(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】血圧測定装置、血圧測定システム、乗物、及び血圧測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20240329BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20240329BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240329BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20240329BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240329BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20240329BHJP
A61B 5/117 20160101ALI20240329BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61B5/022 400A
A61B5/022 400F
A61B5/0245 100A
A61B5/02 310Z
A61B5/08
A61B5/11 110
A61B5/113
A61B5/117 200
A61B5/0245 C
A61B10/00 B
(21)【出願番号】P 2020082558
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】506060258
【氏名又は名称】公立大学法人北九州市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】梶原 昭博
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-329148(JP,A)
【文献】特開2002-238867(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179696(WO,A1)
【文献】特開2014-230671(JP,A)
【文献】特開2018-036247(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017009(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0303434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/06-5/22
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の心収縮時間と最高血圧との相関関係を示す第1の相関データを記憶するように構成された第1の相関記憶部と、
前記生体の心周期と平均血圧との相関関係を示す第2の相関データを記憶するように構成された第2の相関記憶部と、
前記生体の拍動波形を記憶するように構成された波形記憶部と、
前記波形記憶部の前記拍動波形から得られる心収縮時間と、前記第1の相関記憶部の前記第1の相関データとに基づいて、前記生体の最高血圧を算出するように構成された第1の算出部と、
前記波形記憶部の前記拍動波形から得られる心周期と、前記第2の相関記憶部の前記第2の相関データとに基づいて、前記生体の平均血圧を算出するように構成された第2の算出部とを備える、血圧測定装置。
【請求項2】
前記第1の算出部で算出された最高血圧SBPと、前記第2の算出部で算出された平均血圧MBPとを用いて、式1により前記生体の最低血圧DBPを算出するように構成された第3の算出部をさらに備える、請求項1に記載の装置。
DBP=(3MBP-SBP)/2 ・・・(1)
【請求項3】
生体の心収縮時間と最高血圧との相関関係を示す相関データを記憶する相関記憶部と、
広帯域又は超広帯域の無線電波が前記生体において反射された反射波に基づいて、時間に対する信号強度の変化を示すデータである時間変動データを生成するように構成された第1の生成部と、
前記時間変動データに基づいて、前記生体の拍動波形を生成するように構成された第2の生成部と、
前記第2の生成部によって生成された前記生体の
前記拍動波形を記憶するように構成された波形記憶部と、
前記波形記憶部の前記拍動波形から得られる心収縮時間と、前記相関記憶部の前記相関データとに基づいて、前記生体の最高血圧を算出するように構成された算出部とを備える、血圧測定装置。
【請求項4】
生体の心周期と平均血圧との相関関係を示す相関データを記憶する相関記憶部と、
広帯域又は超広帯域の無線電波が前記生体において反射された反射波に基づいて、時間に対する信号強度の変化を示すデータである時間変動データを生成するように構成された第1の生成部と、
前記時間変動データに基づいて、前記生体の拍動波形を生成するように構成された第2の生成部と、
前記第2の生成部によって生成された前記生体の
前記拍動波形を記憶するように構成された波形記憶部と、
前記波形記憶部の前記拍動波形から得られる心周期と、前記相関記憶部の前記相関データとに基づいて、前記生体の平均血圧を算出するように構成された算出部とを備える、血圧測定装置。
【請求項5】
第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された信号強度記憶部であって、前記第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が前記生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、信号強度記憶部と、
前記第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データの信号強度から、前記生体の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を、前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成するように構成された第1の生成部と、
前記時間変動データに基づいて、前記生体の検知部位における前記拍動波形を生成するように構成された第2の生成部とをさらに備える、請求項1
又は2に記載の装置。
【請求項6】
第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された信号強度記憶部であって、前記第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、前記無線電波が前記生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、信号強度記憶部をさらに備え、
前記第1の生成部は、前記第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データの信号強度から、前記生体の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を、前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記対応強度が時系列に沿って並べられた前記時間変動データを生成するように構成されており、
前記第2の生成部は、前記時間変動データに基づいて、前記生体の検知部位における前記拍動波形を生成するように構成されている、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項7】
前記第nの距離変動データにおける前記生体の検知部位に対応する距離成分が任意の基準値に近づくように前記第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、補正時系列データを得るように構成された補正部をさらに備え、
前記第1の生成部は、前記強度取得処理を実行する際に、前記補正時系列データから前記基準値における信号強度を前記対応強度として取得する、請求項
5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記補正処理は、前記第1~第Nの距離変動データのうち所定時間内に含まれる第p~第q(p及びqはそれぞれ、1≦p<q≦Nを満たす自然数)の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が前記基準値に近づくように前記第p~第qの距離変動データの距離成分を補正することを含む、請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記補正処理は、前記時系列データを時系列に沿って順に分割することで得られる第1~第Mのブロック(Mは2以上の自然数)のうち第m(mは1~Mの自然数)のブロックにおいて、前記第1~第Nの距離変動データのうち前記第mのブロックに含まれる複数の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が、前記第1~第Mのブロックのそれぞれについて定められる任意の基準値に近づくように前記複数の距離変動データの距離成分を補正するブロック補正処理を、前記第1~第Mのブロックに対して行うことを含む、請求項
7に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の生成部は、前記時間変動データに対して多重解像度解析を行うことにより、前記生体の検知部位における前記拍動波形を生成するように構成されている、請求項
5~
9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記第2の生成部は、前記時間変動データに対して前記多重解像度解析を行うことで、前記時間変動データを複数の分解波形に分解し、前記複数の分解波形の一部を前記拍動波形として取得するように構成されている、請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
ARモデルを用いて前記拍動波形をスペクトル解析することにより、前記生体の心拍間隔の時間変動を示す心拍間隔データを生成するように構成された第3の生成部をさらに備える、請求項
11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1~第Nの距離変動データは、前記生体の拍動に対応する周波数を基準として、前記反射波をオーバサンプリングすることで得られたデータである、請求項
11又は
12に記載の装置。
【請求項14】
前記第2の生成部は、前記複数の分解波形のうち、前記拍動とは異なる前記生体の動きに対応する信号を除外したうえで、前記拍動波形を生成するように構成されている、請求項
11~
13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、前記無線電波が前記生体及び別の生体において反射された反射波に基づいて得られたデータであり、
前記第1の生成部は、
前記第nの距離変動データの信号強度から、前記生体の検知部位に対応する前記対応強度を取得する前記強度取得処理を、前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記対応強度が時系列に沿って並べられた前記時間変動データを生成するように構成されており、且つ、
前記第nの距離変動データの信号強度から、前記別の生体の検知部位に対応する別の対応強度を取得する前記強度取得処理を、前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記別の対応強度が時系列に沿って並べられた別の時間変動データを生成するように構成されており、
前記第2の生成部は、
前記時間変動データに基づいて、前記生体の検知部位における前記拍動波形を生成するように構成されており、且つ、
前記別の時間変動データに基づいて、前記別の生体の検知部位における別の拍動波形を生成するように構成されている、請求項
5~
14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記無線電波を発信するように構成された発信部と、
前記反射波を受信するように構成された受信部とをさらに備える、請求項
3~
15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記拍動波形は心拍波形である、請求項1~
16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記拍動波形に由来する統計的特徴量に基づいて前記生体を個々に特定するように構成された生体特定部をさらに備える、請求項1~
17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記生体特定部は、前記拍動波形に由来する統計的特徴量を機械学習することによって生成された複数のクラスタを用いて、前記生体を個々に特定するように構成されている、請求項
18に記載の装置。
【請求項20】
請求項
3~
15のいずれか一項に記載の装置と、
前記無線電波を発信するように構成された発信部と、
前記反射波を受信するように構成された受信部とを備える、血圧測定システム。
【請求項21】
前記反射波に応じた受信データを前記血圧測定装置に無線通信を用いて送信するように構成された通信部をさらに備える、請求項
20に記載のシステム。
【請求項22】
請求項1~
19のいずれか一項に記載の血圧測定装置を備える乗物。
【請求項23】
生体の拍動波形を取得することと、
前記拍動波形から得られる心収縮時間と、前記生体の心収縮時間と最高血圧との相関関係を示す第1の相関データとに基づいて、前記生体の最高血圧を算出することと、
前記拍動波形から得られる心周期と、前記生体の心周期と平均血圧との相関関係を示す第2の相関データとに基づいて、前記生体の平均血圧を算出することとを含む、血圧測定方法。
【請求項24】
第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された信号強度記憶部であって、前記第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、信号強度記憶部と、
第1の生成部と、
第2の生成部と、
算出部とを備え、
前記第1の生成部は、
前記第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データの信号強度から、前記生体の第1の検知部位に対応する第1の対応強度を取得する強度取得処理を、前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記第1の対応強度が時系列に沿って並べられた第1の時間変動データを生成するように構成されており、且つ、
前記第nの距離変動データの信号強度から、前記生体の第2の検知部位に対応する第2の対応強度を取得する前記強度取得処理を、前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記第2の対応強度が時系列に沿って並べられた第2の時間変動データを生成するように構成されており、
前記第2の生成部は、
前記第1の時間変動データに基づいて、前記第1の検知部位における第1の拍動波形を生成するように構成されており、且つ、
前記第2の時間変動データに基づいて、前記第2の検知部位における第2の拍動波形を生成するように構成されており、
前記算出部は、前記第1の拍動波形及び前記第2の拍動波形から得られる脈波伝播時間に基づいて血圧を算出するように構成されている、血圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血圧測定装置、血圧測定システム、乗物、及び血圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、生体の所定部位(例えば、人体の腕部)に装着された圧迫部(例えば、カフ)によって当該所定部位の動脈及びその周辺を圧迫することで当該生体の血圧を測定する、非観血方式の血圧測定装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の血圧測定装置では、生体への圧迫部の装着状態や、機器の劣化などによって、測定される血圧にばらつきが生じやすい傾向にある。
【0005】
そこで、本開示は、血圧をより精度よく検知することが可能な血圧測定装置、血圧測定システム、乗物、及び血圧測定方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの観点に係る血圧測定装置は、生体の心収縮時間と最高血圧との相関関係を示す第1の相関データを記憶するように構成された第1の相関記憶部と、生体の心周期と平均血圧との相関関係を示す第2の相関データを記憶するように構成された第2の相関記憶部と、生体の拍動波形を記憶するように構成された波形記憶部と、波形記憶部の拍動波形から得られる心収縮時間と、第1の相関記憶部の第1の相関データとに基づいて、生体の最高血圧を算出するように構成された第1の算出部と、波形記憶部の拍動波形から得られる心周期と、第2の相関記憶部の第2の相関データとに基づいて、生体の平均血圧を算出するように構成された第2の算出部とを備える。
【0007】
本開示の他の観点に係る血圧測定装置は、生体の心収縮時間と最高血圧との相関関係を示す相関データを記憶する相関記憶部と、生体の拍動波形を記憶するように構成された波形記憶部と、波形記憶部の拍動波形から得られる心収縮時間と、相関記憶部の相関データとに基づいて、生体の最高血圧を算出するように構成された算出部とを備える。
【0008】
本開示の他の観点に係る血圧測定装置は、生体の心周期と平均血圧との相関関係を示す相関データを記憶する相関記憶部と、生体の拍動波形を記憶するように構成された波形記憶部と、波形記憶部の拍動波形から得られる心周期と、相関記憶部の相関データとに基づいて、生体の平均血圧を算出するように構成された算出部とを備える。
【0009】
本開示の他の観点に係る血圧測定システムは、血圧測定装置と、無線電波を発信するように構成された発信部と、反射波を受信するように構成された受信部とを備える。
【0010】
本開示の他の観点に係る乗物は、血圧測定装置を備える。
【0011】
本開示の他の観点に係る血圧測定法は、生体の拍動波形を取得することと、拍動波形から得られる心収縮時間と、生体の心収縮時間と最高血圧との相関関係を示す第1の相関データとに基づいて、生体の最高血圧を算出することと、拍動波形から得られる心周期と、生体の心周期と平均血圧との相関関係を示す第2の相関データとに基づいて、生体の平均血圧を算出することとを含む。
【0012】
本開示の他の観点に係る血圧測定装置は、第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された信号強度記憶部であって、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、信号強度記憶部と、第1の生成部と、第2の生成部と、算出部とを備える。第1の生成部は、第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データの信号強度から、生体の第1の検知部位に対応する第1の対応強度を取得する強度取得処理を、第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、第1の対応強度が時系列に沿って並べられた第1の時間変動データを生成するように構成されており、且つ、第nの距離変動データの信号強度から、生体の第2の検知部位に対応する第2の対応強度を取得する強度取得処理を、第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、第2の対応強度が時系列に沿って並べられた第2の時間変動データを生成するように構成されている。第2の生成部は、第1の時間変動データに基づいて、第1の検知部位における第1の拍動波形を生成するように構成されており、且つ、第2の時間変動データに基づいて、第2の検知部位における第2の拍動波形を生成するように構成されている。算出部は、第1の拍動波形及び第2の拍動波形から得られる脈波伝播時間に基づいて血圧を算出するように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る血圧測定装置、血圧測定システム、乗物、及び血圧測定方法によれば、血圧をより精度よく検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、血圧測定システムの一例を概略的に示す模式図である。
【
図2】
図2は、送受信装置の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、血圧測定装置の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、血圧測定システムの一例を概略的に示すブロック図である。
【
図5】
図5(a)は、時系列データの一例を示す図であり、
図5(b)は、補正された時系列データの一例を示す図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、時系列データの補正方法を説明するための図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、時系列データの補正方法を説明するための図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(i)は、多重解像度解析による波形の分解を説明するためのグラフである。
【
図9】
図9は、拍動波形の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、心拍間隔データの一例を示すグラフである。
【
図11】
図11は、心収縮時間と最高血圧との相関関係(第1の相関データ)の一例を示すグラフである。
【
図12】
図12は、最高血圧の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、心周期と平均血圧との相関関係(第2の相関データ)の一例を示すグラフである。
【
図14】
図14は、最低血圧の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図15】
図15は、血圧測定の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図16】
図16は、血圧測定装置の他の例を概略的に示すブロック図である。
【
図17】
図17は、血圧測定システムの他の例を概略的に示すブロック図である。
【
図18】
図18は、検知領域に複数の生体が存在する場合の血圧測定方法を説明するための図である。
【
図19】
図19は、検知領域に複数の生体が存在する場合の時系列データの一例を示す図である。
【
図20】
図20(a)は、補正された時系列データの一例を示す図であり、
図20(b)は、
図20(a)に示される時系列データの一部を拡大した図である。
【
図21】
図21(a)は、補正されていない時系列データから得られる信号強度の時間変化を示すグラフであり、
図21(b)は、補正された時系列データから得られる信号強度の時間変化を示すグラフである。
【
図22】
図22は、補正された時系列データの一例を示す図である。
【
図23】
図23(a)は、補正されていない時系列データから得られる信号強度の時間変化を示すグラフであり、
図23(b)は、補正された時系列データから得られる信号強度の時間変化を示すグラフである。
【
図24】
図24は、心拍波形の信号強度及び脈拍波形の信号強度の時間変化を示すグラフである。
【
図25】
図25は、脈波伝播時間と最高血圧との相関関係の一例を示すグラフである。
【
図26】
図26は、血圧測定の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図27】
図27は、血圧測定システムを備える乗物の一例を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
[血圧測定システム]
血圧測定システム1の構成について、
図1~
図3を参照して説明する。血圧測定システム1は、送受信装置10と、血圧測定装置20とを備える。血圧測定システム1は、例えば室内又は屋外の生体Hの血圧を測定するように構成されている。室内は、例えば、リビング、オフィス、寝室、トイレ、浴室、乗物などの内部を含む。
【0017】
血圧の測定対象となる生体Hとしては、例えば、人間、動物などが挙げられるが、本明細書では生体Hが人間であるものとして説明する。生体Hは、動作していてもよく、椅子等に着座した状態で作業していてもよく、静止していてもよい。なお、生体Hは静止していても、無意識下においてわずかに体が動いていることがある。本明細書では、生体Hによる意図的な動作、無意識下でのわずかな動作(微体動)、及び外部要因に由来して生体Hに生ずる動作(振動等)を含めて、生体Hの「動き」として説明する。生体Hによる意図的な動作は、生体の全体の動作、及び生体の一部分の動作を含む。生体の全体の動作は、例えば、歩行等を含む。生体の一部分の動作は、例えば、立位、座位、及び臥位状態での生体の一部分の動作を含む。
【0018】
送受信装置10は、予め設定された検知領域Rに向けて、広帯域又は超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)の無線電波を発信するように構成されている。検知領域Rは、生体H(例えば、生体Hの心臓部分を含む部位(胸部又は背中)、顔面、腕、脚など)に無線電波が到達するように設定されている。送受信装置10は、例えば室内の壁に設けられていてもよい。送受信装置10は、
図2に示されるように、発信機11(発信部)と、受信機12(受信部)と、通信機13(通信部)と、制御部14と、バス15とを含む。
【0019】
発信機11は、制御部14の指示に基づいて、検知領域Rに向けて広帯域又は超広帯域の無線電波を発信するように構成されている。発信機11のアンテナ水平面における指向角は、例えば、40°~80°程度であってもよいし、60°~80°程度であってもよい。発信機11のアンテナ垂直面における指向角は、例えば、30°~40°程度であってもよいし、30°以下であってもよい。これらの指向角の範囲に対応して検知領域Rが設定される。
【0020】
本明細書において「広帯域」とは、周波数帯域幅が100MHz以上で且つ500MHz以下の場合をいうものとする。そのため、発信機11が発信する広帯域の無線電波の周波数帯域幅は、例えば、100MHz以上であってもよいし、300MHz以上であってもよい。「超広帯域」とは、周波数帯域幅が500MHzを超える場合をいうものとする。そのため、発信機11が発信する超広帯域の無線電波の周波数帯域幅は、例えば、3GHz以上であってもよいが、電波法及びコストパフォーマンスに鑑みて4GHz以下であってもよい。広帯域又は超広帯域の無線電波を用いる場合、無線電波の発信出力の電力スペクトルを小さくすることができ、生体Hに対する無線電波の影響を小さくすることができる。以下では、特に説明がない限り、「無線電波」は広帯域又は超広帯域の無線電波を意味する。
【0021】
受信機12は、発信機11から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成されている。発信機11において広帯域又は超広帯域の無線電波を用いているので、受信機12は、無線電波の反射波を反射パス長に対応した時間軸上で分離して受信することができる。すなわち、受信機12は、検知領域Rの距離方向において複数に区切られたレンジビン(周波数帯域幅で決まる)ごとに、信号を抽出することが可能である。各レンジビンの幅は、例えば10cm以下であってもよいし、3cm~4cm程度であってもよい。検知領域Rにおけるレンジビンの数は、レンジビンの幅及び検知領域Rの大きさに応じて適宜変更可能である。
【0022】
受信機12によるデータ取得の時間間隔(サンプリング周期)は、適宜設定しうる。血圧測定装置20による拍動成分の抽出(詳しくは後述する)を容易にするために、受信機12は、生体Hの拍動に対応する周波数を基準として、反射波をオーバサンプリングしてもよい。受信機12は、例えば、拍動に応じた周波数範囲の上限値(例えば1.6Hz)の2倍より大きいサンプリング周波数(例えば上限値の整数倍)にて反射波をオーバサンプリングしてもよい。なお、受信機12以外でオーバサンプリングが行われてもよい。
【0023】
通信機13は、血圧測定装置20の通信機23と通信可能に構成されている。通信機13と通信機23との通信方式は特に限定されず、例えば、無線通信であってもよい。無線通信の例として、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、SUPER3G、IMT-Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broadband)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB、Bluetooth(登録商標)、その他の通信方式が用いられてもよい。
【0024】
制御部14は、バス15を介して、発信機11、受信機12及び通信機13との間で信号の送受信を行い、これらの動作を制御するように構成されている。制御部14は、例えば、プロセッサ16と、メモリ17と、ストレージ18とを含む。
【0025】
プロセッサ16は、メモリ17、ストレージ18等のハードウェアに所定のソフトウェア(プログラム)を読み込むと所定の演算を行い、発信機11からの無線電波の発信、受信機12が受信した反射波の受信、通信機13による通信、メモリ17及びストレージ18におけるデータの読み出し又は書き込みを実行する。これにより、送受信装置10における各機能が実現される。
【0026】
血圧測定装置20は、送受信装置10により受信された反射波(受信データ)に基づいて、生体Hの血圧を測定するように構成されている。例えば、生体Hの心臓の拍動に応じて心臓や血管が膨張収縮する。そのため、受信データには生体Hの拍動(心拍、脈拍)に関する情報(拍動波形)も含まれる。また、生体Hが呼吸をすると、それに応じて胸部が膨張収縮する。そのため、受信データには生体Hの呼吸に関する情報が含まれていてもよい。
【0027】
血圧測定装置20は、
図1に示されるように、送受信装置10と離間して配置されていてもよい。血圧測定装置20は、例えば、生体Hが存在する室内とは異なる場所に設けられてもよい。血圧測定装置20に含まれる各要素を収容する筐体は、送受信装置10に含まれる各要素を収容する筐体と別体であってもよい。
【0028】
血圧測定装置20は、
図3に示されるように、通信機23と、制御部24と、バス25とを備える。通信機23は、上述したように、送受信装置10の通信機13と通信可能に構成されている。血圧測定装置20は、通信機23が内蔵されたコンピュータ装置又はパーソナルコンピュータにより構成されていてもよい。
【0029】
制御部24は、バス25を介して、通信機23との間で信号の送受信を行い、これの動作を制御するように構成されている。制御部24は、例えば、プロセッサ26と、メモリ27と、ストレージ28ととを含む。
【0030】
プロセッサ26は、メモリ27、ストレージ28等のハードウェアに所定のソフトウェア(プログラム)を読み込むと所定の演算を行い、送受信装置10を介して取得した反射波の解析、通信機23による通信、メモリ27及びストレージ28におけるデータの読み出し又は書き込みを実行する。これにより、血圧測定装置20における各機能が実現される。
【0031】
続いて、送受信装置10及び血圧測定装置20における各機能について、
図4~
図14を参照して説明する。送受信装置10の制御部14は、
図4に示されるように、機能ブロックとして、送受信処理部31と、記憶部32とを含む。
【0032】
送受信処理部31は、発信機11、受信機12及び通信機13の間で信号を送受信する機能を有する。具体的には、送受信処理部31は、発信機11に指示信号を送信して、発信機11から無線電波を発信させる。送受信処理部31は、受信機12から反射波のデータ(反射波に応じた受信データ)を受信し、当該データを通信機23に出力する。送受信処理部31は、通信機13に指示信号を送信して、受信データを血圧測定装置20に送信させる。
【0033】
記憶部32は、種々のデータを記憶する機能を有する。記憶部32が記憶するデータとしては、例えば、読み出したプログラム、発信機11の動作設定データ、受信機12が受信した反射波に関する受信データ等が挙げられる。
【0034】
血圧測定装置20の制御部24は、
図4に示されるように、機能ブロックとして、データ取得部41と、信号強度算出部42と、データ補正部43(補正部)と、時間変動データ生成部44(第1の生成部)と、拍動波形生成部45(第2の生成部)と、心拍間隔データ生成部46(第3の生成部)と、生体特定部47と、血圧算出部48(第1の算出部、第2の算出部、第3の算出部、算出部)と、記憶部49(信号強度記憶部、第1の相関記憶部、第2の相関記憶部、相関記憶部、波形記憶部)とを含む。
【0035】
データ取得部41は、通信機13及び通信機23を介して、反射波に応じた受信データを取得する機能を有する。データ取得部41は、取得した受信データを信号強度算出部42に出力する。
【0036】
信号強度算出部42は、データ取得部41から出力された受信データに基づいて、各レンジビンのそれぞれにおける信号強度を算出する機能を有する。換言すると、信号強度算出部42は、所定の時刻における、距離に対する信号強度の変化(レンジビン毎の信号強度の変化)を示す距離変動データを算出する。信号強度算出部42は、受信データに対して、生体Hが検知領域Rに存在しない場合の無線電波の反射に基づいた参照受信データを用いて差分処理を施した上で、距離変動データを算出してもよい。この差分処理は、例えば、人または動いている物体(動体)を検知したり、それらの距離や動線を検出したり、マルチパスによる影響を低減するために行われる。
【0037】
以下では、サンプリング周期ごとに、時刻t1,t2,・・・,tN(Nは2以上の自然数)における距離変動データをそれぞれ、「第1の距離変動データ」、「第2の距離変動データ」、・・・、「第Nの距離変動データ」などと称し、第1~第Nの距離変動データのうち時刻tn(nは1~Nの自然数)における距離変動データを「第nの距離変動データ」と称する。信号強度算出部42は、無線電波が生体Hから反射された反射波に基づいて、互いに異なる時刻t1~tNにおける第1~第Nの距離変動データをそれぞれ時間順に算出してもよい。
【0038】
所定の設定時間の間に、信号強度算出部42により算出された第1~第Nの距離変動データ(所定時間分の第1~第Nの距離変動データ)は、時系列順に並べられた時系列データとして、データ補正部43に出力される。時系列データは、距離(レンジ)軸、時間軸、及び信号強度軸を含む3次元グラフにより示される。第nの距離変動データは、距離成分、時間成分、及び信号強度成分を含んでいる。所定の設定時間は、例えば、距離変動データの蓄積単位を示す時間の長さである。設定時間は、メモリの容量に応じて予め定められてもよい。設定時間は、例えば、20秒~3分程度の範囲内で定められてもよいし、3分以上であってもよい。
【0039】
図5(a)は、時系列データの一例を示す。
図5(a)に示される時系列データは、60秒間において得られた距離変動データである。この時系列データは、被験者(生体H)が送受信装置10に正対した測定環境において、送受信装置10から約1.3mだけ離れた位置に静止した状態で測定を開始し、約30秒後から送受信装置10に向かって徐々に近づいていった場合のデータである。そのため、被験者の胸部及び心臓(検知部位)からの反射波の信号強度が、距離変動データにおけるピーク付近に現れており、当該ピークでの距離成分が徐々に小さくなっている。
【0040】
データ補正部43は、信号強度算出部42から出力された時系列データを補正する機能を有する。データ補正部43は、例えば、第nの距離変動データにおける検知部位に対応する距離成分が基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を行ってもよい。基準値は、例えば、生体データの取得ごとに、任意に設定される値であってもよい。データ補正部43は、第1の距離変動データに含まれるピークでの距離成分の位置を基準値に設定してもよい。データ補正部43は、当該補正処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、補正された時系列データ(以下、「補正時系列データ」という。)を得てもよい。データ補正部43は、補正処理として、例えば、第1~第Nの距離変動データを分割した複数のブロックそれぞれにおいて、生体Hの動きを近似(一次補正)し、検知部位に対応する距離成分を補正(二次補正)してもよい。そして、データ補正部43は、複数のブロック間での距離成分を補正(三次補正)してもよい。データ補正部43は、補正時系列データを時間変動データ生成部44に出力する。
【0041】
ここで、補正処理の例について具体的に説明する。この補正処理は、生体Hが動いていた場合であっても、検知部位からの反射に基づいた信号(信号強度の時間変動)を抽出するために行われる。まず、データ補正部43は、第1~第Nの距離変動データにおいてピーク(散乱点)をそれぞれ算出する。このときに算出する「ピーク」は、信号強度が所定値よりも大きく、且つ極大となる点であってもよい。
【0042】
ところで、マルチパス等の外乱の影響により、一つの距離変動データに複数のピークが算出される場合がある。この場合には、検知部位からの反射に基づくピーク以外のピークが時系列データには含まれうる。ここで、
図6(a)に、外乱等に基づくピークを含む複数のピークpnが距離軸-時間軸の平面に白丸印(○印)でプロットされたグラフの一例を示す。以下では、
図6(a)に例示される複数のピークpnを用いて、外乱等に由来するピークを含む距離変動データを補正するための補正処理を説明する。
【0043】
まず、データ補正部43は、時系列データが時間軸において所定の時間間隔(例えば数秒~数十秒間隔)で分割された複数のブロックごとに、複数のピークpnに対して近似線Cを描く(生成処理)。以下では、時系列データを時系列に沿って順に分割して得られる複数のブロックを、「第1のブロックB1」、「第2のブロックB2」、・・・、「第MのブロックBM」(Mは、2以上の自然数)とそれぞれ称する場合がある。第1~第MのブロックB1~BMのうち1つのブロックを「第mのブロックBm」(mは、1~Mの自然数)と称する場合がある。
【0044】
近似線Cは、1つのブロック内(所定の時間間隔)での生体Hの移動を推定した動線軌跡を意味する。近似線は、近似直線、あるいは二次又は多項近似を用いた多項近似曲線であってもよい。人の動作は、1秒以内であれば、ほぼ直線の動線軌跡となり、数秒程度であっても動線軌跡を二次曲線で近似することが可能である。
【0045】
図6(a)の例では、一つの距離変動データごとに近似線Cを中心として左右に2つずつ目盛が示されている。一つの目盛間隔は一つのレンジビンに対応している。すなわち、
図6(a)の目盛は、近似線Cを中心として距離軸の正側及び負側にそれぞれ2つずつレンジビンを描いたものである。データ補正部43は、これら4つのレンジビンから外れた位置にあるピークを以降の処理において除外してもよい。レンジビンの設定数は、特に限定されない。例えば、近似線Cを中心として距離軸の正側及び負側にそれぞれ1つずつであってもよいし、x個(xは3以上の自然数)ずつであってもよい。あるいは、近似線Cを中心として距離軸の正側に設定されるレンジビンの数は、近似線Cを中心として距離軸の負側に設定されるレンジビンの数よりも少なくてもよいし、多くてもよいし、同一であってもよい。
【0046】
一般的に、近似線C付近のピークと胸部付近からの反射波とは一致することが多いが、生体Hが送受信装置10に対して斜め方向を向いていると、近似線C付近のピークと胸部付近からの反射波とが異なることもある。そのため、データ補正部43は、近似線Cを基準とした所定の範囲(以下、「散乱範囲」という。)において、検知部位からの反射点を検出してもよい。例えば、生体Hが人間であり、その横幅が40~50cm程度と仮定し、1GHzの無線電波が用いられる場合、
図6(a)に例示されるように、散乱範囲は近似線Cから±2レンジビンに設定されてもよい。なお、この場合に、レンジビンの幅は15cm程度であってもよい。
【0047】
次に、データ補正部43は、
図6(b)に示されるように、近似線Cが第1のブロックB1での基準値(ここでは、x=0の位置)と一致するように、ブロックB1内に含まれる距離変動データの距離成分を距離軸に沿って平行移動する(一次補正:ブロック補正処理)。ブロックB1での基準値は、任意に設定される値である。次に、データ補正部43は、散乱範囲において、レンジビンごとに信号強度の時間変動を算出して、当該時間変動が最大値を示すレンジビンを選択してもよい。データ補正部43は、例えば、同じレンジビン同士で、第nの距離変動データと第n+1の距離変動データとの間で信号強度の差分を求めることにより、レンジビンごとに信号強度の時間変動を算出してもよい。
【0048】
図7(a)は、レンジビンにおける信号強度の時間変動が最も大きい点を検知部位からの反射点ptとして検出した結果の一例を示す。
図7(a)において、反射点ptは黒丸印(●印)で示されている。次に、データ補正部43は、
図7(b)に示されるように、検出された反射点ptの距離成分が基準値と一致するように、ブロックB1内に含まれる距離変動データの距離成分を距離軸に沿って平行移動する(二次補正)。外乱等を含みうるピークpnではなく、レンジビンにおける信号強度の時間変動が最も大きい点を反射点ptとして検出しているので、
図7(a)又は
図7(b)に示されるように、時刻によって、ピークpnが反射点ptと一致する場合もあり、ピークpnが反射点ptと一致しない場合もある。以上の生成処理、一次補正及び二次補正が行われることで、マルチパス等の外乱に由来するピークが除去されうる。
【0049】
データ補正部43は、他のブロックについても上記と同様に、ブロックごとに同様の生成処理、一次補正及び二次補正を行う。以上のように、データ補正部43は、第mのブロックBmにおいて、第1~第Nの距離変動データのうち第mのブロックBmに含まれる複数の距離変動データにおける信号強度のピークpnでの距離成分に基づいて近似線Cを生成する生成処理と、ブロックBmについて定められる基準値に当該近似線Cが近づくように複数の距離変動データの距離成分を補正する処理(一次補正及び二次補正)とを行う。データ補正部43は、生成処理、一次補正及び二次補正を、第1~第Mのブロックそれぞれに対して行う。
【0050】
ブロックごとの生成処理、一次補正及び二次補正では、ブロックごとに任意に定められる基準値が用いられてもよい。例えば、ブロック内において最初の距離変動データにおけるピークの位置が、当該ブロックでの基準値に設定されてもよい。このため、複数のブロックそれぞれにて生成処理、一次補正及び二次補正を行った後では、複数のブロック間において基準値の位置が互いにずれている。そのため、データ補正部43は、複数のブロック間の基準値の位置が一致するように、それぞれのブロック内に含まれる距離変動データの距離成分を距離軸に沿って平行移動する(三次補正)。データ補正部43は、三次補正において、最初のブロックB1における基準値を全てのブロックの基準値として採用してもよい。
【0051】
以上のように、生成処理、一次補正、二次補正及び三次補正を経ることにより、
図5(b)に示されるように、生体Hが基準値で静止しているような補正時系列データが得られる。なお、
図6(a)等では、説明を簡単にするために基準値の位置をx=0としているが、
図5(a)及び
図5(b)に示される例では、最初のブロックでの基準値の位置が1.3m付近であり、1.3m付近にピーク及び検知部位からの反射点が揃えられている。
【0052】
時間変動データ生成部44は、第nの距離変動データにおける信号強度のうち生体Hの検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を行う機能を有する。時間変動データ生成部44は、例えば、所定時間分の第1~第Nの距離変動データに対して強度取得処理を行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成する。時間変動データ生成部44は、例えば、補正時系列データ内の基準値(一例として、第1のブロックB1についての基準値)において時系列に沿って並べられた信号強度の集合を、時間変動データとして得てもよい。時間変動データは、検知部位からの反射波に応じた信号強度の時間変動を示している。
図8(a)に示される波形「s」は、時間変動データ生成部44により生成された時間変動データの一例である。データ補正部43による補正処理を経ることで、時間変動データでは、生体Hの動き(動作又は微体動)による影響が低減されている。時間変動データには、生体Hの検知部位における生体情報(呼吸及び拍動)が含まれている。
【0053】
拍動波形生成部45は、生体Hの検知部位における拍動波形を生成する機能を有する。拍動波形生成部45は、例えば、時間変動データに対して多重解像度解析を行うことにより、生体Hの検知部位における拍動波形を生成してもよい。拍動波形生成部45は、時間変動データに対する多重解像度解析において、当該時間変動データを高周波成分(高解像度成分)と低周波成分(低解像度成分)とに分解するウェーブレット変換を繰り返す。多重解像度解析における解像度レベルは、例えば、5~10程度であってもよいし、7程度であってもよい。拍動波形生成部45は、例えば、基底関数となるウェーブレット関数として、Haarウェーブレット、Daubechiesウェーブレット、Symletウェーブレット、又はCoifletウェーブレットを用いてウェーブレット変換を行ってもよい。
【0054】
ここで、時間変動データに対する多重解像度解析の例について具体的に説明する。
図8(b)~
図8(i)は、
図8(a)に示される時間変動データを、多重解像度解析により分解した複数(ここでは8個)の波形(以下、「分解波形」という。)の一例を示す。拍動波形生成部45は、まず、時間変動データに対して1回目のウェーブレット変換を行うことで、高周波成分と低周波成分とに分解する。この時に分解された高周波成分は、
図8(i)に示される波形「d1」である。拍動波形生成部45は、1回目のウェーブレット変換において分解された低周波成分に対して、2回目のウェーブレットを行う。この時に分解された高周波成分は、
図8(h)に示される波形「d2」である。
【0055】
拍動波形生成部45は、3回目以降のウェーブレット変換を同様に繰り返す。この例では、時間変動データに対して、7回のウェーブレット変換を行うことにより、当該時間変動データが8個のレベル(周波数帯)に分解されている。なお、
図8(g)、
図8(f)、
図8(e)、
図8(d)及び
図8(c)に示される波形「d3」~「d7」はそれぞれ、3~7回目のウェーブレット変換により分解された高周波成分である。
図8(b)に示される波形「a7」は、7回目のウェーブレット変換により分解された低周波成分である。
【0056】
拍動波形生成部45は、複数の分解波形から拍動波形を抽出する。拍動波形は、時間変動データに含まれる生体Hの拍動に応じた成分である。拍動波形生成部45は、複数の分解波形のうち、拍動に応じた周波数範囲(例えば0.8Hz~1.6Hz)を有する分解波形を、拍動波形として抽出してもよい。拍動波形生成部45は、複数の分解波形から呼吸波形も抽出してもよい。呼吸波形は、時間変動データに含まれる生体Hの呼吸に応じた成分である。拍動波形生成部45は、例えば、複数の分解波形のうち、呼吸に応じた周波数範囲(例えば、0.5Hz以下)を有する分解波形を、呼吸波形として抽出してもよい。
【0057】
図8(b)~
図8(i)に示される例では、拍動波形生成部45は、
図8(b)に示される波形「a7」を呼吸波形として抽出してもよい。拍動波形生成部45は、
図8(c)に示される波形「d7」を拍動波形として抽出してもよい。拍動波形生成部45は、複数の分解波形(例えば、
図8(c)及び
図8(d)に示される2つの波形)の周波数範囲が、拍動(呼吸)に応じた周波数範囲に対応する場合には、当該複数の分解波形を再合成することで、再合成された波形を拍動波形(呼吸波形)として抽出してもよい。再合成する際には、拍動波形生成部45は、当該複数の分解波形同士を加算することで、再合成された波形を生成してもよい。なお、拍動波形生成部45は、多重解像度解析に代えて独立成分分析法または移動平均差分法を用いて、時間変動データから呼吸波形と拍動波形とを分離してもよい。
【0058】
拍動波形生成部45は、複数の分解波形から拍動波形を抽出する際に、拍動とは異なる生体Hの動きに対応する波形(以下、「非拍動波形」という。)を除外してもよい。拍動とは異なる生体Hの動きは、例えば、生体H自身に由来する拍動以外の周期的な動作、及び外部要因に由来して生体Hに生ずる周期的な動作を含む。前者の一例は、生体Hの呼吸動作を含む。後者の一例は、生体Hが搭乗している乗物の運転に伴い乗物から生体Hに作用する振動を含む。拍動波形生成部45は、拍動波形を抽出する際に、複数の分解波形のうちの非拍動波形を除外してもよい。拍動波形生成部45は、非拍動波形が除外された後の残りの複数の分解波形を再合成することで得られる波形を、拍動波形として抽出してもよい。拍動波形生成部45は、例えば、生体Hの呼吸動作に対応する
図8(b)に示される波形「a7」を除外したうえで、波形「a7」が除外された後の残りの波形「d1」~「d7」を再合成することで得られる波形を、拍動波形として抽出してもよい。
【0059】
図9に示される波形は、拍動波形生成部45により生成された拍動波形の一例である。ここで、本明細書において、拍動波形の極小値と極大値との間の区間を心収縮時間STと定義する。また、拍動波形の一周期を心周期HTと定義する。
【0060】
心拍間隔データ生成部46は、拍動波形に含まれる極大となる複数の点において互いに隣り合う点同士の時間間隔を算出していくことで、
図10に示されるように、心拍間隔の時間変動(R-R間隔:RRI)を示す心拍間隔データを生体データとして生成してもよい。心拍間隔データ生成部46は、拍動波形から心拍間隔データを生成する際に、心拍間隔を高精度に算出するために、拍動波形に対してスペクトル解析を行ってもよい。心拍間隔データ生成部46は、例えば、自己回帰モデル(AR:autoregressive model)を用いたスペクトル解析を拍動波形に対して行ってもよい。ARモデルを用いたスペクトル解析では、心拍間隔データ生成部46は、バーグ法によりARモデルのパラメータ(係数)を求めてもよく、赤池情報量基準(AIC:Akaike's Information Criterion)によりARモデルの次数を決定してもよい。
【0061】
心拍間隔データ生成部46は、ARモデルを用いたスペクトル解析によりノイズ成分が除去された拍動波形から、心拍間隔データを算出してもよい。心拍間隔データ生成部46は、このように算出された心拍間隔データに基づいて、単位時間あたりの心拍の数(心拍数:heart rate,平均心拍:average heart rate)を生体データとして求めてよい。心拍間隔データ生成部46は、上記と同様に、単位時間(例えば1分間)あたりの呼吸の数(呼吸数:respiratory rate)を生体データとして求めてもよい。なお、心拍間隔データ生成部46は、ARモデルに代えて、最大エントロピー法(MEM:Maximum Entropy Method)又はメムカルク(MemCalc)解析システムを用いてスペクトル解析を行ってもよい。
【0062】
生体特定部47は、心拍間隔データ生成部46で生成された心拍間隔データに基づいて生体Hを特定するように構成されている。心拍間隔(R波同士の間隔:RRI)には、個人ごとに固有の特徴となる心拍間隔パターンがある。そのため、生体特定部47は、例えば、心拍間隔データから統計的な特徴量を機械学習により抽出して、予め記憶部49に登録されている個人ごとの特徴量と照合することにより、生体Hを特定することができる。生体特定部47は、心拍間隔データの統計的特徴量のみならず、拍動波形に由来する統計的特徴量に基づいて、生体Hを個々に特定するように構成されていてもよい。生体特定部47は、例えば、所定時間(例えば30秒から1分間程度)におけるRRIの平均値または偏差、隣り合うRRI同士の差の二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)、呼吸数などに基づいて機械学習によりデータをクラスタリングして、複数のクラスタを生成することと、測定対象の生体Hから得られた拍動波形に由来する統計的特徴量を、当該複数のクラスタのいずれかに分類して、生体Hを個々に特定することとを実行してもよい。クラスタリングの手法としては、例えば、k平均法、サポートベクタマシンなどを用いてもよい。機械学習によって得られた複数のクラスタを用いることにより、生体Hをより正確に特定することが可能となる。
【0063】
血圧算出部48は、記憶部49に記憶されている相関データと、拍動波形生成部45により生成された拍動波形とに基づいて、生体Hの血圧を算出するように構成されている。具体的には、血圧算出部48は、拍動波形生成部45により生成された拍動波形から心収縮時間STを抽出し、記憶部49に記憶されている第1の相関データと、心収縮時間STとに基づいて、生体Hの最高血圧SBPを算出するように構成されている。第1の相関データは、生体Hにおける心収縮時間STと最高血圧SBPとの相関関係を予め測定したものである。
【0064】
第1の相関データは、例えば、
図11に示されるように、心収縮時間STと最高血圧SBPとが対応付けられた複数のデータの近似直線C1で表される。すなわち、血圧算出部48は、拍動波形から抽出された心収縮時間STを近似直線C1に代入することで、最高血圧SBPを算出することができる。したがって、拍動波形をリアルタイムで取得することにより、
図12に例示されるように、最高血圧SBPもリアルタイムで測定することができる。なお、近似直線C1の傾き及び切片の値は、被験者ごとに特有であり、また、同じ被験者であっても被験者の加齢によって変化しうる。そのため、血圧算出部48において算出される最高血圧SBPと、当該最高血圧SBPの算出に用いられる心収縮時間STとを第1の相関データに蓄積して、逐次にまたは所定時間ごとに、近似直線C1を更新してもよい。
【0065】
心収縮時間STと最高血圧SBPとの対応づけは、被験者の最高血圧SBPがカフ式血圧計で計測された時の心収縮時間STを、拍動波形生成部45により生成された拍動波形から読み取ることによって行うことができる。この測定は、被験者の活動状況(安静なとき、動き回った後など)と、被験者の姿勢(寝た状態、座った状態、起立した状態など)とを様々に変化させながら、複数回行う。ここで、複数の被験者に対してこの測定を行ったところ、相関係数は-0.97~-0.95程度であった。そのため、いずれの被験者においても、心収縮時間STと最高血圧SBPとの間に極めて強い負の相関があることが確認された。
【0066】
血圧算出部48は、拍動波形生成部45により生成された拍動波形から心周期HTを抽出し、記憶部49に記憶されている第2の相関データと、心周期HTとに基づいて、生体Hの平均血圧MBPを算出するように構成されている。第2の相関データは、生体Hにおける心周期HTと平均血圧MBPとの相関関係を予め測定したものである。第2の相関データは、例えば、
図13に示されるように、心周期HTと平均血圧MBPとが対応付けられた複数のデータの近似直線C2で表される。なお、近似直線C2の傾き及び切片の値は、被験者ごとに特有であり、また、同じ被験者であっても被験者の加齢によって変化しうる。そのため、血圧算出部48において算出される平均血圧MBPと、当該平均血圧MBPの算出に用いられる心周期HTとを第2の相関データに蓄積して、逐次にまたは所定時間ごとに、近似直線C2を更新してもよい。
【0067】
心周期HTと平均血圧MBPとの対応づけは、被験者の平均血圧MBPがカフ式血圧計で計測された時の心周期HTを、拍動波形生成部45により生成された拍動波形から読み取ることによって行うことができる。この測定は、被験者の活動状況(安静なとき、動き回った後など)と、被験者の姿勢(寝た状態、座った状態、起立した状態など)とを様々に変化させながら、複数回行う。ここで、複数の被験者に対してこの測定を行ったところ、相関係数は-0.97~-0.95程度であった。そのため、いずれの被験者においても、心周期HTと平均血圧MBPとの間に極めて強い負の相関があることが確認された。
【0068】
血圧算出部48は、上記のように算出された最高血圧SBP及び平均血圧MBPに基づいて、生体Hの最低血圧DBPを算出するように構成されている。ここで、最高血圧SBPと、平均血圧MBPと、最低血圧DBPとの間には、式1の関係が成り立つことが一般的に知られている。
【0069】
DBP=(3MBP-SBP)/2 ・・・(1)
そのため、血圧算出部48は、算出された最高血圧SBP及び平均血圧MBPを式1に代入することにより、最低血圧DBPを算出することができる。血圧算出部48において算出された最高血圧SBP、平均血圧MBP及び最低血圧DBPは、生体特定部47において特定された生体Hと対応付けられて、記憶部49に記憶される。
【0070】
記憶部49は、種々のデータを記憶する機能を有する。記憶部49が記憶するデータとしては、例えば、読み出したプログラム、信号強度算出部42が算出した複数の距離変動データ、データ補正部43が補正した時系列データ、時間変動データ生成部44が生成した時間変動データ、拍動波形生成部45が生成した拍動波形、心拍間隔データ生成部46が生成した心拍間隔データ、生体特定部47における特定に用いられる特徴量、生体特定部47において特定された生体Hのデータ、血圧算出部48において用いられる第1及び第2の相関データ、血圧算出部48において算出された血圧(最高血圧、最低血圧、平均血圧)などが挙げられる。
【0071】
血圧測定装置20は、生成された生体データ(例えば、血圧データ、呼吸データ、心拍間隔データ、生体特定データ)を外部に出力する機能を有していてもよい。血圧測定システム1は、例えば、報知機(不図示)を備えていてもよく、血圧測定装置20は、当該報知機に生体データを出力してもよい。血圧測定装置20は、送受信装置10及び血圧測定装置20とは別の場所(建物)に設けられている報知機に通信機23を介してデータを送信してもよい。血圧測定装置20は、取得した生体データを記憶部49に記憶してもよい。
【0072】
[血圧測定方法]
続いて、
図15を参照して、血圧測定方法について説明する。
【0073】
まず、送受信装置10(制御部14)の送受信処理部31は、発信機11に指示して、発信機11から無線電波を検知領域Rに向けて発信させる。次に、送受信処理部31は、受信機12を介して無線電波の反射波に基づいた受信データを受信して、当該受信データを通信機13に出力する。そして、送受信処理部31は、通信機13に指示して、受信データを血圧測定装置20の通信機23に送信させる。
【0074】
次に、血圧測定装置20(制御部24)のデータ取得部41は、通信機23に送信された受信データを、時刻t1における受信データとして取得する。データ取得部41は、取得した時刻t1の受信データを信号強度算出部42に出力する。
【0075】
次に、信号強度算出部42は、時刻t1の受信データに基づいて、距離に対する信号強度の変動を示す第1の距離変動データを算出する(
図15のステップS1)。信号強度算出部42は、受信データに対して、生体Hが検知領域Rに存在しない場合の無線電波の反射に基づいた参照受信データを用いて差分処理を施した上で、第1の距離変動データを算出してもよい。信号強度算出部42は、算出した第1の距離変動データを記憶部49に出力する。
【0076】
次に、記憶部49は、第1の距離変動データを記憶する(
図15のステップS2)。そして、制御部24は、初期時刻から設定時間が経過したかどうかを判断する(
図15のステップS3)。設定時間が経過していないと判断された場合(ステップS3:NO)、制御部24は、ステップS1~S3を繰り返す。これにより、設定時間において、第1~第Nの距離変動データが記憶部49に記憶される。
【0077】
設定時間が経過したと判断された場合(ステップS3:YES)、データ補正部43は、記憶部49に記憶されている時系列データ(第1~第Nの距離変動データ)を補正する(
図15のステップS4)。データ補正部43は、例えば、第nの距離変動データにおける検知部位に対応する距離成分(検知部位からの反射点)が基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を行う。データ補正部43は、当該補正処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、補正された時系列データ(補正時系列データ)を生成する(
図5(a)及び
図5(b)参照)。データ補正部43は、
図6(a)~
図7(b)に示される例のように、一次補正、二次補正、及び三次補正を行うことで、補正時系列データを生成してもよい。データ補正部43は、補正時系列データを時間変動データ生成部44に出力する。
【0078】
次に、時間変動データ生成部44は、補正時系列データに基づいて、時間変動データを生成する(
図15のステップS5)。時間変動データ生成部44は、例えば、第nの距離変動データにおける信号強度のうち生体Hの検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を行う。時間変動データ生成部44は、第1~第Nの距離変動データに対して強度取得処理を行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成する。時間変動データ生成部44は、補正時系列データにおいて、生体データの取得処理ごとに設定される基準値に沿って並べられた信号強度の集合を、時間変動データとして得てもよい(
図5(b)及び
図8(a)参照)。時間変動データ生成部44は、生成した時間変動データを拍動波形生成部45に出力する。
【0079】
次に、拍動波形生成部45は、時間変動データに対して多重解像度解析を行う(
図15のステップS6)。拍動波形生成部45は、時間変動データに対して、高周波成分と低周波成分とに分解するウェーブレット変換を繰り返すことで、互いに異なる周波数範囲を有する複数の分解波形(
図8(b)~
図8(i)参照)を生成する。
【0080】
次に、拍動波形生成部45は、複数の分解波形から拍動成分を抽出する(
図15のステップS7)。拍動波形生成部45は、例えば、複数の分解波形のうち、拍動に応じた周波数範囲(例えば0.8Hz~1.6Hz)を有する分解波形を、拍動成分を示す拍動波形として抽出してもよい。拍動波形生成部45は、複数の分解波形の周波数範囲が、拍動に応じた周波数範囲に対応する場合には、当該複数の分解波形を再合成することで、再合成された波形を拍動波形として抽出してもよい。
【0081】
次に、心拍間隔データ生成部46は、拍動波形に基づいて心拍間隔データを生成する(ステップS8)。心拍間隔データ生成部46は、例えば、拍動波形に含まれる極大となる複数の点において互いに隣り合う点同士の時間間隔を算出していくことで、心拍間隔データを生体データとして生成してもよい(
図10参照)。心拍間隔データ生成部46は、拍動波形から心拍間隔データを生成する際に、心拍間隔を高精度に算出するために、拍動波形に対してスペクトル解析を行ってもよい。心拍間隔データ生成部46は、例えば、ARモデルを用いたスペクトル解析によりノイズ成分が除去された拍動波形から、心拍間隔データを算出してもよい。
【0082】
次に、生体特定部47は、心拍間隔データ生成部46で生成された心拍間隔データに基づいて生体Hを特定する(ステップS9)。生体Hが特定された後は、個々の生体ごとに、血圧測定装置20によって得られた各種の生体データが記憶部49に記憶されてもよい。これにより、複数人の継続的なヘルスモニタリングを行うことが可能となる。
【0083】
次に、血圧算出部48は、ステップS7で生成された拍動波形に基づいて、血圧(最高血圧、平均血圧、最低血圧)を算出する(ステップS10)。血圧算出部48は、少なくとも最高血圧及び平均血圧の一方を算出してもよい。なお、ステップS10の処理は、ステップS7後に行われればよい。すなわち、ステップS10の処理は、ステップS8,S9よりも前に行われてもよい。
【0084】
血圧測定装置20(制御部24)は、ステップS3において最初の設定時間終了後に、ステップS1~S3を繰り返すことで、設定時間ごとに時系列データ(第1~第Nの距離変動データ)を繰り返し取得してもよい。血圧測定装置20は、設定時間ごとに行うステップS4~S10の一連の処理を繰り返すことで、設定時間ごとに心拍間隔データ及び血圧を算出してもよいし、設定時間ごとに生体Hを特定してもよい。一の設定時間で行うステップS4~S10の一連の処理が、他の設定時間で行うステップS1~S3の処理と並行して行われてもよい。
【0085】
[作用]
以上の例によれば、第1及び第2の相関データと、拍動波形から抽出される心収縮時間及び心周期とに基づいて、最高血圧及び平均血圧が容易に得られる。また、最高血圧及び平均血圧を用いて、式1により、最低血圧も容易に算出される。したがって、血圧をより精度よく測定することが可能となる。
【0086】
以上の例によれば、拍動波形生成部45は、心拍波形を拍動波形として生成しうる。すなわち、受信機12が受信した反射波を信号強度算出部42、データ補正部43、時間変動データ生成部44及び拍動波形生成部45が順次処理することにより、当該反射波のうちから生体Hの心臓からの反射波が抽出されうる。心臓から離れた部位で計測される脈拍波形と比べて、ノイズが生じ難い心拍波形を用いることにより、血圧をより精度よく測定することが可能となる。
【0087】
以上の例によれば、生体特定部47は、拍動波形に由来する統計的特徴量(例えば、心拍間隔パターンに含まれる統計的特徴量)に基づいて生体Hを個々に特定するように構成されている。そのため、血圧測定装置20が複数の血圧を測定した際に、それらの血圧データを、個々の生体と対応付けて把握することができる。
【0088】
以上の例によれば、設定時間において反射波から得られる一定数の第1~第Nの距離変動データが時系列データとして記憶部49に蓄積されている。そして、時系列データから、検知部位に対応する信号強度が時系列に沿って並べられた時間変動データが得られる。時間変動データに含まれる信号強度は、生体Hの検知部位に対応しているので、検知対象である生体Hが動いていても、検知部位に対応した信号強度に基づいて生体データが得られる。その結果、非接触にて生体データを精度よく検知することが可能となる。
【0089】
検知対象である生体Hが動作している条件下で動きを考慮せずに時間変動データを得る場合、ある基準時間における生体Hからの反射位置を特定し、当該位置を測定位置(基準値)として、測定位置における信号強度の時間変動を抽出することになる。この場合、生体Hの動作により測定位置において検知部位の情報が含まれていない期間があるので、動きによって生体情報を正確に検知し難い。これに対して、上記の例では、第nの距離変動データにおける検知部位に対応する距離成分(レンジビン)が基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、補正時系列データが得られる。そして、時間変動データ生成部44は、強度取得処理を実行する際に、補正時系列データから基準値における信号強度を対応強度として取得する。この場合、生体Hの動きが信号強度のピークでの距離成分の変動に現れ、当該ピーク付近での検知部位に対応する距離成分を基準値に近づけるように補正が行われることで、時系列データにおいて生体Hによる動きが補正される。そのため、生体Hの動きによる影響が低減された信号強度の時間変動データが得られ、当該時間変動データに基づいて生体データが取得される。その結果、生体Hが動いていたとしても、生体の生体データを精度よく検知することが可能となる。
【0090】
以上の例によれば、補正処理は、第1~第Nの距離変動データのうち所定時間内に含まれる第p~第q(p及びqはそれぞれ、1≦p<q≦Nを満たす自然数)の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が基準値に近づくように第p~第qの距離変動データの距離成分を補正することを含んでいる。生体Hの動線軌跡は、距離変動データに含まれるピークでの距離成分の近似線によって表すことができる。これにより、距離変動データにおいて、マルチパス等の外乱によるピークが含まれていても、当該ピークは近似線から離れているので除外することができる。そのため、生体データの高精度な検知をより確実に行うことが可能となる。
【0091】
以上の例によれば、補正処理は、時系列データを時系列に沿って順に分割することで得られる第1~第Mのブロックのうち第mのブロックBmにおいて、第1~第Nの距離変動データのうち第mのブロックに含まれる複数の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が、第1~第MのブロックB1~BMのそれぞれについて定められる任意の基準値に近づくように複数の距離変動データの距離成分を補正するブロック補正処理を、第1~第MのブロックB1~BMに対して行うことを含んでいる。この場合、ブロックごとに、生体Hの動線軌跡を表す近似線を算出するので、近似線を生体Hの動線軌跡により近づけることができる。そのため、生体データのより高精度な検知を行うことが可能となる。
【0092】
以上の例によれば、拍動波形生成部45は、時間変動データに対して多重解像度解析を行うことで、生体Hの検知部位における生体データを生成するように構成されている。この場合、多重解像度解析により、時間変動データから拍動波形に対応する周波数範囲の波形が抽出される。そのため、時間変動データに拍動以外の成分が含まれていても、拍動波形を取得することが可能となる。
【0093】
以上の例によれば、心拍間隔データ生成部46は、ARモデルを用いて拍動信号をスペクトル解析することにより、生体Hの心拍間隔の時間変動を示す心拍間隔データを生成するように構成されている。この場合、拍動波形に対してARモデルを用いたスペクトル解析が行われることで、拍動波形に含まれるノイズが除去されるので、心拍間隔を精度よく算出することができる。
【0094】
以上の例によれば、受信機12は、生体Hの拍動に対応する周波数を基準として、反射波をオーバサンプリングしうる。すなわち、受信機12から出力された受信データに基づいて信号強度算出部42が算出する第1~第Nの距離変動データは、生体Hの拍動に対応する周波数を基準として、反射波をオーバサンプリングすることで得られたデータである。この場合、サンプリング周期が小さくなり、より多くのデータが得られるので、時間変動データから拍動波形を抽出することが容易である。
【0095】
以上の例によれば、拍動波形生成部45は、複数の分解波形のうち、拍動とは異なる生体Hの動きに対応する信号を除外したうえで、拍動データを生成するように構成されている。そのため、拍動とは異なる生体Hの動きによる情報が時間変動データから除外されるので、拍動波形を精度よく検知することができる。
【0096】
以上の例によれば、反射波に応じた受信データを血圧測定装置20に無線通信を用いて送信するように構成された通信機13が備えられる。無線電波の発信及び反射波の受信を行う送受信装置10に搭載可能な制御部(メモリ)の容量が小さい場合があるが、別体の血圧測定装置20内でデータの蓄積と処理を行うことで、大容量のデータの取扱いができる。そのため、長時間にわたり血圧の測定を継続することが可能となる。
【0097】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0098】
(1)血圧測定システム1において、送受信装置10(通信機13)と血圧測定装置20(通信機23)との間は、有線で通信可能に接続されていてもよい。
【0099】
(2)血圧測定装置20は、送受信装置10と同じ建物内に設けられてもよく、送受信装置10とは異なる建物に取り付けられていてもよい。当該異なる建物としては、例えば、生体Hと別居している家族の家、健康管理サービスを提供する施設、救急医療サービスを提供する施設(日本において消防署)、病院などが挙げられる。これらの場合、生体Hとは離れた場所にいても、生体Hの状態を知ることができる。そのため、生体Hが単身生活者の場合であっても、生体Hの状態を見守ることが可能となる。血圧測定装置20は、取得した生体データから、生体Hの状態(異常の有無、健康状態)等を推定する機能を有していてもよい。
【0100】
(3)血圧測定システム1ではなく、
図16に示されるように、血圧測定装置20が、発信機11及び受信機12をさらに有していてもよい。換言すると、血圧を測定する装置(血圧測定装置20)内に、無線電波の送受を行う発信機11及び受信機12が内蔵されていてもよい。
図16に示される血圧測定装置20は、制御部24Aと、発信機11と、受信機12とを有する点において、
図3に示される血圧測定装置20と相違する。制御部24Aは、発信機11及び受信機12を制御する機能を有しており、
図17に示されるように、データ取得部41に代えて送受信処理部41Aを有する点において制御部24と相違する。送受信処理部41Aは、送受信処理部31と同様の機能を有していてもよい。
図16に示される血圧測定装置20を備える血圧測定システム1では、無線電波の発信及び受信を行うための機能が、血圧測定装置20とは別体の送受信装置10ではなく、血圧測定装置20自体に設けられているので、システムを簡略化することが可能となる。
【0101】
(4)血圧測定システム1において、発信機11及び受信機12が別々の装置として構成されてもよい。つまり、血圧測定システム1は、送受信装置10に代えて、発信機11及び一の制御部を有する発信装置と、受信機12及び他の制御部を有する受信装置とを備えていてもよい。これらの発信装置、受信装置、及び血圧測定装置20は、互いに無線又は有線により通信可能に接続されていてもよい。発信機11、受信機12及び送受信処理部41Aにおいて、送信及び受信の双方に複数のアンテナ素子が配置されるMIMO(Multiple Input Multiple Output)レーダ技術が用いられてもよい。
【0102】
(5)血圧測定装置20は、複数の生体Hについて血圧をそれぞれ測定してもよい。検知領域Rに複数の生体H(例えば二人の検知対象者)が存在する場合がある。例えば、一の検知対象者は送受信装置10から遠ざかり、他の検知対象者は送受信装置10に近づく場合を考えると、距離変動データから得られる複数のピークpn(散乱点)は、
図18に示されるような2つの散乱点群Cl1,Cl2(信号強度と距離の情報)として示される。
【0103】
データ補正部43は、1つのブロック内に複数の散乱点群が存在すること(1つのブロック内に複数人が存在すること)を検知した場合に、それぞれの散乱点群をクラスタ化してもよい。データ補正部43は、クラスタ毎に一次補正、二次補正、及び三次補正を行って、クラスタ化された散乱点ごとに補正時系列データを一つずつ生成してもよい。時間変動データ生成部44は、クラスタ化された散乱点ごとに得られた補正時系列データから時間変動データをそれぞれ生成してもよい。拍動波形生成部45は、クラスタ化された散乱点ごとに得られた時間変動データから拍動波形をそれぞれ生成してもよい。一の検知対象者に対する拍動波形の取得処理が完了した後に、他の検知対象者に対する拍動波形の取得処理が行われてもよい。血圧算出部48は、それぞれの拍動波形に基づいて、各生体Hの血圧を個々に算出してもよい。
【0104】
図19~
図23を参照して、検知領域R内に一の生体H1と別の生体H2が存在する場合の血圧測定処理の一例を説明する。検知領域R内に生体H1,H2が存在する場合、信号強度算出部42は、無線電波が生体H1及び生体H2において反射された反射波に基づいて、時刻t1~tNにおける第1~第Nの距離変動データをそれぞれ時間順に算出してもよい。無線電波が生体H1及び生体H2において反射された反射波は、生体H1のみから反射された反射波と、生体H2のみから反射された反射波とを含む。記憶部49は、生体H1及び生体H2において反射された反射波に基づいて得られる第1~第Nの距離変動データを含む時系列データを記憶してもよい。距離変動データの蓄積単位を示す設定時間が、上述した例に加えて、数秒~数十秒程度の範囲に設定されてもよい。設定時間の一例は、1秒~180秒程度であってもよく、3秒~120秒程度であってもよく、4秒~60秒程度であってもよい。設定時間の他の例は、1秒よりも短い時間(例えば、数ミリ秒から数百ミリ秒程度)であってもよい。
【0105】
図19に示される時系列データは、約4秒間において得られる複数の距離変動データを含んでいる。当該時系列データは、被験者である生体H1及び生体H2が送受信装置10に正対した測定環境において得られたデータである。より詳しくは、当該時系列データは、生体H1が送受信装置10から約1.9mだけ離れた位置に静止し、且つ生体H2が送受信装置10から約2.2mだけ離れた位置に静止した状態で測定が開始され、測定開始の約2秒後から、生体H1が送受信装置10に徐々に近づくと共に、生体H2が送受信装置10から徐々に遠ざかったときに取得されたデータである。
【0106】
データ補正部43は、記憶部49が記憶する時系列データ(所定時間分の第1~第Nの距離変動データ)に基づいて、生体H1について補正処理と、生体H2についての補正処理とをそれぞれ行ってもよい。データ補正部43は、検出された生体の数に応じて、複数のピークpn(散乱点)を公知の手法によりクラスタ化してもよい。データ補正部43は、例えば、レンジビンごとの信号強度の変化に基づいて、各生体(生体H1及び生体H2それぞれ)の動作を追跡することで、複数のピークpnを生体ごとにクラスタ化してもよい。
【0107】
データ補正部43は、例えば、第nの距離変動データにおける生体H1の検知部位に対応する距離成分が基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する上述の補正処理を行ってもよい。
図20(a)は、生体H1についてクラスタ化された複数のピークpnに基づき補正処理が行われて得られた補正時系列データを示している。なお、
図20(b)に示されるように、二次補正が行われることで、観測時間によっては、ピークpnと一致しない反射点ptが基準値(破線で示す位置)に揃えられる。
【0108】
時間変動データ生成部44は、第nの距離変動データにおける信号強度のうち生体H1の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を行ってもよい。時間変動データ生成部44は、第1~第Nの距離変動データに対して、生体H1についての強度取得処理を行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成してもよい。時間変動データ生成部44は、例えば、生体H1についての補正時系列データ内の基準値において時系列に沿って並べられた信号強度の集合を、時間変動データとして得てもよい。
【0109】
図21(a)は、
図19に示される補正前の時系列データにおいて、基準値(例えば、距離が1.9m)での信号強度の時間変化を示している。
図21(b)は、
図20(a)に示される補正後の時系列データにおいて、基準値での信号強度の時間変化を示している。
図21(a)に示す信号強度の時間変化では、測定開始の約2秒後から、生体H1の検知部位ではなく他の反射位置からの反射波の信号強度が得られている。
図21(b)に示す信号強度の時間変化では、時系列データにおいて補正が行われているので、生体H1の検知部位からの反射波の信号強度が連続して得られている。
【0110】
データ補正部43は、生体H1についての補正処理とは別に、第nの距離変動データにおける生体H2の検知部位に対応する距離成分が別の基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を行ってもよい。
図27は、生体H2についてクラスタ化された複数のピークpnに基づき補正処理が行われて得られた補正時系列データを示している。
【0111】
時間変動データ生成部44は、生体H1についての強度取得処理とは別に、第nの距離変動データにおける信号強度のうち生体H2の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を行ってもよい。時間変動データ生成部44は、第1~第Nの距離変動データに対して、生体H2についての強度取得処理を行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成してもよい。時間変動データ生成部44は、例えば、生体H2についての補正時系列データ内の基準値において時系列に沿って並べられた信号強度の集合を、時間変動データとして得てもよい。
【0112】
図23(a)は、
図19に示される補正前の時系列データにおいて、基準値(例えば、距離が2.2m)での信号強度の時間変化を示している。
図23(b)は、
図22に示される補正後の時系列データにおいて、基準値での信号強度の時間変化を示している。
図23(a)に示す信号強度の時間変化では、測定開始の約2秒後から、生体H2の検知部位ではなく他の反射位置からの反射波の信号強度が得られている。
図23(b)に示す信号強度の時間変化では、時系列データにおいて補正が行われているので、生体H2の検知部位からの反射波の信号強度が連続して得られている。なお、生体H2は、送受信装置10から徐々に遠ざかっているので、後半部分において信号強度が全般的に低下している。
【0113】
拍動波形生成部45は、生体H1についての時間変動データに基づいて、生体H1の検知部位における拍動波形を生成してもよい。拍動波形生成部45は、例えば、生体H1についての時間変動データに対して多重解像度解析を行うことにより、生体H1の検知部位における拍動波形を生成してもよい。拍動波形生成部45は、生体H2についての時間変動データに基づいて、生体H2の検知部位における拍動波形を生成してもよい。拍動波形生成部45は、例えば、生体H2についての時間変動データに対して多重解像度解析を行うことにより、生体H2の検知部位における拍動波形を生成してもよい。血圧算出部48は、それぞれの拍動波形に基づいて、各生体H1,H2の血圧を個々に算出してもよい。
【0114】
以上の例の血圧測定装置20によれば、検知領域Rに複数の生体が存在していても、生体ごとに生体データを監視することが可能となる。
【0115】
(6)上記の例(5)では、検知領域Rに存在する複数の生体Hの拍動波形をそれぞれ生成したが、同様の手法により、一の生体Hの複数の検知部位において拍動波形をそれぞれ生成してもよい。例えば、一の生体Hにおける心拍波形と、動脈の脈拍波形とを略同時に生成してもよい。あるいは、一の生体Hにおける異なる2箇所の動脈の脈拍波形を略同時に生成してもよい。
【0116】
血圧算出部48は、生成された複数の拍動波形から脈波伝播時間(PTT)を計測してもよい。
図24に、心拍波形と、顔面の動脈の脈拍波形とから計測される脈波伝播時間の一例を示す。
図24では、心拍波形の極大値と、脈拍波形の極大値との時間差が、脈波伝播時間として計測される。ここで、
図25に示されるように、脈波伝播時間と血圧との間には比較的高い相関があることが一般的に知られている。そこで、血圧算出部48は、脈波伝播時間に基づいて、生体Hの血圧を算出してもよい。この場合も、生体Hの血圧をより精度よく測定することが可能となる。
【0117】
(7)検知対象の生体Hを人間としたときに、生体Hが同じ場所に留まって動作している場合(例えば、机での作業又は自動車運転時等)がある。この場合、データ取得部41により取得される時系列データは、
図6(b)に示される状態に近くなる。このような場合、データ補正部43は、ブロックごとの近似線の算出(一次補正)を行うことなく、二次補正及び三次補正を行ってもよい。動きが限定的な場合において、データ補正部43は、散乱範囲に含まれるレンジビンの数を増加してもよい。
【0118】
(8)拍動波形生成部45は、上述した多重解像度解析に代えて、時間変動データに対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)又はウェーブレット変換を行うことにより、平均呼吸数及び平均心拍数の少なくとも一方を生体データとして算出(生成)してもよい。拍動信号は呼吸信号に比べて微弱だが、例えば、観測時間を数分程度と長く設定することで、動いている生体Hの平均呼吸数及び心拍数(呼吸スペクトル及び拍動スペクトル)を推定することが可能となる。
【0119】
(9)データ補正部43は、二次補正を行った後に、ブロックごとに、第nの距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分と当該ブロックでの基準値との間の偏差に基づく誤差を算出してもよい。データ補正部43は、算出した誤差が所定の閾値よりも小さいかどうかを判断してもよい。データ補正部43は、当該誤差が所定の閾値よりも小さくなるまで、生成処理、一次補正及び二次補正を繰り返し行ってもよい。データ補正部43は、例えば、上記誤差として、第1~第Nの距離変動データそれぞれにおけるピークでの距離成分と、基準値との間の平均平方二乗誤差(Root Mean Square Error)を算出してもよい。データ補正部43は、ブロックごとの上記誤差が所定の閾値よりも小さくなった場合に、三次補正を行ってもよい。基準値は、例えば、生体Hの現実の位置であってもよい。
【0120】
(10)データ補正部43は、誤差の算出を行うことなく生成処理、一次補正及び二次補正を行い、三次補正を行った後に、一つのブロック(例えば、第1のブロックB1)の基準値を基準として、上記と同様に誤差を算出してもよい。
図26に示される生体データ取得方法は、ステップS41がさらに実行される点において、
図15に示される取得方法と相違する。データ補正部43は、ステップS4の時系列データの補正を行った後に、上記誤差が閾値εよりも小さいかどうかを判断する(ステップS41)。ステップS41において、上記誤差が閾値ε以上であると判断された場合(ステップS41:NO)、データ補正部43は、ステップS4の補正処理を再度実行する。ステップS41において、上記誤差が閾値εよりも小さいと判断された場合(ステップS41:YES)、制御部24は、ステップS5~S10の一連の処理を実行する。
【0121】
(11)血圧測定システム1は乗物に設けられていてもよい。血圧測定システム1は、乗物内に設定された検知領域Rに存在する生体Hを検知対象として生体データを取得してもよい。乗物の一例は、自動車、自動二輪車(オートバイ)、鉄道車両、船、飛行機、及びヘリコプターを含む。乗物内の検知対象は、例えば、当該乗物の操縦者(運転者)及び同乗者を含む。
図27には、血圧測定システム1が設けられた乗物60が例示されている。
【0122】
図27に示されるように、血圧測定システム1は、乗物60の車室内に設けられてもよい。例えば、血圧測定システム1の送受信装置10は、検知領域Rが乗物60の運転席を含むように配置されてもよい。一例として、送受信装置10は、
図27に示されるように、フロントガラス51に設けられてもよい。送受信装置10は、フロントガラス51に代えて、ダッシュボート52、ハンドル部材53、ルームミラー54、及びルーフパネル55のうちのいずれかの箇所に設けられてもよい。あるいは、送受信装置10は、運転席に近い側のピラー56(フロントガラス51の横に位置するAピラー)に設けられてもよい。血圧測定システム1の血圧測定装置20も、乗物60内に配置されてもよい。発信機11及び受信機12を有する血圧測定装置20(
図16参照)が、上記のいずれかの箇所に配置されてもよい。
【0123】
血圧測定システム1が、乗物60に設けられた場合でも、血圧測定装置20において、
図15又は
図26に示されるデータ取得方法の一連の処理が実行されてもよい。この場合、ステップS1~S3が繰り返し実行されて得られる第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、無線電波が乗物60内の生体Hにおいて反射された反射波に基づくデータである。乗物60内の生体Hからの反射波に基づく時系列データに対して、ステップS4,S5の処理が施されることで時間変動データが生成されてもよい。
【0124】
拍動波形生成部45は、時間変動データに対して、上述の例(7回のウェーブレット変換)とは異なり8回のウェーブレット変換を行うことにより、複数の分解波形を生成してもよい。拍動波形生成部45は、例えば、拍動波形を抽出する際に、呼吸波形を除外するのに加えて、乗物60に由来して生体Hに加わる振動に対応する非拍動波形を除外してもよい。拍動波形生成部45は、乗物60に由来する振動の固有周波数が含まれる周波数範囲を有する分解波形を除外してもよい。拍動波形生成部45は、呼吸波形及び乗物60に由来する非拍動波形を除外した後の残りの複数の分解波形を再合成することで、生体Hの拍動に応じた拍動波形を抽出してもよい。血圧算出部48は、呼吸波形及び乗物60に由来する非拍動波形を除外して得られる拍動波形に基づいて、生体Hの心拍を算出してもよい。
【0125】
(12)上記した以外の手法によって拍動波形を取得してもよい。例えば、広帯域又は超広帯域ではない狭帯域の無線電波を用いて、拍動波形を取得してもよい。狭帯域の無線電波としては、例えば、ドップラレーダ、パルスレーダ、周波数変調連続波(FM-CW)レーダなどが挙げられる。なお、生体Hが静止している状態であると、狭帯域の無線電波を使用して生体Hの拍動波形を取得しやすくなる。
【0126】
以上の例の血圧測定装置20を有する乗物60によれば、乗物60内の1又は複数の生体に関する血圧を測定することが可能となる。拍動波形生成部45が、乗物60に由来する非拍動信号を除外したうえで、拍動波形タを生成するので、乗物60に由来する情報が時系列データに含まれていても、拍動波形を精度よく検知することができる。なお、上述の補正処理が行われることで、運転者の運転時における動作(例えば、左右方向の確認動作、又は各種の操作に伴う動作)があっても、精度よく生体データを検知できる。
【0127】
[他の例]
例1.血圧測定装置の一例は、生体の心収縮時間と最高血圧との相関関係を示す第1の相関データを記憶するように構成された第1の相関記憶部と、生体の心周期と平均血圧との相関関係を示す第2の相関データを記憶するように構成された第2の相関記憶部と、生体の拍動波形を記憶するように構成された波形記憶部と、波形記憶部の拍動波形から得られる心収縮時間と、第1の相関記憶部の第1の相関データとに基づいて、生体の最高血圧を算出するように構成された第1の算出部と、波形記憶部の拍動波形から得られる心周期と、第2の相関記憶部の第2の相関データとに基づいて、生体の平均血圧を算出するように構成された第2の算出部とを備える。本発明者は、鋭意研究の結果、生体の心収縮時間と最高血圧との間に極めて強い負の相関(相関係数が-0.9以下)があり、また、生体の心周期と平均血圧との間に極めて強い負の相関(相関係数が-0.9以下)があることを見いだした。そのため、これらの相関データと、拍動波形から抽出される心収縮時間及び心周期とに基づいて、最高血圧及び平均血圧が容易に得られる。したがって、血圧をより精度よく測定することが可能となる。
【0128】
例2.例1の装置は、第1の算出部で算出された最高血圧SBPと、第2の算出部で算出された平均血圧MBPとを用いて、式1により生体の最低血圧DBPを算出するように構成された第3の算出部をさらに備えていてもよい。
【0129】
DBP=(3MBP-SBP)/2 ・・・(1)
最高血圧SBPと、平均血圧MBPと、最低血圧DBPとの間には、式1の関係が成り立つことが一般的に知られている。そのため、第1及び第2の算出部で得られた最高血圧及び平均血圧を用いて、最低血圧も精度よく測定することが可能となる。
【0130】
例3.血圧測定装置の他の例は、生体の心収縮時間と最高血圧との相関関係を示す相関データを記憶する相関記憶部と、生体の拍動波形を記憶するように構成された波形記憶部と、波形記憶部の拍動波形から得られる心収縮時間と、相関記憶部の相関データとに基づいて、生体の最高血圧を算出するように構成された算出部とを備える。この場合、例1と同様に、血圧をより精度よく測定することが可能となる。
【0131】
例4.血圧測定装置の他の例は、生体の心周期と平均血圧との相関関係を示す相関データを記憶する相関記憶部と、生体の拍動波形を記憶するように構成された波形記憶部と、波形記憶部の拍動波形から得られる心周期と、相関記憶部の相関データとに基づいて、生体の平均血圧を算出するように構成された算出部とを備える。この場合、例1と同様に、血圧をより精度よく測定することが可能となる。
【0132】
例5.例1~例4のいずれかの装置において、拍動波形は心拍波形であってもよい。心臓から離れた部位で計測される脈拍波形と比べて、心拍波形にはノイズが生じ難い。そのため、心拍波形を用いることにより、血圧をより精度よく測定することが可能となる。
【0133】
例6.例1~例5のいずれかの装置は、拍動波形に由来する統計的特徴量に基づいて生体を個々に特定するように構成された生体特定部をさらに備えていてもよい。この場合、血圧測定装置が複数の血圧を測定した際に、これらの血圧データを、個々の生体と対応付けて把握することができる。
【0134】
例7.例6の装置は、生体特定部は、拍動波形に由来する統計的特徴量を機械学習することによって生成された複数のクラスタを用いて、生体を個々に特定するように構成されていてもよい。この場合、機械学習によって得られた複数のクラスタを用いることにより、生体をより正確に特定することが可能となる。
【0135】
例8.例1~例7のいずれかの装置は、第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された信号強度記憶部であって、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、信号強度記憶部と、第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データの信号強度から、生体の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を、第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成するように構成された第1の生成部と、時間変動データに基づいて、生体の検知部位における拍動波形を生成するように構成された第2の生成部とをさらに備えていてもよい。この場合、所定期間において反射波から得られる一定数の距離変動データが時系列データとして記憶部に蓄積されている。そして、時系列データから、検知部位に対応する信号強度が時系列に沿って並べられた時間変動データが得られる。時間変動データに含まれる信号強度は、生体の検知部位に対応しているので、検知対象である生体が動いていても、検知部位に対応した信号強度に基づいて拍動データが得られる。その結果、非接触にて血圧をより精度よく測定することが可能となる。
【0136】
例9.例8の装置は、第nの距離変動データにおける検知部位に対応する距離成分が基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、補正時系列データを得るように構成された補正部をさらに備えてもよい。第1の生成部は、強度取得処理を実行する際に、補正時系列データから基準値における信号強度を対応強度として取得してもよい。この場合、検知部位に対応する距離成分を基準値に近づけるように補正が行われることで、時系列データにおいて生体の動きが補正される。そのため、生体の動きによる影響が低減された信号強度の時間変動データが得られ、当該時間変動データに基づいて拍動波形が取得される。その結果、生体が動いていたとしても、血圧を精度よく検知することが可能となる。
【0137】
例10.例9の装置において、補正処理は、第1~第Nの距離変動データのうち所定時間内に含まれる第p~第q(p及びqはそれぞれ、1≦p<q≦Nを満たす自然数)の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が任意の基準値に近づくように第p~第qの距離変動データの距離成分を補正することを含んでいてもよい。生体の動線軌跡は、距離変動データにおけるピークでの距離成分の近似線により表すことができる。これにより、距離変動データにおいて、マルチパス等の外乱によるピークが含まれていても、当該ピークは近似線から離れているので除外することができる。そのため、血圧の高精度な検知をより確実に行うことが可能となる。
【0138】
例11.例9の装置において、補正処理は、時系列データを時系列に沿って順に分割することで得られる第1~第Mのブロックのうち第mのブロックにおいて、第1~第Nの距離変動データのうち第mのブロックに含まれる複数の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が、第1~第Mのブロックのそれぞれについて定められる任意の基準値に近づくように複数の距離変動データの距離成分を補正するブロック補正処理を、第1~第Mのブロックに対して行うことを含んでいてもよい。この場合、ブロックごとに、生体の動線軌跡を表す近似線を算出するので、近似線を生体の動線軌跡により近づけることができる。そのため、血圧をより精度よく検知することが可能となる。
【0139】
例12.例8~例11のいずれかの装置において、第2の生成部は、時間変動データに対して多重解像度解析を行うことにより、生体の検知部位における拍動波形を生成するように構成されていてもよい。この場合、多重解像度解析により、時間変動データから拍動波形が抽出される。そのため、時間変動データに拍動以外の成分が含まれていても、拍動波形を取得することが可能となる。
【0140】
例13.例12の装置において、第1の生成部は、時間変動データに対して多重解像度解析を行うことで、時間変動データを複数の分解波形に分解し、複数の分解波形の一部を拍動波形として取得するように構成されていてもよい。この場合、多重解像度解析により、時間変動データから拍動に対応する周波数範囲の波形が抽出される。そのため、時間変動データに拍動以外の成分が含まれていても、拍動波形を取得することが可能となる。
【0141】
例14.例13の装置において、ARモデルを用いて拍動信号をスペクトル解析することにより、生体の心拍間隔の時間変動を示す心拍間隔データを生成するように構成された第3の生成部をさらに備えていてもよい。この場合、拍動波形に対してARモデルを用いたスペクトル解析が行われることで、拍動波形に含まれるノイズが除去されるので、心拍間隔を精度よく算出することができる。
【0142】
例15.例13又は例14の装置において、第1~第Nの距離変動データは、生体の拍動に対応する周波数を基準として、反射波をオーバサンプリングすることで得られたデータであってもよい。この場合、サンプリング周期が小さくなり、より多くのデータが得られるので、時間変動データから拍動信号を抽出しやすくなる。
【0143】
例16.例13~15のいずれかの装置において、第2の生成部は、複数の分解波形のうち、拍動とは異なる生体の動きに対応する信号を除外したうえで、拍動データを生成するように構成されていてもよい。この場合、拍動とは異なる生体の動きによる情報が時間変動データから除外されるので、拍動波形を精度よく検知することができる。
【0144】
例17.例8~例16のいずれかの装置において、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、無線電波が生体及び別の生体において反射された反射波に基づいて得られるデータである。第1の生成部は、第nの距離変動データの信号強度から、生体の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を、第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成するように構成されており、且つ、第nの距離変動データの信号強度から、別の生体の検知部位に対応する別の対応強度を取得する強度取得処理を、第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、別の対応強度が時系列に沿って並べられた別の時間変動データを生成するように構成されていてもよい。第2の生成部は、時間変動データに基づいて、生体の検知部位における拍動波形を生成するように構成されており、且つ、別の時間変動データに基づいて、別の生体の検知部位における別の拍動波形を生成するように構成されていてもよい。この場合、検知領域に複数の生体が存在していても、生体ごとに血圧を測定することが可能となる。
【0145】
例18.例8~例17のいずれかの装置は、無線電波を発信するように構成された発信部と、反射波を受信するように構成された受信部とをさらに備えていてもよい。この場合、無線電波の発信及び受信を行うための機能が、血圧測定装置とは別体の装置ではなく、血圧測定装置自体に設けられているので、システムを簡略化することが可能となる。
【0146】
例19.血圧測定システムの一例は、例8~例17のいずれかの装置と、無線電波を発信するように構成された発信部と、反射波を受信するように構成された受信部とを備える。この場合、例1の装置と同様の作用効果を奏する。
【0147】
例20.例19のシステムは、反射波に応じた受信データを血圧測定装置に無線通信を用いて送信するように構成された通信部をさらに備えていてもよい。無線電波の発信又は反射波の受信の少なくとも一方を行う装置に搭載可能な制御部(メモリ)の容量が小さい場合があるが、別体の血圧測定装置内でデータの蓄積と処理を行うことで、大容量のデータの取扱いができる。そのため、長時間にわたり血圧の測定を継続することが可能となる。
【0148】
例21.乗物の一例は、例1~例17のいずれかの血圧測定装置を備える。この場合、例1の装置と同様の作用効果を奏する。
【0149】
例22.血圧測定方法の一例は、生体の拍動波形を取得することと、拍動波形から得られる心収縮時間と、生体の心収縮時間と最高血圧との相関関係を示す第1の相関データとに基づいて、生体の最高血圧を算出することと、拍動波形から得られる心周期と、生体の心周期と平均血圧との相関関係を示す第2の相関データとに基づいて、生体の平均血圧を算出することとを含む。この場合、例1の装置と同様の作用効果を奏する。
【0150】
例23.血圧測定装置の他の例は、第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された信号強度記憶部であって、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、信号強度記憶部と、第1の生成部と、第2の生成部と、算出部とを備える。第1の生成部は、第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データの信号強度から、生体の第1の検知部位に対応する第1の対応強度を取得する強度取得処理を、第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、第1の対応強度が時系列に沿って並べられた第1の時間変動データを生成するように構成されており、且つ、第nの距離変動データの信号強度から、生体の第2の検知部位に対応する第2の対応強度を取得する強度取得処理を、第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、第2の対応強度が時系列に沿って並べられた第2の時間変動データを生成するように構成されている。第2の生成部は、第1の時間変動データに基づいて、第1の検知部位における第1の拍動波形を生成するように構成されており、且つ、第2の時間変動データに基づいて、第2の検知部位における第2の拍動波形を生成するように構成されている。算出部は、第1の拍動波形及び第2の拍動波形から得られる脈波伝播時間に基づいて血圧を算出するように構成されている。この場合、生体の異なる複数の検知部位からそれぞれ得られた拍動波形を用いて、脈波伝播時間に基づいて血圧が算出される。脈波伝播時間と血圧との間には比較的高い相関があることが知られている。そのため、血圧をより精度よく測定することが可能となる。
【符号の説明】
【0151】
1…血圧測定システム、10…送受信装置、11…発信機、12…受信機、13…通信機、20…血圧測定装置、24…制御部、43…データ補正部(補正部)、44…時間変動データ生成部(第1の生成部)、45…拍動波形生成部(第2の生成部)、46…心拍間隔データ生成部(第3の生成部)、47…生体特定部、48…血圧算出部(第1の算出部、第2の算出部、第3の算出部、算出部)、49…記憶部(信号強度記憶部、第1の相関記憶部、第2の相関記憶部、相関記憶部、波形記憶部)、60…乗物。