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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/8998 20060101AFI20240329BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20240329BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240329BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240329BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240329BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61K36/8998
A23L33/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K47/36
A61P3/02
A61P3/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2016243330
(22)【出願日】2016-12-15
(65)【公開番号】P2018095609
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-12-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】友澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬
(72)【発明者】
【氏名】山下 繭香
(72)【発明者】
【氏名】森川 琢海
(72)【発明者】
【氏名】北村 整一
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【合議体】
【審判長】光本 美奈子
【審判官】山村 祥子
【審判官】冨永 みどり
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-086217(JP,A)
【文献】特開2016-140325(JP,A)
【文献】特開2012-239403(JP,A)
【文献】藤谷 順子 ほか、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌、その他、2013年,第17巻, 第3号、p.255-267
【文献】宇山 理沙 ほか、とろみ液の官能評価による分類―粘度およびLine Spread Test値の範囲設定―、日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌、その他、2014年,第18巻,第1号、p.13-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K36/00
A61K47/00
A61K9/00
A23L33/00
J-STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦若葉末と、デンプン及びその誘導体又はキサンタンガムからなる経口用組成物であって、固形分12質量%となるように水に分散又は溶解させた液に調整したときのLine Spread Testの値が25mm以上60mm以下である組成物であり、前記Line Spread TestがLSTリングを用いて以下の条件で測定されるものである経口組成物。
(測定条件)
(1)水平な場所に測定板を置き、測定用リング(サラヤ株式会社:簡単とろみ測定版(ラインスプレッドテスト)セット、内直径3cm、容量20mLを、その中心軸の位置が測定板の中心と一致するように測定板上に置く。
(2)100mLビーカーを使って検体20mLをリングの中に流し込む。
(3)流し込まれた検体がリングの中で検体が均等に広がった後、リングを垂直に持ち上げる。持ち上げた後1分後に検体が広がった距離(検体の存在部位のうち測定板の中心から最も遠い箇所と測定板の中心との距離)を測定し、これをLSTの値とする。LSTの値は、上記の方法にて10回測定した値の平均値とする。
ただし、
組成物が30メッシュを通過する粉末状又は顆粒状の場合には、分散又は溶解の手段として水を用い、室温(1~30℃)にて分解又は溶解処理を行ったものを当該分散又は溶解処理から60分間以内にLSTの試験に供するものとし、
組成物が、30メッシュを通過しない固体状の場合は、これを粉砕して30メッシュを通過し、300メッシュを通過しない粉末状とした後に、分散又は溶解の手段として水を用い、室温(1~30℃)にて分解又は溶解処理を行ったものを当該分散又は溶解処理から60分間以内にLSTの試験に供するものとし、
組成物が、シロップ状、液状、ゲル状、ゼリー状、ペースト状、クリーム状のいずれかの場合には、乾燥処理を施して固体状とし、乾式粉砕を施し、30メッシュを通過し、300メッシュを通過しない粉末状とした後に、分散又は溶解の手段として水を用い、室温(1~30℃)にて分解又は溶解処理を行ったものを当該分散又は溶解処理から60分間以内にLSTの試験に供するものとし、
組成物が、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状又はカプレット状である場合には、カプセルから取り出した内容物について、必要に応じて乾燥ないし粉砕処理を行うか、行わずに水に分散又は溶解したものをLSTの試験に供するものとする。
また、固形分とは、固体物を水に分散又は溶解する場合はその固体物を湿度(RH)40~60%の状態で30℃以上50℃以下で24時間乾燥した後の質量である。
【請求項2】
抗肥満用、栄養改善用、又は野菜不足改善用である請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑葉加工物及び高分子多糖類を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緑葉加工物を含む組成物は、青汁等の健康食品として知られている。近年の健康志向や食生活の乱れにより、野菜を摂取する重要性が注目されており、緑葉加工物を含む組成物は、手軽に一定量の野菜を摂取できる手段の一つとして知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-155437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、緑葉加工物を含有する組成物を含めて健康食品に対する需要者のニーズは近年多様化しており、更なる効果の向上を求める要求、特に健康維持の観点における更なる効果の向上を求める要求がますます強くなっている。
しかしながら、従来の緑葉加工物を含む組成物は、この要求に十分にこたえるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は、緑葉加工物を含む組成物について、健康維持に関して更なる作用強化が得られる構成について鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、緑葉加工物に加えて高分子多糖類を含有し、特定濃度の水分散液としたときの流動性が特定範囲である組成物は栄養状態改善又は抗肥満に優れた効果を奏するのみならず、その両方を同時に満足することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は上記の知見に基づくものであり、緑葉加工物と高分子多糖類とを含有する経口用組成物であって、10質量%以上15質量%以下の濃度の水分散又は溶解液に調整したときのLine Spread Test(以下、「LST」ともいう)の値が25mm以上60mm以下である組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、栄養状態改善又は抗肥満効果に優れるのみならず、その両方を同時に満足する組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の組成物について、その好ましい実施形態に基づいて説明する。本実施形態の組成物は経口用組成物である。
本実施形態の組成物は、緑葉加工物を含む。緑葉加工物における緑葉は、飲食品用途に適した緑色植物の葉であれば特に限定されず、例えば、大麦、小麦、えん麦、ライ麦といった麦類、イネ、あわ、笹、ひえ、きび、とうもろこし、ソルガム、さとうきびのようなイネ科植物;ヨモギのようなキク科植物;アシタバ、パセリ、セロリ、ボタンボウフウのようなセリ科植物;クワなどのクワ科植物;ドクダミのようなドクダミ科植物;シソのようなシソ科植物;小松菜、ケール、キャベツ、ブロッコリーのようなアブラナ科植物;アスパラガスのようなユリ科植物;モロヘイヤのようなシナノキ科植物;甘藷のようなヒルガオ科植物などが挙げられ、好ましくは青汁などの食品素材として利用可能な二条大麦、六条大麦、裸大麦などの大麦、ヨモギ、アシタバ、ボタンボウフウ、クワ、ケール、甘藷である。緑葉としては、これらの1種又は2種以上の組み合わせを使用できる。緑葉は、植物体の葉の部分だけではなく、葉とともに茎その他の部分を含んでもよい。
【0009】
緑葉は、大麦である場合、成熟期前、すなわち分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されることが好ましい。
【0010】
緑葉は、収穫後、直ちに処理されることが好ましい。処理までに時間を要する場合、緑葉の変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵される。
【0011】
本実施形態の組成物では、緑葉として、該緑葉から得られる各種の加工物を用いることができる。そのような加工物としては、例えば、緑葉の乾燥粉末、緑葉の細片化物及びその乾燥粉末、緑葉の搾汁及びその乾燥粉末、緑葉のエキス及びその乾燥粉末等が挙げられる。
【0012】
例えば、緑葉を乾燥粉末化するには従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、緑葉に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、更に必要に応じブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回でも、2回以上の処理を組合せてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組合せることが好ましい。
【0013】
ブランチング処理とは、緑葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。ブランチング処理は、80~100℃、好ましくは90~100℃の熱水または水蒸気中で、緑葉を60~180秒間、好ましくは90~120秒間処理することが好ましい。また、ブランチング処理として熱水処理を行う場合、熱水中に炭酸マグネシウムなどの炭酸塩や炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を溶解させておくことで、緑葉の緑色をより鮮やかにすることができるため、好ましい。また、蒸煮処理としては、常圧または加圧下において、緑葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理が好ましい。間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、好ましくは20~40秒間、より好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は、特に制限しないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風を組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風を組み合わせた気化冷却が好ましい。このような冷却処理は、緑葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、最も好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル、葉緑素などの栄養成分に富んだ緑葉の粉末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2~5回繰り返すことが好ましい。
【0014】
殺菌処理とは、通常、温度・圧力・電磁波・薬剤等を用いて物理的・化学的に微生物細胞を殺滅させる処理である。乾燥処理及び粉砕処理に追加してブランチング処理を行う場合、ブランチング処理は乾燥処理の前に行われることが好ましい。また乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
【0015】
乾燥処理としては、緑葉の水分含量が10質量%以下、特に5質量%以下となるように乾燥する処理であることが好ましい。この乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、好ましくは40℃~140℃、より好ましくは80~130℃にて加温により緑葉が変色しない温度及び時間で行われうる。
【0016】
粉砕処理としては、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などを用いて当業者が通常使用する任意の方法により粉砕する処理が挙げられる。粉砕された緑葉は必要に応じて篩にかけられる。
【0017】
具体的な乾燥粉末化の方法としては、例えば、大麦の緑葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる(特開2004-000210号公報を参照)。また例えば、緑葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法(特開2002-065204号公報、特許第3428956号公報を参照)も挙げられる。また例えば、緑葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、更に微粉砕する方法(特開2003-033151号公報、特許第3277181号公報を参照)も挙げられる。
【0018】
緑葉を細片化する方法としては、スライス、破砕、細断等、当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、大麦の緑葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、大麦の緑葉をどろどろした粥状(液体と固体の懸濁液)にすることにより行う。このようにスラリー化することにより、緑葉は、細片の80質量%以上が好ましくは平均径1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、一層好ましくは0.1mm以下、最も好ましくは0.05mmとなるように細片化され、流動性を有するようになる。
【0019】
緑葉を搾汁する方法としては、緑葉又はその細片化物を圧搾するか、又は、大麦の緑葉の細片化物を遠心又はろ過する方法を挙げることができる。代表的な例としては、ミキサー、ジューサー等の機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過等の手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられる。具体的には、特開平08-245408号公報、特開平09-047252号公報、特開平5-7471号公報、特開平4-341153号公報などに記載の方法が挙げられ、これらの公知の方法を当業者が適宜選択して実施できる。
【0020】
緑葉のエキスを得る方法としては、緑葉又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて攪拌や加温して抽出する方法を挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよい。
【0021】
緑葉の加工物のうち、特に、緑葉の乾燥粉末(粉砕末ともいう)を用いることが、栄養状態改善及び抗肥満の効果をより一層得やすい点等から好ましい。
【0022】
緑葉加工物は、特に、粒径が30~250メッシュの何れかのふるいを通過する粉末とすることが、緑葉粉末と高分子多糖類との均一な混合が容易であるため好ましい。同様の観点から、緑葉粉末は90質量%以上が200メッシュを通過することがより好ましい。
【0023】
上記の栄養改善及び抗肥満の効果を一層高める点から、組成物の固形分中、緑葉加工物の含有量は、乾燥質量で、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が特に好ましく、5質量%以上がとりわけ好ましく、10質量%以上が最も好ましい。また同様の観点から、上限値としては、99.9質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましく、90質量%以下が特に好ましく、75質量%以下がとりわけ好ましく、50質量%以下が最も好ましい。
【0024】
組成物は、高分子多糖類を含有する。高分子多糖類としては、食用として用いることができ、通常増粘剤として用いられるデンプンやその他の天然多糖類又はその誘導体を用いることができる。具体的な高分子多糖類としては、デンプン、デキストリン、キサンタンガム、グアーガム、サクシノグリカン、カラギーナン、ローカストビーンガム、ガラクタン、アラビアガム、トラガントガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、寒天、アガロース、マンナン、カードラン、アルギン酸又はその塩類、アラビアゴム、ペクチン、クインシード、アルゲコロイド、アルカシーラン、キトサン及びその誘導体、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類などが挙げられる。高分子多糖類は、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。中でもキサンタンガム及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、グアーガム及びその誘導体、タマリンドガム及びその誘導体、ペクチン及びその誘導体、サイリウムシードガム及びその誘導体、並びにそれらの塩類から選ばれる少なくとも一種を用いることが、後述するLSTの値を後述する特定範囲に容易に調整しやすいため好ましい。キサンタンガム誘導体としては、例えば、カチオン化キサンタンガムが挙げられる。デンプンとしては、コーン、ワキシーコーン、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ、サゴ、小麦、米、もち米等の各種の植物由来のデンプンが挙げられる。デンプン誘導体としてはα化デンプン、可溶化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、架橋デンプン、グラフト化デンプン等のデンプンに化学的、物理的処理を施したものを使用することができる。α化デンプンとしては、デンプンに水を加えて加熱糊化し、その状態で乾燥したものが挙げられる。グアーガム誘導体としては、例えば、ヒドロキシプロピルグアーガム、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアーガム、カチオン化グアーガム等が挙げられる。前記の塩としてはアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。
【0025】
本実施形態の組成物は、緑葉加工物及び高分子多糖類を含有し、これを固形分10~15質量%の水分散液又は水溶解液とした時に特定の流動性を有することを別の特徴としている。本発明者は、緑葉加工物を含有する組成物の構成と、その機能性との関係を鋭意検討した結果、高分子多糖類を含有したときの流動性が特定範囲であると、低栄養状態の場合の栄養改善効果や、高栄養状態における抗肥満効果が優れたものとなるだけでなく、両方を同時に満足することを見出した。
具体的には、本実施形態の組成物は、前記の水分散液のLSTの値が25mm以上60mm以下であり、26mm以上55mm以下であることがより好ましく、27mm以上50mm以下であることが特に好ましい。
【0026】
LSTは、同心円状に中心からの距離が表示された測定板の中心に検体を供し、検体が一定時間内に広がった距離を測定し、その値をとろみの指標とする。LSTはリング(抜き型)を使った方法と、シリンジを使った方法があるが、本実施形態ではリングを使った方法を採用する。具体的には(1)~(3)の方法で行う。以下の(1)~(3)は常温1℃以上30℃以下、好ましくは20℃以上30℃以下で行う。
(1)水平な場所に測定板を置き、測定用リング(サラヤ株式会社:簡単とろみ測定版(ラインスプレッドテスト)セット、内直径3cm、容量20mLを、その中心軸の位置が測定板の中心と一致するように測定板上に置く。
(2)100mLビーカーを使って検体20mLをリングの中に流し込む。
(3)流し込まれた検体がリングの中で検体が均等に広がった後、リングを垂直に持ち上げる。持ち上げた後1分後に検体が広がった距離(検体の存在部位のうち測定板の中心から最も遠い箇所と測定板の中心との距離)を測定し、これをLSTの値とする。LSTの値は、上記の方法にて10回測定した値の平均値とする。
【0027】
測定に供する検体の調製は基本的に非加熱で行う。具体的には、例えばLST測定に供する組成物が固体状である場合は、これを固形分が10~15質量%の濃度となるように水に分散又は溶解させた分散液を検体とする。この場合、例えば組成物が30メッシュを通過する粉末状又は顆粒状の場合には、分散又は溶解の手段として水を用い、室温(1~30℃)にて分解又は溶解処理を行ったものを当該分散又は溶解処理から60分間以内にLSTの試験に供する。
【0028】
一方、組成物が、30メッシュを通過しない固体状、例えば錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、飴状、タブレット状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、ケーキ状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等である場合にはこれを粉砕して30メッシュを通過し、好ましくは300メッシュを通過しない粉末状とした後に、上記と同様の分散又は溶解処理に供し、当該処理から前記の時間以内にLSTの試験に供する。この場合の粉砕処理としては、乾式粉砕が挙げられ、具体的な乾式粉砕の方法としては、ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミルなどを用いる粉砕を行うことが好ましい。
【0029】
一方、組成物が、固体状以外の形状、例えば、シロップ状、液状、ゲル状、ゼリー状、ペースト状、クリーム状である場合には、乾燥処理を施して固体状とし、必要に応じて上記と同様の乾式粉砕を施し、30メッシュを通過し、好ましくは300メッシュを通過しない粉末状とした後、これを上記と同様の分散又は溶解処理に供し、当該理から前記の時間以内にLSTの試験に供する。この場合の乾燥処理としては、噴霧乾燥、凍結乾燥を用いて水分量15質量%以下まで乾燥させる処理が挙げられる。
【0030】
また組成物がハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状又はカプレット状である場合には、カプセルから取り出した内容物について、必要に応じて乾燥ないし粉砕処理を行うか、行わずに分散又は溶解処理を行ったものをLST測定に供する。
【0031】
LSTが上記の範囲内である組成物は、高分子多糖類の種類及び量を調整することにより得ることができる。高分子多糖類の種類は上述した通りである。また、組成物中の高分子多糖類の量としては、組成物の固形分中、乾燥質量として0.1質量%以上99.9質量%以下とすることが好ましく、1質量%以上99質量%以下とすることがより好ましく、2質量%以上98質量%以下とすることが更に好ましく、2.5質量%以上90質量%以下とすることが更に一層好ましく、5質量%以上80質量%以下とすることが特に好ましく、10質量%以上70質量%以下とすることがとりわけ好ましく、20質量%以上60質量%以下とすることが最も好ましい。
【0032】
本実施形態においてLSTは固形分の濃度が10質量%以上15質量%以下の範囲のいずれの濃度の溶解液又は分散液で測定してもよく、また、その範囲のいずれかの濃度でLSTが上記の範囲であればよいが、好ましくは固形分の濃度が11質量%以上14質量%以下の範囲の溶解液又は分散液について測定し、より好ましくは11.5質量%以上13質量%以下の範囲の溶解液又は分散液について測定する。
なお、ここでいう固形分は、固体物を水に分散又は溶解する場合はその固体物を湿度(RH)40~60%の状態で30℃以上50℃以下で24時間乾燥した後の質量とする。
【0033】
本実施形態の組成物は、緑葉及び高分子多糖類以外に、その他の成分を含んでいてもよい。前記のその他の成分としては、例えば、ビタミン類、タンパク質、オリゴ糖、ミネラル類、乳製品、植物加工品、乳酸菌などの微生物、糖類、甘味料、クエン酸、酸味料、着色料、光沢剤のほか、タルク、二酸化ケイ素、セルロース、ステアリン酸カルシウム等の製造用剤等を配合することができる。その他の成分としては、これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。本実施形態において、組成物に含まれる緑葉加工物及び高分子多糖類以外の成分は、固形分中、99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることが特に好ましい。
【0034】
本実施形態の組成物は、上述した各種の形態とすることができる。また、本実施形態の組成物としては、青汁、スムージーなどの飲食用組成物として用いることが好ましく、青汁用の飲食用組成物として用いることが特に好ましい。青汁用の飲食用組成物とは、緑葉を各種加工物として含む飲料であり、青汁用の飲食用組成物としては、この飲料、及びこの飲料を得るために液体に分散又は溶解させる固体が挙げられる。特に、組成物は、粉末状又は顆粒状であって、水と混合した混合物を経口摂取する形態であると、腐敗を防ぎ長期保存に適するとともに、この飲食用組成物が水と混合した時に色が鮮やかであることから好ましい。また組成物が固体状の形態である場合、上述したように、これを水と混合した液状体となし、該液状体を飲用する等経口摂取することができるが、摂取する者の好み等に応じて、固体のまま経口摂取してもよい。また水だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、ヨーグルト、ホットケーキミックス等に添加して使用してもよい。また、サプリメント、健康食品、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品、及び医薬品として用いても良いことは言うまでもない。
【0035】
本実施形態の組成物は後述する実施例に記載の通り、緑葉加工物及び高分子多糖類を含み前述した範囲のLST値を満たすことにより、栄養状態改善効果と抗肥満効果の両方を奏することができる。具体的には、低たんぱくや低カルシウム等の低栄養状態下で、本実施形態の組成物を経口摂取することで、血液中のたんぱく質量及びカルシウム量を維持又は増加させることができ、低たんぱく状態及び低カルシウム状態などの低栄養状態が改善される。また低たんぱくや低カルシウム等の低栄養状態下で本実施形態の組成物を経口摂取することで体重低減を抑制できる。また、飽食状態や栄養過多状態において、本実施形態の組成物を経口摂取することで体重増加を抑制でき、肥満の予防又は低減を実現できる。従って、本実施形態の組成物は、これを摂取することで食生活の乱れによる栄養不良又は栄養過多に伴う体重の増減を抑制することができ、体調管理及び健康維持に効果を奏する。従って、例えば本実施形態の組成物はこれを経口摂取することで、老衰や偏食、極端なダイエットに伴う低たんぱく症や低カルシウム症などの低栄養状態の予防及び改善を図ることができるほか、健康を維持しながら容易に体重制限を図ることができる。特に高齢者は食欲低下や食事摂取量の減少、偏った食事等のために低タンパク質症や低カルシウム症になりやすく、そのような症状の抑制や改善に本実施形態の組成物を用いることができる。さらに、従来であればダイエットにより食生活を制限して低栄養状態で健康食品を摂取した場合、その栄養不足は改善されないものであった。しかし、本実施形態の組成物によれば栄養状態改善と肥満の防止又は改善とを両立させることができるので、健康維持を図りながらダイエットすることが容易となる。また、本発明の組成物は栄養状態改善と肥満の防止又は改善作用を両立しているため、ダイエット中でも十分量摂取することが可能であり、緑葉による野菜不足改善効果が期待できる。本実施形態の組成物は、抗肥満用、栄養改善用、低たんぱく質血症予防又は改善用、低カルシウム血症予防又は改善用及び野菜不足改善用から選ばれる1又は2以上の用途に使用することができる。
【実施例
【0036】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
[実施例1~4及び比較例1~5]
緑葉加工物として、下記の製造例1で製造した大麦緑葉の乾燥粉末を用いた。また高分子多糖類として、5質量%水溶液が30℃で100~600mPa・sの粘度を示すα化デンプン又は1質量%水溶液が25℃で500~2000mPa・sの粘度を示すキサンタンガムを用いた。緑葉の乾燥粉末のみを比較例1の組成物とした。
また、比較例2及び3並びに実施例1~3の組成物は、緑葉乾燥粉末とデンプンとを含む混合物とし、実施例4の組成物は緑葉乾燥粉末とキサンタンガムとを含む混合物とした。また比較例4の組成物はデンプンのみとし、比較例5の組成物はキサンタンガムのみとした。実施例1~4及び比較例1~5の組成物はいずれも粉末状であり、30メッシュのふるいを通過し、250メッシュのふるいを通過しないものであった。比較例2及び3並びに実施例1~4の組成物の緑葉乾燥粉末とデンプン又はキサンタンガムの配合は、固形分12質量%の濃度の水分散液又は溶解液のLSTが下記表1の値となる比率とした。LSTは各サンプルの固形分12質量%の水分散液又は溶解液について室温(20℃以上30℃以下)でサラヤ株式会社製簡単とろみ測定版(ラインスプレッドテスト)セットの測定板及び測定リングを用いて測定した。各実施例及び比較例の粉末状組成物から検体を調整するための、水への分散ないし溶解処理は、室温にて0.5時間、自然溶解により行った。
【0038】
(製造例1)
原料として、出穂前に刈り取った大麦の茎を含む緑葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5~10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した緑葉を、90~100℃の熱湯で90秒間~120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた緑葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間~180分間、80℃~130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した緑葉を約1mmの大きさに粗粉砕処理した。得られた大麦の緑葉を、200メッシュ区分を90質量%以上が通過するように微粉砕処理し、緑葉の乾燥粉末試料を得た。緑葉の粉末試料は、200メッシュを通過するものが90質量%以上であった。
【0039】
実施例1~4及び比較例1~5の粉末状組成物を、下記の動物試験1に供した。
[動物試験1:飽食状態での体重増減]
雄性KK-Ayマウス(21~25週齢)を2日以上の馴化期間を設けた後、試験0日目に体重を測定し、10群に群分けした。10群は、コントロール群1群と実施例1~4及び比較例1~5の組成物それぞれの摂取群とした。なお、馴化期間では、MF粉末飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)を自由摂取させた。試験0日目から3日間、コントロール群にはMF粉末飼料を摂取させ、他の9群それぞれには対応する組成物(被験物質)3質量%及びMF粉末飼料97質量%の混合物を摂取させた。試験3日目の午後に再度体重を測定し、体重変動g1=試験3日目の体重―試験0日目の体重を求め、表1に示す。また体重変動g1に基づき、体重増加抑制効果が高いと評価したものを◎、体重増加抑制効果がやや高いと評価したものを〇、体重増加抑制効果が低いと評価したものを×にてそれぞれ表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示す通り、緑葉加工物及び高分子多糖類を含有し、LSTが25mm以上60mm以下である各実施例の組成物は、緑葉加工物及び高分子多糖類のいずれか一方を非含有であるか、両方含有していてもLSTが本発明の範囲外である比較例1~5の組成物に比べて、栄養制限なしの飽食条件下において摂取した場合の体重増加抑制に優れていた。
【0042】
更に、実施例1~4及び比較例1~5の粉末状組成物を、下記の動物試験2に供した。
[動物試験2:低栄養状態での体重増減、血中たんぱく質濃度、Ca濃度]
雄性C57BL/6J(DIO)マウス(11~14週齢)について上記と同様の馴化期間を2日以上設けた後、試験0日目に体重を測定し、10群に群分けした。10群は、コントロール群1群と実施例1~4及び比較例1~5の組成物それぞれの摂取群とした。試験0日目から3日間、コントロール群には下記の表2の組成の試験飼料(低タンパク食)を摂取させ、他の9群それぞれには対応する組成物(被験物質)3.5質量%と前記試験飼料96.5質量%の混合物を摂取させた。試験3日目の午後に体重を測定し、△g2=試験3日目の体重―試験0日目の体重を求めた。また尾静脈より採血し血清を採取し、血清中のタンパク濃度及び血清中のカルシウム濃度を市販のキットを用いて測定した。体重変動g2、血清中のタンパク質濃度及び血清中のカルシウム濃度を表3に示す。表3には、表1に示した実施例1~4及び比較例1~5の粉末状組成物の構成成分及びLSTを再度示している。
表3には、体重変動g2に基づき、体重減少抑制効果を高いと評価したものを◎、やや高いと評価したものを〇、低いと評価したものを×にてそれぞれ示す。
また血清タンパク質濃度に基づき、血清タンパク質減少抑制効果が高いと評価したものを◎、やや高いと評価したものを〇、低いと評価したものを×にてそれぞれ示す。
また血清Ca濃度に基づき、血清Ca減少抑制効果が高いと評価したものを◎、やや高いと評価したものを〇、低いと評価したものを×にてそれぞれ示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
表3に示す通り、各実施例の組成物は、各比較例の組成物に比べて、低たんぱく質食条件下で摂取した場合の体重減少抑制効果にも優れており、また低たんぱく質食条件下における血清たんぱく質量及び血清カルシウム量が、各比較例の組成物よりも高かった。
【0046】
以上のことから、本発明の組成物が、栄養状態改善及び抗肥満の両方の作用に優れていることが判る。