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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 11/04 20060101AFI20240329BHJP
   G01G 11/00 20060101ALI20240329BHJP
   G01G 23/01 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G01G11/04
G01G11/00 H
G01G23/01 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020049962
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021148659
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100192511
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】樽本 祥憲
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-173248(JP,A)
【文献】特開平07-209066(JP,A)
【文献】特開2000-258237(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141670(WO,A1)
【文献】特開2012-208083(JP,A)
【文献】特開2017-138247(JP,A)
【文献】特開2008-268068(JP,A)
【文献】特開2010-071948(JP,A)
【文献】特開2008-058251(JP,A)
【文献】特開2011-012993(JP,A)
【文献】特開昭62-285025(JP,A)
【文献】米国特許第05178227(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00-11/20,21/00-23/48
B07C 5/16-5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送可能な搬送部と、
前記搬送部に加わる力の計量成分に対応する原信号を出力する計量部と、
前記計量部が受ける外乱振動に対応する振動原信号を出力する外乱振動検出部と、
前記原信号に少なくとも基づいて、前記搬送部の動作中に前記搬送部上に前記物品が位置する場合の計量処理を行う処理部と、を備え、
前記処理部は、
前記搬送部の動作中に前記搬送部上に前記物品が位置していない場合に出力される前記原信号及び前記振動原信号に基づいて、前記原信号を複数の所定のデジタルフィルタにてフィルタリング処理することによって得られる複数の計量信号と、前記振動原信号を複数の所定のデジタルフィルタにてフィルタリング処理することによって得られる複数の振動信号と、を生成し、
複数の前記計量信号に基づいて第1計量値候補を生成し、複数の前記計量信号と複数の前記振動信号とに基づいて第2計量値候補を生成し、
前記第1計量値候補と前記第2計量値候補との比較を行い、前記比較の結果に基づいて前記振動原信号を用いた前記計量処理を行うか否かの判定処理を行い、前記判定処理の判定結果に応じて前記計量処理を行う、計量装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記振動原信号を用いた前記計量処理を行うと判定した場合、前記原信号及び前記振動原信号を用いて前記計量処理を行い、
前記振動原信号を用いた前記計量処理を行わないと判定した場合、前記振動原信号を用いないで前記計量処理を行う、請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
表示情報を表示する表示部と、
前記振動原信号を用いた前記計量処理を行うか否かを選択するための選択入力操作を受け付ける入力部と、を更に備え、
前記処理部は、
前記原信号及び前記振動原信号に関する比較についての前記表示情報を前記表示部に表示させ、
前記振動原信号を用いた前記計量処理を行うとの前記選択入力操作を受け付けた場合、前記振動原信号を用いた前記計量処理を行うと判定し、
前記振動原信号を用いた前記計量処理を行わないとの前記選択入力操作を受け付けた場合、前記振動原信号を用いた前記計量処理を行わないと判定する、請求項1に記載の計量装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記比較として、前記第1計量値候補の波形の標準偏差のうち最も小さい第1標準偏差と、前記第2計量値候補の波形の標準偏差のうち最も小さい第2標準偏差とを比較する、請求項に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品が搬送される搬送部と、搬送部に加わる物品の荷重の計量成分に対応する原信号を出力する計量部と、計量部が受ける外乱振動に対応する振動原信号を出力する外乱振動検出部と、原信号及び振動原信号に基づいて、物品の荷重についての計量処理を行う処理部と、を備える計量装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-39355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような計量装置においては、外乱振動検出部の検出結果は、計量装置が設置される場所の振動状況等に応じて、所定のフィルタリング処理のフィルタ特性及び感度の調整をすることで、計量装置の計量性能を十分に発揮させるように計量処理に用いることができる。しかしながら、このようなフィルタ特性及び感度を調整する外乱振動検出部の設定作業は、単なる計量装置の使用者にとっては困難である。よって、外乱振動検出部の検出結果を用いる場合、通常、計量装置の設計者又は熟練者による設定作業が要される。
【0005】
本開示は、物品の荷重についての計量処理を行う際に計量部の原信号に加えて外乱振動検出部の振動原信号を用いるか否かについて、計量装置の使用者の設定作業の負担軽減を図ることが可能となる計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る計量装置は、物品を搬送可能な搬送部と、搬送部に加わる力の計量成分に対応する原信号を出力する計量部と、計量部が受ける外乱振動に対応する振動原信号を出力する外乱振動検出部と、原信号に少なくとも基づいて、搬送部の動作中に搬送部上に物品が位置する場合の計量処理を行う処理部と、を備え、処理部は、搬送部の動作中に搬送部上に物品が位置していない場合に出力される原信号及び振動原信号に基づいて、振動原信号を用いた計量処理を行うか否かの判定処理を行い、判定処理の判定結果に応じて計量処理を行う。
【0007】
この計量装置によれば、処理部によって、搬送部の動作中に搬送部上に物品が位置していない場合に(いわゆる空運転時に)出力される原信号及び振動原信号に基づいて、振動原信号を用いた計量処理を行うか否かが判定される。判定処理の判定結果に応じて、処理部によって計量処理が行われる。これにより、計量部の原信号に加えて外乱振動検出部の振動原信号を用いた方が適切か、あるいは外乱振動検出部の振動原信号を用いない方が適切かが、計量装置及びその周囲の状況(例えば、計量装置自体の振動、外部から計量装置に伝達される振動等)に応じて処理部の判定結果として得られるため、例えば計量装置の設計者又は熟練者による設定作業を省くことが可能となる。したがって、上記計量装置によれば、物品の荷重についての計量処理を行う際に計量部の原信号に加えて外乱振動検出部の振動原信号を用いるか否かについて、計量装置の使用者の設定作業の負担軽減を図ることが可能となる。
【0008】
処理部は、振動原信号を用いた計量処理を行うと判定した場合、原信号及び振動原信号を用いて計量処理を行い、振動原信号を用いた計量処理を行わないと判定した場合、振動原信号を用いないで計量処理を行ってもよい。この場合、処理部の判定結果を利用して、処理部が計量処理を行う際に振動原信号を用いるか否かを自動的に選択することができる。
【0009】
上記計量装置は、表示情報を表示する表示部と、振動原信号を用いた計量処理を行うか否かを選択するための選択入力操作を受け付ける入力部と、を更に備え、処理部は、原信号及び振動原信号に関する比較についての表示情報を表示部に表示させ、振動原信号を用いた計量処理を行うとの選択入力操作を受け付けた場合、振動原信号を用いた計量処理を行うと判定し、振動原信号を用いた計量処理を行わないとの選択入力操作を受け付けた場合、振動原信号を用いた計量処理を行わないと判定してもよい。この場合、例えば表示部に表示された原信号及び振動原信号に関する比較についての情報を計量装置の使用者が参照することで、計量処理を振動原信号を用いて行うか否かを計量装置の使用者が入力部を介して選択することができる。
【0010】
処理部は、原信号を所定のデジタルフィルタにてフィルタリング処理することによって得られる計量信号と、振動原信号をデジタルフィルタにてフィルタリング処理することによって得られる振動信号と、を生成し、計量信号に基づいて第1計量値候補を生成し、計量信号と振動信号とに基づいて第2計量値候補を生成し、第1計量値候補と第2計量値候補との比較を行い、比較の結果に基づいて判定処理を行ってもよい。この場合、外乱振動検出部の振動原信号を用いる方が適切か、あるいは外乱振動検出部の振動原信号を用いない方が適切かを、計量信号に基づいて生成される第1計量値候補と、計量信号と振動信号とに基づいて生成される第2計量値候補との比較の結果に基づいて判定することができる。
【0011】
処理部は、上記比較として、第1計量値候補の波形の標準偏差のうち最も小さい第1標準偏差と、第2計量値候補の波形の標準偏差のうち最も小さい第2標準偏差とを比較してもよい。この場合、第1計量値候補の波形及び第2計量値候補の波形のうち、振幅のばらつき度合いが小さい方を、計量装置及びその周囲の状況に適するものとして採用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、物品の荷重についての計量処理を行う際に計量部の原信号に加えて外乱振動検出部の振動原信号を用いるか否かについて、計量装置の使用者の設定作業の負担軽減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る計量装置の概略構成図である。
図2】制御部の機能的な構成を示す図である。
図3図1の計量装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図4図1の計量装置の処理の他の例を示すフローチャートである。
図5】変形例に係る計量装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係る計量装置の概略構成図である。図1に示される計量装置1は、図1中の矢印の方向(以下、単に「搬送方向」とする)に測定対象物を搬送しながら計量する装置である。計量装置1は、例えば、生産ラインの最終ラインに配置される装置である。測定対象物は、例えば搬送方向に沿って延在する物品Pである。計量装置1は、搬送部2と、架台3と、計量部4と、操作部6と、AFV(Anti Floor Vibration)セル(外乱振動検出部)14と、を備える。
【0016】
搬送部2は、物品Pを搬送方向に沿って搬送可能な搬送装置であり、例えばコンベアである。搬送部2は、例えば操作部6を介して指定された搬送速度にて、物品Pを搬送する。搬送速度は、操作部6を介して指定される。搬送部2は、第1コンベア部2aと、第2コンベア部2bと、第3コンベア部2cとを備える。第1コンベア部2aと、第2コンベア部2bと、第3コンベア部2cとのそれぞれは、例えば、ローラ、モータ等の回転体、及び搬送ベルトなどを有する。第1コンベア部2a、第2コンベア部2b及び第3コンベア部2cは、搬送方向の上流側から順番に配置される。すなわち、第2コンベア部2bは、搬送方向において第1コンベア部2aと第3コンベア部2cとの間に位置する。第1コンベア部2aは、第2コンベア部2bに物品Pを搬入するコンベアである。第1コンベア部2aは、例えば、図示しない金属検出機等を有してもよい。第2コンベア部2bは、第1コンベア部2aから搬送された物品Pを第3コンベア部2cに搬入するコンベアである。第3コンベア部2cは、第2コンベア部2bから物品Pを搬出するコンベアである。第3コンベア部2cは、例えば、重量が適正範囲から逸脱している物品Pを振り分ける振分機(図示しない)を有する。
【0017】
第2コンベア部2bには、計量部4が装着されている。このため、搬送部2にて搬送される物品Pは、第2コンベア部2b上にて計量される。また、第2コンベア部2bの上流側及び下流側のそれぞれには、物品Pの有無を検知するセンサが設けられてもよい。この場合、物品Pの全体が第2コンベア部2b上に位置しているか否かを容易に判断できる。
【0018】
架台3は、計量部4を収容する部材であり、搬送部2の下方にて床Fに固定される。架台3は、計量部4及びAFVセル14を収容する本体3a、及び本体3aと床Fとの間に位置する複数の脚3bを有する。図1においては、本体3aは破線にて示される。
【0019】
計量部4は、第2コンベア部2b上に位置する物品Pの重量を計量する検出器であり、例えば搬送部2の中央部に位置する。計量部4は、負荷に応じた圧縮及び引張を受ける起歪体11と、第2コンベア部2b上に位置する物品Pを計量する計量セル12とを備える。起歪体11は、第2コンベア部2bを支持する可動剛体部11aと、架台3に固定される固定剛体部11bとを有する。可動剛体部11aと固定剛体部11bとのそれぞれは、例えば鉛直方向に延在する部材である。可動剛体部11aの一端は第2コンベア部2bの上流側端部に接続され、可動剛体部11aの他端は計量セル12に接続される。固定剛体部11bの一端は計量セル12に接続され、固定剛体部11bの他端は架台3の本体3aに接続される。図示しないが、計量セル12では、起歪体11に貼着された複数のストレインゲージがホイートストンブリッジ回路に接続される。
【0020】
AFVセル14は、計量セル12を含む計量装置1の外乱振動を検出する検出器である。AFVセル14は、計量セル12の固定剛体部11bに設けられており、計量装置1が配置された床Fから計量装置1に伝わる振動や搬送部2(架台3に連結された第1コンベア部2a及び第3コンベア部2c)の振動等を検出する。AFVセル14は、計量部4が受ける外乱振動を検出し、この外乱振動に対応する振動原信号を出力する。
【0021】
本実施形態では、計量部4は、起歪体11、計量セル12、及びAFVセル14に加えて、A/D変換部を有する。計量セル12は、起歪体11から伝達される負荷に応じた電気信号を上記ホイートストンブリッジ回路から取り出す。この電気信号は、第2コンベア部2bに加わる力の計量成分に対応するアナログ原信号である。また、AFVセル14から出力される振動原信号は、アナログ原信号である。これらのアナログ原信号は、A/D変換部によってデジタル原信号及びデジタル振動原信号に変換される。計量部4は、当該デジタル原信号及びデジタル振動原信号を外部に出力する(以下、単に「原信号」及び「振動原信号」と記す)。これにより、計量部4から操作部6へ出力するデータ量を低減できる。
【0022】
計量部4は、第2コンベア部2bに加わる力の計量成分に対応する原信号を出力する。計量成分とは、第2コンベア部2bに加わる力(負荷)の鉛直下向き方向の成分である。搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置していない場合、計量装置1によって発生する振動による力、及び、計量装置1の周囲によって発生する振動による力が、第2コンベア部2bに加わる。計量装置1によって発生する振動には、搬送部2の動作に伴う振動、物品Pが搬送部2に搬送されるときに生じる振動等が含まれる計量装置1の周囲によって発生する振動には、例えば、計量装置1が載置される床面から伝達される振動(床振動)等が含まれる。床振動は、例えば、計量装置1を含む物品Pの製造ラインに設置される装置、当該製造ラインには含まれていない装置等に起因した振動である。搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置している場合、計量装置1によって発生する振動による力、及び、計量装置1の周囲によって発生する振動による力に加えて、物品Pに働く重力による力が、第2コンベア部2bに加わる。
【0023】
操作部6は、搬送部2及び計量部4を操作するための制御盤であり、例えば第2コンベア部2bの近傍に立設される。操作部6は、表示インターフェース7と、制御部8と、を有する。
【0024】
表示インターフェース7は、制御部8から出力される表示情報を表示する部材(表示部)である。表示インターフェース7は、例えば、計量された物品Pの重量を示す計量値、物品Pの計量精度を示す精度情報、搬送部2の搬送速度、搬送方向に沿った物品Pの寸法、物品Pの搬送頻度、物品Pの計量ピッチ等を表示する。本実施形態では、表示インターフェース7は、外部入力部として機能するタッチパネル7aを有する。これにより、表示インターフェース7が作業者(使用者)からの入力を受け付けると、入力内容を示す入力情報は、制御部8に出力される。入力情報は、例えば、搬送部2の搬送速度、搬送方向に沿った物品Pの寸法、物品Pの種類、物品Pの搬送頻度等に関するデータである。物品Pの搬送頻度は、例えば計量装置1の上流に位置する生産機の能力に基づいて設定される。
【0025】
物品Pの計量値と、精度情報とのそれぞれは、計量部4から操作部6に出力される原信号に基づいて得られるデータである。また、物品Pの計量ピッチは、搬送部2の搬送速度、物品Pの上記寸法、物品Pの搬送頻度に基づき、制御部8によって算出される。
【0026】
制御部8は、計量装置1に含まれる各部材を制御するコントローラであり、操作部6に内蔵される。制御部8は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等によって構成される。制御部8は、例えば、表示インターフェース7を介して指定された搬送部2の搬送速度を制御する動作信号を、搬送部2へ出力する。また、例えば、第3コンベア部2cに振分機が設けられている場合であって、制御部8が物品Pの重量が予め設定された適正範囲から逸脱していると判断した場合、制御部8は、当該物品Pを振り分ける(ラインから除外する)ように、振分機に動作信号を出力する。制御部8は、計量装置1に含まれる各部材の制御だけでなく、各種信号の受信/演算/送信、及び各種信号の記録/読み出し等も実施する。制御部8による各種信号の演算の例として、物品Pの計量結果の導出が挙げられる。すなわち、制御部8は、原信号に少なくとも基づいて、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置する場合の計量処理を行う処理部である。このため、制御部8は、例えば、搬送部2に制御信号を出力するための駆動回路、計量部4にて生成される原信号から物品Pの計量値を演算するための駆動回路、当該原信号から上記精度情報を演算するための駆動回路、各信号及び各情報を記憶する記憶回路等を有する。
【0027】
図2は、制御部の機能的な構成を示す図である。図2に示されるように、制御部8は、受信部21と、フィルタ部22と、演算部23と、出力部24と、記憶部25と、を有する。
【0028】
受信部21は、例えば、計量部4から出力される原信号及び振動原信号と、表示インターフェース7から送信される入力情報とを受信する部分である。受信部21への原信号及び振動原信号の出力と、表示インターフェース7から受信部21への入力情報の送信とのそれぞれは、有線を介して実施されてもよいし、無線を介して実施されてもよい。受信部21は、原信号、振動原信号及び入力情報以外のデータを受信してもよい。
【0029】
フィルタ部22は、予め記憶される複数のデジタルフィルタを用いて、原信号及び振動原信号をフィルタリング処理する部分である。複数のデジタルフィルタのそれぞれは、予め定められた周波数を超える周波数成分を減衰させるローパスフィルタ、搬送部2に含まれる回転体の周波数のノイズを減衰させるノッチフィルタ(バンドストップフィルタ)等から構成される。すなわち、複数のデジタルフィルタの少なくとも一部を選択した場合、フィルタ部22は、原信号及び振動原信号に対して多段階のフィルタリング処理を実施できる。各デジタルフィルタには、一又は複数のローパスフィルタ、一又は複数のノッチフィルタが含まれ得る。複数のデジタルフィルタのそれぞれは、互いに周波数帯の減衰量の異なるローパスフィルタを含んでもよいし、互いに異なる周波数帯を減衰させるノッチフィルタを含んでもよい。上記複数のローパスフィルタは、例えば特許5901126号等に記載される可変フィルタであってもよい。
【0030】
フィルタ部22は、搬送部2の動作中、且つ、物品Pの搬送中において、複数のデジタルフィルタのうち選択された一のデジタルフィルタを用いて、原信号及び振動原信号をフィルタリング処理する。そして、フィルタ部22は、フィルタリング処理後の信号を生成する。フィルタ部22は、フィルタリング処理後の信号として、選択された一のデジタルフィルタにて原信号をフィルタリング処理することによって得られる計量信号と、当該デジタルフィルタにて振動原信号をフィルタリング処理することによって得られる振動信号と、を生成する。
【0031】
より詳しくは、フィルタ部22は、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品Pが搬送されていないとき(以下、「搬送部2の空運転中」とも称する)に得られた原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用する。換言すると、フィルタ部22は、搬送部2の空運転中に、原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用するフィルタリング処理を実施する。これにより、フィルタ部22は、搬送部2の空運転中に得られた原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果となる複数の計量信号を生成する。
【0032】
また、フィルタ部22は、搬送部2の空運転中に得られた振動原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用する。換言すると、フィルタ部22は、搬送部2の空運転中に、振動原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用するフィルタリング処理を実施する。これにより、フィルタ部22は、搬送部2の空運転中に得られた振動原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用した結果となる複数の振動信号を生成する。
【0033】
本実施形態では、表示インターフェース7を介して指定された実施予定の搬送速度にて搬送部2を空運転したときに計量部4から出力される信号は、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品Pが搬送されていないときに得られる原信号及び振動原信号に相当する。例えば、複数のデジタルフィルタが第1フィルタ~第3フィルタを有する場合、上記原信号及び振動原信号に対して、第1フィルタ~第3フィルタのそれぞれにてフィルタリング処理を実施する。これにより、第1フィルタが適用されることによって得られる第1計量信号と、第2フィルタが適用されることによって得られる第2計量信号と、第3フィルタが適用されることによって得られる第3計量信号とが得られる。また、第1フィルタが適用されることによって得られる第1振動信号と、第2フィルタが適用されることによって得られる第2振動信号と、第3フィルタが適用されることによって得られる第3振動信号とが得られる。なお、振動信号の生成の際に用いるデジタルフィルタと、計量信号の生成の際に用いるデジタルフィルタとは、同じものが用いられてもよいし、異なるものが用いられてもよい。
【0034】
なお、搬送部2が空運転中か否かは、作業者によって判断されてもよいし、自動で判断されてもよい。例えば、搬送部2が動作中であって、計量装置1に設けられる物品検知用のセンサの非検知状態が所定時間以上継続しているとき等に、搬送部2が空運転中であると自動で判断されてもよい。
【0035】
フィルタ部22は、得られた複数の計量信号及び複数の振動信号を演算部23、記憶部25等に出力する。
【0036】
演算部23は、入力された各種信号を演算処理する部分である。演算部23は、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置する場合において、フィルタ部22から出力される計量信号に少なくとも基づいて物品Pの重量の値(計量値)を演算する計量処理を行う。ここでの演算部23は、演算部23は、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置していない場合に出力される原信号及び振動原信号に基づいて、振動原信号を用いた計量処理を行うか否かの判定処理を行い、判定処理の判定結果に応じて計量処理を行う。
【0037】
計量処理としては、例えば、計量セル12の原信号のみを用いてAFVセル14の振動原信号は用いないで行う第1計量処理と、計量セル12の原信号に加えてAFVセル14の振動原信号も用いて行う第2計量処理と、が含まれる。第1計量処理は、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置する場合における計量信号のみを用いる計量処理である。第2計量処理は、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置する場合における計量信号に加えて振動信号も用いる計量処理である。
【0038】
ここでの演算部23は、判定処理の判定結果に応じて自動的に計量処理の内容(第1計量処理か第2計量処理か)を選択する。より詳しくは、演算部23は、判定処理の判定結果として振動原信号を用いた計量処理を行わないと判定した場合、振動原信号を用いないで第1計量処理を行う。一方、演算部23は、判定処理の判定結果として振動原信号を用いた計量処理を行うと判定した場合、原信号及び振動原信号を用いて第2計量処理を行う。
【0039】
演算部23は、判定処理の一例として、計量信号のみに基づく第1計量値候補と、計量信号に加えて振動信号にも基づく第2計量値候補と、を生成し、第1計量値候補と第2計量値候補との比較を行い、比較の結果に基づいて判定処理を行う。第1計量値候補及び第2計量値候補は、演算部23が計量処理を行うための物品Pの計量値の候補である。
【0040】
具体的には、演算部23は、第1計量値候補として、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置する場合の計量信号そのものを用いる。また、演算部23は、第2計量値候補として、計量信号から振動信号を所定の計算式に従って減算して、外乱振動に起因する計量信号の誤差を補正、すなわち計量信号から振動信号成分を除去した補正後の計量信号を生成する。つまり、演算部23は、第2計量値候補として、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置する場合の補正後の計量信号を用いる。このとき、演算部23は、振動信号を含む項に所定の係数を加味し、計量信号から振動信号成分を除去する。所定の計算式としては、例えば下記式(1)を用いることができる。
AFV=M-a×(S-S) ・・・(1)
【0041】
上記式(1)において、MAFVは補正後の計量信号であり、Mは計量信号であり、Sは振動信号である。Sは、Sの振動中心であり、例えばAFVセル14に応じて予め設定された値である。なお、Sは、Sの平均値などから算出されてもよい。係数aは、補正後の計量信号を最適化するための所定の係数である。係数aは、例えば、複数のデジタルフィルタごとに補正後の計量信号の精度情報(第2計量値候補の精度情報)が最適となるように、所定の数値間隔の総当たり手法の探索により決定することができる。
【0042】
精度情報は、例えば、第1計量値候補及び第2計量値候補に含まれる波形の振幅の標準偏差に基づいて算出される。この算出結果は、波形の振幅の標準偏差自体でもよいし、当該標準偏差に基づくパラメータでもよい。ここでの精度情報は、第1計量値候補及び第2計量値候補のそれぞれに含まれる波形の振幅の標準偏差である。
【0043】
演算部23は、第1及び第2計量値候補のうち精度情報がより良いものは何れかを判定し、より良いと判定した計量値候補を用いて物品Pの計量値を生成する。具体的には、演算部23は、第1計量値候補の波形ごとの振幅の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差(第1標準偏差)を第1計量値候補を最適にするものとして選択する。同様に、演算部23は、第2計量値候補の波形ごとの振幅の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差(第2標準偏差)を第2計量値候補を最適にするものとして選択する。
【0044】
例えば、複数のデジタルフィルタが第1フィルタ~第3フィルタを有する場合、演算部23は、第1フィルタを適用した第1計量値候補に含まれる波形の振幅の標準偏差と、第2フィルタを適用した第1計量値候補に含まれる波形の振幅の標準偏差と、第3フィルタを適用した第1計量値候補に含まれる波形の振幅の標準偏差とを算出する。続いて、演算部23は、これら3つの標準偏差のうち、最も小さい値となる標準偏差を第1計量値候補を最適にする第1標準偏差として選択する。
【0045】
同様に、演算部23は、第1フィルタを適用した第2計量値候補に含まれる波形の振幅の標準偏差と、第2フィルタを適用した第2計量値候補に含まれる波形の振幅の標準偏差と、第3フィルタを適用した第2計量値候補に含まれる波形の振幅の標準偏差とを算出する。続いて、演算部23は、これら3つの標準偏差のうち、最も小さい値となる標準偏差を第2計量値候補を最適にする第2標準偏差として選択する。
【0046】
演算部23は、第1標準偏差と第2標準偏差とを比較することで、第1及び第2計量値候補のうち精度情報がより良いものは何れかを判定する。すなわち、演算部23は、比較として、第2標準偏差が第1標準偏差以下であるか否かを判定する。演算部23は、第2標準偏差が第1標準偏差以下であると判定した場合、振動原信号を用いた計量処理を行うとの判定処理の判定結果となり、第2計量処理を行う。演算部23は、第2標準偏差が第1標準偏差よりも大きいと判定した場合、振動原信号を用いた計量処理を行わないとの判定処理の判定結果となり、第1計量処理を行う。なお、精度情報がより良いと判定された第1又は第2計量値候補のデジタルフィルタとしては、複数の標準偏差のうち最も小さい値となる標準偏差が得られるデジタルフィルタが選択される。演算部23は、選択されたデジタルフィルタに関する情報を記憶部25に出力する。
【0047】
第1及び第2計量値候補に含まれる波形は、計量装置1及びその周囲によって発生する振動を含む。当該振動は、物品Pの計量に対するノイズになる。このため、第1及び第2計量値候補に含まれる波形の振幅の標準偏差がより小さい第1及び第2計量値候補を用いる方が、物品Pの計量に対するノイズがより小さいと判断できる。
【0048】
演算部23は、より良いと判定した第1又は第2計量値候補を用いて生成した物品Pの計量値を出力部24に出力する。ちなみに、演算部23は、入力された搬送部2の搬送速度、物品Pの寸法及び搬送頻度によって物品Pの計量ピッチ(計量間隔)を演算する。演算部23は、上記計量値に基づいて、物品Pの重量が予め設定された適正範囲から逸脱しているか否かを判断する。この判断結果に応じて、演算部23は、例えば振分機に動作信号を出力する。
【0049】
出力部24は、例えば、制御部8にて生成される各種情報及び各種信号と、記憶部25に記憶される各種情報及び各種信号を外部に出力する。出力部24は、例えば、物品Pの計量値、精度情報及び計量ピッチなどを表示情報として表示インターフェース7に出力してもよい。出力部24は、搬送部2の搬送速度を制御するための動作信号を搬送部2に出力し、振分機に対する動作信号を当該振分機に出力する。出力部24から搬送部2への動作信号の出力等は、有線を介して実施されてもよいし、無線を介して実施されてもよい。
【0050】
記憶部25は、表示インターフェース7を介して入力される入力情報と、制御部8にて生成される各種情報及び各種信号とを記憶する。記憶部25は、複数のデジタルフィルタを予め記憶する。記憶部25は、精度情報がより良いと判定された第1又は第2計量値候補のデジタルフィルタ、及び、デフォルトのデジタルフィルタを記憶してもよい。
【0051】
次に、図3を参照しながら計量装置1の制御部8による各処理について説明する。図3は、計量装置1の処理の一例を示すフローチャートである。図3の処理は、計量装置1の検査前に開始される。
【0052】
まず、搬送部2の搬送速度を決定する(ステップS11)。ステップS11では、表示インターフェース7を介して搬送部2の搬送速度が指定される。このとき、作業者は、表示インターフェース7を介して搬送部2の搬送速度自体を入力してもよいし、物品Pの搬送頻度を入力してもよい。
【0053】
物品Pが搬送されていない状態にて搬送部2を動作させたとき(搬送部2の空運転時)の原信号及び振動原信号を取得する(ステップS12)。ステップS12では、例えば、計量部4は、物品Pを計量する前に指定された搬送速度にて搬送部2を約5秒間空運転させたときの原信号及び振動原信号を取得する。取得された原信号及び振動原信号は、制御部8に出力される。
【0054】
取得された原信号及び振動原信号に対して、計量信号と振動信号との生成を行う(ステップS13)。ステップS13では、フィルタ部22が、上記原信号及び振動原信号に対して複数のデジタルフィルタのそれぞれを適用してフィルタリング処理する。これにより、フィルタ部22は、複数の計量信号と振動信号とを生成する。
【0055】
生成された複数の計量信号と振動信号とを用いて、第1計量値候補及び第2計量値候補の生成を行う(ステップS14)。ステップS14では、例えば、計量信号そのものから第1計量値候補が生成され、計量信号と振動信号とに基づいて上記式(1)に従って第2計量値候補が生成される。
【0056】
これにより、演算部23は、計量信号に基づいて第1計量値候補を生成し、計量信号と振動信号とに基づいて第2計量値候補を生成する。更に、演算部23は、第1計量値候補の波形ごとの振幅の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差を第1計量値候補を最適にする第1標準偏差として選択する。同様に、演算部23は、第2計量値候補の波形ごとの振幅の標準偏差を比較し、最も小さい標準偏差を第2計量値候補を最適にする第2標準偏差として選択する。そして、第1及び第2計量値候補の比較を行う(ステップS15)。ステップS15では、演算部23は、第1標準偏差と第2標準偏差とを比較することで、第1及び第2計量値候補のうち精度情報がより良いものは何れかを比較する。
【0057】
第2標準偏差が第1標準偏差以下であるか否かを判定する(ステップS16)。演算部23は、例えば、第2標準偏差が第1標準偏差以下であると判定した場合(ステップS16:YES)、振動原信号を用いた計量処理を行うと判定し(ステップS17)、原信号及び振動信号を用いて計量処理(第2計量処理)を実行する(ステップS18)。一方、演算部23は、第2標準偏差が第1標準偏差よりも大きいと判定した場合(ステップS16:NO)、振動原信号を用いないで計量処理を行うと判定し(ステップS19)、原信号を用いて(つまり原信号のみを用いて)計量処理(第1計量処理)を実行する(ステップS20)。その後、図3の処理を終了する。
【0058】
以上説明したように、計量装置1によれば、制御部8によって、搬送部2の動作中に第2コンベア部2b上に物品Pが位置していない場合に(いわゆる空運転時に)出力される原信号及び振動原信号に基づいて、振動原信号を用いた計量処理を行うか否かが判定される。判定処理の判定結果に応じて、制御部8によって計量処理が行われる。これにより、計量部4の原信号に加えてAFVセル14の振動原信号を用いる方が適切か、あるいはAFVセル14の振動原信号を用いない方が適切かが、計量装置1及びその周囲の状況(例えば、計量装置1自体の振動、外部から計量装置1に伝達される振動等)に応じて制御部8の判定結果として得られるため、例えば計量装置1の設計者又は熟練者による設定作業を省くことが可能となる。したがって、上記計量装置1によれば、物品Pの荷重についての計量処理を行う際に計量部4の原信号に加えてAFVセル14の振動原信号を用いるか否かについて、計量装置1の使用者の設定作業の負担軽減を図ることが可能となる。
【0059】
制御部8は、振動原信号を用いた計量処理を行うと判定した場合、原信号及び振動原信号を用いて計量処理を行い、振動原信号を用いた計量処理を行わないと判定した場合、振動原信号を用いないで計量処理を行う。これにより、制御部8の判定結果を利用して、制御部8が計量処理を行う際に振動原信号を用いるか否かを自動的に選択することができる。
【0060】
計量装置1は、表示インターフェース7を更に備える。表示インターフェース7は、表示情報を表示する表示部として機能する。表示インターフェース7は、振動原信号を用いた計量処理を行うか否かを選択するための選択入力操作を受け付ける入力部として機能する。制御部8は、原信号及び振動原信号に関する比較についての表示情報を表示インターフェース7に表示させる。制御部8は、振動原信号を用いた計量処理を行うとの選択入力操作を表示インターフェース7が受け付けた場合、振動原信号を用いた計量処理を行うと判定する。制御部8は、振動原信号を用いた計量処理を行わないとの選択入力操作を表示インターフェース7が受け付けた場合、振動原信号を用いた計量処理を行わないと判定する。これにより、例えば表示インターフェース7に表示された原信号及び振動原信号に関する比較についての情報を計量装置1の使用者が参照することで、計量装置1の使用者が、計量処理を振動原信号を用いて行うか否かを表示インターフェース7を介して選択することができる。
制御部8は、原信号を所定のデジタルフィルタにてフィルタリング処理することによって得られる計量信号と、振動原信号をデジタルフィルタにてフィルタリング処理することによって得られる振動信号と、を生成し、計量信号に基づいて第1計量値候補を生成し、計量信号と振動信号とに基づいて第2計量値候補を生成し、第1計量値候補と第2計量値候補との比較を行い、比較の結果に基づいて判定処理を行う。これにより、AFVセル14の振動原信号を用いる方が適切か、あるいはAFVセル14の振動原信号を用いない方が適切かを、計量信号に基づいて生成される第1計量値候補と、計量信号と振動信号とに基づいて生成される第2計量値候補との比較の結果に基づいて判定することができる。
【0061】
制御部8は、上記比較として、第1計量値候補の波形の標準偏差のうち最も小さい第1標準偏差と、第2計量値候補の波形の標準偏差のうち最も小さい第2標準偏差とを比較する。これにより、第1計量値候補の波形及び第2計量値候補の波形のうち、振幅のばらつき度合いが小さい方を、計量装置及びその周囲の状況に適するものとして採用することができる。
【0062】
以上、本開示に係る計量装置の実施形態及びその変形例について説明したが、本開示は、上記実施形態及び上記変形例に限定されない。
【0063】
例えば、上記実施形態では、演算部23は、判定処理の判定結果に応じて自動的に計量処理の内容を選択したが、計量処理を振動原信号を用いて行うか否かを計量装置1の使用者が入力部を介して選択してもよい。この場合、例えば、図4に示されるように、図3のステップS16の処理がステップS16A~S16Cの処理に置き換えられてもよい。なお、図4のステップS16A~S16C以外の処理は、図3の処理のステップS16以外の処理と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0064】
図4に示されるように、ステップS16Aでは、ステップS15で行った比較についての表示情報の表示を行う。ステップS16Aでは、制御部8は、原信号及び振動原信号に関する比較についての表示情報を表示部に表示させる。例えば、出力部24は、原信号及び振動原信号に関する比較についての表示情報として、第1標準偏差の値と第2標準偏差の値とをタッチパネル7aに表示させてもよい。これにより、計量装置1の使用者に対して、第1及び第2計量値候補の何れがより適しているかの判断を促すことができる。
【0065】
ステップS16Bでは、選択入力操作の受付けを行う。ステップS16Bでは、出力部24は、例えば、計量装置1の使用者がタッチ操作可能なボタン画像等をタッチパネル7aに表示させてもよい。これにより、計量装置1の使用者が、振動原信号を用いた計量処理を行うとの選択入力操作と、振動原信号を用いた計量処理を行わないとの選択入力操作と、の何れかを行うことが可能となる。演算部23は、タッチパネル7aのボタン画像等をタッチする操作がなされた場合、計量装置1の使用者による選択入力操作の受付けを行う。
【0066】
ステップS16Cでは、選択入力操作を受付けた際、振動原信号を用いた計量処理を行うとの選択入力操作があったか否かを判定する。演算部23は、振動原信号を用いた計量処理を行うとの選択入力操作を受け付けた場合(ステップS16C:YES)、振動原信号を用いた計量処理を行うと判定し(ステップS17)、原信号及び振動原信号に基づいて計量処理(第2計量処理)を実行する(ステップS18)。
【0067】
一方、演算部23は、振動原信号を用いた計量処理を行わないとの選択入力操作を受け付けた場合、すなわち選択入力操作を受付けた際に振動原信号を用いた計量処理を行うとの選択入力操作はないと判定した場合(ステップS16C:NO)、振動原信号を用いないで計量処理を行うと判定し(ステップS19)、原信号を用いて(つまり原信号のみを用いて)計量処理(第1計量処理)を実行する(ステップS20)。その後、図4の処理を終了する。
【0068】
上記実施形態では、計量セル12及びAFVセル14を1個ずつ備える計量装置1を例示したが、例えば、図5に示される計量装置1Aのように変形することができる。計量装置1Aの説明において、上記実施形態と重複する箇所の説明は省略する。したがって以下では、上記実施形態と異なる箇所を主に説明する。
【0069】
図5は、変形例に係る計量装置1Aの概略構成図である。図5に示されるように、計量装置1Aは、搬送方向に沿って長尺の物品P1の重量を計量するための装置であり、第1計量部4A及び第2計量部5Aを有する。第1計量部4Aは、第2コンベア部2bの上流側に位置する。第2計量部5は、第2コンベア部2bの下流側に位置し、起歪体31と計量セル32とを有する。起歪体31は、起歪体11と同様に、第2コンベア部2bを支持する可動剛体部31aと、架台3に固定される固定剛体部31bとを有する。
【0070】
搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品P1が搬送されていないとき、制御部8のフィルタ部22は、例えば、第1計量部4Aから出力された第1原信号と、第2計量部5から出力された第2原信号とのそれぞれに対して、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。この場合、第1原信号に基づいて選択されるデジタルフィルタと、第2原信号に基づいて選択されるデジタルフィルタとは、互いに同一でもよいし、互いに異なってもよい。この場合、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品P1が搬送されていないとき、第1計量部4Aから出力される原信号をフィルタリング処理して得られる計量信号と、第2計量部5から出力される原信号をフィルタリング処理して得られる計量信号とを合算する。これにより得られた合算計量信号に基づいて第1計量値候補が算出され、上記実施形態と同様の処理が行われる。
【0071】
もしくは、制御部8のフィルタ部22は、例えば、第1計量部4Aから出力された第1原信号と、第2計量部5から出力された第2原信号との合算原信号に対して、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。この場合、制御部8は、まず、第1計量部4Aから出力された第1原信号と、第2計量部5から出力された第2原信号とを合算した合算原信号を生成する。そして、演算部23は、当該合算原信号に対して、複数のデジタルフィルタのうち一のデジタルフィルタを選択する。この場合、搬送部2の動作中であって搬送部2によって物品P1が搬送されていないとき、第1計量部4Aから出力される原信号と、第2計量部5から出力される原信号とを合算する。これに得られた合算原信号をフィルタリング処理して得られるプレ計量信号が算出される。また、制御部8の演算部23は、合算原信号をフィルタリング処理して得られる計量信号に基づいて、第1計量値候補を生成し、第1計量値候補を用いて上記実施形態と同様の処理が行われる。
【0072】
また、第1計量部4Aは、起歪体11及び計量セル12に加えて、第1AFVセル(外乱振動検出部)14Aを有する。第1AFVセル14Aは、外乱振動を検出し、この外乱振動に対応する第1振動原信号を出力する。第1AFVセル14Aから出力される第1振動原信号は、アナログ信号である。第1振動原信号は、例えば、第1AFVセル14Aに含まれるA/D変換装置によってアナログ/デジタル変換される。
【0073】
第2計量部5Aは、第1計量部4Aと同様に、起歪体31及び計量セル32に加えて、第2AFVセル(外乱振動検出部)34を有する。第2AFVセル34は、計量セル32を含む計量装置1の外乱振動を検出する部材であり、固定剛体部31bに設けられる。第2AFVセル34は、床Fから計量装置1Aに伝わる振動、搬送部2の振動等を検出する。第2AFVセル34は、外乱振動を検出し、この外乱振動に対応する第2振動原信号を出力する。第2AFVセル34から出力される第2振動原信号は、アナログ信号である。第2振動原信号は、例えば、第2AFVセル34に含まれるA/D変換装置によってアナログ/デジタル変換される。
【0074】
デジタル変換された第1振動原信号及び第2振動原信号のそれぞれに対しては、デジタル変換された第1振動原信号及び第2振動原信号が合算された後、フィルタ部22にて合算された信号に対してフィルタリング処理が実施されてもよい。もしくは、デジタル変換された第1振動原信号及び第2振動原信号のそれぞれに対して、対応するA/D変換装置にてプレフィルタリング処理が実施され、プレフィルタリング処理が実施された第1振動原信号及び第2振動原信号が合算された後、フィルタ部22にて合算された信号に対してフィルタリング処理が実施されてもよい。以上に示したいずれかの手法にてフィルタリング処理が実施された合算信号を、上記実施形態の振動信号として取り扱うことで、上記実施形態と同様にして補正後原信号を生成することができる。
【0075】
以上説明したような計量装置1Aにおいても、上記実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、計量装置1Aによれば、搬送方向に沿って長尺の物品P1の重量を精度よく計量できる。
【0076】
上記実施形態及び上記変形例では、精度情報は、原信号及び振動原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の振幅の標準偏差に基づいて算出されるが、これに限られない。例えば、精度情報は、原信号及び振動原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の任意の点の値に基づいて算出されてもよい。また、例えば、精度情報は、原信号及び振動原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の振幅の微分値の標準偏差に基づいて算出されてもよい。この算出結果は、波形の振幅の微分値の標準偏差自体でもよい。これらの場合、計量装置に物品を搬送するときに生じる振動の影響を小さくできる。したがって、計量装置及びその周囲の状況に適したデジタルフィルタの自動選択がよりされやすくなる。もしくは、精度情報は、原信号及び振動原信号に対してデジタルフィルタを適用して得られる波形の振幅の二次微分値の標準偏差に基づいて算出されてもよい。この算出結果は、波形の振幅の二次微分値の標準偏差自体でもよい。あるいは、精度情報は、上記波形の振幅の最大値から当該振幅の最小値を減じることによって、算出されてもよい。この場合、精度情報を容易に算出できる。
【0077】
上記実施形態及び上記変形例では、計量部は、デジタル信号を原信号及び振動原信号とし、外部に出力するが、これに限られない。計量部は、取得したアナログ信号を外部に出力してもよい。この場合、例えば制御部がアナログ信号をデジタル変換してもよい。また、外乱振動検出部としては、上記実施形態及び上記変形例のようなAFVセルに限定されるものでなく、計量部が受ける外乱振動に対応する振動原信号を出力するものであれば、変位、力、又は加速度などを検出するセンサでもよい。
【0078】
上記実施形態及び上記変形例では、原信号と振動原信号との双方に基づいて計量処理を行うか、振動原信号を用いないで原信号にのみ基づいて計量処理を行うか、の何れかであったが、これに限定されない。例えば、振動原信号を用いる場合として、原信号と振動原信号とは異なる追加の信号を考慮して計量処理を行ってもよいし、原信号と振動原信号との双方を用いる場合において振動原信号の反映度合いを、振動原信号を用いない場合と比べて高めるようにした計量処理を行ってもよい。
【0079】
上記実施形態及び上記変形例では、計量信号に基づいて第1計量値候補を生成し、計量信号と振動信号とに基づいて第2計量値候補を生成したが、第1及び第2計量値候補の生成は必須ではない。例えば、原信号を所定のデジタルフィルタにてフィルタリング処理することによって得られる計量信号を1つだけ生成し、振動原信号を当該デジタルフィルタにてフィルタリング処理することによって得られる振動信号を1つだけ生成し、これらの比較を行い、比較の結果に基づいて判定処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1,1A…計量装置、2…搬送部、3…架台、4…計量部、4A…第1計量部、5A…第2計量部、6…操作部、7…表示インターフェース、8…制御部、11,31…起歪体、11a,31a…可動剛体部、11b,31b…固定剛体部、12,32…計量セル、14…AFVセル、14A…第1AFVセル、21…受信部、22…フィルタ部、23…演算部、24…出力部、25…記憶部、34…第2AFVセル、P,P1…物品。
図1
図2
図3
図4
図5