(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】磁気ヘッド
(51)【国際特許分類】
G11B 21/10 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
G11B21/10 W
(21)【出願番号】P 2020012089
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000177346
【氏名又は名称】三和ニューテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】矢野 賢一
(72)【発明者】
【氏名】秦 秀一
(72)【発明者】
【氏名】蛯原 正裕
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-240409(JP,A)
【文献】特開平11-328604(JP,A)
【文献】特開平02-071405(JP,A)
【文献】特開昭59-207010(JP,A)
【文献】特開平06-243411(JP,A)
【文献】特開2004-259322(JP,A)
【文献】特開2006-085832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヘッドトラックを有する磁気ヘッドであって、
前記複数のヘッドトラックに含まれる第1ヘッドトラックと、
前記第1ヘッドトラックに隣接する第2ヘッドトラックと、
前記第2ヘッドトラックに隣接する第3ヘッドトラックと、
前記第1ヘッドトラックへの書き込み電流である第1書き込み電流を付与する第1書き込み制御部と、
前記第2ヘッドトラックへの書き込み電流である第2書き込み電流を付与する第2書き込み制御部と、
前記第3ヘッドトラックへの書き込み電流である第3書き込み電流を付与する第3書き込み制御部と、を備え、
前記第1書き込み電流の値は第1書き込み電流値であり、前記第2書き込み電流の値は第2書き込み電流値であり、前記第3書き込み電流の値は第3書き込み電流値であり、
前記第2ヘッドトラックは、前記第1ヘッドトラックおよび前記第3ヘッドトラックに挟まれる位置関係を有し、
前記第2書き込み電流値は、前記第1書き込み電流値および前記第3書き込み電流値よりも大きい、磁気ヘッド。
【請求項2】
前記複数のヘッドトラックは、第1ヘッドトラック、第2ヘッドトラックおよび第3ヘッドトラックの順序で隣接しつつ並んでいる、請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第1書き込み電流値および前記第3書き込み電流値は、略同一であり、
前記第2書き込み電流値は、前記第1書き込み電流値および前記第3書き込み電流値よりも大きい、請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第1書き込み電流値および前記第3書き込み電流値は、480mAであり、
前記第2書き込み電流値は、560mAである、請求項3記載の磁気ヘッド。
【請求項5】
前記第1書き込み制御部、前記第2書き込み制御部および第3書き込み制御部のそれぞれは、前記第1ヘッドトラック、前記第2ヘッドトラックおよび前記第3ヘッドトラックのそれぞれに、異なる書き込み電流値を付与する、請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記第1書き込み制御部および前記第3書き込み制御部のそれぞれは、前記第1ヘッドトラックおよび前記第3ヘッドトラックのそれぞれに、略同一の書き込み電流値を付与し、
前記第2書き込み制御部は、前記第2ヘッドトラックに、
前記第1書き込み電流値および
前記第3書き込み電流値より大きい書き込み電流値を付与する、請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記磁気ヘッドは、磁気カードの磁性体への書き込みを行い、
前記磁性体は、第1記録トラック、第2記録トラックおよび第3記録トラックを有し、
前記第1ヘッドトラックは、前記第1記録トラックへの書き込みに対応し、
前記第2ヘッドトラックは、前記第2記録トラックへの書き込みに対応し、
前記第3ヘッドトラックは、前記第3記録トラックへの書き込みに対応する、請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
前記第1書き込み制御部、前記第2書き込み制御部および前記第3書き込み制御部の少なくとも一つは、外部環境、対象とする磁気カードの特性および書き込み内容の少なくとも一つに基づいて、前記第1書き込み電流値、前記第2書き込み電流値および前記第3書き込み電流値のそれぞれを変化させる、請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを制御する制御部と、
前記磁気ヘッドの対象となる磁気カードを搬送する搬送部と、
前記磁気ヘッドに電力を供給する電源と、
前記磁気ヘッド、前記制御部、前記搬送部および前記電源を格納する筐体と、を備える磁気カードリーダーライター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体に記録内容を記録させたり記録された記録内容を読み出したりする、磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体を備える媒体(例えば、磁気カードなど)へ、必要となる内容を記録させたり(いわゆるライト)、記録された内容を読み出したり(いわゆるリード)する、磁気カードリーダーライターが、様々な場面で使用されている。例えば、店舗などのポイントカードや駐車場の入出庫カードなどに対応して使用されている。
【0003】
このようなポイントカードや入出庫カードには、磁性体が備わっている。磁性体に対して、磁気が付与されることで、必要となる内容が記録されたり、読み出されたりする。この記録や読み出しにおいて磁気カードリーダーライターが使用され、磁気カードリーダーライターは、実際に磁性体への記録や磁性体からの読み出しを実行する磁気ヘッドを備えている。
【0004】
磁気ヘッドが、記録用(書き込み用)の電流を磁性体に付与すると、磁性体に必要な内容が書き込まれる。同様に磁気ヘッドが、読み出し用の電流を磁性体に付与すると、磁性体に記録されている内容が読み出される。
【0005】
例えば、店舗で使用されるポイントカードの場合には、磁気ヘッドによる書き込みによって、ポイントカードの磁性体にポイントが書き込まれる。また、磁気ヘッドによる読み出しによって、ポイントカードの磁性体に書き込まれているポイントが読み出される。
【0006】
あるいは、駐車場の入出庫カードの場合には、磁気ヘッドによる書き込みによって、入庫時刻が入出庫カードの磁性体に書き込まれる。また、磁気ヘッドによる読み出しによって、入出庫カードの磁性体に書き込まれている入庫時刻が読み出される。この処理によって、例えば、駐車場料金の精算がなされる。
【0007】
このように磁気ヘッドが備わる磁気カードリーダーライターによって、様々な場面および様々な用途の磁気カードへの、内容の書き込み(記録)と読み出しが行われている。
【0008】
クレジットカードやプリペイドカードなど、現在ではICチップを備えるカードが多く使われるようになっている。しかしながら、過去においては多くの磁気カードが使用されていた事情があったり、ポイントカードや入出庫カードなどは、カードのコストが安価であったりすることが求められるし、使い捨てであることも多い。このため、世の中には多くの磁気カードが出回っているし、今後も多く使用される状況にある。
【0009】
ここで、多くの磁気カードの磁性体には、複数の記録トラックが設けられている。複数の記録トラックが設けられていることで、磁性体における記録容量を増加させたり、記録内容の読み出し精度を向上させたりするためである。このため、磁性体の複数の記録トラックに合わせて、磁気ヘッドも複数のトラックヘッドを備えている。この複数のトラックヘッドが、複数の記録トラックに対応して、書き込み電流の付与および読み出し電流の付与を行う。
【0010】
これらの複数のトラックヘッドと複数の記録トラックとの対応に基づいて、磁気カードに必要な内容の書き込みと読み出しが行われる。このような磁気カードに対応する磁気ヘッドや磁気カードリーダーライターについての技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1は、複数のトラックを含む磁気ディスクと、磁気ディスクにデータを書込み、磁気ディスクからデータを読み出すための磁気ヘッドと、磁気ヘッドのシークを制御するコントローラと、振動を検出するセンサと、を具備する。コントローラは、シーク制御信号に基づいて今回シークによる第1振動を予測し、センサにより検出された振動に基づいて過去のシークによる第2振動を予測し、第1振動の位相と第2振動の位相が揃わないように今回シークの開始タイミングを調整する磁気ディスク装置を開示する。
【0013】
しかしながら、複数の記録トラックに対応するヘッドトラックを用いて書き込みや読み出しを行っても、エラーが生じることがあった。
【0014】
磁気カードは、上述したように様々な場面で使用されている。ここで、磁気カードは、安価な記録媒体であることや使い捨てなどに対応するため、磁気カードそのものが安価に製造されている。例えば、紙製のカードの表面の一部または全部に磁性体が塗布されるだけで磁気カードとして使用されていることがある。また、コストを下げるために、磁性体表面にコーティングもされていないこともある。
【0015】
このような安価な磁気カードでは、その基体が紙製であるので磁気ヘッドに対して、正確な平行状態で接触しにくい問題がある。あるいは、磁性体表面にコーティングがなされていないので、やはり接触が不十分となる問題もある。接触が不十分であると、書き込みや読み出しが、正確に行われないこともあり得る。このように、安価で普及量の多い磁気カードに対しては、磁気ヘッドの書き込みや読み出しに不正確な結果が生じることがある。
【0016】
また、ポイントカードや入出庫カードの書き込みや読み出しを行う磁気カードリーダーライターは、店舗や駐車場などに、複数の台数が設置されていることも多い。複数の磁気カードリーダーライターは、その型番などが異なったり、製造業者が異なったりすることもある。磁気カードリーダーライターは、仕様によって、磁気ヘッドによる書き込みや読み出し、また磁気カードも仕様によって、磁性体や記録トラックなどは定まっている。
【0017】
しかしながら、型番や製造業者の違いによっては、書き込んだ記録内容の読み出し結果が、異なってしまう問題がある。例えば、A社の磁気カードリーダーライターである磁気カードに書き込みがされて(例として駐車場への入庫時刻)、次いでB社の磁気カードリーダーライターで同じ磁気カードを読み出す場合に、記録されている入庫時刻を正確に読み出せないことがあり得る。
【0018】
このような書き込みの内容と読み出しの内容が相違することは、磁気カードを利用する利用者にとっても、磁気カードを用いたサービス等の提供を行う提供者にとっても、好ましくない。もちろん、製造業者や型番が異なることが唯一の理由ではなく、磁気カードが安価であって磁気カードリーダーライターにおける書き込みや読み出しのための磁性体と磁気ヘッドとの接触不良などに起因することもある。
【0019】
しかしながら、磁気カードが使用される現場では、磁気カードリーダーライターの製造業者や型番が異なることは容易に発生し、書き込みと読み出しとの間での相違が生じることは大きな問題となる。安価な磁気カードであっても、書き込みおよび読み出しが正確に行えることが求められる。
【0020】
本発明は、以上の課題に鑑み、磁気カードの磁性体に対する書き込みにおけるノイズを防止して、書き込みされた記録内容と読み出し結果との相違を生じさせない磁気ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題に鑑み、本発明の磁気ヘッドは、複数のヘッドトラックを有する磁気ヘッドであって、
複数のヘッドトラックに含まれる第1ヘッドトラックと、
第1ヘッドトラックに隣接する第2ヘッドトラックと、
第2ヘッドトラックに隣接する第3ヘッドトラックと、
第1ヘッドトラックへの書き込み電流である第1書き込み電流を付与する第1書き込み制御部と、
第2ヘッドトラックへの書き込み電流である第2書き込み電流を付与する第2書き込み制御部と、
第3ヘッドトラックへの書き込み電流である第3書き込み電流を付与する第3書き込み制御部と、を備え、
前記第1書き込み電流の値は第1書き込み電流値であり、前記第2書き込み電流の値は第2書き込み電流値であり、前記第3書き込み電流の値は第3書き込み電流値であり、
前記第2ヘッドトラックは、前記第1ヘッドトラックおよび前記第3ヘッドトラックに挟まれる位置関係を有し、
前記第2書き込み電流値は、前記第1書き込み電流値および前記第3書き込み電流値よりも大きい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の磁気ヘッドは、複数の記録トラックに対応する複数のヘッドトラックを有しており、複数のヘッドトラックによる記録トラックへの書き込み時の、トラック間でのノイズ影響を抑えることができる。特に、書き込み時に、隣接するヘッドトラックからのクロストークノイズを、記録トラックへ乗せるのを抑える。これにより、記録トラックから磁気ヘッドが読み出す場合に、クロストークノイズに基づく、復号エラーを生じさせることを防止できる。
【0023】
この防止により、磁気ヘッドが書き込んだ記録内容を読み出す際に、ノイズによって読み出し結果が記録内容と相違する問題を防止できる。
【0024】
本発明の磁気ヘッドは、書き込み時におけるノイズによる悪影響を抑える。すなわち、書き込み時においての対応である。書き込み時に書き込まれる記録内容が、読み出し時に復号エラーとなるようなノイズが含まれることを防止している。このため、読み出しに用いられる磁気カードリーダーライターの型番や製造業者が異なっても(同じ規格であれば)、読み出し時のエラーが防止できる。
【0025】
結果として、磁気カードを用いた様々なビジネス現場での、信頼性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】磁気ヘッド200による磁気カード100への書き込みを行う様子を示す模式図である。
【
図2】3つのヘッドトラックによる書き込み電流を示すタイミングチャートである。
【
図3】
図1、
図2により書き込まれたデータを、磁気カードから読み取る状態を示す模式図である。
【
図4】クロストークノイズの影響を受けて読み出されてデジタル変換された後のデータを示すタイミングチャートである。
【
図5】書き込みして記録されたデータと、読み出しされたデータとの相違を示すタイミングチャートである。
【
図6】本発明の実施の形態1における磁気ヘッドの模式図である。
【
図7】本発明の第1書き込み電流値、第2書き込み電流値、第3書き込み電流値の相違を表す模式図である。
【
図8】本発明の実施の形態1における3つの書き込み電流値の関係を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施の形態1における磁気ヘッドの構成を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施の形態2における磁気カードリーダーライターのブロック図である。
【
図11】従来技術における書き込みエラーが生じることで、読み出し時のデータと書き込み時のデータとの相違が生じることを説明する説明図である。
【
図12】本発明による改善結果を示す説明図である。
【
図14】従来技術の磁気ヘッドでの書き込みと読み出しを行った実験結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の発明に係る磁気ヘッドは、複数のヘッドトラックを有する磁気ヘッドであって、
複数のヘッドトラックに含まれる第1ヘッドトラックと、
第1ヘッドトラックに隣接する第2ヘッドトラックと、
第2ヘッドトラックに隣接する第3ヘッドトラックと、
第1ヘッドトラックへの書き込み電流である第1書き込み電流を付与する第1書き込み制御部と、
第2ヘッドトラックへの書き込み電流である第2書き込み電流を付与する第2書き込み制御部と、
第3ヘッドトラックへの書き込み電流である第3書き込み電流を付与する第3書き込み制御部と、を備え、
第1書き込み電流の値である第1書き込み電流値、第2書き込み電流の値である第2書き込み電流値、第3書き込み電流の値である第3書き込み電流値を、不均一にする。
【0028】
この構成により、隣接するヘッドトラックからのクロストークノイズによる書き込みエラーを抑制でき、結果として本来の書き込みと読み出しの食い違いを防止できる。
【0029】
本発明の第2の発明に係る磁気ヘッドでは、第1の発明に加えて、複数のヘッドトラックは、第1ヘッドトラック、第2ヘッドトラックおよび第3ヘッドトラックの順序で隣接しつつ並んでいる。
【0030】
この構成により、クロストークノイズの影響が出やすいが、これを防止できる。
【0031】
本発明の第3の発明に係る磁気ヘッドでは、第1または第2の発明に加えて、第2ヘッドトラックは、第1ヘッドトラックおよび第2ヘッドトラックに挟まれる位置関係を有し、
第2書き込み電流値は、第1書き込み電流値および第3書き込み電流値よりも大きい。
【0032】
この構成により、第1ヘッドトラックと第3ヘッドトラックに挟まれる第2ヘッドトラックへのクロストークノイズの影響を抑制できる。
【0033】
本発明の第4の発明に係る磁気ヘッドでは、第3の発明に加えて、第1書き込み電流値および第3電流値は、略同一であり、
第2書き込み電流値は、第1書き込み電流値および第3書き込み電流値よりも大きい。
【0034】
この構成により、第1ヘッドトラックと第3ヘッドトラックに挟まれる第2ヘッドトラックへのクロストークノイズの影響を抑制できる。
【0035】
本発明の第5の発明に係る磁気ヘッドでは、第4の発明に加えて、第1書き込み電流値および第3書き込み電流値は、480mAであり、
第2書き込み電流値は、560mAである。
【0036】
この構成により、クロストークノイズの影響を最小限にできる。
【0037】
本発明の第6の発明に係る磁気ヘッドでは、第1の発明に加えて、第1書き込み制御部、第2書き込み制御部および第3書き込み制御部のそれぞれは、第1ヘッドトラック、第2ヘッドトラックおよび第3ヘッドトラックのそれぞれに、異なる書き込み電流値を付与する。
【0038】
この構成により、隣接するヘッドトラックへのクロストークノイズの影響を抑制できる。
【0039】
本発明の第7の発明に係る磁気ヘッドでは、第3から第5のいずれかの発明に加えて、第1書き込み制御部および第3書き込み制御部のそれぞれは、第1ヘッドトラックおよび第3ヘッドトラックのそれぞれに、略同一の書き込み電流値を付与し、
第2書き込み制御部は、第2ヘッドトラックに、異なる電流値を付与する。
【0040】
この構成により、隣接するヘッドトラックへのクロストークノイズの影響を抑制できる。
【0041】
本発明の第8の発明に係る磁気ヘッドでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、磁気ヘッドは、磁気カードの磁性体への書き込みを行い、
磁性体は、第1記録トラック、第2記録トラックおよび第3記録トラックを有し、
第1ヘッドトラックは、第1記録トラックへの書き込みに対応し、
第2ヘッドトラックは、第2記録トラックへの書き込みに対応し、
第3ヘッドトラックは、第3記録トラックへの書き込みに対応する。
【0042】
この構成により、クロストークノイズの影響を抑えつつ、適切に書き込みを行える。
【0043】
本発明の第9の発明に係る磁気ヘッドでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、第1書き込み制御部、第2書き込み制御部および第3書き込み制御部の少なくとも一つは、外部環境、対象とする磁気カードの特性および書き込み内容の少なくとも一つに基づいて、第1書き込み電流値、第2書き込み電流値および第3書き込み電流値のそれぞれを変化させる。
【0044】
この構成により、環境変化に対応しつつ、書き込み時のクロストークノイズの影響を抑える。
【0045】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0046】
(実施の形態)
【0047】
(発明者による解析)
まず、現状の磁気ヘッドにおける問題についての発明者の解析を説明する。
図1は、磁気ヘッド200による磁気カード100への書き込みを行う様子を示す模式図である。磁気カード100が、
図1のカード走行方向の矢印に従って搬送される。搬送の過程で、磁気カード100に、磁気ヘッド200による書き込み(あるいは読み出し)が行われる。
【0048】
磁気ヘッド200は、第1ヘッドトラック201、第2ヘッドトラック202、第3ヘッドトラック203の3つのヘッドトラックを有する。この3つのヘッドトラックが備わることに対応して、磁気カード100も、3つの領域に分割される第1記録トラック101、第2記録トラック102、第3記録トラック103を備える。
【0049】
なお、3つのヘッドトラックや記録トラックは、磁気ヘッド200やこれを用いる磁気カードリーダーライターの規格や仕様によって定まる。このため、他の数のヘッドトラックや記録トラックが備わることでもよい。
図1では、一つの例として3つのヘッドトラックと記録トラックが備わっている場合を示している。
【0050】
磁気カード100は、矢印に示すカード走行方向に沿って搬送される。この搬送の過程で、磁気ヘッド200と接触する。磁気ヘッド200は、磁気カード100に書き込み電流を付与する。この書き込み電流の付与により、記録トラックには、所定のデータが書き込まれる。
【0051】
このとき、磁気ヘッド200は、第1ヘッドトラック201、第2ヘッドトラック202、第3ヘッドトラック203を備えている。このため、第1ヘッドトラック201は、第1記録トラック101に書き込み電流を付与する。第2ヘッドトラック202は、第2記録トラック102に書き込み電流を付与する。第3ヘッドトラック203は、第3記録トラック103に書き込み電流を付与する。
【0052】
図2は、3つのヘッドトラックによる書き込み電流を示すタイミングチャートである。
図2のタイミングチャートに示されるように、デジタル波形(矩形波)として、書き込み電流が付与される。このデジタル波形による書き込み電流により、第1記録トラック101~第3記録トラック103には、必要なデータが書き込みされる。
【0053】
ここで、
図2に示されるように、別のヘッドトラックから他のヘッドトラックへ、デジタル波形のエッジ部分からクロストークノイズが乗ってしまうことがある。デジタル波形のエッジ部分は、実際の付与電流においては、振幅および周波数の変化が急峻であり、この急峻な変化により、クロストークノイズが発生する。第1ヘッドトラック201、第2ヘッドトラック202、第3ヘッドトラック203は、隣接している。このため、例えば、第1ヘッドトラック201からのクロストークノイズが、第2ヘッドトラック202に乗ってしまうことがある。
【0054】
このクロストークノイズは、そのまま、磁気カード100に書き込まれる際に影響を及ぼす。
図2の例であれば、第1ヘッドトラック201から第2ヘッドトラック202へのクロストークノイズは、余分な書き込み電流として第2記録トラックに付与されてしまう。すなわち、第2ヘッドトラック202が付与する予定のない書き込み電流が、第2記録トラック102に付与されることになる。
【0055】
これは、書き込まれる際のノイズデータとなってしまう。
【0056】
図3は、
図1、
図2により書き込まれたデータを、磁気カードから読み取る状態を示す模式図である。
図1の第1ヘッドトラック201~第3ヘッドトラック203に対応して、磁気ヘッド200は、第1リードトラック301、第2リードトラック302、第3リードトラック303を備える。第1リードトラック301は、第1記録トラック101に記録されているデータを読み取る。第2リードトラック302は、第2記録トラック102に記録されているデータを読み取る。第3リードトラック303は、第3記録トラック103に記録されているデータを読み取る。
【0057】
このとき、第1リードトラック301~第3リードトラック303は、
図4のようなアナログ波形で、磁気カード100からデータを読み出す。磁気ヘッド200あるいはこれを用いる磁気カードリーダーライターは、読み出したアナログ波形をデジタル波形に変換する変換部を備えている。この変換によって、読み出したアナログ波形がデジタル波形として読み取られる。
【0058】
磁気ヘッド200を用いる磁気カードリーダーライターは、このデジタル波形により、磁気カード100に書き込まれていたデータを読む。しかしながら、
図2のような問題が起きていると、
図4、
図5に示されるように、クロストークノイズによる読み出し結果の相違が生じる。
【0059】
図4は、クロストークノイズの影響を受けて読み出されてデジタル変換された後のデータを示すタイミングチャートである。
図5は、書き込みして記録されたデータと、読み出しされたデータとの相違を示すタイミングチャートである。
図5に示されるように、第2記録トラック102では、書き込み時のデータと読み出し時のデータが不一致である。すなわち、書き込みをしたデータを、正確に読み出せていない。
【0060】
正確に読み出せないと、磁気カード100を用いた種々の利用用途やシステムにおいて問題が生じる。例えば、磁気カード100が、駐車場の清算用の駐車カードとして使用される場合には、書き込みと読み出しデータの相違により、正確な清算ができない問題がある。正確な清算ができないだけでなく、清算そのものがエラーとなってしまうこともあり得る。
【0061】
また、磁気カードがポイントカードとして利用されたり、入退室カードとして利用されたりする場合にも、ポイント記録がエラーとなったり、入退室ができなくなったりするなどの問題も生じる。
【0062】
発明者は、書き込み時のトラック間でのクロストークノイズが原因となって、読み出し時に、書き込み時のデータを正確に読み出せないことが、磁気ヘッドや磁気カードリーダーライターでのエラーの原因であることを解析した。
【0063】
(全体概要)
図6は、本発明の実施の形態1における磁気ヘッドの模式図である。磁気ヘッド1が磁気カード100への書き込みおよび読み出しを行うことができる構成を有していることを、模式的に示している。なお、磁気カード100との関係および動作を説明することを表しているので、実際の構造を示しているわけではない。
【0064】
磁気ヘッド1は、複数のヘッドトラック2を備える。複数のヘッドトラック2は、第1ヘッドトラック21、第2ヘッドトラック22および第3ヘッドトラック23を備える。第1ヘッドトラック21と第2ヘッドトラック22は隣接しており、第2ヘッドトラック22と第3ヘッドトラック23は隣接している。
図6に示すような位置関係を有する。
【0065】
第1ヘッドトラック21への書き込み電流である第1書き込み電流を付与する第1書き込み制御部41が備わる。第2ヘッドトラック22への書き込み電流である第2書き込み電流を付与する第2書き込み制御部42が備わる。第3ヘッドトラック23への書き込み電流である第3書き込み電流を付与する第3書き込み制御部43が備わる。
【0066】
第1書き込み制御部41は、第1ヘッドトラック21に第1書き込み電流の付与を制御する。この制御を受けた第1ヘッドトラックは、磁気カード100の第1記録トラック101に第1書き込み電流を付与する。第1ヘッドトラック21は、これにより、第1記録トラック101に第1書き込み電流に基づくデータを書き込む。
図2などに示すデジタル波形としての第1書き込み電流に基づいて、データが書き込まれる。
【0067】
このように、第1書き込み制御部41からの制御が、最終的に第1ヘッドトラック21によって第1記録トラックへの書き込みに繋がる。
【0068】
第2書き込み制御部42は、第2ヘッドトラック22に第2書き込み電流の付与を制御する。この制御を受けた第2ヘッドトラックは、磁気カード100の第2記録トラック102に第2書き込み電流を付与する。第2ヘッドトラック22は、これにより、第2記録トラック102に第2書き込み電流に基づくデータを書き込む。
図2などに示すデジタル波形としての第2書き込み電流に基づいて、データが書き込まれる。
【0069】
このように、第2書き込み制御部42からの制御が、最終的に第2ヘッドトラック22によって第2記録トラックへの書き込みに繋がる。
【0070】
第3書き込み制御部43は、第3ヘッドトラック23に第3書き込み電流の付与を制御する。この制御を受けた第3ヘッドトラックは、磁気カード100の第3記録トラック103に第3書き込み電流を付与する。第3ヘッドトラック23は、これにより、第3記録トラック103に第3書き込み電流に基づくデータを書き込む。
図2などに示すデジタル波形としての第3書き込み電流に基づいて、データが書き込まれる。
【0071】
このように、第3書き込み制御部43からの制御が、最終的に第3ヘッドトラック23によって第3記録トラックへの書き込みに繋がる。
【0072】
このようにして、磁気カード100に設けられた複数の記録トラックに、データが書き込まれる。
【0073】
ここで、第1書き込み電流である第1書き込み電流値、第2書き込み電流の値である第2書き込み電流値、第3書き込み電流である第3書き込み電流値は、不均一である。
【0074】
第1書き込み電流値は、デジタル波形である第1書き込み電流における最大値である。第2書き込み電流値は、デジタル波形である第2書き込み電流における最大値である。第3書き込み電流値は、デジタル波形である第3か込み電流における最大値である。
【0075】
第1書き込み電流値、第2書き込み電流値、第3書き込み電流値が不均一であることで、隣接する別のヘッドトラックからのクロストークノイズが乗りにくくなる。
【0076】
図6に示されるように、複数のヘッドトラック2は、第1ヘッドトラック21、第2ヘッドトラック22、第3ヘッドトラック23の順序で隣接しつつ並んでいる。
図2のように、隣接するヘッドトラックから、デジタル波形の立ち上がりや立下りなどでクロストークノイズが乗る可能性がある。しかしながら、第1書き込み電流値~第3書き込み電流値が不均一(相違)であることで、クロストークノイズが乗りにくくなる。
【0077】
書き込み電流値が異なるので、クロストークの影響が小さくなりやすいからである。隣接での干渉が、異なる電流値によって、生じにくくなりあるいは小さくなり、クロストークノイズの影響が小さくなりやすいからである。
【0078】
第2ヘッドトラック22は、第1ヘッドトラック21と第3ヘッドトラック23に挟まれており、第1ヘッドトラック21と第2ヘッドトラック22の相互誘導、第2ヘッドトラック22と第3ヘッドトラック23の相互誘導により第1ヘッドトラック21の書き込み電流と第3ヘッドトラック23の書き込み電流により第2ヘッドトラック書き込み電流により生じる漏れ磁束(磁気ヘッドの隙間から出る漏れ磁束)が乱される(電流波形では検出できない)。その漏れ磁束によりカードに書き込みされて磁気リード時に小さな変動となって現れる。
【0079】
であるので、全体の電流を下げてやれば影響は少なくなるが、リード時に必要な振幅かつ多少のカードと磁気ヘッドの隙間が開いても正常なリード振幅を保つには書き込み電流は極端に小さくすることができない。
【0080】
このため影響が少ないレベルで第2ヘッドトラック22の両側のヘッドトラックの記録電流を小さくしてやり、かつその電流値より大きな電流を第2ヘッドトラック22に流すことで、第2ヘッドトラック22に現れる磁束の影響を少なくする事ができる。
【0081】
また、
図6においては、複数のリードトラック3が備わり、複数のリードトラック3は、第1リードトラック31、第2リードトラック32、第3リードトラック33を備える。第1リードトラック31は、磁気カード100の第1記録トラック101から記録されているデータを読み出す。
【0082】
第2リードトラック32は、磁気カード100の第2記録トラック102から記録されているデータを読み出す。第3リードトラック33は、磁気カード100の第3記録トラック103から、記録されているデータを読み出す。
【0083】
ここで、上述のように第1書き込み電流値、第2書き込み電流値および第3書き込み電流値が不均一であることで、第1記録トラック101、第2記録トラック102、第3記録トラック103には、書き込み時のクロストークノイズに起因するノイズの影響を受けてない。このため、複数のリードトラック3は、書き込み時の書き込むべきデータを、正確に読み出せる。
【0084】
このように、第1書き込み電流値、第2書き込み電流値、第3書き込み電流値のそれぞれが不均一であることで、隣接するヘッドトラック2でのクロストークノイズの影響が抑えられている。これにより、書き込みエラーや、書き込みエラーに基づく読み出しエラーを防止できる。
【0085】
(書き込み電流値の相違)
【0086】
(その1:第2電流値が最も大きい)
第1ヘッドトラック21、第2ヘッドトラック22、第3ヘッドトラック23は、
図6のような位置関係を有する。すなわち、第2ヘッドトラック22は、第1ヘッドトラック21と第3ヘッドトラック23とに挟まれる位置関係を有する。
【0087】
このような構成において、第2ヘッドトラック22が付与する第2書き込み電流値は、第1書き込み電流値および第3書き込み電流値よりも大きい。複数のヘッドトラック2において、中央に位置する第2ヘッドトラック22の第2書き込み電流値が、両側の第1書き込み電流値および第3書き込み電流値よりも大きい。このことにより、両側からのクロストークノイズにさらされる第2ヘッドトラック22には、自身の書き込み電流である、第2書き込み電流値よりも小さな書き込み電流値が、両サイドから影響を及ぼす。これにより、両サイドからのクロストークノイズが、第2ヘッドトラック22には影響を及ぼしにくい。
【0088】
図7は、本発明の第1書き込み電流値、第2書き込み電流値、第3書き込み電流値の相違を表す模式図である。
【0089】
第2ヘッドトラック22が第2記録トラック102に書き込む際の第2書き込み電流値は、両サイドのヘッドトラックでの第1書き込み電流値と第2書き込み電流値よりも大きい。
【0090】
第2ヘッドトラック22は、第1ヘッドトラック21と第3ヘッドトラック23とに挟まれている。このため、第2ヘッドトラック22には、両サイドから、第1ヘッドトラック21と第3ヘッドトラック23のクロストークノイズの影響を受けやすい。しかしながら、
図7のように、第1書き込み電流値と第3書き込み電流値とは、第2書き込み電流値よりも小さい。これにより、第1書き込み電流や第3書き込み電流によるクロストークノイズは、第2ヘッドトラックに乗りにくい。第2ヘッドトラック22が付与する第2書き込み電流値が大きいからである。
【0091】
図7は、本発明の実施の形態1における3つの書き込み電流値の関係を示す模式図である。
【0092】
一方で、第1ヘッドトラック21および第2ヘッドトラック23には、第2ヘッドトラック22しか隣接していない。このため、片側からの影響しか受けないので、クロストークノイズはそもそも乗りにくい。
【0093】
このように、
図7のような書き込み電流値の相違を持たせることで、第1ヘッドトラック21、第2ヘッドトラック22、第3ヘッドトラック23のそれぞれにおける、隣接ヘッドトラックからのクロストークノイズを抑制できる。結果として、書き込みエラーが抑制でき、書き込みエラーに起因する読み出しエラーが生じにくい。
【0094】
(その2:第1書き込み電流値と第3書き込み電流値の略同一)
第2書き込み電流値が、第1書き込み電流値および第3書き込み電流値よりも大きい状態である。さらに、第1書き込み電流値および第3書き込み電流値が、略同一であることも好適である。
【0095】
図8は、本発明の実施の形態1における3つの書き込み電流値の関係を示す模式図である。
図8に示されるように、第1書き込み電流値と第3書き込み電流値は、略同一である。あわせて、第2書き込み電流値は、第1書き込み電流値と第3書き込み電流値よりも大きい。
【0096】
このような書き込み電流値の相違の関係を有することで、中央に位置する第2ヘッドトラック22には、両サイドからのクロストークノイズが乗りにくい。加えて、両サイドの第1ヘッドトラック21と第3ヘッドトラック23のそれぞれは、第2ヘッドトラック22としか隣接しないので、そもそもクロストークノイズが乗りにくい。
【0097】
これらの状況が相まって、3つのヘッドトラックのそれぞれには、隣接するヘッドトラックからのクロストークノイズが、書き込み時に乗りにくい。クロストークノイズが乗りにくいことで、書き込み時において、書き込み違いが生じにくい。
図2のような問題が生じにくい。
【0098】
図2のような書き込み時における書き込み違いが生じにくいことで、書き込もうとしたデータと読み出したデータとが相違する問題も解消される。
【0099】
(その3:第1書き込み電流値と第3書き込み電流値)
一例として、第1書き込み電流値と第3書き込み電流値は、480mAであり、第2書き込み電流値は、560mAである。その2のように、第1書き込み電流値と第3書き込み電流値は略同一の480mAであり、第2書き込み電流値は、これらより大きな560mAである。
【0100】
このような電流値の違いを有することで、その2で説明したように、複数のヘッドトラック2のそれぞれにおいて、隣接するヘッドトラックからのクロストークノイズの影響を受けることを抑制できる。抑制できる結果、書き込み時に書き込み間違い(書き込みエラー)を生じさせることを抑制できる。
【0101】
上述のような書き込み電流値で、第1ヘッドトラック21~第3ヘッドトラックが動作することで、クロストークノイズが乗りにくく、また、書き込み動作において、十分な処理を行える。特に、規格や仕様にも対応できる。
【0102】
また、一例としての書き込み電流値が上記のようであることで、(1)第1ヘッドトラック21、第2ヘッドトラック22、第3ヘッドトラック23のそれぞれにおいて、書き込みが十分に行える、(2)第2ヘッドトラック22への両サイドである第1ヘッドトラック21および第3ヘッドトラック23からのクロストークノイズが乗りにくいだけの電流値の差がある、(3)第2ヘッドトラック22から、第1ヘッドトラック21もしくは第3ヘッドトラック23へのクロストークノイズが乗りにくい電流値の差分で収まっている、ということがバランスよく実現されている。
【0103】
もちろん、これらの電流値は、一例である。他の電流値が採用されもよい。いずれにしても、上記(1)~(3)を満足する電流値が、第1書き込み電流値~第3書き込み電流値に採用されればよい。また、その場合には、磁気カードリーダーライターなどの磁気ヘッド1を用いる規格や仕様を考慮して定められればよい。
【0104】
(書き込み制御部)
第1書き込み制御部41は、第1ヘッドトラック21に、第1書き込み電流値を付与するように制御する。第2書き込み制御部42は、第2ヘッドトラック22に、第2書き込み電流値を付与するように制御する。第3書き込み制御部43は、第3ヘッドトラック23に、第3書き込み電流値を付与するように制御する。
【0105】
ここで、上記その1~その3の場合においては、第1書き込み制御部41および第3書き込み制御部43のそれぞれは、第1ヘッドトラック21および第3ヘッドトラック23のそれぞれに、略同一の書き込み電流値を付与するように制御する。また、第2書き込み制御部42は、第2ヘッドトラック22に、第1書き込み電流値および第3書き込み電流値とは、異なる値の第2書き込み電流値を付与するように制御する。
【0106】
(磁気カードへの書き込み)
磁気ヘッド1は、磁気カード100の磁性体への書き込みを行う。ここで磁性体が、
図1などのように、磁気ヘッド1の複数のヘッドトラックに対応して複数の記録トラックを有する。ここでは、磁性体は、第1記録トラック101、第2記録トラック102、第3記録トラック103を備える。
【0107】
磁性体は、磁気カード100の表面もしくは裏面の全体に設けられてもよいし、一部に設けられてもよい。この磁性体領域が、上記のように、一例として第1記録トラック101~第3記録トラック103とを含んでいる。もちろん、他の数の記録トラックを備える構成でもよい。ただし、磁気カード100の磁性体が備える記録トラックと磁気ヘッドのヘッドトラックの数および位置がそろっていることが必要である。
【0108】
磁気カード100が、磁気ヘッド1に接触しながら通過することで、磁気ヘッド1は、磁気カード100の第1記録トラック101~第3記録トラック103への書き込みを行う。あるいは、磁気ヘッド1は、第1記録トラック101~第3記録トラック103に記録されているデータの読み出しを行う。
【0109】
ここで、第1ヘッドトラック21は、第1記録トラック101への書き込みに対応する。第2ヘッドトラック22は、第2記録トラック102への書き込みに対応する。第3ヘッドトラック23は、第3記録トラック103への書き込みに対応する。
【0110】
このような対応関係により、磁気ヘッド1は、磁気カード100に必要となるデータを書き込む。このとき、第1ヘッドトラック21は、第1書き込み電流値で第1記録トラック101へ書き込む。第2ヘッドトラック22は、第2書き込み電流値で、第2記録トラック102へ書き込む。第3ヘッドトラック23は、第3書き込み電流値で、第3記録トラック103へ書き込む。
【0111】
第1書き込み電流値~第3書き込み電流値のそれぞれの関係は、上述したように、不均一である。あるいは、第2書き込み電流値が第1書き込み電流値および第3書き込み電流値よりも大きい。あるいは、第1書き込み電流値と第3書き込み電流値が略同一であって、第2書き込み電流値は一番大きい。
【0112】
このような関係性を有することで、
図2などを用いて説明した書き込みエラーや、書き込みエラーに起因する読み出しエラーが抑制できる。この抑制の結果、第1ヘッドトラック21は、第1記録トラック101に、正しくデータを書き込める。第2ヘッドトラック22は、第2記録トラック102に、正しくデータを書き込める。第3ヘッドトラック23は、第3記録トラック103に、正しくデータを書き込める。
【0113】
(書き込み電流値の変化)
図9は、本発明の実施の形態1における磁気ヘッドの構成を示す模式図である。
図9の磁気ヘッド1は、制御部7を更に備えている。制御部7は、第1書き込み制御部41、第2書き込み制御部42、第3書き込み制御部43を、制御する。
【0114】
制御部7は、磁気ヘッド1が使用される外部環境、対象とする磁気カード100の特性および書き込み内容の少なくとも一つを測定する。この測定結果に基づいて、第1書き込み制御部41~第3書き込み制御部43での、書き込み電流値を制御させる。
【0115】
すなわち、第1書き込み制御部41、第2書き込み制御部42および第3書き込み制御部43の少なくとも一つは、磁気ヘッド1が使用される外部環境、対象とする磁気カード100の特性および書き込み内容の少なくとも一つに基づいて、第1書き込み電流値、第2書き込み電流値および第3書き込み電流値のそれぞれを変化させることも好適である。
【0116】
例えば、第1書き込み電流値、第2書き込み電流値、第3書き込み電流値のそれぞれは、
図8のような関係を有するとする(第1書き込み電流値と第3書き込み電流値は略同一であり、第2書き込み電流値は、これらより大きい)。
【0117】
使用される外部環境が変化すると、第2書き込み電流値と他の書き込み電流値の差分を大きくしたり小さくしたりする。あるいは、磁気カード100の種類や特性が変化することに合わせて、第2書き込み電流値と他の書き込み電流値の差分を大きくしたり小さくしたりする。これら以外に、第1書き込み電流値~第3書き込み電流値の値そのものを変化させたりする。
【0118】
制御部7は、このような第1書き込み制御部41~第3書き込み制御部43での変化を制御する。
【0119】
使用される外部環境が変わると、クロストークノイズの影響の度合いが変わることがある。例えば、周囲に高電圧の電子機器がある場合には、クロストークノイズの影響が低くなる。この場合には、第2書き込み電流値と他の書き込み電流値との差分を小さくしてもよい。あるいは、磁気カード100の磁性体の精度が高い場合や記録トラックの分離が高い精度でなされている場合には、クロストークノイズの影響が低くなる。この場合にも、第2書き込み電流値と他の書き込み電流値との差分を小さくしてもよい。逆の場合には、差分を大きくする。
【0120】
あるいは、書き込み内容が、単純であるか複雑であるかなどの違いによっても、第1書き込み電流値~第3書き込み電流値を変化させてもよい。
【0121】
例として、
図8のような第1書き込み電流値~第3書き込み電流値の関係がある場合での変化を説明したが、不均一である状態での様々な変化を行わせてもよい。例えば、第1書き込み電流値、第2書き込み電流値、第3書き込み電流値のそれぞれの値をすべて異ならせるようにしてもよい。
【0122】
このように、第1書き込み制御部41~第3書き込み制御部43は、使用される外部環境、磁気カードの特性および書き込み内容の少なくとも一つに基づいて、書き込み電流値を変化させることも好適である。
【0123】
以上のように、実施の形態1における磁気ヘッド1は、複数のヘッドトラック2を有していても、隣接するヘッドトラックからのクロストークノイズの影響を抑えることができる。また、抑えることで、本来と異なる書き込みエラーを防止し、読み出しエラーも防止できる。結果として、書き込むべきデータと読み出しデータの相違が生じる問題を防止できる。
【0124】
(実施の形態2)
【0125】
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1で説明した磁気ヘッド1を用いた磁気カードリーダーライターについて説明する。
【0126】
図10は、本発明の実施の形態2における磁気カードリーダーライターのブロック図である。磁気カードリーダーライター(以下、必要に応じて「リーダーライター」と略す)300は、実施の形態1で説明した磁気ヘッド1と、磁気ヘッドを制御する制御部302、磁気カード100を搬送する搬送部304、電源303と、筐体301を備える。
【0127】
筐体301は、磁気ヘッド1、制御部302、搬送部304、電源303を格納する。
図10では、内部構成が分かるように示しているが、実際のリーダーライター300は、これらを内部に格納した状態である。磁気ヘッド1は、実施の形態1で説明した通りである。磁気カード100の記録トラックへの書き込みと、記録トラックからの読み出しを、トラックのそれぞれにおいて行う。また、隣接するヘッドトラックからのクロストークノイズの影響を抑制している。
【0128】
制御部302は、磁気ヘッド1を制御する。例えば、書き込むデータの付与や、読み出されたデータの復号などを行う。もちろん、マイコンによる制御を含むこともある。
【0129】
電源303は、制御部302や磁気ヘッド1に電力を供給する。外部と切り離されたバッテリーを備えた電源303でもよいし、AC電力網から電力を得る電源303であってもよい。
【0130】
搬送部304は、磁気カード100を、筐体301内部で搬送する。筐体301には、磁気カード100の挿入口が備わり、磁気カード100はこの挿入口から挿入される。搬送部304は、挿入された磁気カード100を、筐体301内部で搬送する。この搬送によって、磁気カード100は、磁気ヘッド1との接触を行える。この接触時に、書き込み電流の付与がなされて、磁気カード100の記録トラックにデータが書き込みされる。
【0131】
読み出しにおいても同様である。
【0132】
リーダーライター300は、このようにして、磁気カード100を搬送して、書き込みと読み出しを実現する。実施の形態1で説明した通り、書き込み時に、クロストークノイズの影響を、磁気カード100の記録トラックに及ぼさないので、書き込もうとしたデータと読み出しデータとの相違を生じさせることを抑制できる。
【0133】
このようなリーダーライター300により、例えば、異なる製造業者のリーダーライターが混在していたり、異なる型番が混在していたりしても、書き込み時に問題を生じさせないことで、磁気カード100の読み出しでのエラーを生じさせずに済む。このため、既存のシステムにおいて、既存のリーダーライターが使用されている状態に、新しくリーダーライターが導入される場合には、実施の形態2でのリーダーライター300が導入されることで、異なるリーダーライターによる書き込みエラーや読み出しエラーを生じさせずに済む。
【0134】
図11から
図14においては、本発明が従来技術のようなエラーを生じさせないことおよび本発明での解決を説明している。
図11は、従来技術における書き込みエラーが生じることで、読み出し時のデータと書き込み時のデータとの相違が生じることを説明する説明図である。
図11において、クロストークノイズによる影響で、書き込み時にうねりが生じている。このうねりが読み出し時における波形では、凹みとなっている。この凹みが閾値未満であれば、波形整形された読み出し波形において、本来は「Highレベル」として書き込まれたのに、「Lowレベル」として読み出されてしまう問題がある。すなわち、書き込みデータと読み出しデータとが相違することになってしまう。
【0135】
これが従来技術におけるクロストークノイズによる問題であった。
【0136】
図12は、本発明による改善結果を示す説明図である。
【0137】
本発明の実施の形態で説明してきたように、書き込み時におけるクロストークノイズの影響を抑制している。この書き込み時のクロストークノイズの影響の抑制により、
図11の同じ場所でのうねりは小さく抑えられている。うねりが小さく抑えられていることで、読み出し波形の凹みは、
図11よりも小さくなっている。このことにより、凹み部分は閾値を下回っていない。結果として、本来書き込んだ「Highレベル」のままで波形整形される。これにより読み出しデータは、書き込みデータとの相違を生じさせない。
【0138】
図13は、
図11と
図12との両方をまとめた状態を示している説明図である。
図13の上には、従来技術のように復号に至ると書き込みデータと相違する結果を生じることが示されている。
図13の下には、本発明による改善結果が示されている。
【0139】
図14は、従来技術の磁気ヘッドでの書き込みと読み出しを行った実験結果を示す説明図である。
図14の波形は、実際のエラーが生じていることを示している。従来技術の磁気ヘッドでは、実際にこのようなエラーが生じてしまっていた。
図12、
図13に示すように、本発明はこのようなエラーの発生原因である、書き込み時のエラーを解消して、根本的に解決している。
【0140】
以上のように、実施の形態2のリーダーライター300は、書き込みエラーやこれに起因する読み出しエラーを生じさせずに、様々な場所や用途で最適に使用できる。
【0141】
なお、実施の形態で説明された磁気ヘッドは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0142】
1 磁気ヘッド
2 ヘッドトラック
21 第1ヘッドトラック
22 第2ヘッドトラック
23 第3ヘッドトラック
3 読み出しトラック
41 第1書き込み制御部
42 第2書き込み制御部
43 第3書き込み制御部
7 制御部
100 磁気カード
101 第1記録トラック
102 第2記録トラック
103 第3記録トラック
200 磁気ヘッド
201 第1ヘッドトラック
202 第2ヘッドトラック
203 第3ヘッドトラック