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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】気体置換装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 35/53 20220101AFI20240329BHJP
   B01F 21/00 20220101ALI20240329BHJP
   B01F 23/213 20220101ALI20240329BHJP
【FI】
B01F35/53
B01F21/00
B01F23/213
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020215180
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100906
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-06-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501302083
【氏名又は名称】株式会社大栄製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【弁理士】
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紀仁
(72)【発明者】
【氏名】森田 通夫
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0286297(US,A1)
【文献】特開2001-046802(JP,A)
【文献】米国特許第02164974(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0167413(US,A1)
【文献】国際公開第2016/113877(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00
B01F 25/21
B01F 35/71
B01F 35/75
B01F 35/00
B01F 23/20
C02F 1/20
B01J 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、前記容器本体の上部で液体を噴出させる液体供給管と、前記容器本体の下部から液体を排出する液体排出管と、前記容器本体内に設置された複数段の整流板と、前記容器本体内へと置換ガスを供給する置換ガス供給管と、前記容器本体から気体を排出する気体排出管とを備え、前記容器本体内を大気圧以上に維持しつつ、前記液体供給管から噴出された液体を前記整流板に沿って流下させて前記容器本体内にカーテン状の液体膜を形成し、液体中に溶存している気体を前記置換ガスと置換する装置であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする気体置換装置。
(1A)前記複数段の整流板は、前記容器本体の中心付近を下端とする下り傾斜となる様に設置された半円状の板材によって構成されていること。
(1B)前記複数段の整流板は、垂直方向の投影視において、前記容器本体の中心付近で下端同士がほぼ接するか若しくは重なり合う様な互い違いの配置にて設置されていること
2)前記液体供給管は、前記容器本体の側壁上部から、前記複数段の整流板の内の最上段の整流板の上へと液体を供給する様に、当該最上段の整流板が固定されている側の側壁に液体噴出口を開口させる様に設置されていること
3)前記複数段の整流板は、前記容器本体に対して挿入可能な外径を有し、前記液体供給管の噴出口と重なる開口を有する内筒の内壁面に対して半円の周縁を溶接固定され、当該内筒と共に前記容器本体に挿入して所定位置に設置する構成とされていること。
【請求項2】
容器本体と、前記容器本体の上部で液体を噴出させる液体供給管と、前記容器本体の下部から液体を排出する液体排出管と、前記容器本体内に設置された複数段の整流板と、前記容器本体内へと置換ガスを供給する置換ガス供給管と、前記容器本体から気体を排出する気体排出管とを備え、前記容器本体内を大気圧以上に維持しつつ、前記液体供給管から噴出された液体を前記整流板に沿って流下させて前記容器本体内にカーテン状の液体膜を形成し、液体中に溶存している気体を前記置換ガスと置換する装置であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする気体置換装置。
(1A)前記複数段の整流板は、前記容器本体の中心付近を下端とする下り傾斜となる様に設置された半円状の板材によって構成されていること。
(1B)前記複数段の整流板は、垂直方向の投影視において、前記容器本体の中心付近で下端同士がほぼ接するか若しくは重なり合う様な互い違いの配置にて設置されていること。
(4A)前記液体供給管は、前記容器本体の中心において前記複数段の整流板の内の最上段の整流板よりも上方に至る先端の液体噴出口から上方に向かって液体を噴出させる垂直管部を備えていること。
(4B)前記複数段の整流板は、その下端に前記垂直管部を受け入れる切り欠き部が形成されていること。
(4C)前記垂直管部の上部に所定距離を離して上に凸の湾曲板を設置すると共に、当該湾曲板の中心に向かって吐出口を臨ませ、前記湾曲板の周縁から前記置換ガスを前記容器本体内へと流入させる様に、前記置換ガス供給管を設置したこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に溶存している気体を他の種類の気体に置換するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、これまで、河川や湖沼等から汲み上げた水を密閉容器内に供給し、当該容器内を大気圧以上に加圧した状態を維持しつつ酸素を密閉容器内に供給して、水中の二酸化炭素と酸素を置換した後、河川や湖沼等に戻すことにより、水質を浄化するための装置を提案してきた(特許文献1~3)。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、図6(A)に示す様に、容器本体102の内壁には、リング状の整流板111,112,113が取り付けられている。一番上の整流板111は、液体注入管105の吐出ノズル先端とほぼ同じ高さに取り付けられ、斜め下方向に傾斜した傾斜リングで構成されている。2番目の高さの整流板112は、一番上の整流板111と同一形状である。一方、一番下の整流板113は孔の縁がギザギザに切り欠かれた水平リングとなっていて、その平均内径は、上側の二つの整流板111,112よりも大きくなっている。また、液体注入管105の垂直部分には、整流板111と整流板112の間、及び整流板112と整流板113の間に、それぞれ羽根突き整流板114,115が取り付けられている。2枚の羽根付き整流板114,115の羽根の傾斜方向は、互いに反対向きになる様に構成されている。
【0004】
特許文献2に記載の装置は、図6(B)に示す様に、容器本体131の内壁には、リング状の4枚の整流板141~144が取り付けられている。一番上の整流板141は、液体注入管134の吐出ノズル先端とほぼ同じ高さに取り付けられ、斜め下方向に傾斜した傾斜リングで構成されている。2番目及び3番目の高さの整流板142,143は、一番上の整流板141と同一形状である。一方、一番下の整流板144は中心の円孔を取り巻く様に12枚の羽根が斜め下向きとなる様に形成された羽根付き整流板となっている。また、1番目と2番目の間、2番目と3番目の間となる高さ位置には、液体注入管134の垂直部分に8枚の下向き傾斜羽根が形成された羽根付き整流板145,146も取り付けられている。
【0005】
特許文献3に記載の装置は、図6(C)に示す様に、容器本体202の内壁には、リング状の整流板211,212,213が取り付けられている。最上段の整流板211は、液体供給管205の吐出ノズル先端とほぼ同じ高さに取り付けられ、斜め下方向に傾斜した傾斜リングで構成されている。2段目,3段目の整流板212,213も、一番上の整流板211と同じく傾斜リングで構成されている。液体供給管205の垂直部分には、整流板211と整流板212の間、及び整流板212と整流板213の間に先端を入り込ませる様に、それぞれ羽根突き整流板214,215が取り付けられ、3段目のリング状整流板213よりも下方に、周囲がギザギザに形成された小径整流板216も備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5932263号公報
【文献】特許第6068224号公報
【文献】特許第6326153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら特許文献1~3に記載の装置によれば、河川等から汲み上げた水を噴水の様に容器内で上向きに噴出させ、落下する水流を容器内壁や水供給管の外面に設置した整流板で整流することによって容器内に流下するカーテン状の水膜を形成し、気体の置換効率を高めるために上述の様な構造を採用している。
【0008】
本発明は、さらなる気体置換効率の向上、製造コスト並びにランニングコストの低廉化を目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の気体置換装置は、容器本体と、前記容器本体の上部で液体を噴出させる液体供給管と、前記容器本体の下部から液体を排出する液体排出管と、前記容器本体内に設置された複数段の整流板と、前記容器本体内へと置換ガスを供給する置換ガス供給管と、前記容器本体から気体を排出する気体排出管とを備え、前記容器本体内を大気圧以上に維持しつつ、前記液体供給管から噴出された液体を前記整流板に沿って流下させて前記容器本体内にカーテン状の液体膜を形成し、液体中に溶存している気体を前記置換ガスと置換する装置であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
(1A)前記複数段の整流板は、前記容器本体の中心付近を下端とする下り傾斜となる様に設置された半円状の板材によって構成されていること。
(1B)前記複数段の整流板は、垂直方向の投影視において、前記容器本体の中心付近で下端同士がほぼ接するか若しくは重なり合う様な互い違いの配置にて設置されていること。
(2)前記液体供給管は、前記容器本体の側壁上部から、前記複数段の整流板の内の最上段の整流板の上へと液体を供給する様に、当該最上段の整流板が固定されている側の側壁に液体噴出口を開口させる様に設置されていること。
(3)前記複数段の整流板は、前記容器本体に対して挿入可能な外径を有し、前記液体供給管の噴出口と重なる開口を有する内筒の内壁面に対して半円の周縁を溶接固定され、当該内筒と共に前記容器本体に挿入して所定位置に設置する構成とされていること。
【0010】
本発明の気体置換装置によれば、容器本体の上部で液体供給管から噴出された液体は、複数段の整流板の傾斜に沿って流れ、各整流板の下端から斜め下方に流れ出す。このとき、一部の液体は、各整流板の下端からカーテン状の液体膜となって容器本体の中止付近を下に向かって流れ、その他は容器本体の中心を越えて次の段の整流板の上面に届いた後、当該整流板の下端に向かって流れる。こうして、容器本体内には、複数段の整流板の下端のそれぞれからカーテン状の液体膜が流れ落ちる状態が形成される。このとき、容器本体内には大気圧以上に加圧された置換ガスが充満しており、これが液体中に溶存している気体と置換される。そして、本発明の気体置換装置によれば、容器本体内で上段の整流板から次の段の整流板、さらに次の段の整流板といった具合にジグザグ方向に液体が流れ、各整流板の下端からのカーテン状の液体膜の形成がスムーズとなり、置換ガスとの接触面積が広がり、気体置換効率を上げることができる。この結果、液体供給ポンプの小型化や運転時の液体吐出圧力の低減などが可能となって、製造コスト並びにランニングコストの低廉化を実現することができる。
【0012】
また、本発明の気体置換装置によれば、液体を容器本体の上部側壁から流入させることができ、容器本体内に配管する必要がなくなる。これにより、容器本体を小型化させることができる。そして、容器本体内に液体供給のための配管をする必要がなくなることから、置換ガスと液体膜との接触が邪魔されることがなく、さらなる置換効率の向上を実現することができる。この結果、製造コスト並びにランニングコストのさらなる低廉化を可能にすることができる。
【0014】
さらに、本発明の気体置換装置によれば、容器本体とは別体の内筒の内壁面に対して整流板を溶接固定することから、例えば、半割の筒体に各段の整流板を溶接固定した後に一体化させるといった方法で製造した内筒を用いることもでき、小型化した容器本体の内部に複数段の整流板を容易に設置することができる。なお、内筒は、液体供給管の噴出口と開口とが重なる様に容器本体に挿入され、溶接等によって容器本体に対して固定される。
【0015】
一方、本発明の気体置換装置は、容器本体と、前記容器本体の上部で液体を噴出させる液体供給管と、前記容器本体の下部から液体を排出する液体排出管と、前記容器本体内に設置された複数段の整流板と、前記容器本体内へと置換ガスを供給する置換ガス供給管と、前記容器本体から気体を排出する気体排出管とを備え、前記容器本体内を大気圧以上に維持しつつ、前記液体供給管から噴出された液体を前記整流板に沿って流下させて前記容器本体内にカーテン状の液体膜を形成し、液体中に溶存している気体を前記置換ガスと置換する装置であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする気体置換装置でもある。
(1A)前記複数段の整流板は、前記容器本体の中心付近を下端とする下り傾斜となる様に設置された半円状の板材によって構成されていること。
(1B)前記複数段の整流板は、垂直方向の投影視において、前記容器本体の中心付近で下端同士がほぼ接するか若しくは重なり合う様な互い違いの配置にて設置されていること。
(4A)前記液体供給管は、前記容器本体の中心において前記複数段の整流板の内の最上段の整流板よりも上方に至る先端の液体噴出口から上方に向かって液体を噴出させる垂直管部を備えていること。
(4B)前記複数段の整流板は、その下端に前記垂直管部を受け入れる切り欠き部が形成されていること。
(4C)前記垂直管部の上部に所定距離を離して上に凸の湾曲板を設置すると共に、当該湾曲板の中心に向かって吐出口を臨ませ、前記湾曲板の周縁から前記置換ガスを前記容器本体内へと流入させる様に、前記置換ガス供給管を設置したこと。
【0016】
かかる構成を備えた気体置換装置によれば、容器本体内に液体供給配管を施すものの、各整流板の下端の切り欠き部にて垂直部を受け入れることにより、配管が気体の置換の邪魔にならない様にすることができる。また、液体供給管から上向きに噴出される液体は、湾曲板に遮られ、湾曲板の上面側に臨まされた置換ガス排出口からの置換ガスの排出を邪魔することがなく、置換ガスは、湾曲板の上側の湾曲面に沿って全方向へ広がる様に容器本体内に充填され、容器本体内に隅々まで行き渡る様に供給される。特に、整流板の下端側の切り欠き部を液体供給配管の垂直部に外接する様に形成して整流板の下端と液体供給管の垂直部とを溶接固定すれば、整流板の振動抑制を行うことが可能となる。この様な溶接固定は、全ての段の整流板について実施する必要はなく、噴出する液体の勢いよく降り注ぐ上段側の何段かだけにしておいてもよい。振動の抑制により、容器本体内に形成される液体膜が安定するから、大型の容器を用いる場合の置換効率の向上が達成可能となり、この結果、製造コスト並びにランニングコストの低廉化を可能にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、気体置換装置において、気体置換効率の向上、製造コスト並びにランニングコストの低廉化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の気体置換装置を示し、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図、(D)は右側面図である。
図2】実施例1の気体置換装置を示し、(A)は容器本体の正面図、(B)は容器本体の平面図、(C)はa-a端面図、(D)はb-b端面図、(E)は液面安定板の正面図である。
図3】実施例1の気体置換装置に用いる整流板付き内筒を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)はc-c断面図、(E)はd-d断面図、(F)はe-e断面図である。
図4】実施例2の気体置換装置を示し、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図、(D)は右側面図である。
図5】実施例2の気体置換装置における整流板の構成を示す説明図である。
図6】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す具体的な実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
実施例1の気体置換装置1は、図1に示す様に、容器本体2と、ポンプ3及びモータ4とをキャスタ付きの台車5に設置し、移動可能に構成されている。台車5にはアングル鋼製の3本の支柱5a~5cが立設されており、容器本体2を3箇所で支え垂直に立ち上がった状態に固定する。
【0021】
気体置換前の液体を装置に供給する液体供給口2inは、容器本体2の上部左側面から水平に伸びる様に設けられ、ポンプ3から伸ばされた液体供給配管6が接続される。また、気体置換後の液体を取り出す液体排出口2outは、容器本体2の底面中央から垂直に伸びる様に設けられている。この液体排出口2outの下端からは水平方向に伸びて二股に分岐し、支柱5a,5bを交わす様に構成された放出管7が取り付けられている。放出管7の2つの分岐管7a,7bにはそれぞれ手動式の開閉バルブ8a,8bが装備されている。
【0022】
容器本体2の左側面側1/4程の高さには、のぞき窓9が備えられている。のぞき窓9にはガラスが嵌められている。また、容器本体2の背面側1/2よりやや上の高さにフロート装置10が備えられている。さらに、容器本体2の正面には、液位確認装置11が備えられ、容器本体2の右側面には、操作盤12,13が備えられている。
【0023】
また、容器本体2の上部に固定される上蓋20には、置換ガス供給管21、気体排出管22,23及び液位確認用の配管24が備えられている。
【0024】
容器本体2の内部には、図1(B),(C)及び図2(A)に示す様に、容器本体2の内部にカーテン状の液体膜を形成するための4段の整流板31~34と、液面の揺れを安定させるための液面安定板35が設置されている。
【0025】
液面安定板35は、図2(D),(E)に示す様に、4つの扇状の開口35a~35dを備え、各開口35a~35dの間の位置に下方に突出する様に扇形の制水板36a~36dが取り付けられている。
【0026】
4段の整流板31~34は、図2(A),図3に示す様に、容器本体2の中心付近を下端とする下り傾斜となる様に設置された半円状の板材によって構成されている。これら4段の整流板31~34は、垂直方向の投影視において、容器本体2の中心付近で下端同士がほぼ接する様な互い違いの配置にて設置されている。
【0027】
なお、本実施例においては、これら4段の整流板31~34は、容器本体2に対して挿入可能な外径を有する内筒40の内壁面に対して半円の周縁を溶接固定され、当該内筒40と共に容器本体2に対して着脱可能とされている。
【0028】
内筒40の上端には、リング状の接合板41が溶接固定されている。この接合板41は、上蓋20の下端に溶接固定された接合板20aと合わされてボルト固定によって上蓋20を容器本体2に対して固定するためのものである。
【0029】
内筒40には、容器本体2に取り付けられた液体供給管2inの噴出口と重なる開口42が設けられている。この内筒40は、液体供給管2inの噴出口と開口42とが重なる様に容器本体2に挿入され、溶接等によって容器本体2に対して固定される。
【0030】
実施例1の気体置換装置1によれば、容器本体2の上部で液体供給管2inから噴出された液体は、4段の整流板31~34の傾斜に沿って流れ、各整流板31~34の下端から斜め下方に流れ出す。このとき、一部の液体は、各整流板31~34の下端からカーテン状の液体膜となって容器本体2の中止付近を下に向かって流れ、その他は容器本体2の中心を越えて次の段の整流板32~34の上面に届いた後、当該整流板32~34の下端に向かって流れる。こうして、容器本体2内には、4段の整流板31~34の下端のそれぞれからカーテン状の液体膜が流れ落ちる状態が形成される。このとき、容器本体2内には大気圧以上に加圧された置換ガスが充満しており、これが液体中に溶存している気体と置換される。そして、気体置換装置1によれば、容器本体2内で上段の整流板31から次の段の整流板32、さらに次の段の整流板33,…といった具合にジグザグ方向に液体が流れ、各整流板31~34の下端からのカーテン状の液体膜の形成がスムーズとなり、置換ガスとの接触面積が広がり、気体置換効率を上げることができる。この結果、液体供給ポンプ3の小型化や運転時の液体吐出圧力の低減などが可能となって、製造コスト並びにランニングコストの低廉化を実現することができる。
【0031】
また、本実施例の気体置換装置1では、液体供給管2inは、容器本体2の側壁上部から、4段の整流板31~34の内の最上段の整流板31の上へと液体を供給する様に、当該最上段の整流板31が固定されている側の側壁に噴出口を開口させる様に設置されている。この結果、本実施例の気体置換装置1によれば、容器本体2内に配管を敷設することなく、液体を容器本体2の上部側壁から流入させることができる。これにより、容器本体2を小型化させることができる。そして、容器本体2内に液体供給のための配管をする必要がなくなることから、置換ガスと液体膜との接触が邪魔されることがなく、さらなる置換効率の向上を実現することができる。この結果、製造コスト並びにランニングコストのさらなる低廉化を可能にすることができる。
【0032】
さらに、本実施例の気体置換装置1では、4段の整流板31~34は、容器本体2に対して挿入可能な外径を有する内筒40の内壁面に対して半円の周縁を溶接固定され、当該内筒40と共に容器本体に挿入して所定位置に設置する構成を採用している。この結果、本実施例の気体置換装置1によれば、容器本体2とは別体の内筒40の内壁面に対して整流板31~34を溶接固定することから、例えば、半割の筒体に各段の整流板を溶接固定した後に一体化させるといった方法で製造した内筒を用いることもでき、小型化した容器本体の内部に複数段の整流板を容易に設置することができる。
【実施例2】
【0033】
実施例2の気体置換装置51は、図4に示す様に、容器本体52と、ポンプ53及びモータ54とを架台55に設置した構成となっている。本実施例においては、容器本体52は、フランジ52fを介して架台55に直接固定されている。
【0034】
気体置換前の液体を装置に供給する液体供給口52inは、容器本体52の左側面中央付近から水平に伸びる様に設けられ、ポンプ53から伸ばされた液体供給配管56が接続される。また、気体置換後の液体を取り出す液体排出口52outは、容器本体52の下部側壁から水平に伸びる様に設けられている。この液体排出口52outには手動式の開閉バルブ58が装備されている。
【0035】
容器本体52の右側面1/2よりやや上の高さにフロート装置60が備えられている。さらに、容器本体52の正面には、液位確認装置61が備えられ、容器本体52の左右側面には、操作盤62,63が備えられている。
【0036】
また、容器本体52の天井部には、置換ガス供給管71、気体排出管72,73及び液位確認用の配管74が備えられている。本実施例においては、置換ガス供給管71は、天井部中心に位置する様に設置されている。
【0037】
容器本体52の内部には、図5に示す様に、容器本体52の内部にカーテン状の液体膜を形成するための4段の整流板81~84と、液面の揺れを安定させるための液面安定板85が設置されている。液面安定板85は、実施例1の液面安定板35と同様に、4つの扇状の開口を備え、各開口の間の位置に下方に突出する様に扇形の制水板が取り付けられたものとなっている。
【0038】
4段の整流板81~84は、容器本体52の中心付近を下端とする下り傾斜となる様に設置された半円状の板材によって構成されている。これら4段の整流板81~84は、垂直方向の投影視において、容器本体52の中心付近で下端同士がほぼ接するか重なり合う様な互い違いの配置にて設置されている。
【0039】
本実施例においては、液体供給管52inは、容器本体52の中心において4段の整流板81~84の内の最上段の整流板81よりも上方に至る先端の液体噴出口から上方に向かって液体を噴出させる垂直管部91を備えている。また、4段の整流板81~84は、その下端に垂直管部91を受け入れる切り欠き部81a~84aが形成されている。そして、これら4段の整流板81~84は、半円の周縁を容器本体52の内壁面に対して溶接固定されると共に、上3段については、切り欠き部81a~83aにて垂直管部91にも溶接固定されている。そして、本実施例においては、垂直管部91の上部に所定距離を離して上に凸の湾曲板92を設置すると共に、当該湾曲板92の中心に向かって吐出口を臨ませ、湾曲板92の周縁から置換ガスを容器本体52内へと流入させる様に、置換ガス供給管を設71が設置されている。
【0040】
実施例2の気体置換装置51によれば、容器本体52の上部で垂直管部91から噴出された液体は、4段の整流板81~84の傾斜に沿って流れ、各整流板81~84の下端から斜め下方に流れ出す。このとき、一部の液体は、各整流板81~84の下端からカーテン状の液体膜となって容器本体52の中止付近を下に向かって流れ、その他は容器本体52の中心を越えて次の段の整流板82~84の上面に届いた後、当該整流板82~84の下端に向かって流れる。こうして、容器本体52内には、4段の整流板81~84の下端のそれぞれからカーテン状の液体膜が流れ落ちる状態が形成される。このとき、容器本体52内には大気圧以上に加圧された置換ガスが充満しており、これが液体中に溶存している気体と置換される。そして、気体置換装置51によれば、容器本体52内で上段の整流板81から次の段の整流板82、さらに次の段の整流板83,…といった具合にジグザグ方向に液体が流れ、各整流板81~84の下端からのカーテン状の液体膜のがスムーズに形成され、置換ガスとの接触面積が広がり、気体置換効率を上げることができる。この結果、液体供給ポンプ53の小型化や運転時の液体吐出圧力の低減などが可能となって、製造コスト並びにランニングコストの低廉化を実現することができる。
【0041】
なお、本実施例の気体置換装置51によれば、容器本体52内における配管を必要とするものの、各整流板81~84の下端の切り欠き部81a~84aにて垂直管部91を受け入れることにより、配管が気体の置換の邪魔にならない様にすることができる。また、垂直管部91から上向きに噴出される液体は、湾曲板92に遮られ、湾曲板92の上面側に臨まされた置換ガス排出口からの置換ガスの排出を邪魔することがなく、置換ガスは、湾曲板92の上側の湾曲面に沿って全方向へ広がる様に容器本体52内に充填され、容器本体52内に隅々まで行き渡る様に供給される。特に、上3段の整流板81~83の下端側の切り欠き部81a~83aを垂直管部91に外接する様に形成して整流板81~83の下端と垂直管部91とを溶接固定しているから、整流板81~83の振動抑制を行うことができる。こうした振動の抑制により、容器本体52内に形成される液体膜が安定するから、大型の容器を用いる場合の置換効率の向上が達成可能となり、この結果、製造コスト並びにランニングコストの低廉化を可能にすることができる。
【0042】
なお、実施例1,2において、ポンプの吐出圧は0.1Mpaとし、吐出量については本装置の使用目的等に応じて35L/min~5ton/minの能力を有するものを使用する様にしている。また、置換ガス供給管21,71からは0.2Mpaで容器本体2,52内へと気体を送り込む様に供給圧を調整する供給圧調整機構を備えている。この結果、実施例1,2においては、気体圧は液体圧よりも0.1Mpa高い状態で容器内に進入し、容器内の液面を押し下げることとなる。
【0043】
また、実施例1,2においては、液面高さは、フロートの上下動の範囲内に維持される様に、置換ガス供給量をコントロールしている。
【0044】
加えて、実施例1,2においては、気体の置換が進んで容器本体2,52内の置換ガス濃度が低下して液面が上昇したら、置換ガス供給管21,71を閉じ、気体排出管22,23,72,73を開くことにより、容器本体2,52の内部の気体を排出する。
【0045】
以上、発明を実施するための実施例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
湖沼・河川等の水の浄化、魚介類の養殖池の水質管理、藻類培養タンクの水質管理、工場における洗浄液の浄化、オゾン混入殺菌液の製造などに利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・気体置換装置、2・・・容器本体、2in・・・液体供給口、2out・・・液体排出口、3・・・ポンプ、4・・・モータ、5・・・台車5、
20・・・上蓋、20a・・・接合板、21・・・置換ガス供給管、22,23・・・気体排出管、31~34・・・整流板、35・・・液面安定板、40・・・内筒、41・・・接合板、51・・・気体置換装置、52・・・容器本体、52in・・・液体供給口、52out・・・液体排出口、53・・・ポンプ、54・・・モータ、55・・・架台、
71・・・置換ガス供給管、72,73・・・気体排出管、81~84・・・整流板、81a~84a・・・切り欠き部、85・・・液面安定板、91・・・垂直管部、92・・・湾曲板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6