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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240329BHJP
   F16K 27/02 20060101ALI20240329BHJP
   F16K 27/10 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K27/02
F16K27/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019151791
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021032295
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】松本 道雄
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 智宏
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真司
(72)【発明者】
【氏名】三浦 洋一
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287663(JP,A)
【文献】国際公開第2019/037510(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107620824(CN,A)
【文献】特開2015-204433(JP,A)
【文献】特開2004-356286(JP,A)
【文献】特開2005-158447(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203007(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/110923(WO,A1)
【文献】特開2004-353537(JP,A)
【文献】特開2013-211978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00 - 27/12
F16K 31/00 - 31/05
F16K 31/06 - 31/11
F25B 41/35
H01R 13/40 - 13/533
H05K 5/00 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディと、
前記ボディに設けられる弁孔に接離して弁部を開閉する弁体と、
前記弁体を前記弁部の開閉方向に駆動するためのロータと、
前記ボディに固定され、前記ロータを内包する有底筒状の部材であって、流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャンと、
軸線方向の一端側に第1開口端部を有し他端側に第2開口端部を有する筒形状をなす樹脂製のケースと、前記ケース内に配設され、前記キャンに同軸状に外挿されるステータと、前記ケースの内側に配設される回路基板と、前記回路基板に接続される給電端子と、前記給電端子を内側に一体に有する樹脂製のコネクタ形成部と、前記第1開口端部を閉じるように前記ケースに組み付けられ前記ケースとの間で前記回路基板を内包する空間を形成する蓋部と、を含むステータユニットと、
を備え、
前記コネクタ形成部は、モールド樹脂により前記ケースと一体成形されたものであり、
前記ケースの前記第1開口端部と、前記蓋部との間に第1のシール部を有し、
前記ケースの前記第2開口端部の内周面と、前記ボディの外周面との間に第2のシール部としてのシールリングを有し、
前記ステータユニットは、前記キャンをその底部側から前記ケース内に挿入するようにして前記ボディに組み付けられ、前記第2開口端部が前記ボディの側面に部分的に被せられることにより前記第2のシール部が実現され、
前記キャンの開口端部が前記ボディに接合され、前記キャンと前記ボディとの接合部が、前記ケースの内側において前記第2のシール部よりも前記第2開口端部の開口端から離隔し、前記第1のシール部よりも前記第1開口端部の開口端から離隔し、
前記ケース内において前記キャンの底部が配置される空間が、前記回路基板を内包する空間と連通し、
前記コネクタ形成部は、前記回路基板を内包する空間の圧力の外部への漏洩を許容するリーク孔が設けられていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記第1のシール部は、前記ケースの開口端部と前記蓋部との間が溶着されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動弁に関し、特にシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器等を冷凍サイクルに配置して構成される。膨張装置としては、駆動部にステッピングモータを使用して弁開度の精密な制御を実現する電動膨張弁が採用されつつある。このような電動膨張弁は、シャフトの先端に支持された弁体を、ボディに設けられた弁座に着脱させる機構を有する。この着脱に際しては、ねじ送り機構を採用してロータの回転運動をシャフトの並進運動に変換する技術が提案されている。
【0003】
近年、回路基板を搭載した電動膨張弁が採用されつつある。電動膨張弁に回路基板を搭載する場合、回路基板の腐食防止の観点から、回路基板を外気から隔離する必要がある。そこで、ステータに対して複数回のモールド成形を行い、得られた樹脂成形品と別工程で成形した蓋体とによって回路基板を囲う態様が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第107345590号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電動膨張弁は、ステータに対してモールド成形を2回行っている。しかし、1回目のモールド成形によって得られた樹脂成形品に対して2回目のモールド成形を施し樹脂成形品を得た場合、2つの樹脂成形品間(樹脂密着部分)の気密性を確保することは困難である。特許文献1の電動膨張弁は、樹脂密着部分が電動膨張弁の外部から回路基板を含む空間まで延在している。このため、特許文献1の電動膨張弁の構造では、回路基板を含む空間への外気の流入を防ぎきることができない。このような問題は、電動膨張弁に限らず種々の用途に用いられる電動弁について同様に生じ得る。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路基板を含む空間への防水性が確保された電動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は電動弁である。この電動弁は、ボディと、ボディに設けられる弁孔に接離して弁部を開閉する弁体と、弁体を弁部の開閉方向に駆動するためのロータと、ボディに固定され、ロータを内包する筒状部材であって、流体の圧力が作用する内部空間と作用しない外部空間とを画定するキャンと、筒形状を有する樹脂製のケースと、ケース内に配設され、キャンに同軸状に外挿されるステータと、ケースの内側に配設される回路基板と、回路基板に接続される給電端子と、給電端子を内側に一体に有する樹脂製のコネクタ形成部と、ケースとの間で回路基板を内包する空間を形成する蓋部と、を含むステータユニットと、を備える。コネクタ形成部は、モールド樹脂によりケースと一体成形されたものであり、ケースの一方の開口端部と、蓋部との間に第1のシール部を有し、ケースの他方の開口端部と、ボディとの間に第2のシール部を有する。
【0008】
この態様によると、回路基板を内包に含む筒形状のケースにおいて、一方の開口端部は蓋部との間にシール部を有し、他方の開口端部はボディとの間にシール部を有する。したがって、ケース内方の空間への外気の流入を防ぐことができる。すなわち、回路基板を含む空間への水分の流入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動弁において回路基板を含む空間への防水性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態における電動弁ユニットの構造を表す断面図である。
図2図2は、電動弁の構造を表す断面図である。
図3図3は、ステータユニットの構造を表す図である。
図4図4は、ケースと蓋部との嵌合態様を表す断面図である。
図5図5は、図4のX部を表す部分拡大図である。
図6図6は、第1ボディへのステータユニットの組み付け過程を示す断面図である。
図7図7は、変形例1に係る電動弁の断面図である。
図8図8は、変形例2に係る電動弁の断面図である。
図9図9は、変形例3に係る電動弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0012】
[実施形態]
図1は、実施形態における電動弁ユニットUの構造を表す断面図である。電動弁ユニットUは、電動弁1と配管ボディ2を含む。電動弁1は、図示しない自動車用空調装置の冷凍サイクルに適用される。この冷凍サイクルには、循環する冷媒を圧縮する圧縮機、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された冷媒を絞り膨張させて霧状に送出する膨張弁、霧状の冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により車室内の空気を冷却する蒸発器等が設けられている。電動弁1は、その冷凍サイクル膨張弁として機能する。
【0013】
電動弁1は、弁本体200にモータユニット300に組み付けて構成される。弁本体200は、弁部212を収容したボディ220を有する。ボディ220は、「バルブボディ」として機能する。ボディ220は、円筒状の第1ボディ240と円筒状の第2ボディ260とを同軸状に組み付けて構成される。
【0014】
第1ボディ240は、外径が下方に向けて段階的に縮径する段付円筒状をなす。第1ボディ240の下部には、円穴状の凹状嵌合部241が設けられている。第2ボディ260は有底円筒状をなし、その上部が凹状嵌合部241に圧入されている。第2ボディ260の底部を軸線方向に貫通するように弁孔266が設けられ、その弁孔266の上端開口部に弁座268が形成されている。第2ボディ260の側部に入口ポート262が設けられ、下部に出口ポート264が設けられている。第1ボディ240および第2ボディ260の内方に弁室270が形成されている。入口ポート262と出口ポート264とは、弁室270を介して連通している。
【0015】
配管ボディ2の側部には、導入ポート202および導出ポート204が設けられている。導入ポート202には凝縮器側から延びる配管が接続され、導出ポート204には蒸発器の入口に繋がる配管が接続される。導入ポート202は入口ポート262と連通し、導出ポート204は出口ポート264と連通する。導入ポート202と導出ポート204は、配管ボディ2内に形成される通路206によって連通している。
【0016】
第1ボディ240と配管ボディ2との間、第2ボディ260と配管ボディ2との間にはそれぞれ、環状のシール部材208、210が介装されている。この構成により、第1ボディ240と配管ボディ2との間のクリアランスおよび第2ボディ260と配管ボディ2との間のクリアランスを介した流体の漏れが防止される。
【0017】
図2は、電動弁1を表す断面図である。
第1ボディ240の上部中央には、ガイド部材242が立設されている。ガイド部材242は金属材料からなる切削加工品であり、ガイド部材242の軸線方向中央部の外周面には雄ねじ部244が形成されている。ガイド部材242の下端部は大径となっており、その大径部245が第1ボディ240の上部中央に同軸状に固定されている。第1ボディ240の内方には、モータユニット300のロータ320から延びるシャフト246が挿通されている。シャフト246の下端部は、弁部212を構成する弁体214を兼ねている。弁体214が弁座268に接離することで、弁部212の開度が調整される。ガイド部材242はその内周面によりシャフト246を軸線方向に摺動可能に支持する一方、その外周面によりロータ320の回転軸326を回転摺動可能に支持する。
【0018】
弁室270の内部では、シャフト246の下部にEリング216が嵌着されている。Eリング216の上方にはばね受け218が設けられる。ガイド部材242の下方にもばね受け222が設けられ、2つのばね受け218、222の間には弁体214を弁部212の閉弁方向へ付勢するスプリング224が弁体214と同軸状に挿入されている。本実施形態においては、シャフト246の下端部が弁体214を兼ねているから、スプリング224はシャフト246をも閉弁方向へ付勢する。
【0019】
次に、モータユニット300の構造を説明する。
モータユニット300は、ロータ320とステータ340とを含む三相ステッピングモータとして構成されている。モータユニット300は有底円筒状のキャン302を有し、そのキャン302の内方にロータ320、外方にステータ340を配置して構成される。キャン302は、弁体214およびその駆動機構が配置される空間を覆うとともにロータ320を内包する有底円筒状の部材であり、冷媒の圧力が作用する内方の圧力空間(内部空間)と作用しない外方の非圧力空間(外部空間)とを画定する。キャン302は、その開口端部304が第1ボディ240に固定されている。
【0020】
ステータ340は、積層コア342とボビン344とを含む。積層コア342は、板状のコアが軸線方向に積層されて構成される。ボビン344には、コイル346が巻回されている。コイル346と、そのコイル346が巻回されているボビン344とをまとめて「コイルユニット345」という。コイルユニット345は、積層コア342に組みつけられている。
【0021】
ステータ340は、モータユニット300における筒形状のケース400と一体に設けられている。ケース400は、耐食性を有する樹脂材の射出成形により得られる。ステータ340は、その射出成形(「インサート成形」または「モールド成形」ともいう。)によるモールド樹脂によって被覆される。ケース400は、そのモールド樹脂からなる。
【0022】
ケース400の上端開口部には、蓋部440がインロー嵌合されている。ケース400と蓋部440とに囲まれた空間Sには、回路基板420が配設される。コイル346は、回路基板420と接続されている。ケース400にはコネクタ形成部402が設けられている。すなわち、コネクタ形成部402は、モールド樹脂によりケース400と一体成形される。コネクタ形成部402は、外部電源からの電力を回路基板420へと供給するための給電端子422を内側に一体に有し、保護する。以下、ステータ340、ケース400、回路基板420、給電端子422、コネクタ形成部402および蓋部440をまとめて「ステータユニット360」ともいう。
【0023】
ロータ320は、円筒状のロータコア322と、ロータコア322の外周に沿って設けられたマグネット324を備える。ロータコア322は回転軸326に組み付けられている。マグネット324は、その円周方向に複数極に磁化されている。
【0024】
回転軸326は、金属材料からなる切削加工品である。回転軸326は、金属材料を有底円筒状に一体成形して得られる。回転軸326は、その開口端を下にしてガイド部材242に外挿されている。回転軸326の内周面には雌ねじ部328が形成され、ガイド部材242の雄ねじ部244と噛合している。これらのねじ部によるねじ送り機構によって、ロータ320の回転運動が軸線方向への並進運動に変換される。ねじ送り機構における雌ねじ部328と雄ねじ部244の噛合箇所を「螺合部」という。
【0025】
シャフト246の上部は縮径され、その縮径部が回転軸326の底部を貫通している。縮径部の先端には、環状のストッパ330が固定されている。一方、縮径部の基端と回転軸326の底部との間には、シャフト246を下方(閉弁方向)に付勢するバックスプリング332が介装されている。このような構成により、弁部212の開弁時にはストッパ330が回転軸326の底部に係止される態様でシャフト246がロータ320と一体変位する。一方、弁部212の閉弁時には、弁体214が弁座268から受ける反力により、バックスプリング332が押し縮められる。この時のバックスプリング332の弾性反力により弁体214を弁座268に押し付けることができ、弁体214の着座性能(閉弁性能)を高められる。
【0026】
第1ボディ240とケース400との間には、環状のシール部材203が介装されている。この構成により、第1ボディ240とケース400との間のクリアランスを介した外気(水分等)の侵入が防止される。
【0027】
図3は、ステータユニット360の構造を表す断面図である。
図2に関連して説明したとおり、ケース400と蓋部440とによって空間Sが形成される。空間Sには、回路基板420が備えられる。
【0028】
ケース400には、コネクタ形成部402の内方と空間Sとを連通するリーク孔404が設けられている。リーク孔404について詳細は後述する。
【0029】
図4はインロー嵌合部の組付構造の詳細を表す図である。(A)は図3におけるA-A矢視断面図、(B)は(A)におけるインロー嵌合部の分解図である。
本実施形態では、ケース400の開口端部403と蓋部440とが環状にインロー嵌合される。このため、開口端部403の上面と蓋部440の下面との間に環状の当接面が形成される。その当接面に沿ってレーザが照射されることにより、ケース400と蓋部440とが溶着される。以下、ケース400と蓋部440とのインロー嵌合構造について詳細を説明する。
【0030】
図4(B)に示すとおり、ケース400は、開口端部403と2つの位置決め突部408(「位置決め体」として機能する)を含む。開口端部403は、ケース400の上部に位置する筒形状の部分である。開口端部403の内方には、回路基板420をケース400に対して位置決めするための位置決め突部408が設けられている。
【0031】
図4(A)、(B)に示すとおり、蓋部440は、上記当接面を有する当接部442と、断面矩形状の突部444と、凹部446とを含む。当接部442は、蓋部440の底面において、その周縁部全体にわたって設けられている。突部444は、蓋部440の底面において、当接部442の内側に沿って環状に設けられている。凹部446は、蓋部440の底面において突部444よりも内側に2つ設けられている。
【0032】
当接部442は、ケース400の端面406(開口端部403における上面)に沿って当接する。突部444は、その外周面が開口端部403の内周面と対向する。突部444と開口端部403によってインロー嵌合部448(図4(A))が形成される。
【0033】
図4(A)に示すとおり、ケース400と蓋部440とにより形成される空間Sには、回路基板420が格納される。回路基板420には2つの位置決め用孔424が設けられている。2つの位置決め突部408が2つの位置決め用孔424にそれぞれ挿入されることで、回路基板420はケース400に対して位置決めされる。また、蓋部440の2つの凹部446にも、それら2つの位置決め突部408がそれぞれ嵌合される。この構造によって蓋部440はケース400に対して位置決めされる。すなわち、位置決め突部408は、ケース400に対する回路基板420の位置決めと、ケース400に対する蓋部440の位置決めの両方の機能を有する。
【0034】
位置決め突部408は、凹部446に圧入されて固定されている。これにより、蓋部440はケース400と位置決めされ、突部444の外周面とケース400の内周面との間(インロー嵌合部448の隙間)は、その全周にわたって均一に保持される。
【0035】
次にケース400と蓋部440との溶着について説明する。
図5は、図4(A)におけるX部の拡大断面図である。
【0036】
上記のとおり、ケース400の内周面と蓋部440の突部444とによってインロー嵌合部448が形成されている。蓋部440の当接部442はケース400の端面406に沿って当接している。蓋部440はレーザ透過性の樹脂材からなり、ケース400はレーザ吸収性の樹脂材からなる。当接部442に対して、蓋部440側からレーザを照射することで、レーザは蓋部440を透過し、ケース400の端面406に吸収される。吸収されたレーザから発生する熱によりケース400の端面406の一部が溶融する。図5に示すとおり、溶融した樹脂材Rはインロー嵌合部448の隙間に溜まり、蓋部440の突部444の外周面とケース400の開口端部403とを架橋する態様で固着する。
【0037】
本実施形態においては、インロー嵌合部448の隙間に溶融した樹脂材Rを流入させ、蓋部440の突部444の外周面とケース400の開口端部403とにわたって架橋する態様で樹脂材Rを固着させた。これにより、蓋部440とケース400とは当接部442だけでなくインロー嵌合部448においても溶着されるから、その溶着性を高めることができる。以下、溶融した樹脂材Rによって蓋部440とケース400とが溶着した部分を「溶着部460」または「第1のシール部」という。
【0038】
図6は、ステータユニット360の第1ボディ240への組付態様を示す断面図である。(A)は組み付け中の状態、(B)は組み付けが完了した状態をそれぞれ示す。
組み付けに先立って、ケース400の内方に回路基板420が配設される。また、図5に関連して説明したとおり、ケース400と蓋部440とが溶着される。
【0039】
組み付けに際し、キャン302は、ケース400における開口端部403とは反対側の開口端部410からステータユニット360の内方へと挿入される。そして開口端部410がキャン302の開口端部304およびシール部材203を内包する態様でステータユニット360の第1ボディ240への組み付けが完了する。
【0040】
ケース400の開口端部のうち、開口端部410はその内周面にシール部材203を当接させる態様で第1ボディ240に組み付けられている。また、開口端部403は溶着部460によって蓋部440と溶着される。すなわち、ケース400は2つの開口端部403、410において外部に対してシールされる。この構造によって、ケース400の内包に位置する空間Sへのケース400外部の大気の流入が防止される。
【0041】
コネクタ形成部402には、リーク孔404が設けられている。第1ボディ240へのステータユニット360の組み付けに先立ち、ケース400と蓋部440とが溶着される。したがって、ステータユニット360の内方へキャン302が挿入されるに伴って空間Sにおける気体の圧力が高くなっていく。この圧力が高すぎると、空間Sに格納されている回路基板420等が破損する虞がある。本実施形態においては、リーク孔404によって空間Sの内部圧力をコネクタ形成部402の内方へと漏洩させる。この構成とすることで、キャン302をステータユニット360へ内挿させステータユニット360を第1ボディ240に組み付けたとしても、回路基板420等を破損させずに済む。
【0042】
ステータユニット360が第1ボディ240に組み付けられた後、電動弁1の作動時において空間S内の温度が変化する。仮にリーク孔404が存在せず、ケース400が密閉される場合には、この温度変化に伴い空間Sの内部圧力が変化する。この内部圧力が高くなると、回路基板420の破損、溶着部460の破断、ケース400や蓋部400の変形、コイル346(図2参照)の損傷等の不具合が生じる。リーク孔404を設け、空間Sの内部圧力をコネクタ形成部402の内方へと漏洩することで、電動弁1の作動時においても回路基板420の破損等を生じさせずに済む。
【0043】
電動弁1の作動時における空間Sの内部圧力の漏洩について、より詳細に説明する。コネクタ形成部402は、外部コネクタ(不図示)と接続される。外部コネクタに設けられる端子には、ハーネスが接続される。したがって、空間Sの圧力は、リーク孔404及びハーネスを通じて外部へと漏洩する。また、コネクタ形成部402と外部コネクタとの間にはシールリング(不図示)が設けられている。この構造により、リーク孔404はハーネス内と連通する一方、電動弁1の外気に対してシールされている。空間Sと電動弁1の周囲とは連通しないため、リーク孔404が設けられていたとしても、空間Sへの外気の流入が抑制される。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、ステータ340に対してモールド樹脂によりケース400が成形される。すなわち、ケース400は1回のモールド成形によって得られる。また、筒形状のケース400において、開口端部403は蓋部440と溶着され、開口端部410は第1ボディ240との間にシール部材203(第2のシール部)を有する。第1のシール部および第2のシール部が設けられることによって、空間Sへの大気の流入を防止できる。すなわち、回路基板420を内包する空間Sに対する防水性を確保できる。
【0045】
本実施形態によれば、1回のモールド成形によってコネクタ形成部402をケース400と一体に得る。これにより、電動弁1は部品点数を抑えることができる。部品点数が少なければ、部品間においてシールしなければならない箇所を少なくできる。したがって、電動弁1の内部への外気の流入を抑制できる。
【0046】
図7図9は、本実施形態の変形例に係る電動弁の断面図である。図7は変形例1に係る電動弁101、図8は変形例2に係る電動弁102、図9は変形例3に係る電動弁103をそれぞれ示す。
【0047】
図7に示すとおり、変形例1に係る電動弁101は、実施形態に係る電動弁1とケース500の形状が異なる。ケース500は、インナーモールド部510および筒形状のアウターモールド部520を含む。ステータ340は、モールド成形によってインナーモールド部510に被覆される。モールド樹脂からなるインナーモールド部510は、モールド成形によってアウターモールド部520に被覆される。すなわち、アウターモールド部520はモールド樹脂からなる。コネクタ形成部402は、アウターモールド部520と一体成形される。
【0048】
変形例1においても、アウターモールド部520の開口端部523と蓋部440との間が溶着され、溶着部560が形成される。また、アウターモールド部520の開口端部530と第1ボディ240との間にはシール部材203が設けられる。一方、インナーモールド部510は、アウターモールド部520の内方に完全に収容される。すなわち、インナーモールド部510は、電動弁101の外部に露出しない。2つの開口端部523、530におけるシール構造によってアウターモールド部520内方への外気の流入が防止される。また、空間Sと繋がる樹脂密着部(アウターモールド部520とインナーモールド部510との間)が、電動弁101の外部から完全に隔離される。したがって、変形例1においても、空間Sへの外気の流入を防止できる。
【0049】
変形例1の電動弁101においても、空間Sへの外気の流入を防止でき、空間Sへの防水性を確保できる。一方で、シール性の観点から部品点数が少ない実施形態に係る電動弁1の方がより好ましい。
【0050】
図8に示すとおり、変形例2に係る電動弁102は、実施形態に係る電動弁1とケース600の形状が異なる。ケース600は、インナーモールド部610および筒状のアウターモールド部620を含む。ステータ340は、モールド成形によってインナーモールド部610に被覆される。アウターモールド部620は、インナーモールド部610とは別工程でモールド成形によって得られる。すなわち、アウターモールド部620は、モールド樹脂からなる。コネクタ形成部402は、アウターモールド部620と一体成形される。
【0051】
アウターモールド部620の内方にインナーモールド部610が被覆されたステータ340と回路基板420を格納する。その後、アウターモールド部620の開口端部523に蓋部440を設けることで、ステータユニット360が得られる。
【0052】
変形例2においても、開口端部623と蓋部440との間が溶着され、溶着部660が形成される。また、アウターモールド部620の開口端部630と第1ボディ240との間にはシール部材203が設けられる。一方、インナーモールド部610は、アウターモールド部620の内方に完全に収容される。すなわち、インナーモールド部610は、電動弁102の外部に露出しない。2つの開口端部623、630におけるシール構造によってアウターモールド部620内方への外気の流入が防止される。また、アウターモールド部620とインナーモールド部610との間が、電動弁102の外部から完全に隔離される。したがって、変形例2においても、空間Sへの外気の流入を防止できる。
【0053】
電動弁102においては、インナーモールド部610とアウターモールド部620が別工程で成形され、ケース600の組付工程において両者が組み付けられる。したがって、インナーモールド部610とアウターモールド部620との間で寸法合わせが必要となる。変形例1の電動弁101(図7参照)においては、インナーモールド部510とアウターモールド部520との間の位置あわせを、アウターモールド部520の成形時における金型を用いて簡便に行うことができる。変形例1の電動弁101の方が変形例2の電動弁102よりケース500に対するステータ340の位置あわせが簡単に行えるから、より好ましい。
【0054】
図9に示すとおり、変形例3に係る電動弁103は、実施形態に係る電動弁1とケース700の形状が異なる。変形例3の電動弁1においては、ステータ340がモールド樹脂によって被覆されない。ケース700は、変形例2におけるアウターモールド部620(図8参照)と同様に、モールド成形によって得られる。コネクタ形成部402は、ケース700と一体成形される。
【0055】
ケース700の内方にステータ340と回路基板420を格納する。その後、ケース700の開口端部703に蓋部440を設けることで、ステータユニット360が得られる。
【0056】
変形例3においても、開口端部703と蓋部440との間が溶着され、溶着部760が形成される。また、ケース700の開口端部710と第1ボディ240との間にはシール部材203が設けられる。2つの開口端部703、710におけるシール構造によってケース700の内方への外気の流入が防止される。したがって、変形例3においても、空間Sへの外気の流入を防止できる。
【0057】
電動弁103は、ステータ340をケース700に直接格納するため、ステータ340に対してモールド樹脂を被覆させる電動弁101(図7参照)や電動弁102(図8参照)と比べて簡便に製造できる。一方、ステータ340(図2のコイル346)をモールド樹脂によって保護することで、コイル346の熱を逃がしやすくし、コイル346の抵抗値を抑制できる。この点で、電動弁103よりも電動弁101や電動弁102の方が好ましい。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0059】
上記実施形態では、第1のシール部として溶着、第2のシール部としてシールリングを採用した。変形例においては、第1のシール部にシールリングを採用してもよい。例えば、蓋部の突部とケースの内周面との間にシールリングを設ける等してもよい。
【0060】
上記実施形態では、ケースの内周面と第1ボディの外周面との間に第2のシール部を設ける態様を説明した。変形例においては、ケースの内周面とキャンの外周面との間にシールリングを設けて第2のシール部としてもよい。ただし、キャンの開口端部が第2シール部よりもケースの内方に位置する態様は、キャンの開口端部とボディとの溶接箇所が外気によって腐食する虞がなくなるため、より好ましい。
【0061】
上記実施形態では、弁体が弁座に着脱し、閉弁状態においては弁部が完全閉となる電動弁を説明した。変形例においては、いわゆるスプール弁のように弁体が弁孔に挿抜され、閉弁状態において流体の微小漏れを許容するものであってもよい。
【0062】
上記実施形態では、上記電動弁を電動膨張弁として構成したが、膨張機能を有しない開閉弁や流量制御弁として構成してもよい。
【0063】
上記実施形態では、弁体とシャフトが一体成形されている態様を説明した。変形例においてはこれに限らず、弁体とシャフトとが別部材であり、一体変位可能であってもよい。この場合には、弁体とシャフトとが構造的に一体であってもよい。あるいは、弁体とシャフトとが一体変位可能であり、かつ、相対変位可能であってもよい。例えば、特開2016-205584号公報に記載の電動弁のように、開弁時においては弁体とシャフトとが一体変位可能であって、閉弁作動時においては相対変位可能であってもよい。
【0064】
上記実施形態では、第1ボディ240、第2ボディ260を電動弁のボディとし、これら2つのボディを配管ボディ2に配設することで電動弁ユニットUとした。変形例においては、第1ボディ240、第2ボディ260および配管ボディ2をまとめて電動弁のボディとしてもよい。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 電動弁、2 配管ボディ、101 電動弁、102 電動弁、103 電動弁、200 弁本体、202 導入ポート、203 シール部材、204 導出ポート、206 通路、208 シール部材、212 弁部、214 弁体、216 Eリング、218 ばね受け、220 ボディ、222 ばね受け、224 スプリング、240 第1ボディ、241 凹状嵌合部、242 ガイド部材、244 雄ねじ部、245 大径部、246 シャフト、260 第2ボディ、262 入口ポート、264 出口ポート、266 弁孔、268 弁座、270 弁室、300 モータユニット、302 キャン、304 開口端部、320 ロータ、322 ロータコア、324 マグネット、326 回転軸、328 雌ねじ部、330 ストッパ、332 バックスプリング、340 ステータ、342 積層コア、344 ボビン、345 コイルユニット、346 コイル、360 ステータユニット、400 ケース、402 コネクタ形成部、403 開口端部、404 リーク孔、406 端面、408 位置決め突部、410 開口端部、420 回路基板、422 給電端子、424 位置決め用孔、440 蓋部、442 当接部、444 突部、446 凹部、448 インロー嵌合部、460 溶着部、500 ケース、510 インナーモールド部、520 アウターモールド部、523 開口端部、530 開口端部、560 溶着部、600 ケース、610 インナーモールド部、620 アウターモールド部、623 開口端部、630 開口端部、660 溶着部、700 ケース、703 開口端部、710 開口端部、760 溶着部、R 樹脂材、S 空間、U 電動弁ユニット。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9