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特許7462262コンクリート構造体の塗布材およびその塗布方法
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  • 特許-コンクリート構造体の塗布材およびその塗布方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】コンクリート構造体の塗布材およびその塗布方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/00 20060101AFI20240329BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240329BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240329BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240329BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240329BHJP
   E01D 22/00 20060101ALN20240329BHJP
   E21D 11/38 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
C09D183/00
C09D183/04
C09D7/61
E04G23/02 A
C09D5/00 D
E01D22/00 A
E01D22/00 B
E21D11/38 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020049415
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147520
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513220562
【氏名又は名称】首都高技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510273798
【氏名又は名称】首都高メンテナンス神奈川株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597068179
【氏名又は名称】株式会社シクソン
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 尚昭
(72)【発明者】
【氏名】吉川 直志
(72)【発明者】
【氏名】永田 佳文
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】小山 健司
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠
(72)【発明者】
【氏名】豊田 紘治
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-174083(JP,A)
【文献】特公昭49-030257(JP,B1)
【文献】特開昭62-256876(JP,A)
【文献】特開平09-241530(JP,A)
【文献】特開2019-162618(JP,A)
【文献】特開昭63-207868(JP,A)
【文献】特開昭61-188472(JP,A)
【文献】特開2001-207108(JP,A)
【文献】特開2018-040178(JP,A)
【文献】特開2003-155426(JP,A)
【文献】特開2006-183446(JP,A)
【文献】特開2010-001707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
E04G 1/00-27/00
E01D 1/00-24/00
E21D 11/00-11/40
C04B 41/00-41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不燃性を有するアルコキシシランまたはシロキサンを主成分とするシランカップリング剤である湿気で硬化する液剤と、粒度0.05mm~0.2mmの珪砂とが、少なくとも含有されていることを特徴とするコンクリート構造体のモルタル状下地材
【請求項2】
液剤に無機顔料が含有されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造体のモルタル状下地材
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のコンクリート構造体のモルタル状下地材と表面材との間に介在される網状体の接着剤として不燃性および硬化性を有するアルコキシシランまたはシロキサンを主成分とするシランカップリング剤である湿気で硬化する液剤と珪砂とが、少なくとも含有されている塗布材を塗布することを特徴とするコンクリート構造体塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルや橋桁、各種建築物等のコンクリート構造体の塗布材およびその塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや橋桁、各種建築物等のコンクリート構造体は、経年劣化等によるコンクリートや仕上げ材の剥落事故を防止するため、現在、5年に一度の目視検査が義務化されている。
目視検査によって発見されたひび割れ部分や膨張部分、さらには剥落部分等の補修対象部分にモルタル系の塗布材を塗布して補修している。
モルタル系の塗布材は、通常のモルタル、ポリマーモルタル、樹脂系モルタルが一般的的である。
【0003】
前述の各種コンクリート構造体においては、コンクリート片や仕上げ材片が小さなものであっても、剥落が生じた場合には、大事故になりかねないという懸念がある。
このため、より強い補修構造として、特許文献1に記載されているように、網状体を補修対象部分に貼り付けた構造が提案されている。
この構造は、補修対象部分の表面にアクリル樹脂を下地材として下塗りし、下塗りされたアクリル樹脂に網状体を貼り付け、さらに、網状体の表面にアクリル樹脂を表面材として上塗りしたものであり、このアクリル樹脂を接着剤として、網状体を補修対象部分に貼り付けることで、強固な補修構造を構築している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4127551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術の補修構造における塗布材は、可燃性のアクリル樹脂を用いているため、トンネル内で自動車事故による火災が発生したときに、トンネルの表面に構築された補修構造のアクリル層に燃え移り、火災の被害が拡大してしまうというおそれがある。
【0006】
このため、アクリル樹脂に換えて、前述の通常のモルタル、ポリマーモルタル、樹脂系モルタルを使用する
しかしながら、通常のモルタルは、砂とセメントを水で混合してなるものであるため不燃性を有するものであるが、接着力や耐久性が低いという問題がある。
また、ポリマーモルタルは、含有されるポリマーに有機材(合成樹脂系材やゴム系材)が用いられているため、火災時に有機材に着火して燃えてしまうという問題がある。
また、樹脂系モルタルは、接着力が高く、難燃性を有しているが、含まれる有機系材料によって火災時に可燃性ガスが発生するという問題がある。
また、通常のモルタル・ポリマーモルタルなどは、単独では、水・エアーの浸入を防ぐような塗膜を構築できないため、さらに、水・エアーの浸入を防止するための塗料を塗布する必要があり、補修構造を構築する作業の効率性が低くなるという問題がある。
これらの問題は、補修対象部分に、通常のモルタル、ポリマーモルタル、樹脂系モルタルを直接塗布して補修構造を構築する場合でも同じく生じるものである。
また、前述した各種塗布材は、補修材以外にも、コンクリート構造体の表面の保護材として使用するが、通常のモルタル、ポリマーモルタル、樹脂系モルタルを用いることによって、同じ問題が生じるものでる。
【0007】
このことから、高い不燃性および耐久性を有すると共に、延焼や可燃性ガスが生じず、かつコンクリート構造体を長期的に保護でき、さらに、塗布作業の効率性に優れたコンクリート構造体の塗布材が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するため本発明のコンクリート構造体の塗布材は、不燃性および硬化性を有する液剤と、無機細粒材とが、少なくとも含有されている。
【0009】
液剤に無機顔料が含有されていることが好ましい。
【0010】
液剤がシランカップリング剤であることが好ましい。
【0011】
シランカップリング剤が、アルコキシシランまたはシロキサンを主成分とするものであることが好ましい。
【0012】
また、無機細粒材は、人造珪砂であることが好ましい。
【0013】
前述のコンクリート構造体の塗布材を用いた塗布方法であって、塗布材を下地材および表面材として塗布することを特徴とする。
【0014】
塗布材を、下地材と表面材との間に介在される網状体の接着剤として塗布することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)~(d)は、本発明に係る塗布材を用いた第1実施形態の塗布方法の工程図である。
図2】本発明に係る塗布材を用いて補修されたコンクリート構造体の補修構造を示す概略図である。
図3】本発明に係る塗布材を用いた第2実施形態の塗布方法を示す図である。
図4】本発明に係る塗布材を用いて保護されたコンクリート構造体の保護構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態の塗布材を説明する。
塗布材は、不燃性および硬化性を有する液剤に無機細粒材を混合し、これら液剤と無機細粒材とを撹拌したものである。
液剤は、必要に応じて、無機顔料を混合することで、塗布後のコンクリート構造体の表面に彩色を施すことができる。
不燃性および硬化性ならびに透過性を有する塗布材は、アルコキシシランまたはシロキサンを主成分とするシランカップリング剤である。
シランカップリング剤は、エポキシ系接着剤と同等以上の接着性を有するものであり、さらに、不燃性および空気に触れることで硬化する性質を有し、しかも、水や空気の浸透防止機能を有した粘性液であり、硬化後には、コンクリート構造体の表面に強固に接着されると共に、不燃となり、かつ水や空気の浸透が防止された塗膜となる。
シランカップリング剤は、無機細粒材を混合して撹拌したとき、コンクリート構造体の表面に塗りやすく、たれが生じいにくい粘性を有するモルタル状の塗布材となる。
なお、塗布材は、シランカップリング剤に限らず、不燃性および空気に触れることで硬化する性質を有するものであればよい。
【0017】
無機細粒材は、砂や珪砂を使用することができるが、好ましくは、人造の珪砂(人造珪砂)である。
人造珪砂は、珪石を粉砕・篩分け・分級・磨鉱・磁選の工程により、粒径が均一に加工されたものであり、硅酸分が高いため、耐熱性、耐火度が高く、耐磨耗、耐衝撃に強いという性質を有している。
また、人造珪砂は、3号硅砂から9号硅砂まで、粒ごとの規格によって分けられているため、目的に応じた号数の珪砂を安定して入手できる。
コンクリート構造体の塗布材に使用される人造珪砂の粒度は、0.05mm~0.2mm程度の粒が好ましく、人造珪砂においては、8号珪砂に相当する粒である。
この粒の人造珪砂を用いた塗布材は、塗りやすく、しかもたれが生じにくく、塗布作業を効率よく行えるモルタル状のものとなる。
そして、コンクリート構造体の表面への塗布時に、表面が滑らかな均一塗膜を形成することができ、硬化後には強固な補修構造および保護構造を形成することができる。
【0018】
従来のように、下地材にポリマーモルタルを使用し、表面材に樹脂系モルタルを使用する場合、下地材が乾くまで表面材の樹脂系モルタルを上塗りできず、しかも、表面材が乾くまで水・エアーの浸入を防止するための塗料を塗ることができない。
ポリマーモルタルおよび樹脂系モルタルが乾燥するまで、3~7日間程度かかるため、作業日数がかかってしまう。
本実施形態の塗布材は、コンクリート構造体の補修部分の下地材および表面材ならびに下地材と表面材の間に介在される網状体の接着剤として使用できるので、それぞれの塗布作業について乾燥を待たずに、下地材および表面材ならびに下地材と表面材の間に介在される網状体の接着剤の塗布作業を行うことができる。
また、水や空気の浸透が防止された塗膜となるので、水・エアーの浸入を防止するための塗料の塗布作業が不要である。
したがって、すべて無機材料を用いた塗布材は、高い不燃性および耐久性を有し、可燃性ガスが生じず、しかも水や空気の浸透が防止された補修構造および保護構造を効率的に構築できる。
【0019】
コンクリート構造体の表面の補修対象部分をケレンなどの表面処理を行うと、補修対象部分を含む周辺のコンクリート表面が荒れて凹凸が発生する。
本実施形態の塗布材は、網状体の使用・不使用にかかわらず、凹凸を埋めてコンクリート表面を滑らかな塗装面にする下地材として使用することができる。
また、塗布材は、補修の必要がない新規のコンクリート構造体の表面を滑らかな塗装面にする下地材として使用することができる。
塗布材を下地材として使用して滑らかな塗装面を下地層とし、この下地層に下地材に用いた塗布材に無機顔料で着色された塗布材を表面材として上塗りすることで、表面層を仕上げることができる。
塗布材の無機顔料の色は、周りのコンクリート色に合わせることで、補修された部位を目立たせないようにすることができるし、異なる色にしてカラフルな外観にすることもでき、いずれも外観の意匠性の向上が期待できる。
網状体を使用しない場合、塗布材を直接表面材として塗布してもよい。
【0020】
次に、前述の塗布材を用いた塗布方法の第1実施形態を、図1(a)~(d)を参照しながら説明する。
本実施形態の塗布方法は、クラック(補修対象部分)100が生じたコンクリート構造体1の補修構造3に用いられる方法である。
【0021】
ここで用いられる塗布材は、下地層1Aおよび網状体を接着する接着層1Bならびに表面層1Cを構成するものである。
下地層1Aおよび接着層1Bを構成する塗布材Aは、シランカップリング剤と人造珪砂とを混合撹拌したものが用いられる。
表面層1Cを構成する塗布材Bは、シランカップリング剤および人造珪砂に加えて無機顔料を混合撹拌したものが用いられる。
【0022】
塗布材A、Bは、現場において、シランカップリング剤に人造珪砂を混合撹拌してモルタル状に調整し、さらに無機顔料を混合撹拌して着色されたモルタル状に調整することができる。
また、塗布材Aは、工場でシランカップリング剤に人造珪砂を混合撹拌してモルタル状に調整して密閉容器に入れ、この密閉容器を現場にもっていけば、現場での塗布材Aの調整を省くことができる。
また、塗布材Bは、工場でシランカップリング剤に人造珪砂および無機顔料を混合撹拌してモルタル状に調整して密閉容器に入れ、この密閉容器を現場にもっていけば、現場での塗布材Bの調整を省くことができる。
塗布材A、Bは、湿気反応で硬化するため、密閉することで反応せず、長期にわたって保存することができる。
また、塗布材Bは、密閉容器に入れた塗布材Aに、現場において無機顔料を混合撹拌して着色されたモルタル状に調整してもよい。
【0023】
ここで用いられる網状体2は、細いガラス繊維またはカーボン繊維、あるいは金属繊維を多数束ねてなる糸を織ることで網状に形成されたもの、あるいは、ガラス繊維シートまたはカーボン繊維シート、あるいは薄い金属板を成形型によって網状に成形された成型品を使用することができる。
【0024】
第1工程(下塗り工程(図1(a)):コンクリート構造体1の表面10のクラック100部分を被覆するように、前述した本発明のモルタル状に調整された塗布材Aを下地材として塗布して下地層1Aを形成する。
塗布材Aは、コテを用いて薄塗りし、表面10のクラック100を含む凹凸等を無くして滑らかな面にすることで、プライマーとして機能させている。
また、塗布される塗布材Aの一部は、クラック100に入り込み、クラック100を埋めるようにされる。
【0025】
第2工程(網状体被着工程(図1(b)):下地層1Aが乾燥して硬化する前に、網状体2を下地層1Aの表面に被着する。
このとき、網状体2が折れ曲がったりにしわが生じたりしないように被着するが、前述の下塗り工程によって、下地層1Aを平滑にしているので、網状体2の被着作業が行いやすくなっている。
【0026】
第3工程(網状体保持工程(図1(c)): 網状体2の被着状態を確実なものとするために、下地層1Aが乾燥して硬化する前に、網状体2の表面側からコテでもって塗布材Aを塗布する。
これによって、塗布材Aを網状体2の網目を貫通させると共に、網状体2を囲むように含侵させることで、含侵した塗布材A部分において接着層1Bが形成され、この接着層1Bによって、網状体2を所定形状で保持することができる。
接着層1Bの塗布材Aは、その塗布後の硬化時において下地層1Aの塗布材Aと一体化されて強固に保持される。
なお、下地層1Aの厚みによっては、この工程は省略することができる。
【0027】
第4工程:(上塗り工程(図1(d)):接着層1Bが乾燥して硬化する前に、接着層1Bの表面に着色された塗布材Bをコテでもって塗布する。
これによって、着色された表面層1Cを構成することができる。
この上塗り工程では、塗布材Bが接着層1Bの塗布材Aと混合されないように塗布して、着色状態が損なわれないようにする。
表面層1Cの塗布材Bは、その塗布後の硬化時において接着層1Bの塗布材Aと一体化される。
表面層1Cは、無機顔料が混合されない塗布材Aを用いてもよく、コンクリート構造体1の状況に合わせて、塗布材Aを用いるか、塗布材Bを用いるかを決定すればよい。
【0028】
このような補修方法によって、図2に示すように、外側からコンクリート構造体1の表面10のクラック100が隠されていると共に、着色が施された補修構造3を構築することができる。
着色された表面層1Cは、無機顔料を用いているので、補修構造3における不燃性を損ねることがなく、コンクリート構造体1の表面10を着色塗料を用いずに着色することができる。
また、下地層1Aと表面層1Cとの間に網状体2が介在されているので、コンクリート構造体1を補強することができると共に、剥落しようとするコンクリート片を網状体2で保持することができ、補修構造3をより強固に構築することができる。
したがって、コンクリート片や仕上げ材片の剥落を防止した上で、高い不燃性および耐久性を有し、可燃性ガスが生じず、しかも水や空気の浸透が防止された補修構造3を効率的に構築できる。
これによって、トンネル内で自動車事故による火災が発生した場合でも、延焼や有毒ガスの発生を防ぐことができ、長期間にわたってコンクリート構造体1を保護することができる。
【0029】
本発明における塗布材Aは、コンクリート構造体1の表面を補修するものに限らず、樹脂アンカーにおける樹脂に換えて用いることで、アンカーの保持機能および高い耐久性を備えることができる。
これによって、コンクリート構造体に設けられた天井や壁面のアンカーによる保持機能を長期にわたって保持することができる。
【0030】
以下、追記内容
次に、第1実施形態と同じ塗布材A、Bを用いた塗布方法の第2実施形態を、図3(a)~(b)を参照しながら説明する。
本実施形態の塗布方法は、新規に形成されたコンクリート構造体1または補修対象部分が存在しないコンクリート構造体1を保護する保護構造4に用いられる方法である。
【0031】
第1工程(下塗り工程(図3(a)):コンクリート構造体1の表面10被覆するように、モルタル状に調整された塗布材Aを下地材として塗布して下地層1Aを形成する。
塗布材Aは、コテを用いて薄塗りし、表面10の細かい凹凸等を無くして滑らかな面にすることで、プライマーとして機能させている。
【0032】
第2工程:(上塗り工程(図3(b)):下地層1Aが乾燥して硬化する前に、下地層1Aの表面に着色された塗布材Bをコテでもって塗布する。
これによって、着色された表面層1Cを構成することができる。
この上塗り工程では、塗布材Bが下地層1Aの塗布材Aと混合されないように塗布して、着色状態が損なわれないようにする。
表面層1Cの塗布材Bは、その塗布後の硬化時において接着層1Bの塗布材Aと一体化される。
表面層1Cは、無機顔料が混合されない塗布材Aを用いてもよく、コンクリート構造体1の状況に合わせて、塗布材Aを用いるか、塗布材Bを用いるかを決定すればよい。
【0033】
このような塗布方法によって、図4に示すように、コンクリート構造体1の表面10に着色が施された保護構造4を構築することができる。
着色された表面層1Cは、無機顔料を用いているので、補修構造3における不燃性を損ねることはなく、コンクリート構造体1の表面10を着色塗料を用いずに着色することができる。
したがって、コンクリート片や仕上げ材片の剥落を防止した上で、高い不燃性および耐久性を有し、可燃性ガスが生じず、しかも水や空気の浸透が防止された保護構造3を効率的に構築できる。
これによって、トンネル内で自動車事故による火災が発生した場合でも、延焼や有毒ガスの発生を防ぐことができ、長期間にわたってコンクリート構造体1を保護することができる。
【0034】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1:コンクリート構造体
2:網状体
3:補修構造
4:保護構造
A:塗布材
B:塗布材
1A:下地層
1B:接着層
1C:表面層
図1
図2
図3
図4