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特許7462259計測装置、システム、計測方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】計測装置、システム、計測方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240329BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020003880
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021111221
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-09-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大垣 史迅
(72)【発明者】
【氏名】村上 憲一
【審査官】深津 始
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-049321(JP,A)
【文献】特開2020-004248(JP,A)
【文献】特開2018-147261(JP,A)
【文献】特開2019-175109(JP,A)
【文献】特開2002-098564(JP,A)
【文献】特開2019-204458(JP,A)
【文献】特開2020-123198(JP,A)
【文献】特開2016-212104(JP,A)
【文献】特開2014-203291(JP,A)
【文献】特開2011-244441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -G06Q 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
資源の使用状況を計測する計測部と、
前記資源の使用状況及び所定の項目の正誤を学習用データとして前記所定の項目を出力するように機械学習された学習済みモデルを用いて、前記計測部の計測結果に基づく前記所定の項目を判定する判定部と、
前記計測部の計測結果及び前記判定部の判定結果の正誤の判断に従って前記判定部の判定結果を是正したデータを用いて、前記学習済みモデルの再学習を行う再学習部と、
前記学習済みモデルである第1学習済みモデルと別の第2学習済みモデルを、外部の学習装置から取得する取得部と、
前記計測部の計測結果を前記学習装置に出力する出力部と、を備え、
前記判定部は、前記第1学習済みモデルと、前記取得部にて取得した前記第2学習済みモデルと、のいずれか一方を採用し、
前記出力部は、前記計測部の計測結果のうち、前記計測部が計測した時間に関する時間情報は前記学習装置に出力せず、
前記時間情報は、
ユーザがどの時間に特定の行動を行ったかを想起させる情報を含み、
前記再学習部での前記第1学習済みモデルの再学習に用いられる、
計測装置。
【請求項2】
前記判定部である第1判定部とは別の判定部であって、前記第2学習済みモデルを用いて、前記計測部の計測結果に基づく前記所定の項目を判定する第2判定部を更に備える、
請求項1記載の計測装置。
【請求項3】
前記再学習部は、前記計測部の計測結果のうち間引き条件に従って間引いたデータを用いて、前記学習済みモデルの再学習を行う、
請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記間引き条件は、ユーザからの入力に関するユーザ条件を含み、
前記ユーザ条件は、前記ユーザからの入力により前記学習用データとすることを禁止されたデータを間引くという条件を含む、
請求項3記載の計測装置。
【請求項5】
前記間引き条件は、前記判定部の判定結果の正誤に関する正誤条件を含み、
前記正誤条件は、前記判定部の判定結果が正しいデータを間引くという条件を含む、
請求項3又は4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記再学習部は、あらかじめ規定された特定期間にて前記学習済みモデルの再学習を行う、
請求項1~5のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記所定の項目は、前記資源を消費する機器に関する機器情報と、ユーザに関するユーザ情報と、の少なくとも一方を含み、
前記ユーザ情報は、前記ユーザが特定の行動を行っているか否かを含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の計測装置と、
前記資源の使用状況及び前記所定の項目の正誤を前記学習用データとして、請求項1~7のいずれか1項に記載の計測装置の前記判定部にて用いられる前記学習済みモデルを機械学習により生成する学習装置と、を備える、
システム。
【請求項9】
1以上のプロセッサによって実行される計測方法であり、
資源の使用状況を計測する計測ステップと、
前記資源の使用状況及び所定の項目の正誤を学習用データとして前記所定の項目を出力するように機械学習された学習済みモデルを用いて、前記計測ステップの計測結果に基づく前記所定の項目を判定する判定ステップと、
前記計測ステップの計測結果及び前記判定ステップの判定結果の正誤の判断に従って前記判定ステップの判定結果を是正したデータを用いて、前記学習済みモデルの再学習を行う再学習ステップと、
前記学習済みモデルである第1学習済みモデルと別の第2学習済みモデルを、外部の学習装置から取得する取得ステップと、
前記計測ステップの計測結果を前記学習装置に出力する出力ステップと、を有し、
前記判定ステップでは、前記第1学習済みモデルと、前記取得ステップにて取得した前記第2学習済みモデルと、のいずれか一方を採用し、
前記出力ステップでは、前記計測ステップの計測結果のうち、前記計測ステップで計測した時間に関する時間情報は前記学習装置に出力せず、
前記時間情報は、
ユーザがどの時間に特定の行動を行ったかを想起させる情報を含み、
前記再学習ステップでの前記第1学習済みモデルの再学習に用いられる、
計測方法。
【請求項10】
前記1以上のプロセッサに、
請求項9記載の計測方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に計測装置、システム、計測方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、資源の使用状況を計測する計測装置、これを備えたシステム、資源の使用状況を計測する計測方法、及びこれを実行するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、住戸(施設)の住居者(ユーザ)の生活行動(状態)を推測するエネルギーマネジメントシステムが開示されている。特許文献1では、エネルギーマネジメントシステムは、施設における電力の使用状況からユーザの状態を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-174030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のエネルギーマネジメントシステムでは、電力(資源)の使用状況としての電気使用量と所定の閾値との比較によってユーザの状態を判定しているため、判定精度、及び判定可能な項目の多様さにも限界がある、という問題があった。
【0005】
本開示は、上記の点を鑑みてなされており、判定精度、及び判定可能な項目の多様さの向上を図りやすい計測装置、システム、計測方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る計測装置は、計測部と、判定部と、再学習部と、取得部と、出力部と、を備える。前記計測部は、資源の使用状況を計測する。前記判定部は、前記資源の使用状況及び所定の項目の正誤を学習用データとして前記所定の項目を出力するように機械学習された学習済みモデルを用いて、前記計測部の計測結果に基づく前記所定の項目を判定する。前記再学習部は、前記計測部の計測結果及び前記判定部の判定結果の正誤の判断に従って前記判定部の判定結果を是正したデータを用いて、前記学習済みモデルの再学習を行う。前記取得部は、前記学習済みモデルである第1学習済みモデルと別の第2学習済みモデルを、外部の学習装置から取得する。前記出力部は、前記計測部の計測結果を前記学習装置に出力する。前記判定部は、前記第1学習済みモデルと、前記取得部にて取得した前記第2学習済みモデルと、のいずれか一方を採用する。前記出力部は、前記計測部の計測結果のうち、前記計測部が計測した時間に関する時間情報は前記学習装置に出力しない。前記時間情報は、ユーザがどの時間に特定の行動を行ったかを想起させる情報を含む。前記時間情報は、前記再学習部での前記第1学習済みモデルの再学習に用いられる。
【0007】
本開示の一態様に係るシステムは、上記の計測装置と、学習装置と、を備える。前記学習装置は、前記資源の使用状況及び前記所定の項目の正誤を前記学習用データとして、上記の計測装置の前記判定部にて用いられる前記学習済みモデルを機械学習により生成する。
【0008】
本開示の一態様に係る計測方法は、1以上のプロセッサによって実行される計測方法である。前記測定方法は、計測ステップと、判定ステップと、再学習ステップと、取得ステップと、出力ステップと、を有する。前記計測ステップは、資源の使用状況を計測するステップである。前記判定ステップは、前記資源の使用状況及び所定の項目の正誤を学習用データとして前記所定の項目を出力するように機械学習された学習済みモデルを用いて、前記計測ステップの計測結果に基づく前記所定の項目を判定するステップである。前記再学習ステップは、前記計測ステップの計測結果及び前記判定ステップの判定結果の正誤の判断に従って前記判定ステップの判定結果を是正したデータを用いて、前記学習済みモデルの再学習を行うステップである。前記取得ステップは、前記学習済みモデルである第1学習済みモデルと別の第2学習済みモデルを、外部の学習装置から取得する。前記出力ステップは、前記計測ステップの計測結果を前記学習装置に出力する。前記判定ステップでは、前記第1学習済みモデルと、前記取得ステップにて取得した前記第2学習済みモデルと、のいずれか一方を採用する。前記出力ステップでは、前記計測ステップの計測結果のうち、前記計測ステップで計測した時間に関する時間情報は前記学習装置に出力しない。前記時間情報は、ユーザがどの時間に特定の行動を行ったかを想起させる情報を含む。前記時間情報は、前記再学習ステップでの前記第1学習済みモデルの再学習に用いられる。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、上記の計測方法を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、判定精度、及び判定可能な項目の多様さの向上を図りやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る計測装置及び学習装置を含むシステムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、同上のシステムを含む全体構成を示す概略図である。
図3図3は、同上の計測装置の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、同上の学習装置の動作を示すフローチャートである。
図5図5は、本開示の一実施形態の変形例に係る計測装置及び学習装置を含むシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)概要
本実施形態の計測装置1(図1参照)は、資源の使用状況を計測するための装置である。本実施形態では、計測装置1は、対象となる施設F1(図1参照)での資源の使用状況を計測する。
【0013】
本開示でいう「資源」は、電力(電気エネルギー)、ガス及び水道水等の、施設F1にて使用(消費)される資源を意味する。施設F1で消費される「資源」には、例えば、電気錠、自動扉、電動シャッタ又はエスカレータ等のように施設F1の一部で消費される資源だけでなく、施設F1で使用される機器3(図2参照)で消費される資源も含む。資源が電力である場合、電力系統から供給される電力、及び施設F1に設置された分散電源(例えば、太陽光発電設備、蓄電設備又は風力発電設備)から出力される電力も資源に含まれる。
【0014】
本開示でいう「施設」は、店舗、オフィス、工場、ビル、学校、福祉施設又は病院等の非住宅施設、及び戸建住宅、集合住宅、又は戸建住宅若しくは集合住宅の各住戸等の住宅施設を含む。非住宅施設には、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、百貨店、ホテル、旅館、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅及び空港等も含む。さらには、本開示でいう「施設」には、建物(建造物)だけでなく、球場、庭、駐車場、グランド及び公園等の屋外施設を含む。本実施形態では、戸建住宅を施設F1の一例として説明する。
【0015】
本開示でいう「機器」は、施設F1で使用され、かつ資源を使用(消費)する種々の機器(据置型又は可搬型の設備、装置及びシステム等を含む)である。本実施形態では、機器3は、図2に示すように、照明器具31、空調機器32、コンセント(アウトレット)33、トイレ34、シャワー35、風呂36、及び給湯機37等である。つまり、機器3は、電力を消費する電気機器に限られず、水又はガス等を消費する機器を含み得る。また、機器3は、ユーザが使用する機器に限られず、施設F1の環境状態を計測するセンサ(例えば、温度センサ、湿度センサ等)の他、例えば壁スイッチ等が含まれる。
【0016】
電気機器としては、設備機器又は家電機器等を含み得る。設備機器の例としては、パッケージエアコン(空調設備)、照明設備(ベースライト及びスポットライト等を含む)、蓄電設備、厨房設備(IHヒータ及び食器洗浄器等を含む)、入退室管理機器、コピー機及びファクシミリ等がある。さらに、例えば、給湯設備(エコキュート(登録商標)等を含む)、電動シャッタ、換気扇、24時間換気システム等の住設機器も設備機器に含まれる。家電機器の例としては、テレビ受像機、照明機器(シーリングライト等を含む)及び録画再生機(HDD付DVDレコーダ及び外付けHDD等を含む)等がある。さらに、例えば、洗濯機、冷蔵庫、空調機器、空気清浄機、パーソナルコンピュータ、スマートスピーカ及びコンピュータゲーム機等も家電機器に含まれる。
【0017】
また、計測装置1は、計測した資源の使用状況に基づいて、所定の項目を判定するための装置でもある。本開示でいう「所定の項目」は、資源の使用状況に含まれる特徴量から推定される項目であって、例えば、施設F1で使用されている機器3の種別、又はユーザの状態(ユーザが特定の行動を行ったか否か)を含み得る。つまり、計測装置1は、センサ等を用いて所定の項目を直接的に判定するのではなく、計測した資源の使用状況に基づいて、所定の項目を間接的に判定する。本実施形態では、施設F1が戸建住宅であるので、ユーザは、戸建住宅の居住者である。
【0018】
計測装置1は、図1に示すように、計測部11と、判定部13と、再学習部15と、を備えている。
【0019】
計測部11は、資源の使用状況を計測する。例えば、資源が電気である場合、計測部11は、施設F1全体での電力量(電気使用量)、又は施設F1で使用される各機器3の電力量(電気使用量)等を計測する。
【0020】
判定部13は、資源の使用状況を学習用データとして所定の項目を出力するように機械学習された学習済みモデルM1を用いて、計測部11の計測結果に基づく所定の項目を判定する。本開示でいう「学習済みモデル」は、計測部11の計測結果(資源の使用状況)が入力されると、入力された資源の使用状況に含まれる特徴量から所定の項目を判定し、判定結果を出力するプログラムであって、学習用データを用いた機械学習が完了したモデルである。また、本開示でいう「学習用データ」は、モデルに入力される入力情報(本実施形態では、資源の使用状況)と、入力情報に付与されたラベル(本実施形態では、所定の項目の正誤)と、を組み合わせたデータセットであり、いわゆる教師データである。つまり、本実施形態では、学習済みモデルM1は、教師あり学習による機械学習が完了したモデルである。つまり、判定部13は、計測部11の計測結果を学習済みモデルM1に入力することにより、入力された資源の使用状況に含まれる特徴量から所定の項目を判定する。本実施形態では、判定部13は、計測装置1自体が生成した学習済みモデルM1ではなく、計測装置1とは別の外部の学習装置2にて生成された学習済みモデルM1を用いて判定を行う。
【0021】
再学習部15は、計測部11の計測結果を用いて、学習済みモデルM1の再学習を行う。つまり、再学習部15は、計測部11の計測結果(つまり、資源の使用状況)を学習用データとして、機械学習により学習済みモデルM1を再学習して更新する。
【0022】
上述のように、本実施形態では、計測装置1は、機械学習により生成された学習済みモデルM1を用いて、資源の使用状況に含まれる特徴量から所定の項目を判定している。したがって、本実施形態では、例えば資源の使用量と閾値とを比較するといった単純な判定手法により判定を行う場合と比較して、判定精度、及び判定可能な項目の多様さの向上を図りやすい、という利点がある。
【0023】
また、本実施形態では、計測装置1は、計測装置1にて学習済みモデルM1の再学習を行えるので、計測装置1の設置された環境(ここでは、施設F1)に固有の学習済みモデルM1を構築しやすい、という利点がある。
【0024】
(2)詳細
以下、本実施形態の計測装置1と、学習装置2と、を備えたシステム100について図1及び図2を参照して詳細に説明する。学習装置2は、資源の使用状況を学習用データとして、計測装置1の判定部13で用いられる学習済みモデルM1を機械学習により生成する。学習装置2で生成された学習済みモデルM1は、計測装置1に対して出力される。
【0025】
本開示でいう「学習済みモデルの生成」は、従前に学習済みモデルM1が存在しない状態において学習済みモデルM1を生成することの他に、既存の学習済みモデルM1を再学習することにより学習済みモデルM1を生成(更新)することを含み得る。
【0026】
本実施形態では、学習装置2は、図1に示すように、例えばインターネット等のネットワークN1を介して1以上(ここでは、複数)の計測装置1と個別に通信可能に構成されている。1以上の計測装置1は、それぞれ互いに異なる1以上の施設F1に設けられている。学習装置2は、各計測装置1に対して、学習済みモデルM1を出力する。つまり、各計測装置1が取得する学習済みモデルM1は、いずれも同じである。以下では、1以上の計測装置1のうちの1つの計測装置1に焦点を当てて説明する。
【0027】
(2.1)計測装置
計測装置1は、図1に示すように、計測部11と、通信部12と、判定部13と、記憶部14と、再学習部15と、を備えている。本実施形態では、計測装置1は、計測部11、通信部12、判定部13、記憶部14、及び再学習部15を1つの筐体に収容した装置として構成されている。
【0028】
本実施形態では、計測装置1は、少なくとも一部が1以上のプロセッサ及びメモリを有するマイクロコントローラにて構成されている。言い換えれば、計測装置1の少なくとも一部は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが計測装置1の少なくとも一部として機能する。プログラムは、ここではメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0029】
計測装置1は、図2に示すように、分電盤5のキャビネット内に配置されている。分電盤5は、系統電源6に電気的に接続される主幹ブレーカ51と、主幹ブレーカ51の二次側に電気的に接続された複数の分岐ブレーカ52とをキャビネット内に備えている。計測装置1は、電流センサ41,42に電気的に接続されている。電流センサ41は、主幹ブレーカ51の一次側に設けられ、幹線を流れる電流を計測する。複数の電流センサ42は、それぞれ複数の分岐ブレーカ52に対応して設けられている。複数の電流センサ42は、それぞれ対応する複数の分岐回路に流れる電流を計測する。ここでいう「分岐回路」は、複数の分岐ブレーカ52にて幹線から分岐された各回路を意味する。分岐回路には、分岐ブレーカ52に接続される配線、照明器具31、空調機器32、コンセント(アウトレット)33、又は壁スイッチ等を含んでいる。このような分岐回路は、本実施形態のように戸建住宅である施設F1においては、例えばリビング、寝室、玄関、トイレ、子供部屋、又はキッチン等の部屋ごと、かつ、照明器具31又は空調機器32等の機器3の種類ごとに設けられる。1つの分岐回路には、1つの機器3が含まれてもよいし、複数の機器3が含まれてもよい。
【0030】
計測部11は、資源の使用状況を計測する。計測部11は、後述する計測ステップST1(図3参照)の実行主体である。本実施形態では、計測部11は、資源の使用状況として、電気の使用状況、水道水の使用状況、及びガスの使用状況を計測する。計測部11の計測結果は、記憶部14に記憶される。
【0031】
計測部11は、電流センサ41,42の出力を用いて、幹線及び複数の分岐回路の各々について、瞬時電力及び電力量(電気使用量)の少なくとも一方を計測する。また、計測部11は、電流センサ41,42の出力を用いて、幹線及び複数の分岐回路の各々を流れる電流の特徴量を計測する。電流の特徴量は、一例として、電流の周波数又は位相等である。ここでいう「電流の周波数」には、電流の高調波成分等が含まれ得る。このようにして、計測部11は、電気の使用状況を計測する。
【0032】
また、計測部11は、計測装置1に電気的に接続されている水道メータ43の出力を用いて、施設F1における水道水の使用量を計測する。具体的には、計測部11は、水道メータ43の有するパルス発信器が発信するパルスを計数することにより、施設F1における水道水の使用量を計測する。本実施形態では、計測部11は、トイレ34、シャワー35、風呂36及び洗面所等での水道水の使用量を計測する。このようにして、計測部11は、水道水の使用状況を計測する。
【0033】
また、計測部11は、計測装置1に電気的に接続されているガスメータ44の出力を用いて、施設F1におけるガスの使用量を計測する。具体的には、計測部11は、ガスメータ44の有するパルス発信器が発信するパルスを計数することにより、施設F1におけるガスの使用量を計測する。本実施形態では、計測部11は、給湯機37等でのガスの使用量を計測する。このようにして、計測部11は、ガスの使用状況を計測する。
【0034】
通信部12は、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器(ルータ等)を介して間接的に、外部の学習装置2との間で信号を授受する。本実施形態では、通信部12は、インターネット等のネットワークN1を介して学習装置2と通信するように構成されている。通信部12は、取得部121としての機能と、出力部122としての機能と、を有している。
【0035】
取得部121は、学習装置2から学習済みモデルM1を含む信号を受信することにより、学習済みモデルM1を取得する。取得部121は、後述する取得ステップST2(図3参照)の実行主体である。取得部121は、過去に学習済みモデルM1を取得していない場合、学習装置2から学習済みモデルM1自体を取得する。
【0036】
一方、取得部121が過去に学習済みモデルM1を取得しており、かつ、学習装置2にて学習済みモデルM1の再学習が行われた場合、学習装置2は、再学習後の学習済みモデルM1のパラメータを計測装置1に出力する。この場合、取得部121は、学習済みモデルM1自体を取得するのではなく、再学習後の学習済みモデルM1のパラメータ(例えば、重み係数)のみを取得することになる。そして、判定部13では、取得部121にて取得したパラメータを用いて、既存の学習済みモデルM1を再学習後の学習済みモデルM1に更新することが可能である。この態様では、学習済みモデルM1自体を送信する場合と比較して、通信量の低減を図ることができる。
【0037】
つまり、取得部121は、学習済みモデルM1である第1学習済みモデルM11(図5参照)と同一又は別の第2学習済みモデルM12(図5参照)を、外部の学習装置2から取得する。ここで、第1学習済みモデルM11は、計測装置1が有する既存の学習済みモデルM1である。また、第2学習済みモデルM12は、学習装置2から取得する学習済みモデルM1である。後述するように、計測装置1及び学習装置2は、それぞれ独自に学習済みモデルM1の再学習を行うため、基本的に第1学習済みモデルM11と第2学習済みモデルM12とは互いに異なる。もちろん、第1学習済みモデルM11と第2学習済みモデルM12とが同一になっても構わない。
【0038】
出力部122は、計測部11の計測結果を、ネットワークN1を介して学習装置2へ出力する。出力部122は、後述する出力ステップST4(図3参照)の実行主体である。本実施形態では、学習装置2に出力される計測部11の計測結果には、電気の使用状況の計測結果と、水道水の使用状況の計測結果と、ガスの使用状況の計測結果と、が含まれ得る。
【0039】
本実施形態では、出力部122は、計測部11の計測結果をそのまま学習装置2に出力するのではなく、計測部11の計測結果を入力とした判定部13の判定結果も学習装置2に出力する。つまり、出力部122は、計測部11の計測結果と、ラベルとなる判定部13の判定結果と、を含む学習用データを学習装置2に出力する。
【0040】
ここで、本実施形態では、出力部122は、計測部11の計測結果のうち、計測部11が計測した時間に関する時間情報(つまり、タイムスタンプ)は学習装置2に出力しない。例えば、出力部122は、資源としての電気の使用状況の計測結果を学習装置2に出力する場合、計測した瞬時電力及び電力量のデータは学習装置2に出力する一方、タイムスタンプは学習装置2に出力しない。ここで、時間情報は、ユーザがどの時間に特定の行動を行ったか等、ユーザの日常生活を想起させるプライベートな情報となり得る。本実施形態では、計測部11の計測結果のうち時間情報を除いて学習装置2に出力することにより、ユーザのプライベートな情報を公に晒さなくて済む。
【0041】
判定部13は、学習済みモデルM1を用いて所定の項目を判定する。判定部13は、後述する判定ステップST3(図3参照)の実行主体である。本実施形態では、判定部13(つまり、学習済みモデルM1)により判定される所定の項目は、資源を消費する機器3に関する機器情報と、ユーザに関するユーザ情報と、の少なくとも一方を含んでいる。
【0042】
機器情報は、一例として、機器3の種類、又は機器3の動作状況等を含み得る。例えば、判定部13は、計測部11の計測結果に基づいて、施設F1で使用されている1以上の機器3の種類を判定する。ここでいう「種類」は、機器3のタイプ(品番)等を含み得る。また、例えば、判定部13は、計測部11の計測結果に基づいて、機器3が動作しているか否か、動作している場合には機器3の動作モード又は動作時間等を判定する。
【0043】
既に述べたように、本実施形態では、施設F1が戸建住宅であるため、ユーザは、戸建住宅の居住者である。したがって、ユーザ情報は、一例として、ユーザが在宅しているか否か、ユーザがテレビを視聴しているか否か、ユーザが料理をしているか否か、ユーザが入浴しているか否か、ユーザがトイレを使用しているか否か、又はユーザが就寝しているか否か等を含み得る。このように、ユーザ情報は、ユーザが特定の行動を行っているか否かを含み得る。
【0044】
ここで、本実施形態では、判定部13は、第1学習済みモデルM11と、取得部121にて取得した第2学習済みモデルM12と、のいずれか一方を採用する。例えば、判定部13は、基本的には第1学習済みモデルM11を採用する一方、学習装置2にて学習済みモデルM1の大幅なアップデートがあった場合、学習装置2から取得した第2学習済みモデルM12を採用することが考えられる。第1学習済みモデルM11及び第2学習済みモデルM12のいずれを採用するかは、あらかじめ設定されたアルゴリズムに従って決定してもよいし、ユーザの判断に従って決定してもよい。後者の場合、後述する情報端末7を介してユーザの判断を仰げばよい。
【0045】
記憶部14は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の電気的に書換え可能な不揮発性メモリ、又はRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ等を備える。記憶部14は、計測部11の計測結果、及び判定部13の判定結果を記憶する。つまり、記憶部14は、再学習部15での再学習に用いられる学習用データ(又は学習装置2に出力する学習用データ)を記憶する。学習用データは、再学習部15での再学習に用いられた後(又は学習装置2に出力された後)は消去されてもよい。
【0046】
再学習部15は、計測部11の計測結果(つまり、資源の使用状況)を学習用データとして、機械学習により学習済みモデルM1を再学習して更新する。再学習部15は、後述する再学習ステップST5の実行主体である。本実施形態では、学習済みモデルM1は、後述するようにニューラルネットワークを用いたモデルである。したがって、再学習部15は、学習済みモデルM1の再学習を行うことで、ニューラルネットワークのパラメータ(例えば、重み係数)を更新する。
【0047】
ここで、本実施形態では、上述の時間情報(タイムスタンプ)は、再学習部15での学習済みモデルM1の再学習に用いられる。つまり、出力部122は、上述の時間情報がユーザの日常生活を想起させるプライベートな情報となり得ることから、公に晒さないようにするために、計測部11の計測結果から時間情報を除いて学習装置2に出力している。一方、再学習部15は、上述の時間情報を学習用データに含めることで、ユーザのプライベートな情報を学習済みモデルM1に反映させるように再学習を行うことが可能であり、結果としてユーザに適した学習済みモデルM1の最適化を図りやすい。
【0048】
また、本実施形態では、再学習部15は、計測部11の計測結果を全て用いるのではなく、計測部11の計測結果のうち間引き条件に従って間引いたデータを用いて、学習済みモデルM1の再学習を行う。以下、間引き条件の例について列挙する。再学習部15は、以下に列挙する間引き条件の全てに従ってデータを間引いてもよいし、一部の間引き条件にのみ従ってデータを間引いてもよい。また、再学習部15は、特定の条件を満たすデータの数だけが突出して多くなったり少なくなったりしないように、条件ごとのデータの数が均一となるように間引くのが好ましい。
【0049】
間引き条件は、一例として、ユーザからの入力に関する条件を含み得る。例えば、再学習部15は、計測部11の計測結果のうち、ユーザからの入力により学習用データとすることを禁止されたデータを間引いて、学習済みモデルM1の再学習を行う。本実施形態では、計測装置1は、ユーザの操作により情報端末7(図2参照)に入力された情報を、ネットワークN1を介して通信部12にて受信することにより、ユーザからの入力を受け付ける。情報端末7は、例えばスマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等のユーザが所持する又は利用する端末である。その他、計測装置1は、備え付けのタッチパネルディスプレイ等の種々の表示機器及び入力機器を介して、ユーザからの入力を受け付けてもよい。
【0050】
また、間引き条件は、一例として、判定部13の判定結果の正誤に関する条件を含み得る。例えば、再学習部15は、計測部11の計測結果のうち、判定部13の判定結果が正しいデータを間引いて、学習済みモデルM1の再学習を行う。言い換えれば、再学習部15は、計測部11の計測結果のうち、判定部13の判定結果が誤っていたデータを用いて学習済みモデルM1の再学習を行う。より具体的には、所定の項目が照明器具31が点灯しているか否かであった場合に、実際には照明器具31が点灯していないが、判定部13では照明器具31が点灯していると判定している、と仮定する。この場合、再学習部15は、判定部13の判定結果の正誤の判断に従って判定部13の判定結果を是正したデータを学習用データとして、学習済みモデルM1の再学習を行う。この態様では、学習済みモデルM1の判定結果を是正するように再学習することができるので、学習済みモデルM1の判定精度の向上が期待できる。
【0051】
判定部13の判定結果の正誤の判断については、例えば、判定部13の判定結果をユーザに提示し、ユーザが判定部13の判定結果を評価することにより実現され得る。具体的には、計測装置1は、判定部13の判定結果を、ネットワークN1を介して情報端末7に出力する。ユーザは、情報端末7に備え付けのディスプレイを見ることで、判定部13の判定結果を確認し、判定結果が正しいか否かの評価を入力する。そして、情報端末7は、入力された評価を含む応答信号を、ネットワークN1を介して計測装置1に返信する。
【0052】
また、間引き条件は、一例として、時間に関する条件を含み得る。例えば、再学習部15は、計測部11の計測結果のうち、あらかじめ設定された特定の時間帯に計測されたデータを間引いて、学習済みモデルM1の再学習を行う。特定の時間帯は、例えば、ユーザが情報端末7にて入力することにより、設定することが可能である。
【0053】
ここで、間引き条件が時間に関する条件を含む場合、時間に関する条件は、機器3の種類及び曜日に依らず一律に設定されてもよいが、これに限らない。つまり、時間に関する条件は、複数設定されていてもよい。例えば、時間に関する条件は、曜日ごとに異なる時間帯であってもよい。具体的には、月曜日から金曜日までの平日においては、昼間の時間帯のデータを間引くように設定され、土曜日及び日曜日等の休日においては、早朝の時間帯のデータを間引くように設定されてもよい。また、例えば、時間に関する条件は、機器3の種類ごとに異なる時間帯に設定されてもよい。具体的には、照明器具31と風呂36とでデータを間引く時間帯が互いに異なるように設定されてもよい。
【0054】
本実施形態では、再学習部15は、あらかじめ規定された特定期間にて学習済みモデルM1の再学習を行う。特定期間は、一例として、深夜等の計測装置1の処理負荷が比較的小さくなる時間帯である。この態様では、計測装置1の処理能力に余裕がある期間に学習済みモデルM1の再学習を行えるので、処理能力が比較的低い装置を計測装置1として採用することが可能になる。
【0055】
(2.2)学習装置
学習装置2は、図1に示すように、通信部21と、モデル生成部22と、記憶部23と、を備えている。
【0056】
本実施形態では、学習装置2は、少なくとも一部が1以上のプロセッサ及びメモリを有するマイクロコントローラにて構成されている。言い換えれば、学習装置2の少なくとも一部は、1以上のプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムにて実現されており、1以上のプロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが学習装置2の少なくとも一部として機能する。プログラムは、ここではメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0057】
通信部21は、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器(ルータ等)を介して間接的に、計測装置1との間で信号を授受する。本実施形態では、通信部21は、インターネット等のネットワークN1を介して計測装置1と通信するように構成されている。通信部21は、モデル生成部22にて生成した学習済みモデルM1を計測装置1に出力(送信)したり、計測装置1から出力された計測部11の計測結果(学習用データ)を取得(受信)したりする。
【0058】
モデル生成部22は、資源の使用状況を学習用データとして、計測装置1にて用いられる学習済みモデルM1を機械学習により生成する。具体的には、モデル生成部22は、例えばSVM(Support Vector Machine)等の線形モデルの他、ニューラルネットワークを用いたモデル、又は多層ニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)によるモデル等を学習済みモデルM1として生成する。本実施形態では、モデル生成部22は、ニューラルネットワークを用いたモデルを、学習済みモデルM1として生成する。ニューラルネットワークは、例えばCNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)、又はBNN(Bayesian Neural Network:ベイズニューラルネットワーク)等を含み得る。また、本実施形態では、モデル生成部22は、既に述べたように、教師あり学習により学習済みモデルM1を生成する。
【0059】
モデル生成部22は、従前に学習済みモデルM1が存在しない場合、計測装置1から取得した計測部11の計測結果を学習用データとせずに、別途用意した資源の使用状況を学習用データとして、機械学習により学習済みモデルM1を生成する。また、モデル生成部22は、既に学習済みモデルM1が存在する場合、計測装置1から取得した計測部11の計測結果(つまり、資源の使用状況)を学習用データとして、機械学習により学習済みモデルM1を再学習して更新する。
【0060】
本実施形態では、学習装置2は、図1に示すように、複数の計測装置1の各々から計測部11の計測結果を取得する。このため、本実施形態では、学習装置2は、1つの計測装置1のみから計測部11の計測結果を取得する場合と比較して、多数かつ多様な学習用データを取得することができ、結果として再学習後の学習済みモデルM1の判定精度の向上が期待できる。
【0061】
記憶部23は、例えば、EEPROM等の電気的に書換え可能な不揮発性メモリ、又はRAM等の揮発性メモリ等を備える。記憶部23は、計測装置1から取得した計測部11の計測結果を記憶する。つまり、記憶部23は、計測装置1から取得した学習用データを記憶する。学習用データは、学習済みモデルM1の再学習後に消去されてもよい。
【0062】
(3)動作
以下、計測装置1の動作の一例を図3を参照して、学習装置2の動作の一例を図4を参照して説明する。計測装置1の動作例においては、計測装置1は、未だ学習装置2から学習済みモデルM1を取得していない、と仮定する。また、学習装置2の動作例においては、学習装置2は、未だ学習済みモデルM1を生成していない、と仮定する。
【0063】
(3.1)計測装置
計測装置1においては、まず、取得部121は、学習装置2から出力される学習済みモデルM1を取得する(S1)。これ以降、判定部13は、学習装置2から取得した学習済みモデルM1を用いて、所定の項目を判定することが可能になる。処理S1は、取得ステップST2に相当する。
【0064】
学習済みモデルM1を取得した以降においては、計測部11は、定期的に資源の使用状況を計測する(S2)。そして、判定部13は、計測部11の計測結果を学習済みモデルM1に入力し、計測部11の計測結果に基づいて所定の項目を判定する(S3)。処理S2は、計測ステップST1に相当する。処理S3は、判定ステップST3に相当する。計測部11の計測結果と、これに紐づく判定部13の判定結果とは、学習用データとして記憶部14に記憶される(S4)。処理S2~S4は、学習用データが記憶部14に所定数蓄積されるまで繰り返される(S5:No)。
【0065】
学習用データが記憶部14に所定数蓄積されると(S5:Yes)、出力部122は、蓄積された学習用データ(計測部11の計測結果)を学習装置2に出力する(S6)。また、再学習部15は、蓄積された学習用データを用いて、学習済みモデルM1の再学習を行う(S7)。そして、記憶部14に蓄積された学習用データは消去される。つまり、処理S7以降においては、記憶部14には、新たに学習用データが蓄積されることになる。処理S6は、出力ステップST4に相当する。処理S7は、再学習ステップST5に相当する。
【0066】
その後、学習装置2にて学習済みモデルM1の再学習が行われ、学習装置2から再学習後の学習済みモデルM1(つまり、第2学習済みモデルM12)のパラメータを取得する(S8:Yes)。処理S8:Yesは、取得ステップST2に相当する。すると、判定部13は、あらかじめ規定されたアルゴリズムに従って、既存の学習済みモデルM1(つまり、第1学習済みモデルM11)及び第2学習済みモデルM12のいずれを採用するかを決定する。第1学習済みモデルM11を採用する場合(S9:Yes)、判定部13は、特に何も実行しない。一方、第2学習済みモデルM12を採用する場合(S9:No)、判定部13は、学習装置2から取得したパラメータを用いて、学習済みモデルM1(第1学習済みモデルM11)を第2学習済みモデルM12に更新する(S10)。なお、学習装置2から第2学習済みモデルM12のパラメータを取得するまでは、判定部13は、既存の学習済みモデルM1を用いて所定の項目を判定する(S8:No)。
【0067】
(3.2)学習装置
学習装置2においては、まず、モデル生成部22は、あらかじめ用意された学習用データを用いて、学習済みモデルM1を生成する(S11)。そして、学習装置2は、モデル生成部22にて生成した学習済みモデルM1を計測装置1に出力する(S12)。
【0068】
学習済みモデルM1を生成した以降においては、通信部21は、計測装置1から出力される計測部11の計測結果(つまり、学習用データ)を定期的に又は不定期に取得する(S13)。通信部21にて取得した学習用データは、記憶部23に記憶される(S14)。処理S13,S14は、学習用データが記憶部23に所定数蓄積されるまで繰り返される(S15:No)。
【0069】
学習用データが記憶部23に所定数蓄積されると(S15:Yes)、学習装置2は、蓄積された学習用データを用いて学習済みモデルM1の再学習を行う(S16)。そして、学習装置2は、再学習後の学習済みモデルM1のパラメータを計測装置1に出力する(S17)。以降、処理S13~S17が繰り返される。ここで、記憶部23に蓄積された学習用データは消去される。つまり、処理S17以降においては、記憶部23には、新たに学習用データが蓄積されることになる。
【0070】
上述のように、本実施形態では、計測装置1は、機械学習により生成された学習済みモデルM1を用いて、資源の使用状況に含まれる特徴量から所定の項目を判定している。つまり、本実施形態では、判定部13は、学習済みモデルM1を用いることにより、人間が規定した閾値を用いて所定の項目を判定するのではなく、人間では気づきにくい潜在的な特徴量を用いて所定の項目を判定することになる。したがって、本実施形態では、例えば資源の使用量と閾値とを比較するといった単純な判定手法により判定を行う場合と比較して、判定精度、及び判定可能な項目の多様さの向上を図りやすい、という利点がある。
【0071】
また、本実施形態では、計測装置1は、計測装置1にて学習済みモデルM1の再学習を行えるので、計測装置1の設置された環境(ここでは、施設F1)に固有の学習済みモデルM1を構築しやすい、という利点がある。つまり、学習装置2が生成(更新)する学習済みモデルM1は、任意の計測装置1の設置された環境を考慮しておらず、汎用的なモデルである。このため、学習装置2から取得した学習済みモデルM1を用いた場合、計測装置1の設置された環境に応じた判定を行えない可能性がある。
【0072】
一方、本実施形態では、計測装置1は、計測部11の計測結果、つまり計測装置1の設置された環境に固有の情報を学習用データとして、学習済みモデルM1の再学習を行うことが可能である。このため、本実施形態では、計測装置1の設置された環境に応じた判定を行えるようになることが期待できる。
【0073】
(4)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つにすぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、計測装置1と同様の機能は、計測方法の他に、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0074】
一態様に係る計測方法は、計測ステップST1と、判定ステップST3と、再学習ステップST5と、を有する。計測ステップST1は、資源の使用状況を計測するステップである。判定ステップST3は、資源の使用状況を学習用データとして所定の項目を出力するように機械学習された学習済みモデルM1を用いて、計測ステップST1の計測結果に基づく所定の項目を判定するステップである。再学習ステップST5は、計測ステップST1の計測結果を用いて、学習済みモデルM1の再学習を行うステップである。一態様に係る(コンピュータ)プログラムは、1以上のプロセッサに、上記の計測方法を実行させる。
【0075】
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0076】
本開示における計測装置1は、それぞれコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における計測装置1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0077】
上述の実施形態では、判定部13は、第1学習済みモデルM11及び第2学習済みモデルM12のいずれか一方を採用しているが、この態様に限らない。例えば、判定部13は、第1学習済みモデルM11及び第2学習済みモデルM12の両方を採用してもよい。
【0078】
すなわち、図5に示すように、第1判定部131と、第2判定部132と、を備えていてもよい。第1判定部131は、上述の実施形態の判定部13と同じであって、第1学習済みモデルM11を用いて、計測部11の計測結果に基づく所定の項目を判定する。第2判定部132は、判定部13である第1判定部131とは別の判定部であって、第2学習済みモデルM12を用いて、計測部11の計測結果に基づく所定の項目を判定する。そして、第2学習済みモデルM12は、第1学習済みモデルM11とは別のモデルである。
【0079】
この態様では、計測装置1は、学習装置2から取得した最新の学習済みモデル(第2学習済みモデルM12)を用いて所定の項目を判定することが可能である。また、この態様では、計測装置1は、計測装置1自体が備える第1学習済みモデルM11も有している。このため、この態様では、仮に第2学習済みモデルM12の判定精度が第1学習済みモデルM11よりも劣化した場合でも、第1学習済みモデルM11を用いて所定の項目を判定することが可能である。
【0080】
上述の実施形態では、計測装置1は、従前に学習済みモデルM1が存在しない状態においては、外部の学習装置2から取得した学習済みモデルM1を用いて判定を行っているが、この態様に限らない。例えば、計測装置1は、処理能力によっては、計測部11の計測結果(つまり、資源の使用状況)を学習用データとして学習済みモデルM1を自ら生成し、生成した学習済みモデルM1を用いて判定を行ってもよい。
【0081】
上述の実施形態において、再学習部15は、特定期間に依らず、学習済みモデルM1の再学習を行ってもよい。例えば、再学習部15は、記憶部14に学習用データが所定数蓄積された時点から、学習済みモデルM1の再学習を開始してもよい。
【0082】
上述の実施形態では、計測部11は、資源として電力、水、及びガスを計測しているが、この態様に限らない。例えば、計測部11は、電力、水、及びガスのうち少なくとも1つの資源を計測する態様であってもよい。
【0083】
上述の実施形態において、判定部13の判定結果の正誤は、ユーザの入力によって評価するだけでなく、例えば計測装置1とは異なる他システムが評価してもよい。
【0084】
上述の実施形態において、学習済みモデルM1は、教師あり学習により生成されるだけでなく、教師なし学習により生成されてもよい。その他、学習済みモデルM1は、強化学習により生成されてもよい。
【0085】
上述の実施形態では、出力部122は、計測部11の計測結果のうち、間引き条件に従って間引いたデータを学習装置2に出力しているが、計測部11の計測結果の全てを学習装置2に出力してもよい。
【0086】
上述の実施形態において、計測装置1は、分電盤5の内部に収容されていなくてもよい。例えば、計測装置1は、分電盤5の外側において、施設F1の内壁又は外壁に取り付けられることで設置されてもよい。つまり、計測装置1は、分電盤5とは別に、壁に取り付け可能な構造を有していてもよい。一例として、計測装置1は、筐体を施設F1の内壁又は外壁にねじ止めすることにより、施設F1の内壁又は外壁に取り付けられる。
【0087】
上述の実施形態において、計測部11は、資源としての電気の使用状況として、機器3に印加される電圧の値、又は電圧の特徴量を計測してもよい。電圧の特徴量は、一例として、電圧の周波数又は位相等である。ここでいう「電圧の周波数」には、電圧の高調波成分等が含まれ得る。
【0088】
上述の実施形態において、取得部121は、学習装置2にて学習済みモデルM1の再学習が行われた場合に、再学習後の学習済みモデルM1のパラメータのみを取得するのではなく、再学習後の学習済みモデルM1自体を取得してもよい。
【0089】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係る計測装置(1)は、計測部(11)と、判定部(13)と、再学習部(15)と、を備える。計測部(11)は、資源の使用状況を計測する。判定部(13)は、資源の使用状況を学習用データとして所定の項目を出力するように機械学習された学習済みモデル(M1)を用いて、計測部(11)の計測結果に基づく所定の項目を判定する。再学習部(15)は、計測部(11)の計測結果を用いて、学習済みモデル(M1)の再学習を行う。
【0090】
この態様によれば、判定精度、及び判定可能な項目の多様さの向上を図りやすい、という利点がある。また、この態様によれば、計測装置(1)は、計測装置(1)の設置された環境に固有の学習済みモデル(M1)を構築しやすい、という利点がある。
【0091】
第2の態様に係る計測装置(1)は、第1の態様において、取得部(121)を更に備える。取得部(121)は、学習済みモデル(M1)である第1学習済みモデル(M11)と同一又は別の第2学習済みモデル(M12)を、外部の学習装置(2)から取得する。判定部(13)は、第1学習済みモデル(M11)と、取得部(121)にて取得した第2学習済みモデル(M12)と、のいずれか一方を採用する。
【0092】
この態様によれば、学習済みモデル(M1)の選択の自由度が向上する、という利点がある。
【0093】
第3の態様に係る計測装置(1)は、第2の態様において、第2判定部(132)を更に備える。第2判定部(132)は、判定部(13)である第1判定部(131)とは別の判定部であって、第2学習済みモデル(M12)を用いて、計測部(11)の計測結果に基づく所定の項目を判定する。第2学習済みモデル(M12)は、第1学習済みモデル(M11)とは別のモデルである。
【0094】
この態様によれば、学習装置(2)から取得した最新の学習済みモデル(第2学習済みモデル(M12))を用いることができる、という利点がある。
【0095】
第4の態様に係る計測装置(1)では、第1~第3のいずれかの態様において、再学習部(15)は、計測部(11)の計測結果のうち間引き条件に従って間引いたデータを用いて、学習済みモデル(M1)の再学習を行う。
【0096】
この態様によれば、再学習に不必要なデータを間引くことができるので、計測部(11)の計測結果を全て再学習に用いる場合と比較して、学習済みモデル(M1)の最適化を図りやすい、という利点がある。
【0097】
第5の態様に係る計測装置(1)では、第4の態様において、間引き条件は、ユーザからの入力に関する条件を含む。
【0098】
この態様によれば、計測部(11)の計測結果のうち、ユーザが学習済みモデル(M1)に反映させたいデータに限定して再学習することができるので、学習済みモデル(M1)の最適化を図りやすい、という利点がある。
【0099】
第6の態様に係る計測装置(1)では、第4又は第5の態様において、間引き条件は、判定部(13)の判定結果の正誤に関する条件を含む。
【0100】
この態様によれば、計測部(11)の計測結果のうち、判定部(13)の判定結果が実際に正しかったデータ又は誤っていたデータに限定して再学習することができるので、学習済みモデル(M1)の最適化を図りやすい、という利点がある。
【0101】
第7の態様に係る計測装置(1)は、第1~第6のいずれかの態様において、計測部(11)の計測結果を外部の学習装置(2)に出力する出力部(122)を更に備える。
【0102】
この態様によれば、計測部(11)の計測結果を学習装置(2)での学習済みモデル(M1)の再学習に役立てることができる、という利点がある。
【0103】
第8の態様に係る計測装置(1)では、第7の態様において、出力部(122)は、計測部(11)の計測結果のうち、計測部(11)が計測した時間に関する時間情報は学習装置(2)に出力しない。
【0104】
この態様によれば、ユーザの行動を想起させるプライベートな情報を公に晒さなくて済む、という利点がある。
【0105】
第9の態様に係る計測装置(1)では、第8の態様において、時間情報は、再学習部(15)での学習済みモデル(M1)の再学習に用いられる。
【0106】
この態様によれば、ユーザに適した学習済みモデル(M1)の最適化を図りやすい、という利点がある。
【0107】
第10の態様に係る計測装置(1)では、第1~第9のいずれかの態様において、再学習部(15)は、あらかじめ規定された特定期間にて学習済みモデル(M1)の再学習を行う。
【0108】
この態様によれば、処理負荷に余裕がある期間に学習済みモデル(M1)の再学習を行えるので、処理能力が比較的低い装置を採用することが可能になる、という利点がある。
【0109】
第11の態様に係る計測装置(1)では、第1~第10のいずれかの態様において、所定の項目は、資源を消費する機器(3)に関する機器情報と、ユーザに関するユーザ情報と、の少なくとも一方を含む。
【0110】
この態様によれば、機器(3)の状態及びユーザの状態の少なくとも一方を把握しやすくなる、という利点がある。
【0111】
第12の態様に係るシステム(100)は、第1~第11のいずれかの態様の計測装置(1)と、学習装置(2)と、を備える。学習装置(2)は、資源の使用状況を学習用データとして、第1~第11のいずれかの態様の計測装置(1)の判定部(13)にて用いられる学習済みモデル(M1)を機械学習により生成する。
【0112】
この態様によれば、判定精度、及び判定可能な項目の多様さの向上を図りやすい、という利点がある。また、この態様によれば、計測装置(1)は、計測装置(1)の設置された環境に固有の学習済みモデル(M1)を構築しやすい、という利点がある。
【0113】
第13の態様に係る計測方法は、計測ステップ(ST1)と、判定ステップ(ST3)と、再学習ステップ(ST5)と、を有する。計測ステップ(ST1)は、資源の使用状況を計測するステップである。判定ステップ(ST3)は、資源の使用状況を学習用データとして所定の項目を出力するように機械学習された学習済みモデル(M1)を用いて、計測ステップ(ST1)の計測結果に基づく所定の項目を判定するステップである。再学習ステップ(ST5)は、計測ステップ(ST1)の計測結果を用いて、学習済みモデル(M1)の再学習を行うステップである。
【0114】
この態様によれば、判定精度、及び判定可能な項目の多様さの向上を図りやすい、という利点がある。また、この態様によれば、計測方法の実行主体は、計測方法の実行主体の設置された環境に固有の学習済みモデル(M1)を構築しやすい、という利点がある。
【0115】
第14の態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、第13の態様の計測方法を実行させる。
【0116】
この態様によれば、判定精度、及び判定可能な項目の多様さの向上を図りやすい、という利点がある。また、この態様によれば、計測方法の実行主体は、計測方法の実行主体の設置された環境に固有の学習済みモデル(M1)を構築しやすい、という利点がある。
【0117】
第2~第11の態様に係る構成については、計測装置(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0118】
100 システム
1 計測装置
11 計測部
121 取得部
122 出力部
13 判定部
131 第1判定部
132 第2判定部
15 再学習部
2 学習装置
3 機器
M1 学習済みモデル
M11 第1学習済みモデル
M12 第2学習済みモデル
ST1 計測ステップ
ST3 判定ステップ
ST5 再学習ステップ
図1
図2
図3
図4
図5