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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】光照射型美容装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20240329BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240329BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61N5/06 A
A61N5/06 Z
C09K11/08 J
C09K11/80
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022531742
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2021022112
(87)【国際公開番号】W WO2021256369
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020106043
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】新田 充
(72)【発明者】
【氏名】大塩 祥三
(72)【発明者】
【氏名】藤原 ちぐさ
(72)【発明者】
【氏名】鴫谷 亮祐
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-087834(JP,A)
【文献】国際公開第2014/084379(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0248678(US,A1)
【文献】特表2015-528338(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137731(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06 - 5/08
A61B 18/18 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次光を放射する光源と、前記一次光を吸収して前記一次光よりも長波長の第一の波長変換光に変換する第一の蛍光体と、を備える発光装置を含み、前記発光装置から放射された出力光を照射する光照射型美容装置であって、
前記光源は、定格出力が1W以上の固体光源であり、
前記一次光は前記固体光源から発せられる光であり、
前記第一の波長変換光は、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光を含み、
前記第一の波長変換光の蛍光スペクトルは、710nmを超える波長領域に蛍光強度最大値を有し、
前記出力光は前記第一の波長変換光を含む、光照射型美容装置。
【請求項2】
前記一次光のパワー密度は、0.5W/mm以上である請求項1に記載の光照射型美容装置。
【請求項3】
前記第一の蛍光体は、ガーネットの結晶構造を有する請求項1又は2に記載の光照射型美容装置。
【請求項4】
前記発光装置は、前記一次光を、前記第一の波長変換光とは異なる第二の波長変換光に変換する第二の蛍光体を、をさらに備える請求項1~3のいずれか1項に記載の光照射型美容装置。
【請求項5】
前記第一の蛍光体は、二種類以上のCr3+付活蛍光体を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の光照射型美容装置。
【請求項6】
前記一次光は、600nm以上710nm未満の波長範囲内に強度最大値を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の光照射型美容装置。
【請求項7】
前記第一の波長変換光の蛍光スペクトルは、710nm以上900nm未満の波長領域に蛍光強度最大値を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の光照射型美容装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光照射型美容装置を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光照射型美容装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肌に、近赤外光を照射することで、ムダ毛のケアやシミ、ソバカスの除去等の光美容を行う光照射型美容装置が知られている。例えば、比較的高い強度の近赤外光を毛髪細胞に照射すると、メラニン色素と結合したタンパク質が熱で凝固することにより変性し、毛の再生機能が低下することにより、脱毛に有効であることが知られている。また、シミ、ソバカスの除去においても比較的高い強度の近赤外光が有効であることが知られている。このように、近赤外光は、人体に悪影響を及ぼさない範囲内で高出力であると、光美容の効果が高くなりやすい。高出力の近赤外光の光源としてはLED、キセノンランプ等が知られている。
【0003】
なお、キセノンランプを用いる場合、キセノンランプの出力光は近赤外光よりも短波長な領域の光を含む。このため、キセノンランプ光源を用いた光照射型美容装置では、通常、550nm以下の波長領域の光がフィルターでカットされており、エネルギー効率が悪い。そこで、光照射型美容装置の光源又は発光装置として、近赤外光の光成分を多く放射可能なものが望まれている。これに対し、近赤外光を放射する蛍光体を含む発光装置が検討されている。なお、蛍光体は、一般的に、高出力光が照射されると光出力が飽和しやすい。このため、高出力の近赤外光を出力可能な発光装置が望まれている。高出力の近赤外光を出力可能な発光装置として、従来、種々の発光装置が検討されている。
【0004】
例えば、Cr3+付活蛍光体を用いた(構成(P))発光装置が知られている。また、インコヒーレントな光を放射するLEDチップと、近赤外蛍光体とを備える(構成(Q))発光装置が知られている。さらに、レーザーダイオード等のコヒーレントなレーザー光を放射する光源と、赤色の蛍光成分を放射する蛍光体(以後、「赤色蛍光体」という。)とを備える(構成(R))発光装置が知られている。
【0005】
特許文献1には、構成(P)及び(Q)を満たす発光装置として、Cr3+とCe3+で共付活されたYAG系蛍光体を用いる発光装置が開示されている。上記YAG系蛍光体としては、YAl12:Cr3+,Ce3+、LuAl12:Cr3+,Ce3+、Y(Al,Ga)12:Cr3+,Ce3+、(Y,Gd)Al12:Cr3+,Ce3+等が用いられる。
【0006】
また、特許文献2には、構成(P)及び(Q)を満たす発光装置として、植物が有する色素タンパク質(フィトクロム)の光吸収スペクトルに対応する700~760nmの波長領域に蛍光ピークを有する蛍光体を用いた植物育成用の照明光源が開示されている。具体的には、特許文献2には、700~760nmの波長領域に蛍光ピークを有するGdGa12:Cr3+蛍光体と、青色LEDと、をパッケージ化した植物育成用の照明光源が開示されている。この照明光源によれば、蛍光体の蛍光ピークが存在する700~760nmの波長領域が、色素タンパク質(フィトクロム)の光吸収スペクトルに対応するため、植物の生長や分化を制御することができる。また、特許文献6には、Siフォトダイオード検出器の受光感度が高い波長域において広帯域で発光する赤外発光装置が開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、構成(Q)を満たす発光装置として、生体組織に照射した近赤外の光成分の反射像や透過像を出力する医療用検査装置が開示されている。この医療用検査装置では、近赤外の光成分として、希土類のNdとYbを付活剤として含む蛍光体が放射する蛍光成分を用いている。
【0008】
また、特許文献4には、構成(R)を満たす発光装置として、レーザーダイオードと、Ce3+で付活された赤色蛍光体とを備える各種のレーザー応用照明装置が開示されている。
【0009】
なお、構成(R)を満たさない特許文献1~3及び6に記載された発光装置は、植物育成用の照明装置の提供等を目的として、植物育成等に適する近赤外の光成分を含む出力光を単に得るためのものである。すなわち、特許文献1~3及び6に記載された発光装置は、レーザー光等の高出力光を用いる発光装置に固有の蛍光体の光出力が飽和するという課題を解決するものではない。したがって、特許文献1~3及び6に記載された発光装置は、蛍光体の光出力が飽和するという課題を解決するために、Cr3+付活蛍光体が放射する蛍光スペクトルの形状等を極度に限定するものでもない。
【0010】
また、近赤外蛍光体を用いる発光装置として、主に植物育成用の照明装置が知られている。しかし、この発光装置は、植物育成に適する近赤外の光成分を含む出力光を単に得るためのものであり、蛍光体を高密度光励起したときの蛍光体の光出力が飽和するという課題を解決するものではない。
【0011】
また、レーザー光等の高出力光を用いる発光装置として、主に希土類イオン(Ce3+やEu2+)で付活された蛍光体を用いて可視光の出力光を得る発光装置が知られている。しかし、この発光装置は、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく近赤外の高出力光を得るものではない。
【0012】
上記のように、蛍光体をレーザー光等の高出力光で励起する発光装置では、これまで、蛍光体の蛍光出力が飽和するという課題があった。従来、この蛍光出力の飽和の抑制のためには、例えば特許文献4又は5に示されるように、Ce3+やEu2+等のパリティー許容遷移に基づく蛍光を示す短残光性(10μs以下)の蛍光体を用いることが必須であるとされていた。特に超短残光性(10~100ns)を示すCe3+付活蛍光体を用いることが好ましいとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2016-121226号公報
【文献】国際公開第2010/053341号
【文献】特許第5812461号公報
【文献】特許第6206696号公報
【文献】国際公開第2016/092743号
【文献】国際公開第2018/207703号
【発明の概要】
【0014】
しかしながら、蛍光体をレーザー光で励起する発光装置において、光照射型美容装置で求められる近赤外の光成分を、Ce3+付活蛍光体やEu2+付活蛍光体を用いて得ようとした場合、次のような課題がある。すなわち、蛍光体に用いられる材料の選択の幅が狭い上に温度消光が大きくなることから蛍光体の開発が困難であるため、近赤外の光成分を放射する発光装置が得られないという課題があった。
【0015】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものである。本開示は、パリティー禁制遷移に基づく長残光性(10μs以上)の蛍光を放射するCr3+を付活剤とする蛍光体を用いると、従来の技術常識に反し、高密度の定格出力が1W以上の固体光源から発せられる光励起下でも蛍光出力の飽和が生じにくいことを見出してなし得たものである。
【0016】
上記の発見事項は、蛍光出力の飽和の抑制のためには短残光性(10μs未満)の蛍光体の使用が必須とされていた従来の技術常識とは大きく異なるものであり、驚くべきものである。
【0017】
本開示は、高出力光の励起下で近赤外の蛍光成分の割合が多い高出力光を放射する光照射型美容装置、及びこれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【0018】
上記課題を解決するために、本開示の態様に係る光照射型美容装置は、一次光を放射する光源と、前記一次光を吸収して前記一次光よりも長波長の第一の波長変換光に変換する第一の蛍光体と、を備える発光装置を含む光照射型美容装置であって、前記光源は、定格出力が1W以上の固体光源であり、前記一次光は前記固体光源から発せられる光であり、前記第一の波長変換光は、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光を含み、前記第一の波長変換光の蛍光スペクトルは、710nmを超える波長領域に蛍光強度最大値を有する。
【0019】
本開示の態様に係る電子機器は、前記光照射型美容装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る光照射型美容装置の一例を示す平面図である。
図2】実施形態に係る光照射型美容装置の一例を示す側面図である。
図3図2のA-A線に沿った断面を含む部分断面図である。
図4】光照射型美容装置に含まれる発光装置の一例(第1の発光装置)を示す概略断面図である。
図5】光照射型美容装置に含まれる発光装置のより具体的な一例(第2の発光装置)を示す概略断面図である。
図6】光照射型美容装置に含まれる発光装置のより具体的な一例(第3の発光装置)を示す概略断面図である。
図7】光照射型美容装置に含まれる発光装置のより具体的な一例(第4の発光装置)を示す概略断面図である。
図8】光照射型美容装置に含まれる発光装置のより具体的な一例(第5の発光装置)を示す概略断面図である。
図9】Cr3+の電子エネルギー準位を示す図である。
図10】種々の物質における、光の波長と光の吸収率との関係を示す図である。
図11】波長とPL強度との関係を示すグラフである。
図12】減衰率とPL強度との関係を示すグラフである。
図13】励起光パワー密度とPL強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本実施形態に係る光照射型美容装置について説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
[光照射型美容装置]
図1は、実施形態に係る光照射型美容装置の一例を示す平面図である。図2は、実施形態に係る光照射型美容装置の一例を示す側面図である。図3は、図2のA-A線に沿った断面を含む部分断面図である。具体的には、図3中の断面図は、本体部20がヘッド部30と接合する端部である、本体部20のハウジング21のヘッド部側端部23に沿った断面を示す。図4は、光照射型美容装置に含まれる発光装置の一例(第1の発光装置)を示す概略断面図である。なお、光照射型美容装置に含まれる発光装置のより具体的な一例(第2~第5の発光装置)については後述する。
【0023】
図1及び図2に示すように、実施形態に係る光照射型美容装置10は、本体部20と、ヘッド部30と、を備える。光照射型美容装置10は、本体部20で生成された出力光15を、ヘッド部30に設けられる照射口110から人の対象部位に照射することができるようになっている。
【0024】
図1図3に示すように、本体部20は、ヘッド部30と接合する端部であるヘッド部側端部23を有する中空のハウジング21と、ハウジング21に収容される発光装置1A(1)とを有する。本体部20は、発光装置1Aからの出力光15をヘッド部側端部23側に放射するようになっている。本体部20には、光照射型美容装置10の起動等を行う電源ボタン41が設けられる。
【0025】
(発光装置(第1の発光装置))
図4に示すように、発光装置(第1の発光装置)1Aは、一次光6を放射する光源2と、一次光6を吸収して一次光6よりも長波長の第一の波長変換光7に変換する第一の蛍光体を含む波長変換体3A(3)と、を備える。なお、波長変換体3A(3)は、蛍光体として少なくとも第一の蛍光体を含んでいればよく、必要により、第一の蛍光体以外の蛍光体を含んでいてもよい。
【0026】
光源2は、複数個の固体発光素子200を含む。光源2を構成する各固体発光素子200には、固体発光素子200を発光させる電力を供給する駆動電源50が接続される。電源ボタン41の押下等により、駆動電源50から固体発光素子200に電力が供給されると、光源2の固体発光素子200が一次光6を放射するようになっている。
【0027】
発光装置1Aでは、光源2の固体発光素子200から放射された一次光6が第一の蛍光体4を含む波長変換体3Aに照射されるように、光源2と波長変換体3Aとが配置される。波長変換体3Aに含まれる第一の蛍光体4は、光源2が放射した一次光6を吸収して一次光6よりも長波長の第一の波長変換光7に変換し、波長変換体3Aから放射する。なお、光源2から波長変換体3Aに照射された一次光6は、通常、その一部が波長変換体3Aを透過又は波長変換体3Aで反射する。このため、光源2から波長変換体3Aに一次光6が照射されると、例えば、波長変換体3Aの面のうちの光源2と反対側の面から、一次光6と第一の波長変換光7とを含む出力光15が放射される。
【0028】
図3に示す発光装置1Aでは、波長変換体3Aが本体部20のヘッド部30側に位置し、図示しない光源2は波長変換体3Aの背面側に配置される。発光装置1Aでは、波長変換体3Aの背面側に配置された光源2から波長変換体3Aに一次光6が照射され、波長変換体3Aから図3の紙面手前側の照射口110に向けて、図4に示す出力光15が放射されるようになっている。
【0029】
ヘッド部30は、筒状のヘッド部本体31と、ヘッド部本体31の端部に設けられる照射口110とを有する。ヘッド部30は、本体部20のヘッド部側端部23に取り付けられる。ヘッド部30は、本体部20の発光装置1Aからの出力光15を、照射口110を介して光照射型美容装置10の外部に出力するようになっている。ヘッド部30は、本体部20の波長変換体3Aから導入された出力光15を照射口110から放射する公知の構造になっている。
【0030】
出力光15が光照射型美容装置10の照射口110から人の肌に照射されると、出力光15がメラニン色素に作用し、毛の再生機能が低下することで一時的な発毛の低減、抑毛効果が得られる。また、シミ、ソバカス等の除去効果が得られる。具体的には、出力光15に含まれる第一の波長変換光7は、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づき下記特性(A)を満たす蛍光を放射する光であり、血液等よりもメラニン色素に吸収されやすい波長領域の光成分を有する光になっている。このため、第一の波長変換光7を含む出力光15が人の肌に照射されると、やけどをしにくく、熱効率が高く、メラニン色素等に破壊、凝固等が生じる。その後、破壊、凝固されたメラニン色素等が、皮膚の新陳代謝により表面に出てきた後、皮膚から剥離、除去されると、ムダ毛の発毛が抑制されたり、シミ、ソバカス等が除去されたりした、きれいな肌が得られることが期待される。出力光15に含まれる第一の波長変換光7が血液等よりもメラニン色素に吸収されやすい波長領域の光であることについては後述する。
【0031】
光照射型美容装置10の発光装置1Aでは、光源2から放射された一次光6が波長変換体3に入射すると、波長変換体3に含まれる第一の蛍光体4等の蛍光体が蛍光を放射するようになっている。また、第一の蛍光体4は、一次光6を受光すると、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光を含み、かつ710nmを超える波長領域に蛍光強度最大値を有する第一の波長変換光を放射するようになっている。
【0032】
光照射型美容装置10の発光装置1Aは、680~710nmの波長領域内に蛍光強度最大値を有する線状スペクトル成分よりも、710nmを超える波長領域に蛍光強度最大値を有するブロードなスペクトル成分の方が多い第一の波長変換光を放射する。このため、発光装置1Aは、近赤外成分を多く含む発光装置になっている。
【0033】
なお、上記線状スペクトル成分は、Cr3+の、及びE→の電子エネルギー遷移(スピン禁制遷移)に基づく、長残光性の光成分である。また、上記ブロードなスペクトル成分は、の電子エネルギー遷移(スピン許容遷移)に基づく、短残光性の光成分である。このようなCr3+による蛍光のメカニズムについては、後述する。
【0034】
以下、光源2及び波長変換体3Aについて詳述する。
【0035】
<光源>
光源2は、定格出力が1W以上の固体光源であり、一次光6を放射する。すなわち、一次光6としては、定格出力が1W以上の固体光源から発せられる光が用いられる。定格出力が1W以上の固体光源から発せられる光である一次光6としては、例えば、600nm以上710nm未満の波長範囲内に強度最大値を有する暖色光が用いられる。暖色光としては、好ましくは、600nm以上680nm未満の波長範囲内に強度最大値を有する光が用いられる。
【0036】
一次光6として、上記暖色光が用いられると、一次光6が、Cr3+で付活された第一の蛍光体4によく吸収されて、第一の波長変換光7に効率よく波長変換される。このため、発光装置1A及びこれを含む光照射型美容装置10によれば、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光成分割合が多い出力光を放射することが可能である。
【0037】
また、一次光6として、上記暖色光が用いられると、第一の蛍光体4における一次光6と第一の波長変換光7とのストークスシフトが小さくなることにより光源2が発熱しにくくなるため、好ましい。
【0038】
さらに、一次光6として、上記暖色光が用いられると、一次光6が波長変換体3Aを透過することにより、人の肌に照射される場合でも、人の肌に悪影響を及ぼしにくいため、好ましい。
【0039】
光源2としては、例えば、上記暖色光を放射する暖色光レーザー素子又は暖色光LED等の固体光源が用いられる。光源2が、暖色光レーザー素子又は暖色光LEDであると、波長変換体3中の蛍光体が高効率で励起されることから、発光装置1A及びこれを含む光照射型美容装置10が高出力な近赤外光を放射することが可能になる。また、光源2は、レーザー素子、LED等の固体光源であるため、耐久性に優れ、寿命が長い。
【0040】
また、暖色光レーザー素子又は暖色光LEDのうち赤色レーザー素子又は赤色LEDは、近赤外の光成分とのエネルギー差が小さく、波長変換に伴うエネルギーロスが小さい。このため、光源2として赤色レーザー素子又は暖色光LEDを用いると、発光装置1A及びこれを含む光照射型美容装置10の高効率化を図る上で好ましい。
【0041】
光源2を構成する固体発光素子200としては、例えば、面発光レーザーダイオード又はLEDが用いられる。また、光源2は、定格光出力が、1W以上、好ましくは3W以上である。光源2の定格光出力が上記範囲内にあると、高出力の一次光6を放射するため、発光装置1A及びこれを含む光照射型美容装置10の高出力化が可能である。
【0042】
なお、定格光出力の上限は特に限定されるものではない。光源2は、固体発光素子200の数を増加させることで高出力化が可能である。ただし、実用性を考慮すると、光源2の定格光出力は、通常10kW未満、好ましくは3kW未満である。
【0043】
第一の蛍光体4に照射される一次光6のパワー密度は、通常0.5W/mm以上、好ましくは3W/mmを超え、より好ましくは10W/mmを超え、さらに好ましくは30W/mmを超えるようにする。一次光6のパワー密度が上記範囲内にあると、第一の蛍光体4が高密度光で励起されることにより、発光装置1A及びこれを含む光照射型美容装置10が高出力の蛍光成分を放射することが可能になる。
【0044】
<波長変換体>
波長変換体3Aは、第一の蛍光体4と封止材5とを含む。波長変換体3Aにおいて、通常、第一の蛍光体4は封止材5中に含まれる。
【0045】
[第一の蛍光体]
第一の蛍光体4は、一次光6を吸収して一次光6よりも長波長の第一の波長変換光7に変換する蛍光体である。第一の蛍光体4は、一次光6を吸収して、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光を含む第一の波長変換光7を放射する。すなわち、第一の波長変換光7は、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光を含む。ここで、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光とは、の電子エネルギー遷移(スピン許容遷移)に基づく蛍光を意味する。
【0046】
以下、Cr3+の電子エネルギー遷移について説明する。図9は、Cr3+の電子エネルギー準位を示す図である。具体的には、図9は、6配位のCr3+、Mn4+等に適用される田辺-菅野ダイアグラムである。
【0047】
図9の横軸は、配位子場分裂の大きさを意味するDqを、電子の間に働く静電的な反発力の強さを意味するラカーパラメータのBで割ったものである。図9の横軸は、Cr3+が結晶の中で周囲の配位子から受ける配位子場の強さを示す指標と理解することができる。結晶中のCr3+の周囲の配位子としては、酸素イオン等が挙げられる。
【0048】
図9の縦軸は、基底状態からのエネルギーEを上記ラカーパラメータのBで割ったものである。図9の縦軸は、Cr3+の最外殻の電子雲を形成する3個の3d電子が形成する励起状態の電子エネルギーの大きさ、すなわち、3つの3d電子が形成する励起状態と基底状態との間のエネルギー差を示す指標と理解することができる。
【0049】
図9によれば、蛍光体結晶中のCr3+の3d軌道の電子が形成する励起状態の電子エネルギーが、離散したいくつかの状態を取ることが分かる。また、図9によれば、蛍光体結晶中のCr3+が有する電子が形成する電子エネルギーの状態は、周囲の配位子の種類や数や配置の仕方、配位子までの距離等による影響を受けて変化し、この結果、励起状態と基底状態の間のエネルギー差が変化することが分かる。さらに、図9によれば、離散したいくつかの状態をとる、上記励起状態の電子エネルギーの各々が、配位子場によって異なる挙動を示すことが分かる。なお、図9中に示される、Eや等の記号は、Cr3+の3d軌道の3つの電子が形成する離散した電子エネルギーの状態の各々を示す公知の記号である。
【0050】
ここで、蛍光を伴う電子エネルギー遷移は、通常、最も低い励起状態(図9中の及びE又は)から基底状態(図9中の)への電子エネルギー遷移になる。このため、図9によれば、結晶中でCr3+が受ける配位子場の強さが強い場合(図9中の横軸の数値が大きい場合)は、Cr3+及びEからへの電子エネルギー遷移による蛍光を示すことが分かる。また、図9によれば、配位子場の強さが弱い場合(図9中の横軸の数値が小さい場合)は、からへの電子エネルギー遷移による蛍光を示すことが分かる。第一の蛍光体4は、後者の電子エネルギー遷移による蛍光を示すものである。
【0051】
なお、及びEからへの電子エネルギー遷移は、図9から分かるように、配位子場の強さが変わっても、エネルギー差が大きく変わらないため、蛍光スペクトルは線状になる。
【0052】
一方、からへの電子エネルギー遷移は、図9から分かるように、配位子場の強さが変わると、エネルギー差が大きく変わるため、蛍光スペクトルはブロードな形状になる。第一の蛍光体4の蛍光スペクトルは、からへの電子エネルギー遷移(スピン許容遷移)に基づくため、ブロードな形状になる。
【0053】
なお、Cr3+の3d電子の及びEからへの電子エネルギー遷移のエネルギー準位間のエネルギー遷移はパリティー禁制遷移のため、蛍光の残光時間は100μs以上50ms未満と長い。このCr3+に基づく蛍光の残光時間は、パリティー許容遷移を示すCe3+やEu2+の蛍光の残光時間(10μs以下)に比較して長くなる。ただし、Cr3+からへの電子エネルギー遷移は、同じスピンを有する二つの状態間を遷移するスピン許容遷移であるため、残光時間は比較的短くなり、100μs前後となる。
【0054】
このようなパリティー禁制(スピン許容)の電子エネルギー遷移による蛍光を示すCr3+付活蛍光体は、パリティー許容の電子エネルギー遷移による蛍光を示すEu2+付活蛍光体よりもはるかに長い残光特性を示す。本開示は、パリティー禁制の電子エネルギー遷移による蛍光を示すCr3+付活蛍光体が、Eu2+付活蛍光体よりもはるかに長い残光特性を示すにも関わらず、蛍光出力の飽和が驚くほど少ないことを見出してなし得たものである。
【0055】
第一の蛍光体4は、第一の波長変換光7がCr3+のスピン許容型の電子エネルギー遷移に基づく蛍光であるため、下記特性(A)を満たす蛍光を放射する。また、第一の蛍光体4は、特性(A)に加えて、特性(B)及び(C)の少なくとも1個を満たす蛍光を放射するものであると好ましい。
【0056】
[特性(A)]
特性(A)は、第一の波長変換光7の蛍光スペクトルは、710nmを超える波長領域に蛍光強度最大値を有する、という特性である。ここで、蛍光強度最大値とは、蛍光スペクトル中のピークのうち、蛍光強度が最大値を示すピークの最大蛍光強度を意味する。第一の波長変換光7の蛍光スペクトルは、好ましくは710nm以上900nm未満の波長領域に蛍光強度最大値を有する。
【0057】
第一の波長変換光7の蛍光スペクトルが710nmを超える波長領域に蛍光強度最大値を有する、すなわち特性(A)を満たす発光装置1A及びこれを含む光照射型美容装置10によれば、近赤外成分を多く含む点光源が容易に得られる。
【0058】
また、特性(A)を満たす発光装置1Aは、第一の波長変換光7の蛍光スペクトルが、光照射型美容装置用に好適な波長領域である710nmを超える波長領域に蛍光強度最大値を有するため、光照射型美容装置10に含まれる発光装置として好適である。第一の波長変換光7の蛍光スペクトルが、710nmを超える波長領域に蛍光強度最大値を有すると、光照射型美容装置用に好適である理由について、以下、説明する。
【0059】
図10は、種々の物質における、光の波長と光の吸収率との関係を示す図である。具体的には、図10は、酸化ヘモグロビン、メラニン及び水における、光の波長と光の吸収率との関係を示す図である。
【0060】
酸化ヘモグロビンは人等の赤血球に含まれる物質であり、酸化ヘモグロビンの光の吸収率は、人の血液による光の吸収率とみなすことができる。メラニンは人等の毛、シミ、ソバカス等に含まれる物質であり、メラニンの光の吸収率は、人の毛、シミ、ソバカスによる光の吸収率とみなすことができる。水は人等の体液に含まれる物質であり、水の光の吸収率は、人の血液による光の吸収率とみなすことができる。
【0061】
このため、図10において、メラニンの光の吸収率が低く、かつ酸化ヘモグロビン及び水の光の吸収率が高い波長領域の光、例えば波長が450nm近辺の光は、メラニン色素よりも赤血球に吸収されやすい。このような光は、抑毛;シミ、ソバカス等の除去、が困難であり、人がやけどをしやすく、かつ熱効率が低いため、光照射型美容装置10に好ましくない。
【0062】
一方、図10において、メラニンの光の吸収率が高く、かつ酸化ヘモグロビン及び水の光の吸収率が低い波長領域の光、例えば波長が710nmを超える光は、メラニン色素により吸収されやすく、赤血球に吸収されにくい。すなわち、このような光が人等の肌に照射されると、熱が発生することにより毛の再生機能が低下し、抑毛効果が生じる。また、このような光が人等の肌に照射されると、熱が発生することにより、シミ、ソバカス等を構成するメラニン色素等に破壊、凝固等が生じる。したがって、メラニンの光の吸収率が高く、かつ酸化ヘモグロビン及び水の光の吸収率が低い波長領域の光は、抑毛、シミ、ソバカス等の除去が容易であり、人がやけどをしにくく、かつ熱効率が高いため、光照射型美容装置10に好ましい。
【0063】
図10によれば、上記「メラニンの光の吸収率が高く、かつ酸化ヘモグロビン及び水の光の吸収率が低い波長領域の光」は、概ね、710nmを超える波長領域の光である。このため、出力光15に含まれる第一の波長変換光7の蛍光スペクトルが710nmを超える波長領域に蛍光強度最大値を有する(特性(A)を満たす)と、抑毛、シミ、ソバカス等の除去、に有用な光照射型美容装置10が得られる。
【0064】
[特性(B)]
特性(B)は、第一の波長変換光7の蛍光スペクトルの蛍光強度最大値に対する波長780nmの蛍光強度の比率は、30%を超える、という特性である。以下、上記蛍光強度の比率を「780nm蛍光強度比率」ともいう。780nm蛍光強度比率は、好ましくは60%を超え、より好ましくは80%を超える。
【0065】
780nm蛍光強度比率が上記範囲内にあると、第一の波長変換光7が、「生体の窓」と呼ばれる、光が生体を透過しやすい近赤外の波長域(650~1000nm)の蛍光成分を多く含む。このため、特性(B)を満たす第一の波長変換光7を放射する光照射型美容装置10によれば、生体を透過する近赤外の光強度を大きくすることができる。
【0066】
[特性(C)]
特性(C)は、第一の波長変換光7の1/10残光は1ms未満である、という特性である。ここで、1/10残光とは、最大発光強度を示した時間から、最大発光強度の1/10の強度になるまでに要した時間τ1/10を意味する。1/10残光は、好ましくは10μs以上1ms未満、より好ましくは10μs以上800μs未満、さらに好ましくは10μs以上400μs未満、特に好ましくは10μs以上350μs未満、さらに特に好ましくは10μs以上100μs未満である。
【0067】
1/10残光が上記範囲内にあると、第一の蛍光体4を励起する励起光のパワー密度が高い場合であっても、第一の蛍光体4が放射する蛍光の出力が飽和しにくくなる。このため、特性(C)を満たす第一の波長変換光7を放射する光照射型美容装置10によれば、定格出力が1W以上の固体光源から発せられる高パワー密度の光を照射したときの蛍光の出力の飽和が少なく、高出力の近赤外光を放射することが可能になる。
【0068】
なお、第一の波長変換光7の1/10残光は、Ce3+やEu2+等のパリティー許容遷移に基づく短残光性(10μs未満)の蛍光の1/10残光より長くなる。これは、第一の波長変換光7が残光の比較的長いCr3+のスピン許容型の電子エネルギー遷移に基づく蛍光であるためである。
【0069】
第一の蛍光体4としては、例えば、LuCaMg(SiO:Cr3+、YGa(AlO:Cr3+、YGa(GaO:Cr3+、GdGa(AlO:Cr3+、GdGa(GaO:Cr3+、(Y,La)Ga(GaO:Cr3+、(Gd,La)Ga(GaO:Cr3+、CaLuZr(AlO:Cr3+、CaGdZr(AlO:Cr3+、LuSc(GaO:Cr3+、YSc(AlO:Cr3+、YSc(GaO:Cr3+、GdSc(GaO:Cr3+、LaSc(GaO:Cr3+、CaSc(SiO:Cr3+、CaSc(GeO:Cr3+、BeAl:Cr3+、LiAl:Cr3+、LiGa:Cr3+、MgSiO:Cr3+,Li、LaGaGeO14:Cr3+、LaGa5.5Nb0.514:Cr3+等の蛍光体を用いることができる。
【0070】
第一の蛍光体4は、セラミックスからなることが好ましい。第一の蛍光体4がセラミックスからなると、第一の蛍光体4の放熱性が高まるため、温度消光による第一の蛍光体4の出力低下が抑制され、光照射型美容装置10が高出力の近赤外光を放射することが可能になる。
【0071】
光照射型美容装置10では、第一の蛍光体4が放射する第一の波長変換光7は、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく特定の蛍光成分を有する。
【0072】
なお、第一の波長変換光7の蛍光スペクトルは、Cr3+の電子エネルギー遷移に由来する線状スペクトル成分の証跡を含まないことが好ましい。Cr3+の電子エネルギー遷移に由来する線状スペクトル成分は、Cr3+のスピン禁制遷移による長残光性の蛍光成分である。第一の波長変換光7の蛍光スペクトルが上記証跡を含まない場合、第一の波長変換光7がCr3+のスピン禁制遷移による長残光性の蛍光成分を含まない。このため、光照射型美容装置10が高パワー密度の定格出力が1W以上の固体光源から発せられる光を照射したときの蛍光出力の飽和がより小さい高出力の点光源が得られる。
【0073】
波長変換体3Aは、蛍光体としてCr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光を含む第一の蛍光体4のみを含む。また、第一の蛍光体4は、Cr3+以外の付活剤を含まない。このため、第一の蛍光体4に吸収された光は、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光だけに変換される。したがって、第一の蛍光体4がCr3+以外の付活剤を含まない光照射型美容装置10によれば、近赤外の蛍光成分の出力割合を最大限にまで高める出力光の設計が容易になる。
【0074】
第一の蛍光体4は、ガーネットの結晶構造を有することが好ましい。ガーネット蛍光体は、組成変形が容易であることから数多くの蛍光体化合物の作製が可能である。このため、第一の蛍光体4がガーネットの結晶構造を有すると、Cr3+の周囲の結晶場の調整が容易であり、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光の色調制御が容易になる。
【0075】
なお、ガーネット構造を有する蛍光体、特に酸化物は、球に近い多面体の粒子形状を有し、蛍光体粒子群の分散性に優れる。このため、第一の蛍光体4がガーネット構造を有する場合、光透過性に優れる波長変換体3Aを比較的容易に製造でき、得られる光照射型美容装置10の高出力化が可能になる。また、ガーネットの結晶構造を有する蛍光体はLED用蛍光体として実用実績があるため、第一の蛍光体4がガーネットの結晶構造を有する光照射型美容装置10は、信頼性が高くなる。
【0076】
第一の蛍光体4は、酸化物系の蛍光体であることが好ましく、酸化物蛍光体であることがより好ましい。なお、酸化物系の蛍光体とは、酸素を含むが窒素は含まない蛍光体をいう。
【0077】
酸化物は大気中で安定な物質であるため、定格出力が1W以上の固体光源から発せられる光による高密度の光励起によって酸化物蛍光体が発熱した場合に、窒化物蛍光体に比較して、大気で酸化されることによる蛍光体結晶の変質が生じにくい。第一の蛍光体4の全てが、酸化物系の蛍光体であると信頼性の高い光照射型美容装置10が得られる。
【0078】
なお、第一の蛍光体4は、二種類以上のCr3+付活蛍光体を含んでいてもよい。第一の蛍光体4が二種類以上のCr3+付活蛍光体を含む場合、少なくとも近赤外の波長領域の出力光成分を制御することができる。このため、第一の蛍光体4が二種類以上のCr3+付活蛍光体を含む光照射型美容装置10によれば、近赤外の蛍光成分の分光分布の調整が容易になる。
【0079】
<封止材>
波長変換体3Aにおいて、第一の蛍光体4は封止材5中に含まれる。好ましくは、第一の蛍光体4は封止材5中に分散される。第一の蛍光体4が封止材5中に分散されると、光源2が放射する一次光6を効率的に吸収し、効率的に近赤外光に波長変換することが可能になる。また、第一の蛍光体4が封止材5中に分散されると、波長変換体3Aをシート状やフィルム状に成形しやすくなる。
【0080】
封止材5は、有機材料及び無機材料の少なくとも一方からなる。封止材5は、好ましくは、透明(透光性)有機材料及び透明(透光性)無機材料の少なくとも一方からなる。有機材料の封止材としては、例えば、シリコーン樹脂等の透明有機材料が挙げられる。無機材料の封止材としては、例えば、低融点ガラス等の透明無機材料が挙げられる。
【0081】
なお、波長変換体3Aは無機材料からなることが好ましい。ここで無機材料とは、有機材料以外の材料を意味し、セラミックスや金属を含む概念である。波長変換体3Aが無機材料からなることにより、封止樹脂等の有機材料を含む波長変換体と比較して熱伝導性が高くなるため、放熱設計が容易となる。このため、光源2から放射された一次光6により第一の蛍光体4が高密度で光励起された場合でも、波長変換体3Aの温度上昇を効果的に抑制することができる。この結果、波長変換体3A中の第一の蛍光体4の温度消光が抑制され、発光の高出力化が可能になる。
【0082】
波長変換体3Aは無機材料からなる場合、封止材5は無機材料からなることが好ましい。また、封止材5用の無機材料としては、酸化亜鉛(ZnO)が好ましい。封止材5が無機材料からなると、第一の蛍光体4の放熱性がさらに高まるため、温度消光による第一の蛍光体4の出力低下が抑制され、高出力の近赤外光を放射することが可能になる。
【0083】
なお、光照射型美容装置10の変形例として、波長変換体3Aに代えて、封止材5を含まない波長変換体とすることもできる。この場合、有機又は無機の結着剤を用いて、第一の蛍光体4同士を固着すればよい。また、第一の蛍光体4の加熱反応を用いて、第一の蛍光体4同士を固着することもできる。結着剤としては、一般的に用いられる樹脂系の接着剤、又はセラミックス微粒子や低融点ガラス等を用いることができる。封止材5を含まない波長変換体によれば、波長変換体の厚みを薄くすることができる。
【0084】
<作用>
発光装置1Aを含む光照射型美容装置10の作用について説明する。はじめに、発光装置1Aの光源2から放射された一次光6が波長変換体3Aの正面3aに照射される。照射された一次光6は、波長変換体3Aを透過する。そして、一次光6が波長変換体3Aを透過する際に、波長変換体3Aに含まれる第一の蛍光体4が一次光6の一部を吸収して第一の波長変換光7を放射する。このようにして、波長変換体3Aの背面3bから、一次光6と第一の波長変換光7とを含む出力光15が放射される。
【0085】
発光装置1Aから放射された出力光15は、光照射型美容装置10の照射口110から外部に放射される。出力光15が光照射型美容装置10の照射口110から人の肌に照射されると、出力光15が人の肌に作用し、抑毛効果、シミ、ソバカス等の除去効果が得られる。具体的には、出力光15に含まれる第一の波長変換光7は、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づき上記特性(A)を満たす蛍光を放射する光であり、血液等よりもメラニン色素に吸収されやすい波長領域の光成分を有する光になっている。このため、第一の波長変換光7を含む出力光15が人の肌に照射されると、やけどをしにくく、熱効率が高く、メラニン色素等に破壊、凝固等が生じる。その後、破壊、凝固されたメラニン色素等が、皮膚の新陳代謝により表面に出てきた後、皮膚から剥離、除去されると、ムダ毛の発毛が抑制されたり、シミ、ソバカス等が除去されたりした、きれいな肌が得られることが期待される。
【0086】
発光装置1A及びこれを含む光照射型美容装置10は、「生体の窓」を通して、生体を透過する近赤外の光強度を大きくすることができるため、ムダ毛の発毛の抑制効果、シミ、ソバカスの除去性能等が高い。
【0087】
発光装置1A及びこれを含む光照射型美容装置10の出力光15に含まれる第一の波長変換光7は、第一の蛍光体4のCr3+のスピン許容型の電子エネルギー遷移に基づく蛍光である。このため、発光装置1A及びこれを含む光照射型美容装置10によれば、近赤外の蛍光成分の出力割合を最大限にまで高める出力光の設計が容易であることから余分な光成分のフィルターカット等が不要であり、エネルギー効率が高い。
【0088】
(発光装置のより具体的な一例(第2~第5の発光装置))
上記の図1図3に示す光照射型美容装置10では、発光装置1Aを構成する光源2及び波長変換体3Aの両方が本体部20内に設けられている。しかし、光照射型美容装置10の変形例として、発光装置1を構成する光源2及び波長変換体3の一方又は両方がヘッド部30内に設けられる構成とすることができる。
【0089】
例えば、光照射型美容装置10の変形例として、光源2がヘッド部30内に設けられ、かつ波長変換体3が本体部20内に設けられる構成とすることができる。この光照射型美容装置10の変形例では、通常、ヘッド部30内の光源2から本体部20内の波長変換体3に一次光6が照射され、波長変換体3からヘッド部30側に出力光15が放射されるように構成される。この波長変換体3からヘッド部30側に放射される出力光15は、通常、波長変換体3から放射される第一の波長変換光7と、波長変換体3で反射された一次光6とを含む光である。このように、光照射型美容装置10及びその変形例では、発光装置1を構成する光源2及び波長変換体3の配置の異なる態様が複数個ある。
【0090】
また、上記第1の発光装置1Aの波長変換体3Aは、蛍光体として少なくとも第一の蛍光体を含み、必要により、第一の蛍光体以外の蛍光体を含む。具体的には、第1の発光装置1Aの波長変換体3Aは、蛍光体として第一の蛍光体のみを含む態様と、蛍光体として第一の蛍光体と第一の蛍光体以外の蛍光体とを含む態様と、を取り得る。このように、光照射型美容装置10及びその変形例では、波長変換体3に含まれる蛍光体の種類が異なる態様が複数個ある。
【0091】
上記のように、第1の発光装置1Aには、発光装置1を構成する光源2及び波長変換体3の配置、並びに波長変換体3に含まれる蛍光体の種類、が異なる態様が複数個ある。そこで、以下、第1の発光装置1Aの光源2及び波長変換体3の配置、並びに波長変換体3に含まれる蛍光体の種類をより具体的に示した、発光装置のより具体的な一例(第2~第5の発光装置)1B~1Eについて説明する。
【0092】
なお、第2~第5の発光装置1B~1Eは、第1の発光装置1Aのより具体的な一例であるから、第1の発光装置1Aと、第2~第5の発光装置1B~1Eとは基本的な構成が共通する。このため、以下の第2~第5の発光装置1B~1Eでの説明においては、適宜、第1の発光装置1Aについても言及することがある。
【0093】
図5は、光照射型美容装置に含まれる発光装置のより具体的な一例(第2の発光装置)を示す概略断面図である。図6は、光照射型美容装置に含まれる発光装置のより具体的な一例(第3の発光装置)を示す概略断面図である。図7は、光照射型美容装置に含まれる発光装置のより具体的な一例(第4の発光装置)を示す概略断面図である。図8は、光照射型美容装置に含まれる発光装置のより具体的な一例(第5の発光装置)を示す概略断面図である。
【0094】
図5に示す第2の発光装置1Bは、波長変換体3B(3)が蛍光体として第一の蛍光体4のみを含み、かつ波長変換体3Bを透過した一次光6と第一の波長変換光7とを用いて出力光15を生成する発光装置である。
【0095】
図6に示す第3の発光装置1Cは、波長変換体3C(3)が蛍光体として第一の蛍光体4と第二の蛍光体8とを含み、かつ波長変換体3Cを透過した一次光6と第一の波長変換光7と第二の波長変換光9とを用いて出力光15を生成する発光装置である。
【0096】
図7に示す第4の発光装置1Dは、波長変換体3D(3)が蛍光体として第一の蛍光体4のみを含み、かつ波長変換体3Dで反射された一次光6と第一の波長変換光7とを用いて出力光15を生成する発光装置である。
【0097】
図8に示す第5の発光装置1Eは、波長変換体3E(3)が蛍光体として第一の蛍光体4と第二の蛍光体8とを含み、かつ波長変換体3Eで反射された一次光6と第一の波長変換光7と第二の波長変換光9とを用いて出力光15を生成する発光装置である。
【0098】
図5に示す第2の発光装置1Bの波長変換体3Bと、図6に示す第3の発光装置1Cの波長変換体3Cとは、光源2側の面である正面3aで一次光6を受光し、光源2と反対側の面である背面3bから蛍光を放射する構成になっている。また、図7に示す第4の発光装置1Dの波長変換体3Dと、図8に示す第5の発光装置1Eの波長変換体3Eとは、正面3aで一次光6を受光し、同じ正面3aで蛍光を放射する構成になっている。以下、第2~第5の発光装置1B~1Eにつき具体的に説明する。
【0099】
(発光装置(第2の発光装置))
発光装置(第2の発光装置)1Bは、波長変換体3B(3)が蛍光体として第一の蛍光体4のみを含み、かつ波長変換体3Bを透過した一次光6と第一の波長変換光7とを用いて出力光15を生成する発光装置である。
【0100】
第2の発光装置1Bは、第1の発光装置1Aの波長変換体3Aをより具体的に示し、その他の構成を簡略化して示したものである。第2の発光装置1Bと、第1の発光装置1Aとの主な相違点は、波長変換体3Bのみにある。このため、以下、波長変換体3Bについて説明し、これ以外の部材については、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。
【0101】
<波長変換体>
波長変換体3Bは、第一の蛍光体4と封止材5とを含む。波長変換体3Bにおいて、第一の蛍光体4は封止材5中に含まれる。
【0102】
<作用>
発光装置1Bを含む光照射型美容装置10の作用について説明する。はじめに、発光装置1Bの光源2から放射された一次光6が波長変換体3Bの正面3aに照射される。照射された一次光6は、波長変換体3Bを透過する。そして、一次光6が波長変換体3Bを透過する際に、波長変換体3Bに含まれる第一の蛍光体4が一次光6の一部を吸収して第一の波長変換光7を放射する。このようにして、波長変換体3Bの背面3bから、一次光6と第一の波長変換光7とを含む出力光15が放射される。
【0103】
発光装置1Bから放射された出力光15は、光照射型美容装置10の照射口110から外部に放射される。出力光15が光照射型美容装置10の照射口110から人の肌に照射されると、出力光15が人の肌に作用し、抑毛効果、シミ、ソバカス等の除去効果が得られる。出力光15が人の肌に作用し、抑毛効果、シミ、ソバカス等の除去効果が得られる作用は、発光装置1Aを含む光照射型美容装置10の作用と同じであるため、説明を省略する。
【0104】
発光装置1B及びこれを含む光照射型美容装置10は、「生体の窓」を通して、生体を透過する近赤外の光強度を大きくすることができるため、ムダ毛の発毛の抑制効果、シミ、ソバカスの除去性能等が高い。
【0105】
(発光装置(第3の発光装置))
発光装置(第3の発光装置)1Cは、波長変換体3C(3)が蛍光体として第一の蛍光体4と第二の蛍光体8とを含み、かつ波長変換体3Cを透過した一次光6と第一の波長変換光7と第二の波長変換光9とを用いて出力光15を生成する発光装置である。
【0106】
第3の発光装置1Cは、第2の発光装置1Bの波長変換体3Bに代えて、波長変換体3Cを用いたものである。第3の発光装置1Cと、第2の発光装置1Bとの相違点は、波長変換体3Cのみにある。このため、以下、波長変換体3Cについて説明し、これ以外の部材については、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。
【0107】
<波長変換体>
波長変換体3Cは、第一の蛍光体4と第二の蛍光体8と封止材5とを含む。波長変換体3Cにおいて、第一の蛍光体4及び第二の蛍光体8は封止材5中に含まれる。すなわち、第3の発光装置1Cの波長変換体3Cは、一次光6を吸収して、一次光6よりも長波長でかつ第一の波長変換光7とは異なる第二の波長変換光9に変換する第二の蛍光体8を、をさらに備える。
【0108】
波長変換体3Cは、第二の蛍光体8をさらに含む以外は、第2の発光装置1Bの波長変換体3Bと同じである。このため、以下、主に第二の蛍光体8について説明し、これ以外の構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。
【0109】
[第二の蛍光体]
第二の蛍光体8は、一次光6を吸収して、一次光6よりも長波長でかつ第一の波長変換光7とは異なる第二の波長変換光9に変換する蛍光体である。第3の発光装置1Cは、波長変換体3Cが第一の蛍光体4に加えて第二の蛍光体8をさらに備えることにより、光源2が発する一次光6、例えば暖色光との加法混色により、白色の出力光を放射することが可能になっている。
【0110】
このように、第5の発光装置1Cの波長変換体3Cが第一の蛍光体4に加えて第二の蛍光体8をさらに備えると、波長変換体3Cから放射される蛍光スペクトルの形状や励起特性を制御できるようになる。このため、得られる発光装置1C及びこれを含む光照射型美容装置10は使用用途に応じて出力光の分光分布を容易に調整することが可能になる。
【0111】
波長変換体3Cに含まれる第二の蛍光体8は、光源2が発する一次光6を吸収して可視光である第二の波長変換光9を放射できるものであれば特に限定されない。第二の蛍光体8は、好ましくは、ガーネット型、カルシウムフェライト型、及びランタンシリコンナイトライド(LaSi11)型の結晶構造からなる化合物群より選ばれる少なくとも一つを主成分とする化合物を母体としてなるCe3+付活蛍光体である。また、第二の蛍光体8は、好ましくは、ガーネット型、カルシウムフェライト型、及びランタンシリコンナイトライド(LaSi11)型の結晶構造からなる化合物群より選ばれる少なくとも一つの化合物を母体としてなるCe3+付活蛍光体である。このような第二の蛍光体8を用いると、緑色系から黄色系の光成分を多く有する出力光を得ることが可能になる。
【0112】
第二の蛍光体8としては、例えば、MRE(SiO、REAl(AlO、MRE、及びRESi11からなる群より選ばれる少なくとも一つを主成分とする化合物(B)を母体としてなるCe3+付活蛍光体が用いられる。また、第二の蛍光体8としては、例えば、MRE(SiO、REAl(AlO、MRE、及びRESi11からなる群より選ばれる少なくとも一つを母体としてなるCe3+付活蛍光体が用いられる。第二の蛍光体8は、好ましくは、上記化合物(B)を端成分とする固溶体を母体としてなるCe3+付活蛍光体である。なお、上記化合物(B)において、Mはアルカリ土類金属であり、REは希土類元素である。
【0113】
これらの第二の蛍光体8は、430nm以上480nm以下の波長範囲内の光をよく吸収し、540nm以上590nm未満の波長範囲内に強度最大値を有する緑色~黄色系の光に高効率に変換する。このため、暖色光を一次光6として放射する光源2とした上で、上記第二の蛍光体8として用いることにより、可視光成分を容易に得ることが可能になる。
【0114】
波長変換体3Cが第一の蛍光体4と第二の蛍光体8とを含む場合、第一の蛍光体4は、光源2が発する一次光6及び第二の蛍光体8が発する第二の波長変換光9の少なくともいずれか一方を吸収することで、第一の波長変換光7を放射することが好ましい。上述のように、第一の蛍光体4は、光源2が発する一次光6を吸収して、近赤外光である第一の波長変換光7を放射する蛍光体であることが好ましい。
【0115】
第一の蛍光体4は、第二の蛍光体8が発する第二の波長変換光9を吸収して、近赤外光である第一の波長変換光7を放射する蛍光体であってもよい。すなわち、第二の蛍光体8が一次光6によって励起されて第二の波長変換光9を放射し、第一の蛍光体4は第二の波長変換光9によって励起されて第一の波長変換光7を放射してもよい。この場合、第一の蛍光体4が一次光6によってほとんど励起されない蛍光体であっても、第二の蛍光体8を介することによって、第二の蛍光体8が発する蛍光により励起することが可能になる。
【0116】
このため、第一の蛍光体4が第二の波長変換光9を吸収して第一の波長変換光7を放射する場合、第一の蛍光体4として、可視光を吸収する蛍光体を選択できるようになる。従って、第一の蛍光体4が第二の波長変換光9を吸収して第一の波長変換光7を放射する場合は、第一の蛍光体4の選択肢が広がり、発光装置1C及びこれを含む光照射型美容装置10の工業生産が容易になる。また、第一の蛍光体4が第二の波長変換光9を吸収して第一の波長変換光7を放射する場合、発光装置1C及びこれを含む光照射型美容装置10は、近赤外の光成分強度が大きい第一の波長変換光7を放射することが可能になる。
【0117】
なお、第二の蛍光体8は、二種類以上のCr3+付活蛍光体を含んでいてもよい。第二の蛍光体8が二種類以上のCr3+付活蛍光体を含む場合、少なくとも近赤外の波長領域の出力光成分を制御することができるため、近赤外の蛍光成分の分光分布の調整が容易になる。
【0118】
<作用>
発光装置1Cを含む光照射型美容装置10の作用について説明する。はじめに、光源2から放射された一次光6が波長変換体3Cの正面3aに照射される。照射された一次光6は、波長変換体3Cを透過する。そして、一次光6が波長変換体3Cを透過する際に、波長変換体3Cに含まれる第二の蛍光体8が一次光6の一部を吸収して第二の波長変換光9を放射する。さらに、波長変換体3Cに含まれる第一の蛍光体4が一次光6及び/又は第二の波長変換光9の一部を吸収して第一の波長変換光7を放射する。このようにして、波長変換体3Cの背面3bから、一次光6と第一の波長変換光7と第二の波長変換光9とを含む出力光15が放射される。
【0119】
発光装置1Cから放射された出力光15は、光照射型美容装置10の照射口110から外部に放射される。出力光15が光照射型美容装置10の照射口110から人の肌に照射されると、出力光15が人の肌に作用し、抑毛効果、シミ、ソバカス等の除去効果が得られる。出力光15が人の肌に作用し、抑毛効果、シミ、ソバカス等の除去効果が得られる作用は、発光装置1Aを含む光照射型美容装置10の作用と同じであるため、説明を省略する。
【0120】
発光装置1C及びこれを含む光照射型美容装置10は、「生体の窓」を通して、生体を透過する近赤外の光強度を大きくすることができるため、ムダ毛の発毛の抑制効果、シミ、ソバカスの除去性能等が高い。
【0121】
(発光装置(第4の発光装置))
発光装置(第4の発光装置)1Dは、波長変換体3D(3)が蛍光体として第一の蛍光体4のみを含み、かつ波長変換体3Dで反射された一次光6と第一の波長変換光7とを用いて出力光15を生成する発光装置である。
【0122】
第4の発光装置1Dは、第2の発光装置1Bの波長変換体3Bに代えて、波長変換体3Dを用いたものである。第4の発光装置1Dと、第2の発光装置1Bとの相違点は、波長変換体3Dのみにある。このため、以下、波長変換体3Dについて説明し、これ以外の部材については、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。
【0123】
<波長変換体>
波長変換体3Dは、第一の蛍光体4と封止材5とを含む。波長変換体3Dにおいて、第一の蛍光体4は封止材5中に含まれる。波長変換体3Dは、第一の蛍光体4と封止材5とを含む点で第2の発光装置1Bの波長変換体3Bと同じであるが、光学的な作用が波長変換体3Bと異なる。
【0124】
第2の発光装置1Bの波長変換体3Bでは、波長変換体3Bに照射された一次光6は、波長変換体3Bを透過する。一方、第4の発光装置1Dの波長変換体3Dでは、波長変換体3Dに照射された一次光6は、多くが波長変換体3Dの正面3aから波長変換体3D内に入射し、残部が正面3aで反射するようになっている。
【0125】
波長変換体3Dでは、一次光6の照射光が波長変換体3Dの正面3aから入射し、第一の蛍光体4の出力光が波長変換体3Dの正面3aから放射されるように構成される。これにより、波長変換体3Dに照射された一次光6は、多くが波長変換体3Dの正面3aから波長変換体3D内に入射し、残部が正面3aで反射するようになっている。
【0126】
<作用>
発光装置1Dを含む光照射型美容装置10の作用について説明する。はじめに、光源2から放射された一次光6が波長変換体3Dの正面3aに照射される。一次光6は、多くが波長変換体3Dの正面3aから波長変換体3D内に入射し、残部が正面3aで反射する。波長変換体3Dでは、一次光6で励起された第一の蛍光体4から第一の波長変換光7が放射され、第一の波長変換光7は正面3aから放射される。このようにして、波長変換体3Dの正面3aから、一次光6と第一の波長変換光7とを含む出力光15が放射される。
【0127】
発光装置1Dから放射された出力光15は、光照射型美容装置10の照射口110から外部に放射される。出力光15が光照射型美容装置10の照射口110から人の肌に照射されると、出力光15が人の肌に作用し、抑毛効果、シミ、ソバカス等の除去効果が得られる。出力光15が人の肌に作用し、抑毛効果、シミ、ソバカス等の除去効果が得られる作用は、発光装置1Aを含む光照射型美容装置10の作用と同じであるため、説明を省略する。
【0128】
発光装置1D及びこれを含む光照射型美容装置10は、「生体の窓」を通して、生体を透過する近赤外の光強度を大きくすることができるため、ムダ毛の発毛の抑制効果、シミ、ソバカスの除去性能等が高い。
【0129】
(発光装置(第5の発光装置))
発光装置(第5の発光装置)1Eは、波長変換体3E(3)が蛍光体として第一の蛍光体4と第二の蛍光体8とを含み、かつ波長変換体3Eで反射された一次光6と第一の波長変換光7と第二の波長変換光9とを用いて出力光15を生成する発光装置である。
【0130】
第5の発光装置1Eは、第3の発光装置1Cの波長変換体3Cに代えて、波長変換体3Eを用いたものである。第5の発光装置1Eと、第3の発光装置1Cとの相違点は、波長変換体3Eのみにある。このため、以下、波長変換体3Eについて説明し、これ以外の部材については、構成及び作用の説明を省略又は簡略化する。
【0131】
<波長変換体>
波長変換体3Eは、第一の蛍光体4と第二の蛍光体8と封止材5とを含む。波長変換体3Eにおいて、第一の蛍光体4及び第二の蛍光体8は封止材5中に含まれる。すなわち、発光装置1Eの波長変換体3Eは、一次光6を吸収して、一次光6よりも長波長でかつ第一の波長変換光7とは異なる第二の波長変換光9に変換する第二の蛍光体8を、をさらに備える。波長変換体3Eは、第一の蛍光体4と第二の蛍光体8と封止材5とを含む点で第3の発光装置1Cの波長変換体3Cと同じであるが、光学的な作用が波長変換体3Cと異なる。
【0132】
波長変換体3Eで用いられる第二の蛍光体8は、第3の発光装置1Cの波長変換体3Cと同じであるため、説明を省略する。第5の発光装置1Eは、波長変換体3Eが第二の蛍光体8を含むことにより、光源2が発する一次光6、例えば暖色光との加法混色により、白色の出力光を放射することが可能になっている。
【0133】
このように、第一の蛍光体4と第二の蛍光体8とを適宜組み合わせて用いると、第一の波長変換光7の蛍光スペクトルの形状や励起特性を制御できるようになる。すなわち、第5の発光装置1Eの波長変換体3Eが第一の蛍光体4に加えて第二の蛍光体8をさらに備えると、第一の波長変換光7の蛍光スペクトルの形状や励起特性を制御できるようになる。このため、得られる発光装置1E及びこれを含む光照射型美容装置10は使用用途に応じて出力光の分光分布を容易に調整できるものになる。
【0134】
第3の発光装置1Cの波長変換体3Cでは、波長変換体3Cに照射された一次光6は、波長変換体3Cを透過する。一方、第5の発光装置1Eの波長変換体3Eでは、波長変換体3Eに照射された一次光6は、多くが波長変換体3Eの正面3aから波長変換体3E内に入射し、残部が正面3aで反射するようになっている。
【0135】
波長変換体3Eでは、一次光6の照射光が波長変換体3Eの正面3aから入射し、第一の蛍光体4の出力光が波長変換体3Eの正面3aから放射されるように構成される。これにより、波長変換体3Eに照射された一次光6は、多くが波長変換体3Eの正面3aから波長変換体3E内に入射し、残部が正面3aで反射するようになっている。
【0136】
<作用>
発光装置1Eを含む光照射型美容装置10の作用について説明する。はじめに、光源2から放射された一次光6が波長変換体3Eの正面3aに照射される。一次光6は、多くが波長変換体3Eの正面3aから波長変換体3E内に入射し、残部が正面3aで反射する。波長変換体3Eでは、一次光6で励起された第二の蛍光体8から第二の波長変換光9が放射され、一次光6及び/又は第二の波長変換光9で励起された第一の蛍光体4から第一の波長変換光7が放射される。そして、第一の波長変換光7及び第二の波長変換光9は正面3aから放射される。このようにして、波長変換体3Eの正面3aから、一次光6と第一の波長変換光7と第二の波長変換光9とを含む出力光15が放射される。
【0137】
発光装置1Eから放射された出力光15は、光照射型美容装置10の照射口110から外部に放射される。出力光15が光照射型美容装置10の照射口110から人の肌に照射されると、出力光15が人の肌に作用し、抑毛効果、シミ、ソバカス等の除去効果が得られる。出力光15が人の肌に作用し、抑毛効果、シミ、ソバカス等の除去効果が得られる作用は、発光装置1Aを含む光照射型美容装置10の作用と同じであるため、説明を省略する。
【0138】
発光装置1E及びこれを含む光照射型美容装置10は、「生体の窓」を通して、生体を透過する近赤外の光強度を大きくすることができるため、ムダ毛の発毛の抑制効果、シミ、ソバカスの除去性能等が高い。
【0139】
[電子機器]
上記発光装置1A~1Eのいずれかを含む光照射型美容装置10を用いて本実施形態に係る電子機器を得ることができる。すなわち、本実施形態に係る電子機器は、上記発光装置1A~1Eのいずれかを含む光照射型美容装置10を備える。このような電子機器としては、例えば、上記発光装置1(1A~1E)と、発光装置1から放射された出力光15を導光するファイバー(導光部材)と、を備える電子機器が挙げられる。
【実施例
【0140】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0141】
[実施例1]
(蛍光体の調製)
固相反応を用いる調製手法を用いて酸化物蛍光体を合成した。具体的には、Y(Ga0.98,Cr0.02(GaOの組成式で表される酸化物蛍光体を合成した。なお、酸化物蛍光体を合成する際、以下の化合物粉末を主原料として用いた。
酸化イットリウム(Y):純度3N、信越化学工業株式会社製
酸化ガリウム(Ga):純度4N、アジア物性材料株式会社製
酸化クロム(Cr):純度3N、株式会社高純度化学研究所製
【0142】
はじめに、化学量論的組成の化合物Y(Ga0.98,Cr0.02(GaOとなるように、上記原料を秤量した。次に、乳鉢と乳棒を用いて乾式混合し、焼成原料とした。
【0143】
上記焼成原料を蓋付きのアルミナるつぼに移し、箱型電気炉を用いて1600℃の大気中で2時間焼成した後、焼成物を軽く解砕したところ、実施例1の蛍光体が得られた。なお、焼成後の試料がY(Ga0.98,Cr0.02(GaOであることは、X線回折法によって確認した。
【0144】
(発光スペクトルの評価)
蛍光体の発光スペクトルを、分光蛍光光度計FP-6500(日本分光株式会社製)を用いて評価した。
【0145】
[実施例2]
(蛍光体の調製)
固相反応を用いる調製手法を用いて酸化物蛍光体を合成した。具体的には、Gd(Ga0.98,Cr0.02(GaOの組成式で表される酸化物蛍光体を合成した。なお、酸化物蛍光体を合成する際、以下の化合物粉末を主原料として用いた。
酸化ガドリニウム(Gd):純度3N、株式会社高純度化学研究所製
酸化ガリウム(Ga):純度4N、アジア物性材料株式会社製
酸化クロム(Cr):純度3N、株式会社高純度化学研究所製
【0146】
はじめに、化学量論的組成の化合物Gd(Ga0.98,Cr0.02(GaOとなるように、上記原料を秤量した。次に、乳鉢と乳棒を用いて乾式混合し、焼成原料とした。
【0147】
上記焼成原料を蓋付きのアルミナるつぼに移し、箱型電気炉を用いて1600℃の大気中で2時間焼成した後、焼成物を軽く解砕したところ、実施例2の蛍光体が得られた。なお、焼成後の試料がGd(Ga0.98,Cr0.02(GaOであることは、X線回折法によって確認した。
【0148】
(発光スペクトルの評価)
実施例1と同様にして、蛍光体の発光スペクトルを評価した。結果を図11及び表1に示す。
【0149】
[実施例3]
(蛍光体の調製)
固相反応を用いる調製手法を用いて酸化物蛍光体を合成した。具体的には、(Gd0.75,La0.25(Ga0.98,Cr0.02(GaOの組成式で表される酸化物蛍光体を合成した。なお、酸化物蛍光体を合成する際、以下の化合物粉末を主原料として用いた。
酸化ガドリニウム(Gd):純度3N、株式会社高純度化学研究所製
酸化ランタン(La):純度3N、株式会社高純度化学研究所製
酸化ガリウム(Ga):純度4N、アジア物性材料株式会社製
酸化クロム(Cr):純度3N、株式会社高純度化学研究所製
【0150】
はじめに、化学量論的組成の化合物(Gd0.75,La0.25(Ga0.98,Cr0.02(GaOとなるように、上記原料を秤量した。次に、乳鉢と乳棒を用いて乾式混合し、焼成原料とした。
【0151】
上記焼成原料を蓋付きのアルミナるつぼに移し、箱型電気炉を用いて1400℃の大気中で2時間焼成した後、焼成物を軽く解砕したところ、実施例3の蛍光体が得られた。なお、焼成後の試料が(Gd0.75,La0.25(Ga0.98,Cr0.02(GaOであることは、X線回折法によって確認した。
【0152】
(発光スペクトルの評価)
実施例1と同様にして、蛍光体の発光スペクトルを評価した。結果を図11及び表1に示す。
【0153】
[比較例1]
(蛍光体の調製)
固相反応を用いる調製手法を用いて酸化物蛍光体を合成した。具体的には、Y(Al0.98,Cr0.02(AlOの組成式で表される酸化物蛍光体を合成した。なお、酸化物蛍光体を合成する際、以下の化合物粉末を主原料として用いた。
酸化イットリウム(Y):純度3N、信越化学工業株式会社製
酸化アルミニウム(Al):純度3N、住友化学株式会社製
酸化クロム(Cr):純度3N、株式会社高純度化学研究所製
【0154】
はじめに、化学量論的組成の化合物Y(Al0.98,Cr0.02(AlOとなるように、上記原料を秤量した。次に、乳鉢と乳棒を用いて乾式混合し、焼成原料とした。
【0155】
上記焼成原料を蓋付きのアルミナるつぼに移し、箱型電気炉を用いて1600℃の大気中で2時間焼成した後、焼成物を軽く解砕したところ、比較例1の蛍光体が得られた。なお、焼成後の試料がY(Al0.98,Cr0.02(AlOであることは、X線回折法によって確認した。
【0156】
(発光スペクトルの評価)
実施例1と同様にして、蛍光体の発光スペクトルを評価した。結果を図11及び表1に示す。
【0157】
図11に、励起波長:450nmで励起したときの発光スペクトルを示す。なお、図11には、実施例2、実施例3及び比較例1の発光スペクトルも示す。
表1に、発光スペクトル中で蛍光強度最大値を示す蛍光強度最大値ピークのピーク波長である発光ピーク波長λMAXを示す。また、表1に、蛍光強度最大値ピークの発光ピーク強度(蛍光強度最大値)の80%の強度でのスペクトル幅(80%スペクトル幅)W80%を示す。さらに、表1に、発光スペクトルの蛍光強度最大値ピークにおける発光ピーク強度(蛍光強度最大値)に対する、波長780nmの発光強度の比率、である780nm蛍光強度比率L780nmを示す。
【0158】
【表1】
【0159】
(発光スペクトルの評価のまとめ)
実施例1~実施例3の蛍光体は、680~710nmの波長領域内に蛍光強度最大値を有する線状スペクトル成分よりも、710nmを超える波長領域に蛍光強度最大値を有するブロードなスペクトル成分の方が多い波長変換光を放射することが分かった。
なお、上記線状スペクトル成分は、Cr3+の、及びE→(t )の電子エネルギー遷移(スピン禁制遷移)に基づく、長残光性の光成分である。また、上記ブロードなスペクトル成分は、の電子エネルギー遷移(スピン許容遷移)に基づく、短残光性の光成分である。
このため、実施例1~実施例3の蛍光体を第一の蛍光体として用いた発光装置によれば、近赤外成分を多く含む点光源を容易に作製することができることが分かった。
【0160】
また、実施例1~実施例3の蛍光体を第一の蛍光体として用いた発光装置によれば、高光密度の励起光を照射したときの蛍光出力飽和が少なく、高出力化が容易であることが分かった。
【0161】
さらに、実施例1~実施例3の蛍光体を第一の蛍光体として用いた発光装置は、第一の波長変換光7が、「生体の窓」と呼ばれる、光が生体を透過しやすい近赤外の波長域(650~1000nm)の蛍光成分を多く含むことが分かった。このため、実施例1~実施例3の蛍光体を第一の蛍光体として用いた光照射型美容装置によれば、生体を透過する近赤外の光強度が大きくなり、ムダ毛の発毛の抑制効果、シミ、ソバカスの除去性能等が高くなることが分かった。
【0162】
[比較例2]
(蛍光体の調製)
固相反応を用いる調製手法を用いて窒化物蛍光体を合成した。具体的には、(Ca0.997,Eu0.003)AlSiNの組成式で表される窒化物蛍光体を合成した。なお、窒化物蛍光体を合成する際、以下の化合物粉末を主原料として用いた。
窒化カルシウム(Ca):純度2N、太平洋セメント株式会社製
窒化アルミニウム(AlN):純度3N、株式会社高純度化学研究所製
窒化ケイ素(Si):純度3N、株式会社デンカ製
窒化ユウロピウム(EuN):純度2N、太平洋セメント株式会社製
【0163】
はじめに、化学量論的組成の化合物(Ca0.997,Eu0.003)AlSiNとなるように、N雰囲気のグローブボックス中で上記原料を秤量した。次に、乳鉢と乳棒を用いて乾式混合し、焼成原料とした。
【0164】
上記焼成原料を蓋付きの窒化ホウ素製(BN)るつぼに移し、加圧雰囲気制御電気炉を用いて1600℃のN(0.6MPa)加圧雰囲気中で2時間焼成した後、焼成物を軽く解砕したところ、比較例2の蛍光体が得られた。なお、焼成後の試料が(Ca0.997,Eu0.003)AlSiNであることは、X線回折法によって確認した。
【0165】
(発光寿命の評価)
蛍光体の発光寿命を、Quantaurus-Tau小型蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて評価した。結果を図12及び表2に示す。
【0166】
図12に、実施例1の発光寿命を示す。なお、図12には、実施例2、実施例3、比較例1及び比較例2の発光寿命も示す。
表2に最大発光強度の1/10の強度になるまでの時間(1/10残光):τ1/10を示す。
【0167】
【表2】
【0168】
(発光寿命の評価のまとめ)
実施例1~実施例3の蛍光体は、680~710nmの波長領域内に蛍光強度最大値を有する長残光性の線状スペクトル成分よりも、710nmを超える波長領域に存在する短残光性の近赤外成分の方が多い波長変換光を放射することが分かった。
なお、上記長残光性の線状スペクトル成分は、Cr3+の、及びE→の電子エネルギー遷移(スピン禁制遷移)に基づく光成分である。また、上記短残光性の近赤外成分は、の電子エネルギー遷移(スピン許容遷移)に基づく光成分である。
上記実施例1~実施例3の蛍光体を第一の蛍光体として用いた光照射型美容装置によれば、近赤外成分を多く含み、高パワー密度の定格出力が1W以上の固体光源から発せられる光を照射したときの蛍光出力飽和が少なく、高出力化が容易であることが分かった。
【0169】
[実施例4]
(焼結体の作製)
実施例1の蛍光体粉末1.0gを油圧プレス機により210MPaの圧力をかけて成型し、直径13mmの圧粉体を作製した。この圧粉体を、箱型電気炉を用いて1400℃の大気中で1時間焼成することで、実施例4の焼結体を得た。
【0170】
[実施例5]
(焼結体の作製)
実施例2の蛍光体粉末1.0gを油圧プレス機により210MPaの圧力をかけて成型し、直径13mmの圧粉体を作製した。この圧粉体を、箱型電気炉を用いて1400℃の大気中で1時間焼成することで、実施例5の焼結体を得た。
【0171】
[実施例6]
(焼結体の作製)
実施例3の蛍光体粉末1.0gを油圧プレス機により210MPaの圧力をかけて成型し、直径13mmの圧粉体を作製した。この圧粉体を、箱型電気炉を用いて1400℃の大気中で1時間焼成することで、実施例6の焼結体を得た。
【0172】
[比較例3]
(焼結体の作製)
比較例2の蛍光体粉末0.5gを油圧プレス機により210MPaの圧力をかけて成型し、直径13mmの圧粉体を作製した。この圧粉体を、加圧雰囲気制御電気炉を用いて1700℃のN(0.6MPa)加圧雰囲気中で2時間焼成することで、比較例3の焼結体を得た。
【0173】
(蛍光出力飽和の評価)
蛍光体の蛍光出力飽和特性は、積分球を用い、ピーク波長450nmの青色LD光を蛍光体に照射し、マルチチャンネル分光器により蛍光体ペレットの発光を観測した。このとき、青色LD光の定格出力を0.93Wから3.87Wまで変化させた。蛍光体への照射面積は0.785mmとした。
【0174】
図13に、実施例4から実施例6と、比較例3の蛍光出力飽和特性を示す。Cr3+付活蛍光体の発光寿命はEu2+付活蛍光体の発光寿命に比較して非常に長いことが分かった。また、Cr3+付活蛍光体は、発光寿命が長いにもかかわらず、励起光のパワー密度が高い領域においても高い発光効率を維持することができることが分かった。
【0175】
特願2020-106043号(出願日:2020年6月19日)の全内容は、ここに援用される。
【0176】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本開示によれば、高出力光の励起下で近赤外の蛍光成分の割合が多い高出力光を放射する光照射型美容装置、及びこれを用いた電子機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0178】
1、1A、1B、1C、1D、1E 発光装置
2 光源
3、3A、3B、3C、3D、3E 波長変換体
4 第一の蛍光体
6 一次光
7 第一の波長変換光
8 第二の蛍光体
9 第二の波長変換光
10 光照射型美容装置
15 出力光
20 本体部
21 ハウジング
23 ヘッド部側端部
30 ヘッド部
31 ヘッド部本体
41 電源ボタン
50 駆動電源
110 照射口
200 固体発光素子
図1
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