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特許7462331生体データ取得装置、生体データ取得システム、生体データ取得装置を備える乗物、及び生体データ取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】生体データ取得装置、生体データ取得システム、生体データ取得装置を備える乗物、及び生体データ取得方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20240329BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240329BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240329BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61B5/0245 A
A61B5/08
A61B5/11 110
A61B5/113
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021504939
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008768
(87)【国際公開番号】W WO2020184260
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019042517
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506060258
【氏名又は名称】公立大学法人北九州市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】梶原 昭博
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-039666(JP,A)
【文献】特開2013-097670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0058254(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
A61B 5/02-5/03
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された記憶部であって、前記第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、記憶部と、
前記第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データにおける信号強度のうち前記生体の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成するように構成された第1の生成部と、
前記時間変動データに基づいて、前記生体の検知部位における生体データを生成するように構成された第2の生成部とを備える、生体データ取得装置。
【請求項2】
前記第nの距離変動データにおける前記生体の検知部位に対応する距離成分が任意の基準値に近づくように前記第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、補正時系列データを得るように構成された補正部を更に備え、
前記第1の生成部は、前記強度取得処理を実行する際に、前記補正時系列データから前記基準値における信号強度を前記対応強度として取得する、請求項1に記載の生体データ取得装置。
【請求項3】
前記補正処理は、前記第1~第Nの距離変動データのうち所定時間内に含まれる第p~第q(p及びqはそれぞれ、1≦p<q≦Nを満たす自然数)の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が前記基準値に近づくように前記第p~第qの距離変動データの距離成分を補正することを含む、請求項2に記載の生体データ取得装置。
【請求項4】
前記補正処理は、前記時系列データを時系列に沿って順に分割することで得られる第1~第Mのブロック(Mは2以上の自然数)のうち第m(mは1~Mの自然数)のブロックにおいて、前記第1~第Nの距離変動データのうち前記第mのブロックに含まれる複数の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が、前記第1~第Mのブロックのそれぞれについて定められる任意の基準値に近づくように前記複数の距離変動データの距離成分を補正するブロック補正処理を、前記第1~第Mのブロックに対して行うことを含む、請求項2に記載の生体データ取得装置。
【請求項5】
前記第2の生成部は、前記時間変動データに対して多重解像度解析を行うことにより、前記生体の検知部位における生体データを生成するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の生体データ取得装置。
【請求項6】
前記第2の生成部は、前記時間変動データに対して前記多重解像度解析を行うことで、前記時間変動データを複数の分解波形に分解し、前記複数の分解波形のうち前記生体の拍動に対応する拍動信号に基づいて前記生体の拍動に関する拍動データを生成するように構成されている、請求項5に記載の生体データ取得装置。
【請求項7】
前記第2の生成部は、ARモデルを用いて前記拍動信号をスペクトル解析することにより、前記生体の心拍間隔の時間変動を示す心拍間隔データを生成するように構成されている、請求項6に記載の生体データ取得装置。
【請求項8】
前記第1~第Nの距離変動データは、前記生体の拍動に対応する周波数を基準として、前記反射波をオーバサンプリングすることで得られたデータである、請求項6又は7に記載の生体データ取得装置。
【請求項9】
前記第2の生成部は、前記複数の分解波形のうち、前記拍動とは異なる前記生体の動きに対応する信号を除外したうえで、前記拍動データを生成するように構成されている、請求項6~8のいずれか一項に記載の生体データ取得装置。
【請求項10】
前記第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、前記無線電波が前記生体及び別の生体において反射された反射波に基づいて得られたデータであり、
前記第1の生成部は、
前記第nの距離変動データにおける信号強度のうち前記生体の検知部位に対応する前記対応強度を取得する前記強度取得処理を前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記対応強度が時系列に沿って並べられた前記時間変動データを生成するように構成されており、且つ、
前記第nの距離変動データにおける信号強度のうち前記別の生体の検知部位に対応する別の対応強度を取得する前記強度取得処理を前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記別の対応強度が時系列に沿って並べられた別の時間変動データを生成するように構成されており、
前記第2の生成部は、
前記時間変動データに基づいて、前記生体の検知部位における生体データを生成するように構成されており、且つ、
前記別の時間変動データに基づいて、前記別の生体の検知部位における生体データを生成するように構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の生体データ取得装置。
【請求項11】
前記無線電波を発信するように構成された発信部と、
前記反射波を受信するように構成された受信部とを更に備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の生体データ取得装置。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の生体データ取得装置と、
前記無線電波を発信するように構成された発信部と、
前記反射波を受信するように構成された受信部とを備える、生体データ取得システム。
【請求項13】
前記反射波に応じた受信データを前記生体データ取得装置に無線通信を用いて送信するように構成された通信部を更に備える、請求項12に記載の生体データ取得システム。
【請求項14】
生体データ取得装置を備える乗物であって、
前記生体データ取得装置は、
第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された記憶部であって、前記第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が前記乗物内の生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、記憶部と、
前記第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データにおける信号強度のうち前記生体の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成するように構成された第1の生成部と、
前記時間変動データに基づいて、前記生体の検知部位における生体データを生成するように構成された第2の生成部とを有する、乗物。
【請求項15】
前記第2の生成部は、
前記時間変動データに対して多重解像度解析を行うことで、前記時間変動データを複数の分解波形に分解し、且つ、
前記複数の分解波形のうち、前記乗物に由来した前記生体の動きに対応する信号を除外したうえで、前記複数の分解波形のうち前記生体の拍動に対応する拍動信号に基づいて、前記生体の拍動に関する拍動データを生成するように構成されている、請求項14に記載の乗物。
【請求項16】
第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを生成することであって、前記第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、前記時系列データを生成することと、
前記第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データにおける信号強度のうち前記生体の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を前記第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、前記対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成することと、
前記時間変動データに基づいて、前記生体の検知部位における生体データを生成することとを含む、生体データ取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体データ取得装置、生体データ取得システム、生体データ取得装置を備える乗物、及び生体データ取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ユーザの心拍に関する心拍データを測定し、ユーザの心拍データと識別情報とを送信対象端末に送信するウェアラブルデバイスを開示している。このウェアラブルデバイスは、リストバンド型又は腕時計型の測定機器であり、ウェアラブルデバイスを装着したユーザの心拍データが測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-167802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の測定機器を用いてユーザの心拍データを測定する場合、測定機器をユーザに接触させた状態で測定を行う必要がある。このため、測定に際して測定機器の着脱に伴う手間が発生し、測定機器の装着によりユーザに不快感を与えてしまう懸念がある。そのため、電波センサ等を用いて心拍データ等の生体データを非接触で測定するための技術が検討されている。ところが、電波センサ等によって非接触で生体データを測定しようとする場合、生体データの測定対象である生体(例えば、人体、動物など)が動いていると、生体からの反射波に基づいて生体データを取得する際に影響が生じうる。
【0005】
そこで、本開示は、生体データを非接触で精度良く検知することが可能な生体データ取得装置、生体データ取得システム、生体データ取得装置を備える乗物、及び生体データ取得方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つの観点に係る生体データ取得装置は、第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された記憶部であって、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、記憶部と、第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データにおける信号強度のうち生体の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成するように構成された第1の生成部と、時間変動データに基づいて、生体の検知部位における生体データを生成するように構成された第2の生成部とを備える。
【0007】
本開示の他の観点に係る生体データ取得システムは、上記の装置と、無線電波を発信するように構成された発信部と、反射波を受信するように構成された受信部とを備える。
【0008】
本開示の他の観点に係る生体データ取得装置を備える乗物は、生体データ取得装置を備える乗物である。生体データ取得装置は、第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された記憶部であって、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が乗物内の生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、記憶部と、第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データにおける信号強度のうち生体の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成するように構成された第1の生成部と、時間変動データに基づいて、生体の検知部位における生体データを生成するように構成された第2の生成部とを有する。
【0009】
本開示の他の観点に係る生体データ取得方法は、第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを生成することであって、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、時系列データを生成することと、第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データにおける信号強度のうち生体の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成することと、時間変動データに基づいて、生体の検知部位における生体データを生成することとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る生体データ取得装置、生体データ取得システム、生体データ取得装置を備える乗物、及び生体データ取得方法によれば、生体データを非接触で精度良く検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、生体データ取得システムの一例を概略的に示す模式図である。
図2図2は、送受信装置の一例を概略的に示すブロック図である。
図3図3は、生体データ取得装置の一例を概略的に示すブロック図である。
図4図4は、生体データ取得システムの一例を概略的に示すブロック図である。
図5図5(a)は、時系列データの一例を示す図である。図5(b)は、補正された時系列データの一例を示す図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、時系列データの補正方法を説明するための図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、時系列データの補正方法を説明するための図である。
図8図8(a)~図8(i)は、多重解像度解析による波形の分解を説明するためのグラフである。
図9図9は、心拍間隔データの一例を示すグラフである。
図10図10は、生体データ取得の手順を説明するためのフローチャートである。
図11図11は、生体データ取得装置の他の例を概略的に示すブロック図である。
図12図12は、生体データ取得システムの他の例を概略的に示すブロック図である。
図13図13は、検知領域に複数の生体が存在する場合の生体データの取得方法を説明するための図である。
図14図14は、検知領域に複数の生体が存在する場合の時系列データの一例を示す図である。
図15図15(a)は、補正された時系列データの一例を示す図である。図15(b)は、図15(a)に示される時系列データの一部を拡大した図である。
図16図16(a)は、補正されていない時系列データから得られる信号強度の時間変化を示すグラフである。図16(b)は、補正された時系列データから得られる信号強度の時間変化を示すグラフである。
図17図17は、補正された時系列データの一例を示す図である。
図18図18(a)は、補正されていない時系列データから得られる信号強度の時間変化を示すグラフである。図18(b)は、補正された時系列データから得られる信号強度の時間変化を示すグラフである。
図19図19は、生体データ取得の手順を説明するためのフローチャートである。
図20図20は、生体データ取得システムを備える乗物の一例を概略的に示す模式図である。
図21図21は、乗物内の生体から得られる心拍間隔データの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
[生体データ取得システム]
生体データ取得システム1の構成について、図1図3を参照して説明する。生体データ取得システム1は、送受信装置10と、生体データ取得装置20とを備える。生体データ取得システム1は、例えば室内又は屋外の生体Hの検知部位における呼吸や拍動などの各生体データを取得するように構成されている。室内は、例えば、リビング、オフィス、寝室、トイレ、浴室、乗物などの内部を含む。
【0014】
検知対象となる生体Hとしては、例えば人間、動物などが挙げられるが、本明細書では生体Hが人間であるものとして説明する。生体Hは、動作していてもよく、椅子等に着座した状態で作業していてもよく、静止していてもよい。なお、生体Hは静止していても、無意識下においてわずかに体が動いていることがある。本明細書では、生体Hによる意図的な動作、無意識下でのわずかな動作(微体動)、及び外部要因に由来して生体Hに生ずる動作(振動等)を含めて生体Hの「動き」として説明する。生体Hによる意図的な動作は、生体の全体の動作、及び生体の一部分の動作を含む。生体の全体の動作は、例えば、歩行等を含む。生体の一部分の動作は、例えば、立位、座位、及び臥位状態での生体の一部分の動作を含む。検知部位は、例えば生体Hの心臓部分を含む部位(胸部又は背中)であってもよい。
【0015】
送受信装置10は、生体データを検知する対象領域として予め設定された検知領域Rに向けて、広帯域又は超広帯域(UWB:Ultra Wide Band)の無線電波を発信するように構成されている。検知領域Rは、例えば生体Hの検知部位に無線電波が到達するように設定されている。送受信装置10は、例えば室内の壁に設けられていてもよい。送受信装置10は、図2に示されるように、発信機11(発信部)と、受信機12(受信部)と、通信機13(通信部)と、制御部14と、バス15とを含む。
【0016】
発信機11は、制御部14の指示に基づいて、検知領域Rに向けて広帯域又は超広帯域の無線電波を発信するように構成されている。発信機11のアンテナ水平面における指向角は、例えば、40°~80°程度であってもよいし、60°~80°程度であってもよい。発信機11のアンテナ垂直面における指向角は、例えば、30°~40°程度であってもよいし、30°以下であってもよい。これらの指向角の範囲に対応して検知領域Rが設定される。
【0017】
本明細書において「広帯域」とは、周波数帯域幅が100MHz以上で且つ500MHz以下の場合をいうものとする。そのため、発信機11が発信する広帯域の無線電波の周波数帯域幅は、例えば、100MHz以上であってもよいし、300MHz以上であってもよい。「超広帯域」とは、周波数帯域幅が500MHzを超える場合をいうものとする。そのため、発信機11が発信する超広帯域の無線電波の周波数帯域幅は、例えば、3GHz以上であってもよいが、電波法及びコストパフォーマンスに鑑みて4GHz以下であってもよい。広帯域又は超広帯域の無線電波を用いる場合、無線電波の発信出力の電力スペクトルを小さくすることができ、生体Hに対する無線電波の影響を小さくすることができる。以下では、特に説明がない限り、「無線電波」は広帯域又は超広帯域の無線電波を意味する。
【0018】
受信機12は、発信機11から発信された無線電波の反射波を受信可能に構成されている。発信機11において広帯域又は超広帯域の無線電波を用いているので、受信機12は、無線電波の反射波を反射パス長に対応した時間軸上で分離して受信することができる。すなわち、受信機12は、検知領域Rの距離方向において複数に区切られたレンジビン(周波数帯域幅で決まる)ごとに、信号を抽出することが可能である。各レンジビンの幅は、例えば10cm以下であってもよいし、3cm~4cm程度であってもよい。検知領域Rにおけるレンジビンの数は、レンジビンの幅及び検知領域Rの大きさに応じて適宜変更可能である。
【0019】
受信機12によるデータ取得の時間間隔(サンプリング周期)は、適宜設定しうる。生体データ取得装置20による拍動成分の抽出(詳しくは後述する)を容易にするために、受信機12は、生体の拍動に対応する周波数を基準として、反射波をオーバサンプリングしてもよい。受信機12は、例えば、拍動に応じた周波数範囲の上限値(例えば1.6Hz)の2倍より大きいサンプリング周波数(例えば上限値の整数倍)にて反射波をオーバサンプリングしてもよい。なお、受信機12以外でオーバサンプリングが行われてもよい。
【0020】
通信機13は、生体データ取得装置20の通信機23と通信可能に構成されている。通信機13の通信機23との通信方式は特に限定されず、例えば、無線通信であってもよい。無線通信の例として、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、SUPER3G、IMT-Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broadband)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB、Bluetooth(登録商標)、その他の通信方式が用いられてもよい。
【0021】
制御部14は、バス15を介して、発信機11、受信機12及び通信機13との間で信号の送受信を行い、これらの動作を制御するように構成されている。制御部14は、例えば、プロセッサ16と、メモリ17と、ストレージ18とを含む。
【0022】
プロセッサ16は、メモリ17、ストレージ18等のハードウェアに所定のソフトウェア(プログラム)を読み込むと所定の演算を行い、発信機11からの無線電波の発信、受信機12が受信した反射波の受信、通信機13による通信、メモリ17及びストレージ18におけるデータの読み出し又は書き込みを実行する。これにより、送受信装置10における各機能が実現される。
【0023】
生体データ取得装置20は、送受信装置10により受信された反射波(受信データ)に基づいて、生体Hの生体データを取得するように構成されている。例えば、生体Hが呼吸をすると、それに応じて胸部が膨張収縮する。そのため、受信データには生体Hの呼吸に関する情報が含まれる。また、生体Hの心臓の拍動に応じて心臓が膨張収縮する。そのため、受信データには生体Hの拍動に関する情報も含まれる。
【0024】
生体データ取得装置20は、呼吸に関する情報及び拍動に関する情報の少なくとも一方を生体データとして取得する。生体データ取得装置20は、図1に示されるように、送受信装置10と離間して配置されていてもよい。生体データ取得装置20は、例えば、生体Hが存在する室内とは異なる場所に設けられてもよい。生体データ取得装置20に含まれる各要素を収容する筐体は、送受信装置10に含まれる各要素を収容する筐体と別体であってもよい。
【0025】
生体データ取得装置20は、図3に示されるように、通信機23と、制御部24と、バス25とを備える。通信機23は、上述したように、送受信装置10の通信機13と通信可能に構成されている。生体データ取得装置20は、通信機23が内蔵されたコンピュータ装置又はパーソナルコンピュータにより構成されていてもよい。
【0026】
制御部24は、バス25を介して、通信機23との間で信号の送受信を行い、これの動作を制御するように構成されている。制御部24は、例えば、プロセッサ26と、メモリ27(記憶部)と、ストレージ28と(記憶部)とを含む。
【0027】
プロセッサ26は、メモリ27、ストレージ28等のハードウェアに所定のソフトウェア(プログラム)を読み込むと所定の演算を行い、送受信装置10を介して取得した反射波の解析、通信機23による通信、メモリ27及びストレージ28におけるデータの読み出し又は書き込みを実行する。これにより、生体データ取得装置20における各機能が実現される。
【0028】
続いて、送受信装置10及び生体データ取得装置20における各機能について、図4図9を参照して説明する。送受信装置10の制御部14は、図4に示されるように、機能ブロックとして、送受信処理部31と、記憶部32とを含む。
【0029】
送受信処理部31は、発信機11、受信機12及び通信機13の間で信号を送受信する機能を有する。具体的には、送受信処理部31は、発信機11に指示信号を送信して、発信機11から無線電波を発信させる。送受信処理部31は、受信機12から反射波のデータ(反射波に応じた受信データ)を受信し、当該データを通信機23に出力する。送受信処理部31は、通信機13に指示信号を送信して、受信データを生体データ取得装置20に送信させる。
【0030】
記憶部32は、種々のデータを記憶する機能を有する。記憶部32が記憶するデータとしては、例えば、読み出したプログラム、発信機11の動作設定データ、受信機12が受信した反射波に関する受信データ等が挙げられる。
【0031】
生体データ取得装置20の制御部24は、図4に示されるように、機能ブロックとして、データ取得部41と、信号強度算出部42と、記憶部43と、データ補正部44(補正部)と、時間変動データ生成部45(第1の生成部)と、生体データ生成部46(第2の生成部)とを含む。
【0032】
データ取得部41は、通信機13及び通信機23を介して、反射波に応じた受信データを取得する機能を有する。データ取得部41は、取得した受信データを信号強度算出部42に出力する。
【0033】
信号強度算出部42は、データ取得部41から出力された受信データに基づいて、各レンジビンのそれぞれにおける信号強度を算出する機能を有する。換言すると、信号強度算出部42は、所定の時刻における、距離に対する信号強度の変化(レンジビン毎の信号強度の変化)を示す距離変動データを算出する。信号強度算出部42は、受信データに対して、生体Hが検知領域Rに存在しない場合の無線電波の反射に基づいた参照受信データを用いて差分処理を施した上で、距離変動データを算出してもよい。この差分処理は、例えば、人または動いている物体(動体)を検知したり、それらの距離や動線を検出したり、マルチパスによる影響を低減するために行われる。
【0034】
信号強度算出部42によって算出された信号強度は、記憶部43に出力される。以下では、サンプリング周期ごとに、時刻t1,t2,・・・,tN(Nは2以上の自然数)における距離変動データをそれぞれ、「第1の距離変動データ」、「第2の距離変動データ」、・・・、「第Nの距離変動データ」などと称し、第1~第Nの距離変動データのうち時刻tn(nは1~Nの自然数)における距離変動データを「第nの距離変動データ」と称する。信号強度算出部42は、無線電波が生体Hから反射された反射波に基づいて、互いに異なる時刻t1~tNにおける第1~第Nの距離変動データをそれぞれ時間順に算出してもよい。
【0035】
記憶部43は、種々のデータを記憶する機能を有する。記憶部43が記憶するデータとしては、例えば、読み出したプログラム、信号強度算出部42が算出した複数の距離変動データ、データ補正部44が補正した時系列データ(以下、「補正時系列データ」という。)、時間変動データ生成部45が生成した時間変動データ、生体データ生成部46が生成した生体データ(例えば、心拍間隔データ)、距離変動データの蓄積単位を示す設定値(以下、「設定時間」という。)等が挙げられる。設定時間は、メモリの容量に応じて予め定められてもよい。設定時間は、例えば、20秒~3分程度の範囲内で定められてもよいし、3分以上であってもよい。
【0036】
記憶部43は、設定時間において信号強度算出部42により算出された第1~第Nの距離変動データ(所定時間分の第1~第Nの距離変動データ)が時系列順に並べられた時系列データを記憶する。時系列データは、距離(レンジ)軸、時間軸、及び信号強度軸を含む3次元グラフにより示される。第nの距離変動データは、距離成分、時間成分、及び信号強度成分を含んでいる。図5(a)は、時系列データの一例を示す。図5(a)に示される時系列データは、60秒間において得られた距離変動データである。この時系列データは、被験者(生体H)が送受信装置10に正対した測定環境において、送受信装置10から約1.3mだけ離れた位置に静止した状態で測定を開始し、約30秒後から送受信装置10に向かって徐々に近づいていった場合のデータである。そのため、被験者の胸部及び心臓(検知部位)からの反射波の信号強度が、距離変動データにおけるピーク付近に現れており、当該ピークでの距離成分が徐々に小さくなっている。
【0037】
データ補正部44は、記憶部43に記憶されている時系列データを補正する機能を有する。データ補正部44は、例えば、第nの距離変動データにおける検知部位に対応する距離成分が基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を行ってもよい。基準値は、例えば、生体データの取得ごとに、任意に設定される値であってもよい。データ補正部44は、第1の距離変動データに含まれるピークでの距離成分の位置を基準値に設定してもよい。データ補正部44は、当該補正処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、補正された時系列データ(補正時系列データ)を得てもよい。データ補正部44は、補正処理として、例えば、第1~第Nの距離変動データを分割した複数のブロックそれぞれにおいて、生体Hの動きを近似(一次補正)し、検知部位に対応する距離成分を補正(二次補正)してもよい。そして、データ補正部44は、複数のブロック間での距離成分を補正(三次補正)してもよい。データ補正部44は、補正時系列データを時間変動データ生成部45に出力する。
【0038】
ここで、補正処理の例について具体的に説明する。この補正処理は、生体Hが動いていた場合であっても、検知部位からの反射に基づいた信号(信号強度の時間変動)を抽出するために行われる。まず、データ補正部44は、第1~第Nの距離変動データにおいてピーク(散乱点)をそれぞれ算出する。このときに算出する「ピーク」は、信号強度が所定値よりも大きく、且つ極大となる点であってもよい。
【0039】
ところで、マルチパス等の外乱の影響により、一つの距離変動データに複数のピークが算出される場合がある。この場合には、検知部位からの反射に基づくピーク以外のピークが時系列データには含まれうる。ここで、図6(a)に、外乱等に基づくピークを含む複数のピークpnが距離軸-時間軸の平面に白丸印(○印)でプロットされたグラフの一例を示す。以下では、図6(a)に例示される複数のピークpnを用いて、外乱等に由来するピークを含む距離変動データを補正するための補正処理を説明する。
【0040】
まず、データ補正部44は、時系列データが時間軸において所定の時間間隔(例えば数秒~数十秒間隔)で分割された複数のブロックごとに、複数のピークpnに対して近似線Cを描く(生成処理)。以下では、時系列データを時系列に沿って順に分割して得られる複数のブロックを、「第1のブロックB1」、「第2のブロックB2」、・・・、「第MのブロックBM」(Mは、2以上の自然数)とそれぞれ称する場合がある。第1~第MのブロックB1~BMのうち1つのブロックを「第mのブロックBm」(mは、1~Mの自然数)と称する場合がある。
【0041】
近似線Cは、1つのブロック内(所定の時間間隔)での生体Hの移動を推定した動線軌跡を意味する。近似線は、近似直線、あるいは二次又は多項近似を用いた多項近似曲線であってもよい。人の動作は、1秒以内であれば、ほぼ直線の動線軌跡となり、数秒程度であっても動線軌跡を二次曲線で近似することが可能である。
【0042】
図6(a)の例では、一つの距離変動データごとに近似線Cを中心として左右に2つずつ目盛が示されている。一つの目盛間隔は一つのレンジビンに対応している。すなわち、図6(a)の目盛は、近似線Cを中心として距離軸の正側及び負側にそれぞれ2つずつレンジビンを描いたものである。データ補正部44は、これら4つのレンジビンから外れた位置にあるピークを以降の処理において除外してもよい。レンジビンの設定数は、特に限定されない。例えば、近似線Cを中心として距離軸の正側及び負側にそれぞれ1つずつであってもよいし、x個(xは3以上の自然数)ずつであってもよい。あるいは、近似線Cを中心として距離軸の正側に設定されるレンジビンの数は、近似線Cを中心として距離軸の負側に設定されるレンジビンの数よりも少なくてもよいし、多くてもよいし、同一であってもよい。
【0043】
一般的に、近似線C付近のピークと胸部付近からの反射波とは一致することが多いが、生体Hが送受信装置10に対して斜め方向を向いていると、近似線C付近のピークと胸部付近からの反射波とが異なることもある。そのため、データ補正部44は、近似線Cを基準とした所定の範囲(以下、「散乱範囲」という。)において、検知部位からの反射点を検出してもよい。例えば、生体Hが人間であり、その横幅が40~50cm程度と仮定し、1GHzの無線電波が用いられる場合、図6(a)に例示されるように、散乱範囲は近似線Cから±2レンジビンに設定されてもよい。なお、この場合に、レンジビンの幅は15cm程度であってもよい。
【0044】
次に、データ補正部44は、図6(b)に示されるように、近似線Cが第1のブロックB1での基準値(ここでは、x=0の位置)と一致するように、ブロックB1内に含まれる距離変動データの距離成分を距離軸に沿って平行移動する(一次補正:ブロック補正処理)。ブロックB1での基準値は、任意に設定される値である。次に、データ補正部44は、散乱範囲において、レンジビンごとに信号強度の時間変動を算出して、当該時間変動が最大値を示すレンジビンを選択してもよい。データ補正部44は、例えば、同じレンジビン同士で、第nの距離変動データと第n+1の距離変動データとの間で信号強度の差分を求めることにより、レンジビンごとに信号強度の時間変動を算出してもよい。
【0045】
図7(a)は、レンジビンにおける信号強度の時間変動が最も大きい点を検知部位からの反射点ptとして検出した結果の一例を示す。図7(a)において、反射点ptは黒丸印(●印)で示されている。次に、データ補正部44は、図7(b)に示されるように、検出された反射点ptの距離成分が基準値と一致するように、ブロックB1内に含まれる距離変動データの距離成分を距離軸に沿って平行移動する(二次補正)。外乱等を含みうるピークpnではなく、レンジビンにおける信号強度の時間変動が最も大きい点を反射点ptとして検出しているので、図7(a)又は図7(b)に示されるように、時刻によって、ピークpnが反射点ptと一致する場合もあり、ピークpnが反射点ptと一致しない場合もある。以上の生成処理、一次補正及び二次補正が行われることで、マルチパス等の外乱に由来するピークが除去されうる。
【0046】
データ補正部44は、他のブロックについても上記と同様に、ブロックごとに同様の生成処理、一次補正及び二次補正を行う。以上のように、データ補正部44は、第mのブロックBmにおいて、第1~第Nの距離変動データのうち第mのブロックBmに含まれる複数の距離変動データにおける信号強度のピークpnでの距離成分に基づいて近似線Cを生成する生成処理と、ブロックBmについて定められる基準値に当該近似線Cが近づくように複数の距離変動データの距離成分を補正する処理(一次補正及び二次補正)とを行う。データ補正部44は、生成処理、一次補正及び二次補正を、第1~第Mのブロックそれぞれに対して行う。
【0047】
ブロックごとの生成処理、一次補正及び二次補正では、ブロックごとに任意に定められる基準値が用いられてもよい。例えば、ブロック内において最初の距離変動データにおけるピークの位置が、当該ブロックでの基準値に設定されてもよい。このため、複数のブロックそれぞれにて生成処理、一次補正及び二次補正を行った後では、複数のブロック間において基準値の位置が互いにずれている。そのため、データ補正部44は、複数のブロック間の基準値の位置が一致するように、それぞれのブロック内に含まれる距離変動データの距離成分を距離軸に沿って平行移動する(三次補正)。データ補正部44は、三次補正において、最初のブロックB1における基準値を全てのブロックの基準値として採用してもよい。
【0048】
以上のように、生成処理、一次補正、二次補正及び三次補正を経ることにより、図5(b)に示されるように、生体Hが基準値で静止しているような補正時系列データが得られる。なお、図6(a)等では、説明を簡単にするために基準値の位置をx=0としているが、図5(a)及び図5(b)に示される例では、最初のブロックでの基準値の位置が1.3m付近であり、1.3m付近にピーク及び検知部位からの反射点が揃えられている。
【0049】
時間変動データ生成部45は、第nの距離変動データにおける信号強度のうち生体Hの検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を行う機能を有する。時間変動データ生成部45は、例えば、所定時間分の第1~第Nの距離変動データに対して強度取得処理を行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成する。時間変動データ生成部45は、例えば、補正時系列データ内の基準値(一例として、第1のブロックB1についての基準値)において時系列に沿って並べられた信号強度の集合を、時間変動データとして得てもよい。時間変動データは、検知部位からの反射波に応じた信号強度の時間変動を示している。図8(a)に示される波形「s」は、時間変動データ生成部45により生成された時間変動データの一例を示す。データ補正部44による補正処理を経ることで、時間変動データでは、生体Hの動き(動作又は微体動)による影響が低減されている。時間変動データには、生体Hの検知部位における生体情報(呼吸及び拍動)が含まれている。
【0050】
生体データ生成部46は、生体Hの検知部位における生体データを生成する機能を有する。生体データ生成部46は、例えば、時間変動データに対して多重解像度解析を行うことにより、生体Hの検知部位における生体データを生成してもよい。生体データ生成部46は、時間変動データに対する多重解像度解析において、当該時間変動データを高周波成分(高解像度成分)と低周波成分(低解像度成分)とに分解するウェーブレット変換を繰り返す。多重解像度解析における解像度レベルは、例えば、5~10程度であってもよいし、7程度であってもよい。生体データ生成部46は、例えば、基底関数となるウェーブレット関数として、Haarウェーブレット、Daubechiesウェーブレット、Symletウェーブレット、又はCoifletウェーブレットを用いてウェーブレット変換を行ってもよい。
【0051】
ここで、時間変動データに対する多重解像度解析の例について具体的に説明する。図8(b)~図8(i)は、図8(a)に示される時間変動データを、多重解像度解析により分解した複数(ここでは8個)の波形(以下、「分解波形」という。)の一例を示す。生体データ生成部46は、まず、時間変動データに対して1回目のウェーブレット変換を行うことで、高周波成分と低周波成分とに分解する。この時に分解された高周波成分は、図8(i)に示される波形「d1」である。生体データ生成部46は、1回目のウェーブレット変換において分解された低周波成分に対して、2回目のウェーブレットを行う。この時に分解された高周波成分は、図8(h)に示される波形「d2」である。
【0052】
生体データ生成部46は、3回目以降のウェーブレット変換を同様に繰り返す。この例では、時間変動データに対して、7回のウェーブレット変換を行うことにより、当該時間変動データが8個のレベル(周波数帯)に分解されている。なお、図8(g)、図8(f)、図8(e)、図8(d)及び図8(c)に示される波形「d3」~「d7」はそれぞれ、3~7回目のウェーブレット変換により分解された高周波成分である。図8(b)に示される波形「a7」は、7回目のウェーブレット変換により分解された低周波成分である。
【0053】
生体データ生成部46は、複数の分解波形から拍動信号及び呼吸信号の少なくとも一方を抽出する。拍動信号は、時間変動データに含まれる生体Hの拍動に応じた成分である。呼吸信号は、時間変動データに含まれる生体Hの呼吸に応じた成分である。生体データ生成部46は、例えば、複数の分解波形のうち、呼吸に応じた周波数範囲(例えば、0.5Hz以下)を有する分解波形を、呼吸信号として抽出してもよい。生体データ生成部46は、複数の分解波形のうち、拍動に応じた周波数範囲(例えば0.8Hz~1.6Hz)を有する分解波形を、拍動信号として抽出してもよい。
【0054】
図8(b)~図8(i)に示される例では、生体データ生成部46は、図8(b)に示される波形「a7」を呼吸信号として抽出してもよい。生体データ生成部46は、図8(c)に示される波形「d7」を拍動信号として抽出してもよい。生体データ生成部46は、複数の分解波形(例えば、図8(c)及び図8(d)に示される2つの波形)の周波数範囲が、拍動(呼吸)に応じた周波数範囲に対応する場合には、当該複数の分解波形を再合成することで、再合成された波形を拍動信号(呼吸信号)として抽出してもよい。再合成する際には、生体データ生成部46は、当該複数の分解波形同士を加算することで、再合成された波形を生成してもよい。なお、生体データ生成部46は、多重解像度解析に代えて独立成分分析法または移動平均差分法を用いて、時間変動データから呼吸信号と拍動信号とを分離してもよい。
【0055】
生体データ生成部46は、複数の分解波形から拍動信号を抽出する際に、拍動とは異なる生体Hの動きに対応する信号(以下、「非拍動信号」という。)を除外してもよい。拍動とは異なる生体Hの動きは、例えば、生体H自身に由来する拍動以外の周期的な動作、及び外部要因に由来して生体Hに生ずる周期的な動作を含む。前者の一例は、生体Hの呼吸動作を含む。後者の一例は、生体Hが搭乗している乗物の運転に伴い乗物から生体Hに作用する振動を含む。生体データ生成部46は、拍動信号を抽出する際に、複数の分解波形のうちの非拍動信号を除外してもよい。生体データ生成部46は、非拍動信号が除外された後の残りの複数の分解波形を再合成することで得られる信号を、拍動信号として抽出してもよい。生体データ生成部46は、例えば、生体Hの呼吸動作に対応する図8(b)に示される波形「a7」を除外したうえで、波形「a7」が除外された後の残りの波形「d1」~「d7」を再合成することで得られる信号を、拍動信号として抽出してもよい。
【0056】
生体データ生成部46は、拍動信号に含まれる極大となる複数の点において互いに隣り合う点同士の時間間隔を算出していくことで、図9に示されるように、心拍間隔の時間変動(R-R間隔:RRI)を示す心拍間隔データを生体データとして生成してもよい。生体データ生成部46は、拍動信号から心拍間隔データを生成する際に、心拍間隔を高精度に算出するために、拍動信号に対してスペクトル解析を行ってもよい。生体データ生成部46は、例えば、自己回帰モデル(AR:autoregressive model)を用いたスペクトル解析を拍動信号に対して行ってもよい。ARモデルを用いたスペクトル解析では、生体データ生成部46は、バーグ法によりARモデルのパラメータ(係数)を求めてもよく、赤池情報量基準(AIC:Akaike's Information Criterion)によりARモデルの次数を決定してもよい。
【0057】
生体データ生成部46は、ARモデルを用いたスペクトル解析によりノイズ成分が除去された拍動信号から、心拍間隔データを算出してもよい。生体データ生成部46は、このように算出された心拍間隔データに基づいて、単位時間あたりの心拍の数(心拍数:heart rate,平均心拍:average heart rate)を生体データとして求めてよい。生体データ生成部46は、上記と同様に、単位時間(例えば1分間)あたりの呼吸の数(呼吸数:respiratory rate)を生体データとして求めてもよい。なお、生体データ生成部46は、ARモデルに代えて、最大エントロピー法(MEM:Maximum Entropy Method)又はメムカルク(MemCalc)解析システムを用いてスペクトル解析を行ってもよい。
【0058】
生体データ取得装置20は、生体データ生成部46により生成された生体データ(例えば、心拍間隔データ)を外部に出力する機能を有していてもよい。生体データ取得システム1は、例えば、報知機(不図示)を備えていてもよく、生体データ取得装置20は、当該報知機に生体データを出力してもよい。生体データ取得装置20は、送受信装置10及び生体データ取得装置20とは別の場所(建物)に設けられている報知機に通信機23を介してデータを送信してもよい。生体データ取得装置20は、取得した生体データを記憶部43に記憶してもよい。
【0059】
[生体データ取得方法]
続いて、図10を参照して、生体データ取得方法について説明する。なお、ここでは、生体データとして生体Hの拍動に関する情報(心拍間隔の時間変動)を取得する場合を例として説明する。
【0060】
まず、送受信装置10(制御部14)の送受信処理部31は、発信機11に指示して、発信機11から無線電波を検知領域Rに向けて発信させる。次に、送受信処理部31は、受信機12を介して無線電波の反射波に基づいた受信データを受信して、当該受信データを通信機13に出力する。そして、送受信処理部31は、通信機13に指示して、受信データを生体データ取得装置20の通信機23に送信させる。
【0061】
次に、生体データ取得装置20(制御部24)のデータ取得部41は、通信機23に送信された受信データを、時刻t1における受信データとして取得する。データ取得部41は、取得した時刻t1の受信データを信号強度算出部42に出力する。
【0062】
次に、信号強度算出部42は、時刻t1の受信データに基づいて、距離に対する信号強度の変動を示す第1の距離変動データを算出する(図10のステップS1)。信号強度算出部42は、受信データに対して、生体Hが検知領域Rに存在しない場合の無線電波の反射に基づいた参照受信データを用いて差分処理を施した上で、第1の距離変動データを算出してもよい。信号強度算出部42は、算出した第1の距離変動データを記憶部43に出力する。
【0063】
次に、記憶部43は、第1の距離変動データを記憶する(図10のステップS2)。そして、制御部24は、初期時刻から設定時間が経過したかどうかを判断する(図10のステップS3)。設定時間が経過していないと判断された場合(ステップS3:NO)、制御部24は、ステップS1~S3を繰り返す。これにより、設定時間において、第1~第Nの距離変動データが記憶部43に記憶される。
【0064】
設定時間が経過したと判断された場合(ステップS3:YES)、データ補正部44は、記憶部43に記憶されている時系列データ(第1~第Nの距離変動データ)を補正する(図10のステップS4)。データ補正部44は、例えば、第nの距離変動データにおける検知部位に対応する距離成分(検知部位からの反射点)が基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を行う。データ補正部44は、当該補正処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、補正された時系列データ(補正時系列データ)を生成する(図5(a)及び図5(b)参照)。データ補正部44は、図6(a)~図7(b)に示される例のように、一次補正、二次補正、及び三次補正を行うことで、補正時系列データを生成してもよい。データ補正部44は、補正時系列データを時間変動データ生成部45に出力する。
【0065】
次に、時間変動データ生成部45は、補正時系列データに基づいて、時間変動データを生成する(図10のステップS5)。時間変動データ生成部45は、例えば、第nの距離変動データにおける信号強度のうち生体Hの検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を行う。時間変動データ生成部45は、第1~第Nの距離変動データに対して強度取得処理を行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成する。時間変動データ生成部45は、補正時系列データにおいて、生体データの取得処理ごとに設定される基準値に沿って並べられた信号強度の集合を、時間変動データとして得てもよい(図5(b)及び図8(a)参照)。時間変動データ生成部45は、生成した時間変動データを生体データ生成部46に出力する。
【0066】
次に、生体データ生成部46は、時間変動データに対して多重解像度解析を行う(図10のステップS6)。生体データ生成部46は、時間変動データに対して、高周波成分と低周波成分とに分解するウェーブレット変換を繰り返すことで、互いに異なる周波数範囲を有する複数の分解波形(図8(b)~図8(i)参照)を生成する。
【0067】
次に、生体データ生成部46は、複数の分解波形から拍動成分を抽出する(図10のステップS7)。生体データ生成部46は、例えば、複数の分解波形のうち、拍動に応じた周波数範囲(例えば0.8Hz~1.6Hz)を有する分解波形を、拍動成分を示す拍動信号として抽出してもよい。生体データ生成部46は、複数の分解波形の周波数範囲が、拍動に応じた周波数範囲に対応する場合には、当該複数の分解波形を再合成することで、再合成された波形を拍動信号として抽出してもよい。
【0068】
次に、生体データ生成部46は、拍動信号に基づいて心拍間隔データを生成する(ステップS8)。生体データ生成部46は、例えば、拍動信号に含まれる極大となる複数の点において互いに隣り合う点同士の時間間隔を算出していくことで、心拍間隔データを生体データとして生成してもよい(図9参照)。生体データ生成部46は、拍動信号から心拍間隔データを生成する際に、心拍間隔を高精度に算出するために、拍動信号に対してスペクトル解析を行ってもよい。生体データ生成部46は、例えば、ARモデルを用いたスペクトル解析によりノイズ成分が除去された拍動信号から、心拍間隔データを算出してもよい。
【0069】
生体データ取得装置20は、生体データ生成部46により生成された心拍間隔データを外部(例えば外部の報知機)に出力してもよい。生体データ取得装置20は、生体データ生成部46により生成された心拍間隔データを記憶部43に記憶してもよい。生体データ取得装置20(制御部24)は、ステップS3において最初の設定時間終了後に、ステップS1~S3を繰り返すことで、設定時間ごとに時系列データ(第1~第Nの距離変動データ)を繰り返し取得してもよい。生体データ取得装置20は、設定時間ごとに行うステップS4~S8の一連の処理を繰り返すことで、設定時間ごとに心拍間隔データを算出してもよい。一の設定時間で行うステップS4~S8の一連の処理が、他の設定時間で行うステップS1~S3の処理と並行して行われてもよい。
【0070】
[作用]
以上の例によれば、設定時間において反射波から得られる一定数の第1~第Nの距離変動データが時系列データとして記憶部43に蓄積されている。そして、時系列データから、検知部位に対応する信号強度が時系列に沿って並べられた時間変動データが得られる。時間変動データに含まれる信号強度は、生体Hの検知部位に対応しているので、検知対象である生体Hが動いていても、検知部位に対応した信号強度に基づいて生体データが得られる。その結果、非接触にて生体データを精度良く検知することが可能となる。
【0071】
検知対象である生体Hが動作している条件下で動きを考慮せずに時間変動データを得る場合、ある基準時間における生体Hからの反射位置を特定し、当該位置を測定位置(基準値)として、測定位置における信号強度の時間変動を抽出することになる。この場合、生体Hの動作により測定位置において検知部位の情報が含まれていない期間があるので、動きによって生体情報を正確に検知し難い。これに対して、上記の例では、第nの距離変動データにおける検知部位に対応する距離成分(レンジビン)が基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、補正時系列データが得られる。そして、時間変動データ生成部45は、強度取得処理を実行する際に、補正時系列データから基準値における信号強度を対応強度として取得する。この場合、生体Hの動きが信号強度のピークでの距離成分の変動に現れ、当該ピーク付近での検知部位に対応する距離成分を基準値に近づけるように補正が行われることで、時系列データにおいて生体Hによる動きが補正される。そのため、生体Hの動きによる影響が低減された信号強度の時間変動データが得られ、当該時間変動データに基づいて生体データが取得される。その結果、生体Hが動いていたとしても、生体の生体データを精度良く検知することが可能となる。
【0072】
以上の例によれば、補正処理は、第1~第Nの距離変動データのうち所定時間内に含まれる第p~第q(p及びqはそれぞれ、1≦p<q≦Nを満たす自然数)の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が基準値に近づくように第p~第qの距離変動データの距離成分を補正することを含んでいる。生体Hの動線軌跡は、距離変動データに含まれるピークでの距離成分の近似線によって表すことができる。これにより、距離変動データにおいて、マルチパス等の外乱によるピークが含まれていても、当該ピークは近似線から離れているので除外することができる。そのため、生体データの高精度な検知をより確実に行うことが可能となる。
【0073】
以上の例によれば、補正処理は、時系列データを時系列に沿って順に分割することで得られる第1~第Mのブロックのうち第mのブロックBmにおいて、第1~第Nの距離変動データのうち第mのブロックに含まれる複数の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が、第1~第MのブロックB1~BMのそれぞれについて定められる任意の基準値に近づくように複数の距離変動データの距離成分を補正するブロック補正処理を、第1~第MのブロックB1~BMに対して行うことを含んでいる。この場合、ブロックごとに、生体Hの動線軌跡を表す近似線を算出するので、近似線を生体Hの動線軌跡により近づけることができる。そのため、生体データのより高精度な検知を行うことが可能となる。
【0074】
以上の例によれば、生体データ生成部46は、時間変動データに対して多重解像度解析を行うことで、生体Hの検知部位における生体データを生成するように構成されている。この場合、多重解像度解析により、時間変動データから生体データに対応する周波数範囲の波形が抽出される。そのため、時間変動データに生体データ以外の成分が含まれていても、生体データを取得することが可能となる。
【0075】
以上の例によれば、生体データ生成部46は、時間変動データに対して多重解像度解析を行うことで、時間変動データを複数の分解波形に分解し、複数の分解波形のうち生体Hの拍動に対応する拍動信号に基づいて生体Hの拍動に関する拍動データを生成するように構成されている。この場合、多重解像度解析により、時間変動データから拍動に対応する周波数範囲の波形が抽出される。そのため、時間変動データに生体Hの拍動以外の成分が含まれていても、拍動データを取得することが可能となる。
【0076】
以上の例によれば、生体データ生成部46は、ARモデルを用いて拍動信号をスペクトル解析することにより、生体Hの心拍間隔の時間変動を示す心拍間隔データを生成するように構成されている。この場合、拍動信号に対してARモデルを用いたスペクトル解析が行われることで、拍動信号に含まれるノイズが除去されるので、心拍間隔を精度良く算出することができる。
【0077】
以上の例によれば、受信機12は、生体の拍動に対応する周波数を基準として、反射波をオーバサンプリングしうる。すなわち、受信機12から出力された受信データに基づいて信号強度算出部42が算出する第1~第Nの距離変動データは、生体の拍動に対応する周波数を基準として、反射波をオーバサンプリングすることで得られたデータである。この場合、サンプリング周期が小さくなり、より多くのデータが得られるので、時間変動データから拍動信号を抽出することが容易である。
【0078】
以上の例によれば、生体データ生成部46は、複数の分解波形のうち、拍動とは異なる生体Hの動きに対応する信号を除外したうえで、心拍間隔データを生成するように構成されている。この場合、拍動とは異なる生体Hの動きによる情報が時間変動データから除外されるので、拍動データを精度良く検知することができる。
【0079】
以上の例によれば、反射波に応じた受信データを生体データ取得装置20に無線通信を用いて送信するように構成された通信機13が備えられる。無線電波の発信及び反射波の受信を行う送受信装置10に搭載可能な制御部(メモリ)の容量が小さい場合があるが、別体の生体データ取得装置20内でデータの蓄積と処理を行うことで、大容量のデータの取扱いができる。そのため、長時間にわたり生体データの検知を継続することが可能となる。
【0080】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0081】
(1)生体データ取得システム1において、送受信装置10(通信機13)と生体データ取得装置20(通信機23)との間は、有線で通信可能に接続されていてもよい。
【0082】
(2)生体データ取得装置20は、送受信装置10と同じ建物内に設けられてもよく、送受信装置10とは異なる建物に取り付けられていてもよい。当該異なる建物としては、例えば、生体Hと別居している家族の家、健康管理サービスを提供する施設、救急医療サービスを提供する施設(日本において消防署)、病院などが挙げられる。これらの場合、生体Hとは離れた場所にいても、生体Hの状態を知ることができる。そのため、生体Hが単身生活者の場合であっても、生体Hの状態を見守ることが可能となる。生体データ取得装置20は、取得した生体データから、生体Hの状態(異常の有無、健康状態)等を推定する機能を有していてもよい。
【0083】
(3)生体データ取得システム1ではなく、図11に示されるように、生体データ取得装置20が、発信機11及び受信機12を更に有していてもよい。換言すると、生体データを取得する装置(生体データ取得装置20)内に、無線電波の送受を行う発信機11及び受信機12が内蔵されていてもよい。図11に示される生体データ取得装置20は、制御部24Aと、発信機11と、受信機12とを有する点において、図3に示される生体データ取得装置20と相違する。制御部24Aは、発信機11及び受信機12を制御する機能を有しており、図12に示されるように、データ取得部41に代えて送受信処理部48を有する点において制御部24と相違する。送受信処理部48は、送受信処理部31と同様の機能を有していてもよい。図11に示される生体データ取得装置20を備える生体データ取得システム1では、無線電波の発信及び受信を行うための機能が、生体データ取得装置20とは別体の送受信装置10ではなく、生体データ取得装置20自体に設けられているので、システムを簡略化することが可能となる。
【0084】
(4)生体データ取得システム1において、発信機11及び受信機12が別々の装置として構成されてもよい。つまり、生体データ取得システム1は、送受信装置10に代えて、発信機11及び一の制御部を有する発信装置と、受信機12及び他の制御部を有する受信装置とを備えていてもよい。これらの発信装置、受信装置、及び生体データ取得装置20は、互いに無線又は有線により通信可能に接続されていてもよい。発信機11、受信機12及び送受信処理部48において、送信及び受信の双方に複数のアンテナ素子が配置されるMIMO(Multiple Input Multiple Output)レーダ技術が用いられてもよい。
【0085】
(5)生体データ取得装置20は、複数の生体Hについて、生体データ(心拍間隔データ)をそれぞれ取得してもよい。検知領域Rに複数の生体H(例えば二人の検知対象者)が存在する場合がある。例えば、一の検知対象者は送受信装置10から遠ざかり、他の検知対象者は送受信装置10に近づく場合を考えると、距離変動データから得られる複数のピークpn(散乱点)は、図13に示されるような2つの散乱点群Cl1,Cl2(信号強度と距離の情報)として示される。
【0086】
データ補正部44は、1つのブロック内に複数の散乱点群が存在すること(1つのブロック内に複数人が存在すること)を検知した場合に、それぞれの散乱点群をクラスタ化してもよい。データ補正部44は、クラスタ毎に一次補正、二次補正、及び三次補正を行って、クラスタ化された散乱点ごとに補正時系列データを一つずつ生成してもよい。時間変動データ生成部45は、クラスタ化された散乱点ごとに得られた補正時系列データから時間変動データをそれぞれ生成してもよい。生体データ生成部46は、クラスタ化された散乱点ごとに得られた時間変動データから生体データをそれぞれ生成してもよい。一の検知対象者に対する生体データの取得処理が完了した後に、他の検知対象者に対する生体データの取得処理が行われてもよい。
【0087】
図14図18を参照して、検知領域R内に一の生体H1と別の生体H2が存在する場合の生体データの取得処理の一例を説明する。検知領域R内に生体H1,H2が存在する場合、信号強度算出部42は、無線電波が生体H1及び生体H2において反射された反射波に基づいて、時刻t1~tNにおける第1~第Nの距離変動データをそれぞれ時間順に算出してもよい。無線電波が生体H1及び生体H2において反射された反射波は、生体H1のみから反射された反射波と、生体H2のみから反射された反射波とを含む。記憶部43は、生体H1及び生体H2において反射された反射波に基づいて得られる第1~第Nの距離変動データを含む時系列データを記憶してもよい。距離変動データの蓄積単位を示す設定時間が、上述した例に加えて、数秒~数十秒程度の範囲に設定されてもよい。設定時間の一例は、1秒~180秒程度であってもよく、3秒~120秒程度であってもよく、4秒~60秒程度であってもよい。設定時間の他の例は、1秒よりも短い時間(例えば、数ミリ秒から数百ミリ秒程度)であってもよい。
【0088】
図14に示される時系列データは、約4秒間において得られる複数の距離変動データを含んでいる。当該時系列データは、被験者である生体H1及び生体H2が送受信装置10に正対した測定環境において得られたデータである。より詳しくは、当該時系列データは、生体H1が送受信装置10から約1.9mだけ離れた位置に静止し、且つ生体H2が送受信装置10から約2.2mだけ離れた位置に静止した状態で測定が開始され、測定開始の約2秒後から、生体H1が送受信装置10に徐々に近づくと共に、生体H2が送受信装置10から徐々に遠ざかったときに取得されたデータである。
【0089】
データ補正部44は、記憶部43が記憶する時系列データ(所定時間分の第1~第Nの距離変動データ)に基づいて、生体H1について補正処理と、生体H2についての補正処理とをそれぞれ行ってもよい。データ補正部44は、検出された生体の数に応じて、複数のピークpn(散乱点)を公知の手法によりクラスタ化してもよい。データ補正部44は、例えば、レンジビンごとの信号強度の変化に基づいて、各生体(生体H1及び生体H2それぞれ)の動作を追跡することで、複数のピークpnを生体ごとにクラスタ化してもよい。
【0090】
データ補正部44は、例えば、第nの距離変動データにおける生体H1の検知部位に対応する距離成分が基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する上述の補正処理を行ってもよい。図15(a)は、生体H1についてクラスタ化された複数のピークpnに基づき補正処理が行われて得られた補正時系列データを示している。なお、図15(b)に示されるように、二次補正が行われることで、観測時間によっては、ピークpnと一致しない反射点ptが基準値(破線で示す位置)に揃えられる。
【0091】
時間変動データ生成部45は、第nの距離変動データにおける信号強度のうち生体H1の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を行ってもよい。時間変動データ生成部45は、第1~第Nの距離変動データに対して、生体H1についての強度取得処理を行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成してもよい。時間変動データ生成部45は、例えば、生体H1についての補正時系列データ内の基準値において時系列に沿って並べられた信号強度の集合を、時間変動データとして得てもよい。
【0092】
図16(a)は、図14に示される補正前の時系列データにおいて、基準値(例えば、距離が1.9m)での信号強度の時間変化を示している。図16(b)は、図15(a)に示される補正後の時系列データにおいて、基準値での信号強度の時間変化を示している。図16(a)に示す信号強度の時間変化では、測定開始の約2秒後から、生体H1の検知部位ではなく他の反射位置からの反射波の信号強度が得られている。図16(b)に示す信号強度の時間変化では、時系列データにおいて補正が行われているので、生体H1の検知部位からの反射波の信号強度が連続して得られている。
【0093】
データ補正部44は、生体H1についての補正処理とは別に、第nの距離変動データにおける生体H2の検知部位に対応する距離成分が別の基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を行ってもよい。図17は、生体H2についてクラスタ化された複数のピークpnに基づき補正処理が行われて得られた補正時系列データを示している。
【0094】
時間変動データ生成部45は、生体H1についての強度取得処理とは別に、第nの距離変動データにおける信号強度のうち生体H2の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を行ってもよい。時間変動データ生成部45は、第1~第Nの距離変動データに対して、生体H2についての強度取得処理を行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成してもよい。時間変動データ生成部45は、例えば、生体H2についての補正時系列データ内の基準値において時系列に沿って並べられた信号強度の集合を、時間変動データとして得てもよい。
【0095】
図18(a)は、図14に示される補正前の時系列データにおいて、基準値(例えば、距離が2.2m)での信号強度の時間変化を示している。図18(b)は、図17に示される補正後の時系列データにおいて、基準値での信号強度の時間変化を示している。図18(a)に示す信号強度の時間変化では、測定開始の約2秒後から、生体H2の検知部位ではなく他の反射位置からの反射波の信号強度が得られている。図18(b)に示す信号強度の時間変化では、時系列データにおいて補正が行われているので、生体H2の検知部位からの反射波の信号強度が連続して得られている。なお、生体H2は、送受信装置10から徐々に遠ざかっているので、後半部分において信号強度が全般的に低下している。
【0096】
生体データ生成部46は、生体H1についての時間変動データに基づいて、生体H1の検知部位における生体データを生成してもよい。生体データ生成部46は、例えば、生体H1についての時間変動データに対して多重解像度解析を行うことにより、生体H1の検知部位における生体データを生成してもよい。生体データ生成部46は、生体H2についての時間変動データに基づいて、生体H2の検知部位における生体データを生成してもよい。生体データ生成部46は、例えば、生体H2についての時間変動データに対して多重解像度解析を行うことにより、生体H2の検知部位における生体データを生成してもよい。
【0097】
以上の例の生体データ取得装置20によれば、検知領域Rに複数の生体が存在していても、生体ごとに生体データを監視することが可能となる。
【0098】
(6)検知対象の生体Hを人間としたときに、生体Hが同じ場所に留まって動作している場合(例えば、机での作業又は自動車運転時等)がある。この場合、データ取得部41により取得される時系列データは、図6(b)に示される状態に近くなる。このような場合、データ補正部44は、ブロックごとの近似線の算出(一次補正)を行うことなく、二次補正及び三次補正を行ってもよい。動きが限定的な場合において、データ補正部44は、散乱範囲に含まれるレンジビンの数を増加してもよい。
【0099】
(7)生体データ生成部46は、上述した多重解像度解析に代えて、時間変動データに対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)又はウェーブレット変換を行うことにより、平均呼吸数及び平均心拍数の少なくとも一方を生体データとして算出(生成)してもよい。拍動信号は呼吸信号に比べて微弱だが、例えば、観測時間を数分程度と長く設定することで、動いている生体Hの平均呼吸数及び心拍数(呼吸スペクトル及び拍動スペクトル)を推定することが可能となる。
【0100】
(8)データ補正部44は、二次補正を行った後に、ブロックごとに、第nの距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分と当該ブロックでの基準値との間の偏差に基づく誤差を算出してもよい。データ補正部44は、算出した誤差が所定の閾値よりも小さいかどうかを判断してもよい。データ補正部44は、当該誤差が所定の閾値よりも小さくなるまで、生成処理、一次補正及び二次補正を繰り返し行ってもよい。データ補正部44は、例えば、上記誤差として、第1~第Nの距離変動データそれぞれにおけるピークでの距離成分と、基準値との間の平均平方二乗誤差(Root Mean Square Error)を算出してもよい。データ補正部44は、ブロックごとの上記誤差が所定の閾値よりも小さくなった場合に、三次補正を行ってもよい。基準値は、例えば、生体Hの現実の位置であってもよい。
【0101】
(9)データ補正部44は、誤差の算出を行うことなく生成処理、一次補正及び二次補正を行い、三次補正を行った後に、一つのブロック(例えば、第1のブロックB1)の基準値を基準として、上記と同様に誤差を算出してもよい。図19に示される生体データ取得方法は、ステップS41が更に実行される点において、図10に示される取得方法と相違する。データ補正部44は、ステップS4の時系列データの補正を行った後に、上記誤差が閾値εよりも小さいかどうかを判断する(ステップS41)。ステップS41において、上記誤差が閾値ε以上であると判断された場合(ステップS41:NO)、データ補正部44は、ステップS4の補正処理を再度実行する。ステップS41において、上記誤差が閾値εよりも小さいと判断された場合(ステップS41:YES)、制御部24は、ステップS5~S8の一連の処理を実行する。
【0102】
(10)生体データ取得システム1は乗物に設けられていてもよい。生体データ取得システム1は、乗物内に設定された検知領域Rに存在する生体Hを検知対象として生体データを取得してもよい。乗物の一例は、自動車、自動二輪車(オートバイ)、鉄道車両、船、飛行機、及びヘリコプターを含む。乗物内の検知対象は、例えば、当該乗物の操縦者(運転者)及び同乗者を含む。図20には、生体データ取得システム1が設けられた乗物60が例示されている。
【0103】
図20に示されるように、生体データ取得システム1は、乗物60の車室内に設けられてもよい。例えば、生体データ取得システム1の送受信装置10は、検知領域Rが乗物60の運転席を含むように配置されてもよい。一例として、送受信装置10は、図20に示されるように、フロントガラス51に設けられてもよい。送受信装置10は、フロントガラス51に代えて、ダッシュボート52、ハンドル部材53、ルームミラー54、及びルーフパネル55のうちのいずれかの箇所に設けられてもよい。あるいは、送受信装置10は、運転席に近い側のピラー56(フロントガラス51の横に位置するAピラー)に設けられてもよい。生体データ取得システム1の生体データ取得装置20も、乗物60内に配置されてもよい。発信機11及び受信機12を有する生体データ取得装置20(図11参照)が、上記のいずれかの箇所に配置されてもよい。
【0104】
生体データ取得システム1が、乗物60に設けられた場合でも、生体データ取得装置20において、図10又は図19に示されるデータ取得方法の一連の処理が実行されてもよい。この場合、ステップS1~S3が繰り返し実行されて得られる第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、無線電波が乗物60内の生体Hにおいて反射された反射波に基づくデータである。乗物60内の生体Hからの反射波に基づく時系列データに対して、ステップS4,S5の処理が施されることで時間変動データが生成されてもよい。
【0105】
生体データ生成部46は、時間変動データに対して、上述の例(7回のウェーブレット変換)とは異なり8回のウェーブレット変換を行うことにより、複数の分解波形を生成してもよい。生体データ生成部46は、例えば、拍動信号を抽出する際に、呼吸信号に加えて、乗物60に由来して生体Hに加わる振動に対応する非拍動信号を除外してもよい。生体データ生成部46は、乗物60に由来する振動の固有周波数が含まれる周波数範囲を有する分解波形を除外してもよい。生体データ生成部46は、呼吸信号及び乗物60に由来する非拍動信号を除外した後の残りの複数の分解波形を再合成することで、生体Hの拍動に応じた拍動信号を抽出してもよい。生体データ生成部46は、当該拍動信号に対して、上述と同様に、ARモデルを用いたスペクトル解析を行うことで、生体データ(例えば、心拍間隔データ)を生成してもよい。
【0106】
図21には、乗物60内の生体Hから取得された心拍間隔データの一例が示されている。図21に示される心拍間隔データは、道路上を走行させている乗物60(自動車)内の運転者の心拍変動(Hz)を測定した結果であり、図21には2回の測定を行った結果が示されている。なお、心拍変動(Hz)は、運転者の心拍間隔(s)の逆数に対応する。図21において、「測定値1」は、7回のウェーブレット変換を行い、呼吸信号を除いて得られた1回目の測定値であり、「測定値2」は、8回のウェーブレット変換を行い、呼吸信号と乗物60に由来する非拍動信号とを除外して得られた2回目の測定値である。「参照値1」及び「参照値2」は、それぞれ測定値1及び測定値2に対応しており、比較のために接触式のセンサで得られた計測値である。参照値1及び参照値2は、測定値1及び測定値2をそれぞれ取得する際に、運転者の指先にPPG(光学式心拍センサ)を取り付けて計測されている。なお、送受信装置10が運転席に近い側のピラー56に取り付けられて、生体データの測定が行われている。
【0107】
図21に示される測定結果から、乗物60内においても、図9に示される結果と同様に、生体Hの心拍間隔データが取得されることがわかる。また、測定値1と参照値1とを比較した場合の両者の相関は0.95以下であり、測定値2と参照値2とを比較した場合の両者の相関は0.96~0.97であった。このことから、生体Hに接触させて計測した参照値を真値とした場合に、測定値1に比べて測定値2に含まれる誤差が小さいことがわかる。すなわち、乗物60に由来する非拍動信号を除外することで、乗物60内の生体Hの生体データがより精度良く検出されている。
【0108】
以上の例の生体データ取得装置20を有する乗物60によれば、乗物60内の1又は複数の生体に関する生体データを監視することが可能となる。生体データ生成部46が、乗物60に由来する非拍動信号を除外したうえで、拍動データを生成するので、乗物60に由来する情報が時系列データに含まれていても、拍動データを精度良く検知することができる。なお、上述の補正処理が行われることで、運転者の運転時における動作(例えば、左右方向の確認動作、又は各種の操作に伴う動作)があっても、精度良く生体データを検知できる。
【0109】
例1.本開示の一つの例に係る生体データ取得装置は、第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された記憶部(43)であって、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻(時刻t1~tN)において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体(H)において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、記憶部(43)と、第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データにおける信号強度のうち生体(H)の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成するように構成された第1の生成部(45)と、時間変動データに基づいて、生体(H)の検知部位における生体データを生成するように構成された第2の生成部(46)とを備える。この場合、所定期間において反射波から得られる一定数の距離変動データが時系列データとして記憶部に蓄積されている。そして、時系列データから、検知部位に対応する信号強度が時系列に沿って並べられた時間変動データが得られる。時間変動データに含まれる信号強度は、生体の検知部位に対応しているので、検知対象である生体が動いていても、検知部位に対応した信号強度に基づいて生体データが得られる。その結果、非接触にて生体データを精度良く検知することが可能となる。
【0110】
例2.例1の生体データ取得装置において、第nの距離変動データにおける検知部位に対応する距離成分が基準値に近づくように第nの距離変動データの距離成分を補正する補正処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、補正時系列データを得るように構成された補正部(44)を更に備えてもよい。第1の生成部(45)は、強度取得処理を実行する際に、補正時系列データから基準値における信号強度を対応強度として取得してもよい。この場合、検知部位に対応する距離成分を基準値に近づけるように補正が行われることで、時系列データにおいて生体Hによる動きが補正される。そのため、生体の動きによる影響が低減された信号強度の時間変動データが得られ、当該時間変動データに基づいて生体データが取得される。その結果、生体Hが動いていたとしても、生体の生体データを精度良く検知することが可能となる。
【0111】
例3.例2の生体データ取得装置において、補正処理は、第1~第Nの距離変動データのうち所定時間内に含まれる第p~第q(p及びqはそれぞれ、1≦p<q≦Nを満たす自然数)の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が任意の基準値に近づくように第p~第qの距離変動データの距離成分を補正することを含んでいてもよい。生体の動線軌跡は、距離変動データにおけるピークでの距離成分の近似線により表すことができる。これにより、距離変動データにおいて、マルチパス等の外乱によるピークが含まれていても、当該ピークは近似線から離れているので除外することができる。そのため、生体データの高精度な検知をより確実に行うことが可能となる。
【0112】
例4.例2の生体データ取得装置において、補正処理は、時系列データを時系列に沿って順に分割することで得られる第1~第Mのブロックのうち第mのブロックにおいて、第1~第Nの距離変動データのうち第mのブロックに含まれる複数の距離変動データにおける信号強度のピークでの距離成分に基づいて得られる近似線が、第1~第Mのブロックのそれぞれについて定められる任意の基準値に近づくように複数の距離変動データの距離成分を補正するブロック補正処理を、第1~第Mのブロックに対して行うことを含んでいてもよい。この場合、ブロックごとに、生体Hの動線軌跡を表す近似線を算出するので、近似線を生体Hの動線軌跡により近づけることができる。そのため、生体データのより高精度な検知を行うことが可能となる。
【0113】
例5.例1~例4のいずれかの生体データ取得装置において、第2の生成部(46)は、時間変動データに対して多重解像度解析を行うことにより、生体(H)の検知部位における生体データを生成するように構成されていてもよい。この場合、多重解像度解析により、時間変動データから生体データに対応する周波数範囲の波形が抽出される。そのため、時間変動データに生体データ以外の成分が含まれていても、生体データを取得することが可能となる。
【0114】
例6.例5の生体データ取得装置において、第1の生成部(45)は、時間変動データに対して多重解像度解析を行うことで、時間変動データを複数の分解波形に分解し、複数の分解波形のうち生体(H)の拍動に対応する拍動信号に基づいて生体(H)の拍動に関する拍動データを生成するように構成されていてもよい。この場合、多重解像度解析により、時間変動データから拍動に対応する周波数範囲の波形が抽出される。そのため、時間変動データに生体の拍動以外の成分が含まれていても、拍動データを取得することが可能となる。
【0115】
例7.例6の生体データ取得装置において、ARモデルを用いて拍動信号をスペクトル解析することにより、生体(H)の心拍間隔の時間変動を示す心拍間隔データを生成するように構成されていてもよい。この場合、拍動信号に対してARモデルを用いたスペクトル解析が行われることで、拍動信号に含まれるノイズが除去されるので、心拍間隔を精度良く算出することができる。
【0116】
例8.例6又は例7の生体データ取得装置において、第1~第Nの距離変動データは、生体の拍動に対応する周波数を基準として、反射波をオーバサンプリングすることで得られたデータであってもよい。この場合、サンプリング周期が小さくなり、より多くのデータが得られるので、時間変動データから拍動信号を抽出することが容易である。
【0117】
例9.例6~8のいずれかの生体データ取得装置において、第2の生成部(46)は、複数の分解波形のうち、拍動とは異なる生体(H)の動きに対応する信号を除外したうえで、拍動データを生成するように構成されていてもよい。この場合、拍動とは異なる生体の動きによる情報が時間変動データから除外されるので、拍動データを精度良く検知することができる。
【0118】
例10.例1~例9の生体データ取得装置において、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、無線電波が生体(H1)及び別の生体(H2)において反射された反射波に基づいて得られるデータである。第1の生成部(45)は、第nの距離変動データにおける信号強度のうち生体(H1)の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成するように構成されており、且つ、第nの距離変動データにおける信号強度のうち別の生体(H2)の検知部位に対応する別の対応強度を取得する強度取得処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、別の対応強度が時系列に沿って並べられた別の時間変動データを生成するように構成されていてもよい。第2の生成部(46)は、時間変動データに基づいて、生体(H1)の検知部位における生体データを生成するように構成されており、且つ、別の時間変動データに基づいて、別の生体(H2)の検知部位における生体データを生成するように構成されていてもよい。この場合、検知領域に複数の生体が存在していても、生体ごとに生体データを監視することが可能となる。
【0119】
例11.例1~例10のいずれかの生体データ取得装置は、無線電波を発信するように構成された発信部(11)と、反射波を受信するように構成された受信部(12)とを更に備えていてもよい。この場合、無線電波の発信及び受信を行うための機能が、生体データ取得装置とは別体の装置ではなく、生体データ取得装置自体に設けられているので、システムを簡略化することが可能となる。
【0120】
例12.本開示の一つの例に係る生体データ取得システムは、例1~例7のいずれかの装置(20)と、無線電波を発信するように構成された発信部(11)と、反射波を受信するように構成された受信部(12)とを備える。この場合、例1と同様の作用効果を奏する。
【0121】
例13.例12の生体データ取得システムは、反射波に応じた受信データを生体データ取得装置(20)に無線通信を用いて送信するように構成された通信部(13)を更に備えていてもよい。無線電波の発信又は反射波の受信の少なくとも一方を行う装置に搭載可能な制御部(メモリ)の容量が小さい場合があるが、別体の生体データ取得装置内でデータの蓄積と処理を行うことで、大容量のデータの取扱いができる。そのため、長時間にわたり生体データの検知を継続することが可能となる。
【0122】
例14.本開示の一つの例に係る乗物は、生体データ取得装置(20)を備える乗物(60)である。生体データ取得装置(20)は、第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを記憶するように構成された記憶部(43)であって、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻(時刻t1~tN)において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体(H)において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、記憶部(43)と、第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データにおける信号強度のうち生体(H)の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成するように構成された第1の生成部(45)と、時間変動データに基づいて、生体(H)の検知部位における生体データを生成するように構成された第2の生成部(46)とを有する。この場合、例1と同様の作用効果を奏する。
【0123】
例15.例14の乗物において、第2の生成部(46)は、時間変動データに対して多重解像度解析を行うことで、時間変動データを複数の分解波形に分解し、且つ、複数の分解波形のうち乗物(60)に由来する生体(H)の信号に対応する信号を除外したうえで、複数の分解波形のうち生体(H)の拍動に対応する拍動信号に基づいて生体(H)の拍動に関する拍動データを生成するように構成されていてもよい。この場合、乗物に由来する生体の動きに関する情報が時系列データに含まれていても、拍動データを精度良く検知することができる。
【0124】
例16.本開示の一つの例に係る生体データ取得方法は、第1~第N(Nは2以上の自然数)の距離変動データが時系列順に並べられた時系列データを生成することであって、第1~第Nの距離変動データはそれぞれ、互いに異なる時刻において、広帯域又は超広帯域の無線電波が生体において反射された反射波に基づいて得られる、距離に対する信号強度の変化を示すデータである、時系列データを生成することと、第1~第Nの距離変動データのうち第n(nは1~Nの自然数)の距離変動データにおける信号強度のうち生体(H)の所定の検知部位に対応する対応強度を取得する強度取得処理を第1~第Nの距離変動データに対して行うことにより、対応強度が時系列に沿って並べられた時間変動データを生成することと、時間変動データに基づいて、生体(H)の検知部位における生体データを生成することとを含む。この場合、例1と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0125】
1…生体データ取得システム、10…送受信装置、11…発信機、12…受信機、13…通信機、20…生体データ取得装置、24…制御部、43…記憶部、44…データ補正部、45…時間変動データ生成部、46…生体データ生成部、60…乗物。
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