(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】二酸化炭素輸送用容器および二酸化炭素輸送方法
(51)【国際特許分類】
B65D 88/12 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
B65D88/12 K
(21)【出願番号】P 2020207584
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-12-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520347546
【氏名又は名称】JTSS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】松宮 昭
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-525242(JP,A)
【文献】特開2007-308156(JP,A)
【文献】特開平03-176700(JP,A)
【文献】特開2004-170633(JP,A)
【文献】国際公開第2001/000509(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2019/0162366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素輸送用容器であって、
剛性のアウタサポート部内に配置される容器本体を備え、
前記容器本体が、
剛性の筒状のタンク部と、
風船形状を有し吹込み口を前記タンク部の一端に接続した状態で前記タンク部内に配置され前記タンク部内で膨張収縮可能な二酸化炭素収容用の可撓性のインナチューブと、を備え、
前記タンク部が分解可能に構成され
、
前記タンク部が、半円筒状の上半部と、半円筒状の下半部と、前記タンク部の一端側を閉鎖する一端側キャップと、前記タンク部の他端側を閉鎖する他端側キャップとを備え、
前記上半部と前記下半部と前記一端側キャップと前記他端側キャップとが取り外し可能に連結されている、
ことを特徴とする二酸化炭素輸送用容器。
【請求項2】
前記上半部が、周方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びるフランジを有し、前記下半部が、周方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びるフランジを有し、
前記上半部と下半部とが、前記フランジ同士を当接させて連結されている、
請求項
1に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項3】
前記上半部のフランジと下半部のフランジを結合する結合手段を備えている、
請求項
2に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項4】
前記結合手段が、前記上半部と下半部とが連結状態にあるとき整列するように、前記上半部のフランジと下半部のフランジのそれぞれに設けられた複数の貫通孔と、整列して前記貫通孔に挿通され前記上半部のフランジと下半部のフランジを連結することによって前記上半部と下半部とを連結固定する締結具とを有している、
請求項
3に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項5】
前記締結具が、整列された貫通孔に挿通されるボルトと、該ボルトに取付けられるナットとを有している、
請求項
4に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項6】
前記上半部と下半部の軸線方向の開口端に設けられた取付けフランジと、
前記一端側キャップと他端側キャップの開口端に設けられ前記取付けフランジが解放可能に連結される連結部と、を有している。
請求項
1ないし5のいずれか1項に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項7】
前記取付けフランジと連結部は、前記一端側キャップまたは他端側キャップと、連結された上半部および下半部との相対回転により、前記一端側キャップまたは他端側キャップを連結された前記上半部および下半部から着脱不能とするロック位置と、前記一端側キャップまたは他端側キャップを連結された前記上半部および下半部に着脱可能とするアンロック位置との間を移動可能である、
請求項
6に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項8】
前記アウタサポートが、貨物輸送用コンテナである、
請求項
1ないし7のいずれか1項に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項9】
前記アウタサポートが、略矩形状の剛性フレームである、
請求項
1ないし7のいずれか1項に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項10】
前記剛性フレームが組み立て式である、
請求項
9に記載の二酸化炭素輸送用容器。
【請求項11】
請求項1ないし
10のいずれか1項に記載の二酸化炭素輸送用容器に加圧された二酸化炭素を充填して輸送する、
ことを特徴とする二酸化炭素輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素輸送用容器および二酸化炭素輸送方法に関し、詳細には、既存の貨物輸送用コンテナの内部空間に配置可能な大きさの比較的、小容量の二酸化炭素輸送用容器、及びこのような容器を使用した二酸化炭素輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温暖化防止の観点から二酸化炭素を大気中に放出することが問題視されてきている。このような問題に対処するため、火力発電所等で発生した二酸化炭素を回収し、貯留することが提案されている。
【0003】
一般に、二酸化炭素を貯留する貯留地は、二酸化炭素発生場所である火力発電所等から離れた場所にあることが多い。従って、火力発電所等の二酸化炭素発生場所から回収した二酸化炭素を遠隔の貯留地まで輸送することが必要となり、場合によっては、この輸送は、貨物船による海上輸送を含むこととなる。
【0004】
輸送効率の点からは、このような二酸化炭素の輸送は、大容量の容器あるいはタンクに収容して行なうことが望ましい。
【0005】
しかしながら、二酸化炭素の発生場所あるいは二酸化炭素の貯留地が、このような大容量の容器あるいはタンクを持ち込むことが困難な場所に位置する場合がある。このような場合には、例えば、貨物輸送で使用されるコンテナ程度の小容量の容器あるいはタンクを二酸化炭素輸送用容器として多数、準備し、これらに二酸化炭素を収容して二酸化炭素の輸送を行なうことが必要となる。そして、二酸化炭素は、輸送効率の観点から高圧状態で輸送されるため、その輸送に用いられる二酸化炭素輸送用の容器あるいはタンクは、金属等で形成された耐圧容器が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような金属等で形成された耐圧容器を有する二酸化炭素搬送用の容器あるいはタンクは、往路において、火力発電所等の二酸化炭素の発生場所から貯留地に二酸化炭素を搬送した後、次の二酸化炭素搬送のため、二酸化炭素の発生場所に輸送される。
【0007】
この復路の輸送において、二酸化炭素輸送用の容器あるいはタンクを使って二酸化炭素の発生場所に搬送すべき適当な積荷が無い場合、金属等で形成された耐圧容器を有する二酸化炭素搬送用の容器あるいはタンクは、空の状態で貯留場所から発生場所に運送されることになる。金属等で形成された耐圧容器を有する二酸化炭素搬送用の容器あるいはタンクは嵩張るため、空の容器またはタンクを二酸化炭素の発生場所に戻す運送では、貨物船等の積載空間の利用効率が極めて悪いものとなる。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素を収容していない状態での積載空間の利用効率が良い二酸化炭素輸送用容器を提供することを目的としている。
【0009】
また、二酸化炭素を収容していない状態での積載空間の利用効率が良い二酸化炭素輸送用容器を使用した二酸化炭素輸送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
二酸化炭素輸送用容器であって、
剛性のアウタサポート部内に配置される容器本体を備え、
前記容器本体が、
剛性の筒状のタンク部と、
風船形状を有し吹込み口を前記タンク部の一端に接続した状態で前記タンク部内に配置され前記タンク部内で膨張収縮可能な二酸化炭素収容用の可撓性のインナチューブと、を備え、
前記タンク部が分解可能に構成されている、
ことを特徴とする二酸化炭素輸送用容器が提供される。
【0011】
このような構成によれば、インナチューブによって、流動体である二酸化炭素の漏れを防止し、加圧状態でインナチューブに収容される二酸化炭素からの圧力をインナチューブの外部に位置する剛性のタンク部によって受けることができるので、加圧された二酸化炭素を安全に収容することができる。
さらに、圧力を受けるタンク部が分解可能であるので、二酸化炭素を貯留場所に搬送した後、剛性のタンク部を分解して収納スペースを減らして、貨物船等に積載して二酸化炭素の発生場所に運送することができ、復路の輸送手段の積載空間の利用効率が向上する。
【0012】
さらにまた、タンク部が分解可能であり収納スペースを小さくなることにより、二酸化炭素輸送用容器として使用しないときの保管スペースも小さくなり保管スペースの利用効率が良くなる。
【0013】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記タンク部が、半円筒状の上半部と、半円筒状の下半部と、前記タンク部の一端側を閉鎖する一端側キャップと、前記タンク部の他端側を閉鎖する他端側キャップとを備え、
前記上半部と前記下半部と前記一端側キャップと前記他端側キャップとが取り外し可能に連結されている。
【0014】
このような構成によれば、タンク部をより小さな部品に分解することができるので、復路の輸送手段の積載空間の利用効率がより高くなる。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記上半部が、周方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びるフランジを有し、前記下半部が、周方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びるフランジを有し、
前記上半部と下半部とが、前記フランジ同士を当接させて連結されている、
【0016】
このような構成によれば、フランジを利用することにより、耐圧性が求められるタンク部を容易に分解状態から組み立てることが可能となる。
【0017】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記上半部のフランジと下半部のフランジを結合する結合手段を備えている。
【0018】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記結合手段が、前記上半部と下半部とが連結状態にあるとき整列するように前記上半部のフランジと下半部のフランジのそれぞれに設けられた複数の貫通孔と、整列して前記貫通孔に挿通され前記上半部のフランジと下半部のフランジを連結することによって前記上半部と下半部とを連結固定する締結具とを有している。
【0019】
このような構成によれば、フランジに設けられた貫通孔と貫通孔に挿通される締結具を利用することにより、耐圧性が求められるタンク部を容易に分解状態から組み立てることが可能となる。
【0020】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記締結具が、整列された貫通孔に挿通されるボルトと、該ボルトに取付けられるナットとを有している。
【0021】
このような構成によれば、整列した貫通孔にボルトを挿通し、ナットを締めるという簡単な作業で、上半部と下半部を連結固定することができる。
【0022】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記上半部と下半部の軸線方向の開口端に設けられた取付けフランジと、
前記一端側キャップと他端側キャップの開口端に設けられ前記取付けフランジが解放可能に連結される連結部と、を有している。
【0023】
このような構成によれば、取付けフランジと連結部を利用して、一端側キャップおよび他端側キャップを連結された上半部および下半部に容易に取付けることができる。
【0024】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記取付けフランジと連結部は、前記一端側キャップまたは他端側キャップと、連結された上半部および下半部との相対回転により、前記一端側キャップまたは他端側キャップを連結された前記上半部および下半部から着脱不能とするロック位置と、前記一端側キャップまたは他端側キャップを連結された前記上半部および下半部に着脱可能とするアンロック位置との間を移動可能である。
【0025】
このような構成によれば、連結された上半部および下半部と一端側キャップまたは他端側キャップを相対回転させるという簡単な操作で、一端側キャップまたは他端側キャップを連結された上半部および下半部に取付けることができる。
【0026】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記アウタサポートが、貨物輸送用コンテナである。
【0027】
このような構成によれば、既存の貨物輸送用コンテナを利用して二酸化炭素を輸送することが可能となる。
【0028】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記アウタサポートが、略矩形状の剛性フレームである。
【0029】
本発明の他の好ましい態様によれば、
前記剛性フレームが組み立て式である。
【0030】
このような構成によれば、二酸化炭素輸送用容器を支持する剛性のアウタサポートも帰路においては、分解してコンパクトにして輸送することが可能となる。
【0031】
本発明の他の好ましい態様によれば、
上記いずれかの二酸化炭素輸送用容器に加圧された二酸化炭素を充填して輸送する、
ことを特徴とする二酸化炭素輸送方法が提供される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、二酸化炭素を収容していない状態での積載空間の利用効率が良い二酸化炭素輸送用容器が提供される。
【0033】
また、本発明によれば、二酸化炭素を収容していない状態での積載空間の利用効率が良い二酸化炭素輸送用容器を使用した二酸化炭素輸送方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】貨物輸送用コンテナ内に配置された本発明の好ましい態様の二酸化炭素輸送用容器の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図1の二酸化炭素輸送用容器の分解斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った二酸化炭素輸送用容器の断面図である。
【
図4】インナチューブの内部に二酸化炭素が充填されていない状態での二酸化炭素輸送用容器の模式的な断面図である。
【
図5】インナチューブの内部に二酸化炭素が充填された状態での二酸化炭素輸送用容器の
図4と同様の模式的な断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の二酸化炭素輸送用容器のタンク部の組立てに使用する治具の模式的な図面である。
【
図7】本発明の実施形態の二酸化炭素輸送用容器のタンク部の組立てを説明する模式的な図面である。
【
図8】本発明の実施形態の二酸化炭素輸送用容器のタンク部に使用される上半部(下半部)の構成を示す平面図である。
【
図9】本発明の実施形態の二酸化炭素輸送用容器のタンク部の組立てを説明する模式的な図面である。
【
図10】本発明の実施形態の二酸化炭素輸送用容器のタンク部の組立てを説明する模式的な図面である。
【
図11】本発明の実施形態の二酸化炭素輸送用容器のタンク部の組立てを説明する模式的な図面である。
【
図12】本発明の実施形態の二酸化炭素輸送用容器のタンク部の組立てを説明する模式的な図面である。
【
図13】本発明の実施形態の二酸化炭素輸送用容器の一端側キャップの取付けを説明する模式的な図面である。
【
図14】本発明の実施形態の二酸化炭素輸送用容器の一端側キャップの取付け時の構成を説明する模式的な図面である。
【
図15】本発明の別の実施形態の二酸化炭素輸送用容器の一端側キャップの取付け構造を説明する模式的な図面である。
【
図16】本発明の別の実施形態の二酸化炭素輸送用容器の一端側キャップの取付け構造を説明する模式的な図面である。
【
図17】本発明の更に別の実施形態の二酸化炭素輸送用容器の一端側キャップの取付け構造を説明する模式的な図面である。
【
図18】本発明の更に別の実施形態の二酸化炭素輸送用容器の一端側キャップの取付け構造を説明する模式的な図面である。
【
図19】貨物輸送用コンテナに代わるアウタサポート部として使用される矩形状フレームの概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に沿って本願発明の好ましい実施形態の二酸化炭素輸送用容器について説明する。
図1は、貨物輸送用コンテナ1内に配置された二酸化炭素輸送用容器2の構成を示す模式的な斜視図であり、
図2は、
図1の二酸化炭素輸送用容器2の分解斜視図であり、
図1のIII-III線に沿った二酸化炭素輸送用容器の断面図である。
【0036】
また、本明細書において二酸化炭素とは、純粋な二酸化炭素のみならず、二酸化炭素を主成分とする流体全般を意味する。
【0037】
本実施形態に剛性のアウタサポート部である貨物輸送用コンテナ1は、例えば、鋼鉄、アルミニウムなどで製造され規格化された直方体形状のISO規格に基づく貨物輸送用コンテナが使用されるのが好ましい。具体的には、例えば、幅2.352m、高さ2.395m、奥行き12.03mの貨物輸送用コンテナが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0038】
また、輸送中に、内部の二酸化炭素の温度上昇を抑制するため、二酸化炭素を低温で輸送する場合には、貨物輸送用コンテナ1は、内部の温度調整が可能な所謂リーファー・コンテナであるのがよい。
【0039】
本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2は、このような貨物輸送用コンテナ1内に配置され、内部に高圧の二酸化炭素を収容する搬送容器である。
【0040】
図1ないし
図3に示されているように、二酸化炭素輸送用容器2は、容器本体4によって構成されている。本実施形態の容器本体4は、両端が閉鎖された略円筒形状を備え、貨物輸送用コンテナ1の内部空間を略満たす寸法を有している。
【0041】
容器本体4は、外方側に配置された剛性のタンク部6と、タンク部6内に配置された二酸化炭素収容用のインナチューブ8とを備えている。
タンク部6は、金属等の剛性材料で形成された耐圧容器であり、両端が閉鎖された略円筒の容器本体の外形を構成している。タンク部6の外面又は内面には、断熱塗料、断熱材等による断熱層が、必要に応じて設けられる。
【0042】
また、インナチューブ8は、可撓性および伸縮性を有し、二酸化炭素を透過させないゴム等の材料で形成され、吹き込み口を有する風船状の形状を有している。
【0043】
図2に示されているように、タンク部6は、上半部10と下半部12に2分割可能な円筒状のタンク本体14と、タンク本体14の一端側を閉鎖する一端側キャップ16と、タンク本体14の他端側を閉鎖する他端側キャップ18と、を備えている。一端側キャップ16の中央には開口20が形成されている。
【0044】
本実施形態では、上半部10と下半部12は、略同一形状の半円筒形状を有している。さらに、上半部10と下半部12は、それぞれが、周方向の開口端の各々から径方向外方に向かって延びるフランジ22、24を有している。各フランジ22、24は、細長い矩形形状を有し、上半部10と下半部12の周方向の開口端の軸方向の両端を除き、その全長に亘って伸びている。上半部10と下半部12は、フランジ22、24同士を重ねて接合することによって連結され、円筒状のタンク本体14を構成する。
【0045】
図2に示されているように、上半部10の2枚のフランジ22、22には、複数(本実施形態では6つ)の貫通孔26が等間隔で形成されている。また、下半部12の2枚のフランジ24、24にも、同様に、複数(本実施形態では6つ)の貫通孔28が等間隔で形成されている。
【0046】
上半部10の2枚のフランジ22、22の各貫通孔26と、下半部12の2枚のフランジ24、24の各貫通孔28は、上半部10のフランジ22と下半部12のフランジ24を重ねたとき、整列するように配置されている。
【0047】
本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2では、上記のように整列した貫通孔22、24に締結具を構成するボルト30が挿通され、ナット32をボルト30に螺合することよって上半部10のフランジ22と下半部12のフランジ24が締結され、上半部10と下半部12が連結固定されている。この締結具として、シャーナットを使用してもよい。
【0048】
後述するように、上半部10と下半部12の軸線方向の開口端には、取付けフランジが設けられている。また、一端側キャップ16と他端側キャップ18の開口端には、取付けフランジに解放可能に連結される連結部が設けられている。
【0049】
取付けフランジと連結部は、後述するように、一端側キャップまたは他端側キャップと、連結された上半部および下半部との相対回転により、一端側キャップまたは他端側キャップを連結された上半部および下半部から着脱不能とするロック位置と、前記一端側キャップまたは他端側キャップを連結された前記上半部および下半部に着脱可能とするアンロック位置との間を移動可能である。
【0050】
また、インナチューブ8は、上述のようにゴム等の可撓性の材料で形成され、吹き込み口32を通して内部に二酸化炭素を出し入れすることによりタンク部6内で膨張収縮可能な風船状の部材である。インナチューブ8は、タンク部6の内部空間の寸法より大きな体積まで膨張可能であるので、加圧状態の二酸化炭素がタンク部6に収容されているインナチューブ8に充填されると、インナチューブ8は、タンク部6の内周面に当接する寸法まで膨張し、タンク部6によって更なる膨張が制限される。したがって、この状態では、インナチューブ8の内圧が、タンク部6によって支持されることになる。
【0051】
また、インナチューブ8の吹込み口34は、タンク部6の一端側キャップ16に形成された開口20に取付けられている。
【0052】
更に、本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2は、
図3に示すように、タンク部6が、貨物輸送用コンテナ1の対向する角部のそれぞれとタンク部6とを連結する補強ブラケット36を備えている。
【0053】
補強ブラケット36は、タンク部6に設けられたフランジ22、24とコンテナ1のフレーム固定部1aとの間に配置されたフランジ受け調整ギアユニット38を備え、ボルト30と干渉しない複数の位置に設けられている。
【0054】
図3に示されているように、フランジ受け調整ギアユニット38は、外周に螺旋が切られ、矢印Aで示すように長手方向軸線を中心に回転可能な調整ロッド38aを有している。調整ロッド38aは、一端がタンク部6に設けられたフランジ22、24に、他端がコンテナ1のフレーム固定部1aに、ねじ込まれている。本実施形態は、調整ロッド38aが回転することにより、タンク部6に設けられたフランジ22、24とコンテナ1のフレーム固定部1aとの間の張力を調整することができるように構成されている。
【0055】
調整ロッド38aには、調整ロッド38aと一体的に回転する調整ギア38bが固定されている。
【0056】
フランジ受け調整ギアユニット38は、更に、外周に螺旋が切られ、図示しない動力源によって矢印B方向に回転駆動させられる作動ロッド38cを備えている。作動ロッド38cの外周の螺旋部は、調整ギア38bに噛合っている。
この結果、作動ロッド38cの回転が、調整ギア38bを介して、調整ロッド38aの回転に変換され、タンク部6に設けられたフランジ22、24とコンテナ1のフレーム固定部1aとの間の張力を調整することになる。
【0057】
次に、二酸化炭素輸送用容器2への二酸化炭素の充填と二酸化炭素輸送用容器2からの二酸化炭素の排出について説明する。
【0058】
図4は、インナチューブ8の内部に二酸化炭素が充填されていない状態での二酸化炭素輸送用容器2の模式的な断面図であり、
図5は、インナチューブ8の内部に二酸化炭素が充填された状態での二酸化炭素輸送用容器2の
図4と同様の模式的な断面図である。
【0059】
貨物輸送用コンテナ1内に配置されている二酸化炭素輸送用容器2(
図4)に二酸化炭素を導入する際には、貨物輸送用コンテナ1の一部を開放し、一端側キャップ16に取付けられているインナチューブ8の吹込み口32から、インナチューブ8内に、例えば、200Bar程度の圧力の二酸化炭素を導入する。
【0060】
導入された二酸化炭素によってインナチューブ8が膨張してタンク部6の内部空間を完全に満たした段階(
図5)で、二酸化炭素の導入を終了し、インナチューブ8の吹込み口32に設けられている高圧バルブ(図示せず)を閉鎖することによって、インナチューブの吹込み口32を閉鎖する。
【0061】
次いで、貨物輸送用コンテナ1を閉鎖して、トラック、船舶等の輸送手段によって二酸化炭素輸送用容器2を収容した貨物輸送用コンテナ1を二酸化炭素の貯留地等の目的地に搬送する。
【0062】
貨物輸送用コンテナ1が温度等の内部環境を調整できるリーファー・コンテナ等である場合には、適宜、貨物輸送用コンテナ1内の内部環境を調整しながら搬送が行なわれる。
【0063】
二酸化炭素を収容した二酸化炭素輸送用容器2が、二酸化炭素の貯留地等の目的地に到着すると、二酸化炭素輸送用容器2から二酸化炭素を排出させる。
【0064】
上述したように、二酸化炭素は、二酸化炭素輸送用容器2内に加圧状態で収容されているため、インナチューブ8の吹込み口24を開放することにより、インナチューブ8内の二酸化炭素の圧力が大気圧近傍の圧力に低下するまで二酸化炭素輸送用容器2の出入り口から自噴する。
【0065】
インナチューブ8内の二酸化炭素の圧力が大気圧近傍の圧力まで低下すると、二酸化炭素輸送用容器2の出入口から自噴の速度が低下する。この状態で、インナチューブ8を後方から押圧する、外部から真空ポンプでインナチューブ8内を吸引する等して、インナチューブ8内の二酸化炭素の排出を促進させ、インナチューブ8から二酸化炭素を完全に排出し、排出作業を終了する。
【0066】
次に、本実施形態の二酸化炭素輸送用容器2の組立て方法の一例を説明する。
図6は、タンク部6の組立てに使用する治具50の模式的な図面である。治具50は、ベース52の左右に配置された上方に延びる一対のフランジ受け台54、54と、フランジ受け台54、54の間に配置された搬送ローラ付きリフタ56とを備えている。フランジ受け台54の頂面には、ロケートピン58が取付けられている。
【0067】
タンク部6の組立てでは、まず、
図7に示されているように、治具50上に下半部12を載置する。このとき、下半部12のフランジ24に形成されたロケート孔40a、40b(
図8)に、ロケートピン58が挿通されるように下半部12を治具50上に配置する。
【0068】
次いで、
図9に示されているように、上半部10を、治具50上の下半部12に被せる。このとき、治具50上のロケータピン58が上半部10のフランジ22に設けられているロケータ孔に挿通されるように上半部10を配置することによって、上半部10のフランジ22の各貫通孔26と、下半部12のフランジ24の各貫通孔28が上下に整列する。
【0069】
次いで、
図10に示されているように、上下に整列した、上半部10のフランジ22の各貫通孔26と、下半部12のフランジ24の各貫通孔28とにボルト30を貫通させ、さらに、ナット32をボルト30にねじ込むことによって、上半部10のフランジ22と下半部12のフランジ24を結合させる。
【0070】
図11および
図12に示されているように、全ての貫通孔にボルト30を貫通させ、これら全てのボルト30にナット32をねじ込むことによって、上半部10と下半部12の連結固定を完了し、上半部10と下半部12によって構成される円筒状のタンク本体14が完成する。
【0071】
次に、一端側キャップ16をタンク本体14に取付ける。
図13は、一端側キャップ16をタンク本体14の取付けを説明するための図面である。
図13に示されているように、上半部10と下半部12の軸線方向の開口端には、径方向内方に延びる複数の取付けフランジ60が周方向に間隔をおいて設けられている。
一方、一端側キャップ16の開口端には、軸線方向に突出する複数の連結部62が周方向に間隔をおいて設けられている。
【0072】
連結部62は、隣接する取付けフランジ60の間の周方向長さより短い周方向長さを有し、一端側キャップ16が、上半部10と下半部12によって構成される円筒状のタンク本体14の開口端に取付けられるとき、隣接する取付けフランジ60の間を挿通可能に構成されている。
【0073】
さらに、連結部62の径方向外方部分には、取付けフランジ60と相補的な形状を有し周方向に延びる溝64が形成されている。この溝64は、一端側キャップ16が、円筒状のタンク本体14の開口端に取付けられたとき、取付けフランジ60と周方向に整列する位置に形成されている。
【0074】
一端側キャップ16を上半部10と下半部12によって構成されたタンク本体14に取付けけるときは、連結部62が、タンク本体14の隣接する取付けフランジ60の間の空間部分と軸線方向に整列する回転方向位置に一端側キャップ16を配置し、この一端側キャップ16をタンク本体14の開口端に取付ける。この状態では、取付けフランジ60と連結部62は、一端側キャップ16を連結された上半部10および下半部12(タンク本体14)から着脱可能とするロック位置に配置されていることになる。このとき、一端側キャップ16の連結部62の溝64は、タンク本体14の取付けフランジ60と周方向に整列する。このとき、取付けフランジ60と連結部62は、一端側キャップ16を、連結された前記上半部および下半部に対して着脱可能とするアンロック位置にある。
【0075】
この状態で、一端側キャップ16を所定角度、回転させると、タンク本体14の取付けフランジ60が一端側キャップ16の連結部62の溝64に収容される。この状態では、取付けフランジ60と連結部62は、一端側キャップを連結された上半部および下半部から着脱不能とするロック位置に配置されることになり、一端側キャップ16が軸線方向に移動即ち取外しができなくなる。
【0076】
他端側キャップ18とタンク本体14との取付けも、一端側キャップ16とタンク本体14との取り付けと同様に行なわれ、タンク部6の組立てが完了し、二酸化炭素輸送用容器2の組立てが完成する。
【0077】
インナチューブ8は、一端側キャップ16の取付け前に、
図14に示されているように一端側キャップ16の裏面側に取付けられている。このとき、インナチューブ8は、吹込み口34がタンク部6の一端側キャップ16に形成された開口20に、一端側キャップ16が回転しても吹込み口34が回転しないスイブル機構を介して一端側キャップ16に取付けられる。
【0078】
このようにして組み立てられた二酸化炭素輸送用容器2は、クレーン等を用いて、貨物輸送用コンテナ1等のアウタサポート内に運ばれ、補強ブラケット36等を使用してアウタサポート内で固定される。
【0079】
本発明の前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【0080】
上記実施形態では、一端側キャップ16および他端側キャップ18が、取付けフランジと連結部によってタンク本体14にロック可能に連結されているたが、他の手段によって、一端側キャップ16および他端側キャップ18がタンク本体14に連結されるものでもよい。
【0081】
例えば、
図15および
図16に示すように、一端側キャップ160および他端側キャップの開口端の内周面に雌ねじ部162を設け、タンク本体140の開口端の外周面に、キャップの雌ねじ部162と螺合可能な雌ねじ142を設け、一端側キャップ160および他端側キャップの雌ねじ部162をタンク本体140の雌ねじ142にねじ込むことによって、一端側キャップ160および他端側キャップをタンク本体140に着脱可能に取付けける構成でもよい。
【0082】
さらに、
図15および
図16に示すような、略L字状の揺動可能な固定具180を、一端側キャップ160および他端側キャップに設け、一端側キャップ160および他端側キャップをタンク本体140に螺合した後、この固定具180を矢印C方向に揺動させ、固定具の末端の開口182をフランジ220、240の開口と整列させ、
図16に示す様に、固定具180をボルト30とナット32によって、タンク本体140のフランジ220、240に固定する構成でもよい。尚、このような固定具180を、上記の実施形態の取付けフランジと連結部による連結機構に付加してもよい。
【0083】
また、
図17に示すように、タンク本体144の開口端と、一端側キャップ164および他端側キャップの開口端のそれぞれに径方向外方に延び複数の貫通孔146、166を有するフランジ148、168を設け、これらフランジを貫通孔が整列する状態で接合させ、整列した各貫通孔にボルト300を挿通し(
図17では一つのボルトのみを図示)、各ボルトにナット320を螺合することにより、一端側キャップ164および他端側キャップをタンク本体144に着脱可能に固定する構成でもよい。
【0084】
さらにまた、
図18に示すように、一端側キャップ170および他端側キャップ180の開口端に径方向外方に延び複数の貫通孔172、182を有するフランジ174、184をそれぞれ設けた構成でもよい。この構成では、対向するフランジ174、184の対応する貫通孔172、182の各対の間に、両端にねじ穴200を有するロッドスペーサ202を配置し
図18は一本のロッドスペーサのみを図示)、ロッドスペーサ202のねじ穴200にフランジ174、184の貫通孔172、182を介してねじ204をねじ込むことにより、両フランジ174、184を内方に押圧し、一端側キャップ170および他端側キャップ180をタンク本体240に固定する。
【0085】
一方、上記実施形態の二酸化炭素輸送用容器の説明では、剛性のアウタサポート部が貨物輸送用コンテナであったが、アウタサポート部は、貨物輸送用コンテナに限定されるものではなく、
図19に示されるような組立て式の剛性の矩形状フレーム400であってもよい。
【0086】
矩形状フレーム400は、角部に配置された連結部材402に対して、12本の棒状部材404が着脱自在に連結されることによって構成されたフレームである。連結部材402、および棒状部材404は、金属その他の剛性が高い材料で構成されている。
【0087】
矩形状フレーム400に囲まれた内部空間は、二酸化炭素輸送用容器2(容器本体4)を収容可能な寸法を有している。矩形状フレーム400全体の寸法形状を上述した貨物輸送用コンテナの寸法形状と同一にすることが好ましい。このような構成により、二酸化炭素輸送用容器2を収容した矩形状フレーム400を、貨物輸送用コンテナ用のトラック、貨車、船舶等で運搬したり、貨物輸送用コンテナと混載したりすることが可能となる。
【0088】
矩形状フレーム400に囲まれた内部空間に収容された二酸化炭素輸送用容器2(容器本体4)は、上述した補強ブラケット36のような固定具によって、矩形状フレーム400に対して固定されることになる。
【符号の説明】
【0089】
1:貨物輸送用コンテナ
2:二酸化炭素輸送用容器
4:容器本体
6:タンク部
8:インナチューブ
10:上半部
12:下半部
14:タンク本体
16:一端側キャップ
18:他端側キャップ
20:開口
32:吹込み口
34:吹込み口
36:補強ブラケット
38:フランジ受け調整ギアユニット
50:治具
52:ベース
54:フランジ受け台
56:搬送ローラ付きリフタ
28:ロケートピン
60:取付けフランジ
62:連結部
64:溝
400:矩形状フレーム