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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】自動プランクトン検出方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/17 20170101AFI20240329BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A01K61/17
G01N21/17 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020064380
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021158995
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年10月15日~18日開催のシーテック2019にて、口頭発表および展示場にて公開
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、広島県AI/IoT実証プラットフォーム事業実施業務(スマートかき養殖IoTプラットフォーム事業)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507030863
【氏名又は名称】株式会社セシルリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳川 敏治
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭史
(72)【発明者】
【氏名】林 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和広
(72)【発明者】
【氏名】林 義雄
(72)【発明者】
【氏名】神谷 享子
(72)【発明者】
【氏名】山下 桂司
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/133187(WO,A1)
【文献】特開平08-271447(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0126505(US,A1)
【文献】特表2016-506726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0356725(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110501278(CN,A)
【文献】国際公開第2019/176048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00-61/65
A01K 61/80-63/10
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
bounding boxを中心にした第1の所定のサイズの四角形の画像を学習データとして、一般物体検出アルゴリズムに学習させる第1の工程と、
容器内のプランクトンを撮像した画像を、第2の所定のサイズの四角形に分割する第2の工程と、
分割して得られた各の前記第2の所定のサイズの四角形内に前記プランクトンが存在するか、前記一般物体検出アルゴリズムに判断させる第3の工程と、
を行い、
前記第2の工程において、隣り合う前記四角形の重なりの幅が、前記プランクトンの最大幅に基づいて定められ、
前記四角形の重なりの前記幅が、前記プランクトンの前記最大幅の0.8倍以上1.2倍以下である、容器中の特定のプランクトンを検出する方法。
【請求項2】
前記プランクトンが、固着生物の浮遊幼生または付着期幼生である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プランクトンが、カキの付着期幼生である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
一般物体検出アルゴリズムがR-CNN系モデル、SSD、またはYOLO系モデルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記四角形の重なりの前記幅が、前記プランクトンの前記最大幅の0.9倍以上1.1倍以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記四角形の重なりの前記幅が、前記プランクトンの前記最大幅の0.95倍以上1.05倍以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
コンピュータに、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法を実行させるプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを、コンピュータによって読み取り可能に格納した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動プランクトン検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の牡蠣の養殖方法では、牡蠣の付着期幼生が浮遊し始める夏の初め頃に、ホタテの貝殻等の付着基盤を海中に吊るし,幼生を基盤に付着させることにより種苗を確保している。従って、牡蠣の幼生が豊富な場所が特定できれば、効率よく牡蠣の種苗を確保し,養殖を開始することが可能になる。しかし、実際には、自治体の担当者や漁業者自身が、顕微鏡の拡大観察により計数しているのが現状であり、この方法では検出サンプル点数に限界がある。特に自然条件により付着期幼生の発生量が少ない採苗不良の年においては,検出サンプル点数を増やすことが課題であり,付着期幼生検出手法の効率化が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、一般物体検出アルゴリズムを用いた新規な自動プランクトン検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施態様は、コンピュータが、bounding boxを中心にした第1の所定のサイズの四角形の画像を学習データとして、一般物体検出アルゴリズムに学習させる第1の工程と、前記容器内の前記プランクトンを撮像した画像を、第2の所定のサイズの四角形に分割する第2の工程と、分割して得られた各の前記第2の所定のサイズの四角形内に前記プランクトンが存在するか、前記一般物体検出アルゴリズムに判断させる第3の工程と、を実行し、前記第2の工程において、隣り合う前記四角形の重なりの幅が、前記プランクトンの最大幅に基づいて定められている、容器中の特定のプランクトンを検出する方法である。前記プランクトンが、固着生物の浮遊幼生または付着期幼生であってもよい。前記プランクトンが、カキの眼点を有する付着期幼生であってもよい。一般物体検出アルゴリズムがR-CNN系モデル、SSD、またはYOLO系モデルであってもよい。前記四角形の重なりの前記幅が、前記プランクトンの前記最大幅の0.8倍以上1.2倍以下、0.9倍以上1.1倍以下、または0.95倍以上1.05倍以下であってもよい。
【0005】
本発明の他の実施態様は、コンピュータに、上記いずれかの方法を実行させるプログラムである。このプログラムを、コンピュータによって読み取り可能に格納した記憶媒体も本発明の一実施態様である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、一般物体検出アルゴリズムを用いた新規な自動プランクトン検出方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態にかかるプランクトンの分布情報を管理するためのシステムの模式図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるユーザアプリのインターフェイスである。
図3】本発明の一実施形態にかかるユーザアプリの、第1の端末におけるインターフェイスである。
図4】本発明の一実施形態にかかるユーザアプリの、第2の端末におけるインターフェイス(エリアモード)である。
図5】本発明の一実施形態にかかるユーザアプリの、第2の端末におけるインターフェイス(ポイントモード)である。
図6】実施例で用いた画像の一例を示す。
図7】実施例で用いた画像に対し、目視でマガキ幼生を同定した時の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0009】
==プランクトンの分布情報を管理するためのサーバ==
本開示のサーバ11は、第1のユーザ端末21と、第2のユーザ端末31と、に通信可能に接続している、1または複数種類のプランクトンの分布情報を管理するためのサーバ11であって、第1のユーザ端末21から、プランクトンの画像を受信するための第1の受信手段12と、画像からプランクトンを検出し、その数を解析するための解析手段14と、解析した結果を、その結果を示すIDに結び付けて記憶するための記憶手段16と、解析した結果を、IDとともに第2の端末に送信するための送信手段13と、を備えるサーバ11である。IDは、第1のユーザ端末21からプランクトンの画像とともに受信してもよく、第1のユーザ端末21からプランクトンの画像を受信後、サーバ11がその画像に付与してもよい。
【0010】
プランクトンの種類は特に限定されず、動物プランクトンであっても、植物プランクトンであってもよいが、付着期幼生であることが好ましく、例えば、カキ、フジツボ、イガイ、カメノテ、ヒドラなどが例示できるが、これらに限定されない。種類数も、1種類であっても複数種類であってもよい。
【0011】
このサーバ11は、第1のユーザ端末21と通信可能に接続しており、第1のユーザ端末21から、プランクトンの画像を受信するための受信手段12を備える。プランクトンの画像とともに、プランクトンが採取された時間情報やプランクトンが採取された位置の位置情報を受信してもよい。サーバ11は、複数の第1のユーザ端末21と接続していてもよく、第1のユーザ端末21が様々な場所からデータを送ることによって、さまざまな地点のプランクトンの生息数を知ることができるようになる。
【0012】
プランクトンの画像を受信したサーバ11は、解析手段14によって、その画像を解析し、視野にプランクトンが何個体いるかを計算する。この解析のためのプログラムは特に限定されないが、後述するプログラムを用いるのが好ましい。
【0013】
得られたプランクトン数は、画像に付与されたIDと結び付けて、記憶手段16に記憶する。記憶手段16は特に限定されないが、不揮発性記憶装置が好ましく、ROM、フラッシュメモリ、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ、フロッピーディスク、磁気テープなど)、光ディスクなどが例示できる。
【0014】
このサーバ11は、第2のユーザ端末31と通信可能に接続しており、第2のユーザ端末31に対して、解析した結果をIDと結び付けて送信するための送信手段13を備える。解析した結果と同時に、第1のユーザ端末21から送信されたプランクトンの画像、プランクトンが採取された時間情報、および/またはプランクトンが採取された位置の位置情報などを送信してもよい。このサーバ11は、受信手段12によって第2のユーザ端末31から解析結果の要求を受信し、それに従って、解析した結果を第2の端末31に送信してもよい。その際、位置情報や時間情報は、それらに対する要求を受信してそれに従って送信してもよく、自動的に、IDに紐づけられた位置情報や時間情報を送信してもよい。
【0015】
第1のユーザ端末21から受信する時間情報の内容は特に限定されず、日だけであっても、日時であってもよい。
【0016】
第1のユーザ端末21から受信する位置情報の内容は特に限定されず、緯度と経度のような数字であっても、地図上の位置であってもよい。地図上の位置の場合、第1のユーザ端末21とサーバ11が同じ地図情報を共有しており、その中の位置を特定した情報であってもよく、位置情報に、地図とその中の位置を示す情報が含まれていてもよい。
【0017】
第2のユーザ端末31に送信する時間情報の内容は特に限定されず、日だけであっても、日時であってもよい。
【0018】
第2のユーザ端末31に送信する位置情報の内容は特に限定されず、緯度と経度のような数字であっても、地図上の位置であってもよい。地図上の位置の場合、第2のユーザ端末31とサーバ11が同じ地図情報を共有しており、その中の位置を特定した情報であってもよく、位置情報に、地図とその中の位置を示す情報が含まれていてもよい。
【0019】
第1のユーザ端末21から受信する位置情報と第2のユーザ端末31に送信する位置情報とは、同じデータであっても異なるデータであってもよいが、例えば、第1のユーザ端末21から緯度と経度を受信して、第2のユーザ端末31に地図上の位置で送信する場合など、受信する位置情報と送信する位置情報に含まれるデータが異なる場合、サーバ11は、受信する位置情報を送信する位置情報に変換する変換手段15(例えば、コンバータなど)を有する。
【0020】
本開示のサーバは、クラウドサーバであってもよい。
【0021】
==第1のユーザ端末21==
第1のユーザ端末21は、上述したサーバ11と通信可能に接続しており、プランクトンの画像を撮像するための撮像装置22と、プランクトンの画像を前記サーバ11に送信するための送信手段23と、を備える。送信手段23は、プランクトンの画像とともに、プランクトンが採取された時間情報やプランクトンが採取された位置の位置情報を送信してもよい。時間情報や位置情報の詳細は、上述したとおりである。
【0022】
撮像装置22は、カメラやビデオであってもよい。撮像装置22は、サーバ11が、プランクトンを特定できるレベルの解像度を持つ必要がある。レンズ口径が小さい場合など、ズーム機能を有することが好ましい。ズーム機能の機構は特に限定されないが、デジタルズームより光学ズームであるほうが好ましい。
【0023】
第1のユーザ端末21は、コンピュータでもよいが、野外での使用を考えると、携帯電話機能を有するタブレットやスマートフォンが好ましく、携帯電話でもよい。
【0024】
第1のユーザ端末21がサーバ11に送信する位置情報は、ユーザが入力しても、第1のユーザ端末21がGPS機能やWi-Fi受信手段などの位置特定手段を有し、自動でユーザ端末の現在地を特定してもよい。ユーザが入力したり、位置特定手段が特定したりして生じるオリジナルの位置情報と、第1のユーザ端末21は、オリジナルの位置情報をサーバ11に送る位置情報に変換する変換手段(例えば、コンバータなど)を有し、サーバ11に送る位置情報を、オリジナルの位置情報と異なるデータにしてもよい。
【0025】
なお、サーバ11に送信した画像、時間情報、位置情報は、関連付けて、第1のユーザ端末21が有する記憶装置24に保存してもよい、
==第2のユーザ端末31==
第2のユーザ端末31は、サーバ11がプランクトンの画像を解析して得られた結果をIDとともに受信するための受信手段32と、解析した結果をIDとともに表示するための表示装置33と、を備える。受信手段32は、プランクトンの画像を解析して得られた結果とともに、プランクトンの画像、プランクトンが採取された時間情報、および/またはプランクトンが採取された位置の位置情報などを前記IDとともに受信してもよい。時間情報や位置情報の詳細は、上述したとおりである。
【0026】
第2のユーザ端末31は、携帯電話でもよいが、表示の際、さまざまな表示方法を行うことを考えると、コンピュータ機能を有するタブレットやスマートフォンが好ましいが、PCでもよい。第2のユーザ端末31は第1のユーザ端末21と同一の機器であっても異なる機器であってもよい。
【0027】
第2のユーザ端末31がサーバ11から受信する位置情報は、第1のユーザ端末21がサーバ11に送信した第1の位置情報であっても、サーバ11が第1の位置情報から変換した第2の位置情報であってもかまわない。第2のユーザ端末31が第1の位置情報を受信するとき、表示手段33で第1の位置情報を表示してもよく、変換装置35(コンバータなど)で第1の位置情報を第2の位置情報に変換して、表示手段33で第1の位置情報を表示してもよい。第2のユーザ端末31が第2の位置情報を受信するとき、表示手段33で第2の位置情報を表示してもよく、変換装置35で第2の位置情報を第3の位置情報に変換して、表示手段33で第3の位置情報を表示してもよい。
【0028】
例えば、第2のユーザ端末31がサーバ11から緯度と経度の情報を得て、表示手段33で、IDとともに解析した結果と緯度と経度の数値を表示してもよい。また、緯度と経度の数値を地図上の位置に変換し、表示手段33で、解析した結果と地図上の位置を表示してもよい。あるいは、緯度と経度の数値を地図上の位置に変換し、表示手段33で、解析した結果と緯度と経度の数値を表示し、緯度と経度の数値をクリックすると、地図上の位置が現れるようにしてもよい。逆に、まずプランクトンを採取した位置が地図上で示され、地図上での位置をクリックすると、その緯度と経度が現れるようにしてもよい。表示手段33における表示方法は特に限定されず、ID、解析結果、プランクトンを採取した時刻、プランクトンを採取した位置の緯度と経路などを表にして表してもよい。
【0029】
なお、第2のユーザ端末31がサーバ11から受信したプランクトンの画像、解析結果、時間情報、および/または位置情報は、関連付けて、第2のユーザ端末31が有する記憶装置34に保存してもよい。
【0030】
==プランクトンの分布情報を管理するためのシステム==
本実施形態にかかるシステムは、プランクトンの分布情報を管理するためのシステムであって、サーバと、第1のユーザ端末と、第2のユーザ端末を含む。サーバと、第1のユーザ端末と、第2のユーザ端末の個々の詳細は、上述したとおりである。
【0031】
このシステムは、複数の第1のユーザ端末と複数の第2のユーザ端末とが、サーバに通信可能に接続していてもよい。それによって、複数の第1のユーザ端末からアップロードされた、複数の地点におけるプランクトンの分布情報を一度に管理することができるようになり、複数の第2のユーザ端末の条件を満たせば、どこからでもプランクトンの分布情報をダウンロードできるようになる。
【0032】
==プランクトンの分布情報の利用==
プランクトンの分布情報を利用するための方法の一例として、図1のBのシステムを用いた方法を以下に詳細に解説する。なお、本実施形態では、第1のユーザ端末21の機能と第2のユーザ端末31の機能とは、一つのユーザアプリで実行されるものとする。そのインターフェイスは、例えば、図2に示すようなもので、情報提供と情報取得を選択できるようになっている。
【0033】
まず、プランクトンの分布情報を提供するユーザは、第1のユーザ端末21を用い、撮像装置22で、プランクトンの画像を撮像する。そして、ユーザアプリを用いて、「採取地点データ取得クラウドへのデータ送信」ボタンを押し、情報提供操作を行う。図3にユーザアプリの次画面を示す。画面上で、「採取地点データ取得」ボタンを押すと、GPS機能によって、採取地点の緯度及び経度を測定され、自動で座標が入力される。同時に、時計機能によって、操作時の日時が入力される。「画像登録」ボタンを押して、「参照」ボタンを押して、画像を選択し、「登録」ボタンを押して、画像を登録する。最後に、「登録済」の地点IDの左にあるチェックボックスにチェックを入れ,画面下の「クラウドへ送信」ボタンを押して、サーバにこれらの情報をアップロードする。
【0034】
サーバが、第1のユーザ端末21から、プランクトンの画像を受信すると、画像からプランクトン検出プログラムを用い、プランクトンを検出し、その数を測定する。その数と、第1のユーザ端末21から受信した時間情報と位置情報を、送信されたIDに紐づけて、記憶手段16に記憶する。
【0035】
プランクトンの分布情報を求めるユーザは、第2のユーザ端末31で、ユーザアプリを用いて、図2の「検出結果表示」ボタンを押し、情報要求操作を行う。ユーザアプリは、サーバに記憶されたプランクトンの数と時間情報と位置情報を得て、データを解析し、以下に説明するような表示でデータを提供する。次画面でプランクトンの分布情報を得たい地域を選択し、その中で特定のエリアの情報を得たい場合、エリアモードボタンを押し、情報を得たい日時のボタンを押す(図4A)と、情報の存在する地点が、点で表示され、選択できるエリアが表示される(図4B)。情報を得たいエリアをクリックすると、そのエリアで入力された情報がリストとして表示される(図4C)。過去の積算情報を得たい場合、「1週間前まで積算」ボタンを押すと、1週間前までのデータを重ねてみることができる(図4D)。特定の場所の情報が得たければ、ポイントモードボタンを押し(図5A)、情報のある点をクリックする(図5B)。すると、その位置で入力された情報が得られる(図5C)。過去の積算情報を得たい場合、「1週間前まで積算」ボタンを押すと、1週間前までのデータを重ねてみることができる(図5D)。
【0036】
==プランクトン検出方法==
本実施形態にかかるプランクトン検出方法は、コンピュータが、物体の位置を表すbounding box (bbox)を中心にした第1の所定のサイズの四角形を切り取った画像を学習データとして、一般物体検出アルゴリズムに学習させる第1の工程と、容器内のプランクトンを撮像した画像を、第2の所定のサイズの四角形に分割する第2の工程と、分割して得られた各の第2の所定のサイズの四角形内にプランクトンが存在するか判断させる第3の工程と、を行う方法であって、第2の工程において、隣り合う四角形の重なりの幅が、プランクトンの最大幅とほぼ同じである、容器中の特定のプランクトンを検出する方法である。
【0037】
第1の工程において、物体の位置を表すbounding box (bbox)を中心にした第1の所定のサイズの四角形を切り取った画像を作製する。ここで、プランクトンを正確に検出するため、所定のサイズは、プランクトン全体が入る大きさ以上であって,一般物体検出アルゴリズムが処理できる大きさ以下であればよい。第1の所定のサイズの四角形は、好ましくはプランクトンの最大幅の1.3倍より大きい正方形、より好ましくは、1.5倍より大きい正方形、さらに好ましくは2.0倍より大きい正方形であり、好ましくはプランクトンの最大幅の6.0倍より小さい正方形、より好ましくは、4.5倍より小さい正方形、さらに好ましくは4.0倍より小さい正方形である。あるいは、短辺がプランクトンの最大幅の1.0倍より大きい長方形、好ましくは、1.3倍より大きい長方形、より好ましくは、1.5倍より大きい長方形、さらに好ましくは2.0倍より大きい長方形であり、好ましくは長辺がプランクトンの最大幅の6.0倍より小さい長方形、より好ましくは、4.5倍より小さい長方形、さらに好ましくは4.0倍より小さい長方形である。本明細書で、プランクトンの最大幅というのは、画像上でプランクトンを横切る直線をひいたときに、プランクトンともっとも重なりが長くなる場合の、プランクトンと直線が重なっている部分の線分の長さを言う。また、プランクトンの最大高さというのは、プランクトンの最大幅となる線分に垂直な直線のうち、プランクトンともっとも重なりが長くなる場合の、重なっている部分の線分の長さを言う。
【0038】
検出対象とするプランクトンの学習に使用するbounding box (bbox)の数は特に限定されないが、1000~2000個が好ましく、2000~3000個がより好ましく、3000個~4000個がさらに好ましい。画像には、プランクトンの向きがランダムに映っているのが好ましい。
【0039】
プランクトンの種類は特に限定されず、動物プランクトンであっても、植物プランクトンであってもよいが、固着生物の浮遊幼生または付着期幼生であることが好ましく、例えば、カキ、フジツボ、イガイ、カメノテ、ヒドラなどが例示できるが、これらに限定されない。種類数も、1種類であっても複数種類であってもよい。ただし、眼点があるほうが、一般物体検出アルゴリズムによる検出力が高まるので好ましい。
【0040】
用いる一般物体検出アルゴリズムは特に限定されないが、R-CNN系モデル(例えば、Fast R-CNN、Faster R-CNN、Mask R-CNN)、SSD、またはYOLO系モデル(例えば、YOLO v1~v3)が好ましい。
【0041】
第2の工程において、測定する容器内のプランクトンを撮像した画像を、第2の所定のサイズの四角形に分割する。四角形の形状は特に限定されないが、対辺が平行であればよく、平行四辺形やひし形でもよいが、長方形がより好ましく、正方形がさらに好ましい。各辺の長さは、プランクトンの最大幅の1.0倍より大きいのが好ましく、1.5倍より大きいのがより好ましく、2.0倍より大きいのがさらに好ましく、最大幅の12.0倍より小さいのが好ましく、9.0倍より小さいのがより好ましく、6.0倍より小さいのがさらに好ましい。そして、四角形を平行な辺にそってずらして並べることが好ましく、4辺のいずれにおいても、隣り合う四角形の重なりの幅が、プランクトンの最大幅に基づいて定められ、最大幅とほぼ同じであるのが好ましい。それによって、すべてのプランクトンについてプランクトン全体がどこかの四角形に入るようになる。隣り合う四角形の重なりの幅が、プランクトンの最大幅より小さいと、どの四角形にも全体が入らないプランクトンが増え、プランクトンの最大幅より大きいと、複数の四角形に入るプランクトンが増える。ここで、隣り合う四角形の重なりの幅とは、四角形を平行な辺にそってずらしたときの、ずらした長さのことを言うものとする。具体的には、この隣り合う四角形の重なりの幅がプランクトンの最大幅の0.8~1.2倍であることが好ましく、0.9~1.1倍であることがより好ましく、0.95~1.05倍であることがさらに好ましい。
【0042】
第3の工程において、分割して得られた各の第2の所定のサイズの四角形内にプランクトンが存在するか、先に学習させた一般物体検出アルゴリズムに判断させる。こうして、プランクトンの数をコンピュータに測定させることができるようになる。複数種類のプランクトンが存在するときは、各々のプランクトンの数を測定できる。
【実施例
【0043】
江田島周辺海域で、プランクトンネットで採取し、水道水を加えて活動を停止させ、沈降する順に分画を回収した。マガキ幼生は他のプランクトンに比べると重いため、早く沈降した分画のプランクトンを回収することによって、ほぼマガキ幼生だけを採取した。シャーレに入れて、デジタルカメラを用い、眼点が目で認識できる程度に光学ズームで拡大して写真撮影を行った。図6にその一例を示す。
【0044】
2992×2992px(7.6×7.6mm)の大きさの160画像について、図7に示すように、(0)最大幅が270μm以上で眼点のあるマガキ幼生(1)最大幅が270μm以上で眼点なし(2)最大幅が210~270μm以上、の3つのグループで目視で確認したところ、(0)1561個体(1)1432個体(2)2536個体特定できた。この画像ファイルを15°ずつずらし、さらに反転することによって、画像数を7680画像とし、各画像ファイルから、bboxを基点に300×300pxの画像を切り取ることによって、264640枚の画像ファイルを作製した。SSD300に対し、これを学習データとして、32枚ずつ24000回入力するのを1サイクルとし、3サイクル入力して学習させた。学習時間は、GPUを用いて、約6.6日であった。
【0045】
学習に使用していない同じ大きさの画像に対し、300×300pxの正方形を150pxずつずらして切り取り、1画像につき、361枚の画像にして各画像ごとに最大幅が270μm以上で眼点のあるマガキ幼生を検出させた(閾値はConfidence:0.6,non_maximum_suppression:0.4)ところ、 precisionは0.97、recallは0.96となった。なお、precision およびrecallは、両方とも物体検出の評価指標であって、precisionは、最大幅が270μm以上で眼点のあるマガキ幼生と検出した幼生のうち、正しかったものの割合のことであり、recallは、画像に写る270μm以上で眼点のあるマガキ幼生のうち,正しく検出されるものの割合のことである。
【0046】
このように、本開示の方法によって、十分な精度を保って目的のプランクトンの数を測定できる。
【符号の説明】
【0047】
11 サーバ
12 受信手段
13 送信手段
14 解析手段
15 変換手段
16 記憶手段
21 第1のユーザ端末
22 撮像手段
23 送信手段
24 記憶手段
31 第2のユーザ端末
32 受信手段
33 表示手段
34 記6手段
35 変換手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7