましく、1wt%以下とすることがより望ましい。
【0063】
水素化触媒と担体の組み合わせとしては、例えば、以下のようなものが挙げられる。なお、以下の例示は、A/B:水素化触媒/担体の形式で示している。Ru/Al2O3、Rh/Al2O3、Pt/Al2O3、Pd/Al2O3、Ir/Al2O3、Os/Al2O3、Au/Al2O3、Ni/Al2O3、Co/Al2O3、Mo/Al2O3、W/Al2O3、Fe/Al2O3、Cu/Al2O3、Ti/Al2O3、Zr/Al2O3、Al/Al2O3や、Ru/SiO2、Rh/SiO2、Pt/SiO2、Pd/SiO2、Ir/SiO2、Os/SiO2、Au/SiO2、Ni/SiO2、Co/SiO2、Mo/SiO2、W/SiO2、Fe/SiO2、Cu/SiO2、Ti/SiO2、Zr/SiO2、Al/SiO2、Ru/C、Rh/C、Pt/C、Pd/C、Ir/C、Os/C、Au/C、Ni/C、Co/C、Mo/C、W/C、Fe/C、Cu/C、Ti/C、Zr/C、Al/C(Cは活性炭を示す)などが水素化触媒と担体の組み合わせとして望ましい。
【0064】
また、これらの中でも、水素化触媒と担体の組み合わせが、Ru/Al2O3、Rh/Al2O3、Pt/Al2O3、Pd/Al2O3、Au/Al2O3、Ru/SiO2、Rh/SiO2、Pt/SiO2、Pd/SiO2、Au/SiO2、など、白金族または金あるいはそれらの化合物を含む物質がアルミナやシリカなどの多孔質セラミックスに担持されているものであれば、酸化・還元の安定性が高く、銅イオン交換ゼオライトとの組み合わせにおいて特に優れた特性を示す。
【0065】
一方、例えば、銀や酸化銀などのように、350℃以下の大気中にて酸化し、350℃以下の真空中において還元されて大量の酸素を放出する触媒は、銅イオン交換ゼオライトの活性化を阻害するため、このような特性の物質の銅イオン交換ゼオライトへの混合は可能な限り避けることが望ましい。例えば、このような特性の物質は、ゲッタ材全体に対して少なくとも5重量%未満が望ましく、1重量%以下であることがより望ましく、0.1重量%以下であることがさらに望ましい。
【0066】
担体に担持された水素化触媒はゼオライトの粒子及び二酸化炭素吸着材の粒子よりも粒径が小さな粉体であることが好ましい。水素化触媒の粉体の例としては、和光純薬製のルテニウム5wt%-アルミナ粉体(製品コードJAN4987481323469)、白金5wt%-アルミナ粉体(製品コードJAN4987481317161)、パラジウム5wt%-アルミナ粉体(製品コードJAN4987481317109)、N・E・ケムキャット製の5wt%Pdアルミナ粉末(ID Code:AA-2501)、5wt%Pd硫酸バリウム(ID Code:OP-2505)、Pdブラック(BL-2901)、5wt%Ptアルミナ粉末(ID Code:AA-1501)、Ptブラック(ID Code:BL-1901)、5wt%Ruアルミナ粉末(ID Code:AA-4501)などが挙げられる。
【0067】
以下、具体例を示す。水素化触媒の粉体10wt%と、結晶サイズ400nmのCu-ZSM5の粉体90wt%を混合し、溶媒にα-テルピネオールを用いてゲッタ組成物を作成した。これを用いてガラスパネルユニットを試作した結果、Cu-ZSM-5単体の場合の熱コンダクタンスが12W/m2Kであったのに対し、ルテニウム5wt%-アルミナ粉体を10wt%と、結晶サイズ400nmのCu-ZSM-5の粉体90wt%を混合し、溶媒にα-テルピネオールを用いたゲッタ材組成物の場合、熱コンダクタンスは0.87W/m2Kであった。
【0068】
また白金5wt%-アルミナ粉体を10wt%と、結晶サイズ400nmのCu-ZSM-5の粉体90wt%を混合し、溶媒にα-テルピネオールを用いたゲッタ材組成物の場合、熱コンダクタンスは0.78W/m2Kであった。また、パラジウム5wt%-アルミナ粉体を10wt%と、結晶サイズ400nmのCu-ZSM-5の粉体90wt%を混合し、溶媒にα-テルピネオールを用いたゲッタ材組成物の場合の熱コンダクタンスは0.76W/m2Kであった。また、水素化触媒を含まないアルミナ10wt%と、結晶サイズ400nmのCu-ZSM-5粉体90wt%を混合したゲッタ材を用いたガラスパネルの場合の熱コンダクタンスは2W/m2Kであった。そして、水素化触媒を含まないアルミナを混合したゲッタ材を用いたガラスパネルの残留ガスを分析すると、炭化水素系のガスが多く検出された。
【0069】
さらに、水素化触媒を含まない酸化セリウム10wt%と、結晶サイズ400nmのCu-ZSM-5粉体90wt%を混合したゲッタ材を用いたガラスパネルの場合の熱コンダクタンスは2.6W/m2Kであった。また、溶媒に、沸点219℃のαーテルピネオールを50wt%と、沸点260℃の高沸点溶媒(βカリオフィレン)50wt%とを混合したものを用い、同様の実験を行ったとき、ルテニウム5wt%-アルミナ粉体を用いた場合は熱コンダクタンスが2.3W/m2K、白金5wt%-アルミナ粉体を用いた場合は熱コンダクタンスが0.78W/m2K、パラジウム5wt%-アルミナ粉体を用いた場合は熱コンダクタンスが0.76W/m2K、水素化触媒を含まないアルミナ粉体を用いた場合は熱コンダクタンスが8.3W/m2Kであり、溶媒に沸点250℃以上の高沸点溶媒を含む場合の方が水素化触媒の有無で大きな違いが見られた。
【0070】
さらに、水素化触媒としてルテニウム・パラジウム・白金などの白金族を含む場合には、沸点250℃以上の高沸点溶媒を使用しても比較的良好な熱コンダクタンスを維持しており、特にパラジウム・白金については沸点250℃以上の高沸点溶媒の有無で熱コンダクタンスがほとんど変化していない。このため、溶媒に沸点250℃以上の高沸点溶媒や樹脂成分のような揮発しにくい成分を含む場合に、白金族などの水素化触媒は特に有利な効果をもたらすと考えられる。さらに溶媒に沸点250℃以上の高沸点溶媒や樹脂成分を混合した場合に、パラジウムまたは白金はより有利な効果をもたらすと考えられる。一方、白金族を含まないゲッタ材においては、ゲッタ材と混合される溶媒は、沸点250℃未満の溶媒を主成分(50wt%より大きい割合)とすることがより望ましい。
【0071】
なお、これらの熱コンダクタンスの値は、各ゲッタ材粉体の総量を一定とした上での比較である。このことから、アルミナなどの二酸化炭素吸着材は、特にゲッタ材を有機溶媒と混合した場合において、有機溶媒が分解されることで放出される二酸化炭素を吸着することでガラスパネルの内圧を低く保つ効果をもたらす。さらに水素化触媒は、有機溶媒の揮発を促進して封止工程で除去されやすくしたり、有機溶媒がガス化した炭化水素系ガスを分解し、ゼオライトや二酸化炭素吸着材、または水素化触媒自身に吸着させたりすることができ、ガラスパネルの内圧上昇を抑制する効果がある。
【0072】
また、低沸点の溶媒を用いるよりも高沸点の溶媒や樹脂成分を用いたときの方が水素化触媒の効果は大きくなりやすい。環式構造を持つ有機溶媒は比較的分子量が大きいため沸点が高くなりやすい。このため、環式構造を持つ有機溶媒とゼオライト、水素化触媒を混合したゲッタ材組成物とすることで、有機溶媒によるゼオライトへのダメージを抑制しつつ、塗布後に有機溶媒を適切に除去することができる。この傾向は、ゼオライトの結晶サイズが200nm以上であるときにより顕著であり、さらに300nm以上が望ましく、さらに、400nm以上が望ましく、500nm以上であればより望ましく、600nm以上であれば特に望ましい。
【0073】
また、ゼオライトの結晶サイズ(径)は、750nm以上がさらに望ましく、1000nm以上であればより望ましく、1500nm以上、2000nm以上であればなおよい。なお、沸点が250℃以上の高沸点溶媒や樹脂は一般に高粘性である場合が多く、これらを混合することでより効果的にゲッタ材組成物の沈降を抑制し、塗布安定性を高めることができる。高沸点溶媒の例としては、βカリオフィレン、安息香酸ベンジル、イソボニルシクロヘキサノール、樹脂成分の例としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、フェノール樹脂など、一般的なスクリーン印刷などで用いられる溶媒や樹脂バインダを用いることができ、これらのうち少なくとも1つを用いることができる。
【0074】
このように、ゼオライト、二酸化炭素吸着材、水素化触媒を組み合わせることで、有機溶剤と混合した場合においても性能の劣化を抑え、高性能なゲッタ材組成物およびゲッタ材が得られる。一方、二酸化炭素吸着材や水素化触媒は窒素の吸着には不適であるため、ゼオライトは特に銅イオン交換ゼオライトが望ましく、ZSM-5型であることがさらに望ましい。なお、例えばゼオライトと二酸化炭素吸着材、またはゼオライトと水素化触媒のみを含む組み合わせでも一定の効果は得られる。また、封着材やガラス基板、ピラーなどから放出される炭化水素系ガスおよび二酸化炭素を吸着するためにも、ゼオライト、二酸化炭素吸着材、水素化触媒を組み合わせることは有効である。
【0075】
本実施形態において、ゲッタ材はゼオライトの粒子のみで構成されていても良い。この場合、ゲッタ材を構成する粒子の100重量%がゼオライトの粒子である。
【0076】
また本実施形態において、ゲッタ材はゼオライトの粒子と二酸化炭素吸着材の粒子との混合物で構成されていても良い。この場合、ゲッタ材は、重量比で、ゼオライトの粒子が1に対して、二酸化炭素吸着材の粒子を0.01~0.99で含有していることが好ましい。
【0077】
また本実施形態において、ゲッタ材はゼオライトの粒子と水素化触媒の粉体との混合物で構成されていても良い。この場合、ゲッタ材は、重量比で、ゼオライトの粒子が1に対して、水素化触媒の粉体が0.0001~0.3で含有していることが好ましい。
【0078】
また本実施形態において、ゲッタ材はゼオライトの粒子と二酸化炭素吸着材の粒子と水素化触媒の粉体との混合物で構成されていても良い。この場合、ゲッタ材は、重量比で、ゼオライトの粒子が1に対して、二酸化炭素吸着材の粒子を0.01~0.99で、水素化触媒の粉体が0.0001~0.3でそれぞれ含有していることが好ましい。
【0079】
また本実施形態において、ゲッタ材組成物は、ゲッタ材と溶媒とを所定の割合で含有することが好ましい。例えば、ゲッタ材組成物は、重量比で、ゲッタ材1に対して溶媒を0.1~100で含有していることが好ましい。
【0080】
また本実施形態において、ゲッタ材組成物は、ゲッタ材と溶媒と樹脂成分とを所定の割合で含有することが好ましい。例えば、ゲッタ材組成物は、重量比で、ゲッタ材1に対して溶媒を0.1~100で、樹脂成分を0.01~2でそれぞれ含有していることが好ましい。
【0081】
また本実施形態において、ゲッタ材組成物は、ゲッタ材と沸点250℃未満の溶媒と沸点250℃以上の高沸点溶媒とを所定の割合で含有することが好ましい。例えば、ゲッタ材組成物は、重量比で、ゲッタ材1に対して沸点250℃未満の溶媒を0.1~100で、沸点250℃以上の高沸点溶媒を0.01~2でそれぞれ含有していることが好ましい。
【0082】
ここで、ゲッタ材およびゲッタ材組成物における水素化触媒の効果について再度まとめる。
【0083】
ゲッタ材を減圧されたガラスパネルユニット(複層ガラス)などの薄い隙間に形成するためには、ゲッタ材を溶媒と混合し、ガラス基板上に塗布することが望ましい。このときの塗布の方法は、ディスペンスやスクリーン印刷、スリットコート、スプレーコート、スピンコートなど、特に限定されない。
【0084】
粉体状のゲッタ材を溶媒と混合して塗布するメリットとして、(1)(例えば、封止材の厚さ以下となるように)薄い膜を形成できること、(2)粉体状のゲッタ材を直接ガラス基板に塗布する場合と比べて、乾燥後に粉体状のゲッタ材が凝集して見た目の体積を減らせること、(3)量産において自由なガラス基板の形状に対応できること、(4)乾燥後にゲッタ材が基板に静電吸着するため、ゲッタ材の固定用部材が不要なこと、などが挙げられる。
【0085】
一方で課題としては、(1)沸点の低い溶媒を用いると、ゲッタ材組成物の保管中や塗布工程中に溶媒が乾燥してしまい、塗布不良を引き起こすこと、(2)ある程度粘性の高い溶媒を用いないとゲッタ材の粉体が沈降してしまい、塗布安定性を保てないこと、(3)一般に粘性の高い溶媒は沸点も高く、特にガスを吸着する性質のゲッタ材と混合した場合、ゲッタ材が溶媒分子を吸着してしまい、脱離させるために多大なエネルギーを必要とすること、(4)塗布後に溶媒を十分脱離させないとゲッタ材としての吸着性能が劣化すること(さらに溶媒分子がガスとしてゲッタ材から放出され、かえってガラスパネルユニット内の残留ガスを増やしてしまう場合もある)、が挙げられる。
【0086】
すなわち、安定して塗布できるように高沸点の溶媒を用いると、溶媒を十分脱離させることが難しくなり、ゲッタ材の吸着性能が低下してしまうことが課題であった。特に、ガラスパネルユニットのプロセス温度が低くなるほど、ゲッタ材組成物を塗布した後、溶媒を十分脱離させることができず、性能劣化を引き起こしやすくなる。また、例えばある有機溶媒を沸点まで加熱したとしても、実際には完全に溶媒が揮発せず、特にCu-ZSM5と混合した場合においては、沸点より100~150℃以上高い温度で加熱しないと溶媒分子が完全には脱離しない。350℃以下で完全に揮発させられる有機溶媒は少ないため、プロセス温度が350℃以下の場合や、封着材(第1封着材と第2封着材の少なくとも一方)の軟化点または融点が350℃以下の場合に特に問題になりやすい。
【0087】
塗布後のゲッタ材組成物は、(A)その後の乾燥工程や封着工程(例えば第1溶融工程)で加熱されて有機溶媒が脱離される、(B)ゲッタ材が真空中で加熱されて活性化される、(C)組立て品100が真空ポンプから隔離された後に、組立て品100の内部から二酸化炭素(最も多い)、窒素、メタン等のガスが放出された際、ゲッタ材によってガスが吸着される(例えば第2溶融工程の後)、といった段階を通ることになる。そして、銅イオン交換ゼオライトに水素化触媒を混合することによって、(A)(C)の両方の段階においてその効果を発揮させることができる。
【0088】
まず、(A)の段階において、水素化触媒は有機溶媒の分解や反応を促進して揮発させ、銅イオン交換ゼオライトに有機溶媒が残留して性能劣化してしまうことを抑制する。さらに、(C)の段階においては、水素化触媒(特に白金族)は化学吸着性を持った強力な二酸化炭素吸着材または炭化水素系ガス吸着材としても働く。これによって、窒素やメタンも吸着できる銅イオン交換ゼオライトの吸着サイトが二酸化炭素で埋まってしまうことを防ぐため、銅イオン交換ゼオライトのみをゲッタ材とした場合や水素化触媒のみをゲッタ材とした場合と比較して、銅イオン交換ゼオライトと水素化触媒とが混合されたゲッタ材の方が、二酸化炭素だけでなく、窒素やメタンをも多く吸着し、結果的に、ガラスパネルユニットの残留ガス圧を低く保つことができる。
【0089】
この効果は、プロセス温度350℃以下の、有機溶媒が脱離しにくく、銅イオン交換ゼオライトの活性化が十分されにくい条件のときにより顕著になる。すなわち、封止材(第1封着材と第2封着材の少なくとも一方)の軟化点または融点が350℃以下の場合に特に顕著になる。また、Cu-ZSM-5との組み合わせにおいては、有機溶媒は環式化合物を持つことが望ましいが、環式化合物は一般に沸点が高い場合が多い。Cu-ZSM5と、有機溶媒を含む溶媒と、水素化触媒と、を組み合わせることによって、吸着性能と塗布安定性が両立されたゲッタ材組成物を実現できる。
【0090】
Cu-ZSM-5と、有機溶媒を含む溶媒と、水素化触媒とを組み合わせることによって、吸着性能と塗布安定性が両立されたゲッタ材組成物を実現できる。また、Cu-ZSM-5との組み合わせにおいては、有機溶媒は環式化合物を持つことが望ましいが、環式化合物は一般に沸点が高い場合が多い。有機溶媒に環式化合物を用いることで、Cu-ZSM-5の内部に有機溶媒が侵入しにくくなるため、水素化触媒と有機溶媒との反応が起こりやすくなり、より水素化触媒の効果が得られやすくなる。さらに、Cu-ZSM-5の結晶サイズを400nm以上、より好ましくは600nm以上、さらに好ましくは750nm以上とすることで、有機溶媒による劣化をさらに抑制し、低圧領域でより吸着性能の高いゲッタ材組成物を実現できる上、これを水素化触媒と環式化合物を含む有機溶媒と混合することで、Cu-ZSM-5の結晶内部の有機溶媒の割合が減り、水素化触媒との反応が促進されるため、溶媒が脱離されやすくなり、より効果的である。
【0091】
ゲッタ材の例として、結晶サイズ400nm以上5000nm以下の銅イオン交換ゼオライトを51wt%以上99wt%以下、水素化触媒が担持された多孔質粉体(多孔質粉体全体に対する水素化触媒の重量割合が0.1wt%以上20wt%以下)を1wt%以上49wt%以下、とすることができる。また、結晶サイズ400nm以上5000nm以下のCu-ZSM-5を51wt%以上99wt%以下、水素化触媒が担持された多孔質粉体(多孔質粉体全体に対する水素化触媒の重量割合が0.1wt%以上20wt%以下)を1wt%以上49wt%以下、であればなお良い。また、結晶サイズ400nm以上5000nm以下の銅イオン交換ゼオライトを51wt%以上99wt%以下、水素化触媒の粉末を1wt%以上49wt%以下、としてもよい。
【0092】
また、ゲッタ材組成物の例として、結晶サイズ400nm以上5000nm以下の銅イオン交換ゼオライトを20wt%以上60wt%以下、水素化触媒が担持された多孔質粉体(多孔質粉体全体に対する水素化触媒の重量割合が0.1wt%以上20wt%以下)を0.5wt%以上40wt%以下、有機溶媒を30wt%以上95wt%以下、とすることができる。あるいは、結晶サイズ400nm以上5000nm以下のCu-ZSM-5を20wt%以上60wt%以下、水素化触媒が担持された多孔質粉体(多孔質粉体全体に対する水素化触媒の重量割合が0.1wt%以上20wt%以下)を0.5wt%以上40wt%以下、主成分が環式化合物の有機溶媒を30wt%以上95wt%以下(この場合、有機溶媒のうち50wt%以上は環式化合物)、とすることがより望ましい。結晶サイズ400nm以上5000nm以下の銅イオン交換ゼオライトを20wt%以上60wt%以下、水素化触媒の粉末を0.1wt%以上40wt%以下、有機溶媒を30wt%95wt%以下、としてもよい。
【0093】
そして、混合工程の後、組立工程が行われる。
【0094】
組立工程は、組立て品100を用意する工程である。
【0095】
組立て品100は、
図1A及び
図1Bに示すように、第1ガラス板200と、第2ガラス板300と、周壁410と、仕切り420と、を備える。また、組立て品100は、第1及び第2ガラス板200,300と周壁410とで囲まれた内部空間500を有する。さらに、組立て品100は、内部空間500内に、ガス吸着体60と、複数のピラー(スペーサ)70と、を備える。さらに、組立て品100は、排気口700を備える。
【0096】
第1ガラス板(第1ガラス基板)200は、後述の第1ガラス板20の基礎となる部材であり、第1ガラス板20と同じ材料で形成されている。第2ガラス板(第2ガラス基板)300は、後述の第2ガラス板30の基礎となる部材であり、第2ガラス板30と同じ材料で形成されている。第1及び第2ガラス板200,300は同じ平面形状である。本実施形態では、第1ガラス板200は、後述の第1ガラス板20を少なくとも1つ形成可能な大きさを有し、第2ガラス板300は、後述の第2ガラス板30を少なくとも1つ形成可能な大きさを有する。
【0097】
第1及び第2ガラス板200,300はいずれも多角形(本実施形態では長方形)の平板状である。
【0098】
第1ガラス板200は、本体210と、低放射膜220とを含む。
【0099】
低放射膜220は、内部空間500内にあり、本体210を覆う。低放射膜220は、本体210に接している。低放射膜220は、赤外線反射膜とも呼ばれ、透光性を有するものの、赤外線を反射する。このため、低放射膜220は、ガラスパネルユニット10の断熱性を向上させることができる。低放射膜220は、例えば、金属製の薄膜である。低放射膜220は、例えば、銀を含有する。低放射膜220の一例は、Low-E膜である。
【0100】
第1ガラス板200は、上記の通り、本体210を含む。本体210は、第1面211と第2面212とを有する。第1面211は、平坦な面であって、低放射膜220に覆われる。第2面212は、第1面211と平行で、かつ平坦な面であって、方向D1において内部空間500と反対側にある。本体210は、第1ガラス板200の主な形状を構成するため、矩形の平板状である。本体210の材料は、例えば、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム、物理強化ガラスである。また、第1ガラス板200の厚さは0.1mm~20mmであってもよい。
【0101】
第2ガラス板300は、本体310を含む。本体310は、第1面311と第2面312とを有する。第1面311は、平坦な面であって、低放射膜220と対向する。第2面312は、第1面311と平行で、かつ平坦な面であって、方向D1において内部空間500と反対側にある。本体310は、第2ガラス板300の主な形状を構成するため、矩形の平板状である。本体310は、本体210と同形状である。第2ガラス板300は、本実施形態では、本体310のみからなるが、本体310に加えて低放射膜220と同様の低放射膜を備えてもよい。第2ガラス板300が低放射膜を備える場合、この低放射膜は、内部空間500内で、本体310を覆い、かつ本体310に接する。本体310の材料は、例えば、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム、物理強化ガラスである。また、第2ガラス板300の厚さは0.1mm~20mmであってもよい。
【0102】
周壁410は、第1封着材(第1熱接着剤)を含む。周壁410は、第1ガラス板200と第2ガラス板300との間に配置される。周壁410は、
図1Aに示すように、枠状である。特に、周壁410は、矩形の枠状である。周壁410は、第1及び第2ガラス板200,300の外周に沿って形成されている。これにより、組立て品100では、周壁410と第1ガラス板200と第2ガラス板300とで囲まれた内部空間500が形成される。
【0103】
第1熱接着剤は、例えば、ガラスフリットを含む。ガラスフリットの例としては、低融点ガラスフリットが挙げられる。低融点ガラスフリットの例としては、ビスマス系ガラスフリット、鉛系ガラスフリット、バナジウム系ガラスフリットが挙げられる。本実施形態では、第1熱接着剤はバナジウム系ガラスフリットにより構成される。また、第1熱接着剤は、ガラスフリットに限定されず、例えば、低融点金属、又はホットメルト接着材を含むことができる。第1熱接着剤は、有機バインダ及び有機溶剤のうちの一方または両方をさらに含んでもよい。この場合、封止工程(第2溶融工程)後に有機バインダ及び有機溶剤のうちの一方または両方に由来するガスが減圧空間50に放出されても、このガスをガス吸着体60が吸着することにより、減圧空間50内にガスが残りにくくなる。
【0104】
有機バインダは、例えば樹脂を含む。この樹脂として、例えば、ポリイソブチルメタアクリレート、エチルセルロース、脂肪族ポリカーボネート、アクリル樹脂、及びブチラール樹脂が挙げられる。有機バインダは、上記の樹脂に限らず、任意の成分を含むことができる。有機バインダを構成する樹脂は、低分子量で分解しやすい樹脂であることが好ましい。
【0105】
有機溶剤として、例えば、酢酸ブチルカルビトール、及び酢酸エチルカルビトール等のエステル類が挙げられる。しかし、有機溶剤は、上記の成分に限らず、テルペン系溶剤などの一般的なスクリーン印刷に用いられる溶剤、及びディスペンス塗布に用いられる溶剤のうち少なくとも1種を含んでもよい。
【0106】
周壁410が樹脂をさらに含有する場合、組立工程の後、この樹脂に由来するガスが内部空間500内に放出されても、樹脂に由来するガスは、排気工程によって排気される。排気工程後、樹脂に由来するガスが残留ガスとして減圧空間50内に存在しても、この残留ガスをガス吸着体60が吸着することができる。
【0107】
仕切り420は、内部空間500内に配置される。仕切り420は、内部空間500を、第1空間510と、第2空間(通気空間)520とに仕切る。このため、第1空間510は排気工程で排気される空間であり、第2空間520は第1空間510の排気に使用される空間である。仕切り420は、第1空間510が第2空間520よりも大きくなるように、第2ガラス板300の中央よりも第2ガラス板300の長さ方向(
図1Aにおける左右方向)の第1端側(
図1Aにおける右端側)に形成される。仕切り420は、第2ガラス板300の幅方向(
図1Aにおける上下方向)に沿うようにして内部空間500内に配置される。ただし、仕切り420の長さ方向の両端は、周壁410と接していない。本実施形態では、第2ガラス板300の幅方向は方向D2と平行であり、第2ガラス板300の長さ方向は方向D3と平行である。
【0108】
仕切り420は、その本体を構成する本体部(仕切り本体部)421と、遮断部422とを備える。遮断部422は、第1遮断部4221と、第2遮断部4222とを備える。本体部421は、方向D2に沿う直線状である。この方向D2は、例えば、第2ガラス板300の幅方向である。また、方向D2において、本体部421の両端は、周壁410と接触していない。本体部421の両端のうち、一端から第2空間520に向かって延びるようにして第1遮断部4221が形成され、他端から第2空間520に向かって延びるようにして第2遮断部4222が形成されている。本体部421の一端は第1端であってもよく、他端は第2端であってもよい。
【0109】
仕切り420は、第2封着材(第2熱接着剤)を含む。第2熱接着剤は、例えば、ガラスフリットである。ガラスフリットの例としては、低融点ガラスフリットが挙げられる。低融点ガラスフリットの例としては、ビスマス系ガラスフリット、鉛系ガラスフリット、バナジウム系ガラスフリットが挙げられる。本実施形態では、第2熱接着剤はバナジウム系ガラスフリットにより構成される。また、第2熱接着剤は、ガラスフリットに限定されず、例えば、低融点金属、またはホットメルト接着材であってもよい。なお、本実施形態では、第1熱接着剤と第2熱接着剤とは同じものを使用している。つまり、第1封着材と第2封着材とは、同じ材料である。
【0110】
通気路600は、
図1Aに示すように、内部空間500内で第1空間510と第2空間520とをつなぐ。通気路600は、第1通気路610と、第2通気路620と、を含む。第1通気路610は、仕切り420の第1端(
図1Aの上端)と周壁410との間に介在する隙間である。第2通気路620は、仕切り420の第2端(
図1Aの下端)と周壁410との間に介在する隙間である。
【0111】
排気口700は、第2空間520と外部空間とをつなぐ孔である。排気口700は、第2空間520および通気路600(第1通気路610及び第2通気路620)を介して第1空間510を排気するために用いられる。したがって、通気路600と第2空間520と排気口700とは、第1空間510を排気するための排気路を構成する。排気口700は、第2空間520と外部空間とをつなぐように第2ガラス板300に形成されている。具体的には、排気口700は、第2ガラス板300の角部分にある。
【0112】
ガス吸着体60及び複数のスペーサ70は第1空間510内に配置されている。特に、ガス吸着体60は、第2ガラス板300の長さ方向の第2端側(
図1Aにおける左端側)に、第2ガラス板300の幅方向に沿って形成されている。つまり、ガス吸着体60は、第1空間510(減圧空間50)の端に配置される。このようにすれば、ガス吸着体60を目立たなくすることができる。また、ガス吸着体60は、仕切り420および通気路600から離れた位置にある。そのため、第1空間510の排気時に、ガス吸着体60が排気を妨げる可能性を低くできる。
【0113】
組立工程は、組立て品100を得るために、第1ガラス板200、第2ガラス板300、周壁410、仕切り420、内部空間500、通気路600、排気口700、ガス吸着体60、及び複数のスペーサ70を形成する工程である。組立工程は、第1~第6工程を有する。なお、第2~第5工程の順番は、適宜変更してもよい。
【0114】
第1工程は、第1ガラス板200及び第2ガラス板300を形成する工程(基板形成工程)である。例えば、第1工程では、第1ガラス板200及び第2ガラス板300を作製し、必要に応じて、第1ガラス板200及び第2ガラス板300を洗浄する。
【0115】
第2工程は、排気口700を形成する工程である。第2工程では、第2ガラス板300に、排気口700を形成する。また、第2工程では、必要に応じて、第2ガラス板300を洗浄する。
【0116】
第3工程は、スペーサ70を形成する工程(スペーサ形成工程)である(
図3参照)。第3工程では、複数のスペーサ70を予め形成しておき、チップマウンタなどを利用して、複数のスペーサ70を、第2ガラス板300の所定位置に配置する。複数のスペーサ70は、組立て品100が仕掛り品110となった状態で、第1及び第2ガラス板200,300間の間隔を所定間隔に維持するために用いられる。このようなスペーサ70を構成する材料として、例えば、金属、ガラス、及び樹脂が挙げられる。スペーサ70は、これらの材料のうち、1種又は複数種含むことができる。
【0117】
本実施形態の第3工程では、上記の通り、スペーサ70を予め形成して第2ガラス板300に配置しているが、周知のパターン形成技術を利用して複数のスペーサ70を第2ガラス板300に形成してもよい。また、スペーサ70が樹脂を含む場合、複数のスペーサ70は、上記の形成方法と異なる方法として、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用して形成されていてもよい。この場合、複数のスペーサ70は、光硬化性材料などを用いて形成することができる。
【0118】
なお、スペーサ70の大きさ、スペーサ70の数、スペーサ70の間隔、スペーサ70の配置パターンは、適宜選択することができる。各スペーサ70は、上記所定間隔とほぼ等しい高さを有する円柱状である。例えば、スペーサ70は、直径が0.5mm、高さが100μm、スペーサ間の距離が20mmである。なお、各スペーサ70は、角柱状や球状などの所望の形状であってもよい。また、例えば、スペーサ70は、直径が0.1mm~5mm、高さが10μm~3000μm、スペーサ間の距離が2mm~100mmとなっていてもよい。
【0119】
第4工程は、ガス吸着体60を形成する工程(ガス吸着体形成工程)である(
図3参照)。第4工程では、ディスペンサなどを利用して、加工工程のゲッタ材組成物を第2ガラス板300上に塗布する。そして、塗布後のゲッタ材組成物を乾燥することにより、ガス吸着体60が形成される。すなわち、
第4工程は、ゲッタ材組成物を乾燥する乾燥工程を含む。ゲッタ材組成物を乾燥することにより、ゲッタ材のガス吸着性を回復させることができる。また、ゲッタ材組成物を塗布することにより、ガス吸着体60を小さくできる。したがって、第1空間510が狭くてもガス吸着体60を配置できる。
【0120】
以下に、ゲッタ材組成物の塗布工程の例について記載する。なお、塗布工程は必ずしも下記に限る必要はない。
【0121】
まず、水素化触媒または水素化触媒が担持された多孔質粉体を準備する。水素化触媒の粉体又は多孔質粉体の粒径はD50で20μm以下となるように、必要に応じて粉砕などを行い、調整されることが望ましい。その後、水素化触媒又は水素化触媒が担持された多孔質粉体0.01質量部以上49質量部以下と、結晶サイズ400nm以上5000nm以下のCu-ZSM-5の粉体50質量部以上99.99質量部以下とを混合し、混合されたものをゲッタ材とする。
【0122】
次に、ゲッタ材5質量部以上70質量部以下と、有機溶媒30質量部以上95質量部以下を混合し、得られたものをゲッタ材組成物とする。このときの有機溶媒は環式化合物を含むことが望ましい。また、有機溶媒として沸点250℃以上の高沸点溶媒を混合することで、塗布装置の塗布ヘッドの中で溶媒が乾燥することによって起こるノズル詰まり等を抑制することができる。
【0123】
ゲッタ材組成物は、例えば、ディスペンサなどのシリンジに注入され、封着材やスペーサが形成された第1ガラス板または第2ガラス板の外周に沿って塗布される。この時の塗布位置がガラス基板の端から15mm以内となっていると、ガラスパネルユニットをサッシに組み込んだ際にサッシでゲッタ材が隠れて目立たないため、より望ましい。なお、封着材、スペーサ、ゲッタ材組成物を基板に形成する順序には特に制限はない。例えば、スペーサを形成した後にゲッタ材組成物を塗布し、その後に封着材を形成してもよく、ゲッタ材組成物、スペーサ、封着材の順に形成してもよい。
【0124】
次に、ガラス基板を乾燥工程に通すことで、ゲッタ材組成物の溶媒の一部を乾燥させ、粉体がガラス基板に固着した状態とすることができる。この後、第1ガラス基板と第2ガラス基板を重ね合わせ、後述のような封着工程を行う。なお、封着材を第1ガラス板または第2ガラス板へ塗布した後に乾燥工程を通し、その後にゲッタ材組成物を第1ガラス板または第2ガラス板へ形成し、再度乾燥工程を通してもよい。この場合は封着材の溶剤の揮発成分をゲッタ材が吸着することを防ぎ、ゲッタ材の劣化を抑制できる場合がある。ただし、封着材とゲッタ材を同時に乾燥させる方が生産性は高くなる。
【0125】
後述の第1溶融工程は大気中で行われる。このときにゲッタ材組成物の溶媒残渣を脱離させる。水素化触媒は、第1溶融工程時に溶媒の脱離を促進させる効果を持つ。また、Cu-ZSM-5の結晶サイズが400nm以上、望ましくは600nm以上、より望ましくは750nm以上となっていることで、より溶媒の影響を抑制できる。さらに溶媒に環式化合物を含むことで、さらに溶媒の影響を抑制することができる。なお、この段階で可能な限り溶媒がゲッタ材組成物から脱離していることが望ましい。ゲッタ材組成物から溶媒成分が十分に脱離することで、ゲッタ材組成物は再びゲッタ材の状態に戻る。そして、第1溶融工程で第1ガラス基板と第2ガラス基板の間が接合されると、次に排気工程を行う。このときに、ゲッタ材が活性化され、ゲッタ材が吸着能力を持つようになる。
【0126】
次に、後述の第2溶融工程において、ガラスパネルユニット10は封止され、真空ポンプから隔離される。その後、ガラスパネルユニット10の減圧空間50に放出されるガスを、ゲッタ材によって吸着させる。このとき、水素化触媒は二酸化炭素や炭化水素系ガスを優先的に吸着するため、Cu-ZSM-5の吸着サイトを窒素やメタンの吸着に使えるように確保させることができる。また、Cu-ZSM-5の結晶サイズが400nm以上、より望ましくは600nm以上となっていることで、低圧領域においてより良い真空度を保つことができる。
【0127】
第5工程は、周壁410、及び仕切り420を配置する工程(封着材配置工程)である(
図3参照)。第5工程では、ディスペンサなどを利用して、第1封着材を第2ガラス板300上に塗布し、その後第1封着材を乾燥させて周壁410を形成する。また、ディスペンサなどを利用して、第2封着材を第2ガラス板300上に塗布し、その後第2封着材を乾燥させて仕切り420を形成する。
【0128】
第1工程から第5工程が終了することで、
図3に示されるような、第2ガラス板300が得られる。この第2ガラス板300には、周壁410、仕切り420、通気路600、排気口700、ガス吸着体60及び複数のスペーサ70が形成されている。
【0129】
第6工程は、第1ガラス板200と第2ガラス板300とを配置する工程(配置工程)である。第6工程では、
図4に示すように、第1ガラス板200と第2ガラス板300とは、互いに平行かつ対向するように配置される。
【0130】
上述した組立工程によって、
図5に示す組立て品100が得られる。そして、組立工程の後には、
図6に示すような、第1溶融工程(接合工程)と、排気工程と、第2溶融工程(封止工程)とが実行される。
【0131】
第1溶融工程は、周壁410を一旦溶融させて周壁410で第1ガラス板200と、第2ガラス板300とを気密に接合する工程である。具体的には、第1ガラス板200及び第2ガラス板300は、溶融炉内に配置され、第1溶融温度Tm1で所定時間(第1溶融時間)tm1だけ加熱される(
図6参照)。本実施形態では、第1封着材と第2封着材とが、上記の通り、同じ材料であるため、第1封着材の軟化点(第1軟化点)は、第2封着材の軟化点(第2軟化点)と同じである。このため、第1溶融温度Tm1は、第1及び第2軟化点以上に設定される。第1溶融温度Tm1が第1及び第2軟化点以上であっても、排気工程は第1溶融工程後に開始されるため(
図6参照)、第1溶融工程では仕切り420は通気路600を塞がない。すなわち、第1溶融工程では通気路600を確保している。第1溶融工程において、例えば、第1及び第2軟化点が265℃で、第1溶融温度Tm1は、290℃に設定される。また、第1溶融時間tm1は、例えば、15分である。
【0132】
本実施形態において、第1軟化点が第2軟化点と同じである態様は、第1軟化点が第2軟化点と厳密に同じである態様だけでなく、第1軟化点が第2軟化点と略同じである態様も含む。
【0133】
第1溶融温度Tm1で周壁410を加熱することにより、仕切り420の変形を抑制しながらも、周壁410を軟化させることができる。これにより、周壁410によって第1ガラス板200と第2ガラス板300とを気密に接合しやすくなる。
【0134】
排気工程は、通気路600と第2空間520と排気口700とを介して第1空間510を排気して第1空間510を減圧空間50とする工程である。排気は、例えば、真空ポンプを用いて行われる。真空ポンプは、
図5に示されるように、排気管810と、シールヘッド820と、により組立て品100に接続される。排気管810は、例えば、排気管810の内部と排気口700とが連通するように第2ガラス板300に接合される。そして、排気管810にシールヘッド820が取り付けられ、これによって、真空ポンプの吸気口が排気口700に接続される。第1溶融工程と排気工程と第2溶融工程とは、組立て品100を溶融炉内に配置したまま行われる。そのため、排気管810は、少なくとも第1溶融工程の前に、第2ガラス板300に接合される。
【0135】
排気工程では、第2溶融工程の開始前までに、排気温度Te以上で所定時間(排気時間)te以上、通気路600と第2空間520と排気口700とを介して第1空間510を排気する(
図6参照)。排気温度Teは、第2封着材の第2軟化点(例えば265℃)より低く設定される。例えば、排気温度Teは、250℃である。このようにすれば、排気工程でも仕切り420は変形しない。排気工程の際、ガス吸着体60中の少なくとも水分が気化して第1空間510内に放出され、第1空間510は、通気路600、第2空間520、及び、排気口700を通じて排出される。ガス吸着体60から放出された水分等が排気されることで、ゲッタ材のガス吸着性をさらに回復させることができる。排気時間teは、所望の減圧度(例えば、0.1Pa以下の真空度)の減圧空間50が得られるように設定される。例えば、排気時間teは、30分に設定される。また、このときのガス吸着体60の活性化温度は排気温度Teとなる。すなわち、ガス吸着体60には粉体状のゲッタ材が含まれており、このゲッタ材の活性化可能温度は排気温度Te以下である。
【0136】
第2溶融工程は、仕切り420を変形させて少なくとも通気路600を塞ぐことで隔壁42を形成して仕掛り品110を得る工程である。つまり、第2溶融工程では、仕切り420を変形させて、通気路600を塞ぐ。言い換えると、変形した仕切り420により第1空間510が塞がれて、第1空間510と第2空間520とが分離される。これにより、減圧空間50を囲む枠体40が形成される(
図7参照)。本実施形態では、仕切り420の長さ方向の両端(第1及び第2遮断部4221、4222)が周壁410に接して一体となるように、仕切り420を変形させている。これによって、
図7に示すように、内部空間500を第1空間510(減圧空間50)と第2空間520とに気密に分離する隔壁42が形成される。より詳細には、第2封着材の第2軟化点以上の所定温度(第2溶融温度)Tm2で仕切り420を一旦溶融させることで、仕切り420を変形させる。具体的には、第1ガラス板200及び第2ガラス板300は、溶融炉内で、第2溶融温度Tm2で所定時間(第2溶融時間)tm2だけ加熱される(
図6参照)。第2溶融温度Tm2及び第2溶融時間tm2は、仕切り420が軟化し、通気路600が塞がれるように設定される。第2溶融温度Tm2の下限は、第2軟化点(例えば265℃)である。第2溶融温度Tm2は、例えば、300℃に設定される。また、第2溶融時間tm2は、例えば、30分である。本実施形態の封止工程は第2溶融工程であるが、封止工程は、要するに、減圧空間50を、減圧空間50以外の空間から空間的に分離する工程である。減圧空間50以外の空間は、本実施形態では、第2空間520に相当する。
【0137】
本実施形態では、
図6に示すように、排気工程は、第1溶融工程の後に開始され、第2溶融工程の終了とともに終了している。このため、第2溶融工程の際に、通気路600と第2空間520と排気口700とを介して第1空間510が排気されている。そのため、組立て品100の内外の圧力差が生じ、この圧力差によって、第1及び第2ガラス板200,300が互いに接近するように移動させられる。これにより、第2溶融工程では、第2溶融温度Tm2で、通気路600と第2空間520と排気口700とを介して第1空間510を排気しながら、仕切り420を変形させて通気路600を塞ぐ隔壁42を形成する。
【0138】
また、
図6に示す第2溶融工程では、第2溶融時間tm2が経過した後、溶融炉内の温度を室温まで等速で冷却する。そして、シールヘッド820を取り外すことで、第2溶融工程及び排気工程を終了する。
【0139】
上述の準備工程によって、
図7示す仕掛り品110が得られる。仕掛り品110は、
図7に示すように、第1ガラス板200と、第2ガラス板300と、周壁41と、隔壁42と、を備える。また、仕掛り品110は、減圧空間50と、第2空間520とを有する。さらに、仕掛り品110は、減圧空間50内に、ガス吸着体60と、複数のピラー(スペーサ)70と、を備える。さらに、仕掛り品110は、排気口700を備える。
【0140】
第1及び第2ガラス板200,300はいずれも矩形の平板状である。第1及び第2ガラス板200,300は同じ平面形状である。
【0141】
隔壁42は、減圧空間50を第2空間520から(空間的に)分離する。言い換えれば、仕掛り品110の第2空間520は排気口700を介して外部空間と(空間的に)繋がっているため、隔壁42は、減圧空間50と外部空間とを分離する。そして、隔壁42と周壁410とが一体となって、減圧空間50を囲む枠体40を構成する。枠体40は、減圧空間50を完全に囲むとともに、第1ガラス板200と第2ガラス板300とを気密に接合する。
【0142】
ガス吸着体60は、減圧空間50内に配置される。具体的には、ガス吸着体60は、長尺の平板状であり、第2ガラス板300に配置されている。ガス吸着体60は、不要なガス(残留ガス等)を吸着するために用いられる。不要なガスは、例えば、枠体40となる熱接着剤(第1熱接着剤、及び第2熱接着剤)が加熱される際に、熱接着剤から放出されるガスである。
【0143】
複数のスペーサ70は、減圧空間50内に配置されている。複数のスペーサ70は、第1及び第2ガラス板200,300間の距離を所望の値に維持するために使用される。
【0144】
減圧空間50は、上記の通り、第2空間520及び排気口700を介して第1空間510を排気することで形成される。換言すれば、減圧空間50は、真空度が所定値以下の第1空間510である。所定値は、たとえば、0.1Paである。減圧空間50は、第1ガラス板200と第2ガラス板300と枠体40とで完全に密閉されているから、第2空間520及び排気口700から分離されている。
【0145】
除去工程は、準備工程の後に実行される。除去工程は、
図8に示すように、仕掛り品110から第2空間520を有する部分11を除去することで、減圧空間50を有する部分であるガラスパネルユニット10を得る工程である。
【0146】
ガラスパネルユニット10は、第1ガラス板20と、第2ガラス板30と、を備える。第1ガラス板20は、第1ガラス板200のうち第1空間510(減圧空間50)に対応する部分であり、第2ガラス板30は、第2ガラス板300のうち第1空間510(減圧空間50)に対応する部分である。
【0147】
一方、不要な部分11は、第1ガラス板200のうち第2空間520に対応する部分230と、第2ガラス板300のうち第2空間520に対応する部分320と、を含む。なお、ガラスパネルユニット10の製造コストを考慮すれば、不要な部分11は小さいほうが好ましい。
【0148】
除去工程では、具体的には、溶融炉から取り出された仕掛り品110は、隔壁42に沿って切断され、減圧空間50を有する部分(ガラスパネルユニット)10と、第2空間520を有する部分(不要な部分)11と、に分割される。なお、仕掛り品110を切断する部分(切断線)の形状は、ガラスパネルユニット10の形状によって定まる。ガラスパネルユニット10は矩形状であるから、切断線は隔壁42の長さ方向に沿った直線となっている。
【0149】
上述の、準備工程及び除去工程を経て、
図2に示すガラスパネルユニット10が得られる。
【0150】
図2は、本実施形態のガラスパネルユニット(ガラスパネルユニットの完成品)10を示す。ガラスパネルユニット10は、第1ガラス板20と、第2ガラス板30と、枠体40と、を備える。また、ガラスパネルユニット10は、第1及び第2ガラス板20,30と枠体40とで囲まれた減圧空間50を有する。さらに、ガラスパネルユニット10は、減圧空間50内に、ガス吸着体60と、複数のピラー(スペーサ)70と、を備える。ガラスパネルユニット10は、第1及び第2ガラス板20、30に排気口700を備えない。
【0151】
第1及び第2ガラス板20,30はいずれも矩形の平板状である。第1及び第2ガラス板20,30は同じ平面形状である。
【0152】
本実施形態の第1ガラス板20は、除去工程により第1ガラス板200の不要な部分230が除去されたものである。このため、第1ガラス板20は、第1ガラス板200と同様の構成を有する。すなわち、第1ガラス板20は、その主な形状を構成する本体と、低放射膜220とを含む。この本体は、減圧空間50内で低放射膜220により覆われる。第1ガラス板20は、矩形の平板状である。
【0153】
本実施形態の第2ガラス板30は、除去工程により第2ガラス板300の不要な部分320が除去されたものである。このため、第2ガラス板30は、第2ガラス板300と同様の構成を有する。すなわち、第2ガラス板30は、その主な形状を構成する本体を備える。第2ガラス板30は、本実施形態では、その本体のみからなるが、この本体に加えて低放射膜220と同様の低放射膜を備えてもよい。第2ガラス板30が低放射膜を備える場合、この低放射膜は、減圧空間50内で、第2ガラス板30の本体を覆い、かつこの本体に接する。
【0154】
枠体40は、第1ガラス板20と、第2ガラス板30との間にあり、第1ガラス板20と第2ガラス板30とを気密に接合する。これによって、減圧空間50は、第1ガラス板20と、第2ガラス板30と、枠体40とで囲まれている。枠体40は、第1及び第2ガラス板20,30と同様の多角形(本実施形態では四角形)の枠状である。枠体40は、第1及び第2ガラス板20,30の外周に沿って形成されている。
【0155】
複数のスペーサ70は、減圧空間50内に配置されている。複数のスペーサ70は、第1及び第2ガラス板20,30間の距離を所望の値に維持するために使用される。
【0156】
<ガス吸着体によるガスの吸着>
ガス吸着体60は、ガラスパネルユニット10の減圧空間50内に配置されている。ガス吸着体60に含まれているゲッタ材は複数の粒子を含有するが、これら粒子の活性化可能温度は、400℃以下である。本開示において、「活性化可能温度」とは、ガス吸着体60に含まれる複数の粒子が活性化するために必要な温度を意味する。すなわち、ガス吸着体60に含まれる複数の粒子は、活性化可能温度以上において活性化する。活性化したガス吸着体60中の複数の粒子は、ガス吸着能が増大する。言い換えると、ガス吸着体60中の複数の粒子は、活性化可能温度に達すると、吸着ガスを放出することによって活性化し、ガス吸着能が高くなる。活性化可能温度は、例えば、ガス吸着材60を0.001Pa以下の真空中で所定の加熱温度にて十分な時間加熱した後、20℃環境中で0.1Paの窒素平衡圧で窒素ガスの吸着量を測定した場合、窒素吸着量が4×10-11mol/g以上となる最低限の加熱温度である。この窒素吸着量は、例えばマイクロトラックベル製のbelsorp-maxにて、0.5gの吸着材の前処理をターボポンプにて排気しながら所定の温度(活性化温度)で12時間以上加熱を行い、その後20℃に降温し、吸着質に6N以上の純度の窒素ガスを用い、平衡圧0.1Paでの窒素吸着量を測定し、その吸着量が4×10-11mol/g以上であれば、所定の温度(活性化温度)が活性化可能温度以上であることを確認することができる。
【0157】
以下に、ガス吸着体60が含有するゼオライトの結晶からなる粒子について説明する。
【0158】
ガス吸着体60が含有するゲッタ材は、多数(複数)のゼオライトの粒子の全重量のうち、半分以上の重量を占めるゼオライトの粒子の径が200nm以上である。言い換えると、径が200nm以上の複数のゼオライトの粒子の重量が、ゲッタ材を構成する複数のゼオライトの粒子の全重量の半分以上を占めている。なお、径が200nm以上の複数のゼオライトの粒子の重量が、ゲッタ材及びガス吸着体60に含有されている複数のゼオライトの粒子の全重量であってもよく、この場合、ゲッタ材及びガス吸着体60に含有されている複数のゼオライトの粒子の全部が、200nm以上の径を有している。
【0159】
上述したが、一般的に(例えば100Pa以上の圧力下で)、ゼオライトの粒子の径が小さくゼオライトの粒子の数が多いほど、ゼオライトの粒子の表面積が大きくなり、ゼオライトのガス吸着能力は高くなる。ゼオライトの粒子の径が小さいと、表面の細孔から内部に入り込む内部空間の奥行(表面からの経路の長さ)は短い。このため、ガス(分子)は、粒子の内部空間の奥方にまで入り込めず、表面近傍に保持(吸着)されている。表面近傍に保持されているガスは、所定の時間(粒子により異なる)を経て粒子より離脱するが、新たに吸着されるガスもあるため、粒子において離脱するガスと吸着するガスは平衡する。この平衡の観点からは、圧力が小さくなるほど、新たに吸着されるガスの量が小さく、離脱と吸着の平衡点も小さくなるため、単位重量あたりのガス吸着能力は小さくなる。また、一定の圧力下では、径が小さく表面積の合計値が大きいほど、単位重量あたりのガス吸着能力は大きくなる。
【0160】
しかしながら、低圧領域(例えば100Pa以下、特に30Pa以下)では、平衡の観点とは別の観点から、大きい粒子からのガスの離脱が小さくなると考えられる。すなわち、大きい粒子においては、単位重量あたりの表面積は小さいものの、表面の細孔から内部に入り込む内部空間の奥行は長くなり、小さい粒子よりも内部空間の奥方にまで入り込むガスが存在する。内部空間の奥方にまで入り込んだガスは、粒子から離脱しにくい。このため、低圧領域では、粒子が大きい方が、単位重量あたりのガス吸着能力が大きくなると考えられる。
【0161】
ここで、ゼオライトの粒子の径について説明する。ゼオライトの粒子の形状が球状である場合、その球の直径が粒子の径となる。ゼオライトの粒子の形状が球状ではない場合、ゼオライトの粒子の形状は楕円体形状又は直方体形状であることが多い。この場合、ガス吸着能力に最も影響を与えるのは、ゼオライトの粒子の最短幅と考えられる。最短幅とは、粒子の中心を含む断面を想定し、その断面において中心を通る線分のうちで、最も短い線分の長さであって、例えばゼオライトの粒子の形状が楕円体形状である場合、ゼオライトの粒子の短軸方向の長さである。また、例えばゼオライトの粒子の形状が直方体形状である場合、最短幅とは、直方体の辺のうちの最短辺の長さである。ゼオライトの粒子の形状が直方体形状と楕円体形状のいずれでもない場合、最短幅とは、粒子の最長幅を示す線を含む任意の断面において、最長幅を示す線と垂直方向の粒子幅で最大となるものの集合のうち、最小となる粒子幅である。なお、ゼオライトの粒子の形状が球状である場合、最短幅は球の直径である。
【0162】
ここで、粒子の最短幅を指標として採用する理由は、最短幅に対応する部分の表面積は広くなりやすく、かつ、最短幅に対応する部分の内部空間の奥行が短いほど内部空間に入り込んだガスが離脱しやすいため、ゼオライトの粒子の単位重量あたりのガス吸着能力に最も影響を与えると考えられるからである。
【0163】
粒子の径は、いわゆるSEM(走査型電子顕微鏡)観察を行い、粒子の短軸幅を測定することによって求められる。短軸幅として、例えば粒子の形状が平板状であれば、板厚を測定すればよい。
【0164】
また、各粒子の重量比はSEM観察から得られる粒子の形状からその体積比を計算することで算出できる。ただし、ゼオライト以外の粒子が混合されている場合、ゼオライト以外の粒子を除外して体積比を算出する。
【0165】
図9及び
図10に、径が50nmの銅イオン交換型ZSM-5粒子と、径が400nmの銅イオン交換型ZSM-5粒子とによるガス吸着能力の比較実験の結果を示す。
図9及び
図10に示す平衡圧-吸着量の関係図の横軸は平衡圧(Pa)であり、縦軸は20℃における窒素吸着量(任意単位)である。但し、
図9においては縦軸及び横軸は通常の軸であり、
図10においては縦軸及び横軸は対数軸である。
図10より、平衡圧が約30Paとなるあたりで、径が50nmの銅イオン交換型ZSM-5粒子と径が400nmの銅イオン交換型ZSM-5粒子とによるガス吸着能力が逆転していることが分かる。
【0166】
本実施形態においては、ガス吸着体60が含有する複数(多数)の粒子の全重量のうち、半分以上の重量を占める粒子の径が200nm以上であればよいが、ガス吸着体60に含有される複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める粒子の径が300nm以上であればより好ましい。更に、ガス吸着体60に含有される複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める粒子の径が400nm以上であればより好ましい。つまり、径が400nm以上の複数の粒子の重量が、ガス吸着体60に含有されている複数の粒子の全重量の半分以上を占めていることが好ましい。
【0167】
図11に、径が50nmの粒子と径が400nmの粒子とによるガス吸着能力の活性化温度の比較実験の結果を示す。
図11に示す吸着量比-活性化温度の関係図の横軸は活性化温度(℃)であり、縦軸は、20℃環境下で平衡圧0.1Paの場合における、径が400nmの粒子の窒素吸着量/径が50nmの粒子の窒素吸着量の比である。
図11より、活性化温度が350℃である場合の方が、活性化温度が400℃である場合よりも吸着量比が大きく、活性化温度が250℃である場合の方が、活性化温度が350℃である場合よりも著しく吸着量比が大きいことが分かる。これは、銅イオン交換ゼオライトの場合、酸化銅還元による強力な窒素吸着サイトの発現が、活性化温度(排気工程の温度)を350℃以下にすることによって急激に起こりにくくなり、結晶サイズ効果の割合が大きくなるためであると考えられる。
【0168】
このため、本実施形態では、ガラスパネルユニット10の製造プロセスにおける排気温度(活性化温度と同等)が400℃以下でより効果的になり、350℃以下ではさらに大きな効果が得られ、300℃以下であればより効果的になる。また、通常、排気工程は封着材(第1封着材及び第2封着材)の溶融温度付近かそれ以下の温度で行われるため、本発明におけるガラスパネルユニット10は、封着材(第一封着材または第二封着材の少なくとも一方)の溶融温度が400℃以下の場合により効果的であり、350℃以下ではさらに著しく効果的であり、300℃以下でより効果的になる。
【0169】
図12に、ガラスパネルユニット10の残留ガス量-結晶の径(結晶サイズ)の関係図を示す。このとき、ガス吸着体60の活性化は、
図6に示す第1溶融工程と第2溶融工程の間の排気工程(排気温度Te=250℃)における条件と同じ条件で行った。
図12に示す関係図の横軸は結晶の径(nm)である結晶サイズであり、縦軸は残留ガス量(任意単位)である。
図12より、結晶の径が50nmの場合と比べて、結晶の径が400nm及び2000nmの場合は残留ガス量が小さいことが分かる。
【0170】
従って、ガラスパネルユニット10は、ゲッタ材が結晶サイズ400nm以上の銅イオン交換ゼオライトを含み、封着材(第一封着材または第二封着材の少なくとも一方)の軟化点または融点が350℃以下であることが好ましい。
【0171】
ガラスパネルユニット10の減圧空間50における窒素の分圧が0.1Pa以下としやすい。このことは、通常の吸着材では吸着されにくい窒素がガラスパネルユニット10の減圧空間に残留または放出されても、十分な真空度にすることができ、良好な断熱特性が得られやすいことを意味する。
【0172】
さらに、減圧空間50の体積をV(m3)としたとき、窒素吸着の総量が0.1V(Pa・m3)以上としやすい。このことは、本来であれば減圧空間50に残留または放出された窒素によって減圧空間50の圧力が0.1Pa以上になるものだとしても、ガス吸着体60の窒素吸着によって窒素分圧を0.1Pa以下にできていることを意味する。
【0173】
また、複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める粒子の径は、30μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。
【0174】
図13Aは、ガラスパネルユニット10の残留ガス量-結晶の径(結晶サイズ)の関係図を示す。この図では、ゲッタ材組成物の溶媒が水の場合と有機溶媒の場合とで、ガラスパネルユニット10の残留ガス量に差が生じることが判る。すなわち、ゲッタ材組成物の溶媒が水の場合と有機溶媒の場合とで、ゼオライトの結晶からなる粒子に残存する溶媒の量が異なり、ガス吸着体60のガス吸着能が異なってくる。
【0175】
図13Aから明らかなように、ゼオライトの結晶サイズが非常に小さい場合、ゲッタ材組成物の溶媒として有機溶媒を用いたガス吸着体のほうが残留ガス量は多い(すなわち、ガス吸着体の性能がやや低い)。しかし、ゼオライトの結晶サイズが400nmになると、ゲッタ材組成物の溶媒として有機溶媒を用いたガス吸着体と、水を用いたガス吸着体とでは、残留ガス量はほぼ同じ(残留ガス量比が1付近)になる。そして、ゼオライトの結晶サイズが400nmより大きくなると、ゲッタ材組成物の溶媒として水を用いるより有機溶媒を用いた方がガス吸着体の特性(ガス吸着能)が良くなる。例えば、ゼオライトの結晶サイズが600nm以上になると、残留ガス量比が1以下になる。
【0176】
図13Bに示すように、ゼオライトの結晶からなる粒子の径が500nm以上になると、残留ガス量比が1以下となるため、ゲッタ材組成物の溶媒として、有機溶媒の方が水より有利になる(ガス吸着体のガス吸着能が高くなる)。なお、残留ガス量比は以下の式(2)で示される。
残留ガス量比=[有機溶媒のときの残留ガス量]÷[水溶媒のときの残留ガス量] …(2)
【0177】
したがって、ゲッタ材組成物の溶媒として、有機溶媒を用いる場合、ゼオライトの結晶からなる粒子の径(結晶サイズ)は、200nm以上が有利で、さらに300nm以上が望ましく、さらに、400nm以上が望ましく、500nm以上がさらに好ましく、600nm以上であればより望ましい。また、ゼオライトの結晶からなる粒子の径は、750nm以上、1000nm以上、1500nm以上、2000nm以上であればなおよい。すなわち、ゲッタ組成物は、結晶サイズ400nm以上(または600nm以上)の銅イオン交換ゼオライトを含み、環状構造を持つ有機溶媒を含むことが好ましい。
【0178】
例えば、ゲッタ材組成物は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める粒子の径が200nm以上であり、かつ、複数の粒子の平均径は、200nm以上であることが好ましい。これにより、低圧領域で吸着性能を発揮しやすいガス吸着体60が得られる。ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の平均径(平均サイズ)は、前述のようにSEM観察で複数の粒子の短軸幅を測定し、その平均をとることで求められる。
【0179】
なお、例えば結晶サイズが200nm未満(結晶サイズ50nm)のゼオライト粒子0.5質量部、結晶サイズが200nm以上(結晶サイズ400nm)のゼオライト粒子0.5質量部を有機溶媒と混合して同様の実験をした場合、全量が結晶サイズ400nmのゼオライトを有機溶媒と混合した場合に近い残留ガス量(全量の結晶サイズが400nmの場合の1~1.5倍)となる。しかしながら、結晶サイズが200nm未満(結晶サイズ50nm)のゼオライト粒子0.75質量部と、結晶サイズが200nm以上(結晶サイズ400nm)のゼオライト粒子0.25質量部を有機溶媒と混合した場合においては、全量が結晶サイズ50nmのゼオライト粒子と有機溶媒を混合した場合とほぼ同じ残留ガス量(全量の結晶サイズが50nmの場合の0.8~1倍)となる。これは、結晶サイズの大きいゼオライト粒子を用いた場合に本来得られるはずの低圧状態では、結晶サイズの小さいゼオライトがむしろガスを放出しており、結晶サイズの小さいゼオライトの比率が高くなると、低圧領域ではゲッタ材全体としてガスの吸着より放出の割合が高くなってしまい、結晶サイズの大きい粒子の効果が得られにくくなるためと考えられる。このため、結晶サイズ200nm未満のゼオライト粒子は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全重量のうちの半分未満であることが望ましい。
【0180】
さらにゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全重量のうち、300nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の重量はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全重量のうちの半分未満であることがより望ましく、400nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の重量はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全重量のうちの半分未満であることがより望ましく、500nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の重量はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全重量のうちの半分未満であることがより望ましく、600nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の重量はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全重量のうちの半分未満であることがさらに望ましい。また、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全重量のうち、750nm未満の結晶サイズの粒子の重量が半分未満であることがより望ましく、1000nm未満の結晶サイズの粒子の重量が半分未満であることがより望ましく、1500nm未満の結晶サイズの粒子の重量がゼオライトの半分未満であることがより望ましく、2000nm未満の結晶サイズの粒子の重量は半分未満であることがさらに望ましい。また、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全重量のうち、200nm未満の結晶サイズの粒子の重量が半分未満であり、かつ、400nm以上の粒子の重量割合が25%より大きくてもよい。このようにすることで、結晶サイズの小さい粒子の影響を抑制することができる。
【0181】
なお、ゼオライトの結晶サイズ別の比率は、上記では粒子の重量の割合で示しているが、粒子の数(個数)の割合で比較した場合、あるいは粒子の体積の割合で比較した場合でもほぼ同様の傾向である。すなわち、結晶サイズ200nm未満の粒子は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全数のうちの半分未満であることが望ましい。あるいは、結晶サイズ200nm未満の粒子は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の占める全体積のうちの半分未満であることが望ましい。
【0182】
さらにゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全体積のうち、300nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の体積はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全体積のうちの半分未満であることがより望ましく、400nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の体積はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全体積のうちの半分未満であることがより望ましく、500nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の体積はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全体積のうちの半分未満であることがより望ましく、600nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の体積はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全体積のうちの半分未満であることがさらに望ましい。また、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全体積のうち、750nm未満の結晶サイズの粒子の体積が半分未満であることがより望ましく、1000nm未満の結晶サイズの粒子の体積が半分未満であることがより望ましく、1500nm未満の結晶サイズの粒子の体積が半分未満であることがより望ましく、2000nm未満の結晶サイズの粒子の体積は半分未満であることがさらに望ましい。
【0183】
またゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全数のうち、300nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の数はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全数のうちの半分未満であることがより望ましく、400nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の数はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全数のうちの半分未満であることがより望ましく、500nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の数はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全数のうちの半分未満であることがより望ましく、600nm未満の結晶サイズのゼオライト粒子の数はゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全数のうちの半分未満であることがさらに望ましい。また、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全数のうち、750nm未満の結晶サイズの粒子の数が半分未満であることがより望ましく、1000nm未満の結晶サイズの粒子の数が半分未満であることがより望ましく、1500nm未満の結晶サイズの粒子の数がゼオライトの半分未満であることがより望ましく、2000nm未満の結晶サイズの粒子の数は半分未満であることがさらに望ましい。
【0184】
また、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全体積のうち、200nm未満の結晶サイズの粒子の体積が半分未満であり、かつ、400nm以上の粒子の体積割合が25%より大きくてもよい。このようにすることで、結晶サイズの小さい粒子の影響を抑制することができる。また、例えば、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子の全数のうち、200nm未満の結晶サイズの粒子の数が半分未満であり、かつ、400nm以上の粒子の数が25%より多くてもよい。
【0185】
なお、
図13A及び
図13Bで使用したガラスパネルユニット10は、以下のようなものである。
・ガス吸着体を構成するゲッタ材:Cu-ZSM-5(銅イオン交換ゼオライト)
・ガス吸着材量:100mg
・ゲッタ材組成物の溶媒:αピネン又は水(なお、ゲッタ組成物は、ゲッタ材と溶媒とを混合後、1週間放置した後に塗布した)
・減圧空間体積:9000mm
3
・第一溶融温度:290℃
・排気温度および時間:250℃、30min
・第二溶融温度:300℃
・シール材:バナジウム系フリット(軟化点270℃であり、第1封着材と第2封着材は同じ材料を使用した)。
【0186】
(変形例)
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例を列挙する。なお、以下の説明において、上記実施形態を基本例とする。
【0187】
基本例では、第1及び第2ガラス板200、300のうち、第1ガラス板200だけが低放射膜220を備えているが、変形例では第2ガラス板300も低放射膜を備えてもよい。すなわち、第1及び第2ガラス板200、300の両方が低放射膜を備えてもよい。このため、第1及び第2ガラス板20、30の両方も低放射膜を備えてもよい。また、第1及び第2ガラス板20、30の両方ともが低放射膜を備えなくてもよい。
【0188】
基本例では、第1及び第2ガラス板200、300のうち、第1ガラス板200は低放射膜220を備え、第2ガラス板300は低放射膜を備えていない。しかし、変形例では第2ガラス板300が低放射膜を備え、第1ガラス板200が低放射膜220を備えなくてもよい。このため、変形例のガラスパネルユニット10でも、第2ガラス板30が低放射膜を備え、第1ガラス板20が低放射膜220を備えなくてもよい。
【0189】
基本例では、排気工程は第1溶融工程後に開始しているが、変形例では、第1溶融時間tm1が経過した後で、かつ溶融炉内の温度が第1軟化点よりも低ければ、排気工程は第1溶融工程の途中で開始してもよい。
【0190】
基本例では、排気工程は第2溶融工程の終了とともに終了しているが、変形例では、排気工程は、第1溶融工程の後に開始し、第2溶融工程の前に終了してもよい。
【0191】
基本例では、ガラスパネルユニット10は矩形状であるが、変形例では、ガラスパネルユニット10は、円形状や多角形状など所望の形状であってもよい。つまり、第1ガラス板20、及び第2ガラス板30は、矩形状ではなく、円形状や多角形状など所望の形状であってもよい。
【0192】
第1及び第2ガラス板20,30は同じ平面形状および平面サイズを有していなくてもよい。また、第1ガラス板20は、第2ガラス板30と同じ厚みを有していなくてもよい。これらの点は、第1及び第2ガラス板200,300についても同様である。
【0193】
周壁410は、第1及び第2ガラス板200,300と同じ平面形状を有していなくてもよい。
【0194】
周壁410は、芯材等の他の要素をさらに備えていてもよい。
【0195】
また、組立て品100では、周壁410は第1及び第2ガラス板200,300の間にあるだけでこれらを接合していない。しかしながら、組立て品100の段階で、周壁410が第1及び第2ガラス板200,300同士を接合していてもよい。要するに、組立て品100では、周壁410は第1及び第2ガラス板200,300の間にあればよく、これらを接合していることは必須ではない。
【0196】
また、基本例では、仕切り420は、周壁410に接していない。これによって、仕切り420の両端と周壁410との隙間が、通気路610,620を形成している。ただし、仕切り420は、その両端の一方のみが周壁410に連結されていてもよく、この場合、仕切り420と周壁410との間に一つの通気路600が形成されうる。あるいは、仕切り420は、その両端が周壁410に連結されていてもよい。この場合、通気路600は、仕切り420に形成された貫通孔であってもよい。あるいは、通気路600は、仕切り420と第1ガラス板200と間の隙間であってもよい。あるいは、仕切り420は、間隔をあけて配置された2以上の仕切りで形成されていてもよい。この場合、通気路600は、2以上の仕切りの間に介在する隙間であってもよい。
【0197】
基本例では、通気路600は2つの通気路610,620を備えているが、通気路600は、一つの通気路だけで構成されていてもよいし、3以上の通気路で構成されていてもよい。また、通気路600の形状は、特に限定されない。
【0198】
また、基本例では、内部空間500は、一つの第1空間510と一つの第2空間520とに仕切られている。ただし、内部空間500は、仕切り420によって、1以上の第1空間510と1以上の第2空間520とに仕切られていてもよい。内部空間500が2以上の第1空間510を有する場合、1つの仕掛り品110から2以上のガラスパネルユニット10を得ることができる。
【0199】
基本例では、第1空間510を減圧空間50としているが、減圧空間50の代わりに、減圧空間としてもよい。減圧空間は、減圧状態となった第1空間510である。減圧状態とは、圧力が大気圧より低い状態であればよい。
【0200】
基本例では、隔壁42で減圧空間50を外部空間から空間的に分離している。しかし変形例では、排気口700の中または外周のみを封着材により封止していてもよい。また第二溶融工程で通気路600を塞ぐ代わりに、排気口700の周辺部のみを局所加熱し、封着材を溶融させることで封止してもよい。また、排気口700を形成せず、炉全体を真空排気することで、ガラスパネルユニット10の中を減圧した後、真空中でガラスパネルユニット10を加熱することで外周の封着材を溶融させ、封止してもよい。
【0201】
基本例では、隔壁42で減圧空間50を外部空間から空間的に分離している。しかし変形例では、排気口700に接続された排気管の途中を溶融切断することで形成される封止部により減圧空間50を外部空間から空間的に分離してもよい。すなわち、減圧空間50を外部空間から空間的に分離する部材として、隔壁42は必須ではない。
【0202】
(まとめ)
以上述べた実施形態及び変形例から明らかなように、第1の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1ガラス板(20)と、第1ガラス板(20)に対向する第2ガラス板(30)と、枠体(40)と、減圧空間(50)と、ガス吸着体(60)と、を備える。枠体(40)は、第1ガラス板(20)と第2ガラス板(30)とを気密に接合する。減圧空間(50)は、第1ガラス板(20)と、第2ガラス板(30)と、枠体(40)とで囲まれる。ガス吸着体(60)は、減圧空間(50)内に配置される。ガス吸着体(60)は、ゲッタ材を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が200nm以上である。粒子の活性化可能温度が400℃以下である。
【0203】
第1の態様のガラスパネルユニット(10)によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0204】
第2の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1の態様との組み合わせにより実現される。第2の態様のガラスパネルユニット(10)では、前記複数の粒子の全重量のうち、前記粒子の径が200nm未満の粒子の重量が半分未満である。
【0205】
第2の態様のガラスパネルユニット(10)によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0206】
第3の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1又は2の態様との組み合わせにより実現される。第3の態様のガラスパネルユニット(10)では、前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が400nm以上である。
【0207】
第3の態様によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0208】
第4の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1~3のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第4の態様のガラスパネルユニット(10)では、減圧空間(50)における窒素の分圧が0.1Pa以下である。
【0209】
第4の態様によれば、断熱性能の高いガラスパネルユニット(10)としやすい。
【0210】
第5の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1~4のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第5の態様のガラスパネルユニット(10)では、前記粒子が吸着した窒素の20℃における総量が、減圧空間(50)の容積をV(m3)としたとき、0.1V(Pa・m3)以上である。
【0211】
第5の態様によれば、断熱性能の高いガラスパネルユニット(10)としやすい。
【0212】
第6の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1~5のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第6の態様のガラスパネルユニット(10)では、ゼオライトは、銅イオン交換ゼオライトである。
【0213】
第6の態様によれば、ガス吸着体(60)が吸着性能を発揮しやすい。
【0214】
第7の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1~6のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第7の態様のガラスパネルユニット(10)では、前記粒子は、一次粒子である。また前記径は、前記粒子の最短幅である。
【0215】
第7の態様のガラスパネルユニット(10)によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0216】
第8の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1ガラス板(20)と、第1ガラス板(20)に対向する第2ガラス板(30)と、枠体(40)と、減圧空間(50)と、ガス吸着体(60)と、を備える。枠体(40)は、第1ガラス板(20)と第2ガラス板(30)とを気密に接合する。減圧空間(50)は、第1ガラス板(20)と、第2ガラス板(30)と、枠体(40)とで囲まれる。ガス吸着体(60)は、減圧空間(50)内に配置される。ガス吸着体(60)は、ゲッタ材を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子の全数のうちの半分以上の数を占める前記粒子の径が200nm以上である。前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である。
【0217】
第8の態様のガラスパネルユニット(10)によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0218】
第9の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1ガラス板(20)と、第1ガラス板(20)に対向する第2ガラス板(30)と、枠体(40)と、減圧空間(50)と、ガス吸着体(60)と、を備える。枠体(40)は、第1ガラス板(20)と第2ガラス板(30)とを気密に接合する。減圧空間(50)は、第1ガラス板(20)と、第2ガラス板(30)と、枠体(40)とで囲まれる。ガス吸着体(60)は、減圧空間(50)内に配置される。ガス吸着体(60)は、ゲッタ材を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子が占める全体積のうちの半分以上の体積を占める前記粒子の径が200nm以上である。前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である。
【0219】
第9の態様のガラスパネルユニット(10)によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0220】
第10の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1ガラス板(20)と、第1ガラス板(20)に対向する第2ガラス板(30)と、枠体(40)と、減圧空間(50)と、ガス吸着体(60)と、を備える。枠体(40)は、第1ガラス板(20)と第2ガラス板(30)とを気密に接合する。減圧空間(50)は、第1ガラス板(20)と、第2ガラス板(30)と、枠体(40)とで囲まれる。ガス吸着体(60)は、減圧空間(50)内に配置される。ガス吸着体(60)は、ゲッタ材を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子と、水素化触媒と、を含有する。
【0221】
第10の態様のガラスパネルユニット(10)によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0222】
第11の態様のゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める粒子の径が200nm以上である。前記粒子の活性化可能温度が400℃以下である。
【0223】
第11の態様のゲッタ材は、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0224】
第12の態様のゲッタ材は、第11の態様との組み合わせにより実現される。第12の態様のゲッタ材では、前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が400nm以上である。
【0225】
第12の態様のゲッタ材は、低圧領域で吸着性能を発揮することができる。
【0226】
第13の態様のゲッタ材は、第11又は12の態様との組み合わせにより実現される。第13の態様のゲッタ材では、前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が600nm以上である。
【0227】
第13の態様のゲッタ材は、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0228】
第14の態様のゲッタ材は、第11~13のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第14の態様のゲッタ材では、前記複数の粒子の各径が1000nm以上である。
【0229】
第14の態様のゲッタ材は、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0230】
第15の態様のゲッタ材は、第11~14のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第15の態様のゲッタ材では、前記粒子は、一次粒子である。また前記径は、前記粒子の最短幅である。
【0231】
第15の態様のゲッタ材は、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0232】
第16の態様のゲッタ材は、第11~15のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第16の態様のゲッタ材では、二酸化炭素吸着材(酸化セリウムを除く)を更に含む。
【0233】
第16の態様のゲッタ材は、二酸化炭素を吸着しやすくなり、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0234】
第17の態様のゲッタ材は、第16の態様との組み合わせにより実現される。第17の態様のゲッタ材では、前記二酸化炭素吸着材は、シリカ、アルミナ及び活性炭からなる群より選択される少なくとも一種を含む。
【0235】
第17の態様のゲッタ材は、二酸化炭素を吸着しやすくなり、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0236】
第18の態様のゲッタ材は、第11~17のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第18の態様のゲッタ材では、水素化触媒を更に含む。
【0237】
第18の態様のゲッタ材は、化合物を水素化しやすくなり、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0238】
第19の態様のゲッタ材は、第18の態様との組み合わせにより実現される。第19の態様のゲッタ材では、前記水素化触媒は、粉体である。
【0239】
第19の態様のゲッタ材は、化合物を水素化しやすくなり、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【0240】
第20の態様のゲッタ材は、第18又は19の態様との組み合わせにより実現される。第20の態様のゲッタ材では、前記水素化触媒は、シリカ、アルミナ及び活性炭からなる群より選択される少なくとも一種を含む担体に担持されている。
【0241】
第20の態様のゲッタ材は、水素化触媒を担持体で担持し、水素化触媒が脱離しにくくなる。
【0242】
第21の態様のゲッタ材は、第11~20のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第21の態様のゲッタ材では、ゼオライトは、銅イオン交換ゼオライトである。
【0243】
第21の態様のゲッタ材は、吸着性能を発揮しやすい。
【0244】
第22の態様のゲッタ材組成物は、ゲッタ材と、溶媒と、を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記粒子の活性化可能温度は400℃以下である。
【0245】
第22の態様のゲッタ材組成物によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすいガス吸着体(60)が得られる。
【0246】
第23の態様のゲッタ材組成物は、ゲッタ材と、溶媒と、を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子は、径が200nm以上の粒子を含む。
【0247】
第23の態様のゲッタ材組成物によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすいガス吸着体(60)が得られる。
【0248】
第24の態様のゲッタ材組成物は、第22又は23の態様との組み合わせにより実現される。第24の態様のゲッタ材組成物では、前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が200nm以上であり、かつ、前記複数の粒子の平均径は、200nm以上である。
【0249】
第24の態様のゲッタ材組成物によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすいガス吸着体(60)が得られる。
【0250】
第25の態様のゲッタ材組成物は、第22~24のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第25の態様のゲッタ材組成物では、溶媒は、沸点が300℃以下の有機溶媒を含む。
【0251】
第25の態様のゲッタ材組成物によれば、有機溶媒を脱離するのに必要なエネルギーを低減することができ、ガス吸着体(60)が得やすくなる。
【0252】
第26の態様のゲッタ材組成物は、第22~25のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第26の態様のゲッタ材組成物では、溶媒は、環式構造を有する有機溶媒を含む。
【0253】
第26の態様のゲッタ材組成物によれば、有機溶媒を脱離するのに必要なエネルギーを低減することができ、ガス吸着体(60)が得やすくなる。
【0254】
第27の態様のゲッタ材組成物は、第22~26のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。第27の態様のゲッタ材組成物では、溶媒は、非芳香族を有する有機溶媒を含む。
【0255】
第27の態様のゲッタ材組成物によれば、有機溶媒を脱離するのに必要なエネルギーを低減することができ、ガス吸着体(60)が得やすくなる。
【0256】
第28の態様のゲッタ材組成物は、第22~27のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。ゲッタ材は、さらに、二酸化炭素吸着材を含有する。
【0257】
第28の態様のゲッタ材組成物によれば、ガス吸着能が優れるガス吸着体(60)が得やすくなる。
【0258】
第29の態様のゲッタ材組成物は、第22~28のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現される。ゲッタ材は、さらに、水素化触媒を含有する。
【0259】
第29の態様のゲッタ材組成物によれば、ガス吸着能が優れるガス吸着体(60)が得やすくなる。
【0260】
第30の態様のガラスパネルユニット(10)の製造方法は、加工工程と、組立工程と、接合工程と、排気工程と、を含む。加工工程は、第22~29のいずれか一つの態様のゲッタ材組成物を用意する。組立工程は、第1ガラス板(20)と、第2ガラス板(30)と、枠状の周壁(410)と、内部空間(500)と、ゲッタ材組成物から得られるガス吸着体(60)と、排気口(700)と、を備える組立て品(100)を用意する。接合工程は、周壁(410)を溶融させて第1ガラス板(20)と第2ガラス板(20)とを気密に接合する。排気工程は、排気口(700)を介して内部空間(500)を排気して減圧空間(50)とする。
【0261】
第30の態様によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすいガラスパネルユニット(10)が得られる。
【0262】
第31の態様のガラスパネルユニット(10)は、第1ガラス板(20)と、第1ガラス板(20)に対向する第2ガラス板(30)と、枠体(40)と、減圧空間(50)と、ガス吸着体(60)と、を備える。枠体(40)は、第1ガラス板(20)と第2ガラス板(30)とを気密に接合する。減圧空間(50)は、第1ガラス板(20)と、第2ガラス板(30)と、枠体(40)とで囲まれる。ガス吸着体(60)は、減圧空間(50)内に配置される。ガス吸着体(60)は、ゲッタ材を含有する。前記ゲッタ材は、ゼオライトの結晶からなる複数の粒子を含有する。前記複数の粒子の全重量のうちの半分以上の重量を占める前記粒子の径が200nm以上である。封止材の軟化点または融点または接着可能温度の少なくとも1つが350℃以下である。
【0263】
第31の態様のガラスパネルユニット(10)によれば、低圧領域で吸着性能を発揮しやすい。
【符号の説明】
【0264】
10ガラスパネルユニット
20第1ガラス板
30第2ガラス板
40枠体
50減圧空間
60ガス吸着体