(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】積層造形における造形品質評価方法、積層造形システム、情報処理装置およびそのプログラム
(51)【国際特許分類】
B22F 10/38 20210101AFI20240329BHJP
B22F 10/80 20210101ALI20240329BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240329BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240329BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240329BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240329BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240329BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20240329BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240329BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240329BHJP
B22F 10/85 20210101ALI20240329BHJP
【FI】
B22F10/38
B22F10/80
B22F10/28
B33Y50/00
B33Y50/02
B33Y30/00
B29C64/153
B29C64/386
B29C64/393
B33Y10/00
B22F10/85
(21)【出願番号】P 2022524340
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2021016154
(87)【国際公開番号】W WO2021235159
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/020406
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「積層造形部品開発の効率化のための基盤技術開発事業」
(73)【特許権者】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】家田 牧子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千佳
(72)【発明者】
【氏名】池庄司 敏孝
(72)【発明者】
【氏名】京極 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】竹下 孝樹
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149132(JP,A)
【文献】特開2018-193586(JP,A)
【文献】特開2018-003147(JP,A)
【文献】特開2020-055149(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030839(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/366
B22F 10/38
B29C 64/153
B29C 64/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形における造形品質評価方法であって、
造形表面の3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、
前記3次元点群データ
の自己相関関数に基づく凹凸の最小周期を示す最小自己相関長さSal(autocorrelation length)、前記3次元点群データの平均谷領域面積Sda(mean dale area)、前記3次元点群データの平均山領域面積Sha(mean hill area)、前記3次元点群データの平均谷領域容積Sdv(mean dale volume)、前記3次元点群データの谷部とコア部を分離する負荷面積率Smr2(material ratio)、造形密度との負の相関が得られる界面の展開面積比Sdr(development interfacial area ratio)、表面性状のアスペクト比Str(texture aspect ratio)、突出谷部深さ(Svk(μm))、コア部のレベル差(Sk(μm))、二乗平均平方根高さ(Sq(μm))、二乗平均平方根勾配(Sdq)、切断レベル差(Sxp(μm))、コア部空間体積(Vvc(mm3/mm2))、突出谷部空間体積(Vvv(mm3/mm2))、実体体積(Vm(mm3/mm2))、突出山部実体体積(Vmp(mm3/mm2))、及び空間体積(Vv(mm3/mm2))の少なくともいずれか1つを含む、内部欠陥と相関の高い3次元表面性状パラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
前記3次元表面性状パラメータから
造形密度を予測し、前記造形密度に基づいて造形品質を評価する評価ステップと、
を含む造形品質評価方法。
【請求項2】
前記造形密度は、前記3次元表面性状パラメータと前記造形密度とのあらかじめ記憶された相関関係に基づいて予測される請求項1に記載の造形品質評価方法。
【請求項3】
前記評価ステップにおいては、少なくとも2つの前記3次元表面性状パラメータを組み合わせて造形品質を評価する請求項1または2に記載の造形品質評価方法。
【請求項4】
前記パラメータ算出ステップにおいては、前記造形表面中の造形範囲内における前記3次元表面性状パラメータを算出する請求項1から3のいずれか1項に記載の造形品質評価方法。
【請求項5】
前記パラメータ算出ステップにおいては、前記造形範囲内にあって、前記造形表面に垂直な軸方向の値の差が第1閾値を超える範囲内における前記3次元表面性状パラメータを算出する請求項4に記載の造形品質評価方法。
【請求項6】
前記データ取得ステップにおいては、材料粉末を敷き詰めたパウダーベッド表面の3次元点群データをさらに取得し、
前記パラメータ算出ステップにおいては、前記造形範囲内にあって、前記パウダーベッド表面に垂直な軸方向の値の差が第2閾値を超える範囲内における前記3次元表面性状パラメータを算出する請求項4に記載の造形品質評価方法。
【請求項7】
造形後の造形範囲の沈み込み量を算出する沈み込み量算出ステップをさらに含み、
前記評価ステップでは、さらに、前記沈み込み量に基づいて、造形品質を評価する請求項1から6のいずれか1項に記載の造形品質評価方法。
【請求項8】
造形表面の3次元点群データを取得するデータ取得部と、
前記3次元点群データ
の自己相関関数に基づく凹凸の最小周期を示す最小自己相関長さSal(autocorrelation length)、前記3次元点群データの平均谷領域面積Sda(mean dale area)、前記3次元点群データの平均山領域面積Sha(mean hill area)、前記3次元点群データの平均谷領域容積Sdv(mean dale volume)、前記3次元点群データの谷部とコア部を分離する負荷面積率Smr2(material ratio)、造形密度との負の相関が得られる界面の展開面積比Sdr(development interfacial area ratio)、表面性状のアスペクト比Str(texture aspect ratio)、突出谷部深さ(Svk(μm))、コア部のレベル差(Sk(μm))、二乗平均平方根高さ(Sq(μm))、二乗平均平方根勾配(Sdq)、切断レベル差(Sxp(μm))、コア部空間体積(Vvc(mm3/mm2))、突出谷部空間体積(Vvv(mm3/mm2))、実体体積(Vm(mm3/mm2))、突出山部実体体積(Vmp(mm3/mm2))、及び空間体積(Vv(mm3/mm2))の少なくともいずれか1つを含む、内部欠陥と相関の高い3次元表面性状パラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記3次元表面性状パラメータから
造形密度を予測し、前記造形密度に基づいて造形品質を評価する評価部と、
を備える情報処理装置。
【請求項9】
前記評価部の評価結果に応じて、レーザ出力および走査速度の少なくともいずれかに対する調整を指示するレーザ調整部をさらに備える請求項
8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記レーザ調整部は、1層の積層造形ごとに、前記調整を指示する請求項
9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記評価部は、少なくとも2つの前記3次元表面性状パラメータを組み合わせて造形品質を評価する請求項
8から
10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記パラメータ算出部は、さらに、造形可能領域全面の各点における表面の最大山高さSp(Maximum peak height)および最大高さSz(Maximum height)の少なくとも1つを算出し、
前記最大山高さSpが第3閾値を超えた場合、または、前記最大高さSzが第4閾値を超えた場合には、造形中止を指示する造形制御指示部をさらに備える請求項
8から
11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
造形表面の3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、
前記3次元点群データ
の自己相関関数に基づく凹凸の最小周期を示す最小自己相関長さSal(autocorrelation length)、前記3次元点群データの平均谷領域面積Sda(mean dale area)、前記3次元点群データの平均山領域面積Sha(mean hill area)、前記3次元点群データの平均谷領域容積Sdv(mean dale volume)、前記3次元点群データの谷部とコア部を分離する負荷面積率Smr2(material ratio)、造形密度との負の相関が得られる界面の展開面積比Sdr(development interfacial area ratio)、表面性状のアスペクト比Str(texture aspect ratio)、突出谷部深さ(Svk(μm))、コア部のレベル差(Sk(μm))、二乗平均平方根高さ(Sq(μm))、二乗平均平方根勾配(Sdq)、切断レベル差(Sxp(μm))、コア部空間体積(Vvc(mm3/mm2))、突出谷部空間体積(Vvv(mm3/mm2))、実体体積(Vm(mm3/mm2))、突出山部実体体積(Vmp(mm3/mm2))、及び空間体積(Vv(mm3/mm2))の少なくともいずれか1つを含む、内部欠陥と相関の高い3次元表面性状パラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
前記3次元表面性状パラメータから
造形密度を予測し、前記造形密度に基づいて造形品質を評価する評価ステップと、
をコンピュータに実行させる情報処理プログラム。
【請求項14】
材料粉末を敷き詰めてレーザの照射を繰り返して造形物を作成する積層造形装置と、
前記積層造形装置における前記造形物の作成を制御する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
造形表面の3次元点群データを取得するデータ取得部と、
前記3次元点群データ
の自己相関関数に基づく凹凸の最小周期を示す最小自己相関長さSal(autocorrelation length)、前記3次元点群データの平均谷領域面積Sda(mean dale area)、前記3次元点群データの平均山領域面積Sha(mean hill area)、前記3次元点群データの平均谷領域容積Sdv(mean dale volume)、前記3次元点群データの谷部とコア部を分離する負荷面積率Smr2(material ratio)、造形密度との負の相関が得られる界面の展開面積比Sdr(development interfacial area ratio)、表面性状のアスペクト比Str(texture aspect ratio)、突出谷部深さ(Svk(μm))、コア部のレベル差(Sk(μm))、二乗平均平方根高さ(Sq(μm))、二乗平均平方根勾配(Sdq)、切断レベル差(Sxp(μm))、コア部空間体積(Vvc(mm3/mm2))、突出谷部空間体積(Vvv(mm3/mm2))、実体体積(Vm(mm3/mm2))、突出山部実体体積(Vmp(mm3/mm2))、及び空間体積(Vv(mm3/mm2))の少なくともいずれか1つを含む、内部欠陥と相関の高い3次元表面性状パラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記3次元表面性状パラメータから
造形密度を予測し、前記造形密度に基づいて造形品質を評価する評価部と、
前記評価部の評価結果に応じて、前記レーザ出力および走査速度の少なくともいずれかに対する調整を指示するレーザ調整部と、
を備える積層造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形における造形品質評価方法、積層造形システム、情報処理装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、3次元積層造形装置においてカメラで造形表面を撮像して、その算術平均高さRaを所定範囲内に調整するようにレーザビームの照射出力値を制御する技術が開示されている。また、非特許文献1には、アルミニウム合金(AlSi10Mg_200C)による積層造形における表面粗さを算術平均高さRaにより評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Mohsen Mohammadi, Hamed Asgari, "Achieving low surface rough-ness AlSi10Mg_200C parts using direct metal laser sintering", Additive Manufacturing 20(2018), 23-32
【文献】ISO 25178-2:2012, "Geometrical product specifications (GPS) - Surface texture: Areal - Part 2: Terms, definitions and surface texture parameters", 2012-04
【文献】JIS B 0681-2:2018 製品の黄か特性仕様(GPS)-表面性状:三次元-第2部:用語,定義および表面性状パラメータ
【文献】David N. Reshef et al., "Detecting Novel Associations in Large Data Sets", American Association for the Advancement of Science, 2011, 1518-1524
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、2次元の算術平均高さRaによる造形精度を評価するのみである。そして、3次元の算術平均高さSaによっても積層造形物の品質として重要な造形密度との相関関係が十分に高いとは言えず、造形品質を効率的に高めることができなかった。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る造形品質評価方法は、
積層造形における造形品質評価方法であって、
造形表面の3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、
前記3次元点群データの自己相関関数に基づく凹凸の最小周期を示す最小自己相関長さSal(autocorrelation length)、前記3次元点群データの平均谷領域面積Sda(mean dale area)、前記3次元点群データの平均山領域面積Sha(mean hill area)、前記3次元点群データの平均谷領域容積Sdv(mean dale volume)、前記3次元点群データの谷部とコア部を分離する負荷面積率Smr2(material ratio)、造形密度との負の相関が得られる界面の展開面積比Sdr(development interfacial area ratio)、表面性状のアスペクト比Str(texture aspect ratio)、突出谷部深さ(Svk(μm))、コア部のレベル差(Sk(μm))、二乗平均平方根高さ(Sq(μm))、二乗平均平方根勾配(Sdq)、切断レベル差(Sxp(μm))、コア部空間体積(Vvc(mm3/mm2))、突出谷部空間体積(Vvv(mm3/mm2))、実体体積(Vm(mm3/mm2))、突出山部実体体積(Vmp(mm3/mm2))、及び空間体積(Vv(mm3/mm2))の少なくともいずれか1つを含む、内部欠陥と相関の高い3次元表面性状パラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
前記3次元表面性状パラメータから造形密度を予測し、前記造形密度に基づいて造形品質を評価する評価ステップと、
を含む。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る情報処理装置は、
造形表面の3次元点群データを取得するデータ取得部と、
前記3次元点群データの自己相関関数に基づく凹凸の最小周期を示す最小自己相関長さSal(autocorrelation length)、前記3次元点群データの平均谷領域面積Sda(mean dale area)、前記3次元点群データの平均山領域面積Sha(mean hill area)、前記3次元点群データの平均谷領域容積Sdv(mean dale volume)、前記3次元点群データの谷部とコア部を分離する負荷面積率Smr2(material ratio)、造形密度との負の相関が得られる界面の展開面積比Sdr(development interfacial area ratio)、表面性状のアスペクト比Str(texture aspect ratio)、突出谷部深さ(Svk(μm))、コア部のレベル差(Sk(μm))、二乗平均平方根高さ(Sq(μm))、二乗平均平方根勾配(Sdq)、切断レベル差(Sxp(μm))、コア部空間体積(Vvc(mm3/mm2))、突出谷部空間体積(Vvv(mm3/mm2))、実体体積(Vm(mm3/mm2))、突出山部実体体積(Vmp(mm3/mm2))、及び空間体積(Vv(mm3/mm2))の少なくともいずれか1つを含む、内部欠陥と相関の高い3次元表面性状パラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記3次元表面性状パラメータから造形密度を予測し、前記造形密度に基づいて造形品質を評価する評価部と、
を備える。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る情報処理プログラムは、
造形表面の3次元点群データを取得するデータ取得ステップと、
前記3次元点群データの自己相関関数に基づく凹凸の最小周期を示す最小自己相関長さSal(autocorrelation length)、前記3次元点群データの平均谷領域面積Sda(mean dale area)、前記3次元点群データの平均山領域面積Sha(mean hill area)、前記3次元点群データの平均谷領域容積Sdv(mean dale volume)、前記3次元点群データの谷部とコア部を分離する負荷面積率Smr2(material ratio)、造形密度との負の相関が得られる界面の展開面積比Sdr(development interfacial area ratio)、表面性状のアスペクト比Str(texture aspect ratio)、突出谷部深さ(Svk(μm))、コア部のレベル差(Sk(μm))、二乗平均平方根高さ(Sq(μm))、二乗平均平方根勾配(Sdq)、切断レベル差(Sxp(μm))、コア部空間体積(Vvc(mm3/mm2))、突出谷部空間体積(Vvv(mm3/mm2))、実体体積(Vm(mm3/mm2))、突出山部実体体積(Vmp(mm3/mm2))、及び空間体積(Vv(mm3/mm2))の少なくともいずれか1つを含む、内部欠陥と相関の高い3次元表面性状パラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
前記3次元表面性状パラメータから造形密度を予測し、前記造形密度に基づいて造形品質を評価する評価ステップと、
をコンピュータに実行させる。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る積層造形システムは、
材料粉末を敷き詰めてレーザの照射を繰り返して造形物を作成する積層造形装置と、
前記積層造形装置における前記造形物の作成を制御する情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
造形表面の3次元点群データを取得するデータ取得部と、
前記3次元点群データの自己相関関数に基づく凹凸の最小周期を示す最小自己相関長さSal(autocorrelation length)、前記3次元点群データの平均谷領域面積Sda(mean dale area)、前記3次元点群データの平均山領域面積Sha(mean hill area)、前記3次元点群データの平均谷領域容積Sdv(mean dale volume)、前記3次元点群データの谷部とコア部を分離する負荷面積率Smr2(material ratio)、造形密度との負の相関が得られる界面の展開面積比Sdr(development interfacial area ratio)、表面性状のアスペクト比Str(texture aspect ratio)、突出谷部深さ(Svk(μm))、コア部のレベル差(Sk(μm))、二乗平均平方根高さ(Sq(μm))、二乗平均平方根勾配(Sdq)、切断レベル差(Sxp(μm))、コア部空間体積(Vvc(mm3/mm2))、突出谷部空間体積(Vvv(mm3/mm2))、実体体積(Vm(mm3/mm2))、突出山部実体体積(Vmp(mm3/mm2))、及び空間体積(Vv(mm3/mm2))の少なくともいずれか1つを含む、内部欠陥と相関の高い3次元表面性状パラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記3次元表面性状パラメータから造形密度を予測し、前記造形密度に基づいて造形品質を評価する評価部と、
前記評価部の評価結果に応じて、前記レーザ出力および走査速度の少なくともいずれかに対する調整を指示するレーザ調整部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、造形密度との相関関係がより高い評価基準を用いるので、造形品質を効率的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】前提技術に係る表面性状パラメータRaおよびRzを説明する図である。
【
図2】第1実施形態に係る造形物の相対密度の予測に使用可能な3次元表面性状パラメータを説明する図である。
【
図3A】第1実施形態に係る積層造形物の品質評価方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3B】第1実施形態に係る積層造形物の品質評価方法の他の手順を示すフローチャートである。
【
図4A】第2実施形態に係る積層造形技術について説明する図である。
【
図4B】第2実施形態に係る積層造形システムの構成を示すブロック図である。
【
図4C】第2実施形態に係る積層造形システムの動作手順を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図6A】第2実施形態に係る造形品質評価テーブルの構成を示す図である。
【
図6B】第2実施形態に係るプロセスマップの構成を示す図である。
【
図6C】第2実施形態に係る造形中止条件テーブルの構成を示す図である。
【
図7A】第2実施形態に係る情報処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7B】第2実施形態に係る情報処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】第1実施例に係る造形表面のエネルギー密度と相対密度との関連を示すグラフである。
【
図9】第1実施例に係る3次元光学プロファイラによる表面性状の画像を示す図である。
【
図10A】第1実施例に係る相対密度とSalとの関連を示すグラフである。
【
図10B】第1実施例に係る相対密度とSdaとの関連を示すグラフである。
【
図10C】第1実施例に係る相対密度とShaとの関連を示すグラフである。
【
図10D】第1実施例に係る相対密度とSdvとの関連を示すグラフである。
【
図10E】第1実施例に係る相対密度とSmr2との関連を示すグラフである。
【
図10F】第1実施例に係る相対密度とSdrとの関連を示すグラフである。
【
図10G】第1実施例に係る相対密度とStrとの関連を示すグラフである。
【
図11A】第2実施例に係るレイヤモニタリングによる表面性状の画像例を示す図である。
【
図11B】第2実施例に係るレイヤモニタリングによる表面性状の画像を示す図である。
【
図12A】第2実施例に係る相対密度とSalとの関連を示すグラフである。
【
図12B】第2実施例に係る相対密度とSdaとの関連を示すグラフである。
【
図12C】第2実施例に係る相対密度とShaとの関連を示すグラフである。
【
図12D】第2実施例に係る相対密度とSdvとの関連を示すグラフである。
【
図12E】第2実施例に係る相対密度とSmr2との関連を示すグラフである。
【
図13A】第3実施例に係るプロセスマップの構成を示す図である。
【
図13B】第3実施例に係るエネルギー密度と相対密度との関連を示すグラフである。
【
図13C】第3実施例に係る他のプロセスマップの構成を示す図である。
【
図14】第4実施例に係る沈み込み量の測定を説明する図である。
【
図15】第4実施例に係る沈み込み量の測定結果を示す図である。
【
図16】第4実施例に係る相対密度とSzとの相関結果を示すグラフである。
【
図17】第4実施例に係る沈み込み量の算出方法を説明する図である。
【
図18】第4実施例に係る相対密度と沈み込み量との相関結果を示すグラフである。
【
図19】第5実施例に係る造形物の相対密度の予測に使用可能な3次元表面性状パラメータを説明する図である。
【
図20A】第5実施例に係る相対密度とSvkとの関連を示すグラフである。
【
図20B】第5実施例に係る相対密度とSkとの関連を示すグラフである。
【
図20C】第5実施例に係る相対密度とSqとの関連を示すグラフである。
【
図20D】第5実施例に係る相対密度とSdqとの関連を示すグラフである。
【
図20E】第5実施例に係る相対密度とSxpとの関連を示すグラフである。
【
図20F】第5実施例に係る相対密度とVvcとの関連を示すグラフである。
【
図20G】第5実施例に係る相対密度とVvvとの関連を示すグラフである。
【
図20H】第5実施例に係る相対密度とVmとの関連を示すグラフである。
【
図20I】第5実施例に係る相対密度とVmpとの関連を示すグラフである。
【
図20J】第5実施例に係る相対密度とVvとの関連を示すグラフである。
【
図20K】第5実施例に係る相対密度とSpとの関連を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素は単なる例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、本明細書においては、面粗さを表す3次元表面性状パラメータの表記をISO25178-2:2012の表記に統一する。
【0014】
[第1実施形態]
3次元造形物の造形方法の1つとして、材料粉末の薄層を敷設し、材料粉末の薄層の所定箇所にレーザを照射し、材料粉末を溶融または焼結させて固化層を形成することを繰り返して造形物を造形する粉末積層造形法が知られている。この粉末積層造形法では、材料粉末への入熱量により粉末の固化状態(溶融、焼結、拡散接合状態)が変化し、薄層の粉末量に誤差が出ると造形物の特性が変化したり形状精度が低下したりする可能性がある。この問題を解決するために、例えば、特許文献1および2においては、2次元表面性状パラメータの1つである算術平均粗さRaを算出することによって、形状精度の向上を図っている。
【0015】
《使用する表面性状パラメータの課題》
しかしながら、粉末にレーザを照射して溶融し凝固する際に発生するスパッタが造形表面に付着したり、ボーリング現象やハンピング現象等により造形面の凹凸起伏が増大したりした場合、造形品質が低下する。さらに凹凸起伏が増大した場合、リコータブレードが造形面に接触して造形が途中で停止するだけでなく、装置部品を破損させることがある。このような凹凸の評価は、造形終了後の造形品に対して実施されることがほとんどであり、また、算術平均粗さ(例えば、Ra)で評価されることが多いため、スパッタ付着等による不規則かつ粗大な凹凸を定量化できていない。そのため、算術平均粗さRaの値を同じにしても、例えば造形密度といった造形品質が必ずしもよい結果とはならない。
【0016】
また、3次元造形物の造形品質においても重要である造形密度については、造形物を作製した後にテストして、欠陥品を排除するしかなかった。あるいは、材料粉末への入熱量を変化させてテストした後、適切な入熱量を選択して造形することも考えられる。しかしながら、造形中にリアルタイムに造形物の造形密度を予測して、造形パラメータを制御することはできなかった。
【0017】
図1は、造形密度との相関が比較的低い、算術平均粗さ(例えば、Ra)の算出101や最大高さ(例えば、Rz)の算出102を説明する図である。ここで、Zpは基準長さにおける輪郭曲線の山高さの最大値、Zvは谷深さの最大値である。
【0018】
《本実施形態で用いる3次元表面性状パラメータ》
本発明者は、3次元表面性状パラメータを用いることで、造形密度との正の相関が得られ、造形品質の評価に使用できることを見付けた。算出する3次元表面性状パラメータは、例えば、自己相関関数に基づく凹凸の最小周期を示す最小自己相関長さSal(autocorrelation length)や、平均谷領域面積Sda(mean dale area)や平均山領域面積Sha(mean hill area)、あるいは、平均谷領域容積Sdv(mean dale volume)、谷部とコア部を分離する負荷面積率Smr2(material ratio)等である。そして、算出した3次元表面性状パラメータの値から造形品質が低下する可能性があると判定された場合は、レーザ照射条件を適宜選択し変更することで造形を継続することができる。また、造形中に取得する各レイヤーの3次元点群データから算出した3次元表面性状パラメータを用いることでリアルタイムに造形品質を判定しながら、造形継続や造形停止を選択できる。算出した3次元表面性状パラメータの値からリコータブレードなどの装置部品が造形面に接触し破損する可能性があると判定した場合は、造形を停止するよう制御する。すなわち、本実施形態においては、造形表面の3次元点群データを低次元化し、面領域に拡張した3次元表面性状パラメータを算出して、3次元表面性状パラメータを用いて、造形品質を評価する。なお、3次元表面性状パラメータとは、例えば、造形表面に垂直な軸方向の値に基づいて算出される。
【0019】
また、造形密度との負の相関が得られる界面の展開面積比Sdr(development interfacial area ratio)や表面性状のアスペクト比Str(texture aspect ratio)なども使用可能である。
【0020】
上記、本実施形態において使用される3次元表面性状パラメータを、
図2に示す。
図2の表記は、非特許文献2のISO25178-2に準拠するものである。なお、本実施形態では、それぞれの3次元表面性状パラメータと、積層造形物の相対密度との相関関係を示したが、複数の3次元表面性状パラメータを組み合わせることでさらに造形密度との相関を高めることができる。例えば、造形密度との正の相関と負の相関とを組み合わせてもよい。
【0021】
<3次元表面性状パラメータによる造形密度評価>
図3Aは、本実施形態に係る積層造形物の品質評価方法の手順を示すフローチャートである。
【0022】
積層造形物の品質評価においては、まず、ステップS301において、3次元点群データを取得する。本実施形態の3次元点群データは、積層造形物を造形する場合の、造形物の表面、各層の造形表面、あるいは、各層のパウダーベッドの表面をカメラで撮像して、表面上の各点を、(x,y)座標と高さ方向のz座標として表したものである。
【0023】
次に、ステップS303において、取得した3次元点群データから3次元表面性状パラメータを算出する。ここで3次元表面性状パラメータは、国際規格(ISO25178)で定義された表面粗さを表現するためのパラメータである(非特許文献2参照)。本実施形態においては、積層造形の表面性状から造形物の相対密度を予測する好適な3次元表面性状パラメータとして、表面の最小自己相関長さSal、Sda、Sha、Sdv、Smr2を選定した。
【0024】
ステップS305においては、算出された3次元表面性状パラメータに基づいて、造形物の相対密度を予測する。なお、算出された3次元表面性状パラメータの値と造形された造形物の相対密度との相対関係は、積層造形した造形物から測定した相対密度と、その造形中あるいは造形後の3次元表面性状パラメータの値とから記憶しておく。
【0025】
ステップS307においては、3次元表面性状パラメータに基づいて予測された造形密度により造形品質を評価する。かかる造形密度の予測値は、造形後の造形物の造形密度が所望の密度で成形されているか否かの評価となる。また、造形密度の予測値が、造形物が必要とする相対密度を下回ると予測された場合には、造形条件、特にレーザ強度や走査速度によるエネルギー密度の調整を行うために使用されてよい。その場合には、あらかじめレーザ強度と走査速度との組み合わせによる相対密度のプロセスマップを準備して、調整方法を選択するのが望ましい。
【0026】
本実施形態によれば、造形密度との相関関係がより高い評価基準を用いるので、造形品質を効率的に高めることができる。すなわち、造形物の表面性状パラメータのうち、内部欠陥と相関の高い表面性状パラメータを見出し、これらの相関の高いパラメータを評価指標として、造形途中に取得する造形面の点郡データから、造形途中の段階で密度を推定し、造形物の欠陥を予測する。
【0027】
<沈み込み量による造形密度評価>
図3Bは、本実施形態に係る積層造形物の品質評価方法の他の手順を示すフローチャートである。
図3Bは、沈み込み量による造形密度評価の手順を示す。造形密度は、レーザで溶融凝固した造形部分が溶融凝固しない部分からの沈み込み量が多いほど空隙が少ないので高いと予測することができる。なお、
図3Bにおいて、
図3Aと同様のステップには同じステップ番号を付して、重複する説明を省略する。
【0028】
ステップS313において、取得した3次元点群データから造形部分の沈み込み量を算出する。沈み込み量は、例えば、パウダー散布表面の平均高さから下方の谷部分の最大深さとして求めることができる。あるいは、極端な谷を削除した平均深さとして求めることもできる。また、計算量を削減するために、一方向の一断面から算出した谷面積や平均深さでもよい。
【0029】
ステップS315においては、算出された沈み込み量に基づいて、造形物の相対密度を予測する。なお、算出された沈み込み量と造形された造形物の相対密度との相対関係は、造形材料の種類や造形条件などのパラメータを考慮しながら、積層造形した造形物から測定した相対密度と、その造形中あるいは造形後の沈み込み量とから記憶しておく。
【0030】
なお、上記実施形態では、表面性状パラメータによる造形密度の予測と、沈み込み量による造形密度の予測とを独立して説明した。しかしながら、両方の予測を組み合わせても、一方の予測を他方の予測で補ってもよく、造形密度の予測の信頼性を高めることができる。
【0031】
[第2実施形態]
次に、第1実施形態の3次元表面性状パラメータを用いた、第2実施形態に係る積層造形装置について説明する。
【0032】
<積層造形技術の展望>
図4Aは、本実施形態に係る積層造形技術400について説明する図である。
【0033】
積層造形技術400としては、高精度で高品質の造形物を積層造形するために、設計データや造形条件データの生成技術401と、高度モニタリング・フィードバック制御技術402とが研究開発されている。
【0034】
これら技術を向上させるため、積層造形時および造形後の表面観察403と、積層造形物の表面欠陥観察および内部欠陥観察404と、溶解凝固現象の解明405と、が行われる。表面観察403には、パウダーベッド表面の性状観察と造形表面の性状観察とが含まれる。また、溶解凝固現象の解明405には、メルトプール温度や形態の観察とスパッタリング観察が含まれる。そして、高度モニタリング・フィードバック制御技術402では、例えば、観察結果あるいは解明結果の機械学習に基づいて、欠陥予測を伴う処理421と実際の欠陥検出を伴う処理422とを含む。
【0035】
本実施形態に係る3次元表面性状パラメータの算出は、積層造形時および造形後の表面観察403に関連する技術である。そして、積層造形時および造形後の表面観察403は、静的には設計データや造形条件データの生成技術401へのフィードバックを行いその向上にも貢献する。さらに、本実施形態においては、積層造形時および造形後の表面観察403による欠陥予測を、積層造形時におけるリアルタイムの最適条件自動変換に結び付けることができた。特に、欠陥予測として、積層造形物の品質として重要である造形密度を予測して、造形物の相対密度が所定範囲内(一般的には99.0%以上、造形物の種類によってはそれ以上)に入るように最適条件の自動変換を行う。
【0036】
なお、造形物の相対密度に大きな影響を与えるパラメータとしては溶融表面のエネルギー密度があり、レーザ出力と走査速度とハッチディスタンス、積層ピッチに関連するパラメータである。本実施形態では、積層造形中のパウダーベッド表面や造形表面の性状観察に基づき、造形物の造形密度を予測し、レーザ出力や走査速度の最適制御を行うことにより造形品質を高めることができる。
【0037】
<積層造形システム>
図4Bおよび
図4Cを参照して、本実施形態に係る積層造形システム410の構成および動作を説明する。
【0038】
(構成)
図4Bは、本実施形態に係る積層造形システム410の構成を示すブロック図である。
【0039】
積層造形システム410は、情報処理装置420と積層造形装置430とを備える。なお、情報処理装置420は積層造形装置430内に搭載されて、1つの装置として実現されてもよい。あるいは、情報処理装置420を複数の処理機能に分けて複数の装置として実現してもよい。
【0040】
積層造形装置430は、造形表面に敷き詰めた材料粉末を溶融して造形物を凝固させるレーザを走査しながら発振するレーザ照射ユニット411と、パウダーベッド表面や造形表面を撮像するカメラ412と、を備える。また、積層造形装置430は、造形物が積層造形される造形台413と、材料粉末を造形面上に敷き詰める粉末積層機構414および415と、を備える。なお、
図4Bの積層造形装置430には、本実施形態における情報処理装置420による制御に関連する部分を説明し、他の説明を省略する。
【0041】
情報処理装置420は、積層造形装置430における積層造形物の造形を制御する。本実施形態において、情報処理装置420は、積層造形中にカメラ412により撮像されたパウダーベッド表面や造形表面の画像データを取得して、3次元点群データを生成する。次に、情報処理装置420は、造形範囲内の3次元点群データに基づいて、造形密度を予測可能な少なくとも1つの3次元表面性状パラメータを算出する。次に、情報処理装置420は、算出された3次元表面性状パラメータを用いて、あらかじめ学習した3次元表面性状パラメータと造形密度との相関関係から、造形密度を予測する。そして、情報処理装置420は、造形密度が造形物の品質基準を満たすか否かを判断して、造形物の品質基準を満たしそうにない、あるいは、このままでは満たさない可能性が高い場合、造形密度を高くするように溶融表面のエネルギー密度をレーザ調整部により調整する。エネルギー密度の調整は、レーザ出力と走査速度との組合せで行う。
【0042】
なお、3次元点群データは、オプショナルとして点群データ算出装置440で算出して、情報処理装置420が取得する構成であってもよい。さらに、算出時間を短縮するために、3次元表面性状パラメータの算出を情報処理装置420の外部で高速に行う構成にしてもよい。
【0043】
また、造形物が積層造形される造形台413と、材料粉末を造形面上に敷き詰める粉末積層機構414および415との制御も、造形密度に影響するが、基本的には設計データや造形条件データとしてあらかじめ設定されることが多いので、その制御については省略する。例えば、1層の厚さや、敷き詰めた材料粉末の密度を制御してもよい。
【0044】
(動作手順)
図4Cは、本実施形態に係る積層造形システム410の動作手順を示すフローチャートである。
【0045】
積層造形システム410は、ステップS401において、造形表面に敷き詰められた材料粉末にレーザ照射ユニット411からレーザを照射して、1層の造形面を形成する。積層造形システム410は、ステップS403において、造形面の3次元点群データを取得(生成)する。積層造形システム410は、ステップS405において、次の層のデータがあるか否かを判定する。次の層のデータが無ければ、積層造形システム410は処理を終了する。
【0046】
次の層のデータが有れば、積層造形システム410は、ステップS407において、3次元点群データに基づいて、造形密度を評価可能な3次元表面性状パラメータを算出する。積層造形システム410は、ステップS409において、算出した3次元表面性状パラメータから評価した造形密度が閾値a以上であるか否かを判定する。造形密度が閾値a未満であれば、積層造形システム410は、ステップS411において、造形密度を高くするための、造形条件(本実施形態では、レーザ強度と走査速度との組合せによる溶融表面のエネルギー密度)の修正を、あらかじめ準備されたプロセスマップを参照して選択する。
【0047】
造形密度が閾値a以上であれば、積層造形システム410は、ステップS413において、造形台(ベースプレート)413を1層厚みに対応する所定距離だけ降下する。そして、積層造形システム410は、ステップS415において、スキージングして材料粉末を造形面上に敷き詰める。
【0048】
<情報処理装置>
図5から
図7を参照して、本実施形態に係る情報処理装置420の構成および動作を説明する。
【0049】
(構成)
図5は、本実施形態に係る情報処理装置420の構成を示すブロック図である。
【0050】
情報処理装置420は、通信制御部501と、撮像制御部502と、3次元点群データ取得部503と、データベースと、3次元表面性状パラメータ算出部505と、造形品質評価部506と、積層造形制御指示部507と、積層造形継続・中止指示部508と、を備える。なお、
図5の情報処理装置420には、本実施形態に関連する機能構成を示し、他の積層造形に係る制御機能や汎用のコンピュータが実現する他の機能については省略している。例えば、設計データや造形条件データの送信や積層造形の状態の受信、あるいは、積層造形の状態を通知する表示部や、オペレータが入力指示する指示部なども備えられている。
【0051】
通信制御部501は、有線あるいは無線で積層造形装置430との通信を制御する。撮像制御部502は、カメラ412による造形表面やパウダーベッド表面の撮像を制御する。3次元点群データ取得部503は、カメラ412が撮像した造形表面やパウダーベッド表面の画像から抽出した3次元点群データを取得する。なお、3次元点群データは外部の装置から取得してもよいし、3次元点群データ取得部503が生成してもよい。3次元点群データは、データベース504に格納される。
【0052】
データベース504は、3次元点群データ格納部541と、3次元表面性状パラメータ算出式格納部542と、造形品質評価テーブル543と、を有する。3次元点群データ格納部541は、3次元点群データ取得部503からの3次元点群データを格納する。3次元点群データの履歴を使用するなら、タイムスタンプを伴って格納する。3次元表面性状パラメータ算出式格納部542は、3次元表面性状パラメータの算出アルゴリズムを、各3次元表面性状パラメータを識別子として格納する。造形品質評価テーブル543は、3次元表面性状パラメータの算出値から造形密度を予測するための、あらかじめ準備されたテーブルを格納する。さらに、予測された造形密度から造形品質を評価するテーブルを格納する。
【0053】
3次元表面性状パラメータ算出部505は、3次元点群データ格納部541に格納された3次元点群データを用いて、3次元表面性状パラメータ算出式格納部542に格納された算出式で3次元表面性状パラメータを算出する。造形品質評価部506は、造形品質評価テーブル543を参照して、3次元表面性状パラメータ算出部505により算出された造形表面やパウダーベッド表面の3次元表面性状パラメータから造形物の造形密度を予測して、その造形密度により造形物の造形品質を評価する。
【0054】
積層造形制御指示部507は、プロセスマップ571を有し、このプロセスマップ571を用いて造形品質評価部506による造形品質の評価結果に基づいて、積層造形装置430に対して造形制御の指示をする。すなわち、造形品質が要求品質より低い、あるいは、劣化しそうだと判断すると、造形品質を向上させる制御を指示する。本実施形態の場合は、造形密度を向上させるために、走査速度やレーザ強度を調整して溶融表面のエネルギー密度を調整する。
【0055】
積層造形継続・中止指示部508は、造形中止条件テーブル581を有し、この造形中止条件テーブル581の造形中止条件を満たす造形品質の評価があると、積層造形の中止を指示する。造形中止条件を満たさなければ、積層造形を継続させる。
【0056】
(造形密度評価テーブル)
図6Aは、本実施形態に係る造形品質評価テーブル543の構成を示す図である。造形品質評価テーブル543は、造形品質評価部506が3次元表面性状パラメータから造形密度を予測し、予測した造形密度により造形品質を評価するために用いる。
【0057】
造形品質評価テーブル543は、3次元表面性状パラメータから造形密度を予測するための造形密度予測テーブル610と、予測された造形密度により造形品質を判定する造形品質判定テーブル620と、を有する。造形密度予測テーブル610は、算出した3次元表面性状パラメータ611に対応して、3次元表面性状パラメータと相対密度との相関を保持する相関テーブル612と、相関テーブル612を用いて予測された相対密度613と、を記憶する。また、造形品質判定テーブル620は、予測された相対密度により造形品質を判定する条件範囲621と、各条件範囲621に対応する判定結果の造形品質622と、を記憶する。
【0058】
ここで、造形品質622において、“●”は相対密度が99.7%以上の高品質を表し、“○”は相対密度が99.7%未満99.4%以上の上品質を表し、“△”は相対密度が99.4%未満99.0%以上の良品質を表している。そして、“×”は相対密度が99.0%未満の低品質を表している。しかしながら、積層造形物の用途などによって、相対密度による造形品質の判定基準は変化するので、上記条件に限定されるわけではない。
【0059】
(プロセスマップ)
図6Bは、本実施形態に係るプロセスマップ571の構成を示す図である。プロセスマップ571は、積層造形制御指示部507が予測した造形密度により判定した造形品質を高くする、あるいは、劣化しないように制御するために用いられる。
【0060】
プロセスマップ571は、造形品質評価部506であらかじめ既知のレーザ強度(Laser Power)と走査速度(Scan Speed)との組み合わせにより積層造形した時の、3次元表面性状パラメータによる造形品質の判定結果(
図6Aの造形品質622に対応)をマップ化したものである。
図6Bでは、横軸が走査速度、縦軸がレーザ強度である。
【0061】
このようなプロセスマップ571をあらかじめ準備して記憶しておき、実際の積層造形時に3次元表面性状パラメータによる造形品質の判定結果に基づいて、造形密度を高めるべく、あるいは、劣化を防ぐべく、走査速度やレーザ強度の制御を指示する。
【0062】
例えば、造形品質の判定結果が“△”631である場合、その周囲で距離の短い“●”に向けた走査速度とレーザ強度との制御が行われるのが望ましい。走査速度およびレーザ強度を共に調整するのは複雑であるため、破線矢印方向の走査速度の低下(“●”632)と、一点鎖線矢印方向のレーザ強度の上昇(“●”633)とが候補となる。また、造形品質の判定結果が“△”634である場合、走査速度の調整のみでは“●”には成らない可能性が高いので、レーザ強度の上昇で対応する。この場合に、例えば、“●”633に上昇させるよりも、さらに“●”635までレーザ強度を上昇した方が、造形密度が安定すると推察される。
【0063】
このようにプロセスマップ571を用いると、レーザ強度の値や走査速度の値などから算出された溶融表面のエネルギー密度の値により制御するよりも、装置環境や装置の周囲環境、材料粉末の状態などが影響する実際の積層造形環境において造形密度を高め、造形品質を効率的に高めることができる。
【0064】
(造形中止条件テーブル)
図6Cは、本実施形態に係る造形中止条件テーブル581の構成を示す図である。造形中止条件テーブル581は、積層造形継続・中止指示部508が積層造形装置430の積層造形を継続するか中止するかを判定するために使用する。
【0065】
造形中止条件テーブル581は、3次元表面性状パラメータである表面の最大山高さSp(Maximum peak height:造形可能領域全面の各点における表面の最大ピーク高さ)による造形中止条件641と、最大高さSz(Maximum height)による造形中止条件642と、を記憶する。そして、造形中止条件テーブル581は、相対密度の造形中止条件643と、それらの造形中止条件のいずれかを満たす場合に造形中止(×)とする判定結果644とを記憶する。ここで、Spが閾値α以上の場合、リコータブレードが造形面に接触する可能性があるため停止する、あるいは、部品が破壊する可能性がある。また、Szが閾値β以上の場合、リコータブレードが造形面に接触する可能性があるため停止する、あるいは、部品が破壊する可能性がある。なお、相対密度の造形中止条件643は、●、○および△は造形継続、×は造形中止としたが、造形物に求める品質レベルにより変化する。
【0066】
例えば、Spが394.4μm、Szが502.1μmのときに、リコータブレードが造形面に接触した例があり、Spの閾値αを350μm、Szの閾値βを500μmとすることが考えられる。
【0067】
(処理手順)
図7Aおよび
図7Bは、本実施形態に係る情報処理装置420の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、情報処理装置420のCPU(Central processing Unit)がRAM(Random Access Memory)を使用して実行し、
図5の構成要素を実現する。
【0068】
情報処理装置420は、ステップS701において、設定されたエネルギー密度(レーザ強度と走査速度)で、少なくとも一層の造形を積層造形装置430に指示する。なお、最初の一層については、積層造形対象により初期設定される。情報処理装置420は、ステップS703において、造形後の造形表面の画像をカメラ412から取得する。情報処理装置420は、ステップS705において、造形表面の画像の中から造形範囲内の画像を選択する。情報処理装置420は造形データから造形範囲を既知である。情報処理装置420は、ステップS707において、造形範囲内の画像から3次元点群データを生成する。なお、外部装置で3次元点群データの生成を行う場合は、外部装置から取得する。
【0069】
情報処理装置420は、ステップS709において、造形範囲内の3次元点群データを全て用いて3次元表面性状パラメータを算出するか否かを判定する。造形範囲内の3次元点群データを全て用いる場合、情報処理装置420は、ステップS719に進む。
【0070】
造形範囲内の3次元点群データを全て用いない場合、情報処理装置420は、ステップS711において、造形範囲内であって特異造形範囲内の3次元点群データを用いるか否かを判定する。ここで、特異造形範囲とは、造形範囲内で他の範囲と異なる特徴を有する範囲、あるいは、造形履歴から前の積層で異常が見られた範囲などである。特異造形範囲内の3次元点群データを用いる場合、情報処理装置420は、ステップS713において、特異造形範囲内の3次元点群データを選別する。特異造形範囲内の3次元点群データを用いない場合、情報処理装置420は、ステップS715において、3次元表面性状パラメータの算出に用いる3次元点群データの選別に、今回の造形前のパウダーベッド表面の画像を参照するか否かを判定する。パウダーベッド表面の画像を参照する場合、情報処理装置420は、ステップS717において、パウダーベッド表面の画像における特異パウダー範囲内の3次元点群データを選別する。ここで、特異パウダー範囲とは、パウダーベッド表面が僅かに陥没していたり盛り上がっていたりした範囲である。パウダーベッド表面も異常が造形後にも影響すると思われる。なお、かかるステップS711~S717の処理は、3次元点群データから3次元表面性状パラメータを算出する時間の短縮を意図する処理であり、3次元表面性状パラメータの算出を外部装置で高速に実現できる場合や、3次元表面性状パラメータの算出を高速に実現できる性能を有する場合は、省略してもよい。
【0071】
情報処理装置420は、ステップS719において、それぞれ選別された範囲の3次元点群データから3次元表面性状パラメータを算出する。そして、情報処理装置420は、ステップS721において、算出した3次元表面性状パラメータを保持する。情報処理装置420は、ステップS723において、他に算出する3次元表面性状パラメータが有るか否かを判定する。他に算出する3次元表面性状パラメータが有る場合、情報処理装置420は、ステップS719に戻って、3次元表面性状パラメータの算出を繰り返す。なお、3次元表面性状パラメータによって、用いる3次元点群データが異なる場合は、ステップS709に戻ってもよい。
【0072】
情報処理装置420は、ステップS725において、算出された少なくとも1つの3次元表面性状パラメータを参照して、造形密度を予測する。そして、情報処理装置420は、ステップS727において、予測した造形密度により造形品質を評価する。情報処理装置420は、ステップS729において、造形中止条件テーブル581を参照して、造形を中止するか否かを判定する。造形中止条件を満たす場合、情報処理装置420は、ステップS737において、造形中止を積層造形装置430に指示して処理を終了する。一方、造形中止条件を満たさない場合、情報処理装置420は、ステップS731において、造形条件、特にエネルギー密度の調整が必要か否かを判定する。造形条件の調整が必要な場合、情報処理装置420は、ステップS733において、プロセスマップ571を参照して目標とする造形品質を得られるように、エネルギー密度(レーザ出力、走査速度)の調整を積層造形装置430に指示する。情報処理装置420は、ステップS735において、造形完了か否かを判定する。造形完了でなければ、情報処理装置420は、ステップS701に戻って、次の層以降の造形を繰り返す。造形完了であれば、情報処理装置420は処理を終了する。
【0073】
本実施形態によれば、造形物の表面性状パラメータのうち、内部欠陥と相関の高い表面性状パラメータを見出し、これらの相関の高いパラメータを評価指標として(あるいはパラメータによる凹凸を表す方法の定義として)、造形途中に取得する造形面の点郡データ(凹凸情報)から、造形途中の段階で密度を推定し、欠陥を予測する。そして、推定した密度から、リアルタイムに造形条件を変更しながら造形することで、高密度かつ欠陥の少ない造形物を作製することができる。
【0074】
また、粗大な凸形状が造形表面に生成されてもリコータブレードが接触して破損することを回避できる。粗大な凸形状が造形表面に生成され造形品質を低下させる可能性があると判定した場合でもレーザ照射条件を修正しながら造形を継続することができる。レーザ照射条件が確定していない部品形状であっても造形することができる。
【0075】
なお、本実施形態においては、造形部分の沈み込み量により造形品質(造形密度)を予測したが、パウダーベッド表面に垂直な軸方向の値に基づいて造形品質(造形密度)を予測することもできる。また、第2実施形態の積層造形装置では、3次元表面性状パラメータを用いる例を示したが、造形部分の沈み込み量、あるいは、3次元表面性状パラメータと沈み込み量とを組み合わせた積層造形装置も可能であり、より精度のよい品質管理が可能となる。
【実施例】
【0076】
<第1実施例>
3次元光学プロファイラによる表面性状の画像から、造形表面のエネルギー密度を変えた場合の、それぞれの造形試験品の相対密度と、本実施形態に係る3次元表面性状パラメータを算出した。
【0077】
(造形試験品)
本実施例で試験のために造形した試験片は、立方体(10mm×10mm×10mm)であり、積層ピッチは0.05mmとした。また、ハッチディスタンス(ハッチピッチ)は、0.10mmとした。
【0078】
(表面性状の測定方法)
積層造形後の試験片の最表面(上面)を光学式非接触により三次元表面性状を点群データとして計測し、計測した三次元表面データを用いて、ISO25178-2に規定されている三次元表面性状パラメータを算出した。測定装置として、3次元光学プロファイラ NewView9000(Zygo製)を用いた。表面画像の分解能は、x,y=0.95μm、z=0.01nmである。
【0079】
(相対密度の測定方法:アルキメデス法)
積層造形後の試験片をベースプレートから取り外し、サポートを除去した後、アルキメデス法により密度を測定した。測定した密度に対し、真密度を8.15g/cm3として相対密度を算出した。比重測定装置には、分析天秤AP224X、比重測定キットSMK-601(島津製作所製)を用いた。
【0080】
その結果の造形表面のエネルギー密度と相対密度とその評価結果を、表1に示す。
【表1】
【0081】
図8は、第1実施例に係る造形表面のエネルギー密度と相対密度との関連を示すグラフ800である。
図8は、表1に基づいて生成した。
図8からは、相対密度の高い品質を得るためには、適切なエネルギー密度(例えば、34.0~、好ましくは41.0~57.0J/mm
3の範囲、より好ましくは、43.0~53.0J/mm
3の範囲が必要であることが分かる。
【0082】
図9は、第1実施例に係る3次元光学プロファイラによる表面性状の画像901、902を示す図である。かかる表面性状から算出された本実施形態に係る3次元表面性状パラメータを、表2に示す。
【表2】
【0083】
以下、
図10Aから
図10Gに、表2に基づいて相対密度と各3次元表面性状パラメータとの関連をグラフに示した。
【0084】
図10Aは、第1実施例に係る相対密度とSalとの関連を示すグラフ1010である。
図10Aから、相対密度とSalとは正の相関関係にあることが分かる。また、
図10Aから、Salの値がある値(例えば、0.15mm)より小さくなると相対密度は低くなる傾向にあることが分かる。したがって、造形物表面のSalの値から造形物の相対密度を予測することができる。
【0085】
図10Bは、第1実施例に係る相対密度とSdaとの関連を示すグラフ1020である。
図10Bから、相対密度とSdaとは正の相関関係にあることが分かる。また、
図10Bから、Sdaの値がある値(例えば、0.025mm
2)より小さくなると相対密度は低くなる傾向にあることが分かる。したがって、造形物表面のSdaの値から造形物の相対密度を予測することができる。
【0086】
図10Cは、第1実施例に係る相対密度とShaとの関連を示すグラフ1030である。
図10Cから、相対密度とSdaとは正の相関関係にあることが分かる。また、
図10Cから、Shaの値がある値(例えば、0.030mm
2)より小さくなると相対密度は低くなる傾向にあることが分かる。したがって、造形物表面のShaの値から造形物の相対密度を予測することができる。
【0087】
図10Dは、第1実施例に係る相対密度とSdvとの関連を示すグラフ1040である。
図10Dから、相対密度とSdvとは正の相関関係にあることが分かる。また、
図10Dから、Sdvの値がある値(例えば、0.000039mm
3)より小さくなると相対密度は低くなる傾向にあることが分かる。したがって、造形物表面のSdvの値から造形物の相対密度を予測することができる。
【0088】
図10Eは、第1実施例に係る相対密度とSmr2との関連を示すグラフ1050である。
図10Eから、相対密度とSmr2とは正の相関関係にあることが分かる。また、
図10Dから、Smr2の値がある値(例えば、88.0%)より小さくなると相対密度は低くなる傾向にあることが分かる。したがって、造形物表面のSmr2の値から造形物の相対密度を予測することができる。
【0089】
図10Fは、第1実施例に係る相対密度とSdrとの関連を示すグラフ1060である。
図10Fから、相対密度とSdrとは負の相関関係にあることが分かる。また、
図10Fから、Sdrの値がある値(例えば、55.0%)より大きくなると相対密度は低くなる傾向にあることが分かる。したがって、造形物表面のSdrの値から造形物の相対密度を予測することができる。
【0090】
図10Gは、第1実施例に係る相対密度とStrとの関連を示すグラフ1070である。
図10Gから、相対密度とStrとは負の相関関係にあることが分かる。また、
図10Gから、Strの値がある値(例えば、0.59)より大きくなると相対密度は低くなる傾向にあることが分かる。したがって、造形物表面のStrの値から造形物の相対密度を予測することができる。
【0091】
<第2実施例>
レイヤモニタリングによる表面性状の画像から、造形表面のエネルギー密度を変えた場合の、それぞれの造形試験品の相対密度と、本実施形態に係る3次元表面性状パラメータを算出した。なお、レイヤモニタリング時の表面画像の分解能は、x、y=80μm、z=10または30μmである。なお、造形表面のエネルギー密度と相対密度との関係は、第1実施例と同様である。
【0092】
図11Aは、第2実施例に係るレイヤモニタリングによる造形領域の表面性状の画像例1101、1102を示す図である。
【0093】
図11Bは、第2実施例に係るレイヤモニタリングによる表面性状の画像1103を示す図である。
図11Bに示すように、Cube試験片の周囲には走査速度が低下してエネルギー密度が高くなるため、凸部分が発生する。そのため、(10mm×10mm)のCube試験片の表面画像の内、中心部の(6mm×6mm)の画像を切り出して、その点群データに基づいて3次元表面性状パラメータを算出した。
【0094】
かかる表面性状から算出された本実施例に係る3次元表面性状パラメータを、表3に示す。
【表3】
【0095】
以下、
図12Aから
図12Eに、表3に基づいて相対密度と各3次元表面性状パラメータとの関連をグラフに示した。
【0096】
図12Aは、第2実施例に係る相対密度とSalとの関連を示すグラフ1210である。
図12Aから、相対密度とSalとは略正の相関関係にあることが分かる。また、
図12Aから、Salの値がある値(例えば、0.30mm)より小さくなると相対密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のSalの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0097】
図12Bは、第2実施例に係る相対密度とSdaとの関連を示すグラフ1220である。
図12Bから、相対密度とSdaとは略正の相関関係にあることが分かる。また、
図12Bから、Sdaの値がある値(例えば、0.580mm
2)より小さくなると相対密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のSdaの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0098】
図12Cは、第2実施例に係る相対密度とShaとの関連を示すグラフ1230である。
図12Cから、相対密度とShaとは略正の相関関係にあることが分かる。また、
図12Cから、Shaの値がある値(例えば、0.520mm
2)より小さくなると相対密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のShaの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0099】
図12Dは、第2実施例に係る相対密度とSdvとの関連を示すグラフ1240である。
図12Dから、相対密度とSdvとは略正の相関関係にあることが分かる。また、
図12Dから、Sdvの値がある値(例えば、0.001mm
3)より小さくなると相対密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のSdvの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0100】
図12Eは、第2実施例に係る相対密度とSmr2との関連を示すグラフ1250である。
図12Eから、相対密度とSmr2とは略正の相関関係にあることが分かる。また、
図12Eから、Smr2の値がある値(例えば、90.1%)より小さくなると相対密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のSmr2の値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0101】
このように、Sal、Sda、Sha、SdvおよびSmr2を、造形物の相対密度の低下を評価する指標として使用できることが分かる。
【0102】
<第3実施例>
上記第1実施例および第2実施例の結果から生成された、
図5のプロセスマップ571に使用される具体的なプロセスマップ1310を
図13Aに示す。
【0103】
このように、第2実施例の結果に基づいて生成されたプロセスマップ1310を、積層造形装置の情報処理装置内に準備することによって,少なくとも1層を造形した後に撮像した表面画像から点群データを生成する。そして、生成された点群データから適切な3次元表面性状パラメータを算出する。この3次元表面性状パラメータにもとづいて、造形密度を予測して造形密度を造形物に必要とされる造形密度となるように制御することができる。例えば、必要とされる造形密度以上に安定していればそのまま造形を続け、造形密度の低下が予測されれば、同条件で再溶融させる、あるいはレーザ出力や走査速度を、造形密度を上げるように調整する。必要とされる造形密度以上であっても、造形密度が不安定と予測されれば、造形密度が安定するレベルに遷移させる。
【0104】
(詳細なエネルギー密度と造形物の相対密度との測定例)
さらに詳細なエネルギー密度と造形物の相対密度とその評価結果を、表4に示す。
【表4】
【0105】
図13Bは、表4のエネルギー密度と相対密度との関連を示すグラフ1320である。そして、
図13Cは、表1および表4から生成した他のプロセスマップ1330の構成を示す図である。
【0106】
プロセスマップ1330には、プロセスマップ1310が含まれている。例えば、プロセスマップ1330においては、プロセスマップ1310の範囲内に有る場合は、上記
図13Aで説明したような、レーザ出力と走査速度との制御が行われる。しかしながら、例えば、プロセスマップ1330の部分マップ1331に入ると、その範囲内の●で安定するようにレーザ出力と走査速度との制御が行われる。また、造形速度が要求される場合には、プロセスマップ1310の範囲内で制御し、品質安定が要求される場合には、●の範囲が広い部分マップ1331の範囲内で制御してもよい。
【0107】
図13Aから
図13Cに示したプロセスマップの例は、これらに限定されず、実施例1および実施例2のような積層造形試験を繰り返して、データ収集することで、より好適な相対密度の推定と、相対密度の推定に基づくエネルギー密度の制御が可能になる。
【0108】
<第4実施例>
以下、第4実施例により、沈み込み量と造形密度とに相関関係があって、沈み込み量から造形密度が予測できることを説明する。
【0109】
(沈み込み量の測定)
図14は、第4実施例に係る沈み込み量の測定を説明する図である。
図14に示す1層の造形において、20個の造形試験片中、試験片1401は沈み込み量が少なく、試験片1402は沈み込み量が多い。なお、造形試験片の造形条件は、第1および第2実施例と同様に、レ―ザ出力と走査速度を変化させてエネルギー密度を変化させたのみである。
【0110】
(沈み込み量と造形密度との相関)
図15は、第4実施例に係る沈み込み量の測定結果を示す図である。
【0111】
図15の各Cube試験片表面において、右側のグラフは、Cube試験片表面の一断面の輪郭曲線を示しており,パウダーベッド表面からCube試験片を横断した一断面である。Cube試験片B1(1501)からCube試験片B5(1505)へ行くに従い、造形密度が高くなり、その場合のパウダーベッド表面と比べ沈み込み量も大きくなっている。なお、このように沈み込み量と造形密度とが相関を有する理由は,造形密度が高く成形されると内部に空隙が残らない分沈み込むと推測される。
【0112】
本実施例のエネルギー密度と造形物の相対密度とその評価結果を、表5に示す。
【表5】
【0113】
表5の条件における、沈み込み量に関連する積層表面の3次元点群データに基づく3次元表面性状パラメータの値を、表6に示す。
【表6】
【0114】
図16は、実施例に係る相対密度とSzとの相関結果を示すグラフである。
図16において、Szが大きくなるにつれて造形物の相対密度が高くなる傾向が分かる。例えば、相対密度が99.5%未満における沈み込み量は,相対密度が99.5%以上となる沈み込み量と比べて小さい。したがって、Szに対応する沈み込み量が大きくなるにつれて造形物の相対密度が高くなることが示される。
【0115】
図17は、本実施例に係る沈み込み量の算出方法を説明する図である。(1) 試験片B1~B5のY方向の全プロファイル1710を抜き出す。(2) 全プロファイルに基づいて、平均プロファイル1720を作成する。(3) 平均プロファイル1720から、パウダーベッド表面の高さと、造形面の高さとの差を、沈み込み量として算出する。
【0116】
上記
図17に従って求められた、B1~B5のそれぞれに数値を、表7に示す。
【表7】
【0117】
図18は、表7に基づく、本実施例に係る相対密度と沈み込み量との相関結果を示すグラフである。
図18において、算出された沈み込み量が大きくなるにつれて造形物の相対密度が高くなることが示される。したがって、沈み込み量を観察することによって造形物の相対密度を予測し、レーザ出力や走査速度を制御してエネルギー密度を変化させることにより、造形品質を効率的に高めることができる。
【0118】
<第5実施例>
図19は、第5実施例として、新たに見つかった造形物の相対密度の予測に使用可能な3次元表面性状パラメータを示す図である。なお、
図19の表記は、非特許文献2のISO25178-2および非特許文献3のJIS B 0681-2に準拠するものである。また、本実施例においては、3次元表面性状パラメータと相対密度との相関関係を評価する相関係数として、非線形な関係にある2変数間の相関についてMIC(Maximal Information Coefficient)を用いて検定した(非特許文献4参照)。そして、MICの値が相対的に高い、例えばMICが0.65以上の3次元表面性状パラメータを、
図19に示した造形物の相対密度の予測に使用可能な3次元表面性状パラメータとして抽出した。
【0119】
抽出された造形物の相対密度の予測に使用可能な3次元表面性状パラメータは、突出谷部深さ(Svk(μm))、コア部のレベル差(Sk(μm))、二乗平均平方根高さ(Sq(μm))、二乗平均平方根勾配(Sdq)、切断レベル差(Sxp(μm))、コア部空間体積(Vvc(mm3/mm2))、突出谷部空間体積(Vvv(mm3/mm2))、実体体積(Vm(mm3/mm2))、突出山部実体体積(Vmp(mm3/mm2))、空間体積(Vv(mm3/mm2))、である。
【0120】
(第5実施例の実験条件)
第5実施例で積層造形に使用した材料粉末は、第1実施例~第4実施例と同様である。また、第5実施例における積層造形装置や積層造形条件は、第1実施例~第4実施例と同様であるため、重複する記載は避ける。
【0121】
(第5実施例の実験結果値)
以下、表8~表13に、実施例501から実施例588の実験結果の数値を示す。表8、表10および表12は、積層造形条件を変えた場合の相対密度と、判定結果とを示す。表9、表11および表13は、同じ実施例における使用可能な3次元表面性状パラメータの値を示す。
【0122】
表8、表10および表12には、各実施例における、レーザ出力、レーザの走査速度、ハッチ距離、積層厚さ、エネルギー密度、の積層造形条件パラメータが記載されている。そして、それらの積層造形条件パラメータにおける積層造形物の相対密度と、品質の判定結果が記載されている。なお、品質の判定結果を表す記号は、第1実施例~第4実施例と同様である。
【0123】
表9、表11および表13には、表8、表10および表12のそれぞれの実施例における3次元表面性状パラメータの値が記載されている。本実施例で算出された3次元表面性状パラメータは、
図19に示した10種類である。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
(抽出された3次元表面性状パラメータと相対密度との相関関係)
次に表8~表13に示した実験結果から相対密度(%)と各3次元表面性状パラメータとの相関を示すグラフと、MICによる相関係数の値を示す。
【0131】
図20Aは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータSvk(μm)との関連を示すグラフ2010である。相対密度(%)とSvk(μm)とのMICは、0.806である。相対密度とSvkとは略負の相関関係にあることが分かる。また、
図20Aから、Svkの値がある値(例えば、13.7μm)より大きくなると相対的に密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のSvkの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0132】
図20Bは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータSk(μm)との関連を示すグラフ2020である。相対密度(%)とSk(μm)とのMICは、0.783である。相対密度とSkとは略負の相関関係にあることが分かる。また、
図20Bから、Skの値がある値(例えば、26.5μm)より大きくなると相対的に密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のSkの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0133】
図20Cは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータSq(μm)との関連を示すグラフ2030である。相対密度(%)とSq(μm)とのMICは、0.764である。相対密度とSqとは略負の相関関係にあることが分かる。また、
図20Cから、Sqの値がある値(例えば、17.3μm)より大きくなると相対的に密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のSqの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0134】
図20Dは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータSdqとの関連を示すグラフ2040である。相対密度(%)とSdqとのMICは、0.761である。相対密度とSdqとは略負の相関関係にあることが分かる。また、
図20Dから、Sdqの値がある値(例えば、1.17)より大きくなると相対的に密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のSdqの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0135】
図20Eは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータSxp(μm)との関連を示すグラフ2050である。相対密度(%)とSxp(μm)とのMICは、0.708である。相対密度とSxpとは略負の相関関係にあることが分かる。また、
図20Eから、Sxpの値がある値(例えば、31.7μm)より大きくなると相対的に密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のSxpの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0136】
図20Fは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータVvc(mm
3/mm
2)との関連を示すグラフ2070である。相対密度(%)とVvc(mm
3/mm
2)とのMICは、0.692である。相対密度とVvcとは略負の相関関係にあることが分かる。また、
図20Gから、Vvcの値がある値(例えば、0.0199mm
3/mm
2)より大きくなると相対的に密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のVvcの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0137】
図20Gは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータVvv(mm
3/mm
2)との関連を示すグラフ2080である。相対密度(%)とVvv(mm
3/mm
2)とのMICは、0.687である。相対密度とVvvとは略負の相関関係にあることが分かる。また、
図20Hから、Vvvの値がある値(例えば、0.00179mm
3/mm
2)より大きくなると相対的に密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のVvvの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0138】
図20Hは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータVm(mm
3/mm
2)との関連を示すグラフ2090である。相対密度(%)とVm(mm
3/mm
2)とのMICは、0.685である。相対密度とVmとは略負の相関関係にあることが分かる。また、
図20Iから、Vmの値がある値(例えば、0.000799mm
3/mm
2)より大きくなると相対的に密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のVmの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0139】
図20Iは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータVmp(mm
3/mm
2)との関連を示すグラフ2100である。相対密度(%)とVmp(mm
3/mm
2)とのMICは、0.685である。相対密度とVmpとは略負の相関関係にあることが分かる。また、
図20Jから、Vmpの値がある値(例えば、0.000799mm
3/mm
2)より大きくなると相対的に密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のVmpの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0140】
図20Jは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータVv(mm
3/mm
2)との関連を示すグラフ2110である。相対密度(%)とVv(mm
3/mm
2)とのMICは、0.684である。相対密度とVvとは略負の相関関係にあることが分かる。また、
図20Kから、Vvの値がある値(例えば、0.0221mm
3/mm
2)より大きくなると相対的に密度が低くなる場合があることが分かる。したがって、レイヤー表面のSvkの値から造形物の相対密度の低下を予測することができる。
【0141】
本実施例によれば、突出谷部深さ(Svk(μm))、コア部のレベル差(Sk(μm))、二乗平均平方根高さ(Sq(μm))、二乗平均平方根勾配(Sdq)、切断レベル差(Sxp(μm))、コア部空間体積(Vvc(mm3/mm2))、突出谷部空間体積(Vvv(mm3/mm2))、実体体積(Vm(mm3/mm2))、突出山部実体体積(Vmp(mm3/mm2))、空間体積(Vv(mm3/mm2))も、造形物の相対密度の予測に使用可能な3次元表面性状パラメータであることが分かった。
【0142】
なお、本実施例により選別された3次元表面性状パラメータは、
図3Aに図示の積層造形物の品質評価方法の手順に適用できる。本実施例により選別された3次元表面性状パラメータは、また、
図4Bに図示の積層造形システムにおいて積層造形物の造形に使用可能である。
【0143】
(Spの値)
以下、表14に、実施例501から実施例588の実験結果に基づいて算出した、3次元表面性状パラメータSp(μm)の値を示す。
【0144】
【0145】
(抽出された3次元表面性状パラメータSpと相対密度との相関関係)
次に、表14から相対密度(%)と各3次元表面性状パラメータSpとの相関を示すグラフと、MICによる相関係数の値を示す。
【0146】
図20Kは、積層造形物の相対密度(%)と3次元表面性状パラメータSp(μm)との関連を示すグラフ2120である。相対密度(%)とSp(μm)とのMICは、0.587である。したがって、造形品質(造形強度)を評価する3次元表面性状パラメータとしては使用しなかった。
【0147】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0148】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるサーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
【0149】
この出願は、2020年5月22日に出願された国際特許出願PCT/JP2020/020406号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。