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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】超音波流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20220101AFI20240329BHJP
【FI】
G01F1/66 101
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020101308
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021196208
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】三好 麻子
(72)【発明者】
【氏名】松田 正誉
(72)【発明者】
【氏名】中林 裕治
(72)【発明者】
【氏名】名和 基之
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2000/055581(WO,A1)
【文献】特開2003-065817(JP,A)
【文献】特開平11-101674(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0016555(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66-1/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形断面の計測流路と、
前記計測流路内を超音波が斜めに横断するように前記矩形断面の短辺側に配置した一対の超音波送受波器と、
前記一対の超音波送受波器間の超音波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、
前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間から流量を演算する演算部と、
前記一対の超音波送受波器と前記計測流路との間に形成されるキャビティと前記計測流路の前記キャビティ近傍とを分割するように前記計測流路の長辺と平行に配置した分割板と、
を備えた超音波流量計。
【請求項2】
前記分割板により区分される分割流路の間隔を代表長さとし、その代表長さと、計測される最大流速とより定められるレイノルズ数が層流になるように前記間隔を設定した請求項1に記載の超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波流量計における計測誤差の低減に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波流量計では、超音波送受信器を取り付ける為の取付穴において、超音波送受信器の前方に形成されるキャビティに発生する渦の影響による計測誤差を低減する工夫が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された超音波流量計の超音波送受波器の取付穴の構成を示している。
【0004】
図8(a)に示すように、この流量計100では、計測流路101に配置された超音波送受信器102、103が取付穴114、115に斜めに取り付けられることで、超音波送受信器102、103の前方には、流路との間にキャビティ104、105が形成されている。そして、キャビティ104、105の内部が分割部材106、および分割部材107により分割されている。
【0005】
すなわち、キャビティ104は、分割通路104a、分割通路104b、分割通路104cに分割され、また、キャビティ105は、分割通路105a、分割通路105b、分割通路105cに分割されている。この場合、分割部材106、107は、キャビティ104、105の内部において流れを遮る方向に形成されている。
【0006】
このような構成において、計測流路101を通過する流れFの流速によりキャビティ104、105の内部には、キャビティ全域にわたる大きい渦が発生しようとするが、分割部材106、107により、キャビティ104、105の内部が小さく分割され、渦が発生しにくくなることと、分割通路104a、104b、104c、105a、105b、105cの流入抑制体としての作用により、流体の流入も低減させることができ、これらにより、誤差の発生を少なくする構成となっている。
【0007】
また、分割部材を用いた構成の別な実施例として、図8(b)のような構成も提示されている。
【0008】
この図8(b)は、計測流路面111(図8(a)の計測流路面108に相当する)の開口穴を流路内の垂直方向から見た図を示したものであり、この場合、キャビティ109は、分割部材110により、分割通路109a、109b、109cの3つの分割流路に分割されている。この場合、分割部材110は、キャビティ109の内部において流れと同じ方向に形成されている。ここでは、超音波送受波器を取り付けたキャビティの内の一方のキャビティ109のみを示したが、他方も同様である。
【0009】
このような構成においても、キャビティの内部が小さく分割され、分割流路の流入抑制体としての作用により、流体の流れを低減させることができ、これにより、キャビティに発生する渦の影響による計測誤差の発生を少なくする構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-101542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の構成では、キャビティに発生する渦の影響による計測誤差の発生を少なくするための工夫が、キャビティ内部に限られたものであり、キャビティ内部の流れに大きな影響を及ぼすキャビティ近傍の流れまで考慮に入れた対策とはなっていないという課題を有するものであった。
【0012】
本発明では、キャビティ近傍の流れも考慮し、流速の大小に関わらず、キャビティ内部の流れ状態を一定にして、補正を容易にし、誤差低減を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の超音波流量計は、矩形断面の計測流路と、前記計測流路内を超音波が斜めに横断するように前記矩形断面の短辺側に配置した一対の超音波送受波器と、前記一対の超音波送受波器間の超音波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間から流量を演算する演算部と、前記一対の超音波送受波器と前記計測流路との間に形成されるキャビティと前記計測流路の前記キャビティ近傍とを分割するように前記計測流路の長辺と平行に配置した分割板と、を備えたことにより、流速の大小に関わらずキャビティ内の流れ状態を一定にし、補正をしやすくして計測精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の流量計測装置は、一対の超音波送受波器と計測流路との間に形成されるキャビティ前方の計測流路部において、計測流路長辺と平行に配置した分割板の一部がキャビティ内部を分割するように延長し、流速の大小に関わらずキャビティ内の流れ状態を一定にすることにより、補正を容易にすると共に、補正量を少なくして、キャビティにおける誤差を少なくすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1における超音波流量計の計測部の概略構成図
図2】(a)本発明の実施の形態1における超音波流量計のブロック図、(b)(a)のCC’断面図
図3】(a)キャビティ8近傍の部分斜視図、(b)(a)のB矢視図
図4】本発明の実施の形態1におけるAA’断面図で分割板がない場合の誤差発生説明図
図5】本発明の実施の形態1において、分割板がない場合のキャビティ近傍の流れ状態図
図6】本発明の他の実施の形態を示す図
図7】本発明の他の実施の形態を示す図
図8】従来の超音波流量計における構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、矩形断面の計測流路と、前記計測流路内を超音波が斜めに横断するように前記矩形断面の短辺側に配置した一対の超音波送受波器と、前記一対の超音波送受波器間の超音波の伝搬時間を計測する伝搬時間計測部と、前記伝搬時間計測部で計測された伝搬時間から流量を演算する演算部と、前記一対の超音波送受波器と前記計測流路との間に形成されるキャビティと前記計測流路の前記キャビティ近傍とを分割するように前記計測流路の長辺と平行に配置した分割板と、を備えたことにより、流速の大小に関わらずキャビティ内の流れ状態を一定にし、補正をしやすくして計測精度の向上を図ることができる。
【0017】
第2の発明は、特に請求項1の発明において、前記分割板により区分される分割流路の間隔を代表長さとし、その代表長さと、計測される最大流速とより定められるレイノルズ数が層流になるように前記間隔を設定したことにより、補正量を少なくして計測精度の向上を図ることができる。
【0018】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0019】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0020】
(実施の形態1)
実施の形態1について、図1図3を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態1における超音波流量計の計測部の概略構成を示す斜視図である。
【0022】
図1において、超音波流量計の計測部1は矩形断面の計測流路2と超音波送受波器保持部3より構成されている。計測流路2は、矩形断面の短辺側の上面2aと下面2b、および矩形断面の長辺側の長辺側の側面2cと側面2dにより形成されている。
【0023】
図2(a)は、超音波流量計14のブロック図であり、計測部1は図1のAA’断面を示し、図2(b)は図2(a)のCC’断面図である。
【0024】
計測流路2の上部に取り付けられた超音波送受波器保持部3には、超音波送受波器の取付け穴4,5が形成されており、それぞれの取付け穴4,5に超音波送受波器6,7が取付けられている。超音波送受波器6,7は、計測流路2の流路方向に対して所定の角度で超音波を送信するように斜めに取り付けられている為、超音波送受波器6,7の超音波信号の送信方向には、計測流路2との間にキャビティ8、9が形成される。キャビティ8、9近傍の計測流路2、即ち上面2a側には、計測流路2を分割する分割板10、11が設けられている。分割板10は、分割板延伸部10a、10b、分割板11は、分割板延伸部11a(図示せず)、11bを有しており、それぞれ、キャビティ8、9の内部を分割するように形成されている。この分割板10、11の高さmは、キャビティ8の開口幅wと同程度の大きさを有している。また、分割板10,11の流れ方向における長さは、キャビティ8の上流端近傍から、キャビティ9の下流端近傍までとなっている。
【0025】
超音波送受波器6,7は、一方が送信側に、他方が受信側に設定され、送信側に設定された超音波送受波器が駆動信号で駆動されて超音波信号を送信し、受信側に設定された超音波送受波器が超音波信号を受信する。そして、超音波送受波器6,7を送信側と受信側に交互に切替えることで、超音波は、超音波送受波器6から、超音波送受波器7へ、もしくは、その反対方向へ超音波伝搬路UP1~UP2の経路(一点鎖線で示す)を経て送受信される。このとき、計測流路2の下面2bは、超音波の反射面として作用する。
【0026】
受信側に設定された超音波送受波器6,7に生じた超音波の受信信号は、処理手段12にて処理されて超音波の伝搬時間が求められ、その後、演算手段13にて流速、または、流量を求めるための演算処理が行われる。
【0027】
計測部1、処理手段12、および演算手段13により、超音波流量計14が構成される。
【0028】
なお、処理手段12では、超音波送受波器6,7の送受信の切替、駆動信号の出力、受信信号の増幅などの超音波の伝搬時間計測の為に必要な処理を行っている。
【0029】
図3(a)は、図2におけるキャビティ8近傍の部分斜視図であり、図3(b)は、そのB矢視図である。
【0030】
キャビティ8近傍の計測流路2には、分割板10、11が配置されている。
【0031】
図3(a)では、図の煩雑さをさけるため、分割板10、11の厚みを省略して点線で示しているが、実際は、図3(b)に示す様に、厚みtを有している。
【0032】
また、図3(b)に示す様に、計測流路2は、分割板10、11により分割され分割流路15、16、17を形成している。この例では、これらの分割流路15、16、17の間隔h1、h2、h3は、均等に構成されている。これらの値をhとした場合、hの寸法は、hを代表長さとし、この超音波流量計における最大流速をVmaxとした場合、最大流速におけるレイノルズ数が、約2300以下つまり、層流となるように設定されている。
【0033】
ここには記載しないが、図2におけるキャビティ9近傍も、同様の構成となっている。
【0034】
なお、本実施の形態では、分割流路15、16、17の間隔h1、h2、h3を均等に構成したが、不均等であっても、そのうちの最大の寸法を代表長さとし、この流量計における最大流速をVmaxとした場合、最大流速におけるレイノルズ数が、約2300以下、つまり、層流となるように設定されていても良いものである。
【0035】
このような構成において、動作説明をするにあたり、まず、キャビティ8、9近傍に分割板10、11が無い場合、キャビティにおける流れ状況や、キャビティにおいて発生する誤差について、図4、および図5を用いて説明する。
【0036】
図4は、図2と同様の計測流路で、キャビティ8、9に分割板10、11がないものである。この図における符号は、図2と同様であり説明は省略する。
【0037】
まず、図4を用いて、流量計測の方法と、キャビティでの誤差発生要因について説明する。
【0038】
計測流路2を流れる流体の流速をV、流体中の音速をC、流体の流れる方向と超音波が下面2bで反射するまでの超音波伝搬方向とのなす角度をθとする。
【0039】
また、超音波送受波器6と超音波送受波器7との間で伝搬する超音波の超音波伝搬路が図3の一点鎖線で示すUP1,UP2であり、この超音波の超音波伝搬路UP1,UP2の各ポイントを超音波送受波器6送信面P1、キャビティ8と計測流路2の境界をP2,反射点をP3、キャビティ9と計測流路2の境界をP4、超音波送受波器7の送信面P5と定義すると、超音波伝搬路UP1,UP2は、P1~P2~P3~P4~P5に分解できる。
【0040】
ここで、P1~P2は、キャビティ8内の超音波伝搬路であり、その長さをL1とする。次にP2~P3は、キャビティ8を出てから計測流路2の下面2bで反射するまでの超
音波伝搬路であり、その長さをL2とする。
【0041】
次に、P3~P4は、超音波が下面2bで反射したのち、キャビティ9に到達するまでの超音波伝搬路であり、その長さをL3とする。その後の、P4~P5は、キャビティ9内の超音波伝搬路であり、その長さをL4とする。これらの超音波伝搬路を経て、超音波は、超音波送受波器7に到達する。
【0042】
いま、超音波が超音波送受波器6を出てから、超音波送受波器7に到達するまでのP1~P5経路における全長をLとすると、Lは、下式のようになる。
【0043】
L=L1+L2+L3+L4 (1)
このとき、超音波送受波器6から出た超音波が、もう一方の超音波送受波器7に到達するまでの伝搬時間t1は、下式にて示される。
【0044】
t1=L/(C+Vcosθ) (2)
次に超音波送受波器7から出た超音波が、もう一方の超音波送受波器6に到達するまでの伝搬時間t2は、下式にて示される。
【0045】
t2=L/(C-Vcosθ) (3)
式(2)と式(3)から流体の音速Cを消去すると、下式が得られる。
【0046】
V=(L/2cosθ)(1/t1-1/t2) (4)
式(4)にて分るように、Lとθが既知であれば、処理手段12にて計測された伝搬時間t1、およびt2を用いて、流速Vが求められる。
【0047】
次に、下式に示すようにこの流速Vに計測流路2の断面積Sを乗じて、計測流路2を流れる流量qを算出する。
【0048】
q=kxVxS (5)
ここに、kは、上記のようにして求めた流速Vが、種々の誤差を含んでいることを考慮して上記のVから正しい流速に換算するための補正係数である。
【0049】
例えば、上記の(2)式、および(3)式で求めた伝搬時間t1、t2は、それぞれ、キャビティ8、および9における伝搬時間が含まれているため、誤差を含んだものとなっている。
【0050】
式(1)を式(2)、(3)に代入して、整理すると、次式のようになる。
【0051】
t1=((L2+L3)/(C+Vcosθ))+(L1/(C+V1cosθ))
+(L2/(C+V2cosθ)) (6)
t2=((L2+L3)/(C-Vcosθ))+(L1/(C-V1cosθ))
+(L2/(C-V2cosθ)) (7)
ここで、V1、およびV2は、それぞれ、キャビティ8,9内の流速をあらわす。
【0052】
式(6)、(7)において、第2項は、キャビティ8内における伝搬時間、第3項は、キャビティ9内における伝搬時間を意味している。
【0053】
これらの式から分かるように、キャビティ8,9において、流れが発生していなければV1=V2=0となるため、単にキャビティ8、9を超音波が通過する経過時間だけをt1、t2から差し引けば、正確な伝搬時間が求められる。
【0054】
しかしながら、キャビティ8、9内に流れが発生しておれば、その流れ状況に応じた伝搬時間が生じる為、キャビティ8、9内の伝搬時間を求めることができなければ、誤差を生じることになる。
【0055】
次に、図5を用いて、キャビティ8,9に分割板10、11が無い場合の、キャビティ8、9近傍の流れ状態について説明する。
【0056】
図5は、図4において、キャビティ8,9近傍の流れ状態を示した図である。
【0057】
図5(a)は、流速が小さい場合で、図5(b)、図5(c)の順に流速が大きくなっていくときの状態を示している。
【0058】
図5(a)に示すように流速が小さいときは、流体の粘性力が慣性力より大きいため、キャビティ8、9近傍の流れは、キャビティ8、9の内部に流れ込んでから出てくる流れSa1、Sa2となる。
【0059】
図5(c)の流速が大きいときは、流体の粘性力よりも慣性力の方が大きいため、流れはキャビティ8,9内に流れ込むことはなく、流れSc1、Sc2となり、キャビティ8、9内には、閉じた渦Vc1、Vc2が形成される。
【0060】
図5(b)は、図5(a)と図5(c)の中間の流速の時であり、上流側は、キャビティ8に流れ込む流れSb1が生じるが、下流側では、流れSb2により、渦Vb2が発生する。
【0061】
先の図4を用いた説明で、キャビティ8、9内部における流れの影響により、伝搬時間に誤差が発生することを説明したが、この図5に照らし合わせて考えると、流速が小さいとき、すなわち図5(a)の状態では、その誤差は、キャビティ8,9内への流れ込みに起因するものである。また、流速が大きいとき、すなわち図5(c)の状態では、その誤差はキャビティ8,9内の渦に起因するものである。この2つの場合を比較すればわかるように、キャビティ内の流れ状態は、流速により全く違ったものとなっており、誤差を補正するための方法が異なるものとなる。つまり、流速に応じて補正の方法を使い分ける必要がある。
【0062】
さらに、中間流速(b)の場合は、上流側のキャビティ8と、下流側のキャビティ9との流れ状態が異なるため、誤差補正の取扱いは、一層複雑なものとなる。
【0063】
次に、本実施の形態における動作を図3及び図5を用いて説明する。
【0064】
図3(b)において、計測流路2内の流速が小さい場合は、分割板10、11により分割された分割流路15、16、17を通過する流速をF1,F2,F3とすると、これらは図5(a)と同様の流れとなり、すべて、キャビティ8内に流れ込む状態の流れとなる。
【0065】
次に、流速が増加した場合、もし、分割板10、11が無ければ、図5の(b)、(c)に示す流れの状態となり、キャビティ8内の流れは、流れ込みの状態から、渦形成へと推移するのであるが、本実施の形態の場合は、分割板10、11があるため、そのようにはならない。
【0066】
すなわち、分割板10、11により区切られた分割流路15、16、17の流れは、そ
のレイノルズ数が、流速の最大値に対して、層流となるように定められているため、流れは渦を生じることはなく、最大流速に至るまで図5(a)に示すような流れ込みの状態となる。
【0067】
このことは、キャビティ8内に生じる流れによる誤差を補正するに当たり、流速に応じて、流れ状態が変わるということがないため、補正処理が容易になるものである。
【0068】
また、キャビティ8内の流れを層流にすることにより、流れ込み自体に対する抵抗も増すため、流れ込みの量も少なくなり、誤差を生じても、その誤差量を少なくすることが出来る。
【0069】
上記は、キャビティ8について述べたが、図3に示していない、下流側のキャビティ9についても、同様の事が言える。
【0070】
以上の様に、本実施の形態によると、流速の大小に関わらずキャビティ8、9内の流れ状態を一定にすることにより、補正を容易にすると共に、補正量を少なくして、キャビティ8、9における誤差を少なくすることができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、分割板10の高さmは、キャビティ8の開口幅wと同程度の大きさとしたが、mは、それ以上の大きさであればよく、図2に記載した計測流路2の高さМまで延びていても良いものである。
【0072】
また、分割板10、11の流れ方向における長さとして、キャビティ8の上流端近傍から、キャビティ9の下流端近傍までとしたが、それ以上の流さであればよく、図2に記載した計測流路2の入口から出口までの長さまで延びていても良いものである。
【0073】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。
【0074】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0075】
図6(a)は、多層流路に分割板を設けた場合の計測部の断面図、図6(b)は、DD’断面図を示す。なお、実施の形態1と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0076】
図6において、計測部21の構成は、実施の形態1と同様であるが、計測流路22は、2つの仕切り板23,24により、3つの流路25a、25b、25cの多層に分割されている。更に、流路25bは、キャビティ9の近傍においては、分割板10,11で分割されている。
【0077】
本実施の形態1では、計測流路2が1層の場合を示したが、図6に示す様な多層流路であっても、各層において、実施の形態1に記載したのと同じ条件で分割板を設ければ、同様の効果を発揮することができる。
【0078】
また、分割板の数が2枚の場合を示したが、これに限るものではなく、1枚であっても、また、3枚以上であっても、分割される分割流路の間隔が上記に記載したのと同じ条件であれば、同様の効果が発揮されるものである。
【0079】
図7は、超音波送受波器が計測流路に対応配置された計測部を示す断面図である。なお、実施の形態1と同一符号のものは同一構造を有し、説明は省略する。
【0080】
図7において、計測部31は、矩形断面の計測流路32の対向する面には、超音波送受波器保持部33に保持された超音波送受波器6と超音波送受波器保持部37に保持された超音波送受波器7が対向するように配置されている。
【0081】
実施の形態1では、一対の超音波送受波器が計測流路の同じ面に配置されており、一方の超音波送受波器から送信された超音波は対向する面に反射して他方の超音波送受波器に受信される所謂Vパス方式であったが、本実施の形態では、一対の超音波送受波器が計測流路の対向する面に配置され、超音波は直接送受信される所謂Zパス方式である。
【0082】
そして、計測流路32のキャビティ8近傍、及びキャビティ8内は2つの分割板35で分割され、キャビティ9近傍、及びキャビティ9内は2つの分割板36で分割されている。
【0083】
従って、実施の形態1に記載したのと同じ条件で分割板を設ければ、同様の効果を発揮することができる
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように、本発明の超音波流量計は、キャビティ前方の計測流路に配置した分割板の一部が、キャビティ内部も分割することにより、流速の大小に関わらずキャビティ内の流れ状態を一定にし、補正を容易にして、キャビティにおける誤差を少なくすることができるため、家庭用、および業務用のガスメータや、工業用流量計など、計測精度を必要とする流量計としての応用が可能となる。
【符号の説明】
【0085】
2、22、32 計測流路
2a 上面(短辺)
2c 側面(長辺)
6、7 超音波送受波器
8、9 キャビティ
10、11、35、36 分割板
10a、10b、11a、11b 分割板延伸部
12 処理手段(伝搬時間計測部)
13 演算手段
14 超音波流量計
15、16、17 分割流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8