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特許7462352垂直共振器面発光レーザ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】垂直共振器面発光レーザ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/183 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
H01S5/183
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022540882
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-26
(86)【国際出願番号】 CN2022075870
(87)【国際公開番号】W WO2023035549
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】202111042430.6
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519028014
【氏名又は名称】常州縦慧芯光半導体科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】VERTILITE CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 FengXiang Road, WuJin High-tech Industrial Zone, Changzhou, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】翁 ▲イ▼呈
(72)【発明者】
【氏名】梁 棟
(72)【発明者】
【氏名】劉 嵩
(72)【発明者】
【氏名】丁 維遵
(72)【発明者】
【氏名】彭 俊彦
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-009897(JP,A)
【文献】特開2019-153719(JP,A)
【文献】特開2011-114155(JP,A)
【文献】特開2018-157065(JP,A)
【文献】特開2004-022686(JP,A)
【文献】特開2017-050463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0291799(US,A1)
【文献】国際公開第2017/212888(WO,A1)
【文献】特開2013-191784(JP,A)
【文献】特開2009-188238(JP,A)
【文献】特開2018-093160(JP,A)
【文献】特開2016-213486(JP,A)
【文献】特開2015-099869(JP,A)
【文献】特開2020-129587(JP,A)
【文献】特開2021-022679(JP,A)
【文献】特開2010-219342(JP,A)
【文献】特開2007-129012(JP,A)
【文献】特開2018-170469(JP,A)
【文献】特開2011-009368(JP,A)
【文献】特開2020-155771(JP,A)
【文献】国際公開第2020/105411(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10)を提供し、前記基板(10)の一側に半導体エピタキシャル構造(20)を形成し、前記半導体エピタキシャル構造(20)は、前記基板(10)に順に形成されたN型オーミック接触層(21)、N型分布ブラッグ反射層(22)、量子井戸層(23)、P型分布ブラッグ反射層(24)及びP型オーミック接触層(25)を備えることと、
前記半導体エピタキシャル構造(20)にトレンチ(201)をエッチングして発光メサ構造(202)を形成し、前記トレンチ(201)が一部のN型オーミック接触層(21)を露出させることと、
前記発光メサ構造(202)の中に電流制限層(30)を形成し、前記電流制限層(30)は開口を有し、前記開口は前記発光メサ構造(202)の発光領域(Q)を形成するために用いられることと、
前記トレンチ(201)が露出させたN型オーミック接触層(21)の前記基板(10)から離れた側にN型オーミック金属層(40)を形成し、前記N型オーミック金属層(40)と前記トレンチ(201)側壁との距離は0より大きいことと、
前記半導体エピタキシャル構造(20)の前記基板(10)から離れた側並びに前記トレンチ(201)の側壁及び底部に第1のパッシベーション層(50)を形成して、同じエッチング工程において、前記N型オーミック金属層(40)の基板(10)から離れた側に位置する第1のパッシベーション層(50)、及び前記発光メサ構造(202)におけるP型オーミック接触層(25)の前記基板(10)から離れた側に位置する第1のパッシベーション層(50)をエッチングし、これにより、前記N型オーミック金属層(40)の基板(10)から離れた側に第1の開口(A)を形成して前記N型オーミック金属層(40)を露出させ、前記発光メサ構造(202)におけるP型オーミック接触層(25)の前記基板(10)から離れた側に第2の開口(B)を形成して前記P型オーミック接触層(25)を露出させることと、
同じ金属堆積工程において、同じ金属材料で、前記第1の開口(A)の中に第1の電極層(60)を形成して、前記第2の開口(B)の中にP型オーミック金属層及び第2の電極層(70)を順に形成することと、を含む、
垂直共振器面発光レーザの製造方法。
【請求項2】
前記半導体エピタキシャル構造(20)の前記基板(10)から離れた側に位置する第1のパッシベーション層(50)と前記半導体エピタキシャル構造(20)との間には、第2のパッシベーション層(80)がさらに備えられ、
記半導体エピタキシャル構造(20)にトレンチ(201)をエッチングして発光メサ構造(202)を形成することの前に、さらに、
前記半導体エピタキシャル構造(20)の前記基板(10)から離れた側に第2のパッシベーション層(80)を形成して、前記トレンチ(201)が置かれる区域に位置する第2のパッシベーション層(80)をエッチングし、エッチング対象である半導体エピタキシャル構造(20)を露出させることを含む、
請求項1に記載の垂直共振器面発光レーザの製造方法。
【請求項3】
前記N型分布ブラッグ反射層(22)は、アルミニウムガリウム砒素材料層とガリウム砒素材料層とが積層することにより形成され、かつ前記P型分布ブラッグ反射層(24)は、アルミニウムガリウム砒素材料層とガリウム砒素材料層とが積層することにより形成され、又は、
前記N型分布ブラッグ反射層(22)は、高アルミニウム組成のアルミニウムガリウム砒素材料層と低アルミニウム組成のアルミニウムガリウム砒素材料層とが積層することにより形成され、かつ前記P型分布ブラッグ反射層(24)は、高アルミニウム組成のアルミニウムガリウム砒素材料層と低アルミニウム組成のアルミニウムガリウム砒素材料層とが積層することにより形成される、
請求項1に記載の垂直共振器面発光レーザの製造方法。
【請求項4】
記発光メサ構造(202)の中に電流制限層(30)を形成することは、
前記トレンチ(201)が露出させたP型分布ブラッグ反射層(24)におけるアルミニウム組成が最も高いアルミニウムガリウム砒素材料層をウェット酸化して、前記電流制限層(30)を形成することを含む、
請求項3に記載の垂直共振器面発光レーザの製造方法。
【請求項5】
前記発光メサ構造(202)の個数は1つであり、
記トレンチ(201)が露出させたN型オーミック接触層(21)の前記基板(10)から離れた側にN型オーミック金属層(40)を形成することは、
前記トレンチ(201)が1つの発光メサ構造(202)を周回する方向に沿って、前記N型オーミック接触層(21)の前記基板(10)から離れた側に前記N型オーミック金属層(40)を形成することを含む、
請求項1に記載の垂直共振器面発光レーザの製造方法。
【請求項6】
前記発光メサ構造(202)の個数は複数であり、
記トレンチ(201)が露出させたN型オーミック接触層(21)の前記基板(10)から離れた側にN型オーミック金属層(40)を形成することは、
複数の発光メサ構造(202)の同じ側のトレンチ(201)の中に、前記複数の発光メサ構造(202)が共用するN型オーミック金属層(40)を形成することを含む、
請求項1に記載の垂直共振器面発光レーザの製造方法。
【請求項7】
基板(10)と、前記基板(10)の一側に位置する半導体エピタキシャル構造(20)と、N型オーミック金属層(40)と、第1のパッシベーション層(50)と、第1の電極層(60)と、P型オーミック金属層と、第2の電極層(70)と、を備え、
前記半導体エピタキシャル構造(20)は、前記基板(10)に順に積層して設けられたN型オーミック接触層(21)、N型分布ブラッグ反射層(22)、量子井戸層(23)、P型分布ブラッグ反射層(24)及びP型オーミック接触層(25)を備え、前記半導体エピタキシャル構造(20)は、トレンチ(201)及び前記トレンチ(201)に取り囲まれた発光メサ構造(202)を備え、前記トレンチ(201)が一部のN型オーミック接触層(21)を露出させ、前記発光メサ構造(202)には電流制限層(30)が備えられ、前記電流制限層(30)は開口を有し、前記開口は前記発光メサ構造(202)の発光領域(Q)を形成するために用いられ、
前記N型オーミック金属層(40)は、前記トレンチ(201)の底部に位置し、前記N型オーミック金属層(40)と前記トレンチ(201)の側壁との距離は0より大きく、
前記第1のパッシベーション層(50)は、前記半導体エピタキシャル構造(20)の前記基板(10)から離れた側並びに前記トレンチ(201)の側壁及び底部に位置し、前記第1のパッシベーション層(50)は、第1の開口(A)及び第2の開口(B)を備え、前記第1の開口(A)は前記N型オーミック金属層(40)を露出させ、前記第2の開口(B)は前記発光メサ構造(202)におけるP型オーミック接触層(25)を露出させ、前記第1の開口(A)及び前記第2の開口(B)は同じエッチング工程において形成され、
前記第1の電極層(60)は、前記第1の開口(A)が露出させたN型オーミック金属層(40)に接触し、前記P型オーミック金属層は、前記第2の開口(B)が露出させたP型オーミック接触層(25)に接触し、前記第2の電極層(70)は、P型オーミック金属層の前記P型オーミック接触層(25)から離れた側に位置し、前記第1の電極層(60)、前記P型オーミック金属層及び前記第2の電極層(70)は同じ金属堆積工程において同じ金属材料で形成される、
垂直共振器面発光レーザ。
【請求項8】
第2のパッシベーション層(80)をさらに備え、
前記第2のパッシベーション層(80)は、前記半導体エピタキシャル構造(20)と前記第1のパッシベーション層(50)との間に位置し、前記第2のパッシベーション層(80)は、前記半導体エピタキシャル構造(20)の前記基板(10)から離れた側の表面を覆う、
請求項7に記載の垂直共振器面発光レーザ。
【請求項9】
前記N型分布ブラッグ反射層(22)は、アルミニウムガリウム砒素材料層とガリウム砒素材料層とが積層することにより構成され、かつ前記P型分布ブラッグ反射層(24)は、アルミニウムガリウム砒素材料層とガリウム砒素材料層とが積層することにより構成され、又は、
前記N型分布ブラッグ反射層(22)は、高アルミニウム組成が含まれたアルミニウムガリウム砒素材料層と低アルミニウム組成が含まれたアルミニウムガリウム砒素材料層とが積層することにより構成され、かつ前記P型分布ブラッグ反射層(24)は、高アルミニウム組成が含まれたアルミニウムガリウム砒素材料層と低アルミニウム組成が含まれたアルミニウムガリウム砒素材料層とが積層することにより構成される、
請求項7に記載の垂直共振器面発光レーザ。
【請求項10】
前記発光メサ構造(202)の個数は複数を含み、
前記N型オーミック金属層(40)は、複数の発光メサ構造(202)が共用するN型オーミック金属層(40)であり、前記複数の発光メサ構造(202)の同じ側のトレンチ(201)に位置する、
請求項7又は9に記載の垂直共振器面発光レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、レーザの技術分野に関し、例えば垂直共振器面発光レーザ及びその製造方法に関する。
【0002】
本願は、2021年09月07日に中国専利局に出願された、出願番号が202111042430.6である中国特許出願の優先権を主張し、上記出願の全ての内容は引用により本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
垂直共振器面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser、VCSEL)は、ガリウム砒素半導体材料をベースに研究開発されたものであり、体積が小さく、円形の出力光スポットで、単一縦モードで出力し、閾値電流が小さく、安価で、大面積のアレイに集積されやすいなどの利点を有し、光通信、光インターコネクション、光記憶の高パワーへの応用、工業的切断、測距、Lidar(Light Detection and Ranging、レーザ検知及び測距)、医療などの分野に幅広く応用されている。
【0004】
垂直共振器面発光レーザは、性能が優れており幅広く応用されているため非常に注目されている。低製造コストを実現するには高生産効率が必要であり、そのため、生産製造に用いられる方法は厳格で制御可能であることが要求される。しかし、関連技術における垂直共振器面発光レーザの製造方法には、平均総工程工数が長く、金属消耗品が多く、製造コストが高いという状況が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の実施例は、垂直共振器面発光レーザ及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、本願の実施例は、基板を提供し、前記基板の一側に半導体エピタキシャル構造を形成し、前記半導体エピタキシャル構造は、前記基板に順に形成されたN型オーミック接触層、N型分布ブラッグ反射層、量子井戸層、P型分布ブラッグ反射層及びP型オーミック接触層を備えることと、
前記半導体エピタキシャル構造にトレンチをエッチングして発光メサ構造を形成し、前記トレンチが一部のN型オーミック接触層を露出させることと、
前記発光メサ構造の中に電流制限層を形成し、前記電流制限層は開口を有し、前記開口は前記発光メサ構造の発光領域を形成するために用いられることと、
前記トレンチが露出させたN型オーミック接触層の前記基板から離れた側にN型オーミック金属層を形成し、前記N型オーミック金属層と前記トレンチ側壁との距離は0より大きいことと、
前記半導体エピタキシャル構造の前記基板から離れた側並びに前記トレンチの側壁及び底部に第1のパッシベーション層を形成して、同じエッチング工程において、前記N型オーミック金属層の基板から離れた側に位置する第1のパッシベーション層、及び前記発光メサ構造におけるP型オーミック接触層の前記基板から離れた側に位置する第1のパッシベーション層をエッチングし、これにより、前記N型オーミック金属層の基板から離れた側に第1の開口を形成して前記N型オーミック金属層を露出させ、前記発光メサ構造におけるP型オーミック接触層の前記基板から離れた側に第2の開口を形成して前記P型オーミック接触層を露出させることと、
同じ金属堆積工程において、前記第1の開口の中に第1の電極層を形成して、前記第2の開口の中にP型オーミック金属層及び第2の電極層を順に形成することと、を含む、
垂直共振器面発光レーザの製造方法を提供する。
【0007】
第2の態様では、本願の実施例は、
基板と、前記基板の一側に位置する半導体エピタキシャル構造と、N型オーミック金属層と、第1のパッシベーション層と、第1の電極層と、P型オーミック金属層と、第2の電極層と、を備え、
前記半導体エピタキシャル構造は、前記基板に順に積層して設けられたN型オーミック接触層、N型分布ブラッグ反射層、量子井戸層、P型分布ブラッグ反射層及びP型オーミック接触層を備え、前記半導体エピタキシャル構造は、トレンチ及び前記トレンチに取り囲まれた発光メサ構造を備え、前記トレンチが一部のN型オーミック接触層を露出させ、前記発光メサ構造には電流制限層が備えられ、前記電流制限層は開口を有し、前記開口は前記発光メサ構造の発光領域を形成するために用いられ、
前記N型オーミック金属層は、前記トレンチの底部に位置し、前記N型オーミック金属層と前記トレンチの側壁との距離は0より大きく、
前記第1のパッシベーション層は、前記半導体エピタキシャル構造の前記基板から離れた側並びに前記トレンチの側壁及び底部に位置し、前記第1のパッシベーション層は、第1の開口及び第2の開口を備え、前記第1の開口は前記N型オーミック金属層を露出させ、前記第2の開口は前記発光メサ構造におけるP型オーミック接触層を露出させ、前記第1の開口及び前記第2の開口は同じエッチング工程において形成され、
前記第1の電極層は、前記第1の開口が露出させたN型オーミック金属層に接触し、前記P型オーミック金属層は、前記第2の開口が露出させたP型オーミック接触層に接触し、前記第2の電極層は、P型オーミック金属層の前記P型オーミック接触層から離れた側に位置し、前記第1の電極層、前記P型オーミック金属層及び前記第2の電極層は同じ金属堆積工程において形成される、
垂直共振器面発光レーザを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法のフローチャートである。
図2】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS110で製造された構造の断面図である。
図3】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS120で製造された構造の断面図である。
図4】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS130で製造された構造の断面図である。
図5】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS140で製造された構造の断面図である。
図6】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS150で製造された構造の第1の構造の断面図である。
図7】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS150で製造された構造の第2の構造の断面図である。
図8】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS160で製造された構造の断面図である。
図9】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法において第2のパッシベーション層が形成された構造の断面図である。
図10】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法において第2のパッシベーション層がエッチングされた構造の断面図である。
図11】本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの平面図である。
図12】本願の実施例に係る他の垂直共振器面発光レーザの平面図である。
図13図12のC3-C4に沿う1つの構造断面図である。
図14図12のC3-C4に沿う他の構造断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面及び実施例を参照しながら本願について説明する。
【0010】
背景技術のように、垂直共振器面発光レーザは、ガリウム砒素半導体材料をベースに研究開発されたものであり、LED(発光ダイオード)及びLD(Laser Diode、レーザダイオード)などの他の光源と異なり、垂直共振器面発光レーザは、体積が小さく、円形の出力光スポットで、単一縦モードで出力し、閾値電流が小さく、安価で、大面積のアレイに集積されやすいなどの利点を有し、光通信、光インターコネクション、光記憶の高パワーへの応用、工業的切断、測距、Lidar、医療などの分野に幅広く応用されている。垂直共振器面発光レーザは、性能が優れており幅広く応用されているため非常に注目されている。低製造コストを実現するには高生産効率が必要であり、そのため、生産製造に用いられる方法は厳格で制御可能であることが要求される。関連技術では、垂直共振器面発光レーザを製造する過程において、P型オーミック金属層及びN型オーミック金属層は、2回の金属堆積工程により相前後して基板の相対する両側に形成され、又は基板の同じ側に形成され、工程時間が長く、複数枚のフォトマスク、及び多くの金属消耗品が必要とされる。また、関連技術において、P型オーミック金属層及びN型オーミック金属層が基板の同じ側に位置する場合、P型オーミック金属層及びN型オーミック金属層の基板から離れた側にパッシベーション層が形成された後に、異なる回のエッチング工程によりそれぞれ、P型オーミック金属層に開口を設けてN型オーミック金属層に開口を設けることで、P型オーミック金属層及びN型オーミック金属層にパッドを製造するのも、同様に工程時間が長く、製造方法が複雑であるという状況を有する。統計から分かるように、主要工程のタイプが11工程より大きく、フォトマスク数が7より大きく、金属をめっきする回数が5回より大きく、平均総工程工数が3週間より大きく、以上が主流工程の基本状況であり、本分野では、時間及びコストの低減が急務であることが分かった。
【0011】
このような点に鑑みて、本願の実施例は、垂直共振器面発光レーザの製造方法を提供し、図1は本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法のフローチャートであり、図1を参照し、方法は以下を含む。
【0012】
S110において、基板を提供し、基板の一側に半導体エピタキシャル構造を形成し、半導体エピタキシャル構造は、基板に順に形成されたN型オーミック接触層、N型分布ブラッグ反射層、量子井戸層、P型分布ブラッグ反射層及びP型オーミック接触層を備える。
【0013】
例えば、図2は、本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS110で製造された構造の断面図であり、図2を参照すると、1つの基板10を提供しており、該基板10は、ガリウム砒素(GaAs)などの、任意の垂直共振器面発光レーザを形成することに適した材料を使用することができる。基板10は、N型のドープされた半導体基板であってもよいし、P型のドープされた半導体基板であってもよく、本実施例において、該基板10はN型ドープ半導体基板である。後続の製造過程において、N型オーミック金属層及びP型オーミック金属層が基板10の同じ側に形成されるため、N型オーミック金属層及びP型オーミック金属層が基板10の相対する両側に形成される場合に対して、基板10は、導体として機能してN型オーミック金属層とP型オーミック金属層を導通させる必要がない。つまり、本実施例におけるN型ドープ半導体基板は、導電性が比較的弱い又は導電性がない。いくつかの実施例において、基板10はサファイア基板又は他の材料の基板であってもよく、或いは少なくとも基板10の頂面が、シリコン、ガリウム砒素、炭化シリコン、アルミニウム窒化物、ガリウム窒化物のうちの1種により構成される。
【0014】
基板10の一側には、半導体エピタキシャル構造20が形成され、半導体エピタキシャル構造20は、基板10に順に形成されたN型オーミック接触層21、N型分布ブラッグ反射(DBR、distributed Bragg reflection)層22、量子井戸層23、P型分布ブラッグ反射層24及びP型オーミック接触層25を備える。N型オーミック接触層21、N型分布ブラッグ反射層22、量子井戸層23、P型分布ブラッグ反射層24及びP型オーミック接触層25は、化学気相成長の方式により形成されることができる。N型オーミック接触層21は電流拡散層であり、N型オーミック接触層21の材料は、高ドープされたガリウム砒素材料であってよく、高ドープされたガリウム砒素材料は良好な導電性を有する。同様に、P型オーミック接触層25は電流拡散層であり、P型オーミック接触層25の材料は、後続堆積されるP型オーミック金属層とオーミック接触の形成を有利にさせるよう、高ドープされたガリウム砒素材料であってもよい。N型分布ブラッグ反射層22は、アルミニウムガリウム砒素材料層とガリウム砒素材料層の2種の異なる屈折率である材料層が積層することにより形成され、又は高アルミニウム組成のアルミニウムガリウム砒素材料層と低アルミニウム組成のアルミニウムガリウム砒素材料層の2種の異なる屈折率である材料層が積層することにより形成され、量子井戸層23は活性層であり、積層して設けられた量子井戸複合構造を備え、GaAs及びAlGaAs、又はInGaAs及びAlGaAsの材料が積層配列することにより構成され、量子井戸層23は、電気エネルギを光エネルギに変換するために用いられる。P型分布ブラッグ反射層24は、アルミニウムガリウム砒素材料層とガリウム砒素材料層の2種の異なる屈折率である材料層が積層することにより形成され、又は高アルミニウム組成のアルミニウムガリウム砒素材料層と低アルミニウム組成のアルミニウムガリウム砒素材料層の2種の異なる屈折率である材料層が積層することにより形成される。N型分布ブラッグ反射層22及びP型分布ブラッグ反射層24は、中間にある活性層が生成した光線に対して反射増強を行ってから、P型分布ブラッグ反射層24の表面から出射させ、レーザを形成するために用いられる。
【0015】
いくつかの実施例において、N型分布ブラッグ反射層22及びP型分布ブラッグ反射層24は、それぞれ、一連の異なる屈折率である材料の交互層を備え、一連の交互層のうちの各交互層の有効光学的厚さ(該層の交互層の厚さが該層交互層の屈折率に乗算されたもの)は、4分の1の垂直共振器面発光レーザの動作波長の奇数の整数倍であり、即ち各交互層の有効光学的厚さは、垂直共振器面発光レーザの動作波長の奇数の整数倍の4分の1である。いくつかの実施例において、N型分布ブラッグ反射層22及びP型分布ブラッグ反射層24は、他の材料により形成されてもよい。
【0016】
いくつかの実施例において、N型オーミック接触層21は、基板10とN型分布ブラッグ反射層22との間に形成されてよく、即ち、基板10にN型オーミック接触層21を先に成長させてから、N型オーミック接触層21にN型分布ブラッグ反射層22を成長させ、N型オーミック接触層21は、N型分布ブラッグ反射層22の間に形成されてもよく、即ち、基板10に一部のN型分布ブラッグ反射層22を先に成長させてから、既に成長された一部のN型分布ブラッグ反射層22にN型オーミック接触層21を成長させ、次にN型オーミック接触層21に他の一部のN型分布ブラッグ反射層22を成長させる。
【0017】
S120において、半導体エピタキシャル構造にトレンチをエッチングして発光メサ構造を形成し、そのうち、トレンチが一部のN型オーミック接触層を露出させる。
【0018】
例えば、図3は、本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS120で製造された構造の断面図であり、図3を参照し、ウェット/ドライエッチング法を利用して半導体エピタキシャル構造20にトレンチ201をエッチングして発光メサ構造202を形成する。エッチング工程によりP型オーミック接触層25から下に向かって(基板10に近い方向に向かって)エッチングし、後続のN型オーミック金属層40を製造する過程において製造位置を形成するために、形成されるトレンチ201は少なくとも一部のN型オーミック接触層21を露出させ、N型オーミック金属層40は、N型オーミック接触層21に接触する必要があり、これにより、N型オーミック金属層40とN型オーミック接触層21とのオーミック接触を実現させ、電流をN型オーミック接触層21からN型オーミック金属層40に流し、発光メサ構造202に電気エネルギを提供することができる。
【0019】
S130において、発光メサ構造の中に電流制限層を形成し、電流制限層は開口を有し、開口は前記発光メサ構造の発光領域を形成するために用いられる。
【0020】
例えば、図4は本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS130で製造された構造の断面図であり、図3図4を参照し、本実施例は、一定の温度条件下で高アルミニウムドープ材料をウェット酸化する方式により、トレンチ201の側壁に対して酸化を行い、P型分布ブラッグ反射層24内に電流制限層30を形成する。電流制限層30は開口を有し、開口は、発光メサ構造202の発光領域Qを定義するために用いられる。開口が形成されたトレンチ201両側の電流制限層30の長さは等しく(例えば、図4に示す4つの電流制限層30の長さがいずれも等しく、一例において、トレンチ201の側壁に対して酸化を行い、アルミニウム組成が同じで、酸化条件が同様であることに鑑みて、mesa(mesaが発光ユニットであるか非発光ユニットであるかによらず)の幅が同じである場合、酸化の長さも同じである)。酸化された後に形成された酸化アルミニウムは、インピーダンスが比較的高く、電流制限層30の開口位置は依然として高アルミニウムドープのアルミニウムガリウム砒素材料であり、電流は発光メサ構造202に入った後に、電流制限層30における開口を通って活性層へ流れる。本実施例において、各メサ構造内の電流制限層30は円環状構造であり、メサ構造の平面図が矩形である場合、電流制限層30も矩形環状であってもよい。
【0021】
さらに、例えば、量子井戸層23上の高アルミニウム含有酸化層の中に電流制限層30を形成する。
【0022】
S140において、トレンチが露出させたN型オーミック接触層の基板から離れた側にN型オーミック金属層を形成し、N型オーミック金属層とトレンチ側壁との距離は0より大きい。
【0023】
例えば、図5は、本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS140で製造された構造の断面図であり、図5を参照し、異なる図形の製品設計、トポグラフィー加工の要求性などに応じて、蒸着、スパッタリング、電気めっき又は化学めっきなどの技術方式を選択的に利用し、N型オーミック金属層40を形成する。N型オーミック金属層40を形成する前に、トレンチ201内にフォトレジスト層を形成してから、露光現像の方式によりフォトレジスト層をパターン化し、フォトレジスト層にフォトレジストパターンを形成させてもよい。フォトレジストパターンに基づいて金属層を堆積した後に、フォトレジスト層を除去し、これにより、フォトレジスト層を除去すると同時に、フォトレジスト層に堆積されている金属層も同時に除去される。フォトレジストパターンの開口位置の金属層は残され、残された金属層はそのまま、N型オーミック金属層40をなす。N型オーミック金属層40とトレンチ201側壁との距離は0より大きく、N型オーミック金属層40と発光メサ構造202との直接接触が防止される。
【0024】
オーミック金属層は、オーミック接触層と記されてもよく、オーミック金属層とオーミック接触層とが分けて命名されるのは、単に異なる対象を区別するためである。
【0025】
S150において、半導体エピタキシャル構造の基板から離れた側並びにトレンチの側壁及び底部に第1のパッシベーション層を形成して、同じエッチング工程において、N型オーミック金属層の基板から離れた側に位置する第1のパッシベーション層、及び発光メサ構造におけるP型オーミック接触層の基板から離れた側に位置する第1のパッシベーション層をエッチングし、これにより、N型オーミック金属層の基板から離れた側に第1の開口を形成してN型オーミック金属層を露出させ、発光メサ構造におけるP型オーミック接触層の基板から離れた側に第2の開口を形成してP型オーミック接触層を露出させる。
【0026】
例えば、図6は、本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS150で製造された構造の第1の構造の断面図であり、図7は、本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS150で製造された構造の第2の構造の断面図であり、図6~7を参照し、電流制限層30及びN型オーミック金属層40が形成された後に、半導体エピタキシャル構造20に絶縁層、即ち第1のパッシベーション層50を形成する。形成された第1のパッシベーション層50は、半導体エピタキシャル構造20の基板10から離れた側の表面並びにトレンチ201の側壁及び底部を覆う。第1のパッシベーション層50の材料は、窒化シリコン又は酸化シリコン又は他の絶縁材料であってよく、化学気相成長の方式により形成されることができる。第1のパッシベーション層50は、電流制限層30を保護することができ、隣り合うメサ構造を効果的に隔離することもできる。半導体エピタキシャル構造20の基板10から離れた側並びにトレンチ201の側壁及び底部に第1のパッシベーション層50が形成された後に、同じエッチング工程において、N型オーミック金属層40の基板10から離れた側に位置する第1のパッシベーション層50、及び発光メサ構造202におけるP型オーミック接触層25の基板10から離れた側に位置する第1のパッシベーション層50をエッチングし、これにより、N型オーミック金属層40の基板10から離れた側に第1の開口Aを形成してN型オーミック金属層40を露出させ、発光メサ構造202におけるP型オーミック接触層25の基板10から離れた側に第2の開口Bを形成してP型オーミック接触層25を露出させる。本願の実施例は、1回のエッチング工程においてN型オーミック金属層40の基板10から離れた側に位置する第1のパッシベーション層50をエッチングすることにより、開口のエッチング工程の回数が減少され、工程時間が短縮され、レーザの製造効率が高められる。
【0027】
S160において、同じ金属堆積工程において、第1の開口の中に第1の電極層を形成して、第2の開口の中にP型オーミック金属層及び第2の電極層を順に形成する。
【0028】
例えば、図8は、本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法におけるステップS160で製造された構造の断面図であり、図8を参照し、同じ金属堆積工程において、第1の開口Aの中に第1の電極層60を形成し、第2の開口Bの中にP型オーミック金属層及び第2の電極層70を順に形成し(図8には、例示的に第1の電極層60及び第2の電極層70が示されており、P型オーミック金属層は描かれていなく、第2の電極層とP型オーミック金属層とは同じ層であってもよい)、形成された第1の電極層60と第2の電極層70との間は接触しない。同じ金属堆積工程は、第1の開口Aにおける第1の電極層60並びに第2の開口BにおけるP型オーミック金属層及び第2の電極層70が、同じ金属材料(金属材料は、例えばTi、Pt、Au、Ge又はPdである)を同時に堆積する方式により形成されると理解されることができる。同様に、金属堆積工程が行われる前に、フォトレジスト層を塗布し、フォトレジスト層に対して露光現像を行った後にフォトレジストパターンを形成することができる。これにより、第1の電極層60と第2の電極層70との間の接触しない区域内における、第1のパッシベーション層50の基板10から離れた側には、フォトレジスト層が覆われる。金属層が堆積された後に、フォトレジスト層を除去すると同時にフォトレジスト層に付着された金属層を除去すれば、接触しない第1の電極層60と第2の電極層70を形成することができる。1回の金属堆積工程であれば、N型オーミック金属層40とカソードパッド金属(第1の電極層60)とを結合させ、P型オーミック金属層とP型オーミック接触層25を結合させて、P型オーミック金属層とアノードパッド金属(第2の電極層70)とを結合させることができる。形成後のレーザは、P型オーミック金属層及びN型オーミック金属層40が基板10の同じ側に位置する。フォトマスク数及び工程数量を減少し、金属堆積工程の回数を減少し、レーザの製造時間長を短縮して、レーザの製造効率を高めるだけでなく、金属消耗品を減少し、製造コストを低減させることもできる。
【0029】
本願の実施例に係る垂直共振器面発光レーザの製造方法は、同じエッチング工程において、N型オーミック金属層の基板から離れた側に位置する第1のパッシベーション層、及び発光メサ構造202におけるP型オーミック接触層の基板から離れた側に位置する第1のパッシベーション層をエッチングし、これにより、N型オーミック金属層の基板から離れた側に第1の開口を形成してN型オーミック金属層を露出させ、発光メサ構造202におけるP型オーミック接触層の基板から離れた側に第2の開口を形成してP型オーミック接触層を露出させ、開口のエッチング工程の回数が減少され、かつ同じ金属堆積工程において、第1の開口の中に第1の電極層を形成して、第2の開口の中にP型オーミック金属層及び第2の電極層を順に形成し、金属堆積工程の回数を減少して、金属消耗品の量を減少し、これにより、レーザの製造効率が高められ、レーザの製造時間長が短縮され、製造コストが低減される。
【0030】
一実施例において、第2の開口Bの中で金属堆積を行って形成された1層は、同時にP型オーミック接触及び電極として機能することができ、即ち、P型オーミック金属層と第2の電極層とは、1回で完成されたものであってもよいし、同じ層であってもよい。
【0031】
一実施例において、半導体エピタキシャル構造の前記基板から離れた側に位置する第1のパッシベーション層と半導体エピタキシャル構造との間には、第2のパッシベーション層がさらに備えられ、半導体エピタキシャル構造をエッチングしてトレンチを形成することの前に、さらに
半導体エピタキシャル構造の基板から離れた側に第2のパッシベーション層を形成して、トレンチが置かれる区域に位置する第2のパッシベーション層をエッチングし、エッチング対象である半導体エピタキシャル構造を露出させることを含む。
【0032】
例えば、図9は、本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法において第2のパッシベーション層80が形成された構造の断面図であり、図9を参照し、半導体エピタキシャル構造20をエッチングしてトレンチ201を形成する前に、半導体エピタキシャル構造20の基板10から離れた側に第2のパッシベーション層80を形成し、第2のパッシベーション層80の材料は、窒化シリコン又は酸化シリコン又は他の絶縁材料であってよく、化学気相成長の方式により形成されることができる。第2のパッシベーション層80は、半導体エピタキシャル層構造20を保護し、半導体エピタキシャル層構造20の表面への外部の水や酸素の損傷を防止するために用いられ、レーザが高性能である、トポグラフィー加工の要求が高いなどの製造条件を満たしている。図10は、本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの製造方法において第2のパッシベーション層がエッチングされた構造の断面図であり、図10を参照し、トレンチ201が置かれる区域に位置する第2のパッシベーション層80をエッチングし、エッチング対象である半導体エピタキシャル構造20を露出させた後に、引き続き半導体エピタキシャル構造20をエッチングしてトレンチ201を形成する。
【0033】
一実施例において、発光メサ構造202の個数は1つであり、トレンチ201が露出させたN型オーミック接触層21の基板10から離れた側にN型オーミック金属層40を形成することは、
トレンチ201が1つの発光メサ構造202を周回する方向に沿って、N型オーミック接触層21の基板10から離れた側にN型オーミック金属層40を形成することを含む。
【0034】
例えば、図11は、本願の実施例に係る1つの垂直共振器面発光レーザの平面図であり、図11が切断線C1-C2に沿って切断された後のものに対応する構造断面図は、図8に示す構造断面図であり、図11図8と併せて参照し、垂直共振器面発光レーザにおける発光メサ構造202は単一であってもよく、形成されるトレンチ201は発光メサ構造202を周回して設けられる。発光メサ構造202が円柱状構造であれば、トレンチ201は環状構造であってよい。トレンチ201が発光メサ構造202を周回する方向(即ち、発光メサ構造202を周回する方向)に沿って、N型オーミック接触層21の基板10から離れた側にN型オーミック金属層40を形成し、N型オーミック金属層40は、発光メサ構造202を周回して設けられ、弧状のN型オーミック金属層40が形成される。そのため、図11において、N型オーミック金属層40は発光メサ構造202の外周に位置する。後続の、半導体エピタキシャル構造20の基板10から離れた側並びにトレンチ201の側壁及び底部に第1のパッシベーション層50が形成された後に、第1のパッシベーション層50をエッチングし、これにより、N型オーミック金属層40の基板10から離れた側に第1の開口Aを形成してN型オーミック金属層40を露出させ、発光メサ構造202におけるP型オーミック接触層25の基板10から離れた側に第2の開口Bを形成してP型オーミック接触層25を露出させる過程において、第1の開口Aと第2の開口Bも対応して環状の開口であるため、図11において、発光メサ構造202の相対する両側に位置するN型オーミック金属層40の上部はいずれも第1の開口Aを有し、発光メサ構造202において、P型オーミック接触層25の基板10から離れた側に形成された第2の開口Bの個数も2つである(図8の作図視点で第2の開口Bは2つとして示されているが、図8及び図11を参照し、第2の開口Bの形状が環状をなしてもよく、即ち第2の開口Bの個数も1つであると理解されてよい)。
【0035】
一実施例において、発光メサ構造202の個数は複数であり、トレンチが露出させたN型オーミック接触層21の基板10から離れた側にN型オーミック金属層40を形成することは、
複数の発光メサ構造202の同じ側のトレンチ201の中に、複数の発光メサ構造202が共用するN型オーミック金属層40を形成することを含む。
【0036】
例えば、図12を参照し、2列の発光プラットホームが存在し、左半分の列の発光プラットホームの左辺はN型金属を有し、右半分の列の発光プラットホームと共用することができる。これは、これらの2列の発光プラットホームのN型オーミック金属層(n contact layer)が全てつながっているので、複数の発光メサ構造202はN型オーミック金属層を共用することができるからである。
【0037】
例えば、図12は、本願の実施例に係る他の垂直共振器面発光レーザの平面図であり、図12を参照し、垂直共振器面発光レーザにおける発光メサ構造202は複数であってもよく、複数のトレンチ201を形成することにより複数の発光メサ構造202が形成される。図12には、例示的に8つの発光メサ構造202が描かれている。形成されたN型オーミック金属層40は、8つの発光メサ構造202の同じ側のトレンチ201に位置し、N型オーミック金属層40の形状は条状であってよい。後続の、半導体エピタキシャル構造20の基板10から離れた側並びにトレンチ201の側壁及び底部に第1のパッシベーション層50が形成された後に、第1のパッシベーション層50をエッチングし、これにより、N型オーミック金属層40の基板10から離れた側に第1の開口Aを形成してN型オーミック金属層40を露出させ、発光メサ構造202におけるP型オーミック接触層25の基板10から離れた側に第2の開口Bを形成してP型オーミック接触層25を露出させる過程において、第1の開口Aが形成した形状は条状であり、第2の開口Bが形成した形状は依然として環状である。そのうち、第1の電極層60は8つの発光メサ構造202の共用電極層であり、第1の電極層60はカソードパッド金属層であり、8つの発光メサ構造202が置かれる区域に形成された第2の電極層70は、同様に共用電極層であり、第2の電極層70はアノードパッド金属層であり、8つの発光メサ構造202は並列接続の関係である。電流信号は、アノードパッド金属層を通って各発光メサ構造202におけるP型オーミック金属層へ流れ、各々のP型分布ブラッグ反射層24、量子井戸層23、N型分布ブラッグ反射層22を経由し、完全的な層であるN型オーミック接触層21を通って共用のN型オーミック金属層40へ流れ、さらにカソードパッド金属層を通って流出し、これにより、閉じられた回路が形成される。
【0038】
図13は、図12のC3-C4に沿う1つの構造断面図であり、図13を参照し、半導体エピタキシャル層構造20をエッチングする時に、発光メサ構造202の形成位置の周辺区域のうち、これからN型オーミック金属層40を有する側に、これからN型オーミック金属層40を有する側の一部の区域をN型オーミック接触層21までエッチングすることができ、これからN型オーミック金属層40を有さない他側に、これからN型オーミック金属層40を有さない他側の一部の区域をN型分布ブラッグ反射層22までエッチングすることができる。図14は、図12のC3-C4に沿う他の構造断面図であり、図14を参照し、半導体エピタキシャル層構造20をエッチングする時に、発光メサ構造202の形成位置の周辺区域のうち、これからN型オーミック金属層40を有する側に、これからN型オーミック金属層40を有する側の全ての区域をN型オーミック接触層21までエッチングすることができ、これからN型オーミック金属層40を有さない他側に、これからN型オーミック金属層40を有さない他側の全ての区域をN型分布ブラッグ反射層22までエッチングすることができる。
【0039】
図12を参照し、N型導電層に応じて設計することができ、例えば、図12における左辺にはn padが設計され、右辺にはなく、2列の発光メサは、一辺のn padのみがあれば、発光の均一性を満たすことができる。複数列であると、N型導電層が長すぎて抵抗が大きすぎるため、発光の均一度が悪くなる可能性がある。
【0040】
一実施例において、図12には、一辺のn padとして設けられてもよいし、両辺のpadとして設けられてもよく、設け方はN型導電層の抵抗に応じて選択することができる。
【0041】
他の実施例において、図13~14を参照し、1つの例では、左右両側にはいずれも、エッチングしてN型オーミック金属層を露出させることができる。しかしながら、他の例では、左側のみにN型オーミック金属層があり、かつ右側の発光ユニットはいずれも並列なものであり、発光ユニットの間は完全に絶縁される必要がない。
【0042】
図8を参照し、本願の実施例は、基板10と、基板10の一側に位置する半導体エピタキシャル構造20と、N型オーミック金属層40と、第1のパッシベーション層50と、第1の電極層60と、P型オーミック金属層と、第2の電極層70と、を備える垂直共振器面発光レーザをさらに提供する。
そのうち、半導体エピタキシャル構造20は、基板10に順に積層して設けられたN型オーミック接触層21、N型分布ブラッグ反射層22、量子井戸層23、P型分布ブラッグ反射層24及びP型オーミック接触層25を備え、半導体エピタキシャル構造20は、トレンチ201及びトレンチ201に取り囲まれた発光メサ構造202を備え、トレンチ201が一部のN型オーミック接触層21を露出させ、発光メサ構造202には電流制限層30が備えられ、電流制限層30は開口を有し、開口は発光メサ構造202の発光領域Qを形成するために用いられ、
N型オーミック金属層40は、トレンチ201の底部に位置し、N型オーミック金属層40とトレンチ201の側壁との距離は0より大きく、
第1のパッシベーション層50は、半導体エピタキシャル構造20の基板10から離れた側並びにトレンチ201の側壁及び底部に位置し、第1のパッシベーション層50は、第1の開口A及び第2の開口Bを備え、第1の開口Aは、N型オーミック金属層40を露出させ、第2の開口Bは発光メサ構造202におけるP型オーミック接触層25を露出させ、そのうち、第1の開口A及び第2の開口Bは同じエッチング工程において形成され、
第1の電極層60は、第1の開口Aが露出させたN型オーミック金属層40に接触し、P型オーミック金属層は、第2の開口Bが露出させたP型オーミック接触層25に接触し、第2の電極層70は、P型オーミック金属層のP型オーミック接触層25から離れた側に位置し、そのうち、N型電極層(第1の電極層60)、P型オーミック金属層及びP型電極層(第2の電極層70)は同じ金属堆積工程において形成される。
【0043】
本願の実施例に係る垂直共振器面発光レーザにおいて、第1のパッシベーション層50は、第1の開口A及び第2の開口Bを備え、第1の開口Aは、N型オーミック金属層40を露出させ、第2の開口Bは、発光メサ構造202におけるP型オーミック接触層25を露出させ、そのうち、第1の開口A及び第2の開口Bは、同じエッチング工程において形成され、同じエッチング工程において、N型オーミック金属層40の基板10から離れた側に位置する第1のパッシベーション層50、及び発光メサ構造202におけるP型オーミック接触層25の基板10から離れた側に位置する第1のパッシベーション層50をエッチングし、これにより、N型オーミック金属層40の基板10から離れた側に第1の開口Aを形成してN型オーミック金属層40を露出させ、発光メサ構造202におけるP型オーミック接触層25の基板10から離れた側に第2の開口Bを形成してP型オーミック接触層25を露出させ、開口のエッチング工程の回数が減少される。また、垂直共振器面発光レーザにおけるN型電極層、P型オーミック金属層及びP型電極層は同じ金属堆積工程において形成される。同じ金属堆積工程において、第1の開口Aの中に第1の電極層60を形成して、第2の開口Bの中にP型オーミック金属層及び第2の電極層70を順に形成することにより、金属堆積工程の回数が減少され、金属消耗品の量が減少されて、レーザの製造効率が高められ、レーザの製造時間長が短縮され、製造コストが低減される。
【0044】
一実施例において、垂直共振器面発光レーザは、
第2のパッシベーション層80をさらに備え、第2のパッシベーション層80は、半導体エピタキシャル構造20と第1のパッシベーション層50との間に位置し、第2のパッシベーション層80は、半導体エピタキシャル構造20の前記基板10から離れた側の表面を覆う。
【0045】
一実施例において、N型分布ブラッグ反射層及びP型分布ブラッグ反射層はそれぞれ、アルミニウムガリウム砒素材料層とガリウム砒素材料層との2種の異なる屈折率である材料層が積層することにより構成され、又は高アルミニウム組成が含まれたアルミニウムガリウム砒素材料層と低アルミニウム組成が含まれたアルミニウムガリウム砒素材料層との2種の異なる屈折率である材料層が積層することにより構成される。
【0046】
一実施例において、発光メサ構造202の個数は複数を含み、N型オーミック金属層は、複数の発光メサ構造202が共用するN型オーミック金属層40であり、前記複数の発光メサ構造202の同じ側のトレンチ201に位置する。
【0047】
一実施例において、N型オーミック金属層は、発光メサ構造202の複数の側のトレンチ201の中に位置してもよい。
【0048】
本願の実施例は、基板10と、基板10の一側に位置する半導体エピタキシャル構造20と、N型オーミック金属層40と、第1の電極層60と、P型オーミック金属層と、第2の電極層70と、を備える垂直共振器面発光レーザをさらに提供する。
そのうち、半導体エピタキシャル構造20は、基板10に順に積層して設けられたN型オーミック接触層21、N型分布ブラッグ反射層22、量子井戸層23、P型分布ブラッグ反射層24及びP型オーミック接触層25を備え、半導体エピタキシャル構造20は、トレンチ201及びトレンチ201に取り囲まれた発光メサ構造202を備え、トレンチ201が一部のN型オーミック接触層21を露出させ、発光メサ構造202には電流制限層30が備えられ、電流制限層30は開口を有し、開口は発光メサ構造202の発光領域Qを形成するために用いられ、
N型オーミック金属層40は、トレンチ201の底部に位置し、N型オーミック金属層40とトレンチ201の側壁との距離は0より大きく、
第1の電極層60は、第1の開口Aが露出させたN型オーミック金属層40に接触し、P型オーミック金属層は、第2の開口Bが露出させたP型オーミック接触層25に接触し、P型オーミック金属層と第2の電極層70とは同じ層であってもよく、そのうち、N型電極層、P型オーミック金属層及びP型電極層は同じ金属堆積工程において形成される。
【0049】
当業者は、本願が、ここに記載された特定の実施例に限定されず、当業者として、本願の保護範囲から逸脱することなく、種々の変化、再調整及び置換を行うことができることを理解すべきである。本願は、以上の実施例のみに限定されず、本発明の構想から逸脱しない限り、他の均等な実施例をより多く含んでもよい。
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